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▶ 株式会社日立建機ティエラの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141896
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/30 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B62D55/30 A
B62D55/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053764
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北條 陽大
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 敦史
(72)【発明者】
【氏名】岡本 裕太
(57)【要約】
【課題】走行機械のクローラに関する構成に関して、グリスニップルのメンテナンス性を損なうことなく、グリスニップルが外部に飛び出すことを防ぐことができる。
【解決手段】油圧ショベルは、クローラ1を有する下部走行体と、下部走行体上に設けられた上部旋回体と、下部走行体の内部に取り付けられ、グリスニップルからのグリスの注入によりクローラの張力を調整するアジャスタ6と、を備え、下部走行体は、グリスニップル7に対応する位置の外側方に給脂穴8を有する。下部走行体に取り付けられ、給脂穴と所定の間隔を置いて、側面視で給脂穴8の一部を下部走行体の外側方から覆うカバー9を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラを有する走行体と、
前記走行体上に設けられた上部旋回体と、
前記走行体の内部に取り付けられ、グリスニップルからのグリスの注入により前記クローラの張力を調整するアジャスタと、を備え、
前記走行体は、前記グリスニップルに対応する位置の外側方に開口部を有する作業機械において、
前記走行体に取り付けられ、前記開口部と所定の間隔を置いて、側面視で前記開口部の一部を前記走行体の外側方から覆うカバーを有する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記走行体の上方に設けられた運転席と、前記運転席に通じる乗降口を備え、
前記カバーは、
前記走行体の外側方に所定の間隔を置いて設けられる踏み部と、
側面視で前記開口部の一部を前記走行体の外側方から覆う遮蔽部を有し、
前記踏み部は、作業機械側面視で前記乗降口に対して上下方向に重なる位置に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記遮蔽部は、側面視で前記開口部のうち少なくとも前記グリスニップルに対応する領域を覆う
ことを特徴とする請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記カバーは、前記開口部のうち少なくとも一部を前記遮蔽部が覆う第一状態と、前記開口部を開放する第二状態とを変更可能に構成される
ことを特徴とする請求項2に記載の作業機械。
【請求項5】
前記カバーが前記第一状態を保持するためのロック機構を備える
ことを特徴とする請求項4に記載の作業機械。
【請求項6】
前記遮蔽部は、前記グリスニップルの外形よりも小さい貫通孔を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の作業機械。
【請求項7】
前記カバーは、一端が回転軸を介して前記走行体に取り付けられ、前記第一状態として、前記遮蔽部が前記開口部の一部を覆う第一位置に配置され、前記第二状態として、前記遮蔽部が前記開口部を開放する第二位置に配置され、前記回転軸を中心に前記第一位置と前記第二位置との間で移動可能に構成される
ことを特徴とする請求項4に記載の作業機械。
【請求項8】
前記カバーは、第一踏み部と第二踏み部を有し、
前記第一踏み部と前記第二踏み部は、前記第一状態として、前記開口部の少なくとも一部を覆うように互いに近接して配置され、前記第二状態として、前記開口部を開放するように互いに離隔して配置され、
前記ロック機構は、前記第一踏み部と前記第二踏み部とを相互に接続し固定する
ことを特徴とする請求項5に記載の作業機械。
【請求項9】
前記走行体に設けられるレールを備え、
前記カバーは、前記レールに嵌合する支持部を有し、前記第一状態として、前記遮蔽部が前記開口部の少なくとも一部を覆う第一位置に配置され、前記第二状態として、前記遮蔽部が前記開口部を開放する第二位置に配置され、前記第一位置と前記第二位置との間でスライド可能に構成される
ことを特徴とする請求項4に記載の作業機械。
【請求項10】
前記踏み部は、上面が凹凸状に形成される、
ことを特徴とする請求項2に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラ(履帯)を備える作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
