(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141831
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】塗布具
(51)【国際特許分類】
B43K 5/16 20060101AFI20241003BHJP
B43K 8/02 20060101ALI20241003BHJP
A45D 34/04 20060101ALI20241003BHJP
B05C 17/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B43K5/16 100
B43K8/02 100
A45D34/04 525A
B05C17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053678
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】羽賀 久人
(72)【発明者】
【氏名】田村 誠
(72)【発明者】
【氏名】望月 千裕
(72)【発明者】
【氏名】住友 一
【テーマコード(参考)】
2C350
4F042
【Fターム(参考)】
2C350GA04
2C350HA15
2C350KC11
2C350KF05
4F042FA25
4F042FA30
4F042FA43
(57)【要約】
【課題】 サインペンやラインマーカー、液体化粧料等の塗布具に関し、温度差が生じても塗布具のキャップや継手部材(先軸)などの部材内で結露(液滴)の発生もない塗布具品質、商品価値の高い塗布具を提供する。
【解決手段】 少なくとも、水性塗布液が内蔵される軸筒と、該軸筒の先端側に直接又は先軸など継手部材を介して設けた水性塗布液が吐出可能な塗布部材と、該軸筒の塗布部材側に着脱自在に装着されるキャップとを備えた塗布具であって、前記軸筒、継手部材、キャップの少なくとも一つは防曇剤が含有された樹脂成形品から構成されると共に、該軸筒、継手部材、キャップの水性塗布液と接触する表面部は、水に対する接触角が80°以下であることを特徴とする塗布具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、水性塗布液が直接又は吸蔵体により内蔵される軸筒と、該軸筒の先端側に直接又は継手部材を介して設けた水性塗布液が吐出可能な塗布部材と、該軸筒の塗布部材側に着脱自在に装着されるキャップとを備えた塗布具であって、前記軸筒、継手部材、キャップの少なくとも一つは濡れ剤が含有された樹脂成形品から構成されると共に、該軸筒、継手部材、キャップの水性塗布液と接触する表面部は、水に対する接触角が80°以下であることを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記軸筒、継手部材、キャップの少なくとも一つは、視認性を有する材料から構成されていることを特徴とする請求項1記載の塗布具。
【請求項3】
前記水性塗布液には、更に、被膜形成剤を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サインペンやラインマーカー、または、液体化粧料などを塗布する塗布具に関し、温度差が生じても塗布具のキャップや継手部材(先軸)などの部材内で、液滴(結露液)の発生もない塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マーキングペンタイプの筆記具や液体化粧料塗布具等にあっては、ポリプロピレン(PP)などの樹脂材料が使われている。これらの樹脂材料表面は、濡れ性が悪いため、空間内に温度差が生じると樹脂面に液滴が発生する。
特に、透明な樹脂、例えば、光線透過率の高い樹脂を用いた場合は、液滴は外観の悪化につながり、しかも、液滴が衝撃により垂れると意図しない場所を汚したり、ペン先に付着して描線の色味を変化させる等の問題がある。
近年、一部に、ペン先などの塗布部材を見せるために、透明性を有する材料でかつ内容積の大きいキャップが使用されているものが知られている。このタイプの塗布具は、温度変化や温度勾配のある環境下では、キャップ内に液滴が溜まり、見栄えが悪いという課題が生じることがあった。この課題は、大きな筆記部などを有するペン先等の塗布部材を有し、かつ透明なキャップや継手部材(先軸)などを用いる筆記具、液体化粧料塗布具では、固有の課題であった。
【0003】
従来において、キャップ内の結露を抑えるためには、キャップの内容積を小さくして、不透明材料を用いる(目立たない)ことが一般的であったが、筆記方向を視認できる窓部を有するペン先や、アイシャドウ、アイライナーなどの塗布体などの塗布部材を見せるために、透明材料で構成されたキャップを用いた塗布具では、キャップを不透明材料で構成する対応は難しいのが現状であった。特に、油溶性染料、水溶性染料、顔料を色材に用いた筆記具用水性インクや、水溶性溶剤、顔料などを用いた液体化粧料を搭載した塗布具では、結露液の着色が顕著なことがあり、対策が必要であった。
【0004】
そこで、従来では、結露を抑制する手段として、水性インク中における溶剤量(例えばグリコール類)を増やす等の方法があったが、インク中にこれらの溶剤量が多くなることにより、描線の乾燥性悪化、描線品位の低下、筆記性や塗布性の低下の課題が残るものであった。
【0005】
従来からの結露を抑制する先行技術等をみると、例えば、1)筆記具の水分蒸発防止兼結露防止装置として、軸筒内に水性インキを収容したインキ筒を内蔵する筆記具において、軸筒内に連続気孔を有する吸液体を装着すると共に、該吸液体に常温に於ける密閉雰囲気に75~95%の相対湿度を与える塩の飽和水溶液を吸液せしめたことを特徴とする筆記具の水分蒸発防止兼結露防止装置(例えば、特許文献1参照)、2)インキを収納する塗布具本体を有し、必要に応じてキャップが設けられる塗布具において、塗布具本体及び/又はキャップの内表面に塗布具本体内のインキ又はインキの溶剤が付着した際におけるインキ又はインキの溶剤の塗布具本体又はキャップの内表面に対する接触角が90°以下であることを特徴とする塗布具、または、インキを収納する塗布具本体を有し、必要に応じてキャップが設けられる塗布具において、塗布具本体及び/又はキャップの内表面に酸化処理された層が設けられていることを特徴とする塗布具、更に、インキを収納する塗布具本体を有し、必要に応じてキャップが設けられる塗布具において、塗布具本体及び/又はキャップの内表面に親水親油バランス8以下のノニオン界面活性剤の層が設けられていることを特徴とする塗布具など(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0006】
一方、水と、着色剤と、抗菌性物質とを含む筆記具用水性インキ組成物であって、前記着色剤が自己分散型顔料であり、前記抗菌性物質が2-フェノキシエタノールであり、濡れ剤を更に含んでなり、前記濡れ剤が界面活性剤である筆記具用水性インキ組成物、この筆記具用水性インキ組成物を充填してなる筆記具(例えば、特許文献3参照)が知られている。この筆記具用水性インク中の濡れ剤は、インキ流量調節体やインキタンクなどの筆記具部材に対する濡れ性を向上させるためのものであり、濡れ剤としては、各種界面活性剤を用いることができ、中でも、ポリオキシアルキレン構造を有する界面活性剤を用いることが好ましいことが記載されている。
【0007】
他方、分散安定性に優れた着色樹脂粒子分散体、ならびに分散安定性に優れ、良好な筆跡が得られる筆記具用水性インキ組成物を提供するために、例えば、スチレン-アクリロニトリル樹脂粒子と、着色剤と、特定物性の分散剤と、水と、を含んでなる着色樹脂粒子分散体、およびそれを含んでなる筆記具用水性インキ組成物において、耐ドライアップ性能向上などのために、更にデキストリン、サクシノグリカンなどの多糖類を含むことが好ましいことなど(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【0008】
ところで、上記特許文献1の筆記具の水分蒸発防止兼結露防止装置は、軸筒内に連続気孔を有する特定物性の吸液体を装着して水分蒸発防止兼結露防止を行うものであるのに対して、本発明は筆記具を構成する軸筒、継手部材(先軸)やキャップ等を特定物性とする点、更に、用いる水性インクや液体化粧料を特定物性の点から、結露等の抑制や防止、並びに、保管時のドライアップを更に効果的に防止するものであり、本発明と上記特許文献1とは技術思想が相違するものである。
また、上記特許文献2の塗布具は、塗布具本体及び/又はキャップの内表面にノニオン界面活性剤の層等を設けてインキ又はインキの溶剤の塗布具本体又はキャップの内表面に対する接触角を下げる点で、本発明の近接技術を開示するものであるが、塗布具本体及び/又はキャップの内表面に層を設けるものでは、液滴(結露液)の抑制効果が時間の経過と共に弱くなり、経時的な安定性、効果の持続性、表面の透明度、塗布工程の煩雑化などに課題があるものである。
更に、上記特許文献3の筆記具は、水性インク中に濡れ剤を含有したものを搭載したものであり、上記特許文献2の塗布具と同様に、本発明の近接技術を開示するものであるが、水性インク中に濡れ剤を含有するものでは、液滴(結露液)の抑制効果が得られない上、経時的な安定性、インク設計の自由度などに課題があるものである。
更に、上記特許文献4の筆記具は、耐ドライアップ性能向上などのために、デキストリン、サクシノグリカンなどの多糖類を含有するものであり、本発明とは、発明の課題や技術思想が相違するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実公昭61-40551号公報(実用新案登録請求の範囲、第1図等)
【特許文献2】特開2000-190683号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開2021-98841号公報(特許請求の範囲、段落0032)
【特許文献4】特開2019-189802号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状などに鑑み、これを解消しようとするものであり、サインペンやラインマーカー、液体化粧料等の塗布具において、温度差が生じても塗布具のキャップや継手部材(先軸)などの部材内で液滴(結露液)の発生もなく、塗布具品質、商品価値の高い塗布具を提供すること、また、保管後の塗布性能を更に効果的に奏することができる塗布具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、少なくとも、水性塗布液が直接又は吸蔵体により内蔵される軸筒と、該軸筒の先端側に直接又は継手部材を介して設けた水性塗布液が吐出可能な塗布部材と、該軸筒の塗布部材側に着脱自在に装着されるキャップとを備えた塗布具であって、前記軸筒、継手部材、キャップの少なくとも一つは特定成分が含有された樹脂成形品から構成すると共に、該軸筒、継手部材、キャップの水性塗布液と接触する表面部の水に対する接触角を所定値以下とすることなどにより、上記目的の塗布具が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0012】
すなわち、本発明の塗布具は、少なくとも、水性塗布液が直接又は吸蔵体により内蔵される軸筒と、該軸筒の先端側に直接又は継手部材を介して設けた水性塗布液が吐出可能な塗布部材と、該軸筒の塗布部材側に着脱自在に装着されるキャップとを備えた塗布具であって、前記軸筒、継手部材、キャップの少なくとも一つは濡れ剤が含有された樹脂成形品から構成されると共に、該軸筒、継手部材、キャップの水性塗布液と接触する表面部は、水に対する接触角が80°以下であることを特徴とする。
前記軸筒、継手部材、キャップの少なくとも一つは、視認性を有する材料から構成されていることで、塗布具内部を視認可能とすることが好ましい。
前記水性塗布液には、更に、被膜形成剤を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、塗布具の各部材となる軸筒、継手部材、キャップの少なくとも1つには濡れ剤が含有された樹脂成形品から構成され、成形された部材の水性塗布液と接触する表面部の水と接触する接触角を所定範囲以下に下げることで、結露等で発生する水滴が樹脂に濡れやすくなるため、液滴の発生を抑制することができ、温度差が生じても、塗布具の部材表面で水蒸気等が液滴の発生もない、塗布具品質、商品価値の高い塗布具が提供される。
