(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141832
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】光コヒーレンストモグラフィ装置、その制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053679
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】三輪 珠美
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB03
4C316AB11
4C316AB16
4C316FY04
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】装置の大型化を最小限に抑えつつ、計測精度の低下を招くことなく深さレンジを変更するための新たな技術を提供する。
【解決手段】光コヒーレンストモグラフィ装置は、測定光を被測定物に照射し、被測定物からの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光との干渉光を生成する干渉光学系と、可撓性を有し、干渉光を導く導光部材と、導光部材の出射端から出射された干渉光をコリメートするコリメートレンズと、格子パターンのピッチが互いに異なり、コリメートレンズによりコリメートされた干渉光の光路に選択的に配置可能な2以上の回折格子と、干渉光の光路に配置された回折格子により分光された光を集光する集光レンズと、集光レンズを通過した光を受光するイメージセンサと、干渉光の光路に配置された回折格子に応じて、コリメートレンズの光軸に対して導光部材の出射端をシフトするシフト機構とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの低コヒーレンス光を測定光と参照光とに分割し、前記測定光を被測定物に照射し、前記被測定物からの前記測定光の戻り光と参照光路を経由した前記参照光との干渉光を生成する干渉光学系と、
可撓性を有し、前記干渉光を導く導光部材と、
前記導光部材の出射端から出射された前記干渉光をコリメートするコリメートレンズと、
格子パターンのピッチが互いに異なり、前記コリメートレンズによりコリメートされた前記干渉光の光路に選択的に配置可能な2以上の回折格子と、
前記干渉光の光路に配置された回折格子により分光された光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズを通過した光を受光するイメージセンサと、
前記干渉光の光路に配置された回折格子に応じて、前記コリメートレンズの光軸に対して前記導光部材の前記出射端をシフトするシフト機構と、
を含む、光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項2】
前記2以上の回折格子は、前記コリメートレンズの後側焦点位置に配置されるように前記干渉光の光路に選択的に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項3】
前記干渉光の光路に配置される回折格子が切り替えられたとき、前記シフト機構は、リトロー配置が維持されるように前記出射端をシフトする
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項4】
前記干渉光の光路に配置される回折格子への入射角の変更量をθとし、前記コリメートレンズの焦点距離をfcとし、前記回折格子に形成された格子パターンが第1方向にのびるとき、前記シフト機構は、前記第1方向に直交する第2方向に前記出射端を(fc×tanθ)だけシフトする
ことを特徴とする請求項3に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項5】
前記2以上の回折格子は、
第1ピッチの格子パターンが形成された第1回折格子と、
前記第1ピッチより広い第2ピッチの格子パターンが形成された第2回折格子と、
を含み、
深さ方向の計測範囲が第1深さ範囲であるとき前記第1回折格子を前記干渉光の光路に配置し、前記計測範囲が前記第1深さ範囲より狭い第2深さ範囲であるとき前記第2回折格子を前記干渉光の光路に配置する
ことを特徴とする請求項4に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項6】
前記干渉光学系は、前記計測範囲が前記第1深さ範囲であるときの前記参照光の光量を、前記計測範囲が前記第2深さ範囲のときの参照光の光量より増加させるアッテネータを含む
ことを特徴とする請求項5に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項7】
前記イメージセンサにより得られた受光結果に基づいて、前記被測定物の断層画像を形成する画像形成部を含む
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項8】
前記イメージセンサは、前記干渉光の光路に配置された回折格子に形成された格子パターンの配列方向に対応した方向に2以上の受光素子が配列されたラインセンサである
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置。
【請求項9】
光源からの低コヒーレンス光を測定光と参照光とに分割し、前記測定光を被測定物に照射し、前記被測定物からの前記測定光の戻り光と参照光路を経由した前記参照光との干渉光を生成する干渉光学系と、
可撓性を有し、前記干渉光を導く導光部材と、
前記導光部材の出射端から出射された前記干渉光をコリメートするコリメートレンズと、
格子パターンのピッチが互いに異なる2以上の回折格子と、
前記干渉光の光路に配置された回折格子により分光された光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズを通過した光を受光するイメージセンサと、
前記コリメートレンズの光軸に対して前記導光部材の出射端をシフトするシフト機構と、を含む、光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法であって、
前記コリメートレンズによりコリメートされた前記干渉光の光路に前記2以上の回折格子を選択的に配置する回折格子配置制御ステップと、
前記回折格子配置制御ステップにおいて前記干渉光の光路に配置された回折格子に応じて、前記シフト機構により前記出射端をシフトするシフト制御ステップと、
を含む、光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法。
【請求項10】
前記回折格子配置制御ステップは、前記コリメートレンズの後側焦点位置に配置されるように前記2以上の回折格子を前記干渉光の光路に選択的に配置する
ことを特徴とする請求項9に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法。
【請求項11】
前記干渉光の光路に配置される回折格子が切り替えられたとき、前記シフト制御ステップは、リトロー配置が維持されるように前記出射端をシフトする
ことを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法。
【請求項12】
前記干渉光の光路に配置される回折格子への入射角の変更量をθとし、前記コリメートレンズの焦点距離をfcとし、前記回折格子に形成された格子パターンが第1方向にのびるとき、前記シフト制御ステップは、前記第1方向に直交する第2方向に前記出射端を(fc×tanθ)だけシフトする
ことを特徴とする請求項11に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法。
【請求項13】
前記2以上の回折格子は、
第1ピッチの格子パターンが形成された第1回折格子と、
前記第1ピッチより広い第2ピッチの格子パターンが形成された第2回折格子と、
を含み、
前記回折格子配置制御ステップは、深さ方向の計測範囲が第1深さ範囲であるとき前記第1回折格子を前記干渉光の光路に配置し、前記計測範囲が前記第1深さ範囲より狭い第2深さ範囲であるとき前記第2回折格子を前記干渉光の光路に配置する
ことを特徴とする請求項12に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法。
【請求項14】
前記干渉光学系は、前記参照光の光量を増加させるアッテネータを含み、
前記回折格子配置制御ステップは、前記計測範囲が前記第1深さ範囲であるときの前記参照光の光量を、前記計測範囲が前記第2深さ範囲のときの参照光の光量より増加させるように前記アッテネータを制御する
ことを特徴とする請求項13に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法。
【請求項15】
前記イメージセンサにより得られた受光結果に基づいて、前記被測定物の断層画像を形成する画像形成ステップを含む
ことを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法。
【請求項16】
コンピュータに、請求項9又は請求項10に記載の光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法の各ステップを実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コヒーレンストモグラフィ装置、その制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:OCT)は、光の干渉性を利用してサンプル内部を画像化する技術であり、医用イメージングや非破壊検査を含む様々な分野において実用化されている。このようなOCTとして、高速測定が可能なフーリエドメインOCTが用いられることが多い。
【0003】
フーリエドメインOCTには、スペクトラルドメインOCT(Spectral Domain-OCT:SD-OCT)と、スウェプトソースOCT(Swept source-OCT:SS-OCT)とがある。SD-OCTでは、SS-OCTに比べて、深さ方向の計測範囲(深さレンジ)が狭くなることが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、SD-OCTにおける分光器において、回折格子により分光された光を集光するレンズの焦点距離を変更することで分光特性を変更し、深さレンジを変更する手法が開示されている。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、互いに分光特性が異なるように構成された複数の分光手段を用いて、複数の部位を同時にスキャンするように構成されたOCT装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-101927号公報
【特許文献2】特開2010-249584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された手法では、焦点距離の変更により受光素子におけるNA(Numerical Aperture)が変化し、深さ方向に深い位置に相当する干渉信号の減衰が大きくなり、干渉感度の低下を招く。また、回折格子への入射角度を変更するため、回折効率が低下する。このように、特許文献1に開示された手法では、OCTの計測精度の低下を招く。
【0008】
また、特許文献2に開示された手法では、複数の分光手段を設ける必要があるため、装置の大型化を招く。
【0009】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、装置の大型化を最小限に抑えつつ、計測精度の低下を招くことなく深さレンジを変更するための新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
いくつかの実施形態の1つの態様は、光源からの低コヒーレンス光を測定光と参照光とに分割し、前記測定光を被測定物に照射し、前記被測定物からの前記測定光の戻り光と参照光路を経由した前記参照光との干渉光を生成する干渉光学系と、可撓性を有し、前記干渉光を導く導光部材と、前記導光部材の出射端から出射された前記干渉光をコリメートするコリメートレンズと、格子パターンのピッチが互いに異なり、前記コリメートレンズによりコリメートされた前記干渉光の光路に選択的に配置可能な2以上の回折格子と、前記干渉光の光路に配置された回折格子により分光された光を集光する集光レンズと、前記集光レンズを通過した光を受光するイメージセンサと、前記干渉光の光路に配置された回折格子に応じて、前記コリメートレンズの光軸に対して前記導光部材の前記出射端をシフトするシフト機構と、を含む、光コヒーレンストモグラフィ装置である。
【0011】
