(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141962
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電源制御装置および電源制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 50/02 20120101AFI20241003BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241003BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20241003BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20241003BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20241003BHJP
B60R 16/033 20060101ALI20241003BHJP
B60W 50/04 20060101ALI20241003BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20241003BHJP
【FI】
B60W50/02
H02J7/00 302C
H02J7/34 G
H02J9/06
B60R16/02 645A
B60R16/033 C
B60W50/04
B60W50/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053874
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
【テーマコード(参考)】
3D241
5G015
5G503
【Fターム(参考)】
3D241BA60
3D241BA63
3D241BB71
3D241CA06
3D241CA08
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE01
3D241CE05
3D241DA69Z
5G015GB05
5G015HA12
5G015JA58
5G015JA59
5G015KA12
5G503AA07
5G503BA02
5G503BB01
5G503BB02
5G503CA08
5G503CA10
5G503DA04
5G503DA05
5G503EA05
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】バックアップ電源の故障を防止しつつ、運転者を戸惑わせることなく退避走行を終了させることができる電源制御装置および電源制御方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係るは、コントローラを備える。コントローラは、メイン電源の電力を第1負荷に給電する第1系統と、バックアップ電源の電力を第2負荷に給電する第2系統とを接続および遮断可能な接続部を制御する。コントローラは、メイン電源の失陥を検出すると、接続部を遮断してバックアップ電源の電力を第2負荷に給電するフェイルセーフ制御を行う。コントローラは、フェイルセーフ制御中に、バックアップ電源の充電状態を示す状態値が、第1閾値まで低下すると、ユーザに対して車両の停止予告を行い、状態値が、第1閾値より低く、バックアップ電源の安全限界を示す第2閾値まで低下すると、バックアップ電源による給電を停止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイン電源の電力を第1負荷に給電する第1系統と、バックアップ電源の電力を第2負荷に給電する第2系統とを接続および遮断可能な接続部を制御するコントローラを備えた電源制御装置であって、
前記コントローラは、
前記メイン電源の失陥を検出すると、前記接続部を遮断して前記バックアップ電源の電力を前記第2負荷に給電するフェイルセーフ制御を行い、
前記フェイルセーフ制御中に、前記バックアップ電源の充電状態を示す状態値が、第1閾値まで低下すると、ユーザに対して車両の停止予告を行う予告処理を実行し、
前記状態値が、前記第1閾値より低く、バックアップ電源の安全限界を示す第2閾値まで低下すると、前記バックアップ電源による給電を停止する給電停止処理を実行する
電源制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記フェイルセーフ制御中に、前記車両の退避走行制御を行う外部装置から退避走行の完了通知を受けていない場合に、前記予告処理および前記給電停止処理を実行する
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記状態値が前記第1閾値まで低下すると、ダイアグ情報を不揮発性メモリに記憶させ、次回の起動時に前記ダイアグ情報が不揮発性メモリに記憶されていれば、自動運転を禁止する
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記メイン電源の失陥を検出すると、前記フェイルセーフ制御中に前記状態値を周期的に不揮発性メモリに記憶させ、次回の起動時に前記不揮発性メモリから前記状態値を読み込み、前記状態値が前記第1閾値以下であれば自動運転を禁止する
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記バックアップ電源の失陥を検出すると、前記接続部を遮断して前記メイン電源の電力を第1負荷に給電するフェイルセーフ制御を行うと共に、ダイアグ情報を不揮発性メモリに記憶させ、次回の起動時に前記ダイアグ情報が前記不揮発性メモリに記憶されていれば、自動運転を禁止する
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項6】
