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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141899
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】暖房床の運転方法
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/00 20220101AFI20241003BHJP
   F24D 3/16 20060101ALI20241003BHJP
   F24D 19/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F24D3/00 S
F24D3/16 A
F24D19/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053769
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000167794
【氏名又は名称】広島ガス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000413
【氏名又は名称】永大産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英男
(72)【発明者】
【氏名】水馬 義輝
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】山林 芳昭
(72)【発明者】
【氏名】柴田 一範
(72)【発明者】
【氏名】久家 毅
【テーマコード(参考)】
3L070
3L073
【Fターム(参考)】
3L070AA02
3L070DE09
3L070DG02
3L070DG04
3L073AB02
3L073AC10
(57)【要約】
【課題】床暖房マットを備えた暖房床の暖房コストを低減することができる暖房床の運転方法を提供する。
【解決手段】床暖房マット1は、厚み方向に貫通する溝4を有している。溝4内に伝熱部材6及び温水パイプ3が配置されている。小根太7を覆うように伝熱シート8が設けられている。基板2の上面及び下面に均熱シート5a,5bが設けられている。伝熱部材6及び伝熱シート8が熱橋となっている。この床暖房マット1と、蓄熱剤含浸下地板12及び床仕上げ材14等を用いて暖房床が構成される。温水パイプ3に温水を連続的に通湯した後、間欠的に通湯停止する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱部材の上側に温水パイプを有した床暖房マットが敷設され、最上側に床仕上げ材が敷設された暖房床の該温水パイプに温水を通湯する暖房床の運転方法において、
該床暖房マットが
温水パイプ収容用の溝が設けられた基板と、
該基板の上面に設けられた第1の均熱シートと、
該基板の下面に設けられた第2の均熱シートと、
該第1の均熱シートと第2の均熱シートとの間に設けられた熱橋と
を有する暖房床の運転方法であって、
該床暖房マットに1~3時間連続的に通湯し、20~60分通湯停止する間欠通湯を行うことを特徴とする暖房床の運転方法。
【請求項2】
前記床暖房マットは小根太を有しており、
前記熱橋は該小根太に設けられた伝熱シートであり、
前記伝熱シートは、前記小根太の上面から下面まで連続して延在している請求項1の暖房床の運転方法。
【請求項3】
前記伝熱シートは、前記小根太の上面、下面及び長手方向の側面を覆っている請求項2の暖房床の運転方法。
【請求項4】
前記溝は前記基板を厚み方向に貫通しており、前記熱橋として、さらに、該溝に配置され、前記温水パイプに接する伝熱部材を有する請求項2の暖房床の運転方法。
【請求項5】
前記蓄熱部材の蓄熱容量が350~500kJ/mであり、温水パイプが架橋ポリエチレン製であり、温水パイプの内径が3.0~7.0mmであり、床暖房マット1m当りに敷設される温水パイプ長さが10~55mであり、
温水パイプに供給される温水の温度が50~60℃であり、
通湯速度が0.3~1.0L/minであり、
連続的通湯時間が1~3時間であり、通湯停止時間が20~60分である
請求項1~4のいずれかの暖房床の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水によって建物の床の暖房を行うため暖房床の運転方法に係り、特に蓄熱部材と該床暖房マットとを有する暖房床の運転方法に関する。
【0002】
