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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141889
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 43/00 20060101AFI20241003BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F25B43/00 F
F25B1/00 385Z
F25B1/00 304Z
F25B1/00 361A
F25B1/00 371Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053755
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 潤己
(72)【発明者】
【氏名】池辺 浩樹
(57)【要約】
【課題】アキュムレータの液面高さを精度よく推定できる冷凍装置を提供する。
【解決手段】冷凍装置は、圧縮機(21)、放熱器(22,42)、膨張弁(26,41)、蒸発器(42,22)、該圧縮機(21)に接続される吸入管(64)、該吸入管(64)に繋がるアキュムレータ(24)、アキュムレータ(24)内の液冷媒を前記吸入管(64)に送る液流路(65)、および該液流路(65)に設けられる減圧機構(66,67)を有する冷媒回路(11)を備える。冷凍装置は、液流路(65)の圧力損失に基づきアキュムレータ(24)の液面高さを推定するコントローラ(C)を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(21)、放熱器(22,42)、膨張弁(26,41)、蒸発器(42,22)、該圧縮機(21)に接続される吸入管(64)、該吸入管(64)に繋がるアキュムレータ(24)、該アキュムレータ(24)内の液冷媒を前記吸入管(64)に送る液流路(65)、および該液流路(65)に設けられる減圧機構(66,67)を有する冷媒回路(11)と、
前記液流路(65)の圧力損失に基づき前記アキュムレータ(24)の液面高さを推定するコントローラ(C)とを備える冷凍装置。
【請求項2】
前記コントローラ(C)は、前記液流路(65)の圧力損失と、前記吸入管(64)のうち前記アキュムレータ(24)から前記液流路(65)の接続部までの間のガス流路(64a)の圧力損失とに基づいて、前記アキュムレータ(24)の液面高さを推定する
請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記コントローラ(C)は、前記液流路(65)における減圧機構(66,67)の前後の圧力差、前記液流路(65)の液冷媒の流量、または前記減圧機構(66,67)の前後の温度差に基づいて、前記液流路(65)の圧力損失を推定する
請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記減圧機構(66,67)は、電磁弁、電動弁、オリフィス、またはキャピラリーチューブである
請求項1~3のいずれか1つに記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記減圧機構(66,67)は、電動弁(67)であり、
前記コントローラ(C)は、推定した前記液面高さ、または前記液流路(65)の圧力損失を示す指標に基づき、前記電動弁(67)の開度を制御する
請求項1~3のいずれか1つに記載の冷凍装置。
【請求項6】
前記コントローラ(C)は、推定した前記液面高さ、または前記液流路(65)の圧力損失を示す指標と、前記圧縮機(21)から吐出される冷媒の吐出過熱度とに基づいて、前記膨張弁(26,41)の開度、または前記圧縮機(21)の回転数を制御する
請求項1~3のいずれか1つに記載の冷凍装置。
【請求項7】
前記コントローラ(C)は、推定した前記液面高さ、または前記液流路(65)の圧力損失を推定するための指標が所定値より大きい場合、前記アキュムレータ(24)に流入する冷媒の乾き度または過熱度を増大させるように前記冷媒回路(11)を制御する
請求項1~3のいずれか1つに記載の冷凍装置。
【請求項8】
前記コントローラ(C)は、推定した前記液面高さ、または前記液流路(65)の圧力損失を示す指標が所定値より小さい場合、前記圧縮機(21)の回転数を増大させる
請求項1~3のいずれか1つに記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷凍サイクルを行う冷凍装置が知られている。特許文献1に開示された冷凍装置の冷媒回路には、圧縮機の吸入側にアキュムレータが設けられる。アキュムレータは、ガス冷媒中から液冷媒を分離する。アキュムレータは、圧縮機に液冷媒が吸入されることを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-25758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アキュムレータの液面高さが高くなると、液冷媒が圧縮機に吸入される可能性が高くなる。アキュムレータの液面高さを精度よく推定できれば、液面高さに応じた冷凍装置の制御が可能となり、液冷媒が圧縮機に吸入されることを抑制できる。
【0005】
本開示の目的は、アキュムレータの液面高さを精度よく推定できる冷凍装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、冷凍装置を対象とする。冷凍装置は、圧縮機(21)、放熱器(22,42)、膨張弁(26,41)、蒸発器(42,22)、該圧縮機(21)に接続される吸入管(64)、該吸入管(64)に繋がるアキュムレータ(24)、該アキュムレータ(24)内の液冷媒を前記吸入管(64)に送る液流路(65)、および該液流路(65)に設けられる減圧機構(66,67)を有する冷媒回路(11)を備える。冷凍装置は、前記液流路(65)の圧力損失に基づき前記アキュムレータ(24)の液面高さを推定するコントローラ(C)を備える。
【0007】
アキュムレータ(24)の液面高さは、液流路(65)の圧力損失によって変化する。液流路(65)を流れる液冷媒の密度は、ガス冷媒と比べて大きいので、液流路(65)の圧力損失は、ガス流路(64a)の圧力損失と比べて大きくなる。液流路(65)には冷媒を減圧する減圧機構(66,67)があるので、液流路の圧力損失の絶対値が大きくなる。そこで、第1の態様では、コントローラ(C)は、液流路(65)の圧力損失に基づきアキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)を推定する。これにより、アキュムレータ(24)の液面高さを精度よく推定できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記コントローラ(C)は、前記液流路(65)の圧力損失と、前記吸入管(64)のうち前記アキュムレータ(24)から前記液流路(65)の接続部までの間のガス流路(64a)の圧力損失とに基づいて、前記アキュムレータ(24)の液面高さを推定する。
【0009】
第2の態様では、コントローラ(C)は、液流路(65)の圧力損失と、ガス流路(64a)の圧力損失との双方に基づきアキュムレータ(24)の液面高さを推定する。これにより、液面高さの推定の精度を向上できる。
【0010】
第3の態様は、第1または第2の態様において、前記コントローラ(C)は、前記液流路(65)における減圧機構(66,67)の前後の圧力差、前記液流路(65)の液冷媒の流量、または前記減圧機構(66,67)の前後の温度差に基づいて、前記液流路(65)の圧力損失を推定する。
【0011】
第3の態様では、液流路(65)の圧力損失を容易に推定できる。
【0012】