いくつかの実施形態の別の態様は、光源からの低コヒーレンス光を測定光と参照光とに分割し、前記測定光を被測定物に照射し、前記被測定物からの前記測定光の戻り光と参照光路を経由した前記参照光との干渉光を生成する干渉光学系と、可撓性を有し、前記干渉光を導く導光部材と、前記導光部材の出射端から出射された前記干渉光をコリメートするコリメートレンズと、格子パターンのピッチが互いに異なる2以上の回折格子と、前記干渉光の光路に配置された回折格子により分光された光を集光する集光レンズと、前記集光レンズを通過した光を受光するイメージセンサと、前記コリメートレンズの光軸に対して前記導光部材の出射端をシフトするシフト機構と、を含む、光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法である。光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法は、前記コリメートレンズによりコリメートされた前記干渉光の光路に前記2以上の回折格子を選択的に配置する回折格子配置制御ステップと、前記回折格子配置制御ステップにおいて前記干渉光の光路に配置された回折格子に応じて、前記シフト機構により前記出射端をシフトするシフト制御ステップと、を含む。
【0012】
いくつかの実施形態の更に別の態様は、コンピュータに、上記の光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法の各ステップを実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装置の大型化を最小限に抑えつつ、計測精度の低下を招くことなく深さレンジを変更するための新たな技術を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
【
図2】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
【
図3】実施形態に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図4】実施形態に係る眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図5】実施形態に眼科装置の制御系の構成の一例を表す概略図である。
【
図6】実施形態に眼科装置の制御系の構成の一例を表す概略図である。
【
図7】実施形態に眼科装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図8】実施形態に眼科装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図9A】実施形態に眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【
図9B】実施形態に眼科装置の動作を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明に係る光コヒーレンストモグラフィ装置、光コヒーレンストモグラフィ装置の制御方法、及びプログラムの実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態において、この明細書において引用されている文献に記載された技術を任意に援用することが可能である。
【0016】
実施形態に係る光コヒーレンストモグラフィ(OCT)装置は、干渉光学系と、導光部材と、コリメートレンズと、2以上の回折格子と、集光レンズと、イメージセンサと、シフト機構とを含む。干渉光学系は、光源からの低コヒーレンス光を測定光と参照光とに分割し、測定光を被測定物に照射し、被測定物からの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光との干渉光を生成するように構成される。導光部材は、可撓性を有し、干渉光を後述のコリメートレンズに導くように構成される。コリメートレンズは、導光部材の出射端から出射された干渉光をコリメートする。2以上の回折格子は、格子パターンのピッチが互いに異なり、コリメートレンズによりコリメートされた干渉光の光路に選択的に配置されるように構成される。集光レンズは、干渉光の光路に配置された回折格子により分光された光を集光する。イメージセンサは、集光レンズを通過した光を受光する。シフト機構は、干渉光の光路に配置された回折格子に応じて、コリメートレンズの光軸に対して導光部材の出射端を当該光軸に交差(直交)する方向にシフトする。
【0017】
ここで、回折格子は、透過型の回折格子又は反射型の回折格子であってよい。格子パターンのピッチ(単位:mm)は、入射光が透過する基板の溝構造周期若しくは屈折率変化の周期、又は、入射光が反射する基板の溝構造周期に相当する。これにより、格子パターンのピッチに応じて、角度分散(波長の単位変化あたりの回折角度の変化量)を変更することができるため、受光素子により検出される光の波長範囲を変更することができる。OCTでは、受光素子に入射する光の波長範囲が広いほどOCTの深さ方向の計測範囲(深さレンジ)が狭くなり、深さ方向の解像度が上がる。すなわち、干渉光を分光する回折格子の格子パターンのピッチを変更することで、OCTの深さ方向の計測範囲(深さレンジ)を変更することが可能になる。従って、装置の大型化を最小限に抑えつつ、深さレンジを変更することが可能になる。
【0018】
このとき、各回折格子は、固有の1次回折光の進行方向が光軸方向に略一致し、且つ、イメージセンサにおける1次回折光の受光量が最大となるように干渉光の光路に配置することができる。更に、各回折格子は、固有の最適入射角となるように、干渉光を出射する導光部材の出射端をコリメートレンズの光軸に対して交差する方向にシフトさせることができる。それにより、回折効率が最大となり、回折効率を低下させることなく深さレンジを変更することができる。
【0019】
また、イメージセンサ(受光素子)におけるNAは、集光レンズの焦点距離と、回折格子により分光された光の光束径とにより決まる。上記の構成によれば、焦点距離の変更や分光された光が通過する光学素子の位置の変更を伴わないため、回折格子により分光された光を受光するイメージセンサにおけるNAが変化しない。これにより、深さ方向における深い位置に相当する干渉信号が減衰せず、干渉感度は低下しない。すなわち、OCTの計測精度の低下を招くことなく、深さレンジを変更することが可能になる。
【0020】
被測定物の例として、眼、皮膚などの生体組織、歯などの組織、非破壊検査や非接触検査の検査対象物、又は、非侵襲測定の測定物などがある。格子パターンのピッチの広狭は、空間周波数(単位:lp/mm)、格子周波数(単位:本/mm)、線密度(単位:ライン数/mm)、又は、溝本数(単位:本/mm)の低高で表すこともできる。
【0021】
実施形態に係る情報処理装置は、上記のOCT装置の制御方法をソフトウェア処理により実現する。実施形態に係る情報処理方法は、上記の情報処理装置により実行される1以上のステップを含む。実施形態に係るプログラムは、実施形態に係るOCT装置の制御方法の各ステップをコンピュータ(プロセッサ)に実行させる。実施形態に係る記録媒体は、実施形態に係るプログラムが記録(記憶)されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体(記憶媒体)である。
【0022】
本明細書において、プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を含む。プロセッサは、例えば、記憶回路又は記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。記憶回路又は記憶装置がプロセッサに含まれていてよい。また、記憶回路又は記憶装置がプロセッサの外部に設けられていてよい。
【0023】
以下の実施形態では、被測定物は眼であり、実施形態に係るOCT装置は、眼に対してOCT計測を実行可能な眼科装置であるものとする。しかしながら、実施形態に係るOCT装置は、眼科装置に限定されるものではない。
【0024】
実施形態に係る眼科装置は、更に、眼底カメラ、走査型光検眼鏡、スリットランプ検眼鏡、手術用顕微鏡等のうちのいずれか1つ以上の機能を有していてもよい。実施形態に係る眼科装置は、更に、眼科測定装置及び眼科治療装置のうちのいずれか1つ以上を含んでいてもよい。眼科測定装置は、例えば、眼屈折検査装置、眼圧計、スペキュラーマイクロスコープ、ウェーブフロントアナライザ、視野計、マイクロペリメータ等のうちのいずれか1つ以上である。眼科治療装置は、例えば、レーザー治療装置、手術装置、手術用顕微鏡等のうちのいずれか1つ以上である。
【0025】
以下の実施形態では、眼科装置は、光干渉断層計と眼底カメラとを含む。この光干渉断層計は、スペクトラルドメインOCTの機能を実現する。
【0026】
以下、x方向は、対物レンズの光軸方向に直交する水平方向(左右方向)であり、y方向は、対物レンズの光軸方向に直交する垂直方向(上下方向)であるものとする。z方向は、対物レンズの光軸方向であるものとする。
【0027】
<構成>
〔光学系〕
図1に示すように、眼科装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100及び演算制御ユニット200を含む。眼底カメラユニット2には、被検眼Eの正面画像を取得するための光学系や機構が設けられている。OCTユニット100には、OCTを実行するための光学系や機構の一部が設けられている。OCTを実行するための光学系や機構の他の一部は、眼底カメラユニット2に設けられている。演算制御ユニット200は、各種の演算や制御を実行する1以上のプロセッサを含む。これらに加え、被検者の顔を支持するための部材(顎受け、額当て等)や、OCTの対象部位を切り替えるためのレンズユニット(例えば、前眼部OCT用アタッチメント)等の任意の要素やユニットが眼科装置1に設けられてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、眼科装置1は、表示装置3を含む。表示装置3は、演算制御ユニット200による処理結果(例えば、OCT画像等)や、眼底カメラユニット2により得られた画像や、眼科装置1を操作するための操作ガイダンス情報などを表示する。
【0029】
[眼底カメラユニット2]
眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efを撮影するための光学系が設けられている。取得される眼底Efの画像(眼底画像、眼底写真等と呼ばれる)は、観察画像、撮影画像等の正面画像である。観察画像は、近赤外光を用いた動画撮影により得られる。撮影画像は、フラッシュ光を用いた静止画像、又は分光画像(分光眼底画像、分光前眼部画像)である。更に、眼底カメラユニット2は、被検眼Eの前眼部Eaを撮影して正面画像(前眼部画像)を取得することができる。
【0030】
眼底カメラユニット2は、照明光学系10と撮影光学系30とを含む。照明光学系10は被検眼Eに照明光を照射する。撮影光学系30は、被検眼Eからの戻り光を検出する。被検眼Eからの戻り光は、被検眼Eに入射した照明光の散乱光(反射光)である。いくつかの実施形態では、被検眼Eからの戻り光には、被検眼Eに入射した照明光の散乱光(反射光)、及び、被検眼Eに入射した照明光を励起光とする蛍光及びその散乱光が含まれる。
【0031】
OCTユニット100からの測定光は、眼底カメラユニット2内の光路を通じて被検眼Eに導かれ、その戻り光は、同じ光路を通じてOCTユニット100に導かれる。
【0032】
照明光学系10の観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。更に、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17、18、絞り19及びリレーレンズ20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて被検眼E(眼底Ef又は前眼部Ea)を照明する。被検眼Eからの戻り光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、撮影合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。更に、この戻り光は、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、結像レンズ34によりイメージセンサ35の受光面に結像する。イメージセンサ35は、所定のフレームレートで戻り光を検出する。表示装置3には、イメージセンサ35からの出力に基づく画像(例えば、前眼部観察画像又は眼底観察画像)が表示される。なお、撮影光学系30のフォーカスは、眼底Ef又は前眼部Eaに合致するように調整される。
【0033】
撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。被検眼Eからの戻り光は、観察照明光の場合と同じ経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりイメージセンサ38の受光面に結像する。
