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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141927
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】測量装置および測量方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G01C15/00 103E
G01C15/00 103C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053808
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】菊池 武志
(72)【発明者】
【氏名】高野 祐次
(57)【要約】
【課題】ジェスチャ入力により、一連の測定操作を簡便に実行することができる測量装置を提供する。
【解決手段】測量装置100は、測定対象物に測距光を送光し、前記測定対象物からの反射光を受光して、前記測定対象物までの距離を測定する測距部11と、測距光の光軸の角度を検出する測角部12と、測距部11を格納する望遠鏡4cと、望遠鏡4cを水平および鉛直に回転駆動する回転駆動部20と、望遠鏡4cの視準方向を撮影するカメラ50と、測距部11、測角部12、回転駆動部20およびカメラ50とを制御する制御演算部40とを備え、制御演算部40は、現場図面に設定された測定対象物の測定点を、測定対象物の測定面ごとに管理し、カメラ50により認識される作業者のジェスチャに従って測定を実行し、ジェスチャは、測定面ごとに測定開始点を指定する開始点指定ジェスチャと、測定面ごとの前記測定の開始および測定の進行パターンを指示する測定ジェスチャを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に測距光を送光し、前記測定対象物からの反射光を受光して、前記測定対象物までの距離を測定する測距部と、
前記測距光の光軸の角度を検出する測角部と、
前記測距部を格納する望遠鏡と、
前記望遠鏡を水平および鉛直に回転駆動する回転駆動部と、
前記望遠鏡の視準方向を撮影するカメラと、
前記測距部、前記測角部、前記回転駆動部および前記カメラとを制御する制御演算部とを備え、
前記制御演算部は、現場図面に設定された前記測定対象物の測定点を、前記測定対象物の測定面ごとに管理し、前記カメラにより認識される作業者のジェスチャに従って測定を実行し、前記ジェスチャは、前記測定面ごとに測定開始点を指定する開始点指定ジェスチャと、前記測定面ごとの前記測定の開始および前記測定の進行パターンを指示する測定ジェスチャを備えることを特徴とする測量装置。
【請求項2】
前記測定の進行パターンは、前記ジェスチャの手の動き方向と関連付けられていることを特徴とする請求項1に記載の測量装置。
【請求項3】
前記制御演算部は、2以上の既知点を測定して、前記測量装置の位置および方向を把握し、前記現場図面に設定された前記測定点を、前記カメラにより取得した現場画像に重ねた測定画像を表示部に表示するように構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の測量装置。
【請求項4】
前記カメラは、動画像を取得可能な深度カメラであり、
前記制御演算部は、前記測量装置が移動しても前記カメラが3以上の測定済の測定点を参照点として捕捉するように制御し、前記参照点のそれぞれと前記測量装置との距離を算出し、前記参照点の座標および、前記参照点のそれぞれと前記測量装置との距離に基づいて、前記測量装置が移動しても、リアルタイムで前記測量装置の位置座標を把握可能とすることを特徴とする請求項1または2に記載の測量装置。
【請求項5】
音および光の少なくとも一方を発するインジケータをさらに備え、
前記制御演算部は、前記カメラが捕捉する前記測定済の測定点が2以下になった場合に、前記インジケータが警告を発することを特徴とする請求項4に記載の測量装置。
【請求項6】
前記カメラは、可視のレーザ光源を備え、
前記参照点を捕捉している時に、レーザ光を前記参照点に照射することを特徴とする請求項4または5に記載の測量装置。
【請求項7】
前記制御演算部は、前記現場図面に設定された前記測定点と、前記現場画像から認識される特徴点とを比較して、前記現場図面の前記測定点と合致しない前記現場画像の前記特徴点を、測定点として追加することを特徴とする請求項3に記載の測量装置。
【請求項8】
前記制御演算部は、測定したい点を指すジェスチャを前記カメラに認識させることにより、指した点を測定点として、前記現場図面および前記測定画像に追加することを特徴とする請求項3に記載の測量装置。
【請求項9】
測定対象物に測距光を送光し、前記測定対象物からの反射光を受光して、前記測定対象物までの距離を測定する測距部と、前記測距光の光軸の角度を検出する測角部と、前記測距部を格納する望遠鏡と、前記望遠鏡を水平および鉛直に回転駆動する回転駆動部と、前記望遠鏡の視準方向の現場風景を撮影するカメラと、前記測距部、前記測角部、前記回転駆動部および前記カメラとを制御する制御演算部とを備える測量装置を用いる測量方法であって、前記方法は、
前記制御演算部により前記測定対象物に設定された測定点を、前記測定対象物の測定面ごとに管理し、
前記カメラにより作業者の開始点指定ジェスチャを認識して、現在の測定面の測定開始点を指定し、
前記カメラにより作業者の測定ジェスチャを認識して、測定ジェスチャで指定された測定の進行パターンに従って前記現在の測定面の測定点を測定し、
前記現在の測定面の全測定点の測定を行うと、前記開始点指定ジェスチャまたは前記測定ジェスチャにより次の測定面の測定点を測定することを特徴とする方法。
【請求項10】
前記カメラは、動画像を取得可能な深度カメラであり、
前記方法は、
2以上の既知点を測定することにより、測量装置の位置および方向を算出し、
前記カメラにより現場画像を取得し、
