(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141772
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ゴム組成物、加硫成形体、及びゴムロール
(51)【国際特許分類】
C08L 11/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C08L11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053595
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和也
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC091
4J002GC00
4J002GJ02
4J002GM01
4J002GN00
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】優れた耐水性及び耐アルカリ性を有する加硫成形体を得ることができるゴム組成物を提供する。
【解決手段】本発明によれば、ゴム成分を含むゴム組成物であって、前記ゴム組成物の試験用加硫成形体1を、厚み6.0mm以上になるまで重ねた積層体の、JIS K 6253-3:2023に基づきタイプAデュロメータで測定した硬さをXとし、前記ゴム組成物の試験用加硫成形体2を、JIS K 6265:2018に基づき、40℃、歪み0.175インチ、荷重55ポンド、振動数毎分1,800回の条件で、定ひずみフレクソメーター試験で評価することにより求めた発熱をYとしたとき、硬さXと発熱Yが、以下の式(1)を満たし、前記試験用加硫成形体1は、前記ゴム組成物をJIS K 6299:2012に基づき、170℃、20分の条件でプレス加硫して得た、厚さ2mmのシート状の加硫成形体であり、前記試験用加硫成形体2は、前記ゴム組成物を170℃、20分の条件でプレス加硫して得た、直径15mm、高さ25mmの円柱状の加硫成形体である、ゴム組成物が提供される。
1.4X-Y>20.0 (1)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分を含むゴム組成物であって、
前記ゴム組成物の試験用加硫成形体1を、厚み6.0mm以上になるまで重ねた積層体の、JIS K 6253-3:2023に基づきタイプAデュロメータで測定した硬さをXとし、
前記ゴム組成物の試験用加硫成形体2を、JIS K 6265:2018に基づき、40℃、歪み0.175インチ、荷重55ポンド、振動数毎分1,800回の条件で、定ひずみフレクソメーター試験で評価することにより求めた発熱をYとしたとき、
硬さXと発熱Yが、以下の式(1)を満たし、
前記試験用加硫成形体1は、前記ゴム組成物をJIS K 6299:2012に基づき、170℃、20分の条件でプレス加硫して得た、厚さ2mmのシート状の加硫成形体であり、
前記試験用加硫成形体2は、前記ゴム組成物を170℃、20分の条件でプレス加硫して得た、直径15mm、高さ25mmの円柱状の加硫成形体である、
ゴム組成物。
1.4X-Y>20.0 (1)
【請求項2】
前記硬さXが、40以上、98以下である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分は、クロロプレン系重合体を含む、請求項1又は請求項2記載の、ゴム組成物。
【請求項4】
前記クロロプレン系重合体は、前記クロロプレン系重合体100質量%に対して、クロロプレン単量体単位を70~85質量%含む、請求項3に記載の、ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のゴム組成物の、加硫成形体。
【請求項6】
ゴムロールであって、
芯金と、前記芯金の周面に設けられた表面層を具備し、
前記表面層が請求項5に記載の加硫成形体を含み、
前記ゴムロールは、酸洗浄ライン及びアルカリ洗浄ラインのうち少なくとも1つで用いられる、ゴムロール。
【請求項7】
ゴム成分を含む加硫成形体であって、
前記加硫成形体を厚み6.0mm以上の試験用加硫成形体1'とした際、JIS K 6253-3:2023に基づきタイプAデュロメータで測定した硬さをX'とし、
前記加硫成形体を直径15mm、高さ25mmの円柱状の試験用加硫成形体2'とした際、JIS K 6265:2018に基づき、40℃、歪み0.175インチ、荷重55ポンド、振動数毎分1,800回の条件で、定ひずみフレクソメーター試験で評価することにより求めた発熱をY'としたとき、
硬さX'と発熱Y'が、以下の式(2)を満たす、加硫成形体。
1.4X'-Y'>20.0 (2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、加硫成形体、及びゴムロールに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム製品は、一般産業用の伝動ベルトやコンベアベルト、自動車用空気バネ、防振ゴム、ホース、ワイパー、浸漬製品、シール部品、接着剤、ブーツ、ゴム引布、ゴムロールなどの材料として広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、硫黄変性クロロプレンゴム、加硫促進剤、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなり、上記加硫促進剤の配合量が0.1~5重量部であり、酸化亜鉛の配合量及び酸化マグネシウムの配合量が、それぞれの配合量とムーニースコーチ時間tとの予め求めた関係式により特定される、硫黄変性クロロプレンゴム組成物に係る発明が開示されている。
また、特許文献2には、ムーニー粘度ML(1+4)100℃が20~80であり、特定の構造の官能基を有する、クロロプレン単量体と不飽和ニトリル化合物の共重合体に係る発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-209522号公報
【特許文献2】国際公開第2020/044899号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のゴム組成物は、該組成物の加硫成形体における耐水性及び耐アルカリ性に改善の余地があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、優れた耐水性及び耐アルカリ性を有する加硫成形体を得ることができるゴム組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ゴム成分を含むゴム組成物であって、前記ゴム組成物の試験用加硫成形体1を、厚み6.0mm以上になるまで重ねた積層体の、JIS K 6253-3:2023に基づきタイプAデュロメータで測定した硬さをXとし、前記ゴム組成物の試験用加硫成形体2を、JIS K 6265:2018に基づき、40℃、歪み0.175インチ、荷重55ポンド、振動数毎分1,800回の条件で、定ひずみフレクソメーター試験で評価することにより求めた発熱をYとしたとき、硬さXと発熱Yが、以下の式(1)を満たし、前記試験用加硫成形体1は、前記ゴム組成物をJIS K 6299:2012に基づき、170℃、20分の条件でプレス加硫して得た、厚さ2mmのシート状の加硫成形体であり、前記試験用加硫成形体2は、前記ゴム組成物を170℃、20分の条件でプレス加硫して得た、直径15mm、高さ25mmの円柱状の加硫成形体である、ゴム組成物が提供される。
1.4X-Y>20.0 (1)
【0008】
本発明者は、鋭意検討を行ったところ、ゴム組成物の試験用加硫成形体1の硬さXと、ゴム組成物の試験用加硫成形体2の発熱Yが特定の関係を満たすよう、ゴム組成物の配合を調整することにより、優れた耐水性及び耐アルカリ性の加硫成形体を得ることができるゴム組成物となることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0010】
[1]ゴム成分を含むゴム組成物であって、前記ゴム組成物の試験用加硫成形体1を、厚み6.0mm以上になるまで重ねた積層体の、JIS K 6253-3:2023に基づきタイプAデュロメータで測定した硬さをXとし、前記ゴム組成物の試験用加硫成形体2を、JIS K 6265:2018に基づき、40℃、歪み0.175インチ、荷重55ポンド、振動数毎分1,800回の条件で、定ひずみフレクソメーター試験で評価することにより求めた発熱をYとしたとき、硬さXと発熱Yが、以下の式(1)を満たし、前記試験用加硫成形体1は、前記ゴム組成物をJIS K 6299:2012に基づき、170℃、20分の条件でプレス加硫して得た、厚さ2mmのシート状の加硫成形体であり、前記試験用加硫成形体2は、前記ゴム組成物を170℃、20分の条件でプレス加硫して得た、直径15mm、高さ25mmの円柱状の加硫成形体である、ゴム組成物。
1.4X-Y>20.0 (1)
[2]前記硬さXが、40以上、98以下である、[1]に記載のゴム組成物。
[3]前記ゴム成分は、クロロプレン系重合体を含む、[1]又は[2]記載の、ゴム組成物。
