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特開2024-141881粒状担体、粒状薬剤組成物及び吸収性物品、並びに粒状担体の製造方法
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  • 特開-粒状担体、粒状薬剤組成物及び吸収性物品、並びに粒状担体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141881
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】粒状担体、粒状薬剤組成物及び吸収性物品、並びに粒状担体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20241003BHJP
   A61L 9/012 20060101ALI20241003BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20241003BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20241003BHJP
   C08B 11/12 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CEP
A61L9/012
B01J20/26 D
B01J20/30
C08B11/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053742
(22)【出願日】2023-03-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.2022年5月20日 https://www.mdpi.com/2310-2861/8/5/321 https://www.mdpi.com/2310-2861/8/5/321/htm https://www.mdpi.com/2310-2861/8/5/321/pdf にて発表 2.2022年8月17日 第71回高分子討論会予稿集にて発表 3.2022年9月5日~7日 第71回高分子討論会にて発表 4.2022年9月5日~7日 第71回高分子討論会ポスター発表にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】田澤 寿明
(72)【発明者】
【氏名】大泉 つぐみ
(72)【発明者】
【氏名】森岡 佳保里
(72)【発明者】
【氏名】甲野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 彩華
【テーマコード(参考)】
4C090
4C180
4F070
4G066
【Fターム(参考)】
4C090AA05
4C090BA29
4C090BD24
4C090CA35
4C180AA02
4C180AA03
4C180AA16
4C180AA18
4C180AA19
4C180CA04
4C180CC02
4C180CC04
4C180CC15
4C180EA13X
4C180EA14X
4C180EA25X
4C180EA26X
4C180EA29X
4C180EA30X
4C180EA34X
4C180EB03X
4C180EB04X
4C180EB07X
4C180EB08X
4C180EB12X
4C180EB15X
4C180EB29X
4C180EB29Y
4C180EB41X
4C180EB43X
4C180EC01
4C180EC02
4C180FF07
4F070AA02
4F070AB03
4F070AC12
4F070AC32
4F070AC87
4F070AC92
4F070AE08
4F070AE10
4F070AE28
4F070DA31
4F070DA40
4F070DB06
4F070DC07
4F070DC16
4F070GB02
4F070GB06
4G066AB01D
4G066AB06D
4G066AC02B
4G066AC28D
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA28
4G066BA38
4G066CA43
4G066DA12
4G066DA13
4G066EA05
4G066FA03
4G066FA21
4G066FA33
4G066FA34
4G066FA38
4G066FA40
(57)【要約】
【課題】、吸水させることによって滑らかな表面を有し且つサイズが均一なゲル粒子を生じる生分解性の粒状担体を提供する。
【解決手段】粒状担体の製造方法は、アルカリ水溶液にカルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩を溶解させて、カルボキシアルキルセルロース塩水溶液を調製することと、カルボキシアルキルセルロース塩水溶液と架橋剤との混合物を調製することと、上記混合物を低極性有機溶媒中に分散させて懸濁液とするとともに、懸濁液中でカルボキシアルキルセルロース塩の架橋重合を進行させて、カルボキシアルキルセルロース塩の架橋体を含む分散粒子を形成することとを含む。架橋重合は、43℃以下の温度範囲内で10分以上の時間に亘って懸濁液を撹拌する第1工程と、46℃以上の温度範囲内で懸濁液を撹拌する第2工程とをこの順に行うことにより進行させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシアルキルセルロース塩の架橋体を含む粒状担体の製造方法であって、
アルカリ水溶液にカルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩を溶解させて、カルボキシアルキルセルロース塩水溶液を調製することと、
前記カルボキシアルキルセルロース塩水溶液と架橋剤との混合物を調製することと、
前記混合物を低極性有機溶媒中に分散させて懸濁液とするとともに、前記懸濁液中で前記カルボキシアルキルセルロース塩の架橋重合を進行させて、前記カルボキシアルキルセルロース塩の架橋体を含む分散粒子を形成することと
を含み、
前記架橋重合は、43℃以下の温度範囲内で10分以上の時間に亘って前記懸濁液を撹拌する第1工程と、46℃以上の温度範囲内で前記懸濁液を撹拌する第2工程とをこの順に行うことにより進行させる粒状担体の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程では、15℃乃至43℃の温度範囲内で10分乃至120分の時間に亘って前記懸濁液を撹拌し、前記第2工程では、46℃乃至80℃の温度範囲内で120分乃至360分の時間に亘って前記懸濁液を撹拌する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記分散粒子を前記懸濁液が含む分散媒から分離することと、
前記分散媒から分離した前記分散粒子を洗浄することと、
洗浄後の前記分散粒子を乾燥させて、乾燥状態の粒状担体を得ることと
を更に含んだ請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
乾燥状態の前記粒状担体として、全粒子の合計質量に占める、粒径が1.4mm以上3.35mm未満の範囲内にある粒子の合計質量の割合が75%以上であるものを得る請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
1質量%水溶液の25℃における粘度が5mPa・s乃至300mPa・sの範囲内にあるカルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩を前記カルボキシアルキルセルロース塩水溶液の調製に使用し、前記低極性有機溶媒として、25℃における比誘電率が10以下であり、37.8℃における動粘度が10mm/g以上である有機溶媒を使用する請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記低極性有機溶媒は流動パラフィン又はシリコーンオイルである請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記混合物中の前記カルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩の質量Xと前記架橋剤の質量Yとの比X/Yを10/2乃至10/5の範囲内とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記架橋剤は分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物である請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の製造方法によって製造される乾燥状態の粒状担体。