前記測定対象物に設定された複数の測定点を含む現場図面を読み込んで、前記現場画像に、前記測定点を重ねて表示し、
前記ジェスチャの指示に従って測定点を測定し、
前記測定の進捗を認識可能に前記測定点の表示を更新し、
前記カメラが前記測量装置が移動しても前記カメラが3以上の測定済の測定点を参照点として捕捉するように制御し、前記参照点のそれぞれと前記測量装置との距離を算出し、前記参照点の座標および、前記参照点のそれぞれと前記測量装置との距離に基づいて、前記測量装置が移動しても前記測量装置の位置を把握可能とし、
前記測量装置を移動して別の点に設置して、前記ジェスチャの指示に従って測定点を測定することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量装置に関し、より具体的には、測距光を測定対象物に出射して反射光を受光して、測定対象物を測距測角する測量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1,2に開示されたような、ジェスチャ入力により操作可能な測量装置が知られている。特許文献1の光波距離計は、測定前に測距光を出射し、それを遮る手の動きを受光部で検出することにより、測定を実行する。一方、特許文献2のトータルスーションは、望遠鏡に設けた撮像部で、作業者のジェスチャを認識して、入力ジェスチャに対応する測量装置のオペレーションを実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0002806号明細書
【特許文献2】特開2019-211222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、ジェスチャ入力により操作可能な測量装置は、ワンマン測量の負担を軽減するものであったが、測定作業の負担を軽減するために、さらなる改善が求められていた。
【0005】
本発明は係る事情を鑑みてなされたものであり、ジェスチャ入力により、一連の測定操作を簡便に実行することができる測量装置および測量方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一つの態様に係る測量装置は以下の構成を有する。
1.測定対象物に測距光を送光し、前記測定対象物からの反射光を受光して、前記測定対象物までの距離を測定する測距部と、前記測距光の光軸の角度を検出する測角部と、前記測距部を格納する望遠鏡と、前記望遠鏡を水平および鉛直に回転駆動する回転駆動部と、前記望遠鏡の視準方向を撮影するカメラと、前記測距部、前記測角部、前記回転駆動部および前記カメラとを制御する制御演算部とを備え、前記制御演算部は、現場図面に設定された前記測定対象物の測定点を、前記測定対象物の測定面ごとに管理し、前記カメラにより認識される作業者のジェスチャに従って測定を実行し、前記ジェスチャは、前記測定面ごとに測定開始点を指定する開始点指定ジェスチャと、前記測定面ごとの前記測定の開始および前記測定の進行パターンを指示する測定ジェスチャを備える。
【0007】
2.上記1の態様において、前記測定の進行パターンは、前記ジェスチャの手の動き方向と関連付けられていることも好ましい。
【0008】
3.上記1,2の態様において、前記制御演算部は、2以上の既知点を測定して、前記測量装置の位置および方向を把握し、前記現場図面に設定された前記測定点を、前記カメラにより取得した現場画像に重ねた測定画像を表示部に表示するように構成されていることも好ましい。
【0009】
4.上記1~3の態様において、前記カメラは、動画像を取得可能な深度カメラであり、
前記制御演算部は、前記測量装置が移動しても前記カメラが3以上の測定済の測定点を参照点として捕捉するように制御し、前記参照点のそれぞれと前記測量装置との距離を算出し、前記参照点の座標および、前記参照点のそれぞれと前記測量装置との距離に基づいて、前記測量装置が移動しても、リアルタイムで前記測量装置の位置座標を把握可能とすることも好ましい。
【0010】
5.上記4の態様において、音および光の少なくとも一方を発するインジケータをさらに備え、前記制御演算部は、前記カメラが捕捉する前記測定済の測定点が2以下になった場合に、前記インジケータが警告を発することも好ましい。
【0011】
6.上記4、5の態様において、前記カメラは、可視のレーザ光源を備え、前記参照点を捕捉している時に、レーザ光を前記参照点に照射することも好ましい。
【0012】
7.上記1~6の態様において、前記制御演算部は、前記現場図面に設定された前記測定点と、前記現場画像から認識される特徴点とを比較して、前記現場図面の前記測定点と合致しない前記現場画像の前記特徴点を、測定点として追加することも好ましい。
【0013】
8.前記1~7の態様において、記制御演算部は、測定したい点を指すジェスチャを前記カメラに認識させることにより、指した点を測定点として、前記現場図面および前記測定画像に追加することも好ましい。
【0014】
また、本発明の別の態様に係る測量方法は、以下の構成を有する。
9.測定対象物に測距光を送光し、前記測定対象物からの反射光を受光して、前記測定対象物までの距離を測定する測距部と、前記測距光の光軸の角度を検出する測角部と、前記測距部を格納する望遠鏡と、前記望遠鏡を水平および鉛直に回転駆動する回転駆動部と、前記望遠鏡の視準方向の現場風景を撮影するカメラと、前記測距部、前記測角部、前記回転駆動部および前記カメラとを制御する制御演算部とを備える測量装置を用いる測量方法であって、前記方法は、前記制御演算部により前記測定対象物に設定された測定点を、前記測定対象物の測定面ごとに管理し、前記カメラにより作業者の開始点指定ジェスチャを認識して、現在の測定面の測定開始点を指定し、前記カメラにより作業者の測定ジェスチャを認識して、測定ジェスチャで指定された測定の進行パターンに従って前記現在の測定面の測定点を測定し、前記現在の測定面の全測定点の測定を行うと、前記開始点指定ジェスチャまたは前記測定ジェスチャにより次の測定面の測定点を測定する。
【0015】
