(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141909
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】熱伝達抑制シート及びその製造方法、並びに組電池
(51)【国際特許分類】
F16L 59/02 20060101AFI20241003BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20241003BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20241003BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241003BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241003BHJP
【FI】
F16L59/02
H01M10/658
H01M10/651
H01M10/625
H01M10/613
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053782
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】井戸 貴彦
【テーマコード(参考)】
3H036
5H031
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB13
3H036AB18
3H036AB23
3H036AB25
3H036AC03
3H036AE07
5H031AA09
5H031KK02
(57)【要約】
【課題】断熱材と弾性体とを備える熱伝達抑制シートにおいて、電池セルの膨張時に、弾性体を変形させるための隙間を有するとともに、弾性体と断熱材との位置合わせを容易にすることができる熱伝達抑制シートを提供する。
【解決手段】熱伝達抑制シート10は、矩形の断熱材1と、断熱材1の厚さ方向に積層された弾性体2とを有する。断熱材1は、厚さ方向に平行な断熱材端面(第1端面1a、第2端面1b、第3端面1c及び第4端面1d)を有する。弾性体2は、1断熱材と略同一の形状及び大きさを有する仮想矩体に対して、少なくとも一部に切り欠きが設けられ、厚さ方向に平行な弾性体端面を有し、第1端面1a、第2端面1b、第3端面1c及び第4端面1dのそれぞれの断熱材端面において、少なくとも一部が、弾性体端面と略面一となるように配置され、両者が積層されている。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の断熱材と、前記断熱材の厚さ方向に積層された弾性体と、を有する熱伝達抑制シートにおいて、
前記断熱材は、厚さ方向に平行な断熱材端面を有し、
前記断熱材端面は、一対の対向する第1端面及び第2端面と、前記第1端面及び前記第2端面に略直交する方向に延びる、一対の対向する第3端面及び第4端面と、を有し、
前記弾性体は、前記断熱材と略同一の形状及び大きさを有する仮想矩体に対して、少なくとも一部に切り欠きが設けられ、厚さ方向に平行な弾性体端面を有し、
前記第1端面、第2端面、第3端面及び第4端面のそれぞれの断熱材端面において、少なくとも一部が、前記弾性体端面と略面一となるように配置されていることを特徴とする、熱伝達抑制シート。
【請求項2】
前記弾性体は、少なくとも一部が、前記断熱材の前記第1端面から前記第2端面に至る位置まで、前記第1端面及び前記第2端面に直交する方向に連続して延在しているとともに、
少なくとも一部が、前記断熱材の前記第3端面から前記第4端面に至る位置まで、前記第3端面及び前記第4端面に直交する方向に連続して延在していることを特徴とする、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項3】
前記仮想矩体における対向する二対の辺についてそれぞれ二等分線を作成し、2本の前記二等分線が交わる位置を仮想矩体中心とした場合に、少なくとも前記仮想矩体中心に前記弾性体が存在することを特徴とする、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項4】
前記仮想矩体における対向する二対の辺についてそれぞれ二等分線を作成し、2本の前記二等分線が交わる位置を仮想矩体中心とした場合に、前記仮想矩体中心に前記弾性体が存在しないことを特徴とする、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項5】
前記切り欠きは、前記仮想矩体の辺上における任意の位置から他の任意の位置まで、直線状又は曲線状に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項6】
前記仮想矩体における4つの角部が切断されるように、前記切り欠きが設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項7】
一対の前記断熱材の間に、前記弾性体が配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項8】
一対の前記弾性体の間に、前記断熱材が配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シートの製造方法であって、
前記弾性体の材料となる弾性体材料シートにおいて、前記断熱材と略同一の形状及び大きさを有する前記仮想矩体を想定し、前記仮想矩体から前記切り欠きを有する前記弾性体を切り出す弾性体成形工程と、
前記弾性体と前記断熱材とを積層する積層工程とを有し、
前記積層工程は、前記断熱材の前記第1端面、第2端面、第3端面及び第4端面のそれぞれの端面において、少なくとも一部が、前記弾性体端面と略面一に配置されるように積層する工程を有することを特徴とする、熱伝達抑制シートの製造方法。
【請求項10】
複数の電池セルと、請求項1~8のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シートを有し、前記複数の電池セルが直列又は並列に接続された、組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝達抑制シート及びその製造方法、並びに該熱伝達抑制シートを有する組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車等の開発が盛んに進められている。この電気自動車又はハイブリッド車等には、駆動用電動モータの電源となるための、複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。なお。電池セルには、鉛蓄電池やニッケル水素電池等に比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられている。
【0003】
組電池では、電池セルが積層され、隣接する電池セル間に熱伝達抑制シートが介在しているのが一般的である。このような組電池においては、電池の充放電時や繰り返しの使用によって電池セルが膨張することがある。そして、電池セルが膨張及び収縮を繰り返す度に、熱伝達抑制シートからの反発力が電池セルに与えられると、電池の性能が低下しやすくなる。したがって、熱伝達抑制シートとしては、電池セル間の熱の伝達を抑えるとともに、電池セルの膨張を弾性体により吸収する効果を有していることも要求される。
【0004】