メイン電源の電力を第1負荷に給電する第1系統と、バックアップ電源の電力を第2負荷に給電する第2系統とを接続および遮断可能な接続部を制御する電源制御装置のコントローラが、
前記メイン電源の失陥を検出すると、前記接続部を遮断して前記バックアップ電源の電力を前記第2負荷に給電するフェイルセーフ制御を行い、
前記フェイルセーフ制御中に、前記バックアップ電源の充電状態を示す状態値が、第1閾値まで低下すると、ユーザに対して車両の停止予告を行う予告処理を実行し、
前記状態値が、前記第1閾値より低く、バックアップ電源の安全限界を示す第2閾値まで低下すると、前記バックアップ電源による給電を停止する給電停止処理を実行する
電源制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、電源制御装置および電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転中にメイン電源に失陥が発生すると、バックアップ電源によるFOP(フェイルオペレーション、退避走行制御)を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この先行技術では、FOP中のバックアップ電源の電力供給について制限が設けられていない。このため、先行技術では、FOP中にバックアップ電源の電力が安全限界を下回ると、バックアップ電源が故障して再利用できなくなる恐れがある。
【0003】
FOP中の過放電によるバックアップ電源の故障を防止する技術として、FOPによる退避走行中に電池のSOC(State Of Charge)が下限値を下回ると、電源供給を遮断して退避走行を強制終了する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-63551号公報
【特許文献2】特開2019-149921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、運転者は、FOP中に退避走行が強制終了されると、戸惑ってしまう。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、バックアップ電源の故障を防止しつつ、運転者を戸惑わせることなく退避走行を終了させることができる電源制御装置および電源制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係るは、コントローラを備える。前記コントローラは、メイン電源の電力を第1負荷に給電する第1系統と、バックアップ電源の電力を第2負荷に給電する第2系統とを接続および遮断可能な接続部を制御する。前記コントローラは、前記メイン電源の失陥を検出すると、前記接続部を遮断して前記バックアップ電源の電力を前記第2負荷に給電するフェイルセーフ制御を行う。前記コントローラは、前記フェイルセーフ制御中に、前記バックアップ電源の充電状態を示す状態値が、第1閾値まで低下すると、ユーザに対して車両の停止予告を行う予告処理を実行し、前記状態値が、前記第1閾値より低く、バックアップ電源の安全限界を示す第2閾値まで低下すると、前記バックアップ電源による給電を停止する給電停止処理を実行する。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様に係る電源制御装置は、バックアップ電源の故障を防止しつつ、運転者を戸惑わせることなく退避走行を終了させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電源制御装置の構成および動作の説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る電源制御装置の構成および動作の説明図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る電源制御装置の構成および動作の説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る電源制御装置の構成および動作の説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るバックアップ電源の状態を示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るコントローラが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態に係るコントローラが実行する仮判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態に係るコントローラが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態に係るコントローラが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施形態に係るコントローラが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態に係るコントローラが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、電源制御装置および電源制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。以下では、実施形態に係る電源制御装置が搭載される車両が電気自動車またはハイブリッド自動車である場合について説明する。
【0011】
なお、実施形態に係る電源制御装置が搭載される車両は、内燃機関によって走行するエンジン自動車であってもよい。実施形態に係る電源制御装置は、自動運転機能を備える車両に搭載されて負荷へ電力を供給する装置である。
【0012】
[1.電源制御装置の構成]
図1~
図4を参照して、実施形態に係る電源制御装置1の構成および動作について説明する。
図1~
図4は、実施形態に係る電源制御装置1の構成および動作の説明図である。
