(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014194
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】栽培施設への排気ガス供給システム
(51)【国際特許分類】
A01G 9/18 20060101AFI20240125BHJP
A01G 7/02 20060101ALI20240125BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A01G9/18
A01G7/02
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116837
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】古市 涼
(72)【発明者】
【氏名】大越 崇博
【テーマコード(参考)】
2B022
2B029
【Fターム(参考)】
2B022DA13
2B022DA15
2B029JA02
2B029JA03
2B029JA10
(57)【要約】
【課題】排気ガスに含まれるガス成分により植物の生育状況に悪影響が生じる事態を防止することができる排気ガス供給システムを提供する。
【解決手段】栽培施設への排気ガス供給システムは、施設で発生した排気ガスを貯留するバッファタンクと、バッファタンクから供給される排気ガスと外気を混合するミキシングタンクと、ミキシングタンク内で外気と混合された排気ガスを栽培施設に供給する排気ガス供給手段と、排気ガス供給手段による排気ガスの供給量を制御する制御装置と、栽培施設内における排気ガスに含まれるガス濃度を検出するガス濃度検出手段と、栽培施設内でのクロロフィル蛍光の測定に基づき植物の光合成機能の健全度を示す評価値を算出する測定装置を備え、制御装置は、ガス濃度が上昇し、評価値が低下したことを条件に、排気ガス供給手段による栽培施設への排気ガスの供給量を減少させるよう制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を栽培する栽培施設に排気ガスを供給するシステムであって、
施設で発生した排気ガスを貯留するバッファタンクと、
前記バッファタンクから供給される排気ガスと外気とを混合するミキシングタンクと、
前記ミキシングタンク内で外気と混合されて希釈された排気ガスを栽培施設に供給する排気ガス供給手段と、
前記排気ガス供給手段による栽培施設への排気ガスの供給量を制御する制御装置と、
栽培施設内における排気ガスに含まれるガス成分の濃度を示すガス濃度を検出するガス濃度検出手段と、
栽培施設内で、植物から発せられるクロロフィル蛍光の測定に基づき植物の光合成機能の健全度を示す評価値を算出する測定装置とを備え、
前記制御装置は、所定の時間間隔で、前記測定装置によって算出された前記評価値の情報を取得し、かつ、前記ガス濃度検出手段の検出情報を取得するよう構成され、
前記検出情報から前記ガス濃度が上昇したと判断され、かつ、取得した前記評価値の情報から前記評価値が低下したと判断されたことを条件として、前記排気ガス供給手段による栽培施設への排気ガスの供給量を減少させるよう制御することを特徴とする栽培施設への排気ガス供給システム。
【請求項2】
前記測定装置は、励起光の照射により植物から発せられるクロロフィル蛍光の強度を測定する蛍光測定手段と、
前記蛍光測定手段により測定されたクロロフィル蛍光強度の時間的な推移に基づき、前記評価値を算出する光合成機能算出手段とを備え、
前記光合成機能算出手段は、クロロフィル蛍光の強度の経時変化曲線を生成することによって、前記経時変化曲線において蛍光強度が最大となる極大点の蛍光強度である極大値と、前記極大点が生じた時点より後に最初に生じる極小点の蛍光強度である極小値とを算出し、算出された前記極大値を、算出された前記極小値で除算することにより、前記評価値を算出することを特徴とする請求項1に記載の排気ガス供給システム。
【請求項3】
栽培施設内の植物の草丈を計測する草丈計測手段を備え、
前記制御装置は、前記草丈計測手段により計測された植物の草丈が、設定された生育状況の基準となる草丈よりも低いか否かを判定し、計測された植物の草丈が前記基準となる草丈よりも低い場合、前記排気ガス供給手段による栽培施設への排気ガスの供給量を増加させることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気ガス供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場や発電所、病院、ホテル又はその他の施設(以下、単に「施設」という。)で発生する排気ガスを植物の栽培施設に供給するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、施設で発生する排気ガスを、植物の栽培施設に供給することで、植物の生長を促す試みが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、工場やホテルなどに配置された原動機や冷暖房装置から排出される二酸化炭素を含む排気ガスを栽培施設に供給するシステムが開示されている。二酸化炭素を栽培施設に供給することで、植物の光合成を促進できるとともに、二酸化炭素の排出を減らし、環境負荷を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、排気ガスに含まれるいずれかのガス成分の濃度が過度に高い場合、植物の生育状況に悪影響を及ぼす可能性があるが、植物の葉色や草勢、草丈等に目に見えて異常が現れるまで、栽培施設の管理者が植物の生育状況の悪化に気付かない恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、排気ガスに含まれるガス成分により植物の生育状況に悪影響が生じる事態を防止することができる排気ガス供給システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のかかる目的は、
植物を栽培する栽培施設に排気ガスを供給するシステムであって、
施設で発生した排気ガスを貯留するバッファタンクと、
前記バッファタンクから供給される排気ガスと外気とを混合するミキシングタンクと、
前記ミキシングタンク内で外気と混合されて希釈された排気ガスを栽培施設に供給する排気ガス供給手段と、
前記排気ガス供給手段による栽培施設への排気ガスの供給量を制御する制御装置と、
栽培施設内における排気ガスに含まれるガス成分の濃度を示すガス濃度を検出するガス濃度検出手段と、
栽培施設内で、植物から発せられるクロロフィル蛍光の測定に基づき植物の光合成機能の健全度を示す評価値を算出する測定装置とを備え、
前記制御装置は、所定の時間間隔で、前記測定装置によって算出された前記評価値の情報を取得し、かつ、前記ガス濃度検出手段の検出情報を取得するよう構成され、
前記検出情報から前記ガス濃度が上昇したと判断され、かつ、取得した前記評価値の情報から前記評価値が低下したと判断されたことを条件として、前記排気ガス供給手段による栽培施設への排気ガスの供給量を減少させるよう制御することを特徴とする栽培施設への排気ガス供給システム。
【0008】
本発明によれば、排気ガスがミキシングタンク内で外気と混合されて希釈された状態で栽培施設に供給されるよう構成されているから、排気ガスに含まれるガス成分の濃度を薄めることができ、したがって、栽培施設内への排気ガス供給箇所の近傍において局所的に過度に高濃度のガス成分が植物に吹きかけられてしまう事態を防止できる。
