(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141897
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ワーク加工用テープおよびワークの裏面研削方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20241003BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20241003BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20241003BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/29
C09J201/00
C09J4/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053767
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】深田 智哉
(72)【発明者】
【氏名】中西 勇人
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA01
4J004AB01
4J004CA03
4J004CB03
4J004CC02
4J004CD08
4J004CE01
4J004DA01
4J004DB02
4J004EA05
4J004FA08
4J040FA132
4J040FA291
4J040GA01
4J040JA01
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA15
4J040KA35
4J040LA06
4J040MA01
4J040MB03
4J040NA20
4J040PA23
4J040PA33
4J040PB08
(57)【要約】
【課題】 基材や中間層などを含まずとも、ワークを十分に保持、保護しながら、空間的制約の中で剥がしきることができるワーク加工用テープを提供する。
【解決手段】 本発明に係るワーク加工用テープは、表面コート層と粘着剤層との二層から実質的になり、
表面を鏡面処理したシリコンウエハに対する23℃での粘着力が、0.3N/25mm以上、3N/25mm以下であり、
該ワーク加工用テープの引張試験を23℃で行った場合に、引張応力が最初に20MPaに達した時のひずみ(%)と、前記表面を鏡面処理したシリコンウエハに対する23℃での粘着力との積(ひずみ×粘着力)が500N・%以下であることを特徴としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面コート層と粘着剤層との二層から実質的になるワーク加工用テープであって、
表面を鏡面処理したシリコンウエハに対する23℃での粘着力が、0.3N/25mm以上、3N/25mm以下であり、
該ワーク加工用テープの引張試験を23℃で行った場合に、引張応力が最初に20MPaに達した時のひずみ(%)と、前記表面を鏡面処理したシリコンウエハに対する23℃での粘着力との積(ひずみ×粘着力)が500N・%以下であるワーク加工用テープ。
【請求項2】
前記ワーク加工用テープの引張試験を23℃で行った場合に、引張応力が最初に20MPaに達した時のひずみ(%)が300%以下である請求項1に記載のワーク加工用テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層の厚さが、90μm以上である請求項1に記載のワーク加工用テープ。
【請求項4】
前記表面コート層の厚さが、0.2~5μmである請求項1に記載のワーク加工用テープ。
【請求項5】
前記粘着剤層が、エネルギー線硬化性化合物を含む粘着剤層用組成物の硬化物である請求項1に記載のワーク加工用テープ。
【請求項6】
請求項1に記載のワーク加工用テープをワークの表面に貼付する工程、前記ワーク加工用テープが表面に貼付されたワークを、裏面側から研削する工程、および裏面研削後のワークから、ワーク加工用テープを剥離する工程を含む、ワークの裏面研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク加工用テープに関する。特に、半導体ウエハなどの各種ワークに対して、裏面研削などの加工を施す際に、ワーク表面を一時的に保護し、かつ、ワークを保持するために使用されるワーク加工用テープに関する。また、本発明は該ワーク加工用テープを用いたワークの裏面研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ等の回路が形成されたチップは、複数の回路が形成されたウエハ等のワークを個片化することによりワーク個片化物として得られる。このようなチップが搭載される電子機器の小型化および多機能化の急速な進展に伴い、チップにも小型化、低背化、高密度化が求められている。チップを小型化および低背化するには、ワークの表面に回路を形成した後、ワークの裏面を研削して、チップの厚さを薄くすることが一般的である。
【0003】
ワークの裏面研削時には、ワーク表面の回路を一時的に保護し、かつ、ワークを保持するために、ワーク表面にバックグラインドテープと呼ばれるワーク加工用テープが貼付される。
【0004】
このようなワーク加工用テープとしては、基材フィルムと粘着剤層とからなる粘着テープが使用されている。また、ワークが突起状電極などのバンプを表面に有する場合には、バンプの高低差に吸収し、ワークを平坦に維持するため、基材フィルムと粘着剤層との間に軟質の中間層を介在させることもある。
【0005】
ワークの加工時にはワークを保持し、加工終了後には、ワークの取り外しを容易にするため、ワーク加工用テープの粘着剤層には、エネルギー線硬化型粘着剤が使用されることがある。エネルギー線硬化型粘着剤は、エネルギー線照射前には十分な粘着力でワークを保持し、エネルギー線照射を受けると重合硬化し、粘着力が低下し、粘着剤層からのワークの取り外しが容易になる。また、中間層としても、エネルギー線硬化型の組成物が使用されることがある。
【0006】
しかし、エネルギー線照射により粘着剤層や中間層の粘着力が低下するため、基材フィルムと粘着剤層との間、中間層と粘着剤層との間、基材フィルムと中間層との間での密着性が低下し、ワークの取り外し時に、粘着剤や中間層がワークに転着してしまうことがあった。
【0007】
このような不都合を解消するため、特許文献1(特開2013-23665号公報)には、「基材フィルム、エネルギー線重合性基を有する化合物を含有するアンカーコート層およびエネルギー線硬化型粘着剤層がこの順に積層されてなる粘着シート」が開示されている。アンカーコート層および粘着剤層はいずれも未硬化の状態(エネルギー線照射されていない状態)であり、所定の加工が終了後、エネルギー線照射を行い、粘着シートからワークを取り外す。エネルギー線硬化型粘着剤の硬化時に、アンカーコート層に含まれるエネルギー線重合性基の少なくとも一部もともに重合し、粘着剤層の一部とアンカーコート層との間に共有結合が形成され、粘着剤層と基材とがアンカーコート層を介して密着する。この結果、エネルギー線硬化型粘着剤の硬化後においても、基材フィルムと粘着剤層との密着性が保たれ、粘着剤層がワークに転着することを防止できる。
【0008】
しかしながら、特許文献1の粘着シートでは、アンカーコート層を設けるため、作業工程が増え、また原材料費もかかるため、製品価格が上昇する。また、多層構造であるため、層間剥離により、粘着剤層がワークに転着する可能性は完全には払拭できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明者らは、基材や中間層などを含まず、実質的に粘着剤層単層のワーク加工用テープによるワークの保持、保護を検討した。しかし、粘着剤層単層では、ワークの加工時に粘着剤層が作業テーブルに密着し、剥離が困難になる。このため、作業テーブル側の粘着剤層表面に比較的硬質の表面コート層を設けることを着想した。表面コート層と粘着剤層とからなるワーク加工用テープによれば、テープの構成層が少なく、層間剥離も起こり難くなるため、粘着剤層がワークに転着する可能性を低減でき、またコストも低下する。
【0011】
