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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141780
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】キャリアテープの成形方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 47/10 20060101AFI20241003BHJP
   B65B 47/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B65B47/10
B65B47/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053608
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 將幸
【テーマコード(参考)】
3E050
【Fターム(参考)】
3E050AA02
3E050AB02
3E050AB08
3E050BA04
3E050CA01
3E050CB03
3E050DA03
3E050DA07
(57)【要約】
【課題】カス上がりを防止可能なキャリアテープの成形方法を提供する。
【解決手段】部品を収納可能な収納凹部を有するキャリアテープの成形方法であって、シート基材1aに収納凹部を成形する収納凹部成形工程と、シート基材1aにおける収納凹部の側方又は収納凹部の底面に貫通孔2,5を打抜く孔打抜工程と、を含み、孔打抜工程は、上型に設けられた打抜パンチ11と、下型に設けられ、打抜パンチ11を受け入れるダイ孔121を有する受けダイス12と、を備える打抜金型を用いて、貫通孔2,5を打抜き、ダイ孔121の形状は、上型141側の部分123よりも下型142側の部分122が狭い。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を収納可能な収納凹部を有するキャリアテープの成形方法であって、
シート基材に前記収納凹部を成形する収納凹部成形工程と、
シート基材における前記収納凹部の側方又は収納凹部の底面に貫通孔を打抜く孔打抜工程と、を含み、
前記孔打抜工程は、上型に設けられた打抜パンチと、下型に設けられ、前記打抜パンチを受け入れるダイ孔を有する受けダイスと、を備える打抜金型を用いて、前記貫通孔を打抜き、
前記受けダイスの前記ダイ孔の形状は、前記下型側の部分が前記上型側の部分よりも狭い、
ことを特徴とするキャリアテープの成形方法。
【請求項2】
前記ダイ孔の形状は、打抜き方向に直交する方向で切断した断面において、前記下型側の部分の断面積が前記上型側の部分の断面積よりも5%以上小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載のキャリアテープの成形方法。
【請求項3】
前記ダイ孔の形状は、二段又は多段状である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のキャリアテープの成形方法。
【請求項4】
前記孔打抜工程において、前記打抜パンチは、前記ダイ孔における前記下型側の狭い段部まで進入する、
ことを特徴とする請求項3に記載のキャリアテープの成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品を収納可能な収納凹部を有するキャリアテープの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送り孔と、部品を収納可能な収納凹部とを有するキャリアテープの成形方法において、収納凹部の側方に送り孔を打抜いたり、収納凹部の底面に底孔を打抜いたりする孔打抜工程が行われている(特許文献1参照)。
【0003】
孔打抜工程では、打抜パンチと、受けダイスと、を備える打抜金型が用いられている。このような打抜金型は、送り孔や底孔の開口縁に発生する糸バリ(図6参照)を小さくするために、打抜パンチの先端に対して、受けダイスのダイ孔の孔径を大きくして、クリアランスに余裕を持たせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-321502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この場合、薄皮バリ(図6参照)が発生し易くなってくる。さらに、打抜金型で打抜いた抜きカスが、打抜き方向の下方に落下せず、打抜パンチの先端に付着することがある。そのため、抜きカスがダイ孔の上方(受けダイスの表面)に上がってくる、いわゆるカス上がり現象が起きるようになる。
【0006】
