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特開2024-141917微細繊維状セルロース含有シート及びこれを用いた照明及び微細繊維状セルロース含有シートの製造方法
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  • 特開-微細繊維状セルロース含有シート及びこれを用いた照明及び微細繊維状セルロース含有シートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141917
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】微細繊維状セルロース含有シート及びこれを用いた照明及び微細繊維状セルロース含有シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 23/08 20060101AFI20241003BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20241003BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241003BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20241003BHJP
   F21V 3/06 20180101ALI20241003BHJP
   B60Q 3/60 20170101ALI20241003BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241003BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20241003BHJP
   F21W 106/00 20180101ALN20241003BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20241003BHJP
【FI】
B32B23/08
B32B5/02 A
B32B7/023
F21V3/00 320
F21V3/00 350
F21V3/06 130
B60Q3/60
F21Y115:10
F21Y115:30
F21W106:00
F21Y115:15
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053796
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000116404
【氏名又は名称】阿波製紙株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 歩美
(72)【発明者】
【氏名】西川 諒平
(72)【発明者】
【氏名】太田 笑美子
(72)【発明者】
【氏名】内田 均
(72)【発明者】
【氏名】越智 優香
【テーマコード(参考)】
3K040
4F100
【Fターム(参考)】
3K040AA02
3K040CA04
3K040CA05
4F100AJ04
4F100AJ04B
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK03
4F100AK03A
4F100AK03C
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100AK25
4F100AK25A
4F100AK25C
4F100AK45
4F100AK45A
4F100AK45C
4F100AK49
4F100AK49A
4F100AK49C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA08
4F100DG01
4F100DG01B
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100GB33
4F100GB41
4F100JK07
4F100JN01
(57)【要約】
【課題】和紙感を持たせた意匠を演出して装飾性を持たせた微細繊維状セルロース含有シート等を提供する。
