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特開2024-141807固定子、および、電動機または発電機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141807
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】固定子、および、電動機または発電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/02 20060101AFI20241003BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02K1/02 Z
H02K1/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053648
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 学
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA22
5H601CC01
5H601CC02
5H601CC13
5H601DD01
5H601DD11
5H601EE39
5H601GA02
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB33
5H601GB48
5H601GC12
5H601GD02
5H601GD07
5H601GD08
5H601GD09
5H601GD10
5H601GD20
5H601GD22
5H601GD23
5H601HH02
5H601KK08
(57)【要約】
【課題】電動機のトルクの低下を抑制しつつ、トルクリプルを低減する固定子、および、電動機または発電機を提供する。
【解決手段】固定子11は、磁気特性の異なる2種以上の軟磁性体で構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気特性の異なる2種以上の軟磁性体で構成されていることを特徴とする固定子。
【請求項2】
前記固定子は、複数の磁極部を備え、
少なくとも一つの前記磁極部が他の前記磁極部と異なる軟磁性体で構成されている、請求項1に記載の固定子。
【請求項3】
少なくとも一つの前記磁極部の比透磁率が、他の前記磁極部の比透磁率よりも低い、請求項2に記載の固定子。
【請求項4】
複数の前記磁極部が互いに同じ形状である、請求項2に記載の固定子。
【請求項5】
前記固定子のスロット数をN、相数をm、極数をPと定義した場合、毎極毎相スロット数q=N/(m・P)である同期機において、前記固定子はq≦1であり、複数の前記磁極部を支持する継鉄部をさらに備え、
複数の前記磁極部は、互いに位相が同じ巻線の間に設けられる第一磁極部から構成され、
前記第一磁極部から前記第一磁極部の径方向外側に位置する前記継鉄部までの部位の少なくとも一部が、他の部位と異なる軟磁性材料で構成されている、請求項2に記載の固定子。
【請求項6】
前記固定子のスロット数をN、相数をm、極数をPと定義した場合、毎極毎相スロット数q=N/(m・P)である同期機において、前記固定子はq>1であり、複数の前記磁極部を支持する継鉄部をさらに備え、
複数の前記磁極部は、互いに位相が同じ巻線の間に設けられる第一磁極部と、互いに位相が異なる巻線の間に設けられる第二磁極部とから構成され、
前記第二磁極部から前記第二磁極部の径方向外側に位置する前記継鉄部までの部位の少なくとも一部が、他の部位と異なる軟磁性材料で構成されている、請求項2に記載の固定子。
【請求項7】
前記固定子は複数のコアシートが軸方向に積層されて構成されており、
軸方向に隣り合う前記コアシートを前記軸方向から透視的に見たときに、一方の前記コアシートのうちの他の部位と異なる軟磁性材料で構成された部位が、他方の前記コアシートのうちの他の部位と異なる軟磁性材料で構成された部位と、軟磁性材料の配置が異なる、請求項1に記載の固定子。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載の固定子と、
