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特開2024-141847ガス封止用ペースト組成物、電気化学モジュール及びエネルギーシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141847
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ガス封止用ペースト組成物、電気化学モジュール及びエネルギーシステム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/028 20160101AFI20241003BHJP
   H01M 8/0282 20160101ALI20241003BHJP
   H01M 8/0284 20160101ALI20241003BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20241003BHJP
   H01M 8/0276 20160101ALI20241003BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20241003BHJP
   C25B 13/05 20210101ALI20241003BHJP
   C25B 13/04 20210101ALI20241003BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20241003BHJP
【FI】
H01M8/028
H01M8/0282
H01M8/0284
H01M8/0206
H01M8/0276
H01M8/00 Z
C25B13/05
C25B13/04 302
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053695
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】立川 賢悟
(72)【発明者】
【氏名】神家 規寿
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA12
5H126AA13
5H126BB06
5H126EE11
5H126EE13
5H126GG02
5H126GG11
5H126GG17
5H126GG18
5H126JJ00
5H126JJ05
(57)【要約】
【課題】適切な分散性及び流動性を備えるとともに、硬化した後に高いガスシール性を発揮するガス封止用ペースト組成物を提供する。
【解決手段】水を溶媒とするガス封止用ペースト組成物であって、ガラス粉末と、側鎖にポリエーテル構造を有するビニル系高分子と、多糖類とから成り、固形分濃度が73質量%以上90質量%以下であり、前記ビニル系高分子及び前記多糖類の合計含有量が、前記ガラス粉末の100質量部に対して0.50質量部以上3.0質量部以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を溶媒とするガス封止用ペースト組成物であって、
ガラス粉末と、側鎖にポリエーテル構造を有するビニル系高分子と、多糖類とから成り、
固形分濃度が73質量%以上90質量%以下であり、
前記ビニル系高分子及び前記多糖類の合計含有量が、前記ガラス粉末の100質量部に対して0.50質量部以上3.0質量部以下である、ガス封止用ペースト組成物。
【請求項2】
前記ビニル系高分子の主鎖が、無水マレイン酸単位、マレイン酸単位およびマレイン酸塩単位のいずれか一つ以上の単位を有する、請求項1に記載のガス封止用ペースト組成物。
【請求項3】
前記ビニル系高分子の含有量が、前記ガラス粉末を100質量部として0.10質量部以上1.5質量部以下である、請求項1に記載のガス封止用ペースト組成物。
【請求項4】
前記多糖類の含有量が、前記ガラス粉末を100質量部として0.40質量部以上1.5質量部以下である、請求項1に記載のガス封止用ペースト組成物。
【請求項5】
前記多糖類は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はその塩、アミノメチルヒドロキシプロピルセルロース、アミノエチルヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、トラガント、ペクチン、グルー、アルギン酸又はその塩、カラギーナン、キサンタンガム、ヒアルロン酸ナトリウム、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、タマリンドシードガムのいずれか一つ以上である、請求項1に記載のガス封止用ペースト組成物。
【請求項6】
前記ガラス粉末が結晶化ガラスであり、前記ガラス粉末の熱膨張係数が8.0ppm/K以上13ppm/K以下である、請求項1に記載のガス封止用ペースト組成物。
【請求項7】
電解質層と、前記電解質層の両側にそれぞれ配置されている第1電極及び第2電極とを備えた電気化学素子の複数が、前記電気化学素子間に金属基板を介して積層されており、隣接する金属基板の間に、請求項1に記載のガス封止用ペースト組成物が配置されている、電気化学モジュール。
【請求項8】
電解質層と、前記電解質層の両側にそれぞれ配置されている第1電極及び第2電極とを備えた電気化学素子の複数が、前記電気化学素子間に金属基板を介して積層されており、隣接する金属基板の間に貫通孔を備えた環状シール部材が配置され、前記環状シール部材の表面の少なくとも一部に、請求項1に記載のガス封止用ペースト組成物が配置されている、電気化学モジュール。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の電気化学モジュールと、前記電気化学モジュールに供給する還元性成分を生成する、或いは、前記電気化学モジュールで生成する還元性成分を含有するガスを変換する燃料変換器と、前記電気化学モジュールから電力を取り出す、或いは、前記電気化学モジュールに電力を流通する電力変換器と、を有する電気化学装置を備え、
前記電気化学装置から排出される熱を再利用する排熱利用部を備える、エネルギーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス封止用ペースト組成物、当該ガス封止用ペースト組成物を備える電気化学モジュール及びエネルギーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
持続可能な開発目標(SDG’s)を達成するため、種々のエネルギーデバイスの開発が進められている。それらの中でも固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、水素と空気とを原料ガスとして発電を行うことが可能であるとともに、発生した熱を家屋の暖房や給湯に利用でき、原料ガスを高効率に利用できることで注目されている。また、水素エネルギー社会構築のため、固体酸化物形電解セル(SOEC)を用いて水蒸気から水素を生成するエネルギーデバイスも注目されている。
【0003】
これらのエネルギーデバイスには、金属やセラミックといった材料が使用されているが、高温に晒されるため、それぞれの材料は熱膨張係数に応じて膨張することになる。また、これら材料同士を接着し気体の漏出を防止するための接合材料も高温下で膨張するため、当該接合材料と金属等の材料との熱膨張係数の差が大きいと、接合材料等が剥離する等によりガス原料等のガスリークを発生させる虞がある。そのため、接合材料と金属等の材料との熱膨張係数の差はできるだけ小さくなるように材料を選定することが好ましい。なお、SOFCやSOECは電気化学反応が生じる温度域(作動温度域)が600~1000℃と高温であり、しかも当該温度域で長期間に亘って運転されるため、上述のガスリークが発生する可能性がある。
【0004】
従来から、ガスリークを防ぐために、エラストマーから成るOリング等の部材が主に用いられているが、高温下で使用される場合には変形や劣化等の問題が起き得る。そのため、これらのエネルギーデバイスでは、ガスリークを防止するための種々の接合材料が開発されている。
【0005】
例えば、ガラスやマイカ等の材料は、融点が高いため、高温下においても変形や溶解等の不具合が生じにくい。そのため、ガラスから成るシール材を成型して使用したり、ガスリークが起こりやすい部分に、ガラス又はマイカを含む成るペースト状組成物を塗布して焼成したりすることで、ガスリークの防止を担保している。
【0006】
特許文献1には、SiOを主成分とし、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛の酸化物、アルミナを含む結晶性ガラス組成物が開示されている。特に酸化バリウムに対する酸化亜鉛のモル比が1.9~10である場合には、適切な熱膨張係数を有するため、SUSやFeといった金属、フェライトやジルコニアといった高膨張セラミックスの接着材料として好適に用いることができることが記載されている。
【0007】
特許文献2には、構成元素にケイ素を含むガラス粉と酸化マグネシウム粉とマグネシウムのケイ酸塩粉とを混合した混合粉からなる、固体酸化物形燃料電池用シール材が開示されている。このシール材は、混合粉とテレピン油等の有機溶媒とブチル酸エステルなどのエステル類等からなる有機分散材とを混合してペースト状にすることで作製される。このペーストを、複数の単セルを積層して構成したSOFCの単セル間に塗布して焼成することで、単セルが備える給気経路や排気経路からのガスリークを防ぐことができたことが記載されている。