10.上記9の態様において、前記カメラは、動画像を取得可能な深度カメラであり、記方法は、2以上の既知点を測定することにより、測量装置の位置および方向を算出し、前記カメラにより現場画像を取得し、前記測定対象物に設定された複数の測定点を含む現場図面を読み込んで、前記現場画像に、前記測定点を重ねて表示し、前記ジェスチャの指示に従って測定点を測定し、前記測定の進捗を認識可能に前記測定点の表示を更新し、前記カメラが前記測量装置が移動しても前記カメラが3以上の測定済の測定点を参照点として捕捉するように制御し、前記参照点のそれぞれと前記測量装置との距離を算出し、前記参照点の座標および、前記参照点のそれぞれと前記測量装置との距離に基づいて、前記測量装置の位置をリアルタイムに把握し、前記測量装置を移動して別の点に設置して、前記ジェスチャの指示に従って測定点を測定する。
【発明の効果】
【0016】
上記態様に係る測量装置によれば、ジェスチャ入力により、一連の測定操作を簡便に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る測量装置の使用状態を例示する外観概略図である。
図2】(A)は同測量装置の構成ブロック図であり、(B)は同測量装置の制御演算部の機能ブロック図である。
図3】同測量装置を用いて測量を実施する現場の一例の現場画像の例を示す図である。
図4】上記現場の一例の上面図を示す測量図面である。
図5】(A)は、上記現場において、同測量装置のカメラにより取得される現場が画像の一例を示す図であり、(B),(C)は、同測量装置の測定点表示部による測定点の表示を説明する図である。
図6】(A)~(C)は、同測量装置の自位置把握部による、自位置の把握の方法を説明する図である。
図7】(A)~(C)は、同測量装置の自位置把握部による、自位置の把握の方法を説明する図である。
図8】(A),(B)は、同測量装置のジェスチャ測定部による、測定面の設定を説明する図である。
図9A】同測量装置に設定されたジェスチャとジェスチャに対応する測量装置の動作の例を示す図である。
図9B】同測量装置に設定されたジェスチャとジェスチャに対応する測量装置の動作の例を示す図である。
図9C】同測量装置に設定されたジェスチャとジェスチャに対応する測量装置の動作の例を示す図である。
図9D】同測量装置に設定されたジェスチャとジェスチャに対応する測量装置の動作の例を示す図である。
図10】上記測量装置を用いる測量方法のフローチャートである。
図11】上記測量装置を用いる測量方法におけるジェスチャによる測定のフローチャートである。
図12】上記測量装置の1つの変形例に係る制御演算部の機能ブロック図である。
図13】上記測量装置の別の変形例に係る制御演算部の機能ブロック図である。
図14】さらに別の変形例に係る測量装置が、参照点を捕捉しながら移動している状態を示す図である。
図15】さらに別の変形例に係る測量装置を用いる測量方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、対応する構成には同一の名称を付して、重複する説明を適宜省略する。各図は縮尺や位置関係を正確に反映して描画されているとは限らないことは留意されたい。また、下記の実施の形態は、一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
1.測量装置100
図1は、本発明の実施の形態に係る測量装置100の使用状態を例示する外観概略図である。図2(A)は、測量装置100の構成ブロック図であり、図2(B)は、同機能ブロック図である。測量装置100は、いわゆるモータドライブトータルステーションである。測量装置100は、三脚2、および三脚2に取り付けられた整準台3を介して設置される。測量装置100は、外観上、整準台3に着脱可能に取り付けられる基盤部4aと、基盤部4aに軸H-H回りに360°水平回転可能に設けられた托架部4bと、托架部4bの凹部5に、軸V-V回りに鉛直回転可能に設けられた望遠鏡4cとを備える。
【0020】
また、測量装置100は、測量部10、回転駆動部20、自動視準部30、制御演算部40、カメラ50、表示部60、記憶部70、操作部80,およびインジケータ90を備える。
【0021】
測量部10は、測距部11と測角部12を備える。測距部11は、公知のEDM(Electro Distance Meter)であり、例えばLED,レーザダイオード等の発光素子、測距光学系、参照光学系、およびアバランシェフォトダイオード等の受光素子を備える。測距部11は、望遠鏡4c内に配置され、測距光学系は、望遠鏡4cの視準光学系と、光軸が共通であり、一部の光学要素を共有する。測距部11は、発光素子から測距光を出射し、測定対象物からの反射光を受光する。測距部11で取得される発光信号と受光信号の位相差または時間差により、測定対象物までの距離を測定することができる。測角部12は、水平角検出器12aおよび鉛直角検出器12bを備える。水平角検出器12aおよび鉛直角検出器12bはロータリエンコーダである。
【0022】
回転駆動部20は、水平回転駆動部21および鉛直回転駆動部22を備える。水平回転駆動部21および鉛直回転駆動部22はモータである。水平回転駆動部21は基盤部4aに備えられ、托架部4bを軸H-H周りに水平回転させる。水平角検出器12aは、水平回転駆動部21の回転軸部に設けられ、托架部4bの水平角、すなわち望遠鏡4cの視準方向の水平角を検出する。鉛直回転駆動部22は、托架部4bに設けられ、望遠鏡4cを軸V-V周りに鉛直回転させる。鉛直角検出器12bは、鉛直回転駆動部22の回転軸部に設けられ、望遠鏡4cの視準方向の鉛直角を検出する。このようにして、測距光の出射方向の水平角および鉛直角を検出することができる。測量部10で取得される検出信号は、制御演算部40に入力される。
【0023】
自動視準部30は、測距光と出射光軸を共通する視準光学系、視準用光源、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor),CCD(Charge Coupled Device)等のイメージセンサを少なくとも備える。自動視準部30は、視準光を視準用光源から出射し、測定点からの反射視準光をイメージセンサで受光して、受光結果に基づいて、視準光軸を測定点に合致させる自動視準を行う。