図1に示すように、実施形態に係る電源制御装置1は、メイン電源10と、第1負荷101と、一般負荷102と、第2負荷103と、外部装置100とに接続される。外部装置100は、通知装置200に接続される。
【0013】
電源制御装置1は、第1系統110と、第2系統120とを備える。第1系統110は、メイン電源10の電力を第1負荷101および一般負荷102に供給する電源系統である。第2系統120は、後述するバックアップ電源20の電力を第2負荷103に供給する電源系統である。
【0014】
第1負荷101は、自動運転用の負荷を含む。第1負荷101は、例えば、自動運転中に動作するステアリングモータ、電動ブレーキ装置、および車載カメラ等を含む。一般負荷102は、ディスプレイ、エアコン、オーディオ、ビデオ、および各種ライト等を含む。
【0015】
第2負荷103は、第1負荷101が備える自動運転用の機能の一部を備える。第2負荷103は、例えば、ステアリングモータ、電動ブレーキ装置、およびレーダ等のFOP(Fail Operation、退避走行制御)に最低限必要な装置を含む。第1負荷101、一般負荷102、および第2負荷103は、電源制御装置1から供給される電力によって動作する。
【0016】
外部装置100は、第1負荷101および第2負荷103を動作させることによって車両を自動運転制御する装置である。外部装置100は、車両の自動運転中に第1系統110で地絡などの電源失陥が発生した場合には、第2負荷103によってFOPを実施できる。また、外部装置100は、第2系統120で地絡などの電源失陥が発生した場合には、第1負荷101によってFOPを実施できる。
【0017】
具体的には、外部装置100は、自動運転中に電源失陥が発生した場合に、車両の退避走行制御を行い、車両を安全な場所まで走行させて停車させる。外部装置100は、正常に退避走行を完了させると、電源制御装置1にその旨を示す退避走行の完了通知を送信する。
【0018】
メイン電源10は、DC/DCコンバータ(以下、「DC/DC11」と記載する)と、鉛バッテリ(以下、「PbB12」と記載する)とを含む。なお、メイン電源10の電池は、PbB12以外の任意の2次電池であってもよい。
【0019】
DC/DC11は、発電機と、PbB12よりも電圧が高い高圧バッテリとに接続される。DC/DC11は、発電機および高圧バッテリの電圧を降圧して第1系統110に出力する。発電機は、走行する車両の運動エネルギーを電気に変換して発電するオルタネータである。高圧バッテリは、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される車両駆動用のバッテリである。
【0020】
メイン電源10は、エンジン自動車に搭載される場合、DC/DC11の代わりにオルタネータ(発電機)が設けられる。DC/DC11は、PbB12の充電、第1負荷101および一般負荷102への電力供給、第2負荷103への電力供給、および後述するバックアップ電源20の充電を行う。
【0021】
電源制御装置1は、バックアップ電源20と、系統間スイッチ41と、電池用スイッチ42と、コントローラ3と、第1電圧センサ51と、第2電圧センサ52とを備える。バックアップ電源20は、メイン電源10による電力供給ができなくなった場合のバックアップ用電源である。バックアップ電源20は、リチウムイオンバッテリ(以下、「LiB21」と記載する)を備える。バックアップ電源20の電池は、LiB21以外の任意の2次電池であってもよい。
【0022】
系統間スイッチ41は、第1系統110と第2系統120とを接続する系統間ライン130に設けられる。系統間スイッチ41は、第1系統110と第2系統120とを接続および遮断可能な接続部の一例である。
【0023】
本実施形態では、系統間スイッチ41によって第1系統110と第2系統120とを電気的に接続することを、系統間スイッチ41を導通する、または、系統間スイッチ41をオンすると称する。
【0024】
また、本実施形態では、系統間スイッチ41によって第1系統110と第2系統120との電気的な接続を切断することを、系統間スイッチ41を遮断する、または、系統間スイッチ41をオフすると称する。
【0025】
なお、系統間スイッチ41は、DC/DCコンバータであってもよい。この場合、DC/DCコンバータは、コントローラ3によって制御される。DC/DCコンバータは、動作を開始することによって、第1系統110と第2系統120とを電気的に接続し、動作を停止することによって、第1系統110と第2系統120との電気的な接続を切断する。
【0026】
電池用スイッチ42は、バックアップ電源20を第2系統120に接続するスイッチである。実施形態では、電池用スイッチ42によってバックアップ電源20と第2系統120とを電気的に接続することを、電池用スイッチ42を導通する、または、電池用スイッチ42をオンすると称する。
【0027】
また、本実施形態では、電池用スイッチ42によってバックアップ電源20と第2系統120との電気的な接続を切断することを、電池用スイッチ42を遮断する、または、電池用スイッチ42をオフすると称する。
【0028】
第1電圧センサ51は、第1系統110に設けられる。第1電圧センサ51は、第1系統110の電圧を検出し、検出結果をコントローラ3に出力する。第2電圧センサ52は、第2系統120に設けられる。第2電圧センサ52は、第2系統120の電圧を検出し、検出結果をコントローラ3に出力する。
【0029】
コントローラ3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。なお、コントローラ3は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。さらに、コントローラ3は、不揮発性メモリ31を備える。なお、不揮発性メモリ31は、コントローラ3とは別体に設けられてもよい。
【0030】
コントローラ3は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより電源制御装置1の動作を制御する。コントローラ3は、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42を制御する。
