(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141816
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】シートの施工方法、壁面装飾物
(51)【国際特許分類】
E04F 13/07 20060101AFI20241003BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E04F13/07 E
E04F13/07 C
E04F13/08 101K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053660
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】出店 純香
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA41
2E110AA47
2E110AB04
2E110CA03
2E110DA12
2E110DC23
2E110EA09
2E110GA15
2E110GA32W
2E110GA42
2E110GB01Y
2E110GB16Y
2E110GB23Y
2E110GB46
2E110GB62Y
(57)【要約】
【課題】シートの剥離強度を向上させることが可能な、シートの施工方法と壁面装飾物を提供する。
【解決手段】粘接着層10が形成されたシート4を壁面2に施工した壁面装飾物1と、壁面2にシート4を貼り付けるシートの施工方法であって、シートの施工方法は、一方の面4aに両面テープ6を貼り付けることで、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6によって一方の面4aに方形の枠を形成する両面テープ貼り付け工程と、少なくとも一方の面4aの枠の内側を形成する領域に接着剤8を塗工して、シート4に接着剤8を含む粘接着層10を形成する際に、壁面2にシート4を貼り付けた状態で、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6の少なくとも一部と、塗工した接着剤8が重なることで粘接着層10が形成されるように、一方の面4aに接着剤8を塗工する粘接着層形成工程を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面にシートを貼り付けることで、前記壁面に前記シートを施工するシートの施工方法であって、
前記シートの一方の面に両面テープを貼り付けることで、前記シートの厚さ方向から見て、前記両面テープによって前記一方の面に方形の枠を形成する工程である両面テープ貼り付け工程と、
前記一方の面及び前記両面テープのうち少なくとも前記一方の面の前記枠の内側を形成する領域に接着剤を塗工して、前記シートに前記接着剤を含む粘接着層を形成する工程である粘接着層形成工程と、を備え、
前記粘接着層形成工程では、前記壁面に前記シートを貼り付けた状態で、前記シートの厚さ方向から見て、前記両面テープの少なくとも一部と、前記塗工した前記接着剤とが重なることで前記粘接着層が形成されるように、前記接着剤を塗工するシートの施工方法。
【請求項2】
前記粘接着層形成工程では、前記壁面に前記シートを貼り付ける前の状態で、前記シートの厚さ方向から見て、前記接着剤が、前記両面テープの少なくとも一部と、前記枠の内側を形成する領域の少なくとも一部と重なるように、前記接着剤を塗工する請求項1に記載したシートの施工方法。
【請求項3】
前記両面テープ貼り付け工程では、前記シートの厚さ方向から見て、前記両面テープと前記シートの端部との間隔が3mm以内となるように、前記一方の面に両面テープを貼り付ける請求項1に記載したシートの施工方法。
【請求項4】
前記両面テープ貼り付け工程では、幅が15mm以下の前記両面テープを前記一方の面に貼り付ける請求項1に記載したシートの施工方法。
【請求項5】
前記両面テープ貼り付け工程では、厚さが0.1mm以上1.0mm以下の範囲内である前記両面テープを前記一方の面に貼り付ける請求項1に記載したシートの施工方法。
【請求項6】
前記粘接着層形成工程では、前記接着剤として、変性シリコーン系の接着剤を用いる請求項1に記載したシートの施工方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載したシートの施工方法によって前記粘接着層が形成された前記シートを、前記壁面に施工して形成された壁面装飾物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの施工方法と、壁面装飾物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物等の壁面を装飾するためには、例えば、壁紙、タックシート、タイル、化粧板等の内装材を用いる。
