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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141785
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/135 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61B3/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053619
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧田 博史
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA03
4C316AA09
4C316AB19
4C316FA04
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】消費電力の低減が可能で、被検眼の観察等を適切かつ効率的に行うことができる眼科装置を提供する。
【解決手段】眼科装置100は、主電源部20、照明系30、固視部33、撮像部60、制御装置50(主制御部51)を備える。眼科装置100は、稼働状態、遮断状態及び第1のスリープ状態を有する。主制御部51は、各状態において、状態ごとに予め決められた所定条件を満たしたときに、状態が遷移するように各部を制御する。主制御部51は、第1のスリープ状態では、主制御部51と撮像部60に電力を供給し、照明系30と固視部33への電力の供給を停止するように主電源部20を制御し、第1のスリープ状態において、所定の復帰処理の実行を検知したとき、固視部33と照明系30に電力を供給するように主電源部20を制御し、状態を第1のスリープ状態から稼働状態に移行させる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を供給する電源部と、
被検眼に照明光を照射する照明系と、
前記被検眼を固視させる固視部と、
前記被検眼の画像を取得する撮像部と、
前記電源部、前記照明系、前記固視部及び前記撮像部を制御する制御装置と、を備え、
前記電源部から前記照明系、前記固視部、前記撮像部及び前記制御装置の全部に電力が供給されて全部が機能する稼働状態と、全部への電力の供給が停止されて全部の機能が停止する遮断状態と、少なくとも一部に電力が供給されて一部が機能する第1のスリープ状態とを有し、
前記制御装置は、各状態において、前記状態ごとに予め決められた所定条件を満たしたときに、前記状態が遷移するように各部を制御する
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1のスリープ状態では、前記制御装置と前記撮像部に電力を供給し、前記照明系と前記固視部への電力の供給を停止するように前記電源部を制御し、
前記第1のスリープ状態において、所定の復帰処理の実行を検知したとき、前記照明系と前記固視部に電力を供給するように前記電源部を制御することで、前記状態を前記第1のスリープ状態から前記稼働状態に移行させる
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記稼働状態から前記第1のスリープ状態に移行させるための操作部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記操作部は、タクタイルスイッチである
ことを特徴とする請求項3に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記状態に応じて点灯又は消灯する表示灯を備え、
前記制御装置は、前記稼働状態と前記第1のスリープ状態とで、異なる態様で発光するように前記表示灯を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項6】
操作者の所定の操作を検知する検知部を備え、
前記制御装置は、前記検知部が前記第1のスリープ状態において前記所定の操作を検知したことを条件として、前記状態が前記第1のスリープ状態から前記稼働状態に移行するように各部を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記制御装置のみに電力が供給されて前記制御装置のみが機能する第2のスリープ状態をさらに有し、
前記制御装置は、前記第1のスリープ状態において、所定条件を満たしたときに、前記第2のスリープ状態に移行し、前記復帰処理により前記稼働状態に移行するように各部を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、動作の状態として、通常電力モードと省電力モードを有する眼科装置があった。この眼科装置は、本体部に、操作者が操作する携帯端末が装着されると、状態が通常電力モードに切り替わり、眼科装置のすべての部位に規定の電力が供給され、本体部から形態端末が取り外されると、状態が省電力モードに切り替わり、本体部を再起動するための電力のみが供給される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-138372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の眼科装置は、省電力モードにおいても、少なくとも一部の部位へ電力が供給され続けるため、電源を消し忘れた場合等は、電力の無駄を生じることがある。また、従来の眼科装置は、省電力モードでは本体部を再起動するための電力のみが供給されるため、すべての部位が再起動して被検眼の観察や画像の撮影が可能となるまでに時間が掛かっていた。また、従来の眼科装置は、状態の切り替えに携帯端末とその装着部が必要であり、携帯端末の着脱動作も必要であった。
【0005】
本開示は、上記問題に着目してなされたもので、消費電力の低減が可能で、しかも被検眼の観察等を適切かつ効率的に行うことができる眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の眼科装置は、電力を供給する電源部と、被検眼に照明光を照射する照明系と、前記被検眼を固視させる固視部と、前記被検眼の画像を取得する撮像部と、前記電源部、前記照明系、前記固視部及び前記撮像部を制御する制御部と、を備える。前記電源部から前記照明系、前記固視部、前記撮像部及び前記制御装置の全部に電力が供給されて全部位が機能する稼働状態と、全部への電力の供給が停止されて全部の機能が停止する遮断状態と、少なくとも一部に電力が供給されて一部が機能する第1のスリープ状態とを有する。前記制御部は、各状態において、前記状態ごとに予め決められた所定条件を満たしたときに、前記状態が遷移するように各部を制御する。
