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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141912
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】車両制御方法及び車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/13 20160101AFI20241003BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20241003BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20241003BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20241003BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20241003BHJP
   B60W 20/12 20160101ALI20241003BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20241003BHJP
【FI】
B60W20/13
B60K6/46 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W10/26 900
B60W20/12
B60L50/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053788
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱本 高行
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB00
3D202BB01
3D202BB11
3D202BB19
3D202DD00
3D202DD01
3D202DD11
3D202DD45
3D202DD50
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125AC22
5H125BC13
5H125BD17
5H125CA04
5H125CA09
5H125CA18
5H125EE27
5H125EE52
5H125EE55
5H125EE62
(57)【要約】
【課題】ハイブリッド車両において、車両出力性能及びバッテリ残容量の要求を満たしつつ、EVモードの実行時間をできるだけ長くして燃費及び排ガス性能を向上させる。
【解決手段】
発電装置12,14と、バッテリ16と、発電装置及びバッテリから電力の供給を受けて駆動する駆動モータ18と、を備えたハイブリッド車両において、制御モードをHEVモード及びEVモードの何れかに設定して駆動モータへの電力供給を行う車両制御方法を提供する。特に、この車両制御方法では、ナビ情報Idpを取得し、ナビ情報Idpに基づいて設定された予定走行区間における推定車両出力Ov_es、及び走行により消費される電力量を表す推定走行消費電力量Ev_esを演算する。そして、推定車両出力Ov_es及び推定走行消費電力量Ev_esに基づいて、EVモードからHEVモードへの切り替えを行うための下限バッテリ充電率Rを設定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置と、バッテリと、前記発電装置及び前記バッテリから電力の供給を受けて駆動する駆動モータと、を備えたハイブリッド車両において、該ハイブリッド車両の制御モードをHEVモード及びEVモードの何れかに設定し、前記HEVモードでは前記発電装置による発電と並行して前記駆動モータへの電力供給を行い、前記EVモードでは前記発電装置による発電を停止させた状態で前記駆動モータへの電力供給を行う車両制御方法であって、
ナビ情報を取得し、
前記ナビ情報に基づいて、設定された予定走行区間を走行する際の車両出力を表す推定車両出力、及び走行により消費される電力量を表す推定走行消費電力量を演算し、
前記推定車両出力及び前記推定走行消費電力量に基づいて、前記EVモードから前記HEVモードへの切り替えを行うための下限バッテリ充電率を設定する、
車両制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御方法であって、
前記ナビ情報に基づいて、前記予定走行区間における直線距離、推定平均車速、及び勾配変化を表す推定勾配情報を取得し、前記推定平均車速及び前記推定勾配情報に基づいて、前記推定車両出力を演算し、
前記直線距離、前記推定平均車速、及び前記推定勾配情報に基づいて、前記推定走行消費電力量を演算し、
前記推定車両出力及び前記推定走行消費電力量から、前記予定走行区間を走行する際に維持すべきバッテリ充電率の高さを段階的にグレード分けしたシビアランクを判定し、
判定した前記シビアランクに基づいて前記下限バッテリ充電率を定める、
車両制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御方法であって、
前記予定走行区間における走行中に前記推定車両出力が所定時間以上に亘って前記発電装置の最大発電電力を超えるか否かをさらに判定し、
判定結果が肯定的である場合には、前記下限バッテリ充電率に関わらず、前記予定走行区間における前記制御モードを前記HEVモードに固定する、
車両制御方法。
【請求項4】