【解決手段】微細繊維状セルロース含有シート10は、微細繊維状セルロースを含有するシート状の基材1と、基材1の表裏をそれぞれ覆う透光性の樹脂製のカバーシート2とを備える。微細繊維状セルロース含有シート10の、全光線透過率が、70~93%であり、ヘイズ値が、72~95%である。上記構成により、背面側に光源を配置した照明のカバーとして利用する際などに、基材に微細繊維状セルロースを含有させることで透過率を調整し、外部から内面の光源を直接認識できない程度にぼかしつつ、透光性を維持して、背面側の光源からの光を外部に取り出すことが可能となる。また微細繊維状セルロースを含有した基材によって、微細繊維状セルロース含有シート内で光を拡散させて、点状光源を用いた場合に光を分散させて面発光に近付ける効果も得られる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細繊維状セルロース含有シートの基材と、
前記基材の表裏をそれぞれ覆う透光性の樹脂製のカバーシートと、
を備える微細繊維状セルロース含有シートであって、
前記微細繊維状セルロース含有シートの
全光線透過率が、70~93%であり、
ヘイズ値が、72~95%である微細繊維状セルロース含有シート。
【請求項2】
請求項1に記載の微細繊維状セルロース含有シートであって、
前記微細繊維状セルロース含有シートの
全光線透過率が、70~91%であり、
ヘイズ値が、75~95%である微細繊維状セルロース含有シート。
【請求項3】
請求項1に記載の微細繊維状セルロース含有シートであって、
前記基材の坪量を45g/m2~75g/m2としてなる微細繊維状セルロース含有シート。
【請求項4】
請求項3に記載の微細繊維状セルロース含有シートであって、
前記微細繊維状セルロース含有シートのパンクチャーエネルギーが、250mJ以上である微細繊維状セルロース含有シート。
【請求項5】
請求項1に記載の微細繊維状セルロース含有シートであって、
前記微細繊維状セルロース含有シートの比剛性が、2.3GPa以上である微細繊維状セルロース含有シート。
【請求項6】
請求項1に記載の微細繊維状セルロース含有シートであって、
前記微細繊維状セルロース含有シートの厚さが、0.2mm~1.1mmである微細繊維状セルロース含有シート。
【請求項7】
請求項1に記載の微細繊維状セルロース含有シートであって、
前記カバーシートが、透明である微細繊維状セルロース含有シート。
【請求項8】
請求項1に記載の微細繊維状セルロース含有シートであって、
前記カバーシートが、アクリル製である微細繊維状セルロース含有シート。
【請求項9】
請求項1に記載の微細繊維状セルロース含有シートであって、
前記カバーシートを、ラミネート加工により前記基材を挟み込んでなる微細繊維状セルロース含有シート。
【請求項10】
請求項1に記載の微細繊維状セルロース含有シートであって、
前記基材が、抄紙により得られた紙である微細繊維状セルロース含有シート。
【請求項11】
請求項1に記載の微細繊維状セルロース含有シートであって、
光源の前面に配置されて、前記光源を覆う照明用カバーである微細繊維状セルロース含有シート。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の微細繊維状セルロース含有シートであって、
自動車の車内用の光源の前面に配置されて、前記光源を覆う照明用カバーである微細繊維状セルロース含有シート。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の微細繊維状セルロース含有シートであって、
屋内の光源の前面に配置されて、前記光源を覆う照明用カバーである微細繊維状セルロース含有シート。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の微細繊維状セルロース含有シートと、
前記微細繊維状セルロース含有シートの背面に配置された光源と、
を備える照明。
【請求項15】
微細繊維状セルロース含有シートの製造方法であって、
微細繊維状セルロースを湿式抄紙して、微細繊維状セルロース含有シートの基材を得る工程と、
前記基材の表裏をそれぞれ透光性の樹脂製のカバーシートをラミネート加工し、前記微細繊維状セルロース含有シートの
全光線透過率が、70~93%であり、
ヘイズ値が、72~95%である微細繊維状セルロース含有シートを得る工程と
を含む微細繊維状セルロース含有シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、微細繊維状セルロース含有シート及びこれを用いた照明及び微細繊維状セルロース含有シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光源を用いた照明のカバー等に、微細繊維状セルロース含有シート等の透光性のシートが用いられている。このような透光性シートは、消灯時に、透光性シートの背面側に設けた光源が目視されにくいように、すりガラスのように半透明とする等、透過率を抑えることが多い。例えば自動車の内装用照明のカバーは従来、カバーの内部が見えると内装の意匠性を毀損することから、消灯時にカバー部分を目立たないようにしていた(特許文献1~3)。しかしながら、すりガラスのような単調なパターンが多く、意匠的には単調となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-91176号公報
