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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141783
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】検体測定装置および検体測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20241003BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01N35/02 H
G01N35/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053616
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 雅志
(72)【発明者】
【氏名】勝見 宏則
(72)【発明者】
【氏名】大淵 仁史
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058AA07
2G058AA09
2G058CB08
2G058CB15
2G058EA02
2G058ED35
2G058GA01
2G058GB10
2G058GC02
2G058GC05
2G058GC06
(57)【要約】
【課題】測定の緊急度が高い検体の割り込み測定を迅速に行うことが可能な検体測定装置を提供する。
【解決手段】検体測定装置300は、第1の検体容器1を保持した第1の検体ラック2が設置される一般検体ラック設置部21と、検体容器1よりも優先して検体の測定が行われる第2の緊急検体容器1bを保持した第2の緊急検体ラック2bが設置される割込検体ラック設置部23と、検体ラック2を検体吸引位置P1に搬送する第1搬送路31と、検体吸引位置P1を介さずに緊急検体ラック2bを検体吸引位置P2に搬送する第2搬送路32とを備える。検体吸引位置P1は、吸引管111aが検体吸引位置P2から検体分注位置P31に移動するときの移動経路の下方から外れた位置にある。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1検体容器を保持した第1検体ラック、および前記第1検体容器よりも優先して検体の測定が行われる第2検体容器を保持した第2検体ラックが設置される検体ラック設置部と、
前記検体ラック設置部に設置された前記第1検体ラックを、前記第1検体容器から検体を吸引するための第1吸引位置を介して搬送する第1搬送路と、
前記検体ラック設置部に設置された前記第2検体ラックを、前記第1吸引位置を介さずに搬送する第2搬送路と、
前記第2搬送路によって搬送された前記第2検体ラックに保持され、第2吸引位置にある前記第2検体容器内に吸引管を進入させて検体を吸引し、前記吸引管を吐出位置に移動し、吸引した検体を前記吐出位置において容器に吐出する吸引部を含み、検体を測定する測定部と、
を備え、
前記第1吸引位置は、前記吸引管が前記第2吸引位置から前記吐出位置に移動するときの移動経路の下方から外れた位置にある、
検体測定装置。
【請求項2】
前記第2搬送路から前記第2検体ラックを受け取り、受け取った前記第2検体ラックに保持された前記第2検体容器を前記第2吸引位置に配置するラック受取部をさらに備える、請求項1に記載の検体測定装置。
【請求項3】
前記ラック受取部は、さらに、前記第1搬送路から前記第1検体ラックを受け取り、受け取った前記第1検体ラックを前記第2搬送路に受け渡す、請求項2に記載の検体測定装置。
【請求項4】
前記ラック受取部は、ラックを載置する載置台と、前記載置台を、前記第1搬送路に隣接する位置と前記第2搬送路に隣接する位置とに移動させる載置台移動部と、を含む、請求項2に記載の検体測定装置。
【請求項5】
前記第1搬送路および前記第2搬送路による搬送動作を制御する制御部をさらに備える、請求項1に記載の検体測定装置。
【請求項6】
前記検体ラック設置部に設置された前記第2検体ラックまたは前記第2検体容器を検知する検知部をさらに備え、
前記制御部は、前記検知部が前記第2検体ラックまたは前記第2検体容器を検知したときに、前記検体ラック設置部にある前記第1検体ラックの搬出を禁止し、前記第2搬送路を介して前記第2吸引位置に前記第2検体ラックを搬送するよう、前記第1搬送路および前記第2搬送路を制御する、請求項5に記載の検体測定装置。
【請求項7】
前記検体ラック設置部に設置された前記第2検体ラックまたは前記第2検体容器を検知する検知部をさらに備え、
前記制御部は、前記検知部が前記第2検体ラックまたは前記第2検体容器を検知したときに、前記第1搬送路にある前記第1検体ラックの搬出を禁止し、前記第2搬送路を介して前記第2吸引位置に前記第2検体ラックを搬送するよう、前記第1搬送路および前記第2搬送路を制御する、請求項5に記載の検体測定装置。
【請求項8】
前記第2検体ラックを回収するラック回収部をさらに備え、
前記制御部は、前記第2吸引位置に搬送された前記第2検体ラックを、前記第2搬送路を介して前記ラック回収部に回収するよう、前記第2搬送路を制御する、請求項5に記載の検体測定装置。
【請求項9】
前記第2搬送路から前記第2検体ラックを受け取り、受け取った前記第2検体ラックに保持された前記第2検体容器を前記第2吸引位置に配置し、前記第1搬送路から前記第1ラックを受け取り、受け取った前記第1ラックを前記第2搬送路に受け渡すラック受取部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1吸引位置に搬送された前記第1検体ラックを、前記受取部および前記第2搬送路を介して前記ラック回収部に回収するよう、前記ラック受取部および前記第2搬送部を制御する、請求項8に記載の検体測定装置。
【請求項10】
前記検体ラック設置部に設置された前記第2検体ラックまたは前記第2検体容器を検知する検知部をさらに備え、
前記制御部は、前記検知部が前記第2検体ラックまたは前記第2検体容器を検知したときに、前記ラック受取部および前記第2搬送路にある前記第1検体ラックを前記ラック回収部に回収するよう、前記ラック受取部および前記第2搬送路を制御する、請求項9に記載の検体測定装置。
【請求項11】
前記吸引部は、前記第1吸引位置にある前記第1検体容器内に前記吸引管を進入させて検体を吸引する、請求項1に記載の検体測定装置。
【請求項12】
前記吸引部は、前記第1吸引位置にある前記第1検体容器内に前記吸引管以外の吸引管を進入させて検体を吸引する、請求項1に記載の検体測定装置。
【請求項13】
前記第2吸引位置は、前記吸引管または前記吸引管以外の吸引管が前記第1吸引位置から、吸引した検体の容器への吐出位置に移動するときの移動経路の下方から外れた位置にある、請求項11または12に記載の検体測定装置。
【請求項14】
前記第1搬送路と前記第2搬送路とは、平行に並んで配置されている、請求項1に記載の検体測定装置。
【請求項15】
前記第1搬送路と前記第2搬送路とは、上下方向に並んで配置されている、請求項1に記載の検体測定装置。
【請求項16】
前記第1搬送路は、前記第2搬送路の上方に配置されている、請求項15に記載の検体測定装置。
【請求項17】
前記ラック受取部は、前記ラック受取部上の前記第2検体ラックの移動を抑止する移動抑止部を含む、請求項2に記載の検体測定装置。
【請求項18】
前記吸引部は、前記吸引管と、前記吸引管を移動させる吸引管移動部と、を含む、請求項1に記載の検体測定装置。
【請求項19】
前記吸引管移動部は、前記第1搬送路に沿って前記吸引管を移動させる第1移動機構と、平面視で前記第1搬送路と交差する方向に前記吸引管を移動させる第2移動機構と、を含む、請求項18に記載の検体測定装置。
【請求項20】
前記検体ラック設置部は、前記第1検体ラックが設置される第1設置部と、前記第2検体ラックが設置される第2設置部と、を含み、
前記検体測定装置は、前記第1設置部から前記第1検体ラックを受け取り、受け取った前記第1検体ラックを前記第1搬送路に受け渡し、前記第2設置部から前記第2検体ラックを受け取り、受け取った前記第2検体ラックを前記第2搬送路に受け渡す搬送部をさらに備える、請求項1に記載の検体測定装置。
【請求項21】
前記第1搬送路および前記第2搬送路の少なくとも一方を通過した前記第1検体ラックを、検体を吸引するための第3吸引位置を介して搬送する第3搬送路と、
前記第1搬送路および前記第2搬送路の少なくとも一方を通過した前記第2検体ラックを、前記第3吸引位置を介さずに搬送する第4搬送路と、
前記第4搬送路によって搬送された前記第2検体ラックに保持され、第4吸引位置にある前記第2検体容器内に第2吸引管を進入させて検体を吸引し、前記第2吸引管を第2吐出位置に移動し、吸引した検体を第2吐出位置において容器に吐出する第2吸引部を含み、検体を測定する第2測定部と、
をさらに備え、
前記第3吸引位置は、前記第2吸引管が前記第4吸引位置から前記第2吐出位置に移動するときの移動経路の下方から外れた位置にある、請求項1に記載の検体測定装置。
【請求項22】
第1検体容器を保持した第1検体ラックを、検体を吸引するための第1吸引位置に搬送し、
前記第1検体容器よりも優先して検体の測定が行われる第2検体容器を保持した第2検体ラックの設置を検知し、
前記第2検体ラックの設置を検知すると、設置された前記第2検体ラックを、前記第1吸引位置を介さずに搬送して前記第2検体ラックに保持された前記第2検体容器を第2吸引位置に配置し、
吸引管を進入させて前記第2吸引位置にある前記第2検体容器から検体を吸引し、
前記第1吸引位置の上方を介さずに前記第2吸引位置から吐出位置に前記吸引管を移動し、
前記吐出位置において、容器に検体を吐出し、
前記容器に吐出した検体を測定する、
検体測定方法。
【請求項23】
前記第2検体ラックの設置を検知すると、前記第1検体ラックの前記第1吸引位置への搬送の開始を禁止すること、をさらに含む、請求項22に記載の検体測定方法。
【請求項24】
検体の吸引が完了した前記第2検体容器を保持した前記第2検体ラックを所定のルートを介して回収し、
検体の吸引が完了した前記第1検体容器を保持した前記第1検体ラックを前記所定のルートの少なくとも一部を介して回収する、請求項22に記載の検体測定方法。
【請求項25】
第1検体容器を保持した第1検体ラック、および前記第1検体容器よりも優先して検体の測定が行われる第2検体容器を保持した第2検体ラックが設置される検体ラック設置部と、
前記第1検体ラックを回収するラック回収部と、
前記検体ラック設置部に設置された前記第1検体ラックを、前記第1検体容器から検体を吸引するための第1吸引位置を介して搬送する第1搬送路と、
検体が吸引された前記第1検体容器を保持した前記第1検体ラックを前記ラック回収部に向けて搬送するとともに、前記検体ラック設置部に設置された前記第2検体ラックを、前記第1吸引位置を介さずに搬送する第2搬送路と、
前記第1搬送路によって搬送された前記第1検体ラックに保持され、前記第1吸引位置にある前記第1検体容器から検体を吸引し、測定するとともに、前記第2搬送路によって搬送された前記第2検体ラックに保持され、第2吸引位置にある前記第2検体容器から検体を吸引し、測定する測定部と、を備える、
検体測定装置。
【請求項26】
前記第2搬送路は、検体が吸引された前記第2検体容器を保持した前記第2検体ラックを前記ラック回収部に向けて搬送する、請求項25に記載の検体測定装置。
【請求項27】
前記第2搬送路は、前記第2検体ラックを前記第2吸引位置に向けて第1の方向に搬送し、前記第1検体ラックを前記ラック回収部に向けて前記第1の方向と反対の第2の方向に搬送する、請求項25に記載の検体測定装置。
【請求項28】
前記第2搬送路による搬送動作を制御する制御部と、
前記検体ラック設置部に設置された前記第2検体ラックまたは前記第2検体容器を検知する検知部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記検知部が前記第2検体ラックまたは前記第2検体容器を検知したときに、前記第2搬送路にある前記第1検体ラックを前記ラック回収部に回収するよう、前記第2搬送路を制御する、請求項25に記載の検体測定装置。
【請求項29】
第1検体容器を保持した第1検体ラックを、検体を吸引するための第1吸引位置に搬送し、
前記第1吸引位置にある前記第1検体容器から検体を吸引し、測定し、
検体が吸引された前記第1検体容器を保持した前記第1検体ラックを、搬送路を介してラック回収部に搬送し、
前記第1検体容器よりも優先して検体の測定が行われる第2検体容器を保持した第2検体ラックの設置を検知し、
前記第2検体ラックの設置を検知すると、設置された前記第2検体ラックを、前記第1吸引位置を介さずに前記搬送路を介して搬送して、前記第2検体ラックに保持された前記第2検体容器を第2吸引位置に配置し、
前記第1吸引位置にある前記第1検体容器に優先して、前記第2吸引位置にある前記第2検体容器から検体を吸引し、測定する、
検体測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体測定装置および検体測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体の測定を行う測定部に検体ラックを搬送し、搬送した検体ラックを測定部から回収する検体搬送装置を備えた検体測定装置が知られている。また、測定の緊急度が高い緊急検体を通常の一般検体に優先して測定することが可能な検体測定装置も提案されている(たとえば、特許文献1,2参照)。特許文献1の装置は、緊急検体の測定依頼を検知した場合に、検体の吸引を行うサンプリングラインから一般検体を保持するラックを所定の待機位置に退避させるように構成されている。特許文献2の装置では、緊急検体を保持するラックを通常の検体吸引位置に引き込まず、主搬送ライン上に停止させて緊急検体を吸引する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2016/017442号公報
【特許文献2】特開2009-8552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行文献1の装置では、緊急検体の測定を行う際に、サンプリングライン上にある一般検体のラックを退避させる必要があるため、検体ラックの搬送効率が悪化する。また、先行文献2の装置では、検体分注装置のサンプリングプローブが主搬送ライン上の緊急検体を吸引した後、一般検体の吸引位置の上を通過して移動し、反応ディスク上の反応容器に緊急検体を分注するため、サンプリングプローブに付着した検体が一般検体の吸引位置で落下して一般検体の容器内に混入するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る検体測定装置(300)は、第1検体容器(1a)を保持した第1検体ラック(2a)、および前記第1検体容器(1a)よりも優先して検体の測定が行われる第2検体容器(1b)を保持した第2検体ラック(2b)が設置される検体ラック設置部(21、23)と、前記検体ラック設置部(21)に設置された前記第1検体ラック(2a)を、前記第1検体容器(1a)から検体を吸引するための第1吸引位置(P1)を介して搬送する第1搬送路(31)と、前記検体ラック設置部(23)に設置された前記第2検体ラック(2b)を、前記第1吸引位置(P1)を介さずに搬送する第2搬送路(32)と、前記第2搬送路(32)によって搬送された前記第2検体ラック(2b)に保持され、第2吸引位置(P2)にある前記第2検体容器(1b)内に吸引管(701、703)を進入させて検体を吸引し、前記吸引管(701、703)を吐出位置(P31)に移動し、吸引した検体を前記吐出位置(P31)において容器(3)に吐出する吸引部(701)を含み、検体を測定する測定部(10)と、を備え、前記第1吸引位置(P1)は、前記吸引管(701)が前記第2吸引位置(P2)から前記吐出位置(P31)に移動するときの移動経路の下方から外れた位置にあることを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、第2検体ラックの第2検体容器から検体を吸引するために、第1吸引位置にある第1検体ラックを退避させる必要がない。また、第2検体容器から検体を吸引した吸引管は、第1吸引位置の上を通過しないため、第2検体容器の検体が第1吸引位置に落下して第1検体容器に混入するおそれがない。
【0007】
本発明に係る検体測定方法は、第1検体容器(1a)を保持した第1検体ラック(2a)を、検体を吸引するための第1吸引位置(P1)に搬送し、前記第1検体容器(1a)よりも優先して検体の測定が行われる第2検体容器(1b)を保持した第2検体ラックの設置(2b)を検知し、前記第2検体ラック(2b)の設置を検知すると、設置された前記第2検体ラック(2b)を、前記第1吸引位置(P1)を介さずに搬送して前記第2検体ラック(2b)に保持された前記第2検体容器(1b)を第2吸引位置(P2)に配置し、吸引管(701,703)を進入させて前記第2吸引位置(P2)にある前記第2検体容器(1b)から検体を吸引し、前記第1吸引位置(P1)の上方を介さずに前記第2吸引位置(P2)から吐出位置(P31)に前記吸引管(701,703)を移動し、前記吐出位置(P31)において、容器(3)に検体を吐出し、前記容器(3)に吐出した検体を測定することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、第2検体ラックの第2検体容器から検体を吸引するために、第1吸引位置にある第1検体ラックを退避させる必要がない。また、第2検体容器から検体を吸引した吸引管は、第1吸引位置の上を通過しないため、第2検体容器の検体が第1吸引位置に落下して第1検体容器に混入するおそれがない。
【0009】