【0034】
表示装置3には、イメージセンサ35により検出された眼底反射光に基づく画像(観察画像)が表示される。なお、撮影光学系30のピントが前眼部に合わせられている場合、被検眼Eの前眼部の観察画像が表示される。また、表示装置3には、イメージセンサ38により検出された眼底反射光に基づく画像(撮影画像、分光眼底画像)が表示される。なお、観察画像を表示する表示装置3と撮影画像を表示する表示装置3は、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。被検眼Eを赤外光で照明して同様の撮影を行う場合には、赤外の撮影画像が表示される。
【0035】
LCD(Liquid Crystal Display)39は固視標や視力測定用視標を表示する。LCD39から出力された光束は、その一部がハーフミラー33Aにて反射され、ミラー32に反射され、撮影合焦レンズ31を経由し、ダイクロイックミラー55を透過し、孔開きミラー21の孔部を通過する。孔開きミラー21の孔部を通過した光束は、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投射される。
【0036】
LCD39の画面上における固視標の表示位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更できる。固視位置の例として、黄斑を中心とする画像を取得するための固視位置や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための固視位置や、黄斑と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための固視位置や、黄斑から大きく離れた部位(眼底周辺部)の画像を取得するための固視位置などがある。いくつかの実施形態では、眼科装置1は、このような固視位置の少なくとも1つを指定するためのGUI(Graphical User Interface)等を含む。いくつかの実施形態では、眼科装置1は、固視位置(固視標の表示位置)をマニュアルで移動するためのGUI等を含む。
【0037】
移動可能な固視標を被検眼Eに提示するための構成はLCD等の表示装置には限定されない。例えば、光源アレイ(発光ダイオード(LED)アレイ等)における複数の光源を選択的に点灯させることにより、移動可能な固視標を生成することができる。また、移動可能な1以上の光源により、移動可能な固視標を生成することができる。
【0038】
眼底カメラユニット2には、アライメント光学系50とフォーカス光学系60とが設けられている。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する装置光学系の位置合わせ(アライメント)を行うための指標(アライメント指標)を生成する。フォーカス光学系60は、被検眼Eに対してフォーカス(ピント)を合わせるための指標(スプリット指標)を生成する。
【0039】
アライメント光学系50のLED51から出力された光(アライメント光)は、絞り52、絞り53、及びリレーレンズ54を経由し、ダイクロイックミラー55により反射される。ダイクロイックミラー55により反射された光は、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22によって被検眼Eに投射される。アライメント光の戻り光(例えば、角膜反射光又は眼底反射光)は、対物レンズ22、ダイクロイックミラー46、及び孔開きミラー21の孔部を経由し、ダイクロイックミラー55を透過する。ダイクロイックミラー55を透過した戻り光は、撮影合焦レンズ31を通過し、ミラー32により反射され、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、結像レンズ34によってイメージセンサ35の受光面に結像する。イメージセンサ35による受光像(アライメント指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。アライメント指標に基づいてマニュアルアライメント又はオートアライメントが実行される。
【0040】
フォーカス光学系60は、被検眼Eに対するフォーカス調整に用いられるスプリット指標を生成する。フォーカス光学系60は、撮影光学系30の光路(撮影光路)に沿った撮影合焦レンズ31の移動に連動して、照明光学系10の光路(照明光路)に沿って移動される。反射棒67は、照明光路に対して挿脱可能である。フォーカス調整を行う際には、反射棒67の反射面が照明光路に傾斜配置される。LED61から出力されたフォーカス光は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65により反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。更に、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投射される。フォーカス光の眼底反射光は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通ってイメージセンサ35に導かれる。その受光像(スプリット指標像)に基づいてマニュアルフォーカスやオートフォーカスを実行できる。
【0041】
イメージセンサ35では、フォーカス光学系60により形成された2つのスプリット指標像が取得される。マニュアルフォーカス又はオートフォーカスでは、2つのスプリット指標像が所定の位置関係になるように撮影合焦レンズ31の位置が移動される。いくつかの実施形態では、OCT合焦レンズ43は、撮影光学系30における撮影合焦レンズ31の光路上の位置に対応した位置に移動される。いくつかの実施形態では、撮影合焦レンズ31の移動に連動して、OCT合焦レンズ43は光軸方向に移動される。
【0042】
ダイクロイックミラー46は、眼底撮影用光路とOCT用光路とを合成する。ダイクロイックミラー46は、OCTに用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。OCT用光路(測定光の光路)には、OCTユニット100側からダイクロイックミラー46側に向かって順に、コリメートレンズユニット40、光路長変更部41、光スキャナ42、OCT合焦レンズ43、ミラー44、及びリレーレンズ45が設けられている。
【0043】
光路長変更部41は、
図1に示す矢印の方向に移動可能とされ、OCT用光路の長さを変更する。この光路長の変更は、眼軸長に応じた光路長補正や、干渉状態の調整などに利用される。光路長変更部41は、コーナーキューブと、これを移動する機構とを含む。
【0044】
光スキャナ42は、アライメントにより、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置又はその近傍に配置される。光スキャナ42は、OCT用光路を通過する測定光LSを偏向する。光スキャナ42は、例えば、1次元走査又は2次元走査が可能なガルバノスキャナである。
【0045】
OCT合焦レンズ43は、OCT用の光学系のフォーカス調整を行うために、測定光LSの光路に沿って移動される。撮影合焦レンズ31の移動、フォーカス光学系60の移動、及びOCT合焦レンズ43の移動を連係的に制御することができる。
【0046】
[OCTユニット100]
図2に例示するように、OCTユニット100には、スペクトラルドメインOCTを実行するための光学系が設けられている。この光学系は、干渉光学系を含む。この干渉光学系は、広帯域光源(低コヒーレンス光源)からの光(低コヒーレンス光)を測定光と参照光とに分割する機能と、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを重ね合わせて干渉光を生成する機能とを備える。干渉光学系により得られた干渉光の検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号であり、演算制御ユニット200に送られる。なお、本例のOCTユニット100に含まれる干渉計はマイケルソン型であるが、別のタイプの干渉計(例えば、マッハツェンダー型干渉計)を用いてもよい。
【0047】
光源ユニット101は広帯域の低コヒーレンス光L0を出力する。低コヒーレンス光L0は、例えば、近赤外領域の波長帯(約800nm~900nm程度)を含み、数十マイクロメートル程度の時間的コヒーレンス長を有する。なお、人眼では視認できない波長帯、例えば1040~1060nm程度の中心波長を有する近赤外光を低コヒーレンス光L0として用いてもよい。光源ユニット101は、任意の光出力デバイスを含んでおり、例えば、スーパールミネセントダイオード(SLD)、LED、及び半導体光増幅器(SOA)のいずれかを含む。
【0048】
光源ユニット101から出力された低コヒーレンス光L0は、光ファイバ102によりファイバカプラ103に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
【0049】
ファイバカプラ103により生成された参照光LRは、光ファイバ104を通じてアッテネータ105に導かれて光量が調整され、光ファイバ104を通じて偏波コントローラ106に導かれて偏波状態が調整されてファイバカプラ109に導かれる。アッテネータ105は、演算制御ユニット200からの制御を受け、参照光LRの光量を調整する。偏波コントローラ106は、演算制御ユニット200からの制御を受け、参照光LRの偏波状態を調整する。
【0050】
ファイバカプラ103により生成された測定光LSは、光ファイバ107を通じてコリメートレンズユニット40に導かれて平行光として出射される。コリメートレンズユニット40に接続される光ファイバ107の出射端(入射端)は、アライメントにより、被検眼Eの測定部位(例えば、眼底Ef)と光学的に共役な位置又はその近傍に配置される。コリメートレンズユニット40の出射端から出射された平行光は、光路長変更部41、光スキャナ42、OCT合焦レンズ43、ミラー44、及びリレーレンズ45を経由してダイクロイックミラー46に導かれる。ダイクロイックミラー46に導かれてきた平行光は、ダイクロイックミラー46により反射され、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eに投射される。測定光LSは、被検眼E(特に眼底Ef)の様々な深さ位置において散乱及び反射されて後方散乱光を生じる。被検眼Eからの測定光LSの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ103に導かれ、光ファイバ108を通じてファイバカプラ109に導かれる。
【0051】
ファイバカプラ109は、測定光LSの戻り光と、参照アームを経由した参照光LRとを重ね合わせて干渉光LCを生成する。干渉光LCは、可撓性を有する導光部材としての光ファイバ110のファイバ端111から出射される。ファイバ端111から出射された干渉光LCは、コリメートレンズ112により平行光に変換される。平行光に変換された干渉光LCは、回折格子113に入射する。
【0052】
回折格子113は、コリメートレンズ112の後側焦点位置に配置される。回折格子113は、格子パターンのピッチが互いに異なる2以上の回折格子が干渉光LCの光路に選択的に配置されるように構成されている。すなわち、2以上の回折格子は、コリメートレンズ112の後側焦点位置に配置されるように干渉光LCの光路に選択的に配置される。干渉光LCの光路に選択的に配置される各回折格子は、固有の1次回折光の進行方向が光軸方向(集光レンズ114の光軸方向)に略一致し、且つ、後述のイメージセンサ115における1次回折光の受光量が最大となるように干渉光LCの光路に配置される。このとき、干渉光LCの光路に配置された回折格子に固有の最適な入射角で、当該回折格子に干渉光LCが入射するように、光ファイバ110のファイバ端111は、コリメートレンズ112の光軸(干渉光LCの光路)に交差する方向にシフトするように構成される。シフト機構130は、後述の演算制御ユニット200からの制御を受け、光ファイバ110のファイバ端111をシフトさせる。
【0053】
この実施形態では、回折格子113は、格子パターンが第1ピッチ(例えば、空間周波数1500本/mm、ピッチ0.667μm)で形成された第1回折格子1131と、格子パターンが第2ピッチ(例えば、空間周波数1200本/mm、ピッチ0.833μm)で形成された第2回折格子1132とを含む。回折格子113は、第1回折格子1131、及び第2回折格子1132を干渉光LCの光路に選択的に配置可能に構成される。
【0054】