また、筆記具内部に付着した水滴を確認することが低減されるため、前記軸筒、継手部材、キャップの少なくとも一つに視認性を有する材料を用いて塗布具内部を視認可能に構成されていても見栄えの低下を防ぐ塗布具が提供される。
更に、水性塗布液に被膜形成剤を含有してなる塗布具では、液滴(結露液)の発生もない上、保管時(キャップをしている状態)での、塗布部材のドライアップを相乗的に抑制できる塗布具が提供される。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の塗布具を筆記具に適用した実施形態の一例(第1実施形態)を示す図面であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は正面視縦断面図である。
【
図2】
図1の筆記具のペン先の拡大斜視図であり、(a)は一方向から見たペン先の拡大斜視図、(b)は(a)の180°展開した方向から見たペン先の拡大斜視図である。
【
図3】本発明の塗布具を筆記具に適用した実施形態の他例(第2実施形態)を示す図面であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は正面視縦断面図である。
【
図4】
図3の筆記具のペン先の拡大斜視図であり、(a)は一方向から見たペン先の拡大斜視図、(b)は(a)の180°展開した方向から見たペン先の拡大斜視図である。
【
図5】本発明の塗布具を筆記具に適用した筆記具の実施形態の他例(第3実施形態)を示す図面であり、(a)は正面図、(b)は中央縦断面図、(c)は中央横断面図である。
【
図6】(a)は
図5の筆記具のキャップを取り外した状態の一例を示す図面であり、保持体が視認性を有する場合の前方側から見た斜視図であり、(b)は
図5の筆記具のキャップを取り外した状態の他例を示す図面であり、保持体が視認性を有しない場合の後方側から見た斜視図である。
【
図7】本発明の塗布具を液体化粧料塗布具に適用した実施形態の一例(第4実施形態)を示す中央縦断面図である。
【
図8】
図7の液体化粧料塗布具の使用状態の一例を示す中央縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の各実施形態を図面を参照しながら、詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述する実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。また、本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識(設計事項、自明事項を含む)に基づいて実施することができる。
【0016】
<第1実施形態の筆記具:
図1~
図2>
図1及び
図2は本発明の塗布具を筆記具に適用した実施形態の一例を示す各図面である。この第1実施形態の塗布具は、
図1(a)~(c)に示すように、少なくとも、水性塗布液となる筆記具用水性インクがインク吸蔵体15により内蔵される軸筒10と、該軸筒10の先端側に継手部材となる先軸16を介して設けた水性塗布液が吐出可能な塗布部材となるペン先20を備えると共に、このペン先20の反対側にも棒状のポリアセタール製のペン先50を備えたツインタイプの筆記具Aとなっている。また、筆記具本体となる軸筒10の両側には、着脱自在となるペン先20を保護するキャップ60と、ペン先50を保護するキャップ70とが取り付けられている。上記ペン先20は、筆記方向を視認することができる窓部(視認部)を有する構成となっている。
【0017】
この筆記具Aでは、軸筒10、継手部材となる先軸16、キャップ60、及びキャップ70の少なくとも一つは濡れ剤が含有された樹脂成形品から構成されると共に、該軸筒10、継手部材16、キャップ60、70の水性塗布液となる筆記具用水性インクと接触する表面部は、水に対する接触角が80°以下、好ましくは、70°以下、更に好ましくは、60°以下、特に好ましくは50°以下となるものが望ましい。
本第1実施形態では、キャップ60、70が、濡れ剤が含有された樹脂成形品から構成され水に対する接触角が50°以下となるものである。
ここで、本発明(後述する実施例等も含む)において、「水に対する接触角」の測定は、温度25℃環境下において、株式会社ニック製 ぬれ性評価装置(LSE-B100TW)にて行った。測定原理は接線法(Tangent法)により測定された値をいう。
【0018】
軸筒10は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等で形成されるものであり、上記特性の水性インクを含浸したインク吸蔵体15を収容する筒状体からなると共に、図面上、右側となる一端側は細字タイプの棒状のペン先50を保持する保持具55を嵌合により固着するための嵌合部を有する保持部11となっており、左側となる他端には、筆記方向を視認することができる窓部となる視認部を有するペン先20を固着する先軸16が取り付けられている。
軸筒10及び先軸16は、例えば、ポリプロピレン等からなる樹脂を使用して筒状に成形される。軸筒10及び先軸16は不透明又は透明(及び半透明)に成形されるが、外観上や実用上の観点からいずれを採用しても良いが、なかでも、塗布具内部への視認性の観点から、透明性(及び半透明)のあるものが好ましい。
【0019】
インク吸蔵体15は、水性インク組成物を含浸したものであり、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる繊維束、フェルト等の繊維束を加工したもの、また、スポンジ、樹脂粒子、焼結体等の多孔体を含むものである。このインク吸蔵体15は、筆記具本体となる軸筒10内に収容保持されている。
【0020】
ペン先20は、
図2(a)及び(b)に示すように、少なくとも筆記部25を有する筆記芯30と、視認部を有する保持体40とにより構成されている。筆記部25を有する筆記芯30は、後述する保持体40に接着、溶着、嵌合等により取り付けられるものである。
筆記芯30は、筆記しやすい傾きとなるように、傾斜状(ナイフカット状)となった筆記部25と、該筆記部25以外は、筆記部25の両端部から薄板体(シート体)31、31とを有し、これらが一体に連設されており、外形が略U字状(コ字状も含む)に形成され、該薄板体31、31の断面は矩形形状となっている。
この筆記芯30は、軸筒10内に吸蔵される上述の水性インクを効率よく、薄板体31、31を介して筆記部25へインクを誘導(供給)するものであれば特に限定されず、例えば、不織布、織物あるいは編物などの布帛、あるいは、通液性発泡体、焼結体などの通液性を有する素材から構成されるものが挙げられる。なお、筆記部25を含む筆記芯30は、一種類の素材から構成できるが、複数の素材を積層したりするなど組み合わせることで構成したり、また、筆記部25と該筆記部25以外を別部材同士で連結や結合等して構成してもよい。
【0021】
筆記部25を有する筆記芯30の形状、厚さなどは、保持体40への取り付け態様、筆記部25の形状、視認部43の視認部面積の最大化、インクを効率よく筆記部へ流出(供給)せしめる点等から設定されるものであり、好ましくは、幅方向長さ、長手方向長さは筆記芯30の薄板体31、31を固着する後述する保持体40の取付面の幅方向長さ、周面の長さとなるものであり、インクを効率よく筆記部25へ流出せしめる好適な長さがそれぞれ設定される。また、筆記芯30の筆記部25以外の薄板体31、31の厚さは、視認部43の視認部面積の最大化する点などから、0.3~3.0mmであるのが好ましく、0.5~1.0mmであるのが最も好ましい。
【0022】
筆記部25は、本実施形態においては筆記芯30の薄板体31、31と一体に構成されるものであり、筆記しやすい傾きとなるように、傾斜状(ナイフカット状)となっており、この傾き等は、筆記等の使い勝手に合わせて適宜設定される。また、この筆記部25は、描線幅が太いものであり、好ましくは、描線幅は1mm以上、更に好ましくは、描線幅は2mm以上の描線幅となる筆記部が望ましい。
本実施形態の筆記部25を含む筆記芯30は、プラスチック粉末を焼結した焼結芯から一体に構成されている。
【0023】
上記実施形態では、筆記芯30の筆記部25と薄板体31、31を同じ素材で一体構成したが、筆記部25と薄板体31、31とを別部材で構成し、これらを連結、結合、当接等しても良いものである。筆記部25を、例えば、気孔を有する多孔質で形成されたものが挙げられ、具体的には、スポンジ体、焼結体、繊維束体、発泡体、海綿体、フェルト体、ポーラス体などを挙げることができる。多孔体を形成する材料としては、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などを用いることができ、具体的には、筆記部25を各種のプラスチック粉末などを焼結した焼結体から構成し、薄板体31、31を、例えば、不織布、織物あるいは編物などの布帛、あるいは、通液性発泡体などの通液性を有する素材から構成してもよいものである。
【0024】
保持体40は、上記筆記芯30の筆記部25、薄板体31、31を固定して、筆記具本体10の先軸16先端開口部に固着されるものであり、筆記方向を視認することができる視認部(可視部)43を有するものである。
また、この保持体40には、前記筆記芯30の保持体40の側面と当接する部分(薄板状体31、31)を断面矩形形状としており、該保持体40の前端部となる視認部43の外周縁を傾斜状の屈折面43a、43aに形成されている。
上記筆記芯30の保持体40の側面と当接する部分を断面矩形形状とすることにより、断面積に対する視認部43の幅を広げることができると共に、保持体40の視認部43の外周縁を傾斜状の屈折面43a、43aとすることにより、矩形断面を細く見せることができ、視認部43の面積を従来よりも更に広く見せることができることとなる。
【0025】
このように構成される保持体40全体は、硬質材料で構成されており、例えば、視認性を有する硬質材料、例えば、ガラス、ゴム弾性を有しない樹脂などから構成されるものである。視認可能となるゴム弾性を有しない樹脂としては、例えば、PP、PE、PET、PEN、ナイロン(6ナイロン、12ナイロン等の一般的なナイロン以外に非晶質ナイロン等を含む)、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ABS等の可視光線透過率が50%以上の材料から成形により構成することにより、視認部43で筆記方向に書いてある文字を有効に視認できることとなる。なお、二色成形等の成形加工により視認部43(傾斜状の屈折面43a、43aを含む)だけを視認性を有する構成としてもよい。なお、可視光線透過率(透過度)は多光源分光測色計〔スガ試験機社製、(MSC-5N)〕にて反射率を測定することで求めることができる。
また、保持体40は、上記各材料の一種類、または、耐久性、視認性の更なる向上の点などから、2種類以上の材料を用いて構成してもよく、射出成形、ブロー成形などの各種成形法により成形することができる。
【0026】
この保持体40のコ字型状(U字型状)の保持溝の取付面に筆記芯30の薄板体31、31が接着剤による接着、溶着等により固着され、筆記部25に固着されている。
本実施形態では、視認部43の視認面積の最大化を図る点などから、上記薄板体31、31の厚さは、筆記部25の厚さより薄くなっており、また、インク誘導部の幅が保持体40の視認部43の幅の90%未満、更に好ましくは、50~80%であることが望ましい。
【0027】
ペン先50は、
図1(a)~(c)に示すように、細字タイプの棒状のペン先であり、断面が円形形状となるものであり、ペン先50の後端部(インク吸蔵体側)がインク吸蔵体15内に挿入されており、毛管力によりインク吸蔵体の上述の蒸気圧特性の水性インクがペン先50に供給されるものである。
