(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141774
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ポリエチレン系シーラントフィルム及び積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B32B27/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053599
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】592184876
【氏名又は名称】フタムラ化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】中島 禎彦
(72)【発明者】
【氏名】濱田 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 真未
(72)【発明者】
【氏名】戸田 貴文
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK03C
4F100AK04D
4F100AK07D
4F100AK42D
4F100AK46D
4F100AK63A
4F100AK63B
4F100AK63C
4F100AL05A
4F100AL05B
4F100AL05C
4F100AT00
4F100BA04
4F100BA14A
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4F100BA14C
4F100EJ381
4F100EJ38D
4F100GB16
4F100GB23
4F100JA13A
4F100JA13B
4F100JA13C
4F100JK02
4F100JK07
4F100JL12
(57)【要約】
【課題】高密度の樹脂材料を使用して弾性率の向上を図りつつ、低温シール性や耐破袋性能の悪化を回避することができるポリエチレン系シーラントフィルム及び積層体を提供する。
【解決手段】少なくともラミネート層20、基層30、シーラント層40の3層以上の複数層からなるとともに、ラミネート層20、基層30、シーラント層40が順に積層されてなるポリエチレン樹脂を主体とするフィルム体10であって、フィルム体10は、ラミネート層20の層密度(D
1)が0.919g/cm
3以上、基層30の層密度(D
2)が0.935g/cm
3以上、シーラント層40の層密度(D
3)が0.924g/cm
3以下、かつ、各層の層密度が(D
3)<(D
1)≦(D
2)の関係を満たすとともに、全体密度(D
A)が0.930~0.935g/cm
3であり、かつ、全体の層厚に対してシーラント層40の層厚が15%以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともラミネート層、基層、シーラント層の3層以上の複数層からなるとともに、前記ラミネート層、前記基層、前記シーラント層が順に積層されてなるポリエチレン樹脂を主体とするフィルム体であって、
前記フィルム体は、前記ラミネート層の層密度(D1)が0.919g/cm3以上、前記基層の層密度(D2)が0.935g/cm3以上、前記シーラント層の層密度(D3)が0.924g/cm3以下、かつ、各層の層密度が(D3)<(D1)≦(D2)の関係を満たすとともに、
全体密度(DA)が0.930~0.935g/cm3であり、かつ、全体の層厚に対して前記シーラント層の層厚が15%以上である
ことを特徴とするポリエチレン系シーラントフィルム。
【請求項2】
前記フィルム体のJIS K 7127(1999)に準拠するプラスチック引張特性の試験方法に基づいて測定された縦(MD)方向の弾性率と横(TD)方向の弾性率の和(MD+TD)が0.66GPa以上である請求項1に記載のポリエチレン系シーラントフィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリエチレン系シーラントフィルムの前記ラミネート層表層に少なくとも1層以上の層構成である2軸延伸された表基材がラミネートされてなる積層体。
【請求項4】
前記表基材が二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテフタレートフィルム又は二軸延伸ポリアミドフィルムのいずれか1種以上からなる請求項3に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系シーラントフィルム及び該シーラントフィルムを使用した積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な開発目標(SDGs)が推進され、再生可能エネルギーを利用して二酸化炭素等の温室効果ガスの排出を抑制する等、環境負荷の低減を図る様々な取り組みが行われている。樹脂フィルムの分野では、例えば、石油由来の原料に替えて植物由来の原料(バイオマス原料)を使用したフィルムの製造が進められている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
植物由来の原料は、植物の成長過程で大気中から二酸化炭素を吸収することから、燃焼により二酸化炭素が放出されたとしても大気中に新たな二酸化炭素が増加しないカーボンニュートラルな資源とされる。そのため、燃焼により大気中の二酸化炭素を増加させる石油由来の原料と比較して、植物由来の原料は環境負荷低減に貢献することができる資源として有効である。
