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特開2024-141941ハニカムフィルタ及びハニカムフィルタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141941
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ及びハニカムフィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20241003BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20241003BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20241003BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B01D39/20 D
B01D46/00 302
F01N3/022 C
C04B38/00 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053829
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】野田 真梨子
【テーマコード(参考)】
3G190
4D019
4D058
4G019
【Fターム(参考)】
3G190AA12
3G190BA01
3G190BA02
3G190BA11
3G190BA43
3G190CA03
3G190CA13
3G190CA30
4D019AA01
4D019BA05
4D019BB06
4D019BD01
4D019BD02
4D019CA01
4D019CB06
4D019CB07
4D058JA32
4D058JA37
4D058JA38
4D058JB06
4D058JB28
4D058SA08
4G019FA12
4G019FA13
(57)【要約】
【課題】 再生時のPMの漏れを抑制することができるハニカムフィルタを提供する。
【解決手段】 排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、上記セルは、第1端部が封止された第1セルと、前記第1端部と反対側の第2端部が封止された第2セルとを有するハニカムフィルタであり、上記セル隔壁はSiC多孔体からなり、上記SiC多孔体を構成するSiC粒子の平均粒子径は10~50μmであり、上記SiC粒子の一部は、表面に平均粒子径が1~5μmのSiC微粒子が焼結付着することで形成された凹凸を有する凹凸粒子であり、上記SiC粒子の20%以上が上記凹凸粒子である、ことを特徴とするハニカムフィルタ。
【選択図】 図5


【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、前記セルは、第1端部が封止された第1セルと、前記第1端部と反対側の第2端部が封止された第2セルとを有するハニカムフィルタであり、
前記セル隔壁はSiC多孔体からなり、
前記SiC多孔体を構成するSiC粒子の平均粒子径は10~50μmであり、
前記SiC粒子の一部は、表面に平均粒子径が1~5μmのSiC微粒子が焼結付着することで形成された凹凸を有する凹凸粒子であり、
前記SiC粒子の20%以上が前記凹凸粒子である、ことを特徴とするハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記ハニカムフィルタの平均気孔径は、7~13μmである、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記ハニカムフィルタの気孔率は、35~45%である、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
平均粒子径が10~30μmのSiC粒子を含む原料組成物を押出成形してハニカム成形体を得る工程と、前記ハニカム成形体を焼成する焼成工程とを含む工程により、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、前記セルが、第1端部が封止された第1セルと、前記第1端部と反対側の第2端部が封止された第2セルと、を有し、SiC多孔体からなるハニカム焼成体を得る工程と、
前記ハニカム焼成体の前記第1端部及び/又は前記第2端部から、前記セル隔壁の表面及び内部に平均粒子径が1~5μmのSiC微粒子を導入する粒子導入工程と、
前記セル隔壁の表面及び内部に前記SiC微粒子が導入された前記ハニカム焼成体を、1600~1900℃で再焼成する再焼成工程と、を有することを特徴とするハニカムフィルタの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタ及びハニカムフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス規制強化により、DPFには高いPM捕集性能が求められている。
【0003】
