(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141943
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】塗料組成物、塗装方法、及び塗装体
(51)【国際特許分類】
C09D 133/26 20060101AFI20241003BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20241003BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20241003BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20241003BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C09D133/26
C09D7/63
B05D3/12 D
B05D7/14 P
B05D7/24 302Z
B05D7/24 302P
B05D7/24 302U
B05D7/24 302Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053831
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山賀 皇記
(72)【発明者】
【氏名】早川 哲平
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA02
4D075AE03
4D075BB08X
4D075BB16X
4D075BB24Z
4D075CA02
4D075CA13
4D075CA33
4D075CA44
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DB01
4D075DB07
4D075DB08
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4D075EA41
4D075EB14
4D075EB22
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4D075EB32
4D075EB33
4D075EB43
4D075EB52
4D075EB55
4D075EB56
4D075EC07
4D075EC30
4D075EC37
4D075EC47
4D075EC54
4J038CG121
4J038CG171
4J038JC34
4J038KA06
4J038MA06
4J038MA09
4J038MA14
4J038NA03
4J038NA12
4J038PB07
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】金属基材への付着性及び防錆性に優れる塗料組成物、その塗料組成物を用いた塗装方法、及びその塗料組成物が施された塗装体を提供する。
【解決手段】本発明は、窒素原子含有モノマー(a1)を重合性モノマーとして含み、酸価が15mgKОH/g以上50mgKОH/g以下であるアクリル樹脂(A)、エポキシ基を有するシラン化合物(B)、及び有機溶剤(C)を含み、窒素原子含有モノマー(a1)の含有量が、全重合性モノマー100質量%に対し、5質量%以上30質量%未満であり、有機溶剤(C)の含有量が、700g/L以下である塗料組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素原子含有モノマー(a1)を重合性モノマーとして含み、酸価が15mgKОH/g以上50mgKОH/g以下であるアクリル樹脂(A)、
エポキシ基を有するシラン化合物(B)、及び
有機溶剤(C)を含み、
前記窒素原子含有モノマー(a1)の含有量が、全重合性モノマー100質量%に対し、5質量%以上30質量%未満であり、
前記有機溶剤(C)の含有量が、700g/L以下である塗料組成物。
【請求項2】
前記窒素原子含有モノマー(a1)が、水酸基と反応し得る官能基を有する化合物である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記アクリル樹脂(A)の数平均分子量が、4000以上10000以下である請求項1記載の塗料組成物。
【請求項4】
切削処理された金属基材に、請求項1から3のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装する塗装方法。
【請求項5】
切削処理された金属基材上に、請求項1から3のいずれか1項に記載の塗料組成物による塗膜を有する塗装体。
【請求項6】
