(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141855
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】パラメータセット生成方法、パラメータセット生成装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/398 20200101AFI20241003BHJP
G06F 115/12 20200101ALN20241003BHJP
G06F 119/08 20200101ALN20241003BHJP
【FI】
G06F30/398
G06F115:12
G06F119:08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053705
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】飯田 雄貴
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA22
5B146DJ01
5B146GL07
5B146GL09
(57)【要約】
【課題】基板の発熱を解析するためのパラメータセットを効果的に生成することができるパラメータセット生成方法を提供する。
【解決手段】パラメータセット生成方法では、基板に関する入力情報を取得し(ステップS1)、その入力情報に基づいて基板をモデル化することによって、その基板の発熱の解析に用いられるパラメータセットを生成する(ステップS20、S30)。入力情報は、(1)その基板に実装される1以上の部品に関する内容、(2)その1以上の部品が実装された基板である実装基板の動作条件、(3)その実装基板の回路図、および(4)その基板における少なくとも配線を示す基板図、のうちの少なくとも1つを示す。パラメータセットは、それぞれ基板に含まれる、発熱すると推定される複数の発熱領域と、複数の発熱領域のそれぞれの消費電力とを示す。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータがパラメータセットを生成するパラメータセット生成方法であって、
基板に関する入力情報を取得し、
前記入力情報に基づいて前記基板をモデル化することによって、前記基板の発熱の解析に用いられるパラメータセットを生成し、
前記入力情報は、
(1)前記基板に実装される1以上の部品に関する内容、(2)前記1以上の部品が実装された前記基板である実装基板の動作条件、(3)前記実装基板の回路図、および(4)前記基板の基板図、のうちの少なくとも1つを示し、
前記パラメータセットは、
それぞれ前記基板に含まれる、発熱すると推定される複数の発熱領域と、前記複数の発熱領域のそれぞれの消費電力とを示す、
パラメータセット生成方法。
【請求項2】
前記パラメータセットの生成では、
前記1以上の部品のそれぞれについて、前記入力情報から得られる当該部品の電気または熱に関する数値パラメータに基づいて、当該部品を前記基板に含まれる構造として扱うか否かを判定する部品判定処理を行い、
部品を前記基板に含まれる構造として扱うと判定する場合には、前記部品の電気に関する数値パラメータを用いて前記パラメータセットを生成する、
請求項1に記載のパラメータセット生成方法。
【請求項3】
前記パラメータセットの生成では、
前記入力情報に基づいて、前記基板に含まれる複数の領域のそれぞれについて、当該領域が前記発熱領域に該当するか否かを判定するレイアウト判定処理を行う、
請求項2に記載のパラメータセット生成方法。
【請求項4】
前記レイアウト判定処理は、前記部品判定処理の後に実行され、
前記レイアウト判定処理では、
前記基板に含まれる構造として扱われる部品が配置される領域が、前記発熱領域に該当するか否かを判定し、
前記基板から独立した構造として扱われる部品が配置される領域は、前記発熱領域に該当しないと判定する、
請求項3に記載のパラメータセット生成方法。
【請求項5】
基板に関する入力情報を取得する入力情報取得部と、
前記入力情報に基づいて前記基板をモデル化することによって、前記基板の発熱の解析に用いられるパラメータセットを生成するパラメータセット生成部とを備え、
前記入力情報は、
(1)前記基板に実装される1以上の部品に関する内容、(2)前記1以上の部品が実装された前記基板である実装基板の動作条件、(3)前記実装基板の回路図、および(4)前記基板における少なくとも配線を示す基板図、のうちの少なくとも1つを示し、
前記パラメータセットは、
それぞれ前記基板に含まれる、発熱すると推定される複数の発熱領域と、前記複数の発熱領域のそれぞれの消費電力とを示す、
パラメータセット生成装置。
【請求項6】
基板に関する入力情報を取得し、
前記入力情報に基づいて前記基板をモデル化することによって、前記基板の発熱の解析に用いられるパラメータセットを生成することを、
コンピュータに実行させ、
前記入力情報は、
(1)前記基板に実装される1以上の部品に関する内容、(2)前記1以上の部品が実装された前記基板である実装基板の動作条件、(3)前記実装基板の回路図、および(4)前記基板における少なくとも配線を示す基板図、のうちの少なくとも1つを示し、
前記パラメータセットは、
それぞれ前記基板に含まれる、発熱すると推定される複数の発熱領域と、前記複数の発熱領域のそれぞれの消費電力とを示す、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板のパラメータセットを生成する方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板に関する熱解析モデルを生成する熱解析モデル生成装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。この熱解析モデル生成装置は、プリント基板に搭載される電子部品を含む所定範囲の面積を算出し、その所定範囲に含まれるビア数をカウントし、その面積およびビア数と、導体の物性値とを用いて、第1物性値を算出する。さらに、熱解析モデル生成装置は、プリント基板における導体の面積を算出し、その導体の面積から、電子部品を含む面積を除いた残りの面積がプリント基板に占める割合と、導体の物性値とを用いて、第2物性値を算出する。そして、熱解析モデル生成装置は、電子部品に予め定めた物性値を設定し、電子部品からプリント基板の層方向に、第1物性値を有する放熱経路を設定する。