(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141845
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ガスメータ、及びそれを備えたガス課金システム
(51)【国際特許分類】
G01F 1/66 20220101AFI20241003BHJP
G01F 1/00 20220101ALI20241003BHJP
G01F 1/68 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01F1/66 Z
G01F1/00 S
G01F1/00 Y
G01F1/68 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053693
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】田村 至
(72)【発明者】
【氏名】越智 毅
【テーマコード(参考)】
2F030
2F035
【Fターム(参考)】
2F030CA03
2F030CC13
2F030CE06
2F030CE09
2F030CE22
2F030CE25
2F030CE26
2F030CF01
2F035DA04
2F035DA14
2F035EA01
2F035EA03
2F035EA04
2F035EA06
(57)【要約】
【課題】外部からの電力供給がない状態でも、ガスの種類等の変動に対応した流量の測定ができると共に、長期間に亘って継続使用を可能にする。
【解決手段】一対の低抵抗体R1、R2が設けられるバイパス流路BLでの温度分布に基づいてガスの質量流量を電力の供給により導出可能な質量流量導出部C2aとを備えると共に、ガス通流路Lのガスの通流方向を横断する方向に沿う梁部材HAに、一端を片持ち姿勢で取り付けられ、且つガスの流れにより振動して電力を発生する自己励起式の自励式発電シートGSを備え、ガス通流路Lにガスが通流しているときの自励式発電シートGSにて発電される電力が、少なくとも一対の低抵抗体R1、R2及び質量流量導出部C2aへ供給可能に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の供給によりガス通流路において超音波を送受信すると共に前記ガス通流路を通流する前記超音波の速度に基づいて前記ガス通流路を通流するガスの体積流量を導出する体積流量導出部を備えるガスメータであって、
前記ガス通流路を通流するガスの一部をバイパスして通流可能なバイパス流路と、前記バイパス流路でガスの通流方向に沿う形で設けられ且つ電力の供給により発熱する一対の低抵抗体と、一対の前記低抵抗体が設けられる前記バイパス流路での温度分布に基づいてガスの質量流量を電力の供給により導出可能な質量流量導出部とを備えると共に、
前記ガス通流路のガスの通流方向を横断する方向に沿う梁部材に、一端を片持ち姿勢で取り付けられ、且つ前記ガスの流れにより振動して電力を発生する自己励起式の自励式発電シートを備え、
前記ガス通流路にガスが通流しているときの前記自励式発電シートにて発電される電力が、少なくとも一対の前記低抵抗体及び前記質量流量導出部へ供給可能に構成されているガスメータ。
【請求項2】
前記ガス通流路を遮断する遮断弁が設けられると共に、
前記ガス通流路のガスの通流方向で前記遮断弁の下流側出口に、前記梁部材及び前記自励式発電シートが設けられている請求項1に記載のガスメータ。
【請求項3】
前記梁部材は、鉛直方向に沿う形で形成される前記ガス通流路の管径方向に沿い且つ水平方向に沿って配設され、
前記自励式発電シートは、前記梁部材に一端を片持ち姿勢で取り付けられた自然状態において、一端から他端へ向かう方向が鉛直方向に沿う姿勢で配設されている請求項1又は2に記載のガスメータ。
【請求項4】
前記自励式発電シートは、前記梁部材に複数併設されると共に、電気的に直列に接続して設けられている請求項1又は2に記載のガスメータ。
【請求項5】
前記ガス通流路にガスが通流しているときの前記自励式発電シートにて発電される電力は、一対の前記低抵抗体及び前記質量流量導出部へ供給されると共に前記体積流量導出部へ供給可能に構成されている請求項1又は2に記載のガスメータ。
【請求項6】
前記ガス通流路にガスが通流しているときの前記自励式発電シートにて発電される電力は、蓄電されることなく、少なくとも一対の前記低抵抗体及び前記質量流量導出部へ供給可能に構成されている請求項1又は2に記載のガスメータ。
【請求項7】