DPFのPM捕集性能を高めるための方法として、例えば、特許文献1には、セル隔壁の表面粗さを小さくして、表層のPM層による表層濾過を効率化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-201363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、PMの捕集性能は高いものの、PM再生時に、PM層の一部が燃焼せずに微細な粒子となり、セル隔壁の内部を通過して漏れ出てしまうことがあった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされた発明であり、再生時のPMの漏れを抑制することができるハニカムフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のハニカムフィルタは、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、上記セルは、第1端部が封止された第1セルと、前記第1端部と反対側の第2端部が封止された第2セルとを有するハニカムフィルタであり、上記セル隔壁はSiC多孔体からなり、上記SiC多孔体を構成するSiC粒子の平均粒子径は10~50μmであり、上記SiC粒子の一部は、表面に平均粒子径が1~5μmのSiC微粒子が焼結付着することで形成された凹凸を有する凹凸粒子であり、上記SiC粒子の20%以上が上記凹凸粒子である、ことを特徴とする。
【0008】
本発明のハニカムフィルタでは、SiC多孔体を構成するSiC粒子の20%以上が、SiC粒子の表面にSiC微粒子が焼結付着することで形成された凹凸を有する凹凸粒子となっている。SiC多孔体中に含まれる凹凸粒子によって、PM再生時に生じる微細な粒子がセル隔壁の内部を通過することが妨げられる。その結果、再生時にPMが漏れることを抑制することができる。
【0009】
なお、SiC粒子に占める凹凸粒子の割合は、セル隔壁を厚さ方向に沿って切断した切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより求めることができる。
具体的には、セル隔壁を厚さ方向に垂直な方向に切断した切断面を、セル隔壁の厚さ方向に3等分して第1部分、第2部分及び第3部分と分割し、それぞれの部分から100μm×100μmの領域を3箇所ずつ無作為に選択してSEM(加速電圧:15kV、拡大倍率:1000倍)で観察する。観察した各視野中のSiC粒子の数及び凹凸粒子の数を目視でカウントし、全9領域での平均値を求めることで、SiC粒子に占める凹凸粒子の割合を求めることができる。
【0010】
なお、SiC多孔体にSiC微粒子が「焼結付着」しているかどうかは、セル隔壁をSEMにより観察した際に、SiC多孔体を構成するSiC粒子とSiC微粒子との間に明確な境界が存在するかどうか、により判断することができる。
SiC多孔体を構成するSiC粒子とSiC微粒子とが焼結していると、SiC微粒子の一部がSiC粒子に取り込まれた状態となり、境界が明確ではなくなる。
SiC多孔体を構成するSiC粒子とSiC微粒子との間に明確な境界が存在している場合、SiC多孔体を構成するSiC微粒子はSiC粒子に焼結付着しているとはいえない。
すなわち、SEMでの観察によって、観察した表面に1個以上のSiC微粒子が焼結付着しているSiC粒子を凹凸粒子と判断し、観察した表面にSiC微粒子が一切焼結付着していないSiC粒子を凹凸粒子ではない粒子(すなわち通常のSiC粒子)と判断する。
【0011】
なお、SiC粒子と凹凸粒子の数をカウントする上記視野において、SiC粒子とSiC微粒子とが焼結付着しているかどうかを確認できない場合、当該部分について拡大率を変化させて、SiC粒子とSiC微粒子が焼結付着しているかどうかを確認してもよい。
【0012】
本発明のハニカムフィルタにおいて、上記ハニカムフィルタの平均気孔径は、7~13μmであることが好ましい。
ハニカムフィルタの平均気孔径が上記範囲であると、捕集効率を十分に高くすることができる。
【0013】
本発明のハニカムフィルタにおいて、上記ハニカムフィルタの気孔率は、35~45%であることが好ましい。
ハニカムフィルタの気孔率が上記範囲であると、捕集効率を十分に高くすることができる。
【0014】
本発明のハニカムフィルタの製造方法は、平均粒子径が10~30μmのSiC粒子を含む原料組成物を押出成形してハニカム成形体を得る工程と、上記ハニカム成形体を焼成する焼成工程とを含む工程により、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、上記セルが、第1端部が封止された第1セルと、上記第1端部と反対側の第2端部が封止された第2セルと、を有し、SiC多孔体からなるハニカム焼成体を得る工程と、上記ハニカム焼成体の上記第1端部及び/又は上記第2端部から、上記セル隔壁の表面及び内部に平均粒子径が1~5μmのSiC微粒子を導入する粒子導入工程と、上記セル隔壁の表面及び内部に上記SiC微粒子が導入された上記ハニカム焼成体を、1600~1900℃で再焼成する再焼成工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明のハニカムフィルタの製造方法では、ハニカム焼成体の第1端部及び/又は第2端部から、セル隔壁の表面及び内部に平均粒子径が1~5μmのSiC微粒子を導入する粒子導入工程を行う。この工程によって、ハニカム焼成体を構成するセル隔壁の表面だけでなく、セル隔壁の内部にまでSiC微粒子が付着する。
