(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014179
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】見守りシステム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20240125BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20240125BHJP
G06Q 50/22 20240101ALI20240125BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B21/02
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116817
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】522293489
【氏名又は名称】有限会社カルチベーター
(74)【代理人】
【識別番号】100109254
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 雅典
(72)【発明者】
【氏名】田村 美明
(72)【発明者】
【氏名】霜 達也
(72)【発明者】
【氏名】浦山 隆一
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5L099
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086BA01
5C086CA30
5C086CB40
5C086DA01
5C086FA01
5C086FA11
5C087AA02
5C087AA09
5C087AA10
5C087AA19
5C087AA32
5C087AA60
5C087DD03
5C087DD24
5C087EE07
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG83
5L099AA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】誤判定による通報の遅れや誤報を減らして、必要な措置が速やかに講じられるように、また、無駄な通報による関係者等の負担を軽減し、不要な警備員出動を少なく抑制する見守りシステムを提供する。
【解決手段】居住者の自宅から通信回線を介して送信されてくる電気・ガス・水道の検針情報に基づいて、居住者の健康異常の有無を判定し、異常ありと判定したときに通報する見守りシステム1において、見守りセンター2は、受信した検針情報に基づいて居住者の自宅4における電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移に関する基準パターンを基準パターン作成手段52により作成して記憶保持し、これに対して新たに受信した検針情報に基づいて得られる電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移が所定の齟齬を生じたときに異常ありと判定手段53により判定して、予め設定した通報先に通報手段54により通報する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
居住者の自宅から通信回線を介して送信される電気・ガス・水道の検針情報に基づいて、居住者の健康異常の有無を判定し、異常ありと判定したときに通報する見守りシステムにおいて、
検針情報を受信可能な受信手段と、
前記受信手段が受信した検針情報に基づいて居住者の自宅における電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移に関する基準パターンを作成する基準パターン作成手段と、
前記基準パターンを記憶保持するデータベースと、
新たに受信した検針情報に基づいて取得した電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移が前記データベースに蓄積された基準パターンとの比較対照において所定の齟齬を生じたときに異常ありと判定する判定手段と、
前記判定手段が異常ありと判定したときに予め設定した通報先に通報する通報手段と、を備えることを特徴とする見守りシステム。
【請求項2】
居住者の自宅から通信回線を介して送信される電気・ガス・水道の検針情報に基づいて、居住者の健康異常の有無を判定し、異常ありと判定したときに通報する見守りシステムにおいて、
検針情報を受信可能な受信手段と、