壁紙を用いて壁面を装飾する方法としては、例えば、施工の現場にて、壁紙の裏面に糊付け機を用いてでんぷんのりを塗工した後に、壁紙のでんぷんのりを塗工した面を壁面に貼り付ける方法を用いる。
【0003】
タックシートを用いて壁面を装飾する方法としては、例えば、予め、工場で、タックシートの裏面に粘着剤を塗工しておき、さらに、粘着剤に離型紙を積層した状態で出荷し、施工の現場では、離型紙を剥離しながら壁面に貼り付ける方法を用いる。
タイルを用いて壁面を装飾する方法としては、例えば、弾性を有する接着剤を、壁面に、くし目コテを用いてくし目を立てながら塗工した後にタイルを貼り合わせ、養生・硬化させる。その後、必要に応じて、目地の部分に目地を埋めるためのコーキング等を施す方法を用いる。
【0004】
化粧ボードを用いて壁面を装飾する方法としては、例えば、化粧ボードの裏面に、接着剤と両面テープを併用して粘着層を形成し、粘着層を用いて貼り付ける方法を用いる。
また、壁面を装飾する方法としては、上述した内装材を用いて壁面を装飾する方法の他に、例えば、特許文献1に開示されているように、モルタルを含む接着層を用いて内装材を接着する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている技術を含め、従来から用いられている、壁面を装飾する方法では、例えば、シートの端部に塗工された接着剤の量が少ない場合等に、壁面に対するシートの剥離強度が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した問題点を鑑み、シートの剥離強度を向上させることが可能な、シートの施工方法と壁面装飾物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、壁面にシートを貼り付けることで、壁面にシートを施工するシートの施工方法であって、両面テープ貼り付け工程と、粘接着層形成工程を備える。両面テープ貼り付け工程は、シートの一方の面に両面テープを貼り付けることで、シートの厚さ方向から見て、両面テープによって一方の面に方形の枠を形成する工程である。粘接着層形成工程は、一方の面及び両面テープのうち少なくとも一方の面のうち枠の内側を形成する領域に接着剤を塗工して、シートに接着剤を含む粘接着層を形成する工程である。そして、粘接着層形成工程では、壁面にシートを貼り付けた状態で、シートの厚さ方向から見て、両面テープの少なくとも一部と、塗工した接着剤とが重なることで粘接着層が形成されるように、接着剤を塗工する。
【0009】
また、上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、シートの施工方法によって粘接着層が形成されたシートを、壁面に施工して形成された壁面装飾物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、シートの剥離強度を向上させることが可能な、シートの施工方法と壁面装飾物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一実施形態における壁面装飾物の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0013】
(第一実施形態)
以下、
図1を参照して、第一実施形態における壁面装飾物1の構成について説明する。
【0014】
<壁面装飾物>
壁面装飾物1は、
図1に示すように、壁面2に、シート4を施工して形成されている。
【0015】
壁面2は、壁材の表面である。壁材は、例えば、金属、コンクリート、木材、石膏ボード等を用いて形成されている。
【0016】
シート4は、可撓性を有している。
シート4には、後述するシートの施工方法によって、粘接着層10が形成されている。
【0017】
シート4としては、例えば、タイル、壁紙、骨材と樹脂を主成分としたものを不織布の上に塗布したシートや、オレフィン系・塩ビ系の樹脂を用いて形成したシートを用いることが可能である。
シート4の厚さは、例えば、易施工性や不燃性等を考慮して、1.0[mm]以上15[mm]以下の範囲内とする。
【0018】
粘接着層10は、シート4の一方の面4a(
図1では、下側の面)に貼り付けた両面テープ6の少なくとも一部と、一方の面4aに塗工した接着剤8とが、シート4の厚さ方向から見て重なることで形成されている。
【0019】
<シートの施工方法>
シートの施工方法は、壁面2にシート4を貼り付けることで、壁面2にシート4を施工する方法であり、両面テープ貼り付け工程と、粘接着層形成工程を備える。
