(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141974
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】グリッドコンピューティング管理装置、送信経路切替方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 40/12 20090101AFI20241003BHJP
G06F 15/173 20060101ALI20241003BHJP
H04W 4/46 20180101ALI20241003BHJP
H04W 92/18 20090101ALI20241003BHJP
【FI】
H04W40/12
G06F15/173 673
H04W4/46
H04W92/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053889
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】南川 滉瑛
(72)【発明者】
【氏名】大塚 直樹
【テーマコード(参考)】
5B045
5K067
【Fターム(参考)】
5B045BB24
5B045GG01
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067EE25
(57)【要約】
【課題】移動端末との間の通信状況に応じてデータの送信経路を適応的に切り替える。
【解決手段】グリッドコンピューティング管理装置は、複数の車載端末のそれぞれとの間でデータ通信可能であってかつ車載端末によるグリッドコンピューティング処理の実行に必要なプログラム及びデータを記憶する基地局/管理サーバ、との間でデータ通信可能に接続する通信インターフェースと、プロセッサと、を備える。プロセッサは、複数の車載端末のうちいずれかである特定車載端末と基地局/管理サーバとの間の通信状況を取得し、通信状況に基づいて、プログラム及びデータのうち少なくとも1つの送信経路を切り替え、基地局/管理サーバから特定車載端末への送信を指示する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車載端末のそれぞれとの間でデータ通信可能であってかつ前記車載端末によるグリッドコンピューティング処理の実行に必要なプログラム及びデータを記憶する基地局/管理サーバ、との間でデータ通信可能に接続する通信インターフェースと、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
前記複数の車載端末のうちいずれかである特定車載端末と前記基地局/管理サーバとの間の通信状況を取得し、
前記通信状況に基づいて、前記プログラム及びデータのうち少なくとも1つの送信経路を切り替え、前記基地局/管理サーバから前記特定車載端末への送信を指示する、
グリッドコンピューティング管理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記通信状況が良好状態を示す第1条件を満たす場合、前記プログラム及びデータの前記基地局/管理サーバから前記特定車載端末への直接送信を指示する、
請求項1に記載のグリッドコンピューティング管理装置。
【請求項3】
前記通信状況は、前記基地局/管理サーバと前記特定車載端末との間の通信強度と、前記基地局/管理サーバの通信量と、を有し、
前記プロセッサは、
前記通信強度が第1閾値以上かつ前記通信量が上限値未満である場合に、前記通信状況が前記第1条件を満たすと判定する、
請求項2に記載のグリッドコンピューティング管理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記通信状況が通信し難い状態を示す第2条件を満たす場合、前記プログラム及びデータのうち一方の前記基地局/管理サーバから前記特定車載端末への直接送信を指示し、更に、前記複数の車載端末のうち前記特定車載端末以外の車載端末であってかつ前記特定車載端末及び前記基地局/管理サーバの両方とデータ通信可能な車載端末である他車載端末を介した車車間通信で、前記プログラム及びデータのうち他方の前記特定車載端末への送信を前記基地局/管理サーバに指示する、
請求項1に記載のグリッドコンピューティング管理装置。
【請求項5】
前記通信状況は、前記基地局/管理サーバと前記特定車載端末との間の通信強度と、前記基地局/管理サーバの通信量と、を有し、
前記プロセッサは、
前記通信強度が第1閾値未満、或いは、前記通信強度が前記第1閾値以上かつ前記通信量が上限値である場合に、前記通信状況が前記第2条件を満たすと判定する、
請求項4に記載のグリッドコンピューティング管理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記通信状況が通信不可状態を示す第3条件を満たす場合、前記複数の車載端末のうち前記特定車載端末以外の車載端末であってかつ前記特定車載端末及び前記基地局/管理サーバの両方とデータ通信可能な車載端末である他車載端末を介した車車間通信で、前記プログラム及びデータの前記特定車載端末への送信を前記基地局/管理サーバに指示する、
請求項1に記載のグリッドコンピューティング管理装置。
【請求項7】
前記通信状況は、前記基地局/管理サーバと前記特定車載端末との間の通信強度を少なくとも有し、
前記プロセッサは、
前記通信強度が第2閾値未満である場合に、前記通信状況が前記第3条件を満たすと判定する、
請求項6に記載のグリッドコンピューティング管理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記複数の車載端末の中で、前記複数の車載端末のうち前記特定車載端末以外の車載端末であって、前記特定車載端末及び前記基地局/管理サーバの両方とデータ通信可能な車載端末であって、更に、前記特定車載端末を搭載する特定車両と同一方向に走行中の1台以上の他車両が搭載している車載端末を、前記他車載端末として選定する、
請求項4又は6に記載のグリッドコンピューティング管理装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記通信状況が第3閾値未満となった場合に、前記プログラム及びデータのうち少なくとも1つの送信経路の切り替え要否を判定し、その判定結果に基づいて前記送信経路を切り替える、
請求項1に記載のグリッドコンピューティング管理装置。
【請求項10】
前記グリッドコンピューティング管理装置は、前記複数の車載端末のそれぞれとの間でデータ通信可能な基地局側に配置されている、
請求項1に記載のグリッドコンピューティング管理装置。
【請求項11】
前記グリッドコンピューティング管理装置は、前記複数の車載端末のうちいずれかの車載端末を搭載する車両内に配置され、
前記通信インターフェースは、前記車両内に配置されている前記車載端末との間でデータ通信可能である、
請求項1に記載のグリッドコンピューティング管理装置。
【請求項12】
グリッドコンピューティング管理装置により実行される送信経路切替方法であって、
複数の車載端末のそれぞれとの間でデータ通信可能であってかつ前記車載端末によるグリッドコンピューティング処理の実行に必要なプログラム及びデータを記憶する基地局/管理サーバ、との間でデータ通信可能に接続するステップと、
前記複数の車載端末のうちいずれかである特定車載端末と前記基地局/管理サーバとの間の通信状況を取得するステップと、
前記通信状況に基づいて、前記プログラム及びデータのうち少なくとも1つの送信経路を切り替え、前記基地局/管理サーバから前記特定車載端末への送信を指示するステップと、を有する、
送信経路切替方法。
【請求項13】
コンピュータであるグリッドコンピューティング管理装置に、
複数の車載端末のそれぞれとの間でデータ通信可能であってかつ前記車載端末によるグリッドコンピューティング処理の実行に必要なプログラム及びデータを記憶する基地局/管理サーバ、との間でデータ通信可能に接続する処理と、
前記複数の車載端末のうちいずれかである特定車載端末と前記基地局/管理サーバとの間の通信状況を取得する処理と、
前記通信状況に基づいて、前記プログラム及びデータのうち少なくとも1つの送信経路を切り替え、前記基地局/管理サーバから前記特定車載端末への送信を指示する処理と、を実現させるための、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グリッドコンピューティング管理装置、送信経路切替方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
分散処理システムの一例として、グリッドコンピューティングシステムが知られている。グリッドコンピューティングシステムでは、複数の情報処理装置がネットワークを介して接続され、それぞれの情報処理装置に目的の処理を行わせることにより、1台1台の情報処理装置の性能が低くても全体として高速な処理が可能となる。スマートフォン或いは車載端末等の電子機器の性能が近年進歩しており、グリッドコンピューティングを構成する情報処理装置の一つとしてこのような電子機器を活用することが検討されている。
【0003】
特許文献1には、走行中にサーバから処理の実行を依頼される、分散処理システムを構成する車載端末が開示されている。この車載端末は、依頼される処理に必要なプログラム及びデータを予め格納し、その車載端末を搭載した車両の停止を検知し、その車両が停止している間に格納されているプログラム及び/又はデータを更新する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存のグリッドコンピューティングシステムを構成する情報処理装置はデスクトップ型のパーソナルコンピュータ等のマシンにより構成されていた。しかしながら、スマートフォン或いは車載端末等の移動端末を、グリッドコンピューティングシステムを構成する情報処理装置として使用する際に次のような課題がある。具体的には、移動端末が移動することにより、グリッドコンピューティングを統括するサーバマシン或いは他の移動端末との間の通信状況が時々刻々と変動し得るため、通信状況が劣化すると通信が途絶してグリッドコンピューティングシステムとしての動作が保証されない可能性があった。他には、グリッドコンピューティングの処理において情報処理装置は事前にその処理を行うために必要なプログラム及びデータを保持している必要があるが、通信状況によってデータ転送に時間がかかると処理(つまり演算)の時間が足りず、分散処理のメリットを活かすことができない。
【0006】
本開示は、上述した従来の事情に鑑みて案出され、移動端末との間の通信状況に応じてデータの送信経路を適応的に切り替えるグリッドコンピューティング管理装置、送信経路切替方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、複数の車載端末のそれぞれとの間でデータ通信可能であってかつ前記車載端末によるグリッドコンピューティング処理の実行に必要なプログラム及びデータを記憶する基地局/管理サーバ、との間でデータ通信可能に接続する通信インターフェースと、プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、前記複数の車載端末のうちいずれかである特定車載端末と前記基地局/管理サーバとの間の通信状況を取得し、前記通信状況に基づいて、前記プログラム及びデータのうち少なくとも1つの送信経路を切り替え、前記基地局/管理サーバから前記特定車載端末への送信を指示する、グリッドコンピューティング管理装置を提供する。
【0008】
また、本開示は、グリッドコンピューティング管理装置により実行される送信経路切替方法であって、複数の車載端末のそれぞれとの間でデータ通信可能であってかつ前記車載端末によるグリッドコンピューティング処理の実行に必要なプログラム及びデータを記憶する基地局/管理サーバ、との間でデータ通信可能に接続するステップと、前記複数の車載端末のうちいずれかである特定車載端末と前記基地局/管理サーバとの間の通信状況を取得するステップと、前記通信状況に基づいて、前記プログラム及びデータのうち少なくとも1つの送信経路を切り替え、前記基地局/管理サーバから前記特定車載端末への送信を指示するステップと、を有する、送信経路切替方法を提供する。