請求項2に記載の車両制御方法であって、
前記予定走行区間における現在地から目的地までの間に前記現在地を含めた複数の演算地点を設定し、
前記シビアランクの判定及びこれに基づく前記下限バッテリ充電率の設定を、各演算地点の間の前記直線距離、前記推定平均車速、及び前記推定勾配情報に基づいて実行し、
前記演算地点の数を、前記現在地から前記目的地までの距離及びバッテリ残容量に基づいて定める、
車両制御方法。
【請求項5】
請求項1に記載の車両制御方法であって、
前記予定走行区間における走行中にバッテリ充電率を参照し、
前記バッテリ充電率が前記下限バッテリ充電率に対して所定値以上ずれている場合には、前記下限バッテリ充電率を補正する、
車両制御方法。
【請求項6】
請求項1に記載の車両制御方法であって、
前記予定走行区間に前記EVモードのみを許容するEV制限区間が含まれるかをさらに判定し、判定結果が肯定的である場合には、前記ハイブリッド車両におけるドライビングモードの手動選択を不許可とする、
車両制御方法。
【請求項7】
請求項1に記載の車両制御方法であって、
前記発電装置は、エンジンと、前記エンジンにより駆動されて発電を行うジェネレータと、を含み、
前記下限バッテリ充電率を設定している状況下において、前記車両出力又はバッテリ容量が要求に対して不足すると判断した場合には、音振抑制の観点から定められるエンジン作動を規制するためのエンジン回転数閾値を高くする、
車両制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の車両制御方法であって、
前記エンジン回転数閾値を低下させても前記車両出力又は前記バッテリ容量の不足が解消されない場合には、前記ハイブリッド車両の車速を制限する、
車両制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の車両制御方法であって、
制限された前記車速が前記予定走行区間における推定平均車速よりも所定値以上低い場合には、前記発電装置を強制的に作動させるか、又は前記ハイブリッド車両の乗員に外部充電器による前記バッテリへの充電を促す、
車両制御方法。
【請求項10】
発電装置と、バッテリと、前記発電装置及び前記バッテリから電力の供給を受けて駆動する駆動モータと、を備えたハイブリッド車両において、該ハイブリッド車両の制御モードをHEVモード及びEVモードの何れかに設定し、前記HEVモードでは前記発電装置による発電と並行して前記駆動モータへの電力供給を行い、前記EVモードでは前記発電装置による発電を停止させた状態で前記駆動モータへの電力供給を行う車両制御装置であって、
ナビ情報を取得する取得部と、
前記ナビ情報に基づいて、設定された予定走行区間を走行する際の車両出力を表す推定車両出力、及び走行により消費される電力量を表す推定走行消費電力量を演算する演算部、
前記推定車両出力及び前記推定走行消費電力量に基づいて、前記EVモードから前記HEVモードへの切り替えを行うための下限バッテリ充電率を設定する設定部と、を有する、
車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御方法及び車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンの他にモータジェネレータ及びバッテリを搭載したハイブリッド車両において、出力特性が略一定となるように電池の温度に応じて充電状態を変化させる車両用電池制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-345165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、比較的高い容量のバッテリを搭載したハイブリッド車両が普及している。この種のハイブリッド車両では、バッテリのSOC領域をより広く活用してEVモード(発電を停止させて走行するモード)の実行時間をできるだけ長くして燃費及び排ガス性能を向上させることが望まれる。その一方で、車両出力の実現及びバッテリ枯渇の防止の観点から、走行シーンに応じてSOCを調節する必要がある。
【0005】
したがって、本発明は、ハイブリッド車両において、車両出力性能及びバッテリ残容量の要求を満たしつつ、EVモードの実行時間をできるだけ長くして燃費及び排ガス性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、発電装置と、バッテリと、発電装置及びバッテリから電力の供給を受けて駆動する駆動モータと、を備えたハイブリッド車両において、該ハイブリッド車両の制御モードをHEVモード及びEVモードの何れかに設定し、HEVモードでは発電装置による発電と並行して駆動モータへの電力供給を行い、EVモードでは発電装置による発電を停止させた状態で駆動モータへの電力供給を行う車両制御方法が提供される。
【0007】
この車両制御方法では、ナビ情報を取得し、ナビ情報に基づいて設定された予定走行区間を走行する際の車両出力を表す推定車両出力及び走行により消費される電力量を表す推定走行消費電力量を演算し、推定車両出力及び推定走行消費電力量に基づいてEVモードからHEVモードへの切り替えを行うための下限バッテリ充電率を設定する。
【発明の効果】
【0008】
これにより、ハイブリッド車両において、車両出力性能及びバッテリ残容量の要求を満たしつつ、EVモードの実行時間をできるだけ長くして燃費及び排ガス性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の各実施形態に共通する車両制御システムの構成を示す図である。