【0020】
(両面テープ貼り付け工程)
両面テープ貼り付け工程は、
図2に示すように、シート4の一方の面4aに両面テープ6を貼り付けることで、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6によって一方の面4aに方形の枠を形成する工程である。すなわち、両面テープ貼り付け工程は、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6によって形成された、連続する四本の直線によって形成されている方形の枠を、一方の面4に形成する工程である。
具体的に、両面テープ貼り付け工程では、両面テープ6に貼り付けられている二枚の剥離紙(図示略)のうち一方を剥がした後、両面テープ6のうち剥離紙を剥がした面を、シート4の一方の面4aに貼り付ける。
【0021】
また、両面テープ貼り付け工程では、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6とシート4の端部4bとの間隔Intが3[mm]以内となるように、一方の面4aに両面テープ6を貼り付ける。
さらに、両面テープ貼り付け工程では、幅Wが15[mm]以下の両面テープ6を、一方の面4aに貼り付ける。
【0022】
これに加え、両面テープ貼り付け工程では、厚さが0.1[mm]以上1.0[mm]以下の範囲内である両面テープ6を一方の面4aに貼り付ける。
両面テープ6の厚さを0.1[mm]以上1.0[mm]以下の範囲内とした理由は、両面テープ6の厚さがシート4の厚さの0.5倍以上であると、可撓性を有するシート4の場合、斜光観察や触感確認等により、不陸が判明して好適では無いためである。
なお、両面テープ6としては、例えば、3M社製の「9660」や「Y-4800-12」、日東電工株式会社製の「No.5015」を用いることが可能である。
【0023】
以上により、シートの施工方法を適用したシート4は、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6とシート4の端部4bとの間隔Intが3[mm]以内となるように、一方の面4aに両面テープ6を貼り付けたシート4である。
【0024】
(粘接着層形成工程)
粘接着層形成工程は、
図3に示すように、一方の面4a及び両面テープ6のうち少なくとも一方の面4aのうち枠の内側を形成する領域に接着剤8を塗工して、シート4に接着剤8を含む粘接着層10を形成する工程である。
接着剤8を塗工する際には、例えば、接着剤8が充填された円筒状のカートリッジを取り付けたコーキングガンを用いる。
【0025】
また、接着剤8を塗工する前に、両面テープ6のうち、両面テープ貼り付け工程において剥離紙を剥がした面と反対の面から、剥離紙を剥がす。
第一実施形態では、接着剤8の塗工量を、0.05[kg/m2]以上1[kg/m2]以下の範囲内とした場合について説明する。さらに、第一実施形態では、一例として、接着剤8の塗工量を、0.17[kg/m2]とした場合について説明する。
接着剤8の塗工量を、0.05[kg/m2]以上1[kg/m2]以下の範囲内とした理由は、接着剤8の塗工量が0.05[kg/m2]未満であると、接着力の低下が発生して好適では無いためである。また、接着剤8の塗工量が1[kg/m2]を超えていると、接着剤8が有する弾性により、シート4の他方の面(表面)の意匠や触感が低下するという問題や、接着剤8の量が過多となってシート4の壁面2への施工時に、壁面2とシート4との間から接着剤8がはみ出す等の問題が発生するためである。
【0026】
また、粘接着層形成工程では、
図4に示すように、壁面2にシート4を貼り付けた状態で、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6の少なくとも一部と、塗工した接着剤8とが重なることで粘接着層10が形成されるように、接着剤8を塗工する。
また、粘接着層形成工程では、
図3に示すように、壁面2にシート4を貼り付ける前の状態で、シート4の厚さ方向から見て、接着剤8が、両面テープ6の少なくとも一部と、枠の内側を形成する領域の少なくとも一部と重なるように、接着剤8を塗工する。
【0027】
さらに、粘接着層形成工程では、接着剤8として、変性シリコーン系の接着剤を用いる。変性シリコーン系の接着剤としては、例えば、アイカ工業株式会社製の「アイカエコエコボンド SE-1」を用いることが可能である。
なお、接着剤8は、変性シリコーン系の接着剤に限定するものではなく、例えば、ウレタン変性EVA系の接着剤を用いてもよい。ウレタン変性EVA系の接着剤としては、例えば、ジャパンコーティングレジン株式会社製の「BA-10L」を用いることが可能である。
【0028】