前記塗膜上に、表面保護層を有する請求項5記載の塗装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物、塗装方法、及び塗装体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車及び自動二輪車用のホイールは、主にアルミニウム合金から作製される。特に、鋳物製は、複雑な形状に加工し易く、様々なデザイン設計、かつ大量生産が可能である。鋳造のアルミニウムホイールは、切削により、光沢処理が施された後、基材保護のために、表面にクリアー塗装が行われる。クリアー塗装は、プライマークリアー塗装、及びトップクリアー塗装を順次行うのが一般的である。
プライマー塗料として、例えば、特許文献1には、熱硬化性樹脂としてのN-ブトキシメチルアクリルアミドと透明性微粉末シリカ及び/又はアルミナを含むアクリル樹脂塗料が開示されている。また、特許文献2には、防食性を向上させるため、共重合体樹脂、ヒュームドシリカ、及びマグネシウムを含有するリン酸系化合物を含むプライマー塗料組成物が開示されている。
【0003】
一方、近年、中国では、低VOC(揮発性有機化合物)塗料、接着剤等に関する強制規格(GB規格)に適合する資材の使用が求められていることから、有機溶剤の含有量を低減したプライマー塗料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-194979号公報
【特許文献2】国際公開第2014/181593号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機溶剤量を低減した塗料を調製するには、樹脂の粘度を低く設計する必要がある。しかしながら、樹脂の分子量を下げることによる塗料の低粘度化のみでは、得られる塗膜の物性が低下する傾向にある。特に、プライマー塗料については、金属基材への付着性及び得られた塗膜の防錆性が低下する傾向にある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、金属基材への付着性及び防錆性に優れる塗料組成物、その塗料組成物を用いた塗装方法、及びその塗料組成物が施された塗装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、窒素原子含有モノマー(a1)を重合性モノマーとして含み、酸価が15mgKОH/g以上50mgKОH/g以下であるアクリル樹脂(A)、エポキシ基を有するシラン化合物(B)、及び有機溶剤(C)を含み、窒素原子含有モノマー(a1)の含有量が、全重合性モノマー100質量%に対し、5質量%以上30質量%未満であり、有機溶剤(C)の含有量が、700g/L以下である塗料組成物である。
【0007】
窒素原子含有モノマー(a1)は、水酸基と反応し得る官能基を有する化合物であることが好ましい。
【0008】
本発明のアクリル樹脂(A)の数平均分子量は、4000以上10000以下であることが好ましい。
【0009】
本発明の塗装方法は、切削処理された金属基材に、本発明の塗料組成物を塗装するものである。
【0010】
本発明の塗装体は、切削処理された金属基材上に、本発明の塗料組成物による塗膜を有するものである。
【0011】
また、本発明の塗装体は、塗膜上に、表面保護層を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属基材への付着性及び防錆性に優れる塗料組成物、塗装方法、及び塗装体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
[塗料組成物]
本発明の塗料組成物は、窒素原子含有モノマー(a1)を重合性モノマーとして含み、酸価が15mgKОH/g以上50mgKОH/g以下であるアクリル樹脂(A)、エポキシ基を有するシラン化合物(B)、及び有機溶剤(C)を含み、アクリル樹脂(A)における窒素原子含有モノマー(a1)の含有量が、5質量%以上30質量%未満であり、有機溶剤(C)の含有量が、700g/L以下である。
以下、各成分の詳細について説明する。
【0015】
<アクリル樹脂(A)>
アクリル樹脂(A)は、少なくとも窒素原子含有モノマー(a1)を重合性モノマーとして含む。アクリル樹脂(A)を構成する重合性モノマーとしては、窒素原子含有モノマー(a1)以外では、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらのエステル、アミド、及びニトリルから選択されるアクリル成分の1種又は複数種;スチレン、ビニル基含有エステル化合物(アクリル成分を除く)等の重合性不飽和モノマーが挙げられる。
【0016】
(窒素原子含有モノマー(a1))
窒素原子含有モノマー(a1)としては、水酸基と反応し得る官能基を有する化合物であることが好ましい。窒素原子含有モノマー(a1)としては、例えば、(メタ)アクリルアミド又はその誘導体が挙げられ、より具体的には、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N-イソブトキシメチルアクリルアミド、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
【0017】
