(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141978
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】めっき物の製造方法及びめっき物
(51)【国際特許分類】
C23C 18/20 20060101AFI20241003BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20241003BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20241003BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20241003BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20241003BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20241003BHJP
C23C 18/28 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C23C18/20 Z
C09D5/00 D
C09D163/00
C09D7/65
C09D7/61
H05K3/18 A
C23C18/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053894
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】関谷 美穂
(72)【発明者】
【氏名】瀧 雅彦
【テーマコード(参考)】
4J038
4K022
5E343
【Fターム(参考)】
4J038DB001
4J038PA07
4J038PB09
4J038PC08
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5E343AA16
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5E343GG20
(57)【要約】
【課題】本発明は、めっき析出性を担保するために、具体的な熱処理温度を設け、めっき析出性及び密着性を両立できるめっき物の製造方法及び該方法により製造されるめっき物を提供することを目的とする。
【解決手段】めっき物は基板上にめっき下地塗料を塗布してめっき下地層を形成する工程1、めっき下地層を熱処理温度T
Aにより熱処理する工程2、無電解めっき又は無電解めっきと電解めっきにより金属めっき膜を形成する工程3、及び金属めっき膜を熱処理温度T
Bにより熱処理し、めっき物が得られる工程4を含むめっき物の製造方法により製造される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にめっき下地塗料を塗布してめっき下地層を形成する工程1、
めっき下地層を熱処理温度TAにより熱処理する工程2、
無電解めっき又は無電解めっきと電解めっきにより金属めっき膜を基板上に形成する工程3、及び
金属めっき膜を熱処理温度TBにより熱処理し、金属めっき膜を有するめっき物が得られる工程4を含むめっき物の製造方法であって、
前記めっき下地塗料は、エポキシ樹脂、導電性高分子、無機系フィラー及び溶媒を含み、前記導電性高分子と前記エポキシ樹脂は質量比で1:8~1:46の割合であり、
前記熱処理温度TAは、溶剤が揮発する温度とめっき下地層の触媒吸着性が低下する温度との間にあり、
前記熱処理温度TBは、エポキシ樹脂が硬化する温度と銅害が発生する温度との間にあることを特徴とするめっき物の製造方法。
【請求項2】
前記めっき下地塗料において、エポキシ樹脂1質量部に対して、前記無機系フィラーが0.3~1.0質量部が含まれる、請求項1に記載のめっき物の製造方法。
【請求項3】
前記導電性高分子と前記エポキシ樹脂は質量比で1:9~1:14の割合である、請求項1に記載のめっき物の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理温度TAは、80℃~140℃であり、前記熱処理温度TBは120℃~150℃である、請求項1に記載のめっき物の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4に記載されるめっき物の製造方法により製造されるめっき物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温環境下に曝されても基材と金属めっき層との密着性に優れ、且つ、めっき析出性にも優れるめっき物の製造方法及び該方法により製造されるめっき物に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な基材へめっき処理して得られるめっき物が、実用される際にめっき層が効果を実現するために使用環境や目的に耐えられ、基材から剥離しない必要がある。めっき密着性がめっき処理方法を検討する際に最も重要な検討事項である。
【0003】
熱負荷後においても高い密着性を有する、ポリイミド樹脂フィルムの表面に銅箔を積層しためっき物(フレキシブルプリント基板)が報告されている。特開2004-79660号公報(特許文献1)は、ポリイミド樹脂フィルムの表面にニッケル又はニッケル合金を無電解めっきし、該めっき層の表面に銅を電気めっきすることにより、熱負荷後においても高い密着性を有するめっき物(フレキシブルプリント基板)を開示する。
上記めっき物は、ニッケル等の無電解めっき層の接着力、延いてはその無電解めっき層の表面に形成される銅めっき層の接着力を物理的に(粗化によるアンカー効果)及び化学的に(官能基への結合)高めるために、基材となるポリイミド樹脂フィルムを、初めにプラズマ処理し、続いてアルカリ金属水酸化物で活性化する必要があった。
【0004】
