(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141857
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】養殖適地提示方法及び養殖適地提示プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20241003BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20241003BHJP
G06T 11/60 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G06Q50/02
G09B29/00 Z
G06T11/60 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053707
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】山内 康司
(72)【発明者】
【氏名】狩谷 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴広
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真晴
【テーマコード(参考)】
2C032
5B050
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2C032HA02
2C032HB05
2C032HC22
2C032HC24
5B050AA03
5B050BA06
5B050BA17
5B050BA18
5B050BA20
5B050CA08
5B050EA06
5B050EA09
5B050FA02
5B050FA05
5B050FA13
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】養殖適地をユーザが容易に把握することができる養殖適地提示方法及び養殖適地提示プログラムを提供する。
【解決手段】養殖適地提示方法は、養殖に適した養殖適地を表示部32を介して提示する方法であって、地図情報に基づいて地図を生成し、生成した地図を表示部32に表示する地図表示ステップと、所定海域の海洋情報に基づいて所定海域の養殖適地の分布を判定し、判定した養殖適地の分布を、表示部32に表示している地図の所定海域上に描画する養殖適地描画ステップと、を備える。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
養殖に適した養殖適地を表示画面を介して提示する方法であって、
地図情報に基づいて地図を生成し、生成した前記地図を前記表示画面に表示する第1ステップと、
所定海域の海洋情報に基づいて前記所定海域の前記養殖適地の分布を判定し、判定した前記養殖適地の分布を、前記表示画面に表示している前記地図の前記所定海域上に描画する第2ステップと、を備える、養殖適地提示方法。
【請求項2】
前記海洋情報は、前記所定海域の海象に関する情報と、前記所定海域の地形に関する情報と、を含む、請求項1に記載の養殖適地提示方法。
【請求項3】
前記第2ステップでは、
前記所定海域を分割してなる複数のメッシュのそれぞれについて前記養殖適地であるかどうかを判定し、
前記表示画面に表示している前記地図の前記所定海域上において、前記養殖適地であると判定した前記メッシュに対応する部分を、前記養殖適地であると判定していない前記メッシュに対応する部分と区別されるように描画する、請求項1に記載の養殖適地提示方法。
【請求項4】
前記海洋情報は、前記所定海域の波高、潮流速度及び離岸距離の分布に関する情報を含み、
前記第2ステップでは、
複数の前記メッシュのそれぞれについて、波高が第1閾値未満、潮流速度が第2閾値未満、及び離岸距離が第3閾値未満の場合に、前記養殖適地であると判定する、請求項3に記載の養殖適地提示方法。
【請求項5】
前記海洋情報は、前記所定海域の水深の分布に関する情報を含み、
前記第2ステップでは、
複数の前記メッシュのそれぞれについて、前記養殖適地である場合に、適した1又は複数種の養殖設備を水深に基づいて判定し、
前記表示画面に表示している前記地図の前記所定海域上において、前記養殖適地であると判定した前記メッシュに対応する部分を、適した1又は複数種の養殖設備により区別されるように描画する、請求項4に記載の養殖適地提示方法。
【請求項6】
前記第2ステップでは、
複数の前記メッシュのそれぞれについて、前記養殖適地であると判定し且つ離岸距離が前記第3閾値よりも小さい第4閾値未満の場合、
水深が第5閾値未満のときには、プラットフォーム型設備及び陸上型設備が適すると判定し、
水深が第6閾値以上のときには、陸上型設備及び浮沈式生簀設備が適すると判定し、
水深が前記第5閾値以上で且つ前記第6閾値未満のときには、プラットフォーム型設備、陸上型設備及び浮沈式生簀設備が適すると判定する、請求項4又は5に記載の養殖適地提示方法。
【請求項7】
前記第2ステップでは、
複数の前記メッシュのそれぞれについて、前記養殖適地であると判定し且つ離岸距離が前記第3閾値よりも小さい第4閾値以上で且つ前記第3閾値未満の場合、
水深が第5閾値未満であるときには、プラットフォーム型設備が適すると判定し、
水深が第6閾値以上のときには、浮沈式生簀設備が適すると判定し、
水深が前記第5閾値以上で且つ前記第6閾値未満のときには、プラットフォーム型設備及び浮沈式生簀設備が適すると判定する、請求項4又は5に記載の養殖適地提示方法。
【請求項8】
社会的要因の提示要求を受け付けた場合に、前記所定海域における前記社会的要因が存在する区画に関する情報に基づいて、前記表示画面に表示している前記地図の前記所定海域上に当該区画を描画する第3ステップを備える、請求項1に記載の養殖適地提示方法。
【請求項9】
前記海洋情報は、前記所定海域の波高、潮流速度、離岸距離及び水深の分布に関する情報を含み、
波高、潮流速度、離岸距離及び水深の少なくとも何れかの提示要求を受け付けた場合、前記海洋情報に基づいて、前記表示画面に表示している前記地図の前記所定海域上に、波高、潮流速度、離岸距離及び水深の何れかの分布を描画する第4ステップを備える、請求項1に記載の養殖適地提示方法。
【請求項10】
水質及び/又は水質に影響を与える水質パラメータから魚の成長速度レベルを換算する成長速度モデルが、複数の魚種毎に記憶部に記憶されており、
特定の魚種の前記成長速度レベルの提示要求を受け付けた場合に、前記所定海域の前記水質パラメータの分布に関する情報と前記記憶部に記憶された前記特定の魚種の前記成長速度モデルとに基づいて、前記所定海域の前記成長速度レベルの分布を判定し、判定した前記成長速度レベルの分布を、前記表示画面に表示している前記地図の前記所定海域上に描画する第5ステップ、を備える、請求項1に記載の養殖適地提示方法。
【請求項11】
前記表示画面に表示している前記地図の前記所定海域上に前記成長速度レベルの分布が描画されている場合、前記第2ステップでは、前記養殖適地の分布を前記成長速度レベルの分布上に重なるように描画する、請求項10に記載の養殖適地提示方法。
【請求項12】
養殖に適した養殖適地を表示画面を介して提示するプログラムであって、
地図情報に基づいて地図を生成し、生成した前記地図を前記表示画面に表示する第1ステップと、
所定海域の海洋情報に基づいて前記所定海域の前記養殖適地の分布を判定し、判定した前記養殖適地の分布を、前記表示画面に表示している前記地図の前記所定海域上に描画する第2ステップと、をコンピュータに実行させる、養殖適地提示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、養殖適地提示方法及び養殖適地提示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
養殖適地提示方法に関する技術として、特許文献1には、任意地点における風力を推定し、推定した風力に基づいて風力発電システムの設置に適した風力発電システム適地を選定し、選定した風力発電システム適地をCRT画面上に表示する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、養殖に適した養殖適地については、例えば沿岸海域において潜在的に存在し得ることから、ユーザが容易に把握できない場合がある。
【0005】