【0004】
樹脂フィルムの分野におけるSDGsの取り組みとしては、バイオマス原料の活用だけにとどまらず、様々な角度から環境負荷の低減に貢献することが求められる。その1つの手法として、フィルムの減容化が考えられる。フィルムを減容化する場合、例えばポリエチレン系シーラントフィルムにおいては、減容化に伴いフィルムの剛性や弾性率が低下することから、高密度の樹脂を使用することにより、フィルムの物性を低下させないことが考えられる。
【0005】
しかしながら、単純に高密度の樹脂を使用するだけでは、ヒートシール温度が高くなったり、製袋した際の破袋強度が低下したりする等の問題が発生する。そこで、ポリエチレン系シーラントフィルムにおいて、フィルムの減容化を図りつつ、弾性率の低下を抑制し、かつ、ヒートシール温度の上昇や破袋強度の低下をも抑制することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、フィルムの減容化のために高密度の樹脂材料を使用して弾性率の向上を図りつつ、低温シール性や耐破袋性能の悪化を回避することができるポリエチレン系シーラントフィルム及び積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、第1の発明は、少なくともラミネート層、基層、シーラント層の3層以上の複数層からなるとともに、前記ラミネート層、前記基層、前記シーラント層が順に積層されてなるポリエチレン樹脂を主体とするフィルム体であって、前記フィルム体は、前記ラミネート層の層密度(D1)が0.919g/cm3以上、前記基層の層密度(D2)が0.935g/cm3以上、前記シーラント層の層密度(D3)が0.924g/cm3以下、かつ、各層の層密度が(D3)<(D1)≦(D2)の関係を満たすとともに、全体密度(DA)が0.930~0.935g/cm3であり、かつ、全体の層厚に対して前記シーラント層の層厚が15%以上であることを特徴とするポリエチレン系シーラントフィルムに係る。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記フィルム体のJIS K 7127(1999)に準拠するプラスチック引張特性の試験方法に基づいて測定された縦(MD)方向の弾性率と横(TD)方向の弾性率の和(MD+TD)が0.66GPa以上であるポリエチレン系シーラントフィルムに係る。
【0010】
第3の発明は、第1又は2の発明に記載のポリエチレン系シーラントフィルムの前記ラミネート層表層に少なくとも1層以上の層構成である2軸延伸された表基材がラミネートされてなる積層体に係る。
【0011】
第4の発明は、第3の発明において、前記表基材が二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテフタレートフィルム又は二軸延伸ポリアミドフィルムのいずれか1種以上からなる積層体に係る。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明に係るポリエチレン系シーラントフィルムによると、少なくともラミネート層、基層、シーラント層の3層以上の複数層からなるとともに、前記ラミネート層、前記基層、前記シーラント層が順に積層されてなるポリエチレン樹脂を主体とするフィルム体であって、前記フィルム体は、前記ラミネート層の層密度(D1)が0.919g/cm3以上、前記基層の層密度(D2)が0.935g/cm3以上、前記シーラント層の層密度(D3)が0.924g/cm3以下、かつ、各層の層密度が(D3)<(D1)≦(D2)の関係を満たすとともに、全体密度(DA)が0.930~0.935g/cm3であり、かつ、全体の層厚に対して前記シーラント層の層厚が15%以上であるため、弾性率を向上させつつ、低温シール性や耐破袋性能の悪化を適切に回避してシーラントフィルムとしての性能を保持しながら、フィルムの減容化を図ることができ、環境負荷の低減に寄与することができる。
【0013】
第2の発明に係るポリエチレン系シーラントフィルムによると、第1の発明において、前記フィルム体のJIS K 7127(1999)に準拠するプラスチック引張特性の試験方法に基づいて測定された縦(MD)方向の弾性率と横(TD)方向の弾性率の和(MD+TD)が0.66GPa以上であるため、適切にフィルムの減容化を図ることができる。
【0014】
第3の発明に係る積層体によると、第1又は2の発明に記載のポリエチレン系シーラントフィルムの前記ラミネート層表層に少なくとも1層以上の層構成である2軸延伸された表基材がラミネートされてなるため、低温シール性や耐破袋性能の悪化を適切に回避しつつ、弾性率向上による減容化を図って環境負荷の低減に寄与することができるシーラントフィルムを使用した積層体を提供することができる。
【0015】