【特許文献2】特開2018-8698号公報
【特許文献3】特開2013-161779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的の一は、和紙感を持たせた意匠を演出して装飾性を持たせた微細繊維状セルロース含有シート及びこれを用いた照明及び微細繊維状セルロース含有シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0005】
第1の側面に係る微細繊維状セルロース含有シートによれば、微細繊維状セルロースを含有するシート状の基材と、前記基材の表裏をそれぞれ覆う透光性の樹脂製のカバーシートと、を備える微細繊維状セルロース含有シートであって、前記微細繊維状セルロース含有シートの、全光線透過率が、70~91%であり、ヘイズ値が、72~95%である。上記構成により、背面側に光源を配置した照明のカバーとして利用する際などに、基材に微細繊維状セルロースを含有させることで透過率を調整し、外部から内面の光源を直接認識できない程度にぼかしつつ、透光性を維持して、背面側の光源からの光を外部に取り出すことが可能となる。また微細繊維状セルロースを含有した基材によって、微細繊維状セルロース含有シート内で光を拡散させて、点状光源を用いた場合に光を分散させて面発光に近付ける効果も得られる。
【0006】
また、第2の側面に係る微細繊維状セルロース含有シートによれば、上記側面において、前記微細繊維状セルロース含有シートの、全光線透過率が、70~91%であり、ヘイズ値が、75~95%である。上記構成により、背面側に光源を配置した照明のカバーとして利用する際には、点灯時に背面側の光源が見えないようにできる。
【0007】
さらに、第3の側面に係る微細繊維状セルロース含有シートによれば、上記いずれかの側面において、前記基材の坪量を45g/m2~75g/m2としている。上記構成により、パンクチャーエネルギーを向上させ、微細繊維状セルロース含有シートの剛性を高めることができる。
【0008】
さらにまた、第4の側面に係る微細繊維状セルロース含有シートによれば、上記いずれかの側面において、前記微細繊維状セルロース含有シートのパンクチャーエネルギーが、250mJ以上である。
【0009】
さらにまた、第5の側面に係る微細繊維状セルロース含有シートによれば、上記いずれかの側面において、前記微細繊維状セルロース含有シートの比剛性が、2.3GPa以上である。
【0010】
さらにまた、第6の側面に係る微細繊維状セルロース含有シートによれば、上記いずれかの側面において、前記微細繊維状セルロース含有シートの厚さが、0.2mm~1.1mmである。
【0011】
さらにまた、第7の側面に係る微細繊維状セルロース含有シートによれば、上記いずれかの側面において、前記カバーシートが、透明である。
【0012】
さらにまた、第8の側面に係る微細繊維状セルロース含有シートによれば、上記いずれかの側面において、前記カバーシートが、アクリル製である。
【0013】
さらにまた、第9の側面に係る微細繊維状セルロース含有シートによれば、上記いずれかの側面において、前記カバーシートを、ラミネート加工により前記基材を挟み込んでいる。
【0014】
さらにまた、第10の側面に係る微細繊維状セルロース含有シートによれば、上記いずれかの側面において、前記基材が、抄紙により得られた紙である。
【0015】
さらにまた、第11の側面に係る微細繊維状セルロース含有シートによれば、上記いずれかの側面において、光源の前面に配置されて、前記光源を覆う照明用カバーである。
【0016】
さらにまた、第12の側面に係る微細繊維状セルロース含有シートによれば、上記いずれかの側面において、自動車の車内用の光源の前面に配置されて、前記光源を覆う照明用カバーである。
【0017】
さらにまた、第13の側面に係る微細繊維状セルロース含有シートによれば、上記いずれかの側面において、屋内の光源の前面に配置されて、前記光源を覆う照明用カバーである。
【0018】
さらにまた、第14の側面に係る微細繊維状セルロース含有シートによれば、上記いずれかの側面における微細繊維状セルロース含有シートと、前記微細繊維状セルロース含有シートの背面に配置された光源とを備える。
【0019】
