(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014188
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ワーク供給システム、ワーク供給方法及びワーク供給プログラム
(51)【国際特許分類】
B65H 3/60 20060101AFI20240125BHJP
B65H 3/08 20060101ALI20240125BHJP
B21D 43/24 20060101ALI20240125BHJP
B65G 59/02 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B65H3/60 310
B65H3/08 342A
B21D43/24 B
B65G59/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116828
(22)【出願日】2022-07-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】居駒 周
【テーマコード(参考)】
3F030
3F343
【Fターム(参考)】
3F030BA02
3F343FA10
3F343FB17
3F343FC01
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC04
3F343GD04
3F343JD03
3F343JD27
3F343JD29
3F343KB03
3F343KB05
3F343KB20
3F343LA03
3F343LA14
3F343LC11
3F343LC12
3F343LD07
3F343MA03
3F343MA09
3F343MA14
3F343MA33
3F343MA53
3F343MC03
3F343MC08
(57)【要約】
【課題】ワークの搬送不良を抑制し、最上位のワークのみを確実に供給することができるワーク供給システム、ワーク供給方法及びワーク供給プログラム。
【解決手段】積載エリアに積載されたワーク群を磁化させることでワーク群から最上位のワークを分離させるマグネットフロータと、ワーク群から最上位のワークを搬送可能に構成されたワーク供給ロボットとを備え、マグネットフロータは、ワーク群に対して磁力を付与するオン状態と、オン状態よりもワーク群に付与される磁力を抑えたオフ状態とを切替可能に構成されており、ワーク供給ロボットは、マグネットフロータがオフ状態の際に最上位のワークと接触し、マグネットフロータがオン状態の際にワーク群から最上位のワークを離間させるよう構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載エリアに積載されたワーク群を磁化させることで前記ワーク群から最上位のワークを分離させるマグネットフロータと、
前記ワーク群から前記最上位のワークを搬送可能に構成されたワーク供給ロボットと
を備え、
前記マグネットフロータは、前記ワーク群に対して磁力を付与するオン状態と、前記オン状態よりも前記ワーク群に付与される磁力を抑えたオフ状態とを切替可能に構成されており、
前記ワーク供給ロボットは、前記マグネットフロータが前記オフ状態の際に前記最上位のワークと接触し、前記マグネットフロータが前記オン状態の際に前記ワーク群から前記最上位のワークを離間させるよう構成されている
ワーク供給システム。
【請求項2】
前記ワーク供給ロボットは、前記ワーク群から前記最上位のワークを持ち上げる第1上昇動作と、前記第1上昇動作後に更に前記最上位のワークを持ち上げる第2上昇動作とを実行可能に構成されており、
前記マグネットフロータは、前記ワーク供給ロボットの前記第1上昇動作と前記第2上昇動作との間において、前記オン状態から前記オフ状態に切り替えるよう構成されており、
前記第1上昇動作の上昇量は、前記第2上昇動作の上昇量よりも少ない
請求項1に記載のワーク供給システム。
【請求項3】
前記ワーク供給ロボットは、前記第1上昇動作と前記第2上昇動作との間に、上昇を停止する停止動作を実行可能に構成されており、
前記マグネットフロータは、前記ワーク供給ロボットの前記停止動作中に前記オン状態から前記オフ状態に切り替えるよう構成されている
請求項2に記載のワーク供給システム。
【請求項4】
前記ワーク供給ロボットは、前記マグネットフロータから離間した状態で前記最上位のワークを搬送可能に構成されている
請求項1~3のいずれか1項に記載のワーク供給システム。
【請求項5】
積載エリアに積載されたワーク群の最上位のワークにワーク供給ロボットを接触させるロボット接触工程と、
前記ロボット接触工程の後に、前記ロボット接触工程前よりも強い磁力を前記ワーク群に対して付与する磁力付与工程と、
前記ワーク群に前記磁力が付与されている状態において、前記ワーク供給ロボットにより前記最上位のワークを前記ワーク群から離間させるワーク離間工程と
を含む、ワーク供給方法。
【請求項6】
前記ワーク離間工程は、
前記ワーク群から前記最上位のワークを持ち上げる第1上昇工程と、
前記第1上昇工程後に更に前記最上位のワークを持ち上げる第2上昇工程と
を含み、
前記第1上昇工程における前記ワーク供給ロボットの上昇量は、前記第2上昇工程における前記ワーク供給ロボットの上昇量よりも少なく、
前記第1上昇工程と前記第2上昇工程との間において、前記ワーク群に付与される磁力を前記磁力付与工程における磁力よりも低下させる
請求項5に記載のワーク供給方法。
【請求項7】
前記ワーク離間工程は、前記第1上昇工程と前記第2上昇工程との間において、前記ワーク供給ロボットの上昇を停止させる停止工程を更に含み、
前記停止工程において、前記ワーク群に付与される磁力を前記磁力付与工程における磁力よりも低下させる
請求項6に記載のワーク供給方法。
【請求項8】
積載エリアに積載されたワーク群から最上位のワークを分離させるための磁力が前記ワーク群に付与される前に、前記最上位のワークに接触するロボット接触処理と、
前記ワーク群から前記最上位のワークを分離させるための前記磁力が前記ワーク群に付与されている状態において、前記最上位のワークを前記ワーク群から離間させるワーク離間処理と
をワーク供給ロボットに実行させる、ワーク供給プログラム。
【請求項9】
前記ワーク離間処理は、
前記ワーク群から前記最上位のワークを持ち上げる第1上昇処理と、
前記第1上昇処理後に更に前記最上位のワークを持ち上げる第2上昇処理と
を含み、
前記第1上昇処理における前記ワーク供給ロボットの上昇量は、前記第2上昇処理における前記ワーク供給ロボットの上昇量よりも少なく、
