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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014180
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】自己位置推定装置および車両システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/70 20170101AFI20240125BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240125BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G06T7/70 A
G06T7/00 650Z
G01C21/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116818
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 憲一
【テーマコード(参考)】
2F129
5L096
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB23
2F129BB24
2F129BB25
2F129BB27
2F129BB28
2F129BB29
2F129BB49
2F129CC15
2F129CC16
2F129DD14
2F129DD15
2F129DD21
2F129GG04
2F129GG05
2F129GG06
5L096BA04
5L096CA04
5L096EA35
5L096FA69
5L096JA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自己位置推定のための演算量の増加を抑制するとともに、自己位置推定の精度の低下を抑制する自己位置推定装置及び車両システムを提供する。
【解決手段】情報取得装置と、車両システムと、車両動作装置とを備える車両において、車両システムの自己位置推定装置210は、カメラ110を有する車両M1に搭載され、車両の位置を推定する自己位置推定装置210は、カメラにより車両の進行方向に向かって撮像された画像から特徴点を抽出し、特徴点ごとに特徴量を算出する特徴量算出部211と、特徴点のうち、信頼度の高い特徴点を優先特徴点として優先的に選別する特徴点選別部212と、優先特徴点を利用して自己位置を算出する自己位置算出部213と、予め設定された時間間隔を空けて撮像された複数の画像ごとに推定された自己位置の再投影誤差を算出し、再投影誤差を修正した修正自己位置を算出する誤差修正部214と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ(110)を有する車両(M1)に搭載され、前記車両の位置を推定する自己位置推定装置(210)であって、
前記カメラにより前記車両の進行方向に向かって撮像された画像から特徴点を抽出し、前記特徴点ごとに特徴量を算出する特徴量算出部(211)と、
前記特徴点のうち、信頼度の高い特徴点を優先特徴点として優先的に選別する特徴点選別部(212)と、
前記優先特徴点を利用して自己位置を算出する自己位置算出部(213)と、
予め設定された時間間隔を空けて撮像された複数の前記画像ごとに推定された前記自己位置の再投影誤差を算出し、前記再投影誤差を修正した修正自己位置を算出する誤差修正部(214)と、
を備える、
自己位置推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自己位置推定装置であって、
前記特徴量算出部は、前記特徴量を算出するアルゴリズムとして、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)、ORB(Oriented FAST and Rotated BRIEF)、SURF(Speeded Up Robust Features)、AKAZE(Accelerated KAZE)、HOG(Histograms of Oriented Gradients)もしくはCNN(Convolutional Neural Network)を用いて、前記特徴量の算出を行う、
自己位置推定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の自己位置推定装置であって、
前記特徴点選別部は、時系列に連続する複数の前記画像において共通して含まれる特徴点を前記優先特徴点として優先的に選別する、
自己位置推定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の自己位置推定装置であって、