第4の発明に係る積層体によると、第3の発明において、前記表基材が二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテフタレートフィルム又は二軸延伸ポリアミドフィルムのいずれか1種以上からなるため、安価で加工性や強度に優れており、シーラントフィルムの保護に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るポリエチレン系シーラントフィルムを使用した積層体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示す本発明の一実施形態に係るポリエチレン系シーラントフィルム10は、少なくともラミネート層20、基層30、シーラント層40の3層以上の複数層からなるとともに、ラミネート層20、基層30、シーラント層40が順に積層されてなるポリエチレン樹脂を主体とするフィルム体である。また、シーラントフィルム10では、ラミネート層20表層に表基材60がラミネートされることにより、積層体50が形成される。
【0018】
シーラントフィルム10は、Tダイ法等の公知のフィルム製造方法により製造される。また、シーラントフィルム10は、積層体50として形成されることにより、食品類、化粧品類、薬剤類、日用品類、部品類、その他製品等の各種包装資材(包装袋)や、工業用等のフィルム製品等に好適に使用される。
【0019】
シーラントフィルム10に使用されるポリエチレン樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等から単独又は複数を適宜組み合わせて選択される。シーラントフィルムの各層には、他の樹脂が含まれることがある。例えば、添加剤のためのマスターバッチ等、フィルムの特性を損なわない範囲において、他の樹脂が含有される場合もありうる。
【0020】
ポリエチレン樹脂には、環境負荷低減の観点から、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクル等のリサイクル原料やバイオマス由来のポリオレフィン樹脂が含まれてもよい。バイオマス由来のポリオレフィン樹脂としては、例えば植物原料を加工して得られたポリエチレン系樹脂等が挙げられる。具体的には、サトウキビ等の植物原料から抽出された糖液から酵母によるアルコール発酵を経てエタノールを生成してエチレン化した後、公知の樹脂化の工程で製造されたポリエチレン系樹脂である。バイオマス由来ポリオレフィン樹脂の重量配合割合が多いほど、環境負荷の低減への寄与が高められる。
【0021】
また、各層では、本発明のフィルムの特性を損なわない範囲で必要に応じて、滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、結晶核剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤等の添加剤を適宜添加してもよい。添加剤の種類等は用途に応じて適宜であり、例えば、結晶核剤として低密度ポリエチレンが添加されることもある。
【0022】
ラミネート層20は、シーラントフィルム10の一側の表層に相当し、後述する表基材60が積層される面である。ラミネート層20は、使用可能な樹脂材料から適宜選択された材料により、層密度(D1)が0.919g/cm3以上を満たすように調整される。ラミネート層20に使用される樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレンを主体、又は直鎖状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンの2種の組み合わせを主体とした樹脂が好ましく選択される。ラミネート層20では、表基材60との接着性向上のためにコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0023】
基層30は、シーラントフィルム10の中間層に相当する。基層30は、使用可能な樹脂材料から適宜選択された材料により、層密度(D2)が0.935g/cm3以上を満たすように調整される。基層30に使用される樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレンを主体、又は直鎖状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンの2種の組み合わせを主体とした樹脂が好ましく選択される。
【0024】
シーラント層40は、シーラントフィルム10の他側の表層に相当し、例えば包装資材(包装袋)として使用する際に袋内面側となるとともに、他のフィルム等と接着される面(シール面)である。シーラント層40は、使用可能な樹脂材料から適宜選択された材料により、層密度(D3)が0.924g/cm3以下を満たすように調整される。シーラント層40に使用される樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレンを主体とした樹脂が好ましく選択される。
【0025】
本発明のシーラントフィルム10では、減容化を図るため、フィルムの弾性率を向上させつつ、低温シール性や耐破袋性能の悪化回避を図るに際し、シーラント層の層密度と層厚に着目して鋭意検討し、シーラント層と、他の層の層密度及びフィルム全体の密度と層厚との関係から、良好なヒートシール温度や破袋強度の性能を確保しながらのフィルムの減容化が可能であることを見出した。すなわち、シーラントフィルム10は、前記の各層20,30,40の層密度(D1),(D2),(D3)が(D3)<(D1)≦(D2)の関係を満たすとともに、全体密度(DA)が0.930~0.935g/cm3であり、かつ、フィルム全体の層厚に対してシーラント層40の層厚が15%以上であるように調整される。
【0026】