クローラ(履帯)を備える作業機械としては、例えば、油圧ショベルおよびブルドーザ等の建設機械がある。例えば油圧ショベルは一般に、クローラを備える下部走行体と、下部走行体上に設けられた上部旋回体を備えている。下部走行体には、トラックフレームが設けられている。トラックフレームの内側には、一般的にクローラの張力を調整するためのアジャスタが設けられている。アジャスタの一端には、グリスニップルが取り付けられている。このグリスニップルを通じてグリスを給脂することにより、アジャスタ内部のグリス量が調節され、クローラの張力を調節できるようになっている。
【0003】
そのような作業機械の走行中にクローラに大きな衝撃が作用した場合、アジャスタ内部のグリスに大きな圧力がかかり、グリスニップルが車体の外部に飛び出すことがある。その対策として、特許文献1には、グリスニップルを覆うようにトラックフレームに取り外し可能に設けられたカバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61-57090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたカバーには、グリスニップルの外周を被覆する筒体が固設されている。このカバーはグリスニップルの飛び出しを防ぐことができるが、メンテナンス性を考慮した構成とは言い難い。具体的には、このカバーがトラックフレームに取り付けられた状態では、カバーと筒体とにより、グリスニップルが覆われた状態になるため、トラックフレームの外部から目視でグリスニップルを確認しづらいものにし、ニップルの緩みやグリス漏れなどの異変に気づきにくい。
【0006】
本発明の一つの目的は、作業機械のクローラに関連する構成に関して、グリスニップルのメンテナンス性を損なうことなく、グリスニップルが外部に飛び出すことを防ぐことができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に従えば、作業機械は、クローラを有する走行体と、前記走行体の内部に取り付けられ、グリスニップルからのグリスの注入により前記クローラの張力を調整するアジャスタと、を備え、前記走行体は、前記グリスニップルに対応する位置の外側方に開口部を有する作業機械において、前記走行体に取り付けられ、前記開口部と所定の間隔を置いて、側面視で前記開口部の一部を前記走行体の外側方から覆うカバーを有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの全体を示す左側面図。
図2】左側のクローラの従動輪およびアジャスタを示す左側面図。
図3】左側のカバーの組付け状態を示す左側面図。
図4】左側のカバーの左側面図。
図5図3のA-A矢視断面図。
図6】変形例に係る油圧ショベルの全体を示す左側面図。
図7】左側のカバーの組付け状態を示す左側面図。
図8】左側のカバーの組付け状態を示す斜視図。
図9】左側のカバーおよびブラケットの左側面図。
図10】他の変形例に係るカバーの組付け状態を示す左側面図。
図11】左側のカバーの組付け状態を示す斜視図。
図12】左側のカバーおよびブラケットの左側面図。
図13】さらに他の変形例に係るカバーの組付け状態を示す左側面図。
図14】左側のカバーの組付け状態を示す斜視図。
図15】左側のカバーおよびブラケットの左側面図。
図16】さらに他の変形例に係るカバーの組付け状態を示す左側面図。
図17】左側のカバーの組付け状態を示す斜視図。
図18】左側のカバーおよびブラケットの左側面図。
図19】開放位置にある左側のカバーの組付け状態を示す斜視図。
図20】開放位置にある左側のカバーの組付け状態を示す拡大斜視図。
図21】さらに他の変形例に係るカバーの組付け状態を示す左側面図。
図22】左側のカバーの組付け状態を示す斜視図。
図23】左側のカバーおよびブラケットの左側面図。
図24図21のB-B矢視断面図。
図25】開放位置にある左側のカバーの組付け状態を示す左側面図。
図26】開放位置にある左側のカバーの組付け状態を示す拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る「作業機械」の一例としての油圧ショベルの全体を示す左側面図である。尚、以下では、説明の都合上、油圧ショベルの左側部分(一般にキャビンの乗降口がある側)の構成のみを図示して説明するが、右側部分の構成も(必ずしもそうである必要はないが)左側のそれと左右対称となる同様の構造であってよい。以下の説明で、「前」、「後」、「左」および「右」という方向または側を示す用語は、油圧ショベルの前、後、左および右を意味する。
【0011】
油圧ショベル100は、上部旋回体20と、「走行体」の一例としての下部走行体10とを備えている。上部旋回体20は、下部走行体10上に設けられている。上部旋回体20の左側部には、ユーザが乗車する「運転席」の一例としてのキャビン21が設けられている。キャビン21は、下部走行体10の上方に設けられている。キャビン21の左側方には、キャビン21に通じる開閉式の「乗降口」の一例としてのドア21aが設けられている。尚、キャビン21は、周囲がガラスで覆われずに解放されたキャノピーであってもよい。この場合、キャノピーに通じる空間領域が乗降口となる。上部旋回体20の前部には、アタッチメントとして例えばブーム22、アーム23およびバケット24等が装着されている。上部旋回体20は、下部走行体10に対して旋回する。
【0012】
