(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014185
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】洗浄装置
(51)【国際特許分類】
A47L 15/44 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
A47L15/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116825
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】大橋 龍成
【テーマコード(参考)】
3B082
【Fターム(参考)】
3B082CC08
(57)【要約】
【課題】洗浄水となる前の水の水質に適した供給量で処理剤を使用でき、洗浄性能を好適に確保できる洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄装置1は、被洗浄物TW1が収容される洗浄槽7と、洗浄槽7内に収容された被洗浄物TW1を洗浄水によって洗浄する洗浄手段60と、洗浄手段60を作動させ、被洗浄物TW1を洗浄する洗浄運転を制御する制御部C1と、を備える、洗浄装置1は、洗浄運転時に洗浄槽7に供給されて洗浄水となる前の水の水質情報を取得する水質情報取得部C12と、水質情報取得部C12によって取得された水質情報に基づいて、洗浄運転時に使用される処理剤R1の洗浄槽7への供給量M1を設定する処理剤供給量設定部C13と、をさらに備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物が収容される洗浄槽と、
前記洗浄槽内に収容された前記被洗浄物を洗浄水によって洗浄する洗浄手段と、
前記洗浄手段を作動させ、前記被洗浄物を洗浄する洗浄運転を制御する制御部と、
を備えた洗浄装置であって、
前記洗浄運転時に前記洗浄槽に供給されて前記洗浄水となる前の水の水質情報を取得する水質情報取得部と、
前記水質情報取得部によって取得された前記水質情報に基づいて、前記洗浄運転時に使用される処理剤の前記洗浄槽への供給量を設定する処理剤供給量設定部と、
をさらに備えていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記処理剤を貯蔵する貯蔵タンクと、
前記処理剤供給量設定部によって設定された前記供給量で前記処理剤を前記貯蔵タンクから前記洗浄槽に向けて供給する供給動作を実行する処理剤供給手段と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記処理剤供給手段を制御し、前記洗浄運転中において予め設定された所定のタイミングで、前記供給動作を実行させる請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
報知を行う報知部をさらに備え、
前記制御部は、前記報知部を制御し、前記処理剤供給量設定部によって設定された前記供給量を報知させる請求項1記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄運転は、前記洗浄槽内に収容された前記被洗浄物を前記洗浄水によって洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程後の前記被洗浄物を前記洗浄水によってすすぐすすぎ工程と、
を有し、
前記処理剤は、前記すすぎ工程において使用されるリンスである請求項1記載の洗浄装置。
【請求項5】
地域別水質データを記憶する水質データ記憶部と、
前記洗浄装置が設置された地域に関する地域情報を入力する地域情報入力部と、
をさらに備え、
前記水質情報取得部は、前記地域情報入力部に入力された前記地域情報と、前記水質データ記憶部に記憶された前記地域別水質データと、に基づいて、前記水質情報を取得する請求項1乃至4のいずれか1項記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄槽に供給されて前記洗浄水となる前の水に含まれる特定成分の濃度を検出する水質検出手段をさらに備え、
前記水質情報取得部は、前記水質検出手段によって検出された前記特定成分の前記濃度に基づいて、前記水質情報を取得する請求項1乃至4のいずれか1項記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の洗浄装置の一例である食器洗浄機が開示されている。この食器洗浄機は、洗浄槽、洗浄手段及び制御部を備えている。洗浄槽には、被洗浄物が収容される。洗浄手段は、洗浄ポンプ及び回転ノズルを有し、洗浄槽内に収容された被洗浄物を洗浄水によって洗浄する。制御部は、洗浄手段を作動させ、被洗浄物を洗浄する洗浄運転を制御する。
【0003】
また、この食器洗浄機は、リンスタンク及びリンスポンプを備えている。リンスタンクは、処理剤の一例であるリンスを貯蔵している。リンスポンプは、リンスをリンスタンクから洗浄槽に向けて供給する。リンスは、洗浄運転時において、洗浄槽内で洗浄された被洗浄物の乾燥を促進させたり、被洗浄物にウォータスポットが残ることを抑制したりするために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の食器洗浄機のように、洗浄運転時に処理剤を使用する従来の洗浄装置では、洗浄運転時に洗浄槽に供給されて洗浄水となる前の水の水質のばらつきにより、洗浄性能を好適に確保することが難しくなるおそれがある。
【0006】
例えば、処理剤が洗剤である場合において、水が硬水であると、硬水に多く含まれるミネラル成分が洗剤による汚れの除去性能を阻害し易くなるおそれがある。そして、汚れの除去性能の低下を補うために洗剤の供給量を多くし過ぎると、被洗浄物に洗剤が残留し易くなるおそれがある。
【0007】