なお、以下の説明において、床暖房マットの上面とは、該床暖房マットを床上に敷設したときの上面をいい、床暖房マットの下面とは、該床暖房マットを床上に敷設したときの下面をいう。上下方向とは、該上面と下面とを結ぶ方向をいう。
【背景技術】
【0003】
温水を利用した暖房床として、板状のベースの上面の溝に温水パイプを引き回した床暖房マットが広く用いられている。特許文献3,4には、床暖房マットへの温水の通湯を断続させることにより、床温度を制御することが記載されている。
【0004】
床暖房マットを用いた暖房床に蓄熱部材を設けることが知られている。
【0005】
特許文献1には、床下地の上に蓄熱マット、木質板材、及び温水パイプを有する床暖房パネルをこの順に積層配置した床暖房構造が記載されている。この床暖房構造では、蓄熱マットが最下層に配置されているため、蓄熱マットに蓄えられた熱が床上面に伝わりにくい。また、日射のエネルギーを蓄熱マットで蓄える効果がほとんど得られない。
【0006】
特許文献2では、床暖房マットとしての発熱マットの上に蓄熱部材としての蓄熱ユニットを重ね、その上にフローリング(床仕上げ材)を配置した暖房床が記載されている。この暖房床では、蓄熱部材が蓄熱するまでは発熱マットの熱が床面に伝わらないので、床暖房の始動性が悪い。即ち、温水パイプに温水を通水開始しても、床面(フローリング面)が十分に昇温するまでに長時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-180004号公報
【特許文献2】特開2016-142432号公報
【特許文献3】特開平7-19502号公報
【特許文献4】特開2001-41473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、床暖房マットを備えた暖房床の暖房コストを低減することができる暖房床の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の暖房床の運転方法は、蓄熱部材の上側に温水パイプを有した床暖房マットが敷設され、最上側に床仕上げ材が敷設された暖房床の該温水パイプに温水を通湯する暖房床の運転方法において、該床暖房マットが温水パイプ収容用の溝が設けられた基板と、該基板の上面に設けられた第1の均熱シートと、該基板の下面に設けられた第2の均熱シートと、該第1の均熱シートと第2の均熱シートとの間に設けられた熱橋とを有する暖房床の運転方法であって、該床暖房マットに1~3時間連続的に通湯し、20~60分通湯停止する間欠通湯を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様では、前記床暖房マットは小根太を有しており、前記熱橋は該小根太に設けられた伝熱シートであり、伝熱シートは、前記小根太の上面から下面まで連続して延在している。
【0011】
本発明の一態様では、伝熱シートは、小根太の上面、下面及び長手方向の側面を覆っている。
【0012】
本発明の一態様では、前記溝は前記基板を厚み方向に貫通しており、前記熱橋として、さらに、該溝に配置され、前記温水パイプに接する伝熱部材を有する。
【0013】
本発明の一態様では、前記蓄熱部材の蓄熱容量が350~500kJ/mであり、温水パイプの直径が3.0~7.0mmであり、床暖房マット1m当りに敷設される温水パイプ長さが10~55mであり、温水パイプに供給される温水の温度が30~60℃であり、通湯速度が0.3~1.0L/minであり、連続的通湯時間が1~3時間であり、通湯停止時間が20~60分である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の暖房床の運転方法に用いられる床暖房マットでは、上面と下面に均熱シートが設けられ、上下の該均熱シートを熱的に接続するための熱橋が設けられているので、上下の該均熱シート間の熱伝導性に優れる。
【0015】
本発明の暖房床の運転方法が適用される暖房床の一態様では、かかる床暖房マットの下側に蓄熱部材が設けられ、上側に床仕上げ材が設けられている。したがって、温水パイプからの熱が蓄熱部材に効率よく蓄熱される。また、蓄熱部材の熱が床暖房マットの熱橋を介して床仕上げ材に伝わり易く、暖房効率が高い。また、床に照射された太陽光により床仕上げ材が昇温したときには、床仕上げ材の熱が床暖房マットの熱橋を介して蓄熱部材に効率よく伝わり、蓄熱される。
【0016】