窒素原子含有モノマー(a1)の含有量は、全重合性モノマー100質量%に対して、5質量%以上30質量%未満である。窒素原子含有モノマー(a1)の含有量が、5質量%以上であることにより、金属基材への付着性が良好となる。また、窒素原子含有モノマー(a1)の含有量が、30質量%未満であることにより、高い防錆性を得ることができる。窒素原子含有モノマー(a1)の含有量は、全重合性モノマー100質量%に対し、5質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。
【0018】
(アクリル成分)
重合性モノマーのアクリル成分としては、以下の(a2)から(a6)の化合物が挙げられる。
【0019】
-(メタ)アクリル酸と炭素数1~24のアルコールとのエステル(a2)-
(メタ)アクリル酸と炭素数1~24のアルコールとのエステル(a2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
-カルボキシル基含有モノマー(a3)-
カルボキシル基含有モノマー(a3)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0021】
-水酸基含有モノマー(a4)-
水酸基含有モノマー(a4)としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と2価アルコールとのモノエステル化物や、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
-エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a5)-
エポキシ基含有重合性不飽和モノマー(a5)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
-アミノアルキル(メタ)アクリレート(a6)-
アミノアルキル(メタ)アクリレート(a6)としては、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
(重合性不飽和モノマー(a7))
アクリル成分以外の重合性モノマーとして、以下の重合性不飽和モノマー(a7)が挙げられる。
重合性不飽和モノマー(a7)としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル基含有芳香族化合物や、酢酸ビニル等のビニル基含有化合物等が挙げられる。
【0025】
<エポキシ基を有するシラン化合物(B)>
エポキシ基を有するシラン化合物(B)としては、エポキシ基含有シランカップリング剤として知られている化合物を用いることができる。例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。
本発明の塗料組成物は、エポキシ基を有するシラン化合物(B)を含有することにより、形成される塗膜と金属基材との付着性及び防錆性を向上させることができる。
【0026】
<有機溶剤(C)>
有機溶剤(C)としては、例えば、キシレン、エチレングリコールモノ-ノルマルプロピルエーテル、トルエン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、ブタノール、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、3-エトキシプロピオン酸エチル等が挙げられる。これらの溶剤としては、公知の市販品を使用できる。
【0027】
本発明の塗料組成物における有機溶剤(C)の含有量は、700g/L以下である。本発明の塗料組成物では、有機溶剤(C)の含有量は、更に650g/L以下、より好ましくは600g/L以下にすることが可能である。有機溶剤(C)の含有量が700g/L以下であると、塗装組成物を希釈すること無く、スプレー塗装が可能である。
塗料をスプレー塗装する場合には、塗料が低粘度であることが要求されるが、本発明では、有機溶剤(C)の含有量が、例えば、430g/L以下と更に少ない塗料組成物として提供した場合、スプレー塗装が可能な程度に希釈しても、有機溶剤(C)の濃度を、700g/L以下にすることが可能である。したがって、本発明の塗料組成物は、環境に配慮された塗料組成物である。
また、本発明の塗料組成物は、有機溶剤(C)の含有量が上記のように低くても、塗料の金属基材への付着性及び塗膜の防錆性を低下させることが無い。
【0028】
<その他の成分>
本発明の塗料組成物は、塗料組成物として必要な添加剤を適宜使用することができる。例えば、顔料、顔料分散剤、消泡剤、タレ防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防黴剤等のような、通常、当業界において、公知慣用のものとなっているような、種々の塗料用添加剤類を、慣用量使用することができる。
また、本発明の塗料組成物は、本発明の効果に影響のない範囲で性能を改良するという目的で、その他の樹脂類、たとえば、アクリル化アルキド樹脂類、アルキド樹脂類、シリコーン樹脂類、フッ素樹脂類、又はエポキシ樹脂類などを、適宜、併用することもできる。
【0029】
(水酸基価)