図2図2は、各実施形態に共通する車両制御方法の概要を説明するフローチャートである。
図3図3は、シビアランク判定処理を説明するフローチャートである。
図4図4は、シビアランク判定マップの一例を示す図である。
図5図5は、ドライビングモード及びドライバ学習データを参照したシビアランク判定ロジックの一例を示す図である。
図6図6は、判定された各シビアランクごとのSOC経時変化の一例を示す図である。
図7図7は、バッテリ温度を考慮したシビアランク判定を説明する図である。
図8図8は、複数の演算地点を設定した場合における制御結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
[前提構成]
図1は、後述する各実施形態(第1~第6実施形態)に共通する前提構成である車両制御システム100を説明する図である。なお、車両制御システム100は、発電装置、蓄電装置(バッテリ16)、及び駆動装置(駆動モータ18)を搭載し、発電装置により発電された電力及び/又はバッテリ16の電力を駆動装置に供給することで走行駆動されるいわゆるシリーズ方式のハイブリッド車両に搭載される。
【0012】
より具体的に、車両制御システム100は、内燃機関からなるエンジン12と、発電機としてのジェネレータ14と、バッテリ16と、走行用駆動源としての駆動モータ18と、これらの各要素の動作を制御する車両制御装置としてのコントローラ50と、を備える。
【0013】
エンジン12は、ジェネレータ14に回転動力を与えるための発電動力源として機能する。エンジン12は、図示しない動力伝達機構を介してジェネレータ14に接続される。特に、本実施形態では、エンジン12は駆動輪20に対しては機械的に接続されていない。すなわち、エンジン12は、ハイブリッド車両における発電源としてのみ機能し、走行駆動力源としては機能しない。
【0014】
ジェネレータ14は、例えば三相交流の永久磁石型同期モータなどにより構成される発電機(電動機)である。特に、ジェネレータ14は、エンジン12からの回転動力を受けて回生作動することで発電機として機能する。また、ジェネレータ14は、バッテリ16から電力の供給を受けて力行作動することで、エンジン12を回転駆動させる電動機として機能させることもできる。
【0015】
バッテリ16は、例えば、全固体電池或いはリチウムイオン電池等の車載の二次電池により構成される。バッテリ16は、ジェネレータ14の発電電力の供給を受けて充電されるとともに、駆動モータ18に供給することで放電される。
【0016】
駆動モータ18は、例えば三相交流の永久磁石型同期モータ或いは巻線界磁型モータなどにより構成される電動機である。駆動モータ18は、ジェネレータ14で生成される発電電力及び/又はバッテリ16の保有電力の供給を受けて動作し、駆動輪20を駆動する。また、駆動モータ18は、車両減速時などに駆動輪20からの回転動力を受けて電力を発生させてバッテリ16に供給する回生機能を有している。
【0017】
コントローラ50は、ナビ情報Idp、ドライビングモード選択信号Sdm、SOC(SOC:State Of Charge)検出値Res、及び外気温検出値Tに基づき、エンジン12、ジェネレータ14、及び駆動モータ18の動作を制御する。なお、コントローラ50の機能は、ハイブリッド車両に搭載される各種の車載コンピュータ(エンジンコントローラ、モータコントローラ、及び/又はバッテリコントローラなど)の一つ、又は2以上の組み合わせにより実現される。
【0018】
ナビ情報Idpは、車載のナビゲーションシステム200により得られる。特に、コントローラ50は、乗員等によりナビゲーションシステム200上で目的地が設定されている場合に、現在地から当該目的地までの走行区間(以下、「予定走行区間」と称する)における道路標高データ、統計平均車速データ、及び予定走行時間Δttrなどをナビ情報Idpとして取得する。
【0019】
ドライビングモード選択信号Sdmは、乗員等による手動スイッチ300に対する操作で指定されたハイブリッド車両のドライビングモードを示す信号である。なお、ドライビングモードとは、ハイブリッド車両に出力性能と燃費性能のバランスに応じて適宜、車両出力Oを調節するためのモードである。特に、ドライビングモードには、パワー優先モード、エコモード、通常モード、及びオートモードが含まれる。
【0020】
パワー優先モードは、最も高い車両出力Oをとるモードである。このため、パワー優先モードが選択されている場合には、通常モード或いはエコモードが選択されている場合に比べてバッテリ16のSOCがより高い値に維持される(HEVモードの割合が増える)。また、エコモードは、車両出力性能をできるだけ抑え、燃費性能を向上させるモードである。このため、エコモードが選択されている場合には、通常モード或いはパワー優先モードが選択されている場合に比べてバッテリ16のSOCがより低い値に制御される(EVモードの割合が増える)。さらに、通常モードは、パワー優先モードとエコモードの中間的な車両出力性能をとるモードである。このため、通常モードが選択されている場合には、バッテリ16のSOCがパワー優先モード選択時とエコモード選択時の中間の値に制御される。
【0021】
一方、オートモードは、ハイブリッド車両の走行シーンに応じて車両出力性能(SOCの制御値)を自動的に調節するモードである。なお、オートモードは、乗員等による自発的な選択の他、ナビゲーションシステム200上で目的地が設定されている場合などにおいて自動的に設定される。
【0022】