このペン先50は、多孔質部材から構成されるものであり、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる並行繊維束、フェルト等の繊維束を加工又はこれらの繊維束を樹脂加工した繊維芯、または、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の熱可塑性樹脂などのプラスチック粉末などを焼結したポーラス体(焼結芯)などからなるものである。
好ましいペン先50としては、繊維束芯、繊維芯、焼結芯、フェルト芯、スポンジ芯、無機多孔体芯であり、特に好ましくは、変形成形性の点、生産性の点から、繊維芯が望ましい。また、用いるペン先50の気孔率、大きさ、硬度などは、インク種、筆記具の種類等により、変動するものであり、例えば、気孔率では30~60%とすることが好ましい。また、本発明において、「気孔率」は、下記のようにして算出される。まず、既知の質量及び見掛け体積を有する筆記芯を水中に浸し、十分に水を浸み込ませた後、水中から取り出した状態で質量を測定する。測定した質量から、筆記芯に浸み込ませた水の体積が導出される。この水の体積を筆記芯の気孔体積と同一として、下記式から、気孔率が算出される。
気孔率(単位:%)=(水の体積)/(ペン先50の見掛け体積)×100
【0028】
本実施形態において、
図1(a)~(c)に示すように、軸筒10の一方のペン先20側の外周部と、他方のペン先50側の外周部に嵌合により着脱自在に装着される透明性を有する材料にて形成されたキャップ60、内キャップを有するキャップ70が取り付けられている。
このキャップ60、キャップ70は、温度差が生じるような環境下において、キャップ内で生じる結露等で発生する水滴(液滴)の発生を抑制するために、濡れ剤が含有された樹脂成形品から構成されるものであり、各キャップに含有された濡れ剤の作用等により水に対する接触角を所定の角度以下に下げるものであり、当該接触角は80°以下とするものである。好ましくは、70°以下、更に好ましくは、60°以下、特に好ましくは50°以下となるものが望ましい。この水に対する接触角の下限値は、水蒸気が部材の表面上で液滴になることを防ぎやすいという点等から、0°超過、特に好ましくは、5°以上である。
この水に対する接触角が80°以下となる特性を有するものであれば、当該キャップ60、キャップ70は、その形状、構造は特に限定されず、特に塗布部材の視認性の観点から、透明性(及び半透明)のあるものを用いることが好ましい。
キャップ60、キャップ70を構成する樹脂等としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含むポリエステル、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン(6ナイロン、12ナイロン等の一般的なナイロン以外に非晶質ナイロン等を含む)、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、アクリルニトリルブタジエンスチレン共重合体などの少なくとも1種が挙げられる。本実際形態では、これらの樹脂中に、水に対する接触角が80°以下となるように濡れ剤等を含有し、各種成形法(射出成形、ブロー成形、押出成形等)により、上記特性を有する所定の形状となるキャップ60、キャップ70が成形されることとなる。
【0029】
用いることができる濡れ剤は、キャップなどの筆記具の部材表面の濡れ性を向上させて、空間内の水蒸気が部材の表面上で液滴になることを防ぐ作用等を有し、水に対する接触角を上記所定角度以下にできるものであれば、特に限定されず、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、または両性界面活性剤、他にはポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等を使用することができる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフエート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネートが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイドープロピレンオキサイド共重合体等のポリオキシエチレン構造を有する化合物やソルビタン誘導体が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、トリアルキルアミン塩、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルベンザルコニウムが挙げられ、具体的には、ラウリルアミンアセテート、トリエタノールアミンモノ蟻酸塩、ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩等のアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩などが挙げられる。これらは、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
両性界面活性剤としては、例えば、レシチン、ラウリルべタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。
これらの中でも、ノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0030】
ノニオン性界面活性剤としては、具体的には、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタントリパルミテート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンジベヘネート、ソルビタントリベヘネート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンジラウレート、ソルビタントリラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート等のソルビタン系界面活性剤;グリセリンモノラウレート、グリセリンジラウレート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンジパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンジラウレート等のグリセリン系界面活性剤;ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノパルミネート等のポリエチレングリコール系界面活性剤;トリメチロールプロパンモノステアレート等のトリメチロールプロパン系界面活性剤;ラウリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド等のジエタノールアルキルアミン系およびジエタノールアルキルアミド系界面活性剤;ペンタエリスリトールモノパルミテート等のペンタエリスリトール系界面活性剤およびポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンジステアレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ソルビタン-ジグリセリン縮合体のモノおよびジステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG-50、104S、420、440、465、485、SE、SE-F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD-001、PD-002W、PD-003、PD-004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051F、EXP.4123、AF-103、AF-104、AK-02、SK-14、AE-3(以上全て商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-348(以上商品名、BYK社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(以上商品名、信越化学工業社製)が挙げられる。フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-340(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
これらの濡れ剤の中で特に好ましくは、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルやポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどのエチレンオキサイド付加物、アルキルアミンやアルキルジエタノールアミンなどのアミン化合物等の少なくとも1種が挙げられる。
これらの中では、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、アミン化合物のいずれかの使用が好ましい。
【0032】
グリセリン脂肪酸エステルは、脂肪酸とグリセリンのエステル化反応により得られる化合物である。脂肪酸としては一般に直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、炭素数が8~22である場合、十分な濡れ性能が得られるので好ましい。該化合物としては、例えばラウリン酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、リノール酸モノグリセリド、ジグリセリンステアレート等が挙げられる、ステアリン酸モノグリセリドやジグリセリンステアレートが好ましい。これらの化合物は単独又は混合物のいずれにおいても使用できる。
グリセリン脂肪酸エステル(各単独又は混合物等)の市販品の具体例としては、リケマールP-100、リケマールS-100、リケマールS-71D、リケマールO-71D、リケマールL-71D、ポエムM-200、ポエムM-300、ポエムDL-100(理研ビタミン社製)、レオドールMS-50(花王製)、モノグリD、M、I(日本油脂社製)、エレカットマスターP-280H(竹本油脂社製)等を例示することができる。
【0033】
ソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタンと脂肪酸のエステル化反応により得られる化合物である。ソルビタン脂肪酸エステルは、例えば、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等が挙げられ、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレートが好ましい。なおこれらソルビタン脂肪酸エステルは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
ソルビタン脂肪酸エステルの市販品の具体例としては、リケマールL-250A、リケマールP-300、リケマールS-300W(理研ビタミン製)等を例示することができる。
【0034】
エチレンオキサイド付加物は、アルコールや脂肪酸やそれらのエステル類、油脂などにエチレンオキサイドを付加させた化合物である。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどが挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、およびポリオキシエチレン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の具体例は、上記モノグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の例として列挙されたものと同様であり、中でも炭素原子数が12~20の飽和もしくは不飽和脂肪酸が好ましく用いられる。なおこれら脂肪酸は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