第4の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、前記減圧機構(66,67)は、電磁弁、電動弁、オリフィス、またはキャピラリーチューブである。
【0013】
第4の態様では、これらの減圧機構(66,67)により、液流路(65)の圧力損失を増大できるので、アキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)の推定の精度を向上できる。
【0014】
第5の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様において、前記減圧機構(66,67)は、電動弁(67)であり、前記コントローラ(C)は、推定した前記液面高さ、または前記液流路(65)の圧力損失を示す指標に基づき、前記電動弁(67)の開度を制御する。
【0015】
第5の態様では、電動弁(67)の開度を制御することで、圧縮機(21)に吸入される冷媒の乾き度や吸入過熱度を調整でき、さらにはアキュムレータ(24)内の液面高さを調整できる。
【0016】
第6の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、前記コントローラ(C)は、推定した前記液面高さ、または前記液流路(65)の圧力損失を示す指標と、前記圧縮機(21)から吐出される冷媒の吐出過熱度とに基づいて、前記膨張弁(26,41)の開度、または前記圧縮機(21)の回転数を制御する。
【0017】
第6の態様では、液面高さや液側の圧力損失をだけでなく、吐出過熱度を用いて膨張弁(26,41)の開度や圧縮機(21)の回転数の制御することにより、アキュムレータ(24)の液面高さをより適切に制御できる。
【0018】
第7の態様は、第1~第6のいずれか1つの態様において、前記コントローラ(C)は、推定した前記液面高さ、または前記液流路(65)の圧力損失を推定するための指標が所定値より大きい場合、前記アキュムレータ(24)に流入する冷媒の乾き度または過熱度を増大させるように前記冷媒回路(11)を制御する。
【0019】
第7の態様では、アキュムレータ(24)の液面高さが比較的大きいと判断できる条件下において、コントローラ(C)は、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の乾き度や過熱度を増大させる。これにより、アキュムレータ(24)の液面高さを速やかに低くできる。
【0020】
第8の態様は、第1~第7のいずれか1つの態様において、前記コントローラ(C)は、推定した前記液面高さ、または前記液流路(65)の圧力損失を示す指標が所定値より小さい場合、前記圧縮機(21)の回転数を増大させる。
【0021】
第8の態様では、圧縮機(21)の回転数を増大させるときには、アキュムレータ(24)の液面高さが比較的小さいので、アキュムレータ(24)内の液冷媒が吸入管(64)を介して圧縮機(21)に吸入されてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施形態に係る空気調和装置の配管系統図である。
図2図2は、空気調和装置の主要機器を示すブロック図である。
図3図3は、アキュムレータおよび圧縮機を拡大した概略構成図である。
図4図4は、アキュムレータの液面高さを推定する制御の基本のフローチャートである。
図5図5は、液側圧力損失を推定するためのフローチャートである。
図6図6は、ガス側圧力損失を推定するためのフローチャートである。
図7図7は、液面高さを用いた空気調和装置の制御のフローチャートである。
図8図8は、変形例2に係る液面高さを用いた空気調和装置の制御のフローチャートである。
図9図9は、変形例3に係る液面高さを用いた空気調和装置の制御のフローチャートである。
図10図10は、変形例4に係る空気調和装置の配管系統図である。
図11図11は、変形例4に係る液面高さを用いた空気調和装置の制御のフローチャートである。
図12図12は、その他の実施形態に係る空気調和装置の図3に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0024】
(1)空気調和装置の概要
本実施形態の空気調和装置(10)は、冷凍装置の一例である。図1は、空気調和装置(10)の配管系統図である。空気調和装置(10)は、対象空間の空気の温度を調節する。本例の対象空間は、ビルなどの室内空間である。空気調和装置(10)は、対象空間の冷房および暖房を行う。本例の空気調和装置(10)は、1つの熱源ユニット(20)と、複数の利用ユニット(40)と、連絡配管(12)と、コントローラ(C)とを有する。複数の利用ユニット(40)と熱源ユニット(20)とは、連絡配管(12)を介して互いに接続される。この接続により、閉回路である冷媒回路(11)が構成される。
【0025】
冷媒回路(11)は、熱源ユニット(20)に設けられる熱源回路(20a)と、各利用ユニット(40)にそれぞれ設けられる利用回路(40a)とを含む。連絡配管(12)は、第1連絡配管(13)と第2連絡配管(14)とを含む。
【0026】
第1連絡配管(13)は、液連絡配管である。第1連絡配管(13)は、第1主管(13a)と、第1主管(13a)から分岐する複数の第1分岐管(13b)とを含む。第1主管(13a)の一端は、液閉鎖弁である第1閉鎖弁(15)を介して熱源回路(20a)に接続する。複数の第1分岐管(13b)のそれぞれの一端は、第1主管(13a)と接続する。複数の第1分岐管(13b)のそれぞれの他端は、対応する利用回路(40a)に接続する。
【0027】
第2連絡配管(14)は、ガス連絡配管である。第2連絡配管(14)は、第2主管(14a)と、第2主管(14a)から分岐する複数の第2分岐管(14b)とを含む。第2主管(14a)の一端は、ガス閉鎖弁である第2閉鎖弁(16)を介して熱源ユニット(20)に接続する。複数の第2分岐管(14b)のそれぞれの一端は、第2主管(14a)と接続する。複数の第2分岐管(14b)のそれぞれの他端は、対応する利用ユニット(40)に接続する。
【0028】
(1-1)熱源ユニット
熱源ユニット(20)は、室外に配置される室外ユニットである。熱源ユニット(20)は、例えばビルなどの屋上や地上に配置される。
【0029】
熱源ユニット(20)は、圧縮機(21)、熱源熱交換器(22)、熱源ファン(23)、およびアキュムレータ(24)を有する。熱源ユニット(20)は、冷媒の流路を切り換える四方切換弁(25)と、熱源膨張弁(26)とを有する。
【0030】
圧縮機(21)は、吸入した冷媒を圧縮する。圧縮機(21)は、圧縮した冷媒を吐出する。圧縮機(21)は、スクロール型の回転式圧縮機である。圧縮機(21)は、揺動ピストン式、ローリングピストン式、スクリュー式などの他の回転式圧縮機であってもよい。圧縮機(21)は、インバータ装置により運転周波数(回転数)が可変に構成される。
【0031】
熱源熱交換器(22)は、室外熱交換器である。熱源熱交換器(22)は、フィンアンドチューブ式の空気熱交換器である。熱源熱交換器(22)は、その内部を流れる冷媒と室外空気とを熱交換させる。熱源熱交換器(22)は、本開示の放熱器および蒸発器として機能する。
【0032】
熱源ファン(23)は、室外において熱源熱交換器(22)の近傍に配置される。熱源ファン(23)は、熱源熱交換器(22)を通過する空気を搬送する。
【0033】
四方切換弁(25)は、切換機構の一例である。四方切換弁(25)は、冷房サイクルである第1冷凍サイクルと、暖房サイクルである第2冷凍サイクルとを切り換えるように、冷媒回路(11)の流路を変更する。四方切換弁(25)は、第1ポート(25a)、第2ポート(25b)、第3ポート(25c)、および第4ポート(25d)を有する。四方切換弁(25)の第1ポート(25a)は、圧縮機(21)の吐出部と繋がる。四方切換弁(25)の第2ポート(25b)は、アキュムレータ(24)を介して圧縮機(21)の吸入部と繋がる。四方切換弁(25)の第3ポート(25c)は、第2閉鎖弁(16)を介して第2連絡配管(14)と繋がる。四方切換弁(25)の第4ポート(25d)は、熱源熱交換器(22)のガス端と繋がる。