【0009】
また、本開示は、コンピュータであるグリッドコンピューティング管理装置に、複数の車載端末のそれぞれとの間でデータ通信可能であってかつ前記車載端末によるグリッドコンピューティング処理の実行に必要なプログラム及びデータを記憶する基地局/管理サーバ、との間でデータ通信可能に接続する処理と、前記複数の車載端末のうちいずれかである特定車載端末と前記基地局/管理サーバとの間の通信状況を取得する処理と、前記通信状況に基づいて、前記プログラム及びデータのうち少なくとも1つの送信経路を切り替え、前記基地局/管理サーバから前記特定車載端末への送信を指示する処理と、を実現させるための、プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、移動端末との間の通信状況に応じてデータの送信経路を適応的に切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】グリッドコンピューティングシステムのシステム構成例を示す図
【
図2】実施の形態1に係るグリッドコンピューティング管理装置のハードウェア構成例を示すブロック図
【
図3】車載端末のハードウェア構成例を示すブロック図
【
図4】処理用プログラム及び処理用データの送信経路の切り替えパターン例を示すテーブル
【
図5B】経路パターンP1に係るグリッドコンピューティングシステムの動作手順例を時系列に示すシーケンス図
【
図6B】経路パターンP2に係るグリッドコンピューティングシステムの動作手順例を時系列に示すシーケンス図
【
図7B】経路パターンP3に係るグリッドコンピューティングシステムの動作手順例を時系列に示すシーケンス図
【
図8】グリッドコンピューティング管理装置の動作手順を時系列に示すフローチャート
【
図9】実施の形態1の変形例に係るグリッドコンピューティング管理装置のハードウェア構成例を示すブロック図
【
図10】実施の形態1の変形例の経路パターンP1に係るグリッドコンピューティングシステムの動作手順例を時系列に示すシーケンス図
【
図11】実施の形態1の変形例の経路パターンP2に係るグリッドコンピューティングシステムの動作手順例を時系列に示すシーケンス図
【
図12】実施の形態1の変形例の経路パターンP3に係るグリッドコンピューティングシステムの動作手順例を時系列に示すシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係るグリッドコンピューティング管理装置、送信経路切替方法及びプログラムを具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0013】
(実施の形態1)
1.グリッドコンピューティングシステムの概略的説明
まず、
図1を参照して、本実施の形態に係るグリッドコンピューティングシステム100の概略的構成を説明する。
図1は、グリッドコンピューティングシステム100のシステム構成例を示す図である。本実施の形態に係るグリッドコンピューティングシステム100は、複数台の移動体のそれぞれに設けられる車載端末とグリッドコンピューティング管理装置10と基地局/管理サーバ20とが協調してグリッドコンピューティングシステムを形成する。移動体は例えば車両であり、より具体的には車両に搭載される車載端末がグリッドコンピューティングシステム100を構成する。
【0014】
グリッドコンピューティングシステム100は、グリッドコンピューティング管理装置10と、基地局/管理サーバ20と、複数の車載端末30(
図2参照)と、を含む。本実施の形態では、グリッドコンピューティング管理装置10は、基地局/管理サーバ20の設置箇所に設けられ、基地局/管理サーバ20との間でデータ通信可能に接続されている。グリッドコンピューティング管理装置10と基地局/管理サーバ20との間は、有線ネットワークにより接続される。有線ネットワークは、例えば有線LAN、有線WAN、電力線通信(Power Line Communication:PLC)のうち少なくとも1つが該当し、他の有線通信可能なネットワーク構成でもよい。なお、グリッドコンピューティング管理装置10と基地局/管理サーバ20との間は、有線ネットワークに限定せず、無線ネットワーク(後述参照)により接続されても構わない。
【0015】
基地局/管理サーバ20とそれぞれの車載端末30との間は、ネットワークNW1を介してデータ通信可能に接続されている。ネットワークNW1は、無線ネットワークである。無線ネットワークは、Wi-Fi(登録商標)等の無線LAN、無線WAN、4G或いは5G等のセルラ通信網のうち少なくとも1つが該当し、他の無線通信可能なネットワーク構成でもよい。
図1では、無線ネットワークは、広域に無線通信が可能となるようにセルラ通信網が図示されている。
【0016】
図1の例では、車両C1、C2、C3のそれぞれが道路RD1の方向D1に向かって走行中であり、その対向側において車両E1、E2のそれぞれが道路RD1の方向D2に向かって走行中である。ここで、物理的に近しい距離内に位置している複数の車載端末同士は車両群を形成し、車両群内の車載端末同士はいわゆる車車間通信(V2V通信)を実行可能である。具体的には、車両C1、C2、C3のそれぞれが車両群51を形成し、車両C1の車載端末と車両C2の車載端末との間、車両C2の車載端末と車両C3の車載端末との間ではそれぞれV2V通信が可能である。同様に、車両E1、E2のそれぞれが車両群52を形成し、車両E1の車載端末と車両E2の車載端末との間ではV2V通信が可能である。
【0017】
グリッドコンピューティング管理装置10は、パーソナルコンピュータ(PC)により構成され、グリッドコンピューティングで行うべき処理(計算処理)の実行主体である車載端末と基地局/管理サーバ20との間の通信状況を、基地局/管理サーバ20を介して取得する。グリッドコンピューティング管理装置10は、取得した通信状況に基づいて、それぞれの車載端末に送信するべきプログラム及びデータの送信経路(言い換えると、転送経路)を切り替える。グリッドコンピューティング管理装置10は、切り替え後の送信経路に基づいて、プログラム又はデータを基地局/管理サーバ20からセルラ通信単独で提供したり、或いはセルラ通信及びV2V通信を組み合わせた通信態様で提供したりする。また、グリッドコンピューティング管理装置10は、それぞれの車両の移動方向(例えば走行方向)を判定し、同一方向に移動している1台以上の車両を1つの車両群として形成する。グリッドコンピューティング管理装置10の詳細な構成例については、
図2を参照して後述する。
【0018】
基地局/管理サーバ20は、サーバコンピュータにより構成され、グリッドコンピューティングシステム100において実行すべき処理の要求を受け付け、実行すべき処理を並列的に実行可能な複数の処理に分割する。基地局/管理サーバ20は、分割された処理を走行中の車両C1、C2、C3、E1、E2のそれぞれに割り当てる。基地局/管理サーバ20は、グリッドコンピューティングで行うべき処理(計算処理)の実行に必要なプログラム及びデータをメモリ21(
図2参照)に保持している。基地局/管理サーバ20は、セルラ通信の基地局としての機能を有し、セルラ通信の移動体(ノード)であるそれぞれの車両内の車載端末との間でセルラ通信を行う。
図1の例では、基地局/管理サーバ20は、車両C1、C2、C3、E1、E2のそれぞれに搭載されている車載端末との間でセルラ通信を行う。セルラ通信では、例えばグリッドコンピューティングで行うべき処理(計算処理)の実行に必要なプログラム及びデータ(以下、単に「処理用プログラム及び処理用データ」と称する)が、グリッドコンピューティング管理装置10からの指示によって基地局/管理サーバ20から該当の車載端末に送られる。また、セルラ通信では、車載端末により実行された処理(計算処理)の結果が、車載端末から基地局/管理サーバ20に送られる。
【0019】
車載端末30は、所定の無線通信規格に準じた無線通信機能を有するコンピュータ装置により構成され、1台の車両内に1台設けられる。車載端末30は、グリッドコンピューティングで行うべき処理(計算処理)の実行主体としての役割を有し、グリッドコンピューティング管理装置10により実行主体の割り当てを受ける。車載端末30は、その処理の実行に必要な処理用プログラム及び処理用データを取得すると、その処理用プログラム及び処理用データを用いて処理(計算処理)を実行する。車載端末30は、その処理結果をセルラ通信或いはV2V通信を介して基地局/管理サーバ20に返送する。車載端末30の詳細な構成例については、
図3を参照して後述する。
【0020】
2.グリッドコンピューティング管理装置の詳細な構成例
次に、
図2を参照して、本実施の形態に係るグリッドコンピューティング管理装置10の構成例を説明する。
図2は、実施の形態1に係るグリッドコンピューティング管理装置10のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0021】
グリッドコンピューティング管理装置10は、以下に示す機能を有する。
【0022】
具体的には、グリッドコンピューティング管理装置10は、
(1)基地局/管理サーバ20の通信可能範囲内に存在している1台以上の車載端末30の情報を示す車載端末情報を、基地局/管理サーバ20を介して取得する。
(2)基地局/管理サーバ20が保持している処理用プログラム及び処理用データを、基地局/管理サーバ20から車載端末30に送信するための指示を基地局/管理サーバ20に送る。
(3)基地局/管理サーバ20と車載端末30との間の通信状況に基づいて、処理用プログラム及び処理用データの送信経路を切り替える。
(4)(2)で取得した車載端末情報に含まれる車両の移動方向及び速度に基づいて、その車両の今後の通信状況を推定(言い換えると、予測)する。
【0023】
図2に示すグリッドコンピューティング管理装置10は、プロセッサ11と、メモリ12と、通信インターフェース13と、を少なくとも含む。
図2では、インターフェースを「I/F」と略記している。
【0024】
プロセッサ11は、例えば、Central Processing Unit(CPU)、Digital Signal Processor(DSP)又はField Programmable Gate Array(FPGA)の電子デバイスを用いて構成される。プロセッサ11は、グリッドコンピューティング管理装置10の全体的な動作を司るコントローラとして機能し、グリッドコンピューティング管理装置10の各部の動作を統括するための制御処理、グリッドコンピューティング管理装置10の各部との間のデータの入出力処理、データの演算処理及びデータの記憶処理を行う。プロセッサ11は、メモリ12に含まれるRead Only Memory(ROM)に記憶されたプログラム及びデータに従って動作したり、動作時にメモリ12に含まれるRandom Access Memory(RAM)を使用してプロセッサ11が生成或いは取得したデータをRAMに一時的に保存したりする。
【0025】
プロセッサ11は、通信強度取得部111と、車載端末情報取得部112と、通信量取得部113と、通信強度判定部114と、車載端末情報管理部115と、通信量判定部116と、処理依頼内容管理部117と、通信経路切替部118と、データ送信制御部119と、を機能的に有する。
【0026】
通信強度取得部111は、車載端末30からの通信データ(例えば、所定桁ビットのバルクデータ)を基地局/管理サーバ20が受信した時の通信強度(例えば、Received Signal Strength Indicator(RSSI)等の受信電界強度)の値を、基地局/管理サーバ20及び通信インターフェース13を介して入力して取得する。通信強度は、例えば、基地局/管理サーバ20と車載端末30との間の通信状況の良し悪しを示す指標のデータである。なお、通信強度は、上述したバルクデータ以外のデータの通信の際に測定されたものでも構わないし、RSSI等の受信電界強度の値から予測した値でもよい。通信強度取得部111は、通信強度のデータを通信強度判定部114に送る。
【0027】