そこで、本開示は、養殖適地をユーザが容易に把握することができる養殖適地提示方法及び養殖適地提示プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一形態に係る養殖適地提示方法は、養殖に適した養殖適地を表示画面を介して提示する方法であって、地図情報に基づいて地図を生成し、生成した地図を表示画面に表示する第1ステップと、所定海域の海洋情報に基づいて所定海域の養殖適地の分布を判定し、判定した養殖適地の分布を、表示画面に表示している地図の所定海域上に描画する第2ステップと、を備える。
【0007】
この養殖適地提示方法では、所定海域における養殖適地の分布を判定し、判定した当該分布を、表示画面に表示している地図の所定海域上に描画する。これにより、潜在的な養殖適地を可視化し、養殖適地をユーザが容易に把握することが可能となる。
【0008】
(2)上記(1)に記載の養殖適地提示方法では、海洋情報は、所定海域の海象に関する情報と、所定海域の地形に関する情報と、を含んでいてもよい。この場合、所定海域の海象及び地形が養殖適地の適否と相関があるという知見を利用して、養殖適地の分布を判定することが可能となる。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)に記載の養殖適地提示方法において、第2ステップでは、所定海域を分割してなる複数のメッシュのそれぞれについて養殖適地であるかどうかを判定し、表示画面に表示している地図の所定海域上において、養殖適地であると判定したメッシュに対応する部分を、養殖適地であると判定していないメッシュに対応する部分と区別されるように描画してもよい。この場合、潜在的な養殖適地の可視化を具体的に実現できる。
【0010】
(4)上記(3)に記載の養殖適地提示方法では、海洋情報は、所定海域の波高、潮流速度及び離岸距離の分布に関する情報を含み、第2ステップでは、複数のメッシュのそれぞれについて、波高が第1閾値未満、潮流速度が第2閾値未満、及び離岸距離が第3閾値未満の場合に、養殖適地であると判定してもよい。この場合、所定海域の波高、潮流速度及び離岸距離が養殖適地の適否に関係があるという知見を利用して、養殖適地の分布を具体的に判定することが可能となる。
【0011】
(5)上記(4)に記載の養殖適地提示方法では、海洋情報は、所定海域の水深の分布に関する情報を含み、第2ステップでは、複数のメッシュのそれぞれについて、養殖適地である場合に、適した1又は複数種の養殖設備を水深に基づいて判定し、表示画面に表示している地図の所定海域上において、養殖適地であると判定したメッシュに対応する部分を、適した1又は複数種の養殖設備により区別されるように描画してもよい。この場合、所定海域の水深が、適した養殖設備の種類に関係があるという知見を利用して、適した養殖設備の分布を判定及び描画することができる。
【0012】
(6)上記(4)又は(5)に記載の養殖適地提示方法において、第2ステップでは、複数のメッシュのそれぞれについて、養殖適地であると判定し且つ離岸距離が第3閾値よりも小さい第4閾値未満の場合、水深が第5閾値未満のときには、プラットフォーム型設備及び陸上型設備が適すると判定し、水深が第6閾値以上のときには、陸上型設備及び浮沈式生簀設備が適すると判定し、水深が第5閾値以上で且つ第6閾値未満のときには、プラットフォーム型設備、陸上型設備及び浮沈式生簀設備が適すると判定してもよい。この場合、所定海域の水深と養殖設備の種類との具体的な関係に基づいて、適した養殖設備の分布を具体的に判定することができる。
【0013】
(7)上記(4)~(6)の何れか一項に記載の養殖適地提示方法において、第2ステップでは、複数のメッシュのそれぞれについて、養殖適地であると判定し且つ離岸距離が第3閾値よりも小さい第4閾値以上で且つ第3閾値未満の場合、水深が第5閾値未満であるときには、プラットフォーム型設備が適すると判定し、水深が第6閾値以上のときには、浮沈式生簀設備が適すると判定し、水深が第5閾値以上で且つ第6閾値未満のときには、プラットフォーム型設備及び浮沈式生簀設備が適すると判定してもよい。この場合、所定海域の水深と養殖設備の種類との具体的な関係に基づいて、適した養殖設備の分布を具体的に判定することが可能となる。
【0014】
(8)上記(1)~(7)の何れか一項に記載の養殖適地提示方法は、社会的要因の提示要求を受け付けた場合に、所定海域における社会的要因が存在する区画に関する情報に基づいて、表示画面に表示している地図の所定海域上に当該区画を描画する第3ステップを備えていてもよい。この場合、所定海域の潜在的な養殖適地を、社会的要因を考慮して容易に把握することができる。
【0015】
(9)上記(1)~(8)の何れか一項に記載の養殖適地提示方法では、海洋情報は、所定海域の波高、潮流速度、離岸距離及び水深の分布に関する情報を含み、波高、潮流速度、離岸距離及び水深の何れかの提示要求を受け付けた場合、海洋情報に基づいて、表示画面に表示している地図の所定海域上に、波高、潮流速度、離岸距離及び水深の何れかの分布を描画する第4ステップを備えていてもよい。この場合、所定海域の波高、潮流速度、離岸距離及び水深の何れかの分布をユーザが容易に把握することができる。
【0016】
(10)上記(1)~(9)の何れか一項に記載の養殖適地提示方法では、水質及び/又は水質に影響を与える水質パラメータから魚の成長速度レベルを換算する成長速度モデルが、複数の魚種毎に記憶部に記憶されており、特定の魚種の成長速度レベルの提示要求を受け付けた場合に、所定海域の水質パラメータの分布に関する情報と記憶部に記憶された特定の魚種の成長速度モデルとに基づいて、所定海域の成長速度レベルの分布を判定し、判定した成長速度レベルの分布を、表示画面に表示している地図の所定海域上に描画する第5ステップを備えていてもよい。この場合、所定海域における特定の魚種の成長速度レベル(成長速度の度合)を可視化し、当該成長速度レベルをユーザが容易に把握することができる。
【0017】
(11)上記(10)に記載の養殖適地提示方法は、表示画面に表示している地図の所定海域上に成長速度レベルの分布が描画されている場合、第2ステップでは、養殖適地の分布を成長速度レベルの分布上に重なるように描画してもよい。成長速度レベルの分布は養殖適地の分布よりも広範に亘って描画されることから、これらを表示画面に同時に表示する場合、成長速度レベルの分布をベースにしてその上に重なるように養殖適地の分布を描画することで、養殖適地の分布を把握すると共に、養殖適地の分布に隠れた成長速度レベルの分布を、その周囲の成長速度レベルの分布から類推して把握することができる。成長速度レベル及び養殖適地の両者の分布を、ユーザが同時に好適に把握することが可能となる。
【0018】
(12)本開示の一形態に係る養殖適地提示プログラムは、養殖に適した養殖適地を表示画面を介して提示するプログラムであって、地図情報に基づいて地図を生成し、生成した地図を表示画面に表示する第1ステップと、所定海域の海洋情報に基づいて所定海域の養殖適地の分布を判定し、判定した養殖適地の分布を、表示画面に表示している地図の所定海域上に描画する第2ステップと、をコンピュータに実行させる。
【0019】
この養殖適地提示プログラムにおいても、所定海域における養殖適地の分布を判定し、判定した当該分布を、表示画面に表示している地図の所定海域上に描画する。これにより、潜在的な養殖適地を可視化し、養殖適地をユーザが容易に把握することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、養殖適地をユーザが容易に把握することができる養殖適地提示方法及び養殖適地提示プログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、実施形態に係る養殖適地提示システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1の養殖適地提示サーバの構成を示す図である。
図2(b)は、
図1のユーザ端末の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、初期時における表示部の表示例を示す図である。
【
図4】
図4は、地図表示ステップを例示するフローチャートである。
【
図6】
図6は、表示部の表示例を示す概念図である。
【
図7】
図7は、養殖適地描画ステップを例示するフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図7の分布判定処理を例示するフローチャートである。
【
図9】
図9(a)は、漁業権描画ステップを例示するフローチャートである。
図9(b)は、波高描画ステップを例示するフローチャートである。