[4]前記クロロプレン系重合体は、前記クロロプレン系重合体100質量%に対して、クロロプレン単量体単位を70~85質量%含む、[3]に記載の、ゴム組成物。
[5][1]~[4]に記載のゴム組成物の、加硫成形体。
[6]ゴムロールであって、芯金と、前記芯金の周面に設けられた表面層を具備し、前記表面層が[5]に記載の加硫成形体を含み、前記ゴムロールは、酸洗浄ライン及びアルカリ洗浄ラインのうち少なくとも1つで用いられる、ゴムロール。
[7]ゴム成分を含む加硫成形体であって、前記加硫成形体を厚み6.0mm以上の試験用加硫成形体1'とした際、JIS K 6253-3:2023に基づきタイプAデュロメータで測定した硬さをX'とし、前記加硫成形体を直径15mm、高さ25mmの円柱状の試験用加硫成形体2'とした際、JIS K 6265:2018に基づき、40℃、歪み0.175インチ、荷重55ポンド、振動数毎分1,800回の条件で、定ひずみフレクソメーター試験で評価することにより求めた発熱をY'としたとき、硬さX'と発熱Y'が、以下の式(2)を満たす、加硫成形体。
1.4X'-Y'>20.0 (2)
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るゴム組成物によれば、優れた耐水性及び耐アルカリ性を有する加硫成形体を得ることができる。また、本発明に係る加硫成形体は、優れた耐水性及び耐アルカリ性を有するため、これらの特性を活かし、耐水性及び/又は耐アルカリ性等が必要とされる様々な部材、例えば、ゴムロールとして用いることができる。本発明の一実施形態に係るゴムロールは、耐水性及び耐アルカリ性に優れ、例えば、酸洗浄ライン及びアルカリ洗浄ラインのうち少なくとも1つのゴムロールとして利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を例示して本発明について詳細な説明をする。本発明は、これらの記載によりなんら限定されるものではない。以下に示す本発明の実施形態の各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0013】
1.ゴム組成物
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分を含む。
【0014】
1.1 ゴム成分
本発明に係るゴム成分は、クロロプレン系ゴム、天然ゴム(NR)、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(H-NBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)から選ばれる少なくとも一種を含むことができる。ゴム成分は、クロロプレン系ゴム、及び天然ゴム(NR)から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、クロロプレン系ゴムを含むことが好ましく、すなわち、クロロプレン系重合体を含むことが好ましい。
【0015】
1.1.1 クロロプレン系ゴム
本発明に係るクロロプレン系ゴムは、クロロプレン(2-クロロ-1,3-ブタジエン)を単量体単位(単量体単位=構造単位)として有するクロロプレン系重合体を含むゴムを示す。クロロプレン系重合体としては、クロロプレンの単独重合体、クロロプレンの共重合体(クロロプレンと、クロロプレンに共重合可能な単量体との共重合体)等が挙げられる。クロロプレン系重合体のポリマー構造は、特に限定されるものではない。
【0016】
なお、市販品の2-クロロ-1,3ブタジエンには不純物として少量の1-クロロ-1,3-ブタジエンが含まれる場合がある。このような少量の1-クロロ-1,3-ブタジエンを含む2-クロロ-1,3ブタジエンを、本実施形態のクロロプレン単量体として用いることもできる。
【0017】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体は、クロロプレン単量体以外の単量体に由来する単量体単位を有するものとできる。クロロプレン単量体以外の単量体としては、クロロプレン単量体と共重合可能であれば特に制限はないが、不飽和ニトリル、(メタ)アクリル酸のエステル類((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等)、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、エチレン、スチレン、硫黄等が挙げられる。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体は、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン及び不飽和ニトリル単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体単位を含むことができる。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体は、不飽和ニトリル単量体単位を含むことができる。
【0018】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体は、クロロプレン系重合体を100質量%としたとき、不飽和ニトリル単量体単位の含有率を15~30質量%とでき、20~25質量%以下であることが特により好ましい。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ゴムにおける不飽和ニトリル単量体単位の含有率は、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ゴム組成物中の不飽和ニトリル単量体単位の含有率を上記上限以下とすることにより、ゴム組成物の加硫成形体の耐水性及び耐寒性がより向上する。また、不飽和ニトリル単量体単位を含むことにより、ゴム組成物の加硫成形体の耐油性が向上する。
【0019】
不飽和ニトリルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル等が挙げられる。不飽和ニトリルは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。不飽和ニトリルは、優れた成形性が得られやすい観点、並びに、加硫成形体において優れた破断強度、破断伸び、硬さ、引き裂き強度、耐油性が得られやすい観点から、アクリロニトリルを含むことが好ましい。
【0020】
クロロプレン系ゴムに含まれる不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、クロロプレン系ゴム中の窒素原子の含有量から算出することができる。具体的には、元素分析装置(スミグラフ220F:株式会社住化分析センター製)を用いて100mgのクロロプレン系ゴムにおける窒素原子の含有量を測定し、不飽和ニトリル単量体由来の構造単位の含有量を算出できる。元素分析の測定は次の条件で行うことができる。例えば、電気炉温度として反応炉900℃、還元炉600℃、カラム温度70℃、検出器温度100℃に設定し、燃焼用ガスとして酸素を0.2mL/min、キャリアーガスとしてヘリウムを80mL/minフローする。検量線は、窒素含有量が既知のアスパラギン酸(10.52%)を標準物質として用いて作成できる。
【0021】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体は、クロロプレン系重合体を100質量%としたとき、クロロプレン単量体単位を70質量%以上含むことができ、70~85質量%含むことが好ましい。クロロプレン系重合体におけるクロロプレン単量体単位の含有率は、例えば、70、75、80、85、90、95、99、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。クロロプレン単量体単位の含有率を上記数値範囲内とすることにより、硬度、引張強度、及び耐寒性のバランスに優れる成形体を得ることができるゴム組成物とすることができる。
【0022】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体は、クロロプレン系重合体を100質量%としたとき、クロロプレン単量体単位及び不飽和ニトリル単量体単位以外の単量体単位を0~20質量%含むことができる。クロロプレン系重合体におけるクロロプレン単量体単位及び不飽和ニトリル単量体単位以外の単量体単位の含有率は、例えば、0、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。クロロプレン単量体及び不飽和ニトリル単量体以外の単量体の共重合量を上記範囲に調整することで、得られるゴム組成物の特性を損なわずに、これらの単量体を共重合させたことによる効果を発現することができる。
【0023】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ゴムは、クロロプレンの単独重合体、クロロプレン単量体単位と不飽和ニトリル単量体単位を含む共重合体、及びクロロプレン単量体単位と2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン単量体単位を含む共重合体から選ばれる少なくとも1種の重合体を含むことができる。