さらに、熱解析モデル生成装置は、プリント基板における電子部品以外の導体について、第2物性値を設定し、プリント基板における絶縁体について、予め定めた物性値をさらに設定する。このような各物性値の設定などによって、熱解析モデルが生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の熱解析モデル生成装置が熱解析モデルを生成するモデル生成方法では、基板の発熱を効果的に解析するためのモデルを生成することが難しいという課題がある。つまり、上記特許文献1のモデル生成方法では、基板の伝熱を解析するためのモデルが熱解析モデルとして生成され、基板の発熱を解析するためのモデルは生成されない。また、基板の発熱を解析するために、基板全体の消費電力を示すモデルを生成する手法がある。このようなモデルは、単一ブロックモデルとも呼ばれる。しかし、このような単一ブロックモデルを用いた手法では、短時間で解析を行うことができるが、解析精度が低いという課題がある。また、その手法以外にも、電磁界解析により基板内の発熱マップを導出する手法がある。しかし、このような手法では、解析精度が高いが、解析に時間がかかるという課題がある。
【0005】
そこで、本開示は、基板の発熱の効果的な解析が可能なモデルを得るためのパラメータセットを生成することができるパラメータセット生成方法などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るパラメータセット生成方法は、コンピュータがパラメータセットを生成するパラメータセット生成方法であって、基板に関する入力情報を取得し、前記入力情報に基づいて前記基板をモデル化することによって、前記基板の発熱の解析に用いられるパラメータセットを生成し、前記入力情報は、(1)前記基板に実装される1以上の部品に関する内容、(2)前記1以上の部品が実装された前記基板である実装基板の動作条件、(3)前記実装基板の回路図、および(4)前記基板の基板図、のうちの少なくとも1つを示し、前記パラメータセットは、それぞれ前記基板に含まれる、発熱すると推定される複数の発熱領域と、前記複数の発熱領域のそれぞれの消費電力とを示す。
【0007】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。また、記録媒体は、非一時的な記録媒体であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示のパラメータセット生成方法は、基板の発熱の効果的な解析が可能なモデルを得るためのパラメータセットを生成することができる。
【0009】
なお、本開示の一態様における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施の形態並びに明細書および図面に記載された構成によって提供されるが、必ずしも全ての構成が必要とはされない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態におけるパラメータセット生成装置の外観の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態におけるパラメータセット生成装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態におけるパラメータセット生成装置の全体的な処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施の形態におけるパラメータセット生成装置による部品判定処理の詳細な一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施の形態におけるパラメータセット生成装置によるレイアウト判定処理の詳細な一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施の形態における部品判定処理に用いられる動作条件ごとの各部品の部品情報を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態における第1動作条件に対する部品判定処理の結果の一例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、実施の形態における部品判定処理およびレイアウト判定処理の判定方法の一例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施の形態におけるレイアウト判定処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の第1態様に係るパラメータセット生成方法は、コンピュータがパラメータセットを生成するパラメータセット生成方法であって、基板に関する入力情報を取得し、前記入力情報に基づいて前記基板をモデル化することによって、前記基板の発熱の解析に用いられるパラメータセットを生成し、前記入力情報は、(1)前記基板に実装される1以上の部品に関する内容、(2)前記1以上の部品が実装された前記基板である実装基板の動作条件、(3)前記実装基板の回路図、および(4)前記基板の基板図、のうちの少なくとも1つを示し、前記パラメータセットは、それぞれ前記基板に含まれる、発熱すると推定される複数の発熱領域と、前記複数の発熱領域のそれぞれの消費電力とを示す。
【0012】
これにより、生成されるパラメータセットは、複数の発熱領域と、それらの発熱領域の消費電力とを示すため、このパラメータセットを用いれば、基板の発熱の効果的な解析が可能なモデルを得ることができる。つまり、このようなモデルは、単一ブロックモデルよりも、基板の発熱についての解析精度を高めることができる。さらに、生成されるモデルは、電磁界解析よりも、複雑でないため、基板の発熱についての解析時間を短縮することができる。
【0013】
また、第1態様に従属する第2態様に係るパラメータセット生成方法は、前記パラメータセットの生成では、前記1以上の部品のそれぞれについて、前記入力情報から得られる当該部品の電気または熱に関する数値パラメータに基づいて、当該部品を前記基板に含まれる構造として扱うか否かを判定する部品判定処理を行い、部品を前記基板に含まれる構造として扱うと判定する場合には、前記部品の電気に関する数値パラメータを用いて前記パラメータセットを生成してもよい。