SOC検出値Resは、図示しないSOCセンサにより得られる。なお、コントローラ50が、バッテリ16の電流検出値、電圧検出値、及びバッテリ温度検出値などからSOCを演算(推定)した値をSOC検出値Resとしても良い。
【0023】
さらに、コントローラ50は、バッテリ16のSOCがドライビングモードに応じて定められるSOC下限値Rを下回らない範囲で制御モードをEVモードに維持する一方、SOCがSOC下限値Rに到達すると、制御モードをHEVモードに切り替える。
【0024】
ここで、HEVモードとは、発電装置(エンジン12及びジェネレータ14)を作動させて発電を行いつつ駆動モータ18に電力を供給するモードである。より具体的に、HEVモードの選択時において、コントローラ50は、所望の発電電力を実現するようにエンジン12の目標動作点(目標エンジントルク)を定め、当該エンジン12の目標動作点に合わせてジェネレータ14の目標動作点(目標回転数)を設定する。なお、このHEVモードでは、目標発電電力をハイブリッド車両に対して要求される車両出力Oよりも大きく設定することで、余剰分をバッテリ16の充電に用いて当該バッテリ16のSOCを増加させることができる。
【0025】
一方、EVモードとは、発電装置(エンジン12及びジェネレータ14)を停止させた状態でバッテリ16から駆動モータ18への電力を供給するモードである。ここで、EVモードが選択されている場合には発電が行われない。したがって、要求される車両出力Oの全てをバッテリ16の保有電力で賄う必要がある一方、エンジン12を停止させるため燃料消費を抑えることができる。
【0026】
ここで、上記の制御モードの設定ロジックによれば、設定されるSOC下限値Rの大きさによってEVモードからHEVモードへの切り替えタイミングが異なることとなる。特に、基本的に、上記エコモードが選択される場合のようにSOC下限値Rを低くすると、EVモードからHEVモードへの切り替わりタイミングが遅くなる(EV走行時間が長くなる)。したがって、エンジン12の作動頻度を減らすことができ、燃費性能及び排ガス性能が向上する。しかしながら、バッテリ16のSOCが低くなるため、車両出力性能が低下する。
【0027】
一方、上記パワー優先モードが選択される場合のようにSOC下限値Rを高くすると、EVモードからHEVモードへの切り替わりタイミングが早くなる(EV走行期間が短くなる)。したがって、バッテリ16のSOCが比較的高い状態に維持されるため、車両出力性能が確保される。しかしながら、エンジン12の作動頻度が増大するため、燃費性能及び排ガス性能が低下する。
【0028】
これに対して、後述する各実施形態では、ナビ情報Idpに基づいて、走行シーンに応じた適切なSOC下限値Rを設定し、車両出力性能及びバッテリ残容量の要求を満たしつつ、燃費性能及び排ガス性能を高めるための制御ロジックが実現される。
【0029】
[第1実施形態]
図2は、本実施形態による車両制御方法を説明するフローチャートである。なお、図2及び後述の図3に示す各処理は、コントローラ50によって実行される。
【0030】
図示のように、本実施形態の車両制御方法では先ず、ステップS100において、ナビ情報Idpを取得する。そして、ステップS200において、ナビ情報Idpからシビアランク判定処理を実行する。
【0031】
ここで、シビアランク判定処理は、ハイブリッド車両が上記予定走行区間を走行する際に維持すべきバッテリ充電率の高さを段階的にグレード分けしたシビアランクSRを判定するための処理である。
【0032】
図3は、シビアランク判定処理を説明するフローチャートである。
【0033】
図示のように、シビアランク判定処理では、先ず、ナビ情報Idpに目的地の情報が含まれているか否か(目的地が設定されているか否か)を判定する。そして、目的地が設定されている場合(ステップS210がYesの場合)には、ステップS220~S230の各処理を経てシビアランクSRを判定する(ステップS250)。一方、目的地が設定されていない場合(ステップS210がNoの場合)には、ステップS240の処理を経てシビアランクSRを判定する(ステップS250)。
【0034】
より詳細には、コントローラ50は、目的地が設定されている場合には、先ず、ナビ情報Idpで定められた予定走行区間における直線距離L、推定平均車速ves、及び推定勾配gresを演算する(ステップS220)。
【0035】
ここで、本実施形態の直線距離Lは、予定走行区間における現在地から目的地までを直線上の距離である。すなわち、直線距離Lは、現在地と目的地のそれぞれにおける地図上の位置を特定するだけで、予定走行区間の詳細な経路を把握することなく簡易に演算することができる。
【0036】
推定平均車速vesは、予定走行区間においてハイブリッド車両がとり得る平均車速の推定値である。推定平均車速vesは、例えば、統計平均車速データから定まる車両の平均車速及び/法定車速に基づいて演算することができる。
【0037】
推定勾配gresは、予定走行区間における勾配変化を表す推定勾配情報であり、特に当該勾配変化の推定値である。推定勾配gresは、例えば、直線距離Lに、道路標高データにより定まる現在地から目的地までの直線上の標高差を乗じることで演算することができる。なお、推定勾配gresを、予め記憶領域に記憶させた道路設計基準値データに、ナビ情報Idpから把握される現在地の情報及び目的地の情報を適用することで演算しても良い。また、ナビ情報Idpに予定走行区間における勾配情報が含まれる場合には、当該勾配情報を直接、推定勾配情報として取得しても良い。
【0038】