そこで、本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、カス上がりを防止可能なキャリアテープの成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る一つの態様は、部品を収納可能な収納凹部を有するキャリアテープの成形方法であって、シート基材に前記収納凹部を成形する収納凹部成形工程と、前記シート基材における前記収納凹部の側方又は収納凹部の底面に貫通孔を打抜く孔打抜工程と、を含み、前記孔打抜工程は、上型に設けられた打抜パンチと、下型に設けられ、前記打抜パンチを受け入れるダイ孔を有する受けダイスと、を備える打抜金型を用いて前記貫通孔を打抜き、前記受けダイスの前記ダイ孔の形状は、前記下型側の部分が前記上型側の部分よりも狭いものである。
(2)上記(1)の態様において、前記ダイ孔の形状は、打抜き方向に直交する方向で切断した断面において、前記下型側の部分の断面積が前記上型側の部分の断面積よりも5%以上小さくてもよい。
(3)上記(1)又は(2)の態様において、前記ダイ孔は、二段形状であってもよい。
(4)上記(3)の態様において、前記孔打抜工程において、前記打抜パンチは、前記ダイ孔における前記下型側の狭い段部まで進入してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カス上がりを防止可能なキャリアテープの成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】キャリアテープの斜視図である。
図2】本発明に係る実施形態のキャリアテープの成形方法に用いられる成形装置の一例を示す概略図である。
図3A】実施形態の打抜金型における上死点状態を示す概略断面図である。
図3B】実施形態の打抜金型における下死点状態を示す概略断面図である。
図3C】実施形態の打抜金型における復帰途中を示す概略断面図である。
図4】本発明に係る実施形態のキャリアテープの成形方法を示すフロー図である。
図5A】従来技術の打抜金型における上死点状態を示す概略断面図である。
図5B】従来技術の打抜金型における下死点状態を示す概略断面図である。
図5C】従来技術の打抜金型における復帰途中を示す概略断面図である。
図6】従来技術のキャリアテープにおけるバリ(糸、薄皮)の発生状況を示す平面図である。
図7】底孔打抜工程において、バリの発生とカス上がりの発生を観察した実験結果を示す表1である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本明細書の実施形態においては、全体を通じて、同一の部材には同一の符号を付している。
【0011】
図1は、キャリアテープ1の斜視図である。
キャリアテープ1は、図1に示すように、部品EPを複数収納して、保管したり、搬送したり、基板に部品Pを実装する実装機に部品EPを円滑に供給したりするものである。例えば、部品EPとして、電子部品や精密部品などが挙げられる。
【0012】
キャリアテープ1には、樹脂製のシート基材1aの長手方向(搬送方向)MDに、送り孔2と、部品EPを収納する収納凹部3とを、それぞれ所定のピッチP1で複数有している。
【0013】
送り孔2は、平面視において円形状であるが、送り孔2の形状や間隔P2は、実装機などの送り機構に合わせて形成される。なお、送り孔2は、テープの長尺方向の二辺に沿って、収納凹部3の両側に形成されることもある。
【0014】
一方、収納凹部3は、略矩形状であるが、部品EPの形状に合わせて形成されており、さらに、収納凹部3の底面に台座が形成されたり、検査用の底孔5が追加的に形成されたりすることもある。
【0015】
このキャリアテープ1は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アモルファスポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどの合成樹脂、これらの樹脂にカーボンを練り込んで導電性を付与したもの、表面に導電コーティングを施したものなどで形成されている。また、キャリアテープ1の幅は、特に限られず、8mm、12mm、16mm、24mmなどであってもよい。
【0016】
なお、図1において、収納凹部3の長さをA、幅をB、深さをTとし、キャリアテープ1の端面から送り孔2の中心までの距離をE1、送り孔2の中心から収納凹部3の中心までの幅方向WDの距離をFとし、隣り合う収納凹部3のピッチをP1、送り孔2の中心から収納凹部3の中心までの長手方向MDの距離をP2とする。また、キャリアテープ1の仕様によっては、P1=2×P2とならないことがある。
【0017】
つぎに、キャリアテープ1の成形装置100及び成形方法について説明する。
図2は、本発明に係る実施形態のキャリアテープ1の成形方法に用いられる成形装置100の一例を示す概略図である。
【0018】
キャリアテープ1の成形装置100は、図2に示すように、加熱部110と、成形部120と、アキューム部130と、打抜金型140と、間欠搬送部150と、を少なくとも備えている。