【0008】
特許文献3には、重量基準で同量の水の存在下でアルカリ性溶液を形成するのに有効なガラス成分、バインダー成分を含み、液体担体としての水が50体積%を超える燃料電池ガスケット用ガラスコーティング組成物が開示されている。この組成物は、硬化の抑制に有効な遅延剤をさらに含むため、長期間貯蔵しても組成物が実質的に硬化せず安定して存在するとともに、刷毛型コーティングまたは吹き付け型コーティングの何れの方法でも塗布することが可能であり、扱いやすい点で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-083662号公報
【特許文献2】特開2007-149430号公報
【特許文献3】特許第7136853号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の発明は、組成物の溶剤として有機溶剤を用いている。そのため、SOFC又はSOEC用のガス封止用ペースト状組成物として用いる場合には、これらのエネルギーデバイスへ塗布して乾燥する際に局所換気や溶媒回収装置が必要であった。ゆえに、これらのエネルギーデバイスの製造時の工程が増えて歩留まりが低下する虞があった。
特許文献2に記載の固体酸化物形燃料電池用シール剤は、アルミナや酸化マグネシウム等の無機バインダーを含む。そのため、シール材を塗布して焼成した後に、ケイ素、リン、ホウ素等がシール部やガス流路に揮発、堆積するため、固体酸化物形燃料電池の性能を劣化させる可能性があった。
特許文献3に記載の発明は、水を溶媒として用いているものの、組成物中の水の含有率が50体積%と高いため、コーティング後に水が揮発すると空隙を生じやすい。そのため、当該空隙を介してガスリークが生じやすく、ガスシール性において実用的であるとは言い難かった。
【0011】
そのため、本発明では、適切な分散性及び流動性を備えるとともに、硬化した後に高いガスシール性を発揮するガス封止用ペースト組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係るガス封止用ペースト組成物の特徴構成は、
水を溶媒とするガス封止用ペースト組成物であって、
ガラス粉末と、側鎖にポリエーテル構造を有するビニル系高分子と、多糖類とから成り、
固形分濃度が73質量%以上90質量%以下であり、
前記ビニル系高分子及び前記多糖類の合計含有量が、前記ガラス粉末の100質量部に対して0.50質量部以上3.0質量部以下である点にある。
【0013】
本特徴構成によれば、ガラス粉末の粒子が、分散剤として機能するビニル系高分子と結合して溶媒への分散性を高めることができる。さらに、ビニル系高分子は側鎖が嵩高いポリエーテル構造を有するため、ビニル系高分子と結合したガラス粒子が立体的に反発して分散性をより高めることができる。これらにより、固形分濃度が高固形分濃度(73質量%以上90質量%以下)であっても、適切な粘性(流動性)を持たせることができ、ペースト化することができる。固形分濃度が73質量%より小さくなると、ペースト組成物が乾燥した後のガラスシール構造に空隙が多くなり、シール性が低下する虞があり、固形分濃度が90質量%より大きくなるとペースト組成物中のガラス粉末の分散性、流動性が低下しやすく、塗布性が低下する虞がある。
【0014】
また、多糖類を含有することで、ペースト組成物中のガラス粉末の粒子の分散安定性が向上し、沈降することを抑制(分散性を高めることが)でき、良好な塗布性を得ることができる。
【0015】
更に、ビニル系高分子及び多糖類の合計含有量が、ガラス粉末の100質量部に対して0.50質量部以上3.0質量部以下とされることで、ペースト組成物に適切な粘性(流動性)を付与し、塗布性を向上させることができるとともに、シール性を向上させることができる。当該合計含有量が、0.50質量部より少なくなると、ペースト組成物中のガラス粉末の分散性、流動性が低下しやすく、塗布性が低下する虞があり、3.0質量部より多くなると、高温環境に晒された際にガラスシール構造に空隙が多くなり、シール性が低下する虞がある。
【0016】
なお、本特徴構成に係るガス封止用ペースト組成物において、溶媒は水である。そのため、有機溶媒を含まないことにより、ペースト組成物の乾燥時に溶媒回収設備や換気設備が不要となる。また、各設備において、防爆仕様が不要となり、コスト面と生産性の面で有利となる。
また、本特徴構成に係るガス封止用ペースト組成物は無機バインダーを含まない。そのため、高温環境に晒された場合であっても、無機バインダー(ケイ酸系化合物やリン酸アルミニウムなど)に由来するケイ素やリン等の元素の揮発・堆積が生じる可能性を無くすことができる。
【0017】
本発明に係るガス封止用ペースト組成物の更なる特徴構成は、前記ビニル系高分子の主鎖が、無水マレイン酸単位、マレイン酸単位およびマレイン酸塩単位のいずれか一つ以上の単位を有する点にある。
【0018】
本特徴構成によれば、主鎖がガラス粉末の粒子と結合しやすい構造を有しているため、ガラス粉末の粒子とビニル系高分子との親和性が向上して、ペースト組成物中でのガラス粉末の粒子の分散性を向上させることができる。
【0019】
本発明に係るガス封止用ペースト組成物の更なる特徴構成は、前記ビニル系高分子の含有量が、前記ガラス粉末を100質量部として0.10質量部以上1.5質量部以下である点にある。
【0020】
本特徴構成によれば、ビニル系高分子が、ガラス粉末を100質量部として0.10質量部以上1.5質量部以下の量が添加されることで、ガラス粉末の粒子の分散性および流動性を高めることができ、また、高温環境に晒された際にガラスシール構造に生じる空隙を少なくでき、シール性の低下を防止できる。ビニル系高分子の含有量は、0.10質量部より少なくなると流動性が悪くなり、塗布性が損なわれる虞があり、1.5質量部より多くなると高温にさらされた際、ガスシール部の空隙が大きくなり、ガスシール性が低下する虞がある。
【0021】
本発明に係るガス封止用ペースト組成物の更なる特徴構成は、前記多糖類の含有量が、前記ガラス粉末を100質量部として0.40質量部以上1.5質量部以下である点にある。
【0022】
本特徴構成によれば、ガス封止用ペースト組成物に適度な粘性を持たせることができ、ペースト組成物中のガラス粉末の粒子の分散安定性が向上し、沈降することを抑制(分散性を高めることが)でき、良好な塗布性を得ることができる。多糖類の含有量は、0.40質量部より少なくなると粘度が低くなり、ペースト組成物中のガラス粉末の粒子の分散安定性が低下し、沈降(分散性の低下)が起きやすくなり、塗工性が低下する虞があり、1.5質量部より多くなると、高温環境に晒された際にガラスシール構造に空隙が多くなり、シール性が低下する虞がある。
【0023】
本発明に係るガス封止用ペースト組成物の更なる特徴構成は、前記多糖類は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はその塩、アミノメチルヒドロキシプロピルセルロース、アミノエチルヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、トラガント、ペクチン、グルー、アルギン酸又はその塩、カラギーナン、キサンタンガム、ヒアルロン酸ナトリウム、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、タマリンドシードガムのいずれか一つ以上である点にある。
【0024】
本特徴構成によれば、ガス封止用ペースト組成物に適度な粘性を持たせることができ、塗布しやすいものとすることができる。
【0025】
本発明に係るガス封止用ペースト組成物の更なる特徴構成は、前記ガラス粉末が結晶化ガラスであり、前記ガラス粉末の熱膨張係数が8.0ppm/K以上13ppm/K以下である点にある。
【0026】
本特徴構成によれば、ガス封止用ペースト組成物が高温環境下であっても膨張して体積変化しにくく、ガスリークが発生することを抑制できる。
また、ガラス粉末の熱膨張係数を8.0ppm/K以上13ppm/K以下とすることで、例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC)や固体酸化物形電解セル(SOEC)に用いられる金属部材の熱膨張係数と同様の熱膨張係数とすることができ、当該金属部材の熱膨張によってガス封止用ペースト組成物に大きな力が掛かることを抑制できる。これにより、ガス封止用ペースト組成物の剥離を防止でき、ガスリークが発生することを抑制できる。
【0027】
上記目的を達成するための本発明に係る電気化学モジュールの特徴構成は、
電解質層と、前記電解質層の両側にそれぞれ配置されている第1電極及び第2電極とを備えた電気化学素子の複数が、前記電気化学素子間に金属基板を介して積層されており、隣接する金属基板の間に、上述のガス封止用ペースト組成物が配置されている点にある。
【0028】
本特徴構成によれば、電気化学モジュールにおける金属部材同士の隣接間に、ガス封止用ペースト組成物が配置されている。そのため、ガス封止用ペースト組成物の塗布時には、ガラス粉末の粒子が良好に分散している状態で、金属基板における接合(シール)が必要な箇所に容易に塗布することができる。また、ガス封止用ペースト組成物の塗布後、乾燥や焼成を経た後においては、ガス封止用ペースト組成物の焼成体は、金属基板間をシール性の高い状態で良好に封止(接合)することができる。これにより、高温環境に晒された場合であっても、ガス封止用ペースト組成物の焼成体の剥離を良好に防止でき、焼成体によって封止(接合)された箇所からのガスリークの発生を良好に防止することができる。