下部走行体10は、その左側部分を代表的に説明すれば、クローラ(履帯)1と、駆動輪2と、従動輪3と、複数のローラ4と、「フレーム」の一例としてのトラックフレーム5とを備えている。尚、本実施例の下部走行体10は、アタッチメントとして前面に可動式の例えばブレード(廃土板)11を装着している。
【0013】
クローラ1は、前後方向に延びる帯状の無限軌道である。駆動輪2は、下部走行体10の例えば後部分に設けられている。駆動輪2は、その外周の歯(スプロケット)がクローラ1と接触して、クローラ1を駆動させる。従動輪3は、下部走行体10における駆動輪2とは反対側、つまり、下部走行体10の例えば前部分に設けられている。各ローラ4は、駆動輪2および従動輪3の間に設けられており、クローラ1を支持する。下部走行体10は、駆動輪2を回転させることで、駆動輪2の歯と接触しているクローラ1が回転し、走行動作を行う。
【0014】
図2は、左側のクローラの従動輪およびアジャスタを示す左側面図である。
【0015】
従動輪3には、アジャスタ6が取り付けられている。アジャスタ6は、下部走行体10の内部に取り付けられる。アジャスタ6は、クローラ1に作用した衝撃を吸収すると共に、クローラ1に作用する張力を調整する。アジャスタ6の例えば後端部には、給脂のためのグリスニップル7が取り付けられている。アジャスタ6は、グリスニップル7からグリスを供給され、その内部のグリス量が調節されることでクローラ2の張力を調整する。
【0016】
トラックフレーム5は、駆動輪2と従動輪3の間に配置された前後方向に長い例えば柱状または板状の部材であり、アジャスタ6の外(左)側面をほぼ覆うようにして、アジャスタ6の外側方(左方)に配置される。トラックフレーム5の側壁の前後方向中央上部の位置には、アジャスタ6に給脂する器具(例えばグリスガンの先端部)を通すための「開口部」の一例としての給脂穴8が設けられている。給脂穴8の奥(右側)にグリスニップル7が配置される。即ち、下部走行体10は、グリスニップル7に対応する位置の外側方に給脂穴8を有する。図1では、給脂穴8は、トラックフレーム5の側面上部および上面側部に亘って開口しているが、この開口範囲は単なる一例にすぎない。給脂穴8は、グリスニップル7に対向しており、ここを通してグリスニップル7にトラックフレーム5外部から容易に給脂ができる。尚、図1には、給脂穴8の配置を分かり易くするために、後述するカバー9およびブラケット12は図示していない。
【0017】
図3は、左側のカバーの組付け状態を示す左側面図、図4は、そのカバーの左側面図、図5は、図3のA-A矢視断面図である。
【0018】
トラックフレーム5の給脂穴8を前後方向に挟んだ両側には、一対のブラケット12が設けられている。各ブラケット12には、ほぼ鉛直方向に延びる鉛直孔が設けられている。各ブラケット12の鉛直孔は、貫通孔であっても有底孔であっても良い。一対のブラケット12には、上部旋回体20のキャビン21にユーザが乗降するときに足で踏むためのカバー9が取り付けられる。このカバー9は、給脂穴8と所定の間隔Cを置いて、側面視で給脂穴8の一部を下部走行体10の外側方から覆う。
【0019】
カバー9は、全体として細長い形状を有し、例えばその長手方向の両端部に設けられた一対の支持部9aと、「遮蔽部」の一例としてのガード部9bと、踏み部9cとを有する。
【0020】
各支持部9aは、柱状に形成されている。一対の支持部9aは、一対のブラケット12の鉛直孔にそれぞれ上から下方に挿入される。
【0021】
ガード部9bは、例えば矩形の長い板状に形成されている。ガード部9bの長手方向(前後方向)の長さは、給脂穴8の前後方向の長さよりも長い。ガード部9bの長手方向の両端部には、支持部9aがそれぞれ溶接される。図3に示すように、ガード部9bは、給脂穴8に対向する位置に配置され、側面視で給脂穴8の少なとも一部、とくにグリスニップル7とその近傍に対向する空間領域を下部走行体10の外側から覆う。これにより、ガード部9bは、グリスニップル7がトラックフレーム5の外方へ飛び出すことを防止すると共に、アジャスタ6内のグリスがトラックフレーム5の外方へ飛散することを抑制する。本実施例のガード部9bは、側面視で、給脂穴8の下部の大部分を覆うが、給脂穴8の上部の一部は覆っていない。したがって、ユーザは、ガード部9bに覆われてない給脂穴8の一部を通じて(例えば、ガード部9bの上方から給脂穴8の上部を通して斜め下方へ見ることで)、グリスニップル7の状態を目で観察できる。
【0022】
踏み部9cは、ガード部9bの上部に設けられている。踏み部9cの上面には、長手方向に沿って複数の凹凸が形成されている。踏み部9cの上面は、キャビンに乗降するユーザの足(靴底)で踏まれる。踏み部9cの上面の凹凸は、ユーザの足を載置したときの滑り止めとして機能する。
【0023】
油圧ショベル100の作業装置が前方を向いた姿勢(図1参照)、換言すると、上部旋回体20の前後方向と下部走行体10の前後方向が一致している姿勢(以下、この姿勢を油圧ショベルまたは作業機械の「基本姿勢」という)にある時(つまり、一般的にユーザがキャビン21に乗り降りする時)に、カバー9の踏み部9cが上部旋回体20のキャビン21のドア21aまたは乗降口の下方に位置することが好ましい。そのような好ましい踏み部9cの配置を実現するために、上部旋回体20におけるキャビン21と、下部走行体10におけるグリスニップル7と給脂穴8とカバー9とが、前後方向で相互の位置が概略一致または近接するように配置される。尚、踏み部9cの少なくとも一部は、油圧ショベル100の側面視でドア21aに対して上下方向に重なる位置に配置されてもよい。