しかし、軟質の粘着剤層と極薄い表面コート層からなるため、ワーク表面からワーク加工用テープを剥離する際に、従来の基材フィルムを有するワーク加工用テープでは発生しないような、異種の不良が生じる。例えば、剥離装置内の空間的制約に伴う剥離不良が生じやすい。テープの剥離は、剥離装置内で行われる。剥離工程は、たとえば
図4に示すように、ワーク12の加工面側(研削面)を、ダイシングテープや、ダイシング・ダイボンド兼用テープ等の他のテープ16に固定した状態で、ワーク12に貼り付けられたワーク加工用テープ10に、剥離の起点となる剥離用テープ14を圧着し、剥離用テープ14を折り返し方向に引き上げて、ワーク加工用テープ10を剥離する。剥離装置18は塵芥等の混入を防ぐために密閉されているため、空間的な制約がある。すなわち、剥離装置18の内部において、剥離用テープ14の可動距離には限界がある。このため、前記空間的制約の中で(すなわち、剥離用テープ14の可動距離の限界に至る前に)ワーク加工用テープ10を剥がしきることができないと、装置内でのワーク加工用テープ10の除去が困難になり、作業が停止することがある。
【0012】
粘着剤層を硬質に設計することで、微粘着性のワーク加工用テープにすることはできるが、ワークの保持、保護が不十分になる。
【0013】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、基材や中間層などを含まずとも、ワークを十分に保持、保護しながら、空間的制約の中で剥がしきることができるワーク加工用テープを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の態様は、以下の通りである。
(1) 表面コート層と粘着剤層との二層から実質的になるワーク加工用テープであって、
表面を鏡面処理したシリコンウエハに対する23℃での粘着力が、0.3N/25mm以上、3N/25mm以下であり、
該ワーク加工用テープの引張試験を23℃で行った場合に、引張応力が最初に20MPaに達した時のひずみ(%)と、前記表面を鏡面処理したシリコンウエハに対する23℃での粘着力との積(ひずみ×粘着力)が500N・%以下であるワーク加工用テープ。
(2) 前記ワーク加工用テープの引張試験を23℃で行った場合に、引張応力が最初に20MPaに達した時のひずみ(%)が300%以下である(1)に記載のワーク加工用テープ。
(3) 前記粘着剤層の厚さが、90μm以上である(1)に記載のワーク加工用テープ。
(4) 前記表面コート層の厚さが、0.2~5μmである(1)に記載のワーク加工用テープ。
(5) 前記粘着剤層が、エネルギー線硬化性化合物を含む粘着剤層用組成物の硬化物である(1)に記載のワーク加工用テープ。
(6) 上記(1)に記載のワーク加工用テープをワークの表面に貼付する工程、前記ワーク加工用テープが表面に貼付されたワークを、裏面側から研削する工程、および裏面研削後のワークから、ワーク加工用テープを剥離する工程を含む、ワークの裏面研削方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基材や中間層などを含まずとも、ワークを十分に保持、保護しながら、空間的制約の中で剥がしきることができるワーク加工用テープを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係るワーク加工用テープの断面模式図である。
【
図2】本実施形態に係るワーク加工用テープの製造工程の一例を示す断面模式図である。
【
図3】本実施形態に係るワーク加工用テープの製造工程の他の例を示す断面模式図である。
【
図4】ワーク加工用テープを、ワーク(ウエハ)から剥離する態様を示す模式図である。
【
図5】ワーク加工用テープがウエハの回路面に貼付された様子を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、図面を用いて詳細に説明する。まず、本明細書で使用する主な用語を説明する。
【0018】
ワークとは本実施形態に係るワーク加工用テープが貼付されて、その状態で裏面研削等の加工が施される板状体を言う。ワークとしては、円形(ただし、オリエンテーションフラットを有する場合を含む)のウエハ、角形のパネルレベルパッケージおよびモールド樹脂封止を施したストリップ(短冊形基板)等が挙げられる。ウエハとしては、例えばシリコンウエハ、ガリウム砒素ウエハ、炭化ケイ素ウエハ、窒化ガリウムウエハ、インジウム燐ウエハなどの半導体ウエハや、ガラスウエハ、タンタル酸リチウムウエハ、ニオブ酸リチウムウエハなどの絶縁体ウエハであってもよく、また、ファンアウトパッケージ等の作製に用いる樹脂と半導体から成る再構成ウエハであってもよい。
【0019】
ワークの「表面」は、回路、電極等が形成された面を指し、ワークの「裏面」は、回路等が形成されていない面を指す。電極としては、バンプ等の凸状電極であってもよい。
【0020】
ワークの加工は、ワークの裏面側を研削したり、ワークを個片化したり、ワークの裏面側にレーザーマーカー等で刻印をしたり、ワークの表面側に回路形成や突起状電極を形成したりする工程をいうが、本発明の効果が得られ易い観点から、ワークの加工は、ワークの裏面側を研削する工程であることがより好ましい。
【0021】
表面コート層は、粘着剤層の片面を被覆する薄い樹脂層であり、ワーク加工用テープが半導体製造装置の部材(例えば、吸着テーブル)に貼り付くことを防止する。
【0022】
「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
【0023】
「エネルギー線」は、紫外線、電子線等を指し、好ましくは紫外線である。
【0024】
「重量平均分子量」は、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。このような方法による測定は、たとえば、東ソー社製の高速GPC装置「HLC-8120GPC」に、高速カラム「TSK guard column HXL-H」、「TSK Gel GMHXL」、「TSK Gel G2000 HXL」(以上、全て東ソー社製)をこの順序で連結したものを用い、カラム温度:40℃、送液速度:1.0mL/分の条件で、検出器を示差屈折率計として行われる。
【0025】
剥離フィルムは、粘着剤層や表面コート層を剥離可能に支持するフィルムである。フィルムとは、厚みを限定するものではなく、シートを含む概念で用いる。
【0026】
粘着剤層用組成物等の組成物に関する説明における質量比は、有効成分(固形分)に基づいており、特段の説明が無い限り、溶媒は算入しない。
【0027】
次に、本発明に係るワーク加工用テープの各部材の構成をさらに詳細に説明する。なお、以下では、本発明に係るワーク加工用テープを、単に「テープ」と記載することがある。
【0028】
(ワーク加工用テープ10)
図1に示すように、ワーク加工用テープ10とは、表面コート層2と粘着剤層4との二層から実質的になる。ここで、「実質的になる」とは、ワークの保持、保護に関して機能性を有する他の層を有しないことを意味するが、ワークの保持、保護に関与しない層を有することを妨げない。たとえば、粘着剤層4には、ワーク加工用テープ10の使用までに粘着剤層に塵芥等が付着することを防止するため、剥離フィルムが積層されていてもよい。
【0029】
表面コート層2は、組成や特性が類似する2層以上の積層構造体であってもよく、粘着剤層4も、組成や特性が類似する2層以上の積層構造体であってもよいが、製造効率の観点から、いずれも単層であることが好ましい。
【0030】
ワーク加工用テープ10の粘着剤層をシリコンウエハに貼付し、その後、剥離する際に測定される23℃での粘着力は、0.3N/25mm以上、3N/25mm以下である。該粘着力は、好ましくは0.5N/25mm以上、さらに好ましくは0.7N/25mm以上、特に好ましくは0.9N/25mm以上であり、また、該粘着力は、好ましくは2.6N/25mm以下、さらに好ましくは2.2N/25mm以下、特に好ましくは1.8N/25mm以下である。
【0031】
粘着力の測定は、JIS Z 0237に準じて行われる。具体的には、ワーク加工用テープ10を25mm幅にカットした短冊状の測定サンプルを、23℃、相対湿度50%の環境下において2kgのローラーでシリコンウエハに貼付し、20分後に、万能(剥離荷重)試験機を用い、速度300mm/分で180°方向に剥離した際の剥離力を粘着力とする。シリコンウエハとしては、パフ研磨などにより表面粗さRaを5nm±2nmまで平滑化した鏡面処理ウエハを用い、該鏡面処理した面にワーク加工用テープを貼付し、粘着力を測定する。