本発明に係る検体測定装置(300)は、第1検体容器(1a)を保持した第1検体ラック(2a)、および前記第1検体容器(1a)よりも優先して検体の測定が行われる第2検体容器(1b)を保持した第2検体ラック(2b)が設置される検体ラック設置部(21,23)と、前記第1検体ラック(2a)を回収するラック回収部(22)と、前記検体ラック設置部(21、23)に設置された前記第1検体ラック(2a)を、前記第1検体容器(1a)から検体を吸引するための第1吸引位置(P1)を介して搬送する第1搬送路(31)と、検体が吸引された前記第1検体容器(1a)を保持した前記第1検体ラック(2a)を前記ラック回収部(22)に向けて搬送するとともに、前記検体ラック設置部(21、23)に設置された前記第2検体ラック(2b)を前記第1吸引位置(P1)を、介さずに搬送する第2搬送路(32)と、前記第1搬送路(31)によって搬送された前記第1検体ラック(2a)に保持され、前記第1吸引位置(P1)にある前記第1検体容器(1a)から検体を吸引し、測定するとともに、前記第2搬送路(32)によって搬送された前記第2検体ラック(2b)に保持され、第2吸引位置(P2)にある前記第2検体容器(1b)から検体を吸引し、測定する測定部(10)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、第2検体ラックの第2検体容器から検体を吸引するために、第1吸引位置にある第1検体ラックを退避させる必要がない。また、第2搬送路が、検体が吸引された前記第1検体容器を保持した第1検体ラックのラック回収部に向けた搬送と、第2検体ラックの第2吸引位置に向けた搬送と、に共用されるため、検体測定装置を小型化することができる。
【0011】
本発明に係る検体測定方法は、第1検体容器(1a)を保持した第1検体ラック(2a)を、検体を吸引するための第1吸引位置(P1)に搬送し、前記第1吸引位置(P1)にある前記第1検体容器(1a)から検体を吸引し、測定し、検体が吸引された前記第1検体容器(1a)を保持した前記第1検体ラック(2a)を、搬送路(32)を介してラック回収部(22)に搬送し、前記第1検体容器(1a)よりも優先して検体の測定が行われる第2検体容器(1b)を保持した第2検体ラックの設置(2b)を検知し、前記第2検体ラック(2b)の設置を検知すると、設置された前記第2検体ラック(2b)を、前記第1吸引位置(P1)を介さずに前記搬送路(32)を介して搬送して、前記第2検体ラック(2b)に保持された前記第2検体容器(1b)を第2吸引位置(P2)に配置し、前記第1吸引位置(P1)にある前記第1検体容器(1a)に優先して、前記第2吸引位置(P2)にある前記第2検体容器(1b)から検体を吸引し、測定することを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、第2検体ラックの第2検体容器から検体を吸引するために、第1吸引位置にある第1検体ラックを退避させる必要がない。また、搬送路が、検体が吸引された前記第1検体容器を保持した第1検体ラックのラック回収部に向けた搬送と、第2検体ラックの第2吸引位置に向けた搬送と、に共用されるため、本検体測定方法を実行する検体測定装置を小型化することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る検体測定装置によれば、第2検体容器の検体を優先して測定する際に、第1吸引位置にある第1検体ラックを第1吸引位置から退避させる必要がない。このため、たとえば、測定の緊急度が高い検体の割り込み測定を迅速に行うことができる。また、第1検体容器への他の検体の混入を十分に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の検体測定装置の模式的な斜視図である。
図2】検体ラックを示した模式的な斜視図である。
図3】検体搬送部を部分的に示す模式的な斜視図である。
図4】検体搬送部の上部を拡大して示した模式的な側面図である。
図5】検体搬送部の内部構造を説明するための斜視説明図である。
図6】割込検体ラック設置部の斜視説明図である。
図7】第1昇降部の斜視説明図である。
図8】昇降載置部の斜視説明図である。
図9】第2昇降部におけるラック固定機構を模式的に示す斜視図である。
図10】第2読取部の動作を説明するための図である。
図11】測定部の構成を説明するための平面説明図である。
図12】測定部の構成を説明するための模式的な断面説明図である。
図13】検体分注部を模式的に示す斜視図である。
図14】検体測定装置の制御に関わる構成を示したブロック図である。
図15】一般検体ラックの搬送径路を示す図である。
図16】一般検体ラックを搬送する場合の検体搬送部の動作を説明するための図である。
図17】一般検体の処理に関する検体測定装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図18】一般検体ラックの送出処理を説明するためのフローチャートである。
図19】ラック回収処理を説明するためのフローチャートである。
図20】検体測定処理を説明するためのフローチャートである。
図21】検体測定の流れを説明するための図である。
図22】緊急検体ラックの搬送経路を示す図である。
図23】緊急検体ラックの搬送経路、および緊急検体を割り込み測定する場合の検体測定装置の動作を説明するための図である。
図24】検体分注部の動作を説明するための図である。
図25】緊急検体の割り込み処理を説明するためのフローチャートである。
図26】緊急検体ラックの送出処理を説明するためのフローチャートである。
図27】第1変形例を説明するための模式図である。
図28】第1変形例における緊急検体ラックの搬送経路、および緊急検体を割り込み測定する場合の検体測定装置の動作を説明するための図である。
図29】第2変形例を説明するための模式図である。
図30】第3変形例を説明するための模式図である。
図31】第4変形例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る検体測定装置および検体測定方法の実施形態の一例について詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、検体測定装置300は、測定部10と、検体搬送部20と、分析部400と、を備える。
【0017】
測定部10は、検体容器1から検体を吸引して、吸引した検体の測定を行うように構成されている。具体的には、測定部10は、抗原抗体反応を利用して検体中の被検物質を検出する免疫測定装置である。検体は、血清または血漿である。
【0018】
測定部10は、前面10aおよび背面10bと、一対の側面10c、10dとを有する。測定部10は、箱状の筐体に、検体測定を行うための各種の機構が収容された構造を有し、前面10aおよび背面10bと、一対の側面10c、10dとは、それぞれ、筐体の前面、背面、および一対の側面である。
【0019】
以下、水平面内で、測定部10の前面10aに沿った横方向をX方向とし、X方向の一方側および他方側をそれぞれX1方向、X2方向とする。水平面内で、測定部10の側面10c、10dに沿った前後方向をY方向とし、Y方向の奥側(背面10b側)をY1方向、Y方向の手前側(前面10a側)をY2方向とする。X方向およびY方向と直交する上下方向をZ方向とし、Z方向のうち上方向をZ1方向、下方向をZ2方向とする。
【0020】
検体搬送部20は、測定部10による検体の吸引位置に検体容器1を搬送するように構成されている。測定部10は、検体搬送部20によって吸引位置に搬送された検体容器1から検体を吸引して、吸引した検体の測定を行う。
【0021】
検体搬送部20は、検体容器1を保持した検体ラック2を設置可能である。検体搬送部20には、ユーザによって、測定部10において検体が吸引される前の検体容器1を保持した検体ラック2が設置される。検体搬送部20は、設置された検体ラック2を測定部10に向けて搬送するように構成されている。検体搬送部20は、測定部10において検体が吸引された検体容器1を保持した検体ラック2(以下、検体吸引済みの検体ラック2という)を、回収して、貯留するように構成されている。検体吸引済みの検体ラック2は、ユーザによって、検体搬送部20から取り出される。
【0022】
検体搬送部20は、測定部10の一方(X1側)の側面10cと隣り合うように、測定部10のX1側に配置されている。検体搬送部20は、測定部10のX1側の側面10cに沿って前後方向(Y方向)に延びる。検体搬送部20は、前面20aおよび背面20bと、一対の側面20c、20dとを有する。前面20aおよび背面20bは、検体搬送部20の長手方向(Y方向)の各端面である。一対の側面20c、20dは、検体搬送部20の短手方向(X方向)の各端面である。
【0023】
図2に示すように、検体ラック2は、一対の長辺側側面2xと、一対の短辺側側面2yとを含む直方体形状を有している。長辺側側面2xが延びる方向が、検体ラック2の長手方向Aであり、短辺側側面2yが延びる方向が、検体ラック2の短手方向Bである。検体ラック2は、上面から下方に延びる保持孔2cを複数有する。1つの保持孔2cに対して、1本の検体容器1が挿入されることにより、検体容器1が保持される。複数の保持孔2cは、検体ラック2の長手方向Aに沿って、間隔を隔てて直線状に設けられている。一方の長辺側側面2xには、検体ラック2を識別するための識別情報を示すバーコードラベル2dが貼付されている。検体ラック2の底部には、後述する横送り機構36の係合片36a(図5参照)と係合する係合溝2eが形成されている。
【0024】
検体容器1は、円筒形状を有し、上端が開口するとともに底部が閉じた円筒状容器である。検体容器1の内部には被検者から採取された検体が収容される。検体容器1の側面には、検体容器1を識別するための識別情報を示すバーコードラベル1cが貼付されている。各保持孔2cは、一方の長辺側側面2xに繋がった切り欠き状に形成されていて、保持孔2c内に挿入された検体容器1の側面が一方の長辺側側面2xから部分的に露出する。ユーザは、検体容器1のバーコードラベル1cが長辺側側面2xの切り欠き部分から露出するように検体容器1の向きを合わせて、保持孔2cに検体容器1を挿入する。
【0025】
検体測定装置300の測定対象には、通常の一般検体と、一般検体よりも優先して測定が行われる割込検体とが存在する。詳しくは後述するが、検体測定装置300によれば、割込検体の測定を迅速に行うことができ、また割込検体の測定後に、一般検体の測定を迅速に再開できる。割込検体としては、たとえば、被検者の検体である緊急検体、所定の成分を所定量含有し、測定部10の精度管理に用いられるコントロール検体、測定部10から出力される検出信号を所定成分の濃度に換算するための検量線の作成に用いられるキャリブレータ等が挙げられる。
【0026】
本実施形態では、いずれの検体も同種の検体容器1に収容され、同種の検体ラック2に保持されて測定部10に搬送される。以下では、割込検体が測定の緊急度が高い緊急検体であるものとして説明する。説明の便宜上、一般検体を収容した第1の検体容器を「一般検体容器1a」、緊急検体を収容した第2の検体容器を「緊急検体容器2b」という場合がある。また、一般検体容器1aを保持する第1の検体ラックを「一般検体ラック2a」、緊急検体容器1bを保持する第2の検体ラックを「緊急検体ラック2b」という場合がある。
【0027】
図3は、検体搬送部20の一部を模式的に示す斜視図である。図1および図3に示すように、検体搬送部20は、検体ラック設置部200と、ラック回収部22と、第1昇降部27と、搬送機構29(後述する図5参照)とを含む。検体ラック設置部200は、一般検体ラック設置部21と、割込検体ラック設置部23とを含む。また、検体搬送部20はカバー24を有する。カバー24は、検体搬送部20の外装部材であって、第1昇降部27、搬送機構29等を覆う。本実施形態では、一般検体ラック2aおよび緊急検体ラック2bが設置される検体ラック設置部が、別々に設けられている。
【0028】
一般検体ラック設置部21には、一般検体を収容した一般検体容器1aを保持する一般検体ラック2aが設置される。一般検体ラック設置部21は、複数の一般検体ラック2aを設置可能に構成されている。一般検体ラック設置部21は、設置された一般検体ラック2aを測定部10に向けて順番に搬送するように構成されている。割込検体ラック設置部23には、一般検体よりも優先して測定される緊急検体を収容した緊急検体容器1bを保持する緊急検体ラック2bが設置される。割込検体ラック設置部23に設置可能なラック数は、一般検体ラック設置部21に設置可能なラック数よりも少ない。たとえば、一般検体ラック設置部21に設置可能なラック数は25個であり、割込検体ラック設置部23に設置可能なラック数は1個である。
【0029】
一般検体ラック設置部21に設置された一般検体ラック2aよりも先に測定したい緊急検体が発生した場合、ユーザは、緊急検体を収容した緊急検体容器1bを保持した緊急検体ラック2bを割込検体ラック設置部23に設置する。割込検体ラック設置部23に緊急検体ラック2bが設置されると、一般検体ラック設置部21による一般検体ラック2aの送り出しが一旦停止され、割込検体ラック設置部23が、設置された緊急検体ラック2bを優先して(すなわち、割り込み処理として)測定部10へ向けて送り出す。
【0030】
ラック回収部22は、測定部10による検体吸引済みの検体容器1を保持した検体ラック2を回収するように構成されている。ラック回収部22は、複数の検体ラック2を保持可能であり、ユーザによって検体ラック2が取り出されるまで検体ラック2を貯留するように構成されている。ラック回収部22が貯留可能なラック数は、一般検体ラック設置部21に設置可能なラック数以上であり、一例としては30個である。
【0031】
一般検体ラック設置部21、ラック回収部22、および割込検体ラック設置部23は、検体ラック2の長手方向AをX方向に向け、短手方向BをY方向に向けた姿勢で検体ラック2を設置可能である。一般検体ラック設置部21およびラック回収部22において、複数の検体ラック2が、Y方向に沿って並ぶように設置される。一般検体ラック設置部21、ラック回収部22および割込検体ラック設置部23は、検体容器1を保持した検体ラック2を、検体ラック2の短手方向(つまり、Y方向)に搬送するように構成されている。
【0032】
本実施形態では、割込検体ラック設置部23と、一般検体ラック設置部21と、ラック回収部22とは、上下方向に配置されている。つまり、検体搬送部20が、割込検体ラック設置部23と、一般検体ラック設置部21と、ラック回収部22との3階層の階層構造を備えている。これにより、割込検体ラック設置部23と、一般検体ラック設置部21と、ラック回収部22とを全て異なる位置に平面的に配置する場合と比べて、装置の設置面積を縮小できる。また、検体ラック2の設置および回収に関わる3つの作業位置(緊急検体の設置位置、一般検体の設置位置、測定後の検体ラックの取出位置)を同一箇所に集約できるので、検体ラック2の設置および回収に関するユーザの作業負荷を効果的に軽減させることができる。
【0033】
割込検体ラック設置部23は、一般検体ラック設置部21およびラック回収部22の上方に配置されている。ユーザの作業頻度が低い割込検体ラック設置部23を上側に配置することで、ユーザの作業頻度が高い一般検体ラック設置部21およびラック回収部22をより低い高さ位置に配置できる。検体ラック2の設置数が多くなる一般検体ラック設置部21およびラック回収部22が下側に配置されるので、検体搬送部20の重心を下げて検体搬送部20を構造的に安定させることができる。
【0034】
また、一般検体ラック設置部21は、ラック回収部22の上方に配置されている。つまり、下方(Z2方向)から上方(Z1方向)に向けて、第1階層のラック回収部22、第2階層の一般検体ラック設置部21、第3階層の割込検体ラック設置部23がこの順で配置されている。ユーザにとっては、最も低い第1階層が検体ラック2の取出作業位置であり、第2階層および第3階層が、検体ラック2の設置作業位置である。
【0035】
割込検体ラック設置部23、一般検体ラック設置部21およびラック回収部22は、測定部10のX1方向側の側面10c(図1参照)と隣接し、側面10cに沿って前後方向に延びるように設けられている。これにより、検体搬送部20は、それぞれが測定部10の側面10cに沿って前後方向に延びるユニット(割込検体ラック設置部23、一般検体ラック設置部21およびラック回収部22)を、上下方向に3階層設けた構成となるので、検体搬送部20の専有するスペースを効果的に小さくできる。
【0036】
また、割込検体ラック設置部23、一般検体ラック設置部21およびラック回収部22は、共に、検体ラック2を搬送するための単一の搬送レーンCLを有する。一般検体ラック設置部21およびラック回収部22において、検体ラック2は、Y方向に沿って一直線上に配列される。これにより、割込検体ラック設置部23、一般検体ラック設置部21およびラック回収部22が水平面内に複数レーンを備える場合と比べて、割込検体ラック設置部23、一般検体ラック設置部21およびラック回収部22の水平面内の専有面積を小さくできる。その結果、検体搬送部20の設置面積を効果的に縮小できる。
【0037】
本実施形態の検体搬送部20は、検体搬送部20が稼働中でも、検体ラック2の出し入れが可能に構成されている。そのために、検体搬送部20のカバー部24は、ラック回収部22のラック貯留領域22aおよび一般検体ラック設置部21のラック貯留領域21aを覆うことなく外部に開放するように設けられている。
【0038】
図4に示すように、ラック回収部22における検体ラック2の載置面22bが高さH1に位置する。一般検体ラック設置部21の載置面21bが高さH2に位置する。割込検体ラック設置部23の載置面23aが高さH3に位置する。なお、高さH1~H3は、いずれも、検体搬送部20が設置される床面からの高さを意味する。それぞれの載置面の高さの関係は、高さH1<高さH2<高さH3である。一例として、高さH1は約65cmであり、高さH3は約105cmである。なお、高さH1~H3は限定されないが、検体ラック2の設置および取出しを容易にする観点から、高さH1は、好ましくは35cm以上95cm以下、より好ましくは45cm以上85cm以下であってもよい。同様の観点から、高さH3は、好ましくは75cm以上135cm以下、より好ましくは85cm以上125cm以下であってもよい。