【0029】
上記目的を達成するための本発明に係る電気化学モジュールの特徴構成は、
電解質層と、前記電解質層の両側にそれぞれ配置されている第1電極及び第2電極とを備えた電気化学素子の複数が、前記電気化学素子間に金属基板を介して積層されており、隣接する金属基板の間に貫通孔を備えた環状シール部材が配置され、前記環状シール部材の表面の少なくとも一部に、上述のガス封止用ペースト組成物が配置されている点にある。
【0030】
本特徴構成によれば、電気化学モジュールにおける金属部材同士の隣接間に貫通孔を備えた環状シール部材が配置され、当該環状シール部材の表面の少なくとも一部に、ガス封止用ペースト組成物が配置されている。そのため、ガス封止用ペースト組成物の塗布時には、ガラス粉末の粒子が良好に分散している状態で、金属基板と環状シール部材との間における接合(シール)が必要な箇所(環状シール部材の表面の少なくとも一部)に容易に塗布することができる。また、ガス封止用ペースト組成物の塗布後、乾燥や焼成を経た後においては、ガス封止用ペースト組成物の焼成体は、金属基板と環状シール部材との間をシール性の高い状態で良好に封止(接合)することができる。これにより、高温環境に晒された場合であっても、ガス封止用ペースト組成物の焼成体の剥離を良好に防止でき、焼成体によって封止(接合)された箇所からのガスリークの発生を良好に防止することができる。
【0031】
上記目的を達成するための本発明のエネルギーシステムの特徴構成は、前記電気化学モジュールと、前記電気化学モジュールに供給する還元性成分を生成する、或いは、前記電気化学モジュールで生成する還元性成分を含有するガスを変換する燃料変換器と、前記電気化学モジュールから電力を取り出す、或いは、前記電気化学モジュールに電力を流通する電力変換器と、を有する電気化学装置を備え、前記電気化学装置から排出される熱を再利用する排熱利用部を備える点にある。
【0032】
上記特徴構成によれば、ガスリークの発生が抑制され、かつエネルギー効率にも優れたエネルギーシステムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施形態に係るガス封止用ペースト組成物の焼成体を備える固体酸化物形燃料電池の概略図である。
図2】実施形態に係るガス封止用ペースト組成物の焼成体を備える領域の拡大図である。
図3】実施形態に係るガス封止用ペースト組成物の焼成体を備える固体酸化物形燃料電池を備えるエネルギーシステムの概略図である。
図4】実施形態に係るガス封止用ペースト組成物の焼成体を備える固体酸化物形電解セルを備える別のエネルギーシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明のガス封止用ペースト組成物1(以下、ペースト組成物1と略称する場合がある)は、水を溶媒とし、構成成分としてガラス粉末、ビニル系高分子、多糖類から成る。
【0035】
<ガラス粉末>
ガラス粉末は、原料ガラスのバルクを粉砕して製造される。本発明のペースト組成物1は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)や固体酸化物形電解セル(SOEC)等の高温下で使用されるエネルギーデバイスで用いることを想定しているため、原料ガラスは結晶化ガラスであることが好ましい。結晶化ガラスを使用することでペースト組成物1の焼成体が物理的に強固になり、耐久性を高めることができる。そのような原料ガラスとして、構成成分としてホウ素、バリウムの酸化物を含むガラス等、ガラスはんだに適したものが好適に使用される。尚、結晶化ガラスとは、熱処理すると結晶を析出する性質を有するガラス組成物をいう。
【0036】
このようなガラス粉末は、使用されるエネルギーデバイスの温度範囲において膨張し得る。そのため、ガラス粉末を含むペーストにてガス封止を行った箇所にクラックが生じ、当該箇所からガスが漏れる可能性がある。そのため、熱安定性及び耐化学薬品性を有し加工しやすいものであるとともに、使用されるエネルギーデバイスの温度範囲において膨張した場合であっても破壊されないような熱膨張係数を有するガラスを用いることが好ましい。そのようなガラスとしては、熱膨張係数が20℃以上300℃以下の温度において、8.0ppm/K以上13.0ppm/K以下であるものを用いることが好ましく、8.5ppm/K以上12.5ppm/K以下であることがより好ましく、9.0ppm/K以上12.0ppm/K以下であることがさらに好ましい。
原料ガラスの熱膨張係数が上記の範囲内であると、ペースト組成物1が高温環境下であっても膨張して体積変化しにくく、ガスリークが発生することを抑制できる。また、例えば、エネルギーデバイスに用いられる金属部材の熱膨張係数と同様の熱膨張係数とすることができ、当該金属部材の熱膨張によってペースト組成物1に大きな力が掛かることを抑制できる。これにより、ペースト組成物1の剥離を防止でき、ガスリークが発生することを抑制できる。
なお、原料ガラスの熱膨張係数が8.0ppm/K未満の値であると、シール箇所には金属部材が使用されることが多いため、ペースト組成物1をシール箇所に塗布して焼成した際に、金属部材の熱膨張に追従できず、焼成後のペースト組成物1が破損する虞がある。また、原料ガラスの熱膨張係数が13.0ppm/Kよりも大きな値であると、ペースト組成物1をシール箇所に塗布して焼成した際に、温度変化によってペースト組成物1が変形し過ぎてしまい、ガス封止ができない虞がある。
【0037】
<ビニル系高分子>
ビニル系高分子は、ペースト組成物1中におけるガラス粉末の粒子の分散性を向上させるものである。ビニル系高分子は、ガラス粉末の粒子の表面に付着し、ビニル系高分子が有するイオン性によりガラス粉末の粒子間に電気的斥力を生じさせて分散性を維持するもの、主鎖に結合した側鎖の立体障害によりガラス粉末の粒子が一定距離以下には接近しないようにしたもの等が挙げられる。
ビニル系高分子は、主鎖の構成繰返し単位がビニル基であり、側鎖にポリエーテル構造を有する。
ビニル系高分子の主鎖は、イオン性基を有することが好ましい。この構成を有することで、イオン性基がガラス粉末の粒子表面への吸着基として機能するとともに、ガラス粉末の粒子間に電気的斥力が働くようになるため、ペースト組成物1中の溶媒以外の固形物(主にガラス粉末であるが、ビニル系高分子及び多糖類も含む)の割合が比較的高い場合であっても(すなわち固形分濃度を高くしても)ペースト化することが可能となり、塗布性を向上させることができる。本実施形態では、ビニル系高分子の主鎖は無水マレイン酸単位、マレイン酸単位またはマレイン酸塩単位のいずれか一つ以上の単位を有する。
ビニル系高分子の側鎖は、長鎖アルキル等の比較的長い炭素鎖である。このような構成を有することで、ガラス粉末の粒子が、側鎖の立体反発効果によりペースト組成物1中で適切に分散することができる。本実施形態では、側鎖にポリエーテル構造を有するビニル系高分子が好適に使用される。また、本実施形態では、側鎖のポリエーテル構造として、アルキレンオキサイドの誘導体であるポリオキシアルキレン基を有するものである。
【0038】
本実施形態のペースト組成物1におけるビニル系高分子の含有量は、ガラス粉末を100質量部として、0.10質量部以上1.5質量部以下であり、より好ましくは0.20質量部以上1.2質量部以下、さらに好ましくは0.30質量部以上1.0質量部以下である。これにより、ペースト組成物1において、ガラス粉末の粒子の分散性および流動性を高めることができ、また、高温環境に晒された際にガラスシール構造に生じる空隙を少なくでき、シール性の低下を防止できる。ビニル系高分子の含有量は、0.10質量部より少なくなると流動性が悪くなり、塗布性が損なわれる虞があり、1.5質量部より多くなると高温にさらされた際、ガスシール部の空隙が大きくなり、ガスシール性が低下する虞がある。
【0039】
<多糖類>
ペースト組成物1は、多糖類を含む。このような構成を有することで、ペースト組成物中のガラス粉末の粒子の分散安定性が向上し、沈降することを抑制(分散性を高めることが)でき、良好な塗布性を得ることができる。
多糖類としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はその塩、アミノメチルヒドロキシプロピルセルロース、アミノエチルヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、トラガント、ペクチン、グルー、アルギン酸又はその塩、カラギーナン、キサンタンガム、ヒアルロン酸ナトリウム、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、タマリンドシードガム等が挙げられる。
【0040】