【請求項10】
カルボキシアルキルセルロースの塩の架橋体を含んだ乾燥状態の粒状担体であって、全粒子の合計質量に占める、粒径が1.4mmより大きく且つ3.35mm以下の範囲内にある粒子の合計質量の割合は75%以上であり、吸水させることによって滑らかな表面を有するゲル粒子を生じる粒状担体。
【請求項11】
全粒子の合計質量に占める、粒径が1.4mmより大きく且つ3.35mm以下の範囲内にある粒子の合計質量の割合は99%以下である請求項10に記載の粒状担体。
【請求項12】
全粒子の合計質量に占める、粒径が2.0mmより大きく且つ3.35mm以下の範囲内にある粒子の合計質量の割合は56%乃至86%の範囲内にある請求項10に記載の粒状担体。
【請求項13】
全粒子の合計質量に占める、粒径が1.4mm以下である粒子の合計質量の割合は10%以下であり、全粒子の合計質量に占める、粒径が3.35mmより大きい粒子の合計質量の割合は15%以下である請求項10に記載の粒状担体。
【請求項14】
薬剤担持に用いられる請求項9乃至13の何れか1項に記載の粒状担体。
【請求項15】
請求項9乃至13の何れか1項に記載の粒状担体と、前記粒状担体に担持され、芳香性、消臭性、脱臭性、防虫性、殺虫性又は防カビ性を有する薬剤から選択される少なくとも1種の薬剤を含有する液状組成物とを含んだ粒状薬剤組成物。
【請求項16】
芳香剤組成物又は消臭剤組成物である請求項15に記載の粒状薬剤組成物。
【請求項17】
請求項9乃至13の何れか1項に記載の粒状担体を含んだ吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状担体に関する。
【背景技術】
【0002】
高吸水性ポリマー(Superabsorbent polymer,SAP)は、水との接触により吸水して、瞬時に透明な水和ゲルとなる。このゲルは、圧力をかけても離水せずに水を保持するという特徴を有している。
【0003】
高吸水性ポリマーの用途は、多岐にわたっている。例えば、衛生用品分野では、高吸水性ポリマーは、紙おむつや婦人用の生理用ナプキン等の吸収性物品における高吸水性物質として使用されている。また、高吸水性ポリマーは、ゲル状製剤において、香料、消臭剤等の薬剤を含んだ水性液状組成物を吸収し担持する担体としても使用されている。このような高吸水性ポリマーからなる担体を含んだゲル状製剤は、容器から液がこぼれる心配がないことや意匠性に優れるという点から、据え置き型の芳香剤や消臭剤などに幅広く取り入れられている。
【0004】
現在、高吸水性ポリマー(SAP)としては、合成の容易さ、コストなどの観点から、ポリアクリル酸系SAPがその主流を占めている。しかしながら、ポリアクリル酸系SAPは、石油を原料とするため、原油価格の変動や高騰に伴い製造コストが影響を受ける問題があることに加え、製造時及び廃棄時の排出COが多い。特におむつ用途では、ポリアクリル酸系SAPは吸水状態で廃棄されるため、その焼却処分に大量のエネルギーを必要とし、排出COが特に多くなる。また、ポリアクリル酸系SAPは、生分解性がないことから、埋立て処理する場合に土壌汚染などの問題を生じる。
【0005】
このように高吸水性ポリマー(SAP)としてのポリアクリル酸系SAPの使用は、環境問題の要因となる虞がある。今後は新興国で紙おむつの需要が急速に増大することが予想されることもあり、高吸水性ポリマーとして生分解性を有する天然高分子系ポリマーの使用が所望されている。このような事情から、多糖類等の植物由来原料を使用した高吸水性ポリマーが提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1乃至3は、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose,CMC)又はCMC塩の架橋型重合体からなるセルロース系SAPを、ポリアクリル酸系SAPに替わる生分解性の高吸水性ポリマーとして提案している。このCMCは、水溶性セルロース誘導体の一つであり、セルロースの水酸基をクロロ酢酸等でエーテル化して合成されている。その水溶液は、アニオン性を示し、高粘性であり、分散性に優れていることから、増粘剤、分散・安定剤として広く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-140534号公報
【特許文献2】国際公開第2012/147255号
【特許文献3】特開2008-285611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、吸水させることによって滑らかな表面を有し且つサイズが均一なゲル粒子を生じる生分解性の粒状担体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によると、カルボキシアルキルセルロース塩の架橋体を含む粒状担体の製造方法であって、アルカリ水溶液にカルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩を溶解させて、カルボキシアルキルセルロース塩水溶液を調製することと、前記カルボキシアルキルセルロース塩水溶液と架橋剤との混合物を調製することと、前記混合物を低極性有機溶媒中に分散させて懸濁液とするとともに、前記懸濁液中で前記カルボキシアルキルセルロース塩の架橋重合を進行させて、前記カルボキシアルキルセルロース塩の架橋体を含む分散粒子を形成することを含み、前記架橋重合は、43℃以下の温度範囲内で10分以上の時間に亘って前記懸濁液を撹拌する第1工程と、46℃以上の温度範囲内で前記懸濁液を撹拌する第2工程とをこの順に行うことにより進行させる粒状担体の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の他の側面によると、前記第1工程では、15℃乃至43℃の温度範囲内で10分乃至120分の時間に亘って前記懸濁液を撹拌し、前記第2工程では、46℃乃至80℃の温度範囲内で120分乃至360分の時間に亘って前記懸濁液を撹拌する上記側面に係る製造方法が提供される。
【0011】
本発明の更に他の側面によると、前記分散粒子を前記懸濁液が含む分散媒から分離することと、前記分散媒から分離した前記分散粒子を洗浄することと、洗浄後の前記分散粒子を乾燥させて、乾燥状態の粒状担体を得ることとを更に含んだ上記側面の何れかに係る製造方法が提供される。
【0012】
本発明の更に他の側面によると、乾燥状態の前記粒状担体として、全粒子の合計質量に占める、粒径が1.4mmより大きく且つ3.35mm以下の範囲内にある粒子の合計質量の割合が75%以上であるものを得る上記側面の何れかに係る製造方法が提供される。
【0013】
本発明の更に他の側面によると、1質量%水溶液の25℃における粘度が5mPa・s乃至300mPa・sの範囲内にあるカルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩を前記カルボキシアルキルセルロース塩水溶液の調製に使用し、前記低極性有機溶媒として、25℃における比誘電率が10以下であり、37.8℃における動粘度が10mm/g以上である有機溶媒を使用する上記側面の何れかに係る製造方法が提供される。
【0014】
本発明の更に他の側面によると、前記低極性有機溶媒は流動パラフィン又はシリコーンオイルである上記側面の何れかに係る製造方法が提供される。
【0015】
本発明の更に他の側面によると、前記混合物中の前記カルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩の質量Xと前記架橋剤の質量Yとの比X/Yを10/2乃至10/5の範囲内とする上記側面の何れかに係る製造方法が提供される。
【0016】