第1回折格子1131が干渉光LCの光路に配置されるとき、第1回折格子1131に固有の1次回折光の進行方向が光軸方向に略一致し、且つ、イメージセンサ115における1次回折光の受光量が最大となるように干渉光LCの光路に配置される。これにより、第1回折格子1131に固有の最適な入射角α1が決定される。シフト機構130は、第1回折格子1131に入射角α1で干渉光LCが入射するように、光ファイバ110のファイバ端111をコリメートレンズ112の光軸に直交する方向に、所定の初期位置から第1シフト位置にシフトさせる。
【0055】
第2回折格子1132が干渉光LCの光路に配置されるとき、第2回折格子1132に固有の1次回折光の進行方向が光軸方向に略一致し、且つ、イメージセンサ115における1次回折光の受光量が最大となるように干渉光LCの光路に配置される。これにより、第2回折格子1132に固有の最適な入射角α2が決定される。シフト機構130は、第2回折格子1132に入射角α2で干渉光LCが入射するように、光ファイバ110のファイバ端111をコリメートレンズ112の光軸に直交する方向に、所定の初期位置から第2シフト位置にシフトさせる。
【0056】
所定の初期位置が第1シフト位置の場合、シフト機構130は、第2回折格子1132が干渉光LCの光路に配置されるときにだけ、ファイバ端111を第2シフト位置にシフトさせる上記のシフト動作を行う。所定の初期位置が第2シフト位置の場合、シフト機構130は、第1回折格子1131が干渉光LCの光路に配置されるときにだけ、ファイバ端111を第1シフト位置にシフトさせる上記のシフト動作を行う。
【0057】
回折格子113(第1回折格子1131又は第2回折格子1132)により分光された光は、集光レンズ114により集光され、イメージセンサ115の受光面に結像する。
【0058】
シフト機構130は、上記のように、干渉光LCの光路に配置される回折格子(格子パターンのピッチ)に応じて、光ファイバ110のファイバ端111をシフトさせる。干渉光LCの光路に配置される回折格子が切り替えられたとき、シフト機構130は、リトロー配置(Littrow configuration)(1次回折光の受光効率が最大になる配置)が維持されるように光ファイバ110のファイバ端111をシフトする。シフト機構130は、演算制御ユニット200からの制御を受け、回折格子に形成された格子パターンのピッチに応じて光ファイバ110のファイバ端111をシフトさせる。具体的には、シフト機構130は、干渉光LCの光路に配置される回折格子に対する集光レンズ114及びイメージセンサ115の位置がリトロー配置となる状態を維持しつつ、回折格子への干渉光LCの入射角が固有の最適入射角となるように光ファイバ110のファイバ端111をシフトさせる。すなわち、シフト機構130は、イメージセンサ115における1次回折光の受光感度(又は受光効率)が最大になるように光ファイバ110のファイバ端111をシフトさせる。
【0059】
図3に、実施形態に係るシフト機構130による光ファイバ110のファイバ端111のシフト動作を説明するための図を示す。
図3において、
図2と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0060】
図3に示すように、初期状態では、例えば、第1回折格子1131が干渉光LCの光路に配置される(すなわち、所定の初期位置は、上記の第1シフト位置である)。このとき、第1回折格子1131は、第1回折格子1131に固有の1次回折光の進行方向が光軸方向に略一致し、且つ、イメージセンサ115における1次回折光の受光量が最大となるように干渉光LCの光路に配置される。また、干渉光LCが第1回折格子1131に固有の最適な入射角α1で第1回折格子1131に入射するように、干渉光LCの光路上に配置された第1回折格子1131の入射面(回折面)に対するコリメートレンズ112の光軸の交差角度がα1となるように、コリメートレンズ112が配置される。
【0061】
干渉光LCの光路に配置されていた第1回折格子1131が第2回折格子1132に切り替えられたとき、第2回折格子1132は、固有の1次回折光の進行方向が光軸方向に略一致し、且つ、イメージセンサ115における1次回折光の受光量が最大となるように干渉光LCの光路に配置される。このとき、シフト機構130は、コリメートレンズ112の光軸に直交する方向に光ファイバ110のファイバ端111をシフトさせる。
【0062】
ここで、回折格子113(第1回折格子1131又は第2回折格子1132)に形成された格子パターンが第1方向にのびるとき、シフト機構130は、第1方向に直交する第2方向に光ファイバ110のファイバ端111をシフト量dsだけシフトする。第2方向は、コリメートレンズ112の光軸方向に直交する方向であってよい。この場合、回折格子の切り替えに伴う干渉光LCの回折格子への入射角の変更量をθとし、コリメートレンズ112の焦点距離をfcとすると、シフト量dsは、(fc×tanθ)である。
【0063】
図4に、実施形態に係るシフト量dsの説明図を示す。
図4において、
図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
図4では、初期状態において、第2回折格子1132が干渉光LCの光路に配置されているものとする。
【0064】
第1回折格子1131、及び第2回折格子1132のそれぞれは、回折面内で回折角を発生させる。
図4では、回折面はyz平面(紙面)に相当し、格子パターンはx方向(紙面の垂直方向)にのびるように形成される。シフト機構130は、光ファイバ110のファイバ端111を回折面内でシフトさせる。
【0065】
干渉光LCの光路に第1回折格子1131が配置されているとき、第1回折格子1131は、入射面に対するコリメートレンズ112の光軸の交差角度はαであるものとする。このとき、干渉光LCの光路に配置される回折格子が第1回折格子1131から第2回折格子1132に切り替えられたとき、第2回折格子1132は、入射面に対するコリメートレンズ112の光軸の交差角度はβ(α>β)であるものとする。干渉光LCの光路に配置される回折格子への入射角の変更量θは、(α-β)となる。このとき、シフト機構130は、光ファイバ110のファイバ端111を、y方向にシフト量ds=(fc×tan(α-β))だけシフトさせる。
【0066】
これにより、干渉光LCの光路に第1回折格子1131が配置されたとき、第1回折格子1131に固有の最適な入射角で第1回折格子1131に干渉光LCを入射させることができる。更に、第1回折格子1131に固有の1次回折光の受光効率(受光光量)が最大となるように、第1回折格子1131により分光された光をイメージセンサ115により受光することができる。また、干渉光LCの光路に第2回折格子1132が配置されたとき、第2回折格子1132に固有の最適な入射角で第2回折格子1132に干渉光LCを入射させることができる。更に、第2回折格子1132に固有の1次回折光の受光効率が最大となるように、第2回折格子1132により分光された光をイメージセンサ115により受光することができる。
【0067】
図2において、イメージセンサ115は、例えばラインセンサ又はエリアセンサなどの光検出器であり、干渉光LCの複数のスペクトル成分(波長成分)を受光素子アレイにより別々に検出して検出信号を生成する。生成された検出信号は演算制御ユニット200に送られる。
【0068】
本例では、光路長変更部41により測定光LSの光路(測定光路、測定アーム)の長さを変更する場合について説明したが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。例えば、参照光LRの光路(参照光路、参照アーム)の長さを変更するようにしてもよい。また、これら以外の光学部材を用いて、測定光路長と参照光路長との差を変更することも可能である。
【0069】
〔制御系〕
図5、及び
図6に、眼科装置1の制御系の構成例を示す。
図5、及び
図6において、眼科装置1に含まれる構成要素の一部が省略されている。
図5は、眼科装置1の制御系の機能ブロック図の一例を表す。
図5において、
図1及び
図2と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
図6は、
図5の記憶部212の機能ブロック図の一例を表す。
【0070】
制御部210、画像形成部220及びデータ処理部230は、例えば、演算制御ユニット200に設けられる。
【0071】
(制御部210)
制御部210は、各種の制御を実行する。制御部210は、主制御部211と記憶部212とを含む。
【0072】
(主制御部211)
主制御部211は、プロセッサ(例えば、制御プロセッサ)を含み、眼科装置1の各部(
図1、及び
図2に示された各要素を含む)を制御する。例えば、主制御部211は、
図1~
図2に示す眼底カメラユニット2の光学系の各部、OCTユニット100の光学系の各部、上記の光学系を移動する移動機構150、画像形成部220、データ処理部230、及びユーザーインターフェイス(User Interface:UI)240を制御する。
【0073】
眼底カメラユニット2に対する制御には、合焦駆動部31A、43Aに対する制御、イメージセンサ35、38に対する制御、LCD39に対する制御、光路長変更部41に対する制御、及び光スキャナ42に対する制御が含まれる。
【0074】
合焦駆動部31Aに対する制御には、撮影合焦レンズ31を光軸方向に移動する制御が含まれる。合焦駆動部43Aに対する制御には、OCT合焦レンズ43を光軸方向に移動する制御が含まれる。
【0075】
イメージセンサ35、38に対する制御には、撮像素子に対する受光感度の制御、フレームレート(受光タイミング、露光時間)の制御、受光領域(位置、大きさ、サイズ)の制御、撮像素子に対する受光結果の読み出し制御などがある。
【0076】
LCD39に対する制御には、固視位置の制御が含まれる。例えば、主制御部211は、手動又は自動で設定された固視位置に対応するLCD39の画面上の位置に固視標を表示する。また、主制御部211は、LCD39に表示されている固視標の表示位置を(連続的に又は段階的に)変更することができる。それにより、固視標を移動することができる(つまり、固視位置を変更することができる)。固視標の表示位置や移動態様は、マニュアルで又は自動的に設定される。マニュアルでの設定は、例えばGUIを用いて行われる。自動的な設定は、例えば、データ処理部230により行われる。
【0077】
光路長変更部41に対する制御には、測定光LSの光路長を変更する制御が含まれる。主制御部211は、光路長変更部41のコーナーキューブを駆動する駆動部を制御することで測定光LSの光路に沿って光路長変更部41を移動し、測定光LSの光路長を変更する。
【0078】
光スキャナ42に対する制御には、スキャンモード、スキャン範囲(スキャン開始位置、スキャン終了位置)、スキャン速度などの制御がある。主制御部211は、光スキャナ42に対する制御を行うことで、計測部位(撮影部位)における所望の領域に対して測定光LSでOCTスキャンを実行することができる。
【0079】
また、主制御部211は、観察光源11、撮影光源15、アライメント光学系50、フォーカス光学系60などを制御することが可能である。
【0080】
OCTユニット100に対する制御には、光源ユニット101に対する制御、アッテネータ105に対する制御、偏波コントローラ106に対する制御、回折格子切替部113Aに対する制御、シフト機構130に対する制御、イメージセンサ115に対する制御が含まれる。
【0081】
光源ユニット101に対する制御には、光源ユニット101に含まれる広帯域光源のオン及びオフの制御、広帯域光源から出射される光の光量の制御、広帯域光源から出射される光の中心波長の制御などがある。
【0082】
アッテネータ105は、主制御部211の制御の下に、参照光LRの光量の調整を行う。主制御部211は、干渉光LCの光路に配置される回折格子(回折格子に形成される格子パターンのピッチ)に応じて、アッテネータ105を制御することが可能である。例えば、主制御部211は、干渉光LCの光路に第1回折格子1131が配置されたときのイメージセンサ115の受光光量と干渉光LCの光路に第2回折格子1132が配置されたときのイメージセンサ115の受光光量とが略一致するようにアッテネータ105を制御する。
【0083】
ここで、干渉光LCの光路に第1回折格子1131が配置されたときの深さレンジを第1深さレンジ(計測範囲が第1深さ範囲)とし、干渉光LCの光路に第2回折格子1132が配置されたときの深さレンジを第2深さレンジ(計測範囲が第2深さ範囲)とする。このとき、主制御部211は、深さレンジが第1深さレンジであるときの参照光LRの光量を、深さレンジが第2深さレンジであるときの参照光LRの光量より増加させる。ここで、回折格子のピッチが狭くなると光源スペクトルの使用範囲(選択範囲)が狭くなり、イメージセンサ115における受光光量が減少し、干渉感度が低下する。しかしながら、上記のように参照光LRの光量を制御することで、干渉感度の低下を防ぐことができる。
【0084】