さらにまた、第15の側面に係る微細繊維状セルロース含有シートの製造方法によれば、微細繊維状セルロースを湿式抄紙して、紙製の基材を得る工程と、前記基材の表裏をそれぞれ透光性の樹脂製のカバーシートをラミネート加工し、前記微細繊維状セルロース含有シートの、全光線透過率が、70~93%であり、ヘイズ値が、72~95%である微細繊維状セルロース含有シートを得る工程とを含む。これにより、背面側に光源を配置した照明のカバーとして利用する際などに、基材に微細繊維状セルロースを含有させることで透過率を調整し、外部から内面の光源を直接認識できない程度にぼかしつつ、透光性を維持して、背面側の光源からの光を外部に取り出すことが可能となる。また微細繊維状セルロースを含有した基材によって、微細繊維状セルロース含有シート内で光を拡散させて、点状光源を用いた場合に光を分散させて面発光に近付ける効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態1に係る微細繊維状セルロース含有シートを示す模式断面図である。
図2図1の遮光性シートを用いた照明装置の例を示す模式断面図である。
図3】実施例1~6、比較例1~7に係る微細繊維状セルロース含有シートの、全光線透過率とヘイズ値の関係を示すグラフである。
図4】表4における、消灯時の透け感とムラ、点灯時の透け感の、各評点の例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本開示の技術思想を具体化するための例示であって、本開示は以下のものに限定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特定的な記載がない限りは、本開示の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本開示を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0022】
自動車の車内の照明等では、光源を透光性の樹脂製のカバーで覆う構造が採用されている。このような構成においては、カバー内部の光源の光を外部に取り出す必要上、透光性が求められるが、透明度が高いと、内部に配置した光源が外部から視認できてしまい、見栄えが悪くなるという問題があった。このため、すりガラス状のカバー等が用いられていた。
【0023】
一方で、車載用途においては、安全性などの観点から高い耐衝撃性が求められている。しかしながら、樹脂製のカバーでは耐衝撃性が不十分となることがあった。そこで、ガラス繊維やカーボン繊維等で強化した繊維強化プラスチックを利用することが考えられる。
【0024】
しかしながら、一般にこのような繊維強化プラスチックはリサイクルし難いという問題があった。近年では企業活動においてもESGやSDGsへの対応が求められており、環境に配慮した材質の選定等も考慮する必要がある。
【0025】
このような背景に鑑みて、本願発明者らは鋭意研究の結果、繊維強化プラスチックを用いることに変えて、微細繊維状セルロース含有シートの基材を基材として、樹脂製のカバーシートをラミネート加工で挟み込んだ多層構造とするに至った。多層構造により耐衝撃性を高め、パンクチャーエネルギーを増すと共に、万一微細繊維状セルロース含有シートが破損した場合でも、芯材の微細繊維が飛散することを抑制できる効果が得られる。またカバーシートで紙製の基材の表裏を覆うことで、万一微細繊維状セルロース含有シートが衝撃等により破損した場合でも、繊維が飛散する事態を抑制することができる。
【0026】
さらにカバーシートの透明度を上げる一方で、抄紙した基材を挟み込むことで繊維感を表出させて透光性を抑え、微細繊維状セルロース含有シート背面の光源を隠しながら、透光性の高いカバーシートを通じて基材の繊維を敢えて視認させることで、和紙のような意匠で和の感覚や高級感を演出し、意匠性を高める効果も発揮できる。加えて、セルロースナノファイバー含有シートをカバーシートと分離したことにより、リサイクルし易く環境負荷の低い微細繊維状セルロース含有シートを実現している。以下、実施形態1に係る微細繊維状セルロース含有シートについて、説明する。
[実施形態1]
【0027】
実施形態1に係る微細繊維状セルロース含有シート10の模式断面図を図1に示す。この図に示す微細繊維状セルロース含有シート10は、基材1と、基材1の表裏をそれぞれ覆う一対のカバーシート2を備える。
(基材1)
【0028】
基材1は、微細繊維状セルロースを含有するシートである。この基材1は、抄紙工程により微細繊維状セルロース(以下、「CNF」ともいう。)を含有させた紙状に構成される。
(カバーシート2)
【0029】