【0032】
ワーク加工用テープ10の23℃での粘着力が上記範囲にあると、半導体ウエハ等のワークに、裏面研削等の加工を施す際に、ワークを安定して保持でき、また表面を確実に保護できる。
【0033】
ワーク加工用テープ10の引張試験を23℃で行った場合に、引張応力が最初に20MPaに達した時のひずみ(%)と、前記表面を鏡面処理したシリコンウエハに対する23℃での粘着力との積(ひずみ×粘着力)が500N・%以下である。ワーク加工用テープ10を延伸すると、徐々に引張応力が増大する。この引張応力が20MPaに達した時点でのひずみ(%)が大きいと、テープ材質が小さい力でも延伸されやすいことを意味している。
【0034】
「ひずみ×粘着力」が所定値以下であることは、テープ材質が小さい力では伸びにくく、粘着力が小さいことを両立していることを意味している。「ひずみ×粘着力」が所定値以下である場合に、テープが剥離装置内の空間的制約により延伸できなくなる前に剥離が完了する。このため、前記「ひずみ×粘着力」は、好ましくは400N・%以下、さらに好ましくは300N・%以下、特に好ましくは250N・%以下である。また、「ひずみ×粘着力」が小さすぎると、粘着力が不十分になることがあり、「ひずみ×粘着力」は、好ましくは3N・%以上、さらに好ましくは7N・%以上、特に好ましくは10N・%以上である。
【0035】
また、前記ひずみ(%)は、好ましくは300%以下であり、さらに好ましくは250%以下であり、特に好ましくは200%以下である。ひずみ(%)が300(%)以下であると、「ひずみ×粘着力」を上述の範囲に制御することがより容易となり、また粘着力が比較的大きく設計できることでワークの保持、保護をより確実に行うことができる。しかし、ひずみ(%)が小さすぎると、粘着剤層が過剰に硬質になり、ワーク加工用テープの貼付時に作業性が劣る場合がある。したがって、前記ひずみ(%)は、好ましくは5%以上であり、さらに好ましくは10%以上であり、特に好ましくは15%以上である。
【0036】
前記ひずみの測定は、JIS K 7161に準じて行われる。具体的には、ワーク加工用テープ10を15mm幅、長さ150mmにカットした短冊状の測定サンプルを、精密万能試験機に装着し、延伸速度200mm/分で延伸し、引張応力が20MPaに達した時点での伸び量から、ひずみ(%)を算出する。測定は、チャック間距離(すなわち初期サンプル長)100mm、23℃、相対湿度50%の環境下において行う。ひずみ(%)は引張応力が20MPaに達した時点でのサンプル長(チャック間距離)と、初期サンプル長(100mm)との差である伸び量Δを求め、初期サンプル長(100mm)に対する伸び量Δの割合[=(Δ/100) ×100]をひずみ(%)とする。
【0037】
粘着剤層の厚さは、特に限定はされないが、ワークの保持を確実にする観点から、好ましくは60μm以上、さらに好ましくは90μm以上、特に好ましくは110μm以上である。また、粘着剤層が厚いと取り扱い性が悪くなることがあるため、粘着剤層の厚さは、好ましくは200μm以下、さらに好ましくは160μm以下、特に好ましくは140μm以下である。
【0038】
表面コート層の厚さは、特に限定はされないが、作業テーブルへの粘着を防止する観点から、好ましくは0.2~5μm、より好ましくは0.5~5μm、特に好ましくは1~4μmである。表面コート層の厚さを上記範囲とすることで、高い性能が維持される傾向がある。
【0039】
表面コート層の貯蔵弾性率は、特に限定はされないが、ワーク加工用テープが半導体製造装置の部材(例えば、吸着テーブル)に貼り付くことを防止する観点から、引張モードで測定した貯蔵弾性率(E’)が、23℃において、40MPa以上であることが好ましく、60MPa以上であることがより好ましく、80MPa以上であることがさらに好ましい。なお、本発明における表面コート層の貯蔵弾性率(E’)の測定方法は、後述の実施例に詳述する。
【0040】
ワーク加工用テープ10の厚さは、特に限定はされないが、ワークの保持を確実にする観点から、好ましくは61μm以上、さらに好ましくは91μm以上、特に好ましくは111μm以上である。また、取り扱い性の観点から、ワーク加工用テープ10の厚さは、好ましくは205μm以下、さらに好ましくは165μm以下、特に好ましくは145μm以下である。
【0041】
ワーク加工用テープ10は、上記の粘着力および「ひずみ×粘着力」を満足する限り、表面コート層や粘着剤層の組成や厚みは特に限定はされないが、以下の本発明のワーク加工用テープ10の組成等について、非限定的な例を説明する。
【0042】
(粘着剤層4)
粘着剤層は、種々の再剥離性の感圧接着剤を含む組成物から形成されるが、粘着力および「ひずみ×粘着力」を所望の範囲に制御することが比較的容易なエネルギー線硬化性化合物を含む粘着剤層用組成物の硬化物により構成されていることが好ましい。
【0043】
(粘着剤層用組成物)
エネルギー線硬化性化合物を含む粘着剤層用組成物は、エネルギー線が照射されることで硬化する。硬化により流動性は低下するが、粘着性を維持し、また延伸性が低下する。
【0044】
エネルギー線硬化性化合物を含む粘着剤層用組成物は、粘着力および「ひずみ×粘着力」を所望の範囲に制御する観点から、より具体的には、ウレタン(メタ)アクリレート(d1)を含むことが好ましく、更に環形成原子数6~20の脂環基又は複素環基を有するエネルギー線硬化性化合物(d3)を含むことがより好ましく、更に、多官能エネルギー線硬化性化合物(d2)及び/又は官能基を有するエネルギー線硬化性化合物(d4)を含有してもよい。また、粘着剤層用組成物は、上記の成分に加えて、成分(d1)~(d4)以外のエネルギー線硬化性化合物(d5)や光重合開始剤(i)を含有してもよい。さらに、粘着剤
層用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加剤を含有してもよい。
【0045】
以下、エネルギー線硬化性化合物を含む粘着剤層用組成物中に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0046】
(ウレタン(メタ)アクリレート(d1))
ウレタン(メタ)アクリレート(d1)とは、少なくとも(メタ)アクリロイル基及びウレタン結合を有する化合物であり、エネルギー線照射により重合硬化する性質を有する。ウレタン(メタ)アクリレート(d1)は、オリゴマーまたはポリマーである。
【0047】
成分(d1)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~100,000、より好ましくは2,000~60,000、さらに好ましくは3,000~20,000である。また、成分(d1)中の(メタ)アクリロイル基数(以下、「官能基数」ともいう)としては、単官能、2官能、もしくは3官能以上でもよいが、単官能又は2官能であることが好ましい。
【0048】
成分(d1)は、例えば、ポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得ることができる。なお、成分(d1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
成分(d1)の原料となるポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2つ以上有する化合物であれば特に限定されない。2官能のジオール、3官能のトリオール、4官能以上のポリオールのいずれであってもよいが、2官能のジオールが好ましく、ポリオレフィン型ジオールがより好ましい。
【0050】
多価イソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ω,ω’-ジイソシアネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族系ジイソシアネート類;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート類等が挙げられる。
【0051】
これらの中でも、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0052】
