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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141813
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】成形体
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20241003BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20241003BHJP
   B29C 49/24 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B7/023
B29C45/14
B29C49/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053655
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠山 亮太
【テーマコード(参考)】
4F100
4F206
4F208
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CA23B
4F100EH17
4F100EH36
4F100HB00B
4F100JA13B
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JN02B
4F100YY00A
4F100YY00B
4F206AB16
4F206AD08
4F206AH55
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB19
4F206JL02
4F208AB16
4F208AD09
4F208AG07
4F208AH55
4F208LA09
4F208LB01
4F208LB19
(57)【要約】
【課題】加飾性及び耐熱性に優れた成形体を提供する。
【解決手段】ベース層と、前記ベース層の一部または全体に設けられた加飾層とを有する成形体であって、前記ベース層は第1熱可塑性樹脂を含み、前記加飾層は第2熱可塑性樹脂を含み、かつインク成分を実質的に含まず、前記加飾層の不透明度が30%以上である、成形体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース層と、前記ベース層の一部または全体に設けられた加飾層とを有する成形体であって、
前記ベース層は第1熱可塑性樹脂を含み、
前記加飾層は第2熱可塑性樹脂を含み、かつインク成分を実質的に含まず、
前記加飾層の不透明度(Haze)が30%以上である、
成形体。
【請求項2】
前記加飾層の白色度(W)が80%以上である、請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記加飾層が前記ベース層の一部に設けられ、
前記ベース層と前記加飾層の不透明度の差(ΔHaze)が3%以上である、
請求項1または2に記載の成形体。
【請求項4】
前記加飾層が前記ベース層の一部に設けられ、
前記ベース層と前記加飾層の白色度の差(ΔW)が3%以上である、
請求項1または2に記載の成形体。
【請求項5】
前記加飾層のボイド率は10%以上である、請求項1または2に記載の成形体。
【請求項6】
前記加飾層がフィラーを含む、請求項1または2に記載の成形体。
【請求項7】
前記加飾層の厚みが5μm以下である、請求項1または2に記載の成形体。
【請求項8】
前記第1熱可塑性樹脂と前記第2熱可塑性樹脂が同一の樹脂を含む、請求項1または2に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾部を有する成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料用ボトル、食品用保存用容器等として、ポリプロピレン等のポリオレフィンやポリエチレンテレフタレート(PET)を用いたプラスチック製容器が広く使用されている。
【0003】
このような樹脂成形品の中には、意匠性向上等を目的として、インク組成物により加飾された加飾部を有するものがある。
例えば、特許文献1には、インク組成物によって加飾されたの樹脂成形品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-220151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インク組成物中には、通常、染料や顔料といった着色成分の他に助剤や粘着剤といった添加剤が含まれており、これらの添加剤の中には、耐熱性が低い化合物も含まれる。例えば、汎用の粘着剤であるアクリル系粘着剤などは、熱に曝されると劣化し着色が生じてしまう。そのため、インク組成物を用いて加飾された加飾部を有する樹脂成形品は、高温環境下での使用適性や、加熱溶融による樹脂リサイクル適性に劣るものであった。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みなされたものであって、加飾性に優れ、耐熱性にも優れた樹脂成形体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ベース層と加飾層とを有する成形体において、熱可塑性樹脂を含み、かつインク成分を実質的に含まず、不透明度が所定値以下の加飾層とすることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を解決するに至った。