そして、続く再焼成工程によって、SiC微粒子がSiC多孔体の表面に焼結付着する。これにより、SiC粒子が、その表面にSiC微粒子が焼結付着して凹凸が形成された凹凸粒子となり、本発明のハニカムフィルタが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、ハニカムフィルタの一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、ハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、図2に示すハニカム焼成体を一方の端面からみた端面図である。
図4図4は、図2に示すハニカム焼成体のA-A線断面図である。
図5図5は、図4に破線で示す領域の部分拡大図である。
図6図6は、SiC微粒子がSiC多孔体の表面に焼結付着する様子を示すSEM写真である。
図7図7は、SiC微粒子がSiC多孔体の表面に焼結付着していない様子を示すSEM写真である。
図8図8は、SiC粒子の表面にSiC微粒子が焼結付着して凹凸粒子を形成している例を示すSEM写真である。
図9図9は、SiC粒子の表面にSiC微粒子が焼結付着していない例を示すSEM写真である。
図10図10は、PMの捕集性能測定装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0018】
[ハニカムフィルタ]
本発明のハニカムフィルタは、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、上記セルは、第1端部が封止された第1セルと、前記第1端部と反対側の第2端部が封止された第2セルとを有するハニカムフィルタであり、上記セル隔壁はSiC多孔体からなり、上記SiC多孔体を構成するSiC粒子の平均粒子径は10~50μmであり、上記SiC粒子の一部は、表面に平均粒子径が1~5μmのSiC微粒子が焼結付着することで形成された凹凸を有する凹凸粒子であり、上記SiC粒子の20%以上が上記凹凸粒子である、ことを特徴とする。
【0019】
図1は、ハニカムフィルタの一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、ハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図である。
図3は、図2に示すハニカム焼成体を一方の端面からみた端面図である。
【0020】
図1に示すハニカムフィルタ20では、複数個のハニカム焼成体10が接着材層15を介して結束されてセラミックブロック18を構成し、このセラミックブロック18の外周には、排ガスの漏れを防止するための外周コート層16が形成されている。なお、外周コート層16は、必要に応じて形成されていればよい。
【0021】
ハニカムフィルタ20では、複数個のハニカム焼成体10が接着材層15を介して結束されている。そのため、1つのハニカム焼成体10に応力が生じた場合でも、その応力が接着材層15により緩和され、他のハニカム焼成体10に伝わりにくくなる。つまり、ハニカムフィルタ20に生じた応力を緩和させることができる。その結果、ハニカムフィルタ20が損傷することを防ぐことができる。
【0022】
接着材層15は、無機バインダと無機粒子とを含む接着材ペーストを塗布、乾燥させたものである。接着材層15は、さらに無機繊維及び/又はウィスカを含んでいてもよい。
接着材層15の厚さは、0.5~2.0mmが好ましい。
【0023】
外周コート層16は、内部のセルを機械的に保護する役割を果たす。そのため、ハニカムフィルタ20は、圧縮強度等の機械的特性に優れる。
なお、外周コート層16の材料は、接着材層15の材料と同じであることが好ましい。外周コート層16の厚さは、0.1~3.0mmが好ましい。
【0024】
なお、ハニカム焼成体10は、四角柱形状であるが、図2及び図3に示すように、端面における角部が曲線形状となるように面取りが施されており、これにより角部に熱応力が集中し、クラック等の損傷が発生するのを防止している。上記角部は、直線形状となるように面取りされていてもよい。
【0025】
図2に示すハニカム焼成体10は、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁13を備え、長手方向に対向する第1端面10a及び第2端面10bを有する。
セル隔壁13により区画形成されるセルは、第1端面及び第2端面にそれぞれ端部を有しており、第1端部が封止された第1セル12と、第2端部が封止された第2セル11とを備えてなる。
【0026】
なお、本発明のハニカムフィルタでは、第1セル及び排ガス排出セルを目封じする目封止材は、ハニカム焼成体と同じ材料であることが好ましい。
【0027】
ハニカム焼成体10は、炭化ケイ素(SiC)からなる。炭化ケイ素からなるハニカム焼成体は耐熱性が高い。
【0028】
ハニカムフィルタ20では、第1セル12及び第2セル11の長手方向に垂直方向の断面形状は、目封止部分を除き第1端面10aから第2端面10bにかけて、それぞれのセルにおいて同じである。