【0024】
ここで、図5に示すように、支持部9aがブラケット12に挿入されて、カバー9がトラックフレーム5に取り付けられると、ガード部9bおよび踏み部9cは、トラックフレーム5から外側(左)方向に若干離隔した位置に配置される。このとき、ガード部9bは、側面視で給脂穴8の下部の大部分を覆う。この給脂穴8の少なくとも一部を覆うガード部9bの位置を、以下「第一位置」といい、このときのカバー9の状態を、以下「第一状態」という。カバー9をトラックフレーム5に取り付けられた状態で、ガード部9bおよび踏み部9cとトラックフレーム5との間には所定の間隔Cが形成される。間隔Cの横方向寸法は、好ましくは、そこをグリスニップル7が通過しない程度に狭く設定されている。したがって、ガード部9bが第一位置にあるとき、ガード部9bはグリスニップル7の外方への飛び出しを防止できる。間隔Cは、ユーザがガード部9bに覆われてない給脂穴8を通してグリスニップル7の状態を目で確認することを一層容易にする。
【0025】
ガード部9bの一対の支持部9aが一対のブラケット12から抜き出されると、カバー9はトラックフレーム5から取り外されて給脂穴8を開放する(つまり、給脂穴8を覆わない)。この給脂穴8を開放する(覆わない)ときのガード部9bの位置を、以下「第二位置」といい、このときのカバー9の状態を、以下「第二状態」という。ガード部9bが第二位置にあるとき、アジャスタ6への給脂、あるいはグリスニップル7のメンテナンスなどができる。即ち、ガード部9は、給脂穴8の少なくとも一部を覆う第一位置と、給脂穴8を開放する第二位置とに移動可能に構成されている。換言すると、カバー9は、給脂穴8の少なくとも一部をガード部9が覆う第一状態と、給脂穴8を開放する第二状態とを変更可能に構成されている。ユーザは格別の道具を使わずに手だけで、カバー9をトラックフレーム5に容易に着脱することができる。
【0026】
以上詳細に説明したように、本実施形態の油圧ショベル100によれば、クローラ1を有する下部走行体10と、下部走行体10上に設けられた上部旋回体20と、下部走行体10の内部に取り付けられ、グリスニップル7からのグリスの注入によりクローラ1の張力を調整するアジャスタ6と、を備え、下部走行体10は、グリスニップル7に対応する位置の外側方に給脂穴8を有する油圧ショベル100において、下部走行体10に取り付けられ、給脂穴8と所定の間隔Cを置いて、側面視で給脂穴8の一部を下部走行体10の外側方から覆うカバー9と、を有する。これにより、グリスニップル7のメンテナンス性を損なうことなく、グリスニップル7が外部に飛び出すことを防ぐことができる。
【0027】
さらに、下部走行体10の上方に設けられたキャビン21と、キャビン21に通じるドア21aを備え、カバー9は、下部走行体10の外側方に所定の間隔Cを置いて設けられる踏み部9cと、側面視で給脂穴8の一部を下部走行体10の外側方から覆うガード部9bを有し、踏み部9cは、油圧ショベル100側面視でドア21aに対して上下方向に重なる位置に配置される。これにより、カバー9は、グリスニップル7がトラックフレーム5内から外部に飛び出すことを防止すると共に、アジャスタ6内のグリスの飛散を抑制する機能と、踏み部9cがキャビン21に乗降するときのユーザの足を載置する機能とを兼ねることができる。したがって、ユーザにとっての利便性を高めることができる。
【0028】
さらに、ガード部9bは、第一位置にある時でも、側面視で、給脂穴8の一部(とくにグリスニップル7とその近傍に対向する空間領域以外の領域)を覆っていない(開放している)。また、ガード部9bは、給脂穴8を介して外部からグリスニップル7を視認可能な間隔Cを有する。これにより、ユーザは、グリスニップル7の飛び出しを防止できる第一位置にガード部9bがあるときでも、外部から給脂穴8の覆われてない部分を通してグリスニップル7の状態を目で確認することができる。
【0029】
さらに、ガード部9bは、トラックフレーム5から外側方へ離れて配置されており、ガード部9bとトラックフレーム5との間に、給脂穴8を通して外部からグリスニップル7を視認可能な間隔Cがある。これにより、間隔Cと給脂穴8を通して外部からグリスニップル7の状態を目でいっそう容易に確認することができる。
【0030】
踏み部9cは、油圧ショベル100側面視でドア21aに対して上下方向に重なる位置に配置されていて、ユーザがキャビンに乗降することを助ける。さらに、カバー9は、トラックフレーム5に取り付けられる支持部9aを有し、トラックフレーム5には、支持部9aが上から下方へ挿入され得るブラケット12が設けられる。これにより、カバー9は自重でブラケット12に支持される。ユーザは自分の手だけを使ってカバー9を持ち上げたり下ろしたりする簡単な操作で、カバー9をブラケット12に着脱することができる。
【0031】
以下に、下部走行体の構成に関する複数の変形例を上記一実施形態と比較し説明する。尚、各変形例に係る油圧ショベル100Aは、その下部走行体の構成において、既述の一実施形態に係る油圧ショベル100とは給脂穴、トラックフレーム、ブラケットおよびカバーの構成が異なるだけであり、その他の構成は、一実施形態に係る油圧ショベル100と基本的に同様である。したがって、各変形例に関し、既述の一実施形態との相違点を中心に述べる。
