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特開2024-141769溶解物質を含有する酸処理装置及び酸処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141769
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】溶解物質を含有する酸処理装置及び酸処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/58 20230101AFI20241003BHJP
   C02F 1/62 20230101ALI20241003BHJP
   C02F 1/64 20230101ALI20241003BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20241003BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241003BHJP
   B22F 1/105 20220101ALI20241003BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20241003BHJP
   B24B 31/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C02F1/58 H
C02F1/58 M
C02F1/62 A
C02F1/62 B
C02F1/62 C
C02F1/62 D
C02F1/62 E
C02F1/62 Z
C02F1/64 Z
C23C26/00 C
B22F1/00 S
B22F1/105
B22F1/05
B24B31/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053591
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】592157076
【氏名又は名称】イワブチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】久保田 仁
(72)【発明者】
【氏名】副島 龍之介
【テーマコード(参考)】
3C158
4D038
4K018
4K044
【Fターム(参考)】
3C158AA01
3C158CA01
3C158CB03
3C158DA10
3C158DA12
4D038AA08
4D038AB25
4D038AB40
4D038AB65
4D038AB66
4D038AB68
4D038AB69
4D038AB70
4D038AB71
4D038AB73
4D038AB83
4D038AB85
4D038BA02
4D038BA04
4D038BA06
4D038BB13
4D038BB15
4D038BB16
4D038BB17
4D038BB20
4K018BA13
4K018BB04
4K018BC28
4K044AA02
4K044AB01
4K044BA12
4K044BB01
4K044BC14
4K044CA29
(57)【要約】
【課題】より効率の良い溶解物質を含有する酸処理方法及びこれを実現する酸処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の酸処理装置1は、溶解物質を含有する酸水溶液Aと鉄粒子Fとを接触させて、鉄粒子表面に磁性酸化物層が形成された被覆鉄粒子Cを生成するための反応容器2と、反応容器から被覆鉄粒子を取り出して酸水溶液と分離する被覆鉄粒子分離手段4と、分離された前記被覆鉄粒子同士を接触させて磁性酸化物微粒子Mと鉄粒子に分離させる鉄粒子再生手段5と、を備えたものである。また、本発明の酸処理方法は、溶解物質を含有する酸水溶液と鉄粒子とを反応容器内で反応させて前記鉄粒子表面に磁性酸化物層を形成させて被覆鉄粒子とするステップ、被覆鉄粒子を前記反応容器から取り出して酸水溶液と分離するステップ、被覆鉄粒子同士を接触させて磁性酸化物微粒子と鉄粒子に分離させるステップ、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解物質を含有する酸水溶液と鉄粒子とを接触させて、前記鉄粒子表面に前記溶解物質を取り込んだ磁性酸化物層を形成させた被覆鉄粒子を生成するための反応容器と、
前記反応容器から、前記被覆鉄粒子を取り出して前記酸水溶液と分離するための被覆鉄粒子分離手段と、
分離された前記被覆鉄粒子同士を接触させて前記磁性酸化物層を剥離させる鉄粒子再生手段と、を備えた酸処理装置。
【請求項2】
前記鉄粒子再生手段は、前記被覆鉄粒子に対して研磨を行う研磨装置である請求項1記載の酸処理装置。
【請求項3】
前記被覆鉄粒子から剥離された前記磁性酸化物の微粒子を回収する回収手段を備えた請求項1記載の酸処理装置。
【請求項4】
前記被覆鉄粒子分離手段は、フィルターである請求項1記載の酸処理装置。
