(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141838
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】放熱付与具
(51)【国際特許分類】
A61F 7/03 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61F7/08 314
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053686
(22)【出願日】2023-03-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発明した「放熱付与具」の対象である「アイマスク」の評価試験結果について、2022年9月22日に一般社団法人 電子情報通信学会 MEとバイオサイバネティックス研究会(MBE)刊行の学会論文寄稿による公開、2022年9月29日に一般社団法人 電子情報通信学会 MEとバイオサイバネティックス研究会(MBE)主催の学会発表による公開、2023年1月26日に名古屋市立大学大学院芸術工学研究科修士論文寄稿による公開
(71)【出願人】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 大稀
(72)【発明者】
【氏名】河原 ゆう子
(72)【発明者】
【氏名】中村 洸平
(72)【発明者】
【氏名】小嶌 美佐子
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA01
4C099CA06
4C099EA05
4C099EA08
4C099EA13
4C099GA02
4C099HA08
4C099JA03
4C099LA01
4C099LA07
4C099LA08
4C099LA13
4C099LA21
4C099LA30
4C099NA02
(57)【要約】
【課題】複数回に亘り繰り返し使用する場合でも、装着者に付与する熱を、安定した状態で放つことができる放熱付与具を提供する。
【解決手段】アイマスク1は、潜熱蓄熱材を収容部の内部空間に収容する収容部材を本体部2に有し、本体部2を装着した両眼周縁部HEに潜熱蓄熱材から放つ潜熱を付与する。潜熱蓄熱材は、収容部に対し、仮想平面上に沿って拡がっていると共に、仮想平面を含んで厚みをなした状態で漏洩なく充填され、本体部2は、仮想平面を両眼周縁部HEに向けて装着される。本体部2では、一対の収容部が互いに離間して配設され、一の収容部の内部空間と他の収容部の内部空間とが、接続部で連通し、Y方向での接続部の大きさは、収容部の大きさより小さくなっている。過冷却状態にある潜熱蓄熱材の融液に対し、過冷却現象を解除可能なトリガー片50を接続部の中央部に備え、トリガー片50は、規制部により移動を制限した状態で配設されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材と、該潜熱蓄熱材を内部空間に収容する収容部が形成された収容部材とを、本体部に有し、該本体部が装着される身体の特定部位に、該潜熱蓄熱材から放つ潜熱を付与する放熱付与具において、
前記潜熱蓄熱材は、前記収容部に対し、互いに垂直な第1方向と第2方向に延びる仮想平面上に沿って拡がっていると共に、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向で、前記仮想平面を含んで厚みをなした状態で、漏洩なく充填されており、前記本体部は、前記仮想平面を前記身体の特定部位に向けて装着されること、
前記本体部は、過冷却状態にある前記潜熱蓄熱材の融液に対し、過冷却現象を解除可能で、繰り返し使用可能なトリガー片を備え、前記トリガー片は、規制部により、前記収容部への移動を制限した状態で、前記収容部材の内部空間の中央部に配設されていること、
を特徴とする放熱付与具。
【請求項2】
請求項1に記載する放熱付与具において、
前記本体部では、一対の前記収容部が、前記第1方向に沿う方向に対し、互いに離間した態様で配設され、一の前記収容部の前記内部空間と他の前記収容部の前記内部空間とが、前記第1方向に沿って形成された接続部を通じて連通していること、
前記トリガー片は、前記接続部内の前記中央部に配設され、前記第2方向に沿う方向に対し、前記接続部の大きさは、前記収容部の大きさよりも小さくなっていること、
を特徴とする放熱付与具。
【請求項3】
請求項2に記載する放熱付与具において、
前記第2方向に沿う方向に対し、前記接続部の大きさは、前記収容部全体の大きさとの比率で、0%より大きく、かつ50%以下の範囲内に形成されていること、
を特徴とする放熱付与具。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載する放熱付与具において、
前記潜熱蓄熱材から放つ前記潜熱は、25℃以上~50℃以下の温度帯域内とする温熱、または5℃以上~25℃未満の温度帯域内とする冷熱であること、
を特徴とする放熱付与具。
【請求項5】
請求項4に記載する放熱付与具において、
当該放熱付与具は、前記身体の特定部位を両眼とし、両眼とその周りを前記本体部で覆うアイマスクであること、
を特徴とする放熱付与具。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載する放熱付与具において、
前記収容部材は、可撓性を有した樹脂製のシート材からなること、
を特徴とする放熱付与具。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載する放熱付与具において、
前記本体部を収容可能であると共に、前記身体の特定部位に着脱可能に形成されたカバー部を備えていること、
を特徴とする放熱付与具。
【請求項8】
請求項5に記載する放熱付与具において、
前記本体部を収容可能であると共に、前記身体の特定部位に着脱可能に形成されたカバー部を備えていること、
を特徴とする放熱付与具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体に装着された部位に、潜熱蓄熱材から放つ熱を持続的に付与する放熱付与具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、パソコンの画面を見ながら業務を行うオフィスワーカーや、長時間にわたり机上で勉強する学生等に代表されるように、作業で眼を酷使している人は、近年の傾向として年々増加している。このような人は、休憩時間に疲れた眼を休めてリフレッシュ化を図っている。そのリフレッシュ化の際に、眼部に装着するアイマスクは、良く知られており、その一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1は、左右両眼それぞれに向けて設けた一対の本体部に対し、各収容部に収容した潜熱蓄熱材の放熱により、温熱を眼部に付与する温熱具である。特許文献1では、潜熱蓄熱材の種結晶が、本体部内で、仕切り部を介して収容部と仕切られた結晶化開始部に保持されている。この温熱具では、装着者は使用時に、本体部内の結晶化開始部または収容部を押圧して仕切り部を剥がし、結晶化開始部と収容部とを連通させる。