車載端末情報取得部112は、車載端末30からの車載端末情報のデータを、基地局/管理サーバ20及び通信インターフェース13を介して入力して取得する。車載端末情報は、例えば、グリッドコンピューティングシステム100において車載端末30が実行した処理結果、車載端末30を搭載している車両の移動方向及び速度、車載端末30とその車載端末30とは異なる他車載端末との間の通信状況等の各種データである。車載端末情報取得部112は、車載端末情報のデータを車載端末情報管理部115に送る。
【0028】
通信量取得部113は、基地局/管理サーバ20の通信量のデータを、基地局/管理サーバ20及び通信インターフェース13を介して入力して取得する。通信量は、例えば、基地局/管理サーバ20が定常的に監視している自局(つまり、基地局/管理サーバ20自身)の最新の通信量であり、その現時点の通信量が既定の通信上限量を超過しているか否かを示す指標のデータである。通信量取得部113は、通信量のデータを通信量判定部116に送る。
【0029】
通信強度判定部114は、通信強度取得部111からの通信強度のデータを取得し、その通信強度が第1閾値以上であるか否か、及びその通信強度が第2閾値未満であるか否かのうち少なくとも1つを判定する。第1閾値は、通信強度が「良」、つまり基地局/管理サーバ20と車載端末30との間の通信状況が良好であって通信可能であると判定するための閾値である。第2閾値は、通信強度が「途絶」、つまり基地局/管理サーバ20と車載端末30とが通信不可な状態であると判定するための閾値である。第1閾値及び第2閾値は、メモリ12に保存されてもよいし、通信強度判定部114において予め保持されてもよい。通信強度判定部114は、通信強度取得部111からの通信強度が第1閾値以上であるか否か、及びその通信強度が第2閾値未満であるか否かのうち少なくとも1つの判定結果を通信経路切替部118に送る。
【0030】
なお、基地局/管理サーバ20と車載端末30との間のセルラ通信の通信速度は、車載端末30間のV2V通信の通信速度よりも大きい。このため、V2V通信の最高速度値が得られる時の通信強度を、セルラ通信の通信強度が「良」であるか否かを示す第1閾値として採用することができる。
【0031】
また、グリッドコンピューティング管理装置10は、基地局/管理サーバ20と車載端末30との間のセルラ通信の通信強度の判定に、現時点の通信強度を基にして計算した将来(例えば、数秒後)の予測値を用いてもよい。つまり、グリッドコンピューティング管理装置10は、予測値の計算結果が第1閾値以上であると判定した場合に、基地局/管理サーバ20と車載端末30との間のセルラ通信の通信強度を「良」と判定してよい。
【0032】
車載端末情報管理部115は、車載端末情報取得部112からの車載端末情報のデータを一時的に保持して管理する。車載端末情報管理部115は、車載端末情報取得部112からの車載端末情報のデータを通信経路切替部118に送る。車載端末情報管理部115は、プロセッサ11により実現されてもよいが、RAM等のメモリデバイスによって実現されても構わない。
【0033】
通信量判定部116は、通信量取得部113からの通信量のデータを取得し、その通信量が既定の上限値未満であるか否かを判定する。上限値は、基地局/管理サーバ20の仕様或いは性能、ネットワークNW1で使用する周波数帯域等に基づいて予め定められる通信量の上限値である。上限値は、メモリ12に保存されてもよいし、通信量判定部116において予め保持されてもよい。
【0034】
処理依頼内容管理部117は、基地局/管理サーバ20により割り当てられたグリッドコンピューティングシステム100において実行するべき処理の依頼内容を示すデータを、基地局/管理サーバ20及び通信インターフェース13を介して入力して取得する。処理依頼内容管理部117は、基地局/管理サーバ20からの依頼内容のデータを一時的に保持して管理したり、通信経路切替部118に送ったりする。処理依頼内容管理部117は、プロセッサ11により実現されてもよいが、RAM等のメモリデバイスによって実現されても構わない。
【0035】
ここで、処理用プログラム及び処理用データについて説明する。
【0036】
[処理用プログラム]
本実施の形態において、処理用プログラムは、グリッドコンピューティングシステム100を構成する複数の車載端末30のうちどの車載端末で実行されるに拘わらず、どの車載端末でも共通に使用されるプログラムである。言い換えると、複数の車載端末30のそれぞれは、グリッドコンピューティングシステム100において実行すべき処理を行う際に、同一の処理用プログラムを使用する。したがって、車両C1の車載端末が処理用プログラムを保持していない場合、その車載端末は、基地局/管理サーバ20からセルラ通信で送られた処理用プログラムを使用してもよいし、他の車両(例えば、車両C2)の車載端末からV2V通信で送られた処理用プログラムを使用してもよい。
【0037】
[処理用データ]
一方、処理用データは、グリッドコンピューティングシステム100において実行すべき処理を行う車載端末30ごとに固有のデータである。このため、車両C1の車載端末は自機が実行すべき処理に必要な処理用データを保持していない場合、その車載端末は、その車載端末でしか使えない固有のデータである処理用データを、基地局/管理サーバ20からのセルラ通信によって取得するか、又は他の車両(例えば、車両C2)の車載端末からのV2V通信によって取得する必要がある。なお、車載端末30は、自機が処理の実行に使用する処理用データを保持するだけでなく、他機(つまり、他車載端末30a)が処理の実行に使用する処理データを保持してもよく、通信状況によってはその処理データを他機のためにV2V通信で他機に送信する。
【0038】
通信経路切替部118は、通信強度判定部114からの通信強度の判定結果と通信量判定部116からの通信量の判定結果と処理依頼内容管理部117からの依頼内容のデータとを入力して取得する。通信経路切替部118は、基地局/管理サーバ20と車載端末30との間の通信強度の判定結果と通信量の判定結果とに基づいて、その車載端末30への処理用プログラム及び処理用データの送信経路(言い換えると、転送経路)を切り替える。また、通信経路切替部118は、基地局/管理サーバ20と車載端末30との間の通信強度の判定結果及び通信量の判定結果だけでなく依頼内容のデータも加味して、その車載端末30への処理用プログラム及び処理用データの送信経路を切り替えてもよい。なお、通信経路切替部118は、基地局/管理サーバ20と車載端末30との間の通信強度の判定結果と通信量の判定結果とによっては、現状の通信経路をそのまま維持してもよい。同様に、通信経路切替部118は、基地局/管理サーバ20と車載端末30との間の通信強度の判定結果と通信量の判定結果と依頼内容のデータとによっては、現状の通信経路をそのまま維持してもよい。通信経路切替部118は、切り替え後或いは現状の処理用プログラム及び処理用データの送信経路を示すデータをデータ送信制御部119に送る。なお、通信経路切替部118は、送信経路を維持する場合には、その送信経路を示すデータをデータ送信制御部119に送る処理を省略してもよい。切り替えの一例については、
図4を参照して後述する。
【0039】
データ送信制御部119は、通信経路切替部118からの送信経路を示すデータに基づいて、処理用プログラム及び処理用データのそれぞれに応じた送信経路を設定する。データ送信制御部119は、その設定された送信経路を示すデータを通信インターフェース13に送る。通信インターフェース13は、データ送信制御部119により設定された送信経路にしたがって、基地局/管理サーバ20が保持している処理用プログラム及び処理用データのそれぞれを、基地局/管理サーバ20から車載端末30に送るように基地局/管理サーバ20に指示する。基地局/管理サーバ20は、通信インターフェース13からの指示にしたがい、グリッドコンピューティング管理装置10により設定された送信経路にしたがって、メモリ21に保存している処理用プログラム及び処理用データのそれぞれを車載端末30に送る。
【0040】
メモリ12は、ROM及びRAMを備える。ROMは、プロセッサ11が機能的に備える各部の処理(動作)を規定するプログラム、及び、そのプログラムの実行時に参照するデータを格納している。RAMは、プロセッサ11が機能的に備える各部の処理(動作)を実行する際に用いられるワークメモリであり、それぞれの処理において生成あるいは取得されたデータを一時的に保存する。メモリ12は、例えば、通信経路切替部118により設定された処理用プログラム及び処理用データの送信経路を示すデータを一時的に保存する。
【0041】
通信インターフェース13は、グリッドコンピューティング管理装置10と基地局/管理サーバ20との間でデータ通信を行うための通信回路を用いて構成される。通信インターフェース13は、基地局/管理サーバ20が取得或いは受信した各種のデータを入力してプロセッサ11に送ったりメモリ12に保存したりする。
【0042】
基地局/管理サーバ20は、メモリ21を備える。メモリ21は、ROM及びRAMを備える。ROMは、基地局/管理サーバ20のプロセッサが機能的に備える各部の処理(動作)を規定するプログラム、及び、そのプログラムの実行時に参照するデータを格納している。RAMは、基地局/管理サーバ20のプロセッサが機能的に備える各部の処理(動作)を実行する際に用いられるワークメモリであり、それぞれの処理において生成あるいは取得されたデータを一時的に保存する。メモリ21は、グリッドコンピューティングで行うべき処理(計算処理)の実行に必要な処理用プログラム及び処理用データを保存している。メモリ21は、車載端末30ごとの固有の処理用データを保存している。
【0043】
3.車載端末の詳細な構成例
次に、
図3を参照して、本実施の形態に係る車載端末30の構成例を説明する。
図3は、車載端末30のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0044】
車載端末30は、それぞれの車両(例えば、
図1の車両C1、C2、C3、E1、E2)に共通して搭載され、その搭載されている車両の移動方向及び速度等の車載端末情報(上述参照)を取得する。車載端末30は、同一の移動方向に走行中の他車両に搭載されている他車載端末30aとの間でV2V通信を行うことができ、更に、基地局/管理サーバ20との間でセルラ通信を行うこともできる。
【0045】
図3に示す車載端末30は、データ格納部31と、セルラ通信部32と、V2V通信部33と、通信強度取得部34と、車載端末情報取得部35と、データ処理部36と、を少なくとも含む。なお、車載端末30と他車載端末30aとは同一の構成を有しているが、車載端末30が自車両(例えば、車両C1)に搭載され、かつ他車載端末30aがその自車両とは異なる他車両(例えば、車両C2)に搭載されていることを明確にするために符号を異ならせている。
【0046】
データ格納部31は、例えば、フラッシュメモリ等の半導体メモリにより構成され、車載端末30の各部が生成或いは取得したデータを一時的に保存している。例えば、データ格納部31は、基地局/管理サーバ20から送られた処理用プログラム及び処理用データを保存している。なお、データ格納部31は、車載端末30を搭載する自車両(例えば、車両C1)とは異なる他車両(例えば、車両C2)に搭載されている他車載端末30aが実行すべき処理に必要な処理用データを保存してもよい。
【0047】
セルラ通信部32は、セルラ通信を実行可能な通信回路により構成され、基地局/管理サーバ20との間でセルラ通信を行う。セルラ通信部32は、車載端末30と基地局/管理サーバ20との間の通信状況が「良」(
図4を参照して後述)である場合には、例えば、データ処理部36による処理結果のデータ、車載端末情報のデータ、通信強度のデータをセルラ通信によって基地局/管理サーバ20に送信できる。また、セルラ通信部32は、車載端末30と基地局/管理サーバ20との間の通信状況が「良」(
図4を参照して後述)である場合には、例えば、処理用プログラム及び車載端末30用の処理用データをセルラ通信によって基地局/管理サーバ20から受信することができる。
【0048】