次に、推定車両出力Ov_es及び推定走行消費電力量Ev_esを演算する(ステップS230)。
【0039】
ここで、推定車両出力Ov_esは、予定走行区間においてハイブリッド車両に対して要求される車両出力O(走行駆動力)の推定値である。特に、本実施形態では、推定車両出力Ov_esとして、要求される車両出力Oの平均値に相当する推定平均車両出力Ovav_es、及び最大値に相当する推定最大車両出力Ovm_esを求める。
【0040】
推定平均車両出力Ovav_esは、例えば、予め所定の記憶領域に記憶された車速-出力マップを参照して推定平均車速vesから基本出力値を求め、当該基本出力値に対して推定勾配gres(特にその平均値)を考慮した補正を行い定めることができる。また、推定最大車両出力Ovm_esは、例えば、推定平均車速vesから車速-出力マップを参照して得た基本出力値に、推定勾配gresの最大値を考慮した補正を行い定めることができる。
【0041】
また、推定走行消費電力量Ev_esは、予定走行区間の走行(現在地から目的地までの走行)により消費される電力量の推定値である。推定走行消費電力量Ev_esは、例えば、直線距離L、推定平均車速ves、及び推定勾配gresから演算することができる。なお、推定走行消費電力量Ev_esを、推定平均車両出力Ovav_esに予定走行時間Δttrを乗じて演算しても良い。
【0042】
そして、推定最大車両出力Ovm_es及び推定走行消費電力量Ev_esからシビアランクSRを判定する(ステップS250)。
【0043】
より具体的に、予め把握されているバッテリ16に応じたバッテリ特性P(SOCあたりの最大バッテリ出力)を考慮して定められたシビアランク判定マップを参照して、推定最大車両出力Ovm_es、及び推定走行消費電力量Ev_esから、該当するシビアランクSRを決定する。
【0044】
ここで、シビアランク判定マップは、車両出力性能を維持しつつバッテリ枯渇を生じさせないSOC範囲(以下、「許容SOC範囲A」と称する)の広さを段階的にグレード分けしたマップである。
【0045】
図4は、シビアランク判定マップの一例を示す図である。図4に示すように、バッテリ特性Pは、一般的にSOCが高いほど最大バッテリ出力が大きくなる傾向を示す。このため、SOCが低いと、バッテリ出力のみでは要求される車両出力Oを賄うことができず、車両出力性能が低下するおそれがある。また、SOCが要求される車両出力Oを満たす水準であったとしても、走行消費電力量Eが高い場合(急勾配路を走行する場合や走行距離が長い場合など)にはバッテリ枯渇が発生するおそれがある。
【0046】
したがって、本実施形態のシビアランク判定マップでは、車両出力O及び走行消費電力量Eに応じて、車両出力性能及びバッテリ残容量の双方が確保される許容SOC範囲Aの広さを段階的にグレード分けして各ランクを割り当てている。
【0047】
より具体的には、シビアランク判定マップでは、任意に規定した複数の車両出力O図4では、小さい方から順にo、o、o、o)を超える各SOC値(白抜きプロット)を特定し、特定した各SOC値に走行消費電力量Eに応じた補正値(図4では、小さい方から順にEv1、Ev2、Ev3、Ev4)を加算した値以上のSOC範囲を許容SOC範囲A図4では、AS1、AS2、AS3、AS4)に定めている。特に、シビアランク判定マップでは、このように定められた許容SOC範囲AS1、AS2、AS3、AS4を閾値として、それぞれのシビアランクSR=「C」、「B」、「A」、「S」が割り当てられている。より詳細には、AS1≦Aの範囲にシビアランクSR=「C」、AS2≦A<AS1の範囲にシビアランクSR=「B」、AS3≦A<AS2の範囲にシビアランクSR=「A」、及びA<AS3の範囲にシビアランクSR=「S」が割り当てられている。
【0048】
なお、同一の車両出力Oに対してこれを超える最大バッテリ出力を与えるSOC値(白抜きプロット)は、バッテリ特性Pのプロファイルにより変動する。このため、各シビアランクSRに割り当てられる許容SOC範囲AS1、AS2、AS3、AS4の値を、バッテリ特性Pの違いに応じて適宜補正することが好ましい。
【0049】
したがって、ステップS230で演算した推定最大車両出力Ovm_es及び推定走行消費電力量Ev_esからバッテリ特性Pを参照して許容SOC範囲Aを求め、これを上記のシビアランク判定マップに当てはめることで、該当するシビアランクSRを判定することができる。
【0050】
一方、図3に戻り、ステップS210で目的地が設定されていないと判断した場合には、ドライビングモード選択信号Sdm及びドライバ学習データを取得する(ステップS240)。
【0051】
ここで、ドライバ学習データとは、ハイブリッド車両の乗員による運転操作の傾向を学習することで得られるデータである。特に、ドライバ学習データには、ドライバに紐づいた運転履歴、走行パターン、及び走行ルートなどが含まれる。
【0052】
そして、ドライビングモード選択信号Sdm及びドライバ学習データに基づいて、シビアランクSRを判定する(ステップS250)。
【0053】
目的地が設定されていない場合には、予定走行区間が定まらないため、推定最大車両出力Ovm_es、及び推定走行消費電力量Ev_esに基づくシビアランク判定を行うことができない。したがって、この場合には、乗員により指定されるドライビングモードや当該乗員の運転傾向を参照して、適切なシビアランクSRを判定する。
【0054】
図5には、ドライビングモード及びドライバ学習データを参照したシビアランク判定ロジックの一例を示す。
【0055】