【請求項5】
前記鉄粒子再生手段によって再生された前記鉄粒子を前記反応容器内に供給する鉄粒子供給手段を備える請求項1記載の酸処理装置。
【請求項6】
前記反応容器内に収容した酸水溶液のpHを測定するpH計を備える請求項1記載の酸処理装置。
【請求項7】
前記反応容器内に収容した酸水溶液に対して中和処理を行うためのアルカリ添加手段を備える請求項1記載の酸処理装置。
【請求項8】
前記反応容器内に収容した酸水溶液の酸化還元電位を測定する酸化還元電位計を備える請求項1記載の酸処理装置。
【請求項9】
前記反応容器内に酸化剤及び還元剤の少なくともいずれかを加えるための酸化還元剤添加手段を備える請求項1記載の酸処理装置。
【請求項10】
前記反応容器内に収容した酸水溶液の溶存酸素濃度を計測する溶存酸素計を備える請求項1記載の酸処理装置。
【請求項11】
前記反応容器内又は前記反応容器内に収容した酸水溶液に酸素を供給するための酸素供給手段を備える請求項1記載の酸処理装置。
【請求項12】
前記鉄粒子は、平均粒径0.5mm未満である請求項1記載の酸処理装置。
【請求項13】
溶解物質を含有する酸水溶液と鉄粒子とを反応容器内で接触させて前記鉄粒子表面に溶解物質を取り込んだ磁性酸化物層を形成させて被覆鉄粒子とするステップ、
前記被覆鉄粒子を前記反応容器から取り出して酸水溶液と分離するステップ、
前記被覆鉄粒子同士を接触させて磁性酸化物層を剥離して鉄粒子を再生させるステップ、を備える酸処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解物質を含有する酸処理装置及び酸処理方法に関し、より好適には廃酸に対して好適に対応可能な溶解物質を含有する酸処理装置及び酸処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の化学工業では、酸を用いた化学反応が広く一般的に用いられており、その化学反応に用いられた酸は、使用後に廃棄物(以下、廃棄物となった酸を「廃酸」という。)となる。また、その中でも、著しい腐食性を有するpH2.0以下の廃酸は、特別管理産業廃棄物として規定されており、その保管、収集運搬、中間処理、再生、最終処分を行うには強い規制を受ける。更に、このような廃酸において、重金属類を含んでいることも少なくなく、この場合はさらに強い規制を受ける。
【0003】
この特別管理産業廃棄物について、処理等を他人に委託する場合には、委託費が発生することになるがこの委託費は高額となる。一方、自分でこの特別管理産業廃棄物を処理するにも費用が掛かり経済的でないといった課題がある。
【0004】
上記課題に関し、例えば、下記特許文献1には、重金属類を含む処理対象水から重金属類を取り除く重金属類の除去装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6647564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、一つの貯留槽内で鉄粒状物と処理対象水を撹拌して反応させるとともに鉄粒状物を相互に接触させ、マグネタイト粒子を鉄粒状物から剥離させようとするものである。すなわち、液中において鉄粒状物同士を接触させようとする場合、その接触効率に課題が残り、結果として酸処理の効率において改善の余地が残る。
【0007】
すなわち、本発明は、上記課題に鑑み、より効率の良い酸処理方法及びこれを実現する酸処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る酸処理装置は、溶解物質を含有する酸水溶液と鉄粒子とを接触させて、鉄粒子表面に溶解物質を取り込んだ磁性酸化物層を形成させた被覆鉄粒子を生成するための反応容器と、反応容器から、被覆鉄粒子を取り出して酸水溶液と分離するための被覆鉄粒子分離手段と、分離された被覆鉄粒子同士を接触させて磁性酸化物の微粒子と鉄粒子に分離させる鉄粒子再生手段と、を備えたものである。
【0009】
また、本観点において、限定されるわけではないが、鉄粒子再生手段は、被覆鉄粒子に対して研磨を行う研磨装置であることが好ましい。
【0010】
また、本観点において、限定されるわけではないが、被覆鉄粒子から分離された磁性酸化物の微粒子を回収する回収手段を備えることが好ましい。
【0011】
また、本観点において、限定されるわけではないが、被覆鉄粒子分離手段は、フィルターであることが好ましい。
【0012】
また、本観点において、限定されるわけではないが、鉄粒子再生手段によって再生された鉄粒子を反応容器内に供給する鉄粒子供給手段を備えることが好ましい。
【0013】
また、本観点において、限定されるわけではないが、反応容器内に収容した酸水溶液のpHを測定するpH計を備えることが好ましい。
【0014】
また、本観点において、限定されるわけではないが、反応容器内に収容した酸水溶液に対して中和処理を行うためのアルカリ添加手段を備えることが好ましい。
【0015】