上述のポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させてウレタン(メタ)アクリレート(d1)を得ることができる。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、少なくとも1分子中にヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば、特に限定されない。
【0053】
具体的なヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリルアミド;ビニルアルコール、ビニルフェノール、ビスフェノールAのジグリシジルエステルに(メタ)アクリル酸を反応させて得られる反応物;等が挙げられる。
【0054】
これらの中でも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0055】
末端イソシアネートウレタンプレポリマー及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させる条件としては、必要に応じて添加される溶剤、触媒の存在下、60~100℃で、1~4時間反応させる条件が好ましい。
【0056】
粘着剤層用組成物中の成分(d1)の含有量は、粘着剤層用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは20~80質量%、より好ましくは30~70質量%、さらに好ましくは40~65質量%である。
【0057】
(多官能エネルギー線硬化性化合物(d2))
多官能エネルギー線硬化性化合物とは、エネルギー線硬化性不飽和基を2つ以上有する、成分(d1)以外の化合物をいう。エネルギー線硬化性不飽和基は、炭素-炭素二重結合を含む官能基であり、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、ビニルベンジル基等が挙げられる。エネルギー線硬化性不飽和基は2種以上を組み合わせてもよい。多官能エネルギー線硬化性化合物中のエネルギー線硬化性不飽和基と成分(d1)中の(メタ)アクリロイル基とが反応したり、成分(d2)中のエネルギー線硬化性不飽和基同士が反応することで、三次元網目構造(架橋構造)が形成される。多官能エネルギー線硬化性化合物を使用すると、エネルギー線硬化性不飽和基を1つしか含まない化合物を使用した場合と比較して、エネルギー線照射により形成される架橋構造が増加するため、粘着剤層が特異な粘弾性を示し、裏面研削時の応力を緩和することがより容易となる。
【0058】
なお、成分(d2)の定義と、後述する成分(d3)や成分(d4)の定義とは重複する部分があるが、重複部分は成分(d2)に含まれるものとする。例えば、環形成原子数6~20の脂環基又は複素環基を有し、エネルギー線硬化性不飽和基を2つ以上有する化合物は、成分(d2)と成分(d3)の両方の定義に含まれるが、本発明において当該化合物は、成分(d2)に含まれるものとする。また、水酸基、エポキシ基、アミド基、アミノ基等の官能基を含有し、エネルギー線硬化性不飽和基を2つ以上有する化合物は、成分(d2)と成分(d4)の両方の定義に含まれるが、本発明において当該化合物は、成分(d2)に含まれるものとする。
【0059】
上記観点から、多官能エネルギー線硬化性化合物中におけるエネルギー線硬化性不飽和基の数(官能基数)は、2~10が好ましく、3~6がより好ましい。
【0060】
また、成分(d2)の重量平均分子量は、好ましくは30~40000、より好ましくは100~10000、さらに好ましくは200~1000である。
【0061】
具体的な成分(d2)としては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸ビニル、アジピン酸ジビニル、N,N'-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0062】
なお、成分(d2)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0063】
粘着剤層用組成物中の成分(d2)の含有量は、粘着剤層用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは0~40質量%、より好ましくは0.5~20質量%、さらに好ましくは1~15質量%である。
【0064】
(環形成原子数6~20の脂環基又は複素環基を有するエネルギー線硬化性化合物(d3))
成分(d3)は、環形成原子数6~20の脂環基又は複素環基を有する、成分(d1)以外のエネルギー線硬化性化合物であり、さらには、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましく、より好ましくは1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。成分(d3)を用いることで、得られる粘着剤層用組成物の成膜性を向上させることができる。
【0065】
なお、成分(d3)の定義と、後述する成分(d4)の定義とは重複する部分があるが、重複部分は成分(d4)に含まれる。例えば、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基と、環形成原子数6~20の脂環基又は複素環基と、水酸基、エポキシ基、アミド基、アミノ基等の官能基とを有する化合物は、成分(d3)と成分(d4)の両方の定義に含まれるが、本発明において当該化合物は、成分(d4)に含まれるものとする。
【0066】
具体的な成分(d3)としては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレート等の脂環基含有(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルフォリン(メタ)アクリレート等の複素環基含有(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
なお、成分(d3)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
脂環基含有(メタ)アクリレートの中ではイソボルニル(メタ)アクリレートが好ましく、複素環基含有(メタ)アクリレートの中ではテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0068】
粘着剤層用組成物中の成分(d3)の含有量は、粘着剤層用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは10~60質量%、より好ましくは20~55質量%、さらに好ましくは25~50質量%である。
【0069】
(官能基を有するエネルギー線硬化性化合物(d4))
成分(d4)は、水酸基、エポキシ基、アミド基、アミノ基等の官能基を含有する、成分(d1)以外のエネルギー線硬化性化合物であり、さらには、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましく、より好ましくは1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
【0070】
成分(d4)は、成分(d1)との相溶性が良好であり、粘着剤層用組成物の粘度を適度な範囲に調整しやすくなる。また、粘着剤層を比較的薄くしても緩衝性能が良好になり易く、また、官能基導入に伴い粘着剤層の極性を調整することでワーク加工用テープの粘着力を上述の範囲に調整し易くなる。
【0071】
成分(d4)としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート、エポキシ基含有化合物、アミド基含有化合物、アミノ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、水酸基含有(メタ)アクリレートが好ましい。
【0072】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェニルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシー3-フェノキシプロピルアクリレート等が挙げられる。
【0073】