【0039】
ラック回収部22の載置面22bと、一般検体ラック設置部21の下面との間の高さ範囲が、載置面22b上の検体ラック2が貯留されるラック貯留領域22aである。一般検体ラック設置部21の載置面21bと、割込検体ラック設置部23の下面との間の高さ範囲が、載置面21b上の検体ラック2が貯留されるラック貯留領域21aである。
【0040】
カバー部24は、検体搬送部20のX1側の側面20cのうち、載置面21b、22b上のラック貯留領域21a、22aに対応する範囲を外部に開放させつつ、検体搬送部20を覆うように設けられている。これにより、本実施形態では、ラック回収部22および一般検体ラック設置部21は、検体搬送部20の稼働中に、検体ラック2の長手方向Aから検体ラック2の出し入れが可能に構成されている。
【0041】
また、割込検体ラック設置部23、一般検体ラック設置部21およびラック回収部22は、共に、測定部10の前後方向(Y方向)に沿って延びるとともに、前端部において検体ラック2の設置または取り出しが可能に構成されている。すなわち、カバー部24は、一般検体ラック設置部21およびラック回収部22の各々のラック貯留領域21a、22aの前端部(Y2方向側端部)をさらに開放するように設けられている。
【0042】
さらに、割込検体ラック設置部23の前端部が、一般検体ラック設置部21の前端部よりも後側(Y1方向)に配置されている。これにより、一般検体ラック設置部21の前端部の上方に、割込検体ラック設置部23によって覆われない空間を確保できる。そのため、一般検体ラック設置部21の上方に割込検体ラック設置部23を設けた場合でも、一般検体ラック設置部21の前端部では、上方から検体ラック2を設置できるので、検体ラック2の設置時の作業性を向上させることができる。
【0043】
同様に、一般検体ラック設置部21の前端部が、ラック回収部22の前端部よりも後側に配置されている。これにより、ラック回収部22の前端部の上方に、一般検体ラック設置部21によって覆われない空間を確保できる。そのため、ラック回収部22の上方に一般検体ラック設置部21を設けた場合でも、ラック回収部22の前端部では、検体ラック2を上方に向けて取り出せるので、検体ラック2の回収時の作業性を向上させることができる。また、ラック回収部22の前端部において検体ラック2の上方が覆われずに露出するので、ユーザが検体ラック2を確認する際の視認性が向上する。
【0044】
以下、図5および図6図10を参照しながら、検体搬送部20の内部構造について詳説する。図5は、検体搬送部20の内部構造を模式的に示す図であって、カバー部24を取り外した状態を示す。
【0045】
図5に示すように、検体搬送部20は、一般検体ラック設置部21、ラック回収部22、および割込検体ラック設置部23が、第1昇降部27を介して、搬送機構29に接続された構造を有する。すなわち、検体搬送部20は、一般検体ラック設置部21および割込検体ラック設置部23に設置される検体ラック2が、第1昇降部27を通って搬送機構29に搬送され、搬送機構29から第1昇降部27を通ってラック回収部22に回収されるラック搬送経路を有する。
【0046】
図5は、一般検体の測定中に、緊急検体ラック2bが割込検体ラック設置部23に設置された状態を図示している。一般的には、一般検体ラック設置部21に複数の一般検体ラック2aが設置されている状態で割込検体ラック設置部23に緊急検体ラック2bが設置されるが、説明の便宜上、一般検体ラック設置部21の一般検体ラック2aの図示を省略している。
【0047】
搬送機構29は、第1搬送路31と、第2搬送路32と、第2昇降部33とを含む。本実施形態では、一般検体容器1aから検体を吸引するための第1の検体吸引位置P1が第1搬送路31上に設定されている。第1搬送路31は、第2搬送路32の上方に配置され、検体吸引位置P1を介して検体ラック2を搬送する。また、緊急検体容器1bから検体を吸引するための第2の検体吸引位置P2は、第2昇降部33の上部であって、検体吸引位置P1と同じ高さの位置に設定されている。第2搬送路32は、第1搬送路31と平行に延びる搬送路であって、緊急検体ラック2bを第2昇降部33に搬送する。後述するように、検体分注部111(後述する図13参照)は、吸引管701をX方向に移動させることが可能であり、第1搬送路31によって搬送され、検体吸引位置P1に配置された一般検体容器1aから検体を吸引する。検体分注部111は、第2昇降部33によって第1搬送路31と同じ高さ位置に配置された緊急検体ラック2bに保持された各緊急検体容器1bの位置に吸引管701をX方向に順次移動させ、各緊急検体容器1bから検体を順次吸引する。本実施形態において、緊急検体ラック2bは、6本の緊急検体容器1bを保持可能であるため、検体吸引位置P2は6箇所ある。
【0048】
一般検体ラック設置部21、ラック回収部22、および割込検体ラック設置部23は、上記のように、いずれもY方向に延び、上下方向(Z方向)に並んで配置されている。搬送機構29の第1搬送路31と第2搬送路32は、いずれもX方向に延びて上下方向に並び、一般検体ラック設置部21、ラック回収部22、および割込検体ラック設置部23と直交するように配置されている。また、第1搬送路31および第2搬送路32のX1方向端部に第1昇降部27が隣接配置され、第1搬送路31および第2搬送路32のX2方向端部に第2昇降部33が隣接配置されている。本実施形態では、一般検体ラック設置部21、ラック回収部22、割込検体ラック設置部23、第1搬送路31、および第2搬送路32のいずれも、異なる高さに位置している。第1搬送路31の搬送面(上面)は、ラック回収部22の載置面22bよりも高く、一般検体ラック設置部21の載置面21bよりも低い位置に配置されている。第2搬送路32の搬送面(上面)は、ラック回収部22の載置面22bよりも低い位置に配置されている。
【0049】
詳しくは後述するが、検体搬送部20は、一般検体ラック設置部21に設置された一般検体ラック2aを、第1昇降路27を介して第1搬送路31の検体吸引位置P1に搬送し、検体吸引済みの一般検体ラック2aを第2昇降部33および第2搬送路32を介してラック回収部22に戻すように動作する。第1昇降路27を介して一般検体ラック2aを一般検体ラック設置部21から検体吸引位置P1に搬送するとき、第1昇降路27は、一般検体ラック設置部21の高さ位置に上昇または下降し、一般検体ラック設置部21から一般検体ラック2aを受け取った後、第1搬送路31の高さ位置に下降し、一般検体ラック2aを第1搬送路31に受け渡す。第1昇降路27を介して一般検体ラック2aを第2搬送路32からラック回収部22に戻すとき、第1昇降路27は、第2搬送路32の高さ位置に下降し、第2搬送路32から一般検体ラック2aを受け取った後、ラック回収部22の高さ位置に上昇し、一般検体ラック2aをラック回収部22に受け渡す。また、検体搬送部20は、割込検体ラック設置部23に設置された緊急検体ラック2bを、第1昇降路27および第2搬送路32を介して第2昇降部33の検体吸引位置P2に搬送し、検体吸引済みの緊急検体ラック2bを第2昇降部33および第2搬送路32を介してラック回収部22に戻すように動作する。第1昇降路27を介して緊急検体ラック2bを割込検体ラック設置部23から検体吸引位置P2に搬送するとき、第1昇降路27は、割込検体ラック設置部23の高さ位置に上昇し、割込検体ラック設置部23から緊急検体ラック2bを受け取った後、第2搬送路32の高さ位置に下降し、緊急検体ラック2bを第2搬送路32に受け渡す。第1昇降路27を介して緊急検体ラック2bを第2搬送路32からラック回収部22に戻すとき、第1昇降路27は、第2搬送路32の高さ位置に下降し、第2搬送路32から緊急検体ラック2bを受け取った後、ラック回収部22の高さ位置に上昇し、緊急検体ラック2bをラック回収部22に受け渡す。
【0050】
検体搬送部20は、さらに、第1読取部28と、第2読取部280とを有する。第1読取部28および第2読取部280は、検体ラック2および各検体容器1の識別情報を読み取るように構成されている。第1読取部28は、第1昇降部27のY1側に隣接した位置のフレームに固定配置され、第1昇降部27において検体ラック2および各検体容器1の識別情報を読み取る。第2読取部280は、第1搬送路31のY1側に隣接配置され、第1搬送路31に沿ってX方向に移動可能に構成されている。第2読取部280は、検体吸引位置P1,P2において検体ラック2および各検体容器1の識別情報を読み取る。
【0051】
検体搬送部20は、ラック回収部22を下方から支持する基部25をさらに含む。ラック回収部22は、基部25上に設けられている。ラック回収部22、一般検体ラック設置部21および割込検体ラック設置部23は、それぞれ、シャーシ26に組み付けられている。
【0052】
以下、検体搬送部20の各構成要素について、さらに詳説する。
【0053】
[一般検体ラック設置部]
一般検体ラック設置部21は、複数の検体ラック2(一般検体ラック2a)が載置可能な載置面21bと、載置面21bの下に配置され、載置面21b上の検体ラック2を移動させる移動機構21cとを含む。ユーザは、載置面21bの任意の位置に検体ラック2を設置することができる。
【0054】
移動機構21cは、載置面21b上の検体ラック2に当接してY1方向に移動させる第1爪部41および第2爪部42を有する。第1爪部41は載置面21bの上方においてX1側に配置され、第2爪部42は載置面21bの上方においてX2側に配置されている。第1爪部41は、スライダ部43から延びる回転軸44に取り付けられている(第2爪部42についても同様)。スライダ部43は、たとえば、Y方向に延びるガイドシャフトにスライド可能に取り付けられ、ガイドシャフトに沿って延びる無端状ベルトの所定位置に固定されている。第1爪部41と第2爪部42は、このベルトが駆動することによりY方向に移動し、検体ラック2をY1方向に移動させて第1昇降部27に受け渡す。
【0055】
移動機構21cは、第1爪部41および第2爪部42の各々の原点位置を検知する原点センサ48a、48bを有する。原点位置は、一般検体ラック設置部21のY2方向端部に設定される。なお、第1爪部41と第2爪部42が一般検体ラック設置部21のY1方向端部から原点位置に戻る際に検体ラック2と接触しても、第1爪部41と第2爪部42は検体ラック2からの反力により回転し、検体ラック2をY1方向に移動させないようになっている。
【0056】
一般検体ラック設置部21には、載置面21b上に設置された検体ラック2の有無を検知するためのラック有無センサ45a、45b、45c、45dと、検体ラック2の受渡位置の直前(後端部)における検体ラック2の有無を検知するための後端部センサ46とが設けられている。ラック有無センサ45aと45bとは、透過型の光学センサの出光部と受光部とであり、載置面21bのY2側半分の上方を斜めに横切るように検知光を送受光する。同様に、ラック有無センサ45cと45dとは、透過型の光学センサの出光部と受光部とであり、載置面21bのY1側半分の上方を斜めに横切るように検知光を送受光する。ラック有無センサ45a、45b、45c、45dによって、載置面21bのどの位置に検体ラック2が設置されても、検体ラック2の有無が検知される。後端部センサ46は、反射型の光学センサであり、載置面21bの後端部(Y1方向端部)に配置されている。
【0057】
一般検体ラック設置部21は、後述する制御部211(図14参照)の制御の下、ラック有無センサ45a~45dにより検体ラック2が検知されると、移動機構21cによって検体ラック2を、一般検体ラック設置部21との受渡位置にある第1昇降部27へ向けてY1方向に移動させる。
【0058】
一般検体ラック設置部21の後端部には、ラックバック機構が設けられている。ラックバック機構は、第1昇降部27に受け渡されずに一般検体ラック設置部21に残留した検体ラック2を、一般検体ラック設置部21の後端部から所定の安全距離だけY2方向に戻す機能を有する。これにより、一般検体ラック設置部21に残留した検体ラック2が、後端部センサ46に検知される位置までY2側に後退し、検体ラック2が後端部から落下することを防止できる。
【0059】
[ラック回収部]
ラック回収部22は、複数の検体ラック2が載置可能な載置面22bと、載置面22bの下に配置され、載置面22b上の検体ラック2を移動させる移動機構22cとを含む。ユーザは、載置面22bの任意の位置から検体ラック2を取り出すことができる。ラック回収部22には、一般検体ラック2aおよび緊急検体ラック2bの両方が回収される。
【0060】
移動機構22cは、一般検体ラック設置部21の移動機構21cと同様の構造を有する。移動機構22cは、載置面22b上の検体ラック2に当接してY2方向に移動させる第1爪部51および第2爪部52を有する。第1爪部51は、スライダ部53から延びる回転軸54に取り付けられている(第2爪部52についても同様)。第1爪部51および第2爪部52は、スライダ部53が固定されたベルトの駆動によりY方向に移動し、検体ラック2をY2方向に移動させる。なお、ラック回収部22の後端部には、第1爪部51および第2爪部52の原点位置を検知する原点センサが設けられている。
【0061】
ラック回収部22には、載置面22b上に設置された検体ラック2が載置面22bの前端部に到達したことを検知するための到達検知部55が設けられている。また、ラック回収部22には、第1昇降部27上の検体ラック2を、ラック回収部22に送り込む送り込み機構56(図14参照)が設けられている。ラック回収部22は、制御部211の制御の下、検体ラック2を保持した第1昇降部27がラック回収部22との受渡位置に配置されると、送り込み機構56による検体ラック2の送り込み動作を実行し、送り込み動作の実行後に、移動機構22cによって検体ラック2を前端部へ向けてY2方向に移動させる移動動作を行う。
【0062】
[割込検体ラック設置部]
図6は、割込検体ラック設置部23の斜視図である。図5および図6に示すように、割込検体ラック設置部23は、検体ラック2(緊急検体ラック2b)を載置可能な載置台23bと、載置台23bを片持ち支持してY1方向に移動させる載置台移動機構23cとを含む。載置台23bは、互いに係合したテーブル部62とアーム部63とを含む。テーブル部62の上面が、検体ラック2が載せられる割込検体ラック設置部23の載置面23aとなる。テーブル部62は、1個の検体ラック2を載置可能な大きさの載置面23aを有する。
【0063】
載置台移動機構23cは、ガイドレール61aと、載置台駆動部61bと、伝達部とを含む。ガイドレール61aと、載置台駆動部61bと、伝達部とは、シャーシ26のうち、X2側の側面部材26aに取り付けられている。ガイドレール61aは、Y方向に沿って延びている。載置台駆動部61bは、たとえばステッピングモータである。伝達部は、ベルト61cおよびプーリ61d、61eから構成されたベルト-プーリ機構である。載置台駆動部61bは、プーリ61dを回転駆動することにより、ベルト61cを循環移動させる。
【0064】
アーム部63は、載置面23a上に形成されたアーム64と、ガイドレール61aに移動可能に係合するスライダが設けられた支持部65とを有する。アーム64は、載置面23aに設置される検体ラック2の周りを取り囲むように枠状に形成され、検体ラック2が載置面23aから落下しないように保持する。支持部65は、ベルト61cに連結されている。このため、ベルト61cが駆動することにより、アーム部63はY方向に移動する。テーブル部62は、アーム部63と同様に、ガイドレール61aに移動可能に係合するスライダを有するが、ベルト61cには連結されておらず、係合状態にあるアーム部63と一体的に移動する。
【0065】
アーム部63の支持部65は、スライダを含む第1部材と、後述の傾斜ブロック66aに乗り上げるローラを含む第2部材とを有し、第2部材が第1部材に対してZ方向にスライド移動可能に連結された構造を有する。テーブル部62は、支持部65の第2部材に設けられたローラに係合している。
【0066】
割込検体ラック設置部23は、テーブル部62とアーム部63との係合状態を切り替える係合切替機構66を備えている。係合切替機構66は、割込検体ラック設置部23との受渡位置にある第1昇降部27と隣接してY1方向端部に設けられている。係合切替機構66は、傾斜ブロック66aと、位置決め部材66bとを備える。傾斜ブロック66aは、Y2側端部からY1方向に向かって高くなるように傾斜した傾斜面66a1と、傾斜面66a1のY1側端部からY1方向に延びる水平面66a2とを有する。位置決め部材66bは、係合凹部66b1を有し、回動軸66b2を中心に回動可能に設けられている。
【0067】
ベルト61cの駆動により、テーブル部62とアーム部63がY1方向に移動すると、支持部65の第2部材のローラが傾斜ブロック66aに乗り上げて第2部材が持ち上げられ、テーブル部62とアーム部63の係合状態が解除される。そして、テーブル部62を残してアーム部63だけがY1方向に移動し、テーブル部62に載置された検体ラック2がアーム64に押されてY1方向へ移動し、第1昇降部27に搬出される。
【0068】
なお、テーブル部62は、位置決め部材66bの凹部66b1に嵌るローラを有する。テーブル部62のローラが凹部66b1に嵌ることにより、アーム部63との係合状態が解除されたテーブル部62は、第1昇降部27に隣接する位置で固定される。
【0069】