前記特徴点選別部は、前記特徴点の総数に対する前記優先特徴点の数の割合が少なくとも50%以上となるように、前記優先特徴点を選別する、
自己位置推定装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の自己位置推定装置であって、
切取範囲指定部(215)をさらに備え、
前記切取範囲指定部は、前記画像に含まれる、前記画像の大きさよりも小さい画像範囲である切取範囲(TF)を指定し、
前記特徴点選別部は、前記特徴点のうち、前記切取範囲内に存在する特徴点を前記優先特徴点として優先的に選別する、
自己位置推定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の自己位置推定装置であって、
前記切取範囲は、前記画像において、前記画像の撮像後、前記時間間隔の経過後に新たに撮像される画像においては撮像範囲外となる領域を除いた領域以下の大きさの範囲である、
自己位置推定装置。
【請求項7】
請求項5に記載の自己位置推定装置であって、
前記切取範囲の大きさは、水平方向の画角が40°よりも大きく、かつ、垂直方向の画角が30°よりも大きくなるように設定されている、
自己位置推定装置。
【請求項8】
請求項5に記載の自己位置推定装置であって、
前記切取範囲指定部は、算出された前記自己位置を利用して生成された経路計画を利用して、前記切取範囲の大きさおよび画像内における位置を設定する、
自己位置推定装置。
【請求項9】
請求項5に記載の自己位置推定装置であって、
前記切取範囲指定部は、前記車両の進行方向および走行速度を計測するセンサから取得した前記車両の走行状況に関する情報を利用して、前記切取範囲の大きさおよび画像内における位置を設定する、
自己位置推定装置。
【請求項10】
車両システム(200)であって、
カメラを有する車両に搭載され、前記車両の位置を推定する自己位置推定装置であって、
前記カメラにより前記車両の進行方向に向かって撮像された画像から特徴点を抽出し、前記特徴点ごとに特徴量を算出する特徴量算出部と、
前記特徴点のうち、信頼度の高い特徴点を優先特徴点として優先的に選別する特徴点選別部と、
前記優先特徴点を利用して自己位置を算出する自己位置算出部と、
予め設定された時間間隔を空けて撮像された複数の前記画像ごとに推定された前記自己位置の再投影誤差を算出し、前記再投影誤差を修正した修正自己位置を算出する誤差修正部と、
を備える、
自己位置推定装置と、
地図情報を取得する地図情報取得部(220)と、
前記自己位置推定装置により算出された前記修正自己位置と、前記地図情報と、GNSS(Global Navigation Satellite System)信号を受信して取得された前記車両の位置と、前記車両が備えるセンサから取得された前記車両の走行状況に関する情報と、を利用して前記車両のフュージョン自己位置を推定するフュージョン処理部(230)と、
推定された前記フュージョン自己位置を利用して経路計画を生成する経路計画部(240)と、
生成された前記経路計画に従って前記車両の制御を行う車両制御部(250)と、
を備える、
車両システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自己位置推定装置および車両システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自己位置推定装置として、車両に搭載されたカメラで認識した車両の周辺の地物と地図情報とを照合して、位置を推定するものが知られている。特許文献1に記載の自己位置推定装置は、事前に取得した参照画像と位置情報との予めデータベースを作成しておき、走行中に撮像した画像と参照画像とのマッチングにより自己位置を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-8984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の自己位置推定装置では、参照すべきデータの量が多く、自己位置推定処理の演算量が増加することにより、リアルタイムに自己位置を推定できないおそれがあるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、自己位置推定装置(210)が提供される。この自己位置推定装置は、カメラ(110)を有する車両(M1)に搭載され、前記車両の位置を推定する自己位置推定装置であって、前記カメラにより前記車両の進行方向に向かって撮像された画像から特徴点を抽出し、前記特徴点ごとに特徴量を算出する特徴量算出部(211)と、前記特徴点のうち、信頼度の高い特徴点を優先特徴点として優先的に選別する特徴点選別部(212)と、前記優先特徴点を利用して自己位置を算出する自己位置算出部(213)と、予め設定された時間間隔を空けて撮像された複数の前記画像ごとに推定された前記自己位置の再投影誤差を算出し、前記再投影誤差を修正した修正自己位置を算出する誤差修正部(214)と、を備える。