【発明の効果】
【0007】
このように構成された眼科装置は、消費電力の低減が可能で、しかも被検眼の観察等を適切かつ効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】実施例1の細隙灯顕微鏡の全体構成を示す斜視図である。
図1B】実施例1の細隙灯顕微鏡の主要部分の構成を示す斜視図であり、(a)は背景照明系近傍の斜視図であり、(b)は調光つまみ近傍の斜視図である。
図2】実施例1の細隙灯顕微鏡の制御ブロック図である。
図3】実施例1の細隙灯顕微鏡における状態遷移を説明するための図である。
図4】実施例1の細隙灯顕微鏡の稼働状態、スリープ状態及び遮断状態での各部の機能状態を説明するための図である。
図5】実施例1の細隙灯顕微鏡の動作の一例を示すフローチャートである。
図6】実施例1の変形例の細隙灯顕微鏡の主要部分を示す斜視図である。
図7】実施例2の細隙灯顕微鏡における状態遷移を説明するための図である。
図8】実施例3の細隙灯顕微鏡における状態遷移を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施例1)
本開示の眼科装置の一実施例の細隙灯顕微鏡100は、図1A図5を参照して、以下のように説明される。図1A図1Bに示される細隙灯顕微鏡100は、スリット光を用いて被検眼の角膜の光切片を切り取ることにより、角膜の断面の画像を取得する眼科装置であり、「スリットランプ顕微鏡」とも称される。
【0010】
実施例1の細隙灯顕微鏡100は、図1A図1Bに示されるように、顕微鏡本体10と、主電源部20とを主に備える。顕微鏡本体10は、照明系30と、観察系40と、制御装置50と、撮像部60と、背景照明系70とを主に備える。
【0011】
実施例1の細隙灯顕微鏡100は、「稼働状態」、「第1のスリープ状態」(以下、実施例1及び実施例2では、単に「スリープ状態」という。)、「遮断状態」の3つの状態(モード)を有する。実施例1の細隙灯顕微鏡100の状態は、所定の条件を充足することで、これら3つの状態の間で遷移する。
【0012】
「稼働状態」は、主電源部20から顕微鏡本体10のすべてのユニット(部)に電力が供給され、照明系30、観察系40、制御装置50、撮像部60及び背景照明系70のすべてが稼働可能となっている状態をいう。「スリープ状態」は、主電源部20はON状態であり、顕微鏡本体10の一部のユニットは、主電源部20から電力が供給されて機能することが可能となっており、一部のユニットは、電力が供給されず、機能していない状態をいう。より具体的には、実施例1の「スリープ状態」では、制御装置50と撮像部60とに電力が供給され、機能することが可能な状態となっている。「遮断状態」は、主電源部20がOFF状態であり、照明系30、観察系40、制御装置50、撮像部60、及び背景照明系70のすべてに電力が供給されず、機能していない状態(いわゆる電源OFF)をいう。
【0013】
顕微鏡本体10は、テーブル1に設置され、前述したように照明系30、観察系40、制御装置50、撮像部60及び背景照明系70を備える。顕微鏡本体10は、さらに、テーブル1の上面に固定された基部11と、基部11の上面に設けられた架台部12と、架台部12を左右方向に移動させる移動機構13と、架台部12の上面に設けられた支持部14と、基部11に支持された顔支持部15とを有する。
【0014】
架台部12は、架台12aと、調光つまみ(調光操作部)12bと、操作レバー(移動操作部)12cと、操作レバー12cの上面に設けられた撮影ボタン12dとを有する。架台部12は、基部11に対し、移動機構13によって被検眼から見て前後方向及び左右方向に移動可能となっている。移動機構13は、架台12aに挿通されたスライド棒13aと、スライド棒13aの両端を前後方向に移動可能に支持する一対の固定部13bとを有する。
【0015】
操作レバー12cは、架台部12の移動操作及び撮像部60に撮影指示を与えるための部材である。検者等の操作者は、操作レバー12cを握った状態で動かすことで、前後左右に架台部12全体を移動させることができる。また、操作者が操作レバー12cを傾倒操作することで、その操作量及び操作方向に応じて観察系40が焦点合わせ(フォーカス)を行う。操作者が操作レバー12cを軸周りに回転操作することで、その操作量及び操作方向に応じて基部11の上面に設けられた支持部14が上下方向に移動する。また、操作者が操作レバー12cの上面の撮影ボタン12dを押し下げることで、撮像部60は被検眼の画像の撮影を実行する。
【0016】
調光つまみ12bは、照明系30のスリット光(LED光源)の明るさを調整するための部材である。操作者が調光つまみ12bを回転操作することで、その操作量及び操作方向に応じて照明系30の照明光の明るさが、連続的かつ自在に変更される。また、実施例1の調光つまみ12bは、上下に移動し操作者による押し下げ操作を検知するタクタイルスイッチからなる。調光つまみ12bは、「スリープ状態」に移行させるための指示を与える「スリープボタン」として機能する。
【0017】
支持部14は、台座14aと、第1支持アーム14bと、第2支持アーム14cと、スリット開閉ノブ(スリット開閉操作部)14dとを有する。台座14aは、架台12aの上面に設けられる。第1支持アーム14b及び第2支持アーム14cは、台座14aから起立している。第1支持アーム14b及び第2支持アーム14cは、同軸の垂直軸を中心にそれぞれ独立して回動可能である。
【0018】
第1支持アーム14bは、照明系30の光学部材を収容した照明系ハウジング31が上部に取り付けられ、照明系30を支持する。この第1支持アーム14bは、手動により回動させられる。第1支持アーム14bが回動することで、照明系ハウジング31が被検眼の周囲を旋回する。これにより、被検眼に対するスリット光の照射方向が変更される。なお、第1支持アーム14bは、上下方向にも回動してよく、この場合では被検眼に対するスリット光の仰角や俯角が変更される。
【0019】
第2支持アーム14cは、観察系40の光学部材を収容した観察系ハウジング41が上部に取り付けられ、観察系40を支持する。また、第2支持アーム14cは、観察系40の下方に、撮像部60が着脱自在に取り付けられ、撮像部60を支持する。この第2支持アーム14cは、手動により回動させられる。第2支持アーム14cが回動することで、観察系40及び撮像部60が第1支持アーム14bの周囲を旋回する。これにより、被検眼に対する観察系40及び撮像部60の観察方向が変更される。
【0020】