回転子と、を備える電動機または発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子、および、電動機または発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機のトルクリプルは、制御性能の悪化や振動・騒音の増加などさまざまな問題を引き起こすため、いくつかの抑制手段が提案されている。例えば、特許文献1に、トルクリプルを低減するために、位相巻線スロット間の磁極部の中心にスリットを設けた電動機の固定子が開示されている。また、特許文献2に、トルクリプルを低減するために、位相巻線スロット間の磁極部の先端が凹んだ形状の電動機の固定子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭52-097102号公報
【特許文献2】特開平05-056614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に開示されている固定子は、磁束の通り道の空隙が増加するため、電動機のトルクが低下してしまう恐れがある。したがって、電動機のトルクの低下を抑制しつつ、トルクリプルを低減する技術が求められる。
【0005】
本発明は、トルクの低下を抑制しつつ、トルクリプルを低減する固定子、および、電動機または発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る固定子は、
磁気特性の異なる2種以上の軟磁性体で構成されている。
【0007】
本発明の一側面に係る電動機または発電機は、
上記固定子と、回転子と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トルクの低下を抑制しつつ、トルクリプルを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】基準例1に係る電動機の水平方向断面図である。
図2】第1実施形態に係る電動機の水平方向断面図である。
図3】基準例1に係る電動機と、参考例1に係る電動機と、第1実施形態に係る電動機のトルク特性を示すグラフである。
図4】第1実施形態に係る電動機の磁極部の模式図である。
図5】基準例2に係る電動機の水平方向断面図である。
図6】第2実施形態に係る電動機の水平方向断面図である。
図7】基準例2に係る電動機と第2実施形態に係る電動機のトルク特性を示すグラフである。
図8】第2実施形態に係る電動機のステータコアの模式図である。
図9】第2実施形態に係る電動機のステータコアの模式図である。
図10】第2実施形態に係る電動機のステータコアの模式図である。
図11】第2実施形態の応用例に係る電動機を示す模式図である。
図12図11の電動機のトルク特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
[第1実施形態]
【0011】
本実施形態1に係る電動機100の詳細を説明するために、比較対象として、図1を用いて、基準例1に係る電動機100’について説明する。
【0012】
図1は、基準例1に係る電動機100’の水平方向断面図である。図1に示す電動機100’は、3相4極6スロット、集中巻線、毎極毎相スロット数q=0.5のIPMSM(埋め込み磁石同期電動機)構造である。なお、スロット数をN、相数をm、極数をPと定義した場合、毎極毎相スロット数qはq=N/(m・P)で求められる値である。
【0013】
電動機100’は、固定子10と、固定子10に対して相対的に回転可能な回転子20と、を備えている。
【0014】
固定子10は、回転軸方向(図1の紙面垂直方向)に複数の電磁鋼板が積層されて形成されたリング形状のステータコア11を備えている。ステータコア11は、単一の軟磁性体材料で構成されている。ステータコア11は、径方向内側に6個の平面視略T字状からなる磁極部(ティース)11aを有し、径方向外側に継鉄部11bを有する。6個の磁極部11aは互いに略同じ形状であり、継鉄部11bによって支持される。隣接する2つの磁極部11aの間にはスロットが設けられ、各スロット内にステータコイル12が組み込まれている。各ステータコイル12は集中巻線によって磁極部11aに巻回されている。ステータコイル12には、外部から交流電流が印加される。磁極部11aによって隔てられたステータコイル12の二つの部位は、流れる電流の位相が互いに反転している。例えば磁極部11aによって隔てられたステータコイル12の二つの部位12a、12bにはそれぞれ、U反転相とU相が流れる。
【0015】