前記ワーク群に付与される磁力が前記第1上昇処理時よりも低下した後に、前記第2上昇処理を前記ワーク供給ロボットに実行させる
請求項8に記載のワーク供給プログラム。
【請求項10】
前記ワーク離間処理は、前記第1上昇処理と前記第2上昇処理との間において、前記ワーク供給ロボットの上昇を停止させる停止処理を更に含む
請求項9に記載のワーク供給プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク供給システム、ワーク供給方法及びワーク供給プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積載エリアに積載されたワークを供給ロボットによって板材加工機側へ順次供給するワーク供給システムにおいて、積載された複数のワークを磁力によって浮上させて分離するマグネットフロータが用いられている(特許文献1及び2等)。
【0003】
例えば特許文献1には、非磁性体のフロータカバーと、マグネットを有するフロータ本体と、フロータ本体をフロータカバーに対して接近又は離隔する方向に位置調整する位置調整機構とを備えるマグネットフロータが開示されている。特許文献1のマグネットフロータは、位置調整機構によってフロータ本体の位置を調整することでワークに作用するマグネットの磁力を調整し、最上位ワークの水平方向に対する浮上角を調整することが可能となっている。また、特許文献1のマグネットフロータは、フロータカバー等に目盛りが付されており、最上位ワークの浮上角を可視化することが可能となっている。
【0004】
また、特許文献2には、複数枚積層したワークの最上位に位置する最上位ワークを吊り上げる昇降機構と、昇降機構により吊り上げられている最上位ワークとこれよりも下位に位置する下位ワークとを剥離するマグネットフロータと、剥離中の最上位ワーク及び下位ワークの側面に圧縮流体を吹き付けて下位ワークの剥離を促進する圧縮流体噴射ノズルとを備えるワーク剥離装置が開示されている。特許文献1のワーク剥離装置は、以下の(1)~(4)の手順で動作することにより、最上位ワークと下位ワークとを剥離させ、最上位ワークのみを取り出すことができるものとされている。
(1) 昇降機構の吸着パッドを最上位ワークに吸着させた状態で昇降機構を上昇させることにより、最上位ワーク及びこれに密着した下位ワークを一定の高さまで吊り上げる。
(2) その後、マグネットフロータに通電して励磁させることで、磁気反発により最上位ワークに密着した下位ワークを剥離させる。
(3) マグネットフロータの励磁中に、昇降機構の質量センサにより最上位ワークの質量を測定し、最上位ワークに未だ下位ワークが密着しているか否かを判定する。
(4) 最上位ワークに下位ワークが密着していると判定した場合には、圧縮流体噴射ノズルから圧縮流体を噴射することで、密着した下位ワークを剥離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6872968号公報
【特許文献2】特開2009-263084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のマグネットフロータを用いた供給システムでは、載置面に対して傾斜した状態で浮上させた最上位ワークを供給ロボットに吸着させるものであるため、供給ロボットによるワークの吸着が不十分となり、ワークの搬送不良が生じるおそれがある。また、ワークの浮上角が大きくなると、ワークがマグネットフロータに貼り付いてしまうおそれもある。
【0007】
また、特許文献2のワーク剥離装置は、昇降機構によって最上位ワーク及びこれに密着した下位ワークを一定の高さまで吊り上げた後に、マグネットフロータ及び圧縮流体噴射ノズルによって下位ワークを剥離させるものである。このような特許文献2のワーク剥離装置では、下位ワークが剥離されて落下する際の空気抵抗や衝撃等により、ワーク群に対する下位ワークの平面方向の位置ずれが生じ、これによりワークの搬送不良が生じるおそれがある。特に、特許文献2のワーク剥離装置では、圧縮流体噴射ノズルからの圧縮流体の噴射方向側にワークを支持するガイドが設けられていないため、圧縮流体を噴射させた際に下位ワークの位置ずれが顕著となるおそれがある。また、下位ワークのサイズや落下距離によっては、ワークがマグネットフロータに貼り付いてしまうおそれもある。
【0008】
本発明の一態様は、ワークの搬送不良を抑制し、最上位のワークのみを確実に供給することが可能なワーク供給システム、ワーク供給方法及びワーク供給プログラムである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るワーク供給システムは、積載エリアに積載されたワーク群を磁化させることで前記ワーク群から最上位のワークを分離させるマグネットフロータと、前記ワーク群から前記最上位のワークを搬送可能に構成されたワーク供給ロボットとを備え、前記マグネットフロータは、前記ワーク群に対して磁力を付与するオン状態と、前記オン状態よりも前記ワーク群に付与される磁力を抑えたオフ状態とを切替可能に構成されており、前記ワーク供給ロボットは、前記マグネットフロータが前記オフ状態の際に前記最上位のワークと接触し、前記マグネットフロータが前記オン状態の際に前記ワーク群から前記最上位のワークを離間させるよう構成されている。
【0010】
本発明の一態様に係るワーク供給方法は、積載エリアに積載されたワーク群の最上位のワークにワーク供給ロボットを接触させるロボット接触工程と、前記ロボット接触工程の後に、前記ロボット接触工程前よりも強い磁力を前記ワーク群に対して付与する磁力付与工程と、前記ワーク群に前記磁力が付与されている状態において、前記ワーク供給ロボットにより前記最上位のワークを前記ワーク群から離間させるワーク離間工程とを含む。
【0011】
本発明の一態様に係るワーク供給プログラムは、積載エリアに積載されたワーク群から最上位のワークを分離させるための磁力が前記ワーク群に付与される前に、前記最上位のワークに接触するロボット接触処理と、前記ワーク群から前記最上位のワークを分離させるための前記磁力が前記ワーク群に付与されている状態において、前記最上位のワークを前記ワーク群から離間させるワーク離間処理とをワーク供給ロボットに実行させる。
【0012】