なお、第1支持アーム14b及び第2支持アーム14cは、電動により自動で回動する構成であってもよい。この場合、支持部14は、第1支持アーム14bと第2支持アーム14cを回動させる駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とを有する。アクチュエータは、例えばステッピングモータ(パルスモータ)が用いられる。また、伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオン等が用いられる。
【0021】
顔支持部15は、観察系40の前方に観察系40と対峙して配置されている。顔支持部15は、被検者の顎を載せる顎受部15aと、額をあてがう額当部15bとを有する。実施例1では、テーブル1に正対した被検者が顎受部15a及び額当部15bに顔を接触させた状態で、操作者が細隙灯顕微鏡100を操作して被検眼の観察等を行う。
【0022】
主電源部20は、照明系30、観察系40、制御装置50、撮像部60及び背景照明系70に電力を供給する装置である。主電源部20は、AC/DCコンバータ21と、電源スイッチ22と、確認表示灯23とを主に備える。AC/DCコンバータ21は、交流電圧を直流電圧に変換する。電源スイッチ22は、細隙灯顕微鏡100を起動させるためのスイッチである。操作者が電源スイッチ22をONすることで、主電源部20は、AC/DCコンバータ21を介して、照明系30、観察系40、制御装置50、撮像部60及び背景照明系70に電力を供給する。
【0023】
確認表示灯23は、いわゆるパイロットランプであり、例えばLEDからなる。確認表示灯23は、細隙灯顕微鏡100が通電状態(電源ON)となっているか通電されていない状態(電源OFF状態)かを知らせるためのものである。実施例1では、確認表示灯23は、細隙灯顕微鏡100の状態を操作者等に知らしめる状態表示灯としても機能する。すなわち、確認表示灯23は、主制御部51の制御の下、「遮断状態」(つまり電源OFF)のときは消灯し、「稼働状態」(つまり電源ON)では点灯し、「スリープ状態」(つまり一部が電源ON)では点滅する。なお、確認表示灯23の発光態様は、この態様に限定されず、操作者等に細隙灯顕微鏡100の状態を知らしめればよく、例えば、状態に応じて発光色を変化させる(例えば、「スリープ状態」では赤色や黄色で発光、稼働状態では白色で発光)ものであってもよい。
【0024】
照明系30は、被検眼に向けてスリット光を照射する。照明系30は、スリット光源、リレーレンズ、照明絞り、コンデンサレンズ、スリット部、視野絞り部、結像レンズ等の光学部材を有する図示しない照明光学系を備える。照明光学系は、照明系ハウジング31に収容されている。スリット光源は、例えばLED光源からなる。スリット光の明るさは、前述のように架台12aに設けられた調光つまみ12bを操作することで変更される。スリット光の幅は、支持部14に設けられたスリット開閉ノブ14dを操作することで変更される。なお、「スリット光」とは、照射領域の一部を遮ることで照射領域が帯状に形成された光であり、被検眼の角膜や眼底を観察するための照明光である。
【0025】
さらに、照明系ハウジング31の下方に、照明系30から照射されたスリット光を被検眼に向けて反射する反射ミラー32が配置されている。反射ミラー32は、第1支持アーム14bに取り付けられている。なお、この反射ミラー32は、背景照明系70から照射された背景光を被検眼に向けて反射することもできる。また、照明系ハウジング31の側方には、下方に延びる固視部33が設けられている。固視部33は、固視光を出射する外部固視灯(例えば、LED)を有し、外部固視に用いられる。固視部33は、被検眼の視線を誘導し、被検眼の向きを調整することができる。
【0026】
観察系40は、被検眼からの反射光を観察するために用いられる。ここで、「反射光」には、被検眼で反射されたスリット光や背景光だけでなく、例えば被検眼やその周辺からの散乱光などの各種の光が含まれる。実施例1では、これら各種の光を含めたものが「反射光」と呼ばれる。観察系40は、被検眼からの反射光を案内する左右一対の図示しない観察光学系を有する。観察光学系は、対物レンズ、変倍光学系、絞り、ビームスプリッタ、結像レンズ、プリズムユニット、接眼レンズ42a等の光学部材を有する観察光学系を備える。観察光学系は、観察系ハウジング41に収容されている。観察系ハウジング41の終端には、接眼レンズ42aを有する接眼部42が設けられている。操作者は、接眼部42を覗き込むことで被検眼を肉眼で観察できる。また、観察系ハウジング41の側面には、観察倍率を変更するための観察倍率調整ハンドル(観察倍率調整操作部)43が設けられている。
【0027】
撮像部60は、被検眼からの反射光を受光して、被検眼の画像を撮影する。撮像部60は、第2支持アーム14cに着脱自在に取り付けられる。撮像部60は、図示しない撮像素子、撮影レンズ等の光学部材を有する撮像光学系、撮影用照明(カメラLED)等を備える。撮像素子は、光を検出して電気信号(画像信号)を出力する光電変換素子である。撮像素子は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが用いられる。
【0028】
撮像部60は、外部装置であるパーソナルコンピュータ(PC)80(図2参照)と有線又は無線により接続されており、画像信号をPC80に出力可能となっている。したがって、撮像部60で撮影された画像は、PC80に保存可能である。
【0029】
被検眼からの反射光は、例えば、観察系40のビームスプリッタにより反射され、結像レンズ及び反射ミラー32を介して撮像素子に導かれる。撮像素子は、この反射光を検出して電気信号(画像信号)を出力する。実施例1では、画像信号は、PC80に入力されるが、制御装置50に入力されてもよい。
【0030】
背景照明系70は、照明系30から照射されたスリット光の照射領域の周囲の領域を背景光で照明する。背景照明系70による照射領域は、少なくともこの周囲領域を含んでいればよく、照明系30による照射領域と一部が重複していてもよい。背景照明系70は、背景照明ハウジング71と、図示しない背景用光源及びレンズ等の光学部材と、照明強度調整つまみ(照明強度調整操作部)72とを有する。
【0031】
背景用光源は、肉眼観察や撮影に用いられる可視光(背景光:BG)を出射する可視光源と、マイボーム腺の観察や撮影に用いられる赤外光(IR)を出射する赤外光源とを有する。背景用光源は、例えばLED光源からなり、背景照明ハウジング71に収容されている。背景用光源から出射された可視光又は赤外光は、レンズによって集光された後、照明系30の反射ミラー32により反射されて被検眼に照射される。背景用光源が可視光源と赤外光源の双方を有する場合には、各光源が択一的に使用される。なお、背景用光源は、LED光源からなるため、1つのLED光源から択一的に可視光と赤外光を出射することができる。