【0029】
図3に示すように、ハニカム焼成体10では、第2セル11の断面形状、及び、第1セル12の断面形状は同じ形状の正方形であり、これらは、交互に市松模様状に配置されている。
【0030】
ここで、ハニカム焼成体10に排ガスが流入してPMが捕集される場合について、図4を参照して説明する。図4は、図2に示すハニカム焼成体のA-A線断面図である。
なお、図4は、ハニカム焼成体10の第1端面10aを排ガス入口側、第2端面10bを排ガス出口側とした場合の例である。
【0031】
図4に示すように、第2セル11に流入した排ガスG(図4中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、第1セル12と第2セル11とを隔てるセル隔壁13を通過した後、第1セル12から流出するようになっている。排ガスGがセル隔壁13を通過する際に、排ガス中のPM等が捕集されるため、セル隔壁13は、フィルタとして機能する。
この場合、排ガスが流入する第2セル11を排ガス導入セルともいい、排ガスが排出される第1セル12を排ガス排出セルともいう。
【0032】
ただし、第1セル及び第2セルは、それぞれ排ガス排出セル及び排ガス導入セルに限定されない。すなわち、ハニカム焼成体10の第2端面10bが排ガス入口側、第1端面10aが排ガス出口側である場合、第1セル12が排ガス導入セルとなり、第2セル11が排ガス排出セルとなる。
【0033】
図5は、図4に破線で示す領域の部分拡大図である。
図5に示すように、セル隔壁13は、SiC粒子30からなるSiC多孔体で構成されている。一部のSiC粒子30の表面には、SiC微粒子40が焼結付着している。
【0034】
SiC粒子30の表面にSiC微粒子40が焼結付着することで、SiC粒子30の表面に凹凸が形成される。SiC微粒子40が表面に焼結付着することにより凹凸が形成されたSiC粒子30が、凹凸粒子35である。
【0035】
凹凸粒子35は、セル隔壁13の厚さ方向に分布している。
図5に示すように、セル隔壁13を厚さ方向に3等分し、第2セル11に近い側から順に、第1部分13a、第2部分13b、第3部分13cとした場合に、第1部分13a、第2部分13b、第3部分13cのいずれの部分にも、凹凸粒子35が存在している。
【0036】
SiC多孔体を構成するSiC粒子のうちの20%以上が、凹凸粒子である。
SiC多孔体を構成するSiC粒子のうちの20%以上が、凹凸粒子であると、凹凸粒子によって、PM再生時に生じる微細な粒子(PM小粒子)がセル隔壁の内部を通過することが充分に妨げられ、再生時にPMが漏れることを抑制することができる。
【0037】
SiC粒子のうち凹凸粒子が占める割合は、セル隔壁の断面をSEMで観察することにより求めることができる。具体的な手順を以下に示す。
【0038】
まず、図5に示すように、セル隔壁を厚さ方向に3等分する。
図5では、第2セル11に近い側から順に、第1部分13a、第2部分13b、第3部分13cとなっている。
次に、第1部分13a、第2部分13b、第3部分13cの各部分から、縦100μm×横100μmの領域を無作為に選択してSEM(加速電圧:15kV、拡大倍率1000倍)で観察する。観察した各領域内でSiC粒子及びSiC微粒子並びに凹凸粒子を認定し、領域中に存在する全てのSiC粒子の数と凹凸粒子の数をカウントし、(凹凸粒子の数)/(SiC粒子の数)×100=SiC粒子に占める凹凸粒子の割合(%)とする。これを各部分につき3領域(合計9領域)で行い、平均値を求めることで、第1部分、第2部分及び第3部分のSiC粒子に占める凹凸粒子の割合、並びに、セル隔壁全体のSiC粒子に占める凹凸粒子の割合(以下、単に凹凸粒子の割合ともいう)を求めることができる。
【0039】
ただし、セル隔壁の厚さが300μm未満(0.3mm未満)の場合、セル隔壁方向に各部分の全体が入るように、縦100μm×横100μmの領域を選択して、同様にSEM観察から各部分のSiC粒子に占める凹凸粒子の割合を求める。このとき、例えば第1部分のSEM像には一部第2部分も入ることになるが、観察範囲全体でSiC粒子の数と凹凸粒子の数をカウントし、凹凸粒子の割合を算出することとする。
【0040】
なお、第1部分、第2部分及び第3部分において、凹凸粒子の割合は、それぞれ同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
例えば、セル隔壁全体の凹凸粒子の割合が20%以上であれば、第1部分、第2部分及び第3部分の1つ又は2つの部分における凹凸粒子の割合が20%未満であってもよい。
【0041】
凹凸粒子の割合は、20%以上、60%以下であることが好ましい。
【0042】
焼結付着とは、付着した界面で焼結が進行していることを指す。
本発明のハニカムフィルタにおいては、SiC微粒子がSiC多孔体を構成するSiC粒子の表面に付着した界面で焼結が進行していることを指す。
焼結が進行した界面をSEMで観察した場合、SiC微粒子の一部がSiC粒子に取り込まれた状態となり、境界が明確ではなくぼやけた状態として観察される。
従って、界面が明確であるかどうかを確認することにより、焼結付着の有無を確認することができる。