【0031】
また、コントローラ3は、バックアップ電源20から状態監視ライン22を介して取得するバックアップ電源20の充電状態を示す状態値を取得する。バックアップ電源20の充電状態を示す状態値は、例えば、LiB21のSOC(State Of Charge)である。
【0032】
LiB21は、SOCが100%のときが、充電残量が最大の状態である。LiB21は、SOCが0%のときが、充電残量がない状態である。コントローラ3は、バックアップ電源20の充電状態を示す状態値として、例えば、LiB21のSOCを取得する。コントローラ3は、LiB21のSOCに基づいて、バックアップ電源20の充電残量を監視する。
【0033】
また、コントローラ3は、第1電圧センサ51および第2電圧センサ52から入力される検出結果に基づいて、メイン電源10またはバックアップ電源20の失陥を検出する。例えば、コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の失陥を検出する。メイン電源10の失陥は、第1系統110の地絡および第1系統110の断線を含む。バックアップ電源20の失陥は、第2系統120の地絡を含む。コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の失陥を検出した場合、その旨を外部装置100に通知する。
【0034】
具体的には、コントローラ3は、メイン電源10またはバックアップ電源20の失陥を検出した場合、自動運転が不可能な状態である旨を示す自動運転禁止信号を外部装置100に出力する。また、コントローラ3は、メイン電源10またはバックアップ電源20の失陥を検出していない場合、自動運転が可能な状態である旨を示す自動運転許可信号を外部装置100に出力する。
【0035】
また、コントローラ3は、メイン電源10またはバックアップ電源20の失陥を検出した場合、その旨を示すダイアグ情報32を不揮発性メモリ31に記憶させる。そして、コントローラ3は、次回の起動時にダイアグ情報32が不揮発性メモリ31に記憶されていれば、外部装置100による自動運転を禁止する。
【0036】
具体的には、コントローラ3は、自動運転が不可能な状態である旨を示す自動運転禁止信号を外部装置100に出力することによって、外部装置100による自動運転を禁止する。これにより、電源制御装置1は、退避走行が完了した後、次回の起動時にメイン電源10またはバックアップ電源20の失陥が解消していないにも関わらず、外部装置100によって間違って自動運転が実施されることを防止できる。
【0037】
通知装置200は、例えば、ディスプレイおよびスピーカを含む。通知装置200は、外部装置100によって制御され、車両の運転者に各種情報を表示および音声の少なくともいずれか一方によって通知する。
【0038】
[2.電源制御装置の通常時動作]
コントローラ3は、メイン電源10およびバックアップ電源20に失陥が発生していない通常時には、
図1に示すように系統間スイッチ41および電池用スイッチ42を制御する。具体的には、コントローラ3は、電池用スイッチ42を遮断し、系統間スイッチ41を導通して、メイン電源10から第1負荷101、一般負荷102、および第2負荷103に電力を供給する。コントローラ3は、メイン電源10およびバックアップ電源20の失陥が発生していない通常時には、外部装置100に自動運転許可信号を出力する。
【0039】
[3.電源制御装置の電源失陥発生時動作]
次に、
図2~
図4を参照して、電源制御装置1の電源失陥発生時動作について説明する。コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の失陥に関するパラメータと閾値とを比較して電源失陥の発生を検出する。
【0040】
ここでは、メイン電源10の失陥に関するパラメータが第1系統110の電圧であり、バックアップ電源20の失陥に関するパラメータが第2系統120の電圧である場合について説明する。以下では、第1電圧センサ51によって検出される第1系統110の電圧を第1系統電圧V1と称する。また、第2電圧センサ52によって検出される第2系統120の電圧を第2系統電圧V2と称する。
【0041】
なお、メイン電源10の失陥に関するパラメータは、第1系統110を流れる電流または第2系統120を流れる電流であってもよい。この場合、電源制御装置1は、第1系統110を流れる電流を検出する電流センサと、第2系統120を流れる電流を検出する電流センサとを備える。そして、コントローラ3は、第1系統110を流れる電流、または、第2系統120を流れる電流が過電流閾値を超えると、地絡の発生を検出する。
【0042】
図2に示すように、電源制御装置1では、例えば、第1系統110で地絡300が発生した場合、または、第2系統120で地絡301が発生した場合、地絡点に向けて過電流が流れる。このため、第1系統電圧V1および第2系統電圧V2は、地絡閾値以下になる。
【0043】
コントローラ3は、例えば、第2系統電圧V2が地絡閾値以下になった場合に、第1系統110または第2系統120に地絡300または地絡301が発生したと仮判定する。その後、コントローラ3は、外部装置100に自動運転禁止信号を出力する。
【0044】
そして、コントローラ3は、地絡300または地絡301が発生したと仮判定すると、系統間スイッチ41をオフにし、電池用スイッチ42をオンにする。これにより、第1系統110と第2系統120との接続が切断されるので、メイン電源10から第1系統110へ電力が供給され、バックアップ電源20から第2系統120へ電力が供給される。以下、仮判定の結果に基づく系統間スイッチ41の遮断をプレ遮断とも称する。
【0045】
また、コントローラ3は、第1系統電圧V1および第2系統電圧V2の少なくともいずれか一方が地絡閾値以下になった場合に、第1系統110または第2系統120に地絡が発生したと仮判定することもできる。