本発明の更に他の側面によると、前記架橋剤は分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物である上記側面の何れかに係る製造方法が提供される。
【0017】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る製造方法によって製造される乾燥状態の粒状担体が提供される。
【0018】
本発明の更に他の側面によると、カルボキシアルキルセルロースの塩の架橋体を含んだ乾燥状態の粒状担体であって、全粒子の合計質量に占める、粒径が1.4mmより大きく且つ3.35mm以下の範囲内にある粒子の合計質量の割合は75%以上であり、吸水させることによって滑らかな表面を有するゲル粒子を生じる粒状担体が提供される。
【0019】
本発明の更に他の側面によると、全粒子の合計質量に占める、粒径が1.4mmより大きく且つ3.35mm以下の範囲内にある粒子の合計質量の割合は99%以下である上記側面の何れかに係る粒状担体が提供される。
【0020】
本発明の更に他の側面によると、全粒子の合計質量に占める、粒径が2.0mmより大きく且つ3.35mm以下の範囲内にある粒子の合計質量の割合は56%乃至86%の範囲内にある上記側面の何れかに係る粒状担体が提供される。
【0021】
本発明の更に他の側面によると、全粒子の合計質量に占める、粒径が1.4mm以下である粒子の合計質量の割合は10%以下であり、全粒子の合計質量に占める、粒径が3.35より大きい粒子の合計質量の割合は15%以下である上記側面の何れかに係る粒状担体が提供される。
【0022】
本発明の更に他の側面によると、薬剤担持に用いられる上記側面の何れかに係る粒状担体が提供される。
【0023】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る粒状担体と、前記粒状担体に担持され、芳香性、消臭性、脱臭性、防虫性、殺虫性又は防カビ性を有する薬剤から選択される少なくとも1種の薬剤を含有する液状組成物とを含んだ粒状薬剤組成物が提供される。
【0024】
本発明の更に他の側面によると、芳香剤組成物又は消臭剤組成物である上記側面に係る粒状薬剤組成物が提供される。
【0025】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る粒状担体を含んだ吸収性物品が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、吸水させることによって滑らかな表面を有し且つサイズが均一なゲル粒子を生じる生分解性の粒状担体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の実施形態に係る粒状担体の製造方法の一例を示すフロー図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る粒状担体の製造方法において逆相懸濁重合工程に採用可能な加熱条件の一例を示すグラフである。
図3図3は、例3-4で製造した粒状担体の写真であって、(a)は乾燥ゲル粒子を示し、(b)はその吸水ゲル粒子を示している。
図4図4は、参考例に係る粒状担体の粒形と、比較用の粉砕ゲル粒子の粒形とを対比した写真であって、(a)は例4-1で製造した粉砕ゲル粒子(乾燥状態)を示し、(b)は例1-2で製造した粒状担体2(乾燥状態)を示している。
図5図5は、参考例に係る粒状担体の粒形と、比較用の粉砕ゲル粒子の粒形とを対比した写真であって、(a)は例4-1で製造した粉砕ゲル粒子(吸水状態)を示し、(b)は例1-2で製造した粒状担体2(吸水状態)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。以下に記載する事項は、単独で又は複数を組み合わせて、上記側面の各々に組み入れることができる。
【0029】
本発明の実施形態に係る粒状担体は、カルボキシアルキルセルロース塩の架橋体を含むゲル粒子の乾燥物であり、以下に説明するように、低極性有機溶媒を分散媒とする懸濁液中での懸濁重合(すなわち、逆相懸濁重合)により形成される分散粒子由来のゲル粒子を乾燥させてなるものである。この逆相懸濁重合によるカルボキシアルキルセルロース塩の架橋体の形成を経て得られる分散粒子由来の粒状担体は、吸水させた場合に、表面が滑らかな、例えば形状が略球状であり、サイズが均一なゲル粒子を生じる。これらゲル粒子は、強度及び透明性にも優れる。本発明の実施形態に係る製造方法によれば、このような特性を有する粒状担体を、ゲル体の粉砕や分級などの工程を経ることなく簡便に得られる。
【0030】
本発明の実施形態に係る粒状担体の製造方法は、アルカリ水溶液にカルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩を溶解させて、カルボキシアルキルセルロース塩水溶液を調製することと、カルボキシアルキルセルロース塩水溶液と架橋剤との混合物を調製することと、上記混合物を低極性有機溶媒中に分散させて懸濁液とするとともに、この懸濁液中でカルボキシアルキルセルロース塩の架橋重合を進行させて、カルボキシアルキルセルロース塩の架橋体を含む分散粒子を形成することとを含む。そして、上記架橋重合は、第1条件下で懸濁液を撹拌する第1工程と、第2条件下で懸濁液を撹拌する第2工程とをこの順に行うことにより進行させる。
【0031】
この製造方法において、原料として使用するカルボキシアルキルセルロース又はその塩は、例えば、製造コストなどの観点から、炭素数1乃至3のアルキル基を有するカルボキシアルキルセルロース又はその塩であることが好ましい。カルボキシアルキルセルロース又はその塩としては、具体的には、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシブチルセルロース、及びこれらの塩が挙げられる。カルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
カルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩として、その1質量%水溶液の粘度が所定範囲内のものを選択することが好ましい。カルボキシアルキルセルロースの高分子鎖が長いほど溶解時の粘度が高くなり、分散媒体である低極性有機溶媒へ注入する際のハンドリング性が低下する。その結果、得られる粒状担体の粒子形状及び粒子サイズの均一性などに悪影響を及ぼす虞がある。他方、カルボキシアルキルセルロースの高分子鎖が長いほど吸水量は多くなる。吸水量が多いことは、粒状担体が薬剤担体用に用いられる場合、多くの薬剤を担持できることを意味する。しかしながら、吸水量が多くなりすぎると、ゲル強度の低下、離水の増大といった問題が生じ得る。これらの観点から、カルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩として、その1質量%水溶液の粘度が5mPa・s以上300mPa・s以下であるものを使用することが好ましい。
【0033】
ここで、カルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩の1質量%水溶液の粘度は、固形分が1質量%となるように調製したカルボキシアルキルセルロースの200mL水溶液についてB型粘度計で測定した粘度の値である。以下において、この条件で測定されるカルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩の1質量%水溶液の粘度を、単に「カルボキシアルキルセルロースの粘度」という。カルボキシアルキルセルロースの粘度は、10mPa・s以上100mPa・s以下であることが好ましく、20mPa・s以上50mPa・s以下であることがより好ましい。
【0034】