【0008】
即ち本発明は、以下の手段により課題を解決するものである。
〔1〕ベース層と、前記ベース層の一部または全体に設けられた加飾層とを有する成形体であって、
前記ベース層は第1熱可塑性樹脂を含み、
前記加飾層は第2熱可塑性樹脂を含み、かつインク成分を実質的に含まず、
前記加飾層の不透明度(Haze)が30%以上である、
成形体。
〔2〕前記加飾層の白色度(W)が80%以上である、上記〔1〕に記載の成形体。
〔3〕前記加飾層が前記ベース層の一部に設けられ、
前記ベース層と前記加飾層の不透明度の差(ΔHaze)が3%以上である、
上記〔1〕または〔2〕に記載の成形体。
〔4〕前記加飾層が前記ベース層の一部に設けられ、
前記ベース層と前記加飾層の白色度の差(ΔW)が3%以上である、
上記〔1〕または〔2〕に記載の成形体。
〔5〕前記加飾層のボイド率は10%以上である、上記〔1〕または〔2〕に記載の成形体。
〔6〕前記加飾層がフィラーを含む、上記〔1〕または〔2〕に記載の成形体。
〔7〕前記加飾層の厚みが5μm以下である、上記〔1〕または〔2〕に記載の成形体。
〔8〕前記第1熱可塑性樹脂と前記第2熱可塑性樹脂が同一の樹脂を含む、上記〔1〕または〔2〕に記載の成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加飾性及び耐熱性に優れた成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る成形体の一態様の断面模式図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る成形体の別の一態様の断面模式図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る成形体の製造に用いる加飾層形成用フィルムの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の成形体を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本発明において「~」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。また、本発明において、「重量部」と「質量部」、「重量%」と「質量%」はそれぞれ同じ意味を表すものとする。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供されるもののサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0012】
[成形体]
本発明の実施形態に係る成形体は、ベース層と、前記ベース層の一部または全体に設けられた加飾層とを有する成形体であって、
前記ベース層は第1熱可塑性樹脂を含み、
前記加飾層は第2熱可塑性樹脂を含み、かつインク成分を実質的に含まず、
前記加飾層の不透明度(Haze)が30%以上である。
【0013】
〔ベース層〕
本発明の実施形態において、ベース層は成形体の本体部を構成する層である。ベース層は第1熱可塑性樹脂を含む。
【0014】
(第1熱可塑性樹脂)
ベース層に用いる第1熱可塑性樹脂の種類は特に制限されず、広範な種類の熱可塑性樹脂から選択可能である。例えば、オレフィン系樹脂;ナイロン-6,6等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート又はその共重合体、ポリブチレンサクシネート又はポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート;スチレン系樹脂等が挙げられ、好ましくはオレフィン系樹脂である。これらは単独で用いても良いし、複数を組み合わせて用いても良い。
【0015】
・オレフィン系樹脂
オレフィン系樹脂の具体例としては、ポリプロピレン;高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン等が挙げられる。その中でも、ポリプロピレンであることが好ましい。
【0016】
・・ポリプロピレン
ポリプロピレンとしては、主なモノマーにプロピレンが用いられるのであれば特に限定されない。例えば、プロピレン単独重合体や、主成分となるプロピレンと、エチレン、1-ブテン等のα-オレフィンとの共重合体である、プロピレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。中でもプロピレン単独重合体が好ましい。なお、共重合体は多元系でもよく、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。また、プロピレン単独重合体とプロピレン共重合体とを併用してもよい。
【0017】