【0007】
この形態の自己位置推定装置によれば、取得された画像に含まれる特徴点のうち、信頼度の高い特徴点を優先的に選別し自己位置を算出するので、演算対象となる特徴点の数を削減でき、自己位置推定のための演算量の増加を抑制できるとともに、自己位置推定の精度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の車両システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態の自己位置推定装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態の車両制御処理の手順を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態の自己位置推定処理の手順を示すフローチャートである。
図5】取得された画像の一例を示す説明図である。
図6】取得された画像の一例を示す説明図である。
図7】取得された画像の一例を示す説明図である。
図8】第2実施形態の車両システムの概略構成を示すブロック図である。
図9】第2実施形態の自己位置推定装置の概略構成を示すブロック図である。
図10】第2実施形態の車両制御処理の手順を示すフローチャートである。
図11】第2実施形態の自己位置推定処理の手順を示すフローチャートである。
図12】切取範囲の一例を示す説明図である。
図13】切取範囲の一例を示す説明図である。
図14】第3実施形態の車両システムの概略構成を示すブロック図である。
図15】第3実施形態の車両制御処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A-1.システム構成:
図1に示すように、車両M1は、情報取得装置100と、車両システム200と、車両動作装置300とを備える。本実施形態において、車両M1は、エンジンを搭載した車両である。また、車両M1は、自動運転を実行可能な車両であり、自動運転と手動運転とが切り替え可能に構成されている。「自動運転」とは、エンジン制御とブレーキ制御と操舵制御とを、乗員に代わって自動的に実行する運転を意味する。「手動運転」とは、エンジン制御のための操作(アクセルペダルの踏込)と、ブレーキ制御のための操作(ブレーキベダルの踏込)と、操舵制御のための操作(ステアリングホイールの回転)とを、乗員が実行する運転を意味する。なお、車両M1は、エンジンを搭載した車両に限らず、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)であってもよい。
【0010】
情報取得装置100は、車両M1の位置情報、走行状況および周辺状況に関する情報を取得する。本実施形態では、情報取得装置100は、カメラ110と、GNSS受信機120と、慣性センサ130とを備える。カメラ110は、車両M1の進行方向を撮像して画像を取得する。GNSS受信機120は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する人工衛星から受信するGNSS信号に基づいて、車両M1の現在位置(経度・緯度)を検出する。慣性センサ130は、加速度センサおよびヨーレートセンサを備え、車両M1の走行によって生じる3軸加速度、3軸角速度等を検出する。
【0011】
車両システム200は、車両M1の位置情報、走行状況および周辺状況に関する情報を情報取得装置100から取得して車両M1の自己位置を推定し、推定された自己位置に応じて、車両M1の車両動作装置300を制御する。本実施形態の車両システム200は、CPUやメモリを搭載したECU(Electronic Control Unit)により構成されている。ECUが備えるCPUは、メモリに予め記憶されているプログラムを実行することにより、自己位置推定装置210、地図情報取得部220、フュージョン処理部230、経路計画部240および車両制御部250として機能する。
【0012】
自己位置推定装置210は、カメラ110から取得した画像を利用して車両M1の自己位置を推定する。地図情報取得部220は、車両システム200が備えるメモリに予め記憶された地図情報を取得する。フュージョン処理部230は、自己位置推定装置210により推定された自己位置と、地図情報取得部220により取得された地図情報と、情報取得装置100により取得された情報とを利用してフュージョン処理を行い、より信頼性の高い車両M1の自己位置を推定する。経路計画部240は、フュージョン処理部230により推定された自己位置を利用して、車両M1の経路計画を生成する。車両制御部250は、経路計画部240により生成された経路計画に従って、車両M1の制御を行う。各機能部における具体的な処理については、後述する車両制御処理において説明する。
【0013】