【0046】
なお、この仮判定はコンパレータを有するハード回路で行ってもよい。その場合、コンパレータは第2系統電圧V2と地絡閾値とを比較する。コンパレータは、検出電圧が地絡閾値以下になると、仮判定を示す失陥検出信号を出力することによって、系統間スイッチ41をオフにし、電池用スイッチ42をオンにする。コントローラ3は、第1系統110または第2系統120に地絡が発生したと仮判定した後、地絡の本判定を行う。
【0047】
コントローラ3は、プレ遮断後、第1系統電圧V1が所定期間以上継続して地絡閾値以下であり、かつ第2系統電圧V2が所定期間以上継続して地絡閾値より大きい正常閾値以上になるまで復帰した場合、第2系統120は正常であって第1系統110に地絡300が発生したと本判定する。ここでの所定期間は、例えば、100msである。なお、所定期間は、100msに限定されるものではない。また、正常閾値は、地絡閾値よりも高い値である。
【0048】
コントローラ3は、第1系統110に地絡300が発生したと本判定した場合、
図3に示すように、バックアップ電源20から第2負荷103に電力を供給するフェイルセーフ制御を行い、その旨を外部装置100に通知する。これにより、外部装置100は、バックアップ電源20から供給される電力によって第2負荷103を動作させ、車両を安全な場所まで退避走行させて停車させることができる。なお、フェイルセーフ制御には、仮判定による系統間スイッチ41の遮断、電池用スイッチ42の導通、および本判定時の外部装置100への通知も含まれてよい。
【0049】
また、コントローラ3は、プレ遮断後、第1系統電圧V1が所定期間以上継続して正常閾値以上になるまで復帰し、かつ第2系統電圧V2が所定期間以上継続して地絡閾値以下である場合に、第1系統110は正常であって第2系統120に地絡301が発生したと本判定する。
【0050】
コントローラ3は、第2系統120に地絡301が発生したと本判定した場合、
図4に示すように、電池用スイッチ42をオフにして、メイン電源10から第1負荷101および一般負荷102に電力を供給するフェイルセーフ制御を行う。そして、コントローラ3は、その旨を外部装置100に通知する。これにより、外部装置100は、メイン電源10から供給される電力によって第1負荷101を動作させ、車両を安全な場所まで退避走行させて停車させることができる。
【0051】
また、コントローラ3は、プレ遮断後、第1系統電圧V1および第2系統電圧V2がともに所定期間以上継続して正常閾値以上になるまで復帰した場合、一過性の電圧低下であり地絡300,301の発生はないと判定する。すなわち、コントローラ3は、第1系統110および第2系統120のどちらも正常であると本判定する。
【0052】
この場合、コントローラ3は、
図2に示すプレ遮断の状態から電池用スイッチ42をオフにし、系統間スイッチ41をオンにして、
図1の通常時動作の状態に復帰させる。これにより、コントローラ3は、バックアップ電源20の蓄電量が減少することを抑制できる。
【0053】
[4.メイン電源失陥によるFOP制御中のバックアップ電源の状態]
次に、
図5を参照してメイン電源10の失陥によるFOP中のバックアップ電源20の状態について説明する。
図5は、実施形態に係るバックアップ電源20の状態を示す説明図である。
【0054】
コントローラ3は、メイン電源10の失陥を検出すると、系統間スイッチ41を遮断し、電池用スイッチ42を導通してバックアップ電源20の電力を第2負荷103に供給するフェイルセーフ制御を行う(
図3参照)。
【0055】
このため、
図5に示すように、バックアップ電源20のSOCは、時間の経過に伴って減少する。このとき、バックアップ電源20は、電力供給に制限が設けられていなければ、SOCが安全限界を超えて減少を続けた場合、つまり、過放電を継続した場合、再利用が不可能になる危険性がある。
【0056】
そこで、コントローラ3は、バックアップ電源20を使用したFOP中に、バックアップ電源20の充電状態を示す状態値が、第1閾値まで低下すると、ユーザに対して車両の停止予告を行う予告処理を実行する。例えば、コントローラ3は、「すぐに停車させてください。停車されない場合、まもなく強制停車させます」などの通知を通知装置200に行わせるように外部装置100へ指令を送信する。
【0057】
ここでの状態値は、例えば、バックアップ電源20のSOCである。なお、状態値は、バックアップ電源20の出力電圧であってもよい。第1閾値は、安全限界よりも高く、外部装置100が所定時間、退避走行を継続可能な時間に設定される。ここでの所定時間は、例えば、15sである。この場合、第1閾値は、20%に設定される。これにより、ユーザは、通知に従うことによって、強制停車される前に車両を停車させることができる。
【0058】
また、コントローラ3は、ユーザが停車させず、バックアップ電源20の状態値が、第1閾値より低く、バックアップ電源20の安全限界を示す第2閾値まで低下すると、バックアップ電源20による給電を停止する給電停止処理を実行する。例えば、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが10%まで低下すると、電池用スイッチ42を遮断することで、バックアップ電源20による給電を強制的に停止する。
【0059】
このように、コントローラ3は、事前に強制停車することをユーザに通知した上で、バックアップ電源20のSOCが安全限界まで低下すると車両を強制停車させる。したがって、電源制御装置1は、バックアップ電源20の故障を防止しつつ、運転者を戸惑わせることなく退避走行を終了させることができる。
【0060】
ただし、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが第1閾値まで低下するまでに、外部装置100から退避走行の完了通知を受信した場合には、予告処理および給電停止処理を実行しない。
【0061】