また、処理剤がリンスである場合において、水が硬水であると、硬水のミネラル成分がリンスの主要成分である界面活性剤による水切れ性能を阻害し易くなるおそれがあり、被洗浄物の乾燥に時間がかかり易くなったり、被洗浄物にウォータスポットが残り易くなったりするおそれがある。
【0008】
さらに、処理剤がリンスである場合において、水が軟水であってリンスの供給量を多くし過ぎると、リンスが過剰に泡立つようになって洗浄手段を構成する洗浄ポンプがエアを噛み易くなるおそれがあり、被洗浄物のすすぎ不足になるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、洗浄水となる前の水の水質に適した供給量で処理剤を使用でき、洗浄性能を好適に確保できる洗浄装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の洗浄装置は、被洗浄物が収容される洗浄槽と、
前記洗浄槽内に収容された前記被洗浄物を洗浄水によって洗浄する洗浄手段と、
前記洗浄手段を作動させ、前記被洗浄物を洗浄する洗浄運転を制御する制御部と、
を備えた洗浄装置であって、
前記洗浄運転時に前記洗浄槽に供給されて前記洗浄水となる前の水の水質情報を取得する水質情報取得部と、
前記水質情報取得部によって取得された前記水質情報に基づいて、前記洗浄運転時に使用される処理剤の前記洗浄槽への供給量を設定する処理剤供給量設定部と、
をさらに備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明の洗浄装置において、処理剤供給量設定部は、洗浄運転時に使用される処理剤の洗浄槽への供給量について、水質情報取得部によって取得された水質情報に基づいて設定する。水質情報とは例えば、洗浄運転時に洗浄槽に供給されて洗浄水となる前の水が硬水であるか軟水であるかや、水にどのようなミネラル成分がどのような割合で含まれているか、というような情報である。
【0012】
これにより、この洗浄装置は、洗浄水となる前の水の水質に対して供給量が多くなり過ぎたり、少なくなり過ぎたりすることを抑制できる。
【0013】
具体例を挙げると、この洗浄装置は、処理剤が洗剤である場合において、水が硬水であるときに、硬水のミネラル成分が洗剤による汚れの除去性能を阻害し易くなるおそれと、汚れの除去性能の低下を補うために洗剤の供給量を多くし過ぎて被洗浄物に洗剤が残留し易くなるおそれと、を考慮して、洗剤の供給量を設定できる。
【0014】
また、この洗浄装置は、処理剤がリンスである場合において、水が硬水であるときに、硬水のミネラル成分がリンスの界面活性剤による水切れ性能を阻害して被洗浄物の乾燥に時間がかかり易くなったり、被洗浄物にウォータスポットが残り易くなったりするおそれを考慮して、リンスの供給量を設定できる。
【0015】
さらに、この洗浄装置は、処理剤がリンスである場合において、水が軟水であるときに、リンスの供給量を多くし過ぎることで洗浄ポンプがエアを噛んで被洗浄物のすすぎ不足になるおそれを考慮して、リンスの供給量を設定できる。
【0016】
したがって、本発明の洗浄装置は、洗浄水となる前の水の水質に適した供給量で処理剤を使用でき、洗浄性能を好適に確保できる。
【0017】
本発明の洗浄装置は、処理剤を貯蔵する貯蔵タンクと、処理剤供給量設定部によって設定された供給量で処理剤を貯蔵タンクから洗浄槽に向けて供給する供給動作を実行する処理剤供給手段と、をさらに備えていることが望ましい。そして、制御部は、処理剤供給手段を制御し、洗浄運転中において予め設定された所定のタイミングで、供給動作を実行させることが望ましい。
【0018】
この構成により、洗浄運転中の適切なタイミングで、洗浄水となる前の水の水質に適した供給量の処理剤を自動で洗浄槽に供給できるので、ユーザの利便性の向上を実現できる。
【0019】
本発明の洗浄装置は、報知を行う報知部をさらに備えていることが望ましい。そして、制御部は、報知部を制御し、処理剤供給量設定部によって設定された供給量を報知させることが望ましい。
【0020】
この構成により、ユーザが洗浄水となる前の水の水質に適した処理剤の供給量を把握できる。その結果、ユーザは、処理剤を手動で洗浄槽に供給する場合において、処理剤の供給量を間違え難くなり、また、処理剤が自動で洗浄槽に供給される場合において、洗浄運転を実行する前の設定等を適切に実施できる。
【0021】
洗浄運転は、洗浄槽内に収容された被洗浄物を洗浄水によって洗浄する洗浄工程と、洗浄工程後の被洗浄物を洗浄水によってすすぐすすぎ工程と、を有していることが望ましい。そして、処理剤は、すすぎ工程において使用されるリンスであることが望ましい。
【0022】
この場合、この洗浄装置は、水が硬水であるときに、硬水のミネラル成分がリンスの界面活性剤による水切れ性能を阻害し易くなるおそれを考慮して、リンスの供給量を設定できる。また、この洗浄装置は、水が軟水であるときに、リンスの供給量を多くし過ぎることで洗浄ポンプがエアを噛み易くなるおそれを考慮して、リンスの供給量を設定できる。その結果、この洗浄装置は、すすぎ工程後において、被洗浄物の乾燥に時間がかかったり、被洗浄物にウォータスポットが残ったり、被洗浄物のすすぎ不足になったりすることを抑制できる。
【0023】
本発明の洗浄装置は、地域別水質データを記憶する水質データ記憶部と、洗浄装置が設置された地域に関する地域情報を入力する地域情報入力部と、をさらに備えていることが望ましい。そして、水質情報取得部は、地域情報入力部に入力された地域情報と、水質データ記憶部に記憶された地域別水質データと、に基づいて、水質情報を取得することが望ましい。
【0024】
この場合、水質データ記憶部及び地域情報入力部により、水質情報取得部が水質情報を適切に取得できる。
【0025】
本発明の洗浄装置は、洗浄槽に供給されて洗浄水となる前の水に含まれる特定成分の濃度を検出する水質検出手段をさらに備えていることが望ましい。そして、水質情報取得部は、水質検出手段によって検出された特定成分の濃度に基づいて、水質情報を取得することが望ましい。