これにより、潜熱蓄熱材の種結晶が、収容部内で過冷却状態にある潜熱蓄熱材の融液と本体部内で接触することにより、潜熱蓄熱材で発現する過冷却現象が解除できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、温熱具が使用前の状態にあるとき、潜熱蓄熱材の種結晶は、収容部と仕切られた状態で結晶化開始部に保持された状態になっている。しかしながら、装着者が、温熱具の使用に際し、収容部内で過冷却状態にある潜熱蓄熱材の融液と、潜熱蓄熱材の種結晶とを本体部内で接触させるにあたり、本体部の押圧により、仕切り部を剥がして結晶化開始部と収容部とを連通させている。このとき、仕切り部が一旦剥がされてしまうと、元通りに復元できず、結晶化開始部で保持させる潜熱蓄熱材の種結晶の態様が、仕切り部を剥がす前の状態から変化してしまう。それ故に、特許文献1の温熱具は、複数回繰り返しての使用で、安定した挙動で温熱を放つことができないばかりか、本体部の押圧に伴い、潜熱蓄熱材の種結晶が、結晶化開始部から収容部に流出してしまう虞もある。
【0006】
また、装着者が、先の温熱具の使用で本体部を押圧した際、潜熱蓄熱材の種結晶が、特に結晶化開始部から流出してしまうと、結晶化開始部では、潜熱蓄熱材の種結晶は、本体部の押圧前までに保持されていた適切な保持量から、大幅に減少して十分に残存しなくなってしまうことも生じ得る。このような状況の下で、装着者が、次に保温具を使用すると、潜熱蓄熱材の種結晶が、十分な残存量で結晶化開始部に保持されていないことに起因して、収容部内で過冷却状態にある潜熱蓄熱材の融液に対し、過冷却現象を解除できなくなってしまう虞もある。従って、特許文献1では、温熱具を繰り返し使用しようした場合、温熱具を使用する度に、安定した挙動で温熱を装着者に付与することが困難となり、装着者は、この保温具を安心して使用することができず、特許文献1の保温具の使い勝手は良くない。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、複数回に亘り繰り返し使用する場合でも、装着者に付与する熱を、安定した状態で放つことができる放熱付与具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る放熱付与具は、以下の構成を有する。
【0009】
(1)相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材と、該潜熱蓄熱材を内部空間に収容する収容部が形成された収容部材とを、本体部に有し、該本体部が装着される身体の特定部位に、該潜熱蓄熱材から放つ潜熱を付与する放熱付与具において、前記潜熱蓄熱材は、前記収容部に対し、互いに垂直な第1方向と第2方向に延びる仮想平面上に沿って拡がっていると共に、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向で、前記仮想平面を含んで厚みをなした状態で、漏洩なく充填されており、前記本体部は、前記仮想平面を前記身体の特定部位に向けて装着されること、前記本体部は、過冷却状態にある前記潜熱蓄熱材の融液に対し、過冷却現象を解除可能で、繰り返し使用可能なトリガー片を備え、前記トリガー片は、規制部により、前記収容部への移動を制限した状態で、前記収容部材の内部空間の中央部に配設されていること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する放熱付与具において、前記本体部では、一対の前記収容部が、前記第1方向に沿う方向に対し、互いに離間した態様で配設され、一の前記収容部の前記内部空間と他の前記収容部の前記内部空間とが、前記第1方向に沿って形成された接続部を通じて連通していること、前記トリガー片は、前記接続部内の前記中央部に配設され、前記第2方向に沿う方向に対し、前記接続部の大きさは、前記収容部の大きさよりも小さくなっていること、を特徴とする。
(3)(2)に記載する放熱付与具において、前記第2方向に沿う方向に対し、前記接続部の大きさは、前記収容部全体の大きさとの比率で、0%より大きく、かつ50%以下の範囲内に形成されていること、を特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する放熱付与具において、前記潜熱蓄熱材から放つ前記潜熱は、25℃以上~50℃以下の温度帯域内とする温熱、または5℃以上~25℃未満の温度帯域内とする冷熱であること、を特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する放熱付与具において、当該放熱付与具は、前記身体の特定部位を両眼とし、両眼とその周りを前記本体部で覆うアイマスクであること、を特徴とする。
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載する放熱付与具において、前記収容部材は、可撓性を有した樹脂製のシート材からなること、を特徴とする。
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載する放熱付与具において、前記本体部を収容可能であると共に、前記身体の特定部位に着脱可能に形成されたカバー部を備えていること、を特徴とする。
【0010】
上記構成を有する本発明に係る放熱付与具の作用・効果について説明する。
【0011】
(1)相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材と、該潜熱蓄熱材を内部空間に収容する収容部が形成された収容部材とを、本体部に有し、該本体部が装着される身体の特定部位に、該潜熱蓄熱材から放つ潜熱を付与する放熱付与具において、潜熱蓄熱材は、収容部に対し、互いに垂直な第1方向と第2方向に延びる仮想平面上に沿って拡がっていると共に、第1方向及び第2方向と直交する第3方向で、仮想平面を含んで厚みをなした状態で、漏洩なく充填されており、本体部は、仮想平面を身体の特定部位に向けて装着されること、本体部は、過冷却状態にある潜熱蓄熱材の融液に対し、過冷却現象を解除可能で、繰り返し使用可能なトリガー片を備え、トリガー片は、規制部により、収容部への移動を制限した状態で、収容部材の内部空間の中央部に配設されていること、を特徴とする。
【0012】
この特徴により、収容部材内で過冷却状態にある潜熱蓄熱材の融液に対し、トリガー片による過冷却現象の解除操作が行われると、潜熱蓄熱材の結晶化が、中央部にあるトリガー片を起点にして徐々に拡がるようになる。これにより、収容部材の内部空間全体に向けて潜熱蓄熱材の結晶を成長させ、結晶化の範囲が拡大していく過程で、潜熱蓄熱材の結晶は、トリガー片の周囲に向けて均等に成長し続けながら、潜熱蓄熱材の固化(固相状態)が、収容部材の内部空間全体に及んでいく。その結果、潜熱蓄熱材は、同じような状態になったトリガー片の周囲下で、固相へと相変化して潜熱を放つようになる。それ故に、トリガー片の周囲では、潜熱蓄熱材から放たれる潜熱に、温度のバラツキを、より小さく抑制することができると共に、潜熱蓄熱材で放熱開始までに要する所要時間のバラツキも、小さく抑制することができるようになるため、本発明に係る放熱付与具は、その装着者に快適な装着感や、心地良い使用感を提供することができる。しかも、潜熱蓄熱材が、液相と固相との相変化を、複数回に亘り繰り返して使用されても、トリガー片は、その都度、過冷却状態にある潜熱蓄熱材の融液の過冷却現象を、確実に解除できている。