【0043】
SiC微粒子がSiC多孔体の表面に焼結付着しているかどうかについて、図6及び図7を参照して説明する。
【0044】
図6は、SiC微粒子がSiC多孔体の表面に焼結付着する様子を示すSEM写真である。
図7は、SiC微粒子がSiC多孔体の表面に焼結付着していない様子を示すSEM写真である。
図6に示すように、SiC多孔体を構成するSiC粒子30に焼結付着するSiC微粒子40では、SiC粒子30にSiC微粒子40が食い込んでいるように見え、SiC粒子30とSiC微粒子40の界面が明確ではない。
これに対して、図7では、SiC多孔体を構成するSiC粒子30と、焼結付着していないSiC微粒子40’との間の境界が明確となっている。
【0045】
図6に示すSiC微粒子40が焼結付着しているSiC粒子30は、凹凸粒子を構成するSiC粒子である。
一方、図7に示す、焼結付着していないSiC微粒子40’に接触しているSiC粒子30は、凹凸粒子を構成するSiC粒子ではない。
【0046】
SiC微粒子は、粒子径が1~5μmのSiCの粒子である。
従って、SiC微粒子の平均粒子径は1~5μmである。
これに対して、セル隔壁を構成するSiC多孔体は、平均粒子径が10~50μmのSiCの粒子からなるため、両者は明確に区別できる。
【0047】
SiC微粒子の平均粒子径は、SEM(加速電圧:15kV、拡大倍率:10000倍)により測定することができる。具体的には、セル隔壁の切断面のSEM画像を撮影し、無作為に抽出した5つのSEM画像から、視野中の全てのSiC微粒子を判定するとともに、各SiC微粒子の投影面積を求める。投影面積相当円の直径を当該SiC微粒子の粒子径とし、その平均値を、SiC微粒子の平均粒子径とする。
【0048】
SiC多孔体を構成するSiC粒子の平均粒子径は、SEM(加速電圧:15kV、拡大倍率:1000倍)により測定することができる。具体的には、セル隔壁の表面又は切断面のSEM画像を撮影し、無作為に抽出した5つのSEM画像から、視野中の全てのSiC粒子を判定するとともに、各SiC粒子の投影面積を求める。投影面積相当円の直径を当該SiC粒子の粒子径とし、その平均値を、SiC多孔体を構成するSiC粒子の平均粒子径とする。なお、選択したSiC粒子が凹凸粒子である場合、当該凹凸粒子を構成するSiC粒子に焼結付着するSiC微粒子の投影面積も考慮するものとする。
【0049】
SiC粒子と凹凸粒子の区別について、図8及び図9を参照しながら説明する。
図8は、SiC粒子の表面にSiC微粒子が焼結付着して凹凸粒子を形成している例を示すSEM写真である。図9は、SiC粒子の表面にSiC微粒子が焼結付着していない例を示すSEM写真である。
図8に示すように、凹凸粒子35は、SiC粒子30の表面にSiC微粒子40が焼結付着することで凹凸が形成されている。
図9に示すように、SiC粒子30の表面にSiC微粒子が焼結付着していない場合、当該SiC粒子は凹凸粒子ではない。
【0050】
なお、図8に示すSEM画像において、視野中に存在するSiC粒子の数は50個であり、このうち表面にSiC微粒子が焼結付着しているものの数は17個である。
従って、図8では、50個あるSiC粒子のうち17個が凹凸粒子であるといえる。
そのため、図8に示すセル隔壁では、SiC粒子の34%が凹凸粒子であるといえる。
【0051】
ハニカムフィルタの平均気孔径は、7~13μmであることが好ましい。
ハニカムフィルタの気孔率は、35~45%であることが好ましい。
【0052】
ハニカムフィルタの「平均気孔径」及び「気孔率」は、水銀圧入法で求めることができる。ただし、接触角を130°、表面張力を485mN/mとする。
【0053】
セル隔壁の厚さは、0.16~0.46mmであることが好ましい。
【0054】
ハニカム焼成体の断面におけるセルの単位面積当たりの数は、31~93個/cm(200~600個/inch)であることが好ましい。
【0055】
[ハニカムフィルタの製造方法]
本発明のハニカムフィルタの製造方法は、平均粒子径が10~30μmのSiC粒子を含む原料組成物を押出成形してハニカム成形体を得る工程と、上記ハニカム成形体を焼成する焼成工程と、を含む工程により、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、上記セルが、第1端部が封止された第1セルと、上記第1端部と反対側の第2端部が封止された第2セルと、を有し、SiC多孔体からなるハニカム焼成体を得る工程と、上記ハニカム焼成体の上記第1端部及び/又は上記第2端部から、上記セル隔壁の表面及び内部に平均粒子径が1~5μmのSiC微粒子を導入する粒子導入工程と、上記セル隔壁の表面及び内部に上記SiC微粒子が導入された上記ハニカム焼成体を、1600~1900℃で再焼成する再焼成工程と、を有することを特徴とする。
【0056】
(ハニカム成形体を得る工程)
まず、炭化ケイ素粒子とバインダを含む湿潤混合物を押出成形することによってハニカム成形体を作製する成形工程を行う。
具体的には、まず、平均粒子径が10~30μmの炭化ケイ素粒子と、有機バインダと、液状の可塑剤と、潤滑剤と、水とを混合することにより、ハニカム成形体製造用の湿潤混合物を調製する。