V2V通信部33は、V2V通信を実行可能な通信回路により構成され、車載端末30とその車載端末30を搭載する自車両(例えば、車両C1)とは異なる他車両(例えば、車両C2)に搭載されている他車載端末30aとの間でV2V通信を行う。V2V通信部33は、通信強度取得部34により取得された車載端末30と他車載端末30aとの間の通信強度が所定閾値以上である場合、例えばデータ格納部31に保存されている処理用プログラム及び他車載端末30a用の処理用データのうち少なくとも1つをV2V通信によって他車載端末30aに送信する。また、V2V通信部33は、通信強度取得部34により取得された車載端末30と他車載端末30aとの間の通信強度が所定閾値以上である場合、例えば処理用プログラム及び車載端末30用の処理用データのうち少なくとも1つをV2V通信によって他車載端末30aから受信する。
【0049】
通信強度取得部34は、セルラ通信部32が基地局/管理サーバ20からの通信データ(例えば所定桁ビットのバルクデータ)を受信した時の通信強度(例えば、RSSI等の受信電界強度)の値をセルラ通信部32から取得する。通信強度取得部34は、V2V通信部33が他車載端末30aからの通信データ(例えば所定桁ビットのバルクデータ)を受信した時の通信強度(例えば、RSSI等の受信電界強度)の値をV2V通信部33から取得する。通信強度は、例えば、基地局/管理サーバ20と車載端末30との間、或いは、車載端末30と他車載端末30aとの間、の通信状況の良し悪しを示す指標のデータである。通信強度取得部34は、通信強度のデータを車載端末情報取得部35、セルラ通信部32或いはV2V通信部33に送る。
【0050】
車載端末情報取得部35は、データ処理部36の処理結果、或いは車載端末30と接続されている自車両(例えば、車両C1)内の制御回路(図示略)による計算の処理結果等を含む車載端末情報を取得する。車載端末情報取得部35は、取得した車載端末情報をデータ格納部31に一時的に保存したり、セルラ通信部32或いはV2V通信部33に送ったりする。
【0051】
データ処理部36は、グリッドコンピューティング管理装置10或いは他車載端末30aを介して取得した処理用プログラム及び処理用データを用いて、グリッドコンピューティングシステム100におけるグリッドコンピューティングで行うべき処理(計算処理)を実行する。データ処理部36は、グリッドコンピューティングで行うべき処理(計算処理)以外の処理を実行してもよい。データ処理部36は、処理結果のデータをデータ格納部31に一時的に保存したり、セルラ通信部32或いはV2V通信部33に送ったりする。
【0052】
4.通信状況に応じた処理用プログラム及び処理用データの送信経路
次に、
図4を参照して、グリッドコンピューティング管理装置10が決定する通信状況に応じた処理用プログラム及び処理用データの送信経路を説明する。
図4は、処理用プログラム及び処理用データの送信経路の切り替えパターン例を示すテーブルである。経路パターンとは、処理用プログラム及び処理用データの送信経路のパターンである。本実施の形態では、例えば、3通りの経路パターンP1、P2、P3が想定されている。
【0053】
[経路パターンP1]
基地局/管理サーバ20と車両C1の車載端末との間の通信強度が「良」(第1条件の一例、つまり第1閾値以上)であって基地局/管理サーバ20の通信量が「通常」(言い換えると、上限値未満)である場合を想定する。ここでいう「上限値未満」は、上限値より十分に下回っていることを示す。この場合、基地局/管理サーバ20と車両C1の車載端末との間で無線通信(いわゆるセルラ通信)を行う支障が無く、基地局/管理サーバ20も十分にセルラ通信を行うことが可能な状態と考えられる。したがって、グリッドコンピューティング管理装置10は、上述した場合の経路パターンP1として、処理用プログラム及び処理用データを、セルラ通信で基地局/管理サーバ20から車両C1の車載端末に送信するように、処理用プログラム及び処理用データの送信経路を決定かつ設定する。経路パターンP1の処理例については、
図5A及び
図5Bを参照して後述する。
【0054】
[経路パターンP2]
基地局/管理サーバ20と車両C1の車載端末との間の通信強度が「良」(第1条件の一例、つまり第1閾値以上)であるが基地局/管理サーバ20の通信量が「上限」(言い換えると、上限値と同一値もしくは上限値の90%程の値)である場合を想定する。また、基地局/管理サーバ20と車両C1の車載端末との間の通信強度が「悪」(第2条件の一例、つまり第1閾値未満)である場合を想定する。これらの場合、基地局/管理サーバ20と車両C1との間で無線通信(いわゆるセルラ通信)を行うことは可能だが、あまり大きなサイズのデータの送受信が適切でなく、グリッドコンピューティングの実現に支障があると考えられる。したがって、グリッドコンピューティング管理装置10は、上述した場合の経路パターンP2として、車載端末に固有の処理用データのみセルラ通信で基地局/管理サーバ20から車両C1の車載端末に送信し、各車載端末で共有の処理用プログラムを、他車載端末(例えば、車両C2の車載端末)を介したV2V通信で車両C1の車載端末に送信するように、処理用プログラム及び処理用データの送信経路を決定かつ設定する。経路パターンP2の処理例については、
図6A及び
図6Bを参照して後述する。
【0055】
[経路パターンP3]
基地局/管理サーバ20と車両C1の車載端末との間の通信強度が「無」(第3条件の一例、つまり第2閾値未満)である場合を想定する。この場合、基地局/管理サーバ20と車両C1との間で無線通信(いわゆるセルラ通信)は不可であると考えられる。したがって、グリッドコンピューティング管理装置10は、上述した場合の経路パターンP3として、処理用プログラム及び処理用データを、他車載端末(例えば、車両C2の車載端末)を介したV2V通信で車両C1の車載端末に送信するように、処理用プログラム及び処理用データの送信経路を決定かつ設定する。経路パターンP3の処理例については、
図7A及び
図7Bを参照して後述する。
【0056】
なお、経路パターンP2において、基地局/管理サーバ20と車両C1の車載端末との間の通信強度が「悪」である場合、グリッドコンピューティング管理装置10は、送信経路(言い換えると、転送経路)の切り替えの要否に、現在の基地局/管理サーバ20の通信量を加味して判定してもよい。例えば、グリッドコンピューティング管理装置10は、基地局/管理サーバ20と車両C1の車載端末との間の通信強度が「悪」であってかつ現在の基地局/管理サーバ20の通信量が「上限」である場合、経路パターンP3と同様に、処理用プログラム及び処理用データを、他車載端末(例えば、車両C2の車載端末)を介したV2V通信で車両C1の車載端末に送信するように、処理用プログラム及び処理用データの送信経路を決定かつ設定してもよい。また例えば、グリッドコンピューティング管理装置10は、基地局/管理サーバ20と車両C1の車載端末との間の通信強度が「悪」であっても現在の通信量が「通常」である場合には、経路パターンP1と同様に、処理用プログラム及び処理用データを、セルラ通信で基地局/管理サーバ20から車両C1の車載端末に送信するように、処理用プログラム及び処理用データの送信経路を決定かつ設定してもよい。
【0057】
また、経路パターンP2において、基地局/管理サーバ20と車両C1の車載端末との間の通信強度が「悪」である場合、グリッドコンピューティング管理装置10は、経路パターンP3と同一の送信経路に切り替えるように、処理用プログラム及び処理用データの送信経路を決定かつ設定してもよい。具体的には、グリッドコンピューティング管理装置10は、処理用プログラム及び処理用データを、他車載端末(例えば、車両C2の車載端末)を介したV2V通信で車両C1の車載端末に送信するように、処理用プログラム及び処理用データの送信経路を決定かつ設定してよい。
【0058】
5.経路パターンごとの動作概要と動作シーケンス
次に、
図5A、
図5B、
図6A、
図6B、
図7A及び
図7Bを参照して、
図4の経路パターンP1、P2、P3のそれぞれに応じた動作概要及び動作シーケンスを説明する。
図5Aは、経路パターンP1の動作概要例を示す図である。
図5Bは、経路パターンP1に係るグリッドコンピューティングシステム100の動作手順例を時系列に示すシーケンス図である。
図6Aは、経路パターンP2の動作概要例を示す図である。
図6Bは、経路パターンP2に係るグリッドコンピューティングシステム100の動作手順例を時系列に示すシーケンス図である。
図7Aは、経路パターンP3の動作概要例を示す図である。
図7Bは、経路パターンP3に係るグリッドコンピューティングシステム100の動作手順例を時系列に示すシーケンス図である。
図5B、
図6B及び
図7Bにおいて、グリッドコンピューティング管理装置を「G管理装置」と略記している。
【0059】
5-1.経路パターンP1
図5Aに示すように、経路パターンP1の動作シーケンスを説明するにあたり、基地局/管理サーバ20は、グリッドコンピューティング管理装置10が設定した同一方向に走行中の車両群51を形成する車両C1、C2の車載端末のそれぞれとの間で、無線通信(セルラ通信)を良好に行っているとする(
図4参照)。
図5Bの説明は、基地局/管理サーバ20とグリッドコンピューティング管理装置10と車載端末A1との間の動作シーケンスを例示している。車載端末A1は、
図3に示す車載端末30と同一の構成を備えており、
図5Aに示す車両C1、C2のそれぞれの車載端末を示している。
【0060】
図5Bにおいて、グリッドコンピューティング管理装置10は、車載端末A1との間でセルラ通信を行うための通信リクエストを送信するための指示(通信リクエスト指示)を生成して基地局/管理サーバ20に送る(ステップSt1)。基地局/管理サーバ20は、ステップSt1で送られた通信リクエスト指示を受信し、その通信リクエスト指示に基づいて通信リクエストを生成して車載端末A1に送る(ステップSt2)。車載端末A1は、ステップSt2で基地局/管理サーバ20から送られた通信リクエストの受信に基づいて、所定の通信データ(例えば、所定桁ビットのバルクデータ)を基地局/管理サーバ20に送信する(ステップSt3)。
【0061】
基地局/管理サーバ20は、ステップSt3で送られたバルクデータを受信し、この受信に基づいて基地局/管理サーバ20と車載端末A1との間の通信強度、基地局/管理サーバ20の現在の通信量をそれぞれ示すデータをグリッドコンピューティング管理装置10に送る(ステップSt4)。グリッドコンピューティング管理装置10は、ステップSt4で送られた通信強度のデータに基づいて、基地局/管理サーバ20と車載端末A1との間の通信状況(例えば、通信強度)を判定する(ステップSt5)。更に、グリッドコンピューティング管理装置10は、ステップSt4で送られた通信量のデータに基づいて、基地局/管理サーバ20の現在の(言い換えると、ステップSt5の時点)の通信量を判定する(ステップSt5)。ここでは、グリッドコンピューティング管理装置10は、通信強度(例えば、RSSI)が第1閾値以上であり、通信強度が「良」であると判定する。なお、
図5A及び
図5Bの例では、グリッドコンピューティング管理装置10は、基地局/管理サーバ20の現在の通信量は「通常」(つまり、上限値には十分に至っていない)と判定している。
【0062】
グリッドコンピューティング管理装置10は、ステップSt5の判定に基づき、車載端末A1が実行すべき処理に必要な処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データの両方の送信経路を決定かつ設定し、その送信経路を示すデータを基地局/管理サーバ20に送る(ステップSt6)。基地局/管理サーバ20は、ステップSt6で送られた送信経路を示すデータに基づき、メモリ21に保存している処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データの両方をセルラ通信で車載端末A1に送る(ステップSt7)。車載端末A1は、ステップSt7で基地局/管理サーバ20から送られた処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データを用いて、グリッドコンピューティングの処理(計算処理)を実行する(ステップSt8)。
【0063】