【0024】
カメラ50は、望遠鏡4cの上部に設けられ、望遠鏡4cの視準方向の現場風景の動画像および静止画像(以下、現場画像という。)を取得する。カメラ50は、レンズ、およびCMOS、CCD等のイメージセンサを備える所謂デジタルカメラである。カメラ50は、画角が60°以上の広角カメラであり、画角が150°以上であることが好ましく、360°の全天球カメラでもよい。また、カメラ50は、深度カメラであり、撮影物の深度情報を取得することが可能である。深度情報の取得方式としては、複数台のカメラを使用するステレオ方式や、赤外光を発光する光源とカメラを組み合わせたToF(Time of Flight)方式等、公知の方式を採用することができる。カメラ50の各画素の座標は算出可能となっている。また、深度情報を取得することにより各画素の3次元座標が把握可能である。また、測量装置100のローカル座標の原点となる測量装置100の器械中心Oと、カメラ50のローカル座標の原点となるカメラの中心は、共通または位置関係が既知とされており、測量部10で取得される測距・測角データから算出される座標と、カメラ50で取得される画像内の座標は、共通の座標空間で扱うことができる。従って、以下の説明において、測量装置100の器械中心Oを、カメラ50の中心でもあるとして取り扱う。
【0025】
表示部60は、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等である。表示部60は、制御演算部40の制御に従って、測量結果や、操作のための画面等を表示する。また、カメラ50で撮影した現場画像51および現場画像51に基づく測定画像52を表示する。
【0026】
記憶部70は、例えば、ハードディスクドライブ等の磁気ディスク、CD(Compact Disc),DVD(Digital Versatile Disc)等の光磁気ディスク、フラッシュメモリやRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ等で構成される。記憶部70は、以下に説明する本形態に係る測量方法を実施するためのプログラムおよび測量装置100が取得する各種データを記憶している。また、記憶部70は、本形態に係る測量方法を実施する現場の現場図面71、および、ジェスチャによる測定を行うためのジェスチャと対応する測量装置100の動作の対応関係を格納している。
【0027】
操作部80は、例えば、操作ボタン、スイッチ等である。操作部80により、作業者は、測量装置100に対する指令を入力したり、設定の選択を行ったりすることができる。操作部80は、タッチパネルディスプレイとして、表示部60と一体に構成されていてもよい。
【0028】
インジケータ90は、托架部4bに設けられ、測定の進捗状況や測量装置100の待機状態等を、音および光の少なくとも一方用いて作業者に報知する。インジケータ90は、例えば、光源を備えるインジケータランプや、報知音を発するスピーカを含んでよい。インジケータランプは、例えば赤色や緑色で点灯することにより、スピーカは、例えば、報知音を発することにより、測量装置100の動作の実行状況を作業者に報知する。
【0029】
制御演算部40は、少なくとも1つのプロセッサ40aと、少なくとも1つのメモリ40bを備える。プロセッサ40aは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。CPUは、ソフトウエア(プログラム)をメモリに読み出して実行することにより測量装置100の機能を実現する。また、プロセッサ40aとして、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用電気回路等を用いてもよい。プロセッサ40aは、1つのプロセッサであってもよく、同種または異種の2以上のプロセッサを含んでもよい。メモリ40bは、例えばSRAM(Static RAM)、DRAM(Dynamic RAM)、ROM(Read Only Memory)等を用いて構成される。メモリ40bは、測量装置100の機能の実行に必要なプログラムと、動作中に生成されたデータまたは情報とを一時的に保持する。
【0030】
制御演算部40は、測量装置100の各部に接続され、各部を制御する。また、各部で取得されたデータを処理する。具体的には、測量部10および回転駆動部20を制御して、測定対象物に測距光を送光し、反射光を受光して測定対象物を測距・測角し、測距・測角データに基づいて測定対象物の位置座標を算出する。
【0031】
制御演算部40は、また、機能部として、図面同期部41と、測定画像表示部42と、自位置把握部43と、ジェスチャ測定部44とを備える。
【0032】
図面同期部41は、既知点を測定し、取得した測距・測角データに基づいて、後方交会法、器械点後視点法により測量装置100の座標および測量装置100の方向を算出する。これにより、測量装置100の座標系を、既知点の絶対座標系と変換可能とし、既知点と同じ絶対座標系で作成された現場図面71上のデータを、測量装置100で取得される測量データと共通の座標系で管理する。
【0033】
測定画像表示部42は、現場図面71に設定された測定点を、現場画像51上に表示する。
【0034】
自位置把握部43は、カメラ50により取得される画像に含まれる3以上の点を参照点として注目し、測量部10でそれぞれの座標を測定する。カメラ50は、既知となったこの3点を参照点として捕捉しながら移動可能に構成されている。カメラ50は、測量装置100から各参照点までの距離を測定して、前記3以上の参照点それぞれからの距離に基いて測量装置100の位置を算出することで、測量装置100が移動しても、リアルタイムで測量装置100の自位置(位置座標)を把握できるようになっている。
【0035】