ラミネート層20の層密度(D1)と、基層30の層密度(D2)は、シーラントフィルム10の耐破袋性能や剛性に寄与する。ラミネート層20の層密度(D1)が0.919g/cm3以上、基層30の層密度(D2)が0.935g/cm3以上であることによって、フィルムの剛性は良好となる。フィルムの剛性をより高める観点から、ラミネート層20の好ましい層密度(D1)は0.924g/cm3以上、より好ましくは0.931g/cm3以上であり、基層30の好ましい層密度(D2)は0.940g/cm3以上である。ラミネート層20の層密度(D1)や基層30の層密度(D2)は、特に上限値を限定しないが、耐破袋性能を向上させる観点から、層密度(D1),(D2)の上限はそれぞれ0.955g/cm3が好ましく、0.950g/cm3がより好ましい。
【0027】
シーラント層40の層密度(D3)は、シーラントフィルム10の低温シール性に寄与する。フィルムのシール面となるシーラント層40の層密度(D3)を比較的小さく調整することにより、ヒートシール温度の上昇等が抑制される。シーラント層40の層密度(D3)は、0.924g/cm3以下であることにより良好な低温シール性が得られ、低温シール性をより向上させる観点から、0.919g/cm3以下がより好ましい。また、シーラント層の層密度(D3)は、特に下限値を限定しないが、フィルムの剛性を向上させる観点から、層密度(D3)の下限は0.890g/cm3が好ましく、0.904g/cm3がより好ましい。
【0028】
そして、シーラント層40の層密度(D3)が、前記のラミネート層20の層密度(D1)と基層30の層密度(D2)との関係において(D3)<(D1)≦(D2)の関係を満たすことによって、優れた弾性率を備えつつ良好な低温シール性及び耐破袋性能を備えるシーラントフィルム得ることができる。(D3)<(D1)≦(D2)の関係を満たさない場合には、弾性率、低温シール性、耐破袋性能のいずれかの性能が不十分となるおそれがある。
【0029】
シーラントフィルム10では、上記各層密度の関係を満たしつつ、全体密度(DA)が0.930~0.935g/cm3に規定される。シーラントフィルム10の全体密度(DA)は、耐破袋性能、剛性、弾性率等の性能に寄与し、小さすぎると弾性率の低下等やフィルムの剛性が不十分となるおそれがあり、大きすぎると耐破袋性能が低下するおそれがある。全体密度(DA)を0.930~0.935g/cm3に調整することで、優れた弾性率が得られるとともに、フィルムの剛性や耐破袋性能のバランスが良好で、減容化が可能なシーラントフィルムが得られる。
【0030】
上記シーラントフィルム10において、好ましい弾性率は、縦(MD)方向の弾性率と横(TD)方向の弾性率の和(MD+TD)が0.66GPa以上であり、さらに縦(MD)方向が0.31(GPa)以上、横(TD)方向が0.34(GPa)以上であることがより好ましい。弾性率は、JIS K 7127(1999)に準拠するプラスチック引張特性の試験方法に基づいて測定される。シーラントフィルム10の弾性率が不足すると、適切なフィルムの減容化ができないおそれがある。
【0031】
シーラントフィルム10の全体層厚に対するシーラント層40の層厚(層比)は、フィルムの弾性率や耐破袋性能に寄与する。シーラント層40の層比が小さすぎると、フィルム全体に対してシーラント層40が薄すぎることとなり、耐破袋性能が悪化するおそれがある。シーラント層40の層比を15%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上とすることにより、フィルムの弾性率と耐破袋性能の両立を図ることができる。また、シーラント層40の層比は特に上限値を限定しないが、シーラント層40の層比が大きくなるとフィルム全体として密度が低下し、弾性率を低下させるため、フィルムの弾性率を高める観点から、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましい。
【0032】
このように、本発明のシーラントフィルム10は、各層20,30,40の層密度の特定の関係が成立するフィルム全体の密度を適正な範囲に調整し、さらにシール面に相当するシーラント層40の層比を制御することによって、高密度の樹脂の使用により生じる弾性率向上の効果を生かしつつ、低温シール性や耐破袋性能の悪化を適切に回避することが可能となる。そのため、本発明のシーラントフィルム10は、シーラントフィルムとしての性能を保持しながら、弾性率向上による減容化を図ることができ、環境負荷の低減に寄与することができる。
【0033】
本発明のシーラントフィルム10を用いた積層体50は、シーラントフィルム10のラミネート層20表層に表基材60がラミネートされてなる。シーラントフィルム10に表基材60を積層させる方法としては、ドライラミネート法、溶融押出ラミネート法等の公知の方法を用いることができる。
【0034】
表基材60は、少なくとも1層以上の層構成である2軸延伸されたフィルムである。表基材60は、下層側のシーラントフィルム10を保護するものであり、例えば積層体50を包装資材等として用いる場合の外装面に相当する。この表基材60では、印刷加工等が施される他、適宜の添加剤等を添加して耐久性、耐候性、耐光性等、用途に応じた種々の機能が付与される。
【0035】
表基材60では、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテフタレートフィルム、又は二軸延伸ポリアミドフィルムのいずれか1種以上のフィルムが好ましく選択される。これらのフィルムは、安価であり、加工性や強度に優れるため、シーラントフィルム10の保護に好適である。