前記受信手段が受信した検針情報に基づいて居住者の自宅における電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移とそれらの相互関係に関する基準パターンを作成する基準パターン作成手段と、
前記基準パターンを記憶保持するデータベースと、
新たに受信した検針情報に基づいて取得した電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移とそれらの相互関係が前記データベースに蓄積された基準パターンとの比較対照において所定の齟齬を生じたときに異常ありと判定する判定手段と、
前記判定手段が異常ありと判定したときに予め設定した通報先に通報する通報手段と、を備えることを特徴とする見守りシステム。
【請求項3】
居住者の自宅から通信回線を介して送信される電気・ガス・水道の検針情報に基づいて、居住者の健康異常の有無を判定し、異常ありと判定したときに通報する見守り方法において、
検針情報を受信し、受信した検針情報に基づいて居住者の自宅における電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移に関する基準パターンを作成して記憶保持し、新たに受信した検針情報に基づいて取得した電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移が前記基準パターンとの比較対照において所定の齟齬を生じたときに異常ありと判定して、予め設定した通報先に通報することを特徴とする見守り方法。
【請求項4】
居住者の自宅から通信回線を介して送信される電気・ガス・水道の検針情報に基づいて、居住者の健康異常の有無を判定し、異常ありと判定したときに通報する見守り方法において、
検針情報を受信し、受信した検針情報に基づいて居住者の自宅における電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移とそれらの相互関係に関する基準パターンを作成して記憶保持し、新たに受信した検針情報に基づいて取得した電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移及びそれらの相互関係が前記基準パターンとの比較対照において所定の齟齬を生じたときに異常ありと判定して、予め設定した通報先に通報することを特徴とする見守り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に単身世帯における居住者の健康異常を検出して関係者や警備会社に通報することができる見守りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者等の単身世帯が増加しているが、その居住者が突然、自宅内で健康異常を生じて身動きが取れなくなっても外部からは気づかれにくいため、居住者の生命・安全を守るために必要な措置が講じられることなく何日間も放置され、最悪の場合は孤独死に至るケースもあり社会問題化している。
【0003】
これに対して、高齢者の単身世帯では生活習慣が固定化されており、それがガスや水道の日々の使用状況に反映されているとして、それらの使用状況に基づいて居住者の活動状況の変化を把握することで離れた場所から居住者の健康異常を検出する見守りシステムが提案されている。
【0004】
具体的には居住者の健康時にインターネット等の通信ネットワークを通じて居住者の自宅に設置されるメーターから送信されるガス・水道のオンライン検針値に基づき、異常検出の基準となる時間ごと・曜日ごとの平均使用パターン、日・週・月の平均使用量及び特定器具使用(トイレ、風呂の水溜め)の平均使用時間帯・時間幅・回数・量を予め定めておく。そして、これらと乖離したガス・水道の使用状況が日々のオンライン検針値に基づいて検出された場合に、居住者に健康異常が発生している可能性があると判定して、その判定結果に基づいて居住者の近親者など関係者に通報して確認するように促したり、警備会社に通報して警備員を居住者の自宅に向かわせたりするものである(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記見守りシステムによれば、居住者に健康異常が生じた可能性をオンライン検針値に基づいて自動的に検出するので、見守り人が居住者の自宅を訪ねて健康状態を確認する方法と違い、大きなコストをかけることなく、また、居住者のプライバシーに直接関わることもなく必要な通報が関係者になされて居住者の生命・安全が確保されることが期待されるが、必ずしも適当あるいは十分とは言えない点もあり、改善の余地がある。
【0007】