【0032】
背景用光源から出射される可視光又は赤外光の強度は、照明強度調整つまみ72の操作によって調整されるが、別個に設けられた操作部によって調整されてもよい。
【0033】
制御装置50は、細隙灯顕微鏡100の各部(各ユニット)を制御する。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)を有する主制御部(制御部)51と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等からなる記憶部52とを備える。制御装置50は、架台12aに内蔵されている。
【0034】
主制御部51は、必要な情報を取得し、主電源部20、照明系30、観察系40、撮像部60及び背景照明系70に対して適宜制御指令を出力する。記憶部52は、制御プログラムが予め記憶される。主制御部51からの制御指令は、この制御プログラムとハードウェアとが協働することで実現される。
【0035】
制御装置50は、操作部や表示部を有するPC、タブレット端末、専用コントローラ等に接続されてもよい。主制御部51は、PC等の操作部からの操作者による操作入力を受けて、細隙灯顕微鏡100を制御し、撮影された画像、測定結果等を出力して、表示部に表示させてもよい。
【0036】
図3は、実施例1の細隙灯顕微鏡100の状態の遷移を説明するための図である。図3では、各部(ユニット)を四角又は丸で示し、これらが白抜きの場合は、点灯又は電源ONとなっていることを示し、灰色で塗りつぶされている場合は、消灯又は電源OFFとなっていることを示す。この図3に示されるように、主制御部51は、所定の条件を満たしたときに、細隙灯顕微鏡100の状態を、稼働状態、遮断状態及び第1のスリープ状態(パワーセーブ)の間で遷移させる。例えば、細隙灯顕微鏡100が通電されておらず、機能していない状態、つまり遮断状態のときに、電源スイッチ22がONされたとき、細隙灯顕微鏡100の状態は遮断状態から稼働状態に移行する。これにより、操作者は、細隙灯顕微鏡100を用いた被検眼の観察や撮影を行える。
【0037】
この稼働状態において、スリープボタン(図3では、「SLPボタン」と表記)である調光つまみ12bが押し下げられたとき、状態は稼働状態からスリープ状態に移行する。若しくは、稼働状態において、操作者等が細隙灯顕微鏡100の操作をしない時間(無操作時間)が所定時間以上となったとき(無操作時間≧M分、Mは1以上の整数)、状態は稼働状態からスリープ状態に移行する。
【0038】
この無操作時間の閾値のM分は、特に限定されないが、10~60分が好ましく、30分程度がより好ましい。無操作時間の閾値を30分程度とすれば、一人の患者(被検者)の診察等が行われている間は稼働状態が維持され、診察等が終了した後にスリープ状態に移行する。これにより、操作者の操作性を損なうことなく、消費電力が抑制され、節電が可能となる。無操作時間は、例えば、調光つまみ12b、操作レバー12c、撮影ボタン12d、その他の操作部の何れに対しても、操作者の操作が行われなかったことを、主制御部51が検知した時点からの経過時間である。
【0039】
スリープ状態において、調光つまみ12bが押し下げられたとき、つまり、復帰のための操作が行われたとき、状態はスリープ状態から稼働状態に移行する。これにより、操作者は、細隙灯顕微鏡100を用いた被検眼の検査を行える。
【0040】
また、稼働状態又はスリープ状態のときに、電源スイッチ22がOFFされると、状態は、稼働状態又はスリープ状態から遮断状態に移行する。「遮断状態」、「スリープ状態」及び「稼働状態」の遷移の詳細は、後述される。
【0041】
図4は、実施例1の細隙灯顕微鏡の稼働状態、スリープ状態及び遮断状態での各部(ユニット)の機能状態を説明するための図である。なお、図4の最終行には、後述の実施例2で用いられる検知部16の各状態における機能状態も示されているが、以下では、実施例1に関わるユニットの機能状態が説明される。
【0042】
この図4に示されるように、主電源部20の確認表示灯23(パイロットLED)は、稼働状態では点灯し、スリープ状態では点滅し、遮断状態では消灯する。架台部12に内蔵された制御装置50の主制御部51(CPU電源)は、稼働状態及びスリープ状態では電源ONとなり、遮断状態では電源OFFとなる。撮像部60の電源(カメラ電源)は、稼働状態及びスリープ状態では電源ONとなり、遮断状態では電源OFFとなる。固視部33の外部固視灯(LED)は、稼働状態では点灯し、スリープ状態及び遮断状態では消灯する。
【0043】
これに対して、撮像部60の光源(カメラLED)、照明系30のスリット光源(LED)及び背景照明系70の背景用光源(IR/BG:LED)は、スリープ状態及び遮断状態では消灯するが、稼働状態では操作者の前回の操作に従って点灯又は消灯する。具体的には、カメラLED(例えば、撮像部60の、操作者から見える位置に配置される。)は、背景用光源の照明強度調整つまみ72と連動している。カメラLEDは、操作者が照明強度調整つまみ72を消灯位置(OFF)に設定していれば消灯し、点灯位置(赤外光又は可視光)に設定していれば点灯する。また、背景用光源は、操作者が照明強度調整つまみ72を消灯位置に設定していれば消灯し、照明強度調整つまみ72を点灯位置に設定していれば、操作者によって選択された赤外光又は可視光の調整量に応じた強度で点灯する。
【0044】
スリット光源は、操作者が調光つまみ12bを消灯位置に設定していれば消灯し、調光つまみ12bを点灯位置に設定していれば、調光つまみ12bの調整量に応じた明るさで点灯する。なお、調光つまみ12bはタクタイルスイッチであり、操作者が押し下げることにより、細隙灯顕微鏡100の状態が遷移する。
【0045】
上述のような構成の実施例1の細隙灯顕微鏡100の動作の一例は、図5に示されるフローチャート及び図3図4を参照して、以下のように説明される。図5のフローチャートに示される動作は、例えば、操作者が電源スイッチ22をONしたタイミングで開始される。検査に際して、操作者は、被検者を椅子等に座らせて、細隙灯顕微鏡100と対峙させ、顎受部15aに顎を載せさせ、額当部15bに額を当てさせる。
【0046】
まず、ステップS1で、電源スイッチ22がONされると、主制御部51の制御の下、主電源部20は、細隙灯顕微鏡100のすべてのユニットに電力を供給する。これにより、細隙灯顕微鏡100の状態は遮断状態から稼働状態へ移行する。ステップS2で、主制御部51は、ROM等に設定している「状態」を稼働状態に設定する。この「稼働状態」のときの各部の機能状態は、図3図4に示されるように、主電源部20の確認表示灯23(図3等では「SLP」と表記)が点灯し、固視部33の外部固視灯が点灯する。撮像部60の電源(図3等では「カメラ電源」と表記)がONとなって撮影可能状態となる。また、架台部12に収容された制御装置50の電源(図3等では「CPU電源」と表記)がONとなって各部を制御可能となる。