以上により、シートの施工方法を適用したシート4は、壁面2にシート4を貼り付けた状態で、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6の少なくとも一部と、塗工した接着剤8とが重なることで形成された粘接着層10を備えるシート4である。
また、シートの施工方法を適用したシート4は、壁面2にシート4を貼り付ける前の状態で、シート4の厚さ方向から見て、接着剤8が、両面テープ6の少なくとも一部と、枠の内側を形成する領域の少なくとも一部と重なるように、接着剤8を塗工したシート4である。
【0029】
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この第一実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0030】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態のシートの施工方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)シート4の一方の面4aに両面テープ6を貼り付けることで、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6によって一方の面4aに方形の枠を形成する工程である両面テープ貼り付け工程を備える。さらに、一方の面4a及び両面テープ6のうち少なくとも一方の面4aの枠の内側を形成する領域に接着剤8を塗工して、シート4に接着剤8を含む粘接着層10を形成する工程である粘接着層形成工程を備える。そして、粘接着層形成工程では、壁面2にシート4を貼り付けた状態で、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6の少なくとも一部と、塗工した接着剤8とが重なることで粘接着層10が形成されるように、接着剤8を塗工する。
【0031】
このため、接着剤8が、両面テープ6が有する粘着面から連続的に塗工されることとなり、シート4が壁面2から剥離する応力が発生した場合であっても、完全なT型の剥離に移行する前に応力が粘接着層10に作用する。これにより、T型の剥離に近い状態が発生した場合であっても、高い剥離強度を維持することが可能となる。
その結果、シート4の剥離強度を向上させることが可能な、シートの施工方法を提供することが可能となる。
【0032】
すなわち、例えば、可撓性を有するシートの厚さが1[mm]以上3[mm]以下程度である場合、シートの剥離が発生した当初は、平面的な引っ張り力が発生している状態となるため、高い剥離強度が発現する。しかしながら、シートの剥離が進行するにつれて、T型の剥離に移行するため、剥離強度が低下していく。
これに対し、第一実施形態のシートの施工方法であれば、上述したように、T型の剥離に近い状態が発生した場合であっても、高い剥離強度を維持することが可能となる。
【0033】
また、両面テープ6を用いて粘接着層10を形成しているため、シート4を壁面2へ施工した直後に、シート4の自重によって壁面2に対して発生する、位置のずれを抑制することが可能となる。
さらに、シート4へ接着剤8を塗工した後に、接着剤8をコテで均す作業を省略することが可能となる。これは、壁面2へシート4を施工する際に、シート4へ塗工した接着剤8が押されて広がったと状態となっても、両面テープ6が接着剤8に対する堰として作用し、接着剤8がシート4の外へ移動することが抑制されるためである。
【0034】
また、第一実施形態のシートの施工方法であれば、従来のように、左官職人によるコテを使用した接着剤の塗工が不要となるため、特殊な技能が不要となり、簡便さを向上させることが可能となる。
【0035】
(2)粘接着層形成工程では、壁面2にシート4を貼り付ける前の状態で、シート4の厚さ方向から見て、接着剤8が、両面テープ6の少なくとも一部と、枠の内側を形成する領域の少なくとも一部と重なるように、接着剤8を塗工する。
その結果、壁面2にシート4を貼り付ける前の状態で、両面テープ6の少なくとも一部と、塗工した接着剤8とが重なった粘接着層10を形成することが可能となる。
【0036】
(3)両面テープ貼り付け工程では、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6とシート4の端部との間隔が3[mm]以内となるように、一方の面4aに両面テープ6を貼り付ける。
その結果、両面テープ6の位置が、シート4の端部に近い位置となり、シート4のうち壁面2に接着されない部分の面積を減少させることが可能となるため、シート4の端部に発生するめくれを抑制することが可能となる。これに加え、人による意図的なシート4を剥離する行為に対して、耐性を向上させることが可能となる。