本来、見守りシステムは、居住者に健康異常が生じた際に、関係者等にいち早く通報して居住者の生命・安全を守るための適切な措置が速やかに講じられるようにすることが最も重要である。これに対し、上記見守りシステムのようにガス・水道の日・週・月の平均使用量を判定基準とすると、生活習慣の変化から健康状態の変化を判定することができても、判定がなされる日・週・月の区切りの時間帯まで待つことになるため、それらの時間帯の途中に救急搬送等の緊急措置を要する健康異常が発生した場合には手遅れになることがある。
【0008】
また、上記見守りシステムは、生活習慣が固定化していることを前提にするが、高齢者等の生活習慣がすべて完全に固定化されている訳ではなく、当然にガス・水道の使用状況も固定化されているとは限らない。不定期で週に何日か、気分転換や近所の人との交流に出かける人は多く、例えば喫茶店のモーニングサービスで朝食を済ませたり、自宅に風呂があっても銭湯を利用したりして、そのときには当然ガス・水道は使用されない。そのため、平均使用量が大きく変動して判定基準として使えなくなることが考えられる。
【0009】
また、時間ごと・曜日ごとの平均使用パターンに基づいて判定すると、実際は何ら問題がないのに健康異常ありと判定されて通報(誤報)が行われる。誤報が頻繁にあると、結果として関係者に無用の心配や対応をさせたり、警備員に不必要な出動をさせたりすることになりかねない。
【0010】
なお、かかる誤報を防止するために、居住者が自ら操作してこれから外出することや外出から帰宅したことを知らせる通信機能を見守りシステムに搭載するようにしても良いが、かかる操作はたとえ簡素化しても高齢者には大変煩わしいものであり、つい操作を怠ったり、誤操作したり、うっかり操作を忘れることは頻繁に起こり得る。そのため、居住者に余計な負担を強いることになるばかりか、的確な判定が行えず、却って誤報が増えることや必要な通報がなされなくなることが懸念される。
【0011】
更に、例えば冬場は高齢者等が脱衣所と浴槽内の寒暖差による急激な血圧変動で心筋梗塞を起こして倒れるケースが少なくないが、こういうことは浴槽への給湯終了後、居住者が入浴した際に生じる。普段、入浴時にシャワーを利用する居住者がガス・水道を使用しなければ、給湯器の平均使用時間帯・時間幅等から異常を検出できる可能性があるが、逆に普段シャワーを利用しない居住者の場合は元よりガス・水道は使用しないため、異常を検出できず、実際に倒れていても通報されないことになる。入浴は就寝前になされることが多いために、そのまま翌朝の活動が始まる時間帯まで異常を検出できず、必要な救命措置がなされないまま長時間経過するおそれがある。
【0012】
他にも、洗濯機の使用では、就寝前に洗濯物をセットし、翌朝起床時に洗濯がスタートするようタイマー予約する人がいるが、予約操作後、就寝中に健康異常で身動きが取れなくなることがあり得る。しかし、朝になると、洗濯機で水道が使用されるため、居住者が洗濯機を使用した(操作した)と判定され、更に普段から洗濯とトイレ・洗面所の使用タイミングが重なることが多い場合には、実際にトイレ・洗面所を使用しなくても異常としては検出されず、通報が遅れるおそれがある。
【0013】
本発明は、上記のような事情に鑑み、誤判定による通報の遅れや誤報を減らして、必要な措置が速やかに講じられるように、また、無駄な通報による関係者等の負担を軽減し、不要な警備員出動を少なく抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、
居住者の自宅から通信回線を介して送信される電気・ガス・水道の検針情報に基づいて、居住者の健康異常の有無を判定し、異常ありと判定したときに通報する見守りシステムにおいて、
検針情報を受信可能な受信手段と、
前記受信手段が受信した検針情報に基づいて居住者の自宅における電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移に関する基準パターンを作成する基準パターン作成手段と、
前記基準パターンを記憶保持するデータベースと、
新たに受信した検針情報に基づいて取得した電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移が前記データベースに蓄積された基準パターンとの比較対照において所定の齟齬を生じたときに異常ありと判定する判定手段と、
前記判定手段が異常ありと判定したときに予め設定した通報先に通報する通報手段と、を備えることを特徴とする見守りシステム
を提供する。
【0015】
請求項2の発明は、
居住者の自宅から通信回線を介して送信される電気・ガス・水道の検針情報に基づいて、居住者の健康異常の有無を判定し、異常ありと判定したときに通報する見守りシステムにおいて、
検針情報を受信可能な受信手段と、