第1昇降部27への検体ラック2の受渡位置において、アーム64は第1昇降部27の昇降載置部71(後述の図7参照)の上方に位置する。この状態で昇降載置部71がZ2方向に移動することにより、検体ラック2はアーム64の内側を通り抜けてZ2方向へ搬送される。検体ラック2がアーム64を通過した後で、アーム部63が載置台駆動部61bによってY2方向に駆動されることにより、テーブル部62およびアーム部63が原点位置へ戻される。受渡位置からY2方向に移動する際には、傾斜ブロック66aに乗り上げた支持部65のローラが傾斜面66a1を下り、テーブル部62およびアーム部63は再び係合状態となる。
【0070】
割込検体ラック設置部23には、載置台23b(テーブル部62およびアーム部63)の移動範囲のY2方向端部に、原点位置の載置台23bを検出する原点センサ68が設けられている。また、割込検体ラック設置部23には、原点位置において載置面23a上に設置された検体ラック2を検知するラックセンサ67aと、受渡位置の手前(係合切替位置)において載置面23a上に設置された検体ラック2を検知するラックセンサ67bとが設けられている。ラックセンサ67a、67bおよび原点センサ68には、反射型の光学センサを用いることができる。
【0071】
[昇降部]
図5に示すように、検体搬送部20は、検体ラック2を上下方向(Z方向)に移動させる昇降部として、第1昇降部27と、搬送装置29を構成する第2昇降部33とを有する。第1昇降部27は、一般検体ラック設置部21、ラック回収部22、および割込検体ラック設置部23のY1側に隣接配置され、かつ搬送装置29を構成する第1搬送路31および第2搬送路32のX1方向に隣接配置されている。第2昇降部33は、第1昇降部27と共に、第1搬送路31および第2搬送路32を挟むように配置されている。
【0072】
第1昇降部27は、割込検体ラック設置部23、一般検体ラック設置部21、ラック回収部22、第1搬送路31、および第2搬送路32の間で上下方向に移動して、検体ラック2の受け渡しを行うように構成されている。すなわち、第1昇降部27は、割込検体ラック設置部23および一般検体ラック設置部21から検体ラック2を受け取り、受け取った検体ラック2を搬送機構29に受け渡す。第1昇降部27は、第2搬送路32から検体吸引済みの検体ラック2を受け取り、受け取った検体ラック2をラック回収部22に受け渡す。
【0073】
図7および図8は、第1昇降部27をY2方向から見た斜視図である。図7および図8に示すように、第1昇降部27は、上下移動可能な昇降載置部71と、ガイドレール72と、昇降駆動部73と、伝達部74とを有する。ガイドレール72と、昇降駆動部73と、伝達部74とは、シャーシ26(図5参照)の一部である背面部材26bに取り付けられている。ガイドレール72は、Z方向に沿って延びており、ガイドレール72には、昇降載置部71に設けられたスライダ71aが移動可能に係合している。昇降駆動部73は、たとえばステッピングモータである。伝達部74は、ベルト74a、プーリ74bおよび74cから構成されたベルト-プーリ機構である。昇降駆動部73は、プーリ74bを回転駆動することにより、Z方向の上下に設けられたプーリ74bおよび74cに掛け渡されたベルト74aを循環移動させる。昇降載置部71は、ベルト74aの一部に固定されており、ベルト74aの循環移動に伴ってガイドレール72に沿ってZ方向に移動する。これにより、昇降駆動部73によって、昇降載置部71が上下方向(Z方向)に移動する。
【0074】
昇降載置部71には、検体ラック2が載置される。昇降載置部71は、ストッパ71bと、ラックセンサ71cと、横送り部75と、を有する。ストッパ71bは、昇降載置部71の上面のY1側端部から上方に立ち上がるように設けられている。ストッパ71bは、割込検体ラック設置部23または一般検体ラック設置部21から昇降載置部71上へY1方向に送り出された検体ラック2と当接して、検体ラック2を停止させる。ラックセンサ71cは、透過型の光センサである。ラックセンサ71cは、昇降載置部71上に検体ラック2が配置されたことを検知する。
【0075】
横送り部75は、X方向に循環駆動される搬送ベルト75aと、ベルト駆動部75bと、伝達部75cとを有する。ベルト駆動部75bは、たとえば、ステッピングモータである。伝達部75cは、ベルト駆動部75bの出力軸に取り付けられたプーリ75c1と、搬送ベルト75aの駆動軸に取り付けられたプーリ75c2と、プーリ75c1、75c2に掛け渡された伝達ベルト75c3とを有する。ベルト駆動部75bは、伝達部75cを介して、搬送ベルト75aの駆動軸を回転させる。搬送ベルト75aは、昇降載置部71の上面上に露出している。ベルト駆動部75bにより搬送ベルト75aがX1方向またはX2方向に循環駆動されることにより、昇降載置部71上に載置された検体ラック2をX方向に移動させる。
【0076】
第2昇降部33は、第1搬送路31から検体吸引済みの一般検体ラック2aを受け取るラック受取部であって、受け取った一般検体ラック2aをZ2方向に移動させて第2搬送路32に受け渡す。第2昇降部33は、さらに、第2搬送路32から緊急検体ラック2bを受け取り、受け取った緊急検体ラック2bをZ1方向に移動させて検体吸引位置P2に配置する。なお、第2昇降部33は、一般検体ラック2aの場合と同様に、検体吸引済みの緊急検体ラック2bをZ2方向に移動させて第2搬送路32に受け渡す。
【0077】
第2昇降部33は、第1昇降部27と同様の構造を有し、検体ラック2を載置する載置台である昇降載置部71と、昇降載置部71を、第1搬送路31に隣接する位置と第2搬送路32とに隣接する位置とに移動させる載置台移動部とを含む。第1昇降部27の場合と同様に、昇降載置部71は、ラックセンサ71cと、横送り部75とを含み、載置台移動部は、ガイドレール72と、昇降駆動部73と、伝達部74とを含む。
【0078】
図9は、第2昇降部33におけるラック固定機構600を模式的に示す斜視図である。図9に示すように、第2昇降部33には、昇降載置部71上の緊急検体ラック2bの移動を抑止する抑止部として、緊急検体ラック2bの係合溝2e(図2参照)に差し込まれるロック板601を有するラック固定機構600が設けられている。ラック固定機構600は、検体吸引位置P2において緊急検体容器1bから検体を吸引する際に作動し、緊急検体ラック2bがX方向に移動しないように緊急検体ラック2bを固定する。これにより、目的とする緊急検体容器1bから確実に検体を吸引できる。
【0079】
ラック固定機構600は、昇降載置部71のY1側に配置され、昇降載置部71に固定されるブラケット610を有する。ブラケット610は、ラック固定機構600の各構成部材を支持し、ラック固定機構600を昇降載置部71に固定するための金具であって、昇降載置部71の枠71cにねじ止めされている。
【0080】
ラック固定機構600は、ロック板601と、ロック板ブラケット602と、押圧ローラ603と、押圧ローラブラケット604と、駆動部605とを有する。ロック板601は、ロック板ブラケット602に固定され、Y方向に移動可能である。ロック板601のY2方向端部は緊急検体ラック2bの係合溝2eに差し込み可能な幅および厚みで形成され、ロック板60がY2方向に移動することで係合溝2eに差し込まれる。駆動部605は、たとえば、モータである。
【0081】
ロック板ブラケット602は、ブラケット610に対してY方向にスライド移動可能に固定され、押圧ローラ603に押されることでY2方向に移動する。ロック板ブラケット602は、付勢部材606によってY1方向に付勢されており、押圧ローラ603の押圧力が解除されると、Y1方向に移動して原点位置に戻る。付勢部材606は、たとえば、引っ張りバネであり、一端がロック板ブラケット602に、他端がブラケット610に固定されている。
【0082】
押圧ローラ603は、押圧ローラブラケット604を介して駆動部605の回転軸に固定されている。駆動部605の回転軸が平面視で時計回りに回転することにより、押圧ローラ603がY2方向に移動してロック板ブラケット602を押圧する。これにより、ロック板601がY2方向に移動して、昇降載置部71に載せられた緊急検体ラック2bの係合溝2eに差し込まれるようになっている。
【0083】
ラック固定機構600は、ロック板601の位置を検出するセンサ607を有する。センサ607は、たとえば、磁気センサであって、ロック板601を厚み方向両側から挟むように設置される。センサ607は、Y方向に並んで2つ配置され、ロック板601の原点位置と、ロック板601が緊急検体ラック2bの係合溝2eに差し込まれる位置とを検出する。ラック固定機構600は、制御部211の制御の下、緊急検体ラック2bが検体吸引位置P2に配置されたときに動作し、緊急検体ラック2bがX方向に移動しないように緊急検体ラック2bを固定する。なお、ラック固定機構600は、昇降載置部71がZ方向に移動する際に一般検体ラック2aおよび緊急検体ラック2bを固定してもよい。
【0084】
[読取部]
図5に示すように、検体搬送部20は、検体ラック2および各検体容器1の識別情報を読み取る情報読取部として、第1読取部28と、第2読取部280とを有する。第1読取部28および第2読取部は、検体ラック2のバーコードラベル2dおよび検体容器1のバーコードラベル1c(図2,9参照)からそれぞれ識別情報を読み取る光学式リーダである。本実施形態では、第1読取部28はその位置が固定されているのに対し、第2読取部280は第1搬送路31に沿ってX方向に移動可能に構成されている。
【0085】
第1読取部28は、第1昇降部27の移動領域に対してY1方向に隣接する位置に設けられている。第1昇降部27は、一般検体ラック設置部21または割込検体ラック設置部23から検体ラック2を受け取ると、Z方向に移動して、受け取った検体ラック2を読取部28の読取位置に位置付ける。これにより、第1読取部28が検体ラック2および各検体容器1の識別情報をそれぞれ読み取る。
【0086】
第1読取部28により読み取られる検体ラック2および各検体容器1の識別情報に基づいて、検体の測定オーダーが取得される。本実施形態では、分析部400が後述のホストコンピュータ500に識別情報を照合し、各検体の測定オーダーを取得する。第2読取部280により読み取られる識別情報は、検体の吸引を行う前の最終確認に使用される。すなわち、検体の吸引を行う直前に、検体吸引位置P1,P2に配置された検体容器1の識別情報と測定オーダーの識別情報が照合される。
【0087】
第2読取部280は、第1搬送路31のY1側に隣接配置されている。第2読取部280は、光学式リーダを含む読取部本体281と、読取部本体281をX方向に移動させる直動機構282と、直動機構282を駆動する駆動部283とを有する。たとえば、直動機構282はベルト-プーリ機構であり、駆動部283はステッピングモータである。第2読取部280は、横送り機構36と干渉しないように、横送り機構36よりも上方に設置されている。
【0088】
図10は、第2読取部280の動作を説明するための図である。図10に示すように、第2読取部280の読取部本体281は、第1搬送路31の検体吸引位置P1と、第2昇降部33の検体吸引位置P2との間でX方向に移動可能である。第2読取部280は、検体吸引位置P1で一般検体ラック2aの識別情報を読み取り、検体吸引位置P2で緊急検体ラック2bの識別情報を読み取る。第2読取部280は、第2昇降部33のラック固定機構600(図9参照)と干渉しないように、ラック固定機構600よりも上方に設置されている。
【0089】
本実施形態において、第1搬送路31では、各一般検体容器1aが検体吸引位置P1に順次配置されるように、横送り機構36により一般検体ラック2aがX2方向に移動される。このため、第2読取部280は、読取部本体281の読取位置を検体吸引位置P1に固定した状態で、各一般検体容器1aの識別情報を読み取る。他方、第2昇降部33では、読取部本体281をX方向に移動させて各緊急検体容器1bの識別情報を読み取る。詳しくは後述するが、第2昇降部33では、検体分注部111(後述の図11参照)がX方向に移動して各緊急検体容器1bから検体を吸引する。すなわち、正確に言えば、緊急検体ラック2bの各保持孔2cの位置が検体吸引位置P2である。
【0090】
[搬送機構]
図5に示すように、搬送機構29は、上下方向に並んで配置された2本の搬送路である第1搬送路31および第2搬送路32と、2本の搬送路間で検体ラック2を移動させる第2昇降路33とを有する。搬送機構29は、第1昇降部27から一般検体ラック2aを受け取って第1搬送路31の検体吸引位置P1へ搬送し、検体吸引済みの一般検体ラック2aを第1昇降部27に戻すように構成されている。また、搬送機構29は、第1昇降部27から緊急検体ラック2bを受け取って第2昇降部33の検体吸引位置P2へ搬送し、その後同様に、検体吸引済みの緊急検体ラック2bを第1昇降部27に戻すように構成されている。なお、第2昇降部33の構成は上記の通りであり、重複する説明は省略する。
【0091】
第1搬送路31および第2搬送路32は、それぞれ、駆動部34と、駆動部34によって循環移動される搬送ベルト35を備えている。駆動部34は、たとえばステッピングモータである。第1搬送路31および第2搬送路32は、それぞれ、搬送ベルト35の上面に配置された検体ラック2を、搬送ベルト35の循環移動によってX方向に搬送するように構成されている。第1搬送路31および第2搬送路32は、共に、X1側端部において第1昇降部27との間で検体ラック2の受け渡しが可能であり、X2側端部において第2昇降部33との間で検体ラック2の受け渡しが可能である。
【0092】
第1搬送路31は、第1搬送路31上に搬送された一般検体ラック2aに係合し、係合した一般検体ラック2aをX方向に移動させる横送り機構36を含む。横送り機構36は、一般検体ラック2aと係合する係合片36aを、第1搬送路31上の一般検体ラック2aと係合する位置および係合解除する位置へ進退させる係合切替部36bと、係合切替部36bをX方向に移動させる直動機構36cと、直動機構36cを駆動する駆動部36dと、を有する。駆動部36dは、たとえばステッピングモータである。横送り機構36は、第1搬送路31上の一般検体ラック2aの係合溝2eと係合片36aとを係合させ、一般検体ラック2aの複数の保持孔2cを1箇所ずつ検体吸引位置P1に位置付けるように、一般検体ラック2aを移動させる。これにより、横送り機構36は、一般検体ラック2aのそれぞれの保持孔2cに保持された複数の一般検体容器1aを、1本ずつ、検体吸引位置P1に順番に移動させ、測定部10による検体吸引に供する。
【0093】
横送り機構36と係合している間、その一般検体ラック2aは、第1搬送路31の搬送ベルト35によっては移動されない。そのため、第1搬送路31は、横送り機構36が1つ目の一般検体ラック2aを検体吸引位置P1に保持している間に、2つ目以降の一般検体ラック2aを第1昇降部27から受け入れて、検体吸引位置P1の手前(X1側)まで搬送しておくことができる。
【0094】
全ての一般検体容器1aから検体吸引が行われると、横送り機構36は、係合片36aと一般検体ラック2aとの係合を解除させる。搬送機構29は、検体吸引済みの一般検体ラック2aを、第1搬送路31から第2昇降部33に受け渡し、第2昇降部33から第2搬送路32に受け渡し、第2搬送路32から第1昇降部27に受け渡す。これにより、第1昇降部27と搬送機構29とによって、一般検体ラック設置部21からの検体吸引位置P1への一般検体ラック2aの搬送および検体吸引済みの一般検体ラック2aのラック回収部22への搬送を行うことができる。
【0095】
緊急検体容器1bを保持する緊急検体ラック2bについては、第2搬送路32が第1昇降部27から受け入れて第2昇降部33に搬送する。そして、第2昇降部33がZ1方向に移動することにより、緊急検体ラック2bは検体吸引位置P2に搬送される。すなわち、緊急検体ラック2bは、一般検体ラック2aが検体吸引後に回収される経路を利用して検体吸引位置P2に搬送される。検体吸引済みの緊急検体ラック2bは、第2昇降部33のZ1方向端部(検体吸引位置P2)から、一般検体ラック2aの場合と同じ経路でラック回収部22に回収される。
【0096】
以下、図11図13を参照しながら測定部10の構成について詳説する。図11は、測定部10を模式的に示す平面図である。
【0097】
図11に示すように、測定部10は、検体の測定を行う測定機構110を備える。測定機構110は、検体分注部111と、容器移送部112と、容器供給部113と、試薬分注部114a~114eと、試薬保冷庫115と、反応部116と、BF分離部117と、検出部118と、を含む。測定機構110は、筐体120内の第1収容部121(図12参照)に収容されている。筐体120は、これらの測定部10の各部を内部に収容可能な箱状形状を有する。測定部10は、検体分注部111により容器3に吐出された検体を測定するように構成されている。
【0098】
検体分注部111は、検体吸引位置P1にある一般検体容器1a、および検体吸引位置P2にある緊急検体容器1bから検体を吸引し、吸引した検体を吐出位置において容器3に吐出する吸引部である。検体分注部111は、第1搬送路31を介して第2読取部280(図5等参照)とY方向に対向するように配置されている。検体分注部111は、吸引管701を含むピペット部111aを有する。本実施形態では、1台の検体分注部111により、一般検体容器1aに収容された一般検体と、緊急検体容器1bに収容された緊急検体の両方が分注される。
【0099】
検体分注部111は、筐体120内のY1側(背面側)端部で、かつ、X2側の隅部付近に設けられている。検体分注部111は、吸引および吐出を行うためのピペット部111aと、ピペット部111aを移動させる移動機構111bとを含む。移動機構111bは、ピペット部111aを回転軸702周りに回動させる動作、ピペット部111aを上下方向に沿って移動させる動作、およびピペット部111aをX方向に沿って移動させる動作が可能に構成されている。検体分注部111は、回転軸702周りの回動により、ピペット部111aを第1搬送路31上の検体吸引位置P1と、検体吐出位置である検体分注位置P31とに移動させることが可能である。検体分注部111は、ピペット部111aを上下方向に移動させることにより、吸引管701を検体容器1内に進入させたり、検体容器1内から退避させたりする。吸引管701は、分注チップ703と、分注チップ703が着脱可能に装着される分注チップ装着管701aと、を含む(後述の図13参照)。なお、吸引管701は、先端に分注チップが装着される構成である必要はなく、単一の吸引管であってもよい。