車載端末A1は、基地局/管理サーバ20との間でセルラ通信を行うための通信リクエストを生成して基地局/管理サーバ20に送る(ステップSt9)。基地局/管理サーバ20は、ステップSt9で送られた通信リクエストを受信し、通信リクエストを受信した旨の応答(Ack)を返送したとする。これにより、車載端末A1は、基地局/管理サーバ20との間で通信状況が途絶していないことを認識できる。車載端末A1は、応答(Ack)の受信に基づいて、ステップSt8の処理結果のデータを、セルラ通信で基地局/管理サーバ20に送る(ステップSt10)。
【0064】
5-2.経路パターンP2
図6Aに示すように、経路パターンP2の動作シーケンスを説明するにあたり、基地局/管理サーバ20は、グリッドコンピューティング管理装置10が設定した同一方向に走行中の車両群51を形成する車両C2の車載端末A2との間で、無線通信(セルラ通信)を行えている。しかし、基地局/管理サーバ20は、グリッドコンピューティング管理装置10が設定した車両群51を形成する車両C1の車載端末A1との間でも無線通信(セルラ通信)を行えているがその通信状況は良好ではないとする(
図4参照)。
図6Bの車載端末A1は
図6Aの車両C1の車載端末であり、
図6Bの車載端末A2は
図6Aの車両C2の車載端末である。なお、
図6Bの処理の説明において、
図5Bの処理と同一の処理については同一のステップ番号を付与して説明を簡略化或いは省略し、異なる内容について説明する。
【0065】
図6Bにおいて、基地局/管理サーバ20は、ステップSt3で送られたバルクデータを受信し、この受信に基づいて基地局/管理サーバ20と車載端末A1との間の通信強度、基地局/管理サーバ20の現在の通信量をそれぞれ示すデータをグリッドコンピューティング管理装置10に送る(ステップSt4)。グリッドコンピューティング管理装置10は、ステップSt4で送られた通信強度のデータに基づいて、基地局/管理サーバ20と車載端末A1との間の通信状況(例えば、通信強度)を判定する(ステップSt5)。更に、グリッドコンピューティング管理装置10は、ステップSt4で送られた通信量のデータに基づいて、基地局/管理サーバ20の現在の(言い換えると、ステップSt5の時点)の通信量を判定する(ステップSt5)。ここでは、グリッドコンピューティング管理装置10は、通信強度(例えば、RSSI)が第1閾値未満である、或いは、通信強度(例えば、RSSI)が第1閾値以上であるが現在の通信量が「上限」である、と判定している。
【0066】
グリッドコンピューティング管理装置10は、ステップSt5の判定に基づき、車載端末A1が実行すべき処理に必要な車載端末A1用の処理用データの送信経路を決定し、その送信経路を示すデータを基地局/管理サーバ20に送る(ステップSt6a1)。基地局/管理サーバ20は、ステップSt6a1で送られた送信経路を示すデータに基づき、メモリ21に保存している車載端末A1用の処理用データを、セルラ通信で車載端末A1に送る(ステップSt7a)。また、グリッドコンピューティング管理装置10は、次の条件をすべて満たす車載端末を選定する(ステップSt11)。条件とは、具体的には、(1)基地局/管理サーバ20との間のセルラ通信の通信強度が「良」(通信強度(例えば、RSSI)が第1閾値以上)である、(2)車載端末A1との間のV2V通信の通信強度が「良」(通信強度(例えば、RSSI)が所定閾値以上)である、(3)処理用プログラムを既に基地局/管理サーバ20からダウンロード済み、の3条件である。グリッドコンピューティング管理装置10は、例えば、車両群51を形成している車両C2の車載端末A2が上述した3条件をすべて満たすと判定する(ステップSt11)。
【0067】
グリッドコンピューティング管理装置10は、ステップSt11の判定に基づき、車載端末A1が実行すべき処理に必要な処理用プログラムの送信経路を決定し、その送信経路を示すデータを基地局/管理サーバ20に送る(ステップSt6a2)。基地局/管理サーバ20は、ステップSt6a2で送られた送信経路を示すデータに基づき、メモリ21に保存している処理用プログラムを、ステップSt11により判定(選定)された車載端末A2にセルラ通信で送る(ステップSt12)。車載端末A2は、ステップSt12で基地局/管理サーバ20から送られた命令にしたがい、車載端末A1に処理用プログラムをV2V通信で送信する(ステップSt13)。車載端末A1は、ステップSt13で車載端末A2からV2V通信で送られた処理用プログラムとステップSt7aで基地局/管理サーバ20からセルラ通信で送られた車載端末A1用の処理用データとを用いて、グリッドコンピューティングの処理(計算処理)を実行する(ステップSt5)。
【0068】
車載端末A1は、ステップSt5の処理結果のデータを、V2V通信で車載端末A2に送る(ステップSt14)。車載端末A2は、ステップSt14でV2V通信で車載端末A1から送られた処理結果のデータを、セルラ通信で基地局/管理サーバ20に送る(ステップSt10a)。
【0069】
5-3.経路パターンP3
図7Aに示すように、経路パターンP3の動作シーケンスを説明するにあたり、基地局/管理サーバ20は、グリッドコンピューティング管理装置10が設定した同一方向に走行中の車両群51を形成する車両C2の車載端末A2との間で無線通信(セルラ通信)を行えている。しかし、基地局/管理サーバ20は、グリッドコンピューティング管理装置10が設定した車両群51を形成する車両C1の車載端末A1との間では無線通信(セルラ通信)を行えていない(つまり、通信途絶状態)とする(
図4参照)。
図7Bの車載端末A1は
図7Aの車両C1の車載端末であり、
図7Bの車載端末A2は
図7Aの車両C2の車載端末である。なお、
図7Bの処理の説明において、
図5B或いは
図6Bの処理と同一の処理については同一のステップ番号を付与して説明を簡略化或いは省略し、異なる内容について説明する。
【0070】
図7Bにおいて、基地局/管理サーバ20は、ステップSt2で通信リクエストを送信してもその応答(Ack)の受信をできず、車載端末A1からの通信データ(例えば、バルクデータ)も受信しない。基地局/管理サーバ20は、基地局/管理サーバ20と車載端末A1との間の通信強度、基地局/管理サーバ20の現在の通信量をそれぞれ示すデータをグリッドコンピューティング管理装置10に送る(ステップSt4)。これにより、グリッドコンピューティング管理装置10は、基地局/管理サーバ20と車載端末A1との間のセルラ通信の通信強度は「無」であって、車載端末A1との間ではセルラ通信を行うことができない(言い換えると、通信途絶状態)と判定する(ステップSt5)。
【0071】
グリッドコンピューティング管理装置10は、次の条件をすべて満たす車載端末を選定する(ステップSt11)。条件とは、具体的には、(1)基地局/管理サーバ20との間のセルラ通信の通信強度が「良」(通信強度(例えば、RSSI)が第1閾値以上)である、(2)車載端末A1との間のV2V通信の通信強度が「良」(通信強度(例えば、RSSI)が所定閾値以上)である、(3)処理用プログラムを既に基地局/管理サーバ20からダウンロード済み、の3条件である。グリッドコンピューティング管理装置10は、例えば、車両群51を形成している車両C2の車載端末A2が上述した3条件をすべて満たすと判定する(ステップSt11)。
【0072】
グリッドコンピューティング管理装置10は、ステップSt11の判定に基づき、車載端末A1が実行すべき処理に必要な処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データの両方の送信経路を決定し、その送信経路を示すデータを基地局/管理サーバ20に送る(ステップSt6a2)。基地局/管理サーバ20は、ステップSt6a2で送られた送信経路を示すデータに基づき、車載端末A1が実行すべき処理に必要な車載端末A1用の処理用データをメモリ21から取得し、セルラ通信で車載端末A2に送る(ステップSt7b)。続けて、基地局/管理サーバ20は、ステップSt11により判定(選定)された車載端末A2から車載端末A1に処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データの両方をV2V通信で送信するための命令(指示)を生成し、セルラ通信で車載端末A2に送る(ステップSt12b)。車載端末A2は、ステップSt12bで基地局/管理サーバ20から送られた命令にしたがい、車載端末A1に処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データをV2V通信で送信する(ステップSt13b)。車載端末A1は、ステップSt13bで車載端末A2からV2V通信で送られた処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データを用いて、グリッドコンピューティングの処理(計算処理)を実行する(ステップSt5)。
【0073】
車載端末A1は、ステップSt5の処理結果のデータを、V2V通信で車載端末A2に送る(ステップSt14)。車載端末A2は、ステップSt14でV2V通信で車載端末A1から送られた処理結果のデータを、セルラ通信で基地局/管理サーバ20に送る(ステップSt10a)。
【0074】
6.グリッドコンピューティング管理装置の動作手順
次に、
図8を参照して、本実施の形態に係るグリッドコンピューティング管理装置10の動作手順を説明する。
図8は、グリッドコンピューティング管理装置10の動作手順を時系列に示すフローチャートである。
図8に示す各処理は、主にグリッドコンピューティング管理装置10のプロセッサ11がメモリ12と協働することにより実行される。
【0075】
図8において、プロセッサ11は、基地局/管理サーバ20の通信可能範囲内に存在している1台以上の車載端末A1(例えば、
図1に示す車両C1の車載端末)との間で無線接続の要求を基地局/管理サーバ20から送るように指示する(ステップSt21)。基地局/管理サーバ20は、この指示を受けて、基地局/管理サーバ20の通信可能範囲内に存在している1台以上の車載端末A1(例えば、
図1に示す車両C1の車載端末)との間で無線接続の要求を行う。
【0076】
プロセッサ11は、ステップSt21で送った要求に対する車載端末A1からの応答(Ack)を基地局/管理サーバ20を介して取得したとする(ステップSt22、YES)。プロセッサ11は、基地局/管理サーバ20に無線接続の確立を指示する。基地局/管理サーバ20は、この指示を受けて、車載端末A1との間の無線接続を確立する。プロセッサ11は、基地局/管理サーバ20と車載端末A1との間の通信強度を判定する(ステップSt23)。プロセッサ11は、ステップSt23で判定した通信強度が「良」であると判定した場合(ステップSt24、良)、基地局/管理サーバ20の現在の通信量を判定する(ステップSt25)。プロセッサ11は、ステップSt25で判定した通信量が「通常」であると判定した場合(ステップSt26、通常)、経路パターンP1(
図4参照)に切り替えるか、経路パターンP1(
図4参照)の設定を維持する。プロセッサ11は、経路パターンP1に基づいて、処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データの両方を、ステップSt22で確立した無線接続に基づくセルラ通信で基地局/管理サーバ20から車載端末30に送るように基地局/管理サーバ20に指示する(ステップSt27)。基地局/管理サーバ20は、この指示を受けて、メモリ21に保存している処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データの両方をセルラ通信で車載端末A1に送る。ステップSt27の後、
図8に示すプロセッサ11の処理は終了する。
【0077】
一方、プロセッサ11は、ステップSt23で判定した通信強度が「悪」であると判定した場合(ステップSt24、悪)、或いは、ステップSt25で判定した通信量が「上限」であると判定した場合(ステップSt26、上限)、経路パターンP2(
図4参照)に切り替えるか、経路パターンP2(
図4参照)の設定を維持する。プロセッサ11は、経路パターンP2(
