(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141939
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】温度測定装置
(51)【国際特許分類】
G01K 1/08 20210101AFI20241003BHJP
G01K 7/02 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
G01K1/08 P
G01K7/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053827
(22)【出願日】2023-03-29
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】390007744
【氏名又は名称】山里産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮西 大輔
(72)【発明者】
【氏名】占部 伸明
(72)【発明者】
【氏名】野海 耕大
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056BP03
2F056BP07
2F056KC03
2F056KC06
2F056KC07
2F056KC08
2F056KC18
(57)【要約】
【課題】熱電対を備えた温度測定装置において、該温度測定装置の取付部から外部に被測温体が漏出するのを簡単な構成で効果的に防止できるようにする。
【解決手段】絶縁保護管内に熱電対21,22が配置され、先端部に測温部20を有する長尺な熱電対測温管2と、被測温体と外部との隔壁外面11に取り付けられ、該被測温体中に前記熱電対測温管2の先端側を挿入させた状態に支持する支持体3とを備える、温度測定装置1であって、前記支持体3が、前記熱電対測温管2を内側に挿通させた状態で支持する二つ以上の同軸に連設された支持管31,32より構成され、前記二つ以上の支持管31,32の対向する端部同士は、第1のシール材36を介して密封状態にフランジ結合されたものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁保護管内に熱電対が配置され、先端部に測温部を有する長尺な熱電対測温管と、
被測温体と外部との隔壁外面に取り付けられ、該被測温体中に前記熱電対測温管の先端側を挿入させた状態に支持する支持体とを備える、温度測定装置であって、
前記支持体が、前記熱電対測温管を内側に挿通させた状態で支持する二つ以上の同軸に連設された支持管より構成され、
前記二つ以上の支持管の対向する端部同士は、シール材を介して密封状態にフランジ結合されていることを特徴とする温度測定装置。
【請求項2】
前記二つ以上の支持管のうち、少なくとも最も基端側の支持管には、該支持管の内周面と前記熱電対測温管の外周面との間に充填材が内装されている、請求項1記載の温度測定装置。
【請求項3】
前記充填材が、前記支持管の内周面と前記熱電対測温管の外周面との間に充填される耐熱セメント材である、請求項2記載の温度測定装置。
【請求項4】
前記二つ以上の支持管のうち、最も先端側の支持管の先端部には、前記隔壁外面に対し第2のシール材を介して密封状態で取り付けられる取付用フランジが設けられている、請求項1記載の温度測定装置。
【請求項5】
前記二つ以上の支持管のうち、前記熱電対測温管の基端部側に位置する支持管内に配置された前記絶縁保護管の基端側開口部を臨む位置に、該位置の温度を測定する温度測定手段が設けられている、請求項1記載の温度測定装置。
【請求項6】
前記絶縁保護管を第1の絶縁保護管とすると共に、該第1の絶縁保護管内に配置された前記熱電対を第1の熱電対とし、
前記温度測定手段は、前記第1の絶縁保護管の基端側に同軸に設けられた第2の絶縁保護管と、該第2の絶縁保護管内に挿通され、その先端側開口から突出した先端部に測温部が設けられてなる第2の熱電対とを有している、請求項5記載の温度測定装置。
【請求項7】
前記第2の絶縁保護管内に、前記第1の熱電対と、前記第2の熱電対とがそれぞれ挿通されている、請求項6記載の温度測定装置。
【請求項8】
前記熱電対測温管の基端部を支持する支持管の基端側に、前記第2の絶縁保護管が挿着される貫通孔を有する保持管が同軸に連設され、