【0034】
四方切換弁(25)は、第1状態と第2状態とに切り換わる。第1状態(図1の実線で示す状態)の四方切換弁(25)は、第1ポート(25a)と第4ポート(25d)とを連通し且つ第2ポート(25b)と第3ポート(25c)とを連通する。第2状態(図1の破線で示す状態)の四方切換弁(25)は、第1ポート(25a)と第3ポート(25c)とを連通し、第2ポート(25b)と第4ポート(25d)とを連通する。
【0035】
アキュムレータ(24)は、冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離する。アキュムレータ(24)は、中空の円筒状の容器である。アキュムレータ(24)には、液流出管(65)が接続される。液流出管(65)には、第1開閉弁(66)が設けられる。第1開閉弁(66)は、電磁開閉弁であるが、開度が調節可能な電動弁であってもよい。
【0036】
熱源膨張弁(26)は、冷媒を減圧する。熱源膨張弁(26)は、室外膨張弁である。熱源膨張弁(26)は、熱源回路(20a)において、第1閉鎖弁(15)と熱源熱交換器(22)の間に配置される。熱源膨張弁(26)は、開度が調節可能な電子膨張弁である。
【0037】
熱源ユニット(20)は、油戻し機構を有する。油戻し機構は、油分離器(31)と、油管(32)と、第2開閉弁(33)と、キャピラリーチューブ(34)とを有する。油分離器(31)は、圧縮機(21)の吐出部に設けられる。油分離器(31)は、圧縮機(21)から吐出された冷媒中から油を分離する。油管(32)は、その流入端が油分離器(31)に接続し、その流出端が吸入管(64)と連通する(図3を参照)。第2開閉弁(33)は、油管(32)に設けられる。第2開閉弁(33)は、電磁開閉弁であるが、開度が調節可能な電動弁であってもよい。キャピラリーチューブ(34)は、油管(32)に設けられる。キャピラリーチューブ(34)は、減圧部の一例である。減圧部は、開度が調節可能な電動弁(膨張弁)であってもよい。
【0038】
熱源ユニット(20)は、コントローラ(C)に含まれる第1制御装置(C1)を有する。
【0039】
(1-2)利用ユニット
利用ユニット(40)は、ビルなどの室内に設置される室内ユニットである。利用ユニット(40)は、利用膨張弁(41)、利用熱交換器(42)、および利用ファン(43)を有する。
【0040】
利用膨張弁(41)は、冷媒を減圧する。利用膨張弁(41)は、室内膨張弁である。利用膨張弁(41)は、利用回路(40a)における利用熱交換器(42)の液側の流路に配置される。利用膨張弁(41)は、開度が調節可能な電子膨張弁である。
【0041】
利用熱交換器(42)は、室内熱交換器である。利用熱交換器(42)は、フィンアンドチューブ式の空気熱交換器である。利用熱交換器(42)は、その内部を流れる冷媒と室内空気とを熱交換させる。利用熱交換器(42)は、本開示の蒸発器および放熱器として機能する。
【0042】
利用ファン(43)は、室内において利用熱交換器(42)の近傍に配置される。利用ファン(43)は、利用熱交換器(42)を通過する空気を搬送する。
【0043】
利用ユニット(40)は、コントローラ(C)に含まれる第2制御装置(C2)を有する。各利用ユニット(40)の第2制御装置(C2)と、第1制御装置(C1)とは、通信線(W)を介して互いに接続される。通信線(W)は、有線または無線である。
【0044】
(1-3)圧縮機の詳細
図3に示すように、圧縮機(21)は、ケーシング(50)と、ケーシング(50)の内部に収容される電動機(51)および圧縮機構(52)を有する。圧縮機(21)は、電動機(51)と圧縮機構(52)とを連結する回転軸(53)を有する。ケーシング(50)は、中空の縦長の容器である。ケーシング(50)の内部は、圧縮機構(52)から圧縮された吐出冷媒が満たされる。圧縮機(21)は、いわゆる高圧ドーム型である。ケーシング(50)の内部には、吐出冷媒が流れる内部流路(54)が形成される。ケーシング(50)の外部は、外気雰囲気となる。
【0045】
電動機(51)は、ステータ(51a)とロータ(51b)とを有する。ステータ(51a)は、ケーシング(50)の内周面に固定される。ステータ(51a)は、ステータコアと、ステータコアに巻回されるコイルとを有する(図示省略)。ロータ(51b)は、ステータ(51a)の内部に配置され、回転軸(53)と連結する。電動機(51)では、コイルが通電することで回転磁界が形成される。この回転磁界によりロータ(51b)および回転軸(53)が回転する。
【0046】
圧縮機構(52)は、回転軸(53)によって駆動される。圧縮機構(52)は、その内部の圧縮室において冷媒を圧縮する。圧縮機構(52)には、圧縮室で圧縮した冷媒が吐出される吐出ポート(52a)が形成される。
【0047】
ケーシング(50)の胴部(50a)には、吐出管(55)が接続される。吐出管(55)の入口端はケーシング(50)の内部に連通し、吐出管(55)の出口端は冷媒回路(11)の高圧ガスラインと繋がる。
【0048】
ケーシング(50)の内部には、圧縮機構(52)の吐出ポート(52a)から吐出管(55)までの間に内部流路(54)が形成される。圧縮機構(52)の吐出ポート(52a)から吐出された冷媒は、内部流路(54)を通過して吐出管(55)に送られる。
【0049】
ケーシング(50)の底部には、油貯まり部(56)が形成される。油貯まり部(56)には、冷凍機油が貯まる。冷凍機油は、回転軸(53)に形成された油通路を介して圧縮機構(52)や軸受け(図示省略)に供給される。
【0050】
(1-4)アキュムレータの詳細
図3に示すように、アキュムレータ(24)の内部には、ガス貯留部(61)と液貯留部(62)とが形成される。ガス貯留部(61)は、アキュムレータ(24)の内部空間の上部に位置し、液貯留部(62)は、アキュムレータ(24)の内部空間の下部あるいは底部に位置する。アキュムレータ(24)には、流入管(63)と吸入管(64)と液流出管(65)とが接続する。
【0051】
流入管(63)は、蒸発器を通過した冷媒が流れる。流入管(63)は、アキュムレータ(24)の頂部を貫通する。流入管(63)の流入端は、冷媒回路(11)の低圧ガスラインと繋がる。厳密には、流入管(63)の流入端は、四方切換弁(25)の第2ポート(25b)と繋がる。流入管(63)の流出端は、アキュムレータ(24)の上部に位置し、ガス貯留部(61)と連通する。
【0052】
吸入管(64)は、アキュムレータ(24)で分離された後のガス冷媒が流出する。吸入管(64)は、アキュムレータ(24)の底部を貫通する。吸入管(64)の流入端は、アキュムレータ(24)の上部に位置し、ガス貯留部(61)と連通する。吸入管(64)の流出端は、圧縮機(21)の圧縮機構(52)の吸入ポート(図示省略)と直に繋がる。
【0053】
液流出管(65)は、アキュムレータ(24)内の液冷媒を吸入管(64)に送る液流路である。液流出管(65)は、アキュムレータ(24)で分離された後の液冷媒が流れる。加えて、液流出管(65)は、アキュムレータ(24)に残る冷凍機油が流れる。液流出管(65)の流入端は、アキュムレータ(24)の底部に位置し、液貯留部(62)と連通する。液流出管(65)の流入端は、アキュムレータ(24)の底部に開口していなくてもよく、底部よりも上方に位置してもよい。液流出管(65)の流出端は吸入管(64)の中途部(以下、合流部(a)ともいう)に接続する。液流出管(65)には、上述した第1開閉弁(66)が設けられる。第1開閉弁(66)は、液流出管(65)よりも狭い流路と、該流路を開閉する弁体とを有する。第1開閉弁(66)は、冷媒を減圧する減圧機構を構成する。液流出管(65)では、冷媒が第1開閉弁(66)を通過することで、冷媒が所定圧力だけ減圧する。
【0054】