多糖類の含有量は、ガラス粉末を100質量部として、0.40質量部以上1.5質量部以下の範囲であり、0.70質量部以上1.4質量部以下であることがより好ましく、0.80質量部以上1.3質量部以下であることがさらに好ましい。これにより、ペースト組成物1に適度な粘性を持たせることができ、ペースト組成物1中のガラス粉末の粒子の分散安定性が向上し、沈降することを抑制(分散性を高めることが)でき、良好な塗布性を得ることができる。多糖類の含有量は、0.40質量部より少なくなると粘度が低くなり、ペースト組成物1中のガラス粉末の粒子の分散安定性が低下し、沈降(分散性の低下)が起きやすくなり、塗工性が低下する虞があり、1.5質量部より多くなると、高温環境に晒された際にガラスシール構造に空隙が多くなり、シール性が低下する虞がある。
【0041】
ビニル系高分子及び多糖類の合計含有量は、ガラス粉末を100質量部として、0.50質量部以上3.0質量部以下の範囲が好ましく、0.70質量部以上2.5質量部以下であることがより好ましく、は0.90質量部以上2.0質量部以下であることがさらに好ましい。これにより、ペースト組成物1に適切な粘性(流動性)を付与し、塗布性を向上させることができるとともに、シール性を向上させることができる。当該合計含有量が、0.50質量部より少なくなると、ペースト組成物1中のガラス粉末の分散性、流動性が低下しやすく、塗布性が低下する虞があり、3.0質量部より多くなると、高温環境に晒された際にガラスシール構造に空隙が多くなり、シール性が低下する虞がある。
【0042】
<溶媒>
ペースト組成物1の溶媒は水であり、溶媒としては水以外を含まない。即ち、溶媒には有機溶媒を含まない。このような構成を有することで、ペースト組成物の乾燥時に溶媒回収設備や換気設備が不要となり、また、工程が簡便となる。さらに、各設備において、防爆仕様が不要となり、コスト面と生産性の面で有利となる。
【0043】
ペースト組成物1の固形分濃度の下限は、73質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、78質量%以上がより好ましい。また、ペースト組成物1の固形分濃度の上限は、90質量%以下であることが好ましく、87質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。固形分濃度が73質量%より小さくなると、ペースト組成物1が乾燥した後のガラスシール構造に空隙が多くなり、シール性が低下する虞があり、固形分濃度が90質量%より大きくなるとペースト組成物1中のガラス粉末の分散性、流動性が低下しやすく、塗布性が低下する虞がある。
尚、固形分濃度は、以下の式で定義される。
(固形分濃度)=(水を除去した際のペースト組成物の質量)/(ペースト組成物の質量)×100
水を除去した際のペースト組成物1の質量は、組成物から水を蒸発させた後の残渣の質量を測定した値を用いてもよく、ペースト組成物1を構成する前の原料の質量の総和を用いてもよい。
【0044】
なお、ペースト組成物1は無機バインダーを含まない。無機バインダーは、たとえば、ケイ酸系化合物、リン酸アルミニウムなどが挙げられる。高温環境に晒された場合であっても、無機バインダー(ケイ酸系化合物やリン酸アルミニウムなど)に由来するケイ素やリン等の元素の揮発・堆積が生じる可能性を無くすことができる。
【0045】
図1に、ペースト組成物1の焼成体1Aを備える電気化学モジュールMを示す。
本明細書では、電気化学素子Aを備える電気化学モジュールMの一例として固体酸化物形燃料電池を用いて説明するが、電気化学モジュールMは固体酸化物形燃料電池に限定されたものではない。
なお、以下に好適な実施形態を記すが、これら実施形態はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。なお、層の位置関係などを表す際、例えば電極層から見て電解質層の側を「上」「上側」、第一板状体の側を「下」「下側」などと呼ぶ。以下、図1図2を参照しながら電気化学素子A、電気化学素子積層体S、電気化学モジュールMについて説明する。
【0046】
<電気化学素子>
図1図2に示すように、電気化学素子Aは、導電性の第1板状体11と導電性の第2板状体12との対向面間に形成された内部流路A1を有する金属支持体(金属部材の一例)10を備え、金属支持体10は、当該金属支持体10を構成する第1板状体11及び第2板状体12の少なくとも一部において、当該金属支持体10の内側である内部流路A1と外側とに亘って気体を透過できる気体通流許容部11Aと、気体通流許容部11Aの全部又は一部を被覆する状態で、膜状の電極層(第1電極の一例)31と膜状の電解質層32と膜状の対極電極層(第2電極の一例)33とを記載順に有する電気化学反応部30とを備える。また、金属支持体10には、表面貫通方向外方から内部流路A1にたとえば燃料ガス等の還元性成分ガス及びたとえば空気等の酸化性成分ガスのうちの一方である第一ガスを流通する第1貫通部41を一端部側に備え、内部流路A1を通流した第一ガスを金属支持体10の表面貫通方向外方へ流通する第2貫通部51を他端部側に備える。尚、第1貫通部41と第2貫通部51とは対称形にて同様の構造であることも理解される。
【0047】
<金属支持体>
金属支持体10は、第1板状体11と第2板状体12とを備える。
第1板状体11は、電極層31と電解質層32と対極電極層33とを有する電気化学反応部30を支持する。第1板状体11の材料としては、電子伝導性、耐熱性、耐酸化性及び耐腐食性に優れた材料が用いられる。例えば、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、ニッケル基合金などが用いられる。特に、クロムを含む合金が好適に用いられる。
【0048】
第1板状体11は略板状であり、その中央部に表面と裏面とを貫通して設けられる複数の貫通孔を多数設けてなる気体通流許容部11Aを有する。貫通孔は、例えばレーザー加工などにより、第1板状体11に設けることができる。貫通孔は、第1板状体11の裏面から表面へ気体を透過させる機能を有する。気体通流許容部11Aは、第1板状体11における電極層31が設けられる領域より小さい領域に設けられることが好ましい。
【0049】
第1板状体11にはその表面に、拡散抑制層としての金属酸化物層(図示せず)が設けられる。すなわち、第1板状体11と後述する電極層31との間に、拡散抑制層が形成されている。金属酸化物層は、第1板状体11の外部に露出した面だけでなく、電極層31との接触面(界面)にも設けられる。また、貫通孔の内側の面に設けることもできる。この金属酸化物層により、第1板状体11と電極層31との間の元素相互拡散を抑制することができる。
【0050】
金属酸化物層は種々の手法により形成されうるが、第1板状体11の表面を酸化させて金属酸化物とする手法が好適に利用される。また、第1板状体11の表面に、金属酸化物層をスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、スパッタリング法やPLD法等のPVD法、CVD法などにより形成しても良いし、メッキと酸化処理によって形成しても良い。さらに、金属酸化物層は導電性の高いスピネル相などを含んでも良い。
【0051】
第1板状体11としてフェライト系ステンレス材を用いた場合、電極層31や電解質層32の材料であるYSZ(イットリア安定化ジルコニア)やGDC(ガドリニウム・ドープ・セリア、CGOとも呼ぶ)等と熱膨張係数が近い。したがって、低温と高温の温度サイクルが繰り返された場合も、第1板状体11、電極層31及び電解質層32の変形や膨張が同程度であるため、電気化学素子Aが損傷しにくい。よって、長期耐久性に優れた電気化学素子Aを実現できるため好ましい。
【0052】
第2板状体12は、第1板状体11と重ね合わされた状態で、周縁部10aを溶接一体化されて金属支持体10を構成する。第2板状体12の材料については、耐熱性の金属であることが好ましく、第1板状体11との熱膨張差の低減や、溶接などの接合性の信頼性確保の観点から、第1板状体11と同じ材料であると、より好ましい。
第2板状体12は、第1板状体11の気体通流許容部11Aに対向する領域、即ち第1板状体11と第2板状体12の間の領域において、一端部側から他端部側に向かう内部流路A1を形成する。内部流路A1は、酸化性ガス又は還元性ガスの一方である第1ガスが流れる第1ガス流路40を構成する。電気化学モジュールMが備える第1ガス流路40の上流側は、後述する筐体Bの第1ガス供給部61を介して、第1ガスを供給する外部の第1ガス供給装置(図示せず)と流体連通し、第1ガス流路40の下流側は、後述する筐体Bの第1ガス排出部62を介して外部と流体連通する。
【0053】
<電気化学反応部>
電気化学反応部30は、金属支持体10上に形成され、電気化学素子Aの積層方向において下側から順に電極層31と電解質層32と対極電極層33とを備える。
(電極層)
電極層31は、図1図2に示すように、第1板状体11の表面であって貫通孔が設けられた領域より大きな領域に設けられた薄層として設けられ得る。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1.0μm~100μm程度、好ましくは、5.0μm~50μmとすることができる。このような厚さにすると、高価な電極層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な電極性能を確保することが可能となる。
【0054】
電極層31は、その内部及び表面に複数の細孔を有する多孔質な層として形成され、気体透過性を有する。電極層31は、例えば、その緻密度が30%以上80%未満となるように形成される。細孔のサイズは、電気化学反応を行う際に円滑な反応が進行するのに適したサイズを適宜選ぶことができる。なお緻密度とは、層を構成する材料の空間に占める割合であって、(1-空孔率)と表すことができ、また、相対密度と同等である。