前記貫通孔内部の前記第2の絶縁保護管の基端側開口を臨む位置には、前記第1の熱電対用の挿通孔と、前記第2の熱電対用の挿通孔とを有し、前記基端側開口を密封する第3のシール材が設けられている、請求項7記載の温度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電対が内装された熱電対測温管と、該熱電対測温管を支持する支持体とを備えた温度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば1000℃以上、1MPa以上の高温高圧状態となるガス化炉や、最大で1200℃、0.4MPaの高温高圧状態となる高炉等の内部に収容された、高温高圧の気流体等からなる被測温体の温度を測定する高温高圧気流体測温用熱電対において、内外側の2重保護管と該保護管の後端部に設けられる端子筐とを備え、外側保護管の先端部に最外側保護管を被着固定し、前記端子筐には、起電力取出し配線として管状金属シース補償導線を挿入接続すると共に、この管状金属シース補償導線の外周と端子筐配線取出し部とを高圧管継手で閉止して、端子筐内を密封構造としたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上述のように熱電対を囲繞した状態で保護する金属保護管を2重構造としてその強度を増すと共に、管状金属シース補償導線と高圧管保持管により、端子筐内の密着性を高めるように構成した場合には、高温高圧の条件下でも長期間の寿命を維持でき、かつ不測の事故で保護管の破損や素線の精度低下をきたした場合でも、高温高圧ガスの大気中への噴出しを防止することが可能であるとされている。
【0004】
ところで、特許文献1に開示された高温高圧気流体測温用熱電対からなる温度測定装置には、例えば高炉の耐火レンガ層に設けられた被取付部に固定される取付用フランジと前記端子筐とを連結する短管とを備えた支持体が設けられている。そして、前記短管の先端部と取付用フランジとの間にシール用のパッキンを配設した状態で、該パッキン押えに設けられた雄ねじ部を取付用フランジのボス部に設けられた雌ねじ部にねじ込むことにより、前記短管の先端部をパッキンに圧接させて、温度測定装置の取付部、具体的には取付用フランジと短管との連結部をシールしている。これにより、高炉等の内部から温度測定装置の取付部に流出した高温高圧の気流体等が外部に漏出するのを防止するように構成されている。
【0005】
しかし、上述の構成では、温度測定装置に作用する振動等の各種の外力に応じて、パッキン押えの雄ねじ部と取付用フランジの雌ねじ部との螺合状態が緩み易いと共に、温度測定装置の取付け時や交換時のねじ込み不足が生じ易いために、前記パッキンによるシール機能が損なわれて高温高圧の気流体等からなる被測温体が外部に漏出する可能性があった。また、取付用フランジ及びパッキン押えから短管の基端部側への熱伝導を効果的に抑制することが困難であり、例えば端子筐内に設けられた各種部品等が熱損傷を生じ易いという問題があり、これを防止するためには耐熱性を有する高価な素材で部品等を形成する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、熱電対を備えた温度測定装置において、該温度測定装置の取付部から外部に被測温体が漏出するのを簡単な構成で効果的に防止し、かつ熱電対測温管の基端部側への熱伝導を効果的に抑制できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の発明を包含する。
【0009】
(1) 絶縁保護管内に熱電対が配置され、先端部に測温部を有する長尺な熱電対測温管と、被測温体と外部との隔壁外面に取り付けられ、該被測温体中に前記熱電対測温管の先端側を挿入させた状態に支持する支持体とを備える、温度測定装置であって、前記支持体が、前記熱電対測温管を内側に挿通させた状態で支持する二つ以上の同軸に連設された支持管より構成され、前記二つ以上の支持管の対向する端部同士は、シール材を介して密封状態にフランジ結合されていることを特徴とする温度測定装置。
【0010】
(2) 前記二つ以上の支持管のうち、少なくとも最も基端側の支持管には、該支持管の内周面と前記熱電対測温管の外周面との間に充填材が内装されている、(1)記載の温度測定装置。
【0011】
(3) 前記充填材が、前記支持管の内周面と前記熱電対測温管の外周面との間に充填される耐熱セメント材である、(2)記載の温度測定装置。
【0012】