ジェスチャ測定部44は、測定対象物に設定された複数の測定点を、測定対象物の測定面ごとに管理し、カメラ50により認識される作業者のジェスチャによる指示に従って測定を開始し、測定を進行する。
【0036】
各機能部の詳細を説明するのに先だって、説明に使用する測量現場の一例と、測量現場を示す図面(測量図面)の一例を説明する。図3は、測量現場Sの一例を示す。図4は、同じ現場の現場図面71を示す。現場図面71は、絶対座標系を用いて作成され、2次元的には、測定点P~Pが設定されている。また、高さ方向に測定点が複数ある場合には、それぞれ測定点P1-1,P1-2・・・というように設定されている。なお、図3中の符号8は測定対象物の壁面にある窓を、9は、測定対象物の壁面にある凹部を示す。現場図面71は、3次元CADデータで作成されていてもよい。
【0037】
まず、図面同期部41について説明する。測量装置100を測量現場Sの任意の点に設置して、2以上の既知点を測定すれば、後方交会法等により測量装置100の位置座標と方向角が既知となる。これにより、カメラ50で取得される現場画像51の各画素の位置座標が把握できるようになる。現場図面71は既知点と同じ絶対座標系のデータであり、測量装置100は、現場図面71上のデータを、測量装置100で取得される測量データと共通の座標系で管理する。
【0038】
次に、測定画像表示部42は、現場図面71を読み出して、現場図面71に設定された測定点を表示部60に現場画像51に重ねて表示する。測定点を現場画像51に重ねて表示した画像を、測定画像52という。図5(A)は現場画像51の一例を示し、図5(B),(C)は同じ現場での測定画像52の一例を示す。作業者は、表示部60により測定点を確認することが可能である。
【0039】
図2では、現場図面71は記憶部70に格納されている。しかし、必ずしも記憶部70に格納されている必要はない。図示しない通信部や外部インタフェース等を介して、管理サーバ、外部端末等の外部機器、またはUSBメモリ、外付けハードディスク等の携帯型記憶媒体等から取得してもよい。
【0040】
測定画像表示部42は、測定の進捗に応じて、図5(C)に示すように、測定済みの点(測定点P1-1,P1-2,P2-1,P2-2,P3-1,P3-2,P4-1)を、未測定の点(その他の測定点)と識別可能に表示する。具体的には、測定済の点は黒色、未測定の点は白色(中抜き)のように、異なる色で表示したり、未測定の点を点滅して表示したりする。測定点と、未測定点の表示は、各点の測定毎にリアルタイムで更新されてもよい。これにより、作業者は、測定の進行状況をリアルタイムで確認しながら測量作業を行うことが可能となる。
【0041】
次に、図6,7を参照して自位置把握部43による自位置の把握方法を説明する。測量装置100は、現場の任意の点Q(図6(A)参照)に設置されているとする。点Qの座標は、少なくとも2つの既知点を測定し、器械高を測定することにより、後方交会法等の公知の手法で既知となる。測量装置100は、この状態で測量部10および回転駆動部20を制御して、カメラ50の視野内の測定点を全て測定したものと仮定する。
【0042】
自位置把握部43は、カメラ50を制御して、測定現場の動画像を撮影する。また、自位置把握部43は、測定画像52中の測定済の測定点から、少なくとも3点を参照点として指定する。図6(B)は、例えば、点P2-1,P5-1,P6-1の3点を参照点として指定した測定画像52を示す。図6(C)は、測量装置100を点Qに設置した場合と、点Qから移動させた場合の、測量装置100と参照点P2-1,P5-1,P6-1との位置関係を示す。自位置把握部43は、カメラ50で得られる深度情報に基づいて、測量装置100(の器械中心O)と各参照点P2-1,P5-1,P6-1それぞれとの間の距離d,d,dを測定する。カメラ50は、移動しても(移動の途中も)参照点P2-1,P5-1,P6-1を捕捉するようになっており、自位置把握部43は、測量装置100と、各参照点P2-1,P5-1,P6-1との間の距離d,d,dをリアルタイムで算出する。そして、自位置把握部43は、各参照点P2-1,P5-1,P6-1の座標と、距離d,d,dとからリアルタイムで測量装置100の位置座標を算出する。
【0043】
自位置把握部43が測量装置100の位置をリアルタイムで把握するためには、カメラ50が、常時3以上の参照点を捕捉する必要がある。そこで、自位置把握部43は、測定済の点が4以上ある場合、図7(A)に示すように、全ての測定済の点を参照点として指定することが好ましい。また、図7(B)に示すように、測量装置100の移動により、測定画像52中の測定済の点が2つ以下となった場合、インジケータランプを赤く点滅する、スピーカから警告音を発する等、インジケータ90により報知することも好ましい。これにより、作業者は、カメラ50の向きを変えたり、測量装置100の位置を変えたりして、カメラ50が常時3以上の測定済の測定点を捕捉するように、測量装置100を移動させることができる。
【0044】
作業者は、カメラ50が3以上の参照点を捕捉している状態で、測量装置100を新点に設置して、未測定の点の測定を実施する。これにより参照点が増えるので、測量装置100をさらに移動することも可能となる。
【0045】
測量装置100を新たな点に設置すると、通常は、後方交会法等により、2以上の、好ましくは3の、既知点を測定して測量装置100の位置座標および方向を決定する必要がある。しかし、本形態では測量装置100を新たな点に設置した時、測量装置100は既に3以上の既知点を測定済みであるため、位置座標および方向は既知である。従って、既知点の測定を改めて行う必要がない。ただし、要求される精度によっては、設置後に既知点の測定を行ってもよい。
【0046】
図7(C)は、測量装置100を移動して、図6(A)の点Rに設置した場合の測定画像52を示す。測量装置100を移動しても、測量装置100の位置座標および方向は既知であるため、測定画像表示部42は、点Rでカメラ50により取得された現場画像51(図示せず)に測定点を表示した測定画像52を表示部60に表示することが可能である。