本発明の一態様によるワーク供給システム、ワーク供給方法及びワーク供給プログラムによれば、ワーク群に付与される磁力を抑えた状態においてワーク供給ロボットが最上位のワークと接触するため、ワーク供給ロボットにより最上位のワークを確実に保持することが可能となる。また、本発明の一態様によるワーク供給システム、ワーク供給方法及びワーク供給プログラムによれば、ワーク群に付与される磁力を強めた状態において、ワーク供給ロボットにより最上位のワークをワーク群から離間させるため、最上位のワークをこれよりも下位のワークに対して確実に分離させ、最上位のワークのみを確実に搬送することが可能となる。さらに、本発明の一態様によるワーク供給システム、ワーク供給方法及びワーク供給プログラムによれば、最上位のワークからの反発力によって下位のワークがワーク群側に押し付けられた状態において最上位のワークのみを持ち上げることが可能となるため、ワーク群に対する下位のワークの位置ずれ等を抑制することも可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係るワーク供給システム、ワーク供給方法及びワーク供給プログラムによれば、ワークの搬送不良を抑制し、最上位のワークのみを確実に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るワーク供給システムを示す概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るマグネットフロータを示す概略図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るワーク供給ロボットのロボットハンドを示す概略図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る制御装置を示す機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る最上位のワークの剥離動作を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る最上位のワークの剥離動作を示す概略図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る最上位のワークの剥離動作を示す概略図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る最上位のワークの剥離動作を示す概略図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る最上位のワークの剥離動作を示す概略図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る最上位のワークの剥離動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
[ワーク供給システムの全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るワーク供給システムを示す概略図である。
図1に示すように、本実施形態に係るワーク供給システム1は、複数のワークW群が積載されたワーク積載機構10と、ワーク積載機構10に積載された複数のワークW群の1つから最上位のワークWt(
図10等参照)を搬送可能に構成されたワーク供給ロボット100と、ワーク積載機構10及びワーク供給ロボット100を制御可能な制御装置200とを備えている。本実施形態に係るワーク供給システム1は、曲げ加工機等の加工機(図示せず)を更に備えていてもよく、加工機と共にワークWの自動加工システムを構成してもよい。このように自動加工システムを構成する場合には、ワーク供給ロボット100は、ワーク積載機構10と加工機との間に配置されることが好ましい。
【0017】
なお、本明細書において、「ワークW」とは、搬送対象となる板状の磁性体(板金)のことをいい、「ワークW群」(ワーク群)とは、ワークWが複数枚積層されることにより形成されたワークWの山のことをいう。また、「複数のワークW群」とは、このようにして形成されたワークW群が、平面方向に離間して複数存在することを意味する。
【0018】
[ワーク積載機構の構成]
図1に示すように、ワーク積載機構10は、ワークW群を積載可能な積載エリアLAを形成するワーク載置台20と、積載エリアLAに積載されたワークW群を磁化させることで、ワークW群から最上位のワークWtを分離させるマグネットフロータ30と、積載エリアLAに沿ってマグネットフロータ30を移動させるマグネット移動機構40とを備えている。
【0019】
ワーク載置台20は、複数の載置台ユニット22と、これら複数の載置台ユニット22を互いに連結させるフレームFとを備えている。各載置台ユニット22は、ハンドル22a及び車輪22bを有しており、フレームFに対して挿脱させることが可能に構成されている。ワーク載置台20は、載置台ユニット22の設置数を増加又は減少させることが可能に構成されている。なお、ワーク載置台20は、少なくとも1つのワークW群を積載可能な構成であれば、図示の構成に限定されず、種々の構成を採用可能である。例えば、ワーク載置台20は、1つの載置台ユニット22のみで構成されても良い。
【0020】
各載置台ユニット22は、ワークW群を積載させる載置面24と、載置面24に載置されたワークW群の端部を揃えるための突き当て板部26とを備えている。
【0021】
載置面24は、ワーク供給ロボット100とは反対側の縁部が、ワーク供給ロボット100側の縁部よりもやや上方に位置するよう、水平方向(鉛直方向と直交する方向)に対して傾斜している(
図5等参照)。複数の載置台ユニット22は、各載置面24が互いに平面方向に沿って連続的又は間欠的に展開されることで、互いに協働して積載エリアLAが形成されるよう構成されている。
【0022】
突き当て板部26は、非磁性体の板材により形成された背面板部26aと、該背面板部26aの側縁部の一方に配された側板部26bとを備えている。背面板部26aは、載置面24のワーク供給ロボット100側の縁部に、該載置面24に対して直角となるよう立設されている。側板部26bは、背面板部26aの一方側の側縁部から載置面24側に向けて、該背面板部26aに対して直角となるよう延出している。突き当て板部26は、これら背面板部26aと側板部26bにより形成される角部にワークW群の角部を突き当てるか、または背面板部26aにワークW群の一の縁部を突き当てることにより、載置面24に載置されたワークW群の端部を揃えることが可能に構成されている。
【0023】
また、背面板部26aの両側縁部には、各側縁部からワーク供給ロボット100側に向けて、該背面板部26aに対して直角となるよう延出する一対のフランジ部27a,27bが配されている。
【0024】
図2は、本実施形態に係るマグネットフロータを示す概略図である。
図1及び