【0014】
これにより、部品判定処理によって、部品を基板に含まれる構造として扱うか、部品を基板から独立した構造として扱うかが判定され、部品を基板に含まれる構造として扱う場合には、その部品に関する数値パラメータが、パラメータセットに反映され、さらに、基板のモデルに反映される。したがって、部品と基板とのそれぞれのモデルを効果的に生成することができ、それらのモデルを組み合わせることによって、実装基板の全体的なモデル化を容易に行うことができる。
【0015】
また、第1態様または2態様に従属する第3態様に係るパラメータセット生成方法は、前記パラメータセットの生成では、前記入力情報に基づいて、前記基板に含まれる複数の領域のそれぞれについて、当該領域が前記発熱領域に該当するか否かを判定するレイアウト判定処理を行ってもよい。
【0016】
これにより、基板の発熱の解析に必要とされる発熱領域を適切に特定することができ、その解析の精度向上を図ることができる。
【0017】
また、第2態様または第3態様に従属する第4態様に係るパラメータセット生成方法では、前記レイアウト判定処理は、前記部品判定処理の後に実行され、前記レイアウト判定処理では、前記基板に含まれる構造として扱われる部品が配置される領域が、前記発熱領域に該当するか否かを判定し、前記基板から独立した構造として扱われる部品が配置される領域は、前記発熱領域に該当しないと判定する。
【0018】
これにより、基板の発熱の解析に必要とされる発熱領域をより適切に特定することができ、その解析の精度向上をさらに図ることができる。
【0019】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0020】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0021】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態におけるパラメータセット生成装置の外観の一例を示す図である。
【0022】
本実施の形態におけるパラメータセット生成装置10は、例えばパーソナルコンピュータなどによって構成され、表示部20および入力部30に接続されている。
【0023】
表示部20は、パラメータセット生成装置10から出力される画像信号を取得し、その画像信号に応じた画像を表示するディスプレイである。例えば、ディスプレイは、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどであるが、これらに限定されない。
【0024】
入力部30は、例えば、キーボード、タッチセンサ、タッチパッドまたはマウスなどとして構成され、ユーザによる入力操作を受け付け、その入力操作に応じた操作信号をパラメータセット生成装置10に出力する。
【0025】
パラメータセット生成装置10は、プロセッサおよび記録媒体などを備える。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)などであり、記録媒体は、ハードディスクドライブ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、または半導体メモリなどである。なお、このような記録媒体は、揮発性であっても不揮発性であってもよい。プロセッサは、記録媒体に格納されているプログラムを読み込み、そのプログラムを実行することによって各機能を実現する。
【0026】
このようなパラメータセット生成装置10は、例えば入力部30からの操作信号を取得し、その操作信号に応じて、基板の発熱の解析に用いられるパラメータセットを生成する。そして、パラメータセット生成装置10は、その生成されたパラメータセットを示す画像信号を表示部20に出力することによって、そのパラメータセットを表示部20に表示する。なお、パラメータセット生成装置10は、通信インターフェースを備え、例えばインターネットなどの通信回線を介して通信信号を取得し、その通信信号に応じてパラメータセットを生成してもよい。また、パラメータセット生成装置10は、外部の記録媒体からデータを読み込む読込部を備え、そのデータに基づいてパラメータセットを生成してもよい。
【0027】
なお、表示部20および入力部30は、パラメータセット生成装置10に組み込まれていてもよい。また、表示部20および入力部30は、タッチパネルとして一体的に構成されていてもよい。
【0028】
図2は、本実施の形態におけるパラメータセット生成装置10の構成を示すブロック図である。
【0029】
パラメータセット生成装置10は、入力情報取得部11と、パラメータセット生成部12と、出力部13と、データベース14と、解析モデル生成部15とを備えている。
【0030】
入力情報取得部11は、基板に関する入力情報dを取得する。入力情報dは、部品情報d1、動作条件情報d2、回路図情報d3、および基板図情報d4のうちの少なくとも1つを含む。部品情報d1は、基板に実装される部品に関する内容を示す情報である。例えば、部品情報d1は、部品の形状、消費電力などを示す。なお、複数の部品が基板に実装される場合には、入力情報dは、複数の部品情報d1を含んでいてもよい。動作条件情報d2は、1以上の部品が実装された基板である実装基板の動作条件を示す情報である。例えば、動作条件情報d2は、その実装基板に用いられる信号波形などを示していてもよい。なお、複数の動作条件ある場合には、入力情報dは、複数の動作条件情報d2を含んでいてもよい。また、このような動作条件は、実装基板を含むシステムの要件であってもよく、設計要件であってもよい。回路図情報d3は、実装基板の回路図を示す情報である。その回路図には、例えば、抵抗、コンデンサ、インダクタなどが基板に実装される部品として記述されている。基板図情報d4は、基板に関する情報であって、例えば、基板の形状およびサイズ、その基板に用いられている配線パターン、配線の形状およびサイズなどを示す。なお、基板図情報d4は、レイアウト情報と呼ばれてもよい。
【0031】
なお、本実施の形態における基板は、例えばプリント基板であるが、これに限定されるものではない。また、本実施の形態における部品は、抵抗、コンデンサ、インダクタ、集積回路などの電子部品である。また、入力情報取得部11は、シミュレーションモデル、部品リスト、設計要件、処理条件などを示す他の情報を取得し、それらの情報から上述の部品情報d1、動作条件情報d2、回路図情報d3、および基板図情報d4のうちの少なくとも1つ導出してもよい。
