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  • 特開-衝撃吸収床材 図1
  • 特開-衝撃吸収床材 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141815
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】衝撃吸収床材
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/16 20060101AFI20241003BHJP
   E04F 15/22 20060101ALI20241003BHJP
   E04F 15/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E04F15/16 A
E04F15/22
E04F15/04 601A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053659
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】大久保 透
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA27
2E220AA44
2E220BA04
2E220EA03
2E220GA02X
2E220GA06X
2E220GA07X
2E220GA22X
2E220GA27X
2E220GB32X
2E220GB33X
2E220GB34X
2E220GB37X
2E220GB43X
2E220GB46X
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軟質層による吸収効果をもちながらも、耐荷重性に優れた衝撃吸収床材を提供する。
【解決手段】衝撃吸収床材は、床上材と、床上材の下方に設けられ、軟質材料で形成された床下地材と、床上材と床下地材との間に設けられた中間材と、を備え、床下地材は、アスカーC硬度が20以上60以下、かつ厚みが4mm以上15mm以下であり、中間材は、厚みが2mm以上8mm以下、JIS K7074による3点曲げ試験において曲げ強度が最大になる歪み(ε(σmax))が0.5%以上、かつ曲げ弾性率が1GPa以上15GPa以下となっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床上材と、
前記床上材の下方に設けられ、軟質材料で形成された床下地材と、
前記床上材と前記床下地材との間に設けられた中間材と、
を備え、
前記床下地材は、アスカーC硬度が20以上60以下、かつ厚みが4mm以上15mm以下であり、
前記中間材は、厚みが2mm以上8mm以下、JIS K7074による3点曲げ試験において曲げ強度が最大になる歪み(ε(σmax))が0.5%以上、かつ曲げ弾性率が1GPa以上15GPa以下である
衝撃吸収床材。
【請求項2】
前記中間材の前記歪み(ε(σmax))が2.6%以上である
請求項1に記載の衝撃吸収床材。
【請求項3】
前記中間材が木質基材で構成されている
請求項1又は2に記載の衝撃吸収床材。
【請求項4】
前記木質基材が木質繊維板で構成されている
請求項3に記載の衝撃吸収床材。
【請求項5】
前記木質基材の密度が0.9g/cc以上である
請求項3に記載の衝撃吸収床材。
【請求項6】
前記中間材の前記曲げ弾性率が3.4GPa以上8.2GPa以下である
請求項1又は2に記載の衝撃吸収床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、衝撃吸収床材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者の転倒骨折が社会問題化しており、高齢者が要介護となる要因の10%を転倒骨折が占めている。転倒による骨折箇所は年代によって大きく異なり、60歳代以降になると大腿骨骨折のリスクが急増している。大腿骨骨折は入院治療が必要となり、歩行できない状態が長期間続くため、寝たきり状態や認知症などの要介護状態の原因となる事例が多い。このため、転倒したときの衝撃を吸収することにより、骨折のリスクを低減させる床材が提案されている(例えば、特許文献1及び2)。このような床材では、床材自体を発泡させたり、床材の裏面側に下地となる衝撃吸収用の発泡樹脂製シートを積層させたりする等、床材に軟質層を設けることで衝撃を吸収する機能を持たせている場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3600726号公報