また、カルボキシアルキルセルロースの平均エーテル化度(平均置換度、DS)は、一例によれば、0.5乃至1.5である。この範囲の平均エーテル化度を有するカルボキシアルキルセルロースを用いると、ゲルの吸水性、強度を容易に向上させることができる。なお、平均エーテル化度(平均置換度)とは、セルロースを構成するグルコース単位の2、3および6位の水酸基に対する置換度の平均である。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に係る粒状担体の製造方法の一例を示すフロー図である。図1に示す製造方法は、アルカリ水溶液にカルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩を溶解させて、カルボキシアルキルセルロース塩水溶液を調製する工程S1と、工程S1で得られたカルボキシアルキルセルロース塩水溶液と架橋剤との混合物を調製する工程S2と、工程S2で得られた混合物を低極性有機溶媒中に分散させて懸濁液(逆相懸濁液)とし、この懸濁液中でカルボキシアルキルセルロース塩の架橋重合を進行させて、カルボキシアルキルセルロース塩の架橋体を含む分散粒子を形成する工程S3と、工程S3で形成された分散粒子を、懸濁液から分離(濾別)し、洗浄し、乾燥させる工程S4とを含んでいる。
【0036】
なお、図1に示す製造方法は、上記の通り一例である。本発明の実施形態に係る製造方法は、他の例では図1に示していない他の工程を更に含んでもよい。また、工程S4は、後述する通り、必要に応じて行う任意工程である。即ち、本発明の実施形態に係る製造方法は、工程S4を含まない製造方法であってもよい。
【0037】
工程S1では、アルカリ水溶液にカルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩を添加(注入)し、例えば常温下で撹拌しながら完全に溶解させて、カルボキシアルキルセルロース塩水溶液を調製する。工程S1において、カルボキシアルキルセルロース塩水溶液を調製するのに要する時間は適宜設定することができるが、一例によれば、1時間乃至5時間を目安とすることができる。カルボキシアルキルセルロースをアルカリ水溶液に添加した後において、必要に応じて、減圧によるか又は所定の時間常圧で静置することによる脱泡処理を行ってよい。
【0038】
工程S1において、カルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩としては、パルプ等のセルロースを出発原料とし、これを慣用の方法でカルボキシアルキル化して得たものを使用してもよいし、市販品のカルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩を用いてもよい。
【0039】
工程S1で得られるカルボキシアルキルセルロース塩水溶液が含有しているカルボキシアルキルセルロース塩は、例えば、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である。この場合、カルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩を添加するアルカリ水溶液としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有したアルカリ水溶液を使用する。カルボキシアルキルセルロース塩の例として、ナトリウム塩、カリウム塩、及びカルシウム塩が挙げられる。この場合、カルボキシアルキルセルロースを添加するアルカリ水溶液として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は水酸化カルシウムの水溶液を使用する。一例によれば、カルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を使用し、アルカリ水溶液として水酸化ナトリウムを使用して、工程S1においてCMC-Na水溶液を調製する。
【0040】
工程S2では、工程S1で得られたカルボキシアルキルセルロース塩水溶液と架橋剤とを混合して、カルボキシアルキルセルロース塩水溶液と架橋剤との混合物を調製する。以下において、単に「混合物」というとき、これは工程S2で調製したカルボキシアルキルセルロース塩水溶液と架橋剤との混合物を意味する。
【0041】
カルボキシアルキルセルロース塩水溶液と架橋剤との混合は、好ましくは15℃乃至43℃の温度範囲内で、より好ましくは20℃乃至35℃の温度範囲内で、例えばスタティックミキサーを用いて行う。この温度を低くすると、混合物の粘性が高くなり、ハンドリング性が低下する。また、工程S2では、カルボキシアルキルセルロース塩水溶液に架橋剤を添加した直後から、カルボキシアルキルセルロース塩の架橋反応が始まり、粘度が上昇し始める。この混合時の温度を適度に低くすることにより、架橋反応が急速又は過度に進行するのを抑制するとともに、優れたハンドリング性を達成できる。なお、混合後、必要に応じて減圧による脱泡操作を行ってもよい。
【0042】
上記の架橋剤は、カルボキシアルキルセルロースを架橋させ得るものであれば特に制限はない。この架橋剤としては、例えば、ポリエポキシ化合物、ポリグリシジル化合物、ポリアルデヒド化合物、ポリカルボン酸、ビニルエーテル化合物、メチロール化合物、ポリイソシアネート、ポリオキサゾリン化合物、ポリビニル化合物、ポリアクリレート化合物、ポリメタクリレート化合物、ポリハロゲン化合物、メチレンビスアクリルアミド、エピクロロヒドリン、ポリ酸無水物、クエン酸、メチレンビスアクリルアミド、及びグリシジルメタクリレート等の公知の化合物を用いることができる。
【0043】
架橋剤の好ましい具体例としては、(a)分子中に2以上の水酸基を有する化合物、(b)2以上の重合可能な二重結合を有する化合物、及び(c)2以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。
【0044】
(a)分子中に2以上の水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、ソルビタン脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット、1,3-プロパンジオール、及びソルビトールが挙げられる。
【0045】
(b)分子中に2以上の重合可能な二重結合を有する化合物としては、例えば、ビス(メタ)アクリルアミド、アリル(メタ)アクリルアミド、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、及びエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。
【0046】
(c)分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethylene glycol diglycidyl ether,EGDE)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、並びに、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、及びペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0047】
これらの中では、反応性及び得られる粒状担体の吸水性能の観点から、(b)分子中に2以上の重合可能な二重結合を有する化合物、及び(c)分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物が好ましく、(c)分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物がより好ましく、ポリグリシジルエーテルが更に好ましく、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)が特に好ましい。
【0048】
カルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩と架橋剤の配合比は、適宜設定することができる。粒状担体の形状、透明性及び強度の観点からは、カルボキシアルキルセルロース及び/又はその塩の質量Xと架橋剤の質量Yとの比X/Yは、10/2乃至10/5の範囲内とすることが好ましく、10/2乃至10/4の範囲内とすることがより好ましい。
【0049】
工程S3では、工程S2で得られた混合物を低極性有機溶媒中に添加(注入)し、分散させて懸濁液(逆相懸濁液)とし、この懸濁液中での架橋重合によりカルボキシアルキルセルロース塩の架橋体を含む分散粒子を形成する。
【0050】
