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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141904
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20241003BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053775
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】大久保 等
(72)【発明者】
【氏名】江田 北斗
(72)【発明者】
【氏名】荒田 正純
(72)【発明者】
【氏名】浅井 深雪
(72)【発明者】
【氏名】細川 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】松浦 祐士
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB10
5E070BA12
5E070BB03
5E070CB03
5E070CB13
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】クラックの抑制が図られたコイル部品を提供する。
【解決手段】 コイル部品1においては、素体10の内芯部分S1、外芯部分S2および外装部分S3がいずれも材料組成が同じである磁性体12で構成されているため、互いの界面において内部応力が生じにくく、界面において内部応力に起因するクラックが生じにくくなっている。素体10の内芯部分S1では透磁率が相対的に高い最大磁性粉の充填率が高くなっているため、内芯部分S1の透磁率が有意に高められており、コイル部品1のコイル特性の向上が図られている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が異なる複数種類の磁性粉と樹脂とを含む材料で構成された素体と、
前記素体内に設けられたコイルと
を備え、
前記コイルで囲まれた内芯部分における前記素体では、前記素体に含まれる磁性粉のうちの最大の平均粒径を有する最大磁性粉の充填率が、最大ではない平均粒径を有する磁性粉の充填率より高い、コイル部品。
【請求項2】
前記コイルの軸線の方向に関して前記コイルを挟む部分における前記素体では、前記素体に含まれる磁性粉のうちの最小の平均粒径を有する最小磁性粉の充填率が、最小ではない平均粒径を有する磁性粉の充填率より高い、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記最大磁性粉の透磁率が前記最小磁性粉の透磁率より高い、請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記最大磁性粉が金属合金で構成されている、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記コイルの軸線の方向に関して前記コイルと同層に位置するとともに、前記コイルの軸線の方向から見て前記コイルを囲む外芯部分における前記素体では、前記素体に含まれる磁性粉のうちの最大の平均粒径を有する最大磁性粉の充填率が、最大ではない平均粒径を有する磁性粉の充填率より高い、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記コイルが、基板と、該基板の一方の主面に平面渦巻状に設けられた第1巻回部と、前記基板の他方の主面に平面渦巻状に設けられた第2巻回部と、前記基板を貫通するとともに前記第1巻回部と前記第2巻回部の端部同士を接続する貫通部とを有する、請求項1に記載のコイル部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、素体内に設けられたコイルの内芯部分の透磁率を高めてコイル特性を上げるために、素体材料とは異なる板部材を内芯部分の配置させたコイル部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-195245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術に係るコイル部品では、板部材の構成材料と素体材料とでは材料特性に大きな隔たりがある。たとえば板部材の構成材料の熱膨張率と素体材料の熱膨張率とは大きく異なり、それにより板部材の周辺に内部応力が生じて、内部応力に起因するクラックが素体内に生じることが考えられる。
【0005】
本発明の一側面は、クラックの抑制が図られたコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るコイル部品は、平均粒径が異なる複数種類の磁性粉と樹脂とを含む材料で構成された素体と、素体内に設けられたコイルとを備え、コイルで囲まれた内芯部分における素体では、素体に含まれる磁性粉のうちの最大の平均粒径を有する最大磁性粉の充填率が、最大ではない平均粒径を有する磁性粉の充填率より高い。
【0007】