回転子20は、回転軸方向に複数の電磁鋼板が積層されて形成されたロータコア21を備えている。ロータコア21は円筒状に形成されている。ロータコア21の内周面は、シャフト取付孔22を構成している。シャフト取付孔22には図示しない駆動シャフトが固定され、駆動シャフトは回転中心Oを中心として回転可能に図示しないハウジングに支承されている。
【0016】
回転子20は、ロータコア21に図示しない複数のロータ磁石を有する。ロータ磁石は、スロット内部に埋め込まれた永久磁石で構成されている。ロータ磁石は、それぞれ極性の異なる1極を構成している。
【0017】
以下、図2~4を用いて、第1実施形態の電動機100について詳細に説明する。
【0018】
図2は、第1実施形態に係る電動機100の水平方向断面図である。以下、図1に示す基準例1に係る電動機100’の構成との相違点のみを説明する。
【0019】
ステータコア11は、磁気特性の異なる2種類以上の軟磁性体で構成されている。具体的には、磁極部11aから継鉄部11bまでの部位の少なくとも一部(図2の例示では第二軟磁性材料11A)が、他の部位(第一軟磁性材料)と異なる軟磁性材料で構成されている。第一軟磁性材料として、例えば電磁鋼板が用いられ、第二軟磁性材料11Aとして、例えばNi―Fe合金(パーマロイ)が用いられる。第一軟磁性材料と第二軟磁性材料11Aは、互いに異なる軟磁性材料であるため、比透磁率も互いに異なる。
【0020】
ステータコア11が磁気特性の異なる2種類以上の軟磁性体で構成されていることで、電動機100に発生するトルクリプルを低減できる。その理由を、図3を用いて説明する。図3は、図1に示す基準例1に係る電動機と、参考例1に係る電動機と、図2に示す第1実施形態に係る電動機のトルク特性を示すグラフである。ここで、参考例1に係る電動機とは、図2に示す第1実施形態に係る電動機100の第二軟磁性材料11Aの部位を空隙に置き換えた構成である。当該空隙には空気が含まれている。
図3において、横軸に電気角、縦軸にトルクを示す。破線の波形は基準例1に係る電動機100’のトルクを示し、点線の波形は参考例1に係る電動機のトルクを示し、実線の波形は第1実施形態に係る電動機100のトルクを示す。図3において、符号T1は基準例1に係る電動機100’のトルク波形のトルクリプルの大きさを表し、符号T2は参考例1に係る電動機100’のトルク波形のトルクリプルの大きさを表し、符号T3は第1実施形態に係る電動機100のトルク波形のトルクリプルの大きさを表す。
【0021】
図3に示すように、参考例1に係る電動機のトルクリプルの大きさT2は、基準例1に係る電動機100’のトルクリプルの大きさT1よりも3/4程度に低減されている。しかしながら、参考例1に係る電動機のトルクの大きさは、基準例1に係る電動機100’のトルクの大きさから1.1Nm程度低減されている。
【0022】
これに対して、第1実施形態に係る電動機100のトルクリプルの大きさT3は、基準例1に係る電動機100’のトルクリプルの大きさT1よりも1/3程度に低減されている。さらに、第1実施形態に係る電動機100のトルクの大きさは、基準例1に係る電動機のトルクの大きさから0.45Nm程度しか低減されていない。つまり、本実施形態の構成により、電動機のトルクの低下を抑制しつつ、トルクリプルを低減することが可能となる。
【0023】
図4は、第1実施形態に係る電動機の磁極部の模式図である。図4に示すように、磁極部11aは第一軟磁性材料で構成され、径方向内側の内周面Sの一部から径方向外側に向かって凸形状である挿入孔13を有する。第二軟磁性材料11Aが、図4の矢印方向に沿って挿入孔13に挿入されて内部に組み込まれることで、磁極部11aは第一軟磁性材料と第二軟磁性材料11Aの複数の磁性材料で構成される。このような形状とすることで、磁気特性の異なる2種類以上の軟磁性体で構成された磁極部11aを容易に組み立てることができる。
[第2実施形態]
【0024】
本実施形態2に係る電動機200の詳細を説明するために、比較対象として、図5を用いて、基準例2に係る電動機200’について説明する。
【0025】
図5は、基準例2に係る電動機200’の水平方向断面図である。図5に示す電動機200’は、3相2極18スロット、分布巻線、毎極毎相スロット数q=3のIPMSM(埋め込み磁石同期電動機)構造である。
【0026】
電動機200’は、固定子10と、固定子10に対して相対的に回転可能な回転子20と、を備えている。
【0027】