ポリプロピレンとしては、ベース層と隣接する層との接着性又は成形性の向上の観点から、そのグラフト変性物を必要に応じて使用することができる。
【0018】
(その他の成分)
ベース層は、必要に応じて、フィラー、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、滑剤、又は核剤などを本発明の効果を阻害しない範囲において添加することができる。
フィラーとしては、後述の加飾層において含有し得る無機フィラーや有機フィラー等が挙げられる。
【0019】
ベース層の不透明度(Haze)は特に限定されないが、例えば20~90%とすればよく、好ましくは50~85%である。
また、ベース層の白色度(W)についても特に限定されないが、例えば20~95%とすればよく、好ましくは50~90%である。
ベース層の不透明度及び白色度は、後述の加飾層の不透明度及び白色度の測定と同様にして測定できる。ただし、ベース層の不透明度及び白色度は、ベース層のみに対し測定するものとする。
【0020】
ベース層の厚みとしては特に限定されず、成形体の用途によって適宜選択し得るが、例えば20~200μm、好ましくは40~100μmの範囲である。
【0021】
〔加飾層〕
本発明の実施形態に係る成形体は、上記ベース層の一部または全体に設けられた加飾層を有する。加飾層は、本発明の成形体の本体部を加飾する加飾部を構成する。加飾層は第2熱可塑性樹脂を含み、かつインク成分を実質的に含まず、不透明度(Haze)が30%以上である。
【0022】
本実施形態において、加飾層にはインク成分が実質的に含まれない。インク成分とは、染料や顔料といった着色成分の他、助剤や粘着剤といった通常インク組成物に含まれる各成分を表すものとする。ここで、加飾層がインク成分を実質的に含まないとは、加飾層において図柄の視認性の機能を有する程度にはインク成分を含有しないことを意味し、例えば、加飾層あたりのインク成分の含有量が、5質量%以下であるものをいう。
インク組成物に通常添加される添加剤には、耐熱性が低い化合物が含まれるが、本発明の実施形態においては、インク成分を実質的に含まないため、これらの化合物に起因する熱劣化が生じない。
【0023】
本実施形態において、加飾層の不透明度(Haze)は30%以上である。不透明度を30%以上とすることにより、インクを用いた加飾層に近い視認性を得ることができ、加飾層として機能することができる。不透明度は、30%以上であればよく、例えば50%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。また、上限は100%である。
【0024】
加飾層の不透明度(Haze)は、加飾層だけを切り出して測定するのではなく、ベース層も有する状態(つまり、加飾層を有する成形体である状態)で、JIS-K-7136:2000に準拠して測定することができる。
【0025】
また、本実施形態おいて、加飾層の白色度(W)は80%以上であることが好ましい態様の一つとして挙げられる。白色度を80%以上とすることにより、インクを用いた加飾層に近い視認性を得ることができ、加飾層に優れる。白色度は、85%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。また、実現性の観点から上限としては99%以下が好ましく、95%以下がより好ましい。
【0026】
加飾層の白色度(W)は、加飾層だけを切り出して測定するのではなく、ベース層も有する状態(つまり、加飾層を有する成形体である状態)で、JIS-L1015:2021に準拠して測定することができる。
【0027】
インク成分を実質的に用いずに加飾層の不透明度を上記範囲とする具体的手段としては、例えば、脆性で強度の弱い加飾前駆層を形成し、該加飾前駆層を破壊することにより不透明度30%以上の加飾層を得る方法;添加フィラーにより不透明度を30%以上とする方法;エンボス加工により不透明度を30%以上とする方法;などが挙げられ、中でも、脆性で強度の弱い加飾前駆層を形成し、該加飾前駆層を破壊することにより不透明度30%以上の加飾層を得る方法が好ましい。
以下、それぞれのケースにおける、加飾層の詳細を説明する。
【0028】
<<第1の態様>>
好ましい第1の態様は、ベース層上に脆性で強度の弱い加飾前駆層を形成し、該加飾前駆層を破壊することにより、不透明度30%以上の加飾層を形成する態様である。
具体的には、まず、図3に示す加飾層形成用フィルム3を作製する。加飾層形成用フィルム3は、基層13と加飾前駆層12’を積層し、好ましくはさらに延伸して得られるフィルムであり、該フィルムにおいて、加飾前駆層を基層よりも脆性で強度が弱い層とする。このような加飾層形成用フィルムとベース層とを、ベース層と加飾前駆層とが接するようにインモールド成形により積層した積層体から、加飾層形成用フィルムを剥離すると、加飾前駆層の破壊により基層はベース層との積層体から容易に引き剥がすことができ、剥離後にベース層側表面に残存する加飾前駆層が加飾層となる。第1の態様は、該剥離操作により加飾層の不透明度を30%以上とする態様である。すなわち、加飾前駆層と加飾層に含まれる各成分の組成は同一である。