上記コイル部品においては、素体におけるコイルの内芯部分とそれ以外の部分との界面において材料特性に大きな隔たりは生じず、内部応力に起因するクラックの抑制が図られている。
【0008】
他の側面に係るコイル部品では、コイルの軸線の方向に関してコイルを挟む部分における素体では、素体に含まれる磁性粉のうちの最小の平均粒径を有する最小磁性粉の充填率が、最小ではない平均粒径を有する磁性粉の充填率より高い。
【0009】
他の側面に係るコイル部品では、最大磁性粉の透磁率が最小磁性粉の透磁率より高い。
【0010】
他の側面に係るコイル部品では、最大磁性粉が金属合金で構成されている。
【0011】
他の側面に係るコイル部品では、コイルの軸線の方向に関してコイルと同層に位置するとともに、コイルの軸線の方向から見てコイルを囲む外芯部分における素体では、素体に含まれる磁性粉のうちの最大の平均粒径を有する最大磁性粉の充填率が、最大ではない平均粒径を有する磁性粉の充填率より高い。
【0012】
他の側面に係るコイル部品では、コイルが、基板と、該基板の一方の主面に平面渦巻状に設けられた第1巻回部と、基板の他方の主面に平面渦巻状に設けられた第2巻回部と、基板を貫通するとともに第1巻回部と第2巻回部の端部同士を接続する貫通部とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の種々の側面によれば、クラックの抑制が図られたコイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係るコイル部品を示す概略斜視図である。
図2図1に示したコイル部品の分解斜視図である。
図3】基板とコイル導体の構成を示した分解斜視図である。
図4図1に示したコイル部品のIV-IV線断面図である。
図5図1に示したコイル部品のV-V線断面図である。
図6】素体内における磁性粉の分布を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための形態を説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0016】
一実施形態に係るコイル部品1について、図1~5を参照しつつ説明する。コイル部品1は、図1、2に示すように、素体10と、素体10の表面に設けられた一対の外部端子電極20A、20Bと、一対の外部端子電極20A、20Bを外側から覆う一対の絶縁層50A、50Bとを備えて構成されている。
【0017】
素体10は、略直方体形状の外形を有し、対面する一対の主面10a、10bと、各主面10a、10bに対して交差する方向に延びて主面10a、10b同士をつなぐ二対の側面10c~10fを有する。二対の側面10c~10fは、対面する一対の端面10c、10dと、対面する一対の側面10e、10fを含む。本実施形態において、一対の主面10a、10bの対面方向が素体10の高さ方向、一対の端面10c、10dの対面方向が素体10の長辺方向、一対の側面10e、10fの対面方向が素体10の短辺方向となっている。本実施形態においては、主面10bが、コイル部品1が実装される基材と面する実装面となっている。コイル部品1は、一例として、長辺2.0mm、短辺1.25mm、高さ1.0mmの寸法で設計される。
【0018】
本実施形態では、コイル部品1の向きや極性を判別するためのマーク60が、主面10a上の端面10c側に偏倚した位置に設けられている。素体10の一対の主面10a、10bは、絶縁層で全体的に覆って表面の絶縁性を高めることができる。
【0019】
素体10は、磁性体12の内部に、図3に示した基板30とコイル導体40とを含むコイルCが設けられた構成を有する。
【0020】
基板30は、素体10の内部に配置されており、素体10の一対の端面10c、10dの間にわたって延在しており、各端面10c、10dから露出する端部30a、30bを有する。基板30は、素体10の主面10a、10bに対して平行に延在する平板状の形状を有し、主面10a側に位置する上面30cおよび主面10b側に位置する下面30dを有する。基板30は、その厚さ方向から見て略楕円環状の形状を有している。基板30の中央部分には、楕円形の貫通孔32が設けられている。
【0021】
基板30は、非磁性の絶縁材料で構成されている。基板30としては、ガラスクロスにエポキシ系樹脂が含浸された基板で、板厚10μm~60μmのものを用いることができる。なお、エポキシ系樹脂のほか、BTレジン、ポリイミド、アラミド等を用いることもできる。基板30の材料としては、セラミックやガラスを用いることもできる。基板30の材料としては、大量生産されているプリント基板材料が好ましく、特にBTプリント基板、FR4プリント基板、あるいはFR5プリント基板に用いられる樹脂材料が最も好ましい。
【0022】
コイル導体40は、基板30の上面30cに設けられた平面空芯コイル用の第1導体パターン43Aが絶縁被覆された第1コイル部42Aと、基板30の下面3dに設けられた平面空芯コイル用の第2導体パターン43Bが絶縁被覆された第2コイル部42Bと、第1導体パターン43Aと第2導体パターン43Bとを接続するスルーホール導体48とを有する。
