(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141873
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】溶鋼の脱酸方法
(51)【国際特許分類】
C21C 7/04 20060101AFI20241003BHJP
C21C 7/10 20060101ALI20241003BHJP
C21C 7/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C21C7/04 B
C21C7/10 A
C21C7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053729
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】村井 剛
【テーマコード(参考)】
4K013
【Fターム(参考)】
4K013BA08
4K013CE01
4K013CE06
4K013EA19
4K013FA00
(57)【要約】
【課題】Al又はAl合金を添加して行う溶鋼の脱酸方法において、Al又はAl合金の添加のための専用の設備を必要とせず、Al又はAl合金を添加した際における損失Al量を低位に安定させることが可能な溶鋼の脱酸方法を提供する。
【解決手段】真空脱ガス装置を用いて、Al又はAl合金を添加して溶鋼を脱酸する溶鋼の脱酸方法であって、前記Al又はAl合金の添加速度と、溶鋼中溶存酸素濃度と、溶鋼環流量との関係に基づいて、前記Al又はAl合金を溶鋼に添加する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空脱ガス装置を用いて、Al又はAl合金を添加して溶鋼を脱酸する溶鋼の脱酸方法であって、前記Al又はAl合金の添加速度と、溶鋼中溶存酸素濃度と、溶鋼環流量との関係に基づいて、前記Al又はAl合金を溶鋼に添加する、溶鋼の脱酸方法。
【請求項2】
以下の(1)式を満たすように前記Al又はAl合金を溶鋼に添加する、請求項1に記載の溶鋼の脱酸方法。
F/(C/106×Q)≧24 ・・・(1)
Q=7438×G1/3×D4/3×(ln(101325/P))1/3/W・・・(2)
ここで、FはAlまたはAl合金の添加速度(kg/s・t)、Cは溶鋼中溶存酸素濃度(ppm)、Qは溶鋼環流量(kg/s・t)、Gは環流ガス流量(Nm3/s)、Dは浸漬管径(m)、Pは真空槽内真空度(Pa)、Wは溶鋼量(ton)を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空脱ガス装置を用いて溶鋼中の酸素を除去する方法に関し、詳しくは、Al又はAl合金を溶鋼に添加して溶鋼を脱酸する溶鋼の脱酸方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空脱ガス装置を用いて行われる溶鋼の脱酸は、Al又はAl合金(以下、単に「Al」という。)を溶鋼に添加して行われる。溶鋼に添加されるAlの添加量は、溶鋼中の溶存酸素を脱酸するために必要とされる量、及び、溶鋼の成分調整のために必要とされる量に基づいて決定される。
【0003】
ここで、溶鋼に添加されるAlは、溶鋼中の各種の元素に比べて比重が小さい。このため、真空脱ガス装置を用いた精錬プロセスに際し、溶鋼にAlを添加すると、Alと大気との反応や、Alとスラグとの反応が発生すると共に、Alの蒸発も発生する。そのため、Alの比重や蒸発の発生を前提として、溶鋼へのAlの添加量を多くする必要がある。溶鋼へのAlの添加による溶鋼の脱酸方法については、以下の通り、従来から検討がなされている。
【0004】
特許文献1には、比重調整材と脱酸剤(Al)とを入れた容器を溶鋼中に装入する方法が開示されている。更に、添加するAlの形態について、非特許文献1にはワイヤ状にしたAl線材を高速度で押し込む方法が、非特許文献2には粉状のAl粉を吹き込む方法が、非特許文献3には溶融Alを注入する方法が開示されている。
【0005】
また、一次精錬後の二次精錬である真空脱ガス装置においては、高真空での脱酸処理により、Alの蒸発量が更に多くなると考えられている。このため、特許文献2には、解決策として、Alを溶鋼に添加するときの圧力Vを20Torr<V≦760Torrとする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭53-64613号公報
【特許文献2】特開平11-172322号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「鉄と鋼」、vol.56、No.11、(1970)、S430