図2に示すように、マグネットフロータ30は、ワークW群に対して磁力を付与することが可能なフロータ本体32と、フロータ本体32を突き当て板部26の背面板部26aの裏面に対して接近又は離隔する方向へ進退させる進退機構34と、マグネット移動機構40の後述するガイドレール42に沿って摺動可能なキャリッジベース36とを備えている。
【0025】
フロータ本体32は、突き当て板部26の背面板部26aと略平行な矩形ブロック状に形成されており、その内部に、第1マグネット(第1永久磁石)及び第2マグネット(第2永久磁石)を有している。第1マグネット及び第2マグネットは、フロータ本体32の上下方向(高さ方向)に沿ってそれぞれセグメント化されており、第1マグネットのS極と第2マグネットのN極は、左右方向に対向している。
【0026】
進退機構34は、例えば油圧式シリンダ又は空圧式シリンダ等の往復直動機構であり、具体的には、フロータ本体32の裏面に連結されたシリンダロッド34aと、油圧又は空圧によりシリンダロッド34aを進退させるシリンダ34bとを備えている。なお、進退機構34は、フロータ本体32を突き当て板部26の背面板部26aの裏面に対して接近又は離隔する方向へ進退させることが可能な構成であれば良く、上述した油圧式シリンダや空圧式シリンダに限定されず、例えば、電動式の往復直動機構であっても良い。
【0027】
キャリッジベース36は、進退機構34を相対移動不能に保持しており、マグネット移動機構40の後述するガイドレール42に沿って摺動することにより、進退機構34及びフロータ本体32を任意のワークW群に向けて移動させるよう構成されている。
【0028】
以上の構成を備えることにより、マグネットフロータ30は、ワークW群に対して磁力を付与するオン状態と、オン状態よりもワークW群に付与される磁力を抑えたオフ状態とを切替可能に構成されている。具体的には、マグネットフロータ30は、進退機構34によってフロータ本体32を突き当て板部26の背面板部26aに接近させることにより、ワークW群に対して磁力を付与するオン状態になる。また、マグネットフロータ30は、進退機構34によってフロータ本体32を突き当て板部26の背面板部26aから離間させることにより、ワークW群に対する磁力を弱めた又は消失させたオフ状態になるよう構成されている。
【0029】
マグネットフロータ30は、後述するマグネット制御部240によりマグネット移動機構40が制御されることによって、搬送対象となるワークW群が載置された載置面24まで移動するよう構成されている。また、マグネットフロータ30は、ワーク供給ロボット100が搬送対象となるワークW群の最上位のワークWtと接触してから該最上位のワークWtを持ち上げるまでの間に、後述するマグネット制御部240により進退機構34が制御されることによって、オフ状態からオン状態に切り替えるよう構成されている。さらに、マグネットフロータ30は、ワーク供給ロボット100の後述する第1上昇動作と第2上昇動作との間、より具体的にはワーク供給ロボット100の後述する停止動作中において、オン状態からオフ状態に切り替えるよう構成されている。
【0030】
なお、本明細書において、「オン状態」とは、最上位のワークWtの端部をそれよりも下位のワークWから浮き上がらせることが可能な程度の磁力をワークW群に対して付与した状態をいい、「オフ状態」とは、オン状態における磁力よりも弱い磁力をワークW群に対して付与した状態をいう。本明細書において、「オフ状態」には、ワークW群に対して全く磁力が付与されていない状態だけではなく、例えば、最上位ワークWtの端部が下位ワークWから僅かに浮き上がる程度の弱い磁力が付与されている状態や、最上位ワークWtの端部が下位ワークWから離間しない程度の微弱な磁力が付与されている状態も含むものとする。
【0031】
図1に示すように、マグネット移動機構40は、ワーク積載機構10の複数の載置台ユニット22に亘って延びるガイドレール42と、該ガイドレール42に沿ってマグネットフロータ30のキャリッジベース36を移動させるための駆動力を発生させる駆動部44とを備えている。マグネット移動機構40は、駆動部44を駆動することにより、マグネットフロータ30をガイドレール42に沿って移動させると共に、任意の位置でマグネットフロータ30を停止させることが可能に構成されている。本実施形態において、マグネット移動機構40は、ガイドレール42に沿ってマグネットフロータ30を直進的に往復移動させる直動機構であるが、これに限定されるものではない。駆動部44は、電動モータを好適に用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。
【0032】
[ワーク供給ロボットの構成]
ワーク供給ロボット100は、ワーク積載機構10と、ワークWの搬送先(例えば、加工機等)との間に配置されており、ワーク積載機構10上でワークWを保持し、そのワークWを加工機等の搬送先に向けて搬送するように構成されている。
【0033】
具体的には、ワーク供給ロボット100は、
図1に示すように、ワーク供給ロボット100を移動させるための移動機構160と、ワークWを保持可能なロボットハンド(robotic hand)120と、ロボットハンド120をワークWに対して接近又は離間させるアーム部140とを含んでいる。
【0034】
移動機構160は、床面上に敷設されたレール部160aと、レール部160a上に沿って移動可能なベース台160bと、ベース台160bを駆動させるベース台駆動部(図示せず)とを有する所謂直動機構であり、制御装置200の後述するロボット制御部230からの制御信号に基づいて、床面上においてワーク供給ロボット100を移動させるよう構成されている。なお、移動機構160は、種々の公知の構成を採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0035】
アーム部140は、一端部が移動機構160のベース台160bに連結されると共に、他端部がロボットハンド120に連結されており、制御装置200のロボット制御部230からの制御信号に基づいて、ロボットハンド120をワークWに対して接近又は離間させるよう構成されている。本実施形態において、アーム部140は、6軸の制御軸を有する多関節アームであり、ワーク積載機構10からのワークWの搬送だけではなく、加工機等へのワークWの搬送(搬入)、ワークWの加工(曲げ加工)の補助、及び、加工機等からの製品(曲げ加工品)の搬送(搬出)等を実行可能に構成されている。なお、アーム部140は、種々の公知の構成を採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。また、アーム部140は、上述した6軸の制御軸を有する多関節アームの構成に限定されず、種々の公知の構成を任意に採用することが可能である。