【0032】
このように、本実施の形態における入力情報dは、(1)基板に実装される1以上の部品に関する内容、(2)その1以上の部品が実装された基板である実装基板の動作条件、(3)その実装基板の回路図、および(4)その基板の基板図、のうちの少なくとも1つを示す。
【0033】
パラメータセット生成部12は、入力情報取得部11によって取得された入力情報dに基づいて、その基板をモデル化することによって、その基板の発熱の解析に用いられるパラメータセットを生成する。このパラメータセットの生成では、パラメータセット生成部12は、データベース14に格納されている1以上のデータを参照してもよい。また、パラメータセット生成部12は、そのパラメータセットを画像(以下、パラメータセット画像とも呼ばれる)として生成してもよい。パラメータセットは、複数の出力パラメータからなる。パラメータセット画像は、2次元または3次元の画像である。
【0034】
解析モデル生成部15は、パラメータセット生成部12によって生成されたパラメータセットを取得し、そのパラメータセットを用いて基板の解析モデルを自動で生成する。解析モデルには、パラメータセットが含まれていてもよく、基板の構成および材料に関する数値などを示すデータが含まれていてもよい。なお、解析モデル生成部15による処理は、例えば、ユーザによる入力部30への入力操作に応じて切り替えられてもよい。つまり、解析モデル生成部15は、入力部30からモデル生成停止を指示する操作信号を受け付けると、解析モデルの生成を行わず、入力部30からモデル生成実行を指示する操作信号を受け付けると、解析モデルの生成を行う。そして、解析モデル生成部15は、解析モデルを生成した場合には、その解析モデルを出力部13に出力する。
【0035】
出力部13は、パラメータセット生成部12によって生成されたパラメータセットまたはパラメータセット画像を出力する。パラメータセットは、それぞれ基板に含まれる、発熱すると推定される複数の発熱領域と、その複数の発熱領域のそれぞれの消費電力とを示す。例えば、パラメータセットは、複数の発熱領域として、
図2に示すように、第1領域、第2領域、第3領域、および第4領域を示す。さらに、パラメータセットは、第1領域の消費電力としてP1[W]を示し、第2領域の消費電力としてP2[W]を示し、第3領域の消費電力としてP3[W]を示し、第4領域の消費電力としてP4[W]を示す。
【0036】
出力部13は、パラメータセット生成部12によってパラメータセットが生成される場合には、そのパラメータセットを示す画像信号を表示部20に出力することによって、そのパラメータセットを表示部20に表示する。つまり、複数の出力パラメータが表示部20に表示される。また、出力部13は、パラメータセット生成部12によってパラメータセット画像が生成される場合には、そのパラメータセット画像を示す画像信号を表示部20に出力することによって、そのパラメータセット画像を表示部20に表示する。例えば、解析実施者は、表示部20に表示されるパラメータセットまたはパラメータセット画像を参照して、手動で解析モデルを生成してもよい。
【0037】
また、出力部13は、解析モデル生成部15によから解析モデルを取得した場合には、その解析モデルを示す画像信号を表示部20に出力することによって、その解析モデルを表示部20に表示してもよい。なお、解析モデルが表示される場合には、その解析モデルに含まれる内部パラメータが表示されてもよい。解析実施者は、表示部20に表示される解析モデルを用いて基板の発熱の解析を行うことができる。また、解析実施者は、表示部20に表示される解析モデルと別のモデルとを組み合わせ、その組み合わせによって得られる新たなモデルを用いて基板の発熱の解析を行ってもよい。
【0038】
なお、出力部13は、上述の通信インターフェースに通信回線を介して接続されている他の機器にそのパラメータセットまたは解析モデルを送信してもよい。あるいは、出力部13は、パラメータセット生成装置10に接続されている外部記録媒体にそのパラメータセットまたは解析モデルを格納してもよい。
【0039】
図3は、本実施の形態におけるパラメータセット生成装置10の全体的な処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0040】
まず、入力情報取得部11は、入力情報dを取得する(ステップS1)。次に、パラメータセット生成部12は、その入力情報dに基づいて、N(Nは1以上の整数)個の動作条件を設定する(ステップS2)。
【0041】
次に、パラメータセット生成部12は、カウンタ変数nを1に初期化して(ステップS3)、N個の動作条件の中から第n動作条件を選択する(ステップS4)。そして、パラメータセット生成部12は、第n動作条件に対する部品判定処理を実行し(ステップS20)、その部品判定処理の結果を用いて、第n動作条件に対するレイアウト判定処理を実行する(ステップS30)。ステップS20およびS30の処理が実行されることによって、1つの動作条件に対するパラメータセットが生成される。パラメータセットは、上述の解析モデルを得るために必要とされる複数の出力パラメータからなる。それらの複数の出力パラメータは、基板における複数の発熱領域と、それらの発熱領域における消費電力とを示す。
【0042】
ステップS30の処理の後、パラメータセット生成部12は、カウンタ変数nに対してインクリメントを行い(ステップS5)、そのインクリメント後のカウンタ変数nが「N+1」に一致するか否かを判定する(ステップS6)。ここで、パラメータセット生成部12は、カウンタ変数nが「N+1」に一致していないと判定すると(ステップS6のNo)、ステップS4からの処理を繰り返し実行する。一方、カウンタ変数nが「N+1」に一致するとパラメータセット生成部12によって判定されると(ステップS6のYes)、出力部13は、各動作条件のパラメータセットを表示部20に出力する(ステップS7)。つまり、カウンタ変数nが「N+1」に一致する場合には、第1動作条件から第N動作条件の全ての動作条件のそれぞれに対して、ステップS20およびS30が実行され、パラメータセットが生成されている。したがって、ステップS7では、出力部13は、全ての動作条件のそれぞれのパラメータセットを表示部20に出力することによって、それらのパラメータセットを表示部20に表示する。
【0043】