例えば、特許文献1には、断熱シートと、断熱シートの表面に積層してなる弾性層とを備えるとともに、弾性層が電池セルの膨張で変形する弾性突出部を有し、電池セルとの間に弾性突出部が押圧方向と直交する外周方向に移動する変形スペースを有するセパレータが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、電池の表面に対向して配置される断熱部と、断熱部より圧縮変形しやすい緩衝部と、を含み、緩衝部の少なくとも一部は、断熱部より電池の表面に近い位置に配置されている断熱材が記載されている。なお、上記特許文献2には、緩衝部が島部分を形成し、断熱部が海部分を形成する海島構造を有する断熱材も記載されている。この断熱材は、一方のセルの表面と断熱部の表面との間に隙間が形成されており、セルが膨張して緩衝部が押圧された場合に、緩衝部の一部が隙間中に張り出すことにより、容易に圧縮変形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2020/262080号
【特許文献2】特開2021-140968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載されたセパレータや、上記特許文献2に記載の海島構造を有する断熱材は、いずれも、弾性層や緩衝部が押圧された場合に逃げ場となる隙間を有している。しかし、弾性層や緩衝部は、電池セルにおける膨張する領域に配置する必要がある一方で、隙間を設ける必要もあるため、弾性層や緩衝部と断熱材との位置合わせが煩雑となり、セパレータや断熱材の製造コストを上昇させる原因となる可能性がある。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、断熱材と弾性体とを備える熱伝達抑制シートにおいて、電池セルの膨張時に、弾性体を変形させるための隙間を有するとともに、弾性体と断熱材との位置合わせを容易にすることができる熱伝達抑制シート及びその製造方法、並びにこの熱伝達抑制シートを有する組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、熱伝達抑制シートに係る下記[1]の構成により達成される。
【0010】
[1] 矩形の断熱材と、前記断熱材の厚さ方向に積層された弾性体と、を有する熱伝達抑制シートにおいて、
前記断熱材は、厚さ方向に平行な断熱材端面を有し、
前記断熱材端面は、一対の対向する第1端面及び第2端面と、前記第1端面及び前記第2端面に略直交する方向に延びる、一対の対向する第3端面及び第4端面と、を有し、
前記弾性体は、前記断熱材と略同一の形状及び大きさを有する仮想矩体に対して、少なくとも一部に切り欠きが設けられ、厚さ方向に平行な弾性体端面を有し、
前記第1端面、第2端面、第3端面及び第4端面のそれぞれの断熱材端面において、少なくとも一部が、前記弾性体端面と略面一となるように配置されていることを特徴とする、熱伝達抑制シート。
【0011】
また、熱伝達抑制シートに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[2]~[8]に関する。
【0012】
[2] 前記弾性体は、少なくとも一部が、前記断熱材の前記第1端面から前記第2端面に至る位置まで、前記第1端面及び前記第2端面に直交する方向に連続して延在しているとともに、
少なくとも一部が、前記断熱材の前記第3端面から前記第4端面に至る位置まで、前記第3端面及び前記第4端面に直交する方向に連続して延在していることを特徴とする、[1]に記載の熱伝達抑制シート。
[3] 前記仮想矩体における対向する二対の辺についてそれぞれ二等分線を作成し、2本の前記二等分線が交わる位置を仮想矩体中心とした場合に、少なくとも前記仮想矩体中心に前記弾性体が存在することを特徴とする、[1]又は[2]に記載の熱伝達抑制シート。
[4] 前記仮想矩体における対向する二対の辺についてそれぞれ二等分線を作成し、2本の前記二等分線が交わる位置を仮想矩体中心とした場合に、前記仮想矩体中心に前記弾性体が存在しないことを特徴とする、[1]又は[2]に記載の熱伝達抑制シート。
[5] 前記切り欠きは、前記仮想矩体の辺上における任意の位置から他の任意の位置まで、直線状又は曲線状に設けられていることを特徴とする、[1]~[4]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
[6] 前記仮想矩体における4つの角部が切断されるように、前記切り欠きが設けられていることを特徴とする、[1]~[5]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
[7] 一対の前記断熱材の間に、前記弾性体が配置されていることを特徴とする、[1]~[6]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
[8] 一対の前記弾性体の間に、前記断熱材が配置されていることを特徴とする、[1]~[6]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0013】
本発明の上記目的は、熱伝達抑制シートの製造方法に係る下記[9]の構成により達成される。
[9] [1]~[8]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シートの製造方法であって、
前記弾性体の材料となる弾性体材料シートにおいて、前記断熱材と略同一の形状及び大きさを有する前記仮想矩体を想定し、前記仮想矩体から前記切り欠きを有する前記弾性体を切り出す弾性体成形工程と、
前記弾性体と前記断熱材とを積層する積層工程とを有し、
前記積層工程は、前記断熱材の前記第1端面、第2端面、第3端面及び第4端面のそれぞれの端面において、少なくとも一部が、前記弾性体端面と略面一に配置されるように積層する工程を有することを特徴とする、熱伝達抑制シートの製造方法。
【0014】
本発明の上記目的は、組電池に係る下記[10]の構成により達成される。
【0015】
[10] 複数の電池セルと、[1]~[8]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シートを有し、前記複数の電池セルが直列又は並列に接続された、組電池。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱伝達抑制シートは、弾性体が、断熱材の形状及び大きさに対して切り欠きを設けた形状を有し、切り欠きの部分において空隙部が形成されるため、弾性体が膨出するスペースを確保することができ、弾性体が圧縮変形しやすくなる。したがって、例えば弾性体によって電池セルの膨張を吸収することができ、電池セルの性能が低下することを抑制することができる。
【0017】
本発明の熱伝達抑制シートの製造方法は、断熱材の全ての端面において、少なくとも一部が、弾性体の端面と略面一となるように、弾性体の形状が設計されているため、断熱材と弾性体とを積層する際に、極めて容易に位置合わせをすることができる。
【0018】
また、本発明の組電池は、上記の熱伝達抑制シートを有するため、電池の充放電に伴なう電池セルの膨張に対応でき、電池セルの寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】
図1Aは、本発明の実施形態に係る熱伝達抑制シートを示す平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る熱伝達抑制シートを適用した組電池を示す模式図である。
【
図3A】
