(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141892
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】熱伝導シート
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20241003BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241003BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20241003BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L23/36 D
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
H01L23/36 M
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053759
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100213997
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】村上 康之
【テーマコード(参考)】
4F071
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
4F071AA12
4F071AA33
4F071AA82
4F071AB03
4F071AD05
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5E322AA01
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5F136BC07
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5F136FA23
5F136FA73
(57)【要約】
【課題】優れた粘着性及び優れた密着性を両立可能な熱伝導シートの提供。
【解決手段】本発明は、樹脂及び膨張化黒鉛を含む、熱伝導シートであって、前記熱伝導シートの主面に対する前記膨張化黒鉛の配向角度が60°以上90°以下であり、粘着力が1.0N・mm超であり、厚みが250μm以下であり、且つ、厚みの標準偏差が3.5μm以下である、熱伝導シートである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂及び膨張化黒鉛を含む、熱伝導シートであって、
前記熱伝導シートの主面に対する前記膨張化黒鉛の配向角度が60°以上90°以下であり、
粘着力が1.0N・mm超であり、厚みが250μm以下であり、且つ、厚みの標準偏差が3.5μm以下である、熱伝導シート。
【請求項2】
前記膨張化黒鉛の体積平均粒子径が、100μm以下である、請求項1に記載の熱伝導シート。
【請求項3】
前記主面の表面粗さSaが、4.0μm以下である、請求項1に記載の熱伝導シート。
【請求項4】
前記熱伝導シートの主面内において複数の条片が並列接合してなり、
前記複数の条片が、前記樹脂及び前記膨張化黒鉛を含む複数の第一条片と、前記第一条片とは異なる第二条片と、を含む、請求項1に記載の熱伝導シート。
【請求項5】
前記主面において、前記第一条片が占める合計面積割合が、40%以上60%以下である、請求項4に記載の熱伝導シート。
【請求項6】
前記第二条片の粘着力が、2.0N・mm以下である、請求項4又は5に記載の熱伝導シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイパネル(PDP)や集積回路(IC)チップ等の電子部品は、高性能化に伴って発熱量が増大している。その結果、電子部品を用いた電子機器では、電子部品の温度上昇による機能障害対策を講じる必要が生じている。
【0003】
電子部品の温度上昇による機能障害対策としては、一般に、電子部品等の発熱体に対し、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体を取り付けることによって、放熱を促進させる方法が採られている。そして、放熱体を使用する際には、発熱体から放熱体へと熱を効率的に伝えるために、通常、熱伝導率が高いシート状の部材(熱伝導シート)を介在させた状態で発熱体及び放熱体(以下、これらをあわせて、「被着体」と称する場合がある。)を密着させている。
【0004】
上記した熱伝導シートとして、例えば、特許文献1には、樹脂と、粒子状炭素材料とを含む組成物を加圧してシート状に成形してなるプレ熱伝導シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、折畳又は捲回して得た積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスしてなる熱伝導シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、熱伝導シートは、熱伝導シートの厚み方向の熱伝導性を更に高めるという観点から、被着体との粘着性及び密着性の両方に優れていることが望ましいところ、従来の熱伝導シートについては、優れた粘着性及び優れた密着性を両立するという点において改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、優れた粘着性及び優れた密着性を両立可能な熱伝導シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、樹脂及び膨張化黒鉛を含む熱伝導シートにおいて、膨張化黒鉛を熱伝導シートの主面に対して60°以上90°以下の角度で配向させると共に、粘着力を1.0N・mm超とし、厚みを250μm以下とし、且つ、厚みの標準偏差を3.5μm以下とすれば、上記課題を解決できることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、[1]本発明は、樹脂及び膨張化黒鉛を含む、熱伝導シートであって、前記熱伝導シートの主面に対する前記膨張化黒鉛の配向角度が60°以上90°以下であり、粘着力が1.0N・mm超であり、厚みが250μm以下であり、且つ、厚みの標準偏差が3.5μm以下である、熱伝導シートである。
上記のような熱伝導シートは、優れた粘着性及び優れた密着性を両立できる。
本明細書において、熱伝導シートの「主面」は、当該熱伝導シートにおける最大面積を有する面を意味する。そして、熱伝導シートの主面に対する膨張化黒鉛の配向角度は、実施例に記載の方法に従って測定できる。
本明細書において、熱伝導シートの「粘着力」、「厚み」及び「厚みの標準偏差」は、実施例に記載の方法に従って測定できる。
本明細書において、樹脂にはゴムが含まれる。
【0010】
[2]上記[1]の熱伝導シートにおいて、前記膨張化黒鉛の体積平均粒子径は、100μm以下であることが好ましい。
膨張化黒鉛の体積平均粒子径が上記上限以下であれば、熱伝導シートの粘着性及び密着性を向上できる。また、低加圧(例えば、0.1MPa)下での熱伝導シートの厚み方向の熱抵抗を効果的に低減できる。
本明細書において、熱伝導シートに含まれる膨張化黒鉛の「体積平均粒子径」は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定して得られた粒度分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を意味し、実施例に記載の方法に従って測定できる。
【0011】
[3]上記[1]又は[2]の熱伝導シートにおいて、前記主面の表面粗さSaは、4.0μm以下であることが好ましい。
主面の表面粗さSaが上記上限以下であれば、熱伝導シートの粘着性及び密着性を向上できる。また、低加圧下での熱伝導シートの厚み方向の熱抵抗を効果的に低減できる。
本明細書において、「表面粗さSa」は、国際規格ISO 25178に準拠して得られる値であり、実施例に記載の方法に従って測定できる。
【0012】
[4]上記[1]~[3]の何れかの熱伝導シートは、前記熱伝導シートの主面内において複数の条片が並列接合してなり、前記複数の条片が、前記樹脂及び前記膨張化黒鉛を含む複数の第一条片と、前記第一条片とは異なる第二条片と、を含むことが好ましい。
熱伝導シートが上記した構造を有すれば、熱伝導シートの粘着力、厚み、及び厚みの標準偏差を容易に調整することが可能になるため、平滑な発熱体等の被着体に対してボイド(空隙)等を作ることなく、より良く密着させることができる。