【0047】
次に、ジェスチャ測定部44は、現場図面71に設定された測定点を、測定対象物の面ごとに管理する。このために、ジェスチャ測定部44は、現場図面71を読み込むと、図8A,8Bに示すように第1の測定面F1,第2の測定面F2,第3の測定面F3,第4の測定面F4,第5の測定面F5・・・のように測定面を設定する。測定点が天井面や床面に存在する場合は、点状面や床面にも測定面を設定する。なお、第1の測定面F1、第2の測定面F2の序数は単に面を区別するためのものであり、測定の順序を示すものではない。
【0048】
また、ジェスチャ測定部44は、カメラ50で検出した作業者のジェスチャによる指示に従って測定を実行する。図9A~9Dは、ジェスチャに対応する測量装置100の動作の例を示す。ジェスチャと測量装置100の動作との対応関係は予め記憶部70に格納されている。また、ジェスチャ認識は、公知の技術を用いて実現されてよく、例えば、様々な服装、体格の作業者のジェスチャを学習したジェスチャ認識AIにより実現されていてもよく、骨格モデルでジェスチャを学習したジェスチャ認識AIにより実現されてもよい。あるいは、公知の画像認識アルゴリズムにより実現されていてもよい。
【0049】
図9Aは、開始点指定ジェスチャを示す。開始点指定ジェスチャは、右手または左手を指差しの形にして、開始点とする測定点を指さし、所定時間静止する。これにより、測量装置100は、カメラ50の画像中の、指先の周辺所定範囲A(例えば、指先を中心とする半径5cmの円)内にある特徴点を開始点(測定開始点)に指定する。
【0050】
図9B~9Dは測定ジェスチャを示す。測定ジェスチャは、例えば、図9Bの様に、開始点から上下方向に手を振る(図9B)、開始点から左右方向に手を振る(図9C)、開始点から面の対角線(斜め)方向に手を振る(図9D)という作業者の動作である。これらのジェスチャはあくまで一例であるが、測定ジェスチャに応じて、測量装置100は測定を開始し、ジェスチャと予め対応付けられた進行パターンに従って測定を行う。図9B~9Dの、右上の四角内に、第1の測定面F1について点P2-2を開始点として指定し、各図の測定ジェスチャをしたときの、測量装置100による測定の進行を示す。また、右下の四角内に、第2の測定面F2について、点P5-2を開始点として指定し、各図のジェスチャをしたときの、測量装置100による測定の進行を示す。(図9B~9Dの右上下の図中においては、便宜的に開始点を符号Stで示す。)
【0051】
図9Bでは、作業者が、開始点から上に向かって手を振ることにより、測量装置100が、測定を開始し、手の振りの方向(上向き)に進行する。第1の測定面F1では、外周に沿って進行方向に測定を進める。全ての点を測定したら開始点に戻る。第2の測定面F2では、上方に向かって測定を進行し、上端まで測定すると、開始点と左右方向に反対に移動し、下方に向かって測定を進行する。下端まで測定すると、さらに開始点と左右方向に反対に移動し、上方に向かって測定を進行する。全ての点を測定したら開始点に戻る。
【0052】
図9Cでは、作業者が開始点から左方向に手を振ることにより、測定を開始し、手の振りの方向(左向き)に進行する。第1の測定面F1では、外周に沿って進行方向(左向き)に測定し、左端の点を測定すると外周に沿って進行方向に測定を進める。全ての点を測定したら開始点に戻る。第2の測定面F2では、左方に向かって測定を進行し、左端まで測定すると、開始点と上下方向に反対に移動し、右方に向かって測定を進行する。右端まで測定すると、さらに開始点と上下方向に反対に移動し、左方に向かって測定を進行する。これを続けて全ての点を測定したら開始点に戻る。
【0053】
図9Dでは、作業者が開始点から測定面の対角線方向に手を振ることにより測定を開始し、まず、開始点から手の振りの方向(対角線方向)に測定を進行する。第1の測定面F1では、対角点を測定すると、下方に向かって測定を進行し、下端まで測定すると、再度対角点に向かって測定を進行し、対角点を測定し、全ての点を測定して開始点に戻る。第2の測定面F2では、開始点から対角線上の点を測定し対角点を測定すると、下方に向かって測定を進行し、下端まで測定すると、再度対角線方向に測定を進行し、対角線上の点を測定して、対角点を測定する。そして、全ての点を測定したら開始点に戻る。
【0054】
このように、測定の進行パターンは、測定ジェスチャの手の動きの方向と関連づけられている。また、これらのジェスチャは、測量装置100の視点を考慮したものであるが、原則としては、測量装置100に向かって行うものではなく、作業者が測定対象物に向かって行うものである。従って、作業者は、左右の反転を気にすることなくジェスチャを行うことができる。また、進行パターンに従って測定を実行した場合、パターンの設定により、必ずしも全ての点を測定できない場合がある。その場合には、下記の変形例で示すように、必要に応じて、ジェスチャにより測定点を指定し、測定するようにしてもよい。
【0055】
ジェスチャにより指示された各点(測定開始点、および測定の進行方向の各測定点)の測定は、以下のように行う。まず、測定画像表示部42により、測定画像52に設定された測定点のうち、ジェスチャにより指示された測定点を視準するように、回転駆動部20を駆動させ、自動視準部30を用いて、実際の測定点を視準する。次に測距部11を駆動して測距を行い、同時に測角部12で測角を行う。
【0056】
このように、ジェスチャ測定部44は、開始点指定ジェスチャにより、測定面における測定開始点を設定し、測定ジェスチャにより、測定を開始し、進行方向に測定を実行することで、設定された測定面ごとに測定を進行する。そして1つ測定面が終了すると、開始点指定ジェスチャおよび測定ジェスチャにより次の測定面の測定を実行する。
【0057】
開始点指定ジェスチャおよび測定ジェスチャのほかに、ジェスチャ認識を起動するジェスチャとして、両腕を用いて、頭上で大きく円をつくる等の起動ジェスチャを実行することにしてもよい。このようにすることで、ジェスチャ測定部44による開始点指定ジェスチャおよび測定ジェスチャの認識精度を高めることが可能となる。