アクリル樹脂(A)の水酸基価は、10mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であることが好ましい。アクリル樹脂(A)の水酸基価が、10mgKOH/g以上であることにより、窒素原子含有モノマーとの架橋反応が進行しやすく、防錆性に優れた緻密な架橋構造を有する塗膜を得ることができ、80mgKOH/g以下であることにより、窒素原子含有モノマーとの架橋反応により、未反応の水酸基が少なくなるため、防錆性が良好な塗膜を得ることができる。
アクリル樹脂(X)の水酸基価は、樹脂1g中の水酸基を無水酢酸で完全にアセチル化した後、アセチル化により発生した遊離酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。
【0030】
(酸価)
アクリル樹脂(A)の酸価は、15mgKОH/g以上50mgKОH/g以下である。15mgKОH/g以上であることにより、窒素原子含有モノマーの架橋反応が進みやすく、金属基材との付着性が良好な塗膜を得ることができる。50mgKОH/g以下であることにより、エポキシ基を有するシラン化合物(B)との反応による残存酸基が少なくなるため、防錆性が良好な塗膜を得ることができる。
本発明において、アクリル樹脂(A)の酸価は、JIS K 5601-2-1:1999に準じて求めた値とする。
【0031】
(数平均分子量Mn)
アクリル樹脂(A)の数平均分子量Mnは、4000以上10000以下であることが好ましい。4000以上であることにより、架橋反応後に高分子量体の塗膜として、金属基材との付着性が良好な塗膜を得ることができ、10000以下であることにより、粘度の低いアクリル樹脂が得られるため、塗料中の有機溶剤含有量を700g/L以下にすることができる。
本明細書において、アクリル樹脂(A)の数平均分子量Mnの測定は、後述の実施例で示す測定方法によって測定されるものとする。
【0032】
(重量平均分子量Mw)
アクリル樹脂(A)の重量平均分子量Mwは、10000以上40000以下であることが好ましい。10000以上であることにより、架橋反応後に高分子量体の塗膜として、金属基材との付着性が良好な塗膜を得ることができ、40000以下であることにより、粘度の低いアクリル樹脂が得られるため、塗料中の有機溶剤含有量を700g/L以下にすることができる。
本明細書において、アクリル樹脂(A)の重量平均分子量Mwの測定は、後述の実施例で示す測定方法によって測定されるものとする。
【0033】
(ガラス転移温度Tg)
アクリル樹脂(A)のガラス転移温度Tgは、-40℃以上50℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度Tgがこの範囲にあることにより、金属基材との付着性や防錆性が良好になる傾向がある。
【0034】
<全光線透過率>
本発明の塗料組成物をクリアー塗料として用いる場合は、乾燥膜厚が25μmとなるように塗布して得られた塗膜の全光線透過率は、90%以上であることが好ましい。
【0035】
[塗装方法]
本発明の塗装方法は、切削処理された金属基材に、本発明の塗料組成物を塗装するものである。塗装手段としては、例えば、ディッピング法、静電塗装法、スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ブレードコート法。エアーナイフコート法等が挙げられる。これらの中でも、膜厚の制御が容易であるとの観点から、スプレーコート法及びロールコート法が好ましい。
【0036】
塗料組成物を塗装して形成された塗膜は、塗膜形成時にはまだ反応は完全には終了しておらず、塗膜を形成した後、硬化反応させる焼付け(加熱乾燥)を行うことによって乾燥及び硬化反応が終結される。焼付条件については、80~180℃で5~90分加熱乾燥することが好ましい。
【0037】
<切削処理された金属基材>
本発明における、切削処理された金属基材の「金属基材」としては、特に限定されるものではないが、その形状は、例えば板状、シート状、箔状等である。また、金属基材を構成する金属としては、鉄鋼、亜鉛めっき鋼、ステンレス鋼、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられ、中でも、アルミニウム合金が好ましい。特に、自動車のホイールに広く用いられるアルミニウム合金鋳物であると、本発明の塗料組成物の効果がより顕著である。すなわち、自動車のホイール用に、光沢を与えるために切削処理がなされ、切削処理された金属表面は錆びやすいという課題があるが、本発明の塗料組成物は、切削処理された金属基材に塗装することで、付着性も良好であり、かつ防錆性も有する。
本発明の塗料組成物は、切削処理された金属基材に塗布した場合に、効果がより顕著であるが、当然に、切削処理されていない金属基材であっても、本発明の塗料組成物の効果は十分に発揮される。
【0038】
ここで、上記金属基材としては、各種表面処理、例えば酸化処理が施されてもよい。一例として、アルマイト処理、リン酸塩処理、クロメート処理、ノンクロメート処理等の方法でアルミニウムに酸化処理を施した基材を用いることができる。