【0019】
加熱部110は、図示しない供給装置などから供給されてくるシート基材1aを、搬送方向MDに加熱しながら、成形部120に搬送する回転ドラム状のものである。
【0020】
成形部120は、シート基材1aに収納凹部3をエンボス成形するものであり、表面に凹部を有する回転ドラム状である。成形部120は、場合によって、ダミー凹部(ダミーエンボス)4及び捨て凹部(捨てエンボス)も成形することがある。ただし、成形部120は、真空成形、圧空成形、真空圧空成形などいずれの成形方法であってもよく、あるいは、プレス金型を用いたプレス成形であってもよい。
【0021】
アキューム部130は、収納凹部3が形成されたシート基材1aを、滞留させて一度冷却し、収納凹部3の成形時の熱応力を除去するものである。
【0022】
打抜金型140は、シート基材1aに送り孔2を形成するものである。この打抜金型140は、上型141と、下型142と、上型141と下型142と相対的に接離(上下)させる昇降手段(図示なし)と、を備えている。
【0023】
また、打抜金型140は、シート基材1aを位置決めする位置決め機構160を有している。位置決め機構160は、先端部が収納凹部3の寸法・形状と等しいか、若干小さな形状を呈したもの、例えば、パイロットピンなどから形成されている。
【0024】
間欠搬送部150は、ある搬送ピッチ(例えば、収納凹部3のピッチP1の整数倍(4倍、8倍など))で、シート基材1aを打抜金型140に間欠的に搬送するものである。
【0025】
ここで、打抜金型140について、詳細に説明する。
図3A図3Cは、実施形態の打抜金型140を示す概略断面図であり、図3Aは上死点状態であり、図3Bは下死点状態であり、図3Cは復帰途中である。
【0026】
打抜金型140は、貫通孔としての送り孔2を打抜くための送り孔打抜用の打抜パンチ11及び受けダイス12も備えている(図3A参照)。なお、上型141には、打抜パンチ11を案内するとともに、シート基材に接離(挟持)可能なストリッパプレート143も設けられている。
【0027】
打抜パンチ11は、円柱状又は多角柱状であり、送り孔2の寸法・形状に応じた直径又は外形(例えば、1.0mm~3.0mm程度)が選択される。この打抜パンチ11は、上型141に設けられている。
【0028】
一方、受けダイス12は、打抜パンチ11を受け入れるダイ孔121をしている。この受けダイス12は、下型142に設けられている。そのため、打抜金型140による打抜き方向は、鉛直方向下方(重力方向)となるが、打抜き方向を鉛直方向上方としてもよい。
【0029】
ダイ孔121は、打抜パンチ11の断面形状と基本的に相似で若干大きく形成されるが、本実施形態では、上型141側よりも下型142側が狭くなっている。具体的には、ダイ孔121は、打抜き方向に直交する方向で切断した断面において、下型142側となる狭小段部122の断面積が上型141側となる有効段部123の断面積よりも5%以上小さい、二段形状で形成されている。ただし、狭小段部122の直径は、打抜きパンチ11の直径よりも小さくなることはない。
【0030】
有効段部123は、例えば、高さが少なくともシート基材1aの厚み以上であるとよく、例えば、1mm以上5mm以下であるとよい。また、狭小段部122も、例えば、高さが1mm以上5mm以下であるとよい。なお、ダイ孔121の形状は、テーパ状でもよいが、多段状が好ましい。
【0031】
また、本実施形態では、収納凹部3の底面に貫通孔としての底孔5を打抜く底孔用の打抜パンチ11及び受けダイス12を備えており、これらは打抜金型140に同じく設置されているが、打抜金型140の上流又は下流に別金型として設置されていてもよい。
【0032】
これら底孔用の打抜パンチ11及び受けダイス12は、基本的に送り孔打抜用打抜パンチ11及び受けダイス12と同様の構造であり、例えば、底孔5の直径(例えば、0.1mm~1.5mm程度)に対応したものが選択される。具体的には、打抜パンチ11が直径0.2mmであり、ダイ孔121の有効段部123が直径0.23mmであり、狭小段部122が直径0.21mmである。なお、実施形態のダイ孔121(有効段部123及び狭小段部122)では、打抜き方向からみた断面が円形状である。
【0033】
つぎに、キャリアテープ1の成形方法について説明する。
図4は、本発明に係る実施形態のキャリアテープ1の成形方法を示すフロー図である。
【0034】
キャリアテープ1の成形方法は、図4に示すように、搬送されるシート基材1aに少なくとも収納凹部3を形成する収納凹部成形工程S1と、シート基材1aを打抜金型140に間欠搬送する間欠搬送工程S2と、シート基材1aの位置決めを行う位置決め工程S3と、収納凹部3の側方に送り孔2を形成する送り孔打抜工程S4と、を少なくとも含んでいる。また、上述したように、本実施形態では、収納凹部3の底面に底孔5を打抜く底孔打抜工程S5を追加的に含んでいる。