図3Aは、本実施形態に係る熱伝達抑制シートにおける弾性体の形状例を示す平面図である。
【
図3B】
図3Bは、本実施形態に係る熱伝達抑制シートにおける弾性体の他の形状例を示す平面図である。
【
図3C】
図3Cは、本実施形態に係る熱伝達抑制シートにおける弾性体のさらに他の形状例を示す平面図である。
【
図4A】
図4Aは、本実施形態に係る熱伝達抑制シートにおける弾性体の形状の設計例を示す平面図である。
【
図4B】
図4Bは、本実施形態に係る熱伝達抑制シートにおける弾性体の形状の他の設計例を示す平面図である。
【
図4C】
図4Cは、本実施形態に係る熱伝達抑制シートにおける弾性体の形状のさらに他の設計例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者が、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、弾性体が切り欠きを有するとともに、断熱材の全ての4端面について、少なくとも一部が弾性体の端面と略面一に配置されるような形状の弾性体を使用することが効果的であることを見出した。
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る熱伝達抑制シート及びその製造方法、並びに組電池について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
【0022】
[熱伝達抑制シート]
まず、熱伝達抑制シートについて詳細に説明する。
【0023】
図1Aは、本発明の実施形態に係る熱伝達抑制シートを示す平面図であり、
図1Bは、
図1Aに示す熱伝達抑制シートを示す側面図である。本実施形態に係る熱伝達抑制シート10は、矩形の断熱材1と、この断熱材1の厚さ方向に積層された弾性体2と、を有する。断熱材1は、その厚さ方向に平行な4つの断熱材端面を有し、これら断熱材端面のうち一対の対向する端面を、第1端面1a、第2端面1bとする。また、第1端面1a及び第2端面1bに略直交する方向に延びる一対の対向する端面を、第3端面1c、第4端面1dとする。
【0024】
また、弾性体2の形状は、断熱材1と略同一の形状及び大きさを有する仮想矩体3を想定した場合に、この仮想矩体3の4つの角部4を直線状に切断して切り欠きが設けられた形状である。本実施形態においては、仮想矩体3の4つの角部が切り落とされることにより、弾性体2は八角形に形成されている。なお、この八角形の弾性体2においても、厚さ方向に平行な端面を有し、仮想矩体3と重なっている端面を非切り欠き端面2aとし、角部4の切断により形成された端面を切り欠き端面2bとする。また、非切り欠き端面2aは、断熱材1の第1端面1a、第2端面1b、第3端面1c及び第4端面1dの全ての端面に面一となるように、弾性体2と断熱材1とが積層されて配置されている。
【0025】
図2は、本発明の実施形態に係る熱伝達抑制シート10を適用した組電池を示す模式図である。熱伝達抑制シート10は、
図2に示すように、例えば複数の電池セル20の間に配置される。
【0026】
このように構成された熱伝達抑制シート10においては、電池セル20の充放電時にこれらが膨張すると、弾性体2が押圧されて一部が圧縮され、これに伴って、弾性体2に対する押圧力が低い領域に弾性体2が膨出する。本実施形態においては、断熱材1と略同一の形状及び大きさを有する仮想矩体3に対して切り欠きを設けた形状の弾性体2を使用しているため、切り欠きの部分において、電池セル20と断熱材1との間に空隙部5が形成されている。したがって、弾性体2は空隙部5に向かって膨出することができ、圧縮変形しやすくなるため、弾性体2によって電池セル20の膨張を吸収することができ、電池セル20の性能が低下することを抑制することができる。
【0027】
例えば、単に、弾性体のサイズを断熱材よりも小さくするのみであっても、電池セルと断熱材との間に空隙部が形成されるため、弾性体の膨出が阻害されず、電池セルの膨張を良好な状態で吸収することができる。しかし、断熱材よりも小さいサイズを有する弾性体を使用して、熱伝達抑制シートを製造しようとすると、弾性体を配置する位置の目安となるものがないため、弾性体を断熱材の中央に配置する工程が煩雑となる。また、弾性体を予め決定された位置に配置することができず、ずれが発生することがあり、その結果、弾性体によって電池セルの膨張を十分に吸収させることができなくなる。
【0028】
これに対して、本実施形態においては、熱伝達抑制シート10の製造時に、非切り欠き端面2aが、断熱材1の第1端面1a、第2端面1b、第3端面1c及び第4端面1dの全ての端面に面一となるように、弾性体2と断熱材1とを積層する。したがって、弾性体2の非切り欠き端面2aを、断熱材1の断熱材端面に揃えるのみによって、断熱材1と弾性体2とを位置合わせすることができ、弾性が要求される領域を、熱伝達抑制シートの所望の位置に極めて容易に配置することができる。また、複数の位置に切り欠きを設けることにより、所望の圧縮応力を維持しつつ、熱伝達抑制シート10を軽量化することもできる。
【0029】
なお、本実施形態において、
図1A中に矢印A1で示すように、弾性体2は、少なくとも一部が、断熱材1の第1端面1aから第2端面1bに至る位置まで、第1端面1a及び第2端面1bに直交する方向に連続して延在している。また、
図1A中に矢印A2で示すように、弾性体2は、少なくとも一部が、断熱材1の第3端面1cから第4端面1dに至る位置まで、第3端面1c及び第4端面1dに直交する方向に連続して延在している。
【0030】
弾性体2が上記のように構成されていることにより、熱伝達抑制シート10を電池セル20の間に配置した際に、安定して熱伝達抑制シート10を支持することができる。
【0031】
また、
図1中の矢印A1及び矢印A2は、仮想矩体3における対向する二対の辺についてそれぞれ作成した二等分線を示すものでもある。本実施形態において、2本の二等分線、すなわち、矢印A1及び矢印A2が交わる位置を仮想矩体中心Oとした場合に、本実施形態においては、仮想矩体中心Oの位置に弾性体が存在する。
【0032】
一般的に、電池の充放電時においては、電池セル20の中央付近が膨張することが多いため、上記のように仮想矩体中心Oの部分まで弾性体2に切り欠きを設けず、弾性体2が存在することにより、弾性体2による効果を十分に得ることができる。ただし、電池セル20の中央付近から外れた領域において弾性効果が要求される場合がある。このような場合に、要求される領域に弾性体2が配置されるように、切り欠きの形状を適切に設計すればよい。図示は省略するが、例えば、仮想矩体中心Oの位置まで切り欠きを形成してもよく、仮想矩体中心Oの位置がくり抜かれていてもよい。仮想矩体中心Oの位置に弾性体2が存在しないように構成することにより、仮想矩体中心Oの位置にも周囲の弾性体2を膨出させることができ、弾性体2をより一層圧縮変形させることができる。
【0033】
切り欠きの形状については特に限定されず、任意の形状で弾性体2の仮想矩体3に対して切り欠きを設け、任意の形状の弾性体2を形成すればよい。例えば、仮想矩体3の辺上における任意の位置から、仮想矩体3の辺上における他の任意の位置まで、直線状又は曲線状に設けることができる。上記
図1A及び
図1Bに示す熱伝達抑制シート10においては、仮想矩体3の4つの角部が直線状に切断されるように、切り欠きが設けられている。ここで、弾性体2の他の形状についても、図面を参照して以下に例示する。
【0034】
図3A~
図3Cは、本実施形態に係る熱伝達抑制シートにおける弾性体の形状例を示す平面図である。