本発明の暖房床の運転方法では、床暖房マットが連続通湯により十分に昇温した後に所定期間通湯停止を行うことにより、暖房コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係る床暖房マットの平面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4図1のIV-IV線断面図である。
図5図1のV-V線断面図である。
図6】U字アルミ及び温水パイプの断面図である。
図7】小根太の断面図である。
図8】小根太の断面図である。
図9】実施の形態に係る暖房床の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、図1は、床暖房マットの上面に均熱シートを設けない状態の床暖房マットの平面図である。図2~5は、床暖房マットの上面に均熱シートを設けた状態での断面を示している。図2~8では、アルミシートの厚さを実際よりも大きく図示している。
【0019】
[床暖房マット]
この実施の形態の床暖房マット1は、基板(ベース)2と、基板2に設けられた溝4内に配置された温水パイプ3と、基板2の上面と下面を覆うように配置され、基板2の上面及び下面に付着されたアルミシート等よりなる均熱シート5a,5b等を備える。
【0020】
溝4のうち、直線状となっている部分には、図6に明示の通り、アルミ箔よりなるU字アルミと称される伝熱部材6が配設されており、伝熱部材6を介して温水パイプ3が溝4内に配置される。なお、曲線状となっている溝4にも伝熱部材(U字アルミ)を設けてもよい。
【0021】
伝熱部材6は、U字部6uと、U字部6uの上端から離反方向に張り出すフランジ部6fとを有している。フランジ部6fが基板2の上面に重なっており、均熱シート5aに接している。
【0022】
この床暖房マット1の基板2は、発泡合成樹脂(例えば発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、硬質ウレタン、軟質ウレタン、発泡ポリプロピレン)製のボードと小根太7を備えている。小根太7は、合板等よりなる板状部材である。基板2の厚さは、好ましくは、5.5mm以上、特に9mm以上とりわけ12mm以上であり、また24mm以下、特に18mm以下、とりわけ15mm以下である。
【0023】
溝4は、基板2を厚み方向に貫いている。
【0024】
温水パイプ3は、架橋ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデンなどよりなることが好ましい。
【0025】
温水パイプ3の外周面のうち上端部は、上面側の均熱シート5aに接している。溝4のうち伝熱部材6を設けた部分では、温水パイプ3の略下半分が伝熱部材6のU字部6uに接している。U字部6uの下端部は、下面側の均熱シート5bに接している。伝熱部材6のフランジ部6fに上面側均熱シート5aが重なって接している。
【0026】
溝4のうち伝熱部材6を配置していない部分では、温水パイプ3の外周面の下端部が下側の均熱シート5bに接している。
【0027】
小根太7は、前述のとおり、合板等よりなる板状部材である。小根太7の幅は22.5~75mm特に40~60mm程度が好ましい。この実施の形態では、図7の通り、小根太7の長手方向の側面と、小根太7の上面及び下面のうち該側面近傍部分とを覆うようにアルミシート(金属アルミニウム箔)等よりなる伝熱シート8が設けられている。
【0028】
なお、図7では小根太7の幅方向中央付近では伝熱シート8が設けられていないが、図8のように、小根太7の両側面と上面及び下面の全面とを伝熱シート8’で覆ってもよい。
【0029】
このように、この床暖房マット1にあっては、小根太7に設けられた伝熱シート8又は8’は、各均熱シート5a,5bに接している。また、伝熱部材6のフランジ部6fに上面側均熱シート5aが重なって接しており、伝熱部材6の下端部が下面側の均熱シート5bに接している。
【0030】
この床暖房マット1にあっては、上面側及び下面側の均熱シート5a,5bが伝熱部材6及び伝熱シート8又は8’に接しており、伝熱部材6及び伝熱シート8又は8’が均熱シート5a,5b間の熱橋を構成している。そのため、均熱シート5aの熱が均熱シート5bに効率よく伝わり、均熱シート5bの熱が均熱シート5aに効率よく伝わる。
【0031】
従って、後述のように、この床暖房マット1を用いた暖房床にあっては、蓄熱板の熱が床仕上げ材に効率よく伝わる。また、太陽熱などによって床仕上げ材が昇温したときには、床仕上げ材の熱が蓄熱板に効率よく伝わる。
【0032】