【0100】
検体分注部111は、分注チップ703を分注チップ装着管701aの先端に装着して、検体吸引位置P1に搬送された一般検体容器1a内の検体を分注チップ703内に所定量吸引する。検体分注部111は、吸引した検体を検体分注位置P31に配置された容器3に分注する。検体分注後、検体分注部111は、分注チップ703を分注チップ装着管701aの先端から取り外して廃棄する。
【0101】
容器移送部112は、容器3を移送する。容器移送部112は、容器供給部113から空の容器3を取得し、検体分注部111、試薬分注部114a~114e、反応部116、BF分離部117、検出部118などの各々の処理位置に容器3を移送する。容器移送部112は、容器3を把持するキャッチャ112aと、キャッチャ112aを移動させる移動機構とにより構成される。移動機構は、上下方向および水平2方向の直交3軸方向に移動可能な直交ロボットである。移動機構は、回転軸回りに水平回転するアーム機構や、多関節ロボット機構を含んでいてもよい。
【0102】
容器供給部113は、未使用の容器3を複数貯留できる。容器供給部113は、所定の容器供給位置において、容器移送部112に未使用の空の容器3を供給する。
【0103】
試薬分注部は、試薬容器内の試薬を吸引し、吸引した試薬を容器3に分注する。試薬分注部は、試薬容器131中のR1試薬を分注するための第1の試薬分注部114aと、試薬容器132中のR2試薬を分注するための第2の試薬分注部114bと、試薬容器133中のR3試薬を分注するための第3の試薬分注部114cと、を含む。また、試薬分注部は、R4試薬を分注するための第4の試薬分注部114dおよびR5試薬を分注するための第5の試薬分注部114eを含む。試薬容器131、132、133は、試薬保冷庫115に収容されている。
【0104】
第1の試薬分注部114aは、R1試薬を吸引するための吸引位置P32aと、R1試薬分注位置P33aとの間でピペット114fを移動できる。第2の試薬分注部114bは、R2試薬を吸引するための吸引位置P32bと、R2試薬分注位置P33bとの間でピペット114fを移動できる。第3の試薬分注部114cは、R3試薬を吸引するための吸引位置P32cと、R3試薬分注位置P33cとの間でピペット114fを移動できる。
【0105】
第4の試薬分注部114dおよび第5の試薬分注部114eは、試薬保冷庫115からは離れた位置に設けられている。第4の試薬分注部114dおよび第5の試薬分注部114eは、それぞれR4試薬およびR5試薬を収容した試薬容器と送液チューブを介して接続されており、容器移送部112によって移送された容器3中に試薬を吐出できる。
【0106】
試薬保冷庫115は、断熱構造のケース115a内に容器保持部115bを有する。容器保持部115bは試薬容器を保持する。ケース115aは、冷却器により試薬容器内の試薬を保管に適した一定温度に保冷する。ケース115aの上面には、吸引位置P32a、吸引位置P32bおよび吸引位置P32cにおいてケース115aの内部にピペット114fが進入できるように、開閉可能な孔部が設けられている。
【0107】
容器保持部115bは、複数の試薬容器を円周方向に並べて保持するように形成されている。容器保持部115bは、同心円状の複数の試薬容器の列を、独立して周方向に回転できる。これにより、容器保持部115bは、吸引位置P32a~P32cの各々の直下の位置に、保持する試薬容器の列のうちから選択された所望の試薬容器を配置できる。容器保持部115bには、R1試薬、R2試薬、R3試薬をそれぞれ収容する試薬容器131、132、133がセットされる。
【0108】
反応部116は、ヒーターおよび温度センサを備え、容器3を保持して、容器3内に収容された試料を加温して反応させる。加温により、容器3内に収容された検体および試薬が反応する。
【0109】
BF分離部117は、容器3から、液相と固相とを分離するBF分離処理を実行する機能を有する。BF分離部117は、後述する免疫複合体が形成された磁性粒子を磁力により集めた状態で、吸引管により容器3内の液体成分を吸引し、吐出管により洗浄液を供給する。これにより、BF分離部117は、容器3内の液体成分に含まれる不要物質を、免疫複合体が形成された磁性粒子から分離して除去するように構成されている。
【0110】
検出部118は、検体の抗原に結合する標識抗体と発光基質との反応過程で生じる光を光検出器で検出し、検出した光の量に応じた検出信号を出力する。光検出器は、たとえば光電子増倍管を含む。
【0111】
図12は、検体測定装置300のZ方向断面を模式的に示す図である。図12に示すように、測定部10は、第1収容部121と、第1収容部121の下方に配置された第2収容部122と、第2収容部122の下方に配置された第3収容部123とを含む。各収容部は、筐体120内に設けられている。
【0112】
第1収容部121は、検体の測定を行う測定機構110(図11参照)を収容する収容空間である。図12では、検体分注部111のみを図示しているが、測定機構110の各部は、第1収容部121および第2収容部122内に配置されている。第2収容部122は、さらに、測定機構110を動作させるための流体回路部141の一部を収容する収容空間である。流体回路部141は、第1収容部121に配置された検体分注部111、第1の試薬分注部114a、第2の試薬分注部114b、第3の試薬分注部114c、第4の試薬分注部114d、第5の試薬分注部114e、およびBF分離部117とそれぞれ流体的に接続されている。流体回路部141は、各分注部(111、114a~114e)およびBF分離部117おける液体の吸引および吐出を行うために、圧力を供給するポンプ、および流路を切り替えるバルブを含む。第3収容部123は、流体回路部141を収容する収容空間である。
【0113】
ここで、検体搬送部20の第1搬送路31は、第2収容部122よりも上方の高さ位置に配置され、第2搬送路32は、第2収容部122の中央よりも下方、かつ、第3収容部123より上方の高さ位置に配置されている。これにより、上下方向(Z方向)において、第1搬送路31と第2搬送路32との間に第2収容部122の半分以上の領域が配置される。また、第2搬送路32の下方に第3収容部123の全領域が配置される。そのため、たとえば第2収容部122に収容された流体回路部141のメンテナンスを行う場合に、第1搬送路31と第2搬送路32との間から第2収容部122の内部に容易にアクセスできる。また、第3収容部123に収容された流体回路部141のメンテナンスを行う場合に、第1搬送路31と第2搬送路32が邪魔にならない。そのため、測定部10のメンテナンスを行う際に搬送機構29を分解および再組立する必要がなく、効率的にメンテナンス作業を行える。
【0114】
また、本実施形態では、一般検体ラック設置部21および割込検体ラック設置部23は、第1搬送路31よりも上方の高さ位置に配置され、ラック回収部22は、第2搬送路32よりも上方の高さ位置に配置されている。
【0115】
ここで、割込検体ラック設置部23、一般検体ラック設置部21およびラック回収部22の高さ位置は、ユーザにとって作業しやすい高さ位置に設定することが望まれる。一方、第1搬送路31および第2搬送路32は、測定部10に対する検体ラック2の搬送経路となるため、検体吸引を行う測定部10の装置構成に適合した高さ位置に配置することが要請される。そこで、割込検体ラック設置部23、一般検体ラック設置部21およびラック回収部22と、第1搬送路31および第2搬送路32との間に、上下移動可能な第1昇降部27を設けた本実施形態の構成では、割込検体ラック設置部23、一般検体ラック設置部21およびラック回収部22の高さ位置を、第1搬送路31および第2搬送路32の高さ位置(すなわち、測定部10の装置構成に適合した高さ位置)とは無関係に設定できる。その結果、割込検体ラック設置部23、一般検体ラック設置部21およびラック回収部22の高さ位置を、ユーザが使いやすい高めの位置に設定することによって、検体ラック2の設置/回収作業の作業性を向上させることができる。
【0116】
図13は、検体分注部111を模式的に示す斜視図である。図13に示すように、検体分注部111を構成するピペット部111aは、ピペットアーム700と、ピペットアーム700から下方に延びる吸引管701と、ピペットアーム700を回転可能に支持する回転軸702とを有する。ピペットアーム700は細長い略直方体形状を有し、ピペットアーム700の長手方向一端部に吸引管701が、長手方向他端部に回転軸702がそれぞれ設置されている。分注チップ703は、分注チップ装着管701aの先端に装着され、検体吸引位置P1,P2においてピペットアーム700が下方に移動することで検体容器1内に進入される。
【0117】
検体分注部111は、上記のように、ピペット部111a(吸引管701)を移動させる移動機構111bを有する。移動機構111bは、第1搬送路31(X方向)に沿って吸引管701を移動させる第1移動機構710と、平面視で第1搬送路31と交差する方向に吸引管701を移動させる第2移動機構720とを含む。第1移動機構710は、駆動部711と、伝達部712とで構成される。第2移動機構720についても同様に、駆動部721と、伝達部722とで構成される。たとえば、駆動部711,721はステッピングモータであり、伝達部712,722はベルト-プーリ機構である。
【0118】
検体分注部111は、シャーシ26(図5参照)に固定されるブラケット750を有する。ブラケット750は、検体分注部111の各構成部材を支持し、検体分注部111をシャーシ26に固定するための金具である。また、移動機構111bは、上下方向(Z方向)に吸引管701を移動させる第3移動機構730を含む。第3移動機構730は、駆動部731と、伝達部732とで構成される。たとえば、駆動部731はステッピングモータであり、伝達部732はベルト-プーリ機構である。伝達部732は、Z方向に延びる無端状のベルト732aを含む。ベルト732aにはピペット部111aの回転軸702が固定されており、駆動部731がベルト732aを駆動させることで回転軸702がZ方向に移動する。これにより、ピペットアーム700および吸引管701もZ方向に移動し、検体容器1内への分注チップ703の進入が可能になる。
【0119】
検体分注部111は、ピペット部111a、第2移動機構720、および第3移動機構730を含むユニット705が、第1移動機構710によりX方向に移動可能な構造を有する。ブラケット750にはX方向に延びるガイドレール706が設置され、ユニット705はガイドレール706に対してスライド移動可能に支持されている。第1移動機構710の伝達部712は、X方向に延びる無端状のベルト712aを含む。ベルト712aにはユニット705が固定されており、駆動部711がベルト712aを駆動させることでユニット705がX方向に移動する。これにより、ピペットアーム700および吸引管701もX方向に移動する。
【0120】
第2移動機構720は、ピペットアーム700を回転させることにより、平面視で第1搬送路31と交差する方向に吸引管701を移動させる。第2移動機構720の伝達部722は、無端状のベルト722aと、ピペット部111aの回転軸702に固定された大径のプーリ722bとを含む。ベルト722aは、駆動部721の回転軸とプーリ722bとに掛け渡されている。なお、大径のプーリ722bを用いることで、駆動部721の回転速度を減速できる。
【0121】
詳しくは後述するが、検体分注部111は、第1移動機構710によるピペットアーム700のX方向の平行移動と、第2移動機構720によるピペットアーム700の回転とによって、検体吸引位置P1,P2の両方から検体の分注が可能である。すなわち、1本の吸引管701が、一般検体の吸引と、緊急検体の吸引とに共通して用いられる。
【0122】
以下、図14を参照しながら、検体測定装置300の制御に関わる構成について説明する。図14は、検体測定装置300の制御に関わる構成を示すブロック図である。
【0123】
図14に示すように、検体測定装置300は、測定部10に設けられた主制御基板210および測定制御基板230と、検体搬送部20に設けられた搬送制御基板220と、を備える。
【0124】
主制御基板210は、制御部211と、通信部212と、記憶部213とを備える。制御部211は、CPUから構成されたプロセッサとメモリとを含んで構成され、記憶部213に記憶された制御プログラムを実行することにより、測定部10および検体搬送部20の各部を制御する。記憶部213は、半導体記憶素子からなり、制御部211が実行するプログラム、識別情報および測定オーダーのデータ、検出部118により取得された検出信号のデータを記憶する。通信部212は、検体搬送部20および分析部400と通信を行うためのI/Oインターフェースおよび通信インターフェースを含む。なお、制御部211は、FPGAにより構成されてもよい。
【0125】
搬送制御基板220は、検体搬送部20の各部に設けられたセンサからの信号を取得するI/O回路、検体搬送部20の各部に設けられたモータの駆動回路、および、主制御基板210との通信回路を含む。主制御基板210の制御部211は、搬送制御基板220を介して、一般検体ラック設置部21、ラック回収部22、割込検体ラック設置部23、第1昇降部27、第1読取部28、第2読取部280、送り込み機構56、第1搬送路31、第2搬送路32、および第2昇降部33の動作を制御する。制御部211は、第1読取部28および第2読取部280から取得された検体ラック2および検体容器1の各識別情報を、搬送制御基板220を介して取得する。
【0126】
測定制御基板230は、測定機構110の動作を制御するためのセンサのI/O回路、モータおよびバルブの駆動回路、および、主制御基板210との通信回路を含む。主制御基板210の制御部211は、測定制御基板230を介して、測定機構110の動作を制御する。制御部211は、検体測定処理によって検出部118により取得された検出信号のデータを、測定制御基板230を介して取得する。
【0127】
分析部400は、パーソナルコンピュータ(PC)からなり、CPU、ROM、RAM、ソリッドステートドライブ(SSD)などからなる本体と、液晶ディスプレイからなる表示部と、キーボードおよびマウスからなる入力デバイスとから主として構成されている。
【0128】
分析部400は、主制御基板210の通信部212およびホストコンピュータ500と通信可能に接続されている。分析部400は、検体搬送部20の第1読取部28で読み取られた識別情報を、主制御基板210を介して取得する。分析部400は、識別情報をホストコンピュータ500に照合することにより、検体ラック2に保持されたそれぞれの検体容器1中の検体の測定オーダーを取得するように構成されている。
【0129】
分析部400は、取得した測定オーダーを主制御基板210の通信部212を介して制御部211に送信する。送信された測定オーダーに応じて、制御部211が、検体搬送部20および測定部10の各部を制御する。
【0130】
制御部211は、測定部10により検体容器1中の検体を測定して得られた検出部118の検出信号を、通信部212を介して分析部400に送信する。分析部400は、取得した検出信号に基づいて、検体中の被検物質の含有量などを分析するように構成されている。また、分析部400は、分析結果を、表示画面に表示したりホストコンピュータ500に送信したりする。
【0131】
以下、図15図21を参照しながら、一般検体ラック2aの搬送、および検体測定を行う場合の検体測定装置300の動作について説明する。なお、検体測定の手順については、検体吸引位置が異なる点を除き、緊急検体の場合も同じである。
【0132】
図15および図16は、一般検体ラック2aの搬送経路を示す図である。図15および図16に示すように、検体搬送部20は、一般検体ラック設置部21に設置される一般検体ラック2aを、第1昇降部27を介して第1搬送路31の検体吸引位置P1に搬送する。一般検体ラック設置部21は、一般検体ラック2aを1個ずつ第1昇降部27に搬出する。なお、図15では、第1搬送路31における一般検体ラック2aの状態を分かりやすくするため、第2読取部280の図示を省略している(後述の図22についても同様)。
【0133】
第1昇降部27は、一般検体ラック設置部21の載置面21bと同じ高さの受渡位置P11で一般検体ラック設置部21から一般検体ラック2aを受け取り、第1読取部28による識別情報の読取位置P12に移動させる。一般検体ラック2aおよび一般検体ラック2aに保持された一般検体容器1aの識別情報は、第1昇降部27において第1読取部28により読み取られる。読取位置P12は、たとえば、第1搬送路31と同じ高さの位置、すなわち第1搬送路31への検体ラック2の受渡位置に設定される。
【0134】
第1搬送路31は、搬送ベルト35により一般検体ラック2aをX2方向に移動させる。第1搬送路31の検体吸引位置P1の近傍では、各一般検体容器1aが検体吸引位置P1に1本ずつ順次配置されるように、横送り機構36により一般検体ラック2aをX2方向に移動させる。第1搬送路31は、検体吸引位置P1で全ての一般検体容器1aから検体が吸引されると、搬送ベルト35を再び駆動させて一般検体ラック2aをX2方向に移動させ、第2昇降部33に受け渡す。このとき、第2昇降部33の昇降載置部71は、第1搬送路31と同じ高さの受渡位置P21に移動している。なお、受渡位置P21は、緊急検体の検体吸引位置P2と同じ場所であるが、一般検体の吸引は行われない。