吸入管(64)は、液流出管(65)の接続部よりも上流側のガス流出管(64a)と、液流出管(65)の接続部よりも下流側の主吸入管(64b)とを含む。ガス流出管(64a)は、吸入管(64)のうちアキュムレータ(24)から液流路である液流出管(65)の接続部(合流部(a))までの間のガス流路を構成する。
【0055】
(1-5)センサ
図2および図3に示すように、空気調和装置(10)は、複数のセンサを備える。複数のセンサは、吐出温度センサ(71)と、吐出圧力センサ(72)と、低圧圧力センサ(73)と、低圧温度センサ(74)とを含む。
【0056】
本実施形態の吐出温度センサ(71)は、吐出管(55)に設けられる。吐出温度センサ(71)は、圧縮機(21)から吐出される冷媒の温度を検出する。厳密には、吐出温度センサ(71)は、圧縮機構(52)から吐出される冷媒の温度を検出する。
【0057】
吐出圧力センサ(72)は、冷媒回路(11)の高圧ガスラインの圧力(高圧圧力)を検出する。吐出圧力センサ(72)は、例えば吐出管(55)に設けられ、吐出冷媒の圧力を検出する。
【0058】
低圧圧力センサ(73)は、冷媒回路(11)の低圧ガスラインの圧力(低圧圧力)を検出する。低圧圧力センサ(73)は、流入管(63)に設けられる。低圧圧力センサ(73)は、低圧ガスラインのうちアキュムレータ(24)の上流側の圧力を検出する。
【0059】
本実施形態の低圧温度センサ(74)は、低圧ガスラインの冷媒の温度を検出する。低圧温度センサ(74)は、流入管(63)に設けられる。低圧温度センサ(74)は、低圧ガスラインのうちアキュムレータ(24)に流入する前の冷媒の温度を検出する。低圧温度センサ(74)は、蒸発器として機能する熱源熱交換器(22)や利用熱交換器(42)を流出した冷媒の温度を検出する。
【0060】
図2に示すように、空気調和装置(10)は、圧縮機(21)の回転数を計測する回転数検知部(75)を備える。回転数検知部(75)は、例えば電動機(51)の電流値や回転数を計測し、圧縮機(21)の回転数を求める。
【0061】
本実施形態の複数のセンサは、減圧機構である第1開閉弁(66)の前後の差圧を検出するための差圧検知部を有する。差圧検知部は、第1圧力センサ(76)と第2圧力センサ(77)とを有する。
【0062】
第1圧力センサ(76)は、液流出管(65)における第1開閉弁(66)の上流側に配置される。第1圧力センサ(76)は、第1開閉弁(66)よりも液流出管(65)の流入端に近い位置に設けられる。具体的には、第1圧力センサ(76)は、液流出管(65)の流入端の近傍に設けられる。第1圧力センサ(76)は、液流出管(65)における第1開閉弁(66)の上流側の冷媒の圧力を検出する。厳密には、第1圧力(P1)は、液流出管(65)に流入する冷媒の圧力である。
【0063】
第2圧力センサ(77)は、液流出管(65)における第1開閉弁(66)の下流側に配置される。第2圧力センサ(77)は、第1開閉弁(66)よりも液流出管(65)の流出端に近い位置に設けられる。具体的には、第2圧力センサ(77)は、液流出管(65)の流出端の近傍に設けられる。第2圧力センサ(77)は、液流出管(65)における第1開閉弁(66)の下流側の冷媒の圧力を検出する。厳密には、第2圧力(P2)は、液流出管(65)から流出する冷媒の圧力である。
【0064】
(1-6)コントローラ(C)
コントローラ(C)は、空気調和装置(10)の動作を制御する。コントローラ(C)は、第1制御装置(C1)と第2制御装置(C2)とを含む。第1制御装置(C1)および第2制御装置(C2)のそれぞれは、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。MCUは、CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置)、メモリ、通信インターフェースを含む。メモリには、CPUが実行するための各種のプログラムが記憶されている。
【0065】
第1制御装置(C1)は、熱源ユニット(20)側の熱源コントローラである。第1制御装置(C1)は、圧縮機(21)、熱源ファン(23)、四方切換弁(25)、熱源膨張弁(26)、第1開閉弁(66)、および第2開閉弁(33)を制御する。具体的には、第1制御装置(C1)は、圧縮機(21)の運転および停止と、圧縮機(21)の回転数と、熱源ファン(23)の運転および停止と、熱源ファン(23)の回転数と、四方切換弁(25)の流路の連通状態と、熱源膨張弁(26)の開度と、第1開閉弁(66)の開閉状態と、第2開閉弁(33)の開閉状態とを制御する。
【0066】
第2制御装置(C2)は、利用ユニット(40)側の利用コントローラである。第2制御装置(C2)は、利用ファン(43)および利用膨張弁(41)を制御する。第2制御装置(C2)は、利用ファン(43)の回転数と、利用膨張弁(41)の開度とを制御する。
【0067】
コントローラ(C)は、液流出管(65)の圧力損失に基づきアキュムレータ(24)の液面高さを推定する。コントローラ(C)は、液流出管(65)の圧力損失(以下、液側圧力損失(ΔPliq)ともいう)と、ガス流出管(64a)の圧力損失(以下、ガス側圧力損失(ΔPgas)ともいう)とに基づいて、アキュムレータ(24)の液面高さを推定する。コントローラ(C)は、液流出管(65)における第1開閉弁(66)の前後の圧力差に基づいて、液流出管(65)の圧力損失を推定する。ここで、液面高さ(Hliq)は、アキュムレータ(24)内に貯まった液冷媒の高さであり、アキュムレータ(24)の底面から液冷媒の液面までの高さを意味する。
【0068】
(1-7)記憶部
コントローラ(C)は、記憶部(M)を有する。記憶部(M)は、例えばSRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などで構成される。
【0069】
記憶部(M)には、アキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)を推定するためのデータが記憶される。データは、関係式(厳密には、回帰式)を含んでいる。本実施形態の記憶部(M)は、第1制御装置(C1)に設けられる。回帰式は、ディープラーニング等を用いた機械学習によって決定されてもよい。
【0070】
(2)運転動作
空気調和装置(10)の運転動作について図1を参照しながら説明する。空気調和装置(10)は、冷房運転と暖房運転とを切り換えて行う。図1では、冷房運転時の冷媒の流れを実線矢印で示し、暖房運転時の冷媒の流れを破線矢印で示している。
【0071】
(2-1)冷房運転
冷房運転では、第1制御装置(C1)が圧縮機(21)および熱源ファン(23)を運転させ、四方切換弁(25)を第1状態とし、熱源膨張弁(26)を全開とする。第2制御装置(C2)が利用ファン(43)を運転させ、利用膨張弁(41)を所定開度に調節する。
【0072】
冷房運転時の冷媒回路(11)は、第1冷凍サイクルを行う。第1冷凍サイクルでは、熱源熱交換器(22)が放熱器(厳密には、凝縮器)として機能し、利用熱交換器(42)が蒸発器として機能する。
【0073】
具体的には、圧縮機(21)で圧縮された冷媒は、熱源熱交換器(22)を流れる。熱源熱交換器(22)では、冷媒が室外空気へ放熱して凝縮する。熱源熱交換器(22)で凝縮した冷媒は、第1連絡配管(13)を流れ、各利用回路(40a)に分流する。各利用回路(40a)では、冷媒が利用膨張弁(41)で減圧された後、利用熱交換器(42)を流れる。利用熱交換器(42)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。各利用熱交換器(42)で蒸発した冷媒は、第2連絡配管(14)で合流した後、アキュムレータ(24)を通過し、圧縮機(21)に吸入される。
【0074】
(2-2)暖房運転
暖房運転では、第1制御装置(C1)が圧縮機(21)および熱源ファン(23)を運転させ、四方切換弁(25)を第2状態とし、熱源膨張弁(26)を所定開度に調節する。第2制御装置(C2)が利用ファン(43)を運転させ、利用膨張弁(41)を所定開度に調節する。