【0047】
また、撮像部60の光源(図3等では「カメラLED」と表記)は、前回の操作者の操作に従って、点灯又は消灯する。照明系30のスリット光源(図3等では「LED」と表記)は、前回の操作者の調光つまみ12bの操作に従って、消灯又は操作量に応じた明るさで点灯する。背景照明系70の赤外光源又は可視光源(図3等では「IR/BG」と表記)は、前回の操作者の照明強度調整つまみ72の操作に従って、消灯又は操作量に応じた強度で点灯する。
【0048】
次のステップS3で、操作者に被検眼の観察や画像撮影を行わせるべく、主制御部51は、操作者の操作に従って、細隙灯顕微鏡100の各部を動作させる。具体的には、主制御部51は、調光つまみ12bの回転操作の操作量及び操作方向に応じて、スリット光源を制御して、スリット光の明るさを調整する。主制御部51は、スリット開閉ノブ14dの操作量及び操作方向に応じて、スリットを開閉してスリット刃の間隔を拡縮し、スリット光の幅を調整する。また、主制御部51は、操作レバー12cの傾倒操作の操作量及び操作方向に応じて観察系40を制御して、焦点合わせを行わせる。また、主制御部51は、撮影ボタン12dが押されると、撮像部60を制御して被検眼の画像を取得させる。これにより、操作者は、観察系40を用いた被検眼の観察や、撮像部60を用いた被検眼の撮影を適切かつ迅速に行うことができ、この結果、検眼や診断を円滑に行える。
【0049】
次のステップS4では、主制御部51は、電源スイッチ22がOFFされたか判定する。つまり、操作者は、検眼等を終了するときは、電源スイッチ22をOFFにし、細隙灯顕微鏡100に遮断状態への移行の指示を与える。主制御部51は、この指示入力を受けたときに、YESと判定し、処理工程をステップS9へと進める。一方、電源スイッチ22のOFFの操作がないときは、主制御部51は、処理工程をステップS5へと進める。
【0050】
次のステップS5で、主制御部51は、スリープボタンである調光つまみ12bが押し下げ操作されたか、又は無操作時間が30分以上となったか判定する。つまり、操作者は、被検者に結果説明をするとき等、検眼等を一時的に停止する場合は、調光つまみ12bを押し下げて、細隙灯顕微鏡100にスリープ状態への移行の指示を与える。主制御部51は、この指示入力を受けたときに、YESと判定する。また、主制御部51は、調光つまみ12bの操作がなくても、無操作時間が30分経過したときに、YESと判定する。一方、主制御部51は、調光つまみ12bの押し下げ操作がなく、かつ無操作時間が30分未満である間は、NOと判定する。
【0051】
ステップS5での判定結果がYESの場合は、稼働状態からスリープ状態へ移行する条件を満たしたとして、主制御部51は、処理工程をステップS6へと進める。これに対して、判定結果がNOの場合は、スリープ状態へ移行する条件を満たしていないことから、主制御部51は、処理工程をステップS3へと戻して稼働状態を維持する。これにより、操作者は、引き続き細隙灯顕微鏡100を用いた被検眼の観察や撮影を行える。
【0052】
次のステップS6で、細隙灯顕微鏡100の状態をスリープ状態に移行させるべく、主制御部51は、主電源部20を制御して、制御装置50及び撮像部60への電力の供給を継続させ、CPU電源及びカメラ電源のON状態を維持するが、一方でカメラLEDは消灯させる。また、主制御部51は、主電源部20を制御して、照明系30、固視部33及び背景照明系70への電力の供給を停止させ、外部固視灯、スリット光源及び背景用光源を消灯させるとともに、確認表示灯23を点滅させる。主制御部51は、「状態」をスリープ状態に設定する。
【0053】
したがって、スリープ状態の細隙灯顕微鏡100は、消費電力が最小限に抑えられる。また、操作者は、検眼等を一時的に終了するときに、調光つまみ12bを操作してスリット光源を消灯したり、スリット開閉ノブ14dを操作してスリット刃を閉じたり、照明強度調整つまみ72を操作して背景用光源を消灯させたりする必要がない。また、調光つまみ12b及び照明強度調整つまみ72は、操作者が操作した状態(操作量)が維持される。また、カメラ電源はONとなっていることから、撮像部60とPC80との接続状態が維持され、その後の稼働状態への復帰時に接続設定の時間が削減可能となる。また、スリープ状態では、確認表示灯23が点滅していることから、操作者等は、電源スイッチ22をOFFし忘れたことに気づきやすく、速やかに電源スイッチ22をOFFすることができるため、無駄な電力の消費をより適切に低減できる。
【0054】
次のステップS7で、主制御部51は、調光つまみ12bの押し下げ操作がされたか判定する。つまり、操作者は、検査等を再開する場合は、調光つまみ12bを押し下げて、細隙灯顕微鏡100に稼働状態への移行(復帰)の指示を与える。主制御部51は、この指示入力を受けたときにYESと判定し、指示入力を受けない間はNOと判定する。
【0055】
ステップS7の判定結果がYESの場合は、スリープ状態から稼働状態へ移行する条件を満たしたとして、主制御部51は、処理工程をステップS2へと戻す。ステップS2に戻ると、主制御部51は、主電源部20を制御して、制御装置50と撮像部60への電力の供給を継続させつつ、照明系30、固視部33及び背景照明系70への電力の供給を再開させ、これらを機能可能な状態にさせる。このとき、調光つまみ12b、スリット開閉ノブ14d及び照明強度調整つまみ72等は、スリープ状態となる前の操作状態が維持されている。このため、稼働状態に復帰したときに、スリット光源から、前回と同様の明るさ及び幅でスリット光が出射され、前回と同様の強度で背景用光源から可視光又は赤外光が出射される。これにより、操作者は、スリット光の明るさの再調整、背景光の再選択や強度の再調整を行う必要がなく、迅速に検眼等を再開できる。
【0056】
ところで、撮像部60は、電源OFFの状態から電源ONとなって起動したときは、初期設定やPC80との接続の設定処理が行われるため、撮影やPC80とのデータの送受信が可能となるまでに時間がかかる。しかし、実施例1では、スリープ状態でも撮像部60には電力が供給され続け、カメラ電源がONとなっている。このため、初期設定やPC80と接続の設定処理が削減され、稼働状態への復帰が迅速に行われ、直ちに撮影やPC80とのデータの送受信が可能となる。
【0057】