【
図10】
図10(a)は、潮流速度描画ステップを例示するフローチャートである。
図10(b)は、水深描画ステップを例示するフローチャートである。
【
図11】
図11(a)は、離岸距離描画ステップを例示するフローチャートである。
図11(b)は、成長速度描画ステップを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
[システムの構成]
図1に示されるように、養殖適地提示システム1は、養殖に適した養殖適地をユーザに視覚的に提示するシステムである。養殖適地は、例えば養殖に適している場所、及び/又は、養殖設備が設置可能な場所を意味する。養殖適地提示システム1は、養殖適地提示サーバ10と、地図データベース20と、ユーザ端末30と、を含む。
【0024】
養殖適地提示サーバ10は、養殖適地をユーザ端末30を介してユーザへ提示するコンピュータである。養殖適地提示サーバ10は、インターネット等の通信ネットワークNを介して、地図データベース20及び1以上のユーザ端末30と通信可能に接続される。通信ネットワークNは、インターネットを含んで構成されてもよいし、イントラネットを含んで構成されてもよい。
【0025】
地図データベース20は、地図情報を記憶する記憶装置である。地図情報は、海域を含む地図に関する情報である。地図情報は、日本地図の一部又は全部に関する情報であってもよいし、世界地図の一部又は全部に関する情報であってもよい。地図情報は、例えば世界測地系の地形図を含んでいてもよい。地図情報における地図の地図投影法は特に限定されず、種々の地図投影法を利用することができる。地図データベース20は、単一のデータベースとして構築されてもよいし、複数のデータベースの集合であってもよい。
【0026】
ユーザ端末30は、ユーザが所有又は利用するコンピュータである。ユーザ端末30の具体的な種類は限定されない。例えば、ユーザ端末30は、据置型又は携帯型のパーソナルコンピュータでもよいし、タブレット端末、高機能携帯電話機(スマートフォン)、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)などの携帯端末でもよい。或いは、複数の端末の組合せが論理的に一つのユーザ端末30として機能してもよい。ユーザ端末30は、ウェブページを表示するためのウェブブラウザ機能を備える。ユーザ端末30は、養殖適地提示サーバ10にアクセスし、養殖適地に関する情報を受信及び表示する。ユーザ端末30では、ウェブブラウザを利用してウェブページを表示することを前提とするが、表示方法は何ら限定されない。
【0027】
養殖適地提示サーバ10の構成を具体的に説明する。
図2(a)に示されるように、養殖適地提示サーバ10は、データベース11及び情報処理モジュール12を備える。データベース11は、所定海域の海洋情報を少なくとも記憶する記憶装置(記憶部)である。所定海域は特に限定されず、例えば九州地方又は東北地方等の一部海域であってもよいし、日本全体の周辺海域であってもよいし、世界の少なくとも一部の海域であってもよい。
【0028】
海洋情報は、所定海域の海象に関する情報と、所定海域の地形に関する情報と、を有する。海象に関する情報は、例えば波高の分布に関する波高情報、及び、潮流速度の分布に関する潮流速度情報を含む。ここでの波高は、有義波高である。有義波高は、ある地点で連続する波を1つずつ観測したときに波高の高い方から順に全体の1/3の個数の波を選び、これらの波高及び周期を平均したものである。地形に関する情報は、例えば水深の分布に関する水深情報、及び、離岸距離に関する離岸距離情報を含む。
【0029】
海洋情報は、所定海域の水質及び/又は水質に影響を与える水質パラメータ情報を含む。ここでの水質パラメータ情報は、水温の分布に関する水温情報を含む。水質パラメータ情報は、特に限定されず、日照時間に関する日照時間情報、濁度に関する濁度情報、及び、塩分濃度に関する塩分濃度情報の少なくとも何れかを含んでいてもよい。水質パラメータ情報は、成長速度が関係する可能性のある他の情報を含んでいてもよい。水温の分布は、例えば1m刻みの各位置における所定水深(例えば2.5m)での平均水温、最高水温、最低水温及び標準偏差等に基づいて作成されていてもよい。例えば水温の分布は、36ヶ月の平均水温を1ヶ月単位で漸化式で計算して求められていてもよい。
【0030】
データベース11は、社会的要因が存在する区画に関する情報を更に記憶する。社会的要因が存在する区画は、漁業権が設定された区画を含む。つまり、社会的要因が存在する区画に関する情報は、漁業権が設定された区画に関する漁業権情報を含む。漁業権は、一定の水面において特定の漁業を一定の期間排他的に営む権利である。漁業権は、漁場を地元漁民が共同で利用して漁業を営む権利である共同漁業権と、一定の区画において養殖業を営む権利である区画漁業権と、大型定置等を営む権利である定置漁業権と、を含む。小型定置を営む権利は共同漁業権に含まれる。
【0031】
データベース11は、水質パラメータから魚の成長速度レベルを換算する成長速度モデルを、複数の魚種毎に記憶する。成長速度レベルは、成長速度の度合いであり、例えば基準時間当たりの魚の成長重量(増加重量)であってもよい。成長速度モデルは、魚の成長予測式に対応する。成長速度モデルは、水質パラメータと魚の成長度合いとの関係から、ある水質パラメータであればどの程度の成長速度が見込めるといったロジックに基づく。成長速度モデルは、特に限定されず、例えば実測、経験、理論、シミュレーション等の少なくとも何れかにより定めることができる。複数の魚種としては、例えばブリ、サーモン、タイ及びマグロ等である。
【0032】
データベース11は、単一のデータベースとして構築されてもよいし、複数のデータベースの集合であってもよい。データベース11に記憶されている情報は、通信ネットワークNを介して取得及び更新してもよいし、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等の記録媒体から取得及び更新してもよい。
【0033】
情報処理モジュール12は、ハードウェア構成要素の一例として、プロセッサ12a、主記憶部12b及び補助記憶部12cを有する。プロセッサ12aは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムを実行する演算装置である。プロセッサの例としてCPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)が挙げられる。主記憶部12bは、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)のうちの少なくとも一つにより構成される。補助記憶部12cは、例えばハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶媒体によって構成される。補助記憶部12cは、養殖適地提示プログラムP1及び各種のデータを記憶する。
【0034】
養殖適地提示サーバ10の各機能要素は、プロセッサ12a又は主記憶部12bの上に養殖適地提示プログラムP1を読み込ませて、プロセッサ12aにそのプログラムを実行させることで実現される。養殖適地提示プログラムP1は、養殖適地をユーザ端末30を介して提示するプログラムである。養殖適地提示プログラムP1は、養殖適地提示サーバ10の各機能要素を実現するためのコードを含む。プロセッサ12aは、養殖適地提示プログラムP1に従って主記憶部12b又は補助記憶部12cにおけるデータの読出し及び書込みを実行する。このような処理により、後述の養殖適地提示方法が実現される。
【0035】
養殖適地提示サーバ10は、一つ又は複数のコンピュータにより構成され得る。複数のコンピュータが用いられる場合には、通信ネットワークを介してこれらのコンピュータが互いに接続されることにより、論理的に一つの養殖適地提示サーバ10が構成される。養殖適地提示プログラムP1は、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。或いは、養殖適地提示プログラムP1は、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークNを介して提供されてもよい。
【0036】
ユーザ端末30の構成を具体的に説明する。