前記体積流量導出部にて導出される前記体積流量と、前記質量流量導出部にて導出される前記質量流量との積算値を各別に表示可能な表示部を備えている請求項1又は2に記載のガスメータ。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のガスメータを備えたガス課金システムであって、
前記体積流量導出部にて導出される単位時間当たりの前記体積流量と、前記質量流量導出部にて導出される単位時間当たりの前記質量流量とに基づいて、ガス料金を算出するガス課金システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力の供給によりガス通流路において超音波を送受信すると共に前記ガス通流路を通流する前記超音波の速度に基づいて前記ガス通流路を通流するガスの体積流量を導出する体積流量導出部を備えるガスメータ、及びそれを備えたガス課金システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスメータとして、電力の供給によりガス通流路において超音波を送受信すると共に前記ガス通流路を通流する前記超音波の速度に基づいて前記ガス通流路を通流するガスの体積流量を導出する体積流量導出部を備える、所謂、超音波流量計が知られている(特許文献1を参照)。
昨今のガスの自由化により、バイオマス由来のガス等が供給されることに伴い、様々なガス種、ガス組成、熱量のガスが供給されるガス供給環境となることが想定される。
上述のようなガス供給環境の変化に対応するべく、上記特許文献1に開示の技術にあっては、ガスの種類等の変動に起因した超音波の送信強度の増幅異常警報の発報や、ガスの種類等の変動に起因したガス通流路の異常遮断が実行されることを防止できる超音波メータに係る技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、上記特許文献1に開示の技術にあっては、ガスの種類等の変動に応じて、超音波の送信強度の増幅異常警報の発報や、ガスの種類等の変動に起因したガス通流路の異常遮断を防ぐことができるものの、ガスの種類等の変動に対応した流量の測定を行うような構成とはなっていなかった。
また、特許文献1に開示の超音波流量計のような従来の流量計は、電池駆動式であるため、消費電力を極力抑制するという制約下で運用されており、このような制約下において、ガスの種類等の変動に対応した流量の測定ができるような新たな流量計の開発が望まれていた。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、外部からの電力供給がない状態でも、ガスの種類等の変動に対応した流量の測定ができると共に、長期間に亘って継続使用が可能なガスメータ、及びガス課金システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのガスメータは、
電力の供給によりガス通流路において超音波を送受信すると共に前記ガス通流路を通流する前記超音波の速度に基づいて前記ガス通流路を通流するガスの体積流量を導出する体積流量導出部を備えるガスメータであって、その特徴構成は、
前記ガス通流路を通流するガスの一部をバイパスして通流可能なバイパス流路と、前記バイパス流路でガスの通流方向に沿う形で設けられ且つ電力の供給により発熱する一対の低抵抗体と、一対の前記低抵抗体が設けられる前記バイパス流路での温度分布に基づいてガスの質量流量を電力の供給により導出可能な質量流量導出部とを備えると共に、
前記ガス通流路のガスの通流方向を横断する方向に沿う梁部材に、一端を片持ち姿勢で取り付けられ、且つ前記ガスの流れにより振動して電力を発生する自己励起式の自励式発電シートを備え、
前記ガス通流路にガスが通流しているときの前記自励式発電シートにて発電される電力を、少なくとも一対の前記低抵抗体及び前記質量流量導出部へ供給可能に構成されている点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、まずもって、ガス通流路のガスの通流方向を横断する方向に沿う梁部材に、一端を片持ち姿勢で取り付けられ、且つガスの流れにより振動して電力を発生する自己励起式の自励式発電シートを備えるから、ガス通流路に測定対象のガスが通流した場合に、当該自励式発電シートが振動することで、ガス通流時に電力を発生することができる。
更に、上記特徴構成によれば、ガス通流路を通流するガスの一部をバイパスして通流可能なバイパス流路と、バイパス流路でガスの通流方向に沿う形で設けられ且つ電力の供給により発熱する一対の低抵抗体と、一対の低抵抗体が設けられるバイパス流路での温度分布に基づいてガスの質量流量を電力の供給により導出可能な質量流量導出部とを備え、自励式発電シートにて発電される電力を、少なくとも一対の低抵抗体及び質量流量導出部へ供給可能に構成しているから、測定対象のガスがガス通流路を通流しているときに自励式発電シートにて発電される電力を、質量流量の導出時に電力を消費する電力消費部へ供給することで、外部から電力を供給することなく、質量流量を良好に導出することができる。