【0026】
この場合、水質検出手段により、水質情報取得部が水質情報を適切に取得できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の洗浄装置によれば、洗浄水となる前の水の水質に適した供給量で処理剤を使用でき、洗浄性能を好適に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施例1の食器洗浄機の模式断面図である。
【
図2】
図2は、実施例1の食器洗浄機のブロック図である。
【
図3】
図3は、水質情報取得及びリンス供給量設定プログラムのフローチャートである。
【
図4】
図4は、洗浄運転プログラムのフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施例2の食器洗浄機のブロック図である。
【
図6】
図6は、実施例3の食器洗浄機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した実施例1~3を図面を参照しつつ説明する。
【0030】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の食器洗浄機1は、本発明の洗浄装置の具体的態様の一例である。食器洗浄機1は、扉体8が開閉するフロントオープン式であり、システムキッチンの天板CT1の下方に配置されている。
【0031】
<筐体、洗浄槽、食器かご及び扉体>
食器洗浄機1は、筐体9、洗浄槽7、食器かご70D、70U及び扉体8を備えている。本実施例では、システムキッチンを利用するユーザが筐体9と対向する側、すなわち扉体8が位置する
図1の紙面左側を筐体9の前方と規定し、
図1の紙面右側を筐体9の後方と規定する。
【0032】
筐体9は略箱状体であり、その内部に洗浄槽7を据え置き状態で収容している。洗浄槽7は、槽開口7Hを有する略箱状体である。槽開口7Hは、洗浄槽7の前部を開放して、洗浄槽7内と筐体9の外部とを連通させている。洗浄槽7内の底部には、水を貯める貯水部71が設けられている。貯水部71は、残菜フィルタ67によって、上部分と下部分とに区画されている。
【0033】
食器かご70Dは、洗浄槽7内の下部分に設けられている。食器かご70Dの下端側には、複数のローラが設けられている。洗浄槽7内における貯水部71よりも上方には、食器かご70Dのローラを案内するレール70Rが前後方向に延びるように設けられている。
【0034】
食器かご70Uは、洗浄槽7内の上部分に設けられている。食器かご70Uと洗浄槽7の内壁面との間には、複数段引き出し式のスライドレール70Sが前後方向に延びるように設けられている。
【0035】
洗浄槽7には、食器類TW1が食器かご70D、70Uに載置された状態で収容される。食器類TW1は、例えば、茶碗、皿、グラス等の飲食用器や、箸、スプーン、フォーク等の飲食用具等である。食器類TW1は、本発明の「被洗浄物」の一例である。
【0036】
扉体8は、筐体9の前面に配置されて、洗浄槽7の槽開口7Hを閉塞している。扉体8は、その下端が揺動軸心X8周りに揺動可能に筐体9に支持されている。
【0037】
図示は省略するが、扉体8は、ユーザが手動による開操作を行うことにより、その上端が前方かつ下方に向かうように揺動する。そして、扉体8は、略水平に前向きに突出する状態となって、洗浄槽7の槽開口7Hを開放する。また、この状態から、ユーザが手動による閉操作を行うことにより逆向きに揺動し、洗浄槽7の槽開口7Hを閉塞する状態に復帰する。
【0038】
扉体8が洗浄槽7の槽開口7Hを開放する状態で、洗浄槽7内の食器かご70D、70Uを前方に引き出すことにより、食器かご70D、70Uが筐体9の外部に露出する。これにより、ユーザは、食器類TW1を食器かご70D、70Uに載置したり、食器かご70D、70Uから食器類TW1を取り出したりすることができる。
【0039】
<給水管、給水電磁弁及び排水管>
食器洗浄機1は、給水管P1、給水電磁弁69及び排水管P2をさらに備えている。給水管P1、給水電磁弁69及び排水管P2は、筐体9内に設けられている。
【0040】
給水管P1は、食器洗浄機1の外部に設けられた図示しない給水源から洗浄槽7に水を供給する。給水電磁弁69は、給水管P1を開閉して洗浄槽7への水の供給と停止とを切り替える。給水管P1及び給水電磁弁69によって洗浄槽7に供給された水は、貯水部71に貯められて洗浄運転において洗浄水とされる。排水管P2は、洗浄槽7内の洗浄水を食器洗浄機1の外部に排出する。
【0041】
<洗浄手段>
食器洗浄機1は、洗浄手段60をさらに備えている。洗浄手段60は、以下の構成により、洗浄槽7内に収容された食器類TW1を洗浄水によって洗浄する洗浄運転を実行する。
【0042】
洗浄手段60は、第1ポンプ65、第2ポンプ66、第1接続配管P3、第2接続配管P4、第1圧送配管P5及び第2圧送配管P6を有している。
【0043】
第1ポンプ65及び第2ポンプ66は、洗浄槽7の貯水部71の下部に組み付けられている。第1接続配管P3は、貯水部71における残菜フィルタ67よりも下に位置する部分と第1ポンプ65の吸入口とに接続している。第2接続配管P4は、貯水部71における残菜フィルタ67よりも下に位置する部分と第2ポンプ66の吸入口とに接続している。
【0044】
第1圧送配管P5は、第1ポンプ65の吐出口に接続している。第1圧送配管P5は、上方に延びて貯水部71における残菜フィルタ67よりも上に位置する部分の中央に突出している。第1ポンプ65は、正回転することにより、貯水部71に貯められた洗浄水を第1圧送配管P5に圧送する。
【0045】