【0135】
第2昇降部33は、一般検体ラック2aが載せられた昇降載置部71をZ2方向に移動させ、第2搬送路32への受渡位置P22まで移動させる。第2昇降部33は、第2搬送路32と同じ高さの受渡位置P22において、横送り部75により一般検体ラック2aをX1方向に移動させ、第2搬送路32に受け渡す。このとき、第1昇降部27の昇降載置部71は、第2搬送路32と同じ高さの受渡位置P13に移動している。そして、第2搬送路32は、搬送ベルト35により一般検体ラック2aをX1方向に移動させ、受渡位置P13で第1昇降部27の昇降載置部71に受け渡す。
【0136】
第1昇降部27は、一般検体ラック2aが載せられた昇降載置部71をZ1方向に移動させ、ラック回収部22への受渡位置P14まで移動させる。ラック回収部22は、受渡位置P14において、送り込み機構56(図14参照)により一般検体ラック2aを第1昇降部27から受け取る。以上の一連の動作により、一般検体ラック設置部21に設置された一般検体ラック2aは、第1昇降部27および第1搬送路31を通って検体吸引位置P1に搬送され、検体吸引後に第2昇降部33、第2搬送路32、および第1昇降部27を通って、ラック回収部22に回収される。
【0137】
検体搬送部20の動作は、制御部211により制御される。また、測定部10の動作も制御部211により制御される。制御部211は、上記一連の動作を実行するために、一般検体ラック設置部21、第1昇降部27、第1搬送路31、第2昇降部33、第2搬送路32、およびラック回収部22を制御する。制御部211は、たとえば、検体吸引位置P1に搬送された一般検体ラック2aを、第2昇降部33および第2搬送路32を介してラック回収部22に回収するように、第2昇降部33および第2搬送路32を制御する。
【0138】
以下、上記各搬送工程および測定部10における検体測定の詳細について、フローチャートを用いて説明する。図17は、検体搬送部20および測定部10における一般検体の処理手順を示すフローチャートである。一般検体の処理は、制御部211により実行される。
【0139】
ステップS1において、制御部211は、一般検体ラック設置部21に一般検体ラック2aが設置されているか否かを判断する。制御部211は、ラック有無センサ45a~45dにより一般検体ラック設置部21の載置面21b上に設置された一般検体ラック2aが検知された場合、ステップS2に処理を進める。
【0140】
ステップS2において、制御部211は、一般検体ラック送出処理を実行する。一般検体ラック送出処理は、一般検体ラック設置部21から1つの一般検体ラック2aを第1昇降部27へ送り出し、第1読取部28により一般検体ラック2aおよび一般検体容器1aの識別情報を読み取り、一般検体ラック2aを第1搬送路31へ受け渡す処理である。第1読取部28で読み取られた一般検体ラック2aおよび一般検体容器1aの各識別情報は、分析部400に送信される。
【0141】
一方、ステップS1において、一般検体ラック設置部21に一般検体ラック2aが設置されていない場合、すなわち、ラック有無センサ45a~45dにより一般検体ラック設置部21の載置面21b上に一般検体ラック2aが検知されない場合、制御部211は処理を終了する。
【0142】
制御部211は、ステップS2の一般検体ラック送出処理の後、ステップS3に処理を進める。ステップS3において、制御部211は、第1搬送路31を制御して、第1搬送路31上に受け渡された一般検体ラック2aを検体吸引位置P1へ搬送させる。制御部211は、横送り機構36により、検体吸引位置P1に配置された一般検体容器1aから検体が吸引される度に、次の未吸引の一般検体容器1aを検体吸引位置P1に配置させる。一般検体ラック2aに保持された全ての一般検体容器1aを検体吸引位置P1に配置させると、制御部211は、ステップS4に処理を進める。
【0143】
検体吸引位置P1において、検体の吸引を行う前に、各検体容器1の識別情報を第2読取部280で読み取り、検体情報の最終確認を行ってもよい。制御部211は、たとえば、検体吸引位置P1に位置する検体容器1の識別情報と、分析部400から取得した測定オーダーにおける検体容器1の識別情報とを照合し、両者が一致していることを確認する。両者が不一致である場合、制御部211は所定のエラー処理を実行する。
【0144】
ステップS4において、制御部211は、検体吸引済みの一般検体ラック2aを、第1搬送路31から第2昇降部33に受け渡す制御を行う。制御部211は、第2昇降部33を制御して、第1搬送路31と第2昇降部33との受渡位置P21に第2昇降部33の昇降載置部71を移動させる。そして、制御部211は、第1搬送路31を制御して、検体ラック2を昇降載置部71上まで搬送させる。
【0145】
ステップS5において、制御部211は、第2昇降部33に受け渡された一般検体ラック2aを、第2昇降部33から第2搬送路32に受け渡す制御を行う。制御部211は、第2昇降部33を制御して、第2搬送路32と第2昇降部33との受渡位置P22に第2昇降部33の昇降載置部71を移動させる。そして、制御部211は、第2昇降部33を制御して、一般検体ラック2aを第2搬送路32上まで横送りさせる。
【0146】
ステップS6において、制御部211は、第2搬送路32へ受け渡された一般検体ラック2aのラック回収処理を実行する。ラック回収処理は、一般検体ラック2aを第2搬送路32から第1昇降部27を介してラック回収部22へ送り込む処理である。ステップS6により一般検体ラック2aがラック回収部22に回収されることにより、1つの一般検体ラック2aに対する搬送処理が完了する。
【0147】
測定部10では、ステップS7において、制御部211は、第1読取部28で読み取られた識別情報に基づいて、分析部400から測定オーダーを取得する。
【0148】
ステップS8において、制御部211は、ステップS3で検体吸引位置P1に搬送された一般検体容器1a中の検体を、検体分注部111により吸引する制御を行う。
【0149】
ステップS9において、制御部211は、吸引した検体について、測定機構110による検体測定処理を実行する。検体測定処理の結果、検出部118の検出信号のデータが得られる。
【0150】
ステップS10において、制御部211は、得られた検出信号のデータを、通信部212により分析部400に出力する制御を行う。分析部400は、測定部10から取得した検出信号に基づいて、検体中の被検物質の含有量などを分析し、分析結果を表示部に表示させる。
【0151】
制御部211は、次の一般検体ラック2aの搬送処理を実行するため、ステップS1から処理を再度実行する。そのため、ユーザが一般検体ラック設置部21に複数の一般検体ラック2aをまとめて設置すると、一般検体ラック設置部21の先頭(Y1方向側)の1つの一般検体ラック2aに対して、ステップS2~S6までの処理が実行される。制御部211は、一般検体ラック設置部21に設置された一般検体ラック2aがなくなるまで、ステップS1~S6の処理を実行する。
【0152】
なお、ここでは1つの一般検体ラック2aに対する搬送処理を説明するため、検体ラック2の送出から回収までを一連のフローとして図示しているが、実際には、図15および図16に示すように、複数の一般検体ラック2aの搬送処理が、タイミングをずらしつつ並行して実行される。たとえば、ある一般検体ラック2aについて、ステップS8で検体吸引が実行されている間に、次の一般検体ラック2aのラック送出処理、または前の一般検体ラック2aに対するラック回収処理が実行されうる。
【0153】
(一般検体ラック送出処理)
図18を参照しながら、図17のステップS2の一般検体ラック送出処理について説明する。一般検体ラック送出処理は、制御部211により実行される。
【0154】
ステップS31において、制御部211は、昇降駆動部73を制御して、第1昇降部27の昇降載置部71を一般検体ラック設置部21の受渡位置P11まで移動させる。
【0155】
ステップS32において、制御部211は、一般検体ラック設置部21の移動機構21cを制御して、第1爪部41および第2爪部42をY2側の前端部からY1方向に移動させる。制御部211は、昇降載置部71のラックセンサ71c(図8参照)により一般検体ラック2aが検知されると、移動機構21cの駆動を停止させる。これにより、一般検体ラック2aが、一般検体ラック設置部21から第1昇降部27に受け渡される。なお、受け渡し動作を行ってもラックセンサ71cにより一般検体ラック2aが検知されない場合、制御部211は所定のエラー処理を実行する。
【0156】
ステップS33において、制御部211は、一般検体ラック設置部21のラックバック機構を作動させる。これにより、一般検体ラック設置部21に複数の一般検体ラック2aが設置されている場合、第1昇降部27に受け渡された先頭の一般検体ラック2a以外の、2番目以降の一般検体ラック2aが、ラックバック機構によって所定の安全距離だけY2方向に戻される。なお、ラックバック機構を作動させても後端部センサ46により一般検体ラック2aが検知されない場合、制御部211は所定のエラー処理を実行する。
【0157】
ステップS34において、制御部211は、昇降駆動部73を制御して、第1昇降部27の昇降載置部71を第1読取部28の読取位置P12に移動させる。ステップS35において、制御部211は、第1読取部28を制御して、読取位置P12に配置された一般検体ラック2aの識別情報と、一般検体ラック2aに保持された一般検体容器1aの識別情報とを読み取る。制御部211は、第1読取部28から識別情報を取得すると、通信部212を介して取得した識別情報を分析部400に送信する。
【0158】
ステップS36において、制御部211は、第1昇降部27の横送り部75を制御して、昇降載置部71上の検体ラック2を第1搬送路31に移動させる。これにより、検体ラック2は、第1昇降部27から第1搬送路31に受け渡される。以上により、一般検体ラック送出処理が完了し、図17のフローチャートのステップS2以降の処理に進む。
【0159】
(ラック回収処理)
図19を参照しながら、図17のステップS6のラック回収処理について説明する。ラック回収処理は、制御部211により実行される。
【0160】
ステップS41において、制御部211は、昇降駆動部73を制御して、第1昇降部27の昇降載置部71を第2搬送路32の受渡位置P13まで移動させる。
【0161】
ステップS42において、制御部211は、第2搬送路32を制御して、第2搬送路32上の一般検体ラック2aを昇降載置部71上までX1方向に搬送する。制御部211は、昇降載置部71のラックセンサ71cにより一般検体ラック2aが検知されると、第2搬送路32の動作を停止させる。これにより、一般検体ラック2aが、第2搬送路32から第1昇降部27に受け渡される。なお、受け渡し動作を行ってもラックセンサ71cにより一般検体ラック2aが検知されない場合、制御部211は所定のエラー処理を実行する。
【0162】
ステップS43において、制御部211は、昇降駆動部73を制御して、第1昇降部27の昇降載置部71をラック回収部22の受渡位置P14まで移動させる。
【0163】
ステップS44において、制御部211は、送り込み機構56を制御して、一般検体ラック2aを昇降載置部71からラック回収部22へ移動させる。これにより、一般検体ラック2aが、第1昇降部27からラック回収部22に受け渡される。なお、送り込み機構56を動作させてもラックセンサ71cにより一般検体ラック2aが検知されたままである場合、制御部211は所定のエラー処理を実行する。
【0164】
ステップS45において、制御部211は、ラック回収部22の移動機構22cを制御して、第1爪部51および第2爪部52をY1側の原点位置からY2方向に移動させる。これにより、一般検体ラック2aが、送り込み機構56によって送り込まれた位置から、ラック回収部22の前端部へ向けて搬送される。
【0165】
ラック回収部22は、今回送り込まれた一般検体ラック2aをY2方向に搬送する。一般検体ラック2aが到達検知部55により検知されると、制御部211は、移動機構22cの駆動を停止する。なお、移動機構22cを駆動させても一般検体ラック2aが到達検知部55により検知されない場合、制御部211は所定のエラー処理を実行する。
【0166】
制御部211は、原点位置から到達検知部55に検知された位置までの移動機構22cの駆動量を取得し、取得した駆動量に基づいて、ラック回収部22に貯留されている検体ラック2の個数を取得する。
【0167】
ステップS46において、制御部211は、取得した検体ラック2の個数が予め設定された上限値に一致したか否かを判断する。ラック回収部22に貯留されている検体ラック2の個数が上限値に達していない場合、ラック回収処理が終了し、今回の検体ラック2の搬送処理が終了する。
【0168】
ラック回収部22に貯留されている検体ラック2の個数が上限値に達した場合、制御部211は、ステップS47に処理を進める。ステップS47において、制御部211は、通信部212により、分析部400に対して、ラック回収部22に貯留されている検体ラック2の個数が上限値に達したことを報知した後、ラック回収処理を終了する。
【0169】
なお、検体ラック2の個数が上限値に達したことが報知された場合、分析部400では、たとえばラック回収部22からの検体ラック2の取り出し作業の実行を促す案内情報を表示部へ表示する。これにより、ユーザが、ラック回収部22から検体ラック2を取り出す必要があることを分析部400の表示画面から把握できる。
【0170】
(検体測定処理)
図20および図21を参照しながら、図17のステップS9の検体測定処理について説明する。検体測定処理は、制御部211により実行される。免疫測定の一例として、検体に含まれる被検物質151がB型肝炎表面抗原(HBsAg)である場合について説明する。
【0171】
ステップS51において、制御部211は、容器3にR1試薬を分注する制御を行う。制御部211は、容器移送部112に容器3をR1試薬分注位置P33aに移送させ、第1の試薬分注部114aにより容器3にR1試薬を分注させる制御を行う。
【0172】
ステップS52において、制御部211は、容器3に検体を吐出する制御を行う。制御部211は、容器移送部112に容器3を検体分注位置P31に移送させる。制御部211は、ステップS8において検体を吸引した検体分注部111を検体分注位置P31まで回動させ、吸引した検体を検体分注位置P31の容器3に吐出させる。図21に示すように、R1試薬は、捕捉物質を含有し、検体中の被検物質151と反応して結合する。たとえば、捕捉物質は、ビオチンで修飾された抗体(biotin抗体)である。
【0173】
ステップS53において、制御部211は、容器移送部112により容器3をR2試薬分注位置P33bに移送させ、第2の試薬分注部114bにより容器3にR2試薬を分注させる制御を行う。R2試薬の分注後、制御部211は、容器移送部112により、反応部116に容器3を移送させる。制御部211は、反応部116において、容器3を所定時間の間加温させる。図21に示すように、R2試薬は、捕捉物質と結合する磁性粒子152を含有する。磁性粒子152は、たとえばビオチンと結合するストレプトアビジンを固定した磁性粒子(StAvi結合磁性粒子)である。加温の結果、被検物質151と捕捉物質とが、磁性粒子152と結合する。
【0174】
ステップS54において、制御部211は、BF分離部117に1次BF分離処理を実行させる制御を行う。まず、制御部211は、容器移送部112により容器3をBF分離部117に移送させる。BF分離部117は、容器3中の試料に対して1次BF分離処理を行うように制御される。図21に示すように、1次BF分離処理によって、未反応の捕捉物質などの不要成分が、容器3中から除去される。
【0175】
ステップS55において、制御部211は、容器移送部112により容器3をR3試薬分注位置P33cに移送し、第3の試薬分注部114cにより容器3にR3試薬を分注させる制御を行う。R3試薬の分注後、制御部211は、容器移送部112により、反応部116に容器3を移送させる。制御部211は、反応部116において、容器3を所定時間の間加温させる。図21に示すように、R3試薬は、標識物質153を含有し、被検物質151と反応して結合する。標識物質153は、たとえばALP(アルカリホスファターゼ)標識抗体である。加温の結果、磁性粒子152上に、被検物質151と、標識物質153と、捕捉物質とを含む免疫複合体154が形成される。
【0176】
ステップS56において、制御部211は、BF分離部117に2次BF分離処理を実行させる制御を行う。まず、制御部211は、容器移送部112により容器3をBF分離部117に移送させる。BF分離部117は、容器3中の試料に対して2次BF分離処理を行うように制御される。図21に示すように、2次BF分離処理によって、未反応の標識物質153などの不要成分が、容器3中から除去される。
【0177】
ステップS57において、制御部211は、容器3にR4試薬を分注する制御を行う。制御部211は、容器移送部112により容器3を第4の試薬分注部114dに移送させ、第4の試薬分注部114dにより容器3にR4試薬を分注させる。R4試薬は、緩衝液を含有する。容器3中の磁性粒子152と結合した免疫複合体154が緩衝液中に分散される。
【0178】
ステップS58において、制御部211は、容器3にR5試薬を分注する制御を行う。制御部211は、容器移送部112により容器3を第5の試薬分注部114eに移送させ、第5の試薬分注部114eにより容器3にR5試薬を分注させる。R5試薬の分注後、制御部211は、容器移送部112により、反応部116に容器3を移送させる。制御部211は、反応部116において、容器3を所定時間の間加温させる。図21に示すように、R5試薬は、化学発光基質を含有する。R4試薬に含有される緩衝液は、免疫複合体154に含まれる標識物質153の標識(酵素)と基質との反応を促進する組成を有する。加温により、標識に対して基質を反応させることによって光が発生する。