特に、本実施形態では、ドライビングモードとしてパワー優先モードが選択されている場合には、シビアランクSRを「S」と判定する。一方、ドライビングモードとして通常モード又はエコモードが選択されている場合には、乗員の運転傾向を参照して、シビアランクSRを「A」、「B」、及び「C」の何れか一つに決定する。例えば、運転傾向を、過去運転履歴を参照して「出力重視」、「バランス」、及び「エコ重視」に分類する。そして、「出力重視」である場合にはシビアランクSRを「A」、「バランス」である場合にはシビアランクSRを「B」、及び「エコ重視」である場合にはシビアランクSRを「C」と判定する。
【0056】
図2に戻り、ステップS300以降では、ステップS200で判定したシビアランクSRに基づいてSOC下限値Rを、第1SOC下限値RL1、第2SOC下限値RL2、第3SOC下限値RL3、及び第4SOC下限値RL4(RL1<RL2<RL3<RL4)の何れかに設定する。特に、各SOC下限値RL1、RL2、RL3、RL4は、対応する各シビアランクSRの判定に用いた推定最大車両出力Ovm_esに対して、走行抵抗、モータ出力、及びSOC検出バラツキなどを考慮して定めたマージンを加算した値とすることが好ましい。
【0057】
より具体的には、SOC下限値Rを、シビアランクSRが「C」である場合には第1SOC下限値RL1に(ステップS300~ステップS500が全てNo、ステップS600、及びステップS700)、「B」である場合には第2SOC下限値RL2に(ステップS300及びS400がNO、ステップS500がYes、及びステップS800)、「A」である場合には第3SOC下限値RL3に(ステップS300がNO、S400がYes、及びステップS900)、及び「S」である場合には第4SOC下限値RL4に(ステップS300がNO、ステップS1000)にそれぞれ設定する。
【0058】
そして、設定したSOC下限値Rに基づいて、発電制御(エンジン12及びジェネレータ14の動作点制御)を実行する(ステップS1100)。
【0059】
図6には、判定された各シビアランクSRごとのSOC経時変化の一例を示す図である。図示のように、判定された各シビアランクSRごとにSOC下限値Rが定められることで、車両出力性能を維持しつつ、SOC領域を広く活用してEVモードの継続時間を長くすることができる。
【0060】
より具体的に、シビアランクSRが「C」又は「B」と判定された場合には、SOC下限値Rが比較的低い値の第1SOC下限値RL1又は第2SOC下限値RL2に設定される。このため、上記予定走行区間に基づく走行開始時点の初期SOCから第1SOC下限値RL1又は第2SOC下限値RL2までの広いSOC範囲を利用することができる。したがって、市街地或いは低勾配路における中速走行時などの車両出力Oが低くSOCに余裕があるシーンにおいては、EVモードを長く継続させて燃費性能及び排ガス性能を向上させることができる。
【0061】
一方、シビアランクSRが「A」と判定された場合には、SOC下限値Rがより高い値の第3SOC下限値RL3に設定される。このため、中~高勾配路又は高速走行時時などの車両出力Oが高く一定以上のSOCが求められるシーンにおいては可能な範囲でEVモードを継続させつつも、より早いタイミングで制御モードをEVモードからHEVモードに切り替えて、車両出力性能を確保することができる。
【0062】
さらに、シビアランクSRが「S」と判定された場合には、SOC下限値Rが最も高い第4SOC下限値RL4に設定される。このため、急勾配路などの走行シーンでは、制御モードを速やかにEVモードからHEVモードに切り替えてSOCを高い水準に維持し、車両出力性能を最大限に発揮することができる。
【0063】
以上説明した本実施形態の車両制御方法によれば、以下の作用効果を奏する。
【0064】
本実施形態では、発電装置(エンジン12及びジェネレータ14)と、バッテリ16と、発電装置及びバッテリ16から電力の供給を受けて駆動する駆動モータ18と、を備えたハイブリッド車両において、該ハイブリッド車両の制御モードをHEVモード及びEVモードの何れかに設定し、HEVモードでは発電装置による発電と並行して駆動モータ18への電力供給を行い、EVモードでは発電装置による発電を停止させた状態で駆動モータ18への電力供給を行う車両制御方法が提供される。
【0065】
この車両制御方法では、ナビ情報Idpを取得し、ナビ情報Idpに基づいて現在地から設定された目的地までの予定走行区間を走行する際の車両出力Oを表す推定車両出力Ov_es、及び走行により消費される電力量を表す推定走行消費電力量Ev_esを演算し、推定車両出力Ov_es及び推定走行消費電力量Ev_esに基づいて、EVモードからHEVモードへの切り替えを行うための下限バッテリ充電率(SOC下限値R)を設定する。
【0066】
これにより、ナビ情報Idpから予定走行区間における車両出力O及び走行消費電力量Eを推定して、当該推定結果に基づいてSOC下限値R(HEVモードへの切り替わり頻度)を設定することができる。すなわち、先読み的に取得した予定走行区間の情報を考慮して適切なSOC下限値Rを定めることができる。したがって、予め把握された予定走行区間の走行時において、車両出力性能及びバッテリ残容量の要求を満たしつつ、EVモードの実行時間をできるだけ長くして燃費及び排ガス性能を向上させることができる。
【0067】