【0037】
(4)両面テープ貼り付け工程では、幅が15[mm]以下の両面テープ6を一方の面4aに貼り付ける。
その結果、シート4が壁面2から剥離した場合であっても、シート4が剥離した箇所において、両面テープ6から接着剤8への移行が即座に行われるため、人による意図的なシート4を剥離する行為に対して、耐性を向上させることが可能となる。
【0038】
(5)両面テープ貼り付け工程では、厚さが0.1[mm]以上1.0[mm]以下の範囲内である両面テープ6を一方の面4aに貼り付ける。
その結果、両面テープ6の厚さが0.1[mm]未満である構成や、両面テープ6の厚さが1.0[mm]を超える構成と比較して、シート4が有する接着力を向上させることが可能となる。
【0039】
すなわち、両面テープ6の厚さが0.1[mm]未満である構成では、両面テープ6の剥離応力を吸収する能力が低下する。一方、両面テープ6の厚さが1.0[mm]を超える構成では、両面テープ6の断面が、シート4の端面(例えば、目地部)から露出して目視が可能となるため、意匠性が低下する。
また、両面テープ6がシート4の端部に近い位置へ貼り付けられていない場合には、シート4が壁面2から浮いた状態となるため、意匠性が低下する。さらに、シート4が壁面2から浮いた状態となることで、人による意図的なシート4を剥離する行為が行われる際に、手や指等をシート4と壁面2との間へ差し込みやすくなる等、副次的な懸念が増加する。
これに対し、第一実施形態のシートの施工方法であれば、上述した作用により、意匠性の低下や、副次的な懸念の増加を抑制することが可能となる。
【0040】
(6)粘接着層形成工程では、接着剤8として、変性シリコーン系の接着剤8を用いる。
その結果、接着剤8として変性シリコーン系以外の接着剤を用いた構成と比較して、強固な接着力と、長期に亘って安定性の高い接着力を得ることが可能となる。
【0041】
また、第一実施形態の壁面装飾物1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(7)シートの施工方法によって粘接着層10が形成されたシート4を、壁面2に施工して形成する。
その結果、シート4の剥離強度を向上させることが可能な、壁面装飾物1を提供することが可能となる。
【0042】
また、壁面装飾物1に対し、シート4と壁面2との間から接着剤8がはみ出すことを抑制することが可能となるため、不陸(目視・触感)を低減させることが可能となる。
さらに、例えば、底目地を設けた壁面装飾物1を形成した際に、人による意図的なシート4を剥離する行為や、壁面装飾物1を納品する際に行う品質確認としての密着力の確認として行う剥離に対して、充分な強度を発現することが可能な、壁面装飾物1を提供することが可能となる。
【0043】
<第一実施形態の変形例>
(1)第一実施形態では、粘接着層形成工程で、壁面2にシート4を貼り付ける前の状態で、シート4の厚さ方向から見て、接着剤8が、両面テープ6の少なくとも一部と、枠の内側を形成する領域の少なくとも一部と重なるように、接着剤8を塗工したが、これに限定するものではない。
すなわち、例えば、
図5に示すように、粘接着層形成工程で、壁面2にシート4を貼り付ける前の状態で、シート4の厚さ方向から見て、接着剤8が、枠の内側を形成する領域のみと重なるように、接着剤8を塗工してもよい。
【0044】
(2)第一実施形態では、両面テープ貼り付け工程において、一方の面4に、両面テープ6によって、連続する四本の直線によって方形の枠を形成したが、これに限定するものではない。
すなわち、例えば、壁面2へシート4を施工する際に、シート4へ塗工した接着剤8が押されて広がり、両面テープ6が接着剤8に対する堰として作用することが可能であれば、方形の枠に切れ目が形成されていてもよい。したがって、両面テープ貼り付け工程においては、一方の面4に、両面テープ6によって、略方形の枠を形成してもよい。
【実施例0045】
第一実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から11の壁面装飾物と、比較例1から3の壁面装飾物について説明する。
【0046】
(実施例1)
両面テープ貼り付け工程では、両面テープとして、3M社製の「9660」を用いた。
また、両面テープの幅は20[mm]とし、両面テープの厚さは0.16[mm]とした。
さらに、シートの厚さ方向から見て、両面テープとシートの端部との間隔が0[mm]となるように、一方の面に両面テープを貼り付けた。
【0047】
粘接着層形成工程では、接着剤として、変性シリコーン系の接着剤(アイカ工業株式会社製:「アイカエコエコボンド SE-1」)を用いた。