【0013】
従って、本発明に係る放熱付与具によれば、複数回に亘り繰り返し使用する場合でも、装着者に付与する熱を、安定した状態で放つことができる、という優れた効果を奏する。
【0014】
(2)に記載する放熱付与具において、本体部では、一対の収容部が、第1方向に沿う方向に対し、互いに離間した態様で配設され、一の収容部の内部空間と他の収容部の内部空間とが、第1方向に沿って形成された接続部を通じて連通していること、トリガー片は、接続部内の中央部に配設され、第2方向に沿う方向に対し、接続部の大きさは、収容部の大きさよりも小さくなっていること、を特徴とする。また、(3)に記載する放熱付与具において、第2方向に沿う方向に対し、接続部の大きさは、収容部全体の大きさとの比率で、0%より大きく、かつ50%以下の範囲内に形成されていること、を特徴とする。
【0015】
このような特徴により、接続部、規制部、及びトリガー片が、収容部材の内部空間で潜熱蓄熱材の流通を阻む役割を果たし、潜熱蓄熱材の融液が、過冷却現象の解除操作後、固化するまでの過程で、潜熱蓄熱材は、一の収容部の領域と他の収容部の領域とを、相互に流動し難くなる。これにより、本体部内の潜熱蓄熱材の厚み(
図3参照)は、一の収容部の領域と他の収容部の領域で、潜熱蓄熱材での流動のし難さに起因して均等化され易くなる。その結果、潜熱蓄熱材は、一の収容部の領域と他の収容部の領域を、同じような割合で分散した状態の下、固相へと相変化して潜熱を放つようになる。それ故に、一の収容部側から放たれる潜熱と、他の収容部側から放たれる潜熱に、双方の温度差を、より小さく抑制することができると共に、潜熱蓄熱材で放熱開始までに要する所要時間も、双方の時間差を、小さく抑制することができる。ひいては、本発明に係る放熱付与具は、その装着者に快適な装着感や、心地良い使用感を提供することができる。
【0016】
(4)に記載する放熱付与具において、潜熱蓄熱材から放つ熱は、25℃以上~50℃以下の温度帯域内とする温熱、または5℃以上~25℃未満の温度帯域内とする冷熱であること、を特徴とする。
【0017】
この特徴により、作業で眼を酷使して疲労を感じている人にとって、本発明に係る放熱付与具は、その装着者に、例えば、5~10分の間、このような温度帯域内の温熱または冷熱を、身体の特定部位に安定して付与し続けることにより、効果的なリフレッシュ化を装着者に提供することが可能になる。
【0018】
(5)に記載する放熱付与具において、当該放熱付与具は、身体の特定部位を両眼とし、両眼とその周りを本体部で覆うアイマスクであること、を特徴とする。
【0019】
この特徴により、例えば、パソコンの画面を見ながら業務を行うオフィスワーカーや、長時間にわたり机上で勉強する学生等、作業で眼を酷使して疲労を感じている人が、自身の両眼とその周りを本体部で覆うことで、疲れた眼を休めてリフレッシュ化を図ることが可能になる。
【0020】
(6)に記載する放熱付与具において、収容部材は、可撓性を有した樹脂製のシート材からなること、を特徴とする。
【0021】
この特徴により、身体の特定部位に本体部を被覆するにあたり、収容部材が、身体の特定部位の表面に沿うような形態に変形することができ、本体部が、被覆する配置位置や、装着者の個人差によって異なり、一様に平たい面ではない複雑な曲面による面性状をなした身体の特定部位に、より密着した状態で被覆できるようになる。
【0022】
(7)に記載する放熱付与具において、本体部を収容可能であると共に、身体の特定部位に着脱可能に形成されたカバー部を備えていること、を特徴とする。
【0023】
この特徴により、当該放熱付与具の利用者が、本体部を収容したカバー部を自身に保持させることで、本体部を身体の特定部位に配置して被覆した状態にして、本発明に係る放熱付与具を装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係るアイマスクが人に装着された様子を示す説明図である。
【
図2】実施形態に係るアイマスクを正面側から見た図である。
【
図4】実施形態に係るアイマスクを背面側から見た図である。
【
図5】実施形態に係るアイマスクの本体部を示す図であり、トリガー片と共存する潜熱蓄熱材で、完全な液相状態になっている様子を示す説明図である。
【
図6】実施例1~4、及びその比較例に係るアイマスクの評価試験で、条件と結果をまとめて掲載した表である。
【
図7】実施例1,2に係るアイマスクの本体部に対し、使用開始時以降の経過時間と放熱温度との関係を、それぞれ左側収容部と右側収容部に分けて示すグラフである。
【
図8】実施例3,4に係るアイマスクの本体部に対し、使用開始時以降の経過時間と放熱温度との関係を、それぞれ左側収容部と右側収容部に分けて示すグラフである。
【
図9】実施形態に係るアイマスクの本体部を示す図であり、過冷却状態にある潜熱蓄熱材の融液に対し、過冷却現象を解除していく様子を示す説明図である。
【
図10】
図5に続き、トリガー片と共存する潜熱蓄熱材で、完全な固相状態になっている様子を示す説明図である。
【
図11】比較例に係るアイマスクの本体部に対し、使用開始時以降の経過時間と放熱温度との関係を、それぞれ左側収容部と右側収容部に分けて示すグラフである。
【
図12】比較例に係るアイマスクの本体部を示す図であり、トリガー片と共存する潜熱蓄熱材で、完全な液相状態になっている様子を示す説明図である。
【
図13】
図12に続き、比較例に係るアイマスクの本体部を示す図であり、本体部で過冷却状態にある潜熱蓄熱材の融液に対し、過冷却現象を解除していく様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る放熱付与具について、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る放熱付与具は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材を構成した本体部を、身体の特定部位に装着することにより、潜熱蓄熱材から放つ潜熱を、装着した身体の特定部位に付与する目的で使用される。本発明に係る放熱付与具の一例として、本実施形態では、例えば、パソコンの画面を見ながら業務を行うオフィスワーカーや、長時間にわたり机上で勉強する学生等に挙げられるように、作業で眼を酷使している人を対象に、疲れた眼を休めてリフレッシュ化を図る目的で使用されるアイマスクを挙げて、説明する。
【0026】
はじめに、アイマスク1の概要について、説明する。
図1は、実施形態に係るアイマスクが人に装着された様子を示す説明図である。なお、アイマスク1において、説明の便宜上、
図1中、左右方向をX方向(第1方向)とし、上下方向をY方向(第2方向)とし、
図1の紙面と垂直な方向(
図3中、左右方向)をZ方向(第3方向)と定義する。
図2以降の各図についても、定義した方向に準ずる。
【0027】