【0032】
図6は、一変形例に係る油圧ショベルの全体を示す左側面図である。
【0033】
下部走行体30は、トラックフレーム5Aを備えている。トラックフレーム5Aの側壁の前後方向中央近くの位置に、給脂穴8Aが設けられている。給脂穴8Aの奥(右側)にグリスニップル7Aが配置される。
【0034】
給脂穴8Aは、丸い角をもつ略矩形に形成されている。給脂穴8A(そしてグリスニップル7A)は、油圧ショベル100が基本姿勢にある時に側面視でキャビン21の下方8(とくにドア21aつまり乗降口の下方)に位置するように、配置されている。ここで、「基本姿勢」とは、前述したように、上部旋回体20が油圧ショベル100Aの前方を向いている図6に示された通りの油圧ショベル100の姿勢を意味する。基本的に、ユーザがキャビン21に乗降する時には、ユーザは油圧ショベル100Aを基本姿勢にして停止させる。尚、図6には、給脂穴8Aの配置を分かり易くするために、後述するカバー9Aおよびブラケット12Aは図示していない。
【0035】
図7は、左側のカバーの組付け状態を示す左側面図、図8は、左側のカバーの組付け状態を示す斜視図である。図9は、左側のカバーおよびブラケットの側面図である。
【0036】
トラックフレーム5Aの給脂穴8Aを前後方向に挟んだ両側には、一対のブラケット12a,12bが設けられている。
【0037】
一対のブラケット12a,12bのうち、前方のブラケット12aには、ほぼ鉛直方向に延びる横断面が円形の鉛直孔12a1が設けられており、後方のブラケット12bには、ほぼ鉛直方向に延びる横断面が円形の鉛直孔12b1と、ほぼ水平方向に延びて上記鉛直孔12b1と交差しかつ上記鉛直孔12b1より細い横断面が円形の水平貫通孔12b2とが設けられている。各ブラケット12a,12bには、カバー9Aの後述する各支持部9a1,9a2がそれぞれ取り付けられる。
【0038】
カバー9Aは、一対の支持部9a1,9a2と、ガード部9bと、踏み部9cとを有する。ガード部9bは、例えば前後方向に長い略矩形の板である。ガード部9bの例えば前後方向の両端部に支持部9a1,9a2が設けられる。ガード部9bの例えば上面に踏み部9cが掲載される。支持部9a1,9a2は、ブラケット12a,12bの鉛直孔12a1,12b1にそれぞれ挿入される。一対の支持部9a1,9a2のうち後方の支持部9a2のブラケット12Bの鉛直孔12b1に挿入される部分には、水平貫通孔12b2に対応する貫通孔9a3が設けられている。
【0039】
ブラケット12a,12bの鉛直孔12a1,12b1に支持部9a1,9a2がそれぞれ挿入されると、後側のブラケット12bの水平貫通孔12b2と、支持部9a2の貫通孔9a3とが連通する。ブラケット12bの水平貫通孔12b2と、支持部9a2の貫通孔9a3とには、カバー9Aが第一状態を保持するための「第一ロック機構」の一例としての閂31が挿入される。閂31は、例えばL字状の棒である。
【0040】
ブラケット12bの水平貫通孔12b2と、支持部9a2の貫通孔9a3とに閂31が挿入されると、カバー9Aがトラックフレーム5Aに固定される。カバー9Aがトラックフレーム5Aに固された状態で、図7に示されるように、側面視で、カバー9A(そのガード部9b)が給脂穴8Aの例えば上部分(これはグリスニップル7Aに対向する領域を含む)を覆い、かつ、給脂穴8Aの例えば下部分(これはグリスニップル7Aに対向する領域を含まない)を覆わない(開放する)。また、この状態で、図6に示された前述の一実施形態と同様に、ガード部9bがトラックフレーム5Aから横(左)方向に離れた位置にあり、ガード部9bとトラックフレーム5Aとの間に間隔Cが存在する。
【0041】
ユーザがブラケット12bの水平貫通孔12b2と支持部9a2の貫通孔9a3とから閂31を抜き出すと、カバー9Aがトラックフレーム5Aから取り外せるようになる。尚、トラックフレーム5Aとカバー9Aとの固定は、閂31に限らず、別の構造のロック機構を用いてトラックフレーム5Aとカバー9Aとが着脱可能に固定されても良い。
【0042】
この変形例によれば、給脂穴8Aは、油圧ショベル100が基本姿勢にある時、側面視でキャビン21のドア(乗降口)21aの下方に位置し、そして、給脂穴8Aに対向する位置にカバー9Aが配置される。したがって、ユーザは、カバー9Aの踏み部9cに足を掛けてキャビン21に容易に乗降することができる。また、カバー9Aのガード部9bは、側面視で、給脂穴8Aのうちグリスニップル7Aに対向する領域を含まない部分を覆っておらず、また、トラックフレーム5Aとの間に間隔Cをもつ。したがって、カバー9Aがトラックフレーム5Aに取り付けられた状態で、カバー9Aは、グリスニップル7Aの飛び出しを防止し、かつ、ユーザがグリスニップル7Aの状態を目で観察することを可能にする。
【0043】
さらに、トラックフレーム5Aとカバー9Aとを固定するロック機構、例えば閂31が、油圧ショベル100の作業中にカバー9Aがトラックフレーム5Aから抜け落ちることを防止する。
【0044】