図4参照)に基づいて、ステップSt22で確立した無線接続に基づくセルラ通信で車載端末A1用の処理用データを基地局/管理サーバ20から車載端末A1に送るように基地局/管理サーバ20に指示する(ステップSt28)。基地局/管理サーバ20は、この指示を受けて、メモリ21に保存している車載端末A1用の処理用データをセルラ通信で車載端末A1に送る。更に、プロセッサ11は、車両C1の車載端末A1との間で通信強度が「良」であって、車載端末A1との間のV2V通信の通信強度が所定閾値以上であって、処理用プログラムのダウンロードが済んでいる、という条件を満たす車載端末(例えば、車両C2の車載端末A2)を選定する(ステップSt28)。プロセッサ11は、ステップSt28で条件を満たす車載端末A2が存在すると判定した場合(ステップSt29、YES)、ステップSt28で選定した車載端末A2に、V2V通信で車載端末A1に処理用プログラムを送るための命令を送るように基地局/管理サーバ20に指示する(ステップSt30)。基地局/管理サーバ20は、この指示を受けて、車載端末A1に処理用プログラムを送るための命令を車載端末A2にセルラ通信で送る。車載端末A2は、この命令に基づいて、自機が保持している処理用プログラムを、V2V通信で車載端末A1に送る。
【0078】
プロセッサ11は、ステップSt28において条件を満たす車載端末が存在しないと判定した場合(ステップSt29、NO)、通信経路の確立が失敗したと判定する(ステップSt31)。プロセッサ11は、ステップSt31で判定した失敗に基づき、その通信経路の確立を試行する回数(リトライ回数)が所定値n未満であると判定した場合(ステップSt32、リトライ回数<n)、ステップSt21の処理を行い通信経路の確立の処理を繰り返す。一方、プロセッサ11は、ステップSt31で判定した失敗に基づき、その通信経路の確立を試行する回数(リトライ回数)が所定値n以上であると判定した場合(ステップSt32、リトライ回数≧n)、通信経路の確立の処理を停止し、
図8に示すプロセッサ11の処理は終了する。この場合、例えば、一定時間の経過後に、プロセッサ11は、ステップSt21以降の処理を開始すればよい。
【0079】
また、プロセッサ11は、ステップSt21で送った要求に対する車載端末A1からの応答(Ack)を基地局/管理サーバ20を介して取得できなかった場合(ステップSt22、NO)、基地局/管理サーバ20と車載端末A1との間の通信が途絶していると判定する(ステップSt33)。更に、プロセッサ11は、車両C1の車載端末A1との間で通信強度が「良」であって、車載端末A1との間のV2V通信の通信強度が所定閾値以上であって、処理用プログラムのダウンロードが済んでいる、車載端末A1用の処理用データを保持している、という条件を満たす車載端末(例えば、車両C2の車載端末A2)を選定する(ステップSt33)。プロセッサ11は、ステップSt33で条件を満たす車載端末A2が存在すると判定した場合(ステップSt34、YES)、ステップSt33で選定した車載端末A2に、V2V通信で車載端末A1に処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データを送るための命令を送るように基地局/管理サーバ20に指示する(ステップSt35)。基地局/管理サーバ20は、この指示を受けて、車載端末A1に処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データの両方を送るための命令を車載端末A2にセルラ通信で送る。車載端末A2は、この命令に基づいて、自機が保持している処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データの両方を、V2V通信で車載端末A1に送る。ステップSt35の後、
図8に示すプロセッサ11の処理は終了する。
【0080】
一方、プロセッサ11は、ステップSt34において条件を満たす車載端末が存在しないと判定した場合(ステップSt34、NO)、通信経路の確立が失敗したと判定する(ステップSt31)。以降の処理は上述した通りであるため、説明を省略する。
【0081】
(実施の形態1の変形例)
実施の形態1に係るグリッドコンピューティングシステム100では、グリッドコンピューティング管理装置10は基地局/管理サーバ20の設置箇所に据え置かれて配置されていた。つまり、グリッドコンピューティング管理装置10は、移動することは想定されていない。実施の形態1の変形例に係るグリッドコンピューティングシステム100Aでは、グリッドコンピューティング管理装置は移動体(例えば、車両)内に設けられる例を説明する。
【0082】
グリッドコンピューティングシステム100Aは、複数台の移動体のそれぞれに設けられる車載端末とグリッドコンピューティング管理装置10Aと基地局/管理サーバ20とが協調してグリッドコンピューティングシステムを形成する。グリッドコンピューティングシステム100Aは、グリッドコンピューティング管理装置10Aと、基地局/管理サーバ20と、複数の車載端末30n、30m(
図9参照)と、を含む。グリッドコンピューティング管理装置10Aと1台の車載端末30nとは1台の車両Cn内に配置される(
図9参照)。
【0083】
7.グリッドコンピューティング管理装置の詳細な構成例
まず、
図9を参照して、実施の形態1の変形例に係るグリッドコンピューティング管理装置10Aの構成例を説明する。
図9は、実施の形態1の変形例に係るグリッドコンピューティング管理装置10Aのハードウェア構成例を示すブロック図である。グリッドコンピューティング管理装置10Aの説明において、
図2に示す構成と同一の構成には同一の符号を付与して説明を簡略化或いは省略し、異なる内容について説明する。
【0084】
図9に示すように、1台の車両Cnには、グリッドコンピューティング管理装置10Aと車載端末30nとが設けられる。また、車両Cn以外の1台以上の車両Cmのそれぞれには、1台の車載端末30mが設けられる。車載端末30n、30mのそれぞれの構成は
図3に示す車載端末30と同一であるため、説明は省略する。基地局/管理サーバ20と車載端末30mとは、実施の形態1と同様に、ネットワークNW1を介して無線通信可能に接続されている。
図9において、車載端末30m及び車両Cmの組み合わせは2以上であってよい。
【0085】
グリッドコンピューティング管理装置10Aは、プロセッサ11Aと、メモリ12と、通信インターフェース13Aと、を少なくとも含む。
図9では、インターフェースを「I/F」と略記している。グリッドコンピューティング管理装置10Aは、実施の形態1と異なり車両Cnの走行に伴って移動する。このため、実施の形態1の変形例では、車両Cnの車載端末30nが、基地局/管理サーバ20との間で、ネットワークNW1を介して無線通信可能に接続されている。
【0086】
通信強度取得部111は、基地局/管理サーバ20からの通信データ(例えば、所定桁ビットのバルクデータ)を車載端末30nが受信した時の通信強度(例えば、RSSI等の受信電界強度)の値を、車載端末30n及び通信インターフェース13Aを介して入力して取得する。
【0087】
車載端末情報取得部112は、車載端末30nからの車載端末情報のデータを通信インターフェース13Aを介して取得したり、他の車載端末30mからの車載端末情報のデータを、基地局/管理サーバ20、車載端末30n及び通信インターフェース13Aを介して入力して取得したりする。
【0088】
通信量取得部113は、車載端末30nの通信量のデータを、通信インターフェース13Aを介して入力して取得する。
【0089】
処理依頼内容管理部117は、基地局/管理サーバ20により割り当てられたグリッドコンピューティングシステム100において実行するべき処理の依頼内容を示すデータを、基地局/管理サーバ20、車載端末30n及び通信インターフェース13を介して入力して取得する。
【0090】
プロセッサ11Aのデータ送信制御部119は、車載端末30nとの間でデータの入出力を行う。ここで入出力されるデータには、例えば、通信経路切替部118が決定した処理用プログラム及び処理用データの送信経路を示すデータが該当するが、これらに限定されなくてよい。
【0091】
8.経路パターンごとの動作概要と動作シーケンス
次に、
図10、
図11及び
図12を参照して、実施の形態1の変形例に係る経路パターンP1、P2、P3に応じた動作シーケンスを説明する。
図10は、実施の形態1の変形例の経路パターンP1に係るグリッドコンピューティングシステム100Aの動作手順例を時系列に示すシーケンス図である。
図11は、実施の形態1の変形例の経路パターンP2に係るグリッドコンピューティングシステム100Aの動作手順例を時系列に示すシーケンス図である。
図12は、実施の形態1の変形例の経路パターンP3に係るグリッドコンピューティングシステム100Aの動作手順例を時系列に示すシーケンス図である。なお、
図10の処理の説明において、
図5Bの処理と同一の処理については同一のステップ番号を付与して説明を簡略化或いは省略し、異なる内容について説明する。また、
図10から
図12の説明において、車載端末A1は、グリッドコンピューティング管理装置10Aが配置されている車両Cn(
図9参照)に搭載されている車載端末30nと同一である。
図10、
図11及び
図12において、グリッドコンピューティング管理装置を「G管理装置」と略記している。
【0092】
8-1.経路パターンP1
経路パターンP1の動作シーケンスを説明するにあたり、基地局/管理サーバ20は、グリッドコンピューティング管理装置10Aが設定した同一方向に走行中の車両群51を形成する車両(車載端末A1)との間で、無線通信(セルラ通信)を良好に行っているとする(
図4参照)。
図10の説明は、車載端末A1とグリッドコンピューティング管理装置10Aと基地局/管理サーバ20との間の動作シーケンスを例示している。車載端末A1は、
図9の車載端末30nに相当し、
図3に示す車載端末30と同一の構成を備えている。
【0093】
図10において、グリッドコンピューティング管理装置10Aは、基地局/管理サーバ20との間でセルラ通信を行うための通信リクエストを送信するための指示(通信リクエスト指示)を生成して車載端末A1に送る(ステップSt1c)。車載端末A1は、ステップSt1cで送られた通信リクエスト指示を受信し、その通信リクエスト指示に基づいて通信リクエストを生成して基地局/管理サーバ20に送る(ステップSt2c)。基地局/管理サーバ20は、ステップSt2cで車載端末A1から送られた通信リクエストの受信に基づいて、所定の通信データ(例えば、所定桁ビットのバルクデータ)を車載端末A1に送信する(ステップSt3c)。
【0094】
車載端末A1は、ステップSt3cで送られたバルクデータを受信し、この受信に基づいて基地局/管理サーバ20と車載端末A1との間の通信強度、車載端末A1の現在の通信量をそれぞれ示すデータをグリッドコンピューティング管理装置10Aに送る(ステップSt4c)。グリッドコンピューティング管理装置10Aは、ステップSt4cで送られた通信強度のデータに基づいて、基地局/管理サーバ20と車載端末A1との間の通信状況(例えば、通信強度)を判定する(ステップSt5c)。更に、グリッドコンピューティング管理装置10Aは、ステップSt4cで送られた通信量のデータに基づいて、車載端末A1の現在の(言い換えると、ステップSt5cの時点)の通信量を判定する(ステップSt5c)。ここでは、グリッドコンピューティング管理装置10Aは、通信強度(例えば、RSSI)が第1閾値以上であり、通信強度が「良」であると判定する。なお、
図10の例では、グリッドコンピューティング管理装置10Aは、現在の通信量は「通常」(つまり、上限値には十分に至っていない)と判定している。
【0095】