各カバーシート2は、透光性を有する樹脂製である。好適には、熱可塑性樹脂シートを用いる。好ましくは、アクリル、イソソルバイドポリカーボネート、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ナイロン等が利用できる。中でも、アクリルは強度とコストの面で好ましい。
(全光線透過率)
【0030】
全光線透過率は、100%の光がシートを通過した後、何%に変化するかを示すものである。全光線透過率は、JIS K7361に従って測定できる。微細繊維状セルロース含有シート10の全光線透過率は、70~93%とすることが好ましい。より好ましくは、全光線透過率を70~90%とする。微細繊維状セルロース含有シート10の全光線透過率を調整するには、基材1の坪量を調整する。
(ヘイズ値)
【0031】
ヘイズ値は、全透過光に対する拡散光の割合を示す。ヘイズ値が大きいほど、微細繊維状セルロース含有シート10の裏面側を視認し難くし、また表面側での外部からの光の映り込みが弱くなる。微細繊維状セルロース含有シート10のヘイズ値は、72~95%とすることが好ましい。より好ましくは、ヘイズ値を75~95%とする。微細繊維状セルロース含有シート10のヘイズ値を調整するには、基材1の坪量を調整する。
【0032】
このように全光線透過率とヘイズ値を調整することで、背面側に光源を配置した照明のカバーとして利用する際などに、光源の消灯時にはムラが小さく、長い繊維を視認可能な和紙感のある微細繊維状セルロース含有シートを得られることが、本願発明者らの試験により判明した。
(基材1の坪量)
【0033】
また基材1の坪量を45g/m2~75g/m2とすることが好ましい。このように基材1の坪量を調整することで、パンクチャー試験におけるパンクチャーエネルギーの向上が図られ、もって微細繊維状セルロース含有シート10の剛性を増すことができる。好ましくは、微細繊維状セルロース含有シート10のパンクチャーエネルギーを、250mJ以上とする。これにより、耐衝撃性を高めて車載用としての実用に耐え得る微細繊維状セルロース含有シートを実現できる。
【0034】
さらに微細繊維状セルロース含有シート10の厚さは、0.2mm~1.1mmとすることが好ましい。
(照明装置100)
【0035】
このような微細繊維状セルロース含有シート10は、照明用のカバーとして利用できる。照明装置100の一例を、図2の模式断面図に示す。この図に示す照明装置100は、光源2と、光源2を収納するケース30と、遮光性シートを備える。光源2は、発光ダイオード(Light-emitting diode:LED)や半導体レーザ(Laser Diode:LD)、有機EL(OLED)等の半導体発光素子が好適に利用できる。特に発光ダイオードは、低消費電力で球切れが少なく、安価で入手も容易であり、好ましい。また、発光ダイオードなどの消費電力を少なくした光源2を用いても、微細繊維状セルロース含有シート10の全光線透過率を維持することで、点灯時に明るさを維持できる。
【0036】
ケース30は、発光面を開放させた有底箱状の外形としている。なおケース30の外形は、これに限らず、筒状や球状など、任意の形状が利用できる。また車載用や屋内用などにおいては、壁面に埋め込むユニット状に構成することもできる。好ましくは、放熱性や耐衝撃性に優れた材質、例えば樹脂製や金属製等とする。
【0037】
微細繊維状セルロース含有シート10は、ケース30の開放面に配置される。例えばケースの開放面の周囲に接着剤により固定される。あるいは、ケースの開放面の端縁と、端縁に重ねる枠とを嵌合させて、枠とケース開放端面との間で微細繊維状セルロース含有シートの外周を挟持する。
【0038】
微細繊維状セルロース含有シート10の裏面側と、光源2の発光面との間の距離dは、光源2の指向特性や光量、光源2の大きさなどの光学設計や、許容されるケース30の厚さなどに応じて設計される。距離dが近いと、照明装置100の消灯時に光源2を認識され易くなる。逆に距離dが遠いと、視認され難く、また光が拡散されやすくなる。一方で照明装置100のケース30自体の薄型化が要求されることがあるため、これらに応じて設計される。
(微細繊維状セルロース含有シートの製造方法)
【0039】
ここで微細繊維状セルロース含有シートの製造方法を説明する。
(基材の製造方法)
【0040】
まず微細繊維状セルロースを湿式抄紙して、紙製の基材、すなわち微細繊維状セルロース含有シートを得る製造方法を説明する。例えばJIS P 8222に基づき、以下の手順で微細繊維状セルロース含有シートを製造する。
1 微細繊維状セルロースを含む原料を採取し、濃度0.2%~0.5%に希釈し、ミキサーで離解を行う。