【0036】
図3は、本実施形態に係るワーク供給ロボットのロボットハンドを示す概略図である。
図3に示すように、ロボットハンド120は、アーム部140の先端部に着脱可能に装着されるハンド本体122と、ハンド本体122に取り付けられ、ワークWを保持可能に構成された複数の吸着部124とを有している。各吸着部124は、エアを吸引するエア吸引源(図示せず)に配管を介して接続されている。各吸着部124は、その下端部にワークWの表面に吸着可能(接触可能)な平型の吸着パッドを有しており、エア吸引源によるエアの吸引力によって、ワーク載置台20に積載されたワークW群から最上位のワークWtの表面に吸着するよう構成されている。なお、ハンド本体122の形状は、図示の例に限定されず、ワークWの形状等に応じて任意に変更することが可能である。また、ロボットハンド120は、上述した吸着方式に限定されず、種々の公知の構成を任意に採用することが可能である。
【0037】
また、ロボットハンド120は、
図3に示すように、ロボットハンド120がワークWに接触したことを検出可能な表面検出部130を更に備えている。表面検出部130は、ロボットハンド120のハンド本体122の任意の位置に取り付けられており、吸着部124が最上位のワークWtの表面に接触したことを検出することが可能に構成されている。表面検出部130としては、ワークWの表面を検出可能な構成であれば種々の公知の構成を採用可能であり、例えば、近接センサ、反射型の光電センサ、フォトリフレクタ及び力覚センサ等を任意に採用可能である。なお、本明細書において、「ワークWの表面に接触した」には、ワークWの表面に完全に接触した場合に加え、ワークWの表面に接触したと評価し得る程度に近接した場合も含むこととする。
【0038】
ワーク供給ロボット100は、後述するロボット制御部230の制御により、マグネットフロータ30がオフ状態の際に最上位のワークWtと接触し、マグネットフロータ30がオン状態の際にワークW群から最上位のワークWtを離間させるよう構成されている。
【0039】
具体的には、ワーク供給ロボット100は、ワークW群から最上位のワークWtを持ち上げる第1上昇動作と、第1上昇動作後に更に最上位のワークWtを持ち上げる第2上昇動作とを実行可能に構成されている。この際、ワーク供給ロボット100は、第1上昇動作の上昇量が第2上昇動作の上昇量よりも少なくなるよう動作する。例えば、第1上昇動作は、最上位のワークWtがこれよりも下位のワークWから離間する程度に少量上昇させる動作であり、第2上昇動作は、最上位のワークWtを搬送先(加工機等)に移動させる動作であっても良い。
【0040】
これら第1上昇動作及び第2上昇動作において、ワーク供給ロボット100は、マグネットフロータ30の突き当て板部26から離間した状態で最上位のワークWtを搬送可能に構成されている。すなわち、ワーク供給ロボット100は、最上位のワークWtを突き当て板部26に接触させた状態で上昇(摺動)させるのではなく、最上位のワークWtと突き当て板部26との間に摩擦抵抗が生じないよう、最上位のワークWtを突き当て板部26から若干(例えば数ミリ)離した状態で上昇させるよう構成されている。
【0041】
また、ワーク供給ロボット100は、第1上昇動作と第2上昇動作との間に、上昇を停止する停止動作を実行可能に構成されている。ワーク供給ロボット100の停止時間は、マグネットフロータ30をオン状態からオフ状態に切り替えることが可能な程度の時間に設定されることが好ましく、例えば、数秒~数十秒程度に設定されることが好ましい。
【0042】
[制御装置の構成]
図4は、本実施形態に係る制御装置を示す機能ブロック図である。
図4に示すように、制御装置200は、入力部210と、表示部220と、ロボット制御部230と、マグネット制御部240と、記憶部250とを含む。また、制御装置200は、種々の公知の構成によりワーク積載機構10及びワーク供給ロボット100と接続している。
【0043】
入力部210は、例えば、キーボード、マウス、押しボタンスイッチ、タクトスイッチ及びキーロックスイッチ等の入力デバイスにより構成されており、入力部210を操作することにより、ワーク供給システム1において通常必要とされる情報の入力等をすることが可能に構成されている。
【0044】
表示部220は、表示装置としてのディスプレイを有しており、ワーク供給システム1において通常必要とされる画面表示等をすることが可能に構成されている。表示部220は、入力部210の機能を有するタッチパネルで構成され得る。表示部220がタッチパネルで構成された場合は、ユーザは、例えば表示部220を操作することにより、各種の情報を制御装置200に対して入力可能となる。
【0045】
なお、入力部210及び表示部220の構成は、上述した構成に限定されず、これら入力部210及び表示部220に代わり同等の機能を有する構成であれば(例えば、遠隔から利用可能な表示手段や入力手段等)、これに限定されるものではない。
【0046】
ロボット制御部230は、
図4に示すように、搬送制御部232と、保持位置特定部234とを有する。
【0047】
保持位置特定部234は、ワークWに対するワーク供給ロボット100のロボットハンド120の保持位置を特定する保持位置特定処理を行う。具体的には、保持位置特定部234は、後述する記憶部250のワーク供給プログラムからワークWと、そのワークWに対するロボットハンド120の保持位置との座標データを抽出し、保持位置を特定する。
【0048】
搬送制御部232は、ワーク供給ロボット100のCNC制御(コンピュータ数値制御:Computerized Numerical Control)が可能に構成されており、最上位のワークWtをワークW群から剥離させるロボットハンド制御処理を行う。
【0049】
具体的には、搬送制御部232は、ワーク積載機構10からワークWを搬送(搬出)する際に、記憶部250に記憶されているワーク供給プログラムに基づいて、ワーク積載機構10に積載された複数のワークW群のうち、搬送対象となるワークW群と整合する位置にアーム部140が到達するように移動機構160を制御するよう構成されている。また、搬送制御部232は、搬送対象となるワークW群の最上位のワークWtにロボットハンド120が到達するようにアーム部140を制御するよう構成されている。
【0050】