【実施例0036】
[シーラントフィルムの作製]
試作例1~20のシーラントフィルムの作製に際し、後述する各材料を押出装置に供給し、溶融、混練してTダイ法によりラミネート層、基層、シーラント層の3層に押出して製膜した。その際、フィルム全体の厚さ(全厚)、各層の全厚に対する層厚(層比)をそれぞれ調整した。また、製膜後、ラミネート層にコロナ放電処理による表面処理を施した。試作例1~20において、各層の樹脂の配合割合は、いずれも100重量%となるように配合した。なお、アンチブロッキング剤等の添加剤は省略した。
【0037】
[使用材料]
ラミネート層、基層、シーラント層の樹脂材料として、下記の樹脂を使用した。また、試作例1~20について、ラミネート層、基層、シーラント層の各層及び全体密度(g/cm3)は、下記の式(i)に基づいて算出した。なお、式(i)は、複数種類(X,Y,Z)の原料を混合した場合の密度(ρblend)を算出するものであり、ρXは原料Xの密度、ρYは原料Yの密度、ρZは原料Zの密度、xは原料Xの配合割合、yは原料Yの配合割合、zは原料Zの配合割合である。
【0038】
【0039】
・樹脂A1:直鎖状低密度ポリエチレン(住友化学株式会社製;FX307)、密度0.890g/cm3
・樹脂A2:直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製;0540F)、密度0.904g/cm3
・樹脂A3:直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製;1540FC)、密度0.913g/cm3
・樹脂A4:直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製;2040FC)、密度0.919g/cm3
・樹脂A5:直鎖状低密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー製;SP2540)、密度0.924g/cm3
・樹脂A6:直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製;3570FC)、密度0.931g/cm3
・樹脂A7:直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製;4040F)、密度0.937g/cm3
・樹脂A8:直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製;4540F)、密度0.944g/cm3
【0040】
・樹脂B1:高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製;HF562)、密度0.963g/cm3
【0041】
・樹脂C1:低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製;R300)、密度0.920g/cm3
・樹脂C2:低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製;F222NH)、密度0.922g/cm3
【0042】
[試作例1]
試作例1のシーラントフィルムは、ラミネート層に樹脂A6を100.0重量%、基層に樹脂A6を69.0重量%と樹脂B1を31.0重量%、シーラント層に樹脂A4を100.0重量%で配合して製膜した。試作例1では、全厚を50μm、ラミネート層の層比を16.0%、基層の層比を59.0%、シーラント層の層比を25.0%とした。また、全体密度が0.934g/cm3、ラミネート層の層密度が0.931g/cm3、基層の層密度が0.941g/cm3、シーラント層の層密度が0.919g/cm3であった。
【0043】
[試作例2]
試作例2のシーラントフィルムは、基層の層比を54.0%、シーラント層の層比を30.0%とした以外は、試作例1のシーラントフィルムと同一とした。試作例2では、全体密度が0.933g/cm3であった。
【0044】
[試作例3]
試作例3のシーラントフィルムは、シーラント層に樹脂A3を100.0重量%で配合して製膜した以外は、試作例1のシーラントフィルムと同一とした。試作例3では、全体密度が0.932g/cm3、シーラント層の層密度が0.913g/cm3であった。
【0045】
[試作例4]
試作例4のシーラントフィルムは、シーラント層に樹脂A2を100.0重量%で配合して製膜した以外は、試作例1のシーラントフィルムと同一とした。試作例4では、全体密度が0.930g/cm3、シーラント層の層密度が0.904g/cm3であった。
【0046】
[試作例5]
試作例5のシーラントフィルムは、基層に樹脂A6を86.0重量%と樹脂B1を14.0重量%で配合して製膜し、全厚を40μm、基層の層比を68.0%、シーラント層の層比を16.0%とした以外は、試作例1のシーラントフィルムと同一とした。試作例5では、全体密度が0.932g/cm3、基層の層密度が0.935g/cm3、シーラント層の層密度が0.919g/cm3であった。
【0047】
[試作例6]
試作例6のシーラントフィルムは、基層の層比を64.0%、シーラント層の層比を20.0%とした以外は、試作例5のシーラントフィルムと同一とした。試作例6では、全体密度が0.931g/cm3であった。