2 湿潤紙力剤を添加し、攪拌を行う。
3 角型シートマシンの排水バルブを閉じ、給水バルブを開いて金網を洗浄する。
4 上部を固定した後、水を入れ、水面が金網面から50mm以上の高さになるようにする。
5 離解した原料を角型シートマシンに投入し、分散・攪拌を行い、排水バルブを開けて排水し、金網上にシートを作製する。
6 吸取紙を用いてシートをピックアップし、プレス機により脱水を行う。
7 100℃に熱された電気板上で絶乾し、乾燥したシート(微細繊維状セルロース含有シート基材)を得る。
(基材とカバーシートのラミネート方法)
【0041】
以上のようにして基材を得た上で、次に基材の表裏をそれぞれ透光性の樹脂製のカバーシートで覆って、微細繊維状セルロース含有シートを得る。ここでは、微細繊維状セルロース含有シートの基材を乾燥させた状態で、透光性の樹脂製のカバーシートで覆って、透明度の高い微細繊維状セルロース含有シートを得る。例えば基材の上下にカバーシートとして熱可塑性樹脂シートを重ねた状態で熱プレスしてラミネート加工する。熱プレスは、熱可塑性樹脂シートで基材を挟んだ状態で、例えば10MPaで10分間加熱して行う。
【0042】
なお、基材とカバーシートを積層する工程は、熱プレス成形に限られず、既知の方法を適宜利用できる。例えば微細繊維状セルロース含有シートとして、自動車内装の照明用カバーを製造する場合は、熱プレス成形の他、真空成形やフィルムインサート成形等も利用できる。温度は、180℃以下とすることが望ましい。180℃を超えると基材が変色する可能性がある。なお真空成形では変色が抑制されるため、温度はこれに限定されない。
[実施例]
【0043】
実施例1~6及び比較例1~7に係る微細繊維状セルロース含有シートを作成し、特性を測定した。各実施例に係る基材の坪量、密度、基材の厚さ、全体の厚さ、全光線透過率、ヘイズ値の測定結果を表1に示す。また各実施例、比較例における基材の組成と配合比を、表2に示す。
【0044】
各実施例で用いた微細繊維状セルロースは、以下の条件に合致するものを使用した。
・カナダ標準ろ水度法(JIS P 8121-2)によるフリーネス値が、50~200mL
・カナダ標準ろ水度法(JIS P 8121-2)で得られた濾液の660nmの直線透過率が、3%以下
【0045】
このようにして得られた基材の表裏を、カバーシートで覆うようにラミネート加工する。ここではカバーシートとして、厚さ0.12mmのアクリル樹脂製シートを用いた。ラミネート加工の条件は、熱圧プレス装置を用いて、温度180℃、圧力8MPaで3分加熱した。なお、比較例6、7においては基材のみとした。
【0046】
このようにして得られた実施例1~6及び比較例1~7に係る微細繊維状セルロース含有シートの厚さ、比重、強度を測定した。また各微細繊維状セルロース含有シートの特性として、全透過率、ヘイズ値を測定した。全透過率の測定には、スガ試験機株式会社のヘイズメーターHZ-V3用いて、JIS K7361の条件で行った。ヘイズ値の測定には、スガ試験機株式会社のヘイズメーターHZ-V3を用いて、JIS K7136の条件で行った。これらの結果を、以下の表1に示す。また各実施例、比較例に係る微細繊維状セルロース含有シートの、全光線透過率とヘイズ値をプロットしたグラフを図3に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
表1に示すように、実施例に係る微細繊維状セルロース含有シートでは高い全光線透過率が得られていることが確認された。またヘイズ値も良好な値が得られた。各実施例に係る微細繊維状セルロース含有シートでは、光源の点灯時には下の光源が見えない状態としつつ光取り出しに優れ、また消灯時には微細繊維状セルロース含有シート表面にムラのない長い繊維が視認できるようにし、背面側の光源を視認され難くして、これら相反する特性の両立に成功している。
【0050】
また、各実施例、比較例に係る微細繊維状セルロース含有シートを、図2に示す照明装置100に組み込んで、内部の光源の見え方を、光源の点灯時と消灯時でそれぞれ評価した。光源には、草心デジタル有限会社製SC5050RGB(定格電流20mA)を搭載したテープLED(株式会社ピースコーポレーション RGB+W 5050テープLED 非防水[9579])を15球(60球の定格電力19.2W)用いた。ケースは、ABS樹脂製の7.5cm×7.5cm×2cmの箱体を用いて、微細繊維状セルロース含有シートと光源の発光面との距離dを2cmとした。この結果を表3に示す。
【0051】