また、搬送制御部232は、最上位のワークWtにロボットハンド120が到達した際に、ロボットハンド120により最上位のワークWtを保持するようにエア吸引源を制御すると共に、保持した最上位のワークWtを持ち上げ、加工機等の搬送先に向けて搬送するように移動機構160及びアーム部140を制御するよう構成されている。この際、搬送制御部232は、アーム部140が前述した第1上昇動作、停止動作及び第2上昇動作の順で動作するようアーム部140を制御する。
【0051】
マグネット制御部240は、ワーク積載機構10のCNC制御(コンピュータ数値制御:Computerized Numerical Control)が可能に構成されており、搬送対象となるワークW群に対してマグネットフロータ30の磁力を作用させる磁力制御処理を行う。具体的には、マグネット制御部240は、
図4に示すように、移動制御部242と、進退制御部244とを有する。
【0052】
移動制御部242は、記憶部250に記憶されているワーク供給プログラムに基づいて、ワーク載置台20に積載された複数のワークW群のうち、搬送対象となるワークW群と整合する位置にマグネットフロータ30が到達するようにマグネット移動機構40を制御するよう構成されている。
【0053】
進退制御部244は、ワーク供給ロボット100が搬送対象となるワークW群の最上位のワークWtと接触してから該最上位のワークWtを持ち上げるまでの間に、マグネットフロータ30がオフ状態からオン状態に切り替わるよう、進退機構34を制御するよう構成されている。また、進退制御部244は、ロボット制御部230による前述した第1上昇動作と第2上昇動作との間、より具体的にはロボット制御部230による前述した停止動作中において、マグネットフロータ30がオン状態からオフ状態に切り替わるよう、進退機構34を制御するよう構成されている。
【0054】
記憶部250は、ワーク供給ロボット100にワーク積載機構10からのワークWの搬送(搬出)、加工機等へのワークWの搬送(搬入)、ワークWの加工(曲げ加工)の補助、及び、加工機等からの製品(曲げ加工品)の搬送(搬出)等を実行させるためのワーク供給プログラムを格納する。ワーク供給プログラムは、該ワーク供給プログラムが実行されることにより、前述したロボット制御部230及びマグネット制御部240の各機能が実現されるよう構成されている。
【0055】
具体的には、ワーク供給プログラムは、ワークWに対するロボットハンド120の保持位置を特定する保持位置特定処理と、保持位置特定処理により特定された位置にロボットハンド120が到達するよう移動機構160及びアーム部140を駆動させる搬送制御処理とをワーク供給ロボット100に実行させるよう構成されている。また、ワーク供給プログラムは、搬送対象となるワークW群と整合する位置にマグネットフロータ30が到達するようにマグネット移動機構40を駆動させる移動制御処理と、搬送対象となるワークW群に対する磁力のオン・オフを切り替えるために進退機構34を駆動させる進退制御処理とをワーク積載機構10に実行させるよう構成されている。
【0056】
また、ワーク供給プログラムは、積載エリアLAに積載されたワークW群から最上位のワークWtを分離させるための磁力がワークW群に付与される前に、最上位のワークWtに接触するロボット接触処理と、ワークW群から最上位のワークWtを分離させるための磁力がワークW群に付与されている状態において、最上位のワークWtをワークW群から離間させるワーク離間処理とをワーク供給ロボット100に実行させるよう構成されている。
【0057】
ここで、ワーク離間処理は、ワークW群から最上位のワークWtを持ち上げる第1上昇処理と、第1上昇処理後に更に最上位のワークWtを持ち上げる第2上昇処理とを含むことが好ましい。この場合において、第1上昇処理におけるワーク供給ロボット100のロボットハンド120の上昇量は、第2上昇処理におけるワーク供給ロボット100のロボットハンド120の上昇量よりも少ないことが好ましい。また、ワーク離間処理は、ワークW群に付与される磁力が第1上昇処理時よりも低下した後に、第2上昇処理をワーク供給ロボット100に実行させることが好ましい。さらに、ワーク離間処理は、第1上昇処理と第2上昇処理との間において、ワーク供給ロボット100のロボットハンド120の上昇を停止させる停止処理を更に含むことが好ましい。
【0058】
[本実施形態に係るワーク供給方法]
図5~
図10は、本実施形態に係る最上位のワークの剥離動作を示す概略図である。
図5~
図10を参照して、以上説明したワーク供給システム1の一連のワーク供給方法について説明する。
【0059】
具体的には、まず、制御装置200は、記憶部250からワーク供給プログラムを読み出し、読み出されたワーク供給プログラムに含まれる情報等から、搬送対象となるワークW群に対するロボットハンド120の保持位置を特定すると共に、搬送対象となるワークW群に対するマグネットフロータ30の位置を特定する(保持位置特定工程、磁力付与位置特定工程)。その後、制御装置200のロボット制御部230は、ワーク供給ロボット100に対して制御信号を出力し、マグネット制御部240は、ワーク積載機構10に対して制御信号を出力する。
【0060】
ワーク供給ロボット100は、ロボット制御部230からの制御信号に基づき、搬送対象となるワークW群が載置された載置面24まで移動する(ロボット移動工程)。また、マグネットフロータ30も同様に、マグネット制御部240からの制御信号に基づき、搬送対象となるワークW群が載置された載置面24まで移動する(マグネット移動工程)。
【0061】
ワーク供給ロボット100は、
図5に示すように、搬送対象となるワークW群が載置された載置面24まで移動した後に、ロボット制御部230からの制御信号に基づき、
図6に示すように、該載置面24に積載されたワークW群の最上位のワークWtにロボットハンド120の吸着部124を接触させる(ロボット接触工程)。このロボット接触工程において、マグネットフロータ30は、フロータ本体32が後退したオフ状態である。そして、ロボットハンド120は、吸着部124の吸着パッドがエア吸引源による吸引力によって最上位のワークWtの表面に吸着することで最上位のワークWtを保持する。
【0062】
ロボット接触工程の後、マグネットフロータ30は、マグネット制御部240からの制御信号に基づき、
図7に示すように、進退機構34のシリンダロッド34aを前進させることでフロータ本体32を突き当て板部26の背面板部26aに向けて接近させ、オフ状態からオン状態に切り替わる(磁力付与工程)。これにより、ロボット接触工程前よりも強い磁力をワークW群に対して付与する。
【0063】
磁力付与工程によりワークW群に磁力が付与されている状態(オン状態)において、ワーク供給ロボット100は、ロボット制御部230からの制御信号に基づき、