(4) 前記二つ以上の支持管のうち、最も先端側の支持管の先端部には、前記隔壁外面に対し第2のシール材を介して密封状態で取り付けられる取付用フランジが設けられている、(1)~(3)に何れかに記載の温度測定装置。
【0013】
(5) 前記二つ以上の支持管のうち、前記熱電対測温管の基端部側に位置する支持管内に配置された前記絶縁保護管の基端側開口部を臨む位置に、該位置の温度を測定する温度測定手段が設けられている、(1)~(4)に何れかに記載の温度測定装置。
【0014】
(6) 前記絶縁保護管を第1の絶縁保護管とすると共に、該第1の絶縁保護管内に配置された前記熱電対を第1の熱電対とし、前記温度測定手段は、前記第1の絶縁保護管の基端側に同軸に設けられた第2の絶縁保護管と、該第2の絶縁保護管内に挿通され、その先端側開口から突出した先端部に測温部が設けられてなる第2の熱電対とを有している、(5)記載の温度測定装置。
【0015】
(7) 前記第2の絶縁保護管内に、前記第1の熱電対と、前記第2の熱電対とがそれぞれ挿通されている、(6)記載の温度測定装置。
【0016】
(8) 前記熱電対測温管の基端部を支持する支持管の基端側に、前記第2の絶縁保護管が挿着される貫通孔を有する保持管が同軸に連設され、前記貫通孔内部の前記第2の絶縁保護管の基端側開口を臨む位置には、前記第1の熱電対と前記第2の熱電対とがそれぞれ挿通される複数の挿通孔を有し、前記基端側開口を密封する第3のシール材が設けられている、(7)記載の温度測定装置。
【発明の効果】
【0017】
以上にしてなる本願発明に係る温度測定装置によれば、二つ以上の支持管の対向する端部同士が、シール材を介して密封状態にフランジ結合されているため、該フランジ結合部に振動等からなる外力が作用した場合においても、特許文献1に開示された従来技術のように、被取付部に対するパッキン押えのねじ込み部が緩むという事態が生じることはない。したがって、収容部内の被測温体がフランジ結合部に流出したとしても、これが外部に漏出するという事態の発生を簡単な構成で効果的に防止することができる。また、長尺の熱電対測温管を支持する複数の支持管を容易に連結することができると共に、必要に応じてフランジ結合において複数の支持管を容易に分離することもできる。さらに、前記フランジ結合部を設けることによる表面積の増加、これによる外部への放熱作用により、支持管の基端部側への熱伝導を効果的に抑制することができる。
【0018】
ここで、前記二つ以上の支持管のうち、少なくとも最も基端側の支持管に、該支持管の内周面と前記熱電対測温管の外周面との間に充填材が内装されているものでは、基端側の支持管内に熱電対測温管を安定して保持させることができるという利点がある。
【0019】
また、前記充填材が、前記支持管の内周面と前記熱電対測温管の外周面との間に充填される耐熱セメント材であるものでは、例えば高温高圧下にある被測温体の温度を測定する温度測定装置において、前記充填材の耐久性を容易かつ効果的に確保することができる。
【0020】
また、前記二つ以上の支持管のうち、最も先端側の支持管の先端部には、前記隔壁外面に対し第2のシール材を介して密封状態で取り付けられる取付用フランジが設けられているものでは、収容部内から、被取付部と取付用フランジとの接合部に流出した被測温体が、外部に漏出するのを前記第2のシール材により確実に防止することが可能である。
【0021】
また、前記二つ以上の支持管のうち、前記熱電対測温管の基端部側に位置する支持管内に配置された前記絶縁保護管の基端側開口部を臨む位置に、該位置の温度を測定する温度測定手段が設けられているものでは、例えば高温ガス等からなる被測温体が、何らかの原因で基端部側の支持管の内部を通ってその基端部側に流出する等の異常が生じたことを正確に検出し、これに対して迅速かつ適正に対処することができる。
【0022】
また、前記絶縁保護管を第1の絶縁保護管とすると共に、該第1の絶縁保護管内に配置された前記熱電対を第1の熱電対とし、前記温度測定手段は、前記第1の絶縁保護管の基端側に同軸に設けられた第2の絶縁保護管と、該第2の絶縁保護管内に挿通され、その先端側開口から突出した先端部に測温部が設けられてなる第2の熱電対とを有しているものでは、第2の熱電対も第1の熱電対と同じく熱電対であるので、互いに異なる種類の温度測定手段とする場合に比べ、双方の温度を共通のシステム(回路/プログラム)で効率良く測定することができる。
【0023】
また、前記第2の絶縁保護管内に、前記第1の熱電対と、前記第2の熱電対とがそれぞれ挿通されているものでは、第2の絶縁保護管により第1の熱電対及び第2の熱電対の両方を絶縁した状態で適正に保護することができる。