一方、ステップS7の判定結果がNOの場合は、主制御部51は、処理工程をステップS8へと進める。ステップS8では、主制御部51は、電源スイッチ22がOFFされたか判定する。つまり、スリープ状態において操作者が検眼等を終了するときは、電源スイッチ22をOFFにして、細隙灯顕微鏡100に遮断状態への移行の指示を与える。主制御部51は、この指示入力を受けたときに、YESと判定し、処理工程をステップS9へと進める。これに対して、主制御部51は、電源スイッチ22のOFFの操作がない間は、NOと判定し、処理工程をステップS7へと戻し、スリープボタン(調光つまみ12b)の操作又は電源スイッチ22のOFF操作がされるまで、スリープ状態を維持する。
【0058】
ステップS9では、主制御部51は、遮断状態への移行の条件を満たしたとして、「状態」を遮断状態に設定するとともに、主電源部20を制御して、主電源部20を含めた細隙灯顕微鏡100のすべてのユニットへの電力の供給を停止させる。これにより、細隙灯顕微鏡100は、電源OFFとなり、すべての機能が停止する。
【0059】
(実施例1の変形例)
実施例1の細隙灯顕微鏡100は、調光つまみ12bをスリープボタンとして兼用している。これに対して、変形例の細隙灯顕微鏡100は、図2(破線で示されたスリープボタン12e)及び図6に示されるように、調光つまみ12bとは別個に、タクタイルスイッチ等からなるスリープボタン12eを架台12aに備えていてもよい。この場合、調光つまみ12bはタクタイルスイッチとする必要がない。このような構成でも、操作者は、スリープボタン12eを押し下げ操作することで、スリープ状態への移行と稼働状態への復帰の指示を簡易かつ適切に行える。
【0060】
また、変形例の細隙灯顕微鏡100は、図2(破線で示された状態表示灯12f)及び図6に示されるように、確認表示灯23とは別個に、スリープボタン12eの上面に、状態を示す状態表示灯12fを設けている。
【0061】
状態表示灯(スリープLED)12fは、LED光源からなり、制御装置50の主制御部51の制御の下、細隙灯顕微鏡100の状態に対応して発光態様が変更される。具体的には、状態表示灯12fは、「遮断状態」では消灯し、「スリープ状態」では点滅し、「稼働状態」では点灯する。状態表示灯12fの発光態様も、この態様に限定されず、例えば、状態に応じて発光色を変化させる(例えば、スリープ状態では赤色や黄色で発光、稼働状態では白色で発光)ものであってもよい。この構成により、操作者は、テーブル1の下の確認表示灯23を確認する場合と比較して、手元に近いスリープボタン12eの上面の状態表示灯12fを容易に視認でき、何れの状態であるかを適切に把握できる。
【0062】
また、他の異なる変形例として、細隙灯顕微鏡100は、確認表示灯23の発光態様と、状態表示灯12fの発光態様の組み合わせによって、状態を操作者等に知らしめてもよい。具体的には、確認表示灯23は、全部が通電状態又は一部が通電状態(電源ON)では点灯し、電源OFFでは消灯するよう制御される。状態表示灯12fは、「遮断状態」及び「スリープ状態」では消灯し、「稼働状態」では点灯するよう制御される。したがって、操作者等は、確認表示灯23及び状態表示灯12fの双方が消灯していれば「遮断状態」であることがわかり、確認表示灯23が点灯して状態表示灯12fが消灯していれば「スリープ状態」であることがわかる。操作者は、確認表示灯23及び状態表示灯12fの双方が点灯していれば「稼働状態」であることがわかる。
【0063】
(実施例2)
本開示の眼科装置に係る実施例2の細隙灯顕微鏡100は、スリープボタン(タクタイルスイッチからなる調光つまみ12e又はスリープボタン12e)に代えて、検知部16(図2に破線で示される検知部16)を備えること以外は、図1A等に示される実施例1の細隙灯顕微鏡100と同様の基本構成及び機能を備える。このため、実施例2の細隙灯顕微鏡100において、実施例1と異なる構成及び機能は、以下のように説明され、実施例1と同様の構成及び機能は、説明が省略される。
【0064】
実施例2の細隙灯顕微鏡100は、操作者等による細隙灯顕微鏡100への所定の操作を検知する検知部16を備える。この所定の操作は、例えば、細隙灯顕微鏡100へのタッチ操作、回転操作等が挙げられるが、これらに限定されない。操作者は、検眼等を行うときに、必ず細隙灯顕微鏡100に対するタッチ操作を行うため、検知部16は、タッチ操作を検知するタッチセンサが好適に用いられる。タッチセンサは、例えば、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波法方式、赤外線方式等のタッチセンサが挙げられる。
【0065】
タッチセンサからなる検知部16は、何れの箇所に設けられてもよいが、例えば操作者が頻繁に触る箇所に設けられるのが好ましく、顕微鏡本体10を回転操作する際に操作者が把持する第1支持アーム14bが設置場所として好適である。また、検知部16は、操作者が架台部12の移動時に把持する操作レバー12cの表面、照明系ハウジング31や観察系ハウジング41の表面等に設けられてもよい。また、操作者が触る箇所に限定されず、被検者が顎受部15aに顎を載せたり額当部15bに額を接触させたりしたときに検査が開始されることを鑑みて、検知部16は、顎受部15aや額当部15bに設けられてもよい。
【0066】
また、検知部16は、タッチセンサに限定されず、顕微鏡本体10への回転操作を検知する回転センサも好適に用いられる。回転センサは、例えば、回転角を認識する機械式、光の通り抜けを感知する光学式、磁界変化に関連する磁気式、電磁誘導式等のセンサが挙げられる。また、検知部16は、加速度センサ、ジャイロセンサ等も好適に用いられる。
【0067】
検知部16は、図4に示されるように、稼働状態及び遮断状態ではOFF(検知しない)となり、スリープ状態ではON(検知可能)となる。
【0068】
上述のような構成の実施例2の細隙灯顕微鏡100は、図5に示されるフローチャートと同様の動作を実行する。このとき、ステップS3の「スリープボタンが操作されたか又は無操作時間が30分を超えたか」の判定は、「無操作時間が30分を超えたか」の判定に読み替えることができる。ステップS7の「スリープボタンが操作されたか」の判定は、「検知部がタッチ操作(又は回転操作)を検知したか」の判定に読み替えることができる。
【0069】
実施例2の細隙灯顕微鏡100における状態遷移は、図7を参照して以下のように説明される。状態が遮断状態のときは、細隙灯顕微鏡100は、すべてのユニットに電力が供給されず、機能を停止した状態となっている。この遮断状態から、電源スイッチ22がONされたとき、細隙灯顕微鏡100の状態は稼働状態に移行し、すべてのユニットに電力が供給されて機能可能となる。これにより、操作者は、細隙灯顕微鏡100を用いた被検眼の観察や撮影を行える。