なお、均熱シート5a,5bの厚さは30~1000μm特に40~100μm程度が好ましく、伝熱シート8,8’の厚さは30~100μm特に40~60μm程度が好ましい。小根太7は基板2と同一厚さとされ、基板2の厚さは前述の通り5.5~15mmである。このように、小根太7の厚さに比べて伝熱シート8の厚さが著しく小さい。そのため、図3では小根太7の上面及び下面に重なる均熱シート5a,5bが伝熱シート8の厚さ分だけ段差を有しているように図示されているが、実際には段差は殆ど存在しない。
【0033】
また、伝熱部材6の厚さも、好ましくは30~200μm特に70~100μm程度であり、温水パイプ3の直径に比べて極めて小さい。そのため、図2,3,5では、下面側の均熱シート5bが、伝熱部材6と接する部分において下方に凸曲するように図示されているが、実際には均熱シート5bは平坦状となっている。
【0034】
[暖房床]
図9は、この床暖房マット1を用いた床暖房マットの一例を示す上下方向の断面図である。
【0035】
図9の通り、建物の床スラブ(図示略)上に根太10及び断熱材11,11’が配置され、その上に厚さa=10~15mm程度の下地板12が敷設されている。この実施の形態では、下地板12は蓄熱部材を兼ねており、該下地板12には蓄熱剤組成物が含浸されている。この下地板12上に床暖房マット1が設置されている。この床暖房マット1の上側に厚さc=6~15mm程度の床仕上げ材(フローリング)14が敷設されている。
【0036】
下地板12としては、潜熱蓄熱材組成物を多孔質基材に含浸させたもの等を用いることができる。潜熱蓄熱材組成物は、相変態温度(融点)を有している。相変態温度よりも低温では固体状となり、相変態温度よりも高温では粘稠流体となる。
【0037】
蓄熱材組成物としては、無機潜熱蓄熱材組成物、有機潜熱蓄熱材組成物等が挙げられる。
【0038】
無機潜熱蓄熱材組成物としては、例えば、硫酸ナトリウム10水和物、炭酸ナトリウム10水和物、リン酸水素ナトリウム12水和物、チオ硫酸ナトリウム5水和物、塩化カルシウム6水和物等の水和塩等が挙げられる。
【0039】
有機潜熱蓄熱材組成物としては、例えば、脂肪族炭化水素、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル、ポリエーテル化合物、脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
【0040】
多孔質基材は、蓄熱材組成物を含浸させることができる連続気孔を有するものであればよく、例えば、木質ボード、無機多孔質板、樹脂発泡体、不織布、織布、紙等を用いることができる。
【0041】
木質ボードは、木質チップや繊維材料等のリグノセルロース系材料と、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、尿素メラミン共縮合樹脂、イソシアネート系樹脂等の熱硬化型接着剤との混合物を加熱加圧成形し、リグノセルロース系材料を熱硬化型接着剤で結着することにより製造されたものである。
【0042】
また、無機多孔質板の材質としては、珪藻土、珪藻頁岩、珪酸カルシウム、ゼオライト、竹炭、木炭などが挙げられる。また、発泡ガラスも用いることができる。
【0043】
樹脂発泡体としては、蓄熱材組成物の含浸温度及び硬化温度より高い耐熱性を有するものであればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂の1種又は2種より得られる樹脂発泡体が挙げられる。
【0044】
不織布、織布としては、ガラス繊維、セラミック繊維、ロックウール等の無機繊維や、ポリエステル繊維等の有機繊維よりなる不織布、織布を用いることができる。
【0045】
多孔質基材は、蓄熱材組成物の含浸性、含浸量の観点からは、空隙率(気孔率)が高いことが好ましく、一方で、強度、軽量化の観点からは空隙率が低いことが好ましい。本発明で用いる多孔質基材の空隙率は、10~98%であることが好ましく、30~90%であることがより好ましい。
【0046】
ここで、「空隙率」とは「1-(多孔質基材の嵩比重/多孔質基材の構成材料の比重)」により求められる値である。
【0047】
この暖房床にあっては、前述の通り、床暖房マット1が熱橋を有した構造となっているので、蓄熱剤含浸下地板12の熱が床仕上げ材14に効率よく伝わる。また、床仕上げ材14が日照により昇温した場合、この熱が蓄熱剤含浸下地板12に効率よく伝わり、蓄熱される。
【0048】