【0035】
収納凹部成形工程S1では、成形部120によって、シート基材1aに収納凹部3を搬送方向MDに沿って複数形成するとともに、搬送方向MDと直交する幅方向WDに1列(単列)形成する。
【0036】
間欠搬送工程S2は、収納凹部3が成形されたシート基材1aを、上述した所定の搬送ピッチで打抜金型140に間欠搬送する。この間欠搬送工程S2では、打抜金型140の定位置に搬送するが、間欠動作であるため、搬送方向MDや幅方向WDに搬送ズレが多少発生する。
【0037】
位置決め工程S3は、間欠搬送工程S2によって搬送されたシート基材1aの搬送ズレを修正して、次の送り孔打抜工程S4で正確な位置に送り孔2を打抜けるように位置決めを行うものである。位置決め工程S3は、パイロットピンなどを収納凹部3又は収納凹部3と同時に成形されたダミー凹部4あるいは送り孔2に挿入して位置決めを行うとよい。
【0038】
送り孔打抜工程S4では、打抜金型140によって、シート基材1aに成形された収納凹部3の側方の所定の位置に送り孔2を形成する(図1参照)。なお、送り孔2の打抜き予定位置にダミー凹部4が成形されている場合には、ダミー凹部4を除去しながら、送り孔2を打抜くようにしてもよい。
【0039】
そして、最後に、底孔打抜工程S5で、シート基材1aに成形された収納凹部3の底面の所定の位置(中央)に底孔5を形成する(図1参照)。本実施形態では、この底孔打抜工程S5は、先の送り孔打抜工程S4と同時に行われるが、同時に行わない場合には、位置決め工程S3をそれぞれ直前に行うことになる。また、収納凹部3の底面に底孔5が必要でない場合には、当然この底孔打抜工程S5は省略される。
【0040】
このような送り孔打抜工程S4及び底孔打抜工程S5では、まず、図3Aに示すように、上型141及び下型142の相対的上下動の上死点での待機状態で、シート基材1aが間欠搬送されてくるまで待機している。
【0041】
つぎに、図3Bに示すように、上型141及び下型142の相対的上下動の下死点まで接近させるとともに、ストリッパプレート143と受けダイス12との間に、シート基材1aを挟持し、打抜パンチ11での貫通孔2,5を打抜く。なお、下死点では、打抜パンチ11は、下型141(受けダイス12)側の狭小段部122まで進入している。
【0042】
ところで、打抜きパンチ11を用いた貫通孔2,5の打抜きは、基本的にせん断の形態であるが、引張(延伸)形態の面もあるため、打抜かれた抜きカスDEの形状・面積は、打抜きパンチ11先端の形状・面積とは完全には一致せず、若干いびつに変形した形状(糸バリなども含む。)を呈している。
【0043】
そして、図3Cに示すように、上死点へ復帰していくと、打抜パンチ11は、狭小段部122から有効段部123へと退出し、受けダイス12のダイ孔121から抜け出すことになる。このとき、狭小段部122には、いびつに打抜かれた抜きカスDEが保持され、残留することになる。
【0044】
打抜金型140は、このような上死点及び下死点間の上下動を行うことで、送り孔2又は底孔5を打抜くことができる。
【0045】
(実験例)
ここで、成形装置100を用いて、収納凹部3のピッチP1を4mm、送り孔2の直径を1.5mm、底孔5の直径を0.2mm又は1,0mmとする、幅8mmのキャリアテープ1(ポリスチレン製)を100m長さに成形した。ただし、実施例1及び2は、本実施形態の打抜金型140を用い(図3A参照)、比較例1及び2は従来技術の打抜金型240(図5A参照)を用いた。
【0046】
図5A図5Cは、従来技術の打抜金型140を示す概略断面図であり、図5Aは上死点状態であり、図5Bは下死点状態であり、図5Cは復帰途中である。
【0047】
そして、キャリアテープ1の外観について、底孔5の開口縁におけるバリ発生の有無を確認した。また、カス上がりの発生の有無についても観察した。
【0048】
図6は、従来技術のキャリアテープ1におけるバリ6(糸、薄皮)の発生状況を示す平面図である。図7は、底孔打抜工程S5において、バリの発生とカス上がりの発生を観察した実験結果を示す表1である。
【0049】
表1の結果から、比較例1及び2では、いずれもバリの発生は無かったものの、カス上がりの発生がみられた。特に、底孔5の直径が小さい場合には、カス上がりが1000か所に1か所の割合(0.1%)程度の頻度で発生した。
【0050】
一方、実施例1及び2では、底孔5の開口縁にバリの発生もなく、カス上がりの発生も、底孔5の直径に関わらず、みられなかった。なお、送り孔2についても、同様の実験を行ったが、底孔5(直径1.0mm)の場合と、大きな差異はみられなかった。
【0051】