【0024】
また、前記熱電対測温管の基端部を支持する支持管の基端側に、前記第2の絶縁保護管が挿着される貫通孔を有する保持管が同軸に連設され、前記貫通孔内部の前記第2の絶縁保護管の基端側開口を臨む位置には、前記第1の熱電対と前記第2の熱電対とがそれぞれ挿通される複数の挿通孔を有し、前記基端側開口を密封する第3のシール材が設けられているものでは、熱電対測温管に亀裂が生じる等の異常発生時に、熱電対測温管内に侵入してその基端部側に流出した被測温体が、第2の絶縁保護管の下流側に漏出することを、簡単な構成で効果的に防止できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本願発明の第1実施形態に係る温度測定装置の全体構成を示す断面図である。
【
図2】熱電対測温管の先端部の構造を示す拡大断面図である。
【
図4】第2の支持管の基端部の構造を示す拡大断面図である。
【
図6】第2の絶縁保護管の構造を示す正面図である。
【
図7】本願発明の第2実施形態に係る温度測定装置の全体構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0027】
(第1実施形態)
【0028】
図1~
図6に示すように、本発明の第1実施形態に係る温度測定装置1は、先端部に測温部20が設けられた、例えば500mm以上を有する長尺の熱電対測温管2と、被測温体が収容された収容部10の外壁面からなる隔壁外面11に取り付けられて、熱電対測温管2の先端側を収容部10内の被測温体中に挿入させた状態に支持する支持体3と、この支持体3の基端部に連結されたニップル4と、このニップル4の基端部にソケット50を介して連結された端子箱5とを備えている。
【0029】
熱電対測温管2は、適度の耐熱性と強度とを備えた素材、例えばアルミナ等のセラミックス材、又はモリブデン等の耐熱金属材等により形成された有底筒状体からなっている。熱電対測温管2内には、
図2及び
図3に示すように、二種類の異なる金属製熱電対素線、もしくはシース型熱電対からなる第1の熱電対21,22と、該第1の熱電対21,22が内装されたアルミナ等のセラミックス材等からなる第1の絶縁保護管23とが配置されている。そして、熱電対測温管2の先端部近傍には、
図2に示すように、第1の熱電対21,22の先端部が互いに結合されてなる測温部20が設けられている。
【0030】
支持体3は、
図1に示すように、熱電対測温管2を内側に挿通させた状態で支持する二つ以上の支持管、具体的には熱電対測温管2の長さ方向の中間部を支持する第1の支持管31と、これと同軸でその基端側に連設された第2の支持管32とを有している。第1の支持管31及び第2の支持管32は、それぞれ熱電対測温管2を挿通可能な貫通孔を有するステンレス製の円筒状体等からなっている。
【0031】
第1の支持管31の先端部には、取付用フランジ33が溶接される等により固定されている。この取付用フランジ33は、銅材等の金属材もしくはフッ素樹脂材等の合成樹脂材、またはその他の材料からなる板状のガスケット、又はОリング等からなるシール材13が介在された状態で、収容部10の隔壁外面11に設けられたフランジ部からなる被取付部12に対してボルト止めされる等により、密封状態で取り付けられるように構成されている。
【0032】
また、第1の支持管31の基端部には、第1の接合フランジ34が溶接される等により固定されている。一方、第2の支持管32の先端部には、第2の接合フランジ35が溶接される等により固定されている。そして、第1の接合フランジ34と第2の接合フランジ35との間に、銅材等の金属材もしくはフッ素樹脂材等の合成樹脂材、またはその他の材料からなる板状のガスケット、又はОリング等からなる第1のシール材36が配設された状態で、第1の接合フランジ34と第2の接合フランジ35とが、ボルト止めされる等により、密封状態で一体にフランジ結合されるように構成されている。
【0033】
図1及び
図3に示すように、第2の支持管32の内周面と、熱電対測温管2の外周面との間には、耐熱セメント等からなる充填材37が内装されている。なお、充填材37としては、耐熱セメントに限られず、耐熱ゴム等の種々の素材を使用可能であるが、本発明の温度測定装置1を高温高圧下において使用する場合には、耐熱セメントからなる充填材37を用いることが望ましい。例えば1000℃以上の高温状態で、かつ1MPa以上の高圧状態となる高温ガス化炉、加熱炉または金属精錬溶解炉等の内部に収容された高温高圧の気流体等からなる被測温体の温度を測定する温度測定装置1において、第2の支持管32内に熱電対測温管2を安定して保持し得るようにするためには、耐熱セメントからなる充填材37を、第2の支持管32の内周面と、熱電対測温管2の外周面との間に内装した構成とすることが望ましい。