また評価に係る評点の定義を表4に示す。表4に示す評点の内、消灯時の透け感とムラ、及び点灯時の透け感について、各評点の実際の状態の例を、図4の写真に示す。なお、定義中の長い繊維と短い繊維については、7mm×6mmの視野で4視野観察した結果、目視した長さが3mm以上を長い繊維、3mm未満を短い繊維と定義した。また4視野観察とは、倍率15倍のスケールつきルーペ(PEAK製)で、7mm×6mmの4視野分を観察したものである。顕微鏡でも観察可能であり、目視できる繊維をマーキングし、その長さを計測できる。
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
表3に示すように、いずれの実施例も比較例に比べ、高い評点を得ていることが確認された。このように、背面の光源が見えない透け感としつつ、消灯時に繊維が目視できムラの少ない、和紙的な意匠を表出させた高級感のある微細繊維状セルロース含有シートが得られる。
(パンクチャーエネルギーの測定方法)
【0055】
また、各実施例及び比較例に係る微細繊維状セルロース含有シートについて、パンクチャーエネルギー、非剛性、飛散抑制効果を測定した。まずパンクチャーエネルギーの測定方法は、ISO6603-2に従った。ここでは各実施例及び比較例に係る微細繊維状セルロース含有シートのサンプルサイズを600mm角とし、温度23℃、速度1m/sec、支持台φ40mm、ストライカーφ10mmで、島津製作所製高速衝撃試験機HTM-1またはHITS-P10を用いてパンクチャー試験を行った。パンクチャーエネルギーの基準は、比較例6に係る一般的なアクリル(商品名デルペット80N)として、そのパンクチャーエネルギー220mJよりも高いものを合格とした。
(比剛性)
【0056】
比剛性は、引張弾性率を比重で割った値として算出した。また比剛性の基準は、上記と同じく比較例6に係る一般的なアクリル(商品名デルペット80N)として、その比剛性2.2GPaよりも高いものを合格とした。
(飛散抑制の評価)
【0057】
飛散抑制の評価は、パンクチャー試験後の600mm×600mm試験片のうち、飛散した面積の割合を欠損率と定義した。ここでは欠損率が0%を○、欠損率が0超~10%未満を△、欠損率が10%以上を×とした。これらの測定結果を、表5に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
表5に示すように、実施例1、2はパンクチャーエネルギー270mJ以上という高い値を達成した。特に実施例6は3697mJという優れた値を示した。また比剛性については、いずれの実施例も2.1GPa以上を達成した。特に実施例4は2.3GPa、実施例5、6は2.6GPa以上を示した。さらに飛散抑制効果についても、実施例4を除き、欠損率0%を示した。このように、各実施例に係る微細繊維状セルロース含有シートのサンプルは、高いパンクチャーエネルギーを示していることが確認され、その優位性が実証された。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示に係る微細繊維状セルロース含有シート及びこれを用いた照明及び微細繊維状セルロース含有シートの製造方法は、車載用のキャビン内の照明や表示用、演出用のランプのカバーとして好適に利用できる。また車載用に限らず、住宅やオフィスなどの室内用の照明のカバーとしても利用できる。
【0061】
また天然由来のセルロースナノファイバーを活用することで、従来のガラス繊維や炭素繊維の使用量を低減させ、環境負荷を低減できる結果、2015年9月の国連サミットで採択された国際目標SDGs(持続可能な開発目標)に掲げられた17のゴール及び169のターゲットの内、
・「8.働きがいも経済成長も」、「8.4 2030年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る。」
・「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」、「9.4 2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う。」、
・「11.住み続けられるまちづくりを」、「11.6 2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。」、
「12.つくる責任 つかう責任」、「12.4 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。」などに資する技術である。
【符号の説明】
【0062】
100…照明装置
1…基材
2…カバーシート
10…微細繊維状セルロース含有シート
20…光源
30…ケース
図1
図2
図3
図4