図3A~
図3Cにおいて、
図1Aと同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略又は簡略化する。
図3Aに示す熱伝達抑制シート11は、仮想矩体3の4つの角部のうち、1つの角部4のみを直線状に切断することにより切り欠きを設け、切り欠き端面2bが形成されたものである。
【0035】
また、
図3Bに示す熱伝達抑制シート12は、仮想矩体3の4つの角部4を、仮想矩体3の二対の辺に対して平行となるように矩形に切断することにより切り欠きを設け、切り欠き端面2bが形成されたものである。
【0036】
さらに、
図3Cに示す熱伝達抑制シート13は、仮想矩体3の4つの角部4を、切り欠きが設けられた後の弾性体2が楕円形状となるように曲線状に切断することにより切り欠きを設け、切り欠き端面2bが形成されたものである。
【0037】
これらの形状例のように、種々の領域に切り欠きを設けることにより、熱伝達抑制シートが電池セルに押圧された場合に、弾性体2が膨出するスペースが形成されるため、弾性体2の膨出が阻害されない。したがって、電池セル20が膨張及び収縮を繰り返した場合であっても、弾性体2による大きな反発力が電池セル20に与えられることを抑制し、電池性能の低下を抑制することができる。また、上記熱伝達抑制シート11~13はいずれも、弾性体2の非切り欠き端面2aが、断熱材1の第1端面1a、第2端面1b、第3端面1c及び第4端面1dのそれぞれに、略面一となるように配置されている。したがって、熱伝達抑制シートの製造時に、断熱材1と弾性体2とを重ね合わせる際に、位置合わせを容易にすることができる。
【0038】
なお、本発明において、弾性体2の非切り欠き端面2aと、断熱材1の第1端面1a、第2端面1b、第3端面1c及び第4端面1dのそれぞれとは、確実に面一となる必要はない。断熱材1と弾性体2との位置合わせを容易にする効果を得られる程度にずれていてもよく、例えば、弾性体2の方が断熱材1よりも僅かに小さくなるように形成してもよい。また、断熱材1は正確な矩形である必要はなく、例えば角部が曲線状に形成されていてもよい。
【0039】
さらに、本実施形態に係る熱伝達抑制シートは、他の層を有していてもよいし、複数の断熱材1や複数の弾性体2を有していてもよい。例えば、一対の断熱材1の間に、1枚の弾性体2が配置された3層構造の熱伝達抑制シートであってもよい。また、一対の弾性体2の間に、1枚の断熱材1が配置された3層構造の熱伝達抑制シートであってもよい。断熱材1と弾性体2とを固定する方法は特に限定されない。例えば、接着剤等により接着する方法、熱圧縮性のフィルムにより包装する方法、固定治具等を使用する方法等により、両者を積層した状態で固定することができる。
【0040】
図4A~
図4Cは、本実施形態に係る熱伝達抑制シートにおける弾性体の形状の設計例を示す平面図である。なお、
図4A~
図4Cは、弾性体2よりも大きいサイズの弾性体材料シート6から複数の弾性体2を形成する例について示している。
図4A~
図4Cにおいて、
図1Aと同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略又は簡略化する。
【0041】
図4Aに示す弾性体2は、
図3Bに示す十字形状の弾性体と同様の形状を有する。例えば、仮想矩体3における角部4は、切り欠きを設ける際に切断して削除される領域であるが、この領域が隣接する弾性体2の一部となる。すなわち、弾性体2の切り欠き端面2bと、隣接する弾性体2の非切り欠き端面2aの位置を一致させるように、弾性体2の形状を設計している。
【0042】
図4Bにおいては、十字形状の弾性体2xと、I字形状の弾性体2yとを交互に隣接させるように設計することにより、十字形状の弾性体2xにおける削除される領域が、隣接するI字形状の弾性体2の一部を構成する。すなわち、弾性体2xの切り欠き端面2bと、隣接する弾性体2yの非切り欠き端面2aの位置を一致させるように、弾性体の形状を設計している。
【0043】
図4Cにおいても同様に、互いに同一の形状を有する複数の弾性体2を組み合わせて配置しており、弾性体2における削除される領域が、隣接する弾性体2の一部を構成する。すなわち、弾性体2の切り欠き端面2bと、隣接する弾性体2の非切り欠き端面2aの位置を一致させるように、弾性体の形状を設計している。
【0044】
上記
図4A~
図4Cに示すように、1枚の弾性体材料シート6から複数の弾性体2を切り出す際に、弾性体2の凸状部分と、これに隣接する弾性体2の凹状部分を組み合わせるように弾性体2の形状を設計することができる。これにより、弾性体2の切り欠きを設けるために除去する領域を減少させることができ、材料コストを低減することができる。
【0045】
以下、本実施形態に係る熱伝達抑制シートを構成する材料について、説明する。
【0046】
〔弾性体〕
弾性体の材料としては、電池セル20の膨張及び収縮に追従して、圧縮変形する材質であればよく、公知のものを使用することができる。弾性体の材料としては、例えば、ゴムや熱可塑性エラストマーを適宜用いることができる。
【0047】
ゴムは合成ゴム及び天然ゴムのいずれでもよく、合成ゴムとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、ふっ素ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム及びエビクロルヒドリンゴムなどを挙げることができる。
【0048】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系の各熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。また、エラストマーは、多孔性及び非多孔性のいずれでもよい。なお、多孔性の場合、気泡構造は独立気泡型及び連通気泡型のいずれでもよい。
【0049】
(弾性体の厚さ)
弾性体2の厚さは特に限定されないが、弾性体2についての効果を効果的に得るために、1mm以上10mm以下とすることが好ましい。
【0050】
〔断熱材〕
本実施形態に係る熱伝達抑制シートに用いられる断熱材1としては、断熱効果を有するものであれば、特に限定されない。断熱効果を表す指標として、熱伝導率を挙げることができるが、本実施形態においては、断熱材1の熱伝導率は1(W/m・K)未満であることが好ましく、0.5(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.2(W/m・K)未満であることがより好ましい。さらに、断熱材1の熱伝導率は0.1(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.05(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.02(W/m・K)未満であることが特に好ましい。
なお、断熱材の熱伝導率は、JIS R 2251に記載の「耐火物の熱伝導率の試験方法」に準拠して、測定することができる。
【0051】
断熱材1は無機粒子を含むことが好ましく、その他の成分として、例えば、無機繊維、有機繊維及び有機粒子から選択された少なくとも1種を含有することがより好ましい。それぞれの具体例を下記に示す。
【0052】
<無機粒子>