第2圧送配管P6は、第2ポンプ66の吐出口に接続している。第2圧送配管P6は、後方に延びた後に屈曲し、洗浄槽7の後壁に沿って上方に延びている。そして、第2圧送配管P6は、食器かご70Dよりも上方、かつ食器かご70Uよりも下方の位置で前向きに屈曲し、洗浄槽7の後壁を通過して、洗浄槽7内に突出している。第2圧送配管P6は、洗浄槽7内において片持ち梁状に前方に延び、その下流端が洗浄槽7の中央に位置している。
【0046】
第2ポンプ66は、正回転することにより、貯水部71に貯められた洗浄水を第2圧送配管P6に圧送する。なお、排水管P2は、第2ポンプ66の別の吐出口に接続している。第2ポンプ66は、逆回転することにより、貯水部71に貯められた洗浄水を排水管P2に圧送し、食器洗浄機1の外部に排出する。
【0047】
洗浄手段60は、第1ノズル61D及び第2ノズル61Uをさらに有している。第1ノズル61Dは、食器かご70Dよりも下方に設けられ、第1圧送配管P5の下流端に接続している。第2ノズル61Uは、食器かご70Dよりも上方、かつ食器かご70Uよりも下方に設けられ、第2圧送配管P6の下流端に接続している。
【0048】
第1ポンプ65によって圧送される洗浄水が第1圧送配管P5を経由して第1ノズル61Dに到達すると、第1ノズル61Dは、回転しながら複数のノズル孔から洗浄水を噴射する。第1ノズル61Dの噴射方向は、洗浄槽7内の全域に向かって、特に食器かご70Dに載置された食器類TW1に向かって、洗浄水を飛散させるように様々な方向に変化するようになっている。
【0049】
第2ポンプ66によって圧送される洗浄水が第2圧送配管P6を経由して第2ノズル61Uに到達すると、第2ノズル61Uは、回転しながら複数のノズル孔から洗浄水を噴射する。第2ノズル61Uの噴射方向は、洗浄槽7内の特に食器かご70Uに載置された食器類TW1に向かって洗浄水を飛散させるように様々な方向に変化するようになっている。
【0050】
第1ノズル61D及び第2ノズル61Uから洗浄槽7内に噴射された洗浄水は、貯水部71に貯められる。そして、その洗浄水は、第1ポンプ65によって第1ノズル61Dに繰り返し供給され、また、第2ポンプ66によって第2ノズル61Uに繰り返し供給される。
【0051】
<貯蔵タンク及びリンス用電磁弁>
食器洗浄機1は、貯蔵タンク10及びリンス用電磁弁15をさらに備えている。リンス用電磁弁15は、本発明の「処理剤供給手段」の一例である。
【0052】
貯蔵タンク10は、扉体8内に設けられており、洗浄槽7に供給される液状のリンスR1を貯蔵している。リンスR1は、本発明の「処理剤」の一例である。リンスR1は、界面活性剤による水切れ性能等を有している。リンスR1は、洗浄運転時において、洗浄槽7内で洗浄された食器類TW1の乾燥を促進させたり、食器類TW1にウォータスポットが残ることを抑制したりするために使用される。
【0053】
貯蔵タンク10の上端部に位置するリンス補給口10Aは、扉体8の後面に露出しており、スクリューキャップによって閉塞されている。貯蔵タンク10の下端部に位置するリンス排出口10Bも、扉体8の後面に露出している。
【0054】
リンス用電磁弁15は、貯蔵タンク10内の底部に位置している。リンス用電磁弁15は、開弁及び閉弁の切り替えにより、貯蔵タンク10の内部空間とリンス排出口10Bとの連通及び遮断を切り替える。
【0055】
リンス用電磁弁15は、後述するリンス供給量設定部C13によって設定された供給量でリンスR1を貯蔵タンク10から洗浄槽7に向けて供給する供給動作を実行する。この際、リンス用電磁弁15の開弁時間を設定された供給量に応じて調節することにより、リンスR1が実際に洗浄槽7に供給される量を精度良く調節できる。
【0056】
<ヒータ、温度センサ、乾燥ファン及び水位センサ>
食器洗浄機1は、ヒータ63、温度センサ31、乾燥ファン68及び水位センサ34をさらに備えている。
【0057】
ヒータ63は、貯水部71の底部に配置されている。乾燥ファン68は、洗浄槽7の後壁に組み付けられている。温度センサ31は、貯水部71の底部におけるヒータ63に対して下方の位置に設けられている。
【0058】
ヒータ63は、洗浄槽7の貯水部71に貯められた洗浄水、又は洗浄槽7内の空気を加熱する。温度センサ31は、洗浄槽7の貯水部71に貯められた洗浄水、又は洗浄槽7内の空気の温度をヒータ63の近傍において検出する。
【0059】
乾燥ファン68は、ヒータ63を作動させた状態で回転作動することにより、加熱された空気を洗浄槽7内に送り込んで食器類TW1を乾燥させる。乾燥ファン68により洗浄槽7内に送り込まれた空気は、筐体9の前面の上端に開口して洗浄槽7内と連通する排気通路79を経由して食器洗浄機1の外部に排気される。
【0060】
水位センサ34は、洗浄槽7の貯水部71の隣に設けられている。水位センサ34は、連通管を介して洗浄槽7の貯水部71と接続された水位検出槽内のフロートの上下動に基づいて、洗浄槽7内の洗浄水の水位を検出する。
【0061】
<制御部>
食器洗浄機1は、制御部C1をさらに備えている。制御部C1は、筐体9内に設けられている。
図2に示すように、制御部C1は、図示しないCPU、インターフェース回路及び記憶部C11を含んで構成された電子回路ユニットである。
【0062】
記憶部C11は、ROM及びRAM等の記憶素子によって構成されている。記憶部C11は、食器洗浄機1を動作させるために制御部C1が実行する各種プログラム、例えば、
図3に示す水質情報取得及びリンス供給量設定プログラム、
図4に示す洗浄運転プログラム等を記憶している。また、記憶部C11は、食器洗浄機1の設定情報等の各種情報や、各種プログラムを実行するための初期設定情報等を随時記憶する。
【0063】
制御部C1は、温度センサ31及び水位センサ34から検出信号を受信する。また、制御部C1は、図示しないセンサ類、例えば、扉体8が閉じた状態でロックされているか否かを検出するロックセンサから検出信号を受信する。
【0064】
そして、制御部C1は、駆動回路C1Dを介して制御信号を出力することにより、第1ポンプ65、第2ポンプ66、給水電磁弁69、ヒータ63及び乾燥ファン68を作動させ、食器類TW1を洗浄する洗浄運転を制御する。