なお、成分(d4)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘着剤層用組成物中の成分(d4)の含有量は、粘着剤層用組成物の成膜性を向上させるため、また、粘着剤層の極性を調整するために、粘着剤層用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは0~30質量%、より好ましくは1~20質量%、さらに好ましくは2~10質量%である。
【0074】
(成分(d1)~(d4)以外のエネルギー線硬化性化合物(d5))
粘着剤層形成用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、上記の成分(d1)~(d4)以外の単官能のエネルギー線硬化性化合物(d5)を含有してもよい。
【0075】
成分(d5)としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のビニル化合物:等が挙げられる。なお、成分(d5)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
粘着剤層形成用組成物中の成分(d5)の含有量は、粘着剤層用組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは0~20質量%、より好ましくは0~10質量%、さらに好ましくは0~5質量%、特に好ましくは0~2質量%である。
【0077】
(光重合開始剤(i))
粘着剤層用組成物には、粘着剤層を形成する際、エネルギー線照射による重合時間を短縮させ、また、エネルギー線照射量を低減させる観点から、さらに光重合開始剤(i)を含有することが好ましい。
【0078】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィノキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物、さらには、アミンやキノン等の光増感剤等が挙げられ、より具体的には、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロルニトリル、ジベンジル、ジアセチル、8-クロールアンスラキノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド等が挙げられる。
【0079】
これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
粘着剤層用組成物中の光重合開始剤の含有量は、粘着剤層用組成物の全量(100質量部)に対して、エネルギー線硬化性化合物好ましくは0.05~15質量部、より好ましくは0.1~10質量部、さらに好ましくは0.3~5質量部である。
【0081】
(その他の添加剤)
粘着剤層用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料等が挙げられる。これらの添加剤を配合する場合、粘着剤層用組成物中の各添加剤の含有量は、粘着剤層用組成物の全量(100質量部)に対して、好ましくは0.01~6質量部、より好ましくは0.1~3質量部である。
【0082】
エネルギー線硬化性化合物を含む粘着剤層用組成物から形成される粘着剤層は、上記組成の粘着剤層用組成物をエネルギー線照射により重合硬化して得られることが好ましい。つまり、当該粘着剤層は、粘着剤層用組成物を硬化した物であることが好ましい。
【0083】
したがって、当該粘着剤層は、成分(d1)由来の繰り返し単位を含むことが好ましく、更に成分(d3)由来の繰り返し単位を含むことがより好ましい。また、当該粘着剤層は、成分(d2)由来の繰り返し単位及び/又は成分(d4)由来の繰り返し単位を含有していてもよいし、成分(d5)由来の繰り返し単位を含有していてもよい。粘着剤層における各繰り返し単位の含有割合は、通常、粘着剤層用組成物を構成する各成分の比率(仕込み比)に一致する。
【0084】
(表面コート層2)
表面コート層は、種々の硬質薄膜から形成されるが、製造が容易であり、また硬い表面コート層が得られるため、硬化性樹脂(A)と無機フィラーとを含む組成物の硬化物であることが好ましい。
【0085】
(表面コート層用組成物)
表面コート層用組成物は、表面コート層用組成物の硬化物100質量部に対して、無機フィラーを好ましくは10~50質量部、より好ましくは15~40質量部、特に好ましくは20~30質量部含有する。なお、硬化前の表面コート層用組成物に対する無機フィラーの配合量と、表面コート層用組成物の硬化物に対する無機フィラーの配合量には実質的に差がないのが通常である。そのため、本発明では硬化前の表面コート層用組成物に対する無機フィラーの配合量を、表面コート層用組成物の硬化物に対する無機フィラーの配合量とみなす。表面コート層における無機フィラーの含有量を上記範囲とすることで、表面コート層として優れた性能を発現することができ、また、ワークを加工する工程において、表面コート層にクラックが発生することを防止し、その結果、性能が低下することをより効率的に抑制できる。
【0086】
硬化性樹脂(A)は特に限定されないが、エネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等が用いられ、好ましくはエネルギー線硬化性基を含むエネルギー線硬化型樹脂が用いられる。
【0087】
エネルギー線硬化型樹脂は特に限定されないが、例えば、エネルギー線硬化性のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーや、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー系エネルギー線硬化型樹脂が好ましく用いられる。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーやエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量Mw(ゲルパーミテーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値をいう。)は、通常1000~70000程度であり、好ましくは1500~60000の範囲である。上記のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーやエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは一種単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
また、エネルギー線硬化型樹脂は側鎖にエネルギー線硬化性の官能基を有するポリマーであってもよい。このようなポリマーをエネルギー線硬化型樹脂として使用すれば、架橋密度を下げることなく粘着剤層との密着性をより向上させることができる。このようなポリマーとしては、例えば、主鎖がアクリルポリマーであり、側鎖にエネルギー線硬化性二重結合やエポキシ基を官能基として有するものが使用できる。
表面コート層用組成物は、表面コート層用組成物100質量部に対して、硬化性樹脂(A)を好ましくは50~90質量部、より好ましくは60~85質量部、特に好ましくは70~80質量部含有する。
【0089】
エネルギー線硬化型樹脂に、光重合開始剤を混合することにより、エネルギー線照射による重合硬化時間ならびに照射量を少なくすることができる。光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィノキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光重合開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などが挙げられ、具体的には1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0090】
表面コート層用組成物には表面コート層に柔軟性(クラックが発生することを防止する性能)を付与するため、硬化性樹脂(A)以外のバインダー成分を配合してもよい。このようなバインダー成分としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0091】