図10は、他の変形例に係る左側のカバーの組付け状態を示す左側面図、図11は、そのカバーの組付け状態を示す斜視図である。図12は、カバーおよびブラケットの左側面図である。
【0045】
下部走行体30Bのトラックフレーム5Aの給脂穴8Aを前後方向に挟んだ両側には、一対のブラケット12cが設けられている。各ブラケット12cは、角柱状に形成されており、その左側面にネジ穴が設けられている。各ブラケット12cには、カバー9Bの後述する各支持部9Baが着脱可能に取り付けられる。
【0046】
カバー9Bは、一対の支持部9Baと、ガード部9Bbと、「踏み部」の一例としての踏み板9Bcとを有する。ガード部9Bbと踏み板9Bcとは、前後方向にはほぼ同位置で、横方向には異なる位置で並列に配置される。
【0047】
各支持部9Baは、例えば矩形の板である。各支持部9Baには、各ブラケット12cのネジ穴に対応する貫通孔が設けられている。各支持部9Baは、その貫通孔が各ブラケット12cのネジ穴に重ねられた状態で、カバー9Bが第一状態を保持するための「ロック機構」の一例としてのネジボルト32で各ブラケット12cに固定される。一対のブラケット12cにカバー9Bの一対の支持部9Baがボルト32で固定されると、カバー9Bがトラックフレーム5Aに固定される。これにより、作業時にカバー9Aがトラックフレーム5Aから抜け落ちることが防止される。一対のブラケット12cと一対の支持部9Baからボルト32が抜き出されると、カバー9Bがトラックフレーム5Aから取り外される。
【0048】
ガード部9Bbは、例えば、踏み板9cとは逆向きの内(右)側方(つまり、トラックフレーム5Aに近づく方向)に中央部分が張り出した略矩形状の板である。ガード部9Bbの中央部分は、その下端部に、下方へ突出した舌部分9Bb1を有する。ガード部9bの中央部分は、トラックフレーム5Aの表面に当接するか近接して配置され、給脂穴8Aのほぼ全領域を覆う(あるいは、すでに説明した一実施形態または最初の変形例のように、給脂穴8Aのグリスニップルに対向する領域を含んだ一部分を覆い、かつ他の部分は覆わないようになっていてもよい)。これにより、ガード部9Bbは、グリスニップル7がトラックフレーム5Aより外方に飛び出すことと、アジャスタ6内のグリスが外方へ飛散することを防止する。
【0049】
踏み板9Bcは、例えば、ガード部9Bbとは逆向きの外(左)側方(つまり、トラックフレーム5Aから外方(左方)へ遠ざかる方向)に中央部分が張り出した略矩形状の板である。踏み板9Bcの上面に、ユーザの靴底のスリップを減らす凹凸が形成されている。踏み板9Bcの前後方向の両端部は支持部9Baと結合しまたは一体化されている。踏み板9Bcの中央部分は、ガード部9Bbの中央部分から(つまりトラックフレーム5Aから)横(左)方向の外方へ相当の距離だけ張り出した(離隔した)位置に配置される。
【0050】
踏み板9Bcとガード部9Bbは、溶接などの方法で相互に固定的に結合されていてもよいし、ボルト32などで分離可能に結合されていてもよい。あるいは、踏み板9Bcとガード部9Bbは、一方がもつ凹部、溝または孔に他方がもつ凸部または突起が挿入されるというような比較的に単純な嵌め合い構造または係合構造(図示省略)によって、ユーザが格別の道具を使わずに手だけで簡単に両者を分離できるように結合されていてもよい。例えば、踏み板9Bcの両端部の横方向内側(右側)の表面が一対の鉛直方向に延びる溝を有し、かつ、ガード部9Bbの両端部が述した一対の鉛直方向の溝に挿入可能な一対の突起を有し、そして、上記一対の溝と上記一対の突起との係合によって、踏み板9Bcに対してガード部9Bbが、ユーザがそれを手だけで簡単に着脱できるように、取り付けられていてよい。この場合、カバー9bがトラックフレーム5Aに取り付けられている状態で、ユーザは、カバー9bのガード部9Bbだけを手だけで簡単に取り外して給脂穴8Aを開放し、グリスニップル7の状態を目で確認することができる。
【0051】
この変形例によれば、踏み板9Bcがトラックフレーム5Aより横方向外方(左方)へ相当距離だけ張り出していることが、ユーザが踏み板9Bcを足で踏んでキャビン21に乗り込むことを容易にする。また、ガード部9Bbが、グリスニップル7がトラックフレーム5の外方へ飛び出すことと、アジャスタ6内のグリスが外方へ飛散することとを防止する。
【0052】
図13は、さらに他の変形例に係る左側のカバーの組付け状態を示す左側面図、図14は、カバーの組付け状態を示す斜視図である。図15は、カバーおよびブラケットの左側面図である。
【0053】
下部走行体30Cのカバー9Cは、一対の支持部9aと、ガード部9Cbと、踏み部9Ccとを有する。ガード部9Cbは前後方向に長い略矩形状の板であり、その前後方向両端部に一対の支持部9aが設けられる。ガード部9Cbの上部の凹凸のある部分が踏み部9Ccである。ガード部9Cbは、側面視で、給脂穴8Aの全領域のうち、少なくともグリスニップルに対応する領域を含んだ部分を外側方から覆うように構成されている。即ち、ガード部9Cbは、給脂穴8Aの全領域のうち、少なくともグリスニップルに対応する領域を含んだ部分に対向する位置に配置される。
【0054】