【0034】
一方、第1の支持管31の内周面と、熱電対測温管2の外周面との間には、充填材37が内装されておらず、空間部が形成されている。これにより、熱電対測温管2を第1の支持管31に挿通させて、この第1の支持管31と第2の支持管32とを連結する作業、もしくは両者を分割する作業等を容易に行い得るように構成されている。
【0035】
図4に示すように、第2の支持管32の基端部外周面には雄ねじ部32aが形成され、この雄ねじ部32aとニップル4の先端部内周面に形成された雌ねじ部4bとが螺合されることにより、第2の支持管32とニップル4とが一体に連結されるようになっている。また、ニップル4内には、雄ねじ部41aを有するボス部が先端側に設けられた保持管41と、この保持管41の基端部外周面に設けられた雄ねじ部に螺着される等により一体に連結される袋ナット42とが、第2の支持管32と同軸に配設されている。そして、保持管41の雄ねじ部41aが、第2の支持管32の雌ねじ部32bに螺着されると共に、第2の支持管32の基端部と保持管41のボス部とが溶接される等により、第2の支持管32と保持管41とが密封状態で一体に接合されている。
【0036】
熱電対測温管2の基端側部分を支持する第2の支持管32の内部には、第1の絶縁保護管23の基端側開口部を臨む位置、つまり
図4に示すように、第1の絶縁保護管23に形成された第1の熱電対21,22の挿通孔24,25(
図3参照)の基端側面に対向する位置には、該位置の温度を測定する温度測定手段6が設けられている。この温度測定手段6は、第1の絶縁保護管23の基端側に同軸に設けられた第2の絶縁保護管61と、該第2の絶縁保護管61内に挿通され、その先端部側に延びる第2の熱電対62,63とを有している。そして、第2の絶縁保護管61の先端部側に突出した第2の熱電対62,63の先端部が互いに結合されてなる測温部60が、第2の支持管32の基端部と保持管41の先端部との間に形成された空間部64内に配置されることより、第1の絶縁保護管23の基端側開口部を臨む位置の温度を測定するように構成されている。
【0037】
なお、上述の第1実施形態では、温度測定手段6の測温部60を、第2の支持管32の基端部内に配置した例について説明したが、これに限られず、種々の変更が可能である。例えば、温度測定手段6の測温部60を、第2の支持管32の基端部から離間した位置において、保持管41もしくはニップル4の内部に位置させるように構成してもよい。
【0038】
また、保持管41には、第2の絶縁保護管61が挿着される貫通孔43が設けられている。この貫通孔43の内部における第2の絶縁保護管61の基端側開口を臨む位置、つまり第2の絶縁保護管61に形成された第1の熱電対21,22及び第2の熱電対62,63の挿通孔(
図6参照)の基端面に対向する位置には、第2の絶縁保護管61の基端側開口を密封するフッ素樹脂もしくはフッ素ゴム等からなる第3のシール材65が設けられている。この第3のシール材65としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のコッターを用いることが好ましい。なお、
図4において、符号44は絶縁スペーサである。
【0039】
第3のシール材65には、
図5に示すように、複数の挿通孔、具体的には第1の熱電対21,22が挿通される一対の挿通孔66,67と、第2の熱電対62,63が挿通される一対の挿通孔68,69とが形成されている。そして、袋ナット42を保持管41に対して締め付けることによる生じる押圧力に応じ、第3のシール材65の先端側外周面に形成された先窄まりのテーパ面が、保持管41の基端側内周面に形成された先窄まりのテーパ面に圧接されることにより、第3のシール材65が縮径されるようになっている。この結果、各挿通孔66~69の周面が第1の熱電対21,22及び第2の熱電対62,63にそれぞれ圧着されて、第2の絶縁保護管61の基端側開口が第3のシール材65により密封されるように構成されている。
【0040】