【0023】
第1導体パターン43Aは、平面空芯コイルとなる平面渦巻状パターンであり、Cuなどの導体材料でめっき形成されている。第1導体パターン43Aは、基板30の貫通孔32周りに巻回するように形成されている。第1導体パターン43Aは、より詳しくは、図3に示すように、上方向から見て外側に向かって右回りに3ターン分だけ巻回されている。
【0024】
第1導体パターン43Aの外側の端部40aは、素体10の端面10cにおいて露出し、端面10cを覆う外部端子電極20Aと接続されている。第1導体パターン43Aの内側の端部40cは、スルーホール導体48に接続されている。
【0025】
第2導体パターン43Bも、第1導体パターン43A同様、平面空芯コイルとなる平面渦巻状パターンであり、Cuなどの導体材料でめっき形成されている。第2導体パターン43Bも、基板30の貫通孔32周りに巻回するように形成されている。第2導体パターン43Bは、より詳しくは、上方向から見て外側に向かって左回りに3ターン分だけ巻回されている。すなわち、第2導体パターン43Bは、上方向から見て、第1導体パターン43Aとは反対の方向に巻回されている。
【0026】
第2導体パターン43Bの外側の端部40bは、素体10の端面10dにおいて露出し、端面10dを覆う外部端子電極20Bと接続されている。第2導体パターン43Bの内側の端部40dは、第1導体パターン43Aの内側の端部40cと、基板30の厚さ方向において位置合わせされており、スルーホール導体48に接続されている。
【0027】
スルーホール導体48は、基板30の貫通孔32の縁領域に貫設されており、第1導体パターン43Aの端部40cと第2導体パターン43Bの端部40dとを接続する。スルーホール導体48は、基板30に設けられた孔と、その孔に充填された導電材料(たとえばCu等の金属材料)とで構成され得る。スルーホール導体48は、たとえば基板30の厚さ方向に延びる柱状(円柱状や角柱状等)の外形を有する。
【0028】
図4に示すように、第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bはそれぞれ樹脂壁44A、44Bを有する。第1コイル部42Aの樹脂壁44Aは、第1導体パターン43Aの線間、内周および外周に位置している。同様に、第2コイル部42Bの樹脂壁44Bは、第2導体パターン43Bの線間、内周および外周に位置している。本実施形態では、導体パターン43A、43Bの内周および外周に位置する樹脂壁44A、44Bは、導体パターン43A、43Bの線間に位置する樹脂壁44A、44Bよりも厚くなるように設計されている。
【0029】
樹脂壁44A、44Bは、絶縁性の樹脂材料で構成されている。樹脂壁44A、44Bは、第1導体パターン43Aや第2導体パターン43Bを形成する前に基板30上に設けることができ、この場合には樹脂壁44A、44Bにおいて画成された壁間において第1導体パターン43Aや第2導体パターン43Bがめっき成長される。樹脂壁44A、44Bは、第1導体パターン43Aや第2導体パターン43Bを形成した後に基板30上に設けることができ、この場合には第1導体パターン43Aおよび第2導体パターン43Bに樹脂壁44A、44Bが充填や塗布等により設けられる。
【0030】
第1コイル部42Aおよび第2コイル部42Bには、第1導体パターン43Aおよび第2導体パターン43Bと樹脂壁44A、44Bとを上面側から一体的に覆う絶縁層45がそれぞれ設けられている。絶縁層45は、絶縁樹脂または絶縁磁性材料で構成され得る。
【0031】
磁性体12は、基板30およびコイルCを一体的に覆っている。磁性体12は、基板30およびコイルCを上下方向から覆うとともに、基板30およびコイルCの外周を覆っている。すなわち、コイルCの内芯部分S1、コイルCの外芯部分S2、コイルCを上下から挟む外装部分S3が、磁性体12で充たされている。コイルCの内芯部分S1は、コイルCの軸線Zの方向における第1導体パターン43Aの上端と第2導体パターン43Bの下端との間におけるコイルCで囲まれた部分である。コイルCの内芯部分S1に位置する磁性体12は、基板30の貫通孔32の内部およびコイル導体40の内側領域を充たしている。コイルCの外芯部分S2は、上下方向に関してコイルCの基板30および導体パターン43A、43Bと同層に位置するとともに、上下方向から見てコイルCを外周から囲む部分である。外装部分S3は、コイルC、内芯部分S1および外芯部分S2の上側および下側に位置しており、本実施形態においては素体10の主面10a、10bを構成している。本実施形態においては、磁性体12は、素体10の全ての表面、すなわち、主面10a、10b、端面10c、10d、側面10e、10fを構成している。
【0032】