ガード部9Cbおよび踏み部9Ccには、それらを横方向に貫通した複数の「貫通孔」の一例としての隙間(例えば穴)C1が開設されている。例えば、ガード部9Cbおよび踏み部9Ccは、図示のように多数の隙間C1をもつメッシュ状、格子状または多孔穿孔の板である。各隙間C1は、グリスニップル7の外形よりも小さい。即ち、各隙間C1の側面視の寸法は、そこをグリスニップル7が通過しない程度の小ささである。ガード部9Cbおよび踏み部9Ccに開設された複数の雉間C1は、ユーザが給脂穴8Aを通じて外部からグリスニップル7を視認することを可能にする。尚、隙間C1として、図示のような複数の穴に代えて、複数のスリット(例えば、ガード部9Cbの上部の凹部を、図示の形状より深く細く下方へ切れ込ませて、そこを通してグリスニップル7を見れるようにしたもの)を採用しても良い。
【0055】
各隙間C1(例えば上述した穴またはスリット)の寸法は、そこをグリスニップルが通過しない程度に小さい。したがって、ガード部9Cbおよび踏み部9Ccは、グリスニップルの外方への飛び出しを防止できる。
【0056】
この変形例によれば、ガード部9Cbに複数の隙間C1(例えば穴またはスリット)が開設されている。ユーザは、隙間C1および給脂穴8Aを通して外部からグリスニップル7を視認することができる。
【0057】
図16は、さらに他の変形例に係る左側のカバーの組付け状態を示す左側面図、図17は、閉じた位置(第一位置)にあるカバーの組付け状態を示す斜視図である。図18は、閉じた位置(第一位置)にあるカバーおよびブラケットの左側面図、図19は、開放位置(第二位置)にあるカバーの組付け状態を示す斜視図、図20は、開放位置(第二位置)にあるカバーの組付け状態を示す拡大斜視図である。
【0058】
下部走行体30Dのカバー9Dは、第一カバー9D1と、第二カバー9D2とに分割されている。第一カバー9D1と第二カバー9D2は、以下に説明するように、互いに近接および離隔することが可能であり、互いに近接することで給脂穴8Aの少なくとも一部を覆うことができ、互いから離隔することで給脂穴8Aを開放することができる。
【0059】
第一カバー9D1は、支持部9aと、ガード部9Db1と、踏み部9Dc1とを有する。ガード部9Db1の長手方向の一端部(前端部)には、支持部9aが溶接される。即ち、第一カバー9D1は、一端が支持部9aを介してトラックフレーム5Aに取り付けられる。ガード部9Db1は、側面視で給脂穴8Aの前上部分を覆う。ガード部9Db1の他端部(後端部)には、「ロック機構」の一部としての第一閂鎹33が設けられている。踏み部9Dc1が、ガード部9Db1の上部に設けられている。支持部9aは円柱状であり、一対のブラケットのうちの前側のブラケット12に設けられた横断面が円形の鉛直孔に挿入される。第一カバー9D1は、支持部9aを回転軸Aにして外方(左方)へ扉のように回動可能である。第一カバー9D1は、第一状態として、ガード部9Db1が給脂穴8Aの前上部分を覆う第一位置に配置され、第二状態として、ガード部9Db1が給脂穴8Aの前上部分を解放する第二位置に配置され、回転軸Aを中心に第一位置と第二位置との間で移動可能に構成される。
【0060】
第二カバー9D2は、支持部9aと、ガード部9DCb2と、踏み部9Dc2とを有する。ガード部9Db2の長手方向の他端部(後端部)には、支持部9aが溶接される。即ち、第二カバー9D2は、他端が支持部9aを介してトラックフレーム5Aに取り付けられる。ガード部9Db2は、側面視で給脂穴8Aの後上部を覆う。ガード部9Db2の他端部(前端部)には、「ロック機構」の一部としての第二閂鎹34が設けられている。踏み部9Dc2が、ガード部9Db2の上部に設けられている。支持部9bは円柱状であり、一対のブラケットのうちの後側のブラケット12に設けられた横断面が円形の鉛直孔に挿入される。第二カバー9D2は、支持部9bを回転軸にして外方(左方)へ扉のように回動可能である。第二カバー9D2は、第一状態として、ガード部9Db1が給脂穴8Aの前上部分を覆う第一位置に配置され、第二状態として、ガード部9Db1が給脂穴8Aの前上部分を解放する第二位置に配置され、回転軸Aを中心に第一位置と第二位置との間で移動可能に構成される。
【0061】
ガード部9Db1およびガード部9Db2が共に閉じて側面視で給脂穴8Aの上部分を覆っている(ガード部9Db1およびガード部9Db2が第一位置にある)時、第一閂鎹33および第二閂鎹34に「ロック機構」の一部としての閂35が挿入されると、第一カバー9D1と第二カバー9D2とが一枚の板のように接続されて開かないように固定される。尚、第一カバー9D1と第二カバー9D2との固定方法は、閂35用いた方法以外の方法でも良い。
【0062】
一方、第一閂鎹33と第二閂鎹34とから閂35が抜き出されると、第一カバー9D1と第二カバー9D2との接続および固定が解除される。そして、ユーザが第一カバー9D1と第二カバー9D2とを回動させて開いた(第一カバー9D1と第二カバー9D2が第二位置にある)時、給脂穴8Aが開放される。
【0063】
この変形例によれば、ガード部9Db1およびガード部9Db2は、それぞれの支持部9aを中心にして第一位置と前記第二位置との間で回動して、両開きドアのように一対のガード部9Db1,9Db2の自由端同士が互いに近づくことで給脂穴8Aの少なくとも一部を覆うことができ、一対のガード部9Db1,9Db2の自由端同士が互いに離れることで給脂穴8Aを開放できる。これにより、ユーザはカバー9Dを開いてグリスニップル7の状態を視たりアジャスタ6にグリスを供給したりすることが容易である。