図1に示すように、アイマスク1は、本体部2とカバー部3に大別してなり、本体部2をカバー部3に収納して使用される。アイマスク1は、両眼周縁部HE(身体の特定部位)として、両眼とその周りや眉間に本体部2を被覆する態様で、カバー部3の装着バンド75を頭部周囲に係留させることにより、装着者HMに装着される。
【0028】
次に、カバー部3について、説明する。
図2は、実施形態に係るアイマスクを正面側から見た図であり、
図2中、A-A矢視断面図を
図3に示す。
図4は、実施形態に係るアイマスクを背面側から見た図である。
図2~
図4に示すように、カバー部3は、本体部2を収容可能であると共に、両眼周縁部HEに着脱可能に形成されている。具体的には、カバー部3は、装着バンド75を除いて、例えば、布、樹脂繊維等のように、優れた肌触りと柔軟性を呈する繊維を素材とした生地71からなり、表生地72と裏生地73とを重畳して形成される内部空間3Sを有している。
【0029】
図2及び
図3に示すように、表生地72は、上側表生地72Uと下側表生地72Dに分割されており、上側表生地72Uの下端部と下側表生地72Dの上端部とを重ね合わさせた着脱開口部74を有している。着脱開口部74では、上側表生地72Uの下端部と下側表生地72Dの上端部とを互いに離間させることにより、内部空間3Sに対し、本体部2の収容と、本体部2の取出しがそれぞれ可能となっており、上側表生地72Uの下端部と下側表生地72Dの上端部とを互いに近接させることにより、収容した本体部2が内部空間3Sで保持可能となっている。
【0030】
図4に示すように、表生地72は、アイマスク1の装着者HMの両眼周縁部HEと直に接触する部分であり、装着バンド75は、表生地72の左右方向(
図4中、X方向)両端に位置する部位に接続されている。装着バンド75は、端部に係留穴76Aを設けた第1装着バンド75Aと、端部に係留片76Bを設けた第2装着バンド75Bに分割して設けられている。第2装着バンド75Bのバンド長は、周長調整部77で可変可能となっている。係合部76では、係留穴76Aと係留片76Bとを互いに係合させることにより、第1装着バンド75Aと第2装着バンド75Bとが連結され、係留穴76Aと係留片76Bとの係合を解除することにより、第1装着バンド75Aと第2装着バンド75Bとが互いに解放される。
【0031】
次に、本体部2について、説明する。
図5は、実施形態に係るアイマスクの本体部を示す図であり、トリガー片と共存する潜熱蓄熱材で、完全な液相状態になっている様子を示す説明図である。
図5に示すように、本体部2は、潜熱蓄熱材10と、収容部材20と、トリガー片50等からなる。収容部材20は、トリガー片50と共に、充填された潜熱蓄熱材10を本体部2の内部空間20Sに収容するための部材である。
【0032】
収容部材20は、例えば、ポリプロピレン(PP:polypropylene)、ポリエチレン(PE:polyethene)等、可撓性を有した樹脂製のシート材からなり、本実施形態では、より高い質感を呈し、高温、紫外線等に対する耐候性や、熱融着による加工性にも優れているポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)である。収容部材20のシート厚/枚は、目安として1mm未満であり、本実施形態では、0.3~0.5mm程である。
【0033】
収容部材20には、
図5に示すように、一対の収容部30(一の収容部31、他の収容部32)と接続部40が、それぞれ形成されている。具体的には、一例として、矩形状に形成された1枚の収容部材20は、Y方向で対向した一組の一辺同士を、重ねた形態で半分に折り曲げた後、重なったこの辺の周縁部同士(
図5中、下側に位置する辺の周縁部同士)と、X方向で対向するもう一組の二辺(
図5中、左右両側に位置する二辺)に対し、それぞれ半分に折り曲げられて重なった辺の周縁部同士を、それぞれ融着した融着部21となっている。
【0034】
また、本体部2では、一の収容部31と他の収容部32とが、X方向に沿う方向に対し、互いに離間した態様で配設され、一の収容部31の内部空間31Sと他の収容部32の内部空間32Sとが、X方向に沿って形成された接続部40を介して連通している。すなわち、一対の収容部30の各形状で、互いに対向している辺の周縁部や、接続部40をなす形状で、X方向に沿った辺の周縁部でも、それぞれ融着した融着部21となっている。
【0035】
トリガー片50は、過冷却状態にある潜熱蓄熱材10の融液に対し、過冷却現象を解除可能で、繰り返し使用可能な部材である。具体的には、トリガー片50は、5円硬貨程の大きさをなした略円形皿形状の径内に、その中心位置で最も高く中心軸方向に盛上がった湾曲部を、弾性変形可能な状態で形成された薄板状の金属片である。トリガー片50は、中心軸方向に対し、盛上がった側からその反対側に湾曲部を押圧して反り返し、湾曲部の山向きを反転させて、潜熱蓄熱材10に衝撃を及ぼすことにより、過冷却現象の解除を行う。
【0036】
トリガー片50は、接続部40のうち、一の収容部31と他の収容部32との中央部43に、規制部44により移動を制限した状態で、配設されている。このトリガー片50は、中央部43から一の連通部41や他の連通部42に流動していかいないよう、一の連通部41と他の連通部42(以下、「連通部41,42」と総称する場合もある)では、接続部40に設けた規制部44により、Y方向に沿う距離が、トリガー片50の直径より小さくなっている。規制部44は、融着部21におけるY方向の大きさを、中央部43での第2融着部21yの幅より大きくした第1融着部21xの態様で形成されている。
【0037】
本実施形態に係るアイマスク1では、Y方向に沿う方向に対し、接続部40の大きさは、収容部30の大きさよりも小さく、収容部30全体の大きさとの比率で、0%より大きく、かつ50%以下の範囲内に形成されている。具体的には、一の連通部41、他の連通部42においてY方向に沿った距離である連通部幅kは、収容部30(一の収容部31、他の収容部32)においてY方向に沿った距離である収容部縦幅n(0<k<n)よりも小さくなっており、収容部縦幅nに占める連通部幅kの連通部占有率δ(%)=k/n×100が、50%以下である。
【0038】
一方、連通部占有率δが50%超えになると、後述の比較例に係る本体部のように、潜熱蓄熱材10が、左眼周辺を覆う左眼側部分の領域と、右眼周辺を覆う右眼側部分の領域の間を相互に、より一層自由に流動し易くなる。そのため、連通部占有率δが50%以下に比べ、段落[0068]で記載する通り、左眼周辺を覆う左眼側部分から放たれる潜熱と、右眼周辺を覆う右眼側部分から放たれる潜熱に、双方の温度差が、顕著に大きく乖離し易くなり、潜熱蓄熱材10で放熱開始までに要する所要時間についても、双方の時間差が、顕著に大きく乖離し易くなる傾向となり、好ましくないからである。
【0039】
潜熱蓄熱材10は、本体部2の収容部材20の内部空間20Sに充填されている。潜熱蓄熱材は、
図3及び
図5に示すように、接続部40内を含め、一の収容部31、他の収容部32とも、収容部30に対し、互いに垂直なX方向とY方向に延びる仮想平面VP上に沿って拡がっていると共に、X方向及びY方向と直交するZ方向で、仮想平面VPを含んで厚みtをなした状態で、漏洩なく充填されている。本体部2は、
図1及び