【特許文献2】特許第5244927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような床材は、電動式の介護用ベッドや配膳車などのキャスター付きの重量物を移動させたりした際に、軟質層がつぶれてへこみが発生してしまうという問題点があった。
本開示は、このような問題に鑑みてなされたもので、軟質層による吸収効果をもちながらも、耐荷重性に優れた衝撃吸収床材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するために、本開示の一態様に係る床材は、床上材と、床上材の下方に設けられ、軟質材料で形成された床下地材と、床上材と床下地材との間に設けられた中間材と、を備え、床下地材は、アスカーC硬度が20以上60以下、かつ厚みが4mm以上15mm以下であり、中間材は、厚みが2mm以上8mm以下、JIS K7074による3点曲げ試験において曲げ強度が最大になる歪み(ε(σmax))が0.5%以上、かつ曲げ弾性率が1GPa以上15GPa以下となっている。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、軟質層による吸収効果をもちながらも、耐荷重性に優れた衝撃吸収床材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示に係る床材の構成例を示す断面図である。
図2】衝撃吸収床材の評価に用いられる衝撃荷重測定装置を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものである。また、本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において種々の変更を加えることが可能である。
【0009】
<床材の基本構成>
以下、図1を参照して、本開示に係る衝撃吸収床材(以下、床材と称する)1について説明する。
床材1は、床上材11と、床上材11の下方(床材1の貼り付け面)に設けられた床下地材12と、床上材11及び床下地材12との間に設けられた中間材13とを備えている。
【0010】
床上材11は、床材1の耐傷性、耐汚染性を向上させ、床材1に意匠性を付与するなどの表面機能を有する。
床下地材12は、使用者の転倒時の圧力を吸収して床材1の緩衝性を高める機能を有する。
中間材13は、支持層として床上材11から床下地材12にかかる荷重を分散し、衝撃吸収性と耐荷重性とを向上させる役割を有している。
【0011】
床材1の総厚は、7mm超25mm以下であることが好ましい。
床材1の総厚が7mm超であると、衝撃吸収、歩行感、耐久性のバランスをとりやすくなる。また、床材1の総厚が25mm以下である場合、床材1としての厚みが大きくなりすぎないため、床材1の非施工部との段差が大きくなりすぎず施工時に床材1の収まりが良好となる。
以下、床上材11、床下地材12及び中間材13について詳細に説明する。
【0012】
<床上材>
床上材11は、床材1の表面を構成する層であり、床下地材12と比較して硬質の材料で形成されている。
床上材11の厚さは5mm以下であることが好ましい。床上材11の厚さが5mm以下であることにより、床材1の重量が重くなりすぎず、施工時の負担を低減することができる。
【0013】
床上材11は、長尺塩化ビニルシートや塩化ビニルタイル等の一般的な材料を用いることができる。床上材11と中間材13との積層方法は、粘着テープ、接着剤を用いた接着などが挙げられる。床上材11は、中間材13の製造工程に連続する工程で中間材13に対して熱ラミネートで積層されてもよい。
【0014】
<床下地材>
床下地材12は、床上材11の下方(床上材11の表面と反対側)に設けられている。床下地材12は、床上材11よりも軟質の材料で形成され、転倒時に適度に変形することにより床材1への衝撃を吸収する機能を有している。床下地材12は、化学発泡もしくは物理発泡、又は超臨界発泡等の方法により独立発泡や連続発泡等の発泡構造を有していてもよい。
【0015】
床下地材12は、例えばポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)等の樹脂等の軟質の熱可塑性樹脂で形成されていることが好ましい。