以上より、ガス通流路を伝播する超音波の速度に基づいて体積流量導出部にて導出される体積流量に加え、質量流量導出部にて導出される質量流量を、外部からの電力供給がない場合であっても、長期間に亘って測定可能なガスメータを実現できる。
【0008】
ガスメータの更なる特徴構成は、
前記ガス通流路を遮断する遮断弁が設けられると共に、
前記ガス通流路のガスの通流方向で前記遮断弁の下流側出口に、前記梁部材及び前記自励式発電シートが設けられている点にある。
【0009】
上記自励式発電シートは、ガスに乱流が発生している領域においては、ガスが整流である領域に比べて、高い発電電力を発生する。
上記特徴構成の如く、自励式発電シートを、ガス通流路のガスの通流方向で遮断弁の下流側出口であって、遮断弁やその弁座等によりガスの流れに乱流が生じる領域に、自励式発電シートを設けて、当該乱流により自励式発電シートを十分に振動させて、高い発電電力を得ることができる。
【0010】
ガスメータの更なる特徴構成は、
前記梁部材は、鉛直方向に沿う形で形成される前記ガス通流路の管径方向に沿い且つ水平方向に沿って配設され、
前記自励式発電シートは、前記梁部材に一端を片持ち姿勢で取り付けられた自然状態において、一端から他端へ向かう方向が鉛直方向に沿う姿勢で配設されている点にある。
【0011】
上記特徴構成の如く、自励式発電シートを、梁部材に一端を片持ち姿勢で取り付けられた自然状態において、一端から他端へ向かう方向が鉛直方向に沿う姿勢で配設することで、自励式発電シートのシート面の一方側への振動量(振幅量)と他方側への振動(振幅量)とを、所定の時間幅での平均では同程度とすることができ、安定した発電電力を得ることができる。
【0012】
ガスメータの更なる特徴構成は、
前記自励式発電シートは、前記梁部材に複数併設されると共に、電気的に直列に接続して設けられている点にある。
【0013】
上述の如く、自励式発電シートを梁部材に複数併設されると共に、電気的に直列に接続して設けることで、発電電力量の増加を図ることができ、質量流量の導出に係る電力をより安定して供給することができる。
【0014】
ガスメータの更なる特徴構成は、
前記ガス通流路にガスが通流しているときの前記自励式発電シートにて発電される電力は、一対の前記低抵抗体及び前記質量流量導出部へ供給されると共に前記体積流量導出部へ供給可能に構成されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、自励式発電シートにて発電される電力を、一対の低抵抗体及び質量流量導出部と、体積流量導出部との双方へ供給可能に構成されているから、場合によっては体積流量の導出に係る電力をも自身で供給することができ、外部からの電力供給がない場合でも、より長期間に亘って継続的に使用可能なガスメータを実現できる。
【0016】
ガスメータの更なる特徴構成は、
前記ガス通流路にガスが通流しているときの前記自励式発電シートにて発電される電力は、蓄電されることなく、少なくとも一対の前記低抵抗体及び前記質量流量導出部へ供給可能に構成されている点にある。
【0017】
自励式発電シートにて発電される電力は、ガス通流路にガスが通流しているときに発電されるため、当該発電電力を、ガス通流路にガスが通流している場合に電力を消費する一対の低抵抗体及び質量流量導出部へ供給することで、当該電力を蓄電するバッテリー等を設ける必要がなく、寿命のあるバッテリーを含まない構成とすることで、より一層の長寿命化を図ることができる。
【0018】
これまで説明してきたガスメータは、
前記体積流量導出部にて導出される前記体積流量と、前記質量流量導出部にて導出される前記質量流量との積算値を各別に表示可能な表示部を備えていることが好ましい。
これにより、例えば、通常の体積流量に加えて、ガスの熱量に係る指標としての質量流量に係る情報を知ることができる。
【0019】
これまで説明してきたガスメータを備えたガス課金システムの特徴構成は、
前記体積流量導出部にて導出される単位時間当たりの前記体積流量と、前記質量流量導出部にて導出される単位時間当たりの前記質量流量とに基づいて、ガス料金を算出する点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、ガス料金を、単なる体積流量のみならず、熱量に関連する指標である質量流量をも反映させた形で決定できるから、より実態に則した状態でガス料金の請求を行うことができる。