また、表面コート層用組成物には、無機フィラーの分散性を向上させるために、分散剤を配合してもよい。また、顔料や染料等の着色剤等の添加物が含有されていてもよい。
【0092】
(ワーク加工用テープの製造方法)
次にワーク加工用テープの製造方法を説明する。第1の方法によれば、粘着剤層表面の粘着力を比較的高く設定でき、第2の方法では比較的低くなる。
【0093】
第1の方法では、
図2(a)に示すように、第1剥離フィルム21上にコート層1を設けてコート層付き第1剥離フィルムを作成する。
【0094】
剥離フィルムは、少なくとも一方の面が剥離処理をされた剥離フィルムが用いられ、具体的には、剥離フィルム用基材の表面上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
【0095】
剥離フィルム用基材としては、樹脂フィルムが好ましく、当該樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。剥離剤としては、例えば、シリコーン系剥離剤、アルキド系剥離剤、フッ素系剥離剤等が挙げられる。
【0096】
剥離フィルムの厚さは、特に制限ないが、好ましくは10~200μm、より好ましくは20~150μmである。
【0097】
第1剥離フィルム21上にコート層1を形成する方法は特に限定はされず、前記表面コート層用組成物または後述の塗布剤を、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の方法により塗布すればよい。コート層1の塗布厚は、最終的な形成後の厚みが前記表面コート2の厚みとなるように塗布し、必要に応じて乾燥すればよい。表面コート層用組成物は、必要に応じ有機溶剤で希釈して塗布剤として塗布してもよい。有機溶剤としては、たとえば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、トルエン、キシレン、n-プロパノール、イソプロパノール等があげられる。また、表面コート層用組成物またはその塗布剤の塗工は、一回でもよく、2回以上に分けて塗工してもよい。表面コート層用組成物の塗工を2回以上行う場合には、同一の表面コート層用組成物であってもよく、組成が類似する表面コート層用組成物を用いてもよい。
【0098】
次いで、
図2(b)のように、コート層付き剥離フィルムのコート層1上に、前記粘着剤層用組成物または後述の塗布剤を塗工し、未硬化の粘着剤層3を形成する。塗工法は、前記と同様である。塗布厚は、最終的な形成後の厚みが前記粘着剤層4の厚みとなるように塗布し、必要に応じて乾燥すればよい。粘着剤層用組成物は上記と同様に有機溶剤で希釈して塗布剤としてもよいが、環境負荷を軽減するため、無溶剤であることが好ましい。また塗工を2回以上に分けて行ってもよい。粘着剤層用組成物の塗工を2回以上行う場合には、同一の粘着剤層用組成物であってもよく、組成が類似する粘着剤層用組成物を用いてもよい。
【0099】
次いで、
図2(c)のように、エネルギー線EBの照射を行い、表面コート層用組成物および粘着剤層用組成物に含まれるエネルギー線硬化性成分を半硬化する。エネルギー線の照射は、たとえば高圧水銀ランプなどにより行う。未硬化のコート層1および粘着剤層3を同時に硬化することで、コート層1および粘着剤層3に含まれるエネルギー線硬化性成分同士が結合し、半硬化したコート層1と粘着剤層3との密着性が向上する。エネルギー線の照射量は、コート層1および粘着剤層3に含まれるエネルギー線硬化性成分の一部が硬化する量でよい。エネルギー線としては紫外線が好ましく、その照度は、60~320mW/cm
2であることが好ましく、光量は、30~1000mJ/cm
2であることが好ましい。
【0100】
エネルギー線照射を大気雰囲気で行うと、酸素のよる重合阻害が起こり、粘着剤層3のワークに貼付される表面の重合が完全には進行せず、比較的軟質の表面となり、粘着剤層の粘着力を高く設定できる。
【0101】
次いで、
図2(d)のように、半硬化した粘着剤層3上に第2剥離フィルム22を積層する。第2剥離フィルムとしては、上記第1剥離フィルムと同様のフィルムが用いられるが、エネルギー線に対し高い透過性を有するフィルムを使用することが好ましい。
【0102】
さらに
図2(e)のように、エネルギー線EBの照射を行い、コート層1および粘着剤層3に含まれるエネルギー線硬化性成分をすべて硬化し、コート層1から表面コート層2を得て、未硬化の粘着剤層3を、硬化した粘着剤層4とする。エネルギー線としては紫外線が好ましく、その照度は、100~400mW/cm
2であることが好ましく、光量は、200~1500mJ/cm
2であることが好ましい。なお、この状態でエネルギー線照射を行っても、重合阻害を受けた粘着剤層4の表面は、十分に硬化させないことができ、比較的軟質で高い粘着力を維持する。
【0103】
以上の工程を経て、第1剥離フィルムを剥離することで、
図1に示す構成のワーク加工用テープ10に第2剥離フィルムが積層された積層体(すなわち剥離フィルム付きワーク加工用テープ)が得られる。
【0104】
第2の製造方法では、ワークに貼付される粘着剤層表面の重合阻害を回避して、粘着剤層表面が比較的硬質で、粘着力を低く設定できる。
【0105】
第2の方法では、
図3(a)に示すように、第2剥離フィルム22上に前記粘着剤層用組成物を塗工し、未硬化の粘着剤層3を形成する。塗布法、塗布厚は、前記第1の方法と同様である。
【0106】
次いで、
図3(b)のように、エネルギー線照射を行い、粘着剤層用組成物に含まれるエネルギー線硬化性成分を半硬化する。エネルギー線としては紫外線が好ましく、その照度は、60~320mW/cm
2であることが好ましく、光量は、30~1000mJ/cm
2であることが好ましい。エネルギー線照射を大気雰囲気で行うと、酸素のよる重合阻害が起こる。しかし、後述するように、重合阻害により形成された軟質な面には、表面コート層2が形成され、ワークに貼付される粘着面としては使用されない。
【0107】
また、上記とは別に、第1剥離フィルム21上にコート層1を設けてコート層付き第1剥離フィルムを作成する。
【0108】
次いで、
図3(c)のように、半硬化した粘着剤層3上にコート層付き第1剥離フィルムのコート層1を積層する。第1剥離フィルムとしては、エネルギー線に対し高い透過性を有するフィルムを使用することが好ましい。
【0109】
次いで、
図3(d)のように、エネルギー線照射を行い、表面コート層用組成物および粘着剤層用組成物に含まれるエネルギー線硬化性成分を硬化する。半硬化した粘着剤層3中の未反応のエネルギー線硬化性成分と、未硬化のコート層1に含まれるエネルギー線硬化性成分が重合硬化し、コート層1から表面コート層2を得て、未硬化の粘着剤層3を、硬化した粘着剤層4とする。エネルギー線としては紫外線が好ましく、その照度は、100~400mW/cm
2であることが好ましく、光量は、200~1500mJ/cm
2であることが好ましい。硬化後の表面コート層と粘着剤層4とは、エネルギー線硬化性成分の硬化によって、密着性が向上する。
【0110】
以上の工程を経て、第1剥離フィルムを剥離することで、
図1に示す構成のワーク加工用テープ10に第2剥離フィルムが積層された積層体(すなわち剥離フィルム付きワーク加工用テープ)が得られる。
【0111】
(ワーク加工用テープの粘着力およびひずみの制御)
上記のように、第1の製造方法によれば、重合阻害を利用することで、ワーク加工用テープの粘着力を比較的高く設定できる。第2の製造方法によれば粘着力を比較的低く設定できる。
【0112】
また、粘着剤層4中に含まれる架橋構造を多くする(例えば、粘着剤層用組成物において、多官能エネルギー線硬化性化合物(d2)を多くする)ことで、粘着力は低くなり、ひずみは小さくなる。
【0113】
また、粘着剤層用組成物において、複素環基を有するエネルギー線硬化性化合物を多くすることで、粘着力が高くできる傾向がある。
【0114】
また、粘着剤層用組成物において、官能基を有するエネルギー線硬化性化合物(d4)を添加することで、粘着剤層の極性の変化によって、粘着力を調整することができるが、特に水酸基を有するエネルギー線硬化性化合物を添加することで、粘着力が高くできる傾向がある。
【0115】
また、粘着力の高低はエネルギー線の照射方法の違い(例えば、第1の製造方法と第2の製造方法とのエネルギー線照射方法の違い)の影響を受けるものの、粘着剤層用組成物において、ウレタン(メタ)アクリレート(d1)の重量平均分子量(Mw)を調整することで、粘着力を調整することができる。