【0009】
さらに、本発明においては、栽培施設内にて排気ガスに含まれるガス成分の濃度が上昇し、且つ、植物のクロロフィル蛍光に基づき測定される植物の光合成機能の健全度を示す評価値が低下したことを条件として、制御装置が栽培施設への排気ガスの供給量を減少させるよう構成されている。このように、植物が健康であるか否かを表す重要な指標の一つである光合成機能の健全度に基づき、排気ガスの供給量に負のフィードバックを行うことで、排気ガスに含まれるガス成分により植物の生育状況に悪影響が生じる事態を防止することができる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態においては、
前記測定装置は、励起光の照射により植物から発せられるクロロフィル蛍光の強度を測定する蛍光測定手段と、
前記蛍光測定手段により測定されたクロロフィル蛍光強度の時間的な推移に基づき、前記評価値を算出する光合成機能算出手段とを備え、
前記光合成機能算出手段は、クロロフィル蛍光の強度の経時変化曲線を生成することによって、前記経時変化曲線において蛍光強度が最大となる極大点の蛍光強度である極大値と、前記極大点が生じた時点より後に最初に生じる極小点の蛍光強度である極小値とを算出し、算出された前記極大値を、算出された前記極小値で除算することにより、前記評価値を算出する。
【0011】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、植物から発せられるクロロフィル蛍光の強度の経時変化曲線において蛍光強度が最大となる極大点の蛍光強度の値を、極大点が生じた時点より後に蛍光強度が最小となる極小点の蛍光強度の値で除算することにより、励起光の強度に拘わらず、外観では確認できない植物の光合成機能の健全度を示す評価値を算出できる。その結果、排気ガスに含まれるガス成分による植物の生育状況への悪影響を早期且つ正確に検知し、排気ガスの供給量にフィードバックすることができる。
【0012】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
栽培施設内の植物の草丈を計測する草丈計測手段を備え、
前記制御装置は、前記草丈計測手段により計測された植物の草丈が、設定された生育状況の基準となる草丈よりも低いか否かを判定し、計測された植物の草丈が前記基準となる草丈よりも低い場合、前記排気ガス供給手段による栽培施設への排気ガスの供給量を増加させる。
【0013】
本発明のこの好ましい実施形態においては、植物の実際の草丈が、設定された生育状況の基準となる草丈よりも低い場合に、植物の生育に有用なガス成分を含む排気ガスの供給量を増加させるよう構成されている。このように、植物の生育状況に基づき、排気ガスの供給量に正のフィードバックを行うことで、植物の生長を促すことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、排気ガスに含まれるガス成分により植物の生育状況に悪影響が生じる事態を防止することができる排気ガス供給システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態にかかる排気ガス供給システム及び供給システムが適用された栽培施設を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された排気ガス供給システムの制御ブロック図である。
【
図3】
図3は、バッファタンク制御を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、ミキシングタンク制御を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、施設内濃度維持制御を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、栽培施設内に配置された測定装置の近傍の略平面図である。
【
図7】
図7は、植物Gの草丈を計測する草丈計測装置の近傍を示す模式的側面図である。
【
図9】
図9は、
図6の測定装置による植物の光合成機能値の測定に係るフローチャートである。
【
図10】
図10は、撮像装置により取得されるクロロフィル蛍光の画像を示す模式図である。
【
図11】
図11は、光合成機能算出部により生成されるクロロフィル蛍光強度の経時変化曲線の模式図である。
【
図12】
図12は、供給量調整制御を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、栽培日数に対する基準草丈及び平均的な草丈を示すグラフである。
【
図14】
図14は、栽培施設の潅水用タンクへの水の供給に係るブロック図である。
【
図15】
図15は、ミキシングタンクを省いた場合の排気ガス供給システム及び当該排気ガス供給システムが適用された栽培施設を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施形態につき、詳細に説明を加える。
【0017】
図1は、本発明の好ましい実施形態にかかる排気ガス供給システム1(以下、単に「供給システム」ともいう。)及び供給システム1が適用された栽培施設2を示す模式図であり、
図2は、
図1に示された排気ガス供給システム1の制御ブロック図である。
【0018】
本実施形態において、植物を栽培する栽培施設2はビニルハウスにより構成されているが、本発明に係る供給システムは、ガラスハウスや植物工場等に加え、畑等の露地栽培に対しても適用可能である。
【0019】
供給システム1は、排気ガス供給源3から排出される排気ガスを移送する第1移送管11と、第1移送管11により移送された排気ガスを貯留するバッファタンク4と、バッファタンク4に貯留された排気ガスを移送する第2移送管12と、第2移送管12により移送された排気ガスを外気と混合し希釈するミキシングタンク5と、ミキシングタンク5内へその外部から外気を移送する第3移送管13と、ミキシングタンク5内で外気と混合され希釈された排気ガスを栽培施設2内へ移送供給する第4移送管14と、栽培施設2内に配置され、植物の光合成機能の健全度を示す評価値を算出する測定装置8(
図2参照)と、植物の草丈を計測する草丈計測装置7(
図7参照)と、栽培施設2への排気ガスの供給量を制御する制御装置9を備えている。
図1においては、供給システム1における排気ガス又は外気の流れる方向がグレー色の矢印で示されている。
【0020】
本実施形態においては排気ガス供給源3として工場が用いられているが、植物の生育に有用なガス成分を含む排気ガスを排出する施設であればよく、例えば、発電所、病院、ホテルなど様々な施設を排気ガス供給源として用いることができる。また、本実施形態では植物の生育に有用なガス成分である炭酸ガスを含む排気ガスを栽培施設2内に供給するよう構成されており、栽培施設2内の炭酸ガス濃度を上昇させることで、明るい日中に、植物の光合成を促進することができる。
【0021】
以下においては、炭酸ガス濃度に基づき排気ガスの供給を制御する場合について説明を進める。しかしながら、NOx(NO,NO2など)や亜硫酸ガス(SO2)、アンモニア(NH3)、オゾン(O3)、一酸化炭素(CO)等の他の種類のガス成分が排気ガスに含まれる場合には、これらのガス成分のうちの少なくとも1つの濃度に基づき、排気ガスの供給を制御することも可能であり、この場合にも同様のことがいえる。
【0022】