【0058】
ジェスチャ測定部44は、また、開始点の指定、1つの測定面の測定の完了等、ジェスチャにより実行した測定動作が完了した場合、インジケータ90で、例えば、インジケータランプを緑色で点灯する、スピーカから報知音を発する等することにより、動作の完了を作業者に報知する。
【0059】
2.測量装置100を用いた測量方法
以下、図10,11を参照して、測量装置100を用いた測量方法を説明する。一例として、図3、4の現場を測定する場合を説明する。以下において、測量装置100の動作は制御演算部40の各機能部により実行される。
【0060】
測量の開始にあたり、ステップS01で、作業者が、測量装置100を現場の任意の点Qに設置する。器械高を測定する。
【0061】
次に、ステップS02で、少なくとも2つの既知点を測定し、後方交会法等により測量装置100の座標を算出する。
【0062】
次に、ステップS03で、測量装置100(測定画像表示部42)は、カメラ50により現場画像51の撮影を開始する。これにより、画像中で各画素の3次元座標が把握できるようになる。
【0063】
次に、ステップS04で、測量装置100(測定画像表示部42)は、現場図面71を参照して、現場画像51に測定点を表示する。
【0064】
次に、ステップS05で、測量装置100(ジェスチャ測定部44)は、作業者のジェスチャに従って、測定点を測定する。ステップS05の詳細は後述する。
【0065】
次に、ステップS06で、現場画像51に測定点を重ねて、測定の進捗状況を表示する測定画像52を表示部60に表示する。
【0066】
次に、ステップS07で、測量装置100(自位置把握部43)は、ステップS05で測定した3以上の測定済の点を参照点として指定し、自位置を把握する。
【0067】
次に、ステップS08で、作業者は、カメラ50に3以上の参照点を捕捉させた状態で、測量装置100を次の測定点Rまで移動させる。
【0068】
次に、ステップS09で、測量装置100(ジェスチャ測定部44)は、ステップS05と同様にジェスチャにより測定を実行する。
【0069】
次に、ステップS10で、測量装置100は、全測定点が測定済であるかを判定する。この際、表示部60に表示される測定の進捗状況により、全測定点が測定済であるかの判定を作業者が確認して行えるように構成してもよい。ステップS10で、未測定の点がある場合(No)、ステップS08に戻り、全測定点が測定できるまでステップS08~S10を繰り返し、ステップS10で全測定点が測定済みの場合(Yes)、測定を終了する。
【0070】
ここで、ステップS05およびS09のジェスチャによる測定の詳細を説明する。
【0071】
ジェスチャ測定を開始すると、ステップS11で作業者は、開始点指定ジェスチャにより測定開始点を指定する。
【0072】
次に、ステップS12で、測量装置100は、ジェスチャを認識して、開始点を視準する。また、インジケータ90により、開始点を視準したことを作業者に報知する。
【0073】
次にステップS13で、作業者は、測定ジェスチャにより、測定開始を指示する。
【0074】
次に、ステップS14で、測量装置100は、開始点を含む面(現在の面)をジェスチャにより指定された方向に測定を進行する。指定されたパターンによる測定が完了すると、測量装置100はジェスチャの待機状態となり、インジケータ90により、その旨を作業者に報知する。
【0075】
次に、ステップS15で、測量装置100は、現在の面の全ての測定点を測定したかどうかを判定する。
【0076】
ステップS15で、未測定の測定点がある場合(No)、ステップS14に戻り、全ての測定点が測定済となるまでステップS14,S15を繰り返す。全ての測定点が測定済みとなると(Yes)、ステップS16で、現在の器械設置点で未測定の面があるかどうかを判定する。未測定の面がある場合(Yes)、ステップS17で作業者は、現在の視準している測定点を次の面の開始点とするか否かを判断する。
【0077】
ステップS17で、現在の測定点を次の面の開始点とする場合(Yes)、ステップS13に戻り、ステップS13~S16を繰り返す。現在の測定点以外の点を次の面の開始点とする場合(No)、ステップS11に戻り、ステップS11~S16を繰り返す。そして、ステップS16で未測定の面がなくなると(No)、ジェスチャ測定の処理は終了し、次のステップS06またはS10に進む。
【0078】
なお、上記発明では、測量装置100は、測定にプリズムを用いないノンプリズム測定用に構成された測量部10を有するものとして説明したが、本発明は、ノンプリズム測定用の測量装置に限らず、各測定点にプリズムを設置する、プリズム測定用の測量部10を備える、プリズム測定用の測量装置であってもよい。
【0079】
本実施の形態に係る測量装置および測量方法では、カメラ50で現場画像51を取得し、画像認識の手法により認識される画像上の特徴点と、現場図面に設定された測定点とが合致するように測量装置に測定点を自動視準させるように構成したので、作業者が測定点ごとに視準することなく自動で測定をすることができるので、ワンマンでの測定の実施を可能とする。
【0080】
また、本実施の形態に係る測量装置および測量方法では、カメラ50でジェスチャを認識し、面ごとに測定するため、測定開始点を指差しして指示する。測定の進行方向のパターンと関連付けられたジェスチャで測定の開始を指示するという、直感的なジェスチャを用いて測定の開始と進行方向を指示する。このため、各点ごとにジェスチャで指示する必要がなくなる。また、面ごとに測定点を管理するため、例えば、1つの面に連続した測定を阻害するような要因があった場合に、作業者がその面を除外して測定を実行することができる。
【0081】
また、測定開始点の指示は、現場の測定点を指さす、測定の開始は、測定の進行方向と関連付けられた方向に手を振るという、直感的かつ簡単なジェスチャで、測定を実行できるので、複雑なジェスチャを覚える必要がなく作業者の負担が軽減する。
【0082】