上述のように本発明に係る温度測定装置1は、第1の絶縁保護管23内に配置された第1の熱電対21,22と、先端部に測温部20を有する長尺な熱電対測温管2と、該熱電対測温管2を支持する支持体3とを備え、該支持体3に設けられた取付用フランジ33を、被測温体が収容された収容部10の隔壁外面11に設けられた被取付部12に取り付けることにより、熱電対測温管2の先端側を収容部10内に挿入させた状態に支持するように構成したため、熱電対測温管2により熱電対21,22及び測温部20を保護した状態で、収容部10内に収容された被測温体中に測温部を位置させた状態で、該被測温体の温度を適正に測定することができる。
【0041】
そして、上述の熱電対測温管2を内側に挿通させた状態で支持する同軸に連設された第1の支持管31及び第2の支持管32を設けると共に、両支持管31,32の対向する端部に設けられた第1の接合フランジ34と第2の接合フランジ35とを、第1のシール材36を介して密封状態にフランジ結合するように構成されている。したがって、該フランジ結合部に振動等からなる外力が作用した場合においても、特許文献1に開示された従来技術のように、被取付部に固定された取付用フランジに対するパッキン押えのねじ込み部が緩んでシール性が低下するという事態が生じることがなく、収容部10内の被測温体が、フランジ結合部に流出した場合においても、これが外部に漏出するという事態の発生を簡単な構成で効果的に防止することができる。
【0042】
また、長尺の熱電対測温管2を支持する支持管を、先端部側の第1の支持管31と後端部側の第2の支持管32とに分割するとともに、両支持管31,32を第1の接合フランジ34、第2の接合フランジ35、及び第1のシール材36を介してフランジ結合することにより、熱電対測温管2の長さに対応した長尺の支持管を容易に組み立てることができる。しかも、必要に応じて第1の接合フランジ34と第2の接合フランジ35との結合状態を解除して、両支持管31,32を分離することにより、温度測定装置1の保守点検作業及び修理作業等を容易に行うことができる。
【0043】
さらに、前記フランジ結合部を設けることによる外面の表面積の増加、これによる外部への放熱作用により、収容部10から被取付部12及び第1の支持管31を介して前記フランジ結合部に進入した被測温体の温度を顕著に低下させ、第2の支持管32の基端部側および端子箱5に伝達される熱量を効果的に減少させることができる。したがって、第2の支持管32の基端部側および端子箱5の内部等に設けられた各種部品の熱劣化を、簡単な構成で効果的に防止できるという利点がある。例えば、第2の支持管32の基端部側に配置された第3のシール材65を優れた耐熱性を有する高価な素材で形成する必要はなく、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)等の安価で柔軟な素材で形成することにより、第3のシール材65の熱劣化を防止しつつ、優れたシール性が得られるという利点がある。
【0044】
なお、第1実施形態では、支持体3に、熱電対測温管2を内側に挿通させた状態で支持する同軸に連設された第1の支持管31及び第2の支持管32を設けた例について説明したが、支持体3を構成する支持管の個数は、2個に限られず、3個以上であってもよい。そして、各支持管の対向する端部同士を、第1のシール材36を介して密封した状態に結合するフランジ結合部を二箇所以上に設けた構成とした場合には、各フランジ結合部の先端部側に位置する支持管内のシール性が損なわれた場合においても、その基端部側に位置する支持管に被測温体が流失するのを防止することが可能であり、シール対策の冗長化を図ることができる。また、上述の放熱作用が各フランジ結合部においてそれぞれ発揮されるため、各支持管の基端部側および端子箱5に伝達される熱量を、より効果的に低減できるという利点がある。
【0045】
また、上述の第1実施形態では、第1の支持管31及び第2の支持管32からなる二つ以上の支持管のうち、基端側に位置する第2の支持管32に、その内周面と熱電対測温管2の外周面との間をシールする耐熱セメントもしくは耐熱ゴム等からなる充填材37が配置された構成としたため、第2の支持管32内において熱電対測温管2を安定して保持させることができる。したがって、第2の支持管32の設置部に振動が伝達された場合においても、熱電対測温管2がぐらつくことを抑制して、その損傷を効果的に防止できるという利点がある。
【0046】