偏波コントローラ106は、主制御部211の制御の下に、参照光LRの偏波状態の調整を行う。
【0085】
回折格子切替部113Aは、主制御部211からの制御の下に、干渉光LCの光路に配置される回折格子を切り替える。回折格子切替部113Aは、第1回折格子1131と第2回折格子1132とを干渉光LCの光路に選択的に配置する。
【0086】
例えば、回折格子切替部113Aは、第1回折格子1131及び第2回折格子1132を保持すると共に所定の回動軸を中心に回動可能な保持部材と、この保持部材を回動する回動機構とを含む。ここで、保持部材は、干渉光LCの光路に配置されたときに各回折格子に固有の1次回折光の回折方向が集光レンズ114の光軸方向に略一致し、且つ、イメージセンサ115における1次回折光の受光量が最大となるように、各回折格子に固有の傾斜角度を設けて第1回折格子1131及び第2回折格子1132を保持する。主制御部211は、回動機構を駆動することにより、第1回折格子1131又は第2回折格子1132を干渉光LCの光路に配置させる。
【0087】
例えば、回折格子切替部113Aは、第1回折格子1131と第2回折格子1132とを保持すると共に干渉光LCの光路に交差する方向にスライド可能な保持部材と、この保持部材をスライドさせる駆動機構とを含む。この保持部材も、干渉光LCの光路に配置されたときに各回折格子に固有の1次回折光の回折方向が集光レンズ114の光軸方向に略一致し、且つ、イメージセンサ115における1次回折光の受光量が最大となるように、各回折格子に固有の傾斜角度を設けて第1回折格子1131及び第2回折格子1132を保持する。主制御部211は、駆動機構を駆動することにより、第1回折格子1131又は第2回折格子1132を干渉光LCの光路に配置させる。
【0088】
これにより、第1回折格子1131及び第2回折格子1132のそれぞれに固有の1次回折光の回折方向が集光レンズ114の光軸方向に略一致し、且つ、イメージセンサ115における1次回折光の受光量が最大となるように、各回折格子を干渉光LCの光路に配置させることが可能になる。
【0089】
シフト機構130は、主制御部211からの制御の下に、光ファイバ110のファイバ端111をシフトさせる。具体的には、シフト機構130は、光ファイバ110のファイバ端111を回折面内でシフトさせる。
【0090】
イメージセンサ115は、干渉光LCの光路に配置された回折格子に形成された格子パターンの配列方向に対応した方向に2以上の受光素子が配列されたラインセンサである。イメージセンサ115に対する制御には、受光素子に対する受光感度の制御、フレームレート(受光タイミング)の制御、受光領域(位置、大きさ、サイズ)の制御、受光素子に対する受光結果の読み出し制御などがある。
【0091】
移動機構150は、例えば、少なくとも眼底カメラユニット2(光学系)を3次元的に移動する。典型的な例において、移動機構150は、少なくとも眼底カメラユニット2をx方向(左右方向)に移動するための機構と、y方向(上下方向)に移動するための機構と、z方向(奥行き方向、前後方向)に移動するための機構とを含む。x方向に移動するための機構は、例えば、x方向に移動可能なxステージと、xステージを移動するx移動機構とを含む。y方向に移動するための機構は、例えば、例えば、y方向に移動可能なyステージと、yステージを移動するy移動機構とを含む。z方向に移動するための機構は、例えば、z方向に移動可能なzステージと、zステージを移動するz移動機構とを含む。各移動機構は、アクチュエータとしてのパルスモータを含み、主制御部211からの制御を受けて動作する。
【0092】
移動機構150に対する制御は、アライメントやトラッキングにおいて用いられる。トラッキングとは、被検眼Eの眼球運動に合わせて装置光学系を移動させるものである。トラッキングを行う場合には、事前にアライメントとフォーカス調整が実行される。トラッキングは、装置光学系の位置を眼球運動に追従させることにより、アライメントとピントが合った好適な位置関係を維持する機能である。いくつかの実施形態では、参照光の光路長(よって、測定光の光路と参照光の光路との間の光路長差)を変更するために移動機構150の制御を行うように構成される。
【0093】
マニュアルアライメントの場合、光学系に対する被検眼Eの変位がキャンセルされるように検者等のユーザーがユーザーインターフェイス240に対して操作することにより光学系と被検眼Eとを相対移動させる。例えば、主制御部211は、ユーザーインターフェイス240に対する操作内容に対応した制御信号を移動機構150に出力することにより移動機構150を制御して被検眼Eに対して光学系を相対移動させる。
【0094】
オートアライメントの場合、光学系に対する被検眼Eの変位がキャンセルされるように主制御部211が移動機構150を制御することにより被検眼Eに対して光学系を相対移動させる。具体的には、主制御部211は、アライメント光学系50のLED51から出力された光(アライメント光)を被検眼Eに投影することにより形成された受光像の位置を特定する。主制御部211は、所定のアライメント基準位置(例えば、光学系の光軸の相当する位置)に対する受光像の変位をキャンセルし、光学系に対する被検眼Eの位置関係が所定の位置関係になるように移動機構150を制御する。いくつかの実施形態では、主制御部211は、光学系の光軸が被検眼Eの軸に略一致し、且つ、被検眼Eに対する光学系の距離が所定の作動距離になるように制御信号を移動機構150に出力することにより移動機構150を制御して被検眼Eに対して光学系を相対移動させる。ここで、作動距離とは、対物レンズ22のワーキングディスタンスとも呼ばれる既定値であり、光学系を用いた測定時(撮影時)における被検眼Eと光学系との間の距離に相当する。
【0095】
また、主制御部211は、表示制御部として、各種情報を表示部241に表示させることが可能である。例えば、主制御部211は、眼底カメラユニット2を用いて取得された眼底画像又は前眼部画像、OCTユニット100を用いて取得された断層画像や正面画像(OCT画像)、又は後述のデータ処理部230により得られたデータ処理結果(解析処理結果)を表示部241に表示させる。いくつかの実施形態では、主制御部211は、眼底画像(又は前眼部画像)及びOCT画像の少なくとも一方に、データ処理結果を対応付けて表示部241に表示させる。
【0096】
(記憶部212)
記憶部212は各種のデータを記憶する。記憶部212の機能は、メモリ又は記憶装置等の記憶デバイスにより実現される。記憶部212に記憶されるデータとしては、例えば、眼底画像の画像データ、前眼部画像の画像データ、OCTデータ(OCT画像を含む)、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者に関する情報や、左眼/右眼の識別情報、電子カルテ情報などの被検眼に関する情報を含む。記憶部212には、各種のプロセッサ(制御プロセッサ、画像形成プロセッサ、データ処理プロセッサ)を実行させるためのプログラムが記憶される。
【0097】
この実施形態では、制御部210は、干渉光LCの光路に配置される回折格子(又は、格子パターンのピッチ)に応じて、リスケーリング情報及びピクセルスペーシング情報の少なくとも一方を切り替える。
【0098】
図6に、実施形態に係る記憶部212に記憶される情報の一例を模式的に示す。
【0099】
記憶部212には、リスケーリング情報215と、ピクセルスペーシング情報216とが記憶される。
【0100】
リスケーリング情報215は、イメージセンサ115により等波長間隔で取得された情報(受光結果)を等波数間隔に校正するための情報である。イメージセンサ115では、等波長間隔で分光強度分布が検出される。後述の画像形成部220(又は、制御部210)は、イメージセンサ115により得られた検出データを内挿などの方法で等波数間隔のデータにサンプリングする。リスケーリング情報は、このような等波数間隔でのサンプリングのために、等間隔に配列されるラインセンサの受光素子(画素)を不等間隔に並び替えるための補正データとしてのリスケーリングデータを含む。
【0101】
リスケーリング情報215は、干渉光LCの光路に配置される回折格子の格子パターンのピッチの種類毎にあらかじめ用意された2以上のリスケーリングデータを含む。この実施形態では、リスケーリング情報215は、第1リスケーリングデータ215Aと、第2リスケーリングデータ215Bとを含む。干渉光LCの光路に第1回折格子1131が配置されたとき、第1リスケーリングデータ215Aを用いてリスケーリング処理が実行される。干渉光LCの光路に第2回折格子1132が配置されたとき、第2リスケーリングデータ215Bを用いてリスケーリング処理が実行される。これにより、回折格子の切り替えによって不等波数間隔でサンプリングが行われた場合の分解能の劣化を防止することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、ラインセンサであるイメージセンサ115の受光領域を制御することで、所定の第1帯域を有するリスケーリングデータから、第1帯域と異なる第2帯域を有する新たなリスケーリングデータを生成することが可能である。例えば、第1回折格子1131が第2回折格子1132より広帯域である場合、第1回折格子1131用の第1リスケーリングデータ215Aから第2回折格子1132の波長範囲を抽出し、抽出された波長範囲のリスケーリングデータを補間して所定の画素数(例えば、2048画素)に再分割することで第2回折格子1132用の第2リスケーリングデータ215Bを作成することが可能である。
【0103】
ピクセルスペーシング情報216は、1画素あたりの深さ方向の長さに相当する情報である。イメージセンサ115により取得される干渉スペクトルは、波長ごとに位相情報が配列された干渉縞である。後述の画像形成部220(又は、制御部210)は、イメージセンサ115により得られた検出データに対して上記のリスケーリング情報を用いてリスケーリング処理を施し、リスケーリング処理後のデータに対して公知の高速フーリエ変換を行い周波数解析し、干渉縞の周期として現れる周波数変化から光路差を導出し、被検眼E(被測定物)における被測定物深さ方向の反射位置を特定することができる。ピクセルスペーシング情報216は、このような被検眼Eにおける深さ方向の長さを特定するためのピクセルスペーシングデータを含む。
【0104】
ピクセルスペーシング情報216は、干渉光LCの光路に配置される回折格子の格子パターンのピッチの種類毎にあらかじめ用意された2以上のピクセルスペーシングデータを含む。この実施形態では、ピクセルスペーシング情報216は、第1ピクセルスペーシングデータ216Aと、第2ピクセルスペーシングデータ216Bと含む。干渉光LCの光路に第1回折格子1131が配置されたとき、第1ピクセルスペーシングデータ216Aを用いて被検眼Eにおける深さ方向の長さが特定される。干渉光LCの光路に第2回折格子1132が配置されたとき、第2ピクセルスペーシングデータ216Bを用いて被検眼Eにおける深さ方向の長さが特定される。これにより、回折格子の切り替えによって干渉縞の周期が変化した場合でも被検眼Eにおける深さ方向の長さを正確に特定することが可能になる。
【0105】
(画像形成部220)
画像形成部220は、プロセッサ(例えば、画像形成プロセッサ)を含み、イメージセンサ115からの出力(検出データ)に基づいて、被検眼Eの断層画像(OCT画像、画像データ)を形成する。例えば、画像形成部220は、従来のスペクトラルドメインOCTと同様に、AラインごとのOCTデータに基づくスペクトル分布に信号処理(リスケーリング処理を含む)を施してAラインごとの反射強度プロファイル(Aラインプロファイル)を生成する。更に、画像形成部220は、生成された各Aラインプロファイルを画像化して複数のAスキャン画像データを生成し、これらAスキャン画像データをスキャンパターン(複数のスキャン点の配置)にしたがって配列する。Aラインプロファイルを生成するための信号処理には、ノイズリダクション(デノイジング)、フィルタリング、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)などが含まれる。
【0106】
(データ処理部230)
データ処理部230は、プロセッサ(例えば、データ処理プロセッサ)を含み、画像形成部220により形成された画像に対して画像処理や解析処理を施す。主制御部211に含まれるプロセッサ、データ処理部230に含まれるプロセッサ、及び画像形成部220に含まれるプロセッサの少なくとも2つは、単一のプロセッサにより構成されていてもよい。
【0107】