【0024】
本発明に係るゴム成分は、クロロプレン系ゴムを、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の一実施形態に係るゴム組成物が、2種以上のクロロプレン系ゴムを含む場合、ゴム組成物に含まれる2種以上のクロロプレン系重合体の合計100質量%に対して、2種以上のクロロプレン系重合体に含まれる各単量体単位の合計量に基づく含有率が上記数値範囲内であることが好ましい。
【0025】
本発明に係るクロロプレン系ゴムに含まれるクロロプレン系重合体(クロロプレンの単独重合体、クロロプレンの共重合体等)は、硫黄変性クロロプレン重合体、メルカプタン変性クロロプレン重合体、キサントゲン変性クロロプレン重合体、ジチオカルボナート系クロロプレン重合体、トリチオカルボナート系クロロプレン重合体、カルバメート系クロロプレン重合体などであってよい。
【0026】
1.1.2 クロロプレン系ゴムの製造方法
本発明に係るクロロプレン系ゴムの製造方法は特に限定されないが、クロロプレン単量体を含む原料単量体を乳化重合する乳化重合工程を含む製造方法によって得ることができる。
本発明の一実施形態に係る乳化重合工程では、クロロプレン単量体、又は、クロロプレン単量体及び他の単量体を含む原料単量体を、乳化剤や分散剤や触媒や連鎖移動剤等を適宜に用いて乳化重合させ、目的とする最終転化率に達した際に重合停止剤を添加してクロロプレン単量体単位を含むクロロプレン系重合体を含むラテックスを得ることができる。次に、乳化重合工程により得られた重合液から、未反応単量体の除去を行うことができる。その方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スチームストリッピング法が挙げられる。その後、pHを調整し、常法の凍結凝固、水洗、熱風乾燥などの工程を経て、クロロプレン系重合体を含むクロロプレン系ゴムを得ることができる。
【0027】
乳化重合する場合に用いる重合開始剤としては、特に制限はなく、クロロプレンの乳化重合に一般に用いられる公知の重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物などが挙げられる。
【0028】
乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、特に制限はなく、クロロプレンの乳化重合に一般に用いられる公知の乳化剤を用いることができる。乳化剤としては、炭素数が6~22の飽和又は不飽和の脂肪酸のアルカリ金属塩、ロジン酸又は不均化ロジン酸のアルカリ金属塩(例えばロジン酸カリウム)、β-ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物のアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩)等が挙げられる。
【0029】
乳化重合する場合に用いる分子量調整剤としては、特に制限はなく、クロロプレンの乳化重合に一般に用いられる公知の分子量調整剤を用いることができ、例えば、メルカプタン系化合物、キサントゲン系化合物、ジチオカルボナート系化合物、トリチオカルボナート系化合物及びカルバメート系化合物がある。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ゴムの分子量調整剤としては、キサントゲン系化合物、ジチオカルボナート系化合物、トリチオカルボナート系化合物及びカルバメート系化合物を好適に使用できる。
【0030】
重合温度及び単量体の最終転化率は特に制限するものではないが、重合温度は、例えば0~50℃又は10~50℃であってよい。単量体の最終転化率が40~95質量%の範囲に入るように重合を行ってよい。最終転化率を調整するためには、所望する転化率になった時に、重合反応を停止させる重合停止剤を添加して重合を停止させればよい。
【0031】
重合停止剤としては、特に制限はなく、クロロプレンの乳化重合に一般に用いられる公知の重合停止剤を用いることができる。重合停止剤としては、フェノチアジン(チオジフェニルアミン)、4-t-ブチルカテコール、2,2-メチレンビス-4-メチル-6-t-ブチルフェノール等が挙げられる。
【0032】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ゴムは、例えば、スチームストリッピング法によって未反応の単量体を除去した後、上記ラテックスのpHを調整し、常法の凍結凝固、水洗、熱風乾燥等の工程を経て得ることができる。
【0033】
クロロプレン系ゴムは、分子量調整剤の種類によりメルカプタン変性タイプ、キサントゲン変性タイプ、硫黄変性タイプ、ジチオカルボナート系タイプ、トリチオカルボナート系タイプ及びカルバメート系タイプに分類される。
【0034】
1.2 有機過酸化物
本発明に係るゴム組成物は、有機過酸化物を含むことができる。有機過酸化物は、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
【0035】
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4-t-ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロへキシル)プロパン、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)バレレート、1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、p-メンタンヒドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイドなどがある。この中でも、ジクミルパーオキサイド、1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、t-ブチルα-クミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特に好ましくは1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼンである。
【0036】
本発明に係るゴム組成物は、加工安全性が確保され、良好な加硫成形体を得ることができる観点から、ゴム組成物に含まれるゴム成分に対して、有機過酸化物を0~5質量部含むことが好ましい。有機過酸化物の含有量は、例えば、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2,3,4,5質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、有機過酸化物を配合せず、他の成分の種類の及び配合量を調整することで、硬さX及び発熱Y並びに硬さXと発熱Yの関係を調整することもできる。
【0037】
1.3 加硫剤
本発明に係るゴム組成物は、加硫剤を含むことができる。加硫剤の種類は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されない。加硫剤は、クロロプレン系ゴムの加硫に用いることができる加硫剤であることが好ましい。加硫剤は、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。加硫剤としては、酸化亜鉛を挙げることができる。
【0038】
本発明に係るゴム組成物は、加工安全性が確保され、十分に加硫された加硫成形体を得ることができる観点から、ゴム組成物に含まれるゴム成分に対して、加硫剤を1~15質量部含むことが好ましい。加硫剤の含有量は、ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対して、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0039】
1.4 受酸剤
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は受酸剤を含むことができる。受酸剤としては、ハイドロタルサイト類化合物、マグネシウム・アルミニウム系固溶体、酸化マグネシウム、酸化鉛、四酸化三鉛、三酸化鉄、二酸化チタン、酸化カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことができ、ハイドロタルサイト類化合物、マグネシウム・アルミニウム系固溶体、酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことができ、酸化マグネシウムを含むことが好ましい。受酸剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
ハイドロタルサイトとしては、下記式で表されるものを用いることができる。
[M2+
1-xM3+
x(OH)2]x+[An-x/n・mH2O]x-
【0041】
上記式において、