エチレンオキサイド付加物の市販品の具体例としては、理研ビタミン株式会社製のリケマールO-852(ポリオキシエチレンソルビタントリオレート)や、リケマールB-205(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、花王株式会社製のレオドールTWシリーズ(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)やエマノーンシリーズ(ポリオキシエチレン脂肪酸エステル)など等を例示することができる。
【0035】
アミン化合物は、脂肪族アミンや脂肪族アミン誘導体、スルホン酸アミン塩などがあり、防曇性に優れることから、脂肪族アミンや脂肪族アミン誘導体が好ましい。脂肪族アミンとして、炭素数6~30の飽和脂肪族アミン、不飽和脂肪族アミンなどがあり、第一級脂肪族アミン又は第二級脂肪族アミンであることが好ましく、例えば、ヘキシルアミン、オクチルアミン、イソオクチルアミン、カプリルアミン、カプロレイルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ミリストレイルアミン、ヘプタデシルアミン、パルミチリルアミン、イソパルミチリルアミン、パルミトレイルアミン、ステアリルアミン、イソステアリルアミン、アラキルアミン、リシノレイルアミン、リノレイルアミン、ベヘニルアミン、オレイルアミン、リグノセイルアミンなどの第一級脂肪族アミン、N,N-ジカプリルアミン、N,N-ジオクチルアミン、N,N-ジカプリルアミン、N,N-ジカプロレイルアミン、N,N-ジラウリルアミン、N,N-ジミリスチルアミンなどの第二級脂肪族アミンを挙げることができる。脂肪族アミン誘導体として例えば、ポリオキシエチレンアルキルアミン、デシルエタノールアミン、ドデシルジエタノールアミン、テトラデシルジエタノールアミン、ヘキサデシルジエタノールアミン、オクタデシルジエタノールアミン、エイコシルジエタノールアミンなどがあり、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ドデシルジエタノールアミン、テトラデシルジエタノールアミン、ヘキサデシルジエタノールアミン、オクタデシルジエタノールアミンが好ましく、特に、ポリオキシエチレンアルキルアミンが好ましい。これらの化合物は単独又は混合物のいずれにおいても使用できる。
アミン化合物の市販品の具体例としては、アーモスタット310(ライオン(株)製)等を例示することができる。
【0036】
これらの濡れ剤の中で、特に好ましくは、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセライド、モノ・ジ・トリグリセライド)、特に炭素数8~20(C8~C20)の脂肪酸エステルが望ましく、他には、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンが望ましく、特にグリセリンモノステアレ-ト、パルミチン酸グリセロール、ステアリン酸モノグリセリド、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンオレート、グリセリンモノステアレート/ジグリセリンステアレート/ジグリセリンモノステアレートの混合剤などの濡れ剤を用いることが望ましい。
【0037】
これらの濡れ剤の含有量は、水に対する接触角を上記所定角度以下にできる量であればよく、樹脂種や接触角等により変動するものであるが、樹脂成分中に、好ましくは、0.01~30.00質量%、更に好ましくは、0.01~20.00質量%、更にまた、0.1~10.00質量%、特に、0.1~5.00質量%とすることが望ましい。
これらの濡れ剤の含有量は、樹脂成分中に、0.01質量%未満であると、結露発生による水滴抑制の点から好ましくなく、一方、30.00質量%超過であると、成形時の強度や成形性などの低下を招くことがあり、また、透明性を要求される場合には透明性の低下を招くことがある。
【0038】
本実際形態では、キャップ60、キャップ70は、樹脂と、上述の好適な所定量となる濡れ剤と、着色剤やその他の配合剤(紫外線吸収剤、滑剤など)が含有された樹脂組成物から各種成形法・成形機などを用いて、水に対する接触角が80°以下、好ましくは、上記好ましい各角度以下となる所定形状、構造のキャップ60、キャップ70が得られる。
これらのキャップ60、キャップ70は、筆記方向を視認することができるタイプでは透明性を有する材料で構成することが望ましい。
透明性(視認性)を有する材料では、上記PP、PE、PET、PEN、ナイロン、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ABS等を用いることができる。
【0039】
<水性インク>
インク吸蔵体15に吸蔵される水性インクとしては、その配合組成は特に限定されず、例えば、少なくとも、色材と、水とを含有することが好ましい。
<色材>
用いることができる色材としては、筆記具用に用いられるものが挙げられ、例えば、水に溶解もしくは分散する染料、酸化チタン等の従来公知の無機系および有機顔料系、着色樹脂微粒子又はその分散液〔顔料を含有した樹脂粒子顔料、樹脂エマルションを染料で着色した疑似顔料、白色系プラスチック顔料、中空樹脂顔料(粒子)などを含む〕、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした顔料、熱変色性顔料、光変色性顔料等、およびこれらの複合顔料を使用することができる。
染料としては、例えば、蛍光染料、水溶性染料、油溶性染料などを挙げることができる。
【0040】
用いることができる蛍光染料としては、発色性が良好であれば、特に限定はないが、例えば、ベーシックイエロー1、同40、ベーシックレッド 1、同1:1、同13、ベーシックバイオレット1、同7、同10、同11:1、ベーシックオレンジ22、ベーシックブルー7、ベーシックグリーン1、アシッドイエロー3、同7、アシッドレッド52、同77、同87、同92、アシッドブルー9、ディスパースイエロー121、同82、同83、ディスパースオレンジ11、ディスパースレッド58、ディスパースブルー7、ダイレクトイエロー85、ダイレクトオレンジ8、ダイレクトレッド9、ダイレクトブルー22、ダイレクトグリーン6、ソルベントイエロー44、ソルベントレッド49、ソルベントブルー5、ソルベントグリーン7などが挙げられる。特に、発色性、インキ安定性の点などから、前記蛍光染料の中でも、アゾメチン系、キサンテン系、トリフェニルメタン系の蛍光染料などが好ましく用いられる。具体的には、アゾメチン系の蛍光染料としては、ベーシックイエロー1、同40、キサンテン系の蛍光染料としては、ベーシックレッド1:1、ベーシックバイオレット11:1、トリフェニルメタン系の蛍光染料としては、ベーシックバイオレット1などが特に好ましい蛍光染料として挙げられる。これらの染料は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0041】
用いることができる油溶性染料としては、例えば、C.I.Solvent Black 7、同123、C.I.Solvent Blue 2、同25、同55、同70、C.I.Solvent Red 8、同49、同100、C.I.Solvent Violet 8、同21、C.I.Solvent Green 3、C.I.Solvent Yellow 21、同44、同61、C.I.Solvent Orange 37等が挙げられる。
【0042】
用いることができる水溶性染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料、食用色素などが挙げられる。例えば、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同52、同107、同109、同110、同119、同154、C.I.アシッドイエロー1、同7、同17、同19、同23、同25、同29、同38、同42、同49、同61、同72、同78、同110、同127、同135、同141、同142、C.I.アシッドレッド8、同9、同14、同18、同26、同27、同35、同37、同51、同52、同57、同82、同83、同87、同92、同94、同111、同129、同131、同138、同186、同249、同254、同265、同276、C.I.アシッドバイオレット15、同17、同49、C.I.アシッドブルー1、同7、同9、同15、同22、同23、同25、同40、同41、同43、同62、同78、同83、同90、同93、同100、同103、同104、同112、同113、同158、C.I.アシッドグリーン3、同9、同16、同25、同27、C.I.アシッドオレンジ56等の酸性染料、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、ローダミンF4G(C.I.45160)、ローダミン6GCP(C.I.45160)等の塩基性染料、
C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71、C.I.ダイレクトイエロー4、同26、同44、同50、C.I.ダイレクトレッド1、同4、同23、同31、同37、同39、同75、同80、同81、同83、同225、同226、同227、C.I.ダイレクトブルー1、同15、同41、同71、同86、同87、同106、同108、同199等の直接染料や、C.I.フードイエロー3等の食用色素等が挙げられる。
【0043】
無機系顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。より具体的には、カーボンブラック、チタンブラック、亜鉛華、べんがら、アルミニウム、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、炭酸カルシウム、鉛白、紺白、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉等の無機顔料、C.I.ピグメントブルー15、同17、C.I.ピグメントブルー17、同27、C.I.ピグメントレッド5、同22、同38、同48、同49、同53、同57、同81、同104、同146、同245、C.I.ピグメントイエロー1、同3、同12、同13、同14、同17、同34、同55、同74、同95、同166、同167、C.I.ピグメントオレンジ5、同13、同16、C.I.ピグメントバイオレット1、同3、同19、同23、同50、C.I.ピグメントグリーン7等の有機系顔料が挙げられる。
【0044】
着色樹脂微粒子又はその分散液としては、例えば、少なくとも、酸性官能基として水への溶解度が10質量%以下のカルボキシル基含有ビニルモノマー(A)と、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数2~18の直鎖若しくは環状アルコールとのエステルモノマー(B)と、塩基性染料又は油溶性染料とで構成される着色樹脂微粒子が水に分散されている着色樹脂微粒子の分散液や、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーと、塩基性染料又は油溶性染料とで構成される着色樹脂微粒子であって、前記(メタ)アクリル酸シクロヘキシルモノマーの含有量が着色樹脂微粒子を構成する全ポリマー成分に対して、30質量%以上であると共に、前記塩基性染料又は油溶性染料の含有量が全ポリマー成分に対して、15質量%以上である着色樹脂微粒子が水に分散されている着色樹脂微粒子の分散液などが挙げられる。
【0045】
熱変色性顔料としては、発色剤として機能するロイコ色素と、該ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となる顕色剤及び上記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールすることができる変色温度調整剤を少なくとも含む熱変色性組成物を、所定の平均粒子径(例えば、0.1~10μm)となるように、マイクロカプセル化することにより製造された熱変色性顔料などを挙げることができる。