工程S3において分散媒体として使用する低極性有機溶媒は、25℃における比誘電率が例えば10以下の低極性有機溶媒であり、分散質の上記混合物より極性が低い。このため、工程S3において調製される懸濁液は逆相懸濁液であり、カルボキシアルキルセルロース塩の架橋重合は逆相懸濁重合である。ここで、比誘電率は、静電容量計により測定される25℃における比誘電率である。分散媒体として使用する低極性有機溶媒は、比誘電率が3乃至6の範囲内にあることがより好ましい。
【0051】
比誘電率が10以下の低極性有機溶媒の例として、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類、流動パラフィン、及びシリコーンオイルが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0052】
工程S3で使用する上記低極性有機溶媒は、37.8℃における動粘度が10mm/s以上の粘性流体であることが好ましい。分散媒体が粘性流体である場合、生成する球状ゲル粒子の凝集を抑制するか、又は、球状ゲル粒子同士の粘着を抑制して、球状ゲル粒子の塊状化を抑制することができる。低極性有機溶媒の動粘度が10mm/s以上であることは、形状が球形状であり且つサイズが均一な粒状担体を得るために重要である。
【0053】
ここで、動粘度は、振動粘度計により測定される37.8℃における動粘度である。一例によれば、分散媒体として使用する低極性有機溶媒は、動粘度が10mm/s乃至100mm/sの範囲内にあり、他の例によれば15mm/s乃至80mm/sの範囲内にあり、更に他の例によれば20mm/s乃至50mm/sの範囲内にある。
【0054】
比誘電率が10以下の低極性有機溶媒として挙げた上記具体例のなかでも、流動パラフィン及びシリコーンオイルは、粘性流体であるため、工程S3において使用する上記低極性有機溶媒として特に好ましい。
【0055】
流動パラフィンとしては、常温で液状のパラフィンであれば特に限定されず、例えば、炭素原子数が12乃至50の液状飽和炭化水素等が挙げられ、n-パラフィン、イソパラフィン、及びナフテンの何れであってもよい。また、市販品として、例えば、モレスコホワイト、モレスコバイオレス(何れも商品名、松村石油研究所社製)、スタノール、クリストール、エッソホワイトオイル、又はピュアレックス(何れも商品名、エッソ石油社製)を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
シリコーンオイルとしては、常温で液状であり、シロキサン構造を有するものであれば特に限定されず、例えば、ジメチルシリコーンオイル等のポリシロキサンオイル等が挙げられる。シリコーンオイルとして、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、シアノ基、メルカプト基、トリフルオロプロピル基、クロルフェニル基、及び長鎖アルキル基等の官能基を有しているか、又は、ポリエーテルやアルコール等で変性させた変性シリコーンオイルも用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
工程S3において、低極性有機溶媒に前述した架橋剤を更に添加しておくことにより、ゲル粒子に表面架橋(二次架橋)を生じさせて、それらの表面層に架橋密度の高い部分を設けてもよい。表面架橋(二次架橋)を生じさせることにより、吸水量を維持しながらゲル強度を向上させることができる。
【0058】
工程S3において、工程S2で得られた混合物を添加する直前の低極性有機溶媒は、十分に低い温度に調節しておく。低極性有機溶媒の温度は、15℃乃至43℃の範囲内にしておくことが好ましく、15℃乃至30℃の範囲内の温度にしておくことがより好ましい。
【0059】
また、低極性有機溶媒へ添加する直前における、工程S2で得られた混合物も、十分に低い温度に調節しておく。この混合物の温度は、カルボキシアルキルセルロース塩水溶液と架橋剤との混合時の温度について上述した範囲内としておくことが好ましい。
【0060】
なお、上記の通り、カルボキシアルキルセルロース塩水溶液に架橋剤を添加した直後から、カルボキシアルキルセルロース塩の架橋反応が始まる。カルボキシアルキルセルロース塩水溶液と架橋剤とを混合してから、この混合物を低極性有機溶媒へ添加するまでの時間は、30分以内とすることが好ましい。
【0061】
工程S3では、工程S2で得られた混合物の添加前から低極性有機溶媒の撹拌を開始し、この撹拌は、少なくとも架橋重合が完了するまで継続する。撹拌装置としては、例えば、メカニカルスターラー等が挙げられ、撹拌翼としては、例えば、アンカー型、プロペラ型、及びパドル型が挙げられ、適宜選択して使用することができる。一例によれば、工程S3において、低極性有機溶媒は50乃至500rpmの回転速度で撹拌し、他の例によれば200乃至500rpmの回転速度で撹拌し、更に他の例によれば250乃至400rpmの回転速度で撹拌する。
【0062】
工程S3において、工程S2で得られた混合物を低極性有機溶媒中に添加(注入)する方法としては、一例として、低極性有機溶媒の液面上からピペットを用いて1滴ずつ混合物を滴下する方法(以下において、「滴下注入法」ということがある。)が挙げられ、他の例として、低極性有機溶媒の液中にピペットを浸しながら、混合物を連続的に注入する方法(以下において、「連続注入法」ということがある。)が挙げられる。滴下注入法は、分散粒子の粒径が揃い易い点で好ましい。連続注入法は、短時間で容易に実施できる点で好ましい。
【0063】
工程S3において、カルボキシアルキルセルロース塩の架橋重合反応に要する合計時間は、適宜設定することができる。一例によれば、1時間乃至6時間を目安とすることができる。
【0064】
工程S3では、上記の架橋重合を、第1条件下で懸濁液を撹拌する第1工程と、第2条件下で懸濁液を撹拌する第2工程とをこの順に行うことにより進行させる。これについて、図2を参照しながら説明する。
【0065】
図2は、本発明の実施形態に係る粒状担体の製造方法において逆相懸濁重合工程に採用可能な加熱条件の一例を示すグラフである。図2において、「常温」と表記した曲線は、本発明の実施形態に係る粒状担体の製造方法において逆相懸濁重合工程に採用可能な加熱条件の一例を示している。また、「加温」と表記した曲線は、比較例に係る加熱条件の一例を示している。
【0066】
第1条件下での撹拌は、第1温度T1である43℃以下の温度範囲内で10分以上の時間t1に亘る懸濁液の撹拌である。なお、ここに記載する時間t1は、工程S2で得られた混合物の低極性有機溶媒への添加を完了した時点を起点とする経過時間である。第1条件下での撹拌は、15℃乃至43℃の温度範囲内で10分乃至120分の時間t1に亘る撹拌であることが好ましく、15℃乃至40℃の温度範囲内で20分乃至60分の時間に亘る撹拌であることがより好ましい。
【0067】
第2条件下での撹拌は、第1温度T1よりも高い第2温度T2である46℃以上の温度範囲内での懸濁液の撹拌である。第2条件下での撹拌は、46℃乃至80℃の温度範囲内で120分乃至360分の時間t2に亘る撹拌であることが好ましく、46℃乃至60℃の温度範囲内で240分乃至300分の時間t2に亘る撹拌であることがより好ましい。
【0068】
工程S2で得られた混合物を低極性有機溶媒中に添加した直後では、分散粒子の合一や分裂を生じ得る。「加温」と表記した曲線で示すように、工程S2で得られた混合物の低極性有機溶媒への添加時の温度を高く設定し且つその後も温度を速やかに上昇させた場合、架橋重合が急速に進行する。それ故、合一した分散粒子の分裂や、分裂した分散粒子の合一は生じ難い。従って、工程S3の終了時における分散粒子の粒径は、十分には均一化されていない。
【0069】
これに対し、本実施形態の方法では、「常温」と表記した曲線で示すように、先ず、第1工程において、架橋重合が急速には進行しない温度条件下で、十分に長い時間に亘って撹拌を継続する。それ故、第1工程では、分散粒子の合一や分裂による粒径の均一化が進行する。また、第1工程では、架橋重合は穏やかに進行するため、粒径の均一化が進行すると、分散粒子の更なる合一や分裂は生じ難くなる。従って、第1工程を終了した時点における分散粒子の粒径は均一である。
【0070】