図8に示すように、最上位のワークWtをワークW群から離間させる(ワーク離間工程)。
【0064】
ここで、ワーク離間工程は、
図8に示すように、ワークW群から最上位のワークWtを持ち上げる第1上昇工程と、
図10に示すように、第1上昇工程後に更に最上位のワークWtを持ち上げる第2上昇工程とを含む多段階的に実行される。また、ワーク離間工程は、
図9に示すように、第1上昇工程と第2上昇工程との間において、ワーク供給ロボット100の上昇を停止させる停止工程を更に含む。なお、
図8及び
図10に示すように、第1上昇工程におけるワーク供給ロボット100の上昇量は、第2上昇工程におけるワーク供給ロボット100の上昇量よりも少ない。また、これら第1上昇工程及び第2上昇工程において、ワーク供給ロボット100は、マグネットフロータ30の突き当て板部26の背面板部26aから離間した状態(接触しないよう若干の隙間を空けた状態)で最上位のワークWtを上昇させる。
【0065】
ワーク離間工程が開始された後に、マグネットフロータ30は、マグネット制御部240からの制御信号に基づき、
図9に示すように、進退機構34のシリンダロッド34aを後退させることでフロータ本体32を突き当て板部26の背面板部26aから離間させ、オン状態からオフ状態に切り替わる(磁力除去工程)。これにより、ワークW群に付与される磁力を磁力付与工程における磁力よりも低下させる。この磁力除去工程は、ワーク供給ロボット100の第1上昇工程と第2上昇動作工程との間、より具体的にはワーク供給ロボット100の停止動作工程中において実行されることが好ましい。
【0066】
そして、ワーク供給ロボット100は、ロボット制御部230からの制御信号に基づき、ワーク離間工程(特に、第2上昇工程)によりワークW群から剥離された最上位のワークWtを加工機等の搬送先に供給する。以上の工程により本実施形態に係るワーク供給システム1によるワーク供給方法の一連の動作が実行される。
【0067】
[本実施形態に係るワーク供給システムの利点]
以上説明したように、本実施形態に係るワーク供給システム1は、積載エリアLAに積載されたワークW群を磁化させることでワークW群から最上位のワークWtを分離させるマグネットフロータ30と、ワークW群から最上位のワークWtを搬送可能に構成されたワーク供給ロボット100とを備え、マグネットフロータ30は、ワークW群に対して磁力を付与するオン状態と、オン状態よりもワークW群に付与される磁力を抑えたオフ状態とを切替可能に構成されており、ワーク供給ロボット100は、マグネットフロータ30がオフ状態の際に最上位のワークWtと接触し、マグネットフロータ30がオン状態の際にワークW群から最上位のワークWtを離間させるよう構成されている。
【0068】
そして、本実施形態に係るワーク供給システム1は、このような構成を備えることにより、ワークW群に付与される磁力を抑えた状態においてワーク供給ロボット100が最上位のワークWtと接触するため、ワーク供給ロボット100により最上位のワークWtを確実に保持することが可能となる。また、本実施形態に係るワーク供給システム1によれば、ワークW群に付与される磁力を強めた状態において、ワーク供給ロボット100により最上位のワークWtをワークW群から離間させるため、最上位のワークWtをこれよりも下位のワークWに対して確実に分離させ、最上位のワークWtのみを確実に搬送することが可能となる。さらに、本実施形態に係るワーク供給システム1によれば、最上位のワークWtからの反発力によって下位のワークWがワークW群側に押し付けられた状態において最上位のワークWtのみを持ち上げることが可能となるため、ワークW群に対する下位のワークWの位置ずれ等を抑制することも可能となる。そして、これらの結果、本実施形態に係るワーク供給システム1によれば、ワークWの搬送不良を抑制し、最上位のワークWtのみを確実に供給することができる。
【0069】
また、本実施形態に係るワーク供給システム1において、ワーク供給ロボット100は、ワークW群から最上位のワークWtを持ち上げる第1上昇動作と、第1上昇動作後に更に最上位のワークWtを持ち上げる第2上昇動作とを実行可能に構成されており、マグネットフロータ30は、ワーク供給ロボット100の第1上昇動作と第2上昇動作との間において、オン状態からオフ状態に切り替えるよう構成されており、第1上昇動作の上昇量は、第2上昇動作の上昇量よりも少ない。このような構成を備えることにより、本実施形態に係るワーク供給システム1は、最上位のワークWtが一定量上昇した時点でマグネットフロータ30がオフ状態となるため、最上位のワークWtやそれよりも下位のワークWがマグネットフロータ30に貼り付くことを抑制できるという利点を有している。
【0070】
さらに、本実施形態に係るワーク供給システム1において、ワーク供給ロボット100は、第1上昇動作と第2上昇動作との間に、上昇を停止する停止動作を実行可能に構成されており、マグネットフロータ30は、ワーク供給ロボット100の停止動作中にオン状態からオフ状態に切り替えるよう構成されている。このような構成を備えることにより、本実施形態に係るワーク供給システム1は、第1上昇動作中及び停止動作の初期段階(マグネットフロータ30をオフ状態に切り替えるまでの間)において、最上位のワークWtからの反発力によって下位のワークWをワークW群側に押し付けることが可能となるため、下位のワークWの浮き上がりによる傾斜を抑制することが可能となる。また、本実施形態に係るワーク供給システム1によれば、上昇量の少ない第1上昇動作後にワーク供給ロボット100を一時的に停止させることにより、停止動作を行わずにワーク供給ロボット100を上昇させる場合と比較して、下位のワークWの浮き上がりによる傾斜をより一層抑制することが可能となる。そして、本実施形態に係るワーク供給システム1によれば、このような下位のワークWの傾斜を抑制することにより、下位のワークWがマグネットフロータ30に貼り付くことを抑制することが可能となるという利点を有している。
【0071】
また、本実施形態に係るワーク供給システム1において、ワーク供給ロボット100は、マグネットフロータ30から離間した状態で最上位のワークWtを搬送可能に構成されている。このような構成を備えることにより、本実施形態に係るワーク供給システム1は、ワークWtの落下等の原因となる摩擦抵抗を抑えることが可能になるため、より一層、搬送不良を抑制することができるという利点を有している。
【0072】
[変形例]
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、本実施形態及び第2実施形態に記載の範囲には限定されない。上述した実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0073】