【0048】
[試作例7]
試作例7のシーラントフィルムは、ラミネート層に樹脂A7を93.0重量%と樹脂C1を7.0重量%、基層に樹脂A7を93.0重量%と樹脂C1を7.0重量%、シーラント層に樹脂A4を100.0重量%で配合して製膜した。試作例7では、全厚を50μm、ラミネート層の層比を12.5%、基層の層比を62.5%、シーラント層の層比を25.0%とした。また、全体密度が0.932g/cm3、ラミネート層の層密度が0.936g/cm3、基層の層密度が0.936g/cm3、シーラント層の層密度が0.919g/cm3であった。
【0049】
[試作例8]
試作例8のシーラントフィルムは、シーラント層に樹脂A5を100.0重量%で配合して製膜した以外は、試作例1のシーラントフィルムと同一とした。試作例8では、全体密度が0.935g/cm3、シーラント層の層密度が0.924g/cm3であった。
【0050】
[試作例9]
試作例9のシーラントフィルムは、ラミネート層に樹脂A6を85.0重量%と樹脂B1を15.0重量%、基層に樹脂A6を85.0重量%と樹脂B1を15.0重量%、シーラント層に樹脂A4を100.0重量%で配合して製膜した。試作例9では、全厚を50μm、ラミネート層の層比を16.0%、基層の層比を59.0%、シーラント層の層比を25.0%とした。また、全体密度が0.931g/cm3、ラミネート層の層密度が0.936g/cm3、基層の層密度が0.936g/cm3、シーラント層の層密度が0.919g/cm3であった。
【0051】
[試作例10]
試作例10のシーラントフィルムは、ラミネート層に樹脂A6を100.0重量%、基層に樹脂A8を100.0重量%、シーラント層に樹脂A1を100.0重量%で配合して製膜した。試作例10では、全厚を50μm、ラミネート層の層比を16.0%、基層の層比を64.0%、シーラント層の層比を20.0%とした。また、全体密度が0.931g/cm3、ラミネート層の層密度が0.931g/cm3、基層の層密度が0.944g/cm3、シーラント層の層密度が0.890g/cm3であった。
【0052】
[試作例11]
試作例11のシーラントフィルムは、基層の層比を71.5%、シーラント層の層比を12.5%とした以外は、試作例1のシーラントフィルムと同一とした。試作例11では、全体密度が0.936g/cm3であった。
【0053】
[試作例12]
試作例12のシーラントフィルムは、基層の層比を74.0%、シーラント層の層比を10.0%とした以外は、試作例1のシーラントフィルムと同一とした。試作例12では、全体密度が0.937g/cm3であった。
【0054】
[試作例13]
試作例13のシーラントフィルムは、シーラント層に樹脂A1を100.0重量%で配合して製膜した以外は、試作例1のシーラントフィルムと同一とした。試作例13では、全体密度が0.926g/cm3、シーラント層の層密度が0.890g/cm3であった。
【0055】
[試作例14]
試作例14のシーラントフィルムは、ラミネート層と基材層とシーラント層にそれぞれ樹脂A4を100.0重量%で配合して製膜した。試作例14では、全厚を50μm、ラミネート層の層比を12.5%、基層の層比を75.0%、シーラント層の層比を12.5%とした。また、全体密度及び各層の層密度がいずれも0.919g/cm3であった。
【0056】
[試作例15]
試作例15のシーラントフィルムは、ラミネート層と基材層とシーラント層にそれぞれ樹脂A6を100.0重量%で配合して製膜した以外は、試作例14のシーラントフィルムと同一とした。試作例15では、全体密度及び各層の層密度がいずれも0.931g/cm3であった。
【0057】
[試作例16]
試作例16のシーラントフィルムは、ラミネート層に樹脂A6を100.0重量%、基層に樹脂A6を95.6重量%と樹脂C2を4.4重量%、シーラント層に樹脂A4を100.0重量%で配合して製膜した。試作例16では、全厚を50μm、ラミネート層の層比を16.0%、基層の層比を72.0%、シーラント層の層比を12.0%とした。また、全体密度が0.929g/cm3、ラミネート層の層密度が0.931g/cm3、基層の層密度が0.931g/cm3、シーラント層の層密度が0.919g/cm3であった。
【0058】
[試作例17]
試作例17のシーラントフィルムは、ラミネート層と基材層とシーラント層にそれぞれ樹脂A7を93.0重量%と樹脂C1を7.0重量%で配合して製膜した以外は、試作例14のシーラントフィルムと同一とした。試作例17では、全体密度及び各層の層密度がいずれも0.936g/cm3であった。
【0059】
[試作例18]
試作例18のシーラントフィルムは、シーラント層に樹脂A4を100.0重量%で配合して製膜した以外は、試作例17のシーラントフィルムと同一とした。試作例18では、全体密度が0.934g/cm3、シーラント層の層密度が0.919g/cm3であった。
【0060】
[試作例19]
試作例19のシーラントフィルムは、基層に樹脂A5を100.0重量%、シーラント層に樹脂A5を100.0重量%で配合して製膜した以外は、試作例16のシーラントフィルムと同一とした。試作例19では、全体密度が0.925g/cm3、基層の層密度が0.924g/cm3、シーラント層の層密度が0.924g/cm3であった。
【0061】
[試作例20]