【非特許文献2】「鉄と鋼」、vol.66、No.4、(1980)、S267
【非特許文献3】「鉄と鋼」、vol.69、No.4、(1983)、S189
【非特許文献4】「鉄と鋼」、vol.73、No.4、(1987)、S176
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、比重調整材及び脱酸剤(Al)の容器への収納及び比重の調整作業が必要となり、溶鋼へのAlの添加工程について、作業がより煩雑となる。また、非特許文献1~3に開示された方法では、Alを添加するための専用の設備が必要となる。特許文献2に開示された方法では、溶鋼中の溶存酸素とAlとの反応による発熱が考慮されておらず、また、開示された圧力の範囲について、溶鋼の脱酸処理において溶鋼の還流が困難となる範囲が含まれている。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、Al又はAl合金を添加して行う溶鋼の脱酸方法において、Al又はAl合金の添加のための専用の設備を必要とせず、Al又はAl合金を添加した際における損失Al量を低位に安定させることが可能な溶鋼の脱酸方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨は、以下のとおりである。
【0011】
[1]真空脱ガス装置を用いて、Al又はAl合金を添加して溶鋼を脱酸する溶鋼の脱酸方法であって、前記Al又はAl合金の添加速度と、溶鋼中溶存酸素濃度と、溶鋼環流量との関係に基づいて、前記Al又はAl合金を溶鋼に添加する、溶鋼の脱酸方法。
[2]以下の(1)式を満たすように前記Al又はAl合金を溶鋼に添加する、[1]に記載の溶鋼の脱酸方法。
F/(C/106×Q)≧24 ・・・(1)
Q=7438×G1/3×D4/3×(ln(101325/P))1/3/W・・・(2)
ここで、FはAlまたはAl合金の添加速度(kg/s・t)、Cは溶鋼中溶存酸素濃度(ppm)、Qは溶鋼環流量(kg/s・t)、Gは環流ガス流量(Nm3/s)、Dは浸漬管径(m)、Pは真空槽内真空度(Pa)、Wは溶鋼量(ton)を示す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、Al又はAl合金を添加して行う溶鋼の脱酸方法において、Al又はAl合金の添加のための専用の設備を必要とせず、Al又はAl合金を添加した際における損失Al量を低位に安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】真空脱ガス装置の一例の概略縦断面図である。
【
図2】調整比と損失Al量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を具体的に説明する。
図1に、真空脱ガス装置1の一例の概略縦断面図を示す。真空脱ガス装置1は、RH真空脱ガス装置であってよい。真空脱ガス装置1は、取鍋2と、真空槽5と、上昇側浸漬管6と、下降側浸漬管7と、環流用ガス吹き込み管8と、ダクト9と、原料投入口10とを有する。
【0015】
先ず、転炉にて溶銑の脱炭精錬を行い、当該脱炭精錬により得られた溶鋼3及びスラグ4を取鍋2に出鋼する。溶鋼3は未脱酸状態であってよい。また、必要に応じて取鍋2内の溶鋼3を覆っているスラグ4上にAl含有スラグ改質剤を添加してもよい。Al含有スラグ改質剤は、スラグ4の上方から分散して添加可能である限り、専用の添加設備等を用いる必要はない。
【0016】
真空脱ガス装置1では、溶鋼3を収容した取鍋2を昇降装置(図示せず)にて上昇させ、上昇側浸漬管6及び下降側浸漬管7を取鍋2内の溶鋼3に浸漬させる。そして、真空槽5の内部をダクト9に連結される排気装置(図示せず)にて排気して真空槽5の内部を減圧するとともに、環流用ガス吹き込み管8から上昇側浸漬管6の内部に環流用ガスを吹き込む。真空槽5の内部が減圧されると、取鍋2内の溶鋼3は、大気圧と真空槽5内の圧力(真空度)との差に比例して上昇し、真空槽5内に流入する。また、取鍋2内の溶鋼3は、環流用ガス吹き込み管8から吹き込まれる環流用ガスのガス気泡11によるガスリフト効果によって、環流用ガスのガス気泡11とともに上昇側浸漬管6を上昇して真空槽5の内部に流入する。環流用ガスとしては、一般的に、アルゴンガスが使用される。
【0017】
圧力差及びガスリフト効果によって真空槽5の内部に流入した溶鋼3は、下降側浸漬管7を経由して取鍋2に戻る。このように、取鍋2から真空槽5に流入し、その後、真空槽5から取鍋2に戻る溶鋼3の流れを「環流」と呼ぶ。このように、溶鋼3は環流を形成して、溶鋼3に真空脱ガス精錬が施される。
【0018】