【0057】
上記湿潤混合物には、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。
バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。これらの中では、アルミナバルーンが好ましい。
【0058】
続いて、湿潤混合物を押出成形機に投入し、押出成形することにより所定の形状のハニカム成形体を作製する。この際、図2に示すセル構造(セルの形状及びセルの配置)を有する断面形状が作製されるような金型を用いてハニカム成形体を作製する。
【0059】
(封止工程)
ハニカム成形体を所定の長さに切断し、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いて乾燥させた後、所定のセルに封止材となる封止材ペーストを充填して上記セルを目封止する封止工程を行う。
ここで、封止材ペーストとしては、上記湿潤混合物を用いることができる。
封止工程により、第1端部が封止され第2端部が開口した第1セルと、第2端部が封止され第1端部が開口した第2セルとが形成される。
【0060】
(焼成工程)
焼成工程ではハニカム成形体を焼成する。
ハニカム成形体を焼成することにより、ハニカム焼成体が得られる。
【0061】
焼成温度は、1600~2200℃であることが好ましい。
焼成時間は、1~6時間であることが好ましい。
昇温速度は、5~60℃/minであることが好ましい。
焼成雰囲気は、不活性雰囲気とすることが好ましい。
【0062】
焼成に先立って、ハニカム成形体を脱脂する脱脂工程を行ってもよい。脱脂工程は、例えば300~650℃の温度でハニカム成形体を加熱することで行われる。
【0063】
切断、乾燥、目封止、脱脂、焼成の条件は、従来からハニカム焼成体を作製する際に用いられている条件を適用することができる。
【0064】
(粒子導入工程)
粒子導入工程では、ハニカム焼成体の第1端部及び/又は第2端部から、セル隔壁の表面及び内部に平均粒子径が1~5μmのSiC微粒子を導入する。
SiC微粒子の導入は、ハニカム焼成体の第1端面だけから行ってもよいし、第2端面だけから行ってもよいし、第1端面及び第2端面の両方から行ってもよい。
【0065】
導入されたSiC微粒子は、ハニカム焼成体を構成するセル隔壁の表面だけでなく、セル隔壁の内部にも侵入し、セル隔壁を構成するSiC粒子(SiC多孔体)の表面に付着する。
【0066】
(再焼成工程)
再焼成工程では、セル隔壁の表面及び内部にSiC微粒子が導入されたハニカム焼成体を、1600~1900℃で再焼成して、ハニカム焼成体を得る。
上記条件で再焼成することで、粒子導入工程によりセル隔壁の表面及び内部に導入されたSiC微粒子が、SiC多孔体を構成するSiC粒子と焼結し、焼結付着して凹凸粒子が形成される。
【0067】
焼成時間は、1~3時間であることが好ましい。
昇温速度は、5~60℃/minであることが好ましい。
焼成雰囲気は、不活性雰囲気とすることが好ましい。
【0068】
以上の工程により、本発明のハニカムフィルタを構成するハニカム焼成体が得られる。
【0069】
なお、再焼成工程で得られるハニカム焼成体は、前述の焼成工程で得られるハニカム焼成体とは異なる。焼成工程により得られるハニカム焼成体と再焼成工程により得られるハニカム焼成体を区別する場合、前者を「ハニカム焼成体(再焼成前)」、後者を「ハニカム焼成体(再焼成後)」とする。
本発明のハニカムフィルタを構成するハニカム焼成体は、「ハニカム焼成体(再焼成後)」である。
【0070】
本発明のハニカムフィルタは、1つのハニカム焼成体からなる、いわゆる一体型ハニカムフィルタであってもよいが、後述する、複数のハニカム焼成体が集合して形成された、いわゆる集合型のハニカムフィルタであってもよい。
【0071】
集合型のハニカムフィルタは、例えば以下の工程により得ることができる。
【0072】
(結束工程)
支持台上で複数個のハニカム焼成体を接着材ペーストを介して順次積み上げて結束し、ハニカム焼成体が複数個積み上げられてなるハニカム集合体を作製する。
【0073】
接着材ペーストとしては、無機バインダと有機バインダと無機粒子とからなるものを使用する。また、上記接着材ペーストは、さらに無機繊維及び/又はウィスカを含んでいてもよい。
【0074】
接着材ペーストに含まれる無機粒子としては、例えば、炭化物粒子、窒化物粒子等が挙げられる。具体的には、炭化ケイ素粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機粒子の中では、熱伝導性に優れる炭化ケイ素粒子が好ましい。
【0075】
接着材ペーストに含まれる無機繊維及び/又はウィスカとしては、例えば、シリカ-アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等からなる無機繊維及び/又はウィスカ等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機繊維の中では、アルミナファイバが好ましい。また、無機繊維は、生体溶解性ファイバであってもよい。
【0076】