M2+:Mg2+、Zn2+などから選ばれる少なくとも一つの2価金属イオン
M3+:Al3+、Fe3+などから選ばれる少なくとも一つの3価金属イオン
An-:Co3
2-、Cl―、NO3
2-などから選ばれる少なくとも一つのn型アニオン
X:0<X≦0.33とすることができる。
【0042】
ハイドロタルサイトとしては、Mg4.3Al2(OH)12.6CO3・3.5H2O、Mg3ZnAl2(OH)12CO3・3H2O、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O、Mg4.5Al2(OH)13CO3、Mg4Al2(OH)12CO3・3.5H2O、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、Mg5Al2(OH)14CO3・4H2O、Mg3Al2(OH)10CO3・1.7H2Oなどがあげられ、特に好ましくは、Mg4.3Al2(OH)12.6CO3・3.5H2O、Mg3ZnAl2(OH)12CO3・3H2Oである。
【0043】
受酸剤の添加量は、ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対して、0.1~15質量部とすることができる。受酸剤の添加量は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0044】
1.5 マレイミド化合物
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、マレイミド化合物を含有することができる。マレイミド化合物は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
マレイミド化合物は、共架橋剤として、ゴム組成物の加硫に寄与することができる。マレイミド化合物としては、例えば、N,N'-o-フェニレンビスマレイミド、N,N'-m-フェニレンビスマレイミド、N,N'-p-フェニレンビスマレイミド、N,N'-(4,4'-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、2,2-ビス-[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビスフェノール A ジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3'-ジメチル-5,5'-ジエチル-4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6'-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサンを挙げることができる。得られる加硫物及び加硫成形体の耐熱性が向上するという観点から、特に好ましくはN,N'-m-フェニレンビスマレイミド(別名m-フェニレンジマレイミド)を用いるとよい。
【0046】
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対してマレイミド化合物を0~10質量部含有することができる。マレイミド化合物の含有量は、例えば、0、0.1、0.2、0.3、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。マレイミド化合物の含有量を上記下限以上とすることで、得られるゴム組成物の加硫がより十分に進行し、機械的特性や耐熱性が良好な加硫成形体を得ることができる。また、マレイミド化合物の含有量を上記上限以下とすることで、得られる加硫成形体のゴム弾性を十分に維持することができる。また、本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、マレイミド化合物を配合せず、他の成分の種類の及び配合量を調整することで、硬さX及び発熱Y並びに硬さXと発熱Yの関係を調整することもできる。
【0047】
1. 6 充填材
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は充填材を含むことができ、カーボンブラックを含むことができる。カーボンブラックとしては、SAF、ISAF、HAF、EPC、XCF、FEF、GPF、HMF、SRFなどのファーネスカーボンブラック、親水性カーボンブラックなどの改質カーボンブラック、チャンネルブラック、油煙ブラック、FT、MTなどのサーマルカーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラックをあげることができる。
【0048】
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対し、カーボンブラックを0質量部以上、100質量部未満含むことができる。カーボンブラックの含有量は、例えば、0、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0049】
また、本発明に係るゴム組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、カーボンブラック以外の充填材を含むこともできる。カーボンブラック以外の充填材としては湿式シリカフィラー(含水ケイ酸)、乾式シリカフィラー(無水ケイ酸)、コロイダルシリカフィラー等のシリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムを挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、ゴム成分を100質量部としたとき、ゴム組成物に含まれるカーボンブラック及びカーボンブラック以外の充填材(補強材)の合計が0~100質量部であることが好ましい。本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、ゴム組成物に含まれるカーボンブラック及びカーボンブラック以外の充填材(補強材)の合計を100質量%としたとき、カーボンブラック以外の充填材・補強材の含有率を50質量%以下とすることができる。カーボンブラック以外の充填材・補強材の含有率は、例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、カーボンブラック以外の充填材(補強材)を含まないこともできる。また、本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、カーボンブラック及びカーボンブラック以外の充填材を配合せず、他の成分の種類の及び配合量を調整することで、硬さX及び発熱Y並びに硬さXと発熱Yの関係を調整することもできる。
【0051】
1.7 シランカップリング剤
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、充填材としてシリカを含む場合、シランカップリング剤を含むことができる。シランカップリング剤としては、特に制限はなく、市販のゴム組成物に使用されているものが使用でき、例えば、ビニル系カップリング剤、エポキシ系カップリング剤、スチリル系カップリング剤、メタクリル系カップリング剤、アクリル系カップリング剤、アミノ系カップリング剤、ポリスルフィド系カップリング剤、メルカプト系カップリング剤がある。特に、耐スコーチ性や補強効果の観点から架橋時の高温条件下で反応が開始されるビニル系カップリング剤、メタクリル系カップリング剤、アクリル系カップリング剤が好ましい。
【0052】
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、ゴム組成物に含まれシリカ100質量部に対して、シランカップリング剤を0.5~10質量部含むことができる。シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。シリカは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記のシランカップリング剤を含み、また、シランカップリング剤の含有率を上記数値範囲内とすることにより、ゴム中へのシリカフィラーの分散性やゴムとシリカフィラー間の補強効果を向上させ、かつ、スコーチの発生を抑制することができる。
【0053】
1.8 滑剤、加工助剤
本発明に係るゴム組成物は、さらに滑剤及び/又は加工助剤を含むこともできる。滑剤及び加工助剤は、主に、ゴム組成物がロールや成形金型、押出機のスクリューなどから剥離しやすくするなど、加工性を向上させるために添加する。滑剤及び加工助剤としては、ステアリン酸等の脂肪酸、ポリエチレン等のパラフィン系加工助剤、脂肪酸アミド、ワセリン、ファクチス等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、滑剤及び加工助剤を0.1~15質量部含むことができ、1~10質量部とすることもできる。滑剤・加工助剤の含有量は、例えば、0.1、0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0054】
1.9 加硫促進剤