【0016】
また、床下地材12のアスカーC硬度は、20以上60以下となっている。
ここで、「アスカーC」とは、硬さを測定するための測定器であり、SRIS0101(日本ゴム協会標準規格)に規定されたデュロメータ(スプリング式硬度計)の一つである。すなわち、「アスカーC硬度」とは、上述したアスカーC硬度計で測定した値をいう。
【0017】
床下地材12のアスカーC硬度が20未満の場合、床下地材12が変形しやすく歩行感覚に違和感が生じたり、歩行者がバランスを失い転倒する等安全性が低下したりすることがある。アスカーC硬度が60を超える場合、床材衝撃が加わった際に十分な衝撃吸収効果が得られないことがある。
【0018】
床下地材12の厚さは、4mm以上15mm以下となっている。厚さが4mm未満の場合、転倒時に十分な緩衝効果が得られない。厚さが15mmを超える場合、荷重による床材1の変形が大きくなり耐荷重性が低下するだけでなく、歩行時の沈み込みが大きくなり転倒リスクが増大する。
【0019】
<中間材>
中間材13は、床上材11と床下地材12との間に設けられ、支持層として床上材11から床下地材12にかかる荷重を分散することで、床材1の衝撃吸収性と耐荷重性を向上させる機能を有している。
【0020】
中間材13は、例えば合板、パーティクルボード、繊維板などの木質基材や、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂材料を含む樹脂基材で構成される。中間材13は、軽量性と機械特性の点で木質基材であることが好ましく、特に木質繊維板であることが好ましい。中間材13が樹脂材料で形成される場合、中間材13は無機フィラーを含んでいてもよい。また、中間材13は、軽量化の為に化学発泡もしくは物理発泡、又は超臨界発泡等の方法により独立発泡や連続発泡等の発泡構造を有していてもよい。
【0021】
中間材13が木質基材である場合、密度が0.9g/cc以上であることが好ましい。木質基材の密度が0.9g/cc以上の場合、床材1の緩衝効果が向上する。密度が0.9g/cc以上の木質基材としては、例えばハードボードが挙げられる。
【0022】
中間材13の厚みは、2mm以上8mm以下である。
中間材13の厚さが2mm未満の場合、転倒時の中間材の撓みが過大となり十分な緩衝効果が得られず、実用時に衝撃が加わった際に破損する可能性が大きくなる。また、中間材13の厚さが8mmを超える場合、質量が大きくなることによる施工時作業性の悪化や、床材に衝撃が加わった際の荷重分散が効果的に生じず、床材全体の緩衝効果が不十分となることがある。
【0023】
中間材13は、JIS K7074による3点曲げ試験において曲げ強度が最大になる歪み(ε(σmax))が0.5%以上であり、かつ中間材13の曲げ弾性率が1GPa以上15GPa以下である。また、中間材13の歪み(ε(σmax))は1.5%以上であることが好ましく、2.6%以上であることがより好ましい。さらに、中間材13の曲げ弾性率は、3.4GPa以上8.2GPa以下であることが好ましい。
【0024】
中間材13のε(σmax)が0.5%に満たない、または曲げ弾性率が1GPaに満たない場合、床材1に大きな荷重がかかった際に中間材13にヒビや割れなどの破損が生じやすく、破損が生じた箇所の衝撃吸収性が低下することがある。また、床材1の外観に凹凸などの外観異常が生じることがある。
また、中間材13の曲げ弾性率が15GPaを超える場合、床材1に大きな荷重がかかった際に床材1に衝撃が加わった際の荷重分散が効果的に生じず、床材1の緩衝効果が不十分となることがある。
【0025】
<床材の衝撃吸収性の評価方法>
床材1の衝撃吸収性の評価方法を、図2を参照して説明する。床材の衝撃吸収性は、床材上で転倒時に大腿骨に加わる衝撃荷重を模擬的に測定した「衝撃荷重F」により評価する。衝撃荷重Fは、特開2020-76764号公報に記載の方法で測定される。
【0026】
衝撃荷重は、図2に示す衝撃荷重測定装置100を用いて測定される。衝撃荷重測定装置100は、測定台110、衝撃付与体120、緩衝材130、荷重計測手段140を備える。
衝撃付与体120は、錘121と、打撃部122とを有する。錘121は模擬する転倒により大腿骨の転子部に加わる圧力分布に基づいた質量を有している。打撃部122は、大腿骨の転子部に模擬した形状で形成されている。
緩衝材130は、人体軟組織に模擬した材料で形成されている。
【0027】