【0065】
また、制御部C1は、リンス用電磁弁15を制御し、洗浄運転中において予め設定された所定のタイミングで、リンスR1の供給動作を実行させる。
【0066】
<入力部及び表示部>
図1に示すように、食器洗浄機1は、入力部41及び表示部42をさらに備えている。表示部42は、本発明の「報知部」の一例である。入力部41及び表示部42は、扉体8の前面の上端に配置されている。
【0067】
入力部41は、ユーザが入力操作を行うための図示しない複数のボタン等を有している。表示部42は、ユーザに各種の情報を伝達するために数字、文字、画像等を表示可能な液晶パネル等を有している。
【0068】
図2に示すように、入力部41は、ユーザの入力操作を制御部C1に伝達する。表示部42は、制御部C1から伝達された情報を表示する。
【0069】
<地域情報入力部>
食器洗浄機1は、入力部41が有する複数のボタン等の一部によって構成された地域情報入力部41Aをさらに備えている。地域情報入力部41Aは、食器洗浄機1が設置された地域に関する地域情報を入力するためのユーザインターフェースである。
【0070】
食器洗浄機1が設置された地域に関する地域情報には、その地域の住所や郵便番号の情報が含まれる。また、食器洗浄機1が設置された地域に関する地域情報には、日本地図の都道府県や市町村等を示す複数の領域のうち、その地域が位置する領域の情報が含まれる。
【0071】
例えば、ユーザが表示部42に表示された複数の住所や郵便番号の選択肢の中から、食器洗浄機1が設置された地域に対応する住所や郵便番号を選択する操作を地域情報入力部41Aに対して行うことにより、地域情報入力部41Aは、食器洗浄機1が設置された地域に関する地域情報を入力し、制御部C1に伝達する。
【0072】
また、ユーザが表示部42に表示された日本地図の複数の領域のうち、食器洗浄機1が設置された地域に対応する領域を選択する操作を地域情報入力部41Aに対して行うことにより、地域情報入力部41Aは、食器洗浄機1が設置された地域に関する地域情報を入力し、制御部C1に伝達する。
【0073】
なお、食器洗浄機1が日本以外の国に設置される場合、地域情報もその国に対応する情報となる。
【0074】
<水質データ記憶部>
食器洗浄機1は、記憶部C11の一部によって構成された水質データ記憶部C11Aをさらに備えている。水質データ記憶部C11Aは、地域別水質データを記憶している。
【0075】
地域別水質データには、複数の住所や郵便番号のそれぞれに対応する領域と、それらの領域のそれぞれにおける水質データと、を対応させたデータテーブルが含まれる。また、地域別水質データには、日本地図の都道府県や市町村等の複数の領域と、それらの領域のそれぞれにおける水質データと、を対応させたデータテーブルが含まれる。水質データは、水の硬度、含有するミネラル成分の種類や濃度等である。
【0076】
なお、食器洗浄機1が日本以外の国に設置される場合、地域別水質データもその国に対応する情報となる。
【0077】
<水質情報取得部及びリンス供給量設定部>
食器洗浄機1は、制御部C1の一部によって構成された水質情報取得部C12及びリンス供給量設定部C13をさらに備えている。リンス供給量設定部C13は、本発明の「処理剤供給量設定部」の一例である。
【0078】
食器洗浄機1が住宅等に設置されて、ユーザが初期設定等や試運転を行う場合、又は、設置後において適宜必要がある場合、制御部C1は、
図3に示す水質情報取得及びリンス供給量設定プログラムを実行する。そのプログラムの実行中において、制御部C1の一部が水質情報取得部C12及びリンス供給量設定部C13として機能する。なお、ユーザには、食器洗浄機1を住宅等に設置する設置作業者が含まれる。
【0079】
初めに、制御部C1はステップS101において、表示部42を制御し、食器洗浄機1が設置された地域に関する地域情報を入力させるメッセージを表示させる。この際、制御部C1は、地域情報の選択肢として、住所や郵便番号のリスト、日本地図の都道府県や市町村等を表示する。
【0080】
次に、制御部C1はステップS102に移行し、地域情報が入力されたか否かを判断する。ステップS102において「No」の場合、ステップS102を繰り返す。そして、ユーザによって食器洗浄機1が設置された地域に対応する選択肢を選択する操作が地域情報入力部41Aに対して行われると、ステップS102において「Yes」となり、制御部C1はステップS103に移行する。
【0081】
ステップS103において、水質情報取得部C12は、地域情報入力部41Aによって入力された地域情報と、水質データ記憶部C11Aに記憶された地域別水質データと、を照合し、その地域情報に対応する水質データを抽出することにより、洗浄運転時に洗浄槽7に供給されて洗浄水となる前の水の水質情報を取得する。水質情報取得部C12は、取得した水質情報を記憶部C11に記憶させる。
【0082】
水質情報とは、洗浄運転時に洗浄槽7に供給されて洗浄水となる前の水が硬水であるか軟水であるかや、水にどのようなミネラル成分がどのような割合で含まれているか、というような情報である。実施例では、水質情報取得部C12が取得する水質情報のうち、水の硬度が主に利用される。
【0083】
次に、制御部C1は、ステップS104に移行する。
【0084】
ステップS104において、リンス供給量設定部C13は、水質情報取得部C12によって取得された水質情報、すなわち水の硬度に基づいて、洗浄運転時に使用されるリンスR1の洗浄槽7への供給量M1(ml/L)を設定する。リンス供給量設定部C13は、設定した供給量M1(ml/L)を記憶部C11に記憶させる。
【0085】
より詳しくは、リンス供給量設定部C13は、水の硬度と、リンスR1の供給量M1(ml/L)と、を対応させたデータテーブルを記憶部C11に記憶させている。
【0086】
そのデータテーブルの一例を以下に挙げる。