本明細書において、「第一条片とは異なる第二条片」とは、第二条片の材料、組成及び物性の少なくとも1つが第一条片とは異なることを意味する。
【0013】
[5]上記[4]の熱伝導シートは、前記主面において、前記第一条片が占める合計面積割合が、40%以上60%以下であることが好ましい。
熱伝導シートの主面において、第一条片が占める合計面積割合が上記下限以上であれば、熱伝導シートの粘着性を向上できる。
一方、熱伝導シートの主面において、第一条片が占める合計面積割合が上限以下であれば、熱伝導シートの密着性を向上できる。
【0014】
[6]上記[4]又は[5]の熱伝導シートにおいて、前記第二条片の粘着力は、2.0N・mm以下であることが好ましい。
第二条片の粘着力が上記上限以下であれば、熱伝導シートの密着性を向上できる。
本明細書において、各条片の「粘着力」は、プローブの直径を適宜変更する等して、実施例に記載の方法を用いて測定できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、優れた粘着性及び優れた密着性を両立可能な熱伝導シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の熱伝導シートの一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の熱伝導シートは、発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用され得る。即ち、本発明の熱伝導シートは、放熱部材として機能し得るものであり、ヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体と共に放熱装置を構成できる。
【0018】
(熱伝導シート)
本発明の熱伝導シートは、樹脂及び膨張化黒鉛を含み、熱伝導シートの主面に対する膨張化黒鉛の配向角度が60°以上90°以下である。また、本発明の熱伝導シートは、粘着力が1.0N・mm超であり、厚みが250μm以下であり、且つ、厚みの標準偏差が3.5μm以下である。
上記のような熱伝導シートは、優れた粘着性及び優れた密着性を両立できる。
【0019】
<樹脂>
熱伝導シートに含まれる樹脂としては、特に限定されず、任意の樹脂を用いることができる。具体的には、例えば、ポリブテン、ブチルゴム、ニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、スチレンブタジエンゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、及びシリコンゴム等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、メラミン樹脂、等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらの中でも、熱可塑性樹脂が好ましく、ニトリルゴム、アクリルゴムがより好ましい。なお、これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
樹脂としては、液体の樹脂及び固体の樹脂のいずれも用いることができる。これらの樹脂は、1種を単独で使用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ここで、樹脂として液体の樹脂と固体の樹脂とを併用する場合、液体の樹脂と固体の樹脂との質量比は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で調整できる。
【0021】
液体の樹脂としては、常温常圧下で液体である樹脂を用いることができる。なお、本明細書において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
【0022】
固体の樹脂としては、常温常圧下で液体でない限り、特に限定されず、例えば、常温常圧下で固体の樹脂を用いることができる。
【0023】
熱伝導シート中における樹脂の含有割合は、20体積%以上であることが好ましく、35体積%以上であることがより好ましく、70体積%以下であることが好ましく、55体積%以下であることがより好ましい。
熱伝導シート中における樹脂の含有割合が上記下限以上であれば、熱伝導シートの柔軟性を向上できる。
一方、熱伝導シート中における樹脂の含有割合が上記上限以下であれば、膨張化黒鉛の含有割合を相対的に多くすることが可能となり、その結果、熱伝導シートの厚み方向の熱伝導性を向上できる。
【0024】
<膨張化黒鉛>
膨張化黒鉛は、鱗片状黒鉛等の黒鉛を硫酸等で化学処理して得た膨張性黒鉛を、熱処理して膨張させた後、微細化したものである。熱伝導シートに膨張化黒鉛を用いることで、熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率が高まり、当該熱伝導シートの厚み方向に、一層良好に伝熱させることができる。膨張化黒鉛としては、例えば、伊藤黒鉛工業株式会社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0025】
熱伝導シートに含まれる膨張化黒鉛の体積平均粒子径は、30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましく、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることが更に好ましく、60μm以下であることが更により好ましい。
上記膨張化黒鉛の体積平均粒子径が上記下限以上であれば、熱伝導シート中で粒子状フィラーの伝熱パスが良好に形成され得るため、熱伝導シートの厚み方向の熱伝導性を向上できる。
一方、上記膨張化黒鉛の体積平均粒子径が上記上限以下であれば、熱伝導シートの粘着性及び密着性を向上できる。また、低加圧下での熱伝導シートの厚み方向の熱抵抗を効果的に低減できる。
【0026】
熱伝導シートに含まれる膨張化黒鉛のアスペクト比(長径/短径)は、1超であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、1.4以上であることが更に好ましく、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることが更により好ましい。
熱伝導シートに含まれる膨張化黒鉛のアスペクト比が上記範囲内であれば、熱伝導シート中で膨張化黒鉛が厚み方向に良好に配向し得るため、熱伝導シートの厚み方向の熱伝導性を向上できる。
本明細書において、「アスペクト比」は、膨張化黒鉛をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、任意の50個の膨張化黒鉛の主面について、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。
【0027】
熱伝導シート中における膨張化黒鉛の含有割合は、30体積%以上であることが好ましく、45体積%以上であることがより好ましく、80体積%以下であることが好ましく、65体積%以下であることがより好ましい。
熱伝導シート中における膨張化黒鉛の含有割合が上記下限以上であれば、熱伝導シートの厚み方向の熱伝導性を向上できる。
一方、熱伝導シート中における樹脂の含有割合が上記上限以下であれば、樹脂の含有割合を相対的に多くすることが可能となり、その結果、熱伝導シートの柔軟性を向上できる。
【0028】
<その他の成分>
熱伝導シートは、上記した樹脂及び膨張化黒鉛以外に、その他の成分を更に含んでいてもよい。熱伝導シートが含み得るその他の成分は、特に限定されず、公知のものを使用できる。その他の成分としては、例えば、老化防止剤、難燃剤、可塑剤等が挙げられる。
【0029】
熱伝導シート中におけるその他の成分の含有割合は、10体積%以下であることが好ましく、5体積%以下であることがより好ましく、1体積%以下であることが更に好ましく、0体積%であることが特に好ましい。即ち、熱伝導シートは、樹脂及び膨張化黒鉛のみからなることが特に好ましい。
【0030】
<熱伝導シートの性状>
熱伝導シートにおける膨張化黒鉛の配向角度は、熱伝導シートの主面に対して60°以上90°以下である必要がある。
そして、熱伝導シートにおける膨張化黒鉛の配向角度は、熱伝導シートの主面に対して、70°以上であることが好ましく、75°以上であることがより好ましく、80°以上であることが更に好ましく、85°以上であることが更により好ましい。
膨張化黒鉛の配向角度が上記下限以上であれば、熱伝導シートの厚み方向の熱伝導性を向上できる。