【0055】
電極層31の材料としては、例えばNiO-GDC、Ni-GDC、NiO-YSZ、Ni-YSZ、CuO-CeO、Cu-CeOなどの複合材を用いることができる。電極層31の形成方法に特に制限はないが、低温焼成法(例えば1100℃より高い高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法やパルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能なプロセスにより、例えば1100℃より高い高温域での焼成を用いる必要がない。
【0056】
(電解質層)
図1図2に示すように、電解質層32は、電極層31を覆う薄膜層である。また、厚さが10μm以下の薄膜の状態で形成することができる。電解質層32は、第1板状体11の表面であって貫通孔が設けられた領域より大きな領域に設けられる。つまり、貫通孔は第1板状体11における電解質層32が形成された領域の内側に形成されている。
【0057】
電解質層32は、電極層31で発生した第1ガス又は第2ガス由来のイオンを対極電極層33へと伝導するイオン電導性を有するとともに、当該第1ガス又は第2ガスを対極電極層33へと伝えることを防止するガスバリア性を備える。
【0058】
電解質層32の材料としては、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリニウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)、LSGM(ストロンチウム・マグネシウム添加ランタンガレート)等の酸素イオンを伝導する電解質材料や、ペロブスカイト型酸化物等の水素イオンを伝導する電解質材料を用いることができる。特にジルコニア系のセラミクスが好適に用いられる。
電解質層32の形成方法に特に制限はないが、低温焼成法(例えば1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD(化学気相成長)法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能な成膜プロセスにより、例えば1100℃を越える高温域での焼成を用いずに、緻密で気密性及びガスバリア性の高い電解質層32が得られる。そのため、第1板状体11の損傷を抑制し、また、第1板状体11と電極層31との元素相互拡散を抑制することができ、性能・耐久性に優れた電気化学素子Aを実現できる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。さらに、スプレーコーティング法を用いると、緻密で気密性及びガスバリア性の高い電解質層が低温域で容易に得られやすいのでさらに好ましい。
【0059】
電解質層32は、電極層31を覆った状態で形成される。そのため、電極層31からのガスのリークを抑制することができる。電気化学素子AをSOFCの構成要素として用いる場合、SOFCの作動時には、第1板状体11の裏側から貫通孔を通じて電極層31へガスが供給される。電解質層32が第1板状体11に接している部位においては、ガスケット等の別部材を設けることなく、ガスのリークを抑制することができる。なお、本実施形態では電解質層32によって電極層31の周囲をすべて覆っているが、電極層31の上部に電解質層32を設け、周囲にガスケット等を設ける構成としてもよい。
【0060】
(対極電極層)
対極電極層33は、電解質層32の上に形成される薄膜層である。薄膜層の厚さを、例えば、1.0μm~100μm程度、好ましくは、5.0μm~50μmとすることができる。このような厚さにすると、高価な対極電極層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な電極性能を確保することが可能となる。
対極電極層33は、その内部及び表面に複数の細孔を有する多孔質な層として形成され、気体透過性を有する。対極電極層33は、例えば、その緻密度が30%以上80%未満となるように形成される。細孔のサイズは、電気化学反応を行う際に円滑な反応が進行するのに適したサイズを適宜選ぶことができる。
【0061】
対極電極層33の材料としては、例えば、LSCF、LSM等の複合酸化物、セリア系酸化物及びこれらの混合物を用いることができる。特に対極電極層33が、La、Sr、Sm、Mn、Co及びFeからなる群から選ばれる2種類以上の元素を含有するペロブスカイト型酸化物を含むことが好ましい。以上の材料を用いて構成される対極電極層33は、カソードとして機能する。
【0062】
対極電極層33の形成方法に特に制限はないが、例えば、低温焼成法(例えば1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などを適宜用いて行うことができる。各形成方法において、1100℃以下の処理温度とすると、第1板状体11の損傷を抑制し、また、第1板状体11と電極層31との元素相互拡散を抑制でき、性能・耐久性に優れた電気化学素子Aを実現できるので好ましい。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるため好ましい。さらに、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるためさらに好ましい。
【0063】
電気化学反応部30では、第1ガス及び第2ガスの化学反応が進行する。例えば、第1板状体11の裏面から貫通孔を通じて第1ガスとしての水素を含む燃料ガスを電極層31へ流通し、電極層31の対極となる対極電極層33へ第2ガスとしての空気を流通する場合について説明する。このような場合、電気化学反応部30を500℃以上900℃以下の作動温度に維持する。電解質層32に酸化物イオンを伝導する電解質材料を用いた場合には、対極電極層33において空気に含まれる酸素分子が電子eと反応して酸化物イオンO2-が生成される。その酸化物イオンO2-が電解質層32を通って電極層31へ移動する。電極層31においては、流通された燃料ガスに含まれる水素分子が酸化物イオンO2-と反応し、水分子と電子eが生成される。電解質層32にプロトンHを伝導する電解質材料を用いた場合には、電極層31において流通された燃料ガスに含まれる水素分子が電子eを放出してプロトンHが生成される。そのプロトンHが電解質層32を通って対極電極層33へ移動する。対極電極層33において空気に含まれる酸素分子とプロトンH、電子eが反応し水分子が生成される。以上の反応により、電極層31と対極電極層33との間に電気化学出力として起電力が発生する。この場合、電極層31は燃料電池の燃料極(アノード)として機能し、対極電極層33は空気極(カソード)として機能する。
【0064】
なお、電気化学反応部30には、電極層31と電解質層32との間に中間層34を備え、電解質層32と対極電極層33との間に反応防止層35を設ける構成としてもよい。
【0065】
<電気化学モジュール>
図1に示すように、電気化学モジュールMは、後述する電気化学素子積層体Sを内装する筐体Bと、筐体Bの外部から内部流路A1に第1ガスを通流する第1ガス供給部61と、反応後の第1ガスを通流する第1ガス排出部62と、筐体Bの外部から通流部A2に第2ガスを流通する第2ガス供給部71と、反応後の第2ガスを流通する第2ガス排出部72と、電気化学反応部30における電気化学反応に伴う出力を得る出力部8とを備え、筐体B内に、第2ガス供給部71から流通される第2ガスを通流部A2に分配流通する分配室90を備えている。
分配室90は、電気化学素子積層体Sに対して当該電気化学素子積層体Sの通流部A2の入口や出口となる側(側方)に位置する空間であり、通流部A2は、空間側に開口形成されて当該空間と連通している。
【0066】
筐体Bには、当該筐体Bと電気化学素子Aの周囲との間に緩衝部300が配設されていてもよい。具体的には、図1に示すように、電気化学素子積層体Sは、当該電気化学素子積層体Sが有する各電気化学素子Aの周囲においては、筐体Bに対して、緩衝部300に当接する状態で内装されている。
筐体Bには支持部B1が一体的に設けられている。支持部B1は、筐体Bの内面から突出して設けられている。緩衝部300は長手方向においては、支持部B1に支持される態様によって筐体Bの内部の所定位置に配設される。一方、短手方向においては、筐体Bの内壁に支持される態様によって筐体Bの内部の所定位置に配設される。
図1に示すように、緩衝部300には、第2ガス供給部71から分配室90を経て当該緩衝部300に包囲された各電気化学素子Aの通流部A2に第2ガスを供給する第2ガス供給口301と、各電気化学素子Aの通流部A2から分配室90を経て当該第2ガス排出部72へ第2ガスを排出する第2ガス排出口302とを有する。緩衝部300は、第2ガス供給口301及び第2ガス排出口302を除いて、筐体Bに対して電気化学素子積層体Sを気密に包囲する。
【0067】
筐体Bの材料としては、例えば、フェライト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレス、又はこれらとセラミックスとの複合体等が挙げられる。