【0039】
[塗装体]
本発明の塗装体は、切削処理された金属基材上に、本発明の塗料組成物による塗膜を有するものである。上記塗膜は、上記の本発明の塗装方法により形成することができる。
本発明の塗装体は、本発明の塗料組成物が施されたものであるので、金属基材と塗膜との付着性が良く、また、防錆性に優れるものである。
本発明の塗装体は、塗膜上に、表面保護層を有するものであってもよい。
【0040】
[表面保護層]
前記表面保護層を形成するための塗料としては、一般的な上塗り塗料が使用できるが、耐擦り傷性、塗膜硬度や耐薬品性に優れる塗膜を形成できる塗料を使用することが好ましい。尚、耐擦り傷性に優れる塗膜としては、塗膜に傷が生じても自己修復性を有する塗膜であってもよい。
塗膜硬度や耐薬品性に優れる塗膜を形成できる塗料としては、例えば、アクリルメラミン樹脂塗料やアクリルウレタン樹脂塗料などの熱硬化型塗料や活性エネルギー線硬化型塗料が挙げられる。
本発明の塗料組成物による塗膜の上に設けられる表面保護層については、窒素原子含有樹脂成分を含むアクリルメラミン樹脂塗料やアクリルウレタン樹脂塗料で形成することが好ましく、特に、アクリルメラミン樹脂塗料がより好ましい。
より好ましいアクリルメラミン樹脂塗料としては、数平均分子量当たりの水酸基数が2.0以上6.0以下であるアクリル樹脂(X)、水酸基と反応する架橋剤(Y)、及び有機溶剤(Z)を含み、前記有機溶剤(Z)の含有量が、600g/L以下である塗料である。このような塗料であれば、低VOC(揮発性有機化合物)塗料でありながら、耐擦り傷性、塗膜硬度及び耐薬品性に優れる塗膜を形成できる。
また、表面保護層については、意匠性の高い被塗物への塗布に用いる観点から、クリアー塗料であることが好ましい。本明細書において、クリアー塗料とは、透明な塗膜を形成する塗料であり、厚さ30μmである場合に透過率が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上である塗膜を形成する塗料である。
本明細書において、透過率は、可視領域(360nm~750nm)における全光線透過率を意味し、JIS K 7375:2008に準拠して測定できる。
【実施例0041】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
[アクリル樹脂溶液の調製]
[樹脂溶液P1]
下記の手順に沿って、アクリル樹脂(A)を含む溶液(樹脂溶液P1)を調製した。表1に、樹脂溶液の調製に必要なモノマー、及び、溶剤、並びにアクリル樹脂(A)の特性を示す。
キシレン30.0質量部、スチレン35.0質量部、2-エチルアクリレート45.3質量部、メタクリル酸4.7質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート10.0質量部、N-ブトキシメチルアクリルアミド5.0質量部、2-2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル1.5質量部を窒素ガス下で100℃において8時間反応させた後、キシレン50.3質量部で希釈することにより、加熱残分55質量%のアクリル樹脂溶液P1を得た。
【0043】
アクリル樹脂溶液P1に含まれるアクリル樹脂(A)については、水酸基価40mgKOH/g、酸価30mgKOH/g、数平均分子量9,500、重量平均分子量35,000であった。
【0044】
[樹脂溶液P2からP7]
表1に示す化合物及び配合に変更したこと以外は、樹脂溶液P1と同様に、樹脂溶液P2からP7を調製した。
【0045】
樹脂溶液P1からP7の樹脂特性を以下に示す方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0046】
(加熱残分)
1.0gの樹脂溶液をアルミカップに精秤し、これを150℃オーブンで30分乾燥させた。乾燥後、残留物の質量を精秤し、元の質量に対する残留物の質量の割合を加熱残分(質量%)として求めた。
【0047】
(水酸基価)
アクリル樹脂(A)1g中の水酸基を無水酢酸で完全にアセチル化した後、残存する遊離酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を定量し、その値をアクリル樹脂(A)の水酸基価とした。
【0048】
(酸価)
アクリル樹脂(A)の酸価は、JIS K 5601-2-1:1999に準じて求めた。
【0049】
(数平均分子量Mn)
アクリル樹脂(A)の数平均分子量Mnの測定は、TSKgelカラムSuperMultiporeHZ-M(東ソー(株)社製)を用い、示差屈折率(RI)検出器を装備したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー、商品名「HLC-8420GPC」、東ソー株式会社製)により求めた。SECの条件として、展開溶媒にテトラヒドロフランを用い、流速0.35ml/分、温度40℃にて測定を行った。なお、TSK標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)を標準物質として用いた。