図2に示すように、自己位置推定装置210は、特徴量算出部211と、特徴点選別部212と、自己位置算出部213と、誤差修正部214とを備える。特徴量算出部211は、カメラ110により撮像された画像に含まれる特徴点を抽出し、特徴点ごとに特徴量を算出する。特徴点選別部212は、自己位置推定の演算対象とする特徴点を選別する。自己位置算出部213は、選別された特徴点を利用して車両M1の自己位置を算出する。誤差修正部214は、複数画像における自己位置の再投影誤差を算出し、再投影誤差を修正した自己位置を算出する。各機能部における具体的な処理については、後述する自己位置推定処理において説明する。
【0014】
車両動作装置300は、エンジン機構310と、ブレーキ機構320と、操舵機構330とを備える。エンジン機構310は、スロットルバルブの開閉動作や、イグナイタの点火動作や、吸気弁の開閉動作等を行う装置群(アクチュエータ)により構成される。ブレーキ機構320は、センサ、モータ、バルブおよびポンプ等のブレーキ制御に関わる装置群(アクチュエータ)により構成される。操舵機構330は、パワーステアリングモータ等操舵に関わる装置群(アクチュエータ)により構成される。
【0015】
A-2.車両制御処理:
車両システム200は、図3に示す車両制御処理を実行し、情報取得装置100から取得した情報および220から取得した地図情報を利用して自己位置を推定し、かかる自己位置を基に生成した経路計画に従って走行するように車両M1を制御する。車両制御処理は、車両M1の走行中繰り返し実行される。
【0016】
車両システム200は、自己位置推定処理(ステップS100)、GNSS受信機120からのGNSS情報の取得(ステップS110)および慣性センサ130からの慣性情報の取得(ステップS120)を並列して実行する。
【0017】
ステップS100において、自己位置推定装置210は、図4に示す自己位置推定処理を実行する。ステップS110において、自己位置推定装置210は、カメラ110から画像を取得する。
【0018】
ステップS120において、特徴量算出部211は、取得した画像から特徴点を抽出し、特徴点ごとに特徴量を算出する。本実施形態では、特徴量算出部211は、特徴点抽出アルゴリズムとして、FAST(Features from Accelerated Segment Test)を用いて特徴点を抽出する。また、特徴量算出部211は、特徴量算出アルゴリズムとして、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)、ORB(Oriented FAST and Rotated BRIEF)およびSURF(Speeded Up Robust Features)を用いて、特徴量を算出する。なお、特徴量算出部211は、かかる特徴量算出アルゴリズムに限らず、例えば、AKAZE(Accelerated KAZE)、HOG(Histograms of Oriented Gradients)もしくはCNN(Convolutional Neural Network)を用いて特徴量抽出を行ってもよい。また、特徴量算出部211は、上記処理の前処理として、画像の縮小、切り出しおよびガウシアン処理等を実行する。
【0019】
ステップS130において、特徴点選別部212は、抽出された特徴点ごとに、各特徴点の特徴量に応じて信頼度を設定する。「信頼度」は、自己位置推定の精度に対する寄与の度合いを意味する。例えば、建造物に由来する特徴点の信頼度は高く、偶発的に撮像された対向車両や歩行者に由来する特徴点の信頼度は低いといえる。本実施形態では、特徴点選別部212は、信頼度を管理するパラメータとして、ID、特徴点の座標、Age、クラスおよび特徴量情報を特徴点ごとに付与する。「ID」は、複数の画像に共通して現れる特徴点を識別するために特徴点ごとに識別子を意味する。互いに異なる画像間における特徴点の同一性は、例えば、画像における特徴点の座標や特徴量の種類および大きさ等により識別することができる。また、「Age」は、各特徴点について時系列に連続する複数の画像において抽出された回数を示すパラメータを意味する。特徴点選別部212は、過去取得された画像中に存在した特徴点が、新たに取得された画像中にも存在する場合に、かかる特徴点についてのAgeの値を「1」加算する。また、「クラス」は、特徴点管理のための管理パラメータを意味する。特徴点を構成する画素の集合(ブロブ)の面積、方向および長さ等を利用してクラス分けすることにより、特徴点ごとのパラメータ管理の煩雑さを抑制できる。「特徴量情報」は、特徴量の大きさおよび特徴量の種類を示す情報を意味する。
【0020】