第1移送管11には、排気ガス供給源3から排出される排気ガスをバッファタンク4へ圧送する第1ファン11aと、第1移送管11を開閉し、排気ガス供給源3とバッファタンク4との間の排気ガスの流れを許容又は遮断する第1弁11bが設けられている。第1弁11b及び、後に説明を加える第2~第4弁12b~14bは、各々、電磁弁や電動弁等により構成することができる。第1ファン11aの駆動のオンオフ及び第1弁11bの開閉は制御装置9により制御され、第1弁11bが開かれて、且つ第1ファン11aが駆動したときに、排気ガス供給源3から供給される排気ガスが第1移送管11を通じてバッファタンク4内へ移送される。
【0023】
第2移送管12には、バッファタンク4内に貯留されている排気ガスをミキシングタンク5へ圧送する第2ファン12aと、第2移送管12を開閉し、バッファタンク4とミキシングタンク5との間の排気ガスの流れを許容又は遮断する第2弁12bが設けられている。第2ファン12aの駆動のオンオフ及び第2弁12bの開閉は制御装置9により制御され、第2弁12bが開かれて、且つ第2ファン12aが駆動したときに、バッファタンク4内に貯留された排気ガスが第2移送管12を通じてバッファタンク4内へ移送される。
【0024】
第3移送管13には、外気をミキシングタンク5へ圧送する第3ファン13aと、第3移送管13を開閉し、ミキシングタンク5の外部と内部との間の気体の流れを許容又は遮断する第3弁13bが設けられている。第3ファン13aの駆動のオンオフ及び第3弁13bの開閉は制御装置9により制御され、第3弁13bが開かれて、且つ第3ファン13aが駆動したときに、ミキシングタンク5の外部にある外気が第3移送管13を通じてミキシングタンク5内へ圧送される。なお、第3ファン13aの駆動とは、より詳細には、第3ファン13aの羽根を回転させるモータの駆動である。
【0025】
第4移送管14には、ミキシングタンク5内に貯留されている排気ガスを栽培施設2内へ圧送する第4ファン14aと、第4移送管14を開閉し、ミキシングタンク5と栽培施設2との間の気体の流れを許容又は遮断する第4弁14bが設けられている。第4ファン14aの駆動のオンオフ及び第4弁14bの開閉は制御装置9により制御され、第4弁14bが開かれて、且つ第4ファン14aが駆動したときに、ミキシングタンク5内で希釈された排気ガスが第4移送管14を通じて栽培施設2へ圧送される。第4ファン14aは、本発明の「排気ガス供給手段」の一例である。なお、第4ファン14aの駆動とは、より詳細には、第4ファン14aの羽根を回転させるモータの駆動である。
【0026】
制御装置9は、CPU(Central Processing Unit)を有する処理部9aと、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有する記憶部9bと、測定装置8と無線通信可能な通信部9cを備えている。
【0027】
記憶部9bには、排気ガスの供給に係る種々のプログラム及び後に詳述する施設内閾値濃度等のデータが格納されている。処理部9aは、これらを読み出して、バッファタンク4内の炭酸ガス濃度を高く維持するバッファタンク制御(
図3参照)や、ミキシングタンク5内の炭酸ガス濃度を所定の範囲に維持するミキシングタンク制御(
図4参照)、栽培施設2内の炭酸ガス濃度を高く維持する施設内濃度維持制御(
図5参照)、後に詳述する施設内閾値濃度を変更することにより栽培施設2への排気ガスの供給量を調整する供給量調整制御(
図12参照)等を行う。以下に、まず、バッファタンク制御について詳細に説明を進める。
【0028】
バッファタンク4内には、貯留された排気ガスに含まれる炭酸ガスの濃度を検出する炭酸ガス濃度センサ4aが配置されている。バッファタンク制御において、制御装置9は、以下のようにして、炭酸ガス濃度センサ4aの検出結果に基づき、第1ファン11a及び第1弁11bを制御し、バッファタンク4内の炭酸ガスの濃度を所定の基準値よりも高く維持する。
図3は、バッファタンク制御を示すフローチャートである。
【0029】
制御装置9は、まず、炭酸ガス濃度センサ4aにより検出されたバッファタンク4内の炭酸ガス濃度が、所定の閾値濃度以下であるか否かを判定する(ステップs1)。
【0030】
判定の結果、バッファタンク4内の炭酸ガス濃度が閾値濃度を上回る場合、バッファタンク4内の炭酸ガス濃度が閾値濃度以下となるまで、炭酸ガス濃度センサ4aの検出信号に基づき判定を繰り返す。
【0031】
これに対して、判定の結果、バッファタンク4内の炭酸ガス濃度が閾値濃度以下である場合、制御装置9は、第1ファン11aの駆動を開始するとともに、第1弁11bを開制御する(ステップs2)。これにより、排気ガス供給源3からバッファタンク4内への排気ガスの移送が開始される。
【0032】
次いで、制御装置9は、第1ファン11aの駆動及び第1弁11bの開弁から所定の移送時間が経過したか否かを判定する(ステップs3)。所定の移送時間が経過していない場合には、制御装置9は所定の移送時間が経過するまで判定を繰り返す。
【0033】
一方、判定の結果、所定の移送時間が経過している場合、制御装置9は、第1ファン11aの駆動を停止するとともに、第1弁11bを閉制御する(ステップs4)。その結果、排気ガス供給源3からバッファタンク4内への排気ガスの移送が停止される。
【0034】
その後、制御装置9は、第1ファン11aの駆動停止及び第1弁11bの閉弁から所定の撹拌時間が経過したか否かを判定する(ステップs5)。バッファタンク4内には撹拌装置が設けられており、所定の撹拌時間が経過した頃には、バッファタンク4内のガス濃度が略均一となっている。判定の結果、所定の撹拌時間が経過していない場合、制御装置9は所定の撹拌時間が経過するまで判定を繰り返す。
これに対して、判定の結果、所定の撹拌時間が経過している場合、制御装置9は、ステップs1のバッファタンク4内の炭酸ガス濃度の判定に戻る。
【0035】
以上のように、バッファタンク4内の炭酸ガス濃度が所定の閾値濃度以下である場合に、排気ガス供給源3から排出された排気ガスをバッファタンク4内に移送するよう構成されているから、バッファタンク4内の炭酸ガスの濃度を高く維持することができる。
【0036】
一方、ミキシングタンク5内には、炭酸ガスの濃度を検出する炭酸ガス濃度センサ5aが配置されている。ミキシングタンク制御において、制御装置9は、以下のようにして、炭酸ガス濃度センサ5aの検出結果に基づき、第2ファン12a及び第2弁12b並びに第3ファン13a及び第3弁13bを制御し、ミキシングタンク5内の炭酸ガス濃度を所定範囲に維持する。
図4は、ミキシングタンク制御を示すフローチャートである。
【0037】
制御装置9は、まず、炭酸ガス濃度センサ5aにより検出されたミキシングタンク5内の炭酸ガス濃度が、所定の最低基準濃度以下であるか否かを判定する(ステップt1)。
【0038】
判定の結果、ミキシングタンク5内の炭酸ガス濃度が最低基準濃度以下である場合、制御装置9は、第2移送管12に配置された第2ファン12aの駆動を開始するとともに、第2弁12bを開制御する(ステップt2)。これにより、バッファタンク4内に貯留された高濃度の排気ガスが第2移送管12を通じてミキシングタンク5内へ移送される。
【0039】
次いで、制御装置9は、第2ファン12aの駆動を開始し、第2弁12bを開制御したときから所定の移送時間が経過したか否かを判定する(ステップt3)。所定の移送時間が経過していない場合には、制御装置9は所定の移送時間が経過するまで判定を繰り返す。
【0040】