【0050】
(重量平均分子量Mw)
アクリル樹脂(A)の重量平均分子量Mwの測定は、TSKgelカラムSuperMultiporeHZ-M(東ソー(株)社製)を用い、示差屈折率(RI)検出器を装備したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー、商品名「HLC-8420GPC」、東ソー株式会社製)により求めた。SECの条件として、展開溶媒にテトラヒドロフランを用い、流速0.35ml/分、温度40℃にて測定を行った。なお、TSK標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)を標準物質として用いた。
【0051】
【0052】
次に、上記樹脂溶液P1からP7を用いて、実施例及び比較例の塗料組成物及びその塗料組成物を塗布して硬化させた塗膜を備えた塗装体を作製した。塗料組成物に用いる各成分とその配合を表2に示す。表2中、各成分の使用量は、質量部で表される。
【0053】
[実施例1]
(塗料組成物の調製)
アクリル樹脂(A)として、樹脂溶液P1 92.6質量部、エポキシ基を有するシラン化合物(B)として、KBM-403(商品名、信越化学工業株式会社製)2.0質量部、有機溶剤(C)として、酢酸ブチル4.0質量部及びキシレン30.0質量部、紫外線吸収剤としてヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(商品名:TINUVIN400、BASF社製)1.0質量部、光安定剤としてヒンダードアミン系光安定剤(商品名:EVERSORB93、EVERLIGHT CHEMICAL社製)1.0質量部を混合した後、ディスパー攪拌をして、実施例1の塗料組成物を調製した。
【0054】
(塗装体の作製)
材質アルミニウム、厚み0.8mm及び大きさ150mm×70mmの基材上に、上記塗料組成物を、乾燥膜厚25μmとなるようにエアスプレー塗装した後、塗料組成物を140℃で20分乾燥させ、塗装体を作製した。
【0055】
(塗装時のフォードカップの粘度秒数)
塗装時の塗料組成物について、JIS K5600-2-2:1999に準拠した方法にて、フォードカップ#4を使用して、20℃で測定したときの流出時間を測定した。
【0056】
[実施例2から実施例4、比較例1から比較例5]
アクリル樹脂(A)を含む樹脂溶液を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様に塗料組成物を調製して、塗装体を作製した。
【0057】
[評価]
上記実施例及び比較例の塗装体について、以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0058】
(付着性)
JIS K 5600-5-6:1999の試験方法に準拠し、40℃の脱イオン水に塗装板を240時間浸漬した後、カッターナイフを用いて塗膜に2mmの碁盤目を100個作製し、セロハンテープ剥離試験を行い、その後、以下の基準で付着性を目視判定した。
-判定基準-
A:100マスすべてにおいて剥離が見られない
B:100マス中95マス以上99マス以下が残存している
C:100マス中6マス以上の剥離が見られる
【0059】
(防錆性)
JIS Z 2371:2015に準じたキャス試験(240時間)を行い、下記の基準で防錆性を評価した。
-判定基準-
A:錆び幅 0.5mm以下
B:錆び幅 0.5mm超1.0mm以下
C:全面錆び
【0060】
【0061】
表2に示すように、実施例1から実施例4は、有機溶剤の含有量が700g/L以下であっても、金属部材への付着性及び塗膜の防錆性のいずれも良好であった。
一方、エポキシ基を有するシラン化合物(B)を含有しない比較例1は、付着性及び防錆性のいずれも劣った。
窒素原子含有モノマー(a1)を含有しない樹脂溶液P4を用いた比較例2は、付着性に劣った。
窒素原子含有モノマー(a1)の含有量が30質量%である樹脂溶液P5を用いた比較例3は、防錆性に劣った。
酸価が4mgKОH/gのアクリル樹脂(A)を含む樹脂溶液P6を用いた比較例4は、付着性に劣った。
酸価が64mgKОH/gのアクリル樹脂(A)を含む樹脂溶液P7を用いた比較例5は、防錆性に劣った。
【0062】
[積層塗膜]
次に、上記実施例1から4で用いた塗料組成物をプライマーとして、そのプライマーが塗布された上記実施例1から4の塗装体上に、トップコートを形成して積層塗膜を形成し、その積層塗膜の評価をした。
【0063】
[アクリル樹脂溶液の調製]
まず、トップコート塗料として使用するアクリル樹脂を含む樹脂溶液を調製した。表3に、樹脂の調製に必要な成分を示す。
【0064】
[樹脂溶液T1]
下記の手順に沿って、アクリル樹脂を含む樹脂溶液T1を調製した。