固定子10は、回転軸方向に複数の電磁鋼板が積層されて形成されたリング形状のステータコア11を備えている。ステータコア11は、単一の軟磁性体で構成されている。ステータコア11は、径方向内側に計18個の平面視略T字状からなる第一磁極部11a、第二磁極部11a’を有し、径方向外側に継鉄部11bを有する。18個の第一磁極部11a、第二磁極部11a’は互いに略同じ形状であり、継鉄部11bによって支持される。隣接する2つの第一磁極部11a、または隣接する第一磁極部11aと第二磁極部11a’の間にはスロットが設けられ、各スロット内にステータコイル12が組み込まれている。ステータコイル12は環状に配置されており、各ステータコイル12は分布巻線によって巻回されており、外部から交流電流が印加される構成となっている。第一磁極部11aによって隔てられたステータコイル12の二つの部位は、流れる電流の位相が同じである。第二磁極部11a’によって隔てられたステータコイル12の二つの部位は、流れる電流の位相が互いに異なる。例えば第二磁極部11a’によって隔てられたステータコイル12の二つの部位12a、12bにはそれぞれ、U相とV反転相が流れる。
【0028】
なお、回転子20の構成は、図1に示す基準例2に係る電動機100の回転子20の構成と同様のため、説明を省略する。
【0029】
以下、図6~9を用いて、第2実施形態の電動機200について詳細に説明する。
【0030】
図6は、第2実施形態に係る電動機200の水平方向断面図である。以下、図5に示す基準例2に係る電動機200’の構成との相違点のみを説明する。
【0031】
ステータコア11は、磁気特性の異なる2種類以上の軟磁性体で構成されている。具体的には、第二磁極部11a’から継鉄部11bまでの部位の少なくとも一部(図1の例示では第二軟磁性材料11A)が、他の部位(第一軟磁性材料)と異なる軟磁性材料で構成されている。第一軟磁性材料として、例えば電磁鋼板が用いられ、第二軟磁性材料11Aとして、例えばNi―Fe合金(パーマロイ)が用いられる。第一軟磁性材料と第二軟磁性材料11Aとは比透磁率が異なる。
【0032】
図7は、図5に示す基準例2に係る電動機と図6に示す第2実施形態に係る電動機のトルク特性を示すグラフである。横軸に電気角を、縦軸にトルクを示す。破線の波形は、基準例2に係る電動機200’のトルクを示し、実線の波形は、第2実施形態に係る電動機200のトルクを示す。図7において、符号T3は基準例2に係る電動機200’のトルク波形のトルクリプルの大きさを表し、符号T4は第2実施形態に係る電動機200のトルク波形のトルクリプルの大きさを表す。
【0033】
図7に示すように、第2実施形態に係る電動機200のトルクリプルの大きさT5は、基準例2に係る電動機100’のトルクリプルの大きさT4よりも1/3程度に低減されている。さらに、第2実施形態に係る電動機100のトルクの大きさは、基準例2に係る電動機のトルクの大きさから0.08Nm程度しか低減されていない。つまり、本実施形態の構成により、電動機のトルクの低下を抑制しつつ、トルクリプルを低減することが可能となる。
【0034】
図8~10は、第2実施形態に係る電動機のステータコアの模式図である。
【0035】
図8に示すステータコア11は、回転軸Lの軸方向および各スロットSLの中心を通る断面で周方向に分割したブロックから構成される。図7の例示では、周方向に等間隔に18個のブロックに分割されている。分割された少なくとも1つのブロック(図8の例示では第二軟磁性材料11A)は、他のブロック(第一軟磁性材料)と異なる軟磁性材料で構成される。このように、固定子10は円周方向に沿って多数のブロックに分割されているため、第二軟磁性材料11Aの配置の調整が容易となる。
【0036】
図9に示すステータコア11は、回転時Lと、互いに位相が異なる2つのスロットSLの間に位置する磁極部11a’の中心を通る断面で周方向に分割したブロックから構成される。図9の例示では、周方向に等間隔に6個のブロックに分割されている。さらに、6個に分割された各々のブロックは、内部ブロックA、および、当該内部ブロックAの外側に位置する外部ブロックBから構成される。内部ブロックAは、互いに位相が同じ2つのスロットSLの間に位置する複数の磁極部11aを連結する。複数の内部ブロックAおよび複数の外部ブロックBのうち少なくとも1つのブロック(図9の例示では第二軟磁性材料11A)が、他のブロック(第一軟磁性材料)と異なる軟磁性材料で構成される。このように、ステータコア11は異相間で周方向に等間隔に分割されているため、任意の位相のブロックの磁性材料の変更が容易となる。