また、本観点において、限定されるわけではないが、反応容器内に収容した酸水溶液の酸化還元電位を測定する酸化還元電位計を備えることが好ましい。
【0016】
また、本観点において、限定されるわけではないが、反応容器内に酸化剤及び還元剤の少なくともいずれかを加えるための酸化還元剤添加手段を備えることが好ましい。
【0017】
また、本観点において、限定されるわけではないが、反応容器内に収容した酸水溶液の溶存酸素濃度を計測する溶存酸素計を備えることが好ましい。
【0018】
また、本観点において、限定されるわけではないが、前記反応容器内又は前記反応容器内に収容した酸水溶液に酸素を供給するための酸素供給手段を備えることが好ましい。
【0019】
また、本観点において、限定されるわけではないが、鉄粒子は、平均粒径0.5mm未満であることが好ましい。
【0020】
また、本発明の他の一観点に係る酸処理方法は、溶解物質を含有する酸水溶液と鉄粒子とを反応容器内で接触させて鉄粒子表面に磁性酸化物層を形成させて被覆鉄粒子とするステップ、被覆鉄粒子を反応容器から取り出して酸水溶液と分離するステップ、被覆鉄粒子同士を接触させて磁性酸化物の微粒子と鉄粒子に分離させるステップ、を備えるものである。
【発明の効果】
【0021】
以上、本発明によって、より効率の良い酸処理方法及びこれを実現する酸処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る酸処理装置の概略を示す図である。
図2】実施形態に係る酸処理装置の被覆鉄粒子分離手段としてのバネ状フィルター装置の概略を示す図である。
図3】実施形態に係るバネ状フィルター装置において用いるバネ状フィルターの概略を示す図である。
図4】実施形態に係る鉄粒子再生手段がバレル研磨装置である場合の概略を示す図である。
図5】実施形態に係る酸処理装置の磁性酸化物の微粒子回収手段としてのバネ状フィルター装置の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例において言及する具体的な例示にのみ限定されるわけではない。
【0024】
(酸処理装置)
図1は、本実施形態に係る酸処理装置(以下「本装置」という。)1の全体の概略を示す図である。本図で示すように、本装置1は、溶解物質を含有する酸水溶液Aと鉄粒子Fとを接触させて、鉄粒子Fの表面に強磁性酸化物層が形成された被覆鉄粒子Cを生成するための反応容器2と、反応容器2から、被覆鉄粒子Cを分離して取り出す被覆鉄粒子分離手段4と、分離された被覆鉄粒子C同士を接触させて磁性酸化物微粒子Mと鉄粒子Fに分離させる鉄粒子再生手段5と、を備えたものである。
【0025】
本装置1による効果については以後詳述する記載から明らかとなるが、本装置1によると、反応容器2内で鉄粒子Fに磁性酸化物層を形成させて被覆鉄粒子Cとした後、これを反応容器2から取り出し、被覆鉄粒子C同士を効率よく接触させることで鉄粒子Fとして再生し、より効率の良い酸処理を行うことが可能となる。
【0026】
まず、本装置1は、上記の通り、溶解物質を含有する酸水溶液Aと鉄粒子Fとを接触させて、鉄粒子Fの表面に磁性酸化物層が形成された被覆鉄粒子Cを生成するための反応容器2を備える。
【0027】
本装置1における「反応容器」は、上記の通り、酸水溶液Aを収容することができるものであり、その形状は特に限定されるわけではないが、底部材21と、この底部材21の縁を覆う側壁部材22と、を有するものであることが一般的である。なおこの反応容器2には、酸の蒸発等による飛散を防ぐ観点から蓋部材23を備えていることも好ましい。
【0028】
また、反応容器2の材質も、酸水溶液Aを収容しても損傷を受けず安定的に保持することができる限りにおいて限定されず、具体的には耐酸性の素材、例えば耐酸性のガラスや、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、等で耐酸性が付与される樹脂や、不動態を表面に形成し耐酸性が付与されるチタン、クロム、鉄(ステンレス)等の金属等を例示することができる。
【0029】
本装置1における「酸水溶液」とは、文字通り酸を含んだ水溶液である。酸水溶液Aは金属表面を加工する際の酸洗浄に用いられるものであり、具体的には塩酸、硫酸等を例示することができるがこれに限定されない。
【0030】
また、本明細書において「溶解物質」とは、文字通り、酸水溶液A中に溶解した物質のことを言う。溶解物質の種類としては、金属表面を加工する際の酸洗浄において酸水溶液Aに溶解した物質等、例えば金属や非金属が含まれる。これらの具体的な内容については、例えば非金属の場合はホウ素、フッ素、ヒ素、セレン等を例示することができ、金属の場合は銅、鉛、鉄、亜鉛、マンガン、ゲルマニウム、カドミウム、クロム、水銀等を例示することができるがこれに限定されない。
【0031】