第1の態様においては、加飾前駆層の破壊をより円滑にするため、加飾層には、フィラーを配合して延伸することで多孔化する手法、相互に非相溶の少なくとも2種の樹脂を配合して互いに非相溶樹脂間界面を形成する手法、上述した2つの手法を組み合わせた手法が挙げられる。なかでも、フィラーを配合して延伸することで多孔化する手法が好ましい。
【0029】
<第1Aの態様>
まず、加飾層の白色度(W)を上記の好ましい範囲とする場合の好適態様について説明する。
【0030】
(第2熱可塑性樹脂)
第2熱可塑性樹脂としては、第1熱可塑性樹脂で挙げたものと同様の樹脂を用いる事ができる。
【0031】
なお、本発明において2つの樹脂が「非相溶」とは、当該樹脂のブレンド物を電子顕微鏡で観察した場合、海島構造のモルフォロジーを有しており、その構造の寸法が0.3~10μmであることを指す。
【0032】
(フィラー)
加飾層は、第2熱可塑性樹脂の他にフィラーを含むことが好ましい。フィラーを含んだ状態で延伸することで、加飾層中にはボイド(空孔)が多数形成され、凝集破壊されやすくなって易破壊適性を発現する。
フィラーは無機フィラーであっても有機フィラーであってもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
該無機フィラーとしては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレイ、タルク、酸化チタンなどの無機フィラー、無機フィラーの核の周囲にアルミニウム酸化物ないしは水酸化物を有する複合無機フィラー、中空ガラスビーズ等を例示することができる。第1Aの態様においては、中でも重質炭酸カルシウムが、安価で延伸時に多くのボイドを形成させることができるために好ましい。
ボイドが多いと、ベース層と加飾層形成用フィルムの積層体の成形時に樹脂圧力で溶融樹脂が加飾前駆層表面の開口部に入り込み、該投錨効果によるフィルムのベース層への貼着性が向上する。また、加飾層形成用フィルムの剥離により得られる加飾層のボイド率が向上し、所望の白色度が得られやすくなるだけでなく、凝集破壊しやすくなり加飾部として機能させやすくなる。
【0033】
該有機フィラーとしては、第2熱可塑性樹脂として用いるポリプロピレン樹脂とは異なる種類の樹脂を選択することが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリレート等の重合体であって、ポリプロピレン樹脂の融点よりも高い融点(例えば170~300℃)ないしはガラス転移温度(例えば170~280℃)を有し、かつ非相溶のものを使用することができる。
【0034】
本発明の実施形態において、加飾層のボイド率は10%以上であることが好ましい。加飾層のボイド率が10%以上であれば、加飾層に入射した光が乱反射しやすくなり、所望の白色度が得られやすくなるため好ましい。
加飾層のボイド率は、同様の観点から、15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。また、成形安定性の観点から、ボイド率は、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましい。
【0035】
なお、加飾層のボイド率は、電子顕微鏡観察し、観察像を画像解析してボイドが占める面積割合として求めることができる。具体的な測定方法については、実施例の項に記載する。
【0036】
フィラーとしては、上記に例示した無機フィラーを表面処理剤により表面を親水化処理したものを少なくとも用いることが好ましい。
該表面処理剤としては、水溶性アニオン系界面活性剤、水溶性カチオン系界面活性剤、及び水溶性非イオン系界面活性剤が挙げられる。
【0037】
第1Aの態様において、加飾層は、フィラー40~70質量%、好ましくは50~65質量%を含み、該加飾層が少なくとも1軸方向に延伸されていることが好ましい。加飾層中のフィラーの含有量を40質量%以上とすることによって加飾層形成用フィルムを剥離する際に、充分な剥離性が得られる。また、70質量%以下とすることによって成形安定性が得られる。
【0038】
(第2熱可塑性樹脂に非相溶な樹脂)
第1Aの態様において、加飾層は、第2熱可塑性樹脂に非相溶な樹脂を含んでいることが好ましい。相互に非相溶の少なくとも2種の樹脂の存在により、延伸フィルム作製時に非相溶性の樹脂間で界面剥離が生じ剥離性を向上させることができる。なお、本発明において2つの樹脂が「非相溶」とは、当該樹脂のブレンド物を電子顕微鏡で観察した場合、海島構造のモルフォロジーを有しており、その構造の寸法が0.3~10μmであることを指す。
【0039】
加飾層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、ベース層の(その他の成分)で挙げた添加剤をさらに含有していてもよい。
【0040】
(成形体の製造方法)
第1Aの態様の成形体は、基層と加飾前駆層を積層し、延伸して得られる加飾層形成用フィルムとベース層とをインモールド成形により積層した積層体において、加飾層形成用フィルムを剥離することにより得ることができる。
【0041】
・加飾層形成用フィルムの製造
加飾層形成用フィルムは、基層と加飾前駆層とを有する。
基層は第3熱可塑性樹脂を含む。第3熱可塑性樹脂としては、上述の第1熱可塑性樹脂として挙げた熱可塑性樹脂を用い得る。