前記受信手段が受信した検針情報に基づいて居住者の自宅における電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移とそれらの相互関係に関する基準パターンを作成する基準パターン作成手段と、
前記基準パターンを記憶保持するデータベースと、
新たに受信した検針情報に基づいて取得した電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移とそれらの相互関係が前記データベースに蓄積された基準パターンとの比較対照において所定の齟齬を生じたときに異常ありと判定する判定手段と、
前記判定手段が異常ありと判定したときに予め設定した通報先に通報する通報手段と、を備えることを特徴とする見守りシステム
を提供する。
【0016】
請求項3の発明は、
居住者の自宅から通信回線を介して送信される電気・ガス・水道の検針情報に基づいて、居住者の健康異常の有無を判定し、異常ありと判定したときに通報する見守り方法において、
検針情報を受信し、受信した検針情報に基づいて居住者の自宅における電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移に関する基準パターンを作成して記憶保持し、新たに受信した検針情報に基づいて取得した電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移が前記基準パターンとの比較対照において所定の齟齬を生じたときに異常ありと判定して、予め設定した通報先に通報することを特徴とする見守り方法
を提供する。
【0017】
請求項4の発明は、
居住者の自宅から通信回線を介して送信される電気・ガス・水道の検針情報に基づいて、居住者の健康異常の有無を判定し、異常ありと判定したときに通報する見守り方法において、
検針情報を受信し、受信した検針情報に基づいて居住者の自宅における電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移とそれらの相互関係に関する基準パターンを作成して記憶保持し、新たに受信した検針情報に基づいて取得した電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移及びそれらの相互関係が前記基準パターンとの比較対照において所定の齟齬を生じたときに異常ありと判定して、予め設定した通報先に通報することを特徴とする見守り方法
を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電気・ガス及び水道の使用量の時間的推移やそれらの相互関係を判定対象とすることにより、電気・ガス・水道それぞれの平均使用量や時間・曜日・特定機器の平均使用パターンを用いる従来の見守りシステムで起こり得る通報の遅れや誤報を減らし、結果として、必要な措置が速やかに講じられ、無駄な通報による関係者の負担を軽減され、不要な警備員出動を抑制することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【発明を実施するための形態】
【0020】
(見守りシステム1)
本発明の実施形態に係る見守りシステム1について図面を参照しながら説明する。
図1に示す見守りシステム1は、見守りサービス提供業者が運営する見守りセンター2と、見守りセンター2にインターネット等の通信回線3で接続される居住者A(見守りサービス利用者)の自宅4と、からなり、見守りセンター2において在宅中の居住者Aの健康異常の有無を判定し、異常ありと判定したときに関係者(例えば居住者の親族)や警備会社に通報することができる遠隔見守りシステムである。
【0021】
(見守りセンター2)
見守りセンター2には、見守りサービスを提供するためのサーバー5とデータベース6が設置されている。サーバー5は、受信手段51と、基準パターン作成手段52と、判定手段53と、通報手段54と、を備えている。なお、
図1では、見守りセンター2に対して居住者Aの自宅4のみが接続されているように表示しているが、それ以外にも多くの住宅が接続されており、各住宅の居住者に対して居住者Aに対するサービスと同様の見守りサービスが個別に提供されている。
【0022】
(受信手段51)
受信手段51は、居住者Aの自宅4から通信ネットワーク3を介して連続的又は断続的にオンライン送信される電気・ガス・水道の検針情報(各使用量メーターの指示値)を受信可能な通信機器である。
【0023】
(基準パターン作成手段52)
基準パターン作成手段52は、受信手段51が受信した電気・ガス及び水道の検針情報に基づいて、居住者Aの自宅4における電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移とそれらの相互関係に関する基準パターンを作成する。作成された基準パターンはデータベース6に記憶保持される。