Ageの加算処理について、図5~7に示す例を用いてより具体的に説明する。図5~7は、時系列に連続する、この順序でカメラ110により撮像された画像の一例を示している。なお、本来画像中には無数の特徴点が含まれるが、図5~7においては、説明のために必要な特徴点だけ表している。図5に示す画像IM1中には特徴点FP1、FP2およびFP3が存在するため、特徴点FP1、FP2およびFP3についてのAgeの値がそれぞれ「1」加算される。図6に示す画像IM2中には特徴点FP2およびFP3が存在するため、特徴点FP2およびFP3についてのAgeの値がそれぞれ「1」加算される。図7に示す画像IM3中には特徴点FP3のみが存在するため、特徴点FP3についてのAgeの値のみが「1」加算される。このように、図5~7に示す例においては、図5における各特徴点FP1、FP2およびFP3のAgeの値が同じであった場合、画像IM1~IM3に現れる回数が多かった特徴点FP3、FP2、FP1の順に、Ageの値が大きくなる。
【0021】
図4に示すステップS140において、特徴点選別部212は、設定された信頼度に応じて、優先特徴点を選別する。「優先特徴点」は、自己位置推定処理において優先的に処理の対象とする特徴点を意味する。本実施形態では、特徴点選別部212は、特徴点を各特徴点のAgeの値が大きい順に順位付けし、順位の高い順に、予め設定された割合の特徴点を優先特徴点として選別する。Ageの値が大きい場合、つまり、ある特徴点が複数の画像中に現れた回数が多い場合、かかる特徴点は偶発的に撮像された対向車両等に由来する特徴点ではなく、自己位置推定の精度に寄与する建造物等に由来する特徴点である可能性が高いといえるからである。なお、ステップS120において抽出された特徴点の総数に対する優先特徴点の数の割合は、自己位置推定の精度を確保するために、少なくとも50%以上となるように設定されるのが好ましい。このように、時系列に連続する複数の画像において共通して含まれる優先特徴点を優先的に選別することにより、演算対象となる特徴点の数を削減でき、自己位置推定のための演算量の増加を抑制できるとともに、自己位置推定の精度の低下を抑制できる。
【0022】
ステップS150において、自己位置算出部213は、選別された優先特徴点を利用して車両M1の自己位置を推定する。より具体的には、自己位置算出部213は、画像における優先特徴点と、地図情報取得部220に記憶された三次元地図情報とのマッチングを行うことにより、車両M1の自己位置を算出する。
【0023】
ステップS160において、自己位置推定装置210は、予め設定された枚数の画像について自己位置推定が完了したか否かを判定し、画像の枚数が予め設定された枚数に達していない場合には(ステップS160:No)、予め設定された時間間隔(以下「撮像間隔」とも呼ぶ)を空けて再びステップS110を実行して新たに画像を取得する。このように、自己位置推定装置210は、予め設定された枚数の画像について自己位置推定が完了するまで、各画像を対象としてステップS120、S130,S140およびS150の処理を実行する。なお、「予め設定された枚数」は、安定して自己位置推定精度を確保できるように、予め実験等を行うことにより決定される。
【0024】
予め設定された枚数の画像について自己位置推定が完了したのち(ステップS160:Yes)、誤差修正部214は、複数の画像ごとに推定された自己位置の再投影誤差を算出し、かかる再投影誤差を修正した自己位置を算出する(ステップS170)。本実施形態では、誤差修正部214は、バンドル調整を行うことにより、自己位置の再投影誤差を修正する。バンドル調整は、入力画像から、幾何学的な三次元のモデルパラメータを推定するための手法を意味する。バンドル調整では、複数の画像間の各特徴点の対応関係に基づいて、各特徴点の三次元座標を算出する。そして、算出した各特徴点の三次元座標を画像面に再投影し、再投影点と特徴点との距離として算出される再投影誤差を反復的に再推定していくことで、より正確な特徴点の三次元座標値を推定する。なお、本ステップで算出される再投影誤差修正後の自己位置は、本開示における「修正自己位置」に相当する。本ステップの終了後、自己位置推定装置210は、自己位置推定処理を終了する。
【0025】
図3に示すステップS200において、フュージョン処理部230は、地図情報取得部220に記憶された三次元地図情報と、車両M1の自己位置と、GNSS情報と、慣性情報とを利用してフュージョン処理を行い、より信頼性の高い車両M1の自己位置を推定する。本ステップにおいて推定される自己位置は、本開示における「フュージョン自己位置」に相当する。このようにカメラ110、GNSS受信機120および慣性センサ130から並列して取得した情報を利用することにより、これらの機器のうち一部の機器からの情報取得が途切れた状況であっても、残りの機器から取得された情報を基に、安定的に車両M1の自己位置を推定することができる。一部の機器からの情報取得が途切れる状況として、例えば、トンネル内を車両M1が走行する際にGNSS受信機120からの位置情報の取得が途切れる状況が考えられる。
【0026】