キシレン30.0質量部、スチレン31.0質量部、2-エチルヘキシルアクリレート12.0質量部、2-エチルヘキシルメタクリレート43.0質量部、アクリル酸2.0質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート12質量部、2-2‘-アゾビス-2-メチルブチロニトリル4.0質量部を窒素ガス下で100℃において8時間反応させた。その後、キシレン32.7質量部で希釈することにより、加熱残分60質量%のアクリル樹脂を含む樹脂溶液T1を得た。
【0065】
樹脂溶液T1に含まれるアクリル樹脂については、水酸基価45mgKOH/g、酸価11mgKOH/g、数平均分子量3,500、重量平均分子量6,000であった。
【0066】
[樹脂溶液T2]
表3に示す化合物及び配合に変更したこと以外は、樹脂溶液T1と同様に、樹脂溶液T2を調製した。
【0067】
得られた樹脂溶液T1及びT2のアクリル樹脂の特性を以下のように評価した。評価結果を表3に示す。
【0068】
(加熱残分)
1.0gの樹脂溶液をアルミカップに精秤し、これを150℃オーブンで30分乾燥させた。乾燥後、残留物の質量を精秤し、元の質量に対する残留物の質量の割合を加熱残分(質量%)として求めた。
【0069】
(水酸基価)
アクリル樹脂1g中の水酸基を無水酢酸で完全にアセチル化した後、アセチル化により発生した遊離酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を定量し、その値をアクリル樹脂の水酸基価とした。
【0070】
(酸価)
アクリル樹脂の酸価は、JIS-K-5601-2-1:1999に準じて求めた。
【0071】
(数平均分子量Mn)
アクリル樹脂の重量平均分子量Mnの測定は、TSKgelカラム SuperMultiporeHZ-M(東ソー(株)社製)を用い、示差屈折率(RI)検出器を装備したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー、商品名「HLC-8420GPC」、東ソー株式会社製)により求めた。SECの条件として、展開溶媒にテトラヒドロフランを用い、流速0.35ml/分、温度40℃にて測定を行った。なお、TSK標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)を標準物質として用いた。
【0072】
(重量平均分子量Mw)
アクリル樹脂の重量平均分子量Mwの測定は、TSKgelカラム SuperMultiporeHZ-M(東ソー(株)社製)を用い、示差屈折率(RI)検出器を装備したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー、商品名「HLC-8420GPC」、東ソー株式会社製)により求めた。SECの条件として、展開溶媒にテトラヒドロフランを用い、流速0.35ml/分、温度40℃にて測定を行った。なお、TSK標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)を標準物質として用いた。
【0073】
(アクリル樹脂のガラス転移温度Tg)
アクリル樹脂のガラス転移温度Tgは、フォックスの式により、算出した。
【0074】
(アクリル樹脂の数平均分子量Mn当たりの総水酸基数)
アクリル樹脂の数平均分子量当たりの総水酸基数は、数平均分子量Mnの測定結果と水酸基価の値から下記の式(1)により算出した。
「数平均分子量Mn当たりの総水酸基数」=
アクリル樹脂の数平均分子量×(アクリル樹脂の水酸基価(mgKOH/g)/56100) ・・・(1)
【0075】
(アクリル樹脂の重量平均分子量Mw当たりの総水酸基数)
アクリル樹脂の重量平均分子量Mw当たりの総水酸基数は、重量平均分子量Mwの測定結果と水酸基価の値から下記の式(2)により算出した。
「重量平均分子量Mw当たりの総水酸基数」=
アクリル樹脂の重量平均分子量×(アクリル樹脂の水酸基価(mgKOH/g)/56100) ・・・(2)
【0076】
【0077】
[トップコート塗料の調製]
次に、上記樹脂溶液T1及びT2を用いてトップコートの調製を行った。各成分の配合を表4に示す。
【0078】
[トップコート1の調製]
アクリル樹脂として、樹脂溶液T1 61.7質量部、水酸基と反応する架橋剤(Y)として、メラミン樹脂溶液(n-ブチル化メラミン樹脂のキシレン・n-ブタノール混合溶液(加熱残分60質量%)、商品名:AMIDIR L-117-60、DIC社製)26.5質量部、有機溶剤(Z)として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート3.0質量部、酢酸ブチル1.0質量部及びソルベッソ150(JX日鉱日石エネルギー社製)2.8質量部、紫外線吸収剤としてヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(商品名:TINUVIN400、BASF社製)1.0質量部、光安定剤としてヒンダードアミン系光安定剤(商品名:EVERSORB93、EVERLIGHT CHEMICAL社製)1.0質量部、脱水剤としてオルソ酢酸メチル(商品名:MOA、日宝化学社製)3.0質量部を混合した後、ディスパー攪拌をして、トップコート1を調製した。