基層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、ベース層の(その他の成分)で挙げた添加剤を含有することができる。
基層は、単層構造のものであってもよいし、2層以上の多層構造のものであってもよい。
基層の厚みは特に限定されないが、例えば10~500μmの範囲である。
【0042】
加飾前駆層に含まれる成分は、上述の加飾層に含まれる成分と同一である。
加飾前駆層の厚みは、例えば0.1~20μmの範囲である。なお、第1の態様において、加飾層は加飾前駆層の破壊により得られるため、加飾層の厚みは、加飾前駆層の厚み以下となる。
【0043】
基層と加飾前駆層の積層方法としては公知の種々の方法が使用できるが、具体例としては、複数の押出機とフィードブロック、マルチマニホールド、多層ダイスを使用した多層ダイス方式と、複数の押出機とダイスを使用する押出しラミネーション方式等がある。又、多層ダイス方式と押出しラミネーション方式を組み合わせて使用することも可能である。
【0044】
延伸には、公知の種々の方法を使用することができる。延伸の温度は、基層に主に用いる熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上から結晶部の融点以下の熱可塑性樹脂に好適な公知の温度範囲内で行うことができる。
延伸倍率は特に限定されるものではないが、延伸軸数が一軸である場合、延伸倍率は通常は2~11倍であり、好ましくは3~10倍の範囲内で延伸する。延伸軸数が二軸である場合の面積倍率としては、通常は2~80倍であり、好ましくは3~60倍、より好ましくは4~50倍である。
【0045】
延伸後の積層樹脂フィルムには熱処理を行うのが好ましい。熱処理を行うことにより、延伸方向の熱収縮率が低減し、インモールド成形時の収縮による波打ち等が少なくなる。
【0046】
・インモールド成形
次に、加飾層形成用フィルムとベース層とをインモールド成形により積層する。この際、加飾前駆層とベース層とが接するように、加飾層形成用フィルムとベース層とを積層する。
成形は、溶融樹脂パリソンを圧空により金型内壁に圧着するダイレクトブロー成形やプリフォームを用いた延伸ブロー成形が好適であるが、射出装置で金型内に溶融樹脂を注入し冷却固化するインジェクション成形や差圧成形金型を用いた差圧成形等であってもよい。
【0047】
・加飾層形成用フィルムの剥離
得られた加飾層形成用フィルムとベース層との積層物から加飾層形成用フィルムを剥離する。剥離により加飾前駆層が破壊され、ベース層側に残存する加飾前駆層が加飾層となる。
【0048】
<第1Bの態様>
次に、白色度を抑えた加飾層とする場合の好適態様について説明する。
【0049】
(第2熱可塑性樹脂)
第2熱可塑性樹脂としては、第1熱可塑性樹脂で挙げたものと同様の樹脂を用いる事ができる。
【0050】
(第2熱可塑性樹脂に非相溶な樹脂)
第1Bの態様において、加飾層は、第2熱可塑性樹脂に非相溶な樹脂を含んでいることが好ましい。相互に非相溶の少なくとも2種の樹脂の存在により、延伸フィルム作製時に非相溶性の樹脂間で界面剥離が生じ剥離性を向上させることができる。非相溶な樹脂として、例えば、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びエステル系樹脂が挙げられる。中でも、スチレン系樹脂が好ましい。
【0051】
第2熱可塑性樹脂100質量部に対して第2熱可塑性樹脂に非相溶な樹脂は50~200質量部、好ましくは80~120質量部の配合割合でブレンドされる。
【0052】
(フィラー)
加飾層は、白色度を高め過ぎない程度に第2熱可塑性樹脂の他にフィラーを含んでいてもよい。フィラーとしては、上述の第1の態様Aにおいて記載したフィラーを用いることができる。
【0053】
加飾層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、ベース層の(その他の成分)で挙げた添加剤を含有することができる。
【0054】
(成形体の製造方法)
第1Bの態様の成形体も、上述の第1Aの態様と同様、加飾層形成用フィルムとベース層とをインモールド成形により積層した積層体において、加飾層形成用フィルムを剥離することにより得られる。
【0055】
・加飾層形成用フィルムの製造
加飾層形成用フィルムは、基層と加飾前駆層とを有する。
基層は、第1Aの態様で記載した基層と同様のものを用い得る。
【0056】
加飾前駆層に含まれる成分は、上述の加飾層に含まれる成分と同一である。
加飾前駆層の厚みは、例えば0.1~20μmの範囲である。
【0057】
第1Bの態様においては、加飾層形成用フィルムは、ベース層との接着性向上の観点から、加飾前駆層の基層とは反対側の面にヒートシール層を有することが好ましい。
【0058】
ヒートシール層の主成分は、ヒートシール性を付与できるのであれば特に限定されないが、基層及び加飾前駆層に含まれるオレフィン系樹脂よりも低融点であり、また、ヒートシールを容易にする観点からも、低融点樹脂を用いることが好ましい。低融点樹脂は、135℃以下の融点を有する熱可塑性樹脂である。