光変色性顔料としては、例えば、少なくともフォトクロミック色素(化合物)、蛍光色素などから選択される1種以上と、テルペンフェノール樹脂などの樹脂とにより構成される光変色性粒子や、少なくともフォトクロミック色素(化合物)、蛍光色素などから選択される1種以上と、有機溶媒と、酸化防止剤、光安定剤、増感剤などの添加剤とを含む光変色性組成物を、所定の平均粒子径(例えば、0.1~10μm)となるように、マイクロカプセル化することにより製造された光変色性顔料などを挙げることができる。
なお、本発明(実施例等含む)において、「平均粒子径」は、粒子径分布解析装置HR9320-X100(日機装株式会社製)を用いて、屈折率1.81、体積基準にて算出されたD50の値である。
【0046】
これらの色材は、各単独で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という)使用することができる。
これらの色材の(合計)(固形分)含有量は、水性インク全量に対して、好ましくは、0.1~40質量%、更に好ましくは、1~30質量%とすることが望ましい。
この色材の含有量を0.1質量%以上とすることにより、十分な描線濃度を得ることができ、一方、40質量%以下とすることにより、粘度上昇を抑制し、インクの流動性が良好となるので好ましい。
【0047】
<他の成分>
本実施形態の水性インクには、上記色材、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)の他、本発明の効果を有する範囲において、必要に応じて、水性インクに通常用いられる各成分、例えば、分散剤、界面活性剤、guriko-ru粘性調整剤、固着樹脂、防錆剤、防腐剤もしくは防菌剤、pH調整剤などを含有することができる。
【0048】
用いることができる分散剤及び固着樹脂として、水溶性樹脂を含有することができる。例えば、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ウレタン系樹脂等の水溶性樹脂、また、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、ポリオレフィン系エマルジョン等の樹脂エマルジョン等から、少なくとも1種を選択することができる。
【0049】
用いることができる界面活性剤として、特に限定はしないが、フッ素系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤から選択される少なくとも一種の界面活性剤を用いることできる。
用いることができるグリコール類、グリコールエーテル類として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-オクチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリプロピレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類が挙げられ、これらは一種もしくは二種以上を混合して使用することができる。
【0050】
用いることができる粘性調整剤として、多糖類等の天然高分子、合成高分子を用いることができる。多糖類としては、例えば、アラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ウ
ェランガム、サクシノグリカン、ダイユータンガム、デキストラン、さらにメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、デンプングリコール酸及びその塩を用いることができる。合成高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びその塩、ポリエチレンオキサイド、酢酸ビニル-ポリビニルピロリドン共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体及びその塩、イソブチレン無水マレイン酸共重合体及びその塩を用いることができる。
【0051】
用いることができる防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンゾイソチアゾリン、ベンズイミダゾール系化合物等を用いることができる。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類等を用いることができる。
用いることができるpH調整剤としては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、モルホリン、トリエチルアミン等のアミン化合物、アンモニア、または、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物等を用いることができる。
【0052】
本実施形態において、水性インクは、少なくとも、上記色材、水を含む組成であれば良く、好ましい実施形態としては、更に、被膜形成性成分を水性インク組成物中に含有することで、ペン芯全体に薄い被膜を形成し、ペン先からの水分蒸発を抑制し、液滴発生の抑制を更に防止してもよいものである。
被膜形成性成分は、ペン芯表面に被膜を形成する成分であればよく、糖類、水溶性樹脂およびアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。用いることができる糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類が挙げられ、好ましくは、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、マルトトリオースなどが挙げられる。
ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α-シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール〔一般式HOCH2(CHOH)nCH2OH(n=2~5の整数)〕、還元デンプン糖化物を除く)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。特に、糖アルコール(還元デンプン糖化物を除く)の、具体例としては、D-ソルビトール、ソルビタン、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、キシリトールなどが挙げられる。さらに還元性を示さない糖類である非還元糖であれば、例えば、ショ糖、トレハロース、糖アルコールなどが挙げられ、これらは重量平均分子量が5000以下の糖類などが挙げられる。
【0053】
水溶性樹脂およびアルカリ可溶性樹脂としては、ポリビニルピロリドンポリマー、および、ポリ酢酸ビニル-変性ポリビニルピロリドンのような変性ポリビニルピロリドンも本発明の組成物中において用いられてよい。本発明の水性インク中における被膜形成性成分使用に適する他の樹脂は、例えば、制限するわけではないが、アラビアゴム、ロジンまたはセラックのような天然樹脂、ロジンエステル、水素化ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂またはロジン変性フェノール樹脂のような変性ロジン、種々のフェノール樹脂、エチルセルロース樹脂またはアセチルセルロール樹脂のようなセルロース樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート樹脂、石油樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー樹脂またはポリアクリル酸エステル樹脂、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ポリビニルアセタール樹脂を含む。単独で用いても良いし、2種以上の適切でかつ相溶性である樹脂の混合物も本発明において用いてよい。さらに、ヒアルロン酸やトレハロース、グリシン及び/又はトリメチルグリシン、イヌリンやグリカン、単糖類の還元物、デキストリン、動物性プロテオグリカンが含まれていてもよい。
【0054】
これらの被膜形成剤は、水性インク全量に対して、0.1~15質量%を含むことで、一層の液滴抑制の効果を発揮することができる。特に好ましい被膜形成剤としては、グリシンベタイン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン(TMP)、トリメチロールエタン(TME)等が挙げられる。
さらに上記水性インク上述のグリコール類をインク全量中に0.1~10質量%を含んでいてもよい。特に好ましいグリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0055】
本実施形態では、濡れ剤を配合した樹脂で成形され筆記具部材(キャップなど)を用いることで、更に、被膜形成剤を含む水性インクを用いることで、本発明の課題を好適に解決することができる。
さらに冬場のような低温環境下での筆記具の組み立て製造であっても、キャップの軸筒10への嵌合時の割れ等の不良発生を抑えるために、嵌合強度(引き抜き強度)を、30N以下、さらに好ましくは20N以下、特に好ましくは10N以下に設定することが好ましい。引き抜き強度は、好ましくは、5~50Nであれば良い。このように嵌合強度(引き抜き強度)を上記のように調整するには、軸筒やキャップなどの樹脂種の好適な組み合わせや、濡れ剤の好適な選択的などにより行うことができる。
【0056】
本実施形態の水性インクは、少なくとも、上記色材、水、好ましくは、更に被膜形成性成分、その他の各成分を筆記具用インク(マーキングペン用等)の用途に応じて適宜組み合わせて、また、好適な配合量となるように組み合わせて(上記好ましい実施形態を含む)、ホモミキサー、ホモジナイザーもしくはディスパー等の撹拌機により撹拌混合することにより、更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去すること等によって、筆記具用の水性インクが得られる。
また、本実施形態の水性インクのpH(25℃)は、使用性、安全性、インク自身の安定性、インク収容体とのマッチング性の点からpH調整剤などにより5~10に調整されることが好ましく、更に好ましくは、6~9.5とすることが望ましい。
【0057】
このように構成される筆記具Aでは、筆記具本体10内に上記組成の水性インクを吸蔵したインク吸蔵体15を挿入して保持せしめ、先端側は継手部材となる先軸16を介して上記構成のペン先20を順次嵌合等により固着せしめ、他端側はペン先50を固着せしめた保持具55を嵌合により固着せしめることにより、簡単にツインタイプの筆記具Aを作製することができ、インク吸蔵体15に吸蔵された上記組成の水性インクは毛管力によりペン先20では筆記芯30の薄板体31、31を介して筆記部25、並びに、ペン先50に効率的に供給され、筆記に供されるものとなる。
【0058】
本実施形態のマーキングペンタイプの筆記具Aでは、透明性を有しない材料(非視認性)を有する材料で構成されるキャップ60(キャップ70を含む)を使用した場合、温度変化や温度勾配のある環境下、例えば、直射日光が当たる場所や、暖房の噴出し口近くに置かれる場所、PCなどの熱源のそばに置かれる場所、電気カーペット等に誤った置いた場合などでも、キャップ60、70の水性塗布液となる筆記具用水性インクと接触する表面部は、水に対する接触角が80°以下、好ましくは、70°以下、更に好ましくは、60°以下、特に好ましくは50°以下とすることにより、キャップ60、70内での結露の発生もなく、筆記具品質、商品価値の高い筆記具が得られることとなる。
【0059】
また、ペン先20を見せるために、透明性を有する材料でかつ内容積の大きいキャップ60(キッャップ70を含む)が使用され、温度変化や温度勾配のある環境下、例えば、直射日光が当たる場所や、暖房の噴出し口近くに置かれる場所、PCなどの熱源のそばに置かれる場所、電気カーペット等に誤った置いた場合などでも、キャップ60、70の水性塗布液となる筆記具用水性インクと接触する表面部は、水に対する接触角が80°以下、特に好ましくは50°以下となるものであり、これにより、キャップ60等内での結露の発生もなく、見栄えを損なうことがない。また、ペン先20、50の形状や水性インクの色調(例えば、インク色が黄色、ピンク等)をキャップ60、70を通して視認することができるため筆記具としての品質、商品価値の高い筆記具が得られることとなる(この点については、更に後述する実施例等で詳述する)。