【0070】
この稼働状態において、無操作時間が所定時間以上となったとき(無操作時間≧M分、Mは1以上の整数)、主制御部51は、主電源部20を制御して、制御装置50、撮像部60及び検知部16への電力の供給は継続させ、照明系30、固視部33及び背景照明系70への電力の供給を停止させる。これにより、操作者がスリープボタンの操作等をしなくても、細隙灯顕微鏡100の状態が稼働状態からスリープ状態に自動的に移行する。
【0071】
状態がスリープ状態のときに、操作者が検眼等を実行するべく顕微鏡本体10を把持(タッチ操作)したり、回転操作したりすると、この操作を検知部16が検知し、主制御部51に検知結果を出力する。この検知結果の入力を受けて、主制御部51は、主電源部20を制御して、照明系30、固視部33及び背景照明系70への電力の供給を再開させる。これにより、細隙灯顕微鏡100の状態がスリープ状態から稼働状態に移行(復帰)する。
【0072】
スリープ状態でも制御装置50と撮像部60には電力が供給されているため、PC80等の外部装置との接続に時間を要することがなく、より迅速に稼働状態に復帰することができる。このとき、調光つまみ12b、スリット開閉ノブ14d及び照明強度調整つまみ72等は、スリープ状態となる前の操作状態が維持されているため、操作者は、これらを再調整する必要がなく、より迅速かつより適切に検眼等を再開できる。
【0073】
また、稼働状態又はスリープ状態において、電源スイッチ22がOFFされると、主制御部51は、主電源部20を制御して、すべてのユニットへの電力の供給を停止させる。これにより、すべてのユニットの機能が停止され、細隙灯顕微鏡100の状態が遮断状態に移行する。また、実施例2においても、スリープ状態では確認表示灯23を点滅させるようにすれば、電源スイッチ22のOFFし忘れ等が適切に抑制される。
【0074】
(実施例2の変形例)
実施例2では、主制御部51は、操作者の所定の操作を、検知部16によって検知しているが、これに限定されない。変形例として、例えば、主制御部51は、操作者による操作レバー12cの回転又は傾倒操作、撮影ボタン12dの押し下げ操作等による指示入力を受けたときに、操作者の所定の操作があったとして、スリープ状態から稼働状態へ移行のための処理を実行する構成とすることができる。この構成では、検知部16を設ける必要がなく、細隙灯顕微鏡100は、より簡易な構成となる。
【0075】
なお、調光つまみ12b、スリット開閉ノブ14d、照明強度調整つまみ72、観察倍率調整ハンドル43等の操作を、スリープ状態から稼働状態へ移行するためのトリガーとすることもできる。しかし、スリット光の明るさや幅、背景光の強度、倍率等が変化することがあるため、観察条件や撮影条件に影響しない操作レバー12c、撮影ボタン12d等の操作をトリガーとするのがより好ましい。
【0076】
(実施例3)
本開示の眼科装置に係る実施例3の細隙灯顕微鏡100は、「稼働状態」、「第1のスリープ状態」(パワーセーブ)及び「遮断状態」に加えて、「第2のスリープ状態」(ディープセーブ)を有すること以外は、図1A等に示される実施例1の細隙灯顕微鏡100と同様の基本構成及び機能を備える。
【0077】
第1のスリープ状態では、制御装置50及び撮像部60への電力の供給は継続され、これら以外のユニットへの電気の供給は停止されている。これに対して、第2のスリープ状態(ディープセーブ)では、制御装置50のみに電力が供給され、照明系30、固視部33、撮像部60及び背景照明系70への電気の供給が停止される状態である。
【0078】
実施例3の細隙灯顕微鏡100における状態遷移は、図8を参照して以下のように説明される。状態が遮断状態のときは、細隙灯顕微鏡100は、すべてのユニットに電力が供給されず、機能を停止した状態となっている。この遮断状態から、電源スイッチ22がONされたとき、細隙灯顕微鏡100の状態は稼働状態に移行し、すべてのユニットに電力が供給されて、すべてのユニットが機能することが可能となる。これにより、操作者は、細隙灯顕微鏡100を用いた被検眼の観察や撮影を行える。
【0079】
この稼働状態において、スリープボタン(調光つまみ12b又はスリープボタン12e)が押し下げられるか、又は無操作時間が所定時間以上となったとき(無操作時間≧M分、Mは1以上の整数)、主制御部51は、主電源部20を制御して、制御装置50、撮像部60及び検知部16への電力の供給は継続させ、照明系30、固視部33及び背景照明系70への電力の供給を停止させる。また、主制御部51は、確認表示灯23を点滅させる。これにより、細隙灯顕微鏡100の状態は、稼働状態から第1のスリープ状態に自動的に移行する。
【0080】
状態が第1のスリープ状態のときに、操作者によってスリープボタンが押し下げられると、主制御部51は、主電源部20を制御して、照明系30、固視部33及び背景照明系70への電力の供給を再開させる。これにより、細隙灯顕微鏡100の状態が第1のスリープ状態から稼働状態に移行(復帰)する。
【0081】
これに対して、状態が第1のスリープ状態であって、無操作時間が所定時間以上となったとき(無操作時間≧N時間、Nは1以上の整数)、主制御部51は、主電源部20を制御して、制御装置50への電力の供給は継続させ、撮像部60への電力の供給を停止させる。これにより、細隙灯顕微鏡100の状態は、第1のスリープ状態から制御装置50(主制御部51)のみが機能する第2のスリープ状態に移行する。この結果、細隙灯顕微鏡100は、消費電力をより低減できる。ここでいう無操作時間は、第1のスリープ状態に移行してからの経過時間である。無操作時間の閾値のN時間は、例えば、1時間、2時間等とすることができるが、無操作時間の閾値は、1時間よりも短い時間でもよい。
【0082】
そして、第2のスリープ状態のときに、スリープボタンの押し下げ操作の入力を受け付けると、主制御部51は、主電源部20を制御して、すべてのユニットへの電力の供給を行わせ、すべてのユニットを機能させ、状態を稼働状態へ移行させる。第2のスリープ状態では、制御装置50への電力の供給は継続されているため、主制御部51の起動のための時間が削減でき、遮断状態からの移行と比較して、細隙灯顕微鏡100は、より迅速に稼働状態に復帰できる。
【0083】
また、稼働状態、第1のリープ状態及び第2のスリープ状態において、電源スイッチ22がOFFされると、主制御部51は、主電源部20を制御して、すべてのユニットへの電力の供給を停止させる。これにより、すべてのユニットの機能が停止され、細隙灯顕微鏡100の状態が遮断状態に移行する。
【0084】
(実施例3の変形例)