具体的な例としては、エチレン、プロピレンに代表されるオレフィン類の単独重合体、これらオレフィン類の2種以上による共重合体等が挙げられる。
【0059】
ヒートシール層は、加飾前駆層との層間密着性の観点、及び強度付与の観点からオレフィン系エラストマーを含有するのが好ましい。
ヒートシール層は、さらに、本発明の効果を阻害しない範囲内で、ベース層の(その他の成分)で挙げた添加剤を含有することができる。
【0060】
ヒートシール層の厚みは、1μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0061】
各層の積層方法やフィルムの延伸については、第1Aの態様の記載を援用し得る。
【0062】
インモールド成形及び加飾層形成用フィルムの剥離についても、第1Aの態様の記載を援用し得る。
なお、加飾層形成用フィルムにヒートシール層を有する場合には、インモールド成形の際、ヒートシール層とベース層とが接するように、加飾層形成用フィルムとベース層とを積層するものとする。
【0063】
<<第2の態様>>
好ましい第2の態様は、フィラーの添加により不透明度(Haze)を30%以上とした加飾層である。
【0064】
(第2熱可塑性樹脂)
第2の態様において、加飾層が有する第2熱可塑性樹脂としては、例えば、第1熱可塑性樹脂として挙げた熱可塑性樹脂が挙げられ、モノマテリアルの観点からは、ベース層に使用された樹脂と同じ樹脂を使用することが好ましい。
【0065】
(フィラー)
第2の態様において、加飾層は、第2熱可塑性樹脂の他にフィラーを含む。フィラーとしては、上述の第1の態様Aにおいて記載したフィラーを用いることができる。
【0066】
また、加飾層の白色度(W)の観点からは、フィラーとして、炭酸カルシウムが好ましい。
【0067】
第2の態様において、フィラーは、第2熱可塑性樹脂100質量部に対して10~50質量%含むことが好ましく、15~30質量%含むことがより好ましい。10質量%以上とすることによって、所望の不透明度及び白色度が得られやすい。また、50質量%以下とすることによって、成形安定性が得られる。
【0068】
第2の態様において、加飾層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、ベース層の(その他の成分)で挙げた添加剤を含有することができる。
【0069】
第2の態様の成形体の製造方法としては特に限定されないが、例えば、上述の第1の態様と同様に、加飾層形成用フィルムを作製し、該フィルムとベース層とをインモールド成形により積層させてもよい。第2の態様では加飾層形成用フィルムの剥離は要さず、加飾前駆層がそのまま加飾層となる。
また、例えば、射出成形等の公知の樹脂成形方法により成形したベース層の表面に、別途作製したフィラーの添加により不透明度を30%以上とした加飾層フィルムを、接着剤層を介して貼付してもよい。
【0070】
<<第3の態様>>
好ましい第3態様は、エンボス加工等の表面加工を施すことにより不透明度を30%以上とした加飾層である。
【0071】
(第2熱可塑性樹脂)
第3の態様において、加飾層に含まれる第2熱可塑性樹脂としては、例えば、第1熱可塑性樹脂として挙げた熱可塑性樹脂が挙げられ、モノマテリアルの観点からは、ベース層に使用された樹脂と同じ樹脂を使用することが好ましい。
【0072】
第3の態様において、加飾層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、ベース層の(その他の成分)で挙げた添加剤を含有することができる。
【0073】
第3の態様の成形体の製造方法としては特に限定されないが、例えば、射出成形等の公知の樹脂成形方法によってベース層を成形し、成形後のベース層の表面にエンボス加工を施した加飾層を、公知の方法によって貼付すればよい。
【0074】
本発明の実施形態に係る成形体において、加飾層の厚みは、特に限定されず、例えば、20μm以下とすればよいが、成形体のリサイクル適性向上の観点からは、5μm以下であることが好ましい。5μm以下とすることによって、成形体中の加飾層の質量割合を削減することができる。すなわち、成形体中の上記第1熱可塑性樹脂に対する上記第2熱可塑性樹脂の割合が減り、成形体を溶融して再利用する場合の不純物を削減することができる。より好ましくは、3μm以下である。
また、加飾の均一性と視認性の観点から、加飾層の厚みは0.1μm以上であることが好ましい。
【0075】
また、リサイクル適性の観点から、本発明の実施形態に係る成形体において、上記第1熱可塑性樹脂と第2熱可塑性樹脂は、同一の樹脂を含むことが好ましく、同一の樹脂が主成分であることがより好ましい。
具体的には、第1熱可塑性樹脂と第2熱可塑性樹脂がいずれもがオレフィン系樹脂を含むことが好ましく、いずれもがポリプロピレンを含むことがより好ましい。
【0076】
〔成形体の形状〕
本発明の実施形態に係る成形体の形状としては特に限定されず、上述のベース層と、ベース層の一部または全体に設けられた上述の加飾層とを有する成形体であれば、立体成形体であってもよく、平面状(シート状)の成形体であってもよい。
図1は、本発明の実施形態に係る成形体の一態様の断面模式図であり、ベース層の全体に加飾層が設けられた成形体である。