前記充填材37として耐熱セメントを用いて、これを、第2の支持管32の内周面と熱電対測温管2の外周面との間に内装した構成とすれば、充填材37が例えば1000℃以上の高温状態となった場合においても熱劣化することはなく、第2の支持管32内に熱電対測温管2を安定して保持させることができる。
【0047】
また、上述のように、二つ以上の支持管のうち、最も先端側に位置する第1の支持管31の先端部に、ガスケット等からなる第2のシール材13を介して収容部10の被取付部12に、密封状態で取り付けられる取付用フランジ33を設けた構成とした場合には、収容部10内から、被取付部12と取付用フランジ33との接合部に流出した被測温体が、外部に漏出するのを第2のシール材13により確実に防止することが可能である。
【0048】
さらに、上述の第1実施形態では、前記二つ以上の支持管のうち、熱電対測温管2の基端部側、つまり端子箱5寄りに位置する第2の支持管32内に配置された第1の絶縁保護管23の基端側開口部を臨む位置に、該位置の温度を測定する温度測定手段6を設けた構成としたため、高温ガス等からなる被測温体が、何らかの原因で第2の支持管32の内部を通ってその基端側、例えば第2の支持管32の基端部と保持管41の先端部との間に形成された空間部64内に流出する等の異常が生じたことを正確に検出して、これに対処することができるという利点がある。
【0049】
すなわち、熱電対測温管2は、その長さが一定値以上である長尺に形成されているため、通常、収容部10内の熱影響が熱電対測温管2の基端部側へと顕著に伝達されることはない。しかし、熱電対測温管2に亀裂が生じたり、第2の支持管32の内周面と熱電対測温管2の外周面との間に充填あるいは耐熱セメント等からなる充填材37が劣化したりする等の異常が生じた場合には、収容部10内の高温ガス等からなる被測温体が熱電対測温管2の基端部側に侵出する可能性があり、第2の支持管32の基端部と保持管41の先端部との間に形成された空間部64の温度が急上昇する虞がある。したがって、このような温度変化を検出することが可能な温度測定手段6を、第1の絶縁保護管23の基端側開口部に対向させるように配置することにより、上述の異常が生じているか否かを容易かつ正確に判別することができ、必要に応じて温度測定装置1を修理したり、交換したりする等の対策を迅速かつ適正に講じることができる。
【0050】
上述の第1実施形態では、第1の絶縁保護管23の基端側に同軸に設けられた第2の絶縁保護管61と、この第2の絶縁保護管61内に挿通され、その先端部側に突出した第2の熱電対62,63とにより第2の温度測定手段6を構成し、第2の熱電対62,63の先端部に測温部60を設けた構成としている。この構成によれば、収容部10内に収容された被測温体の温度を測定する熱電対21,22を備えた第1の温度測定手段(主温度検出手段)と、第2の支持管32の基端部と保持管41の先端部との間に形成された空間部64の温度を検出する前記第2の温度測定手段(副温度検出手段)6とで、その構成部品の一部、例えば熱電対に生じた起電力を読み取って温度に変換する計測器を共用化することができる。したがって、第1の温度測定手段とは異なる構成の第2の温度測定手段、例えば測温抵抗体等を備えた第2の温度測定手段を設けた場合に比べて、温度測定装置1の構造を簡略化して、その製造コストを安価に抑えることができるという利点がある。
【0051】
また、上述の第1実施形態では、
図6に示すように、第1の温度測定手段を構成する第1の熱電対21,22と、第2の温度測定手段6を構成する第2の熱電対62,63とを、第2の絶縁保護管61内にそれぞれ挿通させるように構成したため、単一の第2の絶縁保護管61により第1の熱電対21,22及び第2の熱電対62,63の両方を絶縁した状態で適正に保護することができるという利点がある。なお、空間部64の温度を検出する第2の温度測定手段6は、一つに限られず、二つ以上設けてもよい。また、熱電対に限定されず、測温抵抗体その他の温度計であってもよいし、これら異なる種類の温度計を組み合わせたもの、例えば、第2の熱電対62,63からなる第2の温度測定手段6と、測温抵抗体等からなる第2の温度測定手段とを、第2の絶縁保護管61の基端側開口を臨む位置に設けた構成としてもよい。
【0052】
上述の第1実施形態では、
図3に示すように、第1の熱電対21,22が挿通される2本の挿通孔24,25が第1の絶縁保護管23に設けられている。これに対して第2の絶縁保護管61には、
図6に示すように、第2の熱電対62,63が挿通される4本の挿通孔が設けられている。
【0053】