また、特開昭59-129489号公報(特許文献2)のプリント配線用基板めっき方法には、ポリイミド樹脂を不完全に硬化させる手順及び完全に硬化させる手順を分けることにより、無電化めっきのめっき密着強度を向上させる方法が記載された。
【0005】
ところで、国際公開WO2015/019596(特許文献3)の無電解めっき下地膜形成用組成物には、導電性高分子とエポキシ樹脂を含んだ下地塗料を基材に塗工して、めっき下地塗料を形成し、その後に無電解めっきをすることで、金属めっき膜を形成する技術が知られている。
しかし、“めっき物”を作る際に、めっき下地塗料を硬化させる為に高熱で処理をする場合があり、処理後の“めっき下地塗料(層)”には、金属皮膜の析出する性能、即ちめっき析出性が低下する問題が生じている。
また、“めっき下地塗料(層)”のめっき析出性が低下すると、高精度な微細パターンをめっき処理する際にめっきが綺麗に析出せず、抵抗値上昇や断線といった不具合が発生する。
【0006】
一方で、めっき析出性を担保する為に低温で熱処理を行うと、必要とされる密着性を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-79660号公報
【特許文献2】特開昭59-129489号公報
【特許文献3】国際公開WO2015/019596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、めっき析出性を担保するために、具体的な熱処理温度を設け、めっき析出性及び密着性を両立できる無電解めっき下地層の硬化プロセス及び該プロセスにより製造さ
れるめっき物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものである。すなわち本発明は以下を包含する。
本発明の第1形態は、基板上にめっき下地塗料を塗布してめっき下地層を形成する工程1、めっき下地層を熱処理温度TAにより熱処理する工程2、無電解めっき又は無電解めっきと電解めっきにより金属めっき膜を基板上に形成する工程3、及び金属めっき膜を熱処理温度TBにより熱処理し、金属めっき膜を有するめっき物が得られる工程4を含むめっき物の製造方法であって、前記めっき下地塗料は、エポキシ樹脂、導電性高分子、無機系フィラー及び溶媒を含み、前記導電性高分子と前記エポキシ樹脂は質量比で1:8~1:46の割合であり、前記熱処理温度TAは、溶剤が揮発する温度とめっき下地層の触媒吸着性が低下する温度との間にあり、前記熱処理温度TBは、エポキシ樹脂が硬化する温度と銅害が発生する温度との間にあることを特徴とするめっき物の製造方法に関する。
本発明の第2形態は、前記めっき下地塗料において、エポキシ樹脂1質量部に対して、前記無機系フィラーが0.3~1.0質量部が含まれる、第1形態に記載のめっき物の製造方法に関する。
本発明の第3形態は、前記導電性高分子と前記エポキシ樹脂は質量比で1:9~1:14の割合である、第1形態に記載のめっき物の製造方法に関する。
本発明の第4形態は、前記熱処理温度TAは、80℃~140℃であり、前記熱処理温度TBは120℃~150℃である、第1形態に記載のめっき物の製造方法に関する。
本発明の第5形態は第1形態乃至第4形態に記載されるめっき物の製造方法により製造されるめっき物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明より、高温環境下に曝されても基材と金属めっき層との高い密着性を奏すると共に、めっき析出性にも優れるめっき物の製造方法及び該方法より製造されるめっき物が提供される。
具体的には、めっき析出性として、例えば配線の幅が100μm以上連続したパターンが密集している密部も確実にめっきできる性能が達成され、また、ピール強度0.35N/mm以上の密着性が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、密部、疎部、細線部を含むパターン状を有するめっき物を対象とするめっき析出性の判断基準である。目視観察にて、密部、疎部、細線部それぞれ欠落部がなければOK、欠落部があればNGと判断する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<めっき下地塗料>
本発明は、無電解めっき法により金属めっき膜を形成可能なめっき下地塗料を使用し、当該めっき下地塗料は、導電性又は還元性の高分子微粒子と合成樹脂と無機系フィラーとを含む。
以下、めっき下地塗料の各成分の詳細を説明する。
【0013】
(導電性又は還元性の高分子微粒子)
本発明の還元性の高分子微粒子は、0.01S/cm未満、好ましくは0.005S/cm以下の導電率を有するπ-共役二重結合を有する高分子であれば特に限定されないが、例えば、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及びそれらの各種誘導体が挙げられ、好ましくは、ポリピロールが挙げられる。
還元性高分子微粒子は、π-共役二重結合を有するモノマーから合成して使用する事が
できるが、市販で入手できる還元性高分子微粒子を使用することもできる。
還元性高分子微粒子は、有機溶媒に分散された分散液として使用されるが、該還元性高分子微粒子は、分散液中における分散安定性を維持するために、固形分として該分散液の質量の16質量%以下(固形分比)となるようにする。
還元性高分子微粒子を分散する有機溶媒としては、例えば、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、トルエン等の芳香族溶媒、メチルエチルケトン等のケトン類、シクロヘキサン等の環状飽和炭化水素類、n-オクタン等の鎖状飽和炭化水素類、メタノール、エタノール、n-オクタノール等の鎖状飽和アルコール類、安息香酸メチル等の芳香族エステル類、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル類及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0014】