ステップS300において、経路計画部240は、フュージョン処理部230により推定された自己位置に応じて、車両M1の経路計画を生成する。より具体的には、経路計画部240は、車両M1の現在の自己位置から予め設定された目的地までの長期的な経路計画および、地図情報に予め設定された通行制限および信号や周辺車両との距離等の車両M1の周辺状況に応じた10秒程度の短期的な経路計画を生成する。なお、経路計画は、計画経路上の各地点における車両M1の走行速度や進行方向等の車両制御を指定する情報を含む。
【0027】
ステップS400において、車両制御部250は、経路計画部240により生成された経路計画に従って、車両M1を制御する。車両制御部250は、指定された走行速度で走行するように、エンジン機構310を構成するアクチュエータを制御する。また、車両制御部250は、指定されたタイミングで指定されたブレーキ量が得られるように、ブレーキ機構320を構成するアクチュエータを制御する。また、車両制御部250は、指定された進行方向に沿って走行するように操舵機構330を構成するアクチュエータを制御する。本ステップの終了後、車両システム200は、車両制御処理を終了する。
【0028】
以上説明した実施形態の自己位置推定装置210によれば、時系列に連続する複数の画像において共通して含まれる優先特徴点を優先的に選別して自己位置を算出するので、演算対象となる特徴点の数を削減でき、自己位置推定のための演算量の増加を抑制できるとともに、自己位置推定の精度の低下を抑制できる。
【0029】
また、特徴点選別部212は、取得された画像から抽出された特徴点の総数に対する優先特徴点の数の割合が、少なくとも50%以上となるように優先特徴点を選別するので、自己位置推定の精度の低下を抑制できる。
【0030】
B.第2実施形態:
第2実施形態の自己位置推定装置210Aは、図9に示すように切取範囲指定部215をさらに備え、図8に示すように経路計画部240から経路計画を取得する点で、第1実施形態の自己位置推定装置210と異なる。また、自己位置推定装置210Aは、図10に示す車両制御処理において、ステップS100に代えてステップS50およびステップS100Aを実行する点と、図11に示す自己位置推定処理において、ステップS130およびステップS140に代えてステップS132およびステップS142を実行する点で、第1実施形態の自己位置推定装置210と異なる。なお、第2実施形態の自己位置推定装置210Aの装置構成および処理におけるその他の手順は、第1実施形態の自己位置推定装置210と同じであるので、同一の構成および同一の手順には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0031】
図10に示す車両制御処理において、自己位置推定装置210Aは、経路計画部240から経路計画を取得し(ステップS50)、自己位置推定処理を実行する(ステップS100A)。
【0032】
図11に示す自己位置推定処理において、特徴量算出部211は、上述のステップS110およびS120と同様に、カメラ110から画像を取得し、取得した画像からの特徴点の抽出および特徴量の算出を実行する。
【0033】
ステップS132において、切取範囲指定部215は、取得した経路計画を利用して、切取範囲TFの大きさおよび画像内における位置を指定する。「切取範囲TF」は、取得した画像において特徴点を優先的に選別する範囲を意味する。本実施形態では、切取範囲指定部215は、画像の撮像後、撮像間隔の経過後に撮像される画像の撮像範囲(以下「次回取得予定画像範囲」とも呼ぶ)以下の大きさの矩形領域を切取範囲TFとして指定する。次回取得予定画像範囲の大きさは、経路計画に含まれる車両M1の走行速度や進行方向等の車両制御に関する情報から予測することができる。
【0034】
図12および図13は、画像IM4および画像IM5において指定される切取範囲TFの一例を示している。切取範囲TFは、道路に描かれたレーンマーカLMが道路の幅方向にすべて含まれるように指定されることが好ましく、より具体的には、水平方向の画角が40°よりも大きく、かつ、垂直方向の画角が30°よりも大きくなるように指定されることが好ましい。また、本実施形態では、図13に示すように、カーブ走行時には、切取範囲TFの画像IM5における位置は、車両M1の進行方向に応じてオフセットされる。本実施形態では、切取範囲指定部215は、予め実験等によって特定された、進行方向とオフセット量との関係に基づいて、オフセット量を決定する。
【0035】
図11に示すステップS142において、特徴点選別部212は、切取範囲TF内の特徴点を優先特徴点として選別する。切取範囲TFの外側の領域(以下「外側領域Ar」とも呼ぶ)に含まれる特徴点は上述の次回取得予定画像範囲には含まれず、自己位置推定の精度に対する寄与の度合いが低い、つまり信頼度が低い特徴点といえるからである。図12に示す例においては、画像IM4中に含まれる特徴点FP4~FP9のうち、ハッチングを付して示す外側領域Arを除いた切取範囲TFに含まれる特徴点FP5~FP7が優先特徴点として選別される。また、図13に示す例においては、画像IM5中に含まれる特徴点FP10~FP15のうち、切取範囲TFに含まれる特徴点FP13~FP15が優先特徴点として選別される。