また、本装置1では、上記の記載から明らかなように、酸水溶液A中に鉄粒子Fが投入される。本明細書において「鉄粒子」とは、文字通り、鉄によって構成された粒子である。後述するが、鉄粒子Fを酸水溶液A中に投入することで鉄粒子Fの表面が酸化し、磁性酸化物層が形成され、被覆鉄粒子Cとなるとともに、酸水溶液Aを中和し、さらに酸水溶液A中に存在している溶解物質を共沈させることが可能となる。なお、鉄粒子Fの平均粒径としては、上記の機能を実現することができる限りにおいて限定されず、例えば1mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.5mm未満である。1mm以下であることにより比表面積の上昇に伴い反応速度が加速するといった利点があり、0.5mm以下とすることでこの効果がより顕著となり、0.5mm未満とすることでさらにこの効果が顕著となる。なおここで「平均粒径」は、上記の機能を有する限りにおいて様々な基準によって定めることができるが、本明細書では、平均粒径という場合、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0032】
なお、上記の記載から明らかであるが、本明細書において「被覆鉄粒子」とは、磁性酸化物層が形成されているすなわち磁性酸化物層によって被覆されている鉄粒子をいう。すなわち、鉄粒子Fに磁性酸化物層が形成された場合、被覆鉄粒子Cとなる。また「磁性酸化物層」とは、磁性酸化物によって形成される層である。「磁性酸化物」とは、鉄の酸化物の一種であり、その化合物の多くは、強磁性酸化物と常磁性酸化物に分類される。そのうち強磁性酸化物としてはFe(マグネタイト)、MFe(フェライト)、γ-Fe(マグヘマイト)、σ-FeOOH等が示され、常磁性酸化物としてはγ-Fe(ヘマタイト)、α-FeOOH(ゲータイト)、β-FeOOH(アカガネイト)、γ-FeOOH(レピドクロサイト)等が示される。一方、後述の記載からも明らかとなるが、本装置1では、鉄粒子の表面には主として強磁性酸化物層が形成されるものであるが、例えばマグネタイト層が形成される際、上記の溶解物質が上記マグネタイトの鉄と置換されれば、フェライトとなり、置換されていないマグネタイトともに層を形成することになる。すなわち、本明細書において「磁性酸化物」とは、置換されていないマグネタイトだけでなく、フェライトも含むものである。例えば、溶解物質がマンガンである場合、MnFe3+ 等となる。また、この結果、「強磁性酸化物微粒子」には、置換されていないマグネタイトだけでなく、フェライトも含まれていることになる。
【0033】
なお、本装置1によって鉄粒子Fの周囲に形成される強磁性酸化物層を剥離した際に生じる強磁性酸化物微粒子は、例えば磁気分離機等で回収可能であり、分離回収された後は資源として再利用が可能である。ただし、被覆鉄粒子Cといえるためには、鉄粒子Fの表面が完全に強磁性酸化物層によって形成されていることは必ずしも必要ではなく、その表面積の一定の部分(例えば表面積の半分以上)が強磁性酸化物層によって覆われているものも含む。
【0034】
また、本装置1では、必須ではないが、様々な計器類3を反応容器2に設けておくことが好ましい。具体的に説明すると、まず、反応容器2内に収容した水溶液のpHを測定するpH計31を備えることが好ましい。本装置1は、著しい腐食性を有するpH2.0以下の廃酸である「特別管理産業廃棄物」を処理することができることを想定したものであるため、まずはその酸水溶液AのpHを測定することで、強磁性酸化物層の形成状況や酸水溶液AのpHに応じて直接最適な調整が可能になるといった利点がある。なおpH計31の構造としては特に限定されず、市販されているものをそのまま用いることができる。
【0035】
また、本装置1では、必須ではないが、反応容器2内に収容した酸水溶液Aに対して中和処理を行うためのアルカリ添加手段32を備えることが好ましい。上記pH計31を用いることで酸水溶液AのpHを測定することができるため、この測定したpHの値に基づき適宜アルカリを添加することでその中和を図ることが可能となる。なお、「アルカリ」としては、酸に対する中和に用いることができる限りにおいて特に限定されるわけではないが、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等の水酸化物やアンモニア等を用いることができる。また、この「アルカリ」には、上記のほか、溶解することによってアルカリにする物質、例えばカルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウム等の金属や、酸化カルシウム(CaO)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化銅(II)(CuO)等の塩基性金属酸化物も含まれる。なお、アルカリ添加手段32は、アルカリを反応容器2内に添加することができる限りにおいて限定されるわけではないが、アルカリを収容するアルカリ収容タンク321と、このアルカリ収容タンク321と反応容器2とを接続する配管322を備えており、アルカリの供給を制御するバルブ323を備えていることが好ましい。
【0036】