電気化学素子Aの材料は、筐体Bと同様の材料であるのが好ましい。言い換えれば、電気化学素子A及び筐体Bの材料は、筐体Bと同程度の熱膨張率であるのが好ましい。電気化学モジュールMの使用時の発熱により筐体Bや電気化学素子Aはそれぞれ熱膨張する。電気化学素子Aは筐体Bに内装されているので、筐体B及び電気化学素子Aの熱膨張率が大きく異なると、電気化学素子Aに変形や損傷等の不具合が発生する虞がある。これに対して、上述のように筐体B及び電気化学素子Aは熱膨張率が略同等であることから、同程度に熱膨張する。よって、電気化学素子Aと筐体Bとの熱膨張差が小さく抑えられ、電気化学素子Aに変形や損傷等の不具合が発生する虞を抑制することができる。
【0068】
電気化学素子積層体Sは、当該電気化学素子積層体Sが有する電気化学素子Aの積層方向の両端においては、筐体Bに対して、一対の集電体81、82に挟持された状態で内装されており、この集電体81、82に出力部8が延設され、筐体B外部の電力供給先に電力供給自在に接続されるとともに、集電体81,82は筐体Bに対して電気化学素子積層体Sを気密に収容し、かつ集電体81,82が各電気化学素子Aに対する緩衝部として機能するよう設けられていてもよい。
【0069】
これにより電気化学モジュールMは、第1ガス供給部61から燃料ガスを流通するとともに、第2ガス供給部71から空気を流通することで、図1図2破線矢印に示すように燃料ガスが進入し実線矢印に示すように空気が進入する。第1ガス供給部61から流通された燃料ガスは、電気化学素子積層体Sの最上部の電気化学素子Aの第1貫通部41より第1ガス流路40に誘導され、第1環状シール部材43により区画される第1ガス流路40より、すべての電気化学素子Aの内部流路A1に通流する。また第2ガス供給部71から流通された空気は、分配室90に一時流入したのち、各電気化学素子A間に形成される通流部A2に通流する。
ちなみに、第2板状体12を基準にすると、第2板状体12が第1板状体11から膨出する部分が、第1板状体11と第2板状体12との間に内部流路A1を構成するとともに、隣接する電気化学素子Aの電気化学反応部30の対極電極層33と接触して電気接続可能にする。一方、第2板状体12が第1板状体11と接触する部分が第1板状体11と電気接続し、第2板状体12と隣接する電気化学素子Aの電気化学反応部30との間に通流部A2を形成する。
【0070】
この燃料ガス及び空気の流れに従って電気化学反応部30で生じた電力は、隣接する電気化学素子Aの電気化学反応部3と第2板状体12との接触により集電体81,82どうしの間で直列に接続され、合成出力が出力部8より取り出される。
【0071】
<電気化学素子積層体>
図1に示すように、電気化学モジュールMの電気化学素子積層体Sは、電解質層32と、電解質層32の両側にそれぞれ配置されている電極層31及び対極電極層33とを備えた電気化学素子Aの複数が、電気化学素子A間に金属支持体10を介して積層されており、隣接する金属支持体10の間に貫通孔を備えた環状シール部材が配置されている。
具体的には、電気化学モジュールMは、隣接する電気化学素子Aに関して、一つの電気化学素子Aを構成する金属支持体10と、他の一つの電気化学素子Aを構成する金属支持体10とが対向する形態で、且つ、一つの電気化学素子Aを構成する金属支持体10における電気化学反応部30が配置される第1板状体11とは別の第2板状体12の外面と、他の一つの電気化学素子Aを構成する金属支持体10における第1板状体11の外面(実際に接触するのは対極電極層33の上面)とが電気的に接続される形態で、且つ、これら両外面どうしの隣接間に、当該両外面に沿って第2ガスが通流する通流部A2が形成される形態で、複数の電気化学素子Aが積層配置されている。
電気的に接続させるためには、電気伝導性表面部同士を単純に接触させる他、接触面に面圧を印可したり、高電気伝導性の材料を介在させて接触抵抗を下げる方法などが採用可能である。具体的には、長方形状の各電気化学素子Aが一端部の第1貫通部41と他端部の第2貫通部51とを揃えた状態で、それぞれの電気化学素子Aの電気化学反応部30が上向きになる状態で整列して、各第1貫通部41、第2貫通部51同士の間に第1環状シール部材(環状シール部材の一例)43及び第2環状シール部材(環状シール部材の一例)53を介在して、積層(集合)されることにより、上記構成となる。
【0072】
金属支持体10は、金属支持体10の一端部に設けられた第1貫通部41と金属支持体10の他端部に設けられた第2貫通部51を備え、第1貫通部41は、第1板状体11と第2板状体12との間に形成された内部流路A1の上流側を構成し、第2貫通部51は、内部流路A1の下流側を構成する。
そして、上述のように複数の電気化学素子Aが積層(集合)した状態では、第1貫通部41において、電気化学素子Aの積層方向上側の上側開口部42は、第1環状シール部材43の下端部と接して気密性が保たれて当該第1環状シール部材43とともに第1ガス流路40を構成し、また、当該第1貫通部41において、電気化学素子Aの積層方向下側の下側開口部44は、他の第1環状シール部材43の上端部と接して気密性が保たれて当該他の第1環状シール部材43とともに第1ガス流路40を構成する。
同様に、上述のように複数の電気化学素子Aが積層(集合)した状態では、第2貫通部51において、電気化学素子Aの積層方向上側の上側開口部52は、第2環状シール部材53の下端部と接して気密性が保たれて当該第2環状シール部材53とともに第1ガス流路40を構成し、また、当該第2貫通部51において、電気化学素子Aの積層方向下側の下側開口部54は、他の第2環状シール部材53の上端部と接して気密性が保たれて当該他の第2環状シール部材53とともに第1ガス流路40を構成する。
このように、一つの電気化学素子Aを構成する金属支持体10における電気化学反応部30が配置される第1板状体11とは別の第2板状体12の外面と、他の一つの電気化学素子Aを構成する金属支持体10における第1板状体11の外面との間に、第1環状シール部材43及び第2環状シール部材53を介在する状態で、複数の電気化学素子Aが積層(集合)されている。
【0073】
第1環状シール部材43及び第2環状シール部材53は、中央部分に貫通孔が形成された円環状の平板で構成されており、アルミナ等の絶縁性セラミクス材料やこれを被覆した金属、あるいは、マイカ繊維、ガラスなどの材料からなり、隣接する電気化学素子Aどうしを電気的に絶縁する絶縁シール部として機能する。なお、第1環状シール部材43及び第2環状シール部材53の平面外形は円環状に限られず、環状であればどのような形状であってもよい。環状には、円形、楕円形、方形、多角形状等いかなる形状も含まれる。
【0074】
電気化学モジュールMは、上述の構成を備えているので、長方形状の金属支持体10の長手方向一端部側には、表面貫通方向外方から内部流路A1に還元性成分ガス及び酸化性成分ガスのうちの一方である第1ガスを流通する第1貫通部41、及び、通流部A2内において、金属支持体10の両外面にそれぞれ形成される第1貫通部41を通流部A2と区画する第1環状シール部材43を備え、これら第1貫通部41及び第1環状シール部材43により、第1ガスを内部流路A1に流通する第1ガス流路40が形成されている。
また、長方形状の金属支持体10の長手方向他端部側には、内部流路A1を通流した第1ガスを金属支持体10の表面貫通方向外方へ通流する第2貫通部51、及び、通流部A2内において、金属支持体10の両外面にそれぞれ形成される第2貫通部51を通流部A2と区画する第2環状シール部材53を備え、これら第2貫通部51及び第2環状シール部材53により、内部流路A1を通流した第1ガスを通流する第1ガス流路40が形成される。
なお、第1板状体11における第1環状シール部材43及び第2環状シール部材53の当接する部位の周囲には、第1板状体11における内部流路A1とは反対側面に環状の膨出部aを設けて第1環状シール部材43及び第2環状シール部材53の第1板状体11の面に沿う方向での位置決めを容易にしてある。
【0075】
また、電気化学モジュールMは、上述の構成を備えているので、隣接する電気化学素子Aにおいて第1環状シール部材43及び第2環状シール部材53と交差する通流部A2が設けられて、第2ガス流路50を構成する。通流部A2の中間部には対極電極層33が配置されて、第2ガスと接触し電気化学反応が起きるようにされている。第2ガス流路50は、筐体Bの第2ガス供給部71を介して、第2ガスを供給する外部の第2ガス供給装置(図示せず)と流体連通し得る。第2ガス流路50を通過した第2ガスは、筐体Bが備える第2ガス排出部72を通じて外部へ排出される。
【0076】
<焼成体>
本実施形態に係るペースト組成物1は、電気化学モジュールMにおいて気密性が必要な箇所に塗布され、所定温度にて焼成される。その結果、ペースト組成物1の焼成体1Aは、主としてガラス粉末から成り、ガスシール部として機能する。ペースト組成物1の焼成温度は、500℃以上1100℃以下であることが好ましく、500℃以上800℃以下であることがより好ましい。500℃未満で焼成すると、ガラス粉末以外の成分も残り得るため、ガスシール性が十分に発揮されない虞がある。1100℃を超えると、電気化学モジュールMの構成部材に悪影響を与える可能性があり、耐久性の低下を招く虞がある。
ペースト組成物1を塗布して焼成するタイミングとしては、複数の電気化学素子Aを積層(集合)して電気化学素子積層体Sとした状態で焼成することを想定できる。
【0077】