荷重計測手段140では、測定台110と緩衝材130とを重ねた状態で、模擬する転倒の高さに応じた所定の高さから衝撃付与体120を緩衝材130の上に落下させた際に緩衝材130に与える力の経時変化を測定する。このとき、衝撃付与体120が緩衝材130に接触してから停止するまでの間に衝撃付与体120が緩衝材130に与える力の経時変化を荷重計測手段140で測定し、測定された荷重の最大値を衝撃荷重Fとする。
このとき、衝撃付与体120の落下高さは、実際の転倒時の大腿骨への衝撃を模すよう、緩衝材130のみに衝撃を付与した場合の衝撃荷重(基準衝撃荷重Fs)が5600Nとなるように設定される。
【0028】
床材1における衝撃荷重Fは、上述した条件において、5000N以下であることが好ましく、3440N以下であることがより好ましい。衝撃荷重が5000Nを超える場合、高齢者の大腿骨骨折の危険性が顕著になる。
【0029】
<本開示に係る床材の効果>
以上説明した本開示に係る床材では、以下の効果を有する。
(1)本開示に係る床材は、床上材と、前記床上材の下方に設けられ、軟質材料で形成された床下地材と、前記床上材と前記床下地材との間に設けられた中間材と、を備え、前記床下地材は、アスカーC硬度が20以上60以下、かつ厚みが4mm以上15mm以下であり、前記中間材は、厚みが2mm以上8mm以下、JIS K7074による3点曲げ試験において曲げ強度が最大になる歪み(ε(σmax))が0.5%以上、かつ曲げ弾性率が1GPa以上15GPa以下となっている。
これにより、床材は、軟質層による吸収効果をもちながらも、耐荷重性に優れる。
【0030】
(2)本開示に係る床材では、中間材の前記歪み(ε(σmax))が2.6%以上であってもよい。
これにより、床材の耐荷重性がより向上する。
【0031】
(3)本開示に係る床材では、中間材が木質基材で構成されていてもよく、特に木質繊維板で構成されていてもよい。
これにより、床材の軽量性と機械特性が向上し、施工時の作業性が向上する。
【0032】
(4)本開示に係る床材では、木質基材の密度が0.9g/cc以上であってもよい。
これにより、床材の緩衝効果が向上する。
【0033】
(5)本開示に係る床材では、中間材の曲げ弾性率が3.4GPa以上8.2GPa以下であってもよい。
これにより、床材の耐荷重性がより向上する。
【実施例0034】
以下、本開示に係る床材を実施例により説明する。なお、本開示に係る床材は、これら実施例に限定されない。
【0035】
<実施例1>
床下地材としてポリエチレン発泡体(アスカーC硬度40、寸法600mm×600mm×厚さ8mm)、中間材として硬質塩化ビニル樹脂板(ε(σmax)0.9%、曲げ弾性率8.2GPa、密度2.1g/cc、寸法600mm×600mm×厚さ4mm)、床上材として長尺塩化ビニル樹脂シート(寸法600mm×600mm×厚さ2mm)を準備した。これら床下地材、中間材及び床上材を、接着剤を用いてこの順に接着し積層することで、実施例1の衝撃吸収床材を形成した。ここで、ε(σmax)はJIS K7074による3点曲げ試験において曲げ強度が最大になる歪み(単位:%)である。
【0036】
<実施例2>
中間材として、硬質塩化ビニル樹脂板に代えて木質繊維板(ε(σmax)2.6%、曲げ弾性率3.4GPa、密度1.1g/cc、寸法600mm×600mm×厚さ3.5mm)を用いた以外は実施例1と同様にして実施例2の衝撃吸収床材を形成した。
【0037】
<実施例3>
中間材として、硬質塩化ビニル樹脂板に代えてポリプロピレン板(ε(σmax)6.9%、曲げ弾性率1.2GPa、密度0.8g/cc、寸法600mm×600mm×厚さ4.5mm)を用いた以外は実施例1と同様にして実施例3の衝撃吸収床材を形成した。
【0038】
<比較例1>
中間材として硬質塩化ビニル樹脂板(ε(σmax)0.4%、曲げ弾性率9.8GPa、密度2.4g/cc、寸法600mm×600mm×厚さ4mm)、用いた以外は実施例1と同様にして比較例1の衝撃吸収床材を形成した。
【0039】
<比較例2>
中間材として発泡ポリプロピレン板(ε(σmax)7.8%、曲げ弾性率0.5GPa、密度0.5g/cc、寸法600mm×600mm×厚さ5mm)、用いた以外は実施例1と同様にして比較例2の衝撃吸収床材を形成した。
【0040】
<比較例3>
中間材を使用しなかった以外は実施例1と同様にして比較例3の衝撃吸収床材を形成した。
【0041】
[評価]
(耐荷重性)