磁性体12は、金属磁性粉含有樹脂で構成されている。金属磁性粉含有樹脂は、金属磁性粉がバインダ樹脂により結着された結着粉体である。磁性体12を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉は、平均粒径が異なる複数種類の磁性粉を含んでいる。本実施形態では、磁性体12を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉は、平均粒径が異なる3種類の磁性粉を含んでいる。3種類の磁性粉のうち、最大の平均粒径を有する磁性粉(最大磁性粉)は、一例として15~35μmの平均粒径を有し、一例としてFeアモルファス合金で構成されている。3種類の磁性粉のうち、最小の平均粒径を有する磁性粉(最小磁性粉)は、一例として0.3~1.5μmの平均粒径を有し、一例としてカルボニル鉄で構成されている。3種類の磁性粉のうち、最大と最小の間の平均粒径を有する磁性粉は、一例として1.5~10μmの平均粒径を有し、一例としてFeアモルファス合金で構成されている。磁性体12の最大磁性粉の透磁率は、最小磁性粉の透磁率より高い。
【0033】
磁性体12を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉は、Feを含む磁性粉(たとえば鉄ニッケル合金(パーマロイ合金)、カルボニル鉄、アモルファス、非晶質または結晶質のFeSiCr系合金、センダスト等)等を含んで構成することができる。バインダ樹脂は、たとえば熱硬化性のエポキシ樹脂である。本実施形態では、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントでは80~92vol%であり、質量パーセントでは95~99wt%である。磁気特性の観点から、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントで85~92vol%、質量パーセントで97~99wt%であってもよい。
【0034】
本実施形態では、磁性体12を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉は、図6に示すように分布されている。図6では、磁性体12を構成する金属磁性粉含有樹脂の金属磁性粉のうち、最大磁性粉13と最小磁性粉14のみ示しており、最大磁性粉13の平均粒径と最小磁性粉14の平均粒径の間の平均粒径を有する磁性粉は説明の便宜上省略している。
【0035】
図6に示すように、素体10の内芯部分S1では、磁性体12の最大磁性粉13の割合(充填率、より詳しくは磁性体12を構成する磁性粉に対する充填率)が高くなっている。より詳しくは、素体10の内芯部分S1では、磁性体12の最大磁性粉13の割合が、最小磁性粉14の割合よりも高くなっており、図示しない最大と最小の間の平均粒径を有する磁性粉の割合よりも高くなっている。素体10の外芯部分S2でも、素体10の内芯部分S1同様、磁性体12の最大磁性粉13の割合(充填率)が高くなっている。逆に、素体10の外装部分S3では、磁性体12の最小磁性粉14の割合(充填率)が高くなっている。より詳しくは、素体10の外装部分S3では、磁性体12の最小磁性粉14の割合が、最大磁性粉13の割合よりも高くなっており、図示しない最大磁性粉13の平均粒径と最小磁性粉14の平均粒径の間の平均粒径を有する磁性粉の割合よりも高くなっている。
【0036】
図6に示した磁性粉の分布は、たとえば複数回に分けて素体材料を構成することで実現することができる。たとえば、最大磁性粉13の割合が高い金属磁性粉含有樹脂のペースト(磁性体ペースト)をコイルCに付与して内芯部分S1および外芯部分S2を形成した後、最小磁性粉14の割合が高い磁性体ペーストをコイルCに付与して外装部分S3を形成することで、図6に示した磁性粉の分布を実現することができる。
【0037】
一対の外部端子電極20A、20Bのうち、第1の外部端子電極20Aは、素体10の端面10c側に設けられている。第1の外部端子電極20Aは、端面10cの一部または全部を覆う部分20aと端面10c側の主面10bの一部を覆う部分20bとを含み、端面10cと主面10bとを連続的に覆うL字状を有する。
【0038】
一対の外部端子電極20A、20Bのうち、第2の外部端子電極20Bは、素体10の端面10d側に設けられている。第2の外部端子電極20Bは、第1の外部端子電極20A同様、端面10dの一部または全部を覆う部分20aと端面10d側の主面10bの一部を覆う部分20bとを含み、端面10dと主面10bとを連続的に覆うL字状を有する。本実施形態においては、一対の外部端子電極20A、20Bのそれぞれの端面10c、10dを覆う部分20aは、端面10c、10dの上端に達する高さ位置まで延びているが、端面10c、10dの上端に達する高さ位置まで延びていない態様であってもよい。
【0039】
一対の外部端子電極20A、20Bはいずれも複数層構造を有し、本実施形態においては第1電極層21と第2電極層22とで構成された2層構造を有する。各外部端子電極20A、20Bは、3層以上の複数層構造を有していてもよい。
【0040】