次に、パラメータセット生成部12は、動作条件ごとに、その動作条件に対して生成されたパラメータセットに基づいて、パラメータセット画像を生成する(ステップS8)。このパラメータセット画像は、基板に含まれる複数の発熱領域を2次元的または3次元的に図形として表現している。出力部13は、各動作条件のパラメータセット画像を表示部20に出力する(ステップS9)。これにより、全ての動作条件のそれぞれのパラメータセット画像が表示部20に表示される。
【0044】
なお、
図3に示す例では、解析モデルが生成されていないが、その解析モデルが生成されてもよい。この場合、出力部13およびパラメータセット生成部12によるステップS7およびS8の処理に代わって、解析モデル生成部15が解析モデルを生成し、出力部13がその解析モデルを表示部20に出力する。あるいは、出力部13およびパラメータセット生成部12によるステップS7およびS8の処理が行われながら、解析モデル生成部15が解析モデルを生成し、出力部13がその解析モデルを表示部20に出力する。また、解析モデル生成部15は、その解析モデルの生成では、ステップS20およびステップS30の実行によって生成されたパラメータセットを用いて解析モデルを生成する。
【0045】
図4は、本実施の形態におけるパラメータセット生成装置10による部品判定処理の詳細な一例を示すフローチャートである。つまり、
図4は、
図3におけるステップS20の詳細な処理を示す。
【0046】
まず、パラメータセット生成部12は、モデリング対象の基板に対して実装される全ての部品、すなわちM(Mは1以上の整数)個の部品を特定する(ステップS21)。そして、パラメータセット生成部12は、カウンタ変数mを1に初期化して(ステップS22)、M個の部品の中からm番目の部品を選択する(ステップS23)。次に、パラメータセット生成部12は、m番目の部品のモデリング情報を判定し(ステップS24)、カウンタ変数mに対してインクリメントを行う(ステップS25)。モデリング情報は、そのm番目の部品を、基板に含まれる構造としてモデル化するか、基板から独立した構造としてモデル化するかを少なくとも示す情報である。パラメータセット生成部12は、そのインクリメント後のカウンタ変数mが「M+1」に一致するか否かを判定する(ステップS26)。ここで、パラメータセット生成部12は、カウンタ変数mが「M+1」に一致していないと判定すると(ステップS26のNo)、ステップS23からの処理を繰り返し実行する。一方、パラメータセット生成部12は、カウンタ変数mが「M+1」に一致すると判定すると(ステップS26のYes)、部品判定処理を終了する。これにより、基板に実装されるM個の部品の全てに対してモデリング情報が判定される。
【0047】
図5は、本実施の形態におけるパラメータセット生成装置10によるレイアウト判定処理の詳細な一例を示すフローチャートである。つまり、
図5は、
図3におけるステップS30の詳細な処理を示す。
【0048】
まず、パラメータセット生成部12は、例えば回路図情報d3および基板図情報d4などに基づいて、モデリング対象の基板に含まれる全ての領域、すなわちR(Rは1以上の整数)個の領域を特定する(ステップS31)。例えば、パラメータセット生成部12は、予め定められたメッシュの各区画を領域として特定してもよく、部品間を領域として特定してもよい。あるいは、パラメータセット生成部12は、配線パターンごとに、その配線パターンがある領域を特定してもよい。あるいは、パラメータセット生成部12は、配線および部品などがマッピングされた基板を示す画像データを機械学習モデルに入力することによって、または、画像データに対して画像処理を行うことによって、その基板に対してR個の領域を特定してもよい。
【0049】
そして、パラメータセット生成部12は、カウンタ変数rを1に初期化して(ステップS32)、R個の領域の中からr番目の領域を選択する(ステップS33)。次に、パラメータセット生成部12は、r番目の領域のモデリング領域情報を判定し(ステップS34)、カウンタ変数rに対してインクリメントを行う(ステップS35)。モデリング領域情報は、そのr番目の領域が発熱領域か否かを示す情報であって、その発熱領域は、モデリング対象の基板に含まれる、発熱すると推定される領域である。パラメータセット生成部12は、そのインクリメント後のカウンタ変数rが「R+1」に一致するか否かを判定する(ステップS36)。ここで、パラメータセット生成部12は、カウンタ変数rが「R+1」に一致していないと判定すると(ステップS36のNo)、ステップS33からの処理を繰り返し実行する。一方、パラメータセット生成部12は、カウンタ変数rが「R+1」に一致すると判定すると(ステップS36のYes)、レイアウト判定処理を終了する。これにより、基板に含まれるR個の領域の全てに対してモデリング領域情報が判定される。
【0050】
図6は、部品判定処理に用いられる動作条件ごとの各部品の部品情報d1を示す図である。
【0051】
パラメータセット生成部12は、
図6に示すように、第1動作条件、第2動作条件などの動作条件ごとに、各部品の電力、周波数などを示す部品情報d1を特定する。このような部品情報d1の特定は、例えば
図3のフローチャートにおけるステップS2の処理で実行されてもよい。電力は、部品で消費される電力(すなわち消費電力)であり、周波数は、部品の動作周波数、または部品で扱われる信号の周波数である。例えば、入力情報dには、各部品の部品情報d1と、複数の動作条件情報d2とが含まれている。この場合、パラメータセット生成部12は、その複数の動作条件情報d2に示されている第1動作条件、第2動作条件などの動作条件ごとに、各部品の部品情報d1に示されている電力、周波数などを特定する。入力情報dに部品情報d1が含まれていなければ、パラメータセット生成部12は、部品情報d1以外の入力情報dに含まれている1以上の情報を用いて、部品情報d1を特定してもよい。あるいは、パラメータセット生成部12は、データベース14にデータとして格納されている部品データシートの基本スペックなどに基づいて、部品情報d1を特定してもよい。
【0052】
例えば、パラメータセット生成部12は、
図6に示すように、第1動作条件では、部品Aの電力としてPa1[W]を特定し、その周波数としてFa1[GHz]を特定し、部品Bの電力としてPb1[W]を特定し、その周波数としてFb1[GHz]を特定する。また、パラメータセット生成部12は、第2動作条件では、部品Aの電力としてPa2[W]を特定し、その周波数としてFa2[GHz]を特定し、部品Bの電力としてPb2[W]を特定し、その周波数としてFb2[GHz]を特定する。