グリッドコンピューティング管理装置10Aは、ステップSt5cの判定に基づき、車載端末A1が実行すべき処理に必要な処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データの両方の送信経路を決定し、その送信経路を示すデータを車載端末A1に送る(ステップSt6c)。車載端末A1は、ステップSt6cで送られた送信経路を示すデータに基づき、基地局/管理サーバ20のメモリ21に保存している処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データの両方をセルラ通信で車載端末A1に送るように基地局/管理サーバ20にリクエストする(ステップSt7c1)。基地局/管理サーバ20は、ステップSt7c1で受けたリクエストに基づいて、メモリ21に保存している処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データの両方を、セルラ通信で車載端末A1に送る(ステップSt7c2)。車載端末A1は、ステップSt7c2で基地局/管理サーバ20から送られた処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データを用いて、グリッドコンピューティングの処理(計算処理)を実行する(ステップSt8)。
【0096】
車載端末A1は、基地局/管理サーバ20との間でセルラ通信を行うための通信リクエストを生成して基地局/管理サーバ20に送る(ステップSt9)。基地局/管理サーバ20は、ステップSt9で送られた通信リクエストを受信し、通信リクエストを受信した旨の応答(Ack)を返送したとする。これにより、車載端末A1は、基地局/管理サーバ20との間で通信状況が途絶していないことを認識できる。車載端末A1は、応答(Ack)の受信に基づいて、ステップSt8の処理結果のデータを、セルラ通信で基地局/管理サーバ20に送る(ステップSt10)。
【0097】
8-2.経路パターンP2
経路パターンP2の動作シーケンスを説明するにあたり、基地局/管理サーバ20は、グリッドコンピューティング管理装置10Aが設定した同一方向に走行中の車両群51を形成する車両(車載端末A2)との間で、無線通信(セルラ通信)を行えている。しかし、基地局/管理サーバ20は、グリッドコンピューティング管理装置10Aが設定した車両群51を形成する車両(車載端末A1)との間でも無線通信(セルラ通信)を行えているがその通信状況は良好ではないとする(
図4参照)。なお、
図11の処理の説明において、
図5B或いは
図10の処理と同一の処理については同一のステップ番号を付与して説明を簡略化或いは省略し、異なる内容について説明する。
【0098】
図11において、車載端末A1は、ステップSt3cで送られたバルクデータを受信し、この受信に基づいて基地局/管理サーバ20と車載端末A1との間の通信強度、車載端末A1の現在の通信量をそれぞれ示すデータをグリッドコンピューティング管理装置10Aに送る(ステップSt4c)。グリッドコンピューティング管理装置10Aは、ステップSt4cで送られた通信強度のデータに基づいて、基地局/管理サーバ20と車載端末A1との間の通信状況(例えば、通信強度)を判定する(ステップSt5c)。更に、グリッドコンピューティング管理装置10Aは、ステップSt4cで送られた通信量のデータに基づいて、基地局/管理サーバ20の現在の(言い換えると、ステップSt5cの時点)の通信量を判定する(ステップSt5c)。ここでは、グリッドコンピューティング管理装置10Aは、通信強度(例えば、RSSI)が第1閾値未満である、或いは、通信強度(例えば、RSSI)が第1閾値以上であるが現在の通信量が「上限」である、と判定している。
【0099】
グリッドコンピューティング管理装置10Aは、ステップSt5cの判定に基づき、車載端末A1が実行すべき処理に必要な車載端末A1用の処理用データの送信経路を決定し、その送信経路を示すデータを車載端末A1に送る(ステップSt6c1)。車載端末A1は、ステップSt6c1で送られた送信経路を示すデータに基づき、基地局/管理サーバ20のメモリ21に保存している車載端末A1用の処理用データを、セルラ通信で車載端末A1に送るように基地局/管理サーバ20に指示(リクエスト)する(ステップSt7d1)。基地局/管理サーバ20は、この指示を受けて、メモリ21に保存している車載端末A1用の処理用データを、セルラ通信で車載端末A1に送る(ステップSt7d2)。また、グリッドコンピューティング管理装置10Aは、次の条件をすべて満たす車載端末を選定する(ステップSt11)。条件とは、具体的には、(1)基地局/管理サーバ20との間のセルラ通信の通信強度が「良」(通信強度(例えば、RSSI)が第1閾値以上)である、(2)車載端末A1との間のV2V通信の通信強度が「良」(通信強度(例えば、RSSI)が所定閾値以上)である、(3)処理用プログラムを既に基地局/管理サーバ20からダウンロード済み、の3条件である。グリッドコンピューティング管理装置10Aは、例えば、車両群51を形成している車両C2の車載端末A2が上述した3条件をすべて満たすと判定する(ステップSt11)。
【0100】
グリッドコンピューティング管理装置10Aは、ステップSt11の判定に基づき、車載端末A1が実行すべき処理に必要な処理用プログラムの送信経路を決定し、その送信経路を示すデータを車載端末A1に送る(ステップSt6c2)。車載端末A1は、ステップSt6c2で送られた送信経路を示すデータに基づき、既にダウンロード済みの処理用プログラムを車載端末A1に送るための命令をV2V通信で車載端末A2に送る(ステップSt12d)。車載端末A2は、ステップSt12dで車載端末A1から送られた命令にしたがい、車載端末A1に処理用プログラムをV2V通信で送信する(ステップSt13d)。車載端末A1は、ステップSt13dで車載端末A2からV2V通信で送られた処理用プログラムとステップSt7d2で基地局/管理サーバ20からセルラ通信で送られた車載端末A1用の処理用データとを用いて、グリッドコンピューティングの処理(計算処理)を実行する(ステップSt5)。
【0101】
車載端末A1は、ステップSt5の処理結果のデータを、V2V通信で車載端末A2に送る(ステップSt14d)。車載端末A2は、ステップSt14dでV2V通信で車載端末A1から送られた処理結果のデータを、セルラ通信で基地局/管理サーバ20に送る(ステップSt10d)。
【0102】
8-3.経路パターンP3
経路パターンP3の動作シーケンスを説明するにあたり、基地局/管理サーバ20は、グリッドコンピューティング管理装置10Aが設定した同一方向に走行中の車両群51を形成する車両(車載端末A2)との間で無線通信(セルラ通信)を行えている。しかし、基地局/管理サーバ20は、グリッドコンピューティング管理装置10Aが設定した車両群51を形成する車両(車載端末A1)との間では無線通信(セルラ通信)を行えていない(つまり、通信途絶状態)とする(
図4参照)。なお、
図12の処理の説明において、
図5B、
図6B、
図10或いは
図11の処理と同一の処理については同一のステップ番号を付与して説明を簡略化或いは省略し、異なる内容について説明する。
【0103】
図12において、車載端末A1は、ステップSt2cで通信リクエストを送信してもその応答(Ack)の受信をできず、基地局/管理サーバ20からの通信データ(例えば、バルクデータ)も受信しない。車載端末A1は、基地局/管理サーバ20と車載端末A1との間の通信強度、車載端末A1の現在の通信量をそれぞれ示すデータをグリッドコンピューティング管理装置10Aに送る(ステップSt4c)。これにより、グリッドコンピューティング管理装置10Aは、基地局/管理サーバ20と車載端末A1との間のセルラ通信の通信強度は「無」であって、基地局/管理サーバ20との間ではセルラ通信を行うことができない(言い換えると、通信途絶状態)と判定する(ステップSt5c)。
【0104】
グリッドコンピューティング管理装置10Aは、次の条件をすべて満たす車載端末を選定する(ステップSt11)。条件とは、具体的には、(1)基地局/管理サーバ20との間のセルラ通信の通信強度が「良」(通信強度(例えば、RSSI)が第1閾値以上)である、(2)車載端末A1との間のV2V通信の通信強度が「良」(通信強度(例えば、RSSI)が所定閾値以上)である、(3)処理用プログラムを既に基地局/管理サーバ20からダウンロード済み、の3条件である。グリッドコンピューティング管理装置10Aは、例えば、車両群51を形成している車両C2の車載端末A2が上述した3条件をすべて満たすと判定する(ステップSt11)。
【0105】
グリッドコンピューティング管理装置10Aは、ステップSt11の判定に基づき、車載端末A1が実行すべき処理に必要な処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データの両方の送信経路を決定し、その送信経路を示すデータを車載端末A1に送る(ステップSt6c2)。車載端末A1は、ステップSt6c2で送られた送信経路を示すデータに基づき、車載端末A1が実行すべき処理に必要な処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データの両方を車載端末A1に送るための命令をV2V通信で車載端末A2に送る(ステップSt12e1)。車載端末A2は、ステップSt12e1で車載端末A1から送られた命令にしたがい、車載端末A1用の処理用データを基地局/管理サーバ20にセルラ通信でリクエストする(ステップSt12e2)。基地局/管理サーバ20は、ステップSt12e2で車載端末A2から送られたリクエストにしたがい、メモリ21に保存している車載端末A1用の処理用データをセルラ通信で車載端末A2に送る(ステップSt12e3)。車載端末A2は、既にダウンロード済みの処理用プログラムとステップSt12e3で基地局/管理サーバ20から送られた車載端末A1用の処理用データとをV2V通信で車載端末A1に送信する(ステップSt13e)。車載端末A1は、ステップSt13eで車載端末A2からV2V通信で送られた処理用プログラム及び車載端末A1用の処理用データを用いて、グリッドコンピューティングの処理(計算処理)を実行する(ステップSt5)。
【0106】
車載端末A1は、ステップSt5の処理結果のデータを、V2V通信で車載端末A2に送る(ステップSt14d)。車載端末A2は、ステップSt14dでV2V通信で車載端末A1から送られた処理結果のデータを、セルラ通信で基地局/管理サーバ20に送る(ステップSt10d)。
【0107】
以上説明したように、本開示には以下に示す技術思想が開示されている。
【0108】
<技術1>
複数の車載端末(30)のそれぞれとの間でデータ通信可能であって車載端末によるグリッドコンピューティング処理の実行に必要なプログラム(処理用プログラム)及びデータ(処理用データ)を記憶する基地局/管理サーバ(20)、との間でデータ通信可能に接続する通信インターフェース(13)と、
プロセッサ(11)と、を備え、
プロセッサは、
複数の車載端末のうちいずれかである特定車載端末(例えば、車両C1の車載端末A1)と基地局/管理サーバとの間の通信状況を取得し、
通信状況に基づいて、プログラム及びデータのうち少なくとも1つの送信経路を切り替え、基地局/管理サーバから特定車載端末への送信を指示する、
グリッドコンピューティング管理装置(10)。
これにより、グリッドコンピューティング管理装置は、特定車載端末である移動端末(例えば、車両C1の車載端末A1)との間の通信状況に応じて、データ(例えば、グリッドコンピューティングシステム100において特定車載端末が実行すべき処理に必要な処理用プログラム及び処理用データのうち少なくとも1つ)の送信経路を適応的に切り替えることができる。
【0109】
<技術2>
プロセッサ(11)は、
通信状況が良好状態を示す第1条件(経路パターンP1の条件)を満たす場合、プログラム(処理用プログラム)及びデータ(処理用データ)の基地局/管理サーバ(20)から特定車載端末(例えば、車両C1の車載端末A1)への直接送信を指示する、
技術1に記載のグリッドコンピューティング管理装置(10)。
これにより、グリッドコンピューティング管理装置は、特定車載端末との間の通信状況が良好である場合には、その特定車載端末がグリッドコンピューティングシステムにおいて実行すべき処理に必要な処理用プログラム及び処理用データの両方をセルラ通信によって直接かつ高速に送信することができ、その処理を早期に車載端末に実行させることができる。
【0110】
<技術3>
通信状況は、基地局/管理サーバ(20)と特定車載端末(例えば、車両C1の車載端末A1)との間の通信強度と、基地局/管理サーバの通信量と、を有し、