これに対し、判定の結果、所定の移送時間が経過している場合、制御装置9は、第2ファン12aの駆動を停止するとともに、第2弁12bを閉制御する(ステップt4)。その結果、バッファタンク4からミキシングタンク5への排気ガスの移送が停止される。
【0041】
その後、制御装置9は、第2ファン12aの駆動停止及び第2弁12bの閉弁から所定の撹拌時間が経過したか否かを判定する(ステップt5)。ミキシングタンク5内には撹拌装置が設けられており、所定の撹拌時間が経過した頃には、ミキシングタンク5内のガス濃度が略均一となっている。判定の結果、所定の撹拌時間が経過していない場合には、制御装置9は所定の撹拌時間が経過するまで判定を繰り返す。
これに対して、判定の結果、所定の撹拌時間が経過している場合には、制御装置9は、ステップt1のミキシングタンク5内の炭酸ガス濃度の判定に戻る。
【0042】
一方、ステップt1の判定の結果、ミキシングタンク5内の炭酸ガス濃度が最低基準濃度を上回る場合、制御装置9は、ミキシングタンク5内の炭酸ガス濃度が、所定の最高基準濃度以上であるか否かを判定する(ステップt6)。最高基準濃度は、例えば栽培施設2内の植物に過剰症状が出るおそれのある濃度よりもやや低い値に設定することができる。
【0043】
判定の結果、ミキシングタンク5内の炭酸ガス濃度が所定の最高基準濃度未満である場合、適切な濃度範囲内であることが認められるので、ステップt1の判定へ戻る。
【0044】
これに対し、判定の結果、ミキシングタンク5内の炭酸ガス濃度が所定の最高基準濃度以上である場合。この場合には、ミキシングタンク5内の炭酸ガス濃度が過度に高いことが認められるので、制御装置9は、第3移送管13に配置された第3ファン13aの駆動を開始するとともに、第3弁13bを開制御する(ステップt7)。その結果、ミキシングタンク5の外部から外気が第3移送管13を通じてミキシングタンク5内へ移送供給される。
【0045】
次いで、制御装置9は、第3ファン13aの駆動の開始及び第3弁13bの開弁から所定の移送時間が経過したか否かを判定する(ステップt8)。判定の結果、所定の移送時間が経過していない場合には、制御装置9は所定の移送時間が経過するまで判定を繰り返す。
【0046】
これに対し、所定の移送時間が経過している場合、制御装置9は、第3ファン13aの駆動を停止するとともに、第3弁13bを閉制御する(ステップt9)。その結果、ミキシングタンク5への外気の移送が停止される。その後、上記のステップt5へ進み、所定の撹拌時間が経過した後に、ステップt1へと戻る。
【0047】
以上のように、本実施形態においては、炭酸ガスの濃度が高く維持されたバッファタンク4内の排気ガスと、外気とを各々ミキシングタンク5内に供給可能に構成されていることで、ミキシングタンク5内の炭酸ガス濃度を所望の濃度範囲に保つことができる。したがって、栽培施設2へ炭酸ガス濃度が低い状態で供給されてしまうことを防止できるとともに、植物に炭酸ガスの過剰症状が出てしまう事態を抑制できる。しかしながら、ミキシングタンク5及び第2、第3移送管12,13を設けることは必ずしも必要でなく、例えば、
図15に示されるように、排気ガス供給源3から排出される排気ガスを貯留するバッファタンク4から、直接、栽培施設2内へ排気ガスを供給するよう構成してもよい。この場合には、栽培施設2内の炭酸ガス濃度を検出する炭酸ガス濃度センサの検出値が閾値以下となったときに、第4移送管14に配置された第4弁14bを開くと同時に、第4ファン14aを駆動させることで、栽培施設2内の炭酸ガス濃度を高く維持することができる。
【0048】
また、
図4に示されるミキシングタンク制御について、排気ガス供給源3からの排気ガスの排出が断続的又は間欠的であったり、排気ガス中の炭酸ガス等の有用ガスの濃度にムラがある場合には、ステップt1のミキシングタンク5内の炭酸ガス濃度の判定に先立って、バッファタンク4内の炭酸ガス等の有用ガス濃度が所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上である場合にミキシングタンク5内の炭酸ガス濃度の判定に進み、所定値未満である場合には、所定値以上となるまでバッファタンク4内の炭酸ガス等の有用ガス濃度の判定を繰り返すか、又はステップt6に進むよう構成することが好ましい。
【0049】
一方、栽培施設2内に配置された測定装置8には、栽培施設2内における、炭酸ガス成分の濃度である炭酸ガス濃度を検出する炭酸ガス濃度センサ8aが搭載されている。炭酸ガス濃度センサ8aの検出結果は、後に詳述する通信部8fを通じて制御装置9へ送られる。施設内濃度維持制御において、制御装置9は、取得した炭酸ガス濃度センサ8aの検出結果に基づき、以下のようにして、第4ファン14a及び第4弁14bを制御し、栽培施設2内の排気ガスの濃度を高く維持する。なお、炭酸ガス濃度センサ8aは、本発明の「ガス濃度検出手段」の一例である。
図5は、施設内濃度維持制御を示すフローチャートである。
【0050】
制御装置9は、まず、炭酸ガス濃度センサ8aにより検出された栽培施設2内の炭酸ガス濃度が、施設内閾値濃度以下であるか否かを判定する(ステップu1)。施設内閾値濃度とは、栽培施設2内の炭酸ガス濃度がこの値以下となったときに栽培施設2内へ排気ガスの供給を行う閾値濃度である。
【0051】
本実施形態においては、施設内閾値濃度の値は、後に詳述するように、栽培施設2内の炭酸ガス濃度及び測定装置8により測定される植物Gの光合成機能の健全度を示す評価値と、植物の草丈とに基づき自動的に変更されるよう構成されている。以下において、測定装置8により測定・算出される植物Gの光合成機能の健全度を示す評価値を「光合成機能値」という。施設内閾値濃度が変更されることにより、排気ガスの供給量の調整が行われる。
【0052】
判定の結果、栽培施設2内の炭酸ガス濃度が施設内閾値濃度を上回る場合、栽培施設2内の炭酸ガス濃度が施設内閾値濃度以下となるまで判定を繰り返す。これに対し、栽培施設2内の炭酸ガス濃度が施設内閾値濃度以下である場合、制御装置9は、第4移送管14に配置された第4ファン14aの駆動を開始するとともに、第4弁14bを開制御する(ステップu2)。その結果、ミキシングタンク5内で希釈された排気ガスが、第4移送管14を通じて栽培施設2内へ供給される。
【0053】
次いで、制御装置9は、第4ファン14aの駆動の開始及び第4弁14bの開弁から所定の供給時間が経過したか否かを判定する(ステップu3)。判定の結果、所定の移送時間が経過していない場合、制御装置9は、所定の移送時間が経過するまで判定を繰り返す。これに対し、所定の移送時間が経過している場合、制御装置9は、第4ファン14aの駆動を停止するとともに、第4弁14bを閉制御する(ステップu4)。その結果、ミキシングタンク5から栽培施設2内への排気ガスの供給が停止される。
【0054】
その後、制御装置9は、第4ファン14aの駆動の停止及び第4弁14bの閉弁から所定の混合時間が経過したか否かを判定する(ステップu5)。混合時間とは、栽培施設2内に供給された排気ガスと、排気ガスの供給前に栽培施設2内に存在した空気とが自然と混ざり合う時間である。判定の結果、所定の混合時間が経過していない場合、制御装置9は、所定の混合時間が経過するまで判定を繰り返す。これに対し、所定の混合時間が経過している場合、制御装置9は、ステップu1へ戻り、栽培施設2内の炭酸ガス濃度が、施設内閾値濃度以下であるか否かを判定する。
【0055】
このように本実施形態においては、ミキシングタンク5内で希釈された排気ガスが所定の供給時間にわたって栽培施設2内に供給された後に、所定の混合時間が経過するのを待ってから炭酸ガス濃度を検出するよう構成されている。したがって、栽培施設2内の炭酸ガス濃度のムラを緩和し、炭酸ガス濃度を正確に検出した上で、さらに栽培施設2への排気ガスの供給を行うか否かを決定できる。