さらに、上述の第1の実施形態では、
図4に示すように、熱電対測温管2の基端部を支持する第2の支持管32の基端側に、第2の絶縁保護管61が挿着される貫通孔43を有する保持管41が同軸に連設され、貫通孔43内に位置する第2の絶縁保護管61の基端側開口を臨む位置に、第1の熱電対21,22と第2の熱電対62,63とがそれぞれ挿通される複数の挿通孔66~69(
図5参照)を有し、第2の絶縁保護管61の基端側開口を密封するフッ素樹脂製のコッター等からなる第3のシール材65が設けられた構成としている。この構成によれば、上述のように熱電対測温管2に亀裂が生じる等の異常発生時に、熱電対測温管2の基端部側に侵出した高温ガス等からなる被測温体が、第2の絶縁保護管61の下流側に漏出することを、簡単な構成でより確実に防止できるという利点がある。
【0054】
(第2実施形態)
【0055】
図7は、本発明の第2実施形態に係る温度測定装置1Aを示している。この第2実施形態に係る温度測定装置1Aは、アルミナ等のセラミックス材等からなる熱電対測温管2の外周部を覆うように設置された外方側保護管7と、この外方側保護管7の基端側部分を第1の支持管31に対して係止する押さえねじ8と、この押さえねじ8の基端側部分を覆う被覆部9とを備えている点で、第1実施形態とは異なっている。外方側保護管7は、アルミナ等のセラミックス材、もしくはモリブデン等の耐熱金属材、またはその他の耐熱性素材からなっている。
【0056】
前記外方側保護管7の基端部には、第1の支持管31の基端側に設けられた段部にガスケット等からなる第4のシール材71を介して係止されるフランジ部72が設けられている。そして、押さえねじ8に形成された雄ねじ部8aを、第1の支持管31の基端部に形成された雌ねじ部31bにねじ込むことにより、第4のシール材71を第1の支持管31の段部に圧接させて密封した状態で、外方側保護管7と第1の支持管31とを一体に連結するように構成されている。
【0057】
また、被覆部9は、第2の接合フランジ35の内周部に溶接される等により一体に固定されたニップル91と、このニップル91の基端部及び第2の支持管32との外周部に溶接される等により一体に固定された端板92とを有している。そして、押さえねじ8を介して、外方側保護管7と第1の支持管31とを密封状態で一体に連結した後、第1の接合フランジ34と第2の接合フランジ35との間に、板状のガスケット、又はОリング等からなる第1のシール材36を配設した状態で、第1の接合フランジ34と第2の接合フランジ35とを、ボルト止めする等よりフランジ結合するように構成されている。
【0058】
上述の第2実施形態に示すように、熱電対測温管2の外周部を覆う外方側保護管7を設けた場合には、熱電対21,22が配置された第1の絶縁保護管23の外周部を熱電対測温管2及び外方側保護管7により覆う二重構造で保護することにより、熱電対測温管2もしくは外方側保護管7のいずれか一方に亀裂や損傷が生じた場合においても、第1の絶縁保護管23に高温ガス等からなる被測温体が侵入して、これが基端部側に流出するという事態の発生を効果的に防止できるという利点がある。
【0059】
また、外方側保護管7を第1の支持管31に対して係止する押さえねじ8の基端側部分を覆う被覆部9を設けた構成としたため、押さえねじ8の螺着状態が緩んで、第1の支持管31の段部と外方側保護管7のフランジ部72との間に配設された第4のシール材71によるシール性が損なわれた場合においても、被測温体が外部に漏出するという事態の発生を効果的に防止することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
1,1A 温度測定装置
2 熱電対測温管
3 支持体
4 ニップル
5 端子箱
6 第2の温度測定手段
7 外方側保護管
8 押さえねじ
9 被覆部
10 収容部
11 隔壁外面
12 被取付部
13 第2のシール材
20 測温部
21,22 第1の熱電対
23 第1の絶縁保護管
24,25 挿通孔
31 第1の支持管
32 第2の支持管
33 取付用フランジ
34 第1の接合フランジ
35 第2の接合フランジ
36 第1のシール材
37 充填材
41 保持管
42 袋ナット
43 貫通孔
44 絶縁スペーサ
50 ソケット
60 測温部
61 第2の絶縁保護管
62,63 第2の熱電対
64 空間部
65 第3のシール材
66~69 挿通孔
71 第4のシール材
72 フランジ部
91 ニップル
92 端板