本発明に係るゴム組成物は、加硫促進剤を含むことができ、組成物に含まれるゴム組成物を100質量部としたとき、加硫促進剤を0~5.0質量部含むことができる。加硫促進剤の含有量は、例えば、0、0.1、0.2.0.3、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、本発明に係るゴム組成物は、加硫促進剤を含まないこともできる。本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、加硫促進剤を配合せず、他の成分の種類の及び配合量を調整することで、硬さX及び発熱Y並びに硬さXと発熱Yの関係を調整することもできる。
【0055】
加硫促進剤の種類は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されない。加硫促進剤は、クロロプレン系ゴムの加硫に用いることができる加硫促進剤であることが好ましい。加硫促進剤は、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。
加硫促進剤としては、硫黄、チウラム系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、キサントゲン酸塩系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤等が挙げられる。
【0056】
チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
ジチオカルバミン酸塩系の加硫促進剤としては、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、N-エチル-N-フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等が挙げられる。
チオウレア系加硫促進剤としては、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア(N,N'-ジエチルチオウレア)、トリメチルチオウレア、ジフェニルチオウレア(N,N'-ジフェニルチオウレア)、1、3-トリメチレン-2-チオウレア等のチオウレア化合物が挙げられる。
グアニジン系加硫促進剤としては、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩等が挙げられる。
キサントゲン酸塩系加硫促進剤としては、ブチルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛等が挙げられる。
チアゾール系加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(4'-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、N-シクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド等が挙げられる。
これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
1.10 その他
本発明に係るゴム組成物は、上記した成分に加え、老化防止剤、酸化防止剤、難燃剤、加硫遅延剤等の成分を、本発明の効果を阻害しない範囲でさらに含むことができる。老化防止剤及び酸化防止剤としては、オゾン老化防止剤、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、アクリレート系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、カルバミン酸金属塩、ワックス、リン系老化防止剤、硫黄系老化防止剤などを挙げることができる。イミダゾール系老化防止剤としては、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトメチルベンゾイミダゾール及び2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩を挙げることができる。本発明に係るゴム組成物は、ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量部に対して、老化防止剤及び酸化防止剤を合計で0.1~10質量部含むことができる。
【0058】
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、ゴム組成物中の成分の種類及び含有量を上記態様とすることにより、ゴム組成物の試験用加硫成形体1の硬さXと、ゴム組成物の試験用加硫成形体2の発熱Yが式(1)の関係を満たしやすい。
【0059】
2 ゴム組成物の製造方法
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、ゴム成分及び必要とされるその他の成分を加硫温度以下の温度で混練することで得られる。本発明の一実施形態に係るゴム組成物の製造方法はゴム成分及び必要とされるその他の成分を加硫温度以下の温度で混合する混合工程を含むことができる。
【0060】
本発明の一実施形態に係る製造方法は、第1混合工程、静置工程及び第2混合工程を含むことができる。
第1混合工程では、ゴム成分及び第1混合工程用配合成分を含む原料を混合しゴム組成物前駆体を得、静置工程では、ゴム組成物前駆体を23℃以下で12時間以上静置し、第2混合工程では、静置後のゴム組成物前駆体に第2混合工程用配合成分を添加して混合しゴム組成物を得ることができる。
【0061】
第1混合工程では、ゴム成分及び第1混合工程用配合成分を含む原料を混合しゴム組成物前駆体を得る。第1混合工程用配合成分は、加硫剤、加硫促進剤、有機過酸化物、マレイミド化合物を含まないものとできる。第1混合工程用配合成分は、加硫及び架橋に寄与する成分を含まないことが好ましい。第1混合工程用配合成分は、カーボンブラック、滑剤、加工助剤、可塑剤、受酸剤、老化防止剤のうち少なくとも1種、2種、3種、4種、5種、又は6種を含むことができ、これらすべてを含んでも良い。
【0062】
静置工程では、ゴム組成物前駆体を、23℃以下で12時間以上静置する。静置温度は、例えば、5~23℃とすることができ、5、8、11、14、17、20、23℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、静置時間は、例えば、12~24時間とすることができ例えば、12、14、16、18、20、22、24時間であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態では、静置工程を経ることにより、硬さXと発熱Yを調整することができる。
【0063】
第2混合工程では、静置後のゴム組成物前駆体に第2混合工程用配合成分を添加して混合しゴム組成物を得る。第2混合工程用配合成分は、加硫剤、加硫促進剤、有機過酸化物、マレイミド化合物を含むことができる。また、第2混合工程用配合成分は、カーボンブラック、滑剤、加工助剤、可塑剤、受酸剤、老化防止剤等を含んでいても良い。
【0064】
各混合工程において、原料成分を混練する装置としては、従来公知のミキサー、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、オープンロールなどの混練装置を挙げることができる。
【0065】
3 ゴム組成物の特性
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、ゴム組成物の試験用加硫成形体1を、厚み6.0mm 以上になるまで重ねた積層体の、JIS K 6253-3:2023に基づきタイプAデュロメータで測定した硬さをXとし、前記ゴム組成物の試験用加硫成形体2を、JIS K 6265:2018に基づき、40℃、歪み0.175インチ、荷重55ポンド、振動数毎分1,800回の条件で、定ひずみフレクソメーター試験で評価することにより求めた発熱をYとしたとき、
硬さXと発熱Yが、以下の式(1)を満たす。
1.4X-Y>20.0 (1)
【0066】
ここで、試験用加硫成形体1は、ゴム組成物をJIS K 6299:2012に基づき、170℃、20分の条件でプレス加硫して得た、厚さ2mmのシート状の加硫成形体である。
また、試験用加硫成形体2は、ゴム組成物を170℃、20分の条件でプレス加硫して得た、直径15mm、高さ25mmの円柱状の加硫成形体である。
【0067】
本発明に係るゴム組成物は、ゴム組成物の加硫成形体の硬さXと、発熱Yが式(1)の関係を満たすよう、硬さX及び発熱Yを調整することで、耐水性及び耐アルカリ性に優れる加硫成形体を得ることができるゴム組成物となる。
硬さXは、後述の製造条件を調整することによって制御することができ、例えば、充填材及び可塑剤の量により、調整可能である。また、発熱Yは、後述の製造条件を調整することによって制御することができ、例えば、充填材の種類及び量と、得られる加硫成形体の架橋密度、可塑剤の種類及び量に関連し、充填材の量を増加させると、発熱Yが増大し、架橋密度が密になると、発熱Yが小さくなり、可塑剤の量を増加されると、発熱Yが増大すると考えられる。ここで、硬さX及び発熱Yの関係を、式(1)を満たすように調整すると、硬度Xにおける充填材量、可塑剤量、架橋密度等が調整され、これにより、耐水性及び耐アルカリ性に優れる加硫成形体を得ることが可能なゴム組成物を得ることができると推測される。