【0056】
栽培施設2内に供給された排気ガスに含まれる炭酸ガス(=二酸化炭素)は、栽培施設2内の植物の光合成に活用される。したがって、工場により構成された排気ガス供給源3から大気中に排出される炭酸ガスを減らし、環境負荷を軽減できるとともに、栽培施設2内への炭酸ガスの施用を目的としてボンベ等を別途用意する必要がなく、栽培施設2のランニングコストを低減できる。施設内濃度維持制御による栽培施設2への排気ガスの供給は、毎日、後に詳述する供給量調整制御が行われた後に、植物の光合成が行われる早朝から夕方にかけて行われる。
【0057】
なお、
図5に示される施設内濃度維持制御について、排気ガス供給源3からの排気ガスの排出が断続的又は間欠的であったり、排気ガス中の炭酸ガス等の有用ガスの濃度にムラがあることにより、ミキシングタンク5内の炭酸ガス濃度が最低基準濃度よりも大幅に低いことが多い場合には、ステップu1の栽培施設2内の炭酸ガス濃度の判定に先立って、ミキシングタンク5内の炭酸ガス等の有用ガス濃度が所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上である場合に栽培施設2内の炭酸ガス濃度の判定に進み、所定値未満である場合には、所定値以上となるまでミキシングタンク5内の炭酸ガス等の有用ガス濃度の判定を繰り返すよう構成することが好ましい。
【0058】
一方、
図6は、栽培施設2内に配置された測定装置8の近傍の略平面図であり、第4移送管14により栽培施設2内に移送された排気ガスは、第4移送管14に接続された供給管15を通じて、植物Gを栽培する各栽培棚20に供給される。栽培棚20同士の間には、床に固定されたレール部材16が配置されており、測定装置8は、レール部材16上を走行可能に構成されている。
図7は、植物Gの草丈を計測する草丈計測装置7の近傍を示す模式的側面図である。
【0059】
草丈計測装置7は、栽培施設2内の梁21と床23とを結ぶように上下方向に延びるガイドステー7aと、ガイドステー7aの上部に回転可能に装着された駆動プーリ7bと、ガイドステー7aの下部に回転可能に装着された従動プーリ7cと、駆動プーリ7b及び従動プーリ7cに巻き掛けられた閉ループ状の無端ベルト7dと、駆動プーリ7bを回転駆動するセンサ摺動モータ7gと、無端ベルト7dの一箇所に固定されたセンサボックス7eと、センサボックス7eに固定されたレーザーセンサ7fを備えている。センサボックス7e内には、栽培施設2内の温度及び湿度を検出する温湿度センサが配置されている。
【0060】
制御装置9の制御信号に基づき、センサ摺動モータ7gが駆動されると、駆動プーリ7bの回転に伴い、無端ベルト7dが回転する。これにより、センサボックス7e及びレーザーセンサ7fが上下にスライドする。
【0061】
レーザーセンサ7fは、レーザー光L1を水平方向に照射するレーザー照射部7f1と、照射されたレーザー光L1の反射光L2を検知するレーザー検知部7f2を備えている。レーザー検知部7f2は、反射光L2の有無により、レーザー光L1が照射された上下位置に植物Gがあるか否かを検知するよう構成されている。なお、レーザーセンサ7fをセンサボックス7eに固定することは必ずしも必要でなく、無端ベルト7dに直接固定してもよい。
【0062】
草丈計測装置7による植物Gの草丈の計測においては、栽培施設2内に栽培される多数の植物Gのうち、ガイドステー7aに近い位置にある代表の(=換言すれば、サンプルの)植物Gの草丈が計測される。
【0063】
具体的には、まず、制御装置9の制御信号に基づき、センサ摺動モータ7gが駆動されてセンサボックス7e及びレーザーセンサ7fが上限位置、より詳細には駆動プーリ7bよりもやや下の位置まで上昇する。センサ摺動モータ7gには、上限リミットスイッチが設けられており、センサボックス7eが上限位置に達すると、上限リミットスイッチが入り、センサ摺動モータ7gの更なる上昇方向の駆動が規制される。なお、センサ摺動モータ7gには、下限リミットスイッチも設けられている。このため、センサ摺動モータ7gの駆動によりセンサボックス7eが従動プーリ7cよりやや上方の位置に設定された下限位置まで下降すると、下限リミットスイッチが入り、センサ摺動モータ7gの更なる下降方向の駆動が規制される。
【0064】
センサボックス7e及びレーザーセンサ7fが上限位置で停止すると、センサ摺動モータ7gが下降方向へ駆動され、レーザーセンサ7f及びセンサボックス7eが上限位置からゆっくりと下方へスライドされる。センサ摺動モータ7gが下降方向へ駆動される間、レーザーセンサ7fは反射光L2の有無による植物Gの検知を行い、植物Gの反射光L2が検知された時点で制御装置9に反射光L2の検出信号を送信する。
【0065】
反射光L2の検出信号を受信すると、制御装置9は、センサ摺動モータ7gの駆動を停止し、レーザーセンサ7f及びセンサボックス7eを停止させる。これにより、植物Gの上端部、すなわち、生長点(成長点)G1と略同一の上下位置に、センサボックス7eを位置させることができるからセンサボックス7eにより、植物Gの生長点G1付近の環境(詳細には温湿度)を測定することができる
【0066】
一方、センサ摺動モータ7gには、その回転位置を検出するエンコーダ30が設けられており、センサ摺動モータ7gの駆動停止後、制御装置9は、エンコーダ30から出力される回転位置の検出信号に基づき、植物Gの生長点の高さH1を算出した後、高さH1の値から、予め設定された植物Gの栽培面24(=茎の下端部)の高さH2の値を差し引くことにより、植物Gの草丈H3を算出する。本実施形態においては、草丈計測装置7及び制御装置9による植物Gの草丈H3の計測は、1日に1回、日中の所定の時刻に行われる。草丈計測装置7及び制御装置9は、本発明の「草丈計測手段」の構成例である。
【0067】
なお、本実施形態においては、センサボックス7e及びレーザーセンサ7fの上下位置を、自動的に植物Gの生長点G1の上下位置に合わせられる他、タッチパネル等により構成される入力装置10の操作に基づき、任意の上下位置までスライドさせることも可能である。
【0068】
図8は、
図6の測定装置8の略正面図である。
測定装置8は、栽培棚20間に配置されたレール部材16上を走行する走行装置8bと、植物Gに励起光を照射する青色LED8cと、励起光が照射されることにより生じる植物Gのクロロフィル蛍光の強度を測定する撮像装置8dと、走行装置8bによる走行と撮像装置8dによる測定を制御する制御部8eと、栽培施設2内の炭酸ガス濃度を検出する炭酸ガス濃度センサ8a(
図2参照)と、制御装置9と無線通信可能な通信部8fを備えている。
【0069】
撮像装置8dは、波長が680nm付近であるクロロフィル蛍光を選択的に透過させるとともに、青色LED8cから照射される青色光を含む600nm以下の光をカットするフィルタと、当該フィルタを透過した光を受光するイメージセンサを備えている。したがって、励起光である青色光とクロロフィル蛍光とを混同して測定してしまうことなく、暗い夜間に、クロロフィル蛍光の強度を選択的に測定することができる。
【0070】
制御部8eは、青色LED8cの発光素子を駆動させるドライバ回路8e1と、走行装置8bが有する走行用モータ8b1の駆動を制御する走行制御部8e2と、撮像装置8dの撮像を制御する撮像制御部8e3と、撮像装置8dにより測定されたクロロフィル蛍光強度の時間的な推移に基づき、光合成機能値を算出する光合成機能算出部8e4を備えている。光合成機能算出部8e4は、本発明の「光合成機能算出手段」に相当する。