図2(b)に示されるように、ユーザ端末30は、入力部31、表示部(表示画面)32及び制御部33を備える。入力部31は、ユーザから各種の要求を受け付けるインターフェースである。入力部31は、例えば、キーボード、操作ボタン、ポインティングデバイス、タッチパネル、マイクロフォン、センサ及びカメラのうちの少なくとも一つによって構成される。表示部32は、養殖適地に関する情報を含む各種の情報を表示するインターフェースである。表示部32は、例えば、モニタ、タッチパネル及びHMD(Head Mounted Display)のうちの少なくとも一つによって構成される。
【0037】
制御部33は、ハードウェア構成要素の一例として、プロセッサ、主記憶部及び補助記憶部を有する。制御部33は、表示部32の表示を制御する。具体的には、制御部33は、入力部31にて受け付けた各種の要求を、通信ネットワークNを介して養殖適地提示サーバ10の情報処理モジュール12へ送信する。制御部33は、当該要求の送信に応じて情報処理モジュール12から各種の情報を受信し、受信した各種の情報に基づいて表示部32の表示を制御する。
【0038】
[システムの動作]
以上に説明した養殖適地提示システム1では、ユーザ端末30の入力部31を操作して養殖適地提示サーバ10にアクセスすることにより、養殖適地提示サーバ10において養殖適地提示プログラムP1を実行し、以下の養殖適地提示方法に係る処理を実行させる。
【0039】
<基本表示>
図3に示されるように、養殖適地提示サーバ10により、地図データベース20の地図情報に基づいて地図を生成し、生成した地図をユーザ端末30の表示部32に表示させる(地図表示ステップ)。地図表示ステップでは、具体的には、
図4に示されるように、地図情報を地図データベース20から取得する(S1)。取得した地図情報に基づいて、種々の公知手法により地図を生成する(S2)。初期時の地図表示ステップの上記S2では、予め定められた初期位置及び初期尺度の地図を生成する。そして、生成した地図を、表示部32に表示させる(S3)。
【0040】
表示部32に地図を表示させるとともに、養殖適地提示サーバ10により表示部32にログイン画面を表示させる。ユーザがユーザ端末30の入力部31を介してログイン画面にてログインした場合、
図3に示されるように、養殖適地提示サーバ10により、ログアウトを行うログアウトボタン2a、後述の表示設定画面を出現させる設定ボタン2b、表示部32の表示を更新する更新ボタン2c、及び、地図の尺度(表示スケール)を調整する尺度調整ボタン2dを表示部32に表示させる。
【0041】
ユーザが入力部31を介して表示部32に表示させる地図の位置及び/又は尺度を変更した場合には、上記地図表示ステップを再び実行する。この場合の地図表示ステップでは、上記S2において変更後の位置及び/又は尺度の地図を生成する。またこの場合、例えば地図データのデータ転送量に制限があるために、変更後の地図の位置及び/又は尺度によっては地図情報を間引きしてもよい。
【0042】
ユーザが入力部31を介して設定ボタン2bを選択した場合、養殖適地提示サーバ10により、
図5に例示される表示設定画面Hを表示部32に表示させる。表示設定画面Hは、表示部32に表示させる各種情報を設定するための設定画面である。表示設定画面Hは、表示設定画面Hの設定を表示部32の表示へ反映させるための反映ボタン3aと、表示設定画面Hを閉じるための閉ボタン3bと、を含む。
【0043】
<養殖適地分布の描画>
表示設定画面Hは、養殖適地の分布の描画を要求(養殖適地の提示要求)するための適地表示チェックボックス4を含む。ユーザが適地表示チェックボックス4をチェックしている状態で反映ボタン3aを選択した場合、又は、適地表示チェックボックス4をチェックしている状態で地図の位置及び/又は尺度を変更した後に更新ボタン2c(
図3参照)を選択した場合、養殖適地提示サーバ10により、次の養殖適地描画ステップを実行する。
【0044】
養殖適地描画ステップでは、所定海域の海洋情報に基づいて、所定海域の養殖適地の分布を判定する分布判定処理を実行する。分布判定処理では、所定海域を分割してなる複数のメッシュのそれぞれに海洋情報を適宜に割り当て、当該海洋情報に基づいて養殖適地であるかどうかを複数のメッシュ毎に判定する。メッシュは、所定海域を構成する微小な海域である。所定海域を複数のメッシュへ分割するメッシュ分割の手法は、特に限定されず、公知の種々の手法を用いることができる。例えば表示部32に表示されている地図の尺度等に応じて、適宜にメッシュ分割することができる。
【0045】
分布判定処理では、複数のメッシュのそれぞれについて、波高が第1閾値未満、潮流速度が第2閾値未満、及び離岸距離が第3閾値未満の場合に、養殖適地であると判定する。分布判定処理では、複数のメッシュのそれぞれについて養殖適地である場合に、適した1又は複数種の養殖設備を水深に基づいて判定する。第1閾値は、例えば10mである。第2閾値は、例えば2knotである。第3閾値は、10kmである。第1閾値、第2閾値及び第3閾値は、特に限定されない。第1閾値、第2閾値及び第3閾値は、予め設定されてデータベース11に記憶されていてもよい。第1閾値、第2閾値及び第3閾値は、入力部31を介してユーザにより可変な値であってもよい。
【0046】
複数種の養殖設備としては、プラットフォーム型設備、陸上型設備、及び、浮沈式生簀設備が挙げられる。プラットフォーム型設備(以下、単に「PF」とも称する)は、例えば海底に固定されたプラットフォームと、プラットフォーム上に設置された自動給餌設備と、を含む養殖設備である。陸上型設備(以下、単に「陸上」とも称する)は、陸上に設置された自動給餌設備を含む養殖設備である。浮沈式生簀設備(以下、単に「生簀」とも称する)は、浮上及び沈下可能な生簀設備である。
【0047】
養殖適地描画ステップでは、複数のメッシュのそれぞれについて、養殖適地であると判定し且つ離岸距離が第3閾値よりも小さい第4閾値未満の場合、水深が第5閾値未満のときには、PFと陸上とが適すると判定し、水深が第6閾値以上のときには、陸上と生簀とが適すると判定し、水深が第5閾値以上で且つ第6閾値未満のときには、PFと陸上と生簀とが適すると判定する。養殖適地描画ステップでは、複数のメッシュのそれぞれについて、養殖適地であると判定し且つ離岸距離が第3閾値よりも小さい第4閾値以上で且つ第3閾値未満の場合、水深が第5閾値未満であるときにはPFが適すると判定し、水深が第6閾値以上のときには生簀が適すると判定し、水深が第5閾値以上で且つ第6閾値未満のときにはPFと生簀とが適すると判定する。
【0048】
第4閾値は、例えば5kmである。第5閾値は、例えば40mである。第6閾値は、60mである。第4閾値、第5閾値及び第6閾値は、特に限定されない。第4閾値、第5閾値及び第6閾値は、予め設定されてデータベース11に記憶されていてもよい。第4閾値、第5閾値及び第6閾値は、入力部31を介してユーザにより可変な値であってもよい。
【0049】
養殖適地描画ステップでは、分布判定処理で判定した養殖適地の分布を、表示部32に表示している地図の所定海域上に描画する。養殖適地の分布を表示部32に描画する場合、表示部32に表示している地図の所定海域上において、養殖適地であると判定したメッシュに対応する部分を、養殖適地であると判定していないメッシュに対応する部分と区別されるように描画する。具体的には、表示部32に表示している地図の所定海域上において、養殖適地であると判定したメッシュに対応する部分を、適した複数種の養殖設備により区別されるように描画する。
【0050】
例えば、表示部32上における養殖適地の分布の描画では、養殖適地であると判定したメッシュに対応する部分に色付けし、養殖適地であると判定していないメッシュに対応する部分には色付けしない。また例えば、表示部32上における養殖適地の分布の描画では、適した複数種の養殖設備毎に当該メッシュが色分けされるように描画する。複数種の養殖設備毎に色付けされる各色は、変更可能に設定されている。複数種の養殖設備毎に色付けされる各色は、表示設定画面H上においてユーザが入力部31を介して適宜に選択することができる(
図5参照)。表示部32上における養殖適地の分布の描画は、養殖適地提示サーバ10により養殖適地の分布に対応するレイヤである適地レイヤを生成し、その適地レイヤを表示部32上で地図と重ねて表示させることで実現できる。
【0051】
図6は、表示部32の表示例を示す概念図である。
図6に示されるように、養殖適地描画ステップによれば、表示部32に表示された地図の所定海域において、養殖適地の範囲R1が色付きで描画され、それと区別するように養殖不適地の範囲R0が色なしで描画される。さらに、養殖適地描画ステップによれば、養殖適地の範囲について、PFが適している範囲R11と、陸上及び生簀が適している範囲R12と、生簀が適している範囲R13と、が色分けにより区別されて表示される。