【0064】
普段は、閂35で第一カバー9D1と第二カバー9D2とを接続し固定しておけば、カバー9Dがユーザのキャビン21への乗降を助け、また、グリスニップル7の外方への飛び出しを防止する。
【0065】
図21は、さらに他の変形例に係る左側のカバーの組付け状態を示す左側面図、図22は、閉じた位置(第一位置)にあるカバーの組付け状態を示す斜視図、図23は、閉じた位置(第一位置)にあるカバーおよびブラケットの左側面図、図24は、図21のB-B矢視断面図、図25は、開放位置(第二位置)にあるカバーの組付け状態を示す側面図、図26は、開放位置(第二位置)にあるカバーの組付け状態を示す拡大斜視図である。
【0066】
下部走行体30Eのトラックフレーム5Aの給脂穴8Aを前後方向に挟んだ両側には、前後方向に長い柱状のブラケット12Eが設けられている。
【0067】
ブラケット12Eの上面には、長手方向に沿って横断面が逆T字形の凹状レール36が設けられている。即ち、下部走行体30Eは、凹状レール36を備える。凹状レール36は、前端が閉じられており、他端が開口している。ブラケット12Eには、カバー9Eの後述する支持部9Eaが他端からスライド可能に取り付けられる。
【0068】
カバー9Eは、支持部9Eaと、ガード部9bと、踏み部9cとを有する。支持部9Eaは、ガード部9bに設けられた、凹状レール36に対応した断面逆T字形の凸条である。支持部9Eaは、凹状レール36に嵌合する。
【0069】
ユーザが支持部9Eaの前端を凹状レール36の後端に挿入して、支持部9Eaをレール36に沿って移動させて、第一状態として、側面視でガード部9bが給脂穴8Aを覆う第一位置に設置すると、カバー9Eがトラックフレーム5Aに正常に取り付けられる。この状態において、ガード部9bとトラックフレーム5Aとの間に、図6に示されたような間隔Cがあってよい。その間隔Cは、ユーザがグリスニップル7の状態を見ることを可能にする。
【0070】
アジャスタ6にグリスを供給する時、ユーザはガード部9bを第一位置から、第二状態として、給脂穴8Aを開放する第二位置までスライドさせることができる。さらに、支持部9Eaをレール36から抜き出すと、カバー9Eがトラックフレーム5Aから取り外される。もし、上述した間隔Cがガード部9bとトラックフレーム5Aとの間に存在しない場合でも、ユーザは、ガード部9bをスライドすることで容易にグリスニップル7の状態を視認できる。
【0071】
この変形例によれば、カバー9Eを前後方向にスライドさせることで、カバー9Eを第一位置と第二位置の間で容易に移動させることができる。
【0072】
以上、本発明に係る油圧ショベルの一実施形態と幾つかの変形例について詳述したが、本発明は、それら実施形態および変形例だけに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【0073】
例えば、上記した実施形態では、油圧ショベル100,100Aについて説明した。これに限らず、クローラ1を備えた他の種類の作業機械、例えばブルドーザなど、に適用してもよい。
【0074】
例えば、図21図26に示した変形例では、ブラケット12Eに凹状レール36が設けられ、支持部9Eaの凸条が凹状レール36に沿ってスライドした。これに限らず、支持部9Eaに凹状レール36が設けられ、ブラケット12Eに凸条が設けられて、凹状レール36が凸条に沿ってスライドしてもよい。
【0075】
上記した実施形態および複数の変形例が有する種々の構成要素や構成特性は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、組み合わせて実施されてよい。例えば、上記の一つの実施形態または一つの変形例に、他の1以上の変形例または実施形態がもつ1以上の構成要素または構成特性が追加される、あるいは、上記の一つの実施形態または一つの変形例のもつ1以上の構成要素または構成特性が、他の1以上の変形例または実施形態がもつ別の1以上の構成要素または構成特性に置換されることが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…クローラ、5…トラックフレーム、5A…トラックフレーム、6…アジャスタ、7…グリスニップル、8…給脂穴(開口部)、8A…給脂穴(開口部)、9…カバー、9a…支持部、9a1…支持部、9a2…支持部、9b…ガード部、9c…踏み部、9A…カバー、9B…カバー、9Ba…支持部、9Bb…ガード部、9Bc…載置板、9C…カバー、9Cb…ガード部、9Cc…載置板、9D…カバー、9D1…第一カバー、9D2…第二カバー、9E…カバー、9Ea…支持部、10…下部走行体、12…ブラケット、12a…ブラケット、12b…ブラケット、12c…ブラケット、12E…ブラケット、20…上部旋回体、21…キャビン、21a…ドア、25…トラックフレーム、25a…トラックフレーム、31…閂、32…ボルト、33…第一閂鎹、34…第二閂鎹、35…閂、36…レール、100…油圧ショベル、100A…油圧ショベル、A…回転軸、C…間隔、C1…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
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