また、本装置1では、必須ではないが、反応容器2内に収容した酸水溶液Aに対して酸を添加するための酸添加手段33を備えることが好ましい。上記pH計31を用いることで酸水溶液AのpHを測定することができるため、この測定したpHの値が、上記のアルカリ添加手段によるアルカリの添加等によって必要以上にpHの値が大きくなってしまった場合等において、適宜酸を添加することでその微調整を図ることが可能となる。なお、「酸」としては、pHの調整に用いることができる限りにおいて特に限定されるわけではないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等を用いることができる。なお、酸添加手段33は、酸を反応容器2内に添加することができる限りにおいて限定されるわけではないが、酸を収容する酸収容タンク331と、この酸収容タンク331と反応容器2とを接続する配管332を備えており、酸の供給を制御するバルブ333を備えていることが好ましい。
【0037】
また、本装置1では、必須ではないが、反応容器2内に収容した酸水溶液Aの酸化還元電位を測定する酸化還元電位計34を備えることが好ましい。酸化還元電位を測定することで、酸水溶液Aにおける酸化還元の平衡状態を確認すること、具体的には鉄粒子Fの表面に十分に磁性酸化物層が形成されて被覆鉄粒子Cとなったか否かを判断することが可能となる。なお酸化還元電位計34の構造としては特に限定されず、市販されているものをそのまま用いることができる。
【0038】
また、本装置1では、必須ではないが、反応容器2内に酸化剤及び還元剤の少なくともいずれかを加えるための酸化還元剤添加手段35を備えることが好ましく、具体的には酸化剤添加手段351と還元剤添加手段352と、を有していることが好ましい。上記の通り、酸化還元電位を測定することで酸化還元の平衡状態を確認することができるが、この結果においてまだ十分に反応がなされていない場合は、酸化剤または還元剤を添加するための酸化還元剤添加手段35を設けておくことが好ましい。なお、ここで酸化剤としては、反応容器2内における酸化反応において酸の供給源となる物質である限りにおいて限定されず、例えば酸素、オゾン、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、次亜塩素酸塩、六価クロム等を例示することができるがこれに限定されない。また、還元剤としては、反応容器2内において自身は酸化され反応容器2内の物質を還元することができる物質である限りにおいて限定されず、例えば鉄、亜硫酸塩、シュウ酸、ギ酸等を例示することができるがこれに限定されない。なお、酸化剤添加手段351は、上記アルカリ添加手段32と同様、反応容器2内に酸化剤を添加するために、酸化剤を収容する酸化剤収容タンク3511と、この酸化剤収容タンク3511と反応容器2とを接続する配管3512を備えており、酸化剤の供給を制御するバルブ3513と、を備えていることが好ましい。
【0039】
また、本装置1では、必須ではないが、反応容器2内に収容した酸水溶液Aの溶存酸素濃度を計測する溶存酸素計36を備えることが好ましい。本装置1では被覆鉄粒子Cは磁性酸化物層が形成されるがこの磁性酸化物層は上記の通り鉄及びこの酸化物として構成される。そのため、溶存酸素濃度を調べることで、磁性酸化物層が形成される条件となっているか否かを確認し、必要に応じて酸水溶液A中に酸素を供給する酸素供給手段37を設けることとしてもよい。なお溶存酸素計36の構造としては特に限定されず、市販されているものをそのまま用いることができる。
【0040】
また、本装置1では、必須ではないが、溶存酸素計36を設けた場合に、溶存酸素が不足していると判断された場合に、上記の通り、酸水溶液A中に酸素を供給するための酸素供給手段37を設けることとしてもよい。このように酸素を酸水溶液A中に添加することで、酸素が不足して反応が十分に終わっていない場合に、この反応の効率を再び活性化させることができるようになる。なお、酸素添加手段37としては、限定されるわけではないが、反応容器中に酸素を供給するための構造として、圧縮空気タンク371と、圧縮空気タンク371と反応容器2内を接続するための配管372、配管372に設けられるバルブ373とを備えた構成であることは好ましい。圧縮空気とすることで空気中の酸素を反応容器2内に供給することが可能となる。なお、圧縮空気タンク371は、その代替として、圧縮空気を生成するコンプレッサであることも好ましい一例である。
【0041】
また、本装置1の反応容器2内においては、鉄粒子Fと酸水溶液Aとの反応を促進するための撹拌手段6を備えることが好ましい。これにより磁性酸化物層が形成された被覆鉄粒子Cを効率的に生成することが可能となる。ただし、反応容器2内においては、被覆鉄粒子C同士が接触することにより被覆鉄粒子Cから微小な磁性酸化物微粒子Mが剥離して発生してしまうとその分離に手間がかかってしまうこととなるため、被覆鉄粒子Cから磁性酸化物微粒子を剥離させるのではなく、酸水溶液A中の酸と鉄粒子Fの表面が接触して反応する程度の鉄粒子F表面に磁性酸化物層を形成する程度のみの撹拌であることが好ましい。