無機粒子として、単一の無機粒子を使用してもよいし、2種以上の無機粒子を組み合わせて使用してもよい。無機粒子の種類としては、熱伝達抑制効果の観点から、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなる粒子を使用することが好ましく、酸化物粒子を使用することがより好ましい。また、形状についても特に限定されないが、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、具体的には、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することもできる。
【0053】
無機粒子の平均二次粒子径が0.01μm以上であると、入手しやすく、製造コストの上昇を抑制することができる。また、200μm以下であると、所望の断熱効果を得ることができる。したがって、無機粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0054】
なお、2種以上の熱伝達抑制効果が互いに異なる無機粒子を併用すると、発熱体を多段に冷却することができ、吸熱作用をより広い温度範囲で発現できる。具体的には、大径粒子と小径粒子とを混合使用することが好ましい。例えば、一方の無機粒子として、ナノ粒子を使用する場合に、他方の無機粒子として、金属酸化物からなる無機粒子を含むことが好ましい。以下、小径の無機粒子を第1の無機粒子、大径の無機粒子を第2の無機粒子として、無機粒子についてさらに詳細に説明する。
【0055】
<第1の無機粒子>
(酸化物粒子)
酸化物粒子は屈折率が高く、光を乱反射させる効果が強いため、第1の無機粒子として酸化物粒子を使用すると、特に異常発熱などの高温度領域において輻射伝熱を抑制することができる。酸化物粒子としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種の粒子を使用することができる。すなわち、無機粒子として使用することができる上記酸化物粒子のうち、1種のみを使用してもよいし、2種以上の酸化物粒子を使用してもよい。特に、シリカは断熱性が高い成分であり、チタニアは他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であって、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、酸化物粒子としてシリカ及びチタニアを用いることが最も好ましい。
【0056】
(酸化物粒子の平均一次粒子径:0.001μm以上50μm以下)
酸化物粒子の粒子径は、輻射熱を反射する効果に影響を与えることがあるため、平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、酸化物粒子の平均一次粒子径が0.001μm以上であると、加熱に寄与する光の波長よりも十分に大きく、光を効率よく乱反射させるため、500℃以上の高温度領域において熱伝達抑制シート内における熱の輻射伝熱が抑制され、より一層断熱性を向上させることができる。
一方、酸化物粒子の平均一次粒子径が50μm以下であると、圧縮されても粒子間の接点や数が増えず、伝導伝熱のパスを形成しにくいため、特に伝導伝熱が支配的な通常温度域の断熱性への影響を小さくすることができる。
【0057】
なお、本発明において平均一次粒子径は、顕微鏡で粒子を観察し、標準スケールと比較し、任意の粒子10個の平均をとることにより求めることができる。
【0058】
(ナノ粒子)
本発明において、ナノ粒子とは、球形又は球形に近い平均一次粒子径が1μm未満のナノメートルオーダーの粒子を表す。ナノ粒子は低密度であるため伝導伝熱を抑制し、第1の無機粒子としてナノ粒子を使用すると、さらに細かい空隙部が分散するため、対流伝熱を抑制する優れた断熱性を得ることができる。このため、通常の常温域の電池使用時において、隣接するナノ粒子間の熱の伝導を抑制することができる点で、ナノ粒子を使用することが好ましい。
さらに、酸化物粒子として、平均一次粒子径が小さいナノ粒子を使用すると、電池セルの熱暴走に伴う膨張によって熱伝達抑制シートが圧縮され、内部の密度が上がった場合であっても、熱伝達抑制シートの伝導伝熱の上昇を抑制することができる。これは、ナノ粒子が静電気による反発力で粒子間に細かな空隙部ができやすく、かさ密度が低いため、クッション性があるように粒子が充填されるからであると考えられる。
【0059】
なお、第1の無機粒子としてナノ粒子を使用する場合に、上記ナノ粒子の定義に沿ったものであれば、材質について特に限定されない。例えば、シリカナノ粒子は、断熱性が高い材料であることに加えて、粒子同士の接点が小さいため、シリカナノ粒子により伝導される熱量は、粒子径が大きいシリカ粒子を使用した場合と比較して小さくなる。また、一般的に入手されるシリカナノ粒子は、かさ密度が0.1(g/cm3)程度であるため、例えば、熱伝達抑制シートの両側に配置された電池セルが熱膨張し、熱伝達抑制シートに対して大きな圧縮応力が加わった場合であっても、シリカナノ粒子同士の接点の大きさ(面積)や数が著しく大きくなることはなく、断熱性を維持することができる。したがって、ナノ粒子としてはシリカナノ粒子を使用することが好ましい。シリカナノ粒子としては、湿式シリカ、乾式シリカ及びエアロゲル等が挙げられるが、本実施形態に特に好適であるシリカナノ粒子について、以下に説明する。
【0060】
一般的に、湿式シリカは粒子が凝集しているのに対し、乾式シリカは粒子を分散させることができる。90℃以下の温度範囲において、熱の伝導は伝導伝熱が支配的であるため、粒子を分散させることができる乾式シリカの方が、湿式シリカと比較して、優れた断熱性能を得ることができる。
なお、本実施形態に係る熱伝達抑制シートは、材料を含む混合物を、乾式法によりシート状に加工する製造方法を用いることが好ましい。したがって、無機粒子としては、熱伝導率が低い乾式シリカ、シリカエアロゲル等を使用することが好ましい。
【0061】
(ナノ粒子の平均一次粒子径:1nm以上100nm以下)
ナノ粒子の平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、ナノ粒子の平均一次粒子径を1nm以上100nm以下とすると、特に500℃未満の温度領域において、熱伝達抑制シート内における熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制することができ、断熱性をより一層向上させることができる。また、圧縮応力が印加された場合であっても、ナノ粒子間に残った空隙部と、多くの粒子間の接点が伝導伝熱を抑制し、熱伝達抑制シートの断熱性を維持することができる。
なお、ナノ粒子の平均一次粒子径は、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることが更に好ましい。一方、ナノ粒子の平均一次粒子径は、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
【0062】
(無機水和物粒子)
無機水和物粒子は、発熱体からの熱を受けて熱分解開始温度以上になると熱分解し、自身が持つ結晶水を放出して発熱体及びその周囲の温度を下げる、所謂「吸熱作用」を発現する。また、結晶水を放出した後は多孔質体となり、無数の空気孔により断熱作用を発現する。
無機水和物の具体例として、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)、水酸化鉄(Fe(OH)2)、水酸化マンガン(Mn(OH)2)、水酸化ジルコニウム(Zr(OH)2)、水酸化ガリウム(Ga(OH)3)等が挙げられる。
【0063】