例えば、ワーク供給システム1は、積載エリアLAに積載されたワークW群を特定するためのカメラを更に備えても良く、制御装置200は、カメラにより特定されたワークW群の位置に基づいてワーク積載機構10やワーク供給ロボット100を制御する構成であっても良い。
【0074】
また、上述した実施形態では、マグネットフロータ30は、進退機構34によりフロータ本体32を進退させることによってオン状態とオフ状態とを切り替えるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、進退機構34は、オン状態とオフ状態との間において、フロータ本体32の進退距離を多段的に変更し、ワークWに付与される磁力を調整可能な構成であっても良い。また、マグネットとして電磁石を採用する場合には、通電のオン・オフにより、オン状態とオフ状態とを切り替える構成としても良い。
【符号の説明】
【0075】
1 :ワーク供給システム
10 :ワーク積載機構
20 :ワーク載置台
22 :載置台ユニット
22a :ハンドル
22b :車輪
24 :載置面
26 :突き当て板部
26a :背面板部
26b :側板部
27a :フランジ部
27b :フランジ部
30 :マグネットフロータ
32 :フロータ本体
34 :進退機構
34a :シリンダロッド
34b :シリンダ
36 :キャリッジベース
40 :マグネット移動機構
42 :ガイドレール
44 :駆動部
100 :ワーク供給ロボット
120 :ロボットハンド
122 :ハンド本体
124 :吸着部
130 :表面検出部
140 :アーム部
160 :移動機構
160a :レール部
160b :ベース台
200 :制御装置
210 :入力部
220 :表示部
230 :ロボット制御部
232 :搬送制御部
234 :保持位置特定部
240 :マグネット制御部
242 :移動制御部
244 :進退制御部
250 :記憶部
F :フレーム
LA :積載エリア
W :ワーク
Wt :最上位のワーク
【手続補正書】
【提出日】2023-10-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載エリアに積載されたワーク群を磁化させることで前記ワーク群から最上位のワークを分離させるマグネットフロータと、
前記ワーク群から前記最上位のワークを搬送可能に構成されたワーク供給ロボットと
を備え、
前記マグネットフロータは、前記ワーク群に対して磁力を付与するオン状態と、前記オン状態よりも前記ワーク群に付与される磁力を抑えたオフ状態とを切替可能に構成されており、
前記ワーク供給ロボットは、前記マグネットフロータが前記オフ状態の際に前記最上位のワークと接触し、前記マグネットフロータが前記オン状態の際に前記ワーク群から前記最上位のワークを離間させるよう構成されており、
前記ワーク供給ロボットは、前記ワーク群から前記最上位のワークを持ち上げる第1上昇動作と、前記第1上昇動作後に更に前記最上位のワークを持ち上げる第2上昇動作とを実行可能に構成されており、
前記マグネットフロータは、前記ワーク供給ロボットの前記第1上昇動作と前記第2上昇動作との間において、前記オン状態から前記オフ状態に切り替えるよう構成されている
ワーク供給システム。
【請求項2】
前記第1上昇動作の上昇量は、前記第2上昇動作の上昇量よりも少ない
請求項1に記載のワーク供給システム。
【請求項3】
前記ワーク供給ロボットは、前記第1上昇動作と前記第2上昇動作との間に、上昇を停止する停止動作を実行可能に構成されており、
前記マグネットフロータは、前記ワーク供給ロボットの前記停止動作中に前記オン状態から前記オフ状態に切り替えるよう構成されている
請求項2に記載のワーク供給システム。
【請求項4】
前記ワーク供給ロボットは、前記マグネットフロータから離間した状態で前記最上位のワークを搬送可能に構成されている
請求項1~3のいずれか1項に記載のワーク供給システム。
【請求項5】
積載エリアに積載されたワーク群の最上位のワークにワーク供給ロボットを接触させるロボット接触工程と、
前記ロボット接触工程の後に、前記ロボット接触工程前よりも強い磁力を前記ワーク群に対して付与する磁力付与工程と、
前記ワーク群に前記磁力が付与されている状態において、前記ワーク供給ロボットにより前記最上位のワークを前記ワーク群から離間させるワーク離間工程とを含み、
前記ワーク離間工程は、
前記ワーク群から前記最上位のワークを持ち上げる第1上昇工程と、
前記第1上昇工程後に更に前記最上位のワークを持ち上げる第2上昇工程と
を更に含み、
前記第1上昇工程と前記第2上昇工程との間において、前記ワーク群に付与される磁力を前記磁力付与工程における磁力よりも低下させる
ワーク供給方法。
【請求項6】
前記第1上昇工程における前記ワーク供給ロボットの上昇量は、前記第2上昇工程における前記ワーク供給ロボットの上昇量よりも少ない
請求項5に記載のワーク供給方法。
【請求項7】
前記ワーク離間工程は、前記第1上昇工程と前記第2上昇工程との間において、前記ワーク供給ロボットの上昇を停止させる停止工程を更に含み、
前記停止工程において、前記ワーク群に付与される磁力を前記磁力付与工程における磁力よりも低下させる
請求項6に記載のワーク供給方法。
【請求項8】
積載エリアに積載されたワーク群から最上位のワークを分離させるための磁力が前記ワーク群に付与される前に、前記最上位のワークに接触するロボット接触処理と、
前記ワーク群から前記最上位のワークを分離させるための前記磁力が前記ワーク群に付与されている状態において、前記最上位のワークを前記ワーク群から離間させるワーク離間処理と
をワーク供給ロボットに実行させる、ワーク供給プログラムであって、
前記ワーク離間処理は、
前記ワーク群から前記最上位のワークを持ち上げる第1上昇処理と、
前記第1上昇処理後に更に前記最上位のワークを持ち上げる第2上昇処理と
を含み、
前記ワーク群に付与される磁力が前記第1上昇処理時よりも低下した後に、前記第2上昇処理を前記ワーク供給ロボットに実行させる
ワーク供給プログラム。
【請求項9】
前記第1上昇処理における前記ワーク供給ロボットの上昇量は、前記第2上昇処理における前記ワーク供給ロボットの上昇量よりも少ない
請求項8に記載のワーク供給プログラム。
【請求項10】
前記ワーク離間処理は、前記第1上昇処理と前記第2上昇処理との間において、前記ワーク供給ロボットの上昇を停止させる停止処理を更に含む
請求項9に記載のワーク供給プログラム。