溶鋼3が未脱酸の状態においては、真空脱ガス精錬により溶鋼3の脱炭反応が進行する。そして、脱炭終了後に、溶鋼3の溶鋼中溶存酸素濃度を測定する。また、測定された溶鋼中溶存酸素濃度に基づいて脱酸に必要とされるAlの添加量(化学量論分)と、溶鋼3の成分調整として必要とされるAlの添加量と、Alの蒸発等に伴って失われるAl量(以下、「損失Al量」という。)に相当するAlの添加量との、合計Al量を算出する。そして、算出された合計Al量に基づいて、原料投入口10を介して、真空槽5の内部の溶鋼3にAlを添加する。この結果、溶鋼3の脱酸が進行する。その後、溶鋼3については、鋳造後の鋳片としての成分調整、温度の調整、溶鋼中の介在物(アルミナ等)の除去等が行われる。なお、損失Al量としては、大気との反応により損失する量と、スラグ4との反応により損失する量と、蒸発によって損失する量とが、含まれる。
【0019】
本発明者は、溶鋼3に添加するAlの添加量(合計Al量)は、脱酸に必要とされるAlの添加量(化学量論分)と、溶鋼3の成分調整として必要とされるAlの添加量と、Alの蒸発等に伴って失われる損失Al量とに大別されると考えた。更に、損失Al量は、スラグ4に含まれる酸化物との反応に伴う酸化、大気との接触に伴う酸化、及び、真空槽5の内部におけるAlの蒸発により、損失されるとの結論に至った。そして、Alの蒸発による損失量(以下、「Al蒸発損失量」という。)を低減させるために、真空槽5の内部の真空度、真空槽5の内部に流入した溶鋼3の温度、溶鋼3におけるAlの濃度(以下、「Al濃度」という。)に着目した。
【0020】
真空槽5の内部の真空度は、ダクト9に連結される排気装置の排気の出力を低下させることで低真空化が可能となる。本発明者は、真空槽5の内部の低真空化を図ることで、Al蒸発損失量を低下させることが可能と考えた。
【0021】
真空槽5の内部に流入した溶鋼3の温度は、Alの添加量が多くなる程、添加されたAlの顕熱により温度が低下する。一方、溶鋼3の温度は、溶鋼中溶存酸素濃度が高い場合には、添加されたAlとの反応(脱酸)が発熱反応であるため上昇する。即ち、溶鋼3の温度は、添加されるAlの顕熱と、脱酸による発熱反応とのバランスによって決定される。このため、本発明者は、真空槽5において、溶鋼3の温度は、溶鋼3に添加されるAlの添加速度と、取鍋2から流入してくる溶鋼3の溶鋼中溶存酸素濃度と、溶鋼3の溶鋼還流量とのバランスによって決定されると考えた。そして、真空槽5の内部の溶鋼3の低温化を図ることで、Al蒸発損失量を低下させることが可能と考えた。更に、溶鋼3の低温化のため、Alの添加速度を速くすること、溶鋼3の溶鋼中溶存酸素濃度を低くすること、溶鋼3の溶鋼還流量を少なくすることが有効であると考えた。
【0022】
一方、溶鋼3におけるAl濃度は、Alの添加速度が速くなるほど多くなり、Al蒸発損失量が多くなる。このため、本発明者は、Alの添加速度を遅くすることでAl濃度の増加が抑制され、Al蒸発損失量を低下させる可能性があるとも考えた。
【0023】
これらの検討結果を踏まえ、Al蒸発損失量の低減を図るため、増減させることにより何れの効果も考えられるAlの添加速度と、減少させることが有効と考えられる溶鋼中溶存酸素濃度及び溶鋼還流量との比(以下、「調整比」という。)を算出し、Al蒸発損失量との関係を調査した。Alの添加速度Fと、溶鋼中溶存酸素濃度C及び溶鋼還流量Qとの比[-(無次元数)](調整比)は、下記の(3)式を用いて算出した。
【0024】
F/(C/106×Q) ・・・(3)
ここで、FはAlまたはAl合金の添加速度(kg/s・t)、Cは溶鋼中溶存酸素濃度(ppm)、Qは溶鋼環流量(kg/s・t)を示す。
【0025】
また、溶鋼環流量Qは、下記の(2)式(非特許文献4参照)を用いて算出した。(2)式に示す通り、真空槽内真空度Pは、溶鋼環流量Qに影響を与える因子として用いた。真空槽内真空度Pは、真空槽5の真空度により溶鋼3の溶鋼環流量が変化するとの関係性を考慮して、Al蒸発損失量の低減を図る上での効果の共通性から、溶鋼環流量Qを決定する因子として使用した。
【0026】
Q=7438×G1/3×D4/3×(ln(101325/P))1/3/W・・・(2)
ここで、Gは環流ガス流量(Nm3/s)、Dは浸漬管径(m)、Pは真空槽内真空度(Pa)、Wは溶鋼量(ton)を示す。
【0027】
次に、真空脱ガス装置1における操業条件を変化させ、(3)式により算出される値(調整比)と損失Al量(kg/t)との関係を調査した。調査に当たっては、先ずAlの添加前に溶鋼中溶存酸素濃度を測定し、その後、Alを所定の添加速度で真空槽5の内部の溶鋼3へ添加し、溶鋼3のサンプルを採取し、Al濃度の分析を行った。そして、添加したAlの添加量から、脱酸に必要とされたAlの添加量(化学量論比算出)と、サンプル中のAl濃度から算出されるAlの溶存量(成分調整として必要とされたAlの添加量に相当)とを差し引くことで得られた量を、損失Al量(kg/t)とした。