【0116】
また、第2の製造方法で作製されたワーク加工用テープにおいては、粘着剤層用組成物において、ウレタン(メタ)アクリレート(d1)を多くすることで粘着力が高くできる傾向がある。
【0117】
また、粘着剤層用組成物における光重合開始剤の含有量を増やしたり、エネルギー線の照射における照度や光量を上昇させたりすることで、光重合開始剤が少ない場合やエネルギー線の照射条件が弱い場合に比べて、粘着力は低くなり、ひずみは小さくなる場合がある。
【0118】
(ワークの加工方法)
本発明のワーク加工用テープは、半導体ウエハなどの各種ワークに対して、裏面研削などの加工を施す際に、ワーク表面を一時的に保護し、かつ、ワークを保持するために使用される。本発明に係るワーク加工用テープは、ワークの裏面研削が行われる際に、ワークの表面に貼付してワークの表面を保護するために好ましく使用される。
【0119】
ワーク加工用テープの非限定的な使用例として、ワークがウエハであり、加工が裏面研削を含む、ワークの裏面研削方法をさらに具体的に説明する。
【0120】
ワーク(ウエハ)の裏面研削方法は、具体的には、以下の工程1~工程3を少なくとも備える。
工程1:上記のワーク加工用テープを、ウエハの表面に貼付する工程
工程2:ワーク加工用テープが表面に貼付されたウエハを、裏面側から研削する工程
工程3:裏面研削後のウエハから、ワーク加工用テープを剥離する工程
【0121】
以下、上記ウエハの裏面研削方法の各工程を詳細に説明する。
【0122】
(工程1)
工程1では、
図5に示すように、ワークとしてのウエハ12の表面12aに、本実施形態に係るワーク加工用テープ10の粘着剤層4を貼付する。ワーク加工用テープをウエハの表面に貼付することにより、ウエハの表面が十分に保護される。
【0123】
ウエハの研削前の厚さは特に限定されないが、通常は500~1000μm程度である。また、ウエハは、通常、その表面に回路が形成されている。ウエハ表面への回路の形成は、エッチング法、リフトオフ法などの従来汎用されている方法を含む様々な方法により行うことができる。
【0124】
ワーク加工用テープが貼付されたウエハは、吸着テーブル(作業テーブルの一例)上に載せられ、吸着テーブルに吸着されて保持される。この際、ワーク加工用テープの表面コート層側がテーブル側に配置されて吸着される。
【0125】
(工程2)
工程1の後、吸着テーブル上のウエハの裏面を研削することにより、裏面研削後のウエハが得られる。本実施形態では、裏面研削後のウエハの厚さは特に限定されないが、たとえば200μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。裏面研削後のウエハの厚さが上記の範囲内である場合には、チップの小型化および低背化を容易に実現できる。
【0126】
(工程3)
次に、ウエハから、ワーク加工用テープ10を剥離する。本工程は、例えば、
図4に示すように、以下の方法により行う。
【0127】
裏面研削後のウエハの裏面側に、ダイシングテープや、ダイシング・ダイボンド兼用テープ等の他のテープ16を貼付する。この際、他のテープ16の外周縁部をリングフレーム(図示せず)に固定する。次いで、他のテープ16上に保持されたウエハからワーク加工用テープ10を剥離する。ワーク加工用テープ10の剥離は、剥離の起点となる剥離用テープ14をワーク加工用テープの表面コート層2に圧着し、剥離用テープ14を折り返し方向に引き上げて、ワーク加工用テープ10を剥離する。
【0128】
本実施形態に係るワーク加工用テープは上述した特性を有しているので、ウエハの保持、保護に十分な粘着力を有しながらも、伸長性が適度に抑制されているため、空間的な制限がある剥離装置内でも、ワーク加工用テープの剥離を安定して行える。
【0129】
また、本発明に係るワーク加工用テープは、先ダイシング法を利用する個片化物(チップ)の製造方法にも好適に用いられる。
【0130】
先ダイシング法を利用するチップの製造方法では、上記の工程1~3に加えて、ウエハの表面側から溝を形成し、又は当該ウエハの表面若しくは裏面から当該ウエハ内部に改質領域を形成する工程(工程4)を有する。
【0131】
ウエハに改質領域を形成する場合には、工程1を工程4の前に行うことが好ましい。一方、ウエハ表面に、ダイシング等により溝を形成する場合には、工程4の後に工程1を行う。すなわち、工程1において、後述する工程4で形成した溝を有するウエハの表面に、ワーク加工用テープを貼付することになる。
【0132】
工程4では、ウエハの表面側から溝を形成する。あるいは、ウエハの表面若しくは裏面からウエハの内部に改質領域を形成する。
【0133】
本工程で形成される溝は、ウエハの厚さより浅い深さの溝である。溝の形成は、従来公知のウエハダイシング装置等を用いてダイシングにより行うことが可能である。前記溝は、上述した工程2において、裏面研削により溝に沿って個片化される起点となる溝である。
【0134】
また、改質領域は、ウエハにおいて、脆質化された部分であり、研削工程における研削によって、ウエハが薄くなったり、研削による力が加わったりすることによりウエハの改質領域が破壊されて個片化される起点となる領域である。すなわち、工程4において溝及び改質領域は、上述した工程2において、ウエハが個片化される際の分割線に沿うように形成される。
【0135】
改質領域の形成は、ウエハの内部に焦点を合わせたレーザーの照射により行い、改質領域は、ウエハの内部に形成される。レーザーの照射は、ウエハの表面側から行っても、裏面側から行ってもよい。なお、改質領域を形成する態様において、工程4を工程1の後に行いウエハ表面からレーザー照射を行う場合、ワーク加工用テープを介してウエハにレーザーを照射することになる。
【0136】
先ダイシング法では、工程2の裏面研削は、ウエハに溝が形成される場合には、少なくとも溝の底部に至る位置までウエハを薄くするように行う。この裏面研削により、溝は、ウエハを貫通する切り込みとなり、ウエハは切り込みにより個片化される。
【0137】
一方、改質領域が形成される場合には、研削によって研削面(ウエハ裏面)は、改質領域に至ってもよいが、厳密に改質領域まで至らなくてもよい。すなわち、改質領域を起点としてウエハが破壊されて個片化されるように、改質領域に近接する位置まで研削すればよい。個片化されたウエハ(すなわちチップ)からのワーク加工用テープの剥離は、上記工程3と同様に行えばよい。
【0138】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
【実施例0139】
以下、実施例を用いて、発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0140】
本実施例における測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0141】
(粘着力)
粘着力の測定は、JIS Z 0237に準じて行われる。具体的には、ワーク加工用テープ10を25mm幅にカットした短冊状の測定サンプルを、23℃、相対湿度50%の環境下において2kgのローラーでシリコンウエハに貼付し、20分後に、万能(剥離荷重)試験機テンシロン(株式会社エー・アンド・デイ社製)を用い、速度300mm/分で180°方向に剥離した際の剥離力を粘着力とする。シリコンウエハとしては、表面粗さRaを5nm±2nmまで平滑化した鏡面処理ウエハを用い、該鏡面処理した面にワーク加工用テープを貼付し、粘着力を測定する。測定の長さは70mmとして、最初の長さ10mm分での測定値と、最後の長さ10mm分での測定値を、有効値から除外した。そして、その測定値の平均値を粘着力(mN/25mm)とし、このような、粘着力の測定を2回行い、その時の平均値を採用した。
【0142】
(ひずみ)
ひずみの測定は、JIS K 7161に準じて行われる。具体的には、ワーク加工用テープ10を15mm幅、長さ150mmにカットした短冊状の測定サンプルを、精密万能試験機(島津製作所)に装着し、延伸速度200mm/分で延伸し、引張応力が20MPaに達した時点での伸び量Δから、ひずみ(%)を算出する。測定は、チャック間距離(すなわち初期サンプル長)100mm、23℃、相対湿度50%の環境下において行う。ひずみ(%)は引張応力が20MPaに達した時点でのサンプル長(チャック間距離)と、初期サンプル長(100mm)との差である伸び量Δを求め、初期サンプル長(100mm)に対する伸び量Δの割合[=(Δ/100) ×100]をひずみ(%)とする。