プロセッサ(11)は、
通信強度が第1閾値以上かつ通信量が上限値未満である場合に、通信状況が第1条件を満たすと判定する、
技術1又は技術2に記載のグリッドコンピューティング管理装置(10)。
これにより、グリッドコンピューティング管理装置は、基地局/管理サーバと特定車載端末との間の通信強度及び基地局/管理サーバの通信量に基づいて通信状況を定量的に評価できる。したがって、グリッドコンピューティング管理装置は、通信強度が第1閾値以上かつ通信量が上限値未満であるという無線通信に十分なリソースを有している場合に、セルラ通信によって処理用プログラム及び処理用データを直接かつ高速に特定車載端末に送信できる。
【0111】
<技術4>
プロセッサ(11)は、
通信状況が通信し難い状態を示す第2条件(経路パターンP2の条件)を満たす場合、プログラム(処理用プログラム)及びデータ(処理用データ)のうち一方の基地局/管理サーバ(20)から特定車載端末(例えば、車両C1の車載端末A1)への直接送信を指示し、更に、複数の車載端末(30)のうち特定車載端末以外の車載端末であってかつ特定車載端末及び基地局/管理サーバ(20)の両方とデータ通信可能な車載端末である他車載端末を介した車車間通信(V2V通信)により、プログラム及びデータのうち他方の特定車載端末への送信を基地局/管理サーバに指示する、
技術1~技術3のうちいずれか一項に記載のグリッドコンピューティング管理装置(10)。
これにより、グリッドコンピューティング管理装置は、特定車載端末との間の通信状況が通信可能ではあるが良好ではない場合又はほぼ上限に達しそうである場合、その特定車載端末がグリッドコンピューティングシステムにおいて実行すべき処理に必要な処理用プログラム及び処理用データのうち一方だけをセルラ通信で直接かつ高速に特定車載端末(例えば、車両C1の車載端末A1)に送信できる。更に、グリッドコンピューティング管理装置は、その処理用プログラム及び処理用データのうち他方を、セルラ通信より低速となる他車載端末を介したV2V通信で送信できる。つまり、グリッドコンピューティング管理装置は、処理用プログラム及び処理用データを分散して目的の特定車載端末(例えば、車両C1の車載端末A1)に送ることができる。
【0112】
<技術5>
通信状況は、基地局/管理サーバ(20)と特定車載端末(例えば、車両C1の車載端末A1)との間の通信強度と、基地局/管理サーバの通信量と、を有し、
プロセッサ(11)は、
通信強度が第1閾値未満、或いは、通信強度が第1閾値以上かつ通信量が上限値である場合に、通信状況が第2条件を満たすと判定する、
技術1~技術4のうちいずれか一項に記載のグリッドコンピューティング管理装置(10)。
これにより、グリッドコンピューティング管理装置は、基地局/管理サーバと特定車載端末との間の通信強度及び基地局/管理サーバの通信量に基づいて通信状況を定量的に評価できる。したがって、グリッドコンピューティング管理装置は、通信強度が第1閾値未満、或いは、通信強度が第1閾値以上かつ通信量が上限値であるという無線通信に十分なリソースを有していない場合にはセルラ通信によって処理用プログラム及び処理用データのうち一方(例えば特定車載端末に固有の処理用データ)をセルラ通信によって直接かつ高速に特定車載端末に送信できる。また、グリッドコンピューティング管理装置は、車載端末で共用する処理用プログラムを、セルラ通信よりも低速であるV2V通信によって目的の特定車載端末(例えば、車両C1の車載端末A1)に送ることができる。
【0113】
<技術6>
プロセッサ(11)は、
通信状況が通信不可状態を示す第3条件(経路パターンP3)を満たす場合、複数の車載端末(30)のうち特定車載端末以外の車載端末であってかつ特定車載端末(例えば、車両C1の車載端末A1)及び基地局/管理サーバ(20)の両方とデータ通信可能な車載端末である他車載端末を介した車車間通信(V2V通信)により、プログラム(処理用プログラム)及びデータ(処理用データ)の特定車載端末への送信を基地局/管理サーバに指示する、
技術1~技術5のうちいずれか一項に記載のグリッドコンピューティング管理装置(10)。
これにより、グリッドコンピューティング管理装置は、特定車載端末との間の通信状況が通信不可な場合、セルラ通信より低速となる他車載端末を介したV2V通信によって、特定車載端末がグリッドコンピューティングシステムにおいて実行すべき処理に必要な処理用プログラム及び処理用データの両方を目的の特定車載端末(例えば、車両C1の車載端末A1)送信できる。
【0114】
<技術7>
通信状況は、基地局/管理サーバ(20)と特定車載端末(例えば、車両C1の車載端末A1)との間の通信強度を少なくとも有し、
プロセッサ(11)は、
通信強度が第2閾値未満である場合に、通信状況が第3条件を満たすと判定する、
技術1~技術6のうちいずれか一項に記載のグリッドコンピューティング管理装置(10)。
これにより、グリッドコンピューティング管理装置は、基地局/管理サーバと特定車載端末との間の通信強度に基づいて通信状況を定量的に評価できる。したがって、グリッドコンピューティング管理装置は、通信強度が第2閾値未満であるという無線通信(セルラ通信)が不可な場合には、セルラ通信よりも低速である他車載端末を介したV2V通信によって、処理用プログラム及び処理用データの両方を目的の特定車載端末(例えば、車両C1の車載端末A1)に送ることができる。
【0115】
<技術8>
プロセッサ(11)は、
複数の車載端末(30)の中で、複数の車載端末のうち特定車載端末以外の車載端末であって、特定車載端末(例えば、車両C1の車載端末A1)及び基地局/管理サーバ(20)の両方とデータ通信可能な車載端末であって、更に、特定車載端末を搭載する特定車両(C1)と同一方向に走行中の1台以上の他車両(C2)が搭載している車載端末を、他車載端末として選定する、
技術4又は技術6に記載のグリッドコンピューティング管理装置(10)。
これにより、グリッドコンピューティング管理装置は、特定車載端末との間の通信状況が通信可能ではあるが良好ではない場合又はほぼ上限に達しそうである場合、安心して目的の特定車載端末(例えば、車両C1の車載端末A1)に処理用プログラム及び処理用データを送ることができる。
【0116】
<技術9>
プロセッサ(11)は、
通信状況が第3閾値未満となった場合に、プログラム及びデータのうち少なくとも1つの送信経路の切り替え要否を判定し、その判定結果に基づいて送信経路を切り替える、
技術1~技術8のうちいずれか一項に記載のグリッドコンピューティング管理装置(10)。
これにより、グリッドコンピューティング管理装置は、通信状況が著しく悪化した若しくは通信が突然に途絶した等の変動が生じた場合に、目的の特定車載端末(例えば、車両C1の車載端末A1)に処理用プログラム及び処理用データをその時点で最適な送信経路で送信できるように送信経路を適応的に切り替えることができる。
【0117】
<技術10>
グリッドコンピューティング管理装置(10)は、複数の車載端末(30)のそれぞれとの間でデータ通信可能な基地局(基地局/管理サーバ20)側に配置されている、
技術1~技術9のうちいずれか一項に記載のグリッドコンピューティング管理装置(10)。
これにより、グリッドコンピューティング管理装置は、移動不能の固定局であり、固定局と移動する複数の車載端末のそれぞれとの間での通信状況に応じて、グリッドコンピューティングシステムにおいて実行すべき処理用プログラム及び処理用データの送信経路を適応的に切り替えできる。
【0118】
<技術11>
グリッドコンピューティング管理装置(10A)は、複数の車載端末(30)のうちいずれかの車載端末(30n)を搭載する車両(Cn)内に配置され、通信インターフェース(13)は、車両内に配置されている車載端末との間でデータ通信可能である、
技術1~技術9のうちいずれか一項に記載のグリッドコンピューティング管理装置(10A)。
これにより、グリッドコンピューティング管理装置は、移動可能な移動局であり、移動局と移動する複数の車載端末のそれぞれとの間での相対的な通信状況の変動に応じて、グリッドコンピューティングシステムにおいて実行すべき処理用プログラム及び処理用データの送信経路を適応的に切り替えできる。
【0119】
<技術12>
送信経路切替方法は、グリッドコンピューティング管理装置(10)により実行される送信経路切替方法であって、
複数の車載端末(30)のそれぞれとの間でデータ通信可能であってかつ車載端末によるグリッドコンピューティング処理の実行に必要なプログラム及びデータを記憶する基地局/管理サーバ(20)、との間でデータ通信可能に接続するステップと、
複数の車載端末のうちいずれかである特定車載端末(A1)と基地局/管理サーバとの間の通信状況を取得するステップと、
通信状況に基づいて、プログラム及びデータのうち少なくとも1つの送信経路を切り替え、基地局/管理サーバから特定車載端末への送信を指示するステップと、を有する、
送信経路切替方法。
これにより、グリッドコンピューティング管理装置は、特定車載端末である移動端末(例えば、車両C1の車載端末A1)との間の通信状況に応じて、データ(例えば、グリッドコンピューティングシステム100において特定車載端末が実行すべき処理に必要な処理用プログラム及び処理用データのうち少なくとも1つ)の送信経路を適応的に切り替えることができる。
【0120】
<技術13>
プログラムは、コンピュータであるグリッドコンピューティング管理装置(10)に、
複数の車載端末(30)のそれぞれとの間でデータ通信可能であってかつ車載端末によるグリッドコンピューティング処理の実行に必要なプログラム及びデータを記憶する基地局/管理サーバ(20)、との間でデータ通信可能に接続する処理と、
複数の車載端末のうちいずれかである特定車載端末(A1)と基地局/管理サーバとの間の通信状況を取得する処理と、
通信状況に基づいて、プログラム及びデータのうち少なくとも1つの送信経路を切り替え、基地局/管理サーバから特定車載端末への送信を指示する処理と、を実現させるための、
プログラム。
これにより、グリッドコンピューティング管理装置は、特定車載端末である移動端末(例えば、車両C1の車載端末A1)との間の通信状況に応じて、データ(例えば、グリッドコンピューティングシステム100において特定車載端末が実行すべき処理に必要な処理用プログラム及び処理用データのうち少なくとも1つ)の送信経路を適応的に切り替えることができる。
【0121】
以上、添付図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0122】
なお、上述した実施の形態において、グリッドコンピューティング管理装置10、10Aが処理用プログラム及び処理用データのうち少なくとも1つを目的の車載端末に送信している間に無線通信の通信状況が変化する可能性がある。このため、グリッドコンピューティング管理装置10、10Aは、処理用プログラム及び処理用データのうち少なくとも1つを送信する際には、細かく分割した上で送信し、どの分割部分の処理用プログラム及び処理用データまでを送信しているかを管理することが好ましい。これにより、グリッドコンピューティング管理装置10、10Aは、通信状況が悪化して送信を中断せざるを得なかった場合でも、処理用プログラム及び処理用データの送信を途中から再開することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本開示は、移動端末との間の通信状況に応じてデータの送信経路を適応的に切り替えるグリッドコンピューティング管理装置、グリッドコンピューティング管理方法及びプログラムとして有用である。
【符号の説明】
【0124】
10 グリッドコンピューティング管理装置
11 プロセッサ
12 メモリ
13 通信インターフェース
20 基地局/管理サーバ
30、30a 車載端末
31 データ格納部
32 セルラ通信部
33 V2V通信部
34 通信強度取得部
35 車載端末情報取得部
111 通信強度取得部
112 車載端末情報取得部
113 通信量取得部
114 通信強度判定部
115 車載端末情報管理部
116 通信量判定部
117 処理依頼内容管理部
118 通信経路切替部
119 データ送信制御部
NW1、NW2 ネットワーク