データ処理部230は、断層画像の間の画素を補間する補間処理などの公知の画像処理を実行して、眼底Ef又は前眼部Eaの3次元画像の画像データを形成する。なお、3次元画像の画像データとは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。3次元画像の画像データとしては、3次元的に配列されたボクセルからなる画像データがある。この画像データは、ボリュームデータ或いはボクセルデータなどと呼ばれる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、データ処理部230は、このボリュームデータに対してレンダリング処理(ボリュームレンダリングやMIP(Maximum Intensity Projection:最大値投影)など)を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像の画像データを形成する。表示部241等の表示デバイスには、この擬似的な3次元画像が表示される。
【0108】
また、3次元画像の画像データとして、複数の断層画像のスタックデータを形成することも可能である。スタックデータは、複数のスキャンラインに沿って得られた複数の断層画像を、スキャンラインの位置関係に基づいて3次元的に配列させることで得られる画像データである。すなわち、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数の断層画像を、1つの3次元座標系により表現する(つまり1つの3次元空間に埋め込む)ことにより得られる画像データである。
【0109】
いくつかの実施形態では、データ処理部230は、Aスキャン画像をBスキャン方向に配列することによりBスキャン画像を生成する。いくつかの実施形態では、データ処理部230は、取得された3次元データセット(ボリュームデータ、スタックデータ等)に各種のレンダリングを施すことで、任意断面におけるBモード画像(Bスキャン画像)(縦断面像、軸方向断面像)、任意断面におけるCモード画像(Cスキャン画像)(横断面像、水平断面像)、プロジェクション画像、シャドウグラムなどを形成することができる。Bスキャン画像やCスキャン画像のような任意断面の画像は、指定された断面上の画素(ピクセル、ボクセル)を3次元データセットから選択することにより形成される。プロジェクション画像は、3次元データセットを所定方向(z方向、深さ方向、軸方向)に投影することによって形成される。シャドウグラムは、3次元データセットの一部(たとえば特定層に相当する部分データ)を所定方向に投影することによって形成される。積分する層方向の深さ範囲を変更することで、互いに異なる2以上のシャドウグラムを形成することが可能である。Cスキャン画像、プロジェクション画像、シャドウグラムのような、被検眼の正面側を視点とする画像を正面画像(en-face画像)と呼ぶ。
【0110】
データ処理部230は、OCTにより時系列に収集されたデータ(例えば、Bスキャン画像データ)に基づいて、網膜血管や脈絡膜血管が強調されたBスキャン画像や正面画像(血管強調画像、アンギオグラム)を構築することができる。例えば、被検眼Eの略同一部位を反復的にスキャンすることにより、時系列のOCTデータを収集することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、データ処理部230は、略同一部位に対するBスキャンにより得られた時系列のBスキャン画像を比較し、信号強度の変化部分の画素値を変化分に対応した画素値に変換することにより当該変化部分が強調された強調画像を構築する。更に、データ処理部230は、構築された複数の強調画像から所望の部位における所定の厚さ分の情報を抽出してen-face画像として構築することでOCTA(アンギオグラフィ)像を形成する。
【0112】
いくつかの実施形態では、データ処理部230は、解析部として、断層画像における所定の層領域を特定する。所定の層領域の例として、内境界膜、神経繊維層、神経節細胞層、内網状層、内顆粒層、外網状層、外顆粒層、外境界膜、視細胞層、網膜色素上皮層、ブルッフ膜、脈絡膜、強膜がある。
【0113】
いくつかの実施形態では、データ処理部230は、イメージセンサ115により得られた干渉信号(分光された光の検出信号)の強度に基づいて所定の層領域を特定する。例えば、データ処理部230は、干渉信号の強度の極値(極大値)を示す位置を層領域の境界位置に相当する位置として特定し、干渉信号の強度の最大値を示す位置を基準に上記の層領域を特定する。
【0114】
いくつかの実施形態では、データ処理部230は、断層画像における各画素の輝度値に基づきセグメンテーション処理を行う。すなわち、眼底Efのそれぞれの層領域は特徴的な反射率を有し、これら層領域に相当する画像領域もそれぞれ特徴的な輝度値を有する。データ処理部230は、これら特徴的な輝度値に基づきセグメンテーション処理を実行することにより、目的の画像領域(層領域)を特定することができる。
【0115】
(ユーザーインターフェイス240)
ユーザーインターフェイス240は、ユーザーからの眼科装置1に対する入力を受け付けたり、ユーザーに対して眼科装置1からの情報を出力したりする。このようなユーザーインターフェイス240は、表示部241と、操作部242とを含む。
【0116】
表示部241は、制御部210による制御を受けて情報を表示する。表示部241は、
図1に示す表示装置3を含む。
【0117】
操作部242は、眼科装置1を操作するために使用される。操作部242は、眼科装置1に設けられた各種のハードウェアキー(ジョイスティック、ボタン、スイッチなど)を含む。また、操作部242は、タッチパネル式の表示画面に表示される各種のソフトウェアキー(ボタン、アイコン、メニューなど)を含んでもよい。
【0118】
表示部241及び操作部242の少なくとも一部が一体的に構成されていてもよい。その典型例として、タッチパネル式の表示画面がある。
【0119】
また、眼科装置1は、図示しない外部装置と通信するための通信部を含んでいてもよい。通信部は、外部装置との接続形態に応じた通信インターフェイスを備える。外部装置の例として、屈折力測定が可能な屈折力測定装置、又は、レンズの光学特性を測定するための眼鏡レンズ測定装置がある。屈折力測定装置は、被検眼の眼底に光を投影し、被検眼からの戻り光を受光することによりリング像を取得し、取得されたリング像から被検眼の屈折力値を算出することができる。眼鏡レンズ測定装置は、被検者が装用する眼鏡レンズの度数などを測定し、この測定データを眼科装置1に入力する。また、外部装置は、任意の眼科装置、記録媒体から情報を読み取る装置(リーダ)や、記録媒体に情報を書き込む装置(ライタ)などでもよい。更に、外部装置は、病院情報システム(HIS)サーバ、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)サーバ、医師端末、モバイル端末、個人端末、クラウドサーバなどでもよい。
【0120】
第1回折格子1131及び第2回折格子1132は、実施形態に係る「2以上の回折格子」の一例である。被検眼Eは、実施形態に係る「被測定物」の一例である。OCTユニット100に含まれる光学系は、実施形態に係る「干渉光学系」の一例である。光ファイバ110は、実施形態に係る「導光部材」の一例である。ファイバ端111は、実施形態に係る「出射端」の一例である。
【0121】
<動作例>
実施形態に係る眼科装置1の動作例について説明する。
【0122】
以下、2以上の回折格子を干渉光LCの光路に順次に配置する場合の動作例について説明する。
【0123】
図7及び
図8に、眼科装置1の動作の一例を示す。
図7は、眼科装置1の動作例のフロー図を表す。
図8は、
図7のステップS7の動作例のフロー図を表す。記憶部212には、
図7及び
図8に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部211は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、
図7及び
図8に示す処理を実行する。
【0124】
(S1:アライメント)
図示しない顔受け部に被検者の顔が固定された状態で、検者が操作部242に対して所定の操作を行うことで、眼科装置1は、被検眼Eに対して固視標の提示を開始する。
【0125】
具体的には、主制御部211は、LCD39を制御することにより、あらかじめ決められた固視標を表す固視標パターンをLCDパネル39のスクリーン上の所定の位置に表示させる。
【0126】
また、ユーザーが操作部242に対して所定の操作を行うことで、眼科装置1は、アライメントを実行する。
【0127】
具体的には、主制御部211は、アライメント光学系50を制御することにより、被検眼Eにアライメント光を投射させ、イメージセンサ35により取得された受光像に基づいて、上記のようにマニュアルアライメント又はオートアライメントを実行する。これにより、
図1に示す光学系が被検眼Eの検査位置に移動される。検査位置とは、被検眼Eの検査を十分な精度内で行うことが可能な位置である。
【0128】
主制御部211からの指示、又は操作部242に対するユーザーの操作若しくは指示により、眼科装置1の動作はステップS2に移行する。
【0129】
(S2:フォーカス調整)
続いて、主制御部211は、フォーカス調整を実行する。
【0130】
具体的には、主制御部211は、フォーカス光学系60を制御することにより、被検眼Eにスプリット指標を投射させ、マニュアルフォーカス又はオートフォーカスを実行する。
【0131】
マニュアルフォーカスの場合、被検者による操作部242に対する操作を受け、主制御部211が合焦駆動部31Aを制御して、2つのスプリット指標像が所定の位置関係になるように撮影合焦レンズ31を光軸方向に移動させる。OCT合焦レンズ43は、撮影合焦レンズ31の移動に連動して光軸方向に移動する。
【0132】
オートフォーカスの場合、主制御部211は、イメージセンサ35により得られた2つのスプリット指標像が所定の位置関係になるように合焦駆動部31Aを制御し、2つのスプリット指標像が所定の位置関係になるように撮影合焦レンズ31を光軸方向に移動させる。OCT合焦レンズ43は、撮影合焦レンズ31の移動に連動して光軸方向に移動する。
【0133】
(S3:回折格子を切り替え)
続いて、主制御部211は、回折格子切替部113Aを制御して、第1回折格子1131又は第2回折格子1132を干渉光LCの光路に配置させる。
【0134】
いくつかの実施形態では、主制御部211は、格子パターンのピッチの種類分の回数だけOCT計測を順次に実行し、あらかじめ決められた順序で、2以上の回折格子を順次に干渉光LCの光路に配置させる。この実施形態では、主制御部211は、2回のOCT計測を順次に実行し、あらかじめ決められた順序で、第1回折格子1131又は第2回折格子1132を順次に干渉光LCの光路に配置させる。
【0135】
(S4:ファイバ端をシフト)
次に、主制御部211は、シフト機構130を制御することにより、上記のように、ステップS3において干渉光LCの光路に配置された回折格子(格子パターンのピッチ)に応じて光ファイバ110のファイバ端111をシフトさせる。
【0136】
(S5:参照光の光量を制御)
続いて、主制御部211は、ステップS3において干渉光LCの光路に配置された回折格子(格子パターンのピッチ)に応じて、参照光LRの光量が最適となるようにアッテネータ105を制御する(光量を増加又は減少)。
【0137】
主制御部211は、干渉光LCの光路に第1回折格子1131が配置されたときのイメージセンサ115の受光光量と干渉光LCの光路に第2回折格子1132が配置されたときのイメージセンサ115の受光光量とが略一致するようにアッテネータ105を制御する。例えば、干渉光LCの光路に第1回折格子1131が配置されたとき、主制御部211は、参照光LRの光量が所定の光量になるように、アッテネータ105の入射光量に対して所定の第1光量だけ増加するようにアッテネータ105を制御する。例えば、干渉光LCの光路に第2回折格子1132が配置されたとき、主制御部211は、参照光LRの光量が所定の光量になるように、アッテネータ105の入射光量に対して第1光量より少ない所定の第2光量だけ増加するようにアッテネータ105を制御する。いくつかの実施形態では、干渉光LCの光路に第1回折格子1131が配置されたとき、主制御部211は、参照光LRの光量が所定の光量になるように、アッテネータ105の入射光量に対して所定の第1光量だけ増加するようにアッテネータ105を制御し、干渉光LCの光路に第2回折格子1132が配置されたとき、主制御部211は、アッテネータ105に対する光量調整制御を行わないように構成される。
【0138】
(S6:OCTスキャン)
続いて、主制御部211は、OCTユニット100等を制御して、あらかじめ決められたスキャンモードに従って、被検眼Eに対してOCTスキャンを実行させる。
【0139】
(S7:OCT画像形成処理)
続いて、主制御部211は、画像形成部220を制御することにより、ステップS6において実行されたOCTスキャンにより得られたスキャン結果に基づいて被検眼Eの断層画像を形成させる。
【0140】
画像形成部220は、上記のように、被検眼Eの断層画像をOCT画像として形成する。
【0141】
ステップS7の詳細は、後述する。
【0142】
(S8:次?)