【0071】
炭酸ガス濃度センサ8aは、毎日、栽培施設2に排気ガスが供給される日中に、所定の時間間隔で栽培施設2内の炭酸ガス濃度を検出する。炭酸ガス濃度の検出結果は、通信部8fを通じて制御装置9に送られ、記憶部9bに記録される。すなわち、制御装置9は、炭酸ガス濃度センサ8aの検出情報を所定の時間間隔で取得する。
【0072】
本実施形態においては、測定装置8による光合成機能値の測定は、毎日、太陽光の影響を受けない夜間、より詳細には夜9時に行われる。以下に、測定装置8による光合成機能値の測定について詳細に説明を加える。
【0073】
図9は、
図6の測定装置8による植物Gの光合成機能値の測定に係るフローチャートであり、
図10は、撮像装置8dにより取得されるクロロフィル蛍光の画像を示す模式図である。また、
図11は、光合成機能算出部8e4により生成されるクロロフィル蛍光強度の経時変化曲線の模式図である。
【0074】
光合成機能値の測定においては、まず、ドライバ回路8e1が青色LED8cを発光させると同時に、撮像制御部8e3が撮像装置8dに制御信号を送信し、サンプル(代表)である植物Gのクロロフィル蛍光の画像を取得させる(ステップv1)。本実施形態においては、青色LED8cの発光と撮像装置8dによるクロロフィル蛍光画像の取得は60秒以上の所定の時間にわたって行われる。なお、所定の時間に亘るクロロフィル蛍光画像の取得は、シャッター速度が60秒以上という意味ではなく、60秒以上にわたって、
図10に示されるようなクロロフィル蛍光の画像を多数取得する(=フレームレートが多数)という意味である。
【0075】
こうしてクロロフィル蛍光の多数の画像を取得すると、撮像装置8dは、これらの画像情報を制御部8eに送信する(ステップv2)。
【0076】
撮像装置8dからクロロフィル蛍光の画像を取得すると、制御部8eの光合成機能算出部8e4は、まず、各画像の輝度、すなわち蛍光強度の値を、クロロフィル蛍光画像の取得が開始されてからの時間軸に沿ってプロットした経時変化曲線を生成する(ステップv3)。経時変化曲線の生成にあたっては、スムージング処理を行い蛍光強度のノイズ値を省くことで、光合成機能値をより精確に算出することができる。
【0077】
次いで、光合成機能算出部8e4は、生成した経時変化曲線(
図11参照)において蛍光強度が最大となる極大点pの蛍光強度Pと、極大点pが生じた時点より後に最初に生じる極小点sの蛍光強度Sを算出する(=求める)。そして、蛍光強度Pの値を蛍光強度Sの値で除算することにより、植物Gの光合成機能値(P/S)を算出する(ステップv4)。すなわち、光合成機能算出部8e4は、撮像装置8dにより測定されたクロロフィル蛍光強度の時間的な推移に基づき、光合成機能値(P/S)を算出する。この光合成機能値(P/S)が大きいほど、植物Gの光合成機能の健全度が高いことが分かる。なお、光合成機能の健全度とは、より詳細には、植物の光合成が正常に機能している度合いを示す数値であり、健全度の数値が高いほど、植物の光合成が活発であり、数値が低いほど、植物の光合成が不活性化していることが分かる。以上のようにして測定された光合成機能値(P/S)のデータは、通信部8fを通じて制御装置9に送信され、記憶部9bに記録される。すなわち、制御装置9は、測定装置8により算出された光合成機能値の情報を所定の時間間隔で取得する。
【0078】
一方、制御装置9は、毎朝、早朝に、排気ガスの供給を開始するのに先立って、以下に詳述する供給量調整制御を行うことにより、その日の排気ガスの供給量の調整を行う。供給量調整制御は、毎朝所定の時刻に行う構成としてもよく、日の出時刻に応じて行う時刻を変動する構成としてもよい。
【0079】
図12は、供給量調整制御を示すフローチャートであり、
図13は、栽培日数に対する基準草丈Hst及び平均的な草丈Havを示すグラフである。
【0080】
供給量調整制御においては、まず、栽培施設2内における昨日の炭酸ガス濃度の値と、一昨日の炭酸ガス濃度の値とを比較し、昨日の炭酸ガス濃度の値が一昨日の炭酸ガス濃度の値よりも高いか否かを判定する(ステップw1)。
【0081】
昨日の炭酸ガス濃度には、昨日の各時刻に炭酸ガス濃度センサ8aにより検出され、記憶部9bに記録された炭酸ガス濃度の値の平均値が算出されて用いられる。一昨日の炭酸ガス濃度には、一昨日の各時刻に炭酸ガス濃度センサ8aにより検出され、記憶部9bに記録された炭酸ガス濃度の値の平均値が算出されて用いられる。
【0082】
判定の結果、栽培施設2内における昨日の炭酸ガス濃度の値が、一昨日の炭酸ガス濃度の値よりも高い場合、制御装置9は、直近の夜間に測定された光合成機能値が、その前日の夜間に測定された光合成機能値よりも低いか否かを判定する(ステップw2)。本実施形態においては、毎日夜9時に光合成機能値が測定され、記憶部9bに格納されるため、昨夜の9時に測定された光合成機能値が、一昨夜の9時に測定された光合成機能値よりも低いか否かが判定される。
【0083】
判定の結果、直近の夜間に測定された光合成機能値が、その前日の夜間に測定された光合成機能値よりも低い場合。この場合には、一昨日に比しての昨日の栽培施設2内の炭酸ガス濃度の上昇が、植物Gの光合成機能、ひいては生育状況に悪影響を及ぼすことが考えられる。このため、制御装置9は、記憶部9bに記録されている施設内閾値濃度(=前日の施設内濃度維持制御にて用いられた施設内閾値濃度)から、所定値だけ減算した値を、新たな施設内閾値濃度として、記憶部9bに記録し設定する(ステップw3)。換言すれば、制御装置9は、記憶部9bに記録され、設定されている施設内閾値濃度をより低く設定し直す(=低く変更する)。
【0084】
これにより、その後に開始される施設内濃度維持制御にて、前日のものよりも低い新たな施設内閾値濃度がステップu1(
図5参照)にて用いられる。その結果、その日の栽培施設2内の炭酸ガス濃度の平均値が前日よりも低下するとともに、栽培施設2内への単位時間あたりの排気ガスの供給量と、1日の総供給量が各々減少する。
【0085】
このように、本実施形態においては、排気ガス中に含まれる炭酸ガスの濃度が上昇したときに、植物Gの光合成機能値が低下したことを条件として、栽培施設2への排気ガスの供給量を減少させる負のフィードバックを行うよう構成されているから、炭酸ガスにより植物Gの生育状況に悪影響が生じる事態を防止できる。
【0086】
一方、ステップw1の判定の結果、栽培施設2内における昨日の炭酸ガス濃度の値が、一昨日の炭酸ガス濃度の値以下である場合と、ステップw2の判定の結果、直近の夜間に測定された光合成機能値がその前日に測定された光合成機能値以上である場合。これらの場合には、制御装置9は、次に、昨日の日中に計測された植物Gの草丈H3が、生育状況の基準となる草丈Hst(以下、「基準草丈」という。)よりも低いか否かを判定する(ステップw4)。この「基準草丈」の長さは、予め制御装置9の記憶部9bに記録・設定されている。なお、ステップw2の判定の結果、直近の夜間に測定された光合成機能値がその前日に測定された光合成機能値以上である場合には、栽培施設2内の炭酸ガス濃度が上昇しても植物Gの光合成機能に悪影響がないことが認められる。
【0087】
本実施形態においては、基準となる草丈Hstは、