【0042】
撹拌手段6の具体的な構造としては、上記の機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えば撹拌羽根を回転させるモーター型や、磁石からなる回転子を磁力で回転させるマグネチック型であってもよい。図1の例では、撹拌羽根61が形成された軸62とこの軸62を回転させるモーター63で構成されたモーター型の撹拌手段である例を示している。
【0043】
また、本装置1は、上記の通り、反応容器2から、被覆鉄粒子Cを分離して取り出す被覆鉄粒子分離手段4を備える。本装置1では、反応容器2から被覆鉄粒子Cを分離することで、被覆鉄粒子C同士をより効率よく接触させることが可能となり、また、磁性酸化物微粒子Mを反応容器2内で分離した際には発生してしまう酸水溶液A、鉄粒子F、磁性酸化物微粒子Mの複雑な分離作業を行わないようにすることが可能となる。
【0044】
また、本装置1では、上記のとおり、被覆鉄粒子Cを酸水溶液Aから分離することができる限りにおいて限定されるわけではないが、例えば、被覆鉄粒子分離手段4は、フィルターであることが好ましい。なお、フィルターとする場合、ストレーナー式やバネ式等、様々な形態のフィルターを用いることができる。フィルターがバネ式である場合のイメージ図を図2に示しておく。本図で示すように、被覆鉄粒子分離手段4がフィルターである場合、一定の大きさ以上の物質を捕捉することができる一方、一定の大きさ以下の物質は捕捉せずそのまま透過させる。そのため、フィルターを用いることで、酸水溶液Aと被覆鉄粒子Cとを分離することが可能となる。
【0045】
本図で示すように、被覆鉄粒子分離手段4にフィルター、具体的にバネ状フィルターを用いる場合、例えば、バネ状フィルター41と、このバネ状フィルター41を収容する収容容器42と、収容容器42と反応容器2を接続する第一の配管43及び第二の配管44と、反応容器2から収容容器42に酸水溶液A及び被覆鉄粒子Cが流れるための流れを形成するために第一の配管43又は第二の配管44に設けられるポンプ45と、を備えるバネ状フィルター装置であることは好ましい一例である。バネ状フィルター41の表面の部分の拡大図について、図3に示しておく。本図で示すように、バネ状フィルター41は、金属製の細線411の上に微小な突起412が形成され、巻きまわされてバネ状となっているため、この微小な突起が間隙となりフィルターの役目を果たすことが可能となる。なお、上記図2からも明らかであるが、フィルターを透過した酸水溶液A自体は再び第二配管44によって反応容器2に戻されることになる。また、この例では、収容容器42には、バネ状フィルター41によって分離された被覆鉄粒子Cを回収するための被覆鉄粒子回収配管46とこの開閉を制御する弁461が備えられていることが好ましい。なお被覆鉄粒子回収配管46はこの後段の鉄粒子再生手段5に接続されており、バネ状フィルター41の周囲に残った被覆鉄粒子Cは、バネ状フィルター41からはがされた後、鉄粒子再生手段5に送られることになる。
【0046】
また、本装置1は、上記の通り、分離された被覆鉄粒子C同士を接触させて磁性酸化物微粒子Mと鉄粒子Fに分離させる鉄粒子再生手段5を備える。本装置1では、被覆鉄粒子C同士を酸水溶液Aとは分離した形、より具体的には脱液した状態で被覆鉄粒子C同士を接触させることが可能となり、液体中における非効率な接触に比べて十分効率の良い接触が可能となるといった利点がある。
【0047】
また、本装置1では、必須ではないが、鉄粒子再生手段5は、被覆鉄粒子Cに対して研磨を行う研磨装置であることが好ましい。なお、この場合のイメージ図を図4に示しておく。本図で示すように被覆鉄粒子Cに対して研磨を行うことで、磁性酸化物層を被覆鉄粒子Cから分離させて、磁性酸化物微粒子Mと再生した鉄粒子Fに分離することが可能となる。なお、再生した鉄粒子Fは、鉄粒子供給手段8によって再び反応容器2内に供給されることになる。なお、この鉄粒子再生手段5によっても再生が困難となった鉄粒子、具体的には、複数回磁性酸化物層が形成され、複数回磁性酸化物微粒子が分離されその径が小さくなり分離が困難となった鉄粒子Fは、磁性酸化物微粒子Mと一緒に回収される。
【0048】
本装置1における鉄粒子再生手段5が研磨装置である場合、その構造としては、鉄粒子Fを再生させることができる限りにおいて限定されるわけではないが、バレル研磨装置であることが好ましい。なお、バレル研磨装置の場合、振動式、磁気式、回転式、流動式、遠心式等を用いることができるが、例えば上記図4で示すような振動式であることが好ましい。振動式の場合、擂鉢状の凹みを有するバレル51と、このバレル51を支持するとともに、このバレル51に対して振動を与える振動装置52と、を備えたものであることが好ましい。この構成とすることで、バレル51に被覆鉄粒子Cが投入され、振動装置52によって振動させることでバレル51内に収容された被覆鉄粒子Cが運動し、互いに接触しあうことで磁性酸化物微粒子Mと再生された鉄粒子Fに分離することになる。
【0049】