【0179】
ステップS59において、制御部211は、免疫複合体154の検出処理の制御を行う。制御部211は、容器移送部112により容器3を検出部118に移送させる。制御部211は、検出部118に、標識に対して基質を反応させることによって生じる光の強度を測定させる。検出部118の検出信号は、制御部211に出力される。制御部211は、通信部212を介して、分析部400に、検出部118の検出信号のデータを送信する。
【0180】
検出終了後は、ステップS60において、容器移送部112が、測定処理済みの容器3を検出部118から取り出して、廃棄口に廃棄するように制御される。
【0181】
以下、図22図26を参照しながら、緊急検体用の緊急検体ラック2bの搬送を行う場合の検体測定装置300の動作について説明する。
【0182】
図22および図23は、緊急検体ラック2bの搬送経路を示す図である。図22および図23に示すように、検体搬送部20は、割込検体ラック設置部23に設置される緊急検体ラック2bを、第1昇降部27および第2搬送路32を介して、第2昇降部33の検体吸引位置P2に搬送する。割込検体ラック設置部23は、緊急検体ラック2bを第1昇降部27に搬出する。
【0183】
緊急検体ラック2bおよび緊急検体ラック2bに保持された緊急検体容器1bの識別情報は、一般検体の場合と同様に、第1昇降部27において第1読取部28により読み取られる。第1昇降部27は、緊急検体ラック2bを載せた昇降載置部71を割込検体ラック設置部23の受渡位置P15からZ2方向に移動させて読取位置P12に一旦停止させた後、第2搬送路32と同じ高さの受渡位置P13まで緊急検体ラック2bを移動させる。
【0184】
第2搬送路32は、搬送ベルト35により緊急検体ラック2bをX2方向に移動させ、受渡位置P22で第2昇降部33に受け渡す。第2昇降部33は、緊急検体ラック2bが載せられた昇降載置部71をZ1方向に移動させ、第1搬送路31と同じ高さの検体吸引位置P2まで移動させる。第2昇降部33は、検体吸引位置P2で全ての緊急検体容器1bから検体が吸引されると、昇降載置部71をZ2方向に移動させて受渡位置P22に戻す。その後、緊急検体ラック2bは、一般検体ラック2aの場合と同じ経路でラック回収部22に回収される。なお、緊急検体ラック2bが第1昇降部27に受け渡された後、第1昇降部27が昇降載置部71をZ1方向に移動させて受渡位置P15に配置し、緊急検体ラック2bを割込検体ラック設置部23に受け渡してもよい。これにより、緊急検体ラック2bが一般検体ラック2aと異なる位置に回収されるため、オペレータは、回収された緊急検体ラック2bを容易に判別することができる。
【0185】
すなわち、緊急検体ラック2bの搬送には第1搬送路31が使用されない。従って、緊急検体ラック2bは第1吸引位置P1を介さずに第2吸引位置P2に搬送されるため、第1搬送路31上に一般検体ラック2aが存在していても、検体吸引位置P2に緊急検体ラック2bを搬送できる。ただし、後述のように、一般検体ラック2aのラック回収部22への搬送は禁止する必要がある。一般検体容器1aからの検体の吸引は、緊急検体ラック2bが検体吸引位置P2に到着するまで継続してもよいが、割込検体ラック設置部23のラックセンサ67aが緊急検体ラック2bを検知したとき、或いは緊急検体ラック2bが割込検体ラック設置部23から第1昇降部27に送り出されたときに禁止してもよい。
【0186】
検体搬送部20および測定部10の動作は、上記の通り、制御部211により制御される。制御部211は、緊急検体ラック2bを割込検体ラック設置部23から検体吸引位置P2まで搬送するように、割込検体ラック設置部23、第1昇降部27、第2搬送路32、および第2昇降部33を制御する。また、制御部211は、検体吸引位置P2において吸引管701により緊急検体容器1bから検体を吸引し、吸引管701を検体吸引位置P2から検体分注位置P31に移動させ、検体分注位置P31に配置された容器3に検体を吐出するように、測定部10の検体分注部111を制御する。
【0187】
制御部211は、割込検体ラック設置部23のラックセンサ67aが緊急検体ラック2bを検知したときに、第1搬送路31の検体吸引位置P1にある一般検体ラック2aの搬送を禁止し、第2搬送路32を介して検体吸引位置P2に緊急検体ラック2bを搬送するように、第1搬送路31および第2搬送路32を制御する。また、制御部211は、一般検体ラック設置部21から第1昇降部27への一般検体ラック2aの送り出しも禁止する。第1搬送路31は緊急検体ラック2bの検体吸引位置P2への搬送には使用されないため、第1搬送路31上の一般検体ラック2aは他の場所に退避させる必要がなく、検体吸引位置P2での緊急検体の吸引が完了するまで第1搬送路31上で待機させればよい。
【0188】
一方、緊急検体ラック2bの搬送径路である第1昇降部27に一般検体ラック2aが存在する場合は、検体吸引前の一般検体ラック2aであれば第1搬送路31に搬送し、検体吸引済みの一般検体ラック2aであればラック回収部22に回収する必要がある。また、第2昇降部33または第2搬送路32に検体吸引済みの一般検体ラック2aが存在する場合も、一般検体ラック2aをラック回収部22に搬送し、緊急検体ラック2bの搬送経路を空ける必要がある。
【0189】
制御部211は、検体吸引位置P2で全ての緊急検体容器1bから検体の吸引が完了した場合に、第2搬送路32を介して緊急検体ラック2bをラック回収部22に回収するように、第2昇降部33、第2搬送路32、第1昇降部27、およびラック回収部22を制御する。
【0190】
制御部211は、全ての緊急検体容器1bから検体の吸引が完了したときに、検体吸引位置P1で一般検体の吸引を再開してもよい。また、制御部211は、全ての緊急検体容器1bから検体の吸引が完了したとき、或いは緊急検体ラック2bがラック回収部22に回収されたときに、一般検体ラック設置部21からの一般検体ラック2aの送り出しの禁止、および第1搬送路31からの一般検体ラック2aの搬送の禁止を解除してもよい。
【0191】
図24は、検体分注部111の動作を説明するための図である。図24に示すように、検体分注部111は、ピペットアーム700の先端部に設置された1本の吸引管701により、検体吸引位置P1,P2の両方から検体の分注が可能である。検体分注部111のピペットアーム700は、上記のように、回転軸702により回転可能に支持されている。ピペットアーム700は、平面視において、回転軸702を中心に時計回りおよび反時計回りに回転する。また、ピペットアーム700は、X方向にも移動可能である。
【0192】
ピペットアーム700の回転軸702は、X方向において検体吸引位置P1,P2の間に配置される。そして、ピペットアーム700の先端部に設置された吸引管701は、一般検体の検体吸引位置P1から平面視時計回りに回転して検体分注位置P31まで移動する。また、吸引管701は、緊急検体の検体吸引位置P2から平面視時反時計回りに回転して検体分注位置P31まで移動する。
【0193】
すなわち、検体吸引位置P1は、吸引管701が検体吸引位置P2から検体分注位置P31に移動するときの移動経路α2の下方から外れた位置にある。検体吸引位置P2についても同様に、吸引管701が検体吸引位置P1から検体分注位置P31に移動するときの移動経路α1の下方から外れた位置にある。このため、分注チップ装着管701aの先端に装着された分注チップ703から吸引された検体が落下して他の検体容器に混入するおそれがない。
【0194】
第1搬送路31では、一般検体容器1aが1本ずつ検体吸引位置P1に配置されるように横送り機構36が一般検体ラック2aを移動させるため、一般検体容器1aから検体を吸引する際にはピペットアーム700をX方向に移動させる必要はない。他方、第2昇降部33では、ラック固定機構600により緊急検体ラック2bが固定されるため、緊急検体容器1bから検体を吸引する際にはピペットアーム700をX方向に移動させながら検体の吸引を行う。すなわち、緊急検体ラック2bの各保持孔2cの位置が検体吸引位置P2であるといえる。このように、ピペットアーム700の回転とX方向の平行移動とによって、検体吸引位置P1,P2の両方から検体の分注が可能になる。
【0195】
以下、緊急検体ラック2bの各搬送工程の詳細について、フローチャートを用いて説明する。図25は、緊急検体の処理手順を示すフローチャートである。
【0196】
ステップS70において、制御部211は、割込検体ラック設置部23に緊急検体ラック2bが設置されているか否かを判断する。制御部211は、割込検体ラック設置部23のラックセンサ67aにより割込検体ラック設置部23の載置台23bに設置された緊急検体ラック2bが検知された場合に、ステップS71に処理を進める。なお、割込検体ラック設置部23への緊急検体ラック2bの設置は、センサにより検知する必要はなく、ユーザが分析部400を操作することによる緊急検体ラック2bの設置の通知により検知してもよい。ステップS70の処理は割り込み処理であるため、以下のステップS71~S85の実行中、または一般検体の処理の実行中においても、ステップS70の判断処理は、継続的に実行される。
【0197】
ステップS71において、制御部211は、一般検体ラック設置部21に設置されている一般検体ラック2aの搬出、すなわち一般検体ラック設置部21から第1昇降部27への一般検体ラック2aの送り出しを禁止する。そして、第1昇降部27に検体吸引前の一般検体ラック2aが存在する場合、ステップS72において、制御部211は、当該一般検体ラック2aを第1搬送路31に搬出する。
【0198】
ステップS73において、制御部211は、第1搬送路31の一般検体ラック2aの第2昇降部33への搬出を禁止する。そして、第2昇降部33、第2搬送路32、および第1昇降部27に検体吸引済みの一般検体ラック2aが存在する場合、ステップS74において、制御部211は、当該一般検体ラック2aをラック回収部22に搬送する。
【0199】
ステップS71~S74の順序は特に限定されず、ステップS71~S74は同時に実行されてもよい。ステップS71~S74により、緊急検体ラック2bの搬送径路を空けることでき、第2昇降部33の検体吸引位置P2まで緊急検体ラック2bを搬送することが可能になる。第1搬送路31は緊急検体ラック2bの搬送径路に含まれないため、一般検体ラック2aは第1搬送路31に存在していてもよく、第1搬送路31から退避させる必要はない。ただし、ステップS72において一般検体ラック2aを第1搬送路31に搬送した結果、第1搬送路31に一般検体ラック2aを待機させるスペースがなくなる場合は、1つの一般検体ラック2aの処理を進め、ラック回収部22に搬送する必要がある。
【0200】
ステップS75において、制御部211は、緊急検体ラック2bの送出処理を実行する。緊急検体ラック送出処理は、割込検体ラック設置部23から緊急検体ラック2bを第1昇降部27へ送り出し、第1読取部28により緊急検体ラック2bおよび検体容器1bの識別情報を読み取り、緊急検体ラック2bを第2搬送路32に受け渡す処理である。第1読取部28で読み取られた緊急検体ラック2bおよび緊急検体容器1bの各識別情報は、分析部400に送信される。
【0201】
制御部211は、ステップS75の緊急検体ラック送出処理の後、ステップS76に処理を進める。ステップS76において、制御部211は、検体吸引位置P1にある検体容器1からの検体の吸引開始を禁止する。検体の吸引動作が既に開始されている場合は、当該吸引動作が完了するまで処理を進める。
【0202】
ステップS77において、制御部211は、第2搬送路32を制御して、第2搬送路32上に受け渡された緊急検体ラック2bを、第2昇降部33の検体吸引位置P2へ搬送させる。制御部211は、第2昇降部33を制御して、緊急検体ラック2bを載せた昇降載置部71をZ1方向に移動させ、一般検体の検体吸引位置P1と同じ高さの検体吸引位置P2に緊急検体ラック2bを配置させる。緊急検体ラック2bが検体吸引位置P2に到着すると、ステップS78において、制御部211は、ラック固定機構600を作動させ、緊急検体ラック2bのX方向の移動を固定する。
【0203】
検体吸引位置P2において、検体の吸引を行う前に、各検体容器1bの識別情報を第2読取部280で読み取り、検体情報の最終確認を行ってもよい。制御部211は、たとえば、検体吸引位置P2に位置する検体容器1bの識別情報と、分析部400から取得した測定オーダーにおける検体容器1bの識別情報とを照合し、両者が一致していることを確認する。両者が不一致である場合、制御部211は所定のエラー処理を実行する。
【0204】
検体吸引位置P2では、検体分注部111のピペットアーム700(吸引管701)がX方向に移動して緊急検体の吸引を行う。緊急検体ラック2bに保持された全ての検体容器1bについて検体の吸引が完了すると、制御部211は、ステップS79に処理を進める。
【0205】
ステップS79において、制御部211は、第2昇降部33を制御して、検体吸引済みの緊急検体ラック2bを第2搬送路32に搬送する。制御部211は、第2昇降部33の昇降載置部71を第2搬送路32と同じ高さの受渡位置P22に移動させ、緊急検体ラック2bを横送りして第2搬送路32上に移動させる。
【0206】
ステップS80において、制御部211は、緊急検体ラック2bの回収処理を実行する。ラック回収処理は、第2搬送路32から第1昇降部27を介して、検体吸引済みの緊急検体ラック2bをラック回収部22に回収する処理であって、一般検体ラック2aの回収処理と同じである。
【0207】
ステップS81において、制御部211は、一般検体ラック設置部21の一般検体ラック2aの搬出、第1搬送路31の一般検体ラック2aの搬送、および検体吸引位置P1における一般検体の吸引を許可する。なお、全ての緊急検体ラック2bについての検体の吸引が完了した時点で、一般検体の吸引を許可してもよい。
【0208】
測定部10では、ステップS82~S85の処理が実行される。ステップS82~S85は、一般検体の場合の処理(図17のステップS7~S10)と同様である。
【0209】
(緊急検体ラック送出処理)
図26を参照しながら、図25のステップS75の緊急検体ラック送出処理について説明する。緊急検体ラック送出処理は、制御部211により実行される。
【0210】
ステップS90において、制御部211は、第1昇降部27の昇降駆動部73を制御して、昇降載置部71を割込検体ラック設置部23の受渡位置P15まで移動させる。
【0211】
ステップS91において、制御部211は、割込検体ラック設置部23の載置台駆動部61bを制御して、緊急検体ラック2bが設置された載置台23bをY1方向に移動させる。制御部211は、昇降載置部71のラックセンサ71cにより緊急検体ラック2bが検知されると、載置台駆動部61bの駆動を停止させる。これにより、緊急検体ラック2bが、割込検体ラック設置部23から第1昇降部27に受け渡される。なお、受け渡し動作を行ってもラックセンサ71cにより緊急検体ラック2bが検知されない場合、制御部211は所定のエラー処理を実行する。
【0212】
ステップS92において、制御部211は、昇降駆動部73を制御して、昇降載置部71を第1読取部28の読取位置P12に移動させる。ステップS93において、制御部211は、第1読取部28を制御して、読取位置P12に配置された緊急検体ラック2bの識別情報と、緊急検体ラック2bに保持された検体容器1bの識別情報とを読み取る。制御部211は、第1読取部28から識別情報を取得すると、通信部212を介して取得した識別情報を分析部400に送信する。
【0213】
ステップS94において、制御部211は、横送り部75を制御して、昇降載置部71上の緊急検体ラック2bを第2搬送路32に移動させる。これにより、緊急検体ラック2bは、第1昇降部27から第2搬送路32に受け渡される。以上により、緊急検体ラック送出処理が完了し、図25のフローチャートのステップS75以降の処理に進む。
【0214】
以上のように、上記構成を備えた検体測定装置300によれば、一般検体の測定に割り込んで緊急検体を測定する際に、第1搬送路31の検体吸引位置P1にある一般検体ラック2aを第1搬送路31から退避させる必要がない。このため、緊急検体の割り込み測定を迅速に行うことができる。また、緊急検体の測定後、一般検体の測定を迅速に再開できる。さらに、緊急検体を分注した吸引管701が検体分注位置P31に移動する途中で、一般検体の検体吸引位置P1上を通過しないため、吸引管701の移動中に緊急検体が落下して一般検体容器1aに混入するおそれがない。
【0215】
上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。図27図31に、上記実施形態の変形例を示す。以下では、上記実施形態と共通する構成要素には同じ符号を用い、重複する説明を省略する。
【0216】
図27および図28は、第1の変形例を示す図であって、緊急検体ラック2bの搬送径路の一例を示す。図27および図28に示すように、測定部10は、第1測定部11および第2測定部12を有していてもよい。第1測定部11と第2測定部12は、異なる測定装置であってもよいが、本変形例では同一の測定装置であるものとする。各測定部では、少なくとも一部の測定項目が互いに異なっている。検体搬送部20は、上記実施形態の場合と同様に、一般検体ラック設置部21、ラック回収部22、割込検体ラック設置部23、および搬送装置29を有し、搬送装置29は、第1搬送路31、第2搬送路32、および第2昇降部33を含む。
【0217】
搬送装置29は、さらに、第2昇降部33の移動領域と隣接した第3搬送路91と、第3搬送路91の下方に配置されるとともに第2昇降部33の移動領域と隣接した第4搬送路92と、上下方向に移動して第3搬送路91と第4搬送路92との間で検体ラック2を受け渡す第3昇降部93と、を含む。第3搬送路91、第4搬送路92、および第3昇降部93の構成は、それぞれ、第1搬送路31、第2搬送路32、および第2昇降部33の構成と実質的に同じである。