更に、水性インクに被膜形成性成分を含有することで、ペン芯全体に薄い被膜を形成し、ペン先からの水分蒸発を抑制し、キャップ60、70内での液滴発生の抑制を更に防止してもよいものである。
【0060】
また、この筆記具Aでは、ペン先50は従来の汎用のペン先と同様であるので、ペン先20の機能等を説明すると、ペン先20は、
図1、
図2に示すように、筆記方向を視認することができる視認部(窓部)43を有するものであり、インク吸蔵体15の上述の水性インクは筆記芯30の薄板体31、31の毛細力により筆記部25に到達し、筆記に供されるものとなる。筆記の際に、視認部(窓部)43で視認側を見れば、ひき始めの位置を合わせやすくなり、また、引き終わりの止めたい部分でピタッと止めることができ、引きすぎや、はみ出しを防ぐことができるものとなる。
【0061】
更に、ペン先20は、インク吸蔵体15からのインクの誘導を筆記部25の厚さよりも薄く、流出性のある筆記芯30の薄板体31、31を介して筆記部25まで誘導するものであり、また、この薄板体31、31はシート状の多孔体から構成されているので、インク流出性が良好であり、太く設計する必要がなく、視認部43が阻害されず、また、上記筆記芯30の保持体40の側面と当接する部分を断面矩形形状とすることにより、断面積に対する視認部43の幅を広げることができると共に、保持体40の視認部43の外周縁を傾斜状の屈折面43a、43aとすることにより、矩形断面を細く見せることができるので、右利きで左から右方向に筆記する際に、視認部43で筆記方向を視認しながら筆記部25で描線を引くことなどができ、また、ペン先全体に対する視認部の有効面積の最大化と共に、上記特性の薄板体31、31により一体構成の筆記部25へ効率よくインクが供給されるので、そのインク流出性も良好で有り、インクの流出性を損なうことなく、視認部43の有効面積の最大化を達成することができる筆記具が得られるものとなる。
また、本実施形態において、水性インクを熱変色性顔料を用いた熱変色性インクとした場合は、JIS S 6050-2002に規定する鉛筆描線の消し能力(消字率)が70%未満の熱可塑性エラストマーをキャップ60の頂部に形成し、擦過動作により摩擦熱を発生容易かつ低摩耗な摩擦体とすることで、摩擦時に消しカスの発生を少なくすることで周囲への汚れを防ぐことができる。
【0062】
<第2実施形態の筆記具:全体構成:
図3~
図4>
本第2実施形態の筆記具は、
図3に示すように、少なくとも、水性インクがインク吸蔵体15を介して内蔵される軸筒10と、該軸筒10の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先20と、該軸筒10のペン先20側に着脱自在に装着される透明性を有する材料にて形成されたキャップ60と、を備えた筆記具Bであって、上記第1実施形態と同様に、キャップ60、70の水性塗布液となる筆記具用水性インクと接触する表面部は、水に対する接触角が80°以下、好ましくは、70°以下、更に好ましくは、60°以下、特に好ましくは50°以下となるものが望ましい。
用いる水性インクは、上記第1実施形態で詳述した水性インクを用いるものであるので、その説明を省略する。
【0063】
<第2実施形態の筆記具の具体的構成>
図3(a)は、本第2実施形態のキャップを備えた筆記具の平面図、(b)はその正面図、(c)はその正面視縦断面図、
図4は
図1の筆記具のペン先の拡大斜視図であり、(a)は一方向から見たペン先の拡大斜視図、(b)は(a)の180°展開した方向から見たペン先の拡大斜視図である。
本実施形態の筆記具は、
図3に示すように、少なくとも、上記配合組成の水性インクがインク吸蔵体15に内蔵される軸筒10と、該軸筒10の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先20と、該軸筒10のペン先20側に着脱自在に装着される透明性を有する材料又は透明性有しない材料にて形成されたキャップ60と、を備えた筆記具Bであって、前記キャップ60、70の筆記具用水性インクと接触する表面部は、水に対する接触角が80°以下、好ましくは、70°以下、更に、60°以下、特に50°以下となるものである。
なお、上記第1実施形態の筆記具Aと同様の構成、機能を有する場合は、以下の第2実施形態において、各図面等に同一符号を付してその説明を省略する。
【0064】
第2の実施形態の筆記具Bは、上記実施形態の筆記芯30の外形がU字状のものを用いたが、第2の実施形態では、
図3、
図4に示すように、外形がL字状の筆記芯35を保持体40に装着した点で相違するものである。
第2の実施形態の筆記芯35の筆記部36は、上記実施形態の筆記部と同様の形状となっており、筆記しやすい傾きとなるように、傾斜状(ナイフカット状)となっている。筆記芯35では、筆記部36の端部側から薄板体37が一体に連設されており、外形がL字状に形成され、該薄板体37の断面は矩形形状となっている。
保持体40は、
図4に示すように、上記筆記芯35の筆記部36、薄板体37を固定して、筆記具本体10の先軸16先端開口部に固着されるものであり、上記
図1の実施形態では薄板体31、31を取り付けるための取付面を上下に形成したものであったが、本実施形態では、外形がL字状であるので、保持体40の下側のみに取り付ける形態となっている。
【0065】
第2実施形態の筆記具Bにあっても、ペン先20を見せるために、透明性を有する材料でかつ内容積の大きいキャップ60を使用した場合には、温度変化や温度勾配のある環境下、例えば、直射日光が当たるところや、暖房の噴出し口近くに置かれる場所、PCなどの熱源のそばに置かれるところや、電気カーペット等に誤った置いた場合などでも、キャップ60、70の水性塗布液となる筆記具用水性インクと接触する表面部は、水に対する接触角が80°以下、特に好ましくは20°以上50°以下となるものであり、キャップ60内での結露の発生もなく、見栄えを損なうことがなく、また、ペン先20、50の形状や水性インクの色調(例えば、インク色が黄色、ピンク等)をキャップ60、70を通して視認することができるため筆記具品質、商品価値の高い筆記具が得られることとなる(この点については、更に後述する実施例等で詳述する)。
【0066】
また、この第2実施形態の筆記具Bでは、筆記芯35は、外形がL字状であるので、
図1の外形がU字状のものよりも、視認部43の上面側には薄板体31を装着しない構造となるので、遮るものはなく、その分視認部の面積を拡大でき、また、上記筆記芯35の保持体40の側面と当接する部分を断面矩形形状とすることにより、底面側は断面積に対する視認部43の幅を広げることができ、しかも、保持体40の視認部43の外周縁を傾斜状の屈折面43a、43aとすることにより、矩形断面を細く見せることができ、視認部43の面積を
図1よりも更に広く見せることができることとなる。
【0067】
この第2実施形態のペン先20は、
図1の筆記具と同様に取り付けられるものであり、筆記方向を視認することができる視認部(窓部)43を有するものであり、インク吸蔵体15の水性インクは筆記芯36の毛細力により筆記部35に到達し、筆記に供されるものとなる。筆記の際に、視認部(窓部)43で視認側を見れば、ひき始めの位置を合わせやすくなり、また、引き終わりの止めたい部分でピタッと止めることができ、引きすぎや、はみ出しを防ぐことができるものとなる。
【0068】
第2実施形態では、ペン先20は、インク吸蔵体15からの水性インクの誘導を筆記部35の厚さよりも薄く、流出性のある筆記芯35の薄板体37を介して筆記部36まで誘導するものであり、また、この薄板体37は上記
図1の実施形態よりもインク供給力に優れた素材を用いたものから構成されているので、インク流出性が良好であり、太く設計する必要がなく、視認部43が阻害されず、また、上記筆記芯35の保持体40の側面と当接する部分を断面矩形形状とすることにより、断面積に対する視認部43の幅を広げることができると共に、保持体40の視認部43の外周縁を傾斜状の屈折面43a、43aとすることにより、矩形断面を細く見せることができるので、右利きで左から右方向に筆記する際に、視認部43で筆記方向を視認しながら筆記部36で描線を引くことなどができ、また、ペン先全体に対する視認部の有効面積の最大化と共に、上記特性の薄板体37により一体構成の筆記部36へ効率よくインクが供給されるので、そのインク流出性も良好で有り、インクの流出性を損なうことなく、
図1の実施形態よりも視認部43の有効面積の最大化を達成することができる筆記具が得られるものとなる。
上記第1実施形態と同様に、水性インクに蒸発抑制剤を含有してもよいものである。
軸筒、継手部材、及びキャップは、塗布部材および塗布具内部への視認性の観点から、透明性(視認性)を有するものを用いることがより好ましい。
【0069】
<第3実施形態の筆記具:全体構成:
図5~
図6>
第3実施形態の筆記具Cは、マーキングペンタイプの筆記具であり、少なくとも、水性インクが内蔵される軸筒80と、該軸筒80の先端側に設けた水性インクが吐出可能なペン先90と、該軸筒80のペン先90側に着脱自在に装着される透明性を有する材料にて形成されたキャップ65と、を備えた筆記具Cであって、キャップ65の水性塗布液となる筆記具用水性インクと接触する表面部は、水に対する接触角が80°以下、好ましくは、70°以下、更に、60°以下、特に50°以下となるものである。
用いる水性インクは、上記第1実施形態で詳述した水性インクを用いるものであるので、その説明を省略する。
【0070】
第3実施形態の筆記具Cは、
図5~
図6に示すように、筆記具本体を構成する軸筒80、インク吸蔵体85、インク誘導芯95、ペン先90、キャップ体65を備えている。
軸筒80は、上記第1実施形態の軸筒10と同様の材料などで構成されるものであり、上記特性の水性インクを含浸したインク吸蔵体85を収容する有底筒状の後軸81と、ペン先40を固着する先軸86とを有している。
後軸81は、例えば、PP等からなる合成樹脂を使用して長い有底楕円筒形に成形され、筆記具の本体(軸筒)として機能する。この後軸81は、
図5(a)~(c)に示すように、後端側内部にインク吸蔵体85の後端部を保持する保持片からなる保持部材82が設けられており、後軸全体及び後述する先軸は不透明又は透明(及び半透明)に成形されるが、外観上や実用上の観点からいずれを採用しても良い。また、後軸81のペン先側の開口部に先軸86が嵌合等により固着される構造となっている。
インク吸蔵体85は、上記第1実施形態のインク吸蔵体15と同様の材料などで構成されるものである。
【0071】
インク誘導芯95は、インク吸蔵体85の水性インクを後述する保持体96に形成した挿着孔97内に挿着されるものであり、インク吸蔵体15、85と同様に繊維束、フェルト等の繊維束を加工した繊維束芯、または、硬質スポンジ、樹脂粒子焼結体等からなる樹脂粒子多孔体、スライバー芯等の連続気孔(流路)を有するものであり、インク吸蔵体85に含浸された上述の蒸気圧特性又は配合特性の水性インクをインク誘導芯95を介してペン先90の筆記部となるペン芯98へ供給できるものであれば、特にその形状、構造等は限定されるものでない。このインク誘導芯95の断面形状としては、例えば、円、楕円、正方形、長方形、台形、平行四辺形、ひし形、カマボコ形、半月形の形状が挙げられ、本実施形態では、断面形状が円形状となっている。
ペン先90は、筆記部となるペン芯98と、該ペン芯98を保持し、筆記部にインクを供給するための上記インク誘導芯95を有する保持体96とを備えている。
【0072】
このように構成されるペン先90全体又は保持体96は、視認性を有する材料、例えば、PP、PE、PET、PEN、ナイロン(6ナイロン、12ナイロン等の一般的なナイロン以外に非晶質ナイロン等を含む)、アクリル、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ABS等の材料から構成されるものであり、可視光線透過率が50%以上となる材料から構成されることが好ましい。