【0053】
図7は、第1動作条件に対する部品判定処理の結果の一例を説明するための図である。
【0054】
パラメータセット生成部12は、動作条件ごとに、
図6に示す各部品の部品情報d1に対して、モデリング情報を判定する。言い換えれば、パラメータセット生成部12は、モデリング情報を決定する。なお、
図7の例では、部品情報d1は、電力および周波数だけでなく、部品の保証温度も示す。保証温度は、例えば部品が正常に動作する最大温度であり、ジャンクション温度とも呼ばれる。
図7の例では、モデリング情報は、モデルタイプ、配線発熱の要否などを示す。モデルタイプは、部品のタイプであって、そのタイプには部品モデルと基板モデルとがある。部品モデルは、部品を基板から独立した構造としてモデル化するタイプである。基板モデルは、部品を基板に含まれる構造としてモデル化するタイプである。つまり、基板モデルの部品は、基板の一部として扱われる。配線発熱の要否は、部品の動作による発熱に対してモデル化が必要であるか否かを示す。この要否には、一方の部品から他方の部品に流れる電流とその電流の周波数とが考慮されてもよい。
【0055】
例えば、パラメータセット生成部12は、
図7に示すように、部品Aの部品情報d1に対して、モデルタイプとして「部品モデル」を判定し、配線発熱の要否として「要」を判定する。また、パラメータセット生成部12は、部品Bの部品情報に対して、モデルタイプとして「部品モデル」を判定し、配線発熱の要否として「否」を判定する。また、パラメータセット生成部12は、部品Cの部品情報に対して、モデルタイプとして「基板モデル」を判定し、配線発熱の要否として「要」を判定する。
【0056】
図8は、部品判定処理およびレイアウト判定処理の判定方法の一例を説明するための図である。
【0057】
例えば、パラメータセット生成部12は、部品判定処理では、上述のように、部品の部品情報d1に基づいて、その部品に対してモデルタイプを判定する。このとき、パラメータセット生成部12は、
図8に示すように、部品の消費電力が大きいほど、その部品のモデルタイプが高い確度で部品モデルであると判定する。一例では、パラメータセット生成部12は、部品の消費電力が閾値よりも大きければ、その部品のモデルタイプが部品モデルであると判定してもよい。また、パラメータセット生成部12は、部品の保証温度が低いほど、その部品のモデルタイプが高い確度で部品モデルであると判定する。一例では、パラメータセット生成部12は、部品の保証温度が閾値よりも低ければ、その部品のモデルタイプが部品モデルであると判定してもよい。
【0058】
なお、パラメータセット生成部12は、部品の消費電力と保証温度との重み付け加算による得られる数値と閾値との比較によって、その部品のモデルタイプを判定してもよい。この場合、消費電力に対する重み係数の符号(すなわち正または負)は、保証温度に対する重み係数の符号と異なっていてもよい。
【0059】
一方、パラメータセット生成部12は、部品に流れる電流が大きいほど、その部品の領域が高い確度で発熱領域であると判定する。言い換えれば、その部品に対して配線発熱「要」が判定される。一例では、パラメータセット生成部12は、部品に流れる電流が閾値よりも大きければ、その部品の領域が高い確度で発熱領域であると判定してもよい。同様に、パラメータセット生成部12は、部品の周波数が高いほど、その部品の領域が高い確度で発熱領域であると判定する。言い換えれば、その部品に対して配線発熱「要」が判定される。一例では、パラメータセット生成部12は、部品の周波数が閾値より高ければ、その部品の領域が高い確度で発熱領域であると判定してもよい。
【0060】
なお、パラメータセット生成部12は、部品の電流と周波数との重み付け加算による得られる数値と閾値との比較によって、その部品に対する発熱領域の判定を行ってもよい。
【0061】
次に、パラメータセット生成部12は、レイアウト判定処理では、基板に関する情報である基板図情報d4に基づいて、その基板の各領域を発熱領域としてモデル化するか否かを判定する。このとき、パラメータセット生成部12は、
図8に示すように、基板の領域に配置されている配線の幅が狭いほど、その領域が高い確度で発熱領域であると判定する。一例では、パラメータセット生成部12は、領域にある配線の幅が閾値よりも狭ければ、その領域が発熱領域であると判定する。また、パラメータセット生成部12は、領域にある配線の数が多いほど、その領域が高い確度で発熱領域であると判定する。一例では、パラメータセット生成部12は、領域にある配線の数が閾値よりも多ければ、その領域が発熱領域であると判定する。また、パラメータセット生成部12は、領域にある配線の密度が高いほど、その領域が高い確度で発熱領域であると判定する。一例では、パラメータセット生成部12は、領域にある配線の密度が閾値よりも高ければ、その領域が発熱領域であると判定する。また、パラメータセット生成部12は、領域にあるビアの数が多いほど、その領域が高い確度で発熱領域であると判定する。一例では、パラメータセット生成部12は、領域にあるビアの数が閾値よりも多ければ、その領域が発熱領域であると判定する。
【0062】
なお、パラメータセット生成部12は、配線の幅と、配線の数と、配線の密度と、ビアの数との重み付け加算による得られる数値と閾値との比較によって、その領域に対する発熱領域の判定を行ってもよい。この場合、配線の幅に対する重み係数の符号(すなわち正または負)は、配線の数などの他の要素に対する重み係数の符号と異なっていてもよい。
【0063】
また、このような
図8に示す判定方法は、データベース14に格納されているデータに示されていてもよい。パラメータセット生成部12は、そのデータをデータベース14から読み出して参照することによって、レイアウト判定処理を行ってもよい。また、データベース14には、上述の各閾値が格納されていてもよい。
【0064】
【0065】
パラメータセット生成部12は、