【0028】
その結果、調整比の値の増加に伴い、損失Al量が減少することが判明した。そして、調整比の値が24以上となる状態において、損失Al量が一定の値を示すことが判明した。即ち、以下に(1)式として示す通り、Alの添加速度Fと、溶鋼中溶存酸素濃度C及び溶鋼還流量Qとの比が24以上となる関係を満たす場合に、損失Al量を低位に安定させられること、即ち損失Al量の値の変動を抑制できることが判明した。換言すれば、Alの添加速度Fと、溶鋼中酸素濃度C及び溶鋼還流量Qとの比が24以上となるように操業条件を調整することで、損失Al量を最小化することができる。この場合、損失Al量に含まれるAl蒸発損失量も最小の値となる。損失Al量には、Al蒸発損失量以外にも、スラグ4に含まれる酸化物との反応に伴う酸化、大気との接触に伴う酸化によって消費される量も含まれる。
【0029】
F/(C/106×Q)≧24 ・・・(1)
【0030】
従って、真空脱ガス装置1により溶鋼3を脱酸する脱酸方法において、真空槽5の内部の溶鋼3にAlを添加する際に、Alの添加速度Fと、溶鋼中酸素濃度C及び溶鋼還流量Qとの比が24以上となるように操業条件を調整することで、損失Al量を最小限に抑えることが可能となる。
【0031】
つまり、真空脱ガス装置1を用いて、Al又はAl合金を添加して溶鋼3を脱酸する溶鋼の脱酸方法において、Alの添加速度Fと、溶鋼中溶存酸素濃度Cと、溶鋼環流量Qとの関係に基づいて、Alを溶鋼3に添加することで、損失Al量を最小限に抑えることができる。即ち、溶鋼3へ添加するAlの添加量について、Al又はAl合金の添加のための専用の設備を必要とせず、Al又はAl合金を添加した際における損失Al量を低位に安定させることが可能となる。
【0032】
(1)式の左辺には上限値を設ける必要はないものの、真空脱ガス装置1での操業に悪影響が出ない範囲での値を設定すればよい。Alの添加速度F及び真空槽内真空度Pは、次のように調整する必要がある。
【0033】
添加速度Fは、Alの顕熱により溶鋼成分での液相線温度以下になる程速くすると、溶鋼3の流動性が低下し操業に影響が出る。このため、脱酸による発熱分と添加物の顕熱による抜熱分とで、溶鋼3の温度が溶鋼成分の液相線温度以上を維持することが必要である。具体的に、液相線温度+10℃以上を確保できる添加速度Fにすることが好ましい。
【0034】
真空槽内真空度Pは、大きい(低真空度)方が溶鋼環流量Qは小さくなる。この場合、(1)式の左辺が大きくなり、好適ではあるものの、低真空度で真空槽5の内部まで溶鋼3が吸い上がらないと溶鋼が環流しない。このため、事前に槽内観察カメラ等により溶鋼3が環流可能となる真空度を設定しておき、Alの添加時に設定した真空度以上にならないようにすることが好ましい。
【0035】
また、溶鋼3への添加にAl合金を用いる場合、Al純分が低いと合金の顕熱が大きくなり、Al合金の添加速度Fを速くすることができない。このため、Al又は高純度のAl合金を用いることが望ましい。
【実施例0036】
炭素濃度が0.02~0.06質量%である約315~330トンの溶鋼を、転炉から内径3.2mの取鍋に未脱酸状態のまま出鋼し、RH真空脱ガス装置で真空処理を行い、炭素濃度を所定の濃度まで低下させた。その後、添加速度を変更して、脱酸処理に必要な量のAlを溶鋼に添加した。添加後、RH真空脱ガス装置で2分の環流処理を施し、その後に溶鋼のサンプルを採取し、分析に供した。
【0037】
実施例における操業条件と、当該操業条件から得られた「Alの添加速度と、溶鋼中酸素濃度及び溶鋼還流量との比(調整比)」と、損失Al量とを表1に示す。また、調整比と、損失Al量との関係を
図2に示す。比較例1~14は、調整比が24よりも小さい値となるように実施した例を示す。発明例1~14は、調整比が24以上の値となるように実施した例を示す。
【0038】
【0039】
表1及び
図2に示す通り、比較例1~14は、調整比の値が小さくなる程、損失Al量が大きくなった。一方、発明例1~14は、調整比の値の増減を問わず、損失Al量がほぼ一定の値であると共に、損失Al量が最小値を示していることが確認できた。即ち、Alの添加速度と、溶鋼中酸素濃度及び溶鋼還流量との比の値が24以上となる操業条件にすることで、損失Al量を最小値とすることが可能となることが確認できた。つまり、Alの添加速度と、溶鋼中溶存酸素濃度と、溶鋼環流量との関係に基づいて、Alを溶鋼に添加することで、Al又はAl合金の添加のための専用の設備を必要とせず、Al又はAl合金を添加した際における損失Al量を低位に安定させることが可能となることが確認できた。