図3に示すように、仮想平面VPを両眼周縁部HEに向けて配置される。
【0040】
潜熱蓄熱材10は、前述したように、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱または放熱を行う。潜熱蓄熱材10は、融液(液相状態)と固化(固相状態)との相変化を、複数回に亘って繰り返し使用可能な物質である。潜熱蓄熱材10は、酢酸ナトリウム三水和物(CH3COONa・3H2O)を主成分に、その添加剤である融点調整剤及び柔軟剤として、グリセリン(C3H5(OH)3)を添加してなる。
【0041】
酢酸ナトリウム三水和物単体は、水和数3、分子量[g/mol]136.08、融点58℃、蓄熱量約276kJ/kg(400kJ/L)、融点より低い温度では、水に易溶な固体の状態で、過冷却現象を著しく生じ易い物性である。グリセリンは、分子量[g/mol]92.09382、融点17.8℃、密度1.261g/cm3、無臭、水に易溶、融点より高い温度では、無色透明の液体、人体にとって安全な物質で、過冷却現象を著しく生じ易い物性である。潜熱蓄熱材10は、グリセリンを含有しているため、固相になっても、ある程度の柔軟性を呈して容易に変形可能な状態となっている。
【0042】
潜熱蓄熱材10から放つ潜熱は、25℃以上~50℃以下の温度帯域内とする温熱、または5℃以上~25℃未満の温度帯域内とする冷熱である。本実施形態に係るアイマスク1は、本体部2をカバー部3内に収容した状態で両眼周縁部HEに装着され、本体部2から放つ温熱を、カバー部3を介して両眼周縁部HEに付与する。温熱の上限温度は、潜熱蓄熱材10からの放熱による装着者HM等(人)の低温やけどを防止する観点で、40~45℃程度であることが望ましい。換言すれば、温熱が上限温度40~45℃程度になるよう、潜熱蓄熱材10の融解温度(融点)は、介在するカバー部3による伝熱ロスを考慮した温度(一例として四十数℃)に設定されており、体温よりやや高い潜熱が、固相状態になった潜熱蓄熱材10から放たれる。潜熱蓄熱材10における酢酸ナトリウム三水和物とグリセリンとの混合割合は、一例として、酢酸ナトリウム三水和物を75~25wt%、グリセリンを85~15wt%の範囲内である。
【0043】
なお、設定した潜熱蓄熱材10の融解温度(融点)は、一例とした四十数℃の温度に限定されるものではなく、酢酸ナトリウム三水和物とグリセリンとの混合割合は、所望とする潜熱蓄熱材10の放熱温度に応じて適宜調整される。また、潜熱蓄熱材10に含有する融点調整剤、柔軟剤をグリセリンとしたが、例えば、酢酸ナトリウム三水和物(CH3COONa・3H2O)等の主材に対する融点調整剤は、グリセリン以外にも、種々変更可能である。また、本実施形態では、潜熱蓄熱材10は、主成分である酢酸ナトリウム三水和物に、グリセリンを添加した混合物としたが、グリセリンと共に、食紅や顔料等の着色剤が、潜熱蓄熱材に配合されていても良い。
【0044】
本実施形態に係るアイマスク1では、潜熱蓄熱材10に潜熱を蓄える場合、所定の加熱装置により、本体部2が、潜熱蓄熱材10の融点を超える温度に加熱されることで、潜熱は潜熱蓄熱材10に蓄熱される。
【0045】
次に、本実施形態に係るアイマスク1の評価試験について、説明する。本出願人は、本実施形態に係るアイマスク1の有意性を検証する目的で、左右両方の収容部30(31,32)に対し、トリガー片50により、過冷却状態にある潜熱蓄熱材10の融液の過冷却現象を解除する挙動を確認するための評価試験を行った。
【0046】
<実験内容>
評価試験は、実施例1~4、及びその比較例に係るアイマスクに対し、その本体部2等毎に、接続部40の有無、接続部40での連通部41,42の連通部幅kを変化させた複数種の収容部材20等を用いて、左右両方の収容部30等で、潜熱蓄熱材10から放熱される最高温度、及び放熱開始までの所要時間を、本体部2等毎に確認する実験である。評価試験は、実施例1~4、及びその比較例に係る本体部2等を全5種用いて行われ、全5種の本体部2等では、収容部材20等の形態が、それぞれ異なっている。
【0047】
図9は、実施形態に係るアイマスクの本体部を示す図であり、過冷却状態にある潜熱蓄熱材の融液に対し、過冷却現象を解除していく様子を示す説明図である。
図12は、比較例に係るアイマスクの本体部を示す図であり、トリガー片と共存する潜熱蓄熱材で、完全な液相状態になっている様子を示す説明図である。
【0048】
<実験方法>
評価試験では、前処理として、実施例1~4では、
図5に示す収容部材20(外形寸法;縦65mm×横185mmの長方形、縦横とも融着部21の幅長10mmを含む)を用いて、その内部空間20Sに潜熱蓄熱材10を総重量100g装填した本体部2を、サンプルとして作製した。
【0049】
また、比較例では、
図12に示す収容部材120(外形寸法;縦65mm×横185mmの長方形、縦横とも融着部21の幅長10mmを含む)を用いて、その内部空間120Sに潜熱蓄熱材10を総重量100g装填した本体部102を、サンプルとして作製した。なお、本体部102に有する収容部材120は、
図12に示すように、潜熱蓄熱材10を内部空間120Sに収容する収容部を単体で構成しており、実施例1~4と異なり、接続部40、連通部41,42、中央部43、及び規制部44を具備していない。それ故に、本体部102では、トリガー片50は、その移動に制限されない状態で、収容部材120の内部空間120Sに収容されている。
【0050】
次に、設定された温度を制御・管理可能な機能を備えたウォーターバスに、潜熱蓄熱材10を収容した状態の本体部2,102を浸漬して、潜熱蓄熱材10を2時間、70℃に加熱することにより、本体部2,102内の潜熱蓄熱材10を、完全に融解させた。潜熱蓄熱材10が完全に融液状態になっていることを確認後、空気調和設備により室温22℃に調整された室内で、机上に本体部2,102を静置したまま、空冷により22℃まで潜熱蓄熱材10を冷却した。
【0051】
本体部2,102の温度が22℃に低下し、この温度下でも、潜熱蓄熱材10は、既に発現していた過冷却現象により、過冷却状態にある融液になっていることを確認した上で、本体部2では、
図10に示すように、左眼側の収容部31(30)内に位置する測定ポイントPと、右眼側の収容部32(30)内に位置する測定ポイントQで、収容部材20の外面に貼付した熱電対により、潜熱蓄熱材10の温度を計測した。また、本体部102では、
図12に示すように、本体部2の測定ポイントP,Qと対応した位置で、左眼周辺を覆う左眼側部分の領域に位置する測定ポイントPと、右眼周辺を覆う右眼側部分の領域に位置する測定ポイントQで、収容部材120の外面に熱電対を貼付した。
【0052】
次に、全5種のサンプル(実施例1~4に係る4種の本体部2と、比較例に係る1種の本体部102)に対し、それぞれのトリガー片50で、湾曲部の向きを一斉に収容部材20,120の外面側から反転させ、潜熱蓄熱材10の融液に生じている過冷却現象を解除する操作を行った。そして、実験者の手がサンプルの潜熱蓄熱材10に触れないよう、全てのサンプルを机上に静置し、その静置状態の下で、過冷却現象の解除操作時以降、潜熱蓄熱材10からの放熱が開始されるまでの所要時間を測定すると共に、潜熱蓄熱材10から放たれる潜熱の温度を、熱電対で検知して測定した。本出願人は、このような評価試験を、いずれも同じ要領で3回繰り返して、各回の実験データを採った。