次に、主制御部211は、次のOCTスキャンを実行するか否かを判別する。いくつかの実施形態では、主制御部211は、あらかじめ決められた順序で、格子パターンのピッチが異なる回折格子のすべてが干渉光LCの光路に配置されたか否かを判定することで、次のOCTスキャンを実行するか否かを判定する。いくつかの実施形態では、主制御部211は、ユーザーによる操作部242に対する操作内容に基づいて、次のOCTスキャンを実行するか否かを判定する。
【0143】
ステップS8において次のOCTを実行すると判定されたとき(ステップS8:Y)、眼科装置1の動作はステップS3に移行する。ステップS8において次のOCTを実行しないと判定されたとき(ステップS8:N)、眼科装置1の動作はステップS9に移行する。
【0144】
(S9:OCT画像を表示)
ステップS8において、次のOCTを実行しないと判定されたとき(ステップS8:N)、主制御部211は、表示部241を制御して、ステップS7を1回以上繰り返すことにより形成された1以上の断層画像をOCT画像として表示させる。いくつかの実施形態では、表示部241には、1画面に複数の断層画像が表示される。
【0145】
以上で、眼科装置1の動作は終了である(エンド)。
【0146】
図7のステップS7では、
図8に示すような処理が実行される。
【0147】
(S11:第1回折格子に切り替え?)
図7のステップS7では、主制御部211は、まず、ステップS3において干渉光LCの光路に第1回折格子1131が配置されたか否かを判定する。いくつかの実施形態では、格子パターンのピッチが異なる2以上の回折格子が順次に配置されてOCT計測が実行される場合、主制御部211は、実行されたOCT計測の回数からステップS3において第1回折格子1131が配置されたか否かを判定する。いくつかの実施形態では、主制御部211は、ステップS3における主制御部211の制御内容からステップS3において干渉光LCの光路に第1回折格子1131が配置されたか否かを判定する。
【0148】
ステップS3において干渉光LCの光路に第1回折格子1131が配置されたと判定されたとき(ステップS11:Y)、
図7のステップS7の処理はステップS12に移行する。一方、ステップS3において干渉光LCの光路に第1回折格子1131が配置されてないと判定されたとき(ステップS11:N)、ステップS3では第2回折格子1132が配置されたと判断し、
図7のステップS7の処理はステップS14に移行する。
【0149】
(S12:第1リスケーリングデータを取得)
ステップS11において、ステップS3において干渉光LCの光路に第1回折格子1131が配置されたと判定されたとき(ステップS11:Y)、主制御部211は、記憶部212から第1リスケーリングデータ215Aをリスケーリング情報として取得する。
【0150】
(S13:第1ピクセルスペーシングデータを取得)
続いて、主制御部211は、記憶部212から第1ピクセルスペーシングデータ216Aをピクセルスペーシング情報として取得する。
【0151】
(S14:第2リスケーリングデータを取得)
ステップS11において、ステップS3において干渉光LCの光路に第1回折格子1131が配置されていないと判定されたとき(ステップS11:N)、主制御部211は、記憶部212から第2リスケーリングデータ215Bをリスケーリング情報として取得する。
【0152】
(S15:第2ピクセルスペーシングデータを取得)
続いて、主制御部211は、記憶部212から第2ピクセルスペーシングデータ216Bをピクセルスペーシング情報として取得する。
【0153】
(S16:OCT画像を形成)
ステップS13又はステップS15に続いて、主制御部211は、画像形成部220を制御して、ステップS3において干渉光LCの光路に配置された回折格子に形成された格子パターンのピッチに対応した断層画像をOCT画像として形成させる。
【0154】
具体的には、ステップS3において干渉光LCの光路に配置された第1回折格子1131が配置されたとき、主制御部211は、画像形成部220を制御することにより、第1リスケーリングデータ215Aを用いて、イメージセンサ115により取得された干渉信号に対してリスケーリング処理を実行させる。画像形成部220は、上記のように、深さレンジが第1深さレンジの断層画像をOCT画像として形成する。
【0155】
一方、ステップS3において干渉光LCの光路に配置された第2回折格子1132が配置されたとき、主制御部211は、画像形成部220を制御することにより、第2リスケーリングデータ215Bを用いて、イメージセンサ115により取得された干渉信号に対してリスケーリング処理を実行させる。画像形成部220は、上記のように、深さレンジが第2深さレンジの断層画像をOCT画像として形成する。
【0156】
以上で、
図7のステップS7の処理は終了である(エンド)。
【0157】
図7のステップS9では、ステップS3において干渉光LCの光路に配置された回折格子に形成された格子パターンのピッチに対応したピクセルスペーシング情報を用いて、
図7のステップS7において形成された1以上の断層画像を表示部241に表示させることが可能である。
【0158】
図9A、及び
図9Bに、
図7のステップS9において表示部241に表示される断層画像の一例を模式的に示す。
図9Aは、深さレンジが第1深さレンジである眼底Efの断層画像IMG1の一例を模式的に表したものである。
図9Bは、深さレンジが第2深さレンジである眼底Efの断層画像IMG2の一例を模式的に表したものである。
【0159】
例えば、主制御部211は、データ処理部230を制御することにより、断層画像IMG1を解析して、断層画像IMG1における1以上の層領域を特定させる。主制御部211は、データ処理部230を制御して、
図8のステップS13において取得された第1ピクセルスペーシングデータ216Aを用いて、特定された1以上の層領域の深さ方向の厚さを算出させる。
図9Aに示すように、主制御部211は、断層画像IMG1と、算出された厚さを含む深さ情報DP1とを表示部241に表示させることが可能である。深さ情報DP1は、第1ピクセルスペーシングデータ216A又は第1深さレンジを表す情報を含んでもよい。深さ情報DP1は、数値、文字、又は、矢印などの画像により表されてもよい。
【0160】
いくつかの実施形態では、主制御部211は、断層画像IMG1に深さ情報DP1が重畳するように断層画像IMG1及び深さ情報DP1を表示部241に表示させる。
【0161】
同様に、主制御部211は、データ処理部230を制御することにより、断層画像IMG2を解析して、断層画像IMG2における1以上の層領域を特定させる。主制御部211は、データ処理部230を制御して、
図8のステップS15において取得された第2ピクセルスペーシングデータ216Bを用いて、特定された1以上の層領域の深さ方向の厚さを算出させる。
図9Bに示すように、主制御部211は、断層画像IMG2と、算出された厚さを含む深さ情報DP2とを表示部241に表示させることが可能である。深さ情報DP2は、第2ピクセルスペーシングデータ216B又は第2深さレンジを表す情報を含んでもよい。深さ情報DP2は、数値、文字、又は、矢印などの画像により表されてもよい。表示部241には、深さ情報DP1、DP2を比較する情報が表示されてもよい。
【0162】
いくつかの実施形態では、主制御部211は、断層画像IMG2に深さ情報DP2が重畳するように断層画像IMG2及び深さ情報DP2を表示部241に表示させる。
【0163】
いくつかの実施形態では、
図9Aに示す断層画像IMG1と
図9Bに示す断層画像IMG2とが表示部241の同一画面に表示される。いくつかの実施形態では、
図9Aに示す断層画像IMG1及び深さ情報DP1と
図9Bに示す断層画像IMG2及び深さ情報DP2とが表示部241の同一画面に表示される。
【0164】
以上説明したように、実施形態によれば、互いに格子パターンのピッチが異なる2以上の回折格子を選択的に干渉光LCの光路に配置し、配置された回折格子に応じて干渉光を回折格子に導光する光ファイバ110のファイバ端111をシフトさせることができる。これにより、回折効率を低下させることなく、OCT計測の深さレンジを変更することができる。特に、焦点距離の変更や回折格子により分光された光が通過する光学素子の位置の変更を伴わないため、回折格子により分光された光を受光する受光素子におけるNAが変化せず、シグナルロールオフも変化しない。従って、格子パターンのピッチが異なる回折格子に変更された場合でも、断層画像の深い位置に相当する高周波成分の劣化がなく、断層画像における浅層部分と深層部分とで干渉感度が変化しないことを意味し、断層画像の画質の低下を防止することができる。
【0165】
上記の実施形態では、第1回折格子1131及び第2回折格子1132のそれぞれは、透過型の回折格子である場合について説明したが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。
【0166】
第1回折格子1131及び第2回折格子1132のそれぞれは、グレーティングミラー、プリズム、音響光学素子などの反射型の回折格子であってもよい。
【0167】
いくつかの実施形態では、第1回折格子1131及び第2回折格子1132の一方が、透過型の回折格子であり、他方が反射型の回折格子である。
【0168】
[作用]
実施形態に係るOCT装置、OCT装置の制御方法、及びプログラムについて説明する。
【0169】
いくつかの実施形態の第1態様は、干渉光学系(OCTユニット100に含まれる光学系)と、導光部材(光ファイバ110)と、コリメートレンズ(112)と、2以上の回折格子(第1回折格子1131、及び第2回折格子1132)と、集光レンズ(114)と、イメージセンサ(115)と、シフト機構(130)とを含むOCT装置(眼科装置1)である。干渉光学系は、光源(光源ユニット101、広帯域光源)からの低コヒーレンス光(L0)を測定光(LS)と参照光(LR)とに分割し、測定光を被測定物(被検眼E)に照射し、被測定物からの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光との干渉光(LC)を生成する。導光部材は、可撓性を有し、干渉光を導く。コリメートレンズは、導光部材の出射端(ファイバ端111)から出射された干渉光をコリメートする。2以上の回折格子は、格子パターンのピッチが互いに異なり、コリメートレンズによりコリメートされた干渉光の光路に選択的に配置可能である。集光レンズは、干渉光の光路に配置された回折格子により分光された光を集光する。イメージセンサは、集光レンズを通過した光を受光する。シフト機構は、干渉光の光路に配置された回折格子に応じて、コリメートレンズの光軸に対して導光部材の出射端をシフトする。
【0170】
このような態様では、互いに格子パターンのピッチが異なる2以上の回折格子を選択的に干渉光LCの光路に配置し、配置された回折格子に応じて導光部材の出射端をシフトさせる。それにより、装置の大型化を最小限に抑えつつ、回折効率を低下させることがない。従って、計測精度の低下を招くことなく、OCT計測の深さレンジを変更することができる。