本発明の導電性高分子微粒子としては、導電性を有するπ-共役二重結合を有する高分子であれば特に限定されないが、例えば、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン及びそれらの各種誘導体が挙げられ、好ましくは、ポリピロールが挙げられる。
導電性高分子微粒子は、π-共役二重結合を有するモノマーから合成して使用する事ができるが、市販で入手できる導電性高分子微粒子を使用することもできる。
導電性高分子微粒子は、有機溶媒に分散された分散液として使用されるが、該導電性高分子微粒子は、分散液中における分散安定性を維持するために、固形分として該分散液の質量の16質量%以下(固形分比)となるようにする。
導電性高分子微粒子を分散する有機溶媒としては、還元性高分子微粒子を分散する有機溶媒と同様のものを用いることができる。
【0015】
(合成樹脂)
本発明の合成樹脂は、エポキシ当量が875~9200のエポキシ樹脂である。
エポキシ樹脂としては、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであればよく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、これら樹脂に変性を加えたエポキシ樹脂等の、各種エポキシ樹脂を使用することができる。また、これらは1種のみでも2種以上の混合体としても使用することができる。
【0016】
また、エポキシ当量が875未満のエポキシ樹脂の場合、触媒金属が吸着し難くなり、結果、金属めっき膜が得られ難い、すなわち、めっき析出性に劣る。加えて、金属めっき膜が得られたとしても、ポリピロール微粒子と、エポキシ当量875未満のエポキシ樹脂とでは、エポキシ樹脂の架橋が不十分になりやすく、高熱環境下に曝されると、酸化された銅(酸化銅)及び銅が塗膜層を通過しながら拡散して基材まで到達し、高い密着性、具体的には180度ピール強度が0.35N/mm以上のものが得られないものと推測される。
エポキシ当量が9200越えのエポキシ樹脂の場合、高熱環境下に曝されて密着性の低下はないが、塗料化できない虞がある。
【0017】
細線印刷用塗料の観点からは、エポキシ当量が2400~8500であることがより好ましい。
なお、ここでいう当量とは、分子量(Mw)を官能基数(n)で割ったものであり、当量[g/eq]=Mw/nを意味する。
【0018】
(無機性フィラー)
本発明の無機性フィラーは、酸化チタン(チタニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)及び酸化ケイ素(シリカ)等の金属酸化物の粉末が使用でき、親水性を有するものである
。
一般的に、金属酸化物の無機系フィラーは表面に親水基が存在することが多く、親水性を示す。この親水基のほぼ全てが、表面疎水化処理によってアルキル基やアミノ基などの疎水基に置換されたものを疎水性の無機系フィラーと称しており、表面疎水化処理されていない親水性の無機フィラーと区別されている。したがって、本発明の親水性の無機系フィラーとは、表面疎水化処理されていないものである。なお、本発明の効果を損ねなければ、親水性の無機系フィラーに疎水性の無機系フィラーが混在するものを用いてもよい。
特に、親水基を多く含み、粒子径の調整がしやすいことから、シリカ粒子が好ましい。これは、めっき下地層の表面における親水基の存在割合が高いと、触媒金属の吸着量を増加させることができ、めっき析出性に優れるためである。
【0019】
本発明において、無機系フィラーの平均一次粒子径は、1nm~5μmが好ましく、1nm~1μmがより好ましい。
無機系フィラーの平均一次粒子径が小さい、すなわち比表面積が大きいほど、塗膜の表面積が増し触媒金属の吸着量が増加するため、めっき析出性を向上させることができる。
ただし、平均一次粒子径が1nm未満の場合、少量の添加でも塗料中のフィラー密度が高くなり塗料の初期粘度を増加させやすいが、めっき析出性を向上させるにはある程度の添加量が必要であり、そうすると粘度が増加しすぎて印刷自体が困難になってしまう。
また、平均一次粒子径が1μmを超える場合、フィラー表面と接する塗料の割合が減少しフィラーの膨潤が不十分となり、塗料の初期粘度が増加し難い傾向にある。そのため、各種印刷法に適した粘度に調整が難しく、微細パターンの印刷がさらに困難となってしまう。
なお、平均一次粒子径は、一般的な走査型電子顕微鏡を用いて50,000倍で無機粒子を撮影した後、その写真図中の無機粒子について、無作為に50個以上の粒子径を測定してその平均を求めた値である。
【0020】
本発明のめっき下地塗料において、合成樹脂(エポキシ樹脂)と無機系フィラーとの質量比は、エポキシ樹脂:無機系フィラー=1:0.3~1.0である。
エポキシ樹脂1質量部に対して、無機系フィラーが1.0質量部を超えると、エポキシ樹脂の架橋が不十分となり、基材と金属めっき膜との層間での剥離が起こりやすい。また、無機系フィラーが0.3質量部未満だと、塗膜の表面積が増大せず、触媒金属の吸着量を増加させる効果が不十分となりめっき析出性が低下する。
なお、連続印刷用塗料の観点からは、無機系フィラーが0.3~0.6であり、即ちエポキシ樹脂:無機系フィラー=1:0.3~0.6であることがより好ましい。
【0021】
本発明のめっき下地塗料において、還元性又は導電性の高分子微粒子とエポキシ樹脂の質量比は、高分子微粒子:エポキシ樹脂=1:8~1:46である。
還元性又は導電性の高分子微粒子1質量部に対して、エポキシ樹脂が46質量部を超えると、触媒金属が付着できる還元性又は導電性の高分子微粒子の割合が減ることとなり、めっき析出性が低下する。
また、エポキシ樹脂が8質量部未満であると、塗料中で還元性又は導電性の高分子微粒子の自己凝集が促進され、経時での増粘性の抑制が困難となる。加えて、エポキシ樹脂の架橋が不十分となり、基材と金属めっき膜との層間での剥離が起こりやすい。
尚、めっき析出速度の観点からは、還元性又は導電性の高分子微粒子1質量部に対して、エポキシ樹脂が9~14質量部であることが好ましい。
【0022】