【0052】
養殖適地の分布の描画に関する具体的な処理フローについて説明する。まず、反映ボタン3a又は更新ボタン2cが選択された場合に、
図7に示されるように、表示設定画面Hの適地表示チェックボックス4にチェックが入っているか否かを判定する(S21)。上記S21でYESの場合、養殖適地の提示要求(つまり、適地レイヤのリクエスト)がユーザからなされたとして、養殖適地描画ステップを実行する。すなわち、データベース11から海洋情報を取得する(S22)。取得した海洋情報に基づいて、複数のメッシュ毎に養殖適地の分布判定処理を実行する(S22)。分布判定処理の判定結果に基づいて、適した1又は複数種の養殖設備によって区別されるように複数のメッシュ毎に表示部32に描画する(S24)。
【0053】
上記S24では、養殖適地提示サーバ10により適地レイヤを生成し、養殖適地提示サーバ10から適地レイヤをユーザ端末30へ送信(適地レイヤのレスポンス)し、表示部32上で適地レイヤを地図と重ねて表示させる。一方、上記S21でNOの場合、養殖適地の提示要求がなされていないとして、養殖適地の分布の描画を表示部32から削除する(S25)。上記S25では、養殖適地の分布の描画が既に削除されている場合には、その状態を維持する。
【0054】
上記S22の分布判定処理では、
図8に示されるように、まず、判定対象のメッシュの波高が第1閾値未満か否かを判定する(S31)。上記S31でYESの場合、判定対象のメッシュの潮流速度が第2閾値未満か否かを判定する(S32)。上記S32でYESの場合、判定対象のメッシュの離岸距離が第4閾値未満か否かを判定する(S33)。上記S33でNOの場合、判定対象のメッシュの離岸距離が第4閾値以上で且つ第3閾値未満か否かを判定する(S34)。上記S31でNO、上記S32でNO又は上記S34でNOの場合、判定対象のメッシュは養殖不適であるとし、分布判定処理を終了する(S35)。
【0055】
上記S33でYESの場合、判定対象のメッシュについて養殖適地であるとし、判定対象のメッシュの水深について判定する(S36)。上記S36において水深が第5閾値未満の場合、判定対象のメッシュの養殖適地はPF及び陸上が適するとし、分布判定処理を終了する(S37)。上記S36において水深が第5閾値以上で且つ第6閾値未満の場合、判定対象のメッシュの養殖適地はPF、陸上及び生簀が適するとし、分布判定処理を終了する(S38)。上記S36において水深が第6閾値以上の場合、判定対象のメッシュの養殖適地は陸上及び生簀が適すると判定する(S39)。
【0056】
上記S34でYESの場合、判定対象のメッシュについて養殖適地であるとし、判定対象のメッシュの水深について判定する(S40)。上記S40において水深が第5閾値未満の場合、判定対象のメッシュの養殖適地はPFが適するとし、分布判定処理を終了する(S41)。上記S40において水深が第5閾値以上で且つ第6閾値未満の場合、判定対象のメッシュの養殖適地はPF及び生簀が適するとし、分布判定処理を終了する(S42)。上記S40において水深が第6閾値以上の場合、判定対象のメッシュの養殖適地は生簀が適すると判定する(S43)。上記S31~上記S43の処理を、所定海域を構成する複数のメッシュのそれぞれを対象にして実行し、分布判定処理を終了する。
【0057】
<漁業権区画の描画>
図5に示されるように、表示設定画面Hは、漁業権が存在する区画の描画を要求(漁業権の提示要求)するための漁業権チェックボックス5を含む。漁業権チェックボックス5は、共同漁業権の区画を表示させるための共同漁業権チェックボックス5aと、区画漁業権の区画を表示させるための区画漁業権チェックボックス5bと、定置漁業権の区画を表示させるための定置漁業権チェックボックス5cと、を有する。なお、以下、共同漁業権、区画漁業権及び定置漁業権の少なくとも何れかを単に「漁業権」とし、共同漁業権チェックボックス5a、区画漁業権チェックボックス5b及び定置漁業権チェックボックス5cの少なくとも何れかを単に「漁業権チェックボックス5」として説明する場合がある。
【0058】
ユーザが漁業権チェックボックス5をチェックしている状態で反映ボタン3aを選択した場合、又は、漁業権チェックボックス5をチェックしている状態で地図の位置及び/又は尺度を変更した後に更新ボタン2c(
図3参照)を選択した場合、養殖適地提示サーバ10により、漁業権描画ステップ(第3ステップ)を実行する。
【0059】
漁業権描画ステップでは、所定海域を分割してなる複数のメッシュのそれぞれに漁業権情報を割り当て、当該漁業権情報に基づいて、表示部32に表示している地図の所定海域上に漁業権の区画を描画する。具体的には、表示部32に表示している地図の所定海域上において、漁業権の区画に対応する複数のメッシュからなる区画を、それ以外の区画と区別されるように描画する。例えば、漁業権描画ステップでは、漁業権の区画に対応する複数のメッシュを含む区画に対して、境界線(枠線又は縁取り線)を描画する。
【0060】
表示部32上における漁業権の区画の描画は、漁業権の種類によって区別される。描画する当該境界線は、共同漁業権、区画漁業権及び定置漁業権のそれぞれで色分けされる。漁業権の区画の描画は、養殖適地提示サーバ10により漁業権の区画に対応する漁業権レイヤを生成し、漁業権レイヤを表示部32上で地図と重ねて表示させることで実現できる。
図6に示されるように、漁業権描画ステップによれば、表示部32に表示された地図の所定海域において、漁業権の区画W1に対して境界線が描画される。
【0061】
漁業権の分布の描画に関する具体的な処理フローについて説明する。まず、反映ボタン3a又は更新ボタン2cが選択された場合に、
図9(a)に示されるように、表示設定画面Hの漁業権チェックボックス5にチェックが入っているか否かを判定する(S51)。上記S51でYESの場合、漁業権の提示要求(つまり、漁業権レイヤのリクエスト)がユーザからなされたとして、漁業権描画ステップを実行する。すなわち、データベース11から漁業権情報を取得する(S52)。表示部32に表示している地図の所定海域上に漁業権の区画を描画する(S53)。
【0062】
上記S53では、養殖適地提示サーバ10により漁業権レイヤを生成し、養殖適地提示サーバ10から漁業権レイヤをユーザ端末30へ送信(漁業権レイヤのレスポンス)し、表示部32上で当該漁業権レイヤを地図と重ねて表示させる。一方、上記S51でNOの場合、漁業権の提示要求がなされていないとして、漁業権の区画の描画を表示部32から削除する(S54)。上記S54では、漁業権の区画の描画が既に削除されている場合には、その状態を維持する。
【0063】
<波高分布の描画>
図5に示されるように、表示設定画面Hは、波高の分布の描画を要求(波高の提示要求)するための波高表示チェックボックス6を含む。ユーザが波高表示チェックボックス6をチェックしている状態で反映ボタン3aを選択した場合、又は、波高表示チェックボックス6をチェックしている状態で地図の位置及び/又は尺度を変更した後に更新ボタン2c(
図3参照)を選択した場合、養殖適地提示サーバ10により、波高描画ステップを実行する。
【0064】
波高描画ステップでは、所定海域を分割してなる複数のメッシュのそれぞれに波高情報を割り当て、当該波高情報に基づいて、表示部32に表示している地図の所定海域上に波高の分布を描画する。例えば、波高の分布の描画では、表示部32に表示している所定海域の複数のメッシュを、波高の大きさ毎に区別して色付けする。色付けする波高の範囲とその色との組合せは、表示設定画面H上においてユーザが入力部31を介して適宜に設定することができる(
図5参照)。波高の分布の描画は、養殖適地提示サーバ10により波高の分布に対応する波高レイヤを生成し、波高レイヤを表示部32上で地図と重ねて表示させることで実現できる。
【0065】
波高の分布の描画に関する具体的な処理フローについて説明する。まず、反映ボタン3a及び更新ボタン2cが選択された場合に、
図9(b)に示されるように、表示設定画面Hの波高表示チェックボックス6にチェックが入っているか否かを判定する(S61)。上記S61でYESの場合、波高の提示要求(つまり、波高レイヤのリクエスト)がユーザからなされたとして、波高描画ステップを実行する。すなわち、データベース11から波高情報を取得する(S62)。表示部32に表示している地図の所定海域上に波高の分布を描画する(S63)。
【0066】