【0143】
(シリコンウエハ裏面研削後のテープの剥離適性)
リンテック社製テープ貼付装置(RAD-3510F/12)にてワーク加工用テープをシリコンミラーウエハ(表面粗さRaを5nm±2nmまで平滑化した鏡面処理ウエハ)に貼付後、ディスコ社製裏面研削装置(DGP8760)でウエハ厚さ50μmまで研削を行い、リンテック社製テープ剥離装置(RAD-2700F/12)でワーク加工用テープの剥離評価を行った。
【0144】
〈条件〉
1.直径300mmのシリコンウエハ(780μm厚、回路なしミラーウエハ)に、テープ貼付(リンテック社製RAD-3510F/12:貼付速度20mm/秒.温度23℃)
2.ウエハ研削:最終仕上げウエハ厚み50μm
3.シリコンウエハの研削面に他のテープ(リンテック社製ダイシングテープAdwill(登録商標) D-175D*を貼付)
4.ワーク加工用テープの表面コート層側に、剥離用テープの圧着(リンテック社製RAD-2700F/12,剥離用テープ:リンテック社製S-75C,210℃ 5秒圧着)
5.ワーク加工用テープを剥離(リンテック社製RAD-2700F/12:剥離速度2mm/秒から開始し、4mm/秒、さらに8mm/秒に加速.環境温度23℃、ウエハ吸着テーブル温度:加温なし(23℃))。剥離途中において、テープの最長の長さ(初期はウエハと同サイズの300mmであるが、剥離途中でどの程度伸びているか)を測定し、記録した。
6.剥離適性を、下記の判定基準で評価した。
【0145】
<<判定基準>>
・判定A(合格):ウエハからテープを剥離できた。剥離途中のテープの最長の長さが400mm未満であった。
・判定B(合格):ウエハからテープを剥離できた。剥離途中のテープの最長の長さが400mm以上(すなわち、100mm以上伸長)であった。
・判定F(不合格):剥離装置の空間的制約によりテープを剥離できなかった。または、剥離途中にテープが破断した。
【0146】
(ウレタンアクリレートオリゴマー(成分(d1))の調製)
粘着剤層用組成物の構成成分として、2官能のウレタンアクリレートオリゴマーを3種(UA-1、UA-2、UA-3)準備した。ウレタンアクリレートオリゴマーは、ポリプロピレングリコールとイソホロンジイソシアネートを反応させて得られた末端がイソホロンジイソシアネート由来のイソシアネートであるウレタンプレポリマーに、2-ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得た。各ウレタンアクリレートオリゴマーのモノマー組成を下表に示す。
【0147】
【0148】
(粘着剤層用組成物の調製)
上記で合成したウレタンアクリレート系オリゴマー、下表に記載のアクリル系モノマー、さらに光重合開始剤(i-1)としての2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(IGM Resins社、製品名[Omnirad 1173」)を配合し、粘着剤層用組成物の調製をして、実施例1~10および比較例1~5の各ワーク加工用テープの作製に用いる各粘着剤層用組成物とした。
【0149】
【0150】
(表面コート層用組成物の調製)
エポキシアクリレート樹脂(アルケマ社製、商品名「CN104 NS」)100質量部、シリカフィラー(日産化学工業社製、商品名「スノーテックス(登録商標)UP」)30質量部、光重合開始剤としてのフェニル-1-ヒドロキシシクロヘキシル-ケトン(IGM Resins社製、商品名「オムニラッド(登録商標) 184」)5質量部を、有効成分濃度が5質量%になるようにトルエンに溶解及び分散させ、表面コート層用組成物の塗布剤を得た。
【0151】
(表面コート層の貯蔵弾性率(E’)の測定)
前記表面コート層用組成物の塗布剤を工程用剥離フィルム(リンテック社製、商品名「SP-PET381031」、シリコーン剥離処理を行ったポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、厚さ:38μm)の剥離処理がされた面上に、表面コート層用組成物を塗布、100℃2分間乾燥し、未硬化のコート層を形成した。エネルギー線(照度350mW/cm2、光量700mJ/cm2の紫外線)照射を行い、コート層を硬化して、貯蔵弾性率(E’)測定用の表面コート層サンプル(厚さ55μm)を得た。表面コート層サンプルを幅4mmに切断し、前記工程用剥離フィルムを除去した。動的粘弾性測定器(エー・アンド・デイ社製RHEOVIBRON DDV-01FP)を用いて、引張モード、測定部のサンプル長さ20mm、温度-30℃~120℃、3℃/min昇温、測定周波数1Hzの条件で、表面コート層サンプルの貯蔵弾性率(E’)を測定した。
【0152】
測定値から、23℃の貯蔵弾性率(E’)を読み取った結果、表面コート層の貯蔵弾性率(E’)は92MPaであった。
【0153】
(ワーク加工用テープの製造)
以下のいずれかの方法により、実施例1~10および比較例1~5のワーク加工用テープを製造した。
【0154】
(第1の製造方法)
図2(a)に示すように、第1剥離フィルム21(リンテック社製、商品名「SP-PET381031」、シリコーン剥離処理を行ったポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、厚さ:38μm)の剥離処理がされた面上に、表面コート層用組成物を塗布、乾燥し、未硬化のコート層を形成した。
【0155】
次いで、
図2(b)のように、コート層付き剥離フィルムのコート層1上に、前記粘着剤層用組成物を塗工し、未硬化の粘着剤層3を形成した。
【0156】
次いで、
図2(c)のように、エネルギー線(照度130mW/cm
2、光量50mJ/cm
2の紫外線)照射を行い、表面コート層用組成物および粘着剤層用組成物に含まれるエネルギー線硬化性成分を半硬化した。
【0157】
次いで、
図2(d)のように、半硬化した粘着剤層3上の第2剥離フィルム22(リンテック社製、商品名「SP-PET381031」)を積層した。
【0158】
さらに
図2(e)のように、エネルギー線(照度350mW/cm
2、光量700mJ/cm
2の紫外線)照射を行い、コート層1および粘着剤層3に含まれるエネルギー線硬化性成分をすべて硬化し、コート層1から表面コート層2(厚さ2μm)を得て、未硬化の粘着剤層3を、硬化した粘着剤層4(厚さ123μm)とし、
図1に示す構成のワーク加工用テープ10を得た。
【0159】
(第2の製造方法)
図3(a)に示すように、第2剥離フィルム22(リンテック社製、商品名「SP-PET381031」)上に粘着剤層用組成物を塗工し、未硬化の粘着剤層3を形成した。
【0160】
次いで、
図3(b)のように、エネルギー線(照度130mW/cm
2、光量50mJ/cm
2の紫外線)照射を行い、粘着剤層用組成物に含まれるエネルギー線硬化性成分を半硬化した。
【0161】
また、上記とは別に、第1剥離フィルム21(リンテック社製、商品名「SP-PET381031」)上にコート層1を設けてコート層付き第1剥離フィルムを作成した。
【0162】
次いで、
図3(c)のように、半硬化した粘着剤層3上にコート層付き第1剥離フィルムのコート層1を積層した。
【0163】
次いで、
図3(d)のように、エネルギー線(照度350mW/cm
2、光量700mJ/cm
2の紫外線)照射を行い、表面コート層用組成物および粘着剤層用組成物に含まれるエネルギー線硬化性成分を硬化した。
【0164】
上記で得られた各ワーク加工用テープの粘着力およびひずみを測定し、シリコンウエハ裏面研削後のテープの剥離適性を評価した。結果を下表に示す。
なお、比較例4のワーク加工用テープは、シリコンウエハ裏面研削後のテープの剥離適性評価における、シリコンウエハ貼付段階でワーク加工用テープに剥がれが発生し、ウエハ表面(すなわちワーク表面)を十分に保護できなかった。そのため、ウエハ研削工程以降は評価を行わなかった。
【0165】
表3に示すように、本発明のワーク加工用テープは剥離適性に優れ、ワークの加工後にワーク加工用テープが剥離された、加工されたワークを製造することができる。具体的にはウエハの裏面研削に適用できる。