【0031】
熱伝導シートは、粘着力が1.0N・mm超である必要がある。
そして、熱伝導シートの粘着力は、1.2N・mm以上であることが好ましく、1.5N・mm以上であることがより好ましく、5.0N・mm以下であることが好ましく、3.0N・mm以下であることがより好ましく、2.0N・mm以下であることが更に好ましい。
熱伝導シートの粘着力が上記下限以上であれば、熱伝導シートの粘着性を向上できる。
一方、熱伝導シートの粘着力が上記上限以下であれば、例えば、熱伝導シートを発熱体と放熱体との間に挟み込む際の過度な粘着を効果的に抑制できる。
なお、熱伝導シートの粘着力は、熱伝導シートに含まれる材料及び成分(樹脂、膨張化黒鉛等)の種類及び割合、並びに、熱伝導シートの構成により調整できる。
【0032】
熱伝導シートは、厚みが250μm以下である必要がある。
そして、熱伝導シートの厚みは、30μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましく、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。
熱伝導シートの厚みが上記下限以上であれば、熱伝導シートの強度を向上できる。
一方、熱伝導シートの厚みが上記上限以下であれば、低加圧下及び高加圧(例えば、0.9MPa)下での熱伝導シートの厚み方向の熱抵抗を効果的に低減できる。
なお、熱伝導シートの厚みは、熱伝導シートの製造方法及び製造条件により調整できる。
【0033】
熱伝導シートは、厚みの標準偏差が3.5μm以下である必要がある。
そして、熱伝導シートの厚みの標準偏差は、3.0μm以下であることが好ましく、2.8μm以下であることがより好ましい。
熱伝導シートの厚みの標準偏差が上記上限以下であれば、熱伝導シートの密着性を向上できる。また、低加圧下での熱伝導シートの厚み方向の熱抵抗を効果的に低減できる。
一方、熱伝導シートの厚みの標準偏差は、例えば0.5μm以上であり、1.0μm以上でもよく、2.0μm以上でもよい。
なお、熱伝導シートの厚みの標準偏差は、熱伝導シートに含まれる材料及び成分(樹脂、膨張化黒鉛等)の種類及び割合、並びに、熱伝導シートの製造方法及び製造条件により調整できる。
【0034】
熱伝導シートは、主面の表面粗さSaが、4.0μm以下であることが好ましく、3.5μm以下であることがより好ましく、3.0μm以下であることが更に好ましい。
熱伝導シートの主面の表面粗さSaが上記上限以下であれば、熱伝導シートの密着性を向上できる。また、低加圧下での熱伝導シートの厚み方向の熱抵抗を効果的に低減できる。
一方、熱伝導シートの主面の表面粗さSaは、例えば0.5μm以上であり、1.0μm以上でもよく、2.0μm以上でもよい。
【0035】
熱伝導シートは、主面とは反対側の面(以下、「裏面」と称する場合がある。)の表面粗さSaが、4.0μm以下であることが好ましく、3.5μm以下であることがより好ましく、3.0μm以下であることが更に好ましい。
熱伝導シートの裏面の表面粗さSaが上記上限以下であれば、熱伝導シートの密着性をより向上できる。また、低加圧下での熱伝導シートの厚み方向の熱抵抗を効果的に低減できる。
一方、熱伝導シートの裏面の表面粗さSaは、例えば0.5μm以上であり、1.0μm以上でもよく、2.0μm以上でもよい。
【0036】
なお、熱伝導シートの主面及び裏面の表面粗さSaは、熱伝導シートに含まれる材料及び成分(樹脂、膨張化黒鉛等)の種類及び割合、並びに、熱伝導シートの製造方法及び製造条件により調整できる。
【0037】
熱伝導シートは、厚み方向の熱伝導率が、20W/m・K以上であることが好ましく、50W/m・K以上であることがより好ましく、55W/m・K以上であることが更に好ましく、70W/m・K以上であることが更により好ましい。
熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率が上記下限以上であれば、熱伝導シートの厚み方向の熱伝導性を向上できる。
一方、熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率は、例えば300W/m・K以下であり、200W/m・K以下でもよく、150W/m・K以下でもよい。
本明細書において、熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率は、実施例に記載の方法により測定できる。
なお、熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率は、熱伝導シートに含まれる材料及び成分(樹脂、膨張化黒鉛等)の種類及び割合、並びに、熱伝導シートの製造方法及び製造条件により調整できる。
【0038】
熱伝導シートは、0.1MPaの圧力を加えた時の厚み方向の熱抵抗値が、0.200℃/W以下であることが好ましく、0.120℃/W以下であることがより好ましく、0.110℃/W以下であることが更に好ましく、0.100℃/W以下であることが更により好ましく、0.080℃/W以下であることがより一層好ましい。
一方、熱伝導シートにおける0.1MPaの圧力を加えた時の厚み方向の熱抵抗値は、例えば0.010℃/W以上であり、0.030℃/W以上でもよく、0.050℃/W以上でもよい。
【0039】
熱伝導シートは、0.9MPaの圧力を加えた時の厚み方向の熱抵抗値が、0.150℃/W以下であることが好ましく、0.060℃/W以下であることがより好ましく、0.047℃/W以下であることが更に好ましく、0.045℃/W以下であることが更により好ましく、0.040℃/W以下であることがより一層好ましい。
一方、熱伝導シートにおける0.9MPaの圧力を加えた時の厚み方向の熱抵抗値は、例えば0.005℃/W以上であり、0.010℃/W以上でもよく、0.020℃/W以上でもよい。
【0040】
本明細書において、熱伝導シートの厚み方向の各熱抵抗値は、実施例に記載の方法により測定できる。
なお、熱伝導シートの厚み方向の熱抵抗値は、熱伝導シートに含まれる材料及び成分(樹脂、膨張化黒鉛等)の種類及び割合、並びに、熱伝導シートの製造方法及び製造条件により調整できる。
【0041】
熱伝導シートは、熱伝導シートの厚みをT0とし、厚み方向に0.9MPaで加圧した状態における熱伝導シートの厚みをT0.9として、下記式(1):
C=100×{1-(T0.9/T0)}[%]・・・(1)
により算出される圧縮率Cが、3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、8%以下であることが更に好ましい。
上記圧縮率Cが上記下限以上であれば、熱伝導シートの圧縮性を向上できる。ここで、熱伝導シートは、通常、発熱体と放熱体との間に挟まれ、所定の圧力をかけられた状態で使用され得るものであるところ、熱伝導シートが圧縮性に優れていれば、熱伝導シートを加圧した際につぶれやすくなり、その結果、熱伝導シートと、発熱体及び放熱体等の被着体との密着性を高めることができる。
一方、上記圧縮率Cが上記上限以下であれば、熱伝導シートの耐クラック性を向上できる。
なお、熱伝導シートの圧縮率Cは、熱伝導シートに含まれる材料及び成分(樹脂、膨張化黒鉛等)の種類及び割合、並びに、熱伝導シートの製造方法及び製造条件により調整できる。
【0042】
<熱伝導シートの構造>
本発明の熱伝導シートは、上述した所定の性状を有するものであれば特に限定されないが、任意に、熱伝導シートの主面内において複数の条片が並列接合してなり、複数の条片が、樹脂及び膨張化黒鉛を含む複数の第一条片と、第一条片とは異なる第二条片と、を含むことが好ましい。
熱伝導シートが上記した構造を有すれば、熱伝導シートの粘着力、厚み、及び厚みの標準偏差を容易に調整することが可能になるため、平滑な発熱体等の被着体に対してボイド(空隙)等を作ることなく、より良く密着させることができる。
【0043】
熱伝導シートが複数の条片から構成されている場合、熱伝導シートは、複数の第二条片を含むことが好ましい。熱伝導シートが複数の第二条片を含めば、熱伝導シートの生産性をより向上できる。
また、熱伝導シートが、複数の第一条片及び複数の第二条片を含む場合、熱伝導シートは、第一条片と、互いに隣接する第一条片の間に位置する第二条片とを並列接合してなる構造を有することがより好ましい。熱伝導シートがこのような構造を有すれば、熱伝導シートの生産性を更に向上できる。
【0044】
以下、
図1を参照して、本発明の熱伝導シートの一例を説明するが、本発明の熱伝導シートはこれに限定されるものではない。なお、