試作例20のシーラントフィルムは、ラミネート層に樹脂A6を100.0重量%と、基層に樹脂A6を85.0重量%と樹脂B1を15.0重量%、シーラント層に樹脂A6を100.0重量%で配合して製膜した。試作例20では、全厚を50μm、ラミネート層の層比を16.0%、基層の層比を59.0%、シーラント層の層比を25.0%とした。また、全体密度が0.934g/cm3、ラミネート層の層密度が0.931g/cm3、基層の層密度が0.936g/cm3、シーラント層の層密度が0.931g/cm3であった。
【0062】
試作例1~20のシーラントフィルムついて、各層の樹脂材料の配合割合を表1~4に示す。また、全体密度(g/cm3)及び全体層厚(μm)、ラミネート層の層密度D1(g/cm3)及び層比(%)、基層の層密度D2(g/cm3)及び層比(%)、シーラント層の層密度D3(g/cm3)及び層比(%)、各層の層密度の大小関係の比較(層密度比較)について、後述する表5~8に示す。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
試作例1~20のシーラントフィルムの性能評価として、引張弾性率、ヒートシール開始温度(低温シール性)について測定した。各測定結果は、後述する表5~8に示す。
【0068】
[引張弾性率の測定]
引張弾性率(GPa)は加工適性の指標の1つである。この測定では、引張試験機(株式会社オリエンテック製,RTF-1310)を使用し、JIS K 7127(1999)に準拠するプラスチック引張特性の試験方法に基づいて、縦(MD)方向と横(TD)方向の各方向について測定した。測定結果では、縦方向の弾性率と横方向の弾性率の和(MD+TD)が0.66以上を良品とし、縦(MD)方向が0.31(GPa)以上、横(TD)方向が0.34(GPa)以上、縦方向と横方向の和(MD+TD)が0.66以上をすべて満たす場合を最良品と判定した。
【0069】
[ヒートシール開始温度の測定]
ヒートシール開始温度(℃)は加工適性の指標の1つである。この測定では、JIS Z 1713(2009)に準拠するヒートシール開始温度試験を参考に測定した。まず、作製した試作例1~20のフィルムを横(TD)方向50mm、縦(MD)方向250mmの長方形に裁断して試験片とした。2枚の試験片のシーラント層同士を重ねて、ヒートシール試験機(株式会社東洋精機製作所製;「熱傾斜試験機」)により、ヒートシール圧力を0.4MPa、ヒートシール時間を1秒とし、温度の傾斜(昇温)を5℃ずつとしてヒートシールを行った。ヒートシールに際しては、ヒートシーラーの熱板と試験片との間に、融着防止用のセロファンフィルムを挟んだ。ヒートシール後、融着した試験片を180°に開き、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製;「EZ-SX」)を用いて、試験片の未シール部分をチャックに挟んでシール部分をT字剥離させた。ヒートシール強度が3(N/15mm)に到達した温度をヒートシール開始温度として、内挿法から求めた。測定結果では、120℃以下を良品と判定した。
【0070】
次に、試作例1~20のシーラントフィルムを用いて、実際の製品を想定したラミネートフィルムを作製し、破袋試験を行って耐破袋性能の良否を判定した。試験結果は、後述する表5~8に示す。
【0071】
[ラミネートフィルムの作製]
試作例1~20のシーラントフィルムに積層する表基材として、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(三菱ケミカル株式会社製;「サントニールSNR」)を使用した。この表基材のフィルム表面に、ドライラミネート用に調製した接着剤(東洋モートン株式会社製、主剤:TM-329、硬化剤:CAT-8B、溶剤:酢酸エチル)を約3g/m2塗布し、接着剤を一旦乾燥させた。その後、試作例1~20のシーラントフィルムのラミネート層表層に表基材を貼り合わせ、順次ローラーを通してシーラントフィルムと表基材を密着させてラミネートフィルムを作製した。
【0072】
[破袋試験]
ラミネートフィルムのシーラントフィルム側(シーラント層)が袋の内面側となるように、サイズ130mm×180mmの3方をヒートシールした袋を作製した。ヒートシールに際しては、インパルスシーラー(富士インパルス株式会社製;「OPL-350-MD NP」)を使用し、ヒートシールの条件をシール温度160℃、加熱時間1.0秒、冷却温度60℃とした。作製した袋中に水道水200mLを注入した後、シールされていない開口部を同様の条件でヒートシールして封入し、サンプル袋とした。作製したサンプル袋は、冷蔵庫内で0℃の水中に24時間保存した。なお、各試作例1~20に対応するサンプル袋のサンプル数はそれぞれ5つとした。
【0073】
破袋試験では、
図2に示す破袋試験装置100を用いて、冷蔵庫内で保存後のサンプル袋Sを破袋試験装置100の載置部101に載置し、重さ3kgの鉄板部102を図示の90°位置から回動部103を介して載置部101上のサンプル袋S方向へ倒してサンプル袋Sに衝撃を加える操作を行った。この操作を1回として、最高50回まで操作を繰り返し、操作が50回に到達する前に破袋が確認されたサンプル袋の数(破袋数)を求めた。この破袋試験では、各試作例1~20において、5つのサンプル袋で操作を50回繰り返して1度も破袋が確認されなかった場合を良品とした。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