各第1電極層21は、素体10の表面上に位置しており、主面10bおよび端面10c、10dを直接覆っている。各第1電極層21は、たとえば樹脂電極材料で構成することができる。本実施形態では、各第1電極層21はAg粉を含む樹脂電極材料で構成されたAg樹脂電極である。外部端子電極20Aの第1電極層21は、端面10cに露出した第1導体パターン43Aの外側の端部40aと接して電気的に接続されている。外部端子電極20Bの第1電極層21は、端面10dに露出した第2導体パターン43Bの外側の端部40bと接して電気的に接続されている。
【0041】
各第2電極層22は、第1電極層21上にそれぞれ位置しており、第1電極層21を全体的に覆っている。各第2電極層22は、たとえば金属めっきで構成することができる。本実施形態では、各第2電極層22はNiで構成されたNiめっき電極である。第2電極層22の抵抗率は、第1電極層21の抵抗率より低くなるように設計されている。
【0042】
一対の絶縁層50A、50Bは、端面10cを覆う部分20aの外部端子電極20A、20Bをそれぞれ覆っている。本実施形態では、各絶縁層50A、50Bは、外部端子電極20A、20Bの第2電極層22を直接覆っている。各絶縁層50A、50Bは樹脂等の絶縁材料で構成されている。
【0043】
一対の外部端子電極20A、20Bは、端面10c、10dを覆う部分20aが絶縁層50A、50Bで覆われていることで、電気的短絡を避けつつコイル部品1を高密度に実装することができ、かつ、主面10bを覆う部分20bが絶縁層50A、50Bに覆われておらず絶縁層50A、50Bから露出していることで、外部端子電極20A、20Bの主面10bを覆う部分20bを用いて表面実装をおこなうことができる。本実施形態では、主面10bを覆う部分20bの外部端子電極20A、20Bには、図4に示すように電極層60A、60Bがそれぞれ設けられている。各電極層60A、60Bは、実装性をより高めるために用いることができ、たとえばめっき電極(一例としてSnめっき電極)で構成することができる。電極層60A、60Bは、外部端子電極20A、20Bを絶縁層50A、50Bで覆った後に設けることで、絶縁層50A、50Bに覆われていない外部端子電極20A、20Bの部分20b全体に電極層60A、60Bを設けることができる。
【0044】
上記コイル部品1においては、素体10の内芯部分S1、外芯部分S2および外装部分S3がいずれも材料組成が同じである磁性体12で構成されている。そのため、内芯部分S1、外芯部分S2および外装部分S3は、材料特性に大きな隔たりがなく、たとえば熱膨張率は大きくは異ならない。そのため、内芯部分S1、外芯部分S2および外装部分S3の互いの界面において内部応力が生じにくく、界面において内部応力に起因するクラックが生じにくくなっている。そして、素体10の内芯部分S1では透磁率が相対的に高い最大磁性粉の充填率が高くなっているため、内芯部分S1の透磁率が有意に高められており、コイル部品1のコイル特性の向上が図られている。
【0045】
また、素体10の外芯部分S2でも、透磁率が相対的に高い最大磁性粉の充填率が高くなっているため、外芯部分S2の透磁率が有意に高められており、コイル部品1のコイル特性のさらなる向上が図られている。
【0046】
上述した電子部品は、上述した形態に限らず、様々な形態を採用することができる。たとえば、コイル導体を構成する導体パターンの平面形状は、楕円形に限らず、たとえば真円形状や多角形状であってもよい。
【0047】
上述の記載から把握されるとおり、本明細書は下記を開示している。
[付記1]
平均粒径が異なる複数種類の磁性粉と樹脂とを含む材料で構成された素体と、
前記素体内に設けられたコイルと
を備え、
前記コイルで囲まれた内芯部分における前記素体では、前記素体に含まれる磁性粉のうちの最大の平均粒径を有する最大磁性粉の充填率が、最大ではない平均粒径を有する磁性粉の充填率より高い、コイル部品。
[付記2]
前記コイルの軸線の方向に関して前記コイルを挟む部分における前記素体では、前記素体に含まれる磁性粉のうちの最小の平均粒径を有する最小磁性粉の充填率が、最小ではない平均粒径を有する磁性粉の充填率より高い、付記1に記載のコイル部品。
[付記3]
前記最大磁性粉の透磁率が前記最小磁性粉の透磁率より高い、付記2に記載のコイル部品。
[付記4]
前記最大磁性粉が金属合金で構成されている、付記1~3のいずれか一つに記載のコイル部品。
[付記5]
前記コイルの軸線の方向に関して前記コイルと同層に位置するとともに、前記コイルの軸線の方向から見て前記コイルを囲む外芯部分における前記素体では、前記素体に含まれる磁性粉のうちの最大の平均粒径を有する最大磁性粉の充填率が、最大ではない平均粒径を有する磁性粉の充填率より高い、付記1~4のいずれか一つに記載のコイル部品。
[付記6]
前記コイルが、基板と、該基板の一方の主面に平面渦巻状に設けられた第1巻回部と、前記基板の他方の主面に平面渦巻状に設けられた第2巻回部と、前記基板を貫通するとともに前記第1巻回部と前記第2巻回部の端部同士を接続する貫通部とを有する、付記1~5のいずれか一つに記載のコイル部品。
【符号の説明】
【0048】
1…コイル部品、10…素体、12…磁性体、13…最大磁性粉、14…最小磁性粉、30…基板、40…コイル導体、C…コイル、S1…内芯部分、S2…外芯部分、S3…外装部分。

図1
図2
図3
図4
図5
図6