例えば、単位時間当たりのガス料金に関しては、体積流量が同一である場合、単位時間における質量流量が大きいほど単位ガス料金を高くなる形態で設定することで、より実態に則した状態でガス料金の請求を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係るガスメータ、及びガス課金システムの概略構成図である。
【
図2】梁部材及び自励式発電シートの他の設置形態を示す斜視図である。
【
図3】梁部材及び自励式発電シートの他の設置形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係るガスメータ100、及びそれを備えたガス課金システム200は、外部からの電力供給がない状態でも、ガスの種類等の変動に対応した流量の測定ができると共に、長期間に亘って継続使用が可能なものに関する。
以下、
図1~3に従って、実施形態に係るガスメータ100、及びそれを備えたガス課金システム200について説明する。
【0023】
ガスメータ100は、
図1に示すように、所謂、超音波によりガスの体積流量を計測可能に構成されており、ガス管から住居等のガス供給箇所(図示せず)へ供給されるガスの体積流量を計測する。
当該ガスメータ100には、
図1の一部断面図に示すように、一次側のガス配管に連通接続されるガス流入口11と、二次側のガス配管に連通接続されるガス流出口12と、当該ガス流入口11とガス流出口12とを接続する形でガス通流路Lが形成されている。
ガス通流路Lには、整流流路を形成する筒状部材20が配設されると共に、当該筒状部材20の内部には、筒軸心に沿って延びる整流板21が複数設けられている。
詳細な図示は省略するが、当該ガスメータ100には、筒状部材20の内部に形成される整流流路に超音波を伝播させる一対の送受波器SJ1、SJ2とが備えられている。
より詳細には、ガス通流路Lを通流するガスの流れ方向に対して、当該流れ方向に沿った第1方向及び当該第1方向とは逆方向の第2方向に超音波を伝搬させて、第1方向の所定伝搬距離を伝搬した超音波を受信すると共に第2方向の所定伝搬距離を伝搬した超音波を受信する一対の送受波器SJ1、SJ2を備えると共に、第1方向で所定伝搬距離を超音波が伝搬する第1伝搬時間と第2方向で所定伝搬距離を超音波が伝搬する第2伝搬時間とを計測し、計測された第1伝搬時間及び第2伝搬時間と所定伝搬距離とからガス流路を通流するガスのガス流速を導出し、当該ガス流速とガス通流路L(整流流路)の流路断面積とからガス流量を導出する制御部C1bを有する第1制御装置C1を備え、これらが体積流量導出部として機能する。
【0024】
第1制御装置C1は、ガスメータ100の内部の中央に形成される中央空間TUに制御基板として実装されており、ソフトウェア群と演算装置や記憶部等のハードウェア群とが協働する状態で設けられている。第1制御装置C1では、ガスメータ100において、ガス流量の演算等を行う制御部C1bや、制御部C1bからの各種信号をガスメータ100の外部の監視センターKへネットワーク回線Nを介して送信する通信部C1a等の機能部位が備えられる。監視センターKは、通信部C1aを介して複数のガスメータ100(M1~M5)との間で各種情報を送受信可能に構成されている。
また、ガスメータ100には、制御部C1bにて演算されたガスの体積流量(所定期間での積算値)を外部から視認可能な状態で表示する表示部Hが設けられている。
【0025】
ガスメータ100の中央空間TUには、地震による地震動を検知して当該地震動に対応する震度相当値を定量的且つ連続的に出力可能な感震器(図示せず)を備えている。当該感震器は、震度相当値として、地震動の加速度(ガル値)、当該加速度に基づいて導出される震度、及び構造物の固有周期(例えば、0.1~2.5sec)での加速度のスペクトル積分値としてのカイン値(速度応答スペクトル:SI値)を出力可能に構成されている。
【0026】
筒状部材20にて形成される整流流路の上流側には、ガス通流路Lを遮断する遮断弁30が設けられており、当該遮断弁30は、弁体31がガス通流路L内に突出形成される弁座部32に着座する形態で、ガス通流路Lの開閉部位LKを閉止して、ガス通流路Lを閉止する。当該遮断弁30は、ガスメータ100の上流側のガス圧が著しく低下した場合、或いは上述の感震器にて出力される震度相当値が所定の判定閾値を超えた場合に、遮断される。
【0027】
さて、当該実施形態に係るガスメータ100では、昨今のガスの自由化の流れから、供給されるガスの種類等が変動する場合に対応するべく、ガス通流路Lを通流するガスの質量流量も計測可能に構成されている。