さらに、上記接着材ペーストには、必要に応じて造孔材を添加してもよい。接着材ペーストに添加する造孔材としては、ハニカム成形体を得るために準備される湿潤混合物に添加される造孔材と同じものを用いることができる。
【0077】
次にハニカム集合体を加熱することにより接着材ペーストを加熱固化して接着材層とし、四角柱状のセラミックブロックを作製する。
【0078】
接着材ペーストの固化条件は、従来からハニカムフィルタを作製する際に用いられている条件を適用することができる。
【0079】
続いて、セラミックブロックに切削加工を施す切削加工工程を行い、外周が略円柱形状に加工されたセラミックブロックを作製する。
【0080】
略円柱形状のセラミックブロックの外周面に外周コート材ペーストを塗布し、乾燥固化して外周コート層を形成する外周コート層形成工程を行う。
【0081】
外周コート材ペーストとしては、上記接着材ペーストを使用することができる。なお、外周コート材ペーストとして、上記接着材ペーストと異なる組成のペーストを使用してもよい。
【0082】
なお、外周コート層は必ずしも設ける必要はなく、必要に応じて設ければよい。
【0083】
外周コート層を設けることによって、セラミックブロックの外周の形状を整えて、円柱状のハニカムフィルタとすることができる。
【0084】
本明細書には以下の発明が記載されている。
【0085】
本開示(1)は、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、前記セルは、第1端部が封止された第1セルと、前記第1端部と反対側の第2端部が封止された第2セルとを有するハニカムフィルタであり、
前記セル隔壁はSiC多孔体からなり、
前記SiC多孔体を構成するSiC粒子の平均粒子径は10~50μmであり、
前記SiC粒子の一部は、表面に平均粒子径が1~5μmのSiC微粒子が焼結付着することで形成された凹凸を有する凹凸粒子であり、
前記SiC粒子の20%以上が前記凹凸粒子である、ことを特徴とするハニカムフィルタである。
【0086】
本開示(2)は、前記ハニカムフィルタの平均気孔径は、7~13μmである、本開示(1)に記載のハニカムフィルタである。
【0087】
本開示(3)は、前記ハニカムフィルタの気孔率は、35~45%である、本開示(1)又は(2)に記載のハニカムフィルタである。
【0088】
本開示(4)は、平均粒子径が10~30μmのSiC粒子を含む原料組成物を押出成形してハニカム成形体を得る工程と、前記ハニカム成形体を焼成する焼成工程とを含む工程により、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、前記セルが、第1端部が封止された第1セルと、前記第1端部と反対側の第2端部が封止された第2セルと、を有し、SiC多孔体からなるハニカム焼成体を得る工程と、
前記ハニカム焼成体の前記第1端部及び/又は前記第2端部から、前記セル隔壁の表面及び内部に平均粒子径が1~5μmのSiC微粒子を導入する粒子導入工程と、
前記セル隔壁の表面及び内部に前記SiC微粒子が導入された前記ハニカム焼成体を、1600~1900℃で再焼成する再焼成工程と、を有することを特徴とするハニカムフィルタの製造方法である。
【0089】
[実施例]
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0090】
(実施例1)
平均粒子径が22μmである炭化ケイ素粒子の粗粉末54.6重量%と、平均粒子径0.5μmの炭化ケイ素の微粉末23.4重量%とを混合し、得られた混合物に対して、有機バインダ(メチルセルロース)4.4重量部、潤滑剤(日油社製 ユニルーブ)2.6重量部、グリセリン1.2重量部、及び、水13.8重量部を加えて混練して湿潤混合物を得た後、押出成形する成形工程を行った。
本工程では、図2図4に示したハニカム焼成体10と同様の形状であって、セルの目封止をしていない生のハニカム成形体を作製した。
【0091】
次いで、マイクロ波乾燥機を用いて上記生のハニカム成形体を乾燥させることにより、ハニカム成形体の乾燥体を作製した。
【0092】
続いて、ハニカム成形体の乾燥体の一部のセルの第1端面に封止材となる封止材ペーストを充填してセルの目封止を行うとともに、第1端面を封止していないセルに対して、第2端面に封止材となる封止材ペーストを充填してセルの目封止を行った。
具体的には、第1端面が封止されたセルと第2端面が封止されたセルとが交互に市松模様状に並ぶように、セルの目封止を行った。
【0093】
続いて、セルの目封止を行ったハニカム成形体の乾燥体を400℃で脱脂する脱脂処理を行い、さらに、常圧のアルゴン雰囲気下2200℃、3時間の条件で焼成工程を行い、ハニカム焼成体を得た。
【0094】
次いで、ハニカム焼成体の第1端面及び第2端面から平均粒子径1~5μmのSiC微粒子を導入し、セル隔壁の表面及び内部にSiC微粒子を付着させた。
導入したSiC微粒子の量は、合計で、ハニカム焼成体1Lあたり16gとした。
【0095】
続いて、SiC微粒子を導入したハニカム焼成体を、アルゴン雰囲気下1800℃、3時間の条件で加熱し、再焼成工程を行った。
これにより、実施例1に係るハニカム焼成体を作成した。