また、粘接着層形成工程では、壁面にシートを貼り付ける前の状態で、シートの厚さ方向から見て、接着剤が、両面テープの一部と、枠の内側を形成する領域の一部と重なるように、接着剤を塗工した。
以上により、実施例1の壁面装飾物を形成した。
【0048】
(実施例2)
両面テープ貼り付け工程において、シートの厚さ方向から見て、両面テープとシートの端部との間隔が1[mm]となるように、一方の面に両面テープを貼り付けた点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例2の壁面装飾物を形成した。
【0049】
(実施例3)
両面テープ貼り付け工程において、シートの厚さ方向から見て、両面テープとシートの端部との間隔が2[mm]となるように、一方の面に両面テープを貼り付けた点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例3の壁面装飾物を形成した。
【0050】
(実施例4)
両面テープ貼り付け工程において、シートの厚さ方向から見て、両面テープとシートの端部との間隔が3[mm]となるように、一方の面に両面テープを貼り付けた点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例4の壁面装飾物を形成した。
【0051】
(実施例5)
両面テープ貼り付け工程において、シートの厚さ方向から見て、両面テープとシートの端部との間隔が4[mm]となるように、一方の面に両面テープを貼り付けた点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例5の壁面装飾物を形成した。
【0052】
(実施例6)
両面テープ貼り付け工程において、シートの厚さ方向から見て、両面テープとシートの端部との間隔が5[mm]となるように、一方の面に両面テープを貼り付けた点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例6の壁面装飾物を形成した。
【0053】
(実施例7)
両面テープ貼り付け工程において、両面テープの幅を15[mm]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例7の壁面装飾物を形成した。
【0054】
(実施例8)
両面テープ貼り付け工程において、両面テープの幅を10[mm]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例8の壁面装飾物を形成した。
【0055】
(実施例9)
両面テープ貼り付け工程において、両面テープとして、日東電工株式会社製の「No.5015」を用いた点と、両面テープの幅を10[mm]とした点と、両面テープの厚さを0.1[mm]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例9の壁面装飾物を形成した。
【0056】
(実施例10)
両面テープ貼り付け工程において、両面テープとして、3M社製の「Y-4800-12」を用いた点と、両面テープの幅を10[mm]とした点と、両面テープの厚さを1.2[mm]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例10の壁面装飾物を形成した。
【0057】
(実施例11)
両面テープ貼り付け工程において、両面テープの幅を10[mm]とした点と、粘接着層形成工程において、接着剤として、ウレタン変性EVA系の接着剤(ジャパンコーティングレジン株式会社製の「BA-10L」を用いた点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例11の壁面装飾物を形成した。
【0058】
(比較例1)
両面テープ貼り付け工程を実施しない点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例1の壁面装飾物を形成した。
【0059】
(比較例2)
両面テープ貼り付け工程において、両面テープの幅を10[mm]とした点と、粘接着層形成工程において、壁面にシートを貼り付ける前の状態で、シートの厚さ方向から見て、接着剤が、枠の内側を形成する領域のみと重なるように接着剤を塗工した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例2の壁面装飾物を形成した。
【0060】
(比較例3)
両面テープ貼り付け工程において、両面テープの幅を50[mm]とした点と、粘接着層形成工程を実施しない点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例3の壁面装飾物を形成した。
【0061】
(性能評価)