・水の硬度が0以上20mg/L未満のとき、供給量M1=0.04(ml/L)。
・水の硬度が20以上40mg/L未満のとき、供給量M1=0.08(ml/L)。
・水の硬度が40以上60mg/L未満のとき、供給量M1=0.12(ml/L)。
・水の硬度が60以上80mg/L未満のとき、供給量M1=0.16(ml/L)。
・水の硬度が80以上100mg/L未満のとき、供給量M1=0.20(ml/L)。
・水の硬度が100mg/L以上のときも、供給量M1(ml/L)が同様に増加する。
【0087】
なお、供給量M1(ml/L)は、リンスR1の効果が発現し易い量、かつ洗浄運転中に泡が発生し難く、第1ポンプ65及び第2ポンプ66がエアを噛み難い量に設定される。
【0088】
次に、制御部C1はステップS105に移行し、表示部42を制御して、設定したリンスR1の供給量M1(ml/L)を表示させた後、このプログラムを終了する。これにより、ユーザは、洗浄水となる前の水の水質に適したリンスR1の供給量M1(ml/L)を把握できる。
【0089】
<洗浄運転>
水質情報取得及びリンス供給量設定プログラムの実行によってリンスR1の供給量M1(ml/L)を設定した後において、ユーザが入力部41を操作して洗浄運転の開始を指示すると、制御部C1は、図示しないロックセンサによって扉体8のロックが検出されたことを条件として、
図4に示す洗浄運転プログラムを実行し、洗浄手段60を作動させて洗浄運転を制御する。
【0090】
本実施例では、洗浄運転は、洗浄槽7内に収容された食器類TW1を洗浄水によって洗浄する洗浄工程と、洗浄工程後の食器類TW1を加熱されていない洗浄水によってすすぐ水すすぎ工程と、水すすぎ工程後の食器類TW1を加熱された洗浄水によってすすぐ加熱すすぎ工程と、加熱すすぎ工程後の食器類TW1を乾燥させる乾燥工程と、を有している。そして、リンスR1は、加熱すすぎ工程において使用される。記憶部C11は、加熱すすぎ工程で使用される洗浄水の量W1(L)を記憶している。
【0091】
なお、本実施例では、洗浄工程で使用する洗剤は、ユーザによって洗浄運転の開始前に手動で投入される。
【0092】
初めに、制御部C1はステップS201において、記憶部C11から、リンス供給量設定部C13によって設定されたリンスR1の供給量M1(ml/L)と、リンスR1を使用する加熱すすぎ工程で使用される洗浄水の量W1(L)と、を読み出す。そして、制御部C1は、
実際に洗浄槽7に供給されるリンスR1の量=供給量M1(ml/L)×加熱すすぎ工程で使用される洗浄水の量W1(L)
に応じて、リンス用電磁弁15の開弁時間TV1を算出する。
【0093】
次に、制御部C1はステップS202に移行し、洗浄工程を開始する。制御部C1は、給水電磁弁69を開弁させ、洗浄槽7に水を供給して洗浄水とする。また、制御部C1は、ヒータ63を作動させ、洗浄水を加熱する。そして、制御部C1は、第1ポンプ65を正回転させて第1ノズル61Dから洗浄水を噴射させ、また、第2ポンプ66を正回転させて第2ノズル61Uから洗浄水を噴射させる。こうして、洗浄手段60は、洗浄槽7内で様々な方向に飛散する洗浄水によって食器かご70D、70Uに載置された食器類TW1を洗浄する。
【0094】
次に、制御部C1はステップS203に移行し、第2ポンプ66を逆回転させて洗浄槽7内から洗浄水を排水する。そして、制御部C1は、ステップS204に移行し、洗浄工程を終了する。
【0095】
次に、制御部C1はステップS205に移行し、水すすぎ工程を開始する。制御部C1は、洗浄槽7に水を供給して洗浄水とし、ヒータ63を停止させて洗浄水を加熱せずに第1ノズル61D及び第2ノズル61Uから噴射させ、食器類TW1をすすぐ。
【0096】
次に、制御部C1はステップS206に移行し、第2ポンプ66を逆回転させて洗浄槽7内から洗浄水を排水する。そして、制御部C1は、ステップS207に移行し、水すすぎ工程を終了する。
【0097】
次に、制御部C1はステップS208に移行し、リンス供給量設定部C13によって設定された供給量M1(ml/L)でリンスR1を貯蔵タンク10から洗浄槽7に向けて供給する供給動作を実行する。制御部C1は、リンス用電磁弁15を開弁時間TV1だけ開弁することにより、加熱すすぎ工程で使用される洗浄水の量W1(L)に応じて、リンスR1を精度良く供給する。
【0098】
次に、制御部C1はステップS209に移行し、加熱すすぎ工程を開始する。制御部C1は、洗浄槽7に水を量W1(L)だけ供給して洗浄水とし、ヒータ63を作動させて洗浄水を加熱して第1ノズル61D及び第2ノズル61Uから噴射させ、食器類TW1をすすぐ。量が精度良く調節されて洗浄水に混入するリンスR1は、界面活性剤による水切れ性能を好適に発揮できるとともに、泡の発生が抑制される。その結果、第1ポンプ65及び第2ポンプ66は、エアを噛み難い。
【0099】
次に、制御部C1はステップS210に移行し、第2ポンプ66を逆回転させて洗浄槽7内から洗浄水を排水する。そして、制御部C1は、ステップS211に移行し、加熱すすぎ工程を終了する。
【0100】
次に、制御部C1はステップS212に移行し、乾燥工程を開始する。制御部C1は、乾燥ファン68及びヒータ63を作動させ、加熱された空気を洗浄槽7に導入して食器類TW1を乾燥させる。この際、リンスR1の水切れ性能により、食器類TW1に水滴が残り難いので、食器類TW1の乾燥を促進させたり、食器類TW1にウォータスポットが残ることを抑制したりすることができる。
【0101】
そして、制御部C1はステップS213に移行して乾燥工程を終了し、このプログラムを終了する。
【0102】
<作用効果>
実施例1の食器洗浄機1において、制御部C1が
図3に示す水質情報取得及びリンス供給量設定プログラムを実行することにより、リンス供給量設定部C13は、洗浄運転時に使用されるリンスR1の洗浄槽7への供給量M1(ml/L)について、水質情報取得部C12によって取得された水質情報、すなわち、洗浄槽7に供給されて洗浄水となる前の水の硬度に基づいて設定する。