本装置1における鉄粒子再生手段5が研磨装置である場合において、被覆鉄粒子Cに、研磨剤Pを投入することも好ましい。研磨装置においては、被覆鉄粒子C同士が接触することによりそこから磁性酸化物層が剥離し磁性酸化物微粒子として分離されることになるが、研磨剤Pを混在させることで、被覆鉄粒子Cと研磨剤Pとが接触しやすくなり、より効率的に被覆鉄粒子Cから磁性酸化物微粒子Mを分離させることが可能となるといった利点がある。研磨剤Pとしては、この機能を有する限りにおいて特に限定されるわけではないが、例えばセラミック粒子であることが好ましく、この粒子の大きさとしては例えば平均粒径0.5mm以上3mm以下の範囲にあることが好ましい。なおこの平均粒径の計測については、後述の鉄粒子Fと同様の計測基準により求められるものであることが好ましい。具体的に、本明細書では、平均粒径という場合、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0050】
また、本装置1では、被覆鉄粒子Cから分離された磁性酸化物微粒子Mを回収する磁性酸化物微粒子回収手段7を備えることが好ましい。上記の通り、本装置1によると、被覆鉄粒子Cは、再生された鉄粒子Fと磁性酸化物微粒子Mに分離される。鉄粒子Fは再び反応容器2に投入可能であるが、磁性酸化物微粒子Mは今後本装置1によって再利用されることはない。そのため、磁性酸化物微粒子Mを回収する手段を設けておくことで、磁性酸化物微粒子Mを資源化することが可能となるといった利点がある。ここで図5に、本装置1における磁性酸化物微粒子回収手段(回収装置)7を示しておく。なお本装置1において、上記鉄粒子再生手段5において磁性酸化物微粒子Mと鉄粒子Fが分離できている場合は回収手段7は不要であるが、単に鉄粒子再生手段5において磁性酸化物微粒子Mと鉄粒子Fの分離が十分でない場合は、この磁性酸化物微粒子回収手段7がその分離を行う構成となっていることが好ましい。またこの場合、鉄粒子再生手段5と磁性酸化物微粒子回収手段7は配管73によって接続されていることが好ましい。これにより、分離された磁性酸化物微粒子Mと再生された鉄粒子Fはともに磁性酸化物微粒子回収手段7に送られることになる。
【0051】
本図で示すように、磁性酸化物微粒子回収手段7としては、上記の被覆鉄粒子分離手段4と同様の構成を採用することができる。例えば、バネ状フィルター71と、このバネ状フィルター71を収容する収容容器72と、鉄粒子再生手段5と収容容器72を接続する第一の配管73及び鉄粒子供給手段8と収容容器72を接続する第二の配管74と、鉄粒子再生手段5から収容容器72に液体を加えながら磁性酸化物微粒子M及び鉄粒子Fが流れるための流れを形成するためのポンプ75と、バネ状フィルター71を透過した磁性酸化物微粒子を送るための磁性酸化物微粒子回収配管76及び磁性酸化物微粒子Mを収容する磁性酸化物微粒子収容容器77と、を備えるバネ状フィルター装置であることは好ましい一例である。このバネ状フィルター71の間隙を鉄粒子Fは通さないが磁性酸化物微粒子Mは透過する程度の大きさとし、このバネ状フィルター71の表面に再生した鉄粒子Fを残存させ、バネ状フィルター71を透過した磁性酸化物微粒子Mを回収することとすれば、この磁性酸化物微粒子Mを効率的に回収することが可能となる。なお、上記図5からも明らかであるが、フィルターを透過した水などの液体は、磁性酸化物微粒子Mを送るために用いられるものであり、そのまま廃棄することが可能である。また、この例では、収容容器72に、バネ状フィルター71によって分離された磁性酸化物微粒子Mを回収するための磁性酸化物微粒子回収配管76が備えられていることが好ましい。これにより磁性酸化物微粒子Mを回収可能である。
【0052】
また、本装置1では、鉄粒子再生手段5によって再生され、磁性酸化物微粒子回収手段7によって磁性酸化物微粒子Mと分離された鉄粒子Fを反応容器2内に供給する鉄粒子供給手段8を備えることが好ましい。鉄粒子供給手段8を設けることで、再び上記反応容器2を用いる磁性酸化物層の形成を行うことができるようになる。この鉄粒子供給手段8としては特に限定されるわけではないが、例えば鉄粒子Fを収容する収容容器81と、収容容器81と反応容器2とを接続する配管82と、反応容器2内に鉄粒子Fを供給するためのポンプ等の駆動手段83と、を有する構成であることが好ましい。
【0053】
また、本装置1では、再生した鉄粒子Fは、最初に反応容器2内に投入された時点よりも小さくなっているが、表面から磁性酸化物層がはがれた状態となり、最初に投入された状態と同様であるため、再び反応容器2内の酸水溶液Aと反応し中和させることが可能となる。この再生は、上記の磁性酸化物微粒子回収手段7によって磁性酸化物微粒子Mと一緒に回収されるまで続けることが可能である。この結果、鉄粒子Fを無駄なく利用することができる。
【0054】
(酸処理方法)