本発明の一例にあっては、温水パイプが架橋ポリエチレン製であり、温水パイプの内径が3.0~7.0mmであり、床暖房マット1m当りに敷設される温水パイプ長さが10~55mであり、温水パイプ3に50~60℃程度の温水を通湯速度0.3~1.0L/minで連続的に通湯し、蓄熱剤組成物含浸下地板12に十分に蓄熱させた後、所定期間通湯を停止する。温水を連続的に通湯するとは、温水を休みなく暖房して通湯する形態と、連続通湯の間に短期間(例えば0~600秒)程度の通湯停止を挟んだ通湯形態とのいずれでもよいことを表わす。
【0049】
蓄熱部材(この実施の形態では、蓄熱剤組成物含浸下地板12)の蓄熱容量が200~600kJ/mである場合、連続通湯を60~180分、特に60~120分行った後、通湯停止を20~60分、特に20~30分行うのが好ましい。連続通湯の代わりに連続通湯の間に短時間の通湯停止を行う場合には、連続通湯の合計時間が上記連続通湯時間となるようにする。
【0050】
このように、間欠的に通湯停止を行うことにより、暖房床の運転コスト(温水を過熱するエネルギー消費量)を低減することができる。
【0051】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。
【0052】
例えば、本発明では、蓄熱剤組成物含浸下地板12の代わりに下地板を合板等で構成し、その上にボード状の蓄熱板を配置し、蓄熱板の上に床暖房マットを配置してもよい。この蓄熱板としては、上面に凹所を有した発泡合成樹脂(例えば発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、硬質ウレタン、軟質ウレタン、発泡ポリプロピレン)製のボードと、該凹所内に配置された蓄熱材料封入体とを備えたものが例示される。
【0053】
蓄熱材料封入体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン樹脂とナイロン樹脂の複層、オレフィン樹脂とアルミの複層等の合成樹脂製の袋内に流動性を有した蓄熱材料を封入したものである。蓄熱材料としては、水や、水に吸水性ポリマーを添加して流動性を低下させた液状物などが好適である。
【実施例0054】
[実施例1]
図1~8の床暖房マット1を備えた、図9に示す構成の下記仕様の暖房床を有する部屋を構築した。
<仕様>
部屋面積:8畳(窓なし)
天井高さ:2.4m
床の断熱材11:厚さ45mm(フェノール樹脂発泡体)
床の断熱材11’:厚さ12mm(ポリプロピレン硬質発泡体)
断熱性能Ua値=0.58
蓄熱剤組成物含浸下地板12:厚さa=12mm
蓄熱容量=400kJ/m
床暖房マット1:面積=7.3m(3.03×2.4m)
厚さb=5.5mm
温水配管:架橋ポリエチレン製(外径5.5mm、内径3.7mm)
温水配管総延長=100m
フローリング14:合板
厚さc=6mm
ボイラ:リンナイ製 RUFH-E2402A-6-(A)
リモコン:リンナイ製 FC-W09DR(-E)
【0055】
<運転条件>
外気温:7℃
リモコンレベル:4(9段階の低温側から4番目)
給湯温度:60℃
通湯速度:0.3~1.0L/min
【0056】
温水を60分通湯した後、20分停止し、以下、これを繰り返し、通湯延べ時間5時間にて運転した。
【0057】
ボイラの消費エネルギー量を表1に示す。また、通湯停止直前時の室温と通湯再開直前時の室温とを表2に示す。
【0058】
[実施例2~5]
通湯停止時間を20分、30分、60分、65分又は70分としたこと以外は実施例1と同一条件で運転を行った。
【0059】
実施例1,2におけるボイラの消費エネルギー量を表1に示す。また、実施例1~5における通湯停止直前時の室温と通湯再開直前時の室温とを表2に示す。
【0060】
[比較例1]
通湯停止を行わず、温水を連続通湯したこと以外は実施例1と同一条件で運転を行った。ボイラ消費エネルギー量を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1の通り、停止時間が20分以上になると、消費エネルギー量の削減が顕著となる。
【0063】
【表2】
【0064】
一般的に、快適な温度範囲は18~22℃で室温の温度差2℃未満(冬季)である。表2より、室温の温度差を2℃未満にして快適環境とするためには、停止時間は60分以内にすることが好ましことが認められた。
【符号の説明】
【0065】
1 床暖房マット
2 基板
3 温水パイプ
4 溝
5a,5b 均熱シート
6 伝熱部材
7 小根太
8,8’ 伝熱シート
10 根太
11,11’ 断熱材
12 蓄熱剤含浸下地板
14 床仕上げ材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9