そして、本実施形態の方法では、第2工程における撹拌をより高い温度で行う。これにより、架橋重合は十分に進行する。従って、十分に短い時間で工程S3を完了させることができる。
【0071】
その後、図1に示すように、工程S4を実施する。即ち、工程S3において懸濁液中に生成させた分散粒子を、例えば濾別により懸濁液から取り出し、必要に応じて洗浄及び乾燥へ供する。濾別後の洗浄は、例えば、ゲル粒子の表面に付着した低極性有機溶媒を界面活性剤等の洗剤水溶液で洗浄すること、及び/又は、ゲル粒子をエタノールに浸漬させ脱水・脱アルカリすることを含む。乾燥は、例えば風乾により行うことができる。低極性有機溶媒としてn-ヘキサンなどの沸点の低い溶媒を使用した場合、減圧蒸留などの方法を使用することにより、洗浄を行うことなくゲル粒子表面の溶媒を除去することができる。
【0072】
なお、上記の通り、工程S4は任意工程であり、分散粒子は懸濁液から取り出すことなく、懸濁液が含む分散媒体中に分散させた状態のまま製品として流通させてもよい。即ち、本実施形態に係る粒状担体は、工程S3で形成される懸濁液中での逆相懸濁重合によって生じさせた分散粒子であるゲル粒子であってもよく、このゲル粒子は、分散媒体から取り出したものであってもよく、分散媒体中に分散させていてもよい。また、本実施形態に係る粒状担体は、上記ゲル粒子の乾燥物であってもよい。或いは、本実施形態に係る粒状担体は、上記乾燥物に液体を吸収させてゲル粒子としたものであってもよい。なお、これら乾燥物は、吸水させることによって、滑らかな表面を有するゲル粒子を、例えば、乾燥前とほぼ等しい形状のゲル粒子を生じ得る。
【0073】
上記の通り、本実施形態の方法によると、粒径が均一なゲル粒子を製造することができる。これらゲル粒子は粒径が均一であるので、その乾燥物、即ち、乾燥状態の粒状担体も粒径が均一である。
【0074】
一例によれば、乾燥状態の粒状担体は、全粒子の合計質量に占める、粒径が1.4mmより大きく且つ3.35mm以下の範囲内にある粒子の合計質量の割合は75%以上である。この場合、全粒子の合計質量に占める、粒径が1.4mmより大きく且つ3.35mm以下の範囲内にある粒子の合計質量の割合は、一例によれば99%以下である。また、この場合、一例によれば、全粒子の合計質量に占める、粒径が1.4mm以下である粒子の合計質量の割合は10%以下であり、全粒子の合計質量に占める、粒径が3.35mmよりも大きい粒子の合計質量の割合は15%以下である。そして、この場合、全粒子の合計質量に占める、粒径が2.0mmよりも大きく且つ3.35mm以下の範囲内にある粒子の合計質量の割合は、一例によれば、56%乃至86%の範囲内にある。
【0075】
他の例によれば、乾燥状態の粒状担体は、全粒子の合計質量に占める、粒径が1.4mmより大きく且つ3.35mm以下の範囲内にある粒子の合計質量の割合は80%以上である。この場合、全粒子の合計質量に占める、粒径が1.4mmより大きく且つ3.35mm以下の範囲内にある粒子の合計質量の割合は、一例によれば99%以下である。また、この場合、一例によれば、全粒子の合計質量に占める、粒径が1.4mm以下である粒子の合計質量の割合は8%以下であり、全粒子の合計質量に占める、粒径が3.35mmよりも大きい粒子の合計質量の割合は12%以下である。そして、この場合、全粒子の合計質量に占める、粒径が2.0mmよりも大きく且つ3.35mm以下の範囲内にある粒子の合計質量の割合は、一例によれば、61%乃至81%の範囲内にある。
【0076】
更に他の例によれば、乾燥状態の粒状担体は、全粒子の合計質量に占める、粒径が1.4mmより大きく且つ3.35mm以下の範囲内にある粒子の合計質量の割合は84%以上である。この場合、全粒子の合計質量に占める、粒径が1.4mmより大きく且つ3.35mm以下の範囲内にある粒子の合計質量の割合は、一例によれば99%以下である。また、この場合、一例によれば、全粒子の合計質量に占める、粒径が1.4mm以下である粒子の合計質量の割合は7%以下であり、全粒子の合計質量に占める、粒径が3.35mmよりも大きい粒子の合計質量の割合は9%以下である。そして、この場合、全粒子の合計質量に占める、粒径が2.0mmよりも大きく且つ3.35mm以下の範囲内にある粒子の合計質量の割合は、一例によれば、66%乃至76%の範囲内にある。
【0077】
全粒子の合計質量に占める、粒径が1.4mm以下である粒子の合計質量の割合は、一例によれば0%以上であり、他の例によれば1%以上であり、更に他の例によれば3%以上である。また、全粒子の合計質量に占める、粒径が3.35mmよりも大きい粒子の合計質量の割合は、一例によれば0%以上であり、他の例によれば1%以上であり、更に他の例によれば3%以上である。
【0078】
なお、上記の割合は、以下の方法によって得られる値である。即ち、乾燥状態の粒状担体を、JIS Z8801-1:2019で規定される公称目開きが3.35mm、2mm及び1.4mmである3つのふるいで篩別して、4つの粒子群を得る。そして、これら4つの粒子群の質量を測定する。これによって得られた値から、上記の割合を算出する。 上記の方法によって得られる乾燥状態の粒状担体は、様々な粒径を有し得る。この粒径は、例えば、工程S3、特には工程S3の第1工程における撹拌翼の回転速度、第1工程における加熱条件、低極性有機溶媒の粘度、及び、低極性有機溶媒へ添加する上記混合物の粘度等によって調節可能である。なお、乾燥物の粒径が均一である場合、これらを吸水させることによって生じるゲル粒子も粒径が均一である。
【0079】
乾燥状態の粒状担体は、例えば、紙おむつ、生理用品(ナプキン、タンポンなど)、パット(汗取りパット、母乳パット、失禁パットなど)、及びペット用トイレ等の吸収性物品において、高吸水性物質として使用することができる。
【0080】
粒状担体は、薬剤担体として用いることもできる。即ち、乾燥状態の粒状担体に、例えば、芳香性、消臭性、脱臭性、防虫性、殺虫性又は防カビ性等を有する薬剤から選択される少なくとも1種の薬剤を含有した液状組成物を吸収担持させる。これにより、粒状芳香剤組成物、粒状消臭剤組成物、粒状脱臭剤組成物、粒状防虫剤組成物、粒状殺虫剤組成物、及び粒状防カビ剤組成物等の粒状薬剤組成物等のゲル製剤を提供することができる。
【0081】
このような粒状薬剤組成物からなるゲル製剤において、粒状担体に吸収担持させる液状組成物が含有する薬剤成分としては、目的に応じて一般的に使用されている各種薬剤を使用することができる。
例えば、芳香性を有する薬剤の具体例として、麝香、霊猫香、竜延香等の動物性香料、アビエス油、アクジョン油、アルモンド油、アンゲリカルート油、ページル油、ベルガモット油、パーチ油、ボアバローズ油、カヤブチ油、ガナンガ油、カプシカム油、キャラウェー油、カルダモン油、カシア油、セロリー油、シナモン油、シトロネラ油、コニャック油、コリアンダー油、クミン油、樟脳油、バジル油、エストゴラン油、ユーカリ油、フェンネル油、ガーリック油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、ホップ油、レモン油、レモングラス油、ナツメグ油、マンダリン油、ハッカ油、オレンジ油、セージ油、スターアニス油、テレピン油、ローズマリー油、ユーカリ油、アニス油、ラベンダー油、クミン油、シナモン油、及びヒバ油等の植物性香料等の香料等を挙げることができる。また、合成香料又は抽出香料等の人工香料を用いることもでき、具体例として、ピネン及びリモネン等の炭化水素系香料、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、メントール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、及びβフェネチルアルコール等のアルコール系香料、アネトール及びオイゲノール等のフェノール系香料、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ベンズアルデヒド、及びシンナミックアルデヒド等のアルデヒド系香料、カルボン、メントン、樟脳、アセトフェノン、及びイオノン等のケトン系香料、γ-ブチルラクトン、クマリン、及びシネオール等のラクトン系香料、並びに、オクチルアセテート、ベンジルアセテート、シンナミルアセテート、プロピオン酸ブチル、及び安息香酸メチル等のエステル系香料等を挙げることができる。これらは、1種を単独で使用することができ、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0082】