【0036】
以上説明した第2実施形態の自己位置推定装置210Aによれば、経路計画を利用して切取範囲TFを指定し、切取範囲TFに含まれる特徴点を優先的に選別するので、演算対象となる特徴点の数を削減でき、自己位置推定のための演算量の増加を抑制できるとともに、自己位置推定の精度の低下を抑制できる。
【0037】
C.第3実施形態:
第3実施形態の自己位置推定装置210Bは、図14に示すように、経路計画に代えて、情報取得装置100Bが備える車両走行情報取得装置140から車両M1の車両走行情報を取得する点で、第2実施形態の自己位置推定装置210Aと異なる。また、自己位置推定装置210Bは、図15に示す車両制御処理において、ステップS50に代えてステップS52を実行する点で、第2実施形態の自己位置推定装置210Aと異なる。なお、第3実施形態の自己位置推定装置210Bの装置構成および処理におけるその他の手順は、第2実施形態の自己位置推定装置210Aと同じであるので、同一の構成および同一の手順には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0038】
図14に示すように、本実施形態の情報取得装置100Bは、第1実施形態の情報取得装置100の構成に加えて、車両走行情報取得装置140をさらに備える。車両走行情報取得装置140は、車両M1に搭載されて、車両M1の走行中の走行速度や進行方向等の車両走行情報を計測する。車両M1の走行速度は、車速センサやエンコーダを利用して計測することができる。また、車両M1の進行方向は、ハンドルの操舵角度やヨーレートセンサの検出値を利用して予測することができる。なお、車両走行情報は、本開示における「車両の走行状況に関する情報」に相当する。
【0039】
図15に示す車両制御処理において、自己位置推定装置210Bは、車両走行情報取得装置140から車両走行情報を取得する(ステップS52)。自己位置推定処理(ステップS100A)において、切取範囲指定部215は、経路計画に代えて車両走行情報を利用して上述の次回取得予定画像範囲を予測し、切取範囲TFを指定する。
【0040】
以上説明した第3実施形態の自己位置推定装置210Bによれば、車両走行情報を利用して切取範囲TFを指定するので、車両M1の実際の進行方向に現れる特徴点を優先的に選別でき、自己位置推定の精度の低下をより抑制できる。
【0041】
D.他の実施形態:
(D1)上記実施形態において、地図情報取得部220は、ECUが備えるメモリから、メモリに予め記憶された地図情報を取得するが、本開示はこれに限定されない。地図情報取得部220は、車両M1とは別に設けられた装置から通信により地図情報を取得してもよい。
【0042】
(D2)上記実施形態において、切取範囲指定部215は、矩形領域を切取範囲TFとして指定するが、本開示はこれに限定されない。切取範囲指定部215は、円形領域を切取範囲TFとして指定してもよい。かかる形態においても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0043】
(D3)上記実施形態において、切取範囲指定部215は、上述の次回取得予定画像範囲以下の大きさとなるように切取範囲TFを指定するが、本開示はこれに限定されない。切取範囲指定部215は、取得された画像よりも小さく、次回取得予定画像範囲よりも大きい任意の大きさに切取範囲TFを設定してもよい。かかる形態においても、取得された画像に含まれる特徴点すべてを演算対象として自己位置を算出する場合に比べて演算対象となる特徴点の数を削減できるので、自己位置推定のための演算量の増加を抑制できる。
【0044】
本開示に記載の車両システム200及びそれら手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の車両システム200及びそれら手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の車両システム200及びそれら手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0045】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
110…カメラ、200…車両システム、210…自己位置推定装置、211…特徴量算出部、212…特徴点選別部、213…自己位置算出部、214…誤差修正部、220…地図情報取得部、230…フュージョン処理部、240…経路計画部、250…車両制御部、M1…車両
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