図2は、本発明の実施形態に係る成形体の別の一態様の断面模式図であり、ベース層の一部に加飾層が設けられた成形体である。なお、図2は、加飾層形成用フィルムとベース層とをインモールド成形により積層し、加飾層形成用フィルムを剥離することにより成形体を作製した場合の断面模式図である。
【0077】
なお、本明細書において、「ベース層の全体に加飾層が設けられている」とは、加飾層がベース層の1つの主面の全体に設けられていることを意味する。すなわち、図1に示すように、成形体1においてベース層11の片側の表面全体に加飾層12が設けられていればよく、もう一方の表面に設けられていなくてもよい。また、ベース層の側面、すなわち、ベース層の厚み方向においても加飾層が設けられていなくてもよい。
【0078】
本発明の成形体の好ましい一態様として、加飾層がベース層の一部に設けられ、ベース層と加飾層の不透明度の差(ΔHaze)が3%以上である成形体が挙げられる。また、上記ΔHazeは5%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましく、15%以上が特に好ましく、また80%以下であってもよい。
このような成形体は、成形体におけるコントラストが生じ、加飾層の視認性及び加飾性に優れる。
【0079】
本発明の成形体の好ましい一態様として、加飾層がベース層の一部に設けられ、ベース層と加飾層の白色度の差(ΔW)が3%以上である成形体が挙げられる。また、上記ΔWは4%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましく、また80%以下であってもよい。
このような成形体は、成形体におけるコントラストが生じ、加飾層の視認性及び加飾性に優れる。
【0080】
成形体が立体成形体である場合、成形体は容器であることが好ましい。成形体が容器の場合、加飾層はベース層、すなわち容器本体を形成する層の外表面の一部または全体に設けられていることが好ましい。
【0081】
本発明の成形体は、例えば、薬品用又は食品用のボトル、容器、スクイーズ容器等として利用可能である。また、下敷きやクリアファイル等の文具等としても利用可能である。
【実施例0082】
以下に、実施例および試験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、表1に各実施例、比較例で用いた原料をまとめて記載する。表2には各実施例、比較例の成形体(加飾層、ベース層)の作製に用いた熱可塑性樹脂およびフィラーの材料の種類(記号)と量(重量%)、さらに評価結果を記載した。表2に記載される材料の記号は、表1に記載される材料の記号に対応している。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
[実施例1]
<成形体の作製>
(加飾層形成用フィルムの作製)
表2に記載の配合物[A1]を250℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイスを介してシート状に押出成形し、冷却装置にて70℃まで冷却して単層の無延伸シートを得た。この無延伸シートを145℃に再加熱した後、多数のロール間の周速差を利用して縦方向に5倍に延伸し、縦一軸延伸フィルムを得た。次いで表2に記載の配合物[A2]および配合物[B]をそれぞれ個別に250℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイスを介してシート状に押出し、前記縦一軸延伸フィルムの一方の面に配合物[A2]を、もう一方の面に配合物[B]をそれぞれ積層し、[A2]/[A1]/[B]の3層構造を有する積層物を得た。次いで前記積層物を、オーブンを用いて158℃に再加熱した後、テンター延伸機を用いて横方向に9倍延伸し、1軸延伸/2軸延伸/1軸延伸された3層構造の積層樹脂フィルムを得てこれを加飾層形成用フィルムとした。[A2]、[A1]が基層に相当し、[B]が加飾前駆層に相当する。
【0086】
(成形体の作製)
[射出成形]
射出成形機((株)新潟鐵工所製、型式:NV50ST、型締力:50トン、縦型配置式)および樹脂成形品のサイズが横130mm、縦150mm、肉厚1mmの平板となる射出成形用割型を使用し、上記で得た加飾層形成用フィルムを横100mm、縦130mmのサイズに断裁したものを下部固定盤側に取り付けたれた雌型の金型表面に基層側が金型と接するようにフィルムを固定し、次いで割型を型締めし、200℃に設定した射出装置より溶融したポリスチレン(PSジャパン(株)製、商品名:HIPS 433、MFR:21g/10分(200℃、5kg荷重)、溶融開始温度:約95℃)を745kgf/cmの圧力でゲート部より金型内に注入し溶融樹脂を冷却固化させるとともにフィルムを接着させた後、型開きをしてフィルムが貼着した平板状のPS製射出成形品を得て、これをフィルム付き樹脂成形品1とした。
そして、得られたフィルム付き樹脂成形品1から加飾層形成用フィルムを剥離速度300mm/minでて剥離し、ベース層と加飾層の積層体である成形体1を得た。
【0087】
[比較例1]
<成形体の作製>