説明を追加すると、ガス通流路Lを通流するガスの一部をバイパスして通流可能なバイパス流路BLと、バイパス流路BLでガスの通流方向に沿う形で設けられ且つ電力の供給により発熱する一対の低抵抗体R1、R2と、一対の低抵抗体R1、R2が設けられるバイパス流路BLでの温度分布に基づいてガスの質量流量を電力の供給により導出可能な質量流量導出部C2aを有する第2制御装置C2とを備える。
質量流量導出部C2aは、一対の低抵抗体R1、R2に電気的に接続されるブリッジ回路を有しており、バイパス流路BLに流体が通流している状態で、一対の低抵抗体R1、R2のうち上流側に設けられる第2低抵抗体R2の熱が奪われると共に下流側に設けられる第1低抵抗体R1へ熱が移動したときに、一対の低抵抗体R1、R2の抵抗値のバランスの変化をブリッジ回路で取得し、取得した値に基づいてガスの質量流量を導出する。
質量流量導出部C2aにて導出される質量流量(所定期間での積算値)は、上述の体積流量(所定期間での積算値)と共に上記表示部Hへ表示される。即ち、表示部Hにおいて、質量流量(所定期間での積算値)と体積流量(所定期間での積算値)とは、各別に表示される。
【0028】
さて、通常、超音波流量計としてのガスメータ100は、低消費電力化が図られ、外部から電力が供給されることなく、内部に設けられる電池(図示せず)から供給される電力により、駆動可能に構成されている。このため、上述の一対の低抵抗体R1、R2及び質量流量導出部C2aにて質量流量を導出するための電力を、ガスメータ100の長期間の運用期間に亘って確保することが難しいという問題がある。
【0029】
そこで、当該実施形態に係るガスメータ100にあっては、ガス通流路Lのガスの通流方向を横断する方向に沿う梁部材HAに、一端を片持ち姿勢で取り付けられ、且つガスの流れにより振動して電力を発生する自己励起式の自励式発電シートGSを備え、ガス通流路Lにガスが通流しているときの自励式発電シートGSにて発電される電力が、少なくとも一対の低抵抗体R1、R2及び質量流量導出部C2aへ供給可能に構成されている。
【0030】
説明を追加すると、梁部材HAは、ガス通流路Lを管径方向に水平に横断する樹脂製の棒状体からなり、ガス通流路Lの周壁に両端を接着固定して設けられる。
自励式発電シートGSは、例えば、ポリフッ化ビニリデンに代表される強誘電性高分子からなり、より具体的には、例えば、ピエゾフィルム((株)東京センサ製の商品名)からなり、振動することにより自己励起して高電圧の電力を発生する特性を備えている。
自励式発電シートGSは、例えば、薄膜化により柔軟性に優れ、かつ、耐水性や耐衝撃性などを備えた短冊状のシートである。自励式発電シートGSは、一端部となる短辺が梁部材HAの長手方向に沿形で固定され、且つ自励式発電シートGSが振動する必要長さ以上の長辺が、ガス通流路Lにガスが通流しているときに、梁部材HAの下流側において、ガス通流路Lを通流するガスの流れに沿って振動する形態で取り付けられる。
より詳細には、自励式発電シートGSは、例えば、通常のガスメータ100のガス通流路Lに対しては、厚さが40μmであって、短辺5mm、長辺40~80mmの短冊状に形成されたピエゾフィルムを用いる。
【0031】
さて、発明者らが鋭意検討した結果、これまで説明した梁部材HA及び自励式発電シートGSは、ガス通流路Lのうち、遮断弁30の下流側で、遮断弁30が閉止状態のときに着座する開閉部位LKの下流側出口に設けることで、高い発電電力を発揮することを確認している。当該部位においては、カルマン渦の発生により自励式発電シートGSに発電に好適な振動が生じ高い発電電力が発生すると考えている。
【0032】
更に、当該実形態に係るガスメータ100にあっては、
図1に示すように、梁部材HAは、鉛直方向(
図1でZに沿う方向)に沿う形で形成されるガス通流路Lに水平方向に沿って配設され、自励式発電シートGSは、梁部材HAに一端を片持ち姿勢で取り付けられた自然状態において、一端から他端へ向かう方向が鉛直方向に沿う姿勢で配設されている。
当該構成により、自励式発電シートGSは、シート面の一方側と他方側とに略均等に振動する形態で発電するため、その発電量を比較的安定させることができる。
因みに、当該実施形態においては、発電電力の増加を図るべく、自励式発電シートGSは、梁部材HAに複数併設される(
図1では4つ)と共に、互いに電気的に直列に接続して設けられている。
換言すると、自励式発電シートGSは、互いにリード線LLで電気的に接続されると共に電力ラインDLにて、直接第2制御装置C2へ電気的に接続されている。
ここで、自励式発電シートGSにて、電力が発電されるタイミングは、ガス通流路Lに電力が通流するタイミング、即ち質量流量導出部C2a及び一対の低抵抗体R1、R2にて電力を消費するタイミングであるため、自励式発電シートGSにて発電された電力は、電池等に蓄電されることなく、直接、質量流量導出部C2aとしての第2制御装置C2及び一対の低抵抗体R1、R2へ供給される。