図1において、X方向は第一条片及び第二条片の幅方向に相当し、Y方向は第一条片と第二条片の長手方向に相当し、Z方向は熱伝導シートの厚み方向に相当する。
【0045】
図1に示す熱伝導シート10は、熱伝導シート10の主面内において、第一条片11と、互いに隣接する第一条片11の間に位置する第二条片12とを並列接合してなる構造を有する。より詳細には、
図1に示す熱伝導シート10では、熱伝導シート10の主面内において、第一条片11と第二条片12が、長手方向(
図1ではY方向)に延びる辺を共有するように(
図1ではX方向に)交互に接合されている。
なお、
図1では、第一条片11及び第二条片12の幅(第一条片11及び第二条片12のX方向の長さ)が略等しい場合を示しているが、第一条片11及び第二条片12の幅は異なっていてもよい。
【0046】
<<第一条片>>
第一条片は、樹脂及び膨張化黒鉛を含み、任意に、その他の成分を更に含み得る。
【0047】
〔第一条片に含まれる樹脂〕
第一条片に含まれる樹脂(以下、「第一条片用樹脂」と称する場合がある。)は、<樹脂>の項で上述したものと同様のものを用いることができる。
【0048】
ここで、第一条片は、熱伝導シートの粘着性及び密着性を向上できることから、第一条片用樹脂として、アクリルゴムを含むことが好ましい。
【0049】
第一条片中における第一条片用樹脂の含有割合は、40体積%以上であることが好ましく、55体積以上であることがより好ましく、80体積%以下であることが好ましく、65体積%以下であることがより好ましい。
第一条片中における第一条片用樹脂の含有割合が上記下限以上であれば、熱伝導シートの柔軟性を向上できる。
一方、第一条片中における第一条片用樹脂の含有割合が上記上限以下であれば、第一条片に含まれる膨張化黒鉛の含有割合を相対的に多くすることが可能となり、その結果、熱伝導シートの厚み方向の熱伝導性を向上できる。
【0050】
ここで、第一条片は、熱伝導シートの粘着性及び密着性を向上できることから、第一条片用樹脂として、固体の第一条片用樹脂を含むことが好ましい。そして、第一条片は、熱伝導シートの粘着性及び密着性をより向上できることから、第一条片用樹脂として、固体のアクリルゴムを含むことがより好ましい。
【0051】
第一条片が個体の第一条片用樹脂を含む場合、第一条片中における個体の第一条片用樹脂の含有量は、第一条片中の第一条片用樹脂の合計を100体積部とした場合に、70体積部以上であることが好ましく、90体積部以上であることがより好ましく、95体積部以上であることが更に好ましく、100体積部であることが特に好ましい。即ち、第一条片中における第一条片用樹脂は、個体の第一条片用樹脂のみからなることが特に好ましい。
【0052】
〔第一条片に含まれる膨張化黒鉛〕
第一条片に含まれる膨張化黒鉛(以下、「第一条片用膨張化黒鉛」と称する場合がある。)は、<膨張化黒鉛>の項で上述したものと同様のものを用いることができる。
【0053】
ここで、第一条片用膨張化黒鉛は、体積平均粒子径が、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、100μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましい。
第一条片用膨張化黒鉛の体積平均粒子径が上記下限以上であれば、熱伝導シートの厚み方向の熱伝導性を向上できる。
一方、第一条片用膨張化黒鉛の体積平均粒子径が上記上限以下であれば、熱伝導シートの粘着性及び密着性を向上できる。
本明細書において、第一条片用膨張化黒鉛の「体積平均粒子径」は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定して得られた粒度分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を意味する。なお、第一条片用膨張化黒鉛の体積平均粒子径は、対象となる条片をサンプリングして溶剤に溶かして測定すること以外は、熱伝導シートに含まれる膨張化黒鉛の体積平均粒子径と同様の方法で測定できる。
【0054】
第一条片中における第一条片用膨張化黒鉛の含有割合は、20体積%以上であることが好ましく、35体積%以上であることがより好ましく、60体積%以下であることが好ましく、45体積%以下であることがより好ましい。
第一条片中における第一条片用膨張化黒鉛の含有割合が上記下限以上であれば、熱伝導シートの厚み方向の熱伝導性を向上できる。
一方、第一条片中における第一条片用膨張化黒鉛の含有割合が上記上限以下であれば、第一条片用樹脂の含有割合を相対的に多くすることが可能となり、その結果、熱伝導シートの柔軟性を向上できる。
【0055】
〔第一条片に含まれ得るその他の成分〕
第一条片に含まれ得るその他の成分(以下、「第一条片用その他の成分」と称する場合がある。)は、<その他の成分>の項で上述したものと同様のものを用いることができる。
【0056】
第一条片中における第一条片用その他の成分の含有割合は、10体積%以下であることが好ましく、5体積%以下であることがより好ましく、1体積%以下であることが更に好ましく、0体積%であることが特に好ましい。即ち、第一条片は、第一条片用樹脂及び第一条片用膨張化黒鉛のみからなることが特に好ましい。
【0057】
〔第一条片の粘着力〕
第一条片は、粘着力が、2.0N・mm超であることが好ましく、2.2N・mm以上であることがより好ましく、2.4N・mm以上であることが更に好ましく、5.0N・mm以下であることが好ましく、4.0N・mm以下であることがより好ましく、3.0N・mm以下であることが更により好ましい。
第一条片の粘着力が上記下限以上であれば、熱伝導シートの粘着性を向上できる。
一方、第一条片の粘着力が上記上限以下であれば、熱伝導シートの密着性を向上できる。
【0058】
<<第二条片>>
第二条片は、第一条片とは異なる条片である。第二条片は、第一条片とは異なる条片であれば特に限定されないが、樹脂及び膨張化黒鉛を含み、任意に、その他の成分を含むことが好ましい。
ここで、第二条片の具体例としては、
(A)第一条片に含まれる樹脂とは異なる種類の樹脂を含む条片、
(B)第一条片に含まれる膨張化黒鉛とは異なる体積平均粒子径を有する膨張化黒鉛を含む条片、
(C)第一条片に含まれる樹脂とは異なる種類の樹脂を含み、且つ、第一条片に含まれる膨張化黒鉛とは異なる体積平均粒子径を有する膨張化黒鉛を含む条片
(D)樹脂及び膨張化黒鉛の配合割合が第一条片とは異なる条片
(E)粘着力が第一条片とは異なる条片
等が挙げられる。
【0059】
〔第二条片に含まれ得る樹脂〕
第二条片に含まれ得る樹脂(以下、「第二条片用樹脂」と称する場合がある。)は、第二条片が第一条片とは異なる条片となれば特に限定されず、<樹脂>の項で上述したものと同様のものを用いることができる。
【0060】
ここで、第二条片は、熱伝導シートの粘着性及び密着性を向上できることから、第二条片用樹脂として、第一条片用樹脂とは異なる樹脂を含むことが好ましく、ニトリルゴムを含むことが好ましい。
【0061】
第二条片中における第二条片用樹脂の含有割合は、20体積%以上であることが好ましく、40体積以上であることがより好ましく、80体積%以下であることが好ましく、60体積%以下であることがより好ましい。
第二条片中における第二条片用樹脂の含有割合が上記下限以上であれば、熱伝導シートの柔軟性を向上できる。
一方、第二条片中における第二条片用樹脂の含有割合が上記上限以下であれば、第二条片に含まれる膨張化黒鉛の含有割合を相対的に多くすることが可能となり、その結果、熱伝導シートの厚み方向の熱伝導性を向上できる。
【0062】
第二条片中における第二条片用樹脂の含有割合と、第一条片中における第一条片用樹脂の含有割合とが異なる場合、第二条片中における第二条片用樹脂の含有割合は、第一条片中における第一条片用樹脂の含有割合よりも少ないことが好ましい。そしてこの場合、第一条片中における第一条片用樹脂の含有割合と、第二条片中における第二条片用樹脂の含有割合との差(「第一条片用樹脂の含有割合」-「第二条片用樹脂の含有割合」)は、5体積%以上であることが好ましく、15体積%以上であることがより好ましく、40体積%以下であることが好ましく、25体積%以下であることがより好ましい。
【0063】
ここで、第二条片は、熱伝導シートの粘着性及び密着性を向上できることから、第二条片用樹脂として、液体の第二条片用樹脂及び個体の第二条片用樹脂を含むことが好ましい。そして、熱伝導シートの粘着性及び密着性をより向上できることから、第二条片用樹脂として、固体のニトリルゴム及び液体のニトリルゴムを含むことがより好ましい。
【0064】