例えば、水酸化アルミニウムは約35%の結晶水を有しており、下記式に示すように、熱分解して結晶水を放出して吸熱作用を発現する。そして、結晶水を放出した後は多孔質体であるアルミナ(Al2O3)となり、断熱材として機能する。
2Al(OH)3→Al2O3+3H2O
【0064】
なお、上述のとおり、本実施形態に係る熱伝達抑制シートは、例えば、電池セル間に介在されることが好適であるが、熱暴走を起こした電池セルでは、200℃を超える温度に急上昇し、700℃付近まで温度上昇を続ける。したがって、断熱材に含まれる無機粒子としては、熱分解開始温度が200℃以上である無機水和物からなることが好ましい。
上記に挙げた無機水和物の熱分解開始温度は、水酸化アルミニウムは約200℃、水酸化マグネシウムは約330℃、水酸化カルシウムは約580℃、水酸化亜鉛は約200℃、水酸化鉄は約350℃、水酸化マンガンは約300℃、水酸化ジルコニウムは約300℃、水酸化ガリウムは約300℃であり、いずれも熱暴走を起こした電池セルの急激な昇温の温度範囲とほぼ重なり、温度上昇を効率よく抑えることができることから、好ましい無機水和物であるといえる。
【0065】
(無機水和物粒子の平均二次粒子径:0.01μm以上200μm以下)
また、第1の無機粒子として、無機水和物粒子を使用した場合に、その平均粒子径が大きすぎると、断熱材の中心付近にある第1の無機粒子(無機水和物)が、その熱分解温度に達するまでにある程度の時間を要するため、断熱材の中心付近の第1の無機粒子が熱分解しきれない場合がある。このため、無機水和物粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0066】
(熱膨張性無機材料からなる粒子)
熱膨張性無機材料としては、バーミキュライト、ベントナイト、雲母、パーライト等を挙げることができる。
【0067】
(含水多孔質体からなる粒子)
含水多孔質体の具体例としては、ゼオライト、カオリナイト、モンモリロナイト、酸性白土、珪藻土、湿式シリカ、乾式シリカ、エアロゲル、マイカ、バーミキュライト等が挙げられる。
【0068】
(無機バルーン)
本発明に用いる断熱材は、第1の無機粒子として無機バルーンを含んでいてもよい。
無機バルーンが含まれると、500℃未満の温度領域において、断熱材内における熱の対流伝熱又は伝導伝熱を抑制することができ、断熱材の断熱性をより一層向上させることができる。
無機バルーンとしては、シラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン、バーライトバルーン、及びガラスバルーンから選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0069】
(無機バルーンの含有量:断熱材全質量に対して60質量%以下)
無機バルーンの含有量としては、断熱材全質量に対し、60質量%以下が好ましい。
【0070】
(無機バルーンの平均粒子径:1μm以上100μm以下)
無機バルーンの平均粒子径としては、1μm以上100μm以下が好ましい。
【0071】
<第2の無機粒子>
熱伝達抑制シートに2種の無機粒子が含有されている場合に、第2の無機粒子は、第1の無機粒子と材質や粒子径等が異なっていれば特に限定されない。第2の無機粒子としては、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子、無機水和物粒子、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することができ、これらの詳細については、上述のとおりである。
【0072】
なお、ナノ粒子は伝導伝熱が極めて小さいとともに、熱伝達抑制シートに圧縮応力が加わった場合であっても、優れた断熱性を維持することができる。また、チタニア等の金属酸化物粒子は、輻射熱を遮る効果が高い。さらに、大径の無機粒子と小径の無機粒子とを使用すると、大径の無機粒子同士の隙間に小径の無機粒子が入り込むことにより、より緻密な構造となり、熱伝達抑制効果を向上させることができる。したがって、上記第1の無機粒子として、例えばナノ粒子を使用した場合に、さらに、第2の無機粒子として、第1の無機粒子よりも大径である金属酸化物からなる粒子を、熱伝達抑制シートに含有させることが好ましい。
金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、ジルコン、酸化ジルコニウム等を挙げることがでる。特に、酸化チタン(チタニア)は他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であり、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、チタニアを用いることが最も好ましい。
【0073】
第1の無機粒子として、乾式シリカ粒子及びシリカエアロゲルから選択された少なくとも1種の粒子を使用し、第2の無機粒子として、チタニア、ジルコン、ジルコニア、炭化ケイ素、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種の粒子を使用する場合に、90℃以下の温度範囲内において、優れた断熱性能を得るためには、第1の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。また、第1の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。
【0074】
一方、90℃を超える温度範囲内において、優れた断熱性能を得るためには、第2の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、第2の無機粒子は、無機粒子全質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0075】
(第2の無機粒子の平均一次粒子径)
金属酸化物からなる第2の無機粒子を熱伝達抑制シートに含有させる場合に、第2の無機粒子の平均一次粒子径は、1μm以上50μm以下であると、500℃以上の高温度領域で効率よく輻射伝熱を抑制することができる。第2の無機粒子の平均一次粒子径は、5μm以上30μm以下であることが更に好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。
【0076】
(無機粒子の含有量)
本実施形態において、断熱材中の無機粒子の合計の含有量が適切に制御されていると、断熱材の断熱性を十分に確保することができる。
無機粒子の合計の含有量は、断熱材の全質量に対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。また、無機粒子の合計の含有量が多くなりすぎると、有機繊維の含有量が相対的に減少するため、骨格の補強効果及び無機粒子の保持効果を十分に得るためには、無機粒子の合計の含有量は、断熱材の全質量に対して95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0077】
なお、断熱材中の無機粒子の含有量は、例えば、断熱材を800℃で加熱し、有機分を分解後、残部の質量を測定することにより、算出することができる。
【0078】
<無機繊維>
無機繊維として、単一の無機繊維を使用してもよいし、2種以上の無機繊維を組み合わせて使用してもよい。無機繊維としては、例えば、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、カーボンファイバ、ソルブルファイバ、リフラクトリーセラミック繊維、エアロゲル複合材、マグネシウムシリケート繊維、アルカリアースシリケート繊維、チタン酸カリウム繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウムウィスカ繊維等のセラミックス系繊維、ガラス繊維、グラスウール、スラグウール等のガラス系繊維、及びこれらの繊維以外の鉱物系繊維である、ロックウール、バサルトファイバ、ウォラストナイト、ムライト繊維等が挙げられる。