【0024】
(判定手段53)
判定手段53は、居住者Aの自宅4から新たに受信した検針情報に基づいて得られる電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移とそれらの相互関係からなる判定対象データが、データベース6に記憶保持された基準パターンと比較対照して所定の齟齬を生じているときに異常ありと判定して、通報手段54に対し異常通報信号を出力する。
【0025】
(通報手段54)
通報手段54は、判定手段53から出力される異常通報信号に応じて、予め設定されている通報先である関係者や警備会社に対し、居住者Aに健康異常有りと判定した旨を通報する。関係者や警備会社は見守りセンター2からの通報を受けて、居住者Aに対して電話その他の通信手段で直接連絡を取って安否を確認し、また、通信手段で連絡が取れない場合等、必要に応じて自宅4に出向いたり駆け付けたりするなどの対応を取ることができる。見守りセンター2でも居住者Aの自宅4で異常検知した旨がモニター表示、アラーム音、帳票発行等により担当者に通知される。
【0026】
(居住者Aの自宅4)
居住者Aの自宅4には、電気メーター42、ガスメーター43及び水道メーター44から出力される検針情報を連続的に或いは所定間隔をおいて断続的に見守りセンター2のサーバー5に送信可能な送信手段(通信機器)41が設置されている。
図1ではすべてのメーターの検針情報が居住者の自宅4から送信手段41により直接送信されているが、一部又は全部の検針情報を電気・ガス・水道の供給事業者を通じて間接的に送信するようにしても良い。
【0027】
(判定に用いる検針情報)
見守りシステム1における健康異常の有無判定は電気メーター42、ガスメーター43及び水道メーター44から出力されるすべての検針情報を使用する。電気・ガス及び水道の使用状況をすべて用いて判定することにより、異常有無の検出精度が向上して、居住者自ら外出・帰宅を知らせる通報機能を搭載する等しなくても、通報の遅れや誤報を減らすことができる。
【0028】
(基準パターン)
基準パターンは、直近の所定期間(例えば過去3か月間)における検針情報に基づいて電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移とその相互関係に関するパターンとして作成される。但し、複数日(例えば直近の所定期間の全期間など)の検針情報に基づいて平均値的な一つの基準パターンを作成するものではなく、一日一日の検針情報に基づいてそれぞれ別の基準パターンを作成する。すなわち上記所定期間が30日間であれば30通りの検針情報(各使用量の時間的推移とそれらの相互関係)があるので、それらの検針情報を別々に用いて、それぞれに基づく個別の基準パターンを作成する。
【0029】
また、1日分の検針情報から作成される基準パターンは1パターンに限られるものではなく、例えば起床時間帯の使用状況に応じた基準パターン、朝食時間帯の使用状況に応じた基準パターン、昼食時間帯の使用状況に応じた基準パターン、夕食時間帯の使用状況に応じた基準パターン、入浴時間帯の使用状況に応じた基準パターン等、複数の基準パターンを作成することができる。各基準パターンは、時間帯幅が統一されている必要はなく、また、他の基準パターンと相互に重なり合う時間帯の検針情報を用いて作成されたものでも良い。
【0030】
以下、基準パターンの一例として、上記所定期間内の或る日における入浴時間帯の検針情報(使用状況)に基づいて作成された基準パターンを説明する。ガス給湯器が設置されている住宅(自宅4)に居住する居住者Aが浴槽へのお湯張り後に入浴する場合は、まずお湯張り開始と同時にガスと水道が使用され始めて、浴槽が満たされるまで単位時間当たりの使用量が略一定となる状態でガスと水道が連続使用され、お湯張り量が所定量(例えば200リットル)に達してお湯張りを終了した時点でガスと水道の使用が一旦終了する。そして、居住者Aは、浴室に向かう際にテレビをOFF、部屋の照明を消灯する。このとき、
図2の時間帯TAに示されるような電気・ガス・水道使用量の時間的推移と相互関係が見られることになる。
【0031】
お湯張り後に居住者Aが浴室で照明を点灯し、入浴して、洗髪や洗顔等でシャワー又はカランからお湯を使用すれば、その度にガスと水道が使用されるが、時間当たりの使用量はお湯張り時よりも少なく、使用状態は断続的になる。一方、電気の使用量が大きく変動することはない。したがって、このとき、
図2の時間帯TBに示されるようなガス使用量と水道使用量の時間的推移が見られることになる。
【0032】