消臭性を有する薬剤は、揮散性薬剤であっても非揮散性薬剤であってもよい。消臭性を有する薬剤の具体例として、酸化チタン及び酸化亜鉛等の金属酸化物、フラボノイド化合物、カテキン、及びポリフェノール等の植物抽出物又はその誘導体、シクロデキストリン又はその誘導体、並びにアミン化合物を挙げることができる。これらは、1種を単独で使用することができ、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0083】
脱臭性を有する薬剤の具体例として、炭素系吸着剤、例えば、ヤシ殻活性炭等の活性炭及び備長炭等の木炭、並びに、ゼオライト、シリカゲル、及び層状アルミノケイ酸亜鉛等のシリカ系吸着剤等を挙げることができる。これらは、1種を単独で使用することができ、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0084】
防虫性又は殺虫性を有する薬剤の具体例として、エンペントリン、トランスフルスリン、アレスリン、フェノトリン、エミネンス、及びプロフルトリン等のピレスロイド系殺虫成分、並びに、パラジクロロベンゼン、ナフタリン、樟脳、2-フェノキシエタノール、ヒノキチオール、及びアリルイソチオシアネート等の揮散性防虫・殺虫成分等を挙げることができる。これらは、1種を単独で使用することができ、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0085】
液状組成物には、上述した薬剤以外に各種添加剤を使用することができる。具体例としては、界面活性剤、着色料、防腐剤及びpH調整剤が挙げられる。
【0086】
粒状薬剤組成物は、例えば、乾燥状態の粒状担体に液状薬剤組成物を含浸させることにより製造することができる。
【0087】
粉砕により細粒化した粉砕ゲル粒子(クラッシュゲル)は、典型的には鋭い角部を有している破片形状であり、球状とは言い難い歪な形をした粒子がその多くを占めている。また、このような粉砕ゲル粒子は、粒径が不均一である。それ故、このような粉砕ゲル粒子の乾燥物に液体を吸収させることによって得られる吸水ゲル粒子も、鋭い角部を有しているものがその多くを占め、また、粒径が不均一である。
【0088】
このような吸水ゲル粒子を容器に充填した場合、粒子間の隙間が小さく、空気の流動が起こり難い。空気の流動が起こり難いと、吸水ゲル粒子が香料等の揮散性薬剤又は非揮散性消臭剤等の非揮散性薬剤を含んでいる場合に、薬剤を効率的に機能させることができない。また、このような粒径及び形状が不均一な粉砕ゲル粒子の乾燥物又は吸水ゲル粒子は、美観の観点からも好ましいものではない。
【0089】
これに対し、図1及び図2を参照しながら説明した方法によると、上述した通り、乾燥状態の粒状担体を均一な粒径で製造することができる。これら粒状担体は、水や液状薬剤組成物等の液体を吸収させた場合に、表面が滑らかな、例えば形状が略球状であり、サイズが均一なゲル粒子を生じる。
【0090】
このようなゲル粒子を容器に充填した場合、粒子間の隙間が大きく、空気の流動が起こり易い。それ故、ゲル粒子が香料等の揮散性薬剤又は非揮散性消臭剤等の非揮散性薬剤を含んでいる場合に、薬剤を効率的に機能させることができる。また、このような粒径及び形状が均一なゲル粒子は、美観の観点からも好ましい。そして、このようなゲル粒子を吸水させることによって生じる乾燥状態の粒状担体も、粒径及び形状が均一であり、優れた美観を有している。
【0091】
また、滑らかな表面を有しているゲル粒子は、破砕によって細粒化した粉砕ゲル粒子とは異なり、粒子表面における光散乱を生じ難い。即ち、図1及び図2を参照しながら説明した方法によって得られる乾燥状態の粒状担体は、これに液体を吸収させた場合に、透明性に優れたゲル粒子を生じる。この点でも、これらゲル粒子は美観に優れている。
【0092】
更に、滑らかな表面を有しているゲル粒子は、破砕によって細粒化した粉砕ゲル粒子と比較して破壊を生じ難い。同様に、滑らかな表面を有しているゲル粒子を生じる乾燥状態の粒状担体も、破砕によって細粒化した粉砕ゲル粒子の乾燥物と比較して破壊を生じ難い。即ち、図1及び図2を参照しながら説明した方法によって得られる乾燥状態の粒状担体及びこれに液体を吸収させてなるゲル粒子は、強度に優れている。
【実施例0093】
≪例1≫ CMC-Na粘度
<例1-1:粒状担体1の製造>
粘度が10乃至20mPa・sの範囲内にあるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)(ダイセル1110、ダイセルミライズ株式会社製)を準備した。ここで、粘度は、CMC-Naの1質量%水溶液の25℃における粘度を、上掲の方法で測定した粘度である。
【0094】
上記CMC-Na(ダイセル1110)10.0gを0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液100mLに溶解させた。この水溶液に、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)(デナコールEX-810、ナガセケムテックス株式会社製)4.0gを滴下し、20分間攪拌した後、減圧による脱泡操作を5分間行った。これにより、CMC-Na水溶液とEGDEとの混合物を得た。なお、本例において、CMC-Naと架橋剤EGDEの配合質量比(CMC-Na/EGDE)は、10/4である。
【0095】
次いで、得られた混合物を、60℃に加温し且つ撹拌速度(撹拌翼の回転速度)250rpmで攪拌している流動パラフィン(モレスコホワイトP-100、株式会社MORESCO製、動粘度20.5mm/s)に注入した。このとき、混合物の注入には高粘度用ピペットを用い、ピペット先端を流動パラフィンに浸しながら混合物を注入した。上記の温度に保ったまま流動パラフィン中で4時間反応させた。反応後、生成したゲル粒子を濾別し、ゲル粒子表面に付着した流動パラフィンを適当量の界面活性剤水溶液で流し落とした。更に、ゲル粒子をエタノールに浸漬させて脱水・脱アルカリし、その後、風乾することにより、白色-薄黄色状の固形物(粒状担体1)を得た。
【0096】
<例1-2乃至例1-6:粒状担体2乃至6の製造>
CMC-Na(ダイセル1110、粘度10乃至20mPa・s)の代わりに、後掲の表1に記載のCMC-Naを使用したこと以外は、例1-1と同様の方法で粒状担体2乃至6を製造した。
【0097】
<評価>
[流動パラフィンへの注入時のハンドリング性(注入のしやすさ)]
各粒状担体の製造過程において、CMCナトリウム塩とEGDEとの混合物を流動パラフィンへ注入する際のハンドリング性を、ピペットへの吸引のし易さ、及び、ピペットから流動パラフィンへの注入のし易さの観点から、下記基準により評価した。評価結果を表1に示す。
A:容易に吸引、注入が可能。
B:吸引、注入に少し時間を要するが、困難性を伴うものではない。
C:吸引、注入が困難。
【0098】
[粒状担体(乾燥ゲル)の形状]
得られた各粒状担体(乾燥ゲル)の形状を、目視にて下記基準により評価した。評価結果を表1に示す。
A:球状の乾燥ゲルがほぼ全体を占め、球状以外の乾燥ゲルは殆ど見られない。
B:球状の乾燥ゲルが多くを占めている。扁平状又は糸状の乾燥ゲルが混在するが、目立つ程度ではない。
C:糸状の乾燥ゲルが多くを占め、球状の乾燥ゲルが少ない。
【0099】
[透明性]
得られた各粒状担体(乾燥ゲル)をイオン交換水に含侵し、吸水可能な最大量の水を担持させ、吸水ゲル粒子にしたものの透明性を、目視にて下記基準により評価した。評価結果を表1に示す。
A:白濁はなく全体的に透明性が高い。
B:一部白濁しているが8割以上の部分は透明であり、全体的に見ると透明性が感じられる。
C:白濁している部分が多いか、又は、全体が白濁しており、全体的に透明性が低い。
【0100】
[強度]
得られた各粒状担体(乾燥ゲル粒子)1gを200mLのビーカーに充填し、イオン交換水を150mL加えて一晩静置し、吸水可能な最大量の水を担持させた吸水ゲル粒子を得た。この吸水ゲル粒子を濾別し、余剰の水を除去した後、吸水ゲル粒子を再度200mLのビーカーに充填した。このとき、容器内は、最下部から最上部までおよそ6段の粒子が積み上がった状態となった。これを評価用サンプルとし、下記基準により強度を評価した。評価結果を表1に示す。