図9の(a)に示すように、部品A~Dが実装される基板のパラメータセットを生成する。この場合、パラメータセット生成部12は、部品判定処理において、部品Aおよび部品Dのそれぞれの消費電力が大きいため、あるいは、それぞれの保証温度が低いため、それらの部品のモデルタイプが部品モデルであると判定する。逆に、パラメータセット生成部12は、部品判定処理において、部品Bおよび部品Cのそれぞれの消費電力が小さいため、あるいは、それぞれの保証温度が高いため、それらの部品のモデルタイプが基板モデルであると判定する。したがって、部品Aおよび部品Dは、基板から独立してモデル化され、部品Bおよび部品Cは、基板に含まれる構造としてモデル化される。ここで、部品Aおよび部品Dの電流は大きく、すなわち、部品Aから部品Dに流れる電流は大きく、部品Aと部品Dとを結ぶ配線L1の幅は狭い。したがって、配線L1では、大きな発熱があると推定される。一方、部品Bから部品Cに流れる電流は大きくても、部品Bと部品Cとを結ぶ配線L2の幅は広い。したがって、配線L2では、大きな発熱はないと推定される。
【0066】
その結果、パラメータセット生成部12は、レイアウト判定処理では、
図9の(b)に示すように、配線L1が存在する領域A1を基板における発熱領域として判定し、配線L2が存在する領域を発熱領域として判定しない。さらに、パラメータセット生成部12は、部品Bおよび部品Cを含む領域A2を基板における発熱領域として判定する。また、パラメータセット生成部12は、部品Aおよび部品Dのそれぞれのモデルタイプが部品モデルであるため、基板の部品Aおよび部品Bがそれぞれ搭載される領域を発熱領域として判定しない。これにより、その部品Aおよび部品Bの発熱量が二重に解析モデルに反映されることを抑制することができる。
【0067】
なお、上述の例では、領域A1は発熱領域として判定されるが、部品Aおよび部品Dの電流が大きくても、部品Aから部品Dに流れる電流、すなわち配線L1に流れる電流が小さい場合には、領域A1は、発熱領域として判定されない。なお、この場合には、部品Aおよび部品Dのそれぞれの電流は、他の部品に流れる。また、上述の例では、配線L2が存在する領域は、発熱領域として判定されないが、配線L2に流れる電流が小さくても、その電流の周波数が高い場合には、その配線L2が存在する領域は、発熱領域として判定されてもよい。
【0068】
したがって、パラメータセット生成部12は、
図9の(c)に示すように、領域A1と領域A2とをそれぞれ発熱領域として示す基板のパラメータセットを生成する。また、パラメータセット生成部12は、そのパラメータセットの生成では、領域A1における消費電力としてP11[W]を算出し、領域A2における消費電力としてP12[W]を算出する。例えば、パラメータセット生成部12は、領域A1の配線の幅、数、電気抵抗率、周波数などに基づいて、その配線の抵抗値を算出し、その配線にかかる電圧とその抵抗値とを用いてP11[W]を算出してもよい。電気抵抗率および電圧は、入力情報dに直接的に示されていてもよく、その入力情報dから導出されてもよい。あるいは、電気抵抗率および電圧は、データベース14に格納されているデータに示されていてもよい。また、消費電力の算出には、配線などに流れる信号の周波数、振幅、信号波形などが用いられてもよい。また、パラメータセット生成部12は、領域A2における消費電力としてP12[W]を算出するときには、その領域A2に配置されている部品Bの消費電力と部品Cの消費電力との合計を、P12[W]として算出してもよい。
【0069】
そして、パラメータセット生成部12は、領域ごとに、算出された電力をその領域に関連付ける。これにより、基板のパラメータセットが生成される。なお、
図9の(c)に示すパラメータセットは、2次元的に表現されているが、3次元的に表現されてもよい。
【0070】
基板の発熱の解析を行うときには、このようなパラメータセットを用いて解析モデルが得られる。例えば、各発熱領域の消費電力と、その発熱領域における配線の面積または体積とによって、発熱密度を導出することができる。
【0071】
以上のように、本実施の形態におけるパラメータセット生成方法は、コンピュータとして構成されているパラメータセット生成装置10がパラメータセットを生成する方法である。このパラメータセット生成方法では、入力情報取得部11が、基板に関する入力情報dを取得する。そして、パラメータセット生成部12が、その入力情報dに基づいて基板をモデル化することによって、その基板の発熱の解析に用いられるパラメータセットを生成する。ここで、入力情報dは、(1)基板に実装される1以上の部品に関する内容、(2)1以上の部品が実装された基板である実装基板の動作条件、(3)その実装基板の回路図、および(4)基板の基板図、のうちの少なくとも1つを示す。また、生成されるパラメータセットは、それぞれ基板に含まれる、発熱すると推定される複数の発熱領域と、それらの複数の発熱領域のそれぞれの消費電力とを示す。なお、パラメータセットは、例えば、発熱領域の位置、サイズ、および形状を示す。
【0072】
これにより、本実施の形態によって生成されるパラメータセットは、複数の発熱領域と、それらの発熱領域の消費電力とを示すため、このパラメータセットを用いれば、基板の発熱の効果的な解析が可能な解析モデルを得ることができる。なお、解析モデルには、パラメータセットが含まれていてもよい。つまり、このような解析モデルは、単一ブロックモデルよりも、基板の発熱についての解析精度を高めることができる。さらに、本実施の形態によって生成される解析モデルは、電磁界解析よりも、複雑でないため、基板の発熱についての解析時間を短縮することができる。さらに、電磁界解析では、詳細な基板図が必要とされるが、本実施の形態におけるパラメータセット生成方法では、そのような詳細な基板図が得られなくても、パラメータセットを生成することができる。その結果、基板の発熱の効果的な解析が可能な解析モデルを得ることができる。つまり、解析モデルの生成に必要とされる入力情報dの自由度を広げることができる。
【0073】
また、本実施の形態におけるパラメータセット生成方法では、パラメータセット生成部12は、上述の1以上の部品のそれぞれについて、入力情報dから得られる当該部品の電気または熱に関する数値パラメータに基づいて、その部品を基板に含まれる構造として扱うか否かを判定する部品判定処理を行う。そして、パラメータセット生成部12は、部品を基板に含まれる構造として扱うと判定する場合には、部品の電気に関する数値パラメータを用いてパラメータセットを生成する。つまり、パラメータセット生成部12は、部品に対してモデリング情報を判定する。このモデリング情報の判定では、パラメータセット生成部12は、部品のモデルタイプが部品モデルであるか基板モデルであるかを判定する。したがって、部品を基板に含まれる構造として扱うことは、部品のモデルタイプが基板モデルであることを意味する。また、部品の電気または熱に関する数値パラメータは、例えば、部品の消費電力または保証温度を示す。また、部品の電気に関する数値パラメータは、例えば、部品に流れる電流であってもよく、周波数であってもよい。