【0218】
第1測定部11では、上記のように、第1搬送路31上の所定の位置が一般検体の検体吸引位置P1となり、第2昇降部33の検体吸引位置P1と同じ高さの位置が緊急検体の検体吸引位置P2となる。第2測定部12では、第3搬送路91上の所定の位置が一般検体の検体吸引位置P3となり、第3昇降部93の検体吸引位置P3と同じ高さの位置が緊急検体の検体吸引位置P4となる。第3搬送路91および第4搬送路92は、第2昇降部33を介して第1搬送路31および第2搬送路32とつながっているため、第1測定部11側の搬送路から第2測定部12側の搬送路に検体ラック2を受け渡すことができる。
【0219】
制御部211は、第1読取部28により読み取られた識別情報に基づいて、第1測定部11および第2測定部12のうちから検体ラック2の供給先を選択する制御を行う。すなわち、一般検体ラック設置部21または割込検体ラック設置部23から検体ラック2が第1昇降部27に受け渡された後、読取位置P12で第1読取部28によって検体ラック2および各検体容器1の識別情報が読み取られると、制御部211は、読み取られた識別情報を分析部400に送信する。分析部400は、識別情報をホストコンピュータ500に照合し、識別情報に対応する測定オーダーを取得し、取得した測定オーダーを制御部211に送信する。制御部211は、取得した測定オーダーに基づいて、第1昇降部27上の検体ラック2を、第1測定部11の検体吸引位置P1またはP2に搬送するか、第2測定部12の検体吸引位置P3またはP4に搬送するかを選択する。制御部211は、選択した搬送先へ検体ラック2を搬送する制御を行う。
【0220】
第1の変形例では、第1搬送路31上の一般検体ラック2aに保持された一般検体容器1aについて、第1測定部11による検体吸引が実行されている間に、他の検体ラック2が、第2搬送路32および第2昇降部33を経由して、第3搬送路91または第4搬送路92へ搬送される。これにより、他の検体ラック2に保持された検体容器1について、第2測定部12による検体吸引が行われる。第1搬送路31上で第1測定部11による検体吸引が実行されていない場合には、第1搬送路31および第2昇降部33を経由して、第3搬送路91または第4搬送路92へ検体ラック2を搬送することもできる。
【0221】
第3搬送路91は、第1搬送路31および第2搬送路32の少なくとも一方を通過した一般検体ラック2aを、検体吸引位置P3を介して搬送する。検体吸引位置P3では、一般検体ラック2aに保持された一般検体容器1aから測定オーダーに基づいて検体が吸引される。検体吸引済みの一般検体ラック2aは、第3昇降部93、第4搬送路92、第2昇降部33、第2搬送路32、および第1昇降部27を通ってラック回収部22に回収される。
【0222】
第4搬送路92は、第1搬送路31および第2搬送路32の少なくとも一方を通過した緊急検体ラック2bを、検体吸引位置P4に向けて搬送する。第4搬送路92は、第2昇降部33から緊急検体ラック2bを受け取ると、緊急検体ラック2bをX2方向に移動させ、第3昇降部93に受け渡す。第3昇降部93は、緊急検体ラック2bをZ1方向に移動させ、検体吸引位置P4に配置する。検体吸引位置P4において全ての緊急検体の吸引が完了すると、緊急検体ラック2bはラック回収部22に回収されるが、その回収径路は一般検体ラック2aの場合と同様である。
【0223】
緊急検体の測定オーダーに第1測定部11と第2測定部12で測定される測定項目が含まれる場合、緊急検体ラック2bは、第1測定部11の検体吸引位置P2を経由して、第2測定部12の検体吸引位置P4に搬送される。一方、測定オーダーに第1測定部11で測定される測定項目が含まれない場合、緊急検体ラック2bは、検体吸引位置P2を経由することなく、第2昇降部33を横切って検体吸引位置P4に搬送される。また、測定オーダーに第2測定部12で測定される測定項目が含まれない場合、緊急検体ラック2bは、第2測定部12側には搬送されず、検体吸引位置P2から第2搬送路32を通ってラック回収部22に回収される。
【0224】
図28に示すように、第2測定部12は、検体吸引位置P3において、一般検体ラック2aに保持された一般検体容器1aから検体を吸引し、検体分注位置P31で容器3に吐出する吸引管771を含む検体分注部770を有する。検体分注部770は、さらに、検体吸引位置P4において、緊急検体ラック2bに保持された緊急検体容器1bから検体を吸引し、検体分注位置P31で容器3に吐出する。第2測定部12は、容器3に吐出された検体を測定する。
【0225】
第1の変形例においても、検体吸引位置P3は、吸引管771が検体吸引位置P4から検体分注位置P31に移動するときの移動経路の下方から外れた位置にある。このため、吸引管771の移動中に緊急検体が落下して一般検体容器1aに混入するおそれがない。また、緊急検体を優先して測定する際に、第1搬送路31および第3搬送路91にある一般検体ラック2aを他の場所に退避させる必要がない。このため、緊急検体の割り込み測定を迅速に行うことができ、緊急検体の測定後、一般検体の測定を迅速に再開できる。
【0226】
第1の変形例の場合も、割込検体ラック設置部23において緊急検体ラック2bが検知されたときに、一般検体ラック設置部21からの一般検体ラック2aの送り出しと、第1搬送路31および第3搬送路91からの一般検体ラック2aの搬出を禁止する。また、緊急検体ラック2bの搬送径路上に一般検体ラック2aが存在する場合は、当該一般検体ラック2aを第1搬送路31または第3搬送路91に搬送するか、或いはラック回収部22に回収する。
【0227】
図29は、第2の変形例を示す図である。図29に示すように、検体分注部111は、第1検体分注部810および第2検体分注部820を有していてもよい。第1検体分注部810と第2検体分注部820は、それぞれ、平面視時計回りおよび反時計回りに回転可能なピペットアーム811,821と、ピペットアーム811,821の先端部に設置された吸引管812,822とを含む。上記実施形態では、1本の吸引管701が一般検体の吸引と緊急検体の吸引とに共通して用いられるが、第2の変形例では、第1検体分注部810の吸引管812が一般検体の吸引に用いられ、第2検体分注部820の吸引管822が緊急検体の吸引に用いられる。
【0228】
第2の変形例では、さらに、一般検体が吐出される検体分注位置P31aと、緊急検体が吐出される検体分注位置P31bとが異なる場所に存在している。検体分注位置P31a,P31bは、たとえば、X方向に並び、検体分注位置P31aが検体分注位置P31bよりもX1方向に位置する。第1検体分注部810の吸引管812は、一般検体の検体吸引位置P1から平面視時計回りに回転して検体分注位置P31aに移動する。第2検体分注部820の吸引管822は、緊急検体の検体吸引位置P2から平面視反時計回りに回転して検体分注位置P31bに移動する。
【0229】
第2の変形例においても、吸引管812の移動経路α1の下に、検体を吸引した一般検体容器1a以外の他の検体容器は存在せず、また吸引管822の移動経路α2の下に、検体を吸引した緊急検体容器1b以外の他の検体容器は存在しない。このため、吸引管812,822の移動中に吸引した検体が落下して他の検体容器に混入するおそれがない。
【0230】
第1検体分注部810は、X方向に移動しない構造となっている。第1搬送路31では、一般検体容器1aが1本ずつ検体吸引位置P1に配置されるように横送り機構36一般急検体ラック2aを移動させるため、第1検体分注部810はX方向に移動する必要がない。他方、第1検体分注部820は、X方向に移動可能な移動機構を有する。第2昇降部33には横送り機構36のような移動機構は設けられていないため、ピペットアーム821をX方向に移動させながら緊急検体の吸引を行う。
【0231】
図30は第3の変形例を示す図、図31は第4の変形例を示す図である。図30および図31に示すように、一般検体ラック2aを検体吸引位置P1に搬送するための第1搬送路901、および緊急検体ラック2bを検体吸引位置P2に搬送するための第2搬送路902が、Y方向に並んで同じ高さに配置されていてもよい。第1搬送路901と第2搬送路902は、X方向に沿って互いに平行に配置されている。
【0232】
図30に示す第3の変形例において、検体搬送部20は、一般検体ラック2aが設置される一般検体ラック設置部911と、緊急検体ラック2bが設置される割込検体ラック設置部912と、ラック回収部913と、接続路914とを有する。ラック回収部913は、第2搬送路902から一般検体ラック2aおよび緊急検体ラック2bを受け入れ可能に構成され、第2搬送路902のX2方向端部に隣接配置されている。接続路914は、第1搬送路901と第2搬送路902の間で検体ラック2を受け渡し可能な搬送部であって、第1搬送路901および第2搬送路902のX1方向端部に隣接配置されている。
【0233】
検体搬送部20は、第1搬送路901、第2搬送路902、一般検体ラック設置部911、割込検体ラック設置部912、ラック回収部913、および接続路914が同一平面上に配置された構造を有する。一般検体ラック設置部911は、第1搬送路901のX2方向端部において、第1搬送路901のY2側に隣接配置され、第1搬送路901に一般検体ラック2aを搬出可能に構成されている。割込検体ラック設置部912は、第2搬送路902のX2方向端部において、第2搬送路902のY1側に隣接配置され、第2搬送路902に緊急検体ラック2bを搬出可能に構成されている。割込検体ラック設置部912は1つの緊急検体ラック2bを設置可能であればよいが、一般検体ラック設置部911は複数の一般検体ラック2aを設置可能であることが好ましい。
【0234】
第3の変形例では、一般検体の検体吸引位置P1と、緊急検体の検体吸引位置P2とがX方向に並び、1本の吸引管701が一般検体の吸引と緊急検体の吸引とに共通して用いられる点で、上記実施形態と共通する。検体分注部111のピペットアーム700はX方向に移動可能であり、X方向に移動しながら検体吸引位置P2で緊急検体ラック2bに保持された各緊急検体容器1bから緊急検体を吸引する。一般検体の検体吸引位置P1は第1搬送路901上にあり、緊急検体の検体吸引位置P2は接続路914のY2方向端部にある。
【0235】
一般検体ラック設置部911は、一般検体ラック2aを第1搬送路901に送り出し、第1搬送路901は、受け取った一般検体ラック2aをX1方向に移動させて検体吸引位置P1に配置する。検体吸引位置P1で吸引管701により検体が吸引された検体吸引済みの一般検体ラック2aは、接続路914および第2搬送路902を通ってラック回収部913に搬送される。すなわち、接続路914および第2搬送路902は、検体吸引済みの一般検体ラック2aの回収径路である。
【0236】
割込検体ラック設置部912は、緊急検体ラック2bを第2搬送路902に送り出し、第2搬送路902は、受け取った緊急検体ラック2bをX1方向に移動させて接続路914に受け渡す。接続路914は、Y2方向に緊急検体ラック2bを移動させて検体吸引位置P2に配置する。検体吸引済みの緊急検体ラック2bは、一般検体ラック2aの場合と同様に、接続路914および第2搬送路902を通ってラック回収部913に搬送される。
【0237】
第3の変形例は、一般検体ラック2aの回収径路を利用して緊急検体ラック2bを検体吸引位置P2に搬送する点で、上記実施形態と共通する。すなわち、検体吸引位置P2への緊急検体ラック2bの搬送に第1搬送路901を使用しないため、緊急検体を優先して測定する際に、第1搬送路901の検体吸引位置P1にある一般検体ラック2aを第1搬送路901から退避させる必要がない。さらに、緊急検体を分注した吸引管701が検体分注位置P31に移動する途中で、一般検体の検体吸引位置P1上を通過しないため、吸引管701の移動中に緊急検体が落下して一般検体容器1aに混入するおそれがない。
【0238】
図31に示す第4の変形例は、第1搬送路901と第2搬送路902が互いに平行に配置され、一般検体ラック設置部911が第1搬送路901のX2方向端部に接続され、割込検体ラック設置部912が第2搬送路902のX2方向端部に接続されている点で、第3の変形例と共通する。一方、第4の変形例の検体搬送部20は、第1搬送路901および第2搬送路902のX1方向端部に隣接してラック回収部913が設けられている点で、第3の変形例の検体搬送部20と異なる。そして、緊急検体の検体吸引位置P2は、第2搬送路902上に設定されている。
【0239】
すなわち、第4の変形例において、第2搬送路902は一般検体ラック2aの回収径路ではなく、緊急検体ラック2bの専用の搬送径路となっている。この場合も、検体吸引位置P2への緊急検体ラック2bの搬送に第1搬送路901を使用しないため、緊急検体を優先して測定する際に、第1搬送路901の検体吸引位置P1にある一般検体ラック2aを第1搬送路901から退避させる必要がない。
【0240】
第4の変形例では、第1搬送路901における一般検体の検体吸引位置P1と、第2搬送路902における緊急検体の検体吸引位置P2とが、Y方向に並ばずX方向にずれた位置にある。検体分注部111は、X方向に移動可能に構成され、検体吸引位置P1から検体分注位置P31に吸引管701を移動させる際にはピペットアーム700を平面視時計回りに回転させる。他方、検体吸引位置P2から検体分注位置P31に吸引管701を移動させる際には、ピペットアーム700を平面視反時計回りに回転させる。
【0241】
第4の変形例において、ピペットアーム700は、たとえば、その長さを変化させることができる伸縮構造を有する。検体吸引位置P2で緊急検体を吸引する際にはピペットアーム700を長く延ばし、検体吸引位置P1で一般検体を吸引する際にはピペットアーム700を短くする。吸引管701は第1搬送路901上を通過して検体吸引位置P2まで延びるが、吸引管701が検体分注位置P31に移動する途中で、検体吸引位置P1上を通過しないため、吸引管701の移動中に緊急検体が落下して一般検体容器1aに混入するおそれはない。
【符号の説明】
【0242】
1:検体容器
1a:一般検体容器
1b:緊急検体容器
1c:バーコードラベル
2:検体ラック
2a:一般検体ラック
2b:緊急検体ラック
2c:保持孔
2d:バーコードラベル
2e:係合溝
2x:長辺側側面
2y:短辺側側面
3:容器
10:測定部
10a:前面
10b:背面
10c、10d:側面
11:第1測定部
12:第2測定部
20:検体搬送部
21:一般検体ラック設置部
21a:ラック貯留領域
21b:載置面
21c:移動機構
22:ラック回収部
22a:ラック貯留領域
22b:載置面
22c:移動機構
23:割込検体ラック設置部
23a:載置面
23b:載置台
23c:載置台移動機構
25:基部
26:シャーシ
26a:側面部材
26b:背面部材
27:第1昇降部
28:第1読取部
29:搬送機構
31:第1搬送路
32:第2搬送路
33:第2昇降部
34:駆動部
35:搬送ベルト
36:横送り機構
36a:係合片
36b:係合切替部
36c:直動機構
36d:駆動部
41:第1爪部
42:第2爪部
43:スライダ部
44:回転軸
45a、45b、45c、45d:ラック有無センサ
46:後端部センサ
48a、48b:原点センサ
51:第1爪部
52:第2爪部
53:スライダ部
54:回転軸
55:到達検知部
56:送り込み機構
61a:ガイドレール
61b:載置台駆動部
61c:ベルト
61d、61e:プーリ
62:テーブル
63:アーム部
64:アーム
65:支持部
65a:第1部材
65b:第2部材
66:係合切替機構
66a:傾斜ブロック
66a1:傾斜面
66a2:水平面
66b:位置決め部材
66b1:係合凹部
66b2:回転軸
67a、67b:ラックセンサ
68:原点センサ
71:昇降載置部
71a:スライダ
71b:ストッパ
71c:ラックセンサ
71d:枠
72:ガイドレール
73:昇降駆動部
74:伝達部
74a:ベルト
74b、74c:プーリ
75:横送り部
75a:搬送ベルト
75b:ベルト駆動部
75c:伝達部
75c1、75c2:プーリ
75c3:伝達ベルト
110:測定機構
111:検体分注部
111a:ピペット部
111b:ピペット移動機構
112:容器移送部
112a:キャッチャ
113:容器供給部
114a~114e:試薬分注部
114f:ピペット
115:試薬保冷庫
115a:ケース
115b:容器保持部
116:反応部
117:BF分離部
118:検出部
120:筐体
121:第1収容部
122:第2収容部
131、132、133:試薬容器
141:流体回路部
142:電源回路部
200:検体ラック設置部
210:主制御基板
211:制御部
212:通信部
213:記憶部
220:搬送制御基板
230:測定制御基板
280:第2読取部
300:検体測定装置
400:分析部
500:ホストコンピュータ
600:ラック固定機構
601:ロック板
602:ロック板ブラケット
603:押圧ローラ
604:押圧ローラブラケット
605:駆動部
606:付勢部材
607:センサ
610:ブラケット
700:ピペットアーム
701:吸引管
701a:分注チップ装着管
702:回転軸
703:分注チップ
705:ユニット
706:ガイドレール
710:第1移動機構
711:駆動部
712:伝達部
712a:ベルト
720:第2移動機構
721:駆動部
722:伝達部
722a:ベルト
722b:プーリ
730:第3移動機構
731:駆動部
732:伝達部
732a:ベルト
CL:搬送レーン
P1、P1a、P1b:検体吸引位置
P31:検体分注位置
P32a、P32b:吸引位置
P33a:R1試薬分注位置
P33b:R2試薬分注位置
P33c:R3試薬分注位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31