[結果と考察]
表5~8に示すように、試作例1~10は、弾性率、シール開始温度(低温シール性)、破袋数(耐破袋性能)のいずれも良好と判定された良品であり、試作例11~20は、弾性率、シール開始温度(低温シール性)、破袋数(耐破袋性能)の少なくとも1つが良好でない(不可)と判定された不良品である。
【0079】
まず、試作例1に対し、試作例2,11,12はシーラント層の層比を変更した例である。試作例2は、試作例1に対してシーラント層の層比を増加させた例であって、弾性率が若干低下したものの、弾性率、低温シール性、耐破袋性能のいずれの性能も良好であった。一方、試作例11,12は、試作例1に対してシーラント層の層比を減少させた例であり、耐破袋性能の低下がみられた。特に、試作例11と試作例12との対比から理解されるように、層比が小さくなるほど耐破袋性能が悪化する傾向がみられた。また、試作例1,2,11,12から、層比が小さくなるほど弾性率が向上する傾向がみられた。これは、比較的低密度のシーラント層の層比が小さくなることにより、フィルム全体の密度が大きくなり弾性率が向上したと考えられる。
【0080】
試作例1に対し、試作例3,4,8,13はシーラント層の層密度を変更したことに伴ってフィルムの全体密度を変更させた例である。試作例3,4,8,13から、シーラント層の層密度が小さくなるほど、シール開始温度が低温となる(低温シール性が向上する)傾向がみられた。また、シーラント層の層密度が小さくなるほど、弾性率が低下する傾向がみられた。これは、シーラント層の層密度を小さくしたことに伴ってフィルムの全体密度が小さくなり、弾性率が低下したと考えられる。
【0081】
試作例5,6,16は、基層の樹脂組成を変更するとともに、基層とシーラント層の層比を変更した例である。試作例5と試作例6とを対比すると、前記と同様に層比の減少に伴って弾性率の向上がみられた。また、試作例16は、試作例5,6より基層の密度の減少に伴ってフィルムの全体密度を低下させたものであり、弾性率が低下した。さらに、試作例16はシーラント層の層比も減少させており、耐破袋性能の低下がみられた。
【0082】
試作例7はラミネート層と基層の樹脂組成を同一とした良品であり、試作例18はこの試作例7に対してシーラント層の層比を減少させた例である。前記の通り、シーラント層の層比が小さくなるほど耐破袋性能が低下する傾向がみられた。
【0083】
試作例9は、ラミネート層と基層を試作例7と異なる樹脂組成及び層比とした変形例である。試作例9では、試作例7と比較してフィルムの全体密度がわずかに減少しているものの、試作例7とそん色ない性能が示された。
【0084】
試作例10は、各層の層密度がシーラント層(D3)<ラミネート層(D1)<基層(D2)となるように、各層を密度の異なる直鎖状低密度ポリエチレン100%で配合した例である。試作例10は弾性率、低温シール性、耐破袋性能のいずれも良好であり、特にシーラント層の層密度が0.890g/cm3であることにより、シール開始温度を大きく低下させることができたと考えられる。
【0085】
試作例14,15,17は、各層を同一の直鎖状低密度ポリエチレン100%で配合した例である。試作例14はフィルムの全体密度が小さことにより、十分な弾性率が確保できなかったと考えらえる。試作例15,17は、シーラント層の密度が高いことにより、ヒートシール開始温度が高くなったと考えられる。また、試作例15,17では、シーラント層の密度が高いため、耐破袋性能が悪化したと考えられる。
【0086】
試作例19は、基層の樹脂組成をシーラント層と同一で密度0.924g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン100%で配合し、ラミネート層を他の直鎖状低密度ポリエチレン100%で配合した例である。試作例19では、フィルムの全体密度が小さくなり、十分な弾性率が確保できなかったと考えらえる。
【0087】
試作例20は、シーラント層の樹脂組成をラミネート層と同一で密度0.931g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン100%で配合し、基層を他の直鎖状低密度ポリエチレン100%で配合した例である。試作例20では、シーラント層の密度が高いことにより、ヒートシール開始温度が高くなるとともに、耐破袋性能が悪化したと考えられる。
【0088】
試作例1~20から総合的に検討すると、ラミネート層の層密度(D1)が0.931g/cm3以上、基層の層密度(D2)が0.935g/cm3以上、シーラント層の層密度(D3)が0.890g/cm3以上であって、各層密度がシーラント層(D3)<ラミネート層(D1)<基層(D2)を満たし、全体密度(DA)が0.930~0.935g/cm3であるとともに、シーラント層の層比が15%以上であることが好ましいと考えられる。
以上のとおり、本発明のポリエチレン系シーラントフィルムは、ラミネート層と基層とシーラント層の層密度の特定の関係が成立するフィルム全体の密度を規定するとともに、シーラント層の層比を制御することによって、低温シール性や耐破袋性能の悪化を適切に回避してシーラントフィルムとしての性能を保持しながら、弾性率向上による減容化を図ることができる。そのため、本発明のポリエチレン系シーラントフィルム及びこのフィルムを用いた積層体は、環境負荷の低減に寄与することができ、従来のポリエチレン系シーラントフィルム及び積層体の代替として有望である。