【0075】
暖房運転時の冷媒回路(11)は、第2冷凍サイクルを行う。第2冷凍サイクルでは、利用熱交換器(42)が放熱器(厳密には、凝縮器)として機能し、熱源熱交換器(22)が蒸発器として機能する。
【0076】
具体的には、圧縮機(21)で圧縮された冷媒は、第2連絡配管(14)を流れ、各利用回路(40a)に分流する。各利用回路(40a)では、冷媒が利用熱交換器(42)を流れる。利用熱交換器(42)では、冷媒が室内空気に放熱して凝縮する。各利用熱交換器(42)で凝縮した冷媒は、各利用膨張弁(41)で減圧されたのち、第1連絡配管(13)で合流する。第1連絡配管(13)の冷媒は、熱源膨張弁(26)で減圧された後、熱源熱交換器(22)を流れる。熱源熱交換器(22)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。熱源熱交換器(22)で蒸発した冷媒は、アキュムレータ(24)を通過し、圧縮機(21)に吸入される。
【0077】
(3)液面高さの推定
コントローラ(C)は、アキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)を推定する。推定した液面高さ(Hliq)は、圧縮機(21)に液冷媒が吸入されることを抑制するのに役立つ。
【0078】
(3-1)液面高さの推定の制御の概要
コントローラ(C)は、所定時間置きにアキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)を推定する制御を行う。この制御について図4を参照しながら説明する。なお、以下の説明で述べる各ステップの順番は単なる一例であり、実現可能な範囲でステップの順番を入れ替えてもよい。
【0079】
ステップST11では、コントローラ(C)は、液流出管(65)の液側圧力損失(ΔPliq)を推定する。ステップST12では、コントローラ(C)は、ガス流出管(64a)のガス側圧力損失(ΔPgas)を推定する。これらの推定方法の詳細は後述する。
【0080】
ステップST13では、コントローラ(C)は、アキュムレータ(24)内の液冷媒の密度(以下、液密度(ρliq)ともいう)を推定する。具体的には、コントローラ(C)は、低圧圧力センサ(73)で検出した低圧圧力(Lp)と、この低圧圧力(Lp)に相当する飽和液温度を用いて液密度(ρliq)を推定する。コントローラ(C)は、低圧圧力センサ(73)で検出した低圧圧力(Lp)と、低圧温度センサ(74)で検出した流入管(63)の冷媒の温度とを用いて液密度(ρliq)を推定してもよい。
【0081】
ステップST14では、コントローラ(C)は、図3におけるアキュムレータ(24)から合流部(a)までの間の圧力バランスに基づき液面高さ(Hliq)を推定する。
【0082】
(3-2)液側圧力損失の推定の詳細
コントローラ(C)は、第1開閉弁(66)が開放されるときに、液流出管(65)の液側圧力損失(ΔPliq)を推定する。
【0083】
図5に示すように、ステップST21において、第1圧力センサ(76)は、液流出管(65)における第1開閉弁(66)の上流側の第1圧力(P1)を検出する。ステップST22において、第2圧力センサ(77)は、液流出管(65)における第2開閉弁(33)の下流側の第2圧力(P2)を検出する。ステップS23において、コントローラ(C)は、第1圧力(P1)から第2圧力(P2)を差し引くことで液側圧力損失(ΔPliq)を求める。液側圧力損失(ΔPliq)は、第1開閉弁(66)の前後の差圧に相当する。厳密には、液側圧力損失(ΔPliq)は、液流出管(65)の流入端から流出端までの間の差圧に相当する。
【0084】
(3-3)ガス側圧力損失の推定の詳細
コントローラ(C)は、第1開閉弁(66)が開放されるときに、ガス流出管(64a)のガス側圧力損失(ΔPgas)を推定する。
【0085】
図6に示すように、ステップST31において、回転数検知部(75)は、圧縮機(21)の回転数を検出する。ステップST32において、低圧圧力センサ(73)は、低圧圧力(Lp)を検出する。
【0086】
ステップST33において、コントローラ(C)は、ガス流出管(64a)を流れるガス冷媒の密度(以下、ガス密度(ρgas)ともいう)を推定する。具体的には、コントローラ(C)は、低圧圧力センサ(73)で検出した低圧圧力(Lp)と、この低圧圧力(Lp)に相当する飽和ガス温度を用いてガス密度(ρgas)を推定する。
【0087】
ステップST34において、コントローラ(C)は、ガス流出管(64a)を流れるガス冷媒の質量流量(Ggas)を推定する。具体的には、例えばコントローラ(C)は、回転数検知部(75)で検出した圧縮機(21)の回転数と、圧縮機(21)の圧縮機構(52)のシリンダ容積(吸込容積)と、ガス密度(ρgas)とを乗算することで、ガス冷媒の質量流量(Ggas)[kg/m3]を求める。
【0088】
ステップST35において、コントローラ(C)は、以下の[数1]式を用いて、ガス側圧力損失(ΔPgas)を求める。[数1]式は、円管である冷媒配管に適用される[数2]式(ダルシーワイスバッハの式)を変換して得られる。
【0089】
【数1】
【0090】
【数2】
【0091】
ここで、[数1]式および[数2]式において、λgasは、ガス流出管(64a)の管摩擦係数であり、Lgasは、ガス流出管(64a)の全体の経路長であり、dgasは、ガス流出管(64a)の内径である。[数2]式のAgasは、ガス流出管(64a)の流路断面積である。これらのパラメータは、オペレータによってコントローラ(C)に予め設定される。[数2]式のUはガス流出管(64a)を流れる冷媒の流速である。
【0092】
コントローラ(C)は、ステップST33で推定したガス密度(ρgas)、ステップST34で推定したガス冷媒の質量流量(Ggas)、およびコントローラ(C)に設定された他のパラメータを用いて、ガス側圧力損失(ΔPgas)を推定する。
【0093】
(3-4)液面高さの推定の詳細
ステップST14においては、コントローラ(C)は、以下の[数3]式を用いて、液面高さを推定する。[数3]式は、[数4]式を変換したものである。[数4]式は、アキュムレータ(24)から合流部(a)までの間での圧力バランスを示す関係式である。
【0094】
【数3】
【0095】
【数4】
【0096】
アキュムレータ(24)から合流部(a)までの回路に着目した場合、[数4]式に示すように、ガス側圧力損失(ΔPgas)と、アキュムレータ(24)内の液冷媒のヘッド圧との和が、液側圧力損失(ΔPliq)と等しくなる。ここで、液冷媒のヘッド圧は、[数4]式に示すように、アキュムレータ(24)内の液冷媒の液密度(ρliq)と、重力加速度(g)と、液面高さ(Hliq)の積となる。この[数4]式より、液面高さ(Hliq)を算出するための[数3]式が得られる。
【0097】
コントローラ(C)は、ステップST11で推定した液側圧力損失(ΔPliq)と、ステップST12で推定したガス側圧力損失(ΔPgas)と、ステップST13で推定した液密度(ρliq)と、[数3]式に基づくデータとを用いて、液面高さ(Hliq)を推定する。その結果、アキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)を精度よく推定できる。
【0098】
(4)液面高さに基づく膨張弁の制御例
コントローラ(C)は、推定した液面高さ(Hliq)に基づいて膨張弁(26,41)を制御する。冷房運転時には、コントローラ(C)は、膨張弁である利用膨張弁(41)の開度を制御する。暖房運転時には、膨張弁である熱源膨張弁(26)の開度を制御する。以下では、冷房運転時の制御例について説明する。
【0099】
図7に示すように、ステップST41では、コントローラ(C)が吐出冷媒の過熱度(DSH)を求める。吐出冷媒の過熱度(DSH)は、吐出冷媒温度(Td)から、高圧圧力(Hp)に相当する飽和ガスの温度を引くことで求められる。