【0103】
これにより、この食器洗浄機1は、洗浄水となる前の水の水質に対してリンスR1の供給量が多くなり過ぎたり、少なくなり過ぎたりすることを抑制できる。
【0104】
また、この食器洗浄機1は、水が硬水であるときに、硬水のミネラル成分がリンスR1の界面活性剤による水切れ性能を阻害して食器類TW1の乾燥に時間がかかり易くなったり、食器類TW1にウォータスポットが残り易くなったりするおそれを考慮して、リンスR1の供給量M1(ml/L)を設定できる。
【0105】
さらに、この食器洗浄機1は、水が軟水であるときに、リンスR1の供給量を多くし過ぎることで洗浄ポンプがエアを噛んで食器類TW1のすすぎ不足になるおそれを考慮して、リンスR1の供給量M1(ml/L)を設定できる。
【0106】
したがって、実施例1の食器洗浄機1は、洗浄水となる前の水の水質に適した供給量でリンスR1を使用でき、洗浄性能を好適に確保できる。
【0107】
また、この食器洗浄機1において、制御部C1は、
図4に示す洗浄運転プログラムを実行し、予め設定された所定のタイミングで、すなわち、ステップS208において、リンス用電磁弁15を制御し、リンスR1の供給動作を実行させる。この構成により、洗浄運転中の適切なタイミングで、すなわち、水すすぎ工程後、かつ加熱すすぎ工程前に、洗浄水となる前の水の水質に適した供給量M1(ml/L)のリンスR1を自動で洗浄槽7に供給できるので、ユーザの利便性の向上を実現できる。
【0108】
さらに、この食器洗浄機1において、制御部C1は
図3に示す水質情報取得及びリンス供給量設定プログラムを実行し、ステップS105において、表示部42を制御し、リンス供給量設定部C13によって設定された供給量M1(ml/L)を報知させる。この構成により、ユーザは、洗浄水となる前の水の水質に適したリンスR1の供給量(ml/L)を把握できる。その結果、ユーザは、リンスR1が自動で洗浄槽7に供給される食器洗浄機1において、洗浄運転を実行する前の設定等を適切に実施できる。なお、仮に食器洗浄機1がリンスR1を手動で洗浄槽7に供給する構成である場合、ユーザは、リンスR1の供給量を間違え難くなる。
【0109】
また、この食器洗浄機1において、処理剤は、加熱すすぎ工程において使用されるリンスR1である。このため、この食器洗浄機1は、水が硬水であるときに、硬水のミネラル成分がリンスR1の界面活性剤による水切れ性能を阻害し易くなるおそれを考慮して、リンスR1の供給量(ml/L)を設定できる。また、この食器洗浄機1は、水が軟水であるときに、リンスR1の供給量を多くし過ぎることで洗浄ポンプがエアを噛み易くなるおそれを考慮して、リンスR1の供給量(ml/L)を設定できる。その結果、この食器洗浄機1は、加熱すすぎ工程後において、食器類TW1の乾燥に時間がかかったり、食器類TW1にウォータスポットが残ったり、食器類TW1のすすぎ不足になったりすることを抑制できる。
【0110】
さらに、この食器洗浄機1は、地域別水質データを記憶する水質データ記憶部C11Aと、食器洗浄機1が設置された地域に関する地域情報を入力するためのユーザインターフェースである地域情報入力部41Aと、を備えている。この構成により、水質情報取得部C12が水質情報を適切に取得できる。
【0111】
(実施例2)
図5に示すように、実施例2の食器洗浄機2は、実施例1の食器洗浄機1に係る地域情報入力部41Aの代わりに、入力部41とは独立した地域情報入力部43を備え、さらに、携帯情報端末90と無線通信可能な通信部44を備えている。携帯情報端末90は、GPS受信機91を内蔵したスマートフォン等であって、食器洗浄機1のユーザに使用される。
【0112】
地域情報入力部43は、GPS受信機を内蔵している。地域情報入力部43は、食器洗浄機1が設置された地域の緯度及び経度をGPS受信機によって取得し、GPS受信機が取得した緯度及び経度を食器洗浄機1が設置された地域に関する地域情報として入力する。
【0113】
また、地域情報入力部43は、携帯情報端末90のGPS受信機91が検出した緯度及び経度を通信部44を経由して取得し、GPS受信機91が取得した緯度及び経度を食器洗浄機1が設置された地域に関する地域情報として入力することもできる。
【0114】
そして、実施例2において、制御部C1は、
図3に示す水質情報取得及びリンス供給量設定プログラムを実行するときに、ステップS101、S102の代わりに、地域情報入力部43に、食器洗浄機1が設置された地域の緯度及び経度を入力させる処理を行った後、ステップS103に移行する。
【0115】
実施例2のその他の構成は実施例1と同様である。このため、実施例1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0116】
このような構成である実施例2の食器洗浄機2は、実施例1の食器洗浄機1と同様に、洗浄水となる前の水の水質に適した供給量でリンスR1を使用でき、洗浄性能を好適に確保できる。
【0117】
また、この食器洗浄機2は、水質データ記憶部C11A及び地域情報入力部43を備えている。この構成により、水質情報取得部C12が水質情報を適切に取得でき、また、ユーザが煩わしさを感じ難い。
【0118】
(実施例3)
図6に示すように、実施例3の食器洗浄機3は、実施例1の食器洗浄機1に係る水質データ記憶部C11A及び地域情報入力部41Aを無くし、その代わりに、カルシウムイオン電極30を備えている。カルシウムイオン電極30は、本発明の「水質検出手段」の一例である。
【0119】
給水管P1は、その途中において略U字形状に折れ曲がるように変更され、その略U字形状部分にカルシウムイオン電極30が挿入されている。カルシウムイオン電極30は、洗浄槽7に供給されて洗浄水となる前の水に含まれる特定成分、すなわちカルシウムイオンの濃度を検出する。
【0120】
そして、実施例3において、制御部C1は、