また、ペン先90全体又は保持体96は、上記各材料の一種類、または、耐久性、視認性の更なる向上の点などから、2種類以上の材料を用いて構成することができ、2種類以上の材料で構成する場合は、少なくとも一つが可視光線透過率50%以上となる材料から構成されているものが好ましく、射出成形、ブロー成形などの各種成形法により成形することができる。
【0073】
図6(a)は、本実施形態の筆記具Cにおいてキャップを取り外した状態の一例を示し、保持体96が視認性を有する材料で構成された図面であり、
図6(b)は保持体96が視認性を有しない材料で構成された図面である。
本本実施形態の筆記具Cでは、筆記具の軸筒を構成する後軸81内にインクを吸蔵したインク吸蔵体85、インク誘導芯95を保持し、ペン芯98を取り付けたペン先90、先軸86を順次嵌合等により取り付けることにより、簡単に筆記具Cを作製することができるものである。
【0074】
キャップ65は、先軸86に嵌合等により着脱自在に取り付けられるものであり、上記第1実施形態と同様に、水性塗布液となる筆記具用水性インクと接触する表面部は、水に対する接触角が80°以下、好ましくは、70°以下、更に好ましくは、60°以下、特に好ましくは50°以下となるように成形され、ペン芯98を保護する内キャップ部66と、筒状型の外キャップ部67とから構成されている。また、内キャップ部66と、外キャップ部67との付け根箇所には、誤飲防止用のキャップ通気孔68が形成れている。さらに、上記内キャップ部66は内面66aに上述の親水化処理を施すと共に、曲面とすることで内キャップ66内部の水滴のダマを防ぐことができる構造となっている。
このキャップ65は、上記特性と共に、上記第1実施形態のキャップと同様に、透明性(視認性)を有する材料で、外部からキャップ65を介してペン先90を見る(視認する)ことができるものとなっている。
【0075】
このように構成される本実施形態の筆記具Cでは、上記第1実施形態及び第2実施形態と同様に、キャップ65内での結露の発生もなく、見栄えを損なうことがなく、また、ペン先90の形状や水性インクの色調(例えば、インク色が黄色、ピンク等)をキャップ65を通して視認することができるため筆記具品質、商品価値の高い筆記具が得られることとなる。
また、インク吸蔵体85からの上記特性の水性インクをインク誘導芯95、ペン芯98へと毛管力作用により連続的にかつ効率良く供給できるので、適切なインク流量を確保して筆記時の掠れを防止し、筆記流量の安定とインク吸蔵体85の水性インクを十分に使い切ることができる筆記具が得られるものである。
更に、ペン先90は、上述の如く、筆記部となるペン芯98と、該ペン芯98を保持し、筆記部にインクを供給するためのインク誘導芯95を少なくとも1つ有する保持体96を備えたものであり、インク吸蔵体85に含まれる水性インクを、保持体96に設けたインク誘導芯95を介して供給する共に、上記保持体96が、
図6(a)に示すように、視認性を有する材料で構成しているので、当該保持体96においてインク誘導芯95以外の全面(全体)が、筆記方向を視認できる視認部となるものであり、視認部の面積比率を、先軸86先端部より突出したペン先の40%以上とすることができ、好ましくは、ペン先の保持体96側面の視認部も、40%以上とし、更に、インク誘導部97を保持体96の長手方向中央部に形成し、インク誘導部97の幅方向の長さ、直径、断面積等を好ましい所定の範囲に好適に設定することにより、従来よりも筆記方向に書いてある文字を確実に読むことができる十分な視認性が付与することができると共に、終筆まで使用可能な筆記具が提供されるものとなる。
また、本実施形態では、ペン芯98が凸曲面となっており、筆記角が安定しなくとも太さの変化を少ない安定して筆記できる構成となっている。また、インク誘導芯95は保持体96の挿着孔97に挿入され、保持体96の中央部に配置しない構成、保持体96の中央部より外側に配置(挿着孔97を偏在させる配置)とすることで保持体96が透明性(視認性)を有する場合、視認面積が広くなったようにみせることができる。なお、
図6(b)は、保持体96が視認性を有しない材料で構成された図面であり、この場合は、インク誘導芯95は視認できない構造となっている。
軸筒、継手部材、及びキャップは、透明性を有しない樹脂成形品材料(非視認性の材料)や、透明性(視認性)を有する樹脂成形品材料などで構成することができるが、なかでも、塗布部材および塗布具内部の視認性の観点から、透明性(視認性)を有するものを用いることがより好ましい。
【0076】
<第4実施形態の塗布具:全体構成:
図7~
図8>
第4実施形態の塗布具は、液体化粧料塗布具とした形態である。この液体化粧料塗布具としては、少なくとも塗布部と塗布液貯蔵部を備え、該塗布部は穂筆からなり、該穂筆の繊維は断面が円形以外のものを含み、前記塗布液貯蔵部に液体化粧料組成物が貯蔵されたものであり、塗布部となる穂筆はインナーキャップを有するキャップにより保護されるものである。
この形態の液体化粧料塗布具としては、
図7~
図8に示す、液体化粧料塗布具Dが挙げられる。
【0077】
この実施形態の液体化粧料塗布具Dは、
図7に示すように、塗布具本体(軸筒)となる軸本体100の前方内部に設けられた上記構成となる本開示の液体化粧料組成物である塗布液の貯留部(収容部)110と、前記軸本体100の前端部に装着され、使用開始前は貯留部(収容部)110を密閉する栓体120と、前記栓体120に装着され、前記貯留部(収容部)110の密閉状態を維持し、前記栓体120から取り外されることにより、前記貯留部(収容部)110の密閉状態を開放し、塗布液を貯留部(収容部)110から吐出状態になすシールボール130を備えている。
【0078】
また、この液体化粧料塗布具Dは、前記軸本体100の前端部の外周面に取り外し可能に装着されたストッパー140と、使用開始時に前記ストッパー140が取り外されることによって、そのストッパー140の長さ分、軸方向に移動して軸本体100に直に接合する先軸200とを備えている。
この先軸200には、先軸本体210と、前記先軸本体210に装着された、貯留部110から穂筆(塗布部)230への塗布液の供給を可能とするパイプ継手220と、前記パイプ継手220と穂筆(塗布部)230とを繋ぐ塗布液導通管240とを備えている。
また、キャップ400は、内部にインナーキャップ410を有するものであり、先軸200に嵌合自在に取り付けられ、該キャップ400により塗布部となる穂筆230は保護される。
このインナーキャップ410を有するキャップ400は、インナーキャップ410を穂筆230側に常時附勢するコイル状スプリング部材420を除き、上述の第1実施形態と同様に、視認性を有する材料で、かつ、上述の濡れ剤を含有することにより水性塗布液となる液体化粧料と接触する表面部(インナーキャップ410及びキャップ400)は、水に対する接触角が80°以下、好ましくは、70°以下、更に、60°以下、特に50°以下となるものであり、これにより、インナーキャップ410を有するキャップ400内での結露の発生もなく、液体化粧料塗布具品質、商品価値の高い塗布具が得られることとなる。
【0079】
前記軸本体100の前方内部の貯留部(収容部)110に収容される水性塗布液となる液体化粧料組成物の配合組成は、特に限定されず、アイライナー、アイシャドウ、アイブロウなどの各用途により好適な配合組成となるものである。例えば、アイライナーなどでは、少なくとも、カーボンブラックなどの顔料、水溶性のアクリル系コポリマー、アクリレーツコポリマーを含むコア-シェル型のエマルジョン粒子、水系溶剤(水、炭素数6以下の低級アルコール、多価アルコールなど)を含むものが挙げられ、更に、前記各成分の他に、通常の液体化粧料に用いられる任意成分、具体的には、防腐剤、酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、キレート剤、1,3-ブチレングリコールなどの保湿剤、美容成分、香料、粘度・粘性調整剤、ポリエチレングリコールアルキルエーテルなどの他の分散剤などを、各用途の液体化粧料に応じて適宜量含有せしめることができる。また、上記顔料以外の無機顔料の他、必要に応じて、有機顔料、水溶性染料、樹脂粒子顔料などの他の色材を含有することができる。
【0080】
このように構成されているため、
図7に示す状態(使用開始前の状態)にあっては、ストッパー140が軸本体100に装着されているため、先軸200は移動することなく、貯留部(収容部)110を密閉する栓体120(シールボール130)によって、前記貯留部(収容部)110の密閉状態が維持される。
そして、
図8に示すように、使用開始時にストッパー140が取り外されることによって、先軸200は、ストッパー140の長さ分、軸方向に移動して、軸本体100に当接する。即ち、先軸200のパイプ継手220と前記栓体120とが接合し、パイプ継手220の先端部によって栓体120に装着されているシールボール130が取り外される。
その結果、貯留部(収容部)110の密閉状態が開放され、貯留部110から穂筆(塗布部)230への塗布液の供給が可能な状態になされる。
【0081】
また、前記軸筒本体100の後端部には、塗布液吐出機構300が設けられている。この塗布液吐出機構300は、天蓋310を回転することによって、ピストン320を所定距離前進させ、塗布液を所定量導出するように構成されている。また、穂筆230は、上記特性のキャップ400によって覆われている。
なお、
図7、8において、符号150は、塗布液となる液体化粧料を撹拌する撹拌ボールである。また前記塗布液吐出機構300については、本出願人が先に提案した特開2012-157611号公報に開示されている。前記塗布液吐出機構300は、天蓋310を回転させることにより、塗布液を導出する回転式のみならず、天蓋310を押圧することにより、塗布液を導出するノック式であっても良い。
【0082】
このように構成された液体化粧料塗布具Dにあっては、まずストッパー140を取り外し、上記特性のキャップ400(先軸本体210)を軸筒本体100の後方側へ押す(移動させる)。これにより、前記パイプ継ぎ手220の端部がシールボール130に当接し、前記シールボール130をシール受け120から取り外し、塗布液の供給可能な状態となす。
その後、キャップ400を取り外し、天蓋310を回転させ、ピストン310を所定距離前進させることにより、塗布液を穂筆230に対して所定量導出し、使用者の被塗布部位に対して塗布液を塗布する。
用いる穂筆230の形状、構造、材質などは、アイライナー、アイシャドウ、アイブロウ、または、皮膚に好適に塗布できるものであれば、特に限定されない。本実施形態では、先端がテーパ加工された直線状の合成繊維からなり、かつ断面が非円形状の異形断面の繊維(筆毛)の集合体から構成されると共に、断面形状が異なる複数の種類の筆毛から構成されている。異形断面の筆毛とは、筆毛の軸方向に垂直な面の形状が円形以外のものをいい、例えば、断面形状が略星型、略まゆ型、略十字状、略三角形状、略Y字状、略半円状、略矩形状等のものを挙げることができ、少なくとも1つ以上の突部を有する形状のものなどが挙げられる。合成繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート共縮合重合体等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン6、ナイロン610、ナイロン612等のポリアミド等の熱可塑性樹脂を溶融紡糸して得られた合成樹脂製繊維を挙げることができる。
【0083】