【0171】
特に、焦点距離の変更や回折格子により分光された光が通過する光学素子の位置の変更を伴うことなく導光部材の出射端をシフトすることで、回折格子により分光された光を受光する受光素子におけるNAが変化せず、シグナルロールオフも変化しない。従って、格子パターンのピッチが異なる回折格子に変更された場合でも、断層画像の深い位置に相当する高周波成分の劣化がなく、断層画像における浅層部分と深層部分とで干渉感度が変化しないことを意味し、断層画像の画質の低下を防止することができる。
【0172】
いくつかの実施形態の第2態様では、第1態様において、2以上の回折格子は、コリメートレンズの後側焦点位置に配置されるように干渉光の光路に選択的に配置される。
【0173】
このような態様によれば、簡素な構成で、回折効率を低下させることなく、OCT計測の深さレンジを変更し、深さ方向の計測範囲が異なるOCT計測結果を高精度に取得できる。
【0174】
いくつかの実施形態の第3態様では、第1態様又は第2態様において、干渉光の光路に配置される回折格子が切り替えられたとき、シフト機構は、リトロー配置が維持されるように出射端をシフトする。
【0175】
このような態様によれば、簡素な構成で、回折効率を低下させることなく、OCT計測の深さレンジを変更することが可能になる。
【0176】
いくつかの実施形態の第4態様では、第3態様において、干渉光の光路に配置される回折格子への入射角の変更量をθとし、コリメートレンズの焦点距離をfcとし、回折格子に形成された格子パターンが第1方向にのびるとき、シフト機構は、第1方向に直交する第2方向に出射端を(fc×tanθ)だけシフトする。
【0177】
このような態様によれば、簡素な構成で、光ファイバの出射端を高精度にシフトさせることができるため、回折効率を低下させることなく、OCT計測の深さレンジを変更することが可能になる。
【0178】
いくつかの実施形態の第5態様では、第4態様において、2以上の回折格子は、第1ピッチの格子パターンが形成された第1回折格子(1131)と、第1ピッチより広い第2ピッチの格子パターンが形成された第2回折格子(1132)と、を含む。OCT装置は、深さ方向の計測範囲が第1深さ範囲であるとき第1回折格子を干渉光の光路に配置し、計測範囲が第1深さ範囲より狭い第2深さ範囲であるとき第2回折格子を干渉光の光路に配置する。
【0179】
このような態様によれば、回折効率を低下させることなく、深さ方向の計測範囲が異なる2つの計測結果を高精度に取得することが可能になる。
【0180】
いくつかの実施形態の第6態様では、第5態様において、干渉光学系は、計測範囲が第1深さ範囲であるときの参照光の光量を、計測範囲が第2深さ範囲のときの参照光の光量より増加させるアッテネータ(105)を含む。
【0181】
このような態様によれば、格子パターンのピッチが異なる場合であっても干渉光の光量の低下を防ぎ、回折格子の切り替えに伴う計測精度の低下を防止することができる。
【0182】
いくつかの実施形態の第7態様は、第1態様又は第2態様において、イメージセンサにより得られた受光結果に基づいて、被測定物の断層画像(OCT画像)を形成する画像形成部(220)を含む。
【0183】
このような態様によれば、回折効率を低下させることなく、OCT計測の深さレンジを変更し、深さレンジが異なる断層画像を形成することが可能になる。
【0184】
いくつかの実施形態の第8態様では、第1態様又は第2態様において、イメージセンサは、干渉光の光路に配置された回折格子に形成された格子パターンの配列方向に対応した方向に2以上の受光素子が配列されたラインセンサである。
【0185】
このような態様によれば、ラインセンサを用いて、回折効率を低下させることなく、OCT計測の深さレンジを変更することが可能になる。
【0186】
いくつかの実施形態の第9態様は、干渉光学系(OCTユニット100に含まれる光学系)と、導光部材(光ファイバ110)と、コリメートレンズ(112)と、2以上の回折格子(第1回折格子1131、及び第2回折格子1132)と、集光レンズ(114)と、イメージセンサ(115)と、シフト機構(130)とを含むOCT装置(眼科装置1)の制御方法である。干渉光学系は、干渉光学系は、光源(光源ユニット101、広帯域光源)からの低コヒーレンス光(L0)を測定光(LS)と参照光(LR)とに分割し、測定光を被測定物(被検眼E)に照射し、被測定物からの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光との干渉光(LC)を生成する。導光部材は、可撓性を有し、干渉光を導く。コリメートレンズは、導光部材の出射端(ファイバ端111)から出射された干渉光をコリメートする。2以上の回折格子は、格子パターンのピッチが互いに異なる。集光レンズは、干渉光の光路に配置された回折格子により分光された光を集光する。イメージセンサは、集光レンズを通過した光を受光する。シフト機構は、コリメートレンズの光軸に対して導光部材の出射端をシフトする。OCT装置の制御方法は、コリメートレンズによりコリメートされた干渉光の光路に2以上の回折格子を選択的に配置する回折格子配置制御ステップと、回折格子配置制御ステップにおいて干渉光の光路に配置された回折格子に応じて、シフト機構により出射端をシフトするシフト制御ステップと、を含む。
【0187】
このような方法では、互いに格子パターンのピッチが異なる2以上の回折格子を選択的に干渉光LCの光路に配置し、配置された回折格子に応じて導光部材の出射端をシフトさせる。それにより、装置の大型化を最小限に抑えつつ、回折効率を低下させることがない。従って、計測精度の低下を招くことなく、OCT計測の深さレンジを変更することができる。
【0188】
特に、焦点距離の変更や回折格子により分光された光が通過する光学素子の位置の変更を伴うことなく回転することで、回折格子により分光された光を受光する受光素子におけるNAが変化せず、シグナルロールオフも変化しない。従って、格子パターンのピッチが異なる回折格子に変更された場合でも、断層画像の深い位置に相当する高周波成分の劣化がなく、断層画像における浅層部分と深層部分とで干渉感度が変化しないことを意味し、断層画像の画質の低下を防止することができる。
【0189】
いくつかの実施形態の第10態様では、第9態様において、回折格子配置制御ステップは、コリメートレンズの後側焦点位置に配置されるように2以上の回折格子を干渉光の光路に選択的に配置する。
【0190】
このような方法によれば、簡素な制御で、回折効率を低下させることなく、OCT計測の深さレンジを変更し、深さ方向の計測範囲が異なるOCT計測結果を高精度に取得できる。
【0191】
いくつかの実施形態の第11態様では、第9態様又は第10態様において、干渉光の光路に配置される回折格子が切り替えられたとき、シフト制御ステップは、リトロー配置が維持されるように出射端をシフトする。
【0192】
このような方法によれば、簡素な制御で、回折効率を低下させることなく、OCT計測の深さレンジを変更することが可能になる。
【0193】
いくつかの実施形態の第12態様では、第11態様において、干渉光の光路に配置される回折格子への入射角の変更量をθとし、コリメートレンズの焦点距離をfcとし、回折格子に形成された格子パターンが第1方向にのびるとき、シフト制御ステップは、第1方向に直交する第2方向に出射端を(fc×tanθ)だけシフトする。
【0194】
このような方法によれば、簡素な制御で、光ファイバの出射端を高精度にシフトさせることができるため、回折効率を低下させることなく、OCT計測の深さレンジを変更することが可能になる。
【0195】
いくつかの実施形態の第13態様では、第12態様において、2以上の回折格子は、第1ピッチの格子パターンが形成された第1回折格子(1131)と、第1ピッチより広い第2ピッチの格子パターンが形成された第2回折格子(1132)と、を含む。回折格子配置制御ステップは、深さ方向の計測範囲が第1深さ範囲であるとき第1回折格子を干渉光の光路に配置し、計測範囲が第1深さ範囲より狭い第2深さ範囲であるとき第2回折格子を干渉光の光路に配置する。
【0196】
このような方法によれば、回折効率を低下させることなく、深さ方向の計測範囲が異なる2つの計測結果を高精度に取得することが可能になる。
【0197】
いくつかの実施形態の第14態様では、第13態様において、干渉光学系は、参照光の光量を増加させるアッテネータ(105)を含む。回折格子配置制御ステップは、計測範囲が第1深さ範囲であるときの参照光の光量を、計測範囲が第2深さ範囲のときの参照光の光量より増加させるようにアッテネータを制御する。
【0198】
このような方法によれば、格子パターンのピッチが異なる場合であっても干渉光の光量の低下を防ぎ、回折格子の切り替えに伴う計測精度の低下を防止することができる。
【0199】
いくつかの実施形態の第15態様では、第9態様又は第10態様において、イメージセンサにより得られた受光結果に基づいて、被測定物の断層画像(OCT画像)を形成する画像形成ステップを含む。
【0200】
このような方法によれば、回折効率を低下させることなく、OCT計測の深さレンジを変更し、深さレンジが異なる断層画像を形成することが可能になる。
【0201】
いくつかの実施形態の第16態様では、コンピュータに、第9態様又は第10態様のOCT装置の制御方法の各ステップを実行させるプログラムである。
【0202】
このようなプログラムでは、互いに格子パターンのピッチが異なる2以上の回折格子を選択的に干渉光LCの光路に配置し、配置された回折格子に応じて導光部材の出射端をシフトさせる。それにより、装置の大型化を最小限に抑えつつ、回折効率を低下させることがない。従って、計測精度の低下を招くことなく、OCT計測の深さレンジを変更することができる。
【0203】
特に、焦点距離の変更や回折格子により分光された光が通過する光学素子の位置の変更を伴うことなく導光部材の出射端をシフトすることで、回折格子により分光された光を受光する受光素子におけるNAが変化せず、シグナルロールオフも変化しない。従って、格子パターンのピッチが異なる回折格子に変更された場合でも、断層画像の深い位置に相当する高周波成分の劣化がなく、断層画像における浅層部分と深層部分とで干渉感度が変化しないことを意味し、断層画像の画質の低下を防止することができる。
【0204】
<その他>
以上に示された実施形態は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0205】
1 眼科装置
100 OCTユニット
110 光ファイバ
111 ファイバ端
112 コリメートレンズ
113 回折格子
1131 第1回折格子
1132 第2回折格子
114 集光レンズ
115 イメージセンサ
130 シフト機構
210 制御部
211 主制御部
212 記憶部
E 被検眼
LR 参照光
LS 測定光
LC 干渉光