加飾層形成用フィルムを用いないことを除き、実施例1と同様の方法で射出成型により樹脂成形品を作製した。つづいて、当該樹脂成形品に対して、インク(ベストキュアーUV161(白)、T&K TOKA社製)を、印刷機(RI-3型印刷適性試験機、小久保精密製社製)を用いて、前述のインキを1.5g/mの厚さとなるようにベタ印刷した。印刷後、の紫外線照射機を用いて樹脂フィルムの印刷面に100mJ/cmの条件にて紫外線照射(ECS-401GX、アイグラフィックス社製)を行い、紫外線硬化型インキの乾燥を行って、ベース層とインク加飾層の積層体である成形体2を得た。
【0088】
[評価]
加飾層の不透明度(Haze)、加飾層とベース層との不透明度差(ΔHaze)、加飾層の白色度(W)、加飾層とベース層との白色度差(ΔW)、加飾層のボイド率、及び、加飾層の厚みについて下記の手法で測定を行った。また、得られた成形体の耐熱性について下記の手法で評価を行った。各評価結果は、上記表2に示した。
【0089】
<不透明度(Haze)>
(加飾層の不透明度(Haze))
加飾層の不透明度は、JIS-K-7136:2000に準拠し、ヘイズ計(日本電色工業社製、商品名:NDH2000)を用いて測定した。
実施例及び比較例において、得られた成形品において加飾層が設けられた部分から3cm×3cmの試験片をカッターで切り出したものを試験用サンプルとした。
【0090】
(不透明度差(ΔHaze))
実施例及び比較例において、得られた成形品において加飾層が設けられていない部分から3cm×3cmの試験片をカッターで切り出したものを試験用サンプルとし、上記と同様にしてベース層の不透明度を測定し、加飾層の不透明度とベース層の不透明度の差を算出した。
【0091】
<耐熱性>
実施例及び比較例で得られた成形品を250℃に設定した押出機で再び溶融混練してペレット化し、再溶融ペレットを得た。一方で、ベース層([A2]/[A1])の製造に用いる配合物をバージンペレットとした。再溶融ペレットとバージンペレットの両方で、色相及びMFRの測定を行い、その変化量から樹脂組成物の耐熱性を評価した。
(色差ΔE)
再溶融ペレットとバージンペレットを、それぞれ約5gを圧縮成型機(ミニテストプレスMP-WC、東洋精機製作所社製)を使用して230℃で油圧プレス成形して、直径約50mm、厚さ約2mmの、円盤状の評価用樹脂シートを得た。次いで、得られた評価用樹脂シートを、カラーメーター(タッチパネル式カラーコンピューターSM-T、スガ試験機社製)を用いて、加熱前後での明度L*値、及び色座標a*値、b*値をそれぞれ求めて、L*a*b*表示系における色差ΔE*abを算出して、これを色差ΔEとした。
(ΔMFR)
再溶融ペレットとバージンペレットのMFRをJIS-K7210:1999に従って測定した。次いで、加熱前後でのMFR値の差(加熱後のMFR値-加熱前のMFR値)を算出して、これをΔMFRとした。
(評価)
○(可) :ΔEが5以下 かつ ΔMFRが5g/10min以下
×(不可):ΔEが5超 又は ΔMFRが5g/10min超
【0092】
<白色度>
(加飾層の白色度(W))
加飾層の白色度は、JIS-L1015:2021に準拠して測定した。
実施例及び比較例において、得られた成形品において加飾層が設けられた部分から3cm×3cmの試験片をカッターで切り出したものを試験用サンプルとした。
【0093】
(白色度差(ΔW))
実施例及び比較例において、得られた成形品において加飾層が設けられていない部分から3cm×3cmの試験片をカッターで切り出したものを試験用サンプルとし、上記と同様にしてベース層の白色度を測定し、加飾層の白色度とベース層の白色度の差を算出した。
【0094】
<加飾層のボイド率>
加飾層の不透明度の試験用サンプルと同様の試験用サンプルをエポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いて試験用サンプルの厚さ方向に対して平行(すなわち面方向に垂直)な切断面を作製した。この切断面を蒸着してメタライジングした後、電子顕微鏡(日立製作所(株)製、走査型顕微鏡S-2400)を使用して3000倍に拡大して観察し、加飾層の空孔部分をトレーシングフィルムにトレースし塗りつぶした図を画像解析装置(ニレコ(株)製:型式ルーゼックスIID)で画像処理し、測定範囲を占める空孔の面積割合(%)を求めて加飾層のボイド率(%)とした。
【0095】
<加飾層の厚み>
加飾層の不透明度の試験用サンプルと同様の試験用サンプルを用い、ミクロトームを用いて試験用サンプルの厚さ方向に対して平行(すなわち面方向に垂直)な切断面を作製した。この切断面を、電子顕微鏡(日立製作所(株)製、走査型顕微鏡S-2400)を使用して3000倍に拡大して観察し、ベース層に積層されているものを加飾層の厚みとした。
【0096】
表2の結果から明らかなように、実施例1では、インクを使用しなくても不透明な加飾層が得られ、耐熱性に優れる成形体が得られた。なお、実施例1の成形体の加飾層は、加飾層形成用フィルムを剥離して得ることにより、和紙のような独特の風合いをも併せ持つものであった。
一方、比較例1では、加飾層にインク成分を含むため、耐熱性に劣るものであった。
【符号の説明】
【0097】
1、2 成形体
3 加飾層形成用フィルム
11 ベース層
12 加飾層
12’ 加飾前駆層
13 基層
図1
図2
図3