A:容器の最下部に位置し自重の約6倍の重さがかかる粒子が球形を保ち、粒子が充填された構造の全体にわたり、粒子間に均一なサイズの間隙が生じる強度。
B:容器の最下部に位置し自重の約6倍の重さがかかる粒子の少なくとも一部に球形を保つことができない粒子が存在し、最下部の粒子間に間隙が生じない部分が生じる強度
C:自重だけでも球形を保つことができない強度。
【0101】
【表1】
【0102】
表1より、例1-1乃至1-5の粒状担体1乃至5は、粒子形状、透明性及び強度に優れることが分かる。また、例1-1乃至例1-5は、流動パラフィンへの混合物注入時のハンドリング性にも優れ、逆相懸濁重合により簡便に粒子形状、透明性及び強度に優れる粒状担体(ゲル粒子)が得られることが分かる。一方、粘度が高いCMCを使用した例1-6(比較例)においては、逆相懸濁重合による球状ゲル粒子の製造が困難であることが分かる。
【0103】
≪例2≫ CMC-Na/架橋剤(配合質量比)
<例2-1乃至例2-2:粒状担体7乃至8の製造>
CMC-NaとEGDEとの配合質量比を表2のように変更したこと以外は例1-2と同様の方法で、粒状担体7及び8を製造した。各粒状担体について、例1-1と同様の方法で、乾燥ゲル形状、透明性及び強度を評価した。評価結果を表2に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
なお、例2-1は、強度評価がBであるが、粒子間の間隙が生じなかった部分は充填された粒子の最下部の一部のみであり、空気の流動性は確保できるものであった。
【0106】
≪例3≫ 流動パラフィンの動粘度と撹拌速度
<例3-1乃至例3-5:粒状担体9乃至13の製造>
流動パラフィン及び撹拌速度を表3のように変更したこと以外は例1-2と同様の方法で、粒状担体を製造した。各粒状担体について、例1-1と同様の方法で乾燥ゲル形状を評価した。評価結果を表3に示す。
【0107】
【表3】
【0108】
低粘度(動粘度4.51mm/s)の流動パラフィンを使用した例3-1及び例3-2については、混合物が底に溜まり合一してしまい、粒状のゲル粒子を得ることができなかった。
【0109】
例3-3は、強度評価がBであるが、粒子間の間隙が生じなかった部分は充填された粒子の最下部の一部のみであり、空気の流動性は確保できるものであった。
【0110】
≪例4≫ ゲル粒子の粒子形状の対比
<例4-1:粉砕ゲル(クラッシュゲル)の製造>
CMC-Na(ダイセル1120、ダイセルミライズ株式会社)10.0gを0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液100mLに溶解させた。この水溶液にEGDE(デナコールEX-810、ナガセケムテックス株式会社)4.0gを滴下し、20分間攪拌した。減圧による脱泡操作を5分間行った後、60℃の恒温槽内で4時間反応させた。反応後、生成したゲル状物をビーカーから取り出し、ミキサーを用いて粗く粉砕した。得られた粉砕ゲルをエタノールに浸漬させて脱水・脱アルカリし、その後、風乾することにより、白色-薄黄色状の固形物を得た。
【0111】
<評価>
図4の(a)は、例4-1で製造した乾燥粉砕ゲル粒子の写真であり、図5の(a)はその吸水状態の写真である。また、図4の(b)は、例1-2で製造した粒状担体2(乾燥ゲル粒子)の写真であり、図5の(b)はその吸水状態の写真である。
【0112】
図4の(a)と(b)との対比、並びに、図5の(a)と(b)との対比から、粒状担体と粉砕ゲル粒子とは粒子形状が全く異なることが明らかである。
【0113】
すなわち、図4の(a)及び図5の(a)から、水溶液重合により形成された含水ゲルを粉砕する従来の方法で得られる粉砕ゲル粒子は、鋭い角部を有している破片形状であり、球状とは言い難い歪な形をした粒子がその多くを占めていることが分かる。他方、図4の(b)及び図5の(b)から、逆相懸濁重合により形成される分散粒子由来のゲル粒子は、形状が球状であり、粒子サイズが粉砕ゲル粒子と比較してより均一である。以上から、逆相懸濁重合を利用した製造方法によれば、高品質のゲル粒子が簡便に得られることが分かる。
【0114】
≪例5≫ 粒子形状及び粒子サイズの均一性
図3は、例3-4で得られた粒状担体12の写真である。(a)が乾燥ゲル粒子であり、(b)がその吸水ゲル粒子である。図3の写真から、粒状担体12は、略球状の粒子が占め、且つ、粒子サイズの均一性にも優れることが分かる。
【0115】
≪例6≫ 加熱条件と粒子サイズの均一性
<例6-1:粒状担体14の製造>
粘度が10乃至20mPa・sの範囲内にあるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)(ダイセル1120、ダイセルミライズ株式会社製)を準備した。ここで、粘度は、CMC-Naの1質量%水溶液の25℃における粘度を、上掲の方法で測定した粘度である。
【0116】
上記CMC-Na(ダイセル1120)10.0gを0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液100mLに溶解させた。その後、これを一晩静置することにより脱泡した。この水溶液に、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)(デナコールEX-810、ナガセケムテックス株式会社製)4.0gを滴下し、250rpmの撹拌速度で30分間に亘って攪拌した。これにより、CMC-Na水溶液とEGDEとの混合物を得た。なお、本例において、CMC-Naと架橋剤EGDEの配合質量比(CMC-Na/EGDE)は、10/4である。
【0117】
次いで、500mLのガラスビーカー内に入れた流動パラフィン(モレスコホワイトP-100、株式会社MORESCO製、動粘度20.5mm/s)を、その温度を室温に保ったまま、250rpmの撹拌速度で撹拌し、これに上記の混合物を注入した。このとき、混合物の注入には高粘度用ピペットを用い、ピペット先端を流動パラフィンに浸しながら混合物を注入した。撹拌を継続したまま、混合物の注入を完了してから5分間は加温を行わずに液温を室温に保ち、その後、加温を開始した。
【0118】
液温は、図2において「常温」と表記した曲線で示すように変化した。即ち、液温は、加温開始から右肩上がりに上昇した。液温が48.2℃に達した時点から4.5時間に亘る撹拌を更に行った。
【0119】
その後、生成したゲル粒子を濾別し、ゲル粒子表面に付着した流動パラフィンを適当量の界面活性剤水溶液で流し落とした。更に、ゲル粒子をエタノールに浸漬させて脱水・脱アルカリした。その後、ゲル粒子を室温で一晩に亘って乾燥させ、その後、減圧乾燥を更に行った。減圧乾燥は、ポンプを繋いだデシケータを使用して、約3時間に亘って行った。以上のようにして、白色-薄黄色状の固形物(粒状担体14)を得た。
【0120】
<例6-2:粒状担体15の製造>
以下の点を除き、例6-1と同様の方法で粒状担体15を製造した。
即ち、CMC-Na水溶液とEGDEとの混合物を注入するのに先立って、流動パラフィンの温度を55.8℃に加温しておいた。そして、流動パラフィンを250rpmの撹拌速度で撹拌し、これに上記混合物を注入した。混合物の注入は、例6-1と同様の方法で行った。
【0121】
上記の条件で加温を行ったところ、液温は、図2において「加温」と表記した曲線で示すように変化した。即ち、液温は、右肩上がりに上昇した。液温が49.2℃に達した時点から4.5時間に亘る撹拌を更に行った。
【0122】
<評価>
粒状担体14及び15の各々を、目開きが3.35mm、2mm、及び1.4mmのふるいを用いて、D(粒径)>3.35mm、3.35mm≧D>2mm、2mm≧D>1.4mm、1.4mm≧Dに分級した。結果を表4に示す。
【0123】
【表4】
【0124】
表4から、粒状担体14は、粒状担体15と比較して、粒子サイズの均一性に更に優れていることが分かる。
【0125】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0126】
S1…工程、S2…工程、S3…工程、S4…工程。
図1
図2
図3
図4
図5