得られた実施例1に係るハニカム焼成体のサイズは、34.3mm×34.3mm×125mmであり、平均気孔径は10μm、気孔率は38%であった。
【0096】
出来上がったハニカム焼成体を、SiC粒子、シリカゾル、アルミナファイバの混合物からなる接着材ペーストを用いて複数個結束させ、外周を加工し、外周に接着材ペーストと同じ材料からなるコート層を設けて、φ143.8mm×125mmの円筒状のハニカムフィルタを作製した。
【0097】
実施例1に係るハニカムフィルタのセル隔壁の厚さは0.17mm、セル密度は300個/inchであった。
【0098】
(実施例2)
ハニカム焼成体に導入したSiC微粒子の量を、合計で、ハニカム焼成体1Lあたり5gに変更したほかは、実施例1と同様の手順で実施例2に係るハニカムフィルタを得た。
【0099】
(比較例1)
ハニカム成形体にSiC微粒子を導入する粒子導入工程と再焼成工程を行わなかったほかは、実施例1と同様の手順で比較例1に係るハニカムフィルタを作製した。
【0100】
(凹凸粒子の割合の測定)
実施例1~2及び比較例1に係るハニカム焼成体につき、セル隔壁を厚さ方向に切断した切断面をSEMにより撮影した。
切断面を厚さ方向に3等分して第1部分、第2部分及び第3部分とし、各部分について無作為に抽出した3つの領域でSiC粒子の数及び凹凸粒子の数をカウントし、第1部分、第2部分及び第3部分における凹凸粒子の割合、並びに、セル隔壁全体の凹凸粒子の割合を求めた。結果を表1に示す。
【0101】
(再生時のPM捕集性能の測定)
実施例1~2及び比較例1に係るハニカム焼成体について、再生時のPM捕集性能の測定を行った。
再生時のPM捕集性能は、図10に示すようなPMの捕集性能測定装置を用いて行った。図10は、PMの捕集性能測定装置を模式的に示す断面図である。
PMの捕集性能測定装置140は、1.6Lのコモンレール式ディーゼルエンジン141の排ガス管142に、排ガス浄化装置130のガス入口側133を配置している。排ガス浄化装置130の排ガス出口側134には、排ガス浄化装置130内を通過した排ガスを外部に排出する排出管が接続される。
排ガス浄化装置130は、ハニカム焼成体110と、ハニカム焼成体110を収容するケーシング131と、ハニカム焼成体110とケーシング131の間に配置され、ハニカム焼成体110をケーシング131内に保持する保持マット132からなる。
さらに、PMの捕集性能測定装置140は、ハニカム焼成体110を流通する前の排ガスをサンプリングするサンプラー143と、ハニカム焼成体110を流通した後の排ガスをサンプリングするサンプラー144と、サンプラー143又は144によりサンプリングされた排ガスを希釈する希釈器145と、希釈された排ガスに含まれるパティキュレートの量を測定するPMカウンタ146(TSI社製、凝集粒子カウンタ3022A-S)とを備えており、走査型モビリティ粒径分析装置(Scanning Mobility Particle Sizer SMPS)として構成されている。
なお、PMの捕集性能の測定は、測定時間が短縮され、また、精度良く測定することができるように、排ガス中のPM含有量が多いディーゼルエンジンを用いて行った。
エンジンを回転数3100min-1、トルク50Nmで4.5時間運転し、5g/Lのパティキュレートを捕集した。その後、エンジンを回転数2000min-1、トルク190Nm、ハニカム焼成体に流入するガスの温度を450℃にすることによってパティキュレート(PM)を燃焼させる再生処理を行った。再生開始2.5分後のハニカム焼成体110を通過した後の総PM粒子数(再生時の総粒子数)を算出した。結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
表1の結果より、実施例1及び実施例2に係るハニカム焼成体では、再生初期にハニカムフィルタを通過するPMの数が少ないことがわかった。従って、実施例1及び2に係るハニカム焼成体では、SiC多孔体を構成するSiC粒子の20%以上を占める凹凸粒子が抵抗となって、再生初期に発生するPM小粒子の通過を抑制できたと推定される。
一方、比較例1に係るハニカム焼成体では、再生初期にハニカムフィルタを通過するPMの数が多く、PM小粒子の通過を充分に抑制できなかった。
以上より、本発明のハニカムフィルタは、再生時のPMの漏れを抑制することができることを確認した。
【符号の説明】
【0104】
10 ハニカム焼成体
10a 第1端面
10b 第2端面
11 第2セル
12 第1セル
13 セル隔壁
13a 第1部分
13b 第2部分
13c 第3部分
14 封止部
15 接着材層
16 外周コート層
18 セラミックブロック
20 ハニカムフィルタ
30 SiC多孔体を構成するSiC粒子
35 凹凸粒子
40 SiC微粒子
40’ 焼結付着していないSiC微粒子
110 ハニカム焼成体
130 排ガス浄化装置
131 ケーシング
132 保持マット
133 排ガス浄化装置の排ガス入口側
134 排ガス浄化装置の排ガス出口側
140 PM捕集性能測定装置
141 コモンレール式ディーゼルエンジン
142 排ガス管
143、144 サンプラー
145 希釈器
146 PMカウンタ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10