第二条片が液体の第二条片用樹脂及び個体の第二条片用樹脂を含む場合、第二条片中における液体の第二条片用樹脂の含有量は、第二条片中の第二条片用樹脂の合計を100体積部とした場合に、40体積部以上であることが好ましく、50体積部以上であることがより好ましく、80体積部以下であることが好ましく、70体積部以下であることがより好ましい。
【0065】
第二条片が液体の第二条片用樹脂及び個体の第二条片用樹脂を含む場合、第二条片中における個体の第二条片用樹脂の含有量は、第二条片中の第二条片用樹脂の合計を100体積部とした場合に、第二条片中における個体の第二条片用樹脂の含有割合は、20体積部以上であることが好ましく、30体積部以上であることがより好ましく、60体積部以下であることが好ましく、50体積部以下であることがより好ましい。
【0066】
〔第二条片に含まれ得る膨張化黒鉛〕
第二条片に含まれ得る膨張化黒鉛(以下、「第二条片用膨張化黒鉛」と称する場合がある。)は、第二条片が第一条片とは異なる条片となれば特に限定されず、<膨張化黒鉛>の項で上述したものと同様のものを用いることができる。
【0067】
第二条片用膨張化黒鉛は、体積平均粒子径が、35μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、250μm以下であることが更に好ましい。
第二条片用膨張化黒鉛の体積平均粒子径が上記下限以上であれば、熱伝導シートの厚み方向の熱伝導性を向上できる。
一方、第二条片用膨張化黒鉛の体積平均粒子径が上記上限以下であれば、熱伝導シートの粘着性及び密着性を向上できる。
本明細書において、第二条片用膨張化黒鉛の体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定して得られた粒度分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を意味する。なお、第二条片用膨張化黒鉛の体積平均粒子径は、対象となる条片をサンプリングして溶剤に溶かして測定すること以外は、熱伝導シートに含まれる膨張化黒鉛の体積平均粒子径と同様の方法で測定できる。
【0068】
ここで、第二条片用膨張化黒鉛の体積平均粒子径が、第一条片用膨張化黒鉛の体積平均粒子径と異なる場合、第二条片用膨張化黒鉛の体積平均粒子径は、第一条片用膨張化黒鉛の体積平均粒子径よりも大きいことが好ましい。そしてこの場合、第二条片用膨張化黒鉛の体積平均粒子径と、第一条片用膨張化黒鉛の体積平均粒子径との差(「第二条片用膨張化黒鉛の体積平均粒子径」-「第一条片用膨張化黒鉛の体積平均粒子径」)は、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることが更に好ましく、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることが更に好ましく、100μm以下であることが更により好ましい。
【0069】
第二条片中における第二条片用膨張化黒鉛の含有割合は、20体積%以上であることが好ましく、40体積%以上であることがより好ましく、80体積%以下であることが好ましく、60体積%以下であることがより好ましい。
第二条片中における第二条片用膨張化黒鉛の含有割合が上記下限以上であれば、熱伝導シートの厚み方向の熱伝導性を向上できる。
一方、第二条片中における第二条片用膨張化黒鉛の含有割合が上記上限以下であれば、第二条片用樹脂の含有割合を相対的に多くすることが可能となり、その結果、熱伝導シートの柔軟性を向上できる。
【0070】
ここで、第二条片中における第二条片用膨張化黒鉛の含有割合と、第一条片中における第一条片用膨張化黒鉛の含有割合とが異なる場合、第二条片中における第二条片用膨張化黒鉛の含有割合は、第一条片中における第一条片用膨張化黒鉛の含有割合よりも多いことが好ましい。そしてこの場合、第二条片中における第二条片用膨張化黒鉛の含有割合と、第一条片中における第一条片用膨張化黒鉛の含有割合との差(「第二条片用膨張化黒鉛の含有割合」-「第一条片用膨張化黒鉛の含有割合」)は、5体積%以上であることが好ましく、15体積%以上であることがより好ましく、40体積%以下であることが好ましく、25体積%以下であることがより好ましい。
【0071】
〔第二条片に含まれ得るその他の成分〕
第二条片に含まれ得るその他の成分(以下、「第二条片用その他の成分」と称する場合がある。)は、<その他の成分>の項で上述したものと同様のものを用いることができる。
【0072】
第二条片中における第二条片用その他の成分の含有割合は、10体積%以下であることが好ましく、5体積%以下であることがより好ましく、1体積%以下であることが更に好ましく、0体積%であることが特に好ましい。即ち、第二条片は、第二条片用樹脂及び第二条片用膨張化黒鉛のみからなることが特に好ましい。
【0073】
〔第二条片の粘着力〕
第二条片は、粘着力が、0.1N・mm以上であることが好ましく、0.5N・mm以上であることがより好ましく、0.8N・mm以上であることが更に好ましく、2.0N・mm以下であることが好ましく、1.5N・mm以下であることがより好ましく、1.0N・mm以下であることが更により好ましい。
第二条片の粘着力が上記下限以上であれば、熱伝導シートの粘着性を向上できる。
一方、第二条片の粘着力が上記上限以下であれば、熱伝導シートの密着性を向上できる。
【0074】
<<第一条片の粘着力と第二条片の粘着力との差>>
ここで、第一条片の粘着力と、第二条片の粘着力とが異なる場合、第二条片の粘着力は、第一条片の粘着力よりも小さいことが好ましい。そしてこの場合、第一条片粘着力と、第二条片の粘着力との差(「第一条片の粘着力」-「第二条片の粘着力」)は、0.5N・mm以上であることが好ましく、1.0N・mm以上であることがより好ましく、1.3N・mm以上であることが更に好ましく、3.0N・mm以下であることが好ましく、2.0N・mm以下であることがより好ましく、1.6N・mm以下であることが更に好ましい。
【0075】
<<各条片の面積割合>>
熱伝導シートが複数の条片から構成されている場合、熱伝導シートは、主面において、第一条片が占める合計面積割合が、40%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましく、60%以下であることが好ましく、55%以下であることがより好ましい。
熱伝導シートの主面において、第一条片が占める合計面積割合が上記下限以上であれば、熱伝導シートの粘着性を向上できる。
一方、熱伝導シートの主面において、第一条片が占める合計面積割合が上限以下であれば、熱伝導シートの密着性を向上できる。
【0076】
熱伝導シートが複数の条片から構成されている場合、熱伝導シートは、主面において、第二条片が占める合計面積割合が、40%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましく、60%以下であることが好ましく、55%以下であることがより好ましい。
熱伝導シートの主面において、第二条片が占める合計面積割合が上記下限以上であれば、熱伝導シートの密着性を向上できる。
一方、熱伝導シートの主面において、第二条片が占める合計面積割合が上限以下であれば、熱伝導シートの粘着性を向上できる。
【0077】
<熱伝導シートの製造方法>
本発明の熱伝導シートは、特に限定されないが、例えば、
(A)樹脂及び膨張化黒鉛を含む第一組成物を加圧してシート状に成形し、第一プレシートを得る、第一プレシート成形工程と、
(B)任意の、第二組成物を加圧してシート状に成形し、第二プレシートを得る、第二プレシート成形工程と、
(C)(i-1)第一プレシートを厚み方向に複数枚積層して、又は、(i-2)第一プレシートを折畳若しくは捲回して積層体を得る、或いは、(ii-1)複数枚の第一プレシートと、少なくとも1枚の第二プレシートとを厚み方向に重なるように積層して、又は、(ii-2)複数枚の第一プレシートと、少なくとも1枚の第二プレシートとを厚み方向に重なるように積層して得た積層物を折畳若しくは捲回して積層体を得る、積層体形成工程と、
(D)積層体形成工程と、積層体を積層方向に45度以下の角度でスライスし、熱伝導シートを得る工程と、
を含む方法等を用いて製造できる。
【0078】
<<(A)第一プレシート成形工程>>
第一プレシート成形工程では、樹脂及び膨張化黒鉛を含む第一組成物を加圧してシート状に成形し、第一プレシートを得る。
ここで、熱伝導シートが複数の条片から構成されている場合、第一プレシートは、熱伝導シートの第一条片を構成し得る。
【0079】
〔第一組成物〕