また、本実施の形態に係る測量装置及び測量方法では、カメラ50を広角または全天球の深度カメラとしたことにより、画像の各画素の3次元座標を取得可能である。この結果、測量部10で測定済の3以上の参照点をカメラ50で捕捉することにより、各参照点から測量装置までの距離を算出して測量装置100のリアルタイムの位置座標を取得することができる。この結果、測量装置100を移動して設置した場合においても、改めて既知点の測定を行うことなく、測量装置の位置座標および方向を把握することができる。また、改めて既知点の測定を行うことなく測定画像52を表示し、リアルタイムで測定状況を把握することができるので、作業負担が軽減される。
【0083】
3 変形例
本実施の形態に係る測量装置100は、以下のような変更を加えることが可能である。
【0084】
3-1 変形例1
図12は、変形例1に係る測量装置100Aの制御演算部40Aの機能ブロック図である。制御演算部40Aは、制御演算部40の機能部に加えて、測定点確認部45を備える。測定点は、通常、測定対象物の角の部分などの特徴点に設定される。測定点確認部45は、現場図面71に設定された測定点と、現場画像51から画像認識により認識される特徴点とを比較する。そして、現場図面の測定点と合致しない現場画像の特徴点、すなわち、現場画像には存在するが、現場図面の測定点として設定されていない点を、測定点として現場図面71に追加するように現場図面71を修正する。特徴点の認識は、公知の画像認識アルゴリズムを用いることが可能である。このようにすると、図面の測定点にもれがあった場合でも、必要な測定点を、現場で自動的に追加することができる。
【0085】
3-2 変形例2
図13は、変形例2に係る測量装置100Bの制御演算部40Bの機能ブロック図である。測量装置100Bは、現場画像51上に表示された測定点を確認した作業者が、現場図面71に設定された測定点に加えて、さらに測定点を設定したい場合の、現場でのニーズに対応する。制御演算部40Bは、制御演算部40の機能部に加えて、測定点追加部46を備える。測定点追加部46は、例えば、片手を指さしの形として丸を空中で丸を描くというジェスチャの後に、測定したい点を指すジェスチャ(開始点指定ジェスチャと同じジェスチャ)をカメラ50に認識させ、指した点を測定点として、現場図面71および測定画像52に追加する。この一連のジェスチャを測定点追加ジェスチャという。この動作は、例えば、ステップS04で測定点を表示した後に、行うようになっていてもよい。あるいは、測定の途中に関わらず、行うようになっていてもよい。なお、指した点は特徴点であっても、なくてもよい。このようにすると、特徴点であるかどうかに関わらず、測定点を追加して測定することが可能となる。
【0086】
3-3 変形例3
図14は、変形例3に係る測量装置100Cが、自位置把握のために、カメラ50Cが参照点P2-1,P5-1,P6-1を捕捉している状態を示す図である。測量装置100Cはカメラ50に代えて、カメラ50Cを備える。カメラ50Cは、内部に可視のレーザ光源を備え、レーザビームLを、捕捉する参照点に向けて送光する捕捉光走光部(図示せず)を備える。測量装置100Cは移動中、捕捉している参照点をレーザビームLで照射する。これにより、作業者は、移動させている測量装置100Cが現場のどの点を捕捉しているかを認識することができ、参照点の捕捉が外れないようにより注意しながら移動することができる。
【0087】
3-4 変形例4
さらに別の変形例として、測量装置100Bと同じ機械構成の測量装置100D(図示せず)において、ステップS08で、測量装置100Dを移動して新たな点に設置した時に、捕捉する参照点が2以下であったときに、測定点追加部46により、測定点を追加して測定して、測定を続行できるように構成してもよい。図15は、測量装置100Dを用いた測量方法での、図10のステップS08後の動作のフローチャートである。
【0088】
ステップS08で、作業者が測量装置100Dを移動した後、測量装置100D(自位置把握部43)は、ステップS21で、3以上の参照点を捕捉しているかを確認する。
【0089】
3以上の参照点を捕捉している場合(Yes)、ステップS09で、ジェスチャによる測定を実行し、ステップS10で、全測定点を測定するまでステップS08~S10を繰り返す。
【0090】
ステップS21で、捕捉している参照点が2以下の場合(No)、ステップS22で、測量装置100D(測定点追加部46)は、作業者のジェスチャにより測定点を追加し、ステップS23で追加した測定点を測定し、参照点とする。例えば、図7(B)の様に、参照点が2点(点P6-1,点P6-2)であった場合、点P7-2を参照点として追加できてもよい。その他の任意の点を追加できてもよい。ステップS22では、作業者にジェスチャを促すために、インジケータ90により、参照点が2以下であることを報知するようになっていてもよい。そして、ステップS24で、捕捉できる参照点が3以上になったら(Yes)、ステップS25で、自位置把握部43により、自位置を把握する。そして、ステップS09でジェスチャによる測定を実行し、測定を続行する。
【0091】
このように構成することで、参照点が2以下になった場合でも、ジェスチャにより参照点を追加して測定を続行することが可能となる。
【0092】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施の形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、例えば、変形例1~4の変形を任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0093】
4c :望遠鏡
11 :測距部
12 :測角部
20 :回転駆動部
40 :制御演算部
50 :カメラ
51 :現場画像
60 :表示部
71 :現場図面
90 :インジケータ
100 :測量装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12
図13
図14
図15