【0053】
<実施例1~4、及び比較例の共通条件>
・潜熱蓄熱材10;酢酸ナトリウム三水和物とグリセリンとの混合物で、双方の配合割合も統一
・潜熱蓄熱材10の過冷却解除手段;トリガー片50
・収容部材20,120の外形寸法;縦幅(Y方向)65mm、横幅(X方向)185mm
・収容部材20,120での融着部21の片側幅;10mm(第1融着部21xを除く)
<実施例1~4の共通条件>
・サンプル;本体部2
・収容手段;接続部40及び規制部44を有した収容部材20
・収容部材20の内寸法;縦幅(Y方向)55mm、横幅(X方向)165mm
・収容部材20での接続部横幅j;35mm
・収容部材20での収容部横幅m;65mm
・収容部材20での収容部縦幅n;55mm
【0054】
<実施例1>
・収容部材20での連通部幅k/連通部占有率δ;5mm/9.1%
<実施例2>
・収容部材20での連通部幅k/連通部占有率δ;10mm/18.2%
<実施例3>
・収容部材20での連通部幅k/連通部占有率δ;15mm/27.3%
<実施例4>
・収容部材20での連通部幅k/連通部占有率δ;20mm/36.4%
<比較例>
・収容部材120;収容部材20の接続部40及び規制部44に対応した接続部及び規制部を備えていない収容部単体
【0055】
<実験結果>
図6は、実施例1~4、及びその比較例に係るアイマスクの評価試験で、条件と結果をまとめて掲載した表である。
図6に示す実験結果は、実施例1~4、及び比較例毎に、評価試験3回分の平均値を採ったデータであり、左眼側の収容部31等での測定ポイントPと、右眼側の収容部32等での測定ポイントQで、それぞれ検知した放熱温度の最高値の平均と、潜熱蓄熱材10で放熱開始までに要する所要時間の平均である。なお、
図6に示す表では、接続部及び規制部の有無についての表記は、「仕切り有無」となっている。
【0056】
図7は、実施例1,2に係るアイマスクの本体部に対し、使用開始時以降の経過時間と放熱温度との関係を、それぞれ左側収容部と右側収容部に分けて示すグラフである。
図8は、実施例3,4に係るアイマスクの本体部に対し、使用開始時以降の経過時間と放熱温度との関係を、それぞれ左側収容部と右側収容部に分けて示すグラフである。
図11は、比較例に係るアイマスクの本体部に対し、使用開始時以降の経過時間と放熱温度との関係を、それぞれ左側収容部と右側収容部に分けて示すグラフである。
【0057】
評価試験の結果を
図6~
図8、及び
図11に示す。実施例1では、左眼側の収容部31の温度は37.98℃で、右眼側の収容部32の温度は37.25℃で、これら左右の温度差は0.63℃であった。また、左眼側の収容部31での所要時間は6.69minで、右眼側の収容部32での所要時間は6.81minで、これら左右の時間差は0.11minであった。実施例2では、左眼側の収容部31の温度は40.12℃で、右眼側の収容部32の温度は39.29℃で、これら左右の温度差は0.83℃であった。また、左眼側の収容部31での所要時間は4.25minで、右眼側の収容部32での所要時間は4.25minで、これら左右の時間差は0minであった。
【0058】
実施例3では、左眼側の収容部31の温度は39.72℃で、右眼側の収容部32の温度は39.22℃で、これら左右の温度差は0.5℃であった。また、左眼側の収容部31での所要時間は4.02minで、右眼側の収容部32での所要時間は4.32minで、これら左右の時間差は0.3minであった。実施例4では、左眼側の収容部31の温度は39.57℃で、右眼側の収容部32の温度は38.75℃で、これら左右の温度差は0.82℃であった。また、左眼側の収容部31での所要時間は3.41minで、右眼側の収容部32での所要時間は3.09minで、これら左右の時間差は0.32minであった。比較例では、左眼側の収容部31の温度は38.72℃で、右眼側の収容部32の温度は40.04℃で、これら左右の温度差は1.29℃であった。また、左眼側の収容部31での所要時間は3.17minで、右眼側の収容部32での所要時間は4.49minで、これら左右の時間差は1.32minであった。
【0059】
<考察>
図10は、
図5に続き、トリガー片と共存する潜熱蓄熱材で、完全な固相状態になっている様子を示す説明図である。
図13は、
図12に続き、比較例に係るアイマスクの本体部を示す図であり、本体部で過冷却状態にある潜熱蓄熱材の融液に対し、過冷却現象を解除していく様子を示す説明図である。
【0060】
実験結果より、実施例1~4に係る本体部2ではいずれも、比較例に係る本体部102に比べて、左右両方の収容部30(左眼側の収容部31、右眼側の収容部32)における温度差は1℃以内に縮小した。特に、連通部幅kを15mmとした実施例3の場合では、温度差が0.79℃にもなった。また、潜熱蓄熱材10で放熱開始までに要する所要時間差は1min以内に縮小した。特に連通部幅kを5mm、10mmとした実施例1,2の場合には、所要時間差がより縮まっていた。
【0061】
このように、左眼側の収容部31と右眼側の収容部32との間で、放熱温度と、潜熱蓄熱材10で放熱開始までに要する所要時間に差が生じた理由には、以下の2つの要因が関係しているものと推定される。第1の要因は、トリガー片50による過冷却現象の解除操作後、トリガー片50を起点にした潜熱蓄熱材10の結晶化が、本体部2の左右で均一な状態になっている否かの違いである。
【0062】
すなわち、実施例1~4に係る本体部2では、トリガー片50は、接続部40内にある規制部44により、左眼側の収容部31、右眼側の収容部32への移動を制限された状態で、左眼側の収容部31と右眼側の収容部32との間に配置されている。そのため、
図5に示すように、収容部材20内で過冷却状態にある潜熱蓄熱材10の融液10Lに対し、トリガー片50による過冷却現象の解除操作が行われると、
図9に示すように、潜熱蓄熱材10の結晶化が、トリガー片50を起点にして徐々に拡がり、潜熱蓄熱材10は、融液(液相状態)10Lから固化(固相状態)10Sに相変化する。
【0063】
このとき、収容部材20の内部空間20S全体に向けて潜熱蓄熱材10の結晶を成長させ、結晶化の範囲が拡大して過程では、潜熱蓄熱材10の結晶は、トリガー片50を挟み、左眼側の収容部31と右眼側の収容部32の双方で、概ね均等に成長し続けながら、
図10に示すように、潜熱蓄熱材10の固化(固相状態)10Sが、収容部材20の内部空間20S全体に及んでいく。これにより、潜熱蓄熱材10は、左眼側の収容部31側と右眼側の収容部32を、双方で同じような状態になった下で、固相へと相変化して潜熱を放つようになる。それ故に、左眼側の収容部31から放たれる潜熱と、右眼側の収容部32から放たれる潜熱に、双方の温度差がより小さく抑制され、潜熱蓄熱材10で放熱開始までに要する所要時間についても、双方の時間差がより小さく抑えられたためだと考えられる。
【0064】
これに対し、比較例に係る本体部102は、
図12及び