第一組成物は、樹脂及び膨張化黒鉛を含む。また、第一組成物は、任意に、その他の成分を更に含んでいてもよい。第一組成物に含まれる樹脂、膨張化黒鉛及び任意のその他の成分としては、〔第一条片に含まれる樹脂〕、〔第一条片に含まれる膨張化黒鉛〕及び〔第一条片に含まれ得るその他の成分〕の項で上述した樹脂、膨張化黒鉛及びその他の成分を、上述した比率で用いることができる。
【0080】
〔第一組成物の調製〕
第一組成物は、特に限定されず、上述した成分を混合することにより調製できる。なお、上述した成分の混合は、特に制限されず、ニーダー;ヘンシェルミキサー、ホバートミキサー、ハイスピードミキサー等のミキサー;二軸混練機;ロール;等の既知の混合装置を用いて行うことができる。
【0081】
混合は、酢酸エチル等の溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒に予め樹脂を溶解又は分散させて樹脂溶液として、膨張化黒鉛、及び任意で添加されるその他の成分と混合してもよい。
【0082】
混合時間は、例えば、5分以上60分以下である。
【0083】
混合温度は、例えば、5℃以上160℃以下である。
【0084】
〔第一組成物の成形〕
調製した第一組成物は、任意に脱泡及び解砕した後に、ロール成形してシート状に成形できる。このように第一組成物をロール成形したシート状のものを、第一プレシートとすることができる。
なお、混合時に溶媒を用いている場合には、溶媒を除去してからシート状に成形することが好ましく、例えば、真空脱泡を用いて脱泡を行えば、脱泡時に溶媒の除去も同時に行うことができる。
【0085】
ここで、ロール成形では、第一組成物を、第一ロールと、第一ロールよりも外周速度が速い第二ロールとの間を通過させることが好ましい。このようなロール成形によれば、高い剪断応力を加えて第一組成物を成形でき、この結果、第一プレシート中の膨張化黒鉛が良好に配向し、これを用いて得られた熱伝導シートは熱伝導性に優れる。また、このようなロール成形によれば、熱伝導シートの膨張化黒鉛の含有割合を増加させることが可能となり、その結果、高い熱伝導性を有する熱伝導シートを得ることができる。
【0086】
第一ロールに対する第二ロールの外周速度比(「第二ロールの外周速度」/「第一ロールの外周速度」)は、1.03/1以上であることが好ましく、1.05/1以上であることがより好ましく、1.1/1以上であることが更に好ましく、2/1以下であることが好ましく、1.3/1以下であることがより好ましく、1.2/1以下であることが更に好ましい。
第一ロールに対する第二ロールの外周速度比が上記下限以上であれば、より高い剪断応力を加えて第一組成物を成形できるため、熱伝導シートの熱伝導性を向上できる。
一方、第一ロールに対する第二ロールの外周速度比が上記上限以下であれば、熱伝導シートの圧縮性を向上できる。また、第一ロールに対する第二ロールの外周速度比が上記上限以下であれば、第一プレシートの表面に発生するシワを抑制できる。即ち、第一プレシートの製品不良の発生を抑制し、これを用いて得られる熱伝導シートの生産性を向上できる。
なお、外周速度比は、ロールの径及び/又は回転速度を変更することで調整できる。
【0087】
第一ロールと第二ロールとの外周速度差(「第二ロールの外周速度」-「第一ロールの外周速度」)は、0.06m/分以上であることが好ましく、0.1m/分以上であることがより好ましく、0.2m/分以上であることが更に好ましく、1m/分以下であることが好ましく、0.7m/分以下であることがより好ましく、0.5m/分以下であることが更に好ましい。
第一ロールと第二ロールとの外周速度差が上記下限以上であれば、より高い剪断応力を加えて第一組成物を成形できるため、熱伝導シートの熱伝導性を向上できる。
一方、第一ロールと第二ロールとの外周速度差が上記上限以下であれば、熱伝導シートの圧縮性を向上できる。また、第一ロールに対する第二ロールの外周速度比が上記上限以下であれば、第一プレシートの表面に発生するシワを抑制できる。即ち、第一プレシートの製品不良の発生を抑制し、これを用いて得られる熱伝導シートの生産性を向上できる。
なお、外周速度比は、ロールの径及び/又は回転速度を変更することで調整できる。
【0088】
第一ロールと第二ロールとの間隔は、0.1mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることより好ましく、0.4mm以上であることが更に好ましく、2.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましく、0.7mm以下であることが更に好ましい。
【0089】
<<(B)第二プレシート成形工程>>
任意の第二プレシート成形工程では、第二組成物を加圧してシート状に成形し、第二プレシートを得る。
ここで、熱伝導シートが複数の条片から構成されている場合、第二プレシートは、熱伝導シートの第二条片を構成し得る。なお、この場合、第二組成物としては、第二条片が第一条片とは異なる条片となれば特に限定されず、第一組成物と同一のものを用いても、第一組成物とは異なるものを用いてもよいが、第一条片とは異なる第二条片の形成が容易であることから、第一組成物とは異なる第二組成物を用いることが好ましい。
本明細書において、「第一組成物とは異なる第二組成物」とは、第二組成物の材料、組成及び物性の少なくとも1つが第一組成物とは異なることを意味する。
【0090】
〔第二組成物〕
第二組成物は、特に限定されないが、樹脂及び膨張化黒鉛を含む。また、第二組成物は、任意に、その他の成分を更に含んでいてもよい。
ここで、第二組成物の具体例としては、
(A)第一組成物に含まれる樹脂とは異なる種類の樹脂を含む組成物、
(B)第一組成物に含まれる膨張化黒鉛とは異なる体積平均粒子径を有する膨張化黒鉛を含む組成物、
(C)第一組成物に含まれる樹脂とは異なる種類の樹脂を含み、且つ、第一条片に含まれる膨張化黒鉛とは異なる体積平均粒子径を有する膨張化黒鉛を含む組成物
(D)樹脂及び膨張化黒鉛の配合割合が第一組成物とは異なる組成物
(E)粘着力が第一組成物とは異なる組成物
等が挙げられる。
なお、第二組成物に含まれる樹脂、膨張化黒鉛及び任意のその他の成分としては、〔第二条片に含まれる樹脂〕、〔第二条片に含まれる膨張化黒鉛〕及び〔第二条片に含まれ得るその他の成分〕の項で上述した樹脂、膨張化黒鉛及びその他の成分を、上述した比率で用いることができる。
【0091】
〔第二組成物の調製〕
第二組成物の調製は、〔第一組成物の調製〕で上述した調製方法を、形成され得る第二条片の組成や物性等に応じて適宜用いることができる。
【0092】
〔第二組成物の成形〕
第二組成物の成形は、〔第一組成物の成形〕で上述した成形方法を、形成され得る第二条片の組成や物性等に応じて適宜用いることができる。
【0093】
<<(C)積層体形成工程>>
積層体形成工程では、(i-1)第一プレシートを厚み方向に複数枚積層して、又は、(i-2)第一プレシートを折畳若しくは捲回して積層体を得る、或いは、(ii-1)複数枚の第一プレシートと、少なくとも1枚の第二プレシートとを厚み方向に重なるように積層して、又は、(ii-2)複数枚の第一プレシートと、少なくとも1枚の第二プレシートとを厚み方向に重なるように積層して得た積層物を折畳若しくは捲回して積層体を得る。
【0094】
第一プレシート又は積層物の折畳による積層体の形成は、特に制限されることなく、折畳機を用いて第一プレシート又は積層物を一定幅で折り畳むことにより行うことができる。また、第一プレシート又は積層物の捲回による積層体の形成は、特に制限されることなく、第一プレシート又は積層物の短手方向又は長手方向に平行な軸の回りに第一プレシート又は積層物を捲き回すことにより行うことができる。また、第一プレシート又は積層物の積層による積層体の形成は、特に制限されることなく、積層装置を用いて行うことができる。例えば、シート積層装置(日機装社製、製品名「ハイスタッカー」)を用いれば、層間に空気が入り込むことを抑えることができるため、良好な積層体を効率的に得ることができる。
【0095】
ここで、上記(ii-1)及び上記(ii-2)の積層体形成工程では、第二プレシートを複数枚用いることが好ましい。即ち、上記(ii-1)の積層体形成工程では、複数枚の第一プレシートと、複数枚の第二プレシートとを厚み方向に重なるように積層して積層体を得ることが好ましく、上記(ii-2)の積層体形成工程では、複数枚の第一プレシートと、複数枚の第二プレシートとを厚み方向に重なるように積層して得た積層物を折畳若しくは捲回して積層体を得ることが好ましい。第二プレシートを複数枚用いれば、積層体のスライスを容易に行うことが可能となり、その結果、熱伝導シートの生産性を向上できる。