上記S63では、養殖適地提示サーバ10により波高レイヤを生成し、養殖適地提示サーバ10から波高レイヤをユーザ端末30へ送信(波高レイヤのレスポンス)し、表示部32上で当該波高レイヤを地図と重ねて表示させる。一方、上記S61でNOの場合、波高の提示要求がなされていないとして、波高の分布の描画を表示部32から削除する(S64)。上記S64では、波高の分布の描画が既に削除されている場合には、その状態を維持する。
【0067】
<潮流速度分布の描画>
図5に示されるように、表示設定画面Hは、潮流速度の分布の描画を要求(潮流速度の提示要求)するための潮流速度表示チェックボックス7を含む。ユーザが潮流速度表示チェックボックス7をチェックしている状態で反映ボタン3a及び更新ボタン2c(
図3参照)を選択した場合、又は、潮流速度表示チェックボックス7をチェックしている状態で地図の位置及び/又は尺度を変更した後に反映ボタン3a及び更新ボタン2c(
図3参照)を選択した場合、養殖適地提示サーバ10により、潮流速度描画ステップを実行する。
【0068】
潮流速度描画ステップでは、所定海域を分割してなる複数のメッシュのそれぞれに潮流速度情報を割り当て、当該潮流速度情報に基づいて、表示部32に表示している地図の所定海域上に潮流速度の分布を描画する。例えば、潮流速度の分布の描画では、表示部32に表示している所定海域の複数のメッシュを、潮流速度の大きさ毎に区別して色付けする。色付けする潮流速度の範囲とその色との組合せは、表示設定画面H上においてユーザが入力部31を介して適宜に設定することができる。潮流速度の分布の描画は、養殖適地提示サーバ10により潮流速度の分布に対応する潮流速度レイヤを生成し、潮流速度レイヤを表示部32上で地図と重ねて表示させることで実現できる。
【0069】
潮流速度の分布の描画に関する具体的な処理フローについて説明する。まず、反映ボタン3a及び更新ボタン2cが選択された場合に、
図10(a)に示されるように、表示設定画面Hの潮流速度表示チェックボックス7にチェックが入っているか否かを判定する(S71)。上記S71でYESの場合、潮流速度の提示要求(つまり、潮流速度レイヤのリクエスト)がユーザからなされたとして、潮流速度描画ステップを実行する。すなわち、データベース11から潮流速度情報を取得する(S72)。表示部32に表示している地図の所定海域上に潮流速度の分布を描画する(S73)。
【0070】
上記S73では、養殖適地提示サーバ10により潮流速度レイヤを生成し、養殖適地提示サーバ10からユーザ端末30へ潮流速度レイヤを送信(潮流速度レイヤのレスポンス)し、表示部32上で当該潮流速度レイヤを地図と重ねて表示させる。一方、上記S71でNOの場合、潮流速度の提示要求がなされていないとして、潮流速度の分布の描画を表示部32から削除する(S74)。上記S74では、潮流速度の分布の描画が既に削除されている場合には、その状態を維持する。
【0071】
<水深分布の描画>
図5に示されるように、表示設定画面Hは、水深の分布の描画を要求(水深の提示要求)するための水深表示チェックボックス8を含む。ユーザが水深表示チェックボックス8をチェックしている状態で反映ボタン3a及び更新ボタン2c(
図3参照)を選択した場合、又は、水深表示チェックボックス8をチェックしている状態で地図の位置及び/又は尺度を変更した後に反映ボタン3a及び更新ボタン2c(
図3参照)を選択した場合、養殖適地提示サーバ10により、水深描画ステップを実行する。
【0072】
水深描画ステップでは、所定海域を分割してなる複数のメッシュのそれぞれに水深情報を割り当て、当該水深情報に基づいて、表示部32に表示している地図の所定海域上に水深の分布を描画する。例えば、水深の分布の描画では、表示部32に表示している所定海域の複数のメッシュを、水深の大きさ毎に区別して色付けする。色付けする水深の範囲とその色との組合せは、表示設定画面H上においてユーザが入力部31を介して適宜に設定することができる。水深の分布の描画は、養殖適地提示サーバ10により水深の分布に対応する水深レイヤを生成し、水深レイヤを表示部32上で地図と重ねて表示させることで実現できる。
【0073】
水深の分布の描画に関する具体的な処理フローについて説明する。まず、反映ボタン3a及び更新ボタン2cが選択された場合に、
図10(b)に示されるように、表示設定画面Hの水深表示チェックボックス8にチェックが入っているか否かを判定する(S81)。上記S81でYESの場合、水深の提示要求(つまり、水深レイヤのリクエスト)がユーザからなされたとして、水深描画ステップを実行する。すなわち、データベース11から水深情報を取得する(S82)。表示部32に表示している地図の所定海域上に水深の分布を描画する(S83)。
【0074】
上記S83では、養殖適地提示サーバ10により水深レイヤを生成し、養殖適地提示サーバ10からユーザ端末30へ水深レイヤを送信(水深レイヤのレスポンス)し、表示部32上で当該水深レイヤを地図と重ねて表示させる。一方、上記S81でNOの場合、水深の提示要求がなされていないとして、水深の分布の描画を表示部32から削除する(S84)。上記S84では、水深の分布の描画が既に削除されている場合には、その状態を維持する。
【0075】
<離岸距離分布の描画>
図5に示されるように、表示設定画面Hは、離岸距離の分布の描画を要求(水深の提示要求)するための離岸距離表示チェックボックス9を含む。ユーザが離岸距離表示チェックボックス9をチェックしている状態で反映ボタン3a及び更新ボタン2c(
図3参照)を選択した場合、又は、離岸距離表示チェックボックス9をチェックしている状態で地図の位置及び/又は尺度を変更した後に反映ボタン3a及び更新ボタン2c(
図3参照)を選択した場合、養殖適地提示サーバ10により、離岸距離描画ステップを実行する。
【0076】
離岸距離描画ステップでは、所定海域を分割してなる複数のメッシュのそれぞれに離岸距離情報を割り当て、当該離岸距離情報に基づいて、表示部32に表示している地図の所定海域上に離岸距離の分布を描画する。例えば、離岸距離の分布の描画では、表示部32に表示している所定海域の複数のメッシュを、離岸距離の大きさ毎に区別して色付けする。色付けする離岸距離の範囲とその色との組合せは、表示設定画面H上においてユーザが入力部31を介して適宜に設定することができる。離岸距離の分布の描画は、養殖適地提示サーバ10により離岸距離の分布に対応する離岸距離レイヤを生成し、離岸距離レイヤを表示部32上で地図と重ねて表示させることで実現できる。
【0077】
離岸距離の分布の描画に関する具体的な処理フローについて説明する。まず、反映ボタン3a及び更新ボタン2cが選択された場合に、
図11(a)に示されるように、表示設定画面Hの離岸距離表示チェックボックス9にチェックが入っているか否かを判定する(S91)。上記S91でYESの場合、離岸距離の提示要求(つまり、離岸距離レイヤのリクエスト)がユーザからなされたとして、離岸距離描画ステップを実行する。すなわち、データベース11から離岸距離情報を取得する(S92)。表示部32に表示している地図の所定海域上に離岸距離の分布を描画する(S93)。
【0078】
上記S93では、養殖適地提示サーバ10により離岸距離レイヤを生成し、養殖適地提示サーバ10からユーザ端末30へ離岸距離レイヤを送信(離岸距離レイヤのレスポンス)し、表示部32上で当該離岸距離レイヤを地図と重ねて表示させる。一方、上記S91でNOの場合、離岸距離の提示要求がなされていないとして、離岸距離の分布の描画を表示部32から削除する(S94)。上記S94では、離岸距離の分布の描画が既に削除されている場合には、その状態を維持する。
【0079】
<成長速度レベル分布の描画>
図5に示されるように、表示設定画面Hは、成長速度レベルの分布の描画を要求(成長速度レベルの提示要求)するための成長速度レベルチェックボックス50を含む。ユーザが成長速度レベルチェックボックス50をチェックしている状態で反映ボタン3a及び更新ボタン2c(
図3参照)を選択した場合、又は、成長速度レベルチェックボックス50をチェックしている状態で地図の位置及び/又は尺度を変更した後に反映ボタン3a及び更新ボタン2c(
図3参照)を選択した場合、養殖適地提示サーバ10により、成長速度描画ステップを実行する。
【0080】
成長速度描画ステップでは、所定海域を分割してなる複数のメッシュのそれぞれに水質パラメータ情報を割り当てる。複数のメッシュ毎の水質パラメータ情報とデータベース11に記憶された特定の魚種の成長速度モデルとに基づいて、複数のメッシュ毎の成長速度レベルを判定する。表示部32に表示している地図の所定海域上に、判定した成長速度レベルの分布を描画する。例えば、成長速度レベルの分布の描画では、表示部32に表示している所定海域の複数のメッシュを、成長速度レベルの大きさ毎に区別して色付けする。