図13に示されるように、栽培棚20への定植日を0日目とした場合の草丈H3の測定日(=昨日)までの栽培日数が経過したときの植物Gの平均的な草丈Havよりも所定値だけ低い高さに設定されている。制御装置9は、当日の日付と、記憶部9bに記録された定植日の情報とから栽培日数を算出した後、当該栽培日数に対応する基準草丈Hstの情報を記憶部9bから読み出し、昨日計測された植物Gの実際の草丈H3と比較する。すなわち、記憶部9bには、栽培日数と基準草丈Hstとが紐付けられたデータが記録されている。なお、平均的な草丈Havの値を基準草丈Hstとして用いてもよく、平均的な草丈Havから所定の割合を減算した値を基準草丈Hstとして用いてもよい。基準草丈Hstは入力装置10を用いた所定操作により、変更が可能である。
【0088】
判定の結果、昨日に計測された植物Gの草丈H3が、基準となる草丈Hst以上である場合、植物Gの生育状況が良好であることが認められるので、制御装置9は、処理を終了する。
【0089】
これに対し、判定の結果、昨日に計測された植物Gの草丈H3が、基準となる草丈Hstよりも低い場合、植物Gの生育状況が不良であることが認められるので、制御装置9は、まず、前回に施設内閾値濃度を変更してから所定の日数が経過したか否かを判定する(ステップw5)。
【0090】
判定の結果、所定の日数が経過していない場合、制御装置9は処理を終了する。これに対し、判定の結果、所定の日数が経過しているか、又は施設内閾値濃度を変更したことがない場合には、制御装置9は、記憶部9bに記録されている施設内閾値濃度(=前日の施設内濃度維持制御にて用いられた施設内閾値濃度)に、所定値だけ加算した値を、新たな施設内閾値濃度として、記憶部9bに記録し設定する(ステップw6)。換言すれば、制御装置9は、記憶部9bに記録され、設定されている施設内閾値濃度をより高く設定し直す(=高く変更する)。
【0091】
これにより、その後に開始される施設内濃度維持制御にて、前日のものよりも高い新たな施設内閾値濃度がステップu1(
図5参照)にて用いられる。その結果、その日の栽培施設2内の炭酸ガス濃度の平均値が前日よりも上昇するとともに、栽培施設2内への単位時間あたりの排気ガスの供給量と、1日の総供給量が各々増加する。
【0092】
このように、本実施形態においては、計測された植物Gの草丈H3と基準となる草丈Hstとを比較して植物Gの生育状況の良否を判定し、生育状況が不良である場合に、炭酸ガスを含む排気ガスの供給量を増加させるフィードバックが行われるよう構成されているから、植物Gの光合成をより一層促進でき、生長を早めることができる。
【0093】
以上のようにして供給量調整制御により新たな施設内閾値濃度を設定すると、制御装置9は、新たな施設内閾値濃度に基づき、
図5に示された供給量調整制御を行うことにより、排気ガスの供給を開始し、栽培施設2内の炭酸ガス濃度を適切な濃度に維持する。このように毎朝その日の排気ガスの供給量調整制御を行うことで、植物Gの生長段階に応じて栽培施設2内の炭酸ガス濃度を適切な濃度に調整でき、植物Gの生育を効果的に促進することができる。また、排気ガスの供給を開始するのに先立って、供給量調整制御を行うことで、一日を通して、変更後の施設内閾値濃度に基づき、排気ガスの供給が行われるため、変更後の施設内閾値濃度による栽培施設2内の炭酸ガス濃度の影響を、その夜の光合成機能値に反映させやすい。したがって、さらに翌日の排気ガスの供給量に効果的に活かすことができる。
図14は、栽培施設2の潅水用タンクへの水の供給に係るブロック図である。
【0094】
栽培施設2は、栽培施設2内の温度を上昇させる水素ボイラ26と、各栽培棚20に潅水する養液栽培に用いる水を貯留するタンク25を備えており、タンク25から図示しないポンプにより移送された水に、液肥等が混入されて、各栽培棚20に供給される。
【0095】
ここで、水素ボイラ26は副生成物としてほぼ水のみを生成するが、この生成された水が、給水管27を通じてタンク25内に貯留されるように構成されている。このように、水素ボイラ26で発生する水を植物Gの栽培に用いることで、暖房による環境負荷を抑えることができる。なお、水素ボイラ26から発生する水を、タンク25に供給するのに代えて、又はタンク25に供給するとともに、栽培施設2内のミスト噴霧の配管に合流させるよう構成してもよく、栽培施設2の温湯暖房の配管に合流させることも可能である。これらの場合にも、水素ボイラ26による環境負荷を抑えることができる。
【0096】
<本実施形態の技術的意義>
図1ないし
図14に示された本実施形態によれば、排気ガスがミキシングタンク5内で外気と混合されて希釈された状態で栽培施設2に供給されるよう構成されているから、排気ガスに含まれる炭酸ガス等のガス成分の濃度を薄めることができ、したがって、栽培施設2内への排気ガス供給箇所の近傍、すなわち、
図6に示された供給管15の近傍において、局所的に過度に高濃度の炭酸ガス等の成分が植物Gに吹きかけられてしまう事態を防止できる。
【0097】
さらに、本実施形態においては、栽培施設2内にて排気ガスに含まれるガス成分の一つである炭酸ガスの昨日の濃度が一昨日よりも上昇したと判断(=判定)され、且つ、植物Gのクロロフィル蛍光に基づき測定された植物Gの昨夜の光合成機能値が一昨夜よりも低下したと判断(=判定)されたことを条件として、制御装置9が栽培施設2への排気ガスの供給量を減少させるよう制御する。このように、植物Gが健康であるか否かを表す重要な指標の一つである光合成機能値に基づき、排気ガスの供給量に負のフィードバックを行うことで、排気ガスに含まれる炭酸ガスにより植物Gの生育状況に悪影響が生じる事態を防止することができる。
【0098】
加えて、本実施形態によれば、植物Gを損傷することなく、光合成機能値を測定(=算出)できるため、光合成機能値の測定により、植物Gの生育を阻害してしまうことがない。
【0099】
また、本実施形態によれば、植物Gから発せられるクロロフィル蛍光の強度の経時変化曲線(
図11参照)において蛍光強度が最大となる極大点pの蛍光強度P(=本発明の「極大値」に相当)の値を、極大点pが生じた時点より後に蛍光強度が最小となる極小点sの蛍光強度S(=本発明の「極小値」に相当)の値で除算することにより、励起光の強度に拘わらず、外観では確認できない植物Gの光合成機能値を算出できる。したがって、排気ガスに含まれる炭酸ガスによる植物の生育状況への悪影響を早期且つ正確に検知し、排気ガスの供給量にフィードバックすることができる。
【0100】
さらに、本実施形態においては、植物Gの実際の草丈H3が、生育状況の基準となる草丈Hstよりも低い場合に、植物Gの生育に有用な炭酸ガスを含む排気ガスの供給量を増加させるよう構成されている。このように、植物Gの生育状況に基づき、排気ガスの供給量にフィードバックを行うことで、植物Gの生長を促すことができる。
【0101】
なお、本実施形態においては、栽培施設2に対し、供給システム1が適用されているが、栽培施設2が、本実施形態の供給システム1の上記の構成をすべて丸ごと備えるものであってもよい。この場合にも、同様の効果を得ることができる。
【0102】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0103】
例えば、
図1ないし
図14に示された前記実施形態においては、植物Gに励起光を照射する青色LED8cが測定装置8に搭載されているが、栽培施設2に固定して設けてもよい。
【0104】
さらに、前記実施形態においては、炭酸ガス濃度が上昇したときに、光合成機能値が低下したことを条件として、施設内閾値濃度を下げることで、排気ガスの供給量を減少させるよう構成されているが、さらに、炭酸ガス濃度が上昇したときに、光合成機能値が上昇したことを条件として、施設内閾値濃度を上げることで、排気ガスの供給量を増加させるとともに、最低基準濃度又は/及び最高基準濃度を所定値又は所定の割合だけ上げることにより、排気ガスの濃度を上昇させるよう構成してもよい。