(1.4X-Y)の値は、20.0より大きく、50.0以下とでき、45.0以下とできる。(1.4X-Y)の値は、例えば、20.5、20.0、22.0、24.0、26.0、28.0、30.0、32.0、34.0、36.0、38.0、40.0、42.0、44.0、46.0、48.0、50.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0068】
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、ゴム組成物の試験用加硫成形体1を、厚み6.0mm 以上になるまで重ねた積層体の、JIS K 6253-3:2023に基づきタイプAデュロメータで測定した硬さXが、40~98であることが好ましい。硬さXは、例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、98であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0069】
硬さXは、ゴム組成物の製造方法、例えば、ゴム組成物中に配合する各成分の有無、種類及び配合量、特には、充填材や可塑剤の種類及び配合量、並びにゴム組成物の製造条件(特には、静置工程の有無、温度、時間)を調整することによって、制御することができる。
【0070】
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、ゴム組成物の試験用加硫成形体2を、JIS K 6265:2018に基づき、40℃、歪み0.175インチ、荷重55ポンド、振動数毎分1,800回の条件で、定ひずみフレクソメーター試験で評価することにより求めた発熱Yが、85℃以下であることが好ましい。発熱Yは、例えば、1、2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95,100℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0071】
発熱Yは、ゴム組成物の製造方法、特には、ゴム組成物中に配合する各成分の有無、種類及び配合量、例えば、充填材や加硫及び架橋に寄与する成分の有無、種類及び配合量、並びに、ゴム組成物の製造条件(特には、静置工程の有無、温度、時間)を調整することによって、制御することができる。
【0072】
硬さX及び発熱Yは、具体的には実施例に記載の方法で、評価することができる。
【0073】
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、ゴム組成物の試験用加硫成形体1及び/又は試験用加硫成形体2を、70℃の水に144時間浸漬した際の、JIS K 6258に基づき算出される体積変化率ΔVが、9%未満であることが好ましく、6%未満であることがより好ましい。70℃の水に144時間浸漬した際の体積変化率ΔVは、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8%又は9%未満であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0074】
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、ゴム組成物の試験用加硫成形体1及び/又は試験用加硫成形体2を、70℃の10%水酸化ナトリウムに144時間浸漬した際の、JIS K 6258に基づき算出される体積変化率ΔVが、10%未満であることが好ましく、7%未満であることがより好ましい。70℃の水に144時間浸漬した際の体積変化率ΔVは、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9%又は10%未満であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0075】
ゴム組成物の加硫成形体の耐水性及び耐アルカリ性は、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
【0076】
6.未加硫成形体、加硫物及び加硫成形体
本発明の一実施形態に係る未加硫成形体は、本発明の一実施形態に係るゴム組成物を用いており、本発明の一実施形態に係るゴム組成物(未加硫状態)の成形体(成形品)である。本発明の一実施形態に係る未加硫成形体の製造方法は、本発明の一実施形態に係るゴム組成物(未加硫状態)を成形する工程を備える。本発明の一実施形態に係る未加硫成形体は、本発明の一実施形態に係るゴム組成物(未加硫状態)からなる。
【0077】
本発明の一実施形態に係る加硫物は、本発明の一実施形態に係るゴム組成物の加硫物である。本発明の一実施形態に係る加硫物の製造方法は、本発明の一実施形態に係るゴム組成物を加硫する工程を備える。
【0078】
本発明の一実施形態に係る加硫成形体は、本発明の一実施形態に係るゴム組成物の加硫成形体である。本発明の一実施形態に係る加硫成形体は、本発明の一実施形態に係る加硫物を用いており、本発明の一実施形態に係る加硫物の成形体(成形品)である。本発明の一実施形態に係る加硫成形体は、本発明の一実施形態に係る加硫物からなる。
【0079】
本発明の一実施形態に係る加硫成形体は、本発明の一実施形態に係るゴム組成物(未加硫状態)を加硫して得られる加硫物を成形することにより得ることが可能であり、本発明の一実施形態に係るゴム組成物(未加硫状態)を成形して得られる成形体を加硫することにより得ることもできる。本発明の一実施形態に係る加硫成形体は、本発明の一実施形態に係るゴム組成物を成形後又は成形時に加硫することにより得ることができる。本発明の一実施形態に係る加硫成形体の製造方法は、本発明の一実施形態に係る加硫物を成形する工程、又は、本発明の一実施形態に係る未加硫成形体を加硫する工程を備える。
【0080】
本発明の一実施形態に係る加硫成形体は、該加硫成形体を厚み6.0mm以上の試験用加硫成形体1'とした際の、JIS K 6253-3:2023に基づきタイプAデュロメータで測定した硬さをX'とし、該加硫成形体を直径15mm、高さ25mmの円柱状の試験用加硫成形体2'とした際の、JIS K 6265:2018に基づき、40℃、歪み0.175インチ、荷重55ポンド、振動数毎分1,800回の条件で、定ひずみフレクソメーター試験で評価することにより求めた発熱をY'としたとき、
硬さX'と発熱Y'が、以下の式(2)を満たすことが好ましい。
1.4X'-Y'>20.0 (2)
なお、厚み6.0mm以上の試験用加硫成形体1'は、厚み6.0mm未満の加硫成形体を複数枚積層した積層体であってもよい。試験用加硫成形体1'は厚み6.0mm以上であり、7.0mm以下とできる。
【0081】
(1.4X'-Y')の値は、20.0より大きく、例えば、20.5、21.0、22.0、24.0、26.0、28.0、30.0、32.0、34.0、36.0、38.0、40.0、42.0、44.0、46.0、48.0、50.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0082】
本発明の一実施形態に係る試験用加硫成形体1'の硬さX'は、例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、98であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0083】
本発明の一実施形態に係る試験用加硫成形体2'の発熱Y'は、例えば、1、2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95,100℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0084】
本発明の一実施形態に係る加硫成形体は、70℃の水に144時間浸漬した際の、JIS K 6258に基づき算出される体積変化率ΔVが、9%未満であることが好ましく、6%未満であることがより好ましい。70℃の水に144時間浸漬した際の体積変化率ΔVは、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8%又は9%未満であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0085】
本発明の一実施形態に係る加硫成形体は、70℃の10%水酸化ナトリウムに144時間浸漬した際の、JIS K 6258に基づき算出される体積変化率ΔVが、10%未満であることが好ましく、7%未満であることがより好ましい。70℃の水に144時間浸漬した際の体積変化率ΔVは、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9%又は10%未満であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0086】