特に、本実施形態の車両制御方法では、ナビ情報Idpに基づいて、予定走行区間における直線距離L、推定平均車速ves、及び勾配変化を表す推定勾配情報(推定勾配gres)を取得する。そして、推定平均車速ves及び推定勾配gresに基づいて、推定車両出力Ov_es(特に推定最大車両出力Ovm_es)を演算し、直線距離L、推定平均車速ves、及び推定勾配gresに基づいて、推定走行消費電力量Ev_esを演算し、推定最大車両出力Ovm_es及び推定走行消費電力量Ev_esから、予定走行区間を走行する際に維持すべきバッテリ充電率(SOC)の高さを段階的にグレード分けしたシビアランクSRを判定し、判定したシビアランクSRに基づいてSOC下限値Rを定める。
【0068】
これにより、シビアランクSRを定めてSOC下限値Rを設定するためのより具体的な演算ロジックを実現することができる。特に、ナビ情報Idpから直線距離L、推定平均車速ves、及び推定勾配gresを求めて、必要なSOCを段階的に表したシビアランクSRを参照するという簡素な演算ロジックでSOC下限値Rを求めることができるので、演算負担が軽減される。
【0069】
さらに、本実施形態では、上記車両制御方法の実施に適した車両制御装置として機能するコントローラ50が提供される。
【0070】
特に、コントローラ50は、ナビ情報Idpを取得する取得部と、ナビ情報Idpに基づいて、設定された予定走行区間を走行する際の車両出力Oを表す推定車両出力Ov_es、及び走行により消費される電力量を表す推定走行消費電力量Ev_esを演算する演算部と、推定車両出力Ov_es及び推定走行消費電力量Ev_esに基づいて、EVモードからHEVモードへの切り替えを行うための下限バッテリ充電率(SOC下限値R)を設定する設定部と、を有する。
【0071】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態について説明する。なお、以降説明する各実施形態では、先の実施形態と同様の要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
本実施形態では、図3のステップS250におけるシビアランク判定を、推定最大車両出力Ovm_es及び推定走行消費電力量Ev_esに加え、バッテリ16の温度(以下、「バッテリ温度T」とも称する)を参照して実行する。バッテリ温度Tは、外気温検出値Tから演算することができる。なお、バッテリ温度Tを、バッテリ16又は当該バッテリ16の冷却系に設けられる温度センサの検出値として取得しても良い。
【0073】
図7は、バッテリ温度Tを考慮したシビアランク判定を説明する図である。図示のように、同一使用のバッテリ16であっても、バッテリ温度Tに応じてSOCあたりの最大バッテリ出力が異なる。すなわち、同じ車両出力O図7ではo)に対して、これを超える最大バッテリ出力を与えるSOCの値はバッテリ温度Tによって異なる。特に、図7に示すように、一般的には、バッテリ温度Tが低いほど、同一SOCに対する最大バッテリ出力が小さくなる傾向を示す。
【0074】
したがって、本実施形態では、ステップS230で演算した推定最大車両出力Ovm_es及び推定走行消費電力量Ev_esに基づき、さらにバッテリ温度Tに応じた最大バッテリ出力の違いを加味して許容SOC範囲Aを演算する。このように演算された許容SOC範囲AからシビアランクSRを判定することで、当該判定結果にバッテリ温度Tに応じた出力変動が反映されるので、演算精度をより向上させることができる。
【0075】
[第3実施形態]
以下、第3実施形態について説明する。本実施形態では、予定走行区間おける走行中に推定車両出力Ov_esが所定時間以上に亘って発電装置の最大発電電力(エンジン12の最大出力)を超えるか否かをさらに判定する。なお、この判定は、コントローラ50により、図2に示す各処理と並行して実行される。
【0076】
そして、上記判定結果が肯定的である場合には、図2の処理に基づいて設定されたSOC下限値RLに関わらず、予定走行区間における走行中の制御モードをHEVモードに固定する。
【0077】
これにより、推定車両出力Ov_esが発電装置の最大発電電力を超える状態が継続するシーンにおいては、常にエンジン12を作動させて発電状態を維持する。したがって、予定走行区間が一定距離以上の高速走行路や急勾配路を含む場合などのエンジン12の出力で消費電力を賄うことができないシーン(発電していてもSOCが低下するシーン)であっても、バッテリ枯渇をより確実に回避ことができる。
【0078】
[第4実施形態]
以下、第4実施形態について説明する。本実施形態では、予定走行区間における現在地から目的地までの間に現在地を含めた複数の演算地点Pn(n=0,1,2,3・・・)を設定する。そして、シビアランクSRの判定及びこれに基づくSOC下限値RLの設定を、各演算地点P1,P2,P3・・・の間の直線距離Ld_0→1,Ld_1→2,Ld_2→3・・・、推定平均車速ves_0→1,ves_1→2,ves_2→3、及び推定勾配gres_0→1,gres_1→2,gres_2→3に基づいて実行する。
【0079】
また、演算地点Pnの数は、現在地P0から目的地までの距離及びバッテリ残容量(特に現在地におけるバッテリ残容量)に基づいて定める。特に、現在地P0から目的地までの距離が長いほど又はバッテリ残容量が大きいほど、シビアランクSRの判定に係る誤差が大きくなる傾向を示す。このため、当該距離が長いほど及び/又はバッテリ残容量が大きいほどSOC下限値RLの演算地点Pnの数を増やすことが好ましい。これにより、シビアランク判定に基づいて設定するSOC下限値RLをより最適化することができる。
【0080】