これらの無機繊維は、耐熱性、強度、入手容易性などの点で好ましい。無機繊維のうち、取り扱い性の観点から、特にシリカ-アルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、アルカリアースシリケート繊維、ガラス繊維が好ましい。
【0079】
無機繊維の断面形状は、特に限定されず、円形断面、平断面、中空断面、多角断面、芯断面などが挙げられる。中でも、中空断面、平断面又は多角断面を有する異形断面繊維は、断熱性が若干向上されるため好適に使用することができる。
【0080】
(無機繊維の平均繊維長)
無機繊維の平均繊維長の好ましい下限は0.1mmであり、より好ましい下限は0.5mmである。一方、無機繊維の平均繊維長の好ましい上限は50mmであり、より好ましい上限は10mmである。無機繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、無機繊維同士の絡み合いが生じにくく、断熱材の機械的強度が低下するおそれがある。一方、50mmを超えると、補強効果は得られるものの、無機繊維同士が緊密に絡み合うことができなったり、単一の無機繊維だけで丸まったりし、それにより断熱性の低下を招くおそれがある。
【0081】
無機繊維の平均繊維径の好ましい下限は1μmであり、より好ましい下限は2μmであり、更に好ましい下限は3μmである。一方、無機繊維の平均繊維径の好ましい上限は15μmであり、より好ましい上限は10μmである。無機繊維の平均繊維径が1μm未満であると、無機繊維自体の機械的強度が低下するおそれがある。また、人体の健康に対する影響の観点より、無機繊維の平均繊維径が3μm以上であることが好ましい。一方、無機繊維の平均繊維径が15μmより大きいと、無機繊維を媒体とする固体伝熱が増加して断熱性の低下を招くおそれがあり、また、熱伝達抑制シートの成形性及び強度が悪化するおそれがある。
【0082】
(無機繊維の含有量)
本実施形態において、断熱材が無機繊維を含む場合に、無機繊維の含有量は、断熱材の全質量に対して3質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0083】
また、無機繊維の含有量は、断熱材の全質量に対して、5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。このような含有量にすることにより、無機繊維による保形性や押圧力耐性、抗風圧性や、無機粒子の保持能力がバランスよく発現される。また、無機繊維の含有量を適切に制御することにより、有機繊維及び無機繊維が互いに絡み合って3次元ネットワークを形成するため、無機粒子、及び後述する他の配合材料を保持する効果をより一層向上させることができる。
【0084】
<有機繊維>
有機繊維は、断熱材に柔軟性を与える効果を有するとともに、有機繊維が骨格を形成することにより、断熱材の強度を高める効果を有する。また、有機繊維の表面に無機粒子及び他の有機繊維が溶着されていると、シートの強度を向上させる効果及び形状を保持する効果をより一層向上させることができる。また、断熱材に適切な含有量で有機繊維が含まれていると、断熱材の内部に複数の空隙部が形成され、断熱材が加熱された際に、空気や水分を、空隙部を介して外部に放出することができる。
【0085】
断熱材における有機繊維の材料として、セルロースファイバ等の単成分の有機繊維を使用することもできるが、芯鞘構造のバインダ繊維を使用することが好ましい。芯鞘構造のバインダ繊維は、繊維の長手方向に延びる芯部と、芯部の外周面を被覆するように形成された鞘部とを有するものである。この場合に、芯部は第1の有機材料からなり、鞘部は第2の有機材料からなり、第1の有機材料の融点は、第2の有機材料の融点よりも高いものとする。
【0086】
(第1の有機材料)
本実施形態において、芯鞘構造のバインダ繊維を使用する場合に、芯部を構成する第1の有機材料は、芯部の外周面に存在する鞘部、すなわち第2の有機材料の融点よりも高いものであれば、特に限定されない。第1の有機材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン及びナイロンから選択された少なくとも1種が挙げられる。
【0087】
(第2の有機材料)
第2の有機材料は、上記有機繊維を構成する第1の有機材料の融点よりも低いものであれば、特に限定されない。第2の有機材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン及びナイロンから選択された少なくとも1種が挙げられる。
なお、第2の有機材料の融点は、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。また、第2の有機材料の融点は、150℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましい。
【0088】
(有機繊維の含有量)
断熱材における有機繊維の含有量が適切に制御されていると、骨格の補強効果を十分に得ることができる。
有機繊維の含有量は、断熱材の全質量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、有機繊維の含有量が多くなりすぎると、無機粒子の含有量が相対的に減少するため、所望の断熱性能を得るためには、有機繊維の含有量は、断熱材の全質量に対して25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0089】
(有機繊維の繊維長)
有機繊維の繊維長については特に限定されないが、成形性や加工性を確保する観点から、有機繊維の平均繊維長は10mm以下とすることが好ましい。
一方、有機繊維を骨格として機能させ、熱伝達抑制シートの圧縮強度を確保する観点から、有機繊維の平均繊維長は0.5mm以上とすることが好ましい。
【0090】
<有機粒子>
有機粒子としては、中空ポリスチレン粒子等を使用することができる。
【0091】
<他の配合材料>
(ホットメルトパウダー)
熱伝達抑制シートには、上記バインダ繊維、無機粒子の他に、混合物中にホットメルトパウダーを含有させてもよい。ホットメルトパウダーは、例えば上記第1の有機材料及び第2の有機材料とは異なる第3の有機材料を含有し、加熱により溶融する性質を有する粉体である。混合物中にホットメルトパウダーを含有させ、加熱することにより、ホットメルトパウダーは溶融し、その後冷却すると、周囲の無機粒子を含んだ状態で硬化する。したがって、断熱材の無機粒子の脱落をより一層抑制することができる。
【0092】
ホットメルトパウダーとしては、種々の融点を有するものが挙げられるが、使用するバインダ繊維の芯部及び鞘部の融点を考慮して、適切な融点を有するホットメルトパウダーを選択すればよい。有機繊維として芯鞘構造のバインダ繊維を使用する場合に、ホットメルトパウダーを構成する成分である第3の有機材料は、上記有機繊維を構成する第1の有機材料の融点よりも低いものであれば、芯部を残して、鞘部及びホットメルトパウダーを溶融させるための加熱温度を設定することができる。例えば、ホットメルトパウダーの融点が、鞘部の融点以下であると、製造時の加熱温度は、芯部の融点と鞘部の融点との間で設定すればよいため、より一層容易に加熱温度を設定することができる。