居住者Aが入浴を終えると、ガス使用量と水道使用量はゼロになるが、居住者Aが電気ドライヤーを用いて髪を乾かしたり、部屋に戻ってテレビをONしたりすると、その都度、電気使用量が比較的大きく変化する。このとき、
図2の時間帯TCに示されるような電気使用量の時間的推移が見られることになる。
【0033】
その後、居住者Aが就寝するときは、冷暖房が用いられるような季節でなければ、テレビがOFFされたり、照明が消灯されたりすることで徐々に少なくなり、電気使用は冷蔵庫と一部家電製品の待機電力のみとなり、外出時と同様に単位時間当たりの使用量が最も少なくなる。就寝前にトイレに行くことにより水道が使用されることがあるが、その後、使用されなくなる。このとき、
図2の時間帯TDに示されるような電気使用量と水道使用量の時間的推移が見られることになる。ガス使用量は時間帯TCから引き続きゼロのままである。
【0034】
図2に示されるような基準パターンが、上記所定期間内の他の日における入浴時間帯の検針情報についても作成されて、それぞれデータベース6に記憶保存される。また、入浴時間帯以外の時間帯についても、上記所定期間内の各日の使用状況に応じた基準パターンが作成されて、それぞれデータベース6に記憶保存される。すなわち、データベース6に記憶保存される基準パターンは多数存在している。
【0035】
(判定)
以下、居住者Aの自宅4から新たに受信した検針情報に基づいて取得した入浴時間帯の電気使用量・ガス使用量及び水道使用量の時間的推移とそれらの相互関係からなる判定対象データ(
図3に示す。)を、
図2に示される基準パターンと比較対照して行う判定について説明する。
【0036】
本発明では、新たに受信した検針情報に基づいて取得した電気等使用量の時間的推移と相互関係からなる判定対象データについて、その特徴と検針情報の取得時間から如何なる時間帯のデータであるかを判別して、比較対照する基準データを選別する。
図3についてはガス・水道の使用量の時間的推移からお湯張りが行われている(入浴時間帯に入った)ものとして、入浴時間帯の使用状況に応じた基準データとの比較対照が行われる。
【0037】
図3の判定対象データによれば、お湯張り開始によりガスと水道が使用され始めて、お湯張り終了によりガスと水道の使用が一旦終了した後、居住者Aは、浴室に向かう際にテレビをOFF、照明を消灯することにより、
図3の時間帯TAに示されるような電気・ガス・水道使用量の時間的推移と相互関係が見られることになるが、ここまでは、
図2の基準データとの齟齬は認められない。
【0038】
しかし、居住者Aが浴室の照明を点灯して、時間帯TBに入った後、お湯(ガスと水道)を一度使用しただけで、その後時間が経ってもガス・水道が一切使用されておらず、電気使用量も一切変化しておらず、
図2の基準対象データと齟齬が生じていることから、居住者Aに健康異常が発生したものと判定することになる。入浴時に複数回あるカラン・シャワーの利用が一度しか認められず、入浴後に行われるドライヤー使用がなく、更に照明の点灯・消灯も行われていないことから、入浴中に倒れた可能性があると考えられるからである。
【0039】
なお、日によっては、浴槽にお湯を張らずにシャワーのみを使用する場合や、当日、美容院でパーマをかけたために洗髪しない(ドライヤーも使用しない)場合などもある。そのため、
図2の基準パターンのみでは誤判定することがあり得るので、日々の検針情報に基づいて、それぞれ個別の基準パターンを作成しておき、新しく取得された判定対象データに応じた基準パターンを使用して健康異常の有無を判定する。
【0040】
(発明の効果)
本実施形態では、電気・ガス及び水道すべての使用量の時間的推移とそれらの相互関係を用いて健康異常の有無を判定することとしたので、電気・ガス・水道の使用量の何れか一部のみを用いたり、電気・ガス・水道を別々に監視したりする場合よりも判定精度が向上することにより、通報の遅れや誤報を減らすことが期待される。
【0041】
(変形例)
上記実施形態では、電気・ガス・水道の使用量の時間的推移の相互関係を利用することとしたが、電気・ガス・水道の使用量の時間的推移のみを用いることとしても良い。上記実施形態では、すべてのメーターが検針情報を自動計測して出力する所謂スマートメーターであることを前提にしているが、電気・ガス・水道の自宅4への引込部に使用量検出センサーを設けて、当該センサーから検針情報を出力させるようにしても良い。その他、本発明は、その要旨を変更しない範囲で様々の変更を加えることができるものである。
【符号の説明】
【0042】
1 見守りシステム
2 見守りセンター
3 通信回線
4 居住者Aの自宅
41 送信手段
42 電気メーター
43 ガスメーター
44 水道メーター
5 サーバー
51 受信手段
52 基準パターン作成手段
53 判定手段
54 通報手段
6 データベース