図13に示すように、トリガー片50の移動を制限する規制部を収容部材120に設けておらず、収容部材120の内部空間120Sに充填された潜熱蓄熱材10の融液10L中を、拘束されていないトリガー片50は、不特定な部位へ自由に流動してしまう。その結果、トリガー片50が、本体部102のうち、左眼周辺を覆う左眼側部分の領域と、右眼周辺を覆う右眼側部分の領域のどちらかに偏った部位(
図12及び
図13では左眼側部分の領域寄りを図示)に位置してしまうことがある。
【0065】
このような部位で、過冷却状態にある潜熱蓄熱材10の融液10Lに対し、トリガー片50による過冷却現象の解除操作が行われると、
図13に示すように、潜熱蓄熱材10の結晶化が、トリガー片50を起点にして徐々に拡がり始め、本体部102に対し、左眼周辺を覆う左眼側部分の領域と、右眼周辺を覆う右眼側部分の領域では、不均一な態様となる。そのため、潜熱蓄熱材10は、本体部102において、左眼周辺を覆う左眼側部分の領域と、右眼周辺を覆う右眼側部分の領域では、不均一な態様になった下で、固相へと相変化して潜熱を放つようになる。それ故に、実施例1~4に比べ、左眼周辺を覆う左眼側部分から放たれる潜熱と、右眼周辺を覆う右眼側部分から放たれる潜熱で、双方の温度差が大きく乖離し、潜熱蓄熱材10で放熱開始までに要する所要時間についても、双方の時間差が、大きく乖離したためだと考えられる。
【0066】
また、第2の要因は、接続部40、規制部44及びトリガー片50を介して、左眼側の収容部31の領域と右眼側の収容部32の領域とに分割された状態で、充填された潜熱蓄熱材10が収容部材20に収容されているかの違いである。すなわち、実施例1~4に係る本体部2では、
図5に示すように、充填された潜熱蓄熱材10は、接続部40、規制部44及びトリガー片50を介して、左眼側の収容部31の領域(内部空間31S)と右眼側の収容部32の領域(内部空間32S)に、分割された状態で収容されている。
【0067】
これにより、接続部40、規制部44、及びトリガー片50が、収容部材20の内部空間20Sで潜熱蓄熱材10の流通を阻む役割を果たすようになるため、潜熱蓄熱材10の融液10Lが、過冷却現象の解除操作後、固化10Sするまでの過程では、潜熱蓄熱材10は、左眼側の収容部31の領域と右眼側の収容部32の領域とを、相互に流動し難くなっている。過冷却現象の解除操作後、本体部2を机上に静置して潜熱蓄熱材10の固化10Sを図ったことで、本体部2内の潜熱蓄熱材10の厚みt(
図3参照)は、左眼側の収容部31の領域と右眼側の収容部32の領域で、潜熱蓄熱材10での流動のし難さに起因して均等化され易い。その結果、実施例1~4に係る本体部2では、潜熱蓄熱材10は、左眼側の収容部31側と右眼側の収容部32を、同じような割合で分散した状態の下、固相へと相変化して潜熱を放つようになる。それ故に、左眼側の収容部31から放たれる潜熱と、右眼側の収容部32から放たれる潜熱に、双方の温度差がより小さく抑制され、潜熱蓄熱材10で放熱開始までに要する所要時間についても、双方の時間差がより小さく抑えられたためだと考えられる。
【0068】
これに対し、比較例に係る本体部102は、
図12に示すように、内部空間120Sで、左眼周辺を覆う左眼側部分の領域と、右眼周辺を覆う右眼側部分の領域に区画し、内部空間120Sで潜熱蓄熱材10の流通を阻む役割を有さない収容部材120に、充填された潜熱蓄熱材10は収容されている。そのため、潜熱蓄熱材10の融液10Lが、過冷却現象の解除操作後、固化10Sするまでの過程では、潜熱蓄熱材10は、左眼周辺を覆う左眼側部分の領域と、右眼周辺を覆う右眼側部分の領域とを、相互に自由に流動し易い。過冷却現象の解除操作後、本体部102を机上に静置して潜熱蓄熱材10の固化10Sを図ったことで、本体部102内の潜熱蓄熱材10の厚みは、左眼周辺を覆う左眼側部分の領域と、右眼周辺を覆う右眼側部分の領域で、潜熱蓄熱材10での流動のし易さに起因して不均一になり易い。その結果、比較例に係る本体部102では、潜熱蓄熱材10は、左眼周辺を覆う左眼側部分の領域と、右眼周辺を覆う右眼側部分の領域を、不均一な割合で分散した状態の下、固相へと相変化して潜熱を放つようになる。それ故に、左眼周辺を覆う左眼側部分から放たれる潜熱と、右眼周辺を覆う右眼側部分から放たれる潜熱に、双方の温度差がより大きく乖離し易く、潜熱蓄熱材10で放熱開始までに要する所要時間についても、双方の時間差がより大きく乖離したものと考えられる。
【0069】
次に、本実施形態に係るアイマスク1の作用・効果について説明する。
【0070】
本実施形態に係るアイマスク1は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材10と、潜熱蓄熱材10を内部空間31S,32Sに収容する収容部31,32(30)が形成された収容部材20とを、本体部2に有し、本体部2が装着される両眼周縁部HEに、潜熱蓄熱材10から放つ潜熱を付与する放熱付与具において、潜熱蓄熱材10は、収容部30に対し、互いに垂直なX方向とY方向に延びる仮想平面VP上に沿って拡がっていると共に、X方向及びY方向と直交するZ方向で、仮想平面VPを含んで厚みtをなした状態で、漏洩なく充填されており、本体部2は、仮想平面VPを両眼周縁部HEに向けて装着されること、本体部2は、過冷却状態にある潜熱蓄熱材10の融液に対し、過冷却現象を解除可能で、繰り返し使用可能なトリガー片50を備え、トリガー片50は、規制部44により、収容部31,32(30)への移動を制限した状態で、収容部材20の内部空間20Sの中央部43に配設されていること、を特徴とする。
【0071】
この特徴により、収容部材20内で過冷却状態にある潜熱蓄熱材10の融液10Lに対し、トリガー片50による過冷却現象の解除操作が行われると、潜熱蓄熱材10の結晶化が、中央部43にあるトリガー片50を起点にして徐々に拡がるようになる。これにより、収容部材20の内部空間20S全体に向けて潜熱蓄熱材10の結晶を成長させ、結晶化の範囲が拡大していく過程で、潜熱蓄熱材10の結晶は、トリガー片50を挟み、左眼側の収容部31と右眼側の収容部32の双方で、概ね均等に成長し続けながら、潜熱蓄熱材10の固化(固相状態)10Sが、収容部材20の内部空間20S全体に及んでいく。その結果、潜熱蓄熱材10は、左眼側の収容部31側と右眼側の収容部32を、双方で同じような状態になった下で、固相へと相変化して潜熱を放つようになる。それ故に、左眼側の収容部31から放たれる潜熱と、右眼側の収容部32から放たれる潜熱に、双方の温度差を、より小さく抑制することができると共に、潜熱蓄熱材10で放熱開始までに要する所要時間も、双方の時間差を、小さく抑制することができるようになるため、アイマスク1は、装着者HMに快適な装着感や、心地良い使用感を提供することができる。
【0072】
しかも、潜熱蓄熱材10が、融液(液相状態)10Lと固化(固相状態)10Sとの相変化を、複数回に亘り繰り返して使用されても、トリガー片50は、その都度、過冷却状態にある潜熱蓄熱材10の融液10Lの過冷却現象を、確実に解除できている。
【0073】
従って、本実施形態に係るアイマスク1によれば、複数回に亘り繰り返し使用する場合でも、装着者HMに付与する熱を、安定した状態で放つことができる、という優れた効果を奏する。
【0074】