【0079】
[トップコート2の調製]
アクリル樹脂を含む樹脂溶液を樹脂溶液T2に変更したこと以外は、トップコート1と同様の方法により、トップコート2を調製した。
【0080】
(塗装時のフォードカップの粘度秒数)
塗装時のトップコート1、トップコート2について、JIS K5600-2-2:1999に準拠した方法にて、フォードカップ#4を使用して、20℃で測定したときの流出時間を測定した。
【0081】
[トップコートの塗装体(基材:ポリプロピレン)の作製]
材質ポリプロピレン、厚み3.0mm、及び大きさ100mm×100mmの基材上に、上記塗料組成物を、乾燥膜厚30μmとなるようにエアスプレー塗装した後、塗料組成物を140℃で20分乾燥させ、塗膜を形成し、塗装体(基材:ポリプロピレン)を作製した。
この塗装体は塗膜のガラス転移温度Tg、架橋間分子量、架橋密度の測定に使用した。
【0082】
[トップコートの塗膜物性(ガラス転移温度、架橋間分子量、架橋密度)の測定]
(塗膜のガラス転移温度Tg)
トップコート1及びトップコート2の塗膜を、ポリプロピレン樹脂板より剥離した後、試料長50mm、幅8mmに切断し、測定用試料を作製した。試料を動的粘弾性測定装置RSA G2(TA Instruments社製)を用いて、測定長さ24mm、周波数1Hz、昇温速度5℃/minにおいて測定される動的粘弾性測定において、tanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)の最大値を示す温度として測定される動的ガラス転移温度をガラス転移温度とした。
【0083】
(塗膜の架橋間分子量、架橋密度)
架橋間の樹脂の分子量を架橋間分子量といい、架橋密度の逆数で表され、架橋密度が大きくなるほどこの値は小さくなる。
本発明の硬化塗膜の架橋間分子量は、上記硬化塗膜のガラス転移温度測定の際に得られた貯蔵弾性率の極小値を下記ゴム粘弾性理論式にあてはめて求めた理論計算値である。
式1:n=E’/3RT
ここで、
n :架橋密度(mol/cc)
1/n :架橋間分子量(cc/mol)
R :気体定数(8.314J/K/mol)
T :貯蔵弾性率がE’の時の絶対温度(K)
E’ :貯蔵弾性率の極小値(Pa)
【0084】
【0085】
次に、実施例1から4のプライマーと上記トップコート1及び2を、表5に示す組合せで積層塗膜を形成した。
【0086】
[積層塗膜例1]
材質アルミニウム、厚み0.8mm及び大きさ150mm×70mmの基材上に、プライマーとして実施例1の塗料組成物を、乾燥膜厚25μmとなるようにエアスプレー塗装した後、塗料組成物を140℃で20分乾燥させた。その後、トップコート2を乾燥膜厚30μmとなるようにエアスプレー塗装した後、塗装物を140℃で20分乾燥させ、積層塗膜を作製した。
【0087】
[積層塗膜例2から8]
プライマー及びトップコートを表5に示すように変更したこと以外は、積層塗膜例1と同様に積層塗膜例2から8を調製した。
【0088】
[積層塗膜の評価]
上記積層塗膜例1から8について、付着性、防錆性、耐薬品性、塗膜硬度及び耐擦り傷性の評価を行った。付着性、防錆性の評価方法は上述の評価方法と同様の方法で行った。耐薬品性、塗膜硬度及び耐擦り傷性については、以下の評価方法にて評価を行った。評価結果を表5に示す。なお、表5における、付着性と防錆性の評価は、実施例1から4の塗料組成物の評価をそのままプライマーの評価として記載している。
【0089】
(耐薬品性)
上記積層塗膜例1から8の塗膜の表面に、フッ酸水溶液(フッ酸10%)を1ml滴下し、その後、強制対流のない試験槽に23℃の温度にて2時間放置し、薬品処理を行った。その後、水洗してフッ酸水溶液を除去し、薬品処理後の塗膜の外観を、以下の評価基準にて目視で判定した。
-評価基準-
AA:塗膜外観に変化が全くない。
A:塗膜のツヤがわずかに低下する。
C:塗膜のツヤが顕著に低下する。
【0090】
(塗膜硬度)
上記積層塗膜例1から8の積層塗膜について、「JIS K5600-5-4:1999 引っかき硬度(鉛筆法)」により塗膜硬度を測定し、以下の評価基準にて評価を行った。
-評価基準-
AA:鉛筆硬度がHB以上
A:鉛筆硬度が2B以上B以下
C:鉛筆硬度が3B以下
【0091】
(耐擦り傷性)
上記積層塗膜例1から8の塗膜の耐擦り傷性について、以下のようにして評価を行った。
摩擦堅牢度試験機(DAIEI KAGAKU SEIKI社製)を用いて、JIS L 0849に準拠した染色堅牢度試験用添付白布を用い、積層塗膜表面に1kgの荷重をかけて、10回往復させた。10回往復後、塗面を流水で洗浄し、自然乾燥後、積層塗膜のツヤを目視にて観察し、以下の評価基準にて評価した。
-評価基準-
AA:ツヤに変化なし
A:極わずかにツヤビケ
C:著しいツヤビケ
【0092】
【0093】
表5に示すように、積層塗膜例1から8の積層塗膜は、付着性、防錆性、耐薬品性、塗膜硬度及び耐擦り傷性のいずれの評価も良好であった。