図3に示す水質情報取得及びリンス供給量設定プログラムを実行するときに、ステップS101、102を実行せず、ステップS103の代わりに、水質情報取得部C12に、カルシウムイオン電極30によって検出されたカルシウムイオンの濃度に基づいて水の硬度を判断し、判断した水の硬度を水質情報として取得する処理を行わせた後、ステップS104に移行する。
【0121】
実施例3のその他の構成は実施例1と同様である。このため、実施例1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0122】
このような構成である実施例3の食器洗浄機3は、実施例1、2の食器洗浄機1、2と同様に、洗浄水となる前の水の水質に適した供給量でリンスR1を使用でき、洗浄性能を好適に確保できる。
【0123】
また、この食器洗浄機3は、カルシウムイオン電極30を備えている。この構成により、水質情報取得部C12が水質情報を適切に取得でき、また、ユーザが煩わしさを感じ難い。
【0124】
以上において、本発明を実施例1~3に即して説明したが、本発明は上記実施例1~3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0125】
実施例1~3では、処理剤がリンスR1であるが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、実施例1~3において、処理剤について洗浄工程で使用する洗剤に変更してもよい。この場合において、食器洗浄機1~3は、水が硬水であるときに、硬水のミネラル成分が洗剤による汚れの除去性能を阻害し易くなるおそれと、汚れの除去性能の低下を補うために洗剤の供給量を多くし過ぎて食器類TW1に洗剤が残留し易くなるおそれと、を考慮して、洗剤の供給量を設定できる。
【0126】
実施例1~3では、制御部C1は、ステップS208において、水すすぎ工程後、かつ加熱すすぎ工程前にリンスR1の供給動作を実行するが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、制御部は、水すすぎ工程及び加熱すすぎ工程の少なくとも一方の途中において、リンスの供給動作を実行してもよい。
【0127】
実施例3では、給水管P1の途中に設けられたカルシウム電極がカルシウムイオンの濃度を検出するが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、水質検出手段は、特定成分の濃度として、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンのそれぞれの濃度を検出してもよい。また、水質検出手段は、洗浄槽内に設けられ、洗浄運転の開始直後に洗浄槽に供給される清浄な水に含まれる特定成分の濃度を検出してもよい。
【0128】
実施例1~3では、洗浄運転が洗浄工程、水すすぎ工程、加熱すすぎ工程及び乾燥工程を有しているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、洗浄運転は、乾燥工程を有していなくてもよいし、水すすぎ工程及び加熱すすぎ工程の一方を有していなくてもよい。
【0129】
実施例1~3では、食器洗浄機1~3が貯蔵タンク10及びリンス用電磁弁15を備えているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、食器洗浄機1~3から貯蔵タンク10及びリンス用電磁弁15を無くし、ユーザが手作業で、リンス供給量設定部C13によって設定された供給量M1(ml/L)でリンスR1を計量して洗浄槽7に供給するように変更した構成も、本発明に含まれる。
【0130】
実施例1~3では、ステップS105において表示部42がリンス供給量設定部C13によって設定された供給量M1(ml/L)を報知するが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、報知部は、スピーカであって音声によって報知してもよいし、ユーザが携帯するスマートフォン等に表示させるメッセージを伝送する伝送部であってもよい。
【0131】
実施例1、2では、水質データ記憶部C11Aが食器洗浄機1、2に内蔵された記憶部C11の一部によって構成されているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、水質データ記憶部は、洗浄装置とネットワークを経由して通信可能な外部サーバに設けられていてもよい。
【0132】
実施例1~3では、食器洗浄機1がフロントオープン式であるが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、本発明の洗浄装置について、スライドオープン式の食器洗浄機として具体化してもよい。
【0133】
実施例では、本発明の洗浄装置を食器洗浄機1として具体化したが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、本発明の洗浄装置について、工場等に設置され、機械部品や工具等を洗浄する洗浄装置として具体化してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は例えば、住宅や施設等に設置される食器洗浄機や、工場等に設置される洗浄装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0135】
1、2、3…洗浄装置(食器洗浄機)
TW1…被洗浄物(食器類)
7…洗浄槽
60…洗浄手段
C1…制御部
C12…水質情報取得部
R1…処理剤(リンス)
M1…処理剤の洗浄槽への供給量
C13…処理剤供給量設定部(リンス供給量設定部)
10…貯蔵タンク
15…処理剤供給手段(リンス用電磁弁)
42…報知部(表示部)
C11A…水質データ記憶部
41A、43…地域情報入力部
30…水質検出手段(カルシウムイオン電極)