【0100】
ステップST42では、上述した制御により、コントローラ(C)がアキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)を推定する。
【0101】
ステップST43では、コントローラ(C)は、吐出冷媒の過熱度(DSH)と、所定値D1とを比較する。吐出冷媒の過熱度(DSH)は、アキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)が高くなるほど小さくなる傾向にある。液面高さ(Hliq)が高くなると、アキュムレータ(24)の液貯留部(62)の液冷媒のヘッド圧が大きくなり、アキュムレータ(24)から液流出管(65)を介して吸入管(64)に送られる液冷媒の量が増えるからである。ステップST43において、吐出冷媒の過熱度(DSH)がD1より低い場合、処理はステップST46に移行する。ステップST46では、コントローラ(C)は膨張弁である利用膨張弁(41)の開度を小さくする。これにより、蒸発器(利用熱交換器(42))を流出する冷媒の乾き度、あるいは過熱度を増大できる。その結果、アキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)を小さくでき、液冷媒が直接的に吸入管(64)(ガス流出管(64a))に流出してしまうことを抑制できる。
【0102】
ステップST43において、吐出冷媒の過熱度(DSH)がD1より低くない場合、処理はステップST44に移行する。ステップST44では、コントローラ(C)は、吐出冷媒の過熱度(DSH)と、所定値D2とを比較する。ここで、D2はD1と同じ、またはD1よりも高い所定値である。ステップST44において、吐出冷媒の過熱度(DSH)がD2より低い場合、処理はステップST46に移行し、コントローラ(C)が利用膨張弁(41)の開度を小さくする。
【0103】
ステップST44において、吐出冷媒の過熱度(DSH)がD2より高い場合、処理はステップST45に移行する。ステップST45では、コントローラ(C)が、推定した液面高さ(Hliq)と所定値とを比較する。吐出冷媒の過熱度(DSH)は、例えば冷媒回路(11)の高低差圧が比較的大きい場合にも増大しやすい。このため、吐出冷媒の過熱度(DSH)が比較的大きいにも拘わらず、アキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)が高くなる可能性もある。そこで、本実施形態のコントローラ(C)は、吐出冷媒の過熱度(DSH)だけでなく、上述のようにして推定したアキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)を用いて、膨張弁(26,41)の開度を制御する。
【0104】
具体的には、ステップST45において、液面高さ(Hliq)が所定値よりも大きい場合、処理はステップST46に移行し、コントローラ(C)が利用膨張弁(41)の開度を小さくする。つまり、コントローラ(C)は、液面高さ(Hliq)が所定値より大きい場合、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の乾き度や過熱度を増大させるように冷媒回路(11)を制御する。これにより、アキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)が比較的大きいが、吐出冷媒の過熱度(DSH)が大きい運転条件下において、アキュムレータ(24)の液冷媒が直接的に吸入管(64)(ガス流出管(64a))に流出してしまうことを抑制できる。
【0105】
ステップST45において、液面高さ(Hliq)が所定値以下である場合、処理はステップST47に移行し、コントローラ(C)が利用膨張弁(41)の開度を大きくする。これにより、蒸発器(利用熱交換器(42))を流出する冷媒の過熱度が過剰に大きくなることを抑制できる。
【0106】
暖房運転時のコントローラ(C)は、冷房運転と同様にして、膨張弁としての熱源膨張弁(26)を制御する。暖房運転の制御は、この点を除くと基本的には冷房運転の制御と同様である。
【0107】
(5)実施形態の効果
実施形態では、コントローラ(C)は、液流出管(65)の圧力損失に基づき前記アキュムレータ(24)の液面高さを推定する。液流出管(65)には、減圧機構である第1開閉弁(66)があるので、液側圧力損失(ΔPliq)の絶対値は比較的大きくなる。このため、液側圧力損失(ΔPliq)を用いてアキュムレータ(24)の液面高さを推定することで、その推定精度を向上できる。
【0108】
圧縮機(21)は、固定容量式ではなく、可変容量式であるため、圧縮機(21)の回転数の変化に伴い冷媒回路(11)を流れる物性値が変化しやすい。しかし、液側圧力損失(ΔPliq)は、圧縮機(21)の回転数の変化に追随する一方、他の物性値の変化に影響を受けにくい指標であるので、運転条件の変化に起因して、アキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)の推定の精度が低下してしまうことを抑制できる。
【0109】
実施形態では、コントローラ(C)は、液流出管(65)の液側圧力損失(ΔPliq)に加えて、ガス流路(64a)のガス側圧力損失(ΔPgas)を用いることで、アキュムレータ(24)の液面高さの推定の精度をさらに向上できる。
【0110】
実施形態では、コントローラ(C)は、差圧検知部により検出した第1開閉弁(66)の前後の差圧によって液側圧力損失(ΔPliq)を推定する。このため、液側圧力損失(ΔPliq)を確実に得ることができる。
【0111】
実施形態では、減圧機構として電磁弁である第1開閉弁(66)を用いている。これにより、液側圧力損失(ΔPliq)の絶対値を増大でき、アキュムレータ(24)の液面高さの推定の精度を向上できる。第1開閉弁(66)により液流出管(65)を開閉できる。
【0112】
実施形態では、コントローラ(C)は、推定したアキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)と、圧縮機(21)から吐出される冷媒の吐出過熱度とに基づいて、膨張弁(26,41)の開度を制御する。吐出過熱度は液面高さ(Hliq)に間接的に影響を与える指標である。このため、コントローラ(C)が、吐出過熱度と、推定したアキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)を用いて膨張弁(26,41)を制御することで、液面高さ(Hliq)を適切に制御できる。
【0113】
具体的には、コントローラ(C)は、吐出過熱度が所定値D2より低いが、推定した液面高さ(Hliq)が所定値より大きい場合は、膨張弁(26,41)の開度を小さくする。このため、例えば吐出過熱度が比較的低いが、液面高さ(Hliq)が所定値より大きいような条件下において、膨張弁(26,41)の開度を小さくすることにより、液面高さ(Hliq)を小さくできる。
【0114】
コントローラ(C)は、推定した前記液面高さ(Hliq)が所定値より大きい場合、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の乾き度または過熱度を増大させるように冷媒回路(11)を制御する。このため、液面高さ(Hliq)を低減でき、さらには液冷媒が吸入管(64)に直接的に流出してしまうことを抑制できる。
【0115】
コントローラ(C)は、吐出過熱度が所定値D2より低く且つ推定した液面高さ(Hliq)が所定値より大きい場合には、膨張弁(26,41)の開度を大きくする。これにより、吐出過熱度が過剰に大きくなることを抑制できる。
【0116】
(6)変形例
以上の実施形態は、以下のような変形例の構成としてもよい。
【0117】
(6-1)変形例1