実施例および比較例の衝撃吸収床材を300mm×600mmの長方形にカットし、カットした衝撃吸収床材を2点準備し、これら衝撃吸収床材をケイカル板(600mm×600mm、厚み12mm)上に敷き詰めて接着し試験体とした。耐荷重性は、各試験体のキャスター試験後の床材および中間材の外観により評価した。キャスター試験条件は以下の通りとした。キャスター試験条件は以下の通りとした。
・キャスター試験条件:スチール車輪(直径100mm、巾30mm)、荷重50kg、100kg及び200kgの3水準、2点の床材の境界部に垂直な方向に500往復(50kgは電動ベッド、100kgは配膳車、200kgは電動式配膳車の一輪あたりの荷重を想定)
・評価基準
荷重200kg、100kg及び50kgでのキャスター試験それぞれにおいて、
床材および中間材の外観変化が軽微~皆無:○(合格)
床材または中間材に中程度の外観変化が認められる:△(合格)
床材または中間材に顕著な外観変化が認められる:×(不合格)
【0042】
(衝撃吸収性)
各実施例および比較例の衝撃吸収床材を100mm角の正方形にカットして試験体とし、特開2020-076764号公報に記載の方法で衝撃荷重F(単位:N)を測定した。なお、衝撃荷重の測定装置は、以下の仕様とした。
・測定条件
ロードセル:株式会社東京測器研究所製「TCLU-5A」
加速度計:昭和測器株式会社製 デジタル衝撃・振動加速度計「1340B」
測定台:定盤サイズ 750mm×1000mm×125mm、重量 185kg
錘本体部:材質 ステンレス
錘打撃部:材質 ステンレス、削り出し曲率半径R 100mm
衝撃付与体:重量Sw 5.85kg(加速度計含む)
緩衝材:株式会社エクシール製「人肌のゲル」(商品名)、厚さ 20mm、アスカーC硬度 7、ヤング率 0.22MPa
・評価基準
3500N未満(高齢者骨折リスク小):○(合格)
3500N以上5000N未満(高齢者骨折リスク中):△(不合格)
5000N以上(高齢者骨折リスク大):×(不合格)
【0043】
以下の表1に、各実施例及び比較例の評価結果を示した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、床上材、床下地材及び中間材を備え、床下地材のアスカーC硬度が20以上60以下、かつ厚みが4mm以上15mm以下であり、中間材の厚みが2mm以上8mm以下、JIS K7074による3点曲げ試験において曲げ強度が最大になる歪み(ε(σmax))が0.5%以上、かつ曲げ弾性率が1GPa以上15GPa以下である衝撃吸収床材では、100kg以下の耐荷重性が良好であり、200kgの荷重下でも床材または中間材に顕著な外観変化が認められなかった。このため、電動ベッドや配膳車のような100kg以下の荷重がかかるキャスター付きの重量物に対しても軟質層がつぶれてへこみが発生してしまうことはなく、また、電動式配膳車のような100kg以下の荷重がかかるキャスター付きの重量物に対しても軟質層がつぶれてへこみはほぼ発生しなかった。
【0046】
また、中間材の歪み(ε(σmax))が2.6%以上であり、かつ曲げ弾性率が3.4GPa以上8.2GPa以下である実施例2,3の衝撃吸収床材は、耐荷重性が200kgf以下でも良好であり、より好ましいことがわかった。
【0047】
一方、中間材を設けない比較例3と、中間材の歪み(ε(σmax))が0.5%以上であるものの、曲げ弾性率が1GPa未満である比較例2の衝撃吸収床材とを比較すると、耐荷重性がやや良好となることがわかった。また、中間材を設けない比較例3と、中間材の曲げ弾性率が1GPa以上15GPa以下の範囲であるものの、歪み(ε(σmax))が0.5%未満である比較例1の衝撃吸収床材とを比較すると、衝撃吸収性が向上するものの、耐荷重性は顕著に低下した。比較例1と比較例2,3との比較から、単に中間材を設けるのみでなく、所定の厚み、歪み(ε(σmax))及び曲げ弾性率を有する中間材を用いる必要が有ることがわかった。
【0048】
以上、本開示の実施形態を説明したが、上記実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものでない。本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 床材
11 床上材
12 床下地材
13 中間材
100 衝撃荷重測定装置
110 測定台
120 衝撃付与体
121 錘
122 打撃部
130 緩衝材
140 荷重計測手段
図1
図2