本実施形態では、電気化学素子A同士を第1環状シール部材43及び第2環状シール部材53を介して積層する際に、第1環状シール部材43及び第2環状シール部材53の外周部、及び、第1環状シール部材43及び第2環状シール部材53と金属支持体10との接触箇所に、ペースト組成物1を塗布して焼成することで焼成体1Aを形成した例を、図1に示している。なお、図1では、集電体(金属部材の一例)81と第1環状シール部材43及び第2環状シール部材53との接触箇所にも、ペースト組成物1を塗布して焼成することで焼成体1Aを形成している。
【0078】
なお、ペースト組成物1の焼成体1Aは、電気化学モジュールMにおいて、気密性が必要な箇所に塗布して焼成することで形成できるので、例えば、第1環状シール部材43及び第2環状シール部材53の上面や下面と金属支持体10との接触箇所に塗布して焼成することで焼成体1Aを形成することもできる。
【0079】
以上説明した電気化学モジュールMを用いて、後述するエネルギーシステムZを構築することができる。
【0080】
<エネルギーシステム>
図3、4には、エネルギーシステムZの概要が示されている。
エネルギーシステムZは、電気化学装置100と、電気化学装置100から排出される熱を再利用する排熱利用部としての熱交換器200とを有する。
電気化学装置100は、電気化学モジュールMと、脱硫器101と燃料変換器の一種である改質器102とを有し、電気化学モジュールMに対して還元性成分を含有する燃料ガスを流通する燃料供給部103と、電気化学モジュールMから電力を取り出す出力部として電力変換器の一種であるインバータ104とを有する。
【0081】
より詳細には、電気化学装置100は、インバータ104、脱硫器101、改質水タンク105、気化器106、改質器102、ブロア107、燃焼部108、制御部110及び電気化学モジュールMを有する。
【0082】
脱硫器101は、都市ガス等の炭化水素系の原燃料に含まれる硫黄化合物成分を除去(脱硫)する。原燃料中に硫黄化合物が含有される場合、脱硫器101を備えることにより、硫黄化合物による改質器102あるいは電気化学素子Aの汚染を抑制することができる。気化器106は、改質水タンク105から流通される改質水から水蒸気を生成する。改質器102は、気化器106にて生成された水蒸気を用いて脱硫器101にて脱硫された原燃料を水蒸気改質して、水素を含む改質ガスを生成する。
【0083】
電気化学モジュールMは、改質器102から流通された改質ガスと、ブロア107から流通された空気とを用いて、電気化学反応させて発電する。燃焼部108は、電気化学モジュールMから流通される反応排ガスと空気とを混合させて、反応排ガス中の可燃成分を燃焼させる。
【0084】
インバータ104は、電気化学モジュールMの出力電力を調整して、商用系統(図示省略)から受電する電力と同じ電圧及び同じ周波数にする。制御部110はエネルギーシステムZの運転を制御する。
【0085】
改質器102は、燃焼部108での反応排ガスの燃焼により発生する燃焼熱を用いて原燃料の改質処理を行う。
【0086】
原燃料は、昇圧ポンプ111の作動により原燃料供給路112を通して脱硫器101に流通される。改質水タンク105の改質水は、改質水ポンプ113の作動により改質水供給路114を通して気化器106に流通される。そして、原燃料供給路112は脱硫器101よりも下流側の部位で、改質水供給路114に合流されており、筐体B外にて合流された改質水と原燃料とが気化器106に流通される。
【0087】
改質水は気化器106にて気化され水蒸気となる。気化器106にて生成された水蒸気を含む原燃料は、水蒸気含有原燃料供給路115を通して改質器102に流通される。改質器102にて原燃料が水蒸気改質され、水素ガスを主成分とする改質ガス(還元性成分を有する第1ガス)が生成される。改質器102にて生成された改質ガスは、燃料供給部103を通して電気化学モジュールMに流通される。
【0088】
反応排ガスは燃焼部108で燃焼され、燃焼排ガスとなって燃焼排ガス排出路116から熱交換器200に送られる。燃焼排ガス排出路116には燃焼触媒部117(例えば、白金系触媒)が配置され、燃焼排ガスに含有される一酸化炭素や水素等の還元性成分を燃焼除去される。
【0089】
熱交換器200は、燃焼部108における燃焼で生じた燃焼排ガスと、流通される冷水とを熱交換させ、温水を生成する。すなわち熱交換器200は、電気化学モジュールMから排出される熱を再利用する排熱利用部として動作する。
【0090】
なお、排熱利用部の代わりに、電気化学モジュールMから(燃焼されずに)流通される反応排ガスを利用する反応排ガス利用部を設けてもよい。また、第1ガス排出部62より筐体B外に流通される反応排ガスの少なくとも一部を図3中の101,103,106,112,113,115のいずれかの部位に合流させリサイクルしても良い。反応排ガスには、電気化学素子Aにて反応に用いられなかった残余の水素ガスが含まれる。反応排ガス利用部では、残余の水素ガスを利用して、燃焼による熱利用や、燃料電池等による発電が行われ、エネルギーの有効利用がなされる。
【0091】
図4には、電気化学反応部30を電解セルとして動作させる場合のエネルギーシステムZの一例が示されている。本エネルギーシステムZでは供給された水と二酸化炭素が電気化学反応部30において電気分解され、水素及び一酸化炭素等を生成する。さらに燃料変換器25において炭化水素などが合成される。図4中の熱交換器24を、燃料変換器25で起きる反応によって生ずる反応熱と水とを熱交換させ気化させる排熱利用部として動作させるとともに、図4中の熱交換器23を、電気化学素子Aによって生ずる排熱と昇圧ポンプ111によって供給される水蒸気及び二酸化炭素とを熱交換させ予熱する排熱利用部として動作させる構成とすることにより、エネルギー効率を高めることができる。
また、電力変換器(コンバータ)は、電気化学素子Aに電力を流通する。これにより、上記のように電気化学素子Aは電解セルとして作用する。
よって、上記構成によれば、電気エネルギーを燃料等の化学的エネルギーに変換する効率を向上できるエネルギーシステムZ等を提供することができる。
【0092】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
(実施例1)
ガラス粉末(GM31107、ショット アクチエンゲゼルシャフト)5.0g、ビニル系高分子としてマリアリム(SC-0505K、日油株式会社)を0.025g、多糖類としてヒドロキシプロピルセルロース(NISSO HPC Grade.SL、日本曹達株式会社)を0.050gとなるように計量して撹拌機(あわとり練太郎、株式会社シンキー)の容器に入れた後、固形分濃度が85質量%となるように水を加えた。そして、2000rpmで5分間攪拌混練して、ペースト組成物を得た。
また、得られたペースト組成物を固体酸化物形燃料電池用ガスケット(サーミキュライト866LS、株式会社東京興業貿易商会)の外周面に塗布し、塗布性の評価及びリーク率の測定を行った。また、ペースト組成物の沈降性(分散性)も評価した。
【0094】
(実施例2)
ガラス粉末をG018-311(ショット アクチエンゲゼルシャフト製)とした他は、実施例1と同じ条件でペースト組成物を作製し、塗布性の評価及びリーク率の測定を行った。また、ペースト組成物の沈降性(分散性)も評価した。
【0095】
(実施例3)
ガラス粉末をG018-311(ショット アクチエンゲゼルシャフト製)とし、ビニル系高分子としてマリアリム(SC-0505K、日油株式会社)0.050g、多糖類としてヒドロキシプロピルセルロース(NISSO HPC Grade.SL、日本曹達株式会社)0.050gとした他は、実施例1と同じ条件でペースト組成物を作製し、塗布性の評価及びリーク率の測定を行った。また、ペースト組成物の沈降性(分散性)も評価した。
【0096】
(実施例4)
ガラス粉末をG018-311(ショット アクチエンゲゼルシャフト製)とし、ビニル系高分子としてマリアリム(SC-0505K、日油株式会社)0.015g、多糖類としてヒドロキシプロピルセルロース(NISSO HPC Grade.SL、日本曹達株式会社)0.075gとした他は、実施例1と同じ条件でペースト組成物を作製し、塗布性の評価及びリーク率の測定を行った。また、ペースト組成物の沈降性(分散性)も評価した。
【0097】
(実施例5)
ガラス粉末をG018-311(ショット アクチエンゲゼルシャフト製)とし、ビニル系高分子としてマリアリム(SC-0505K、日油株式会社)0.050g、多糖類としてヒドロキシプロピルセルロース(NISSO HPC Grade.SL、日本曹達株式会社)0.035gとした他は、実施例1と同じ条件でペースト組成物を作製し、塗布性の評価及びリーク率の測定を行った。また、ペースト組成物の沈降性(分散性)も評価した。
【0098】
(比較例1)
ビニル系高分子と多糖類を加えず、固形分濃度が75質量%となるように水を加えた他は、実施例1と同じ条件でペースト組成物を作製した。その後、金属リングの上面及び下面にペースト組成物を塗布し、塗布性の評価及びリーク率の測定を行った。
【0099】
(比較例2)
多糖類を加えず、ビニル系高分子としてマリアリム(SC-0505K、日油株式会社)0.025gとし、固形分濃度が80質量%となるように水を加えた他は、実施例1と同じ条件でペースト組成物を作製し、塗布性の評価及びリーク率の測定を行った。また、ペースト組成物の沈降性(分散性)も評価した。
【0100】
(比較例3)