つまり、コントローラ3は、バックアップ電源20を使用するフェイルセーフ制御中に、車両の退避走行制御を行う外部装置100から退避走行の完了通知を受けていない場合に、予告処理および給電停止処理を実行する。
【0062】
これにより、コントローラ3は、外部装置100による退避走行が安全に完了した場合、不要な予告処理および給電停止処理を実行しないので、ユーザにわずらわしさを与えることがない。以下、かかるコントローラ3が実行する処理について具体的に説明する。
【0063】
[5.コントローラが実行する処理]
次に、
図6~
図11を参照して、コントローラ3が実行する処理について説明する。
図6~
図11は、実施形態に係るコントローラ3が実行する処理の一例を示すフローチャートである。電源制御装置1は、車両のIG(イグニッションスイッチ)がオンされていない、つまり、IGがオフの期間では、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42が遮断状態になっている。
【0064】
[5.1.メイン処理]
コントローラ3は、車両のIGがオンされると、
図6に示すメイン処理を開始する。具体的には、
図6に示すように、コントローラ3は、IGがオンされると、まず、起動時処理を実行する(ステップS101)。起動時処理の具体例については、
図8および
図10を参照して後述する。
【0065】
続いて、コントローラ3は、系統間スイッチ41を導通し、電池用スイッチ42を遮断した状態にする(ステップS102)。その後、コントローラ3は、電源失陥が発生したか否かを判定する(ステップS103)。
【0066】
コントローラ3は、電源失陥が発生していないと判定した場合(ステップS103,No)、処理をステップS110へ移す。また、コントローラ3は、電源失陥が発生したと仮判定した場合(ステップS103,Yes)、系統間スイッチ41を遮断し、電池用スイッチ42を導通する(ステップS104)。これにより、電源制御装置1は、
図2に示すプレ遮断の状態になる。
【0067】
続いて、コントローラ3は、メイン電源10の失陥が発生したか否かを判定する(ステップS105)。コントローラ3は、メイン電源10の失陥が発生したと本判定した場合(ステップS105,Yes)、メイン電源失陥時処理を実行し(ステップS106)、処理をステップS110へ移す。メイン電源失陥時処理の具体例については、
図7および
図9を参照して後述する。
【0068】
また、コントローラ3は、メイン電源10の失陥が発生していないと判定した場合(ステップS105,No)、バックアップ電源20の失陥が発生したか否かを判定する(ステップS107)。
【0069】
コントローラ3は、バックアップ電源20の失陥が発生したと本判定した場合(ステップS107,Yes)、バックアップ電源失陥時処理を実行し(ステップS108)、処理をステップS110へ移す。バックアップ電源失陥時処理の詳細については、
図11を参照して後述する。
【0070】
また、コントローラ3は、バックアップ電源20の失陥が発生していないと判定した場合(ステップS107,No)、電源失陥が発生していないと本判定し、系統間スイッチ41を導通し、電池用スイッチ42を遮断する(ステップS109)。これにより、電源制御装置1は、
図1に示す通常時動作の状態に復帰する。その後、コントローラ3は、処理をステップS110へ移す。
【0071】
ステップS110において、コントローラ3は、IGがオフされたか否かを判定する。コントローラ3は、IGがオフされていないと判定した場合(ステップS110,No)、処理をステップS103へ移す。また、コントローラ3は、IGがオフされたと判定した場合(ステップS110,Yes)、メイン処理を終了する。
【0072】
[5.2.メイン電源失陥時処理]
次に、
図7を参照して、メイン電源失陥時処理(
図6に示すステップS106)について説明する。
図7に示すように、コントローラ3は、メイン電源失陥時処理を開始すると、系統間スイッチ41の遮断を維持し(ステップS201)、電池用スイッチ42の導通を維持する(ステップS202)。これにより、電源制御装置1は、
図3に示す状態になり、バックアップ電源20の電力を、第2系統120を介して第2負荷103に供給できる。
【0073】
続いて、コントローラ3は、外部装置100から退避走行の完了通知を受信したか否かを判定する(ステップS203)。コントローラ3は、退避走行の完了通知を受信したと判定した場合(ステップS203,Yes)、メイン電源失陥時処理を終了する。
【0074】
また、コントローラ3は、退避走行の完了通知を受信していないと判定した場合(ステップS203,No)、バックアップ電源20の状態値が第1閾値以下か否かを判定する(ステップS204)。コントローラ3は、バックアップ電源20の状態値が第1閾値以下でないと判定した場合(ステップS204,No)、つまり、バックアップ電源20の状態値が第1閾値よりも高いと判定した場合、処理をステップS203へ移す。
【0075】
また、コントローラ3は、バックアップ電源20の状態値が第1閾値以下であると判定した場合(ステップS204,Yes)、メイン電源10の失陥が発生したことを示すダイアグ情報32を不揮発性メモリ31に記憶させる(ステップS205)。
【0076】
そして、コントローラ3は、ユーザに対して車両の停止予告を行う予告処理を実行する(ステップS206)。例えば、コントローラ3は、「すぐに停車させてください。停車されない場合、まもなく強制停車させます」などの通知を通知装置200に行わせるように外部装置100へ指令を送信する。
【0077】
その後、コントローラ3は、バックアップ電源20の状態値が第2閾値以下か否かを判定する(ステップS207)。コントローラ3は、バックアップ電源20の状態値が第2閾値以下でないと判定した場合(ステップS207,No)、つまり、バックアップ電源20の状態値が第2閾値よりも高く、かつ第1閾値以下であると判定した場合、処理をステップS203に戻す。