【0037】
図10に示すステータコア11は、メインブロックAと6個の挿入ブロックBから構成される。メインブロックAは径方向外側の外周面S’から径方向内側に向かって凸形状である挿入溝11hを有する。挿入ブロックBは、外周面S’から挿入溝11hに挿入されて組み込まれる。複数のメインブロックAおよび複数の挿入ブロックBのうち少なくとも1つのブロック(図10の例示では第二軟磁性材料11A)が、他のブロック(第一軟磁性材料)と異なる軟磁性材料で構成される。このように、挿入ブロックBが外周面S’から挿入溝11hに挿入できる構成のため、ステータコアの磁性材料の変更が容易となる。
【0038】
[第2実施形態の応用例]
以下、図11、12を用いて、第2実施形態の応用例の電動機について詳細に説明する。
図11は、第2実施形態の応用例に係る電動機を示す模式図である。電動機2000は、第一コアシート200Aと第二コアシート200Bが回転軸Lの軸方向に積層された構成である。第一コアシート200Aと第二コアシート200Bは共に、3相2極18スロット、分布巻線、毎極毎相スロット数q=3のIPMSM(埋め込み磁石同期電動機)構造である。第一磁極部11aは、互いに位相が同じ(U相同士、V相同士、W相同士、U反転相同士、V反転相同士、W反転相同士)2つのステータコイル12の間に位置していて、第二磁極部11a’は、互いに位相が異なる2つのステータコイル12の間に位置している。
【0039】
第一コアシート200Aのステータコア11と第二コアシート200Bのステータコア11は共に、磁気特性の異なる2種類以上の軟磁性体で構成されている。具体的には、第一コアシート200Aでは、第二磁極部11a’から継鉄部11bまでの部位の少なくとも一部(図11の例示では第二軟磁性材料11A)が、他の部位(第一軟磁性材料)と異なる軟磁性材料で構成されている。第二コアシート200Bでは、第一磁極部11aから継鉄部11bまでの部位の少なくとも一部(図11の例示では第二軟磁性材料11A’)が、他の部位(第一軟磁性材料)と異なる軟磁性材料で構成されている。
【0040】
回転軸Lの軸方向に隣り合う第一コアシート200Aと第二コアシート200Bを軸方向から透視的に見たときに、第一コアシート200Aの第二軟磁性材料11Aと第二コアシート200Bの第二軟磁性材料11A’は、互いに重ならない位置に設けられている。
【0041】
図12は、図11の電動機のトルク特性を示すグラフである。横軸に角度を、縦軸にトルクを示す。横軸に電気角を、縦軸にトルクを示す。実線の波形は、第一コアシート200Aを含む領域におけるトルクを示し、波線の波形は、第二コアシート200Bを含む領域におけるトルクを示す。図12において、符号T6は第一コアシート200Aを含む領域におけるトルクリプルの大きさを表し、符号T7は第二コアシート200Bを含む領域におけるトルクリプルの大きさを表す。
【0042】
図12に示すように、第一コアシート200Aを含む領域におけるトルク波形の位相と第二コアシート200Bを含む領域におけるトルク波形の位相が、互いに反転している。そのため、電動機2000全体としては2つのトルクが合成されることで、トルクリプルT6、T7が相殺され、トルクリプルの高調波成分が低減される。したがって、第2実施形態に係る電動機200をこのように応用することで、電動機のトルクの低下を抑制しつつ、トルクリプルをさらに低減することが可能となる。
【0043】
なお、第2実施形態の応用例について説明したが、第1実施形態についても同様に応用することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0045】
本発明の実施形態では、電動機として説明しているが、発電機にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0046】
100、200:電動機
10:固定子
11:ステータコア
11a、11a’:磁極部(第一磁極部、第二磁極部)
11A、11A’:第二軟磁性材料
11b:継鉄部
11h:挿入溝
12:ステータコイル
20:回転子
21:ロータコア
22:シャフト取付孔
T1、T2、T3、T4、T5、T6:トルクリプル
O:回転中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12