以上の通り、本装置1を用いることで、反応容器2内で鉄粒子Fに磁性酸化物層を形成させて被覆鉄粒子Cとした後、これを反応容器2から取り出し、被覆鉄粒子C同士を効率よく接触させることで鉄粒子として再生させることで、より効率の良い酸処理方法を提供することが可能となる。すなわち、発明の他の一観点に係る酸処理方法(以下「本方法」という。)は、(S1)溶解物質を含有する酸水溶液と鉄粒子とを反応容器2内で反応させて鉄粒子表面に磁性酸化物層を形成させるステップ、(S2)被覆鉄粒子を反応容器から分離して取り出すステップ、(S3)被覆鉄粒子同士を接触させて磁性酸化物微粒子と再生鉄粒子に分離させるステップ、を備えるものである。
【0055】
まず、本方法は、(S1)溶解物質を含有する酸水溶液と鉄粒子とを反応容器内で反応させて鉄粒子表面に磁性酸化物層を形成させて被覆鉄粒子とするステップ(以下単に「ステップ(S1)」ともいう。)を有する。本ステップ(S1)では、上記の通り、計器類3を設け、これら計器類の出力を確認し、鉄粒子表面に十分に磁性酸化物層が形成される条件になっているか否か、磁性酸化物層が十分に形成されているか否かを確認することが好ましい。
【0056】
また本ステップ(S1)は、反応容器内の水溶液中において行われるが、その温度は、鉄粒子表面に磁性酸化物層を効率的に形成することができる限りにおいて特に限定されない。具体的には室温で行うことが簡便であり好ましく、より具体的には20℃以上30℃以下の範囲で行われることが好ましい。
【0057】
また、本ステップ(S1)を実行するにあたり、磁性酸化物層を十分に形成できる条件とするため、本方法では上記ステップ(S1)の前に、(S0)酸水溶液にアルカリを添加して一次調整を行うステップ(以下「ステップ(S0)」ともいう。)、を有することが好ましい。これにより、上記の通り、磁性酸化物層を鉄粒子表面に効率的に形成させることが可能となる。より具体的には、酸水溶液がpH1未満である場合、pH1.5~2.5の範囲となるまでアルカリを添加することが好ましい。
【0058】
反応容器内に鉄粒子が供給されると、酸化還元反応が進み被覆鉄粒子が生成されて行く。ここで酸水溶液のpHは反応の進行とともに中性付近まで上昇するが、最終pHが6以下に留まる場合は、さらにアルカリを添加して最終pHを7~8に調整することで被覆鉄粒子の生成が促進される効果が得られる。
【0059】
また、本方法は(S2)被覆鉄粒子を反応容器から取り出して酸水溶液と分離するステップ(以下単に「ステップ(S2)」ともいう。)を備える。上記の通り、本装置を用いて行う場合、被覆鉄粒子分離手段によって実現することができる。そしてこの具体的な例は、上記の通り、バネ式フィルターやストレーナー式フィルターといったフィルターであることが好ましい。なお、被覆鉄粒子Cは、分離する際、水分を十分に除去しておくことが好ましい。水分を十分に除去することで、接触効率を向上させることが可能となる。
【0060】
また、本方法のステップ(S1)によると、被覆鉄粒子Cが形成されることになる。被覆鉄粒子Cは酸水溶液に不溶であるため、上記の通りステップ(S2)において、フィルター等によって分離することができるが、この分離をより効率的に行うため、(S12)酸水溶液に凝集剤を用いて被覆鉄粒子等を凝集させるステップ、を備えていることが好ましい。本ステップによると、被覆鉄粒子C等を凝集させることでより大きな粒子塊とすることが可能となり、酸水溶液との分離がより容易になるといった利点がある。
【0061】
また、本方法は(S3)被覆鉄粒子同士を接触させて磁性酸化物微粒子と鉄粒子に分離させるステップ(以下「ステップ(S3)」ともいう。)を備える。本ステップ(S3)の結果、分離した磁性酸化物微粒子は回収後、必要に応じて資源として活用することが可能となる一方、再生された鉄粒子は再び上記ステップ(S1)に組み込まれるため反応容器に投入されることになる。すなわち、本方法では、本ステップ(S3)の後、(S4)分離した鉄粒子を再び前記酸水溶液に投入するステップ、を備えていることが好ましい。
【0062】
以上、本発明によって、より効率の良い溶解物質を含有する酸処理方法及びこれを実現する酸処理装置を提供することができる。より具体的には、本発明に係る酸処理方法によると、まず酸水溶液と鉄粒子とを反応させて被覆鉄粒子を形成する。被覆鉄粒子は不溶であるため、酸水溶液と容易に分離することができる。そして、被覆鉄粒子と酸水溶液を分離させることで、被覆鉄粒子から磁性酸化物微粒子と鉄粒子を効率的に分離することが可能となる。また、本発明では、酸水溶液、磁性酸化物微粒子、被覆鉄粒子、鉄粒子の混在を避けつつ分離回収するものであるため、分離の精度が高く、信頼性が高いといった利点もある。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、溶解物質を含有する酸処理装置及び酸処理方法として産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0064】
1…酸処理装置
2…反応容器
3…被覆鉄粒子分離手段
4…鉄粒子再生手段
A…酸水溶液
F…鉄粒子
C…被覆鉄粒子
M…磁性酸化物微粒子


図1
図2
図3
図4
図5