また、上記(ii-2)の積層体形成工程では、複数枚の第一プレシートと、複数枚の第二プレシートとを厚み方向に交互に重なるように積層して積層体を得ることが好ましい。このような積層体形成工程であれば、例えば、後述するスライス部材を用いて積層体をスライスする際に、スライス部材への積層体の過度な粘着を効果的に抑制することが可能になる等、積層体のスライスをより容易に行うことが可能となり、その結果、熱伝導シートの生産性をより向上できる。
【0096】
なお、積層体形成工程では、得られた積層体を、加熱しながら、積層方向に加圧しても、全方位から加圧してもよい。ここで、積層体形成工程において、積層体を、積層方向に加圧すること、或いは、全方位から加圧することを二次加圧という。積層体に対して二次加圧を行うことにより、積層された第一プレシート、又は、第一プレシート及び第二プレシートの相互間の融着を促進することができる。なお、全方位からの加圧は、例えば、オートクレーブを用いて実施できる。
以下では、上記加圧前の積層体を「第一積層体」と称し、上記加圧後の積層体(加圧された積層体)を「第二積層体」と称する場合がある。
【0097】
ここで、第一積層体を、積層方向に加圧する際の圧力、或いは、全方位から加圧する際の圧力は、0.05MPa以上0.90MPa以下とすることができる。また、第一積層体の加熱温度は、特に限定されないが、50℃以上170℃以下であることが好ましい。更に、第一積層体の加熱時間は、例えば、10秒間以上30分間以下とすることができる。
【0098】
なお、積層体形成工程で得られる積層体では膨張化黒鉛が積層方向に略直交する方向に配向していると推察される。
【0099】
<<(D)スライス工程>>
スライス工程では、積層体を積層方向に45度以下の角度でスライスし、積層体のスライス片よりなる熱伝導シートを得る。
【0100】
積層体をスライスする方法としては、特に限定されず、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、熱伝導シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。
【0101】
積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されず、スリットを有する平滑な盤面と、このスリット部より突出した刃部とを有するスライス部材(例えば、鋭利な刃を備えたカンナ及びスライサー)を用いることができる。
【0102】
積層体をスライスする角度は、熱伝導シートの熱伝導性を高める観点からは、積層方向に対して30°以下であることが好ましく、積層方向に対して15°以下であることがより好ましく、積層方向に対して略0°である(即ち、積層方向に沿う方向である)ことが更に好ましい。
【0103】
<<
図1に示す熱伝導シート10の製造方法>>
特に限定されないが、
図1に示す熱伝導シート10は、例えば、
(A)樹脂及び膨張化黒鉛を含む第一組成物を加圧してシート状に成形し、第一プレシートを得る、第一プレシート成形工程と、
(B)第一組成物とは異なる第二組成物を加圧してシート状に成形し、第二プレシートを得る、第二プレシート成形工程と、
(C)複数枚の第一プレシートと、複数枚の第二プレシートとを厚み方向に交互に重なるように積層して積層体を得る、積層体形成工程と、
(D)積層体を積層方向に45度以下の角度でスライスし、熱伝導シートを得る、スライス工程と、を含む方法を用いて製造できる。
【実施例0104】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。また、体積分率等の算出に際して、各配合成分の体積として、各配合成分の質量をそれらの理論比重で除した値を採用した。なお、実施例における各種の測定及び評価は以下の方法に従って行った。
【0105】
<膨張化黒鉛の配向角度>
各実施例及び比較例で得られた熱伝導シート中の膨張化黒鉛の配向角度は、熱伝導シートを正八角形に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテクノロジーズ製、「SU-3500」)にて当該シートの上端から下端までが収まる倍率で観察して求めた。なお、このときの倍率は700倍であった。具体的には、断面における膨張化黒鉛の長軸に50本線を引き、熱伝導シートの表面に対する長軸の角度の平均を算出した。なお、角度が90°以上であった場合には補角を採用した。これを8面に対して実施し、8面の中で最も値の大きなものを熱伝導シート中の膨張化黒鉛の配向角度とした。
【0106】
<熱伝導率>
各実施例及び比較例で得られた熱伝導シートについて、それぞれ、厚み方向の熱拡散率α(m2/s)、定圧比熱Cp(J/g・K)及び比重ρ(g/m3)を以下の方法で測定した。
[厚み方向の熱拡散率α(m2/s)]
熱物性測定装置(株式会社ベテル製、製品名「サーモウェーブアナライザTA35」)を使用して、熱伝導シートの厚み方向の熱拡散率を測定した。
[定圧比熱Cp(J/g・K)]
示差走査熱量計(Rigaku製、製品名「DSC8230」)を使用し、10℃/分の昇温条件下における比熱を測定した。
[比重ρ(g/m3)]
自動比重計(東洋精機製、商品名「DENSIMETER-H」)を用いて比重(密度)(g/m3)を測定した。
そして、得られた測定値を用いて下記式(2):
λ=α×Cp×ρ・・・(2)
に代入し、熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率λ(W/m・K)を算出した。
【0107】
<熱伝導シートの厚み、熱抵抗値及び圧縮率>
各実施例及び比較例で製造した熱伝導シートの厚み、熱抵抗値、及び圧縮率は、熱抵抗試験器(株式会社日立テクノロジーアンドサービス製、製品名「樹脂材料熱抵抗測定装置」)を用いて測定した。ここで、1cm角の略正方形に切り出した熱伝導シートを試料とし、加圧前の熱伝導シートの厚みの値(T0)を測定した。そして、試料温度50℃において、厚み方向に0.1MPa及び0.9MPaの圧力を加えた各状態における熱伝導シートの熱抵抗値及び厚みを測定した。
また、上記試料を加圧する前の厚みをT0とし、0.9MPaの圧力を加えた際の上記試料の厚みをT0.9とし、T0及びT0.9を用いて下記式(1)に従って圧縮率Cを算出した。
C=100×{1-(T0.9/T0)}[%]・・・(1)
【0108】
<熱伝導シートに含まれる膨張化黒鉛の体積平均粒子径>
各実施例及び比較例で製造した熱伝導シートを用いて、熱伝導シートに含まれる膨張化黒鉛の体積平均粒子径を測定した。
具体的には、熱伝導シート1gを溶媒としてのメチルエチルケトン中に入れ、熱伝導シートの樹脂成分等を溶解することにより、熱伝導シートに含まれる膨張化黒鉛を分離及び分散させた懸濁液を得た。次に、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、型式「LA960」)を用いて、当該懸濁液に含まれる膨張化黒鉛の粒子径を測定した。そして、得られた粒子径を横軸とし、体積換算した粒子の頻度を縦軸とした粒度分布曲線を作成した。得られた粒度分布曲線において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(D50)を求め、この粒子径(D50)を、熱伝導シートに含まれる膨張化黒鉛の体積平均粒子径とした。
【0109】
<熱伝導シートの表面粗さSa>
各実施例及び比較例で製造した熱伝導シートの表面粗さSaは、三次元形状測定機(株式会社キーエンス製、製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ」)を用いて測定した。
具体的には、1cm角以上の任意の大きさの略正方形に切り取った熱伝導シートを試料とし、解析範囲は、1cm×1cmとし、当該試料の主面及び主面とは反対側の面(裏面)について、それぞれ三次元形状を測定した。そして、三次元形状の測定結果に対して更にソフトウェアでフィルター処理(2.5mm)を行い、うねり成分を取り除くことにより、主面及び裏面の表面粗さSa(μm)を自動計算した。なお、試料において、主面は、新たな刃の投入により新たに生成された面であり、裏面は、前回の刃の投入により既に生成されている面である。
【0110】
<粘着力>
各実施例及び比較例で製造した熱伝導シートの粘着力は、プローブタック試験機(株式会社レスカ製、商品名「TAC1000」)を用いて測定した。