このように構成される液体化粧料塗布具Dでは、塗布部となる穂筆230を見せるために、透明性を有する材料でかつインナーキャップ410を有するキャップ400が使用され、温度変化や温度勾配のある環境下、例えば、直射日光が当たる場所や、暖房の噴出し口近くに置かれる場所、PCなどの熱源のそばに置かれる場所、電気カーペット等に誤った置いた場合などでも、インナーキャップ410を有するキャップ400の水性塗布液となる液体化粧料塗布液と接触する表面部(インナーキャップ410、キャップ400)は、水に対する接触角が80°以下、好ましくは、70°以下、更に、60°以下、特に50°以下となるものであり、これにより、キャップ400、更にインナーキャップ410内での結露の発生もなく、見栄えを損なうことがなく、また、穂筆230の形状や液体化粧料の色調(例えば、黒色等)をインナーキャップ410、キャップ400を通して視認することができるため液体化粧料塗布具品質、商品価値の高い塗布具が得られることとなる(この点については、更に後述する実施例等で詳述する)。
更に、液体化粧料に第1実施形態で上述した液体化粧料に沿う好適な被膜形成性成分を更に含有することで、穂筆230全体に薄い被膜を形成し、穂筆からの水分蒸発を抑制し、インナーキャップ410内等での液滴発生の抑制を更に防止してもよいものである。
【0084】
また、塗布部となる穂筆230に断面形状が異なる異形断面の複数種類の筆毛を用いた場合には、筆毛問の空隙(隙間)の減少が抑制され、筆の腰の強さを与えることができ、しかも、上記本開示の水系液体化粧料は皮膚上に塗布しても皮膚の上で掠れず、タレ落ち(ボタ落ち)の少ない低粘度でカーボンブラック等の顔料を含むので濃く描ける特性のものであるので、該水系液体化粧料の特性と、液体化粧料塗布具の構造特性との相乗作用により、塗布液となる水系液体化粧料を穂筆に十分に含ませることができ、快適に塗布することができる。しかも、本開示では、樹脂成分による分散されたカーボンブラックなどの顔料を色材として含むので、界面活性剤を含まない(界面活性剤フリーの)構成としても、訴求できるので、描線の固着性とクレンジング性とを高度に両立でき、アイシャドウ、アイライナー、アイブロウ、マスカラなどのメークアップ化粧料などの液体化粧料塗布具用に好適な水系液体化粧料を得ることができる。
本明細書は、色材としてカーボンブラックなどの顔料を含み、界面活性剤を含まない構成としても描線の固着性とクレンジング性とを高度に両立できる、アイシャドウ、アイライナー、アイブロウ、マスカラなどのメークアップ化粧料などに好適な液体化粧料塗布具が得られることとなる。
【0085】
本第4実施形態において、好適な液体化粧料塗布具としては、目元周りなどのポイントメイクに適したアイライナー、アイシャドウ、アイブロウ、または、皮膚に液体化粧料組成物(塗布液)を好適に塗布することができ、上記特性のインナーキャップ410を有するキャップ400を備えた構造となる液体化粧料塗布具であれば、特に限定されないが、好ましくは、使用性、簡便性、塗布性に優れる、中綿(液体化粧料吸蔵体)に液体化粧料を保持させる中綿式容器又は枚葉体に液体化粧料を保持させるコレクター式容器を有するものや、液体化粧料組成物が直接塗布液貯蔵部に貯蔵され、塗布液の吐出機構がノック式、回転(回動)式の液体化粧料塗布具などが挙げられる。
【0086】
上記各実施形態の筆記具A~C、液体化粧料塗布具Dでは、好ましい形態として、各キャップ60、65、70、並びに、インナーキャップ410を有するキャップ400を濡れ剤を含有して水に対する接触角が80°以下、特に好ましくは50°以下となる各キャップとしたが、このキヤップに濡れ剤を含有又は含有させずに、筆記具用部材となる前記軸筒10、80、100、及び/又は、継手部材となる先軸16、86、200のそれぞれを、上述の第1実施形態等と同様にして、上述の濡れ剤を含有した樹脂成形品から構成し、かつ、水性塗布液と接触する表面部を、水に対する接触角が80°以下、好ましくは、70°以下、更に、60°以下、特に50°以下としてもよいものである。
また、上記各実施形態の筆記具A~Cでは、インク吸蔵体15、85に上記第1実施形態の水性インクを吸蔵するタイプを説明したが、軸筒のペン先側に着脱自在に装着される透明性(視認性)を有する材料又は透明性を有しない(非視認性の)材料にて形成され、濡れ剤を含有して水に対する接触角が80°以下、好ましくは、70°以下、更に、60°以下、特に50°以下となるキャップを備えるものであれば、直液式の筆記具、例えば、軸筒内に直接水性インクを収容し、中継芯を介してペン先の筆記部に水性インクを供給するコレクター形式などの筆記具であってもよいものである。
また、上記実施形態A~Cの各筆記具では、ペン先20、90は筆記方向が視認できる窓部を有するものであったが、軸筒のペン先側に着脱自在に装着される透明性(視認性)を有する材料又は透明性を有しない(非視認性の)材料にて形成されたキャップを備えるものであれば、ペン先の形状、構造は特に限定されないものである。
更に、軸筒、継手部材、及びキャップは、透明性を有しない樹脂成形品材料(非視認性の材料)や、透明性(視認性)を有する樹脂成形品材料などで構成することができるが、なかでも、塗布部材および塗布具内部の視認性の観点から、透明性(視認性)を有するものを用いることがより好ましい。
【実施例0087】
〔実施例1~14及び比較例1~2:
図1及び
図2に準拠の筆記具形態の塗布具〕
下記各構造の筆記具形態の塗布具7種:塗布具1~7を用いた。また、この塗布具に搭載する下記組成の水性塗布液(筆記具用水性インク)2種を用いた。
得られた各塗布具に、水性塗布液(筆記具用水性インク)2種を収容して塗布具を作製した。得られた各塗布具を用いて、下記各評価方法により、結露の有無と塗布性能について、評価した。これらの結果を下記表1に表す。
【0088】
(塗布具1~7の構成)
下記構成及び
図1~
図2に準拠する塗布部材となるペン先、塗布具(三菱鉛筆社製、商品名「プロパス・ウインドウ」、PUS-102T準拠)を使用した。ペン先、保持体等の寸法、物性等は下記に示すものを使用した。
(塗布部材となるペン先50の構成)
アクリル樹脂製、可視光線透過率85%〔スガ試験機社製、多光源分光測色計(MSC-5N)にて反射率を測定し、可視光線透過率(透過度)とした。〕
視認部(窓部)43(四角形)の大きさ:10mm×8mm×5mm×5mm
視認部の幅:3mm
筆記芯30:薄板体31、31の構成:ポリエチレン製焼結芯、幅方向長さ:2mm、長手方向長さ:20mm、厚さ:0.5mm、筆記部25:ポリエチレン製焼結芯、気孔率:50%、4×3×6mm、厚さ=3mm、長手方向長さ=5mm
インク吸蔵体15:PET繊維束、気孔率85%、φ6×80mm
筆記具本体(軸筒)10、キャップ60及び70は、ポリプロピレン(PP)製
塗布部材50:ポリエステル製繊維束芯、気孔率60%、φ2×40mm
キャップ60として、ポリプロピレン(プライムポリマー社製、J207RT)、濡れ剤として、ステアリン酸モノグリセリドを、0質量%(含有せず)、0.01質量%、0.1質量%、1質量%、5質量%、10質量%、20質量%、30質量%を含有し(全体量で100質量%となるように上記ポリプロピレンの使用量を調整して)射出成形したキャップ60〔透過度:70%〕を成形し、全7種の塗布具を作製した。
【0089】
用いた水性塗布液(筆記具用水性インク)2種は、下記組成の常法により調製して用いた。
(水性塗布液1の配合組成)
着色剤 :NKW-4805黄 40.0質量%
pH調製剤 :トリエタノールアミン 1.0質量%
水溶性溶剤 :プロピレングリコール 5.0質量%
水(精製水): 54.0質量%
(水性塗布液2の配合組成)
上記水性塗布液1に被膜形成剤として、グリシンベタインを1質量%加え(但し、水性塗布液1の全量が100質量%となるように水を調整して)水性塗布液1と同様に調製して水性塗布液2を調製した。
【0090】
(結露の有無の評価方法)
得られた各塗布具を用いて、ホットカーペット(製品内温度32℃等)上において12時間または24時間放置して、下記評価基準でキャップ60、70内の結露の有無を評価した。
評価基準:
A:結露なし。
B:少し曇っている。
C:大部分曇って液滴が発生している。
D:液が溜まっている。
【0091】
(塗布性能の評価方法)
得られた各塗布具を用いて、ホットカーペット(製品内温度32℃等)上において12時間または24時間放置した各塗布具を用いて、塗布性能を評価した。筆記用紙に20cm直線筆記した描線について、初期の描線状態との比較を行った。下記の基準で評価を行った。
評価基準:
A:描線状態は初期と変化なく良好である。
B:一部に、描線かすれや、色相低下がみられる。
C:全体的に、描線かすれや、色相低下がみられる。
D:謙虚な描線かすれや、色相低下がみられる。
【0092】
【0093】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1~14の各筆記具用水性インク組成物を搭載した塗布具は、本発明の範囲外となる比較例1~2に較べ、透明性を有する材料にて形成されたキャップが装着される塗布具であっても、塗布性能を損なうことなく、キャップ内での結露の発生もなく、見栄えを損なうことがなく、更に、ペン先の形状や水性インクの色調を透過性のあるキャップを通して視認することができるため、筆記具品質、商品価値の高い塗布具が得られることが確認された。
【0094】
また、実施例1~14の各筆記具は、
図1~
図2に準拠するものであり、インク吸蔵体15からのインクの誘導を筆記部25の厚さよりも薄く、流出性のある薄板体31、31で筆記部25まで誘導するものであり、また、この筆記部25、薄板体31、31を含む外形がU字状の筆記芯30は上記構成のポリエチレン製焼結芯から構成されているので、気孔率に対する毛管力の強さが大きく、しかも、その厚さは極めて薄くでき、インク流出性が良好であり、インク誘導部を太く設計する必要がなく、ペン先全体に対する視認部の有効面積の最大化と共に、上記特性の薄板体31、31により一体構成の筆記部25へ効率よくインクが供給されるので、そのインク流出性も良好で有り、インクの流出性を損なうことなく、視認部43の有効面積の最大化を達成することができる塗布具が得られることが確認された。
【0095】
〔実施例15~24及び比較例3~4:
図7及び
図8に準拠の化粧料塗布具〕
下記各構造の化粧料塗布具1種:塗布具7~12を用いた。また、この塗布具に搭載する下記組成の水性塗布液(液体化粧料)2種を用いた。
得られた各塗布具に、水性塗布液(液体化粧料)2種を収容して塗布具を作製した。得られた各塗布具を用いて、下記上述の各評価方法により、結露の有無と塗布性能について、評価した。これらの結果を下記表2に表す。
【0096】
(塗布具7~12の構成)
下記構成及び
図7~
図8に準拠する塗布部材、化粧料塗布具を使用した。
キャップ400(中キャップ410含む):濡れ剤として、ステアリン酸モノグリセリド1質量%と、ポリプロピレン99質量%とを射出成形してキャップ400〔透過度:70%〕を成形した。
スプリング部材420:ステンレス製
先軸本体210:ポリプロピレン製
軸筒本体100:ポリプロピレン製
パイプ継ぎ手220:ポリプロピレン製
シールボール13:ステンレス製
シール受け120:低密度ポリエチレン製
穂筆230:ポリブチレンテレフタレート製を溶融紡糸して得られた合成樹脂製繊維
【0097】
用いた水性塗布液(液体化粧料)2種は、下記組成の常法により調製して用いた。
(水性塗布液3の配合組成)
着色剤 :酸性染料:黒色401号 0.2質量%
:酸性染料:紫色401号 0.3質量%
:酸性染料:橙色205号 0.4質量%
水溶性溶剤 :ベンジルアルコール 42.5質量%
水(精製水): 56.6質量%
(水性塗布液4の配合組成)
上記水性塗布液1に(但し、水性塗布液1の全量が100質量%となるように水を調整して)被膜形成剤として、トリメチロールプロパン(TMP)1質量%を加え、水性塗布液3と同様に調製して水性塗布液2を調製した。
【0098】
【0099】
上記表2の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例15~24の各液体化粧料塗布具は、本発明の範囲外となる比較例3~4に較べ、透明性を有する材料にて形成されたキャップが装着される塗布具であっても、キャップ内での結露の発生もなく、塗布性能も良好であり、見栄えを損なうことがなく、更に、塗布部材となる穂筆の形状や化粧料塗布液の色調を透過性のあるキャップを通して視認することができるため、化粧料塗布、商品価値の高い塗布具が得られることが確認された。