また、実施例3の細隙灯顕微鏡100は、第2のスリープ状態においても確認表示灯23を消灯しているが、変形例として、第1のスリープ状態とは異なる態様(例えば、発光色を変えて点灯又は点滅、若しくは周波数を変えて点滅等)で確認表示灯23を点灯させてもよい。更に異なる変形例として、細隙灯顕微鏡100は、確認表示灯23に加えて状態表示灯12fを備え、確認表示灯23の発光態様と状態表示灯12fの発光態様の組み合わせによって、操作者等に状態を知らしめてもよい。具体的には、第1のスリープ状態では、確認表示灯23が点灯し、状態表示灯12fが点滅する構成とする。一方、第2のスリープ状態では、確認表示灯23が点灯し、状態表示灯12fが消灯する構成とする。これにより、操作者は、細隙灯顕微鏡100の状態が、第1のスリープ状態か第2のスリープ状態かを明確に把握できる。
【0085】
以上説明したように、上記各実施例及び変形例の細隙灯顕微鏡100によれば、状態ごとに予め決められた所定の条件を満たすことで、細隙灯顕微鏡100の状態は、遮断状態、第1のスリープ状態及び稼働状態の間で遷移する。また、第1のスリープ状態では、必要最小限の部位のみに電力を供給しているため、消費電力が抑えられる。また、第1のスリープ状態では、細隙灯顕微鏡100の少なくとも一部が機能しているため、細隙灯顕微鏡100は、稼働状態へ速やかに復帰でき、被検眼の観察等を迅速に行える。したがって、上記各実施例及び変形例の細隙灯顕微鏡100は、消費電力の低減が可能で、しかも被検眼の観察等を適切かつ効率的に行うことができる。
【0086】
また、上記各実施例及び変形例の細隙灯顕微鏡100では、制御装置50は、第1のスリープ状態において、制御装置50と撮像部60に電力を供給し、照明系30と固視部33への電力の供給を停止するように主電源部20を制御する。そして、制御装置50は、第1のスリープ状態において、所定の復帰処理の実行を検知したとき、照明系30と固視部33とに電力を供給するように主電源部20を制御することで、状態を第1のスリープ状態から稼働状態に移行させる。
【0087】
細隙灯顕微鏡100は、第1のスリープ状態においても制御装置50と撮像部60が機能しているため、初期設定、外部装置(例えば、PC80)への接続設定等の時間を削減して、稼働状態への復帰を、より迅速に行える。特に、稼働状態への復帰時に、撮像部60は、被検眼の撮影、PC80への画像の出力を、より迅速に行えるため、細隙灯顕微鏡100の操作性は、より向上する。
【0088】
また、実施例1、実施例3及びこれらの変形例の細隙灯顕微鏡100は、稼働状態から第1のスリープ状態に移行させるための操作部(調光つまみ12b又はスリープボタン12e)を備える。この構成により、操作者は、細隙灯顕微鏡100に対して、稼働状態から第1のスリープ状態へ移行させるための指示入力を、より簡易に行えて、細隙灯顕微鏡100の操作性が向上する。さらに、これらの操作部は、タクタイルスイッチであることで、その操作性は、より向上する。
【0089】
また、上記各実施例及び変形例の細隙灯顕微鏡100は、状態に応じて点灯又は消灯する表示灯(確認表示灯23又は状態表示灯12f)を有し、制御装置50は、稼働状態と第1のスリープ状態とで、異なる態様で発光するように確認表示灯を制御する。この構成により、操作者は、細隙灯顕微鏡100の状態を、明確に把握できる。
【0090】
また、実施例2及びその変形例の細隙灯顕微鏡100は、操作者の所定の操作を検知する検知部16を備える。制御装置50は、検知部16が第1のスリープ状態において所定の操作を検知したことを条件として、状態が第1のスリープ状態から稼働状態に移行するように各部を制御する。この構成により、操作者が、検査に関わる所定の操作(例えば、タッチ操作、回転操作等)をするだけで、細隙灯顕微鏡100は、状態を第1のスリープ状態から稼働状態に移行させることができる。
【0091】
また、実施例3及びその変形例の細隙灯顕微鏡100は、制御装置50のみに電力が供給されて制御装置50のみが機能する第2のスリープ状態をさらに有する。制御装置50は、第1のスリープ状態において、所定条件を満たしたときに、第2のスリープ状態に移行し、復帰処理により稼働状態に移行するように各部を制御する。この構成により、細隙灯顕微鏡100は、消費電力をより低減することができる。
【0092】
以上、本開示の眼科装置を実施例及び変形例に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例及び変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0093】
上記各実施例及び変形例の眼科装置は、細隙灯顕微鏡の例を示したが、本開示が適用される眼科装置は、細隙灯顕微鏡に限定されない。例えば、眼科装置は、遠用検査、中用検査、近用検査、コントラスト検査、夜間検査、グレア検査、ピンホール検査、立体視検査等の自覚屈折測定や、視野検査等の自覚検査が可能な眼科装置でもよい。また、本開示の眼科装置は、被検眼の眼特性や、被検眼の画像(例えば前眼部画像)を他覚的に取得する眼科装置、他覚屈折測定(レフ測定)、角膜形状測定(ケラト測定)、眼圧測定、眼底撮影、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:OCT)を用いた眼底断層像撮影(OCT撮影)、OCTを用いた計測等を他覚的に行う眼科装置でもよい。また、本開示の眼科装置は、このような自覚検査及び他覚検査を実行可能な光学系が組み合された眼科装置でもよい。
【0094】
また、固視部33は、外部に設けられた外部固視灯(LED)であるが、これに限定されず、近点棒に吊り下げられた視標板等でもよい。また、固視部33は、外部に設けられたものに限定されず、例えば、観察系40の観察光学系に設けられた内部固視標であってもよい。内部固視標は、例えば、液晶ディスプレイ等に表示されて、被検眼に提示される視標とすることができる。また、撮像部60や制御装置50と接続される外部装置は、PC80に限定されず、例えば、サーバであってもよいし、他の眼科装置であってもよい。第1のスリープ状態においても、撮像部60及び制御装置50は機能しているため、稼働状態への復帰のときに、これらとの接続のための時間を削減でき、眼科装置は、より迅速に稼働状態に復帰できる。
【符号の説明】
【0095】
12b :調光つまみ(操作部) 12e :スリープボタン(操作部)
12e :スリープボタン(操作部) 12f :状態表示灯(表示灯)
16 :検知部 20 :主電源部
23 :確認表示灯(表示灯) 30 :照明系
33 :固視部 50 :制御装置
51 :主制御部 60 :撮像部
100 :細隙灯顕微鏡(眼科装置)
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8