【0081】
色付けする成長速度レベルとその色との組合せは、表示設定画面H上においてユーザが入力部31を介して適宜に設定することができる。成長速度レベルは、離散値ではなく連続値を用いることができる。この場合、例えば成長速度レベルが5kgのときの色を第1色とし、成長速度レベルが6kgのときの色を第2色として表示設定画面H上で設定した場合、成長速度レベルが5.5kgのときの色については、第1色と第2色との間の中間色となる。成長速度レベルの分布の描画は、養殖適地提示サーバ10により成長速度レベルの分布に対応する成長速度レイヤを生成し、成長速度レイヤを表示部32上で地図と重ねて表示させることで実現できる。
【0082】
成長速度レベルの描画に関する具体的な処理フローについて説明する。まず、反映ボタン3a及び更新ボタン2cが選択された場合に、
図11(b)に示されるように、表示設定画面Hの成長速度レベルチェックボックス50にチェックが入っているか否かを判定する(S111)。上記S111でYESの場合、成長速度レベルの提示要求(つまり、成長速度レイヤのリクエスト)がユーザからなされているとして、成長速度描画ステップを実行する。すなわち、データベース11から水質パラメータ情報を取得する(S112)。水質パラメータを成長速度モデルに入力し、所定海域上における成長速度レベルの分布を判定する(S113)。表示部32に表示している地図の所定海域上に、成長速度レベルの分布を描画する(S114)。
【0083】
上記S114では、養殖適地提示サーバ10により成長速度レイヤを生成し、養殖適地提示サーバ10からユーザ端末30へ成長速度レイヤを送信(成長速度レイヤのレスポンス)し、表示部32上で当該成長速度レイヤを地図と重ねて表示させる。一方、上記S111でNOの場合、成長速度レベルの提示要求がなされていないとして、成長速度レベルの分布の描画を表示部32から削除する(S115)。上記S115では、成長速度レベルの分布の描画が既に削除されている場合には、その状態を維持する。
【0084】
<各描画の重ね合わせ>
表示設定画面Hでは、漁業権チェックボックス5は、他のチェックボックスと同時にチェックが入っている状態とすることが可能である。つまり、漁業権の区画は、他の描画と同時に表示部32上に描画可能である。また、表示設定画面Hでは、成長速度レベルチェックボックス50は、他のチェックボックスと同時にチェックを入れることが可能である。つまり、成長速度レベルの分布は、他の描画と同時に表示部32上に描画可能である。
【0085】
一方、表示設定画面Hでは、適地表示チェックボックス4、波高表示チェックボックス6、潮流速度表示チェックボックス7、水深表示チェックボックス8及び離岸距離表示チェックボックス9は、これらの何れか一つのみチェックが入っている状態とすることが可能となる。適地表示チェックボックス4、波高表示チェックボックス6、潮流速度表示チェックボックス7、水深表示チェックボックス8及び離岸距離表示チェックボックス9のうちの何れかにチェックを入れると、その残りの何れか入っていたチェックは外される。つまり、養殖適地、波高、潮流速度、水深、離岸距離及び成長速度レベルの分布は、これらの1つが選択的に表示部32に表示可能である。
【0086】
本実施形態では、表示部32において成長速度レベルの分布と養殖適地の分布との双方を描画する場合、養殖適地の分布(養殖適地レイヤ)を成長速度レベルの分布(成長速度レイヤ)上に重なるように描画する。換言すると、表示部32に表示している地図の所定海域上に成長速度レベルの分布が描画されている場合、養殖適地描画ステップでは、養殖適地の分布を成長速度レベルの分布上に重なるように描画する。この場合、入力部31を介してユーザが養殖適地の分布をカーソル等で触れたときに(マウスオーバ時に)、当該養殖適地の分布の描画の一部/全部を一次的に消去し、成長速度レベルの分布を表示させてもよい。
【0087】
[表示例]
図12は、表示部32の表示例を示す図である。
図12の表示例は、養殖適地の分布、共同漁業権の区画、区画漁業権の区画及び定置漁業権の区画を、表示部32上に描画させた例である。表示部32には、日本の一部の沿岸海域が表示されているとともに、当該沿岸海域において、養殖適地が色付けされている。色付けされた養殖適地の当該色は、複数種の養殖設備毎に色分けされている。また、表示部32には、沿岸海域における漁業権の区画が、色付きの境界線で囲まれるように描画されている。色付けされた境界線の色は、共同漁業権、区画漁業権及び定置漁業権で分けられている。表示部32には、養殖適地及び漁業権の凡例が表示されている。
【0088】
図13は、表示部32の他の表示例を示す図である。
図13の表示例は、養殖適地の分布及び成長速度レベルの分布を表示部32上に描画させた例である。表示部32には、九州地方の周辺海域が表示されているとともに、当該周辺海域において、養殖適地が色付けてされている。色付けされた養殖適地の当該色は、複数種の養殖設備毎に色分けされている。また、表示部32には、周辺海域におけるブリの成長速度レベルの分布が、成長速度レベルの大きさ毎に区別して色付けされている。表示部32には、養殖適地及び成長速度レベルの凡例が表示されている。
【0089】
図14は、表示部32の更に他の表示例を示す図である。
図14の表示例は、養殖適地の分布、成長速度レベルの分布及び漁業権の区間を表示部32上に描画させた例である。日本の一部の沿岸海域が表示されているとともに、当該沿岸海域において、養殖適地が色付けされている。色付けされた養殖適地の当該色は、複数種の養殖設備毎に色分けされている。また、表示部32には、沿岸海域における漁業権の区画が、色付きの境界線で囲まれるように描画されている。色付けされた境界線の色は、共同漁業権、区画漁業権及び定置漁業権で分けられている。表示部32には、沿岸海域におけるギンザケの成長速度レベルの分布が、成長速度レベルの大きさ毎に区別して色付けされている。表示部32には、養殖適地、漁業権及び成長速度レベルの凡例が表示されている。
【0090】
[効果]
以上、本実施形態に係る養殖適地提示システム1、養殖適地提示プログラムP1及び養殖適地提示方法では、所定海域における養殖適地の分布を判定し、判定した当該分布を、表示部32に表示している地図の所定海域上に描画する。これにより、潜在的な養殖適地を可視化し、養殖適地をユーザが容易に把握することが可能となる。UI(ユーザーインターフェイス)、UX(ユーザーエクスペリエンス)及びユーザビリティに配慮し、所定回帰の養殖に対するポテンシャルを誰もが簡単に理解及び把握することが可能となる。
【0091】
本実施形態では、海洋情報は、所定海域の海象に関する情報と、所定海域の地形に関する情報と、を含む。この場合、所定海域の海象及び地形が養殖適地の適否と相関があるという知見を利用して、養殖適地の分布を判定することが可能となる。
【0092】
本実施形態において、養殖適地描画ステップでは、所定海域を分割してなる複数のメッシュのそれぞれについて養殖適地であるかどうかを判定し、表示部32に表示している地図の所定海域上において、養殖適地であると判定したメッシュに対応する部分を、養殖適地であると判定していないメッシュに対応する部分と区別されるように描画する。この場合、潜在的な養殖適地の可視化を具体的に実現できる。
【0093】
本実施形態では、海洋情報は、所定海域の波高、潮流速度及び離岸距離の分布に関する情報を含む。養殖適地描画ステップでは、複数のメッシュのそれぞれについて、波高が第1閾値未満、潮流速度が第2閾値未満、及び離岸距離が第3閾値未満の場合に、養殖適地であると判定する。この場合、所定海域の波高、潮流速度及び離岸距離が養殖適地の適否に関係があるという知見を利用して、養殖適地の分布を具体的に判定することが可能となる。
【0094】
本実施形態では、海洋情報は、水深情報を含む。養殖適地描画ステップでは、複数のメッシュのそれぞれについて、養殖適地である場合に、適した1又は複数種の養殖設備を水深に基づいて判定し、表示部32に表示している地図の所定海域上において、養殖適地であると判定したメッシュに対応する部分を、適した1又は複数種の養殖設備により区別されるように描画する。この場合、所定海域の水深が、適した養殖設備の種類に関係があるという知見を利用して、適した養殖設備の分布を判定及び描画することができる。
【0095】