【0078】
そして、コントローラ3は、バックアップ電源20の状態値が第2閾値以下であると判定した場合(ステップS207,Yes)、電池用スイッチ42を強制的に遮断し、バックアップ電源20による給電を停止する給電停止処理を実行し(ステップS208)、メイン電源失陥時処理を終了する。
【0079】
したがって、バックアップ電源20の状態値が第1閾値以上の状態で、外部装置100から退避走行の完了通知を受信すると(ステップS203、Yes)、ステップS205、ステップS206、ステップS208の処理は行われない。また、バックアップ電源20の状態値が第1閾値以下かつ第2閾値より大きい状態で、外部装置100から退避走行の完了通知を受信すると(ステップS203、Yes)、ステップS205、ステップS206の処理は行われるが、ステップS208の処理は行われない。なお、ステップS205およびステップS206の処理は、ステップS204でYesと判定された後1回だけ行われる。
【0080】
[5.3.起動時処理]
次に、
図8を参照して、起動時処理(
図6に示すステップS101)について説明する。
図8に示すように、コントローラ3は、起動時処理を開始すると、まず、不揮発性メモリ31にダイアグ情報32があるか否かを判定する(ステップS301)。
【0081】
コントローラ3は、不揮発性メモリ31にダイアグ情報32が記憶されていなければ、ダイアグ情報32がないと判定し(ステップS301,No)、起動時処理を終了する。
【0082】
また、コントローラ3は、不揮発性メモリ31にダイアグ情報32が記憶されていれば、ダイアグ情報32があると判定し(ステップS301,Yes)、自動運転を禁止する(ステップS302)。
【0083】
具体的には、不揮発性メモリ31にダイアグ情報32が記憶されているということは、前回のIGオンからIGオフまでの前回トリップで電源異常が発生したことを示す。よって、今回のトリップでも電源異常が継続している可能性が高い。そこで、コントローラ3は、自動運転が不可能な状態である旨を示す自動運転禁止信号を外部装置100に出力することによって、外部装置100による自動運転を禁止する。その後、コントローラ3は、起動時処理を終了する。
【0084】
[5.4.メイン電源失陥時処理および起動時処理の変形例]
図7に示すメイン電源失陥時処理、および、
図8に示す起動時処理は、種々の変形が可能である。例えば、コントローラ3は、
図9に示すメイン電源失陥時処理を実行するように構成されてもよい。
【0085】
この場合、
図9に示すように、コントローラ3は、メイン電源失陥時処理を開始すると、系統間スイッチ41の遮断を維持し(ステップS401)、電池用スイッチ42の導通を維持する(ステップS402)。これにより、電源制御装置1は、
図3に示す状態になり、バックアップ電源20の電力を、第2系統120を介して第2負荷103に供給できる。
【0086】
続いて、コントローラ3は、外部装置100から退避走行の完了通知を受信したか否かを判定する(ステップS403)。コントローラ3は、退避走行の完了通知を受信したと判定した場合(ステップS403,Yes)、メイン電源失陥時処理を終了する。
【0087】
また、コントローラ3は、退避走行の完了通知を受信していないと判定した場合(ステップS403,No)、バックアップ電源20の状態値を不揮発性メモリ31に記憶させる(ステップS404)。
【0088】
そして、コントローラ3は、バックアップ電源20の状態値が第1閾値以下か否かを判定する(ステップS405)。コントローラ3は、バックアップ電源20の状態値が第1閾値以下でないと判定した場合(ステップS405,No)、つまり、バックアップ電源20の状態値が第1閾値よりも高いと判定した場合、処理をステップS403へ移す。
【0089】
また、コントローラ3は、バックアップ電源20の状態値が第1閾値以下であると判定した場合(ステップS405,Yes)、ユーザに対して車両の停止予告を行う予告処理を実行する(ステップS406)。例えば、コントローラ3は、「すぐに停車させてください。停車されない場合、まもなく強制停車させます」などの通知を通知装置200に行わせるように外部装置100へ指令を送信する。なお、ステップS406の処理もバックアップ電源20の状態値が第1閾値以下であると判定した場合に1回だけ実行される。
【0090】
その後、コントローラ3は、バックアップ電源20の状態値が第2閾値以下か否かを判定する(ステップS407)。コントローラ3は、バックアップ電源20の状態値が第2閾値以下でないと判定した場合(ステップS407,No)、つまり、バックアップ電源20の状態値が第2閾値よりも高く、かつ第1閾値以下であると判定した場合、処理をステップS403へ移す。
【0091】
また、コントローラ3は、バックアップ電源20の状態値が第2閾値以下であると判定した場合(ステップS407,Yes)、バックアップ電源20による給電を停止する給電停止処理を実行し(ステップS408)、メイン電源失陥時処理を終了する。
【0092】
このように、コントローラ3は、メイン電源10の失陥を検出すると、FOP中にバックアップ電源20の状態値を周期的に不揮発性メモリ31に記憶させる。したがって、不揮発性メモリ31には、メイン電源10が失陥して以降、外部装置100から退避走行の完了通知を受ける直前のバックアップ電源20の状態値、または当該状態値が第2閾値以下になる直前の状態値が記憶される。そして、コントローラ3は、
図9に示すメイン電源失陥時処理を実行する場合、次回の起動時には、
図10に示す起動時処理を実行する。
【0093】
具体的には、
図10に示すように、コントローラ3は、起動時処理を開始すると、まず、不揮発性メモリ31に記憶されたバックアップ電源20の状態値が第1閾値以下か否かを判定する(ステップS501)。バックアップ電源20の状態値が第1閾値以下であるということは、前回のIGオンからIGオフまでの前回トリップで電源異常が発生したことを示す。よって、今回のトリップでも電源異常が継続している可能性が高い。