加硫成形体の硬さ、発熱、耐水性、及び耐アルカリ性は、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。また、加硫成形体の硬さ、発熱、耐水性、及び耐アルカリ性は、ゴム組成物の製造方法、例えば、ゴム組成物中に配合する各成分の有無、種類及び配合量、特には、充填材や加硫及び架橋に寄与する成分の有無、種類及び配合量、並びに、ゴム組成物の製造条件(特には、静置工程の有無、温度、時間)を調整することによって、制御することができる。
【0087】
本発明の一実施形態に係る未加硫成形体、加硫物及び加硫成形体は、建築物、構築物、船舶、鉄道、炭鉱、自動車等の各種工業分野のゴム部品として利用可能である。本発明に係るゴム組成物は、耐水性及び耐アルカリ性に優れるため、これらの特性が必要とされる様々な部材として用いることができる。本発明の一実施形態に係るゴム組成物、加硫物及び加硫成形体は、建築物、構築物、船舶、鉄道、炭鉱、自動車等の各種工業分野のゴム部品として利用可能であり、自動車用ゴム部材(例えば自動車用シール材)、ホース材、ゴム型物、ガスケット、ゴムロール、産業用ケーブル、産業用コンベアベルト、スポンジ等のゴム部品用として利用することができる。特には、伝動ベルト、コンベアベルト、ホース、ワイパー、浸漬製品、シール部品、接着剤、ブーツ、ゴム引布、ゴムロール、防振ゴムまたはスポンジ製品として用いることができる。
【0088】
(自動車用ゴム部材)
自動車用ゴム部材は、ガスケット、オイルシール及びパッキンなどがあり、機械や装置において、液体や気体の漏れや雨水や埃などのごみや異物が内部に侵入するのを防ぐ部品である。具体的には、固定用途に使われるガスケットと、運動部分・可動部分に使用されるオイルシール及びパッキンがある。シール部分がボルトなどで固定されているガスケットでは、Oリングやゴムシートなどのソフトガスケットに対して、目的に応じた各種材料が使用されている。また、パッキンは、ポンプやモーターの軸、バルブの可動部のような回転部分、ピストンのような往復運動部分、カプラーの接続部、水道蛇口の止水部などに使われる。本発明のゴム組成物は、耐水性及び耐アルカリ性を高めることができる。これにより、従来のゴム組成物では困難であった、耐油性に優れる自動車部品を製造することが可能である。
【0089】
(ホース材)
ホース材は、屈曲可能な管であり、具体的には、送水用、送油用、送気用、蒸気用、油圧用高・低圧ホースなどがある。本発明のゴム組成物は、未加硫物の加工性を維持しつつ、ホース材の耐水性及び耐アルカリ性を高めることが可能である。これにより、例えば、従来のゴム組成物では困難であった、耐水性及び耐アルカリ性に優れるホース材を製造することができる。
【0090】
(ゴム型物)
ゴム型物は、防振ゴム、制振材、ブーツなどがある。防振ゴム及び制振材は、振動の伝達波及を防止するゴムのことであり、具体的には、自動車や各種車両用のエンジン駆動時の振動を吸収して騒音を防止するためのトーショナルダンパー、エンジンマウント、マフラーハンガーなどがある。本発明のゴム組成物は、防振ゴム及び制振材の耐水性及び耐アルカリ性を高めることが可能である。これにより、従来のゴム組成物では困難であった、耐水性及び耐アルカリ性に優れる防振ゴム及び制振材を製造することができる。
また、ブーツは、一端から他端に向けて外径が次第に大きくなる蛇腹状をなす部材であり、具体的には、自動車駆動系などの駆動部を保護するための等速ジョイントカバー用ブーツ、ボールジョイントカバー用ブーツ(ダストカバーブーツ)、ラックアンドピニオンギア用ブーツなどがある。本発明のゴム組成物は、耐水性及び耐アルカリ性を高めることが可能である。これにより、従来のゴム組成物よりも過酷な環境下で使用されるブーツを製造することが可能である。
【0091】
(ガスケットなど)
ガスケットや、オイルシール及びパッキンは、機械や装置において、液体や気体の漏れや雨水や埃などのごみや異物が内部に侵入するのを防ぐ部品であり、具体的には、固定用途に使われるガスケットと、運動部分・可動部分に使用されるオイルシール及びパッキンがある。シール部分がボルトなどで固定されているガスケットでは、Oリングやゴムシートなどのソフトガスケットに対して、目的に応じた各種材料が使用されている。また、パッキンは、ポンプやモーターの軸、バルブの可動部のような回転部分、ピストンのような往復運動部分、カプラーの接続部、水道蛇口の止水部などに使われる。本発明のゴム組成物は、これら部材の耐水性及び耐アルカリ性を高めることができる。これにより、従来のゴム組成物では困難であった耐水性及び耐アルカリ性に優れるシール部材を製造することが可能である。
【0092】
(ゴムロール)
ゴムロールは、鉄芯などの金属製の芯をゴムで接着被覆することによって製造されるものであり、一般に金属鉄芯にゴムシートを渦巻き状に巻き付けて製造される。ゴムロールには、製紙、各種金属製造、フィルム製造、印刷、一般産業用、籾摺りなどの農機具用、食品加工用などの種々の用途の要求特性に応じて、NBRやEPDM、CRなどのゴム材料が用いられている。CRは搬送する物体の摩擦に耐え得る良好な機械強度を有していることから、幅広いゴムロール用途に使用されている。さらに、重量物を搬送するゴムロールは荷重により変形するという課題があり、改良を求められている。本発明のゴム組成物は、ゴムロールの耐水性及び耐アルカリ性を高めることが可能である。これにより、従来のゴム組成物では困難であった、耐水性及び耐アルカリ性に優れるエンボス加工用ゴムロールを製造することが可能である。本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、酸洗浄ライン及びアルカリ洗浄ラインのうち少なくとも1つで用いるゴムロールように用いることができる。
【0093】
本発明の一実施形態に係るゴムロールは、芯金と、前記芯金の周面に設けられた表面層を具備し、前記表面層が上記に記載の加硫成形体を含み、ゴムロールは、酸洗浄ライン及びアルカリ洗浄ラインのうち少なくとも1つで用いられる。
【0094】
(産業用ケーブル)
産業用ケーブルは、電気や光信号を伝送するための線状の部材である。銅や銅合金などの良導体や光ファイバなどを絶縁性の被覆層で被覆したものであり、その構造や設置個所によって、多岐にわたる産業用ケーブルが製造されている。本発明のゴム組成物は、産業用ケーブルの耐水性及び耐アルカリ性を高めることが可能である。これにより、従来のゴム組成物では困難であった耐水性及び耐アルカリ性に優れる産業用ケーブルを製造することができる。
【0095】
(産業用コンベアベルト)
産業用コンベアベルトは、ゴム製、樹脂製、金属製のベルトがあり、多種多様な使用方法に合わせて選定されている。これらの中でもゴム製のコンベアベルトは、安価で多用されているが、特に搬送物との摩擦や衝突の多い環境下で使用すると、劣化による破損などが発生していた。本発明のゴム組成物は、産業用コンベアベルトの耐水性及び耐アルカリ性を高めることが可能である。これにより、従来のゴム組成物では困難であった過酷な環境下で用いられる耐水性及び耐アルカリ性に優れる産業用コンベアベルトを製造することができる。
【0096】
(スポンジ)
スポンジは、内部に細かい孔が無数に空いた多孔質の物質であり、具体的には、防振部材、スポンジシール部品、ウェットスーツ、靴などに利用されている。本発明のゴム組成物は、スポンジの耐酸性、耐水性を高めることが可能である。また、クロロプレン-不飽和ニトリル共重合体ゴムを用いているためスポンジの難燃性を高めることも可能である。これにより、従来のゴム組成物では困難であった過酷な環境下で使用される耐水性及び耐アルカリ性に優れるスポンジや、難燃性に優れたスポンジを製造することができる。さらに、発泡剤の含有量などの調整により得られるスポンジの硬度も適宜調整可能である。
【0097】
本発明の一実施形態に係るゴム組成物(未加硫状態)及び加硫物を成形する方法としては、プレス成形、押出成形、カレンダー成形等が挙げられる。ゴム組成物を加硫する温度は、ゴム組成物の組成に合わせて適宜設定すればよく、140~220℃とできる。加硫温度は、例えば、140、150、160、170、180、190、200、210、220℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ゴム組成物を加硫する加硫時間は、ゴム組成物の組成、未加硫成形体の形状等によって適宜設定すればよく、10~300分とすることができる。例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300分であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【実施例0098】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0099】
<クロロプレン系ゴム(A-2)の製造方法>