以上説明したとおり、本発明の実施形態に係るキャリアテープ1の成形方法は、部品EPを収納可能な収納凹部3を有するキャリアテープ1の成形方法であって、シート基材1aに収納凹部3を成形する収納凹部成形工程S1と、収納凹部3の側方又は収納凹部の底面に貫通孔2,5を打抜く孔打抜工程(送り孔打抜工程S4又は底孔打抜工程S5)と、を含み、孔打抜工程S4,S5は、上型141に設けられた打抜パンチ11と、下型142に設けられ、打抜パンチ11を受け入れるダイ孔121を有する受けダイス12と、を備える打抜金型140を用いて、貫通孔2,5を打抜き、受けダイス12のパンチ孔121の形状(直径)は、下型142(受けダイス12)側の部分(狭小段部)122が上型141側の部分(有効段部)123よりも狭い。
【0052】
また、本発明の実施形態に係るキャリアテープ1の打抜金型140は、上型141に設けられ、貫通孔2,5を打抜く打抜パンチ11と、下型142に設けられ、打抜パンチ11を受け入れるダイ孔121を有する受けダイス12と、打抜パンチ11と受けダイス12とを相対的に接離させる昇降手段と、を備え、ダイ孔121の直径は、下型142側の部分(狭小段部)122が上型141側の部分(有効段部)123よりも狭くなっている。
【0053】
これにより、シート基材1aに送り孔2又は底孔5を打抜いた抜きカスDEを、ダイ孔121の狭小段部122に保持させることができ、抜きカスDEを打抜パンチ11の先端から引き剥がすことができる。これにともない、抜きカスDEが受けダイス12の表面に排出される、いわゆるカス上がりを防止することができる。そのため、カス上がりに起因する各種不具合、例えば、抜きカスDEのキャリアテープ1への付着や、打抜金型140(ダイ孔121)内でのカス詰まりによる打抜パンチの変形・偏芯、打抜金型140の偏摩耗による短命化などを防止することができる。
【0054】
なお、抜きカスDEが付着したキャリアテープ1を電子部品の実装機で使用すると、変形のような物理的な異常や画像検査異常などにより搬送不良や機械停止につながったり、抜きカスDEが収納凹部3に収納した電子部品に付着して接点不良を起こしたりすることが予想される。
【0055】
実施形態のダイ孔121の形状は、打抜き方向に直交する方向で切断した断面において、下型142側の狭小段部122の断面積が、上型141側の有効段部123の断面積よりも5%以上小さい。これにより、狭小段部122の断面積を抜きカスDEの(断)面積と等しくするか近づけることができ、抜きカスDEをダイ孔121の狭小段部122に保持させることができる。
【0056】
実施形態のダイ孔121の形状は、二段又は多段状である。これにより、受けダイス12のダイ孔121の開口縁(頂面や内周面)が打抜パンチ11と接触することで摩耗したとしても、ダイ孔121の上面(受けダイス12の表面)を(再)研磨することで、有効段部123の高さは低くなるものの、有効段部123の円筒形状を維持することができる。また、狭小段部122までの深さも浅くなるものの、ダイ孔121を有効段部123と狭小段部122とからなる構造に維持することができる。そのため、受けダイス12の再利用が可能になる。
【0057】
実施形態の送り孔打抜工程S4及び/又は底孔打抜工程S5において、打抜パンチ11は、ダイ孔121における下型142側の狭小段部122まで進入する。これにより、抜きカスDEを、狭小段部122までより確実に進入させることができる。
【0058】
実施形態のダイ孔121の形状は、上型141側の有効段部123の高さが1mm以上5mm以下である。これにより、有効段部123の高さをキャリアテープ1(シート基材1a)の厚みよりも大きくすることができ、カス上がりをより確実に防止することができる。また、昇降手段によるストロークが長くならないため、受けダイス12のダイ孔121に対する打抜パンチ11の直進性を維持することができる。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0060】
(変形例)
上記実施形態では、1枚のシート基材1aから単列のキャリアテープ1を成形したが、広幅のシート基材1aから、複数列のキャリアテープ1を成形してもよい。
【0061】
上記実施形態では、狭小段部122に保持された抜きカスDEは、次回の打抜き動作の打抜きパンチ11によって、押し出されるように狭小段部122から排出(落下)されるが、吸引手段を設けて、吸引してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 キャリアテープ、1a シート基材、2 送り孔(貫通孔)、3 収納凹部、4 ダミー凹部、5 底孔(貫通孔)、6 バリ
11 打抜パンチ、12 受けダイス、121 ダイ孔、122 狭小段部、123 有効段部
100 成形装置、110 加熱部、120 成形部、130 アキューム部、150 間欠搬送部、160 位置決め機構
140 打抜金型、141 上型、142 下型、143 ストリッパプレート
21 打抜パンチ、22 受けダイス、221 ダイ孔
EP 部品、DE 抜きカス
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7