【0093】
一方、ホットメルトパウダーの融点が、芯部の融点と鞘部の融点との間となるように、使用するホットメルトパウダーの種類を選択することもできる。このような融点を有するホットメルトパウダーを使用すると、鞘部及びホットメルトパウダーがともに溶融した後、冷却されて硬化する際に、先に有機繊維(芯部)とその周囲の溶融した鞘部、及び無機粒子の隙間に存在するホットメルトパウダーが硬化する。その結果、有機繊維の位置を固定することができ、その後、溶融していた鞘部が有機繊維に溶着することにより、立体的な骨格が形成されやすくなる。したがって、シート全体の強度をより一層向上させることができる。
【0094】
ホットメルトパウダーを構成する第3の有機材料の融点が、芯部を構成する第1の有機材料の融点よりも十分に低いと、加熱する工程における加熱温度の設定裕度を広げることができ、より一層所望の構造を得るための温度設定を容易にすることができる。例えば、第1の有機材料の融点は、第3の有機材料の融点よりも60℃以上高いことが好ましく、70℃以上高いことがより好ましく、80℃以上高いことがさらに好ましい。
【0095】
なお、ホットメルトパウダー(第3の有機材料)の融点は、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。また、ホットメルトパウダー(第3の有機材料)の融点は、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。ホットメルトパウダーを構成する成分としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン酢酸ビニル等が挙げられる。
【0096】
(ホットメルトパウダーの含有量)
無機粒子の脱落を抑制するために、断熱材の材料中にホットメルトパウダーを含有させる場合に、その含有量は微量でも粉落ち抑制の効果を得ることができる。したがって、ホットメルトパウダーの含有量は、断熱材の材料全質量に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。
一方、ホットメルトパウダーの含有量を増加させると、無機粒子等の含有量が相対的に減少するため、所望の断熱性能を得るためには、ホットメルトパウダーの含有量は、断熱材の材料全質量に対して5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0097】
断熱材の材料としてホットメルトパウダーを含む場合に、加熱する工程における加熱温度は、鞘部を構成する第2の有機材料の融点、及びホットメルトパウダーを構成する第3の有機材料の融点のいずれか高い方よりも10℃以上高く設定することが好ましく、20℃以上高く設定することがより好ましい。一方、加熱温度は、芯部を構成する第1の有機材料の融点よりも10℃以上低く設定することが好ましく、20℃以上低く設定することがより好ましい。このような加熱温度に設定することにより、強固な骨格を形成することができ、シートの強度をより一層向上させることができるとともに、無機粒子の脱落を防止することができる。
【0098】
なお、断熱材は、さらに、必要に応じて、他の結合材、着色剤等を含有させることができる。これらはいずれも断熱材の補強や成形性の向上等を目的とする上で有用であり、断熱材の全質量に対して合計量で、10質量%以下とすることが好ましい。
【0099】
次に、本実施形態に係る熱伝達抑制シートの製造方法について、
図1A及び
図1Bを参照して説明する。
【0100】
[熱伝達抑制シートの製造方法]
上記本実施形態に係る熱伝達抑制シート10は、例えば、以下の方法により製造することができる。
【0101】
<弾性体成形工程>
弾性体2の材料となる弾性体材料シートを準備し、断熱材1と略同一の形状及び大きさを有する仮想矩体3を想定して、弾性体材料シートを切断する。その後、仮想矩体3から切り欠きを有する弾性体2を切り出す。なお、仮想矩体3の形状で弾性体材料シートを切断する必要はなく、
図4A~
図4Cに示すように、予め隣接する弾性体の凸状部分と凹状部分とが組み合わさるように設計して、弾性体材料シートから直接弾性体2を切り出してもよい。
【0102】
<断熱材作製工程>
無機粒子やその他の材料を、一般的な湿式法又は乾式法により成形し、シート状に加工された断熱材1を得る。
【0103】
<積層工程>
次に、上記断熱材1と弾性体2とを積層する。このとき、断熱材1の第1端面1a、第2端面1b、第3端面1c及び第4端面1dのそれぞれの端面において、少なくとも一部が、弾性体2の端面(弾性体端面)と略面一に配置されるように、両者を積層して固定する。上述のとおり、断熱材1と弾性体2とを固定する方法としては、接着剤等により接着する方法、熱圧縮性のフィルムにより包装する方法、固定治具等を使用する方法等が挙げられる。
【0104】
本実施形態においては、断熱材1の全ての端面において、少なくとも一部が、弾性体2の端面と略面一となるように、弾性体2の形状が設計されているため、断熱材1と弾性体2とを積層する際に、極めて容易に位置合わせをすることができる。
【0105】
[組電池]
続いて、組電池について詳細に説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る組電池100は、例えば
図1に示す熱伝達抑制シート10を有する。より具体的に、組電池100は、複数の電池セル20と、上記の熱伝達抑制シート10とを有し、各電池セル20が直列又は並列に接続されたものである。そして、熱伝達抑制シート10は、電池セル20と電池セル20との間に介在されている。また、電池セル20及び熱伝達抑制シート10は、電池ケース30に収容されている。
【0106】
上記のような組電池100においては、電池セル20が膨張すると弾性体2が圧縮されるが、弾性体2には切り欠きが設けられており、断熱材1と電池セル20との間に空隙部5が形成されるため、弾性体2が空隙部5に向かって膨出する。このように、電池セル20の膨張及び収縮に伴って、弾性体2が容易に圧縮変形するため、電池セル20の電池性能の低下を抑制することができる。
【0107】
なお、図示は省略するが、上記[熱伝達抑制シート]に記載の熱伝達抑制シートは、複数の電池セル間のみでなく、例えば、電池セルと電池ケースとの間の狭隘な領域に配設することができる。このように、熱伝達抑制シートを電池セルと電池ケースとの間に配設した場合であっても、電池セルに不均一な押圧力が印加されることを抑制することができ、電池セルの寿命を向上させることができる。
【0108】
また、本発明に係る熱伝達抑制シートは、断熱材を有するため、優れた断熱性を有する。したがって、熱伝達抑制シートを適用した組電池100が、電気自動車(EV:Electric Vehicle)等に使用され、搭乗者の床下に配置された場合に、仮に電池セルが発火しても、搭乗者の安全を確保することができる。
さらにこの場合に、熱伝達抑制シート等を、電池セルと電池ケースとの間に配置すると、新たに防炎材等を作製する必要がなく、低コストで安全な組電池を構成することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 断熱材
2、2x、2y 弾性体
2a 切り欠き端面
2b 非切り欠き端面
3 仮想矩体
4 角部
5 空隙部
6 弾性体材料シート
10、11、12、13 熱伝達抑制シート
20 電池セル
30 電池ケース
100 組電池