【0033】
当該実施形態に係るガス課金システム200では、夫々のガスメータ100(M1、M2・・・)の第1制御装置C1にて導出される単位時間当たりの体積流量と、質量流量導出部C2aとしての第2制御装置C2にて導出される単位時間当たりの質量流量とに基づいて、ガス料金を算出するように構成できる。
例えば、当該実施形態に係るガスメータ100(M1、M2・・・)では、体積流量に加え、質量流量も計測可能に構成されているから、体積流量をQ[m3/s]、質量流量をm[kg/s]、密度をρ[kg/m3]としたときに、以下の〔式1〕の関係が成立する。
【0034】
〔式1〕
ρ=Q/m
【0035】
そこで、当該ガス課金システム200は、例えば、単位時間毎の体積流量を単位時間毎の密度ρの平均値で補正した値を、所定の課金期間にて足し合わせる形態で、ガス料金を導出する。尚、補正においては、密度ρが大きいほど、単位時間毎のガス料金が高くなる形態をとることができる。
【0036】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態においては、体積流量の計測に係る制御を実行する第1制御装置C1、及び質量流量の計測に係る質量流量導出部を有する第2制御装置C2とは、各別に備える構成例を示したが、両者を一体的に備える構成を採用しても構わない。
また、上記実施形態では、ガス通流路Lにガスが通流しているときの自励式発電シートGSにて発電される電力は、一対の低抵抗体R1、R2及び質量流量導出部C2aを有する第2制御装置C2へ供給される構成例を示したが、これに加え、体積流量導出部としての第1制御装置C1へ供給するように構成しても構わない。
【0037】
(2)上記実施形態では、梁部材HA及び自励式発電シートGSは、遮断弁30の下流側出口に設けられる構成例を示したが、ガス通流路Lの他の流路部位に設ける構成を採用しても構わない。
尚、自励式発電シートGSは、発電電力を向上させる観点からは、筒状部材20の内部の整流板21の下流側部位以外の部位に設けることが好ましい。
【0038】
(3)上記実施形態に係るガスメータ100では、自励式発電シートGSが複数設けられる構成を示したが、一の自励式発電シートGSを設ける構成であっても構わない。
また、梁部材HAが複数設けられ、当該複数の梁部材HAの夫々に対して、一又は複数の自励式発電シートGSが設けられる構成を採用しても構わない。
【0039】
(4)梁部材HAは、
図2に示すように、略水平方向(
図2で矢印Zと直交する方向)に沿って形成されるガス通流路Lに、管径方向に沿う形で且つ水平方向に沿って設けられ、当該梁部材HAに対して、自励式発電シートGSの一端を片持ち姿勢で取り付ける構成を採用しても構わない。
当該構成においては、自励式発電シートGSは、ガス通流路Lにガスが通流しない自然状態において、その他端が自重により鉛直方向(
図2で矢印Z方向)で下方へ向けて垂れ下がるため、ガス通流路Lの管径方向に沿う状態となり、ガスが通流したときには、ガスの通流圧力により跳ね上げられ、ガスの通流方向に沿う形で、発電する。
当該構成によれば、振動の幅が大きくなるため、より大きな電力を発電し得る。
尚、梁部材HAは、
図3に示すように、略水平方向(
図2で矢印Zと直交する方向)に沿って形成されるガス通流路Lに、管径方向に沿う形で且つ鉛直方向(
図2で矢印Z方向)に沿って設けられ、当該梁部材HAに対して、自励式発電シートGSの一端を片持ち姿勢で取り付ける構成を採用しても構わない。
【0040】
(5)上記特徴構成では、表示部Hにおいて、体積流量及び質量流量を表示する構成例を示したが、これらの値に加え、体積流量を上述の密度ρにて補正した補正流量を表示する構成例を示しても構わない。
【0041】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のガスメータ、及びガス課金システムは、外部からの電力供給がない状態でも、ガスの種類等の変動に対応した流量の測定ができると共に、長期間に亘って継続使用が可能なガスメータ、及びガス課金システムとして、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
30 :遮断弁
100 :ガスメータ
200 :ガス課金システム
BL :バイパス流路
C1 :第1制御装置
C1b :制御部
C2 :第2制御装置
C2a :質量流量導出部
GS :自励式発電シート
H :表示部
HA :梁部材
L :ガス通流路
R1、R2:低抵抗体