また、本実施形態に係るアイマスク1では、本体部2では、一対の収容部31,32(30)が、X方向に沿う方向に対し、互いに離間した態様で配設され、一の収容部31(30)の内部空間31Sと他の収容部32(30)の内部空間32Sとが、X方向に沿って形成された接続部40を通じて連通していること、トリガー片50は、接続部40内の中央部43に配設され、Y方向に沿う方向に対し、接続部40の大きさは、収容部31,32(30)の大きさよりも小さくなっていること、を特徴とする。また、本実施形態に係るアイマスク1では、Y方向に沿う方向に対し、接続部40の大きさkは、収容部30(31,32)全体の大きさmとの比率で、0%より大きく、かつ50%以下の範囲内に形成されていること、を特徴とする。役割
【0075】
この特徴により、接続部40、規制部44、及びトリガー片50が、収容部材20の内部空間20Sで潜熱蓄熱材10の流通を阻む役割を果たし、潜熱蓄熱材10の融液10Lが、過冷却現象の解除操作後、固化10Sするまでの過程で、潜熱蓄熱材10は、左眼側の収容部31の領域と右眼側の収容部32の領域とを、相互に流動し難くなる。これにより、本体部2内の潜熱蓄熱材10の厚みt(
図3参照)は、左眼側の収容部31の領域と右眼側の収容部32の領域で、潜熱蓄熱材10での流動のし難さに起因して均等化され易くなる。その結果、潜熱蓄熱材10は、左眼側の収容部31側と右眼側の収容部32を、同じような割合で分散した状態の下、固相へと相変化して潜熱を放つようになる。それ故に、左眼側の収容部31から放たれる潜熱と、右眼側の収容部32から放たれる潜熱に、双方の温度差を、より小さく抑制することができると共に、潜熱蓄熱材10で放熱開始までに要する所要時間も、双方の時間差を、小さく抑制することができるようになる。ひいては、アイマスク1は、装着者HMに快適な装着感や、心地良い使用感を提供することができる。
【0076】
また、本実施形態に係るアイマスク1では、潜熱蓄熱材10から放つ潜熱は、25℃以上~50℃以下の温度帯域内とすること、を特徴とする。
【0077】
この特徴により、作業で眼を酷使して疲労を感じている人にとって、アイマスク1は、その装着者HMに、例えば、5~10分の間、体温を基準に数℃程の範囲内で高くした温熱(一例として40~45℃程の温熱)を、両眼周縁部HEに安定して付与し続けることにより、効果的なリフレッシュ化を装着者HMに提供することが可能になる。
【0078】
また、本実施形態に係るアイマスク1では、当該アイマスク1は、身体の特定部位を両眼とし、両眼とその周りである両眼周縁部HEを本体部2で覆うアイマスクであること、を特徴とする。
【0079】
この特徴により、例えば、パソコンの画面を見ながら業務を行うオフィスワーカーや、長時間にわたり机上で勉強する学生等、作業で眼を酷使して疲労を感じている人が、
図1に示すように、自身の両眼周縁部HEを本体部2で覆うことで、疲れた眼を休めてリフレッシュ化を図ることが可能になる。
【0080】
また、本実施形態に係るアイマスク1では、収容部材20は、可撓性を有した樹脂製のシート材からなること、を特徴とする。
【0081】
この特徴により、両眼周縁部HEに本体部2を被覆するにあたり、収容部材20が、両眼周縁部HEの表面に沿うような形態に変形することができ、本体部2が、被覆する配置位置や、装着者の個人差によって異なり、一様に平たい面ではない複雑な曲面による面性状をなした両眼周縁部HE(身体の特定部位)に対し、より密着した状態で被覆できる。特に、本実施形態では、潜熱蓄熱材10は、グリセリンを含み、固相状態であっても、ある程度の柔軟性を呈した物性となっている。そのため、潜熱蓄熱材10の放熱時に、両眼周縁部HEを被覆した本体部2では、両眼周縁部HEとの隙間を抑えて変形した収容部材20と共に、潜熱蓄熱材10も、収容部材20の変形に応じた形状になることから、アイマスク1は、装着者HMに向けて潜熱蓄熱材10から放つ潜熱を、ロスを抑えて伝熱することができるようになる。
【0082】
また、本実施形態に係るアイマスク1では、本体部2を収容可能であると共に、両眼周縁部HEに着脱可能に形成されたカバー部3を備えていること、を特徴とする。
【0083】
この特徴により、
図1に示すように、装着者HMが、本体部2を収容したカバー部3の装着バンド75を自身の頭部に保持させることで、本体部2を両眼周縁部HEに配置して被覆した状態にして、アイマスク1を装着することができる。
【0084】
以上において、本発明を実施形態の実施例1~4、及び比較例に即して説明したが、本発明は上記実施形態の実施例1~4に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0085】
例えば、実施形態では、融着部21におけるY方向の大きさを、中央部43での第2融着部21yの幅より大きくした第1融着部21xで、規制部44を形成した。しかしながら、規制部の態様は、実施形態に限定されるものではなく、種々変更可能である。その一例として、規制部は、潜熱蓄熱材の融液との接触を妨げず、かつトリガー片の通過を不可とした大きさとした数mm程の目開きで、数十~数百μm程の繊維径で形成された網状の袋等である。本体部では、トリガー片をこの袋内に収容した上で、トリガー片入りの規制部の開口端を、収容部材をなす樹脂製シートを半分に折り曲げられて重なった辺の周縁部同士の間に挟み込む。二層状になった樹脂製シートの間に規制部の端を挟んだまま、実施形態のように、樹脂製シート同士を融着することにより、トリガー片入りの規制部が、収容部材の接続部内で固着されると、トリガー片は、規制部である袋内に収容されたままであり、トリガー片の収容部への移動を制限することができる。
【0086】
また、実施形態では、潜熱蓄熱材10の主成分を、酢酸ナトリウム三水和物としたが、潜熱蓄熱材の主成分は、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、酢酸ナトリウム三水和物以外の無機塩水和物をなす物質等であっても良く、種々変更可能である。
【0087】
また、本実施形態では、潜熱蓄熱材10は、主成分である酢酸ナトリウム三水和物に、その添加剤として、融点調整剤、柔軟剤の役割を果たすグリセリンを加えた混合物とした。しかしながら、潜熱蓄熱材の主成分に加える添加剤は、融点調整剤や柔軟剤に限らず、例えば、増粘剤等、当該潜熱蓄熱材に必要とされる役割を果たす物質であれば、適宜変更可能である。増粘剤は、当該潜熱蓄熱材の融液を増粘する役割を果たし、当該潜熱蓄熱材の構成成分を、均一な混合状態に維持することができると共に、当該潜熱蓄熱材における相分離、密度差の違いによる分離等を、防止することができるからである。
【符号の説明】
【0088】
1 アイマスク(放熱付与具)
2 本体部
3 カバー部
10 潜熱蓄熱材
20 収容部材
30 一対の収容部
31 一の収容部
31S 一の収容部の内部空間
32 他の収容部
32S 他の収容部の内部空間
40 接続部
43 中央部(収容部材の中央部、接続部の中央部)
44 規制部
50 トリガー片
VP 仮想平面
HE 両眼周縁部(身体の特定部位、両眼とその周り)
X X方向(第1方向)
Y Y方向(第2方向)
Z Z方向(第3方向)
t 厚み
δ 連通幅比率