実施例1から11の壁面装飾物と、比較例1から3の壁面装飾物に対し、それぞれ、シートと壁面との間からの接着剤のはみ出しの有無と、シートの端部に発生した剥離の状態と、シートの剥離強度を測定して評価した。測定結果は、表1と表2に示す。
なお、表1と表2では、シートと壁面との間からの接着剤のはみ出しの有無を「接着剤のはみ出し」と記載し、シートの端部に発生した剥離の状態を「端部の剥離」と記載した。
また、シートの剥離強度は、実施例1から11の壁面装飾物と、比較例1から3の壁面装飾物に対し、それぞれ、シートの端部から、5[mm]、10[mm]、15[mm]、20[mm]、25[mm]、30[mm]の位置で測定した。さらに、剥離強度は、単位を[N/25mm]として示す。
具体的に、シートの剥離強度は、まず、基材に接着されたシートの表面に、厚さが50[μm]のPETフィルムを、接着剤(コニシ株式会社製「G17」)を用いて貼り付けた後、PETフィルムを、25[mm]の幅で、基材に到達する深さで切り込みを入れる。そして、PETフィルムの一部を剥離試験機でクランプした状態で、温度が23[℃]の環境下、剥離角度が90[°]であり、剥離速度を50[mm/min]とした条件において、剥離試験を実施して測定した。
なお、表1及び表2では、剥離試験においてシートが破断した状態を「破断」と記載した。
【0062】
【0063】
【0064】
(評価結果)
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、表1及び表2に示すように、実施例1から11の壁面装飾物は、比較例1から3の壁面装飾物と比較して、高い剥離強度を有していることが確認された。
これにより、実施例1から11の壁面装飾物は、比較例1から3の壁面装飾物と比較して、剥離試験において、接着剤の位置へ差し掛かった段階で、破断を起こすほどの強い接着力を有していることが確認された。
【0065】
また、実施例1から11の壁面装飾物に対し、比較例1の壁面装飾物では、接着剤のはみ出しや端部の浮きが発生することが確認された。
さらに、実施例1から11の壁面装飾物に対し、比較例2の壁面装飾物では、剥離試験において、両面テープの部分を超えると、一気に剥離強度が低下してしまうことが確認された。
また、実施例1から11の壁面装飾物に対し、比較例3の壁面装飾物では、剥離が進行するに従い、剥離角度の問題から、両面テープの剥離強度が低下してしまうことが確認された。
【0066】
なお、本技術は、以下のような構成を取ることが可能である。
(1)
壁面にシートを貼り付けることで、前記壁面に前記シートを施工するシートの施工方法であって、
前記シートの一方の面に両面テープを貼り付けることで、前記シートの厚さ方向から見て、前記両面テープによって前記一方の面に方形の枠を形成する工程である両面テープ貼り付け工程と、
前記一方の面及び前記両面テープのうち少なくとも前記一方の面の前記枠の内側を形成する領域に接着剤を塗工して、前記シートに前記接着剤を含む粘接着層を形成する工程である粘接着層形成工程と、を備え、
前記粘接着層形成工程では、前記壁面に前記シートを貼り付けた状態で、前記シートの厚さ方向から見て、前記両面テープの少なくとも一部と、前記塗工した前記接着剤とが重なることで前記粘接着層が形成されるように、前記接着剤を塗工するシートの施工方法。
(2)
前記粘接着層形成工程では、前記壁面に前記シートを貼り付ける前の状態で、前記シートの厚さ方向から見て、前記接着剤が、前記両面テープの少なくとも一部と、前記枠の内側を形成する領域の少なくとも一部と重なるように、前記接着剤を塗工する前記(1)に記載したシートの施工方法。
(3)
前記両面テープ貼り付け工程では、前記シートの厚さ方向から見て、前記両面テープと前記シートの端部との間隔が3mm以内となるように、前記一方の面に両面テープを貼り付ける前記(1)又は(2)に記載したシートの施工方法。
(4)
前記両面テープ貼り付け工程では、幅が15mm以下の前記両面テープを前記一方の面に貼り付ける前記(1)~(3)のいずれかに記載したシートの施工方法。
(5)
前記両面テープ貼り付け工程では、厚さが0.1mm以上1.0mm以下の範囲内である前記両面テープを前記一方の面に貼り付ける前記(1)~(4)のいずれかに記載したシートの施工方法。
(6)
前記粘接着層形成工程では、前記接着剤として、変性シリコーン系の接着剤を用いる前記(1)~(5)のいずれかに記載したシートの施工方法。
(7)
前記(1)~(6)のいずれかに記載したシートの施工方法によって前記粘接着層が形成された前記シートを、前記壁面に施工して形成された壁面装飾物。
1…壁面装飾物、2…壁面、4…シート、4a…シートの一方の面、4b…シートの端部、6…両面テープ、8…接着剤、10…粘接着層、Int…両面テープとシートの端部との間隔、W…両面テープの幅