【0094】
コントローラ3は、バックアップ電源20の状態値が第1閾値以下でないと判定した場合(ステップS501,No)、つまり、前回トリップで電源異常が発生していないと判定した場合、起動時処理を終了する。また、コントローラ3は、バックアップ電源20の状態値が第1閾値以下であると判定した場合(ステップS501,Yes)、前回トリップで電源異常が発生し今回のトリップでも電源異常が継続している可能性が高いと判定し、自動運転を禁止する(ステップS502)。
【0095】
具体的には、コントローラ3は、自動運転が不可能な状態である旨を示す自動運転禁止信号を外部装置100に出力することによって、外部装置100による自動運転を禁止する。その後、コントローラ3は、起動時処理を終了する。
【0096】
これにより、電源制御装置1は、退避走行が完了した後、次回の起動時にバックアップ電源20の失陥が解消していないにも関わらず、外部装置100によって間違って自動運転が実施されることを防止できる。
【0097】
[5.5.バックアップ電源失陥時処理]
次に、
図11を参照して、バックアップ電源失陥時処理(
図6に示すステップS108)について説明する。
図11に示すように、コントローラ3は、バックアップ電源失陥時処理を開始すると、まず、系統間スイッチ41の遮断を維持し(ステップS601)、電池用スイッチ42を遮断する(ステップS602)。これにより、電源制御装置1は、
図4に示す状態になり、メイン電源10の電力を、第1系統110を介して、第1負荷101に供給できる。
【0098】
続いて、コントローラ3は、バックアップ電源20の失陥が発生したことを示すダイアグ情報を不揮発性メモリ31に記憶させ(ステップS603)、バックアップ電源失陥時処理を終了する。
【0099】
このように、コントローラ3は、バックアップ電源20の失陥を検出すると、系統間スイッチ41を遮断してメイン電源10の電力を第1負荷101に給電するフェイルセーフ制御を行うと共に、ダイアグ情報32を不揮発性メモリ31に記憶させる。
【0100】
このため、コントローラ3は、次回の起動時に、
図8に示す起動時処理を実行したときに、不揮発性メモリ31にダイアグ情報32が記憶されていれば、外部装置100による自動運転を禁止する。
【0101】
これにより、電源制御装置1は、退避走行が完了した後、次回の起動にバックアップ電源20の失陥が解消していないにも関わらず、外部装置100によって間違って自動運転が実施されることを防止できる。
【0102】
[6.付記]
付記として、本発明の特徴を以下の通り示す。
(1)
メイン電源の電力を第1負荷に給電する第1系統と、バックアップ電源の電力を第2負荷に給電する第2系統とを接続および遮断可能な接続部を制御するコントローラを備えた電源制御装置であって、
前記コントローラは、
前記メイン電源の失陥を検出すると、前記接続部を遮断して前記バックアップ電源の電力を前記第2負荷に給電するフェイルセーフ制御を行い、
前記フェイルセーフ制御中に、前記バックアップ電源の充電状態を示す状態値が、第1閾値まで低下すると、ユーザに対して車両の停止予告を行う予告処理を実行し、
前記状態値が、前記第1閾値より低く、バックアップ電源の安全限界を示す第2閾値まで低下すると、前記バックアップ電源による給電を停止する給電停止処理を実行する
電源制御装置。
(2)
前記コントローラは、
前記フェイルセーフ制御中に、前記車両の退避走行制御を行う外部装置から退避走行の完了通知を受けていない場合に、前記予告処理および前記給電停止処理を実行する
(1)に記載の電源制御装置。
(3)
前記コントローラは、
前記状態値が前記第1閾値まで低下すると、ダイアグ情報を不揮発性メモリに記憶させ、次回の起動時に前記ダイアグ情報が不揮発性メモリに記憶されていれば、自動運転を禁止する
(1)または(2)に記載の電源制御装置。
(4)
前記コントローラは、
前記メイン電源の失陥を検出すると、前記フェイルセーフ制御中に前記状態値を周期的に不揮発性メモリに記憶させ、次回の起動時に前記不揮発性メモリから前記状態値を読み込み、前記状態値が前記第1閾値以下であれば自動運転を禁止する
(1)または(2)に記載の電源制御装置。
(5)
前記コントローラは、
前記バックアップ電源の失陥を検出すると、前記接続部を遮断して前記メイン電源の電力を第1負荷に給電するフェイルセーフ制御を行うと共に、ダイアグ情報を不揮発性メモリに記憶させ、次回の起動時に前記ダイアグ情報が前記不揮発性メモリに記憶されていれば、自動運転を禁止する
(1)から(4)のいずれか一つに記載の電源制御装置。
(6)
メイン電源の電力を第1負荷に給電する第1系統と、バックアップ電源の電力を第2負荷に給電する第2系統とを接続および遮断可能な接続部を制御する電源制御装置のコントローラが、
前記メイン電源の失陥を検出すると、前記接続部を遮断して前記バックアップ電源の電力を前記第2負荷に給電するフェイルセーフ制御を行い、
前記フェイルセーフ制御中に、前記バックアップ電源の充電状態を示す状態値が、第1閾値まで低下すると、ユーザに対して車両の停止予告を行う予告処理を実行し、
前記状態値が、前記第1閾値より低く、バックアップ電源の安全限界を示す第2閾値まで低下すると、前記バックアップ電源による給電を停止する給電停止処理を実行する
電源制御方法。
【0103】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 電源制御装置
3 コントローラ
10 メイン電源
11 DC/DC
12 PbB
20 バックアップ電源
21 LiB
22 状態監視ライン
31 不揮発性メモリ
32 ダイアグ情報
41 系統間スイッチ
42 電池用スイッチ
51 第1電圧センサ
52 第2電圧センサ
100 外部装置
101 第1負荷
102 一般負荷
103 第2負荷
110 第1系統
120 第2系統
130 系統間ライン
200 通知装置
300 地絡
301 地絡
V1 第1系統電圧
V2 第2系統電圧