上述した実施形態では、コントローラ(C)は、推定した液面高さと、吐出過熱度とに基づいて膨張弁(26,41)の開度を制御している。これに対し、変形例1のコントローラ(C)は、推定した液面高さ(Hliq)と、吐出過熱度とに基づいて圧縮機(21)の回転数を制御する。この場合、コントローラ(C)は、図7のステップST46において、圧縮機(21)の回転数を減少させる。また、図7のステップST47において、コントローラ(C)は、圧縮機(21)の回転数を増大させる。
【0118】
(6-2)変形例2
変形例2の空気調和装置(10)では、コントローラ(C)が蒸発器(42,22)を流出した冷媒の湿り状態を示す指標と、推定した液面高さ(Hliq)とに基づいて、圧縮機(21)の回転数を制御する。コントローラ(C)は、例えばデフロスト運転から暖房運転に切り替わった直後に、図8に示す制御を実行する。なお、デフロスト運転では、上述した冷房運転と同様の第1冷凍サイクルが行われる。つまり、空気調和装置(10)は、いわゆる逆サイクルデフロストを行う。デフロスト運転では、圧縮機(21)で圧縮された冷媒が、室外熱交換器である熱源熱交換器(22)で凝縮する。これにより、熱源熱交換器(22)に付着した霜が融ける。熱源熱交換器(22)で凝縮した冷媒は、利用膨張弁(41)で減圧され、利用熱交換器(42)で蒸発した後、圧縮機(21)に吸入される。
【0119】
デフロスト運転から暖房運転に切り替わると、ステップST51において、コントローラ(C)は、圧縮機(21)を低回転数で運転させる。ステップS52では、コントローラ(C)が、蒸発器である熱源熱交換器(22)を流出した冷媒が湿り状態であるか否かを判定する。冷媒が湿り状態であるかを判定する指標としては、熱源熱交換器(22)を流出した冷媒の過熱度が用いられる。この過熱度(吸入過熱度)は、低圧圧力(Lp)に相当する飽和ガスの温度と、低圧温度センサ(74)で検出した吸入冷媒の温度との差によって求められる。例えば吸入過熱度がゼロの場合、冷媒は湿り状態とみなすことができる。なお、冷媒が湿り状態を示す指標は、蒸発器を流出する冷媒の乾き度であってもよい。
【0120】
ステップST52において、熱源熱交換器(22)を流出した冷媒が湿り状態でないと判定された場合、処理はステップST54に移行する。ステップST54では、コントローラ(C)が圧縮機(21)の回転数を増大させる。ステップST55では、コントローラ(C)が膨張弁である熱源膨張弁(26)の開度を増大させる。ステップST54およびステップST55の処理により、暖房運転が定常状態に至るまでの時間を短くできる。この際、熱源熱交換器(22)を流出した冷媒は、湿り状態でないので、熱源熱交換器(22)に溜まった多量の液冷媒が圧縮機(21)に吸い込まれてしまうことを抑制できる。
【0121】
ステップST52において、熱源熱交換器(22)を流出した冷媒が湿り状態であると判定された場合、処理はステップST53に移行する。ステップST53では、コントローラ(C)は、推定したアキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)が所定値より小さいか否かを判定する。ステップST53において、液面高さ(Hliq)が所定値より小さい場合、処理はステップST54に移行し、コントローラ(C)が圧縮機(21)の回転数を増大させる。次いで、ステップST54では、コントローラ(C)が熱源膨張弁(26)の開度を増大させる。この際、アキュムレータ(24)には湿り状態の冷媒が送られるが、液面高さ(Hliq)は小さい状態である。このため、圧縮機(21)の回転数を増大させたり、膨張弁(26,41)の開度を大きくしたりしても、アキュムレータ(24)から液冷媒が吸入管(64)に直に流出することを抑制できる。加えて、アキュムレータ(24)の内圧が低下し、液冷媒に溶けた油のフォーミングが生じることに起因して、液冷媒が吸入管(64)に直に流出することを抑制できる。これにより、冷媒が湿り状態であったとしても、暖房運転が定常状態に至るまでの時間を短くできる。
【0122】
以上のように、変形例2では、コントローラ(C)は、推定した液面高さ(Hliq)が所定値より小さい場合、圧縮機(21)の回転数を増大させる。これにより、アキュムレータ(24)の液冷媒が吸入管(64)に流出することを抑制しつつ、空気調和装置(10)の能力を速やかに増大できる。
【0123】
コントローラ(C)は、推定した液面高さ(Hliq)が所定値より小さくない場合、圧縮機(21)の回転数を増大させず、維持する。具体的には、コントローラ(C)は、デフロスト運転から暖房運転に切り換わった直後に、液面高さ(Hliq)が所定値より大きい場合に、圧縮機(21)の回転数を低速のまま維持する。したがって、アキュムレータ(24)内の多量の冷媒が圧縮機(21)に吸い込まれてしまうことを抑制できる。
【0124】
(6-3)変形例3
変形例3の空気調和装置(10)では、コントローラ(C)が、液面高さ(Hliq)が所定値よりも小さいときに、放熱器(22,42)に貯まった液冷媒をアキュムレータ(24)に送る排出動作を行うように冷媒回路(11)を制御する。
【0125】
図9に示すように、ステップST61において、排出動作の実行指令がコントローラ(C)に入力されると、処理はステップST62に移行する。排出動作の実行指令は、例えば所定のタイミングでコントローラ(C)に入力されてもよいし、放熱器(22,42)に液冷媒が溜まる所定の条件が成立すると、コントローラ(C)に入力されてもよい。
【0126】
ステップST62では、コントローラ(C)は、上述の実施形態と同様に、アキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)を推定する。ステップST63では、コントローラ(C)は、推定した液面高さ(Hliq)が所定値より小さいか否かを判定する。ステップST63において、推定した液面高さ(Hliq)が所定値より小さい場合、処理はステップST64に移行し、コントローラ(C)が膨張弁(26,41)の開度を大きくする。冷房運転であれば、コントローラ(C)は利用膨張弁(41)の開度を大きくし、暖房運転であればコントローラ(C)は熱源膨張弁(26)の開度を大きくする。次いで、ステップST65では、コントローラ(C)が圧縮機(21)の回転数を増大させる。
【0127】
以上の制御により、冷房運転であれば、放熱器である熱源熱交換器(22)に溜まった液冷媒を蒸発器である利用熱交換器(42)側に排出でき、この冷媒をアキュムレータ(24)内に送ることができる。暖房運転であれば、放熱器である利用熱交換器(42)に溜まった液冷媒を蒸発器である熱源熱交換器(22)側に排出でき、この冷媒をアキュムレータ(24)内に送ることができる。
【0128】
(6-4)変形例4
図10に示すように、変形例4の空気調和装置は、複数の熱源ユニット(20)を有する、いわゆる室外マルチ式である。各熱源ユニット(20)の熱源回路(20a)は、互いに並列となるように冷媒回路(11)に接続される。
【0129】
変形例4の各熱源回路(20a)には、液送り管(80)と制御弁(81)とが設けられる。液送り管(80)の一端は、液ラインに接続される。具体的には、液送り管(80)の一端は、熱源膨張弁(26)と第1閉鎖弁(15)との間に設けられる。液送り管(80)の他端は、アキュムレータ(24)の流入管(63)に接続される。制御弁(81)は、液送り管(80)に設けられる。制御弁(81)は、その開度が可変な電動弁であるが、開閉弁であってもよい。
【0130】
変形例4のコントローラ(C)は、複数の熱源回路(20a)の各アキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)を推定し、複数の熱源回路(20a)の各アキュムレータ(24)の液面高さが互いに近づくように冷媒回路(11)を制御する。この制御により、放熱器(22,42)に溜まった液冷媒を、液面高さ(Hliq)の小さいアキュムレータ(24)に送る排出動作が行われる。
【0131】
図11に示すように、ステップST71において、排出動作の実行指令がコントローラ(C)に入力されると、処理はステップST72に移行する。