【0074】
これにより、部品判定処理によって、部品を基板に含まれる構造として扱うか、部品を基板から独立した構造として扱うかが判定され、部品を基板に含まれる構造として扱う場合には、その部品に関する数値パラメータが、パラメータセットに反映され、さらに、基板の解析モデルに反映される。したがって、部品と基板とのそれぞれの解析モデルを効果的に生成することができ、それらの解析モデルを組み合わせることによって、実装基板の全体的なモデル化を容易に行うことができる。
【0075】
また、本実施の形態におけるパラメータセット生成方法では、パラメータセット生成部12は、入力情報dに基づいて、基板に含まれる複数の領域のそれぞれについて、その領域が発熱領域に該当するか否かを判定するレイアウト判定処理を行う。入力情報dは、具体的な一例では、基板図情報d4であって、配線の幅、配線の数、配線の密度、ビアの数などがレイアウト判定処理に用いられる。なお、入力情報dに基板図情報d4が含まれていなければ、他の情報から、配線の幅、配線の数、配線の密度、ビアの数などが導出されてもよい。
【0076】
これにより、基板の発熱の解析に必要とされる発熱領域を適切に特定することができ、その解析の精度向上を図ることができる。
【0077】
また、本実施の形態におけるパラメータセット生成方法では、レイアウト判定処理は、部品判定処理の後に実行される。そして、そのレイアウト判定処理では、パラメータセット生成部12は、基板に含まれる構造として扱われる部品が配置される領域が、発熱領域に該当するか否かを判定し、基板から独立した構造として扱われる部品が配置される領域は、発熱領域に該当しないと判定する。
図9に示す例では、部品Bおよび部品Cが配置される領域A2が、発熱領域に該当するか否かが判定され、部品Aおよび部品Dが配置される領域は、発熱領域に該当しないと判定される。
【0078】
これにより、基板の発熱の解析に必要とされる発熱領域をより適切に特定することができ、その解析の精度向上をさらに図ることができる。
【0079】
以上、本開示のパラメータセット生成方法およびパラメータセット生成装置について、上記実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態に施したものも本開示に含まれてもよい。
【0080】
なお、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)またはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記各実施の形態のパラメータセット生成装置を実現するソフトウェアであるプログラムは、コンピュータに
図3、
図4、および
図5のフローチャートに含まれる各ステップを実行させる。
【0081】
なお、以下のような場合も本開示に含まれる。
【0082】
(1)上記の装置は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムであってもよい。そのRAMまたはハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、上記の少なくとも1つの装置は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0083】
(2)上記の装置を構成する構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。前記RAMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0084】
(3)上記の装置を構成する構成要素の一部または全部は、その装置に脱着可能なICカードまたは単体のモジュールから構成されているとしてもよい。ICカードまたはモジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。ICカードまたはモジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、ICカードまたはモジュールは、その機能を達成する。このICカードまたはこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしてもよい。
【0085】
(4)本開示は、上記に示す方法であるとしてもよい。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしてもよいし、コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしてもよい。
【0086】
また、本開示は、コンピュータプログラムまたはデジタル信号をコンピュータ読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリなどに記録したものとしてもよい。また、これらの記録媒体に記録されているデジタル信号であるとしてもよい。
【0087】
また、本開示は、コンピュータプログラムまたはデジタル信号を、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしてもよい。
【0088】
また、プログラムまたはデジタル信号を記録媒体に記録して移送することにより、またはプログラムまたはデジタル信号をネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示のパラメータセット生成装置は、基板の発熱の効果的な解析が可能なモデルを得るためのパラメータセットを生成することができ、その解析を行うシステムなどに適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
10 パラメータセット生成装置
11 入力情報取得部
12 パラメータセット生成部
13 出力部
14 データベース
15 解析モデル生成部
20 表示部
30 入力部
A1、A2 領域
d 入力情報
d1 部品情報
d2 動作条件情報
d3 回路図情報
d4 基板図情報
L1、L2 配線