具体的には、熱伝導シートの任意の5点に関して、温度25℃、荷重40Nの条件で、直径5mmの平らなプローブを10秒間押し付けた。押しつけたプローブを試験片から引き離す際に要する力を測定し、プローブを引き上げた際の荷重と変位曲線を積分して得られる面積を粘着力(N・mm)とした。押し付け速度は、引き上げ速度は10mm/sec、押し付け速度は0.1mm/secとした。
なお、比較例1~4の熱伝導シートの粘着力は、実施例1~4の熱伝導シートが備える各条片の粘着力に相当する。例えば、比較例2の熱伝導シートの粘着力は、実施例1の熱伝導シートが備える第二条片の粘着力に相当する。
【0111】
<厚みの標準偏差>
各実施例及び比較例で製造した熱伝導シートの厚みの標準偏差は、膜厚計(ミツトヨ製、製品名「デジマチックインジケーター ID-C112XBS」)を用いて測定した。
具体的には、熱伝導シートの略中心点および四隅(四角)の計五点における厚みを測定し、測定した厚みの値から標準偏差(μm)を求めた。
【0112】
<粘着性>
上記で測定した粘着力を用いて、以下の基準に従って粘着性を評価した。
A:粘着力が1.5N・mm超
B:粘着力が1.3N・mm超1.5N・mm以下
C:粘着力が1.0N・mm超1.3N・mm以下
D:粘着力が1.0N・mm以下
【0113】
<平滑性(密着性)>
上記で測定した厚みの標準偏差を用いて、以下の基準に従って平滑性を評価した。なお、厚みの標準偏差が小さい程、平滑性に優れていること、即ち、熱伝導シートが密着性に優れていることを意味する。
A:厚みの標準偏差が2.8μm以下
B:厚みの標準偏差が2.8μm超3.0μm以下
C:厚みの標準偏差が3.0μm超3.5μm以下
D:厚みの標準偏差が3.5μm超
【0114】
(製造例1)
<組成物の調製>
樹脂としての常温常圧下で固体のアクリルゴム(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol(登録商標)AR-14」、比重:1.1g/cm3、熱可塑性樹脂)100部と、膨張化黒鉛としての膨張化黒鉛A(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC-300」、体積平均粒子径:50μm、アスペクト比=1.5)135部とを加圧ニーダー(日本スピンドル社製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合した。次に、得られた混合物を解砕機(大阪ケミカル社製、商品名「ワンダークラッシュミルD3V-10」)に投入して、10秒間解砕することにより、組成物を得た。
【0115】
<プレシート成形工程>
次いで、得られた組成物500gを、第一ロール及び第二ロールを用いて、第一ロールと第二ロールとの間隔0.5mm、ロール温度25℃、シート搬出速度(第一ロールの外周速度)2m/分、第一ロールに対する第二ロールの外周速度比(第二ロール/第一ロール):1.15/1の条件にて圧延加工してシート状にした。シートの搬送方向を同一にして、圧延加工を繰り返した。合計で圧延加工を10回行い、厚み0.5mmのプレシートX1を得た。得られたプレシートX1の組成を表1に示す。
【0116】
(製造例2)
組成物の調製において、樹脂として、常温常圧下で液体のニトリルゴム(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol(登録商標) 1312」、比重:1.0g/cm3、熱可塑性樹脂)50部、及び常温常圧下で固体のニトリルゴム(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol(登録商標) 3350」、比重:1.0g/cm3、熱可塑性樹脂)50部を用い、膨張化黒鉛として、膨張化黒鉛A150部を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られたプレシートX2の組成を表1に示す。
【0117】
(製造例3)
組成物の調製において、樹脂として、常温常圧下で液体のニトリルゴム(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol(登録商標) 1312」、比重:1.0g/cm3、熱可塑性樹脂)70部、及び常温常圧下で固体のニトリルゴム(日本ゼオン株式会社製、商品名「Nipol(登録商標) 3350」、比重:1.0g/cm3、熱可塑性樹脂)30部を用い、膨張化黒鉛として、膨張化黒鉛B(富士黒鉛工業株式会社製、商品名「AE-100」、体積平均粒子径:100μm、アスペクト比=1.5)340部を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られたプレシートX3の組成を表1に示す。
【0118】
(製造例4)
組成物の調製において、膨張化黒鉛B340部を膨張化黒鉛C(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC-50」、体積平均粒子径:250μm、アスペクト比=1.5)340部に変更したこと以外は、実施例3と同様の操作を行った。得られたプレシートX4の組成を表1に示す。
【0119】
(実施例1)
<積層体の作製>
製造例1で得られたプレシートX1、及び製造例2で得られたプレシートX2を各々縦50mm×横50mm×厚み500μmに裁断し、プレシートX1及びプレシートX2をロールの配向方向を揃えて交互に積層し、積層体高さが60mmになるまで繰り返し、積層物を得た。
得られた積層物を離型PET(polyethylene terephthalate)でキャラメル包装し、テープ止めを行い、PETレトルト包装で真空包装し加圧処理し加圧前積層体を得た。
得られた加圧前積層体をオートクレーブ(羽生田鉄工所社製、小型オートクレーブ「DANDELION」)にて150℃雰囲気下、0.80MPaの圧力条件下にて、30分間加熱加圧処理して、積層体を作製した。
【0120】
<熱伝導シートの作製>
その後、得られた積層体の積層側面を0.3MPaの圧力で押し付けながら、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)を用いて、積層方向に対して0度の角度で(換言すれば、積層されたプレシートの主面の法線方向に)スライスすることにより、縦50mm×横50mm×厚み250μmの熱伝導シートを得た。得られた熱伝導シートを用いて、各種測定及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0121】
(実施例2)
積層体の作製において、プレシートX2をプレシートX3に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0122】
(実施例3)
積層体の作製において、プレシートX2をプレシートX4に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0123】
(実施例4)
熱伝導シートの作製において、積層体をスライスする厚みを250μmから100μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0124】
(比較例1)
積層体の作製において、プレシートX1のみを用いて積層体を得たこと、即ち、プレシートX1単独の積層体を得たこと以外は、実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0125】
(比較例2)
積層体の作製において、プレシートX2のみを用いて積層体を得たこと、即ち、プレシートX2単独の積層体を得たこと以外は、実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0126】
(比較例3)
積層体の作製において、プレシートX3のみを用いて積層体を得たこと、即ち、プレシートX3単独の積層体を得たこと以外は、実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0127】
(比較例4)
積層体の作製において、プレシートX4のみを用いて積層体を得たこと、即ち、プレシートX4単独の積層体を得たこと以外は、実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0128】
なお、表1中、
「ACM」は、アクリルゴムを示し、
「NBR」は、ニトリルゴムを示し、
「A(50μm)」は、膨張化黒鉛Aを示し、
「B(100μm)」は、膨張化黒鉛Bを示し、
「C(150μm)」は、膨張化黒鉛Cを示す。
【0129】
【0130】
【0131】
表2からも明らかなように、実施例1~4の熱伝導シートは、優れた粘着性及び優れた密着性を両立できていることが分かる。