図8は、複数の演算地点Pn(図上はP1~P8)を設定した場合における制御結果の一例を示す図である。特に、図8(a)では予定走行区間における実際の標高を実線で示し、推定される標高を破線で示す。さらに、図8(b)では各演算地点Pnでシビアランク判定(SOC下限値RLの設定)を実行した場合のSOC経時変化を実線で示し、現在地P0から目的地までの直線距離Lなどに基づいて一括してシビアランク判定を行った場合のSOC経時変化を破線で示す。
【0081】
先ず、図8(a)に示すように、推定される標高は現実のそれに対してずれを生じており、そのずれ幅は目的地までの距離が長いほど大きくなる。このため、現在地P0で一括して行ったシビアランク判定に基づくSOC下限値RLを維持すると、図8(b)の破線で示すように、上記標高の推定誤差によりSOCが想定以上に減少して最小SOCを下回る(バッテリ16が枯渇する)。これに対して、本実施形態では、各演算地点Pnでシビアランク判定及び当該判定結果に基づくSOC下限値RLが設定されることで、シビアランク判定精度がより向上し、SOCがより確実に最小SOCを超える値に維持される(図8(b)の実線参照)。
【0082】
[第5実施形態]
本実施形態では、シビアランクSRの判定に基づいてSOC下限値RLを設定している状況下においてバッテリ充電率(SOC検出値Res)を参照して、設定したSOC下限値RLが現実のSOCの挙動から乖離していないかを確認する。シビアランク判定を行うために推定演算された車両出力O及び走行消費電力量Eは、走行抵抗、車両重量、及び天候などの種々の要素により変動することが想定される。このため、本実施形態では、実際のバッテリ16の実SOCを表すSOC検出値Resを監視し、その値に応じて適宜、SOC下限値RLを調節する。より具体的に、SOC検出値ResがSOC下限値RLに対して所定値以上ずれている場合には、SOC下限値RLを補正する。
【0083】
これにより、予定走行区間における走行中に演算されるSOC下限値RLと現実のSOCの乖離を把握して、当該SOC下限値RLを現実の挙動に合わせて補正することができるので、制御精度を向上させることができる。特に、走行抵抗、車両重量、及び天候などのSOC下限値RLの演算(シビアランク判定)では直接考慮されていない要因によるずれも補償することができる。
【0084】
[第6実施形態]
本実施形態では、ステップS100においてナビ情報Idpを取得した際に、上記シビアランク判定と並行して手動によるドライビングモードの選択に対する許可又は不許可を判断する。
【0085】
より具体的には、コントローラ50は、予定走行区間にEVモードのみを許容するEV制限区間(エンジン12の作動が禁止されている区間)が含まれるかをさらに判定する。そして、当該判定結果が肯定的である場合にはドライビングモードの手動選択を不許可とし、そうでない場合にはこれを許可とする。
【0086】
これにより、乗員がドライビングモードを手動選択していても、予定走行区間内にEV制限都市(エンジン作動を禁止している都市)が存在するなどの状況を検知した場合には、ドライビングモードの手動選択を禁止することができる。
【0087】
[第7実施形態]
本実施形態では、SOC下限値RLを設定している状況下において、ハイブリッド車両の車両出力Ov又はバッテリ容量が要求に対して不足すると判断した場合には、音振抑制の観点から定められるエンジン作動を規制するためのエンジン回転数閾値N_thを高くする。より具体的には、エンジン回転数閾値N_thを音振抑制の目的で適切に定められた基本閾値N_th1よりも高い補正閾値N_th2に設定する。
【0088】
これにより、予定走行区間においてエンジン12を作動させる回転数領域を広げて、エンジン作動頻度(HEVモードの実行割合)を増やすことができるため、車両出力Ov及びバッテリ容量の不足を補償することができる。
【0089】
さらに、本実施形態では、エンジン回転数閾値N_thを低下させても、車両出力Ov又はバッテリ容量の不足が解消されない場合には、ハイブリッド車両の車速を制限する。
【0090】
これにより、先ず、走行性能への影響が少ない音振抑制に基づくエンジン作動制限を緩和することで車両出力Ov及びバッテリ容量の不足を補償した上で、それだけは十分でない場合に限り車速制限(出力制限)が行われることとなる。このため、できるだけ車両走行性能への影響を抑えながら車両出力Ov及びバッテリ容量の不足に対する補償を行いつつも、やむを得ない場合にのみ車両走行性能を低下させて補償効果を優先させることができる。
【0091】
さらに、車速を制限する場合に、制限された車速が予定走行区間における推定平均車速vesよりも所定値以上低い場合には、発電装置(エンジン12)を強制的に作動させる。
【0092】
これにより、制限後の車速が予定走行区間で想定されている平均的な車速に対して低くなりすぎる場合には、強制的に発電を実行することでバッテリ容量の不足を解消することができる。
【0093】
なお、外部充電器からバッテリ16へ充電を行うための機能を備えたハイブリッド車両(いわゆるプラグインハイブリッド車両)に本実施形態の制御を適用する際には、エンジン12を強制的に作動させるロジックに代えて又はこれとともに、乗員に外部充電の実行を促す制御(例えば、車載ディスプレイに充電推奨表示を行う表示制御)を採用しても良い。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0095】
12 エンジン
14 ジェネレータ
16 バッテリ
18 駆動モータ
50 コントローラ
100 車両制御システム
200 ナビゲーションシステム
300 手動スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8