多糖類を加えず、ビニル系高分子としてマリアリム(SC-0505K、日油株式会社)0.025gとし、固形分濃度が80質量%となるように水を加えた他は、実施例1と同じ条件でペースト組成物を作製した。その後、金属リングの上面及び下面にペースト組成物を塗布し、塗布性の評価及びリーク率の測定を行った。また、ペースト組成物の沈降性(分散性)も評価した。
【0101】
(比較例4)
ビニル系高分子と多糖類を加えず、固形分濃度が68質量%となるように水を加えた他は、実施例1と同じ条件でペースト組成物を作製した。その後、金属リングの上面及び下面にペースト組成物を塗布し、塗布性の評価及びリーク率の測定を行った。また、ペースト組成物の沈降性(分散性)も評価した。
【0102】
(比較例5)
ビニル系高分子を加えず、多糖類としてヒドロキシプロピルセルロース(NISSO HPC Grade.SL、日本曹達株式会社)0.050gとした他は、実施例1と同じ条件でペースト組成物を作製し、塗布性を評価した。
【0103】
(比較例6)
ビニル系高分子を加えず、多糖類としてヒドロキシプロピルセルロース(NISSO HPC Grade.SL、日本曹達株式会社)0.050gとし、固形分濃度が75質量%となるように水を加えた他は、実施例1と同じ条件でペースト組成物を作製し、塗布性を評価した。
【0104】
(比較例7)
ガラス粉末(G018-311、ショット アクチエンゲゼルシャフト)5.0g、ビニル系高分子としてマリアリム(SC-0505K、日油株式会社)0.15g、多糖類としてヒドロキシプロピルセルロース(NISSO HPC Grade.SL、日本曹達株式会社)0.15gとなるように各成分を計量して撹拌機(あわとり練太郎、株式会社シンキー)の容器に入れた後、固形分濃度が75質量%となるように水を加えた他は、実施例1と同じ条件でペースト組成物を作製し、塗布性の評価及びリーク率の測定を行った。また、ペースト組成物の沈降性(分散性)も評価した。
【0105】
《ペースト組成物の分散性の評価》
実施例1から実施例5及び比較例1から比較例7で得られたペースト組成物を、別の容器内にて1時間静置した。その後、容器の底(ペースト組成物の下部)にガラス粉末の堆積物の有無を確認することで、分散性の評価を行った。その結果を表1に示す。なお、表1において、ガラス粉末が見られなかった場合には○、ガラス粉末の堆積が見られた場合は×として記載する。
《ペースト組成物の塗布性の評価》
実施例1から実施例5及び比較例1から比較例7で得られたペースト組成物を、固体酸化物形燃料電池用ガスケット又は金属リングに塗布する際に、ディスペンサー又は筆による塗布が可能である場合には○、ディスペンサー又は筆による塗工はできないが、ヘラによる塗布が可能である場合は△、ディスペンサー、筆及びヘラによる塗布が不可能である場合を×として評価を行った。その結果を表1に示す。
《リーク率の測定》
実施例1から実施例5及び比較例1から比較例7で得られたペースト組成物を、固体酸化物形燃料電池用ガスケット(サーミキュライト866LS、株式会社東京興業貿易商会)の場合はその側面(外周面)及び金属リングの場合はその上面及び下面に塗布し、これら固体酸化物形燃料電池用ガスケット及び金属リングの夫々を、試験用のフランジ間に配置して両フランジを締め込んだ状態で、750℃で焼成した。その後、ガスケット内及び金属リング内に圧力計を接続し水素ガスを加えて、5.0~10kPaに昇圧して保持した際の圧力を記録した。10分後、ガスケット内及び金属リング内の圧力を測定し、以下の式に従ってリーク率を求めた。その結果を表1に示す。
(リーク率)=100×{(保持直後のガスケット又は金属リング内の圧力)-(10分後のガスケット又は金属リング内の圧力)}/保持直後のガスケット又は金属リング内の圧力)
参考例として、固体酸化物形燃料電池用ガスケットにペースト組成物を塗布しなかった場合のリーク率を表1に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
実施例1から実施例5で得られたペースト組成物は、構成成分が沈降することがなかったため、長期間においても構成成分が安定して分散したペースト組成物であると考えられる。また、塗布性についてもディスペンサー、筆による塗工が可能であるため、ガスケットの周囲への塗布及び細かな隙間がないようにペースト組成物を塗布することも可能である。ゆえに実際の燃料電池を製造工程において用いることが可能であると考えられる。さらに、10分後のリーク率はいずれも0となり、ガス封止の機能を十分に示す結果となった。
一方、比較例1で得られたペースト組成物は10分後のリーク率は0であったものの、静置すると構成成分が堆積してしまい、分散性に優れたものであるとは言い難い。さらにディスペンサーや筆による塗工ができなかったため、塗布性において実施例1から実施例5で得られたペースト組成物に劣る結果となった。そのため、実際の燃料電池の製造工程においては扱いが難しく、実用に耐えないものであると考えられる。
比較例2から比較例4で得られたペースト組成物は、何れも塗布性には優れているものの、静置すると構成成分が堆積してしまうため、使用される前に再度ミキシングを行う必要があり、塗工後すぐに焼成を行う必要が生じるため、実用に耐えるものであるとは言い難い。特に、比較例2,4のペースト組成物は、リーク率が実施例1から実施例5のペースト組成物と比べて高く、この点からしても燃料電池用のペースト組成物としての使用は不向きである。
比較例5及び比較例6のペースト組成物は、分散性及び塗布性の何れも実施例1から実施例5のペースト組成物より劣る結果となり、実用に耐えるものであるとは言い難い。
比較例7については、分散性、塗布性においては実施例1から実施例5で得られたペースト組成物と比べても遜色はなった。しかしながら、リーク率が10.4%であったため、燃料電池用のペースト組成物としての使用は難しいと考えられる。
【0108】
(別実施形態)
(1)上記実施形態では、金属支持型の電気化学素子Aを備える電気化学モジュールMにおいてガスシールが必要な箇所に、ペースト組成物1(焼成体1A)を配置する例を説明したが、電気化学モジュールMは他の形態の電気化学モジュールMであってもよい。
【0109】
例えば、図示しないが、電気化学モジュールMは、平板状の固体電解質膜の一方側の面に相対して第1電極(電極層)を設け、他方側の面に相対して第2電極(対極電極層)を設けて構成される平板型の固体酸化物形の燃料電池セル(電気化学素子)を、燃料電池セル同士の間にセパレータ(金属部材の一例)を挟んだ状態で複数積層して形成される固体酸化物形燃料電池セルスタックであってもよい。
この構成では、一つのセパレータには、電極層側の表面に第1ガスが通流可能な溝(第1ガス流路)が形成され、対極電極層側の表面に第2ガスが通流可能な溝(第2ガス流路)が形成されており、これら溝を通流する第1ガス及び第2ガスが電極層や対極電極層に供給される。また、積層されるセパレータは、各溝に第1ガスや第2ガスを供給する分配構造を有しており、当該分配構造は、セパレータの平面視で、溝が形成された中央領域よりも外側領域に形成されている。このため、セパレータ同士の間において、溝を通流するガスと外部とをガスシールする必要があり、また、分配構造内を通流するガスと外部とをガスシールする必要がある。
そのため、電気化学モジュールMでは、平板状の固体電解質膜と、固体電解質膜の両側にそれぞれ配置されている電極層及び対極電極層とを備えた燃料電池セルの複数が、燃料電池セル間にセパレータを介して積層されており、隣接するセパレータの間に、ペースト組成物(焼成体)が配置されている構成とすることができる。
【0110】
また、例えば、図示しないが、電気化学モジュールMは、複数の円筒平板型の燃料電池セル(電気化学素子)と、第1ガスが導入されるマニホールドとを有する円筒平板型の固体酸化物形燃料電池セルスタックであってもよい。
この構成では、複数の円筒平板型の燃料電池セルは、集電部材を介して互いに平行に配置されており、マニホールドから立設するように設けられている。燃料電池セルは、円筒平板形状に形成されており、導電性部材と、第1電極(電極層)と、電解質層と、第2電極(対極電極層)と、密着層と、インターコネクタとを有する。導電性部材には、燃料電池セルの立設している方向に沿って導電性部材を貫通する第1ガス流路が設けられ、第1ガス流路には、マニホールドから供給される第1ガスが通流する。
以上のような円筒平板型の電気化学モジュールMにおいて、ペースト組成物(焼成体)を、マニホールドに連通するように立設された燃料電池セルとマニホールドとの接合部分に配置することで、当該接合部分をガスシールする構成とすることもできる。
【0111】
上記実施形態において、電気化学装置100は、複数の電気化学素子Aを備える電気化学モジュールMを備えている。しかし、上記実施形態の電気化学装置100は1つの電気化学素子Aを備える構成にも適用可能である。
【0112】
なお、上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、固体酸化物形燃料電池及び固体酸化物形電解セルにおいてガスシールが必要な箇所を封止するためのガス封止用ペースト組成物として用いることができる。
【符号の説明】
【0114】
1:ペースト組成物
1A:焼成体
10:金属支持体
31:電極層
32:電解質層
33:対極電極層
43:第1環状シール部材
53:第2環状シール部材
100:電気化学装置
102:改質器
104:インバータ
200:熱交換器
A:電気化学素子
M:電気化学モジュール
Z:エネルギーシステム
図1
図2
図3
図4