【0105】
加えて、前記実施形態においては、炭酸ガス濃度が上昇したときに、光合成機能値が低下したことを条件として、施設内閾値濃度を下げることで、排気ガスの供給量を減少させるよう構成されているが、炭酸ガス濃度が上昇したときに、光合成機能値が低下したことを条件として、施設内閾値濃度を下げるとともに、
図4に示される最低基準濃度又は/及び最高基準濃度を、自動的に所定値又は所定の割合だけ下げるよう構成してもよい。これにより、ミキシングタンク5内の排気ガスの濃度を、ひいては炭酸ガスの濃度を下げ、栽培施設2へ供給されるガス中の排気ガスの濃度を低下させることができ、栽培施設2内の植物Gに過剰症状が出る事態をより一層抑制できる。
【0106】
また、前記実施形態においては、
図12のステップw3に示されるように、施設内閾値濃度を変更することで、栽培施設2への排気ガスの供給量を調整可能に構成されているが、排気ガスの供給量を調整する方法はこれに限られない。例えば、植物Gの光合成が行われる早朝から夕方にかけて、単純に第4ファン14aを駆動し続けることで、ミキシングタンク5から栽培施設2内に排気ガスを供給し続ける場合等には、第4ファン14aの駆動速度(より詳細には第4ファンを回転させるモータの駆動速度)を変更することや、最低基準濃度及び最高基準濃度をいずれも高く、又はいずれも低く変更することで、排気ガスの供給量を調整することも可能である。最低基準濃度及び最高基準濃度をいずれも低く変更した場合には、排気ガスに対する外気の混合比率を高くすることができる。
【0107】
さらに、前記実施形態においては、早朝から夕方にかけて栽培施設2へ排気ガスを供給するよう構成されているが、夜間にも排気ガスの供給を行うよう構成してもよい。この場合には、例えば、夜9時に検出された炭酸ガス濃度よりも、1時間後の夜10時に検出された炭酸ガス濃度の方が高く、且つ、夜9時に測定された光合成機能値よりも、1時間後の夜10時に測定された光合成機能値の方が低い場合に、即時に排気ガスの供給量を減少制御することが可能になる。
【0108】
また、前記実施形態においては、排気ガスに炭酸ガスが含まれており、炭酸ガス濃度と光合成機能値と、植物Gの草丈H3とに基づき、希釈された排気ガスの供給量を制御するよう構成されているが、工場等の施設から排出される排気ガスに、NOx(NO,NO2など)や亜硫酸ガス(SO2)、アンモニア(NH3)、オゾン(O3)、一酸化炭素(CO)等のうちの少なくとも1つがガス成分として含まれている場合には、炭酸ガス濃度センサに代えて、又は炭酸ガス濃度センサとともに、これらのガス成分のうちの少なくとも一つの濃度を検出するセンサをバッファタンク4、ミキシングタンク5及び栽培施設2に各々配置し、前記実施形態と同様に、栽培施設2におけるこれらのガス成分の濃度と光合成機能値、植物Gの草丈H3に基づき、栽培施設2内の排気ガスの供給量について、フィードバック制御を行うよう構成してもよく、併せてミキシングタンク5内の排気ガスの濃度を制御するよう構成してもよい。
【0109】
すなわち、炭酸ガス、NOx、亜硫酸ガス、アンモニア、オゾン、一酸化炭素等のガス成分のうち、少なくとも1つのガス成分の濃度が上昇したときに、光合成機能値が低下した場合には、施設内閾値濃度を下げ、第4ファン14aの駆動速度を落とし、又は最低基準濃度及び最高基準濃度を下げることで、排気ガスの供給量を減少させ、さらに必要な場合にはミキシングタンク5内の排気ガスの濃度を低下させる。また、少なくとも1つのガス成分の濃度が上昇したときに、光合成機能値が上昇した場合や、植物Gの生育状況が不良(=草丈H3が基準草丈Hst未満)である場合には、施設内閾値濃度を上げることで排気ガスの供給量を上昇させ、又は/加えて、最低基準濃度又は/及び最高基準濃度を所定値又は所定の割合だけ上げることにより、排気ガスの濃度を上昇させる。このように構成することで、排気ガスにより植物Gの生長を促しつつ、排気ガスに含まれる有用なガス成分の過剰症状により植物Gの生育状況に悪影響が生じる事態を防止することができる。なお、例えばNOxやアンモニアは植物Gの窒素同化に役立ち得る。亜硫酸ガスは植物Gの硫黄同化に役立ち得る。オゾンは植物Gの活性化に役立ち得る。
【0110】
さらに、前記実施形態においては、
図7に示されるように、レーザーセンサ7fが、代表(=サンプル)となる植物Gの生長点に、側方からレーザー光L1を照射できるよう、レーザーセンサ7fが植物Gの側方に配置されているが、レーザーセンサ7fを、代表となる植物Gの上方に配置してもよい。この場合には、レーザーセンサ7fから下方の植物Gへ向けてレーザー光L1を照射してから、その反射光L2をレーザー検知部7f2で検知するまでの時間から、いわゆるToF法により植物Gの生長点G1の高さH1、ひいては草丈H3を算出することができる。さらに、この場合には、算出された高さH1の位置にセンサボックス7eが位置するように、センサ摺動モータ7gを自動的に駆動させることが好ましい。これにより植物Gの生長点付近のガス濃度等の環境情報を取得することができる。
【0111】
加えて、前記実施形態においては、植物Gの生育に有用なガス成分である炭酸ガス濃度に基づき、排気ガスの供給量にフィードバックさせるよう構成されているが、排気ガスの供給量にフィードバックするのに用いるガス成分は、植物Gの生育に有用なものに限られない。すなわち、栽培施設2内に供給する排気ガスには、植物Gの生育に有用なガス成分を含むものが用いられるが、当該排気ガスに含まれる、当該有用なガス成分以外の他の有害となり得るガス成分の濃度に基づき、当該排気ガスの供給量を制御するよう構成することも可能である。
【0112】
また、前記実施形態においては、
図5に示されたように、ステップu3にて、排気ガスを所定の供給時間にわたって栽培施設2内に供給するよう構成されているが、栽培施設2内の、所定の時間における、炭酸ガス等の排気ガスのガス成分の濃度の変化量が所定値以上大きい場合には、排気ガスの濃度が低いことが考えられるので、ステップu3における供給時間を長く変更するよう構成してもよい。
【0113】
さらに、前記実施形態においては、排気ガス供給手段の一例として第4ファン14aが第4移送管14内に設けられているが、この第4ファン14aを、ミキシングタンク5内又は栽培施設2内に配置してもよい。また、第4ファン14aに代えて、排気ガス供給手段の他の一例としての真空ポンプを栽培施設2内に配置し、ミキシングタンク5内に貯留された排気ガスをこの真空ポンプにより栽培施設2内へ引き込むよう構成してもよい。
【0114】
加えて、前記実施形態においては、栽培施設2の炭酸ガス濃度を検出する炭酸ガス濃度センサ8aが測定装置8に搭載されているが、センサボックス7e内に炭酸ガス濃度センサを配置し、炭酸ガス濃度センサの高さ位置を変更可能としてもよい。これにより、植物Gの生長点G1に対応する(換言すれば、生長点G1と略同一の)高さ位置の炭酸ガス濃度を検出できるため、排気ガスの供給をより適切に制御することが可能になる。
【符号の説明】
【0115】
1 排気ガス供給システム
2 栽培施設
3 排気ガス供給源
4 バッファタンク
5 ミキシングタンク
7 草丈計測装置
8 測定装置
9 制御装置
10 入力装置
11 第1移送管
12 第2移送管
13 第3移送管
14 第4移送管
15 供給管
16 レール部材
20 栽培棚
21 梁
23 床
24 栽培面
25 タンク
26 水素ボイラ
27 給水管
30 エンコーダ