加熱冷却ジャケット及び攪拌機を備えた内容積3Lの重合缶に、クロロプレン(単量体)24質量部、アクリロニトリル(単量体)24質量部、ジエチルキサントゲンジスルフィド0.5質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、及び、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。次に、重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加した後、重合温度40℃にて窒素気流下で乳化重合を行った。上述のクロロプレンは、重合開始20秒後から分添し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節することで連続的に行った。クロロプレン及びアクリロニトリルの合計量に対する重合率が50%となった時点で、重合停止剤であるフェノチアジン0.02質量部を加えて重合を停止させた。その後、減圧下で反応溶液中の未反応の単量体を除去することでクロロプレン-アクリロニトリル共重合体を含む、クロロプレン系ラテックスを得た。
【0100】
クロロプレン系ラテックスの上述の重合率[%]は、クロロプレン系ラテックスを風乾したときの乾燥質量から算出した。具体的には、下記式(A)より計算した。式中、「固形分濃度」とは、サンプリングしたクロロプレン系ラテックス2gを130℃で加熱して、溶媒(水)、揮発性薬品、原料等の揮発成分を除いた固形分の濃度[質量%]である。「総仕込み量」とは、重合開始からある時刻までに重合缶に仕込んだ原料、試薬及び溶媒(水)の総量[g]である。「蒸発残分」とは、重合開始からある時刻までに仕込んだ薬品及び原料のうち、130℃の条件下で揮発せずにポリマーと共に固形分として残留する薬品の質量[g]である。「単量体の仕込み量」とは、重合缶に初期に仕込んだ単量体、及び、重合開始からある時刻までに分添した単量体の量の合計[g]である。なお、ここでいう「単量体」とは、クロロプレン及びアクリロニトリルの合計量である。
重合率={[(総仕込み量×固形分濃度/100)-蒸発残分]/単量体の仕込み量}×100 ・・・(A)
【0101】
上述のクロロプレン系ラテックス(R-2)のpHを、酢酸又は水酸化ナトリウムを用いて7.0に調整した後、-20℃に冷やした金属板上でクロロプレン系ラテックスを凍結凝固させることで乳化破壊することによりシートを得た。このシートを水洗した後、130℃で15分間乾燥させることにより固形状のクロロプレン系ゴム(A-2)を得た。
【0102】
クロロプレン系ゴム(A-2)に含まれるアクリロニトリルの単量体単位の含有量を、クロロプレン-アクリロニトリル共重合ゴム中の窒素原子の含有量から算出した。具体的には、元素分析装置(スミグラフ220F:株式会社住化分析センター製)を用いて、100mgのクロロプレン系ゴム(A-2)中における窒素原子の含有量を測定し、アクリロニトリルの単量体単位の含有量を算出した。アクリロニトリルの単量体単位の含有量は20.0質量%であった。
【0103】
上述の元素分析は次のとおり行った。電気炉温度として反応炉900℃、還元炉600℃、カラム温度70℃、検出器温度100℃に設定し、燃焼用ガスとして酸素ガスを0.2mL/min、キャリアーガスとしてヘリウムガスを80mL/minフローした。検量線は、窒素含有量が既知のアスパラギン酸(10.52%)を標準物質として用いて作成した。
以上の製造方法で得られた、クロロプレン系ゴム(A-2)のアクリロニトリルの単量体単位の含有量は20.0質量%であった。
【0104】
<クロロプレン系ゴム(A-1)の製造方法>
重合工程におけるアクリロニトリル単量体の添加量を変更し、クロロプレン系ゴムに含まれるアクリロニトリル単量体単位の含有量が25.0質量%であるクロロプレン系ゴム(A-1)を得た。
【0105】
(実施例1~13、比較例1~13)
<ゴム組成物の作製>
表1~4に記載の各成分のうち、有機過酸化物、加硫促進剤、マレイミド化合物及び加硫剤を除く成分を8インチオープンロールで混合し、加硫剤等を含有しないゴム組成物前駆体を得た(第1混合工程)。続いて、得られたゴム組成物前駆体を、23℃で12時間静置した。その後、ゴム組成物前駆体と、有機過酸化物、加硫促進剤、マレイミド化合物及び加硫剤を8インチオープンロールで混練することにより(第2混合工程)、実施例及び比較例のゴム組成物を得た。
【0106】
(比較例14、15)
<ゴム組成物の作製>
表4に記載の各成分のうち、有機過酸化物、受酸剤及び加硫剤を除く成分を8インチオープンロールで混合し、加硫剤等を含有しないゴム組成物前駆体を得た(第1混合工程)。続いて、静置工程を経ずに、ゴム組成物前駆体と、加硫促進剤、有機過酸化物、マレイミド化合物及び加硫剤を8インチオープンロールで混練することにより(第2混合工程)、比較例のゴム組成物を得た。
【0107】
組成物を得るために用いた各成分は以下のとおりである。
ゴム成分:
・クロロプレン系ゴムA-1:クロロプレン・アクリロニトリル共重合体 AN(アクリロニトリル単量体単位)含有量25質量%
・クロロプレン系ゴムA-2:クロロプレン・アクリロニトリル共重合体 AN(アクリロニトリル単量体単位)含有量20質量%、
・天然ゴム HB Chemical社製、SMR-CV60
【0108】
カーボンブラック:旭カーボン株式会社製「旭#70」、HAF
有機過酸化物:1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、日本油脂株式会社、パーブチルP-40
加硫促進剤:
・トリメチルチオ尿素、大内新興化学工業株式会社製、ノクセラーTMU
・硫黄:硫黄、細井化学工業株式会社製、微粉硫黄200メッシュ
・ノクセラーTT:テトラメチルチウラムジスルフィド、大内新興化学工業株式会社製、ノクセラーTT
・ノクセラーCZ:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業株式会社製、ノクセラーCZ
マレイミド化合物:m-フェニレンジマレイミド、大内新興化学工業株式会社、バルノックPM
可塑剤:エーテルエステル系化合物、株式会社ADEKA製、アデカサイザーRS-700
加硫剤:酸化亜鉛、堺化学工業株式会社製、酸化亜鉛2種
受酸剤:酸化マグネシウム、協和化学工業株式会社製、キョーワマグ150
老化防止剤:
・ノクラックCD:4,4'-ビス(α、α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、大内新興化学工業株式会社、ノクラックCD
・ノクラック6C:N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製、ノクラック6C
加工助剤:ステアリン酸、新日本理化株式会社製、ステアリン酸50S
【0109】
<試験用加硫成形体1の作製>
得られたゴム組成物をJIS K 6299:2012に基づき、170℃、20分の条件でプレス加硫して厚さ2mmのシート状の加硫成形体(試験用加硫成形体1)を作製した。なお、比較例6~8及び比較例10~12に係るゴム組成物は発熱が大きく、加工時にスコーチしたため、成形ができず、加硫成形体の評価を行うことかできなかった。
【0110】
(硬さ)
試験用加硫成形体1を、厚み6.0mm以上となるまで重ねて積層体とした。JIS K 6253-3:2023に基づき、該積層体の硬さをタイプAデュロメータで測定した。なお、積層体の厚みは、6.0~7.0mmとした。
【0111】
(耐水性(70℃の水に144時間浸漬後の体積変化率))
上述の試験用加硫成形体1から縦25mm、横20mmの試験片を打ち抜き、試験片を得た。得られた試験片を、70℃の水に144時間浸漬した。JIS K 6258に基づき体積変化率ΔVを算出した。得られた体積変化率ΔVを以下の基準で評価した。
A:3%未満
B:3%以上、6%未満
C:6%以上、9%未満
D:9%以上
【0112】
(耐アルカリ性(70℃の10%水酸化ナトリウムに144時間浸漬後の体積変化率))
上述の試験用加硫成形体1から縦25mm、横20mmの試験片を打ち抜き、試験片を得た。得られた試験片を、70℃の10%水酸化ナトリウムに144時間浸漬した。JIS K 6258に基づき体積変化率ΔVを算出した。得られた体積変化率ΔVを以下の基準で評価した。
A:4%未満
B:4%以上、7%未満
C:7%以上、10%未満
D:10%以上
【0113】
(発熱)
ゴム組成物を170℃、20分の条件でプレス加硫して、直径15mm、高さ25mmの円柱状の加硫成形体(試験用加硫成形体2)を得た。JIS K 6265:2018に基づき、グッドリッチフレクソメーター(Goodrich Flexometer)を用い定ひずみフレクソメーター試験により発熱の評価を行った。定ひずみフレクソメーター試験は、加硫ゴム等の試験片に動的繰り返し負荷を加えて、試験片内部の発熱による疲労特性を評価する試験方法であって、詳しくは、一定の温度条件で試験片に静的初期荷重を加え、更に一定振幅の正弦振動を加え、時間の経過と共に変化する試験片の発熱やクリープ量を測定するものである。試験方法はJIS K 6265:2018に基づき40℃、歪み0.175インチ、荷重55ポンド、振動数毎分1,800回の条件で実施し、発熱(℃)を測定した。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】