本実施形態において、養殖適地描画ステップでは、複数のメッシュのそれぞれについて、養殖適地であると判定し且つ離岸距離が第3閾値よりも小さい第4閾値未満の場合、水深が第5閾値未満のときには、PF及び陸上が適すると判定し、水深が第6閾値以上のときには、陸上及び生簀が適すると判定し、水深が第5閾値以上で且つ第6閾値未満のときには、PF、陸上及び生簀が適すると判定する。この場合、所定海域の水深と養殖設備の種類との具体的な関係に基づいて、適した養殖設備の分布を具体的に判定することができる。
【0096】
本実施形態において、養殖適地描画ステップでは、複数のメッシュのそれぞれについて、養殖適地であると判定し且つ離岸距離が第3閾値よりも小さい第4閾値以上で且つ第3閾値未満の場合、水深が第5閾値未満であるときには、PFが適すると判定し、水深が第6閾値以上のときには生簀が適すると判定し、水深が第5閾値以上で且つ第6閾値未満のときにはPF及び生簀が適すると判定する。この場合、所定海域の水深と養殖設備の種類との具体的な関係に基づいて、適した養殖設備の分布を具体的に判定することが可能となる。
【0097】
本実施形態は、漁業権の区画の提示要求を受け付けた場合に、所定海域における漁業権情報に基づいて、表示部32に表示している地図の所定海域上に漁業権の区画を描画する漁業権描画ステップを備える。この場合、所定海域の潜在的な養殖適地を、社会的要因である漁業権を考慮して容易に把握することができる。
【0098】
本実施形態では、海洋情報は、所定海域の波高、潮流速度、離岸距離及び水深の分布に関する情報を含む。本実施形態は、波高、潮流速度、離岸距離及び水深の何れかの提示要求を受け付けた場合、海洋情報に基づいて、表示部32に表示している地図の所定海域上に、波高、潮流速度、離岸距離及び水深の何れかの分布を描画するステップを備える。この場合、所定海域の波高、潮流速度、離岸距離及び水深の何れかの分布をユーザが容易に把握することができる。
【0099】
本実施形態では、水質パラメータから魚の成長速度レベルを換算する成長速度モデルが、複数の魚種毎にデータベース11に記憶されている。本実施形態では、特定の魚種の成長速度レベルの提示要求を受け付けた場合に、所定海域の水質パラメータの分布に関する情報とデータベース11に記憶された成長速度モデルとに基づいて、所定海域の成長速度レベルの分布を判定し、判定した成長速度レベルの分布を、表示部32に表示している地図の所定海域上に描画する成長速度描画ステップを備える。この場合、所定海域における特定の魚種の成長速度レベルを可視化し、当該成長速度レベルをユーザが容易に把握することができる。成長速度レベル及び養殖適地の両者の掛け合わせ、養殖適地としての有望度を判定及び可視化することが可能となる。総合的な観点での養殖適地を判定できる。
【0100】
本実施形態は、表示部32に表示している地図の所定海域上に成長速度レベルの分布が描画されている場合、養殖適地描画ステップでは、養殖適地の分布を成長速度レベルの分布上に重なるように描画する。成長速度レベルの分布は養殖適地の分布よりも広範に亘って描画されることから、これらを表示画面に同時に表示する場合、成長速度レベルの分布をベースにしてその上に重なるように養殖適地の分布を描画することで、養殖適地の分布を把握すると共に、養殖適地の分布に隠れた成長速度レベルの分布を、その周囲の成長速度レベルの分布から類推して把握することができる。成長速度レベル及び養殖適地の両者の分布をユーザが同時に好適に把握することが可能となる。
【0101】
本実施形態では、養殖適地、成長速度レベル、社会的要因、波高、潮流速度、離岸距離及び水深のそれぞれの表示について、表示設定画面H上で適宜にオン及びオフすることができる。
【0102】
[変形例]
本開示は、上記実施形態に限定されない。
【0103】
上記実施形態では、海洋情報に含まれる情報は特に限定されない。海洋情報は、潮位の分布に関する情報と、塩分濃度の分布に関する情報と、日射量(日射時間)の分布に関する情報と、透明度の分布に関する情報と、二酸化炭素濃度の分布に関する情報と、溶存酸素濃度の分布に関する情報と、ph(水素イオン濃度)に関する情報と、気温、気圧、湿度、降水量、海面高度、波浪、風向及び/又は風速に関する情報と、の少なくとも何れかを含んでいてもよい。これらの少なくとも何れかの提示要求を受け付けた場合、表示部32に表示している地図の所定海域上に、これらの少なくとも何れかの分布を描画するステップを備えていてもよい。
【0104】
上記実施形態では、社会的要因は特に限定されない。社会的要因としては、例えば、港からの距離、他の養殖設備との距離、消費地からの距離、加工場等の養殖関連施設の有無、周辺の労働人口、航路、自然公園(国立公園、国定公園)、自然環境保全地域、海面、海中、海底に存在し且つ地図に記載ない障害物(防波堤、がれき、海底ケーブル及び送水管等)の少なくとも何れかであってもよい。社会的要因としては、定期船航路又は海底障害物(沈船等)のノックアウトファクター(養殖設備の設置が不能な要因)であってもよい。
【0105】
ところで、例えば生産面での魚の適地を容易に把握するべく、所定領域における魚の成長速度レベルの分布を容易に把握することが求められている。本開示は、所定海域における魚の成長速度レベルの分布を容易に把握することができる成長速度提示方法及び成長速度提示プログラムを提供することを目的とする。
【0106】
本開示は、魚の成長速度レベルを表示画面を介して提示する方法であって、
地図情報に基づいて地図を生成し、生成した前記地図を前記表示画面に表示する第1ステップと、
前記所定海域の水質及び/又は水質に影響を与える水質パラメータの分布に関する情報と、前記水質パラメータから魚の成長速度レベルを換算する成長速度モデルと、に基づいて前記所定海域の前記成長速度レベルの分布を判定し、判定した前記成長速度レベルの分布を、前記表示画面に表示している前記地図の前記所定海域上に描画する第2ステップと、を備える、成長速度提示方法。
【0107】
本開示は、魚の成長速度レベルを表示画面を介して提示するプログラムであって、
地図情報に基づいて地図を生成し、生成した前記地図を前記表示画面に表示する第1ステップと、
所定海域の水質及び/又は水質に影響を与える水質パラメータの分布に関する情報と、前記水質パラメータから前記魚の成長速度レベルを換算する成長速度モデルと、に基づいて前記所定海域の前記成長速度レベルの分布を判定し、判定した前記成長速度レベルの分布を、前記表示画面に表示している前記地図の前記所定海域上に描画する第2ステップ、を備える、成長速度提示プログラム。
【0108】
上記実施形態において、表示部32に描画する態様は色付け及び境界線の付与に限定されず、種々の態様であってもよく、互いに区別して描画すればよい。互いに区別して描画する態様としては、上記実施形態の態様に代えてもしくは加えて、例えば、ハッチングを用いてもよいし、点滅等のエフェクトを用いてもよい。上記実施形態における養殖設備は、PF、陸上及び生簀に特に限定されず、その他の養殖設備であってもよい。上記実施形態では、例えば音声又は表示により最適な養殖適地を提案又はガイドしてもよい。
【0109】
上記実施形態において、表示設定画面Hでは、適地表示チェックボックス4、波高表示チェックボックス6、潮流速度表示チェックボックス7、水深表示チェックボックス8及び離岸距離表示チェックボックス9の少なくとも2つ以上に同時にチェックが入っていてもよい。この場合、養殖適地の分布、波高の分布、潮流速度の分布、水深の分布、離岸距離の分布及び成長速度レベルの分布の少なくとも2つを、表示部32に同時に表示してもよい。上記実施形態では、養殖適地の分布を描画せずに、社会的要因が存在する区画と波高の分布と潮流速度の分布と水深の分布と離岸距離の分布と成長速度レベルの分布とのうちの少なくとも何れかを、表示部32に表示させてもよい。
【0110】
上記において、地図表示ステップが第1ステップに対応し、養殖適地描画ステップが第2ステップに対応し、漁業権描画ステップが第3ステップに対応、波高描画ステップと潮流速度描画ステップと水深描画ステップと離岸距離描画ステップとが第4ステップに対応し、成長速度描画ステップが第5ステップに対応する。上記実施形態又は変形例における各構成は、互いに任意に適用することができる。上記実施形態又は変形例における各構成の一部は、本発明の一態様の要旨を逸脱しない範囲で適宜に省略可能である。
【符号の説明】
【0111】
1…養殖適地提示システム、10…養殖適地提示サーバ(コンピュータ)、11…データベース(記憶部)、12…情報処理モジュール、20…地図データベース、30…ユーザ端末、31…入力部、32…表示部(表示画面)、33…制御部、P1…養殖適地提示プログラム。