【0132】
ステップST72では、コントローラ(C)は、上述の実施形態と同様に、複数の熱源回路(20a)毎のアキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)をそれぞれ推定する。ステップST73では、コントローラ(C)は、複数の熱源回路(20a)のアキュムレータ(24)のうち、推定した液面高さ(Hliq)が最も小さいアキュムレータ(24)を特定する。ステップST74では、コントローラ(C)は、特定したアキュムレータ(24)に対応する制御弁(81)を開ける。言い換えると、コントローラ(C)は、特定したアキュムレータ(24)が存在する熱源回路(20a)の制御弁(81)を開ける。これにより、冷房運転であれば、放熱器である熱源熱交換器(22)に溜まった液冷媒を、液送り管(80)を経由してアキュムレータ(24)に送ることができる。暖房運転であれば、放熱器である利用熱交換器(42)に溜まった液冷媒を、液送り管(80)を経由してアキュムレータ(24)に送ることができる。これにより、液面高さ(Hliq)が最も小さいアキュムレータ(24)に液冷媒を送ることができるとともに、各アキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)を互いに近づけることができる。これにより、放熱器(22,42)での液溜まりを解消できることに加えて、一部のアキュムレータ(24)の液面高さ(Hliq)が高くなってしまうことを抑制できる。
【0133】
ステップST75において所定時間が経過すると、ステップST76においてコントローラ(C)は、ステップST74で開けた制御弁(81)を閉じる。これにより、排出動作が終了する。
【0134】
(7)その他の実施形態
上述した実施形態、および各変形例については以下の構成を採用してもよい。
【0135】
コントローラ(C)は、液側圧力損失(ΔPliq)とガス側圧力損失(ΔPgas)を用いる一方、液密度(ρliq)を用いずに液面高さ(Hliq)を推定してもよい。液側圧力損失(ΔPliq)と比べると、液密度(ρliq)の絶対値や、その変化量は小さい。このため、記憶部(M)に液側圧力損失(ΔPliq)、ガス側圧力損失(ΔPgas)、および液面高さ(Hliq)を関連付けた回帰式に基づくデータを記憶させる。コントローラ(C)は、このデータに基づき液密度(ρliq)を用いずに液面高さ(Hliq)を推定してもよい。
【0136】
コントローラ(C)は、液側圧力損失(ΔPliq)だけで液面高さ(Hliq)を推定してもよい。液側圧力損失(ΔPliq)と比べると、ガス側圧力損失(ΔPgas)の絶対値や、その変化量は小さい。このため、記憶部(M)に液側圧力損失(ΔPliq)と液面高さ(Hliq)を関連付けた回帰式に基づくデータを記憶させる。コントローラ(C)は、このデータに基づき液側圧力損失(ΔPliq)だけを用いて液面高さ(Hliq)を推定してもよい。
【0137】
差圧検知部は、減圧機構(第1開閉弁(66))の前後の差圧を検出する差圧計であってもよい。
【0138】
コントローラ(C)は、液流路(65)の液冷媒の流量に基づいて液流路(65)の圧力損失を推定してもよい。この場合、液流路(65)には、液冷媒の流量を検出するための流量センサが設けられる。コントローラ(C)は、流量センサで検出した流量に基づいて、液側圧力損失(ΔPliq)を推定する。
【0139】
コントローラ(C)は、減圧機構(第1開閉弁(66))の前後の温度差に基づいて、液流路(65)の圧力損失を推定してもよい。液冷媒が減圧機構(66,67)を通過すると、冷媒の圧力変化に伴い冷媒の温度も変化する。そこで、記憶部(M)には、減圧機構(66,67)の前後の温度差と、液側圧力損失(ΔPliq)とを関連付けたデータを記憶させる。液流路(65)には、減圧機構(66,67)の上流側と下流側とにそれぞれ温度センサを設ける。コントローラ(C)は、これらの温度センサの検出値の差と、記憶部(M)にデータとに基づき、液側圧力損失(ΔPliq)を推定する。
【0140】
減圧機構(66,67)は、電動弁、オリフィス、またはキャピラリーチューブであってもよい。これらの機器は、液流路(65)の冷媒を減圧する。
【0141】
図12に示すように、減圧機構が電動弁(67)である場合、コントローラ(C)は、推定した液面高さ(Hliq)に基づき電動弁(67)の開度を制御してもよい。具体的には、液面高さ(Hliq)が所定値より高い場合に、コントローラ(C)は、電動弁(67)の開度を小さくする。これにより、液流路(65)を通過す液冷媒の量が少なくなるので、圧縮機(21)に吸入される液冷媒の量を減らすことができる。あるいは、液面高さ(Hliq)が所定値より低い場合に、コントローラ(C)は、電動弁(67)の開度を大きくする。これにより、液流路(65)を通過する液冷媒の量が多くなるので、圧縮機(21)の吐出過熱度を増大できる。
【0142】
上述した実施形態、各変形例、およびその他の実施形態で述べた各制御において、コントローラ(C)は、推定した液面高さ(Hliq)に基づいて冷媒回路(11)の各機器を制御している。しかし、これらの制御において、コントローラ(C)は、液流路(65)の圧力損失を示す指標に基づき、各機器を制御してもよい。具体例をいうと、コントローラ(C)は、液流路(65)の圧力損失を示す指標と、圧縮機(21)から吐出される冷媒の吐出過熱度とに基づいて、膨張弁(26,41)の開度、または圧縮機(21)の回転数を制御してもよい。コントローラ(C)は、液流路(65)の圧力損失を推定するための指標が所定値より大きい場合、アキュムレータ(24)に流入する冷媒の乾き度または過熱度を増大させるように冷媒回路(11)を制御してもよい。コントローラ(C)は、液流路(65)の圧力損失を示す指標が所定値より小さい場合、圧縮機(21)の回転数を増大させてもよい。コントローラ(C)は、液流路(65)の圧力損失を示す指標に基づき、電動弁(67)の開度を制御してもよい。
【0143】
ここで、「液流路(65)の圧力損失を推定するための指標」は、液側圧力損失、液流路(65)における減圧機構(66,67)の前後の差圧、液流路(65)の冷媒の流量、液流路(65)における減圧機構(66,67)の前後の冷媒の温度差を含む。
【0144】
図3に示す低圧圧力センサ(73)は、アキュムレータ(24)の下流側に配置されてもよい。低圧温度センサ(74)を省略した構成としてもよい。
【0145】
冷凍装置は、空気調和装置(10)でなくてもよく、冷凍サイクルを行う装置であれば、他の装置であってもよい。他の装置としては、冷蔵庫や冷凍庫などの空気を冷却する冷却装置、海上コンテナやトレーラの庫内を冷却する輸送用冷凍装置、温水を生成する給湯装置などがある。
【0146】
コントローラ(C)は、空気調和装置(10)とネットワークを介して接続されてもよい。この場合、コントローラ(C)は、中央管理装置やサーバ装置に設けられてもよい。
【0147】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態の要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0148】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0149】
以上に説明したように、本開示は、冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0150】
11 冷媒回路
21 圧縮機
22 熱源熱交換器(放熱器、蒸発器)
24 アキュムレータ
26 熱源膨張弁(膨張弁)
41 利用膨張弁(膨張弁)
42 利用熱交換器(蒸発器、放熱器)
64 吸入管
64a ガス流出管(ガス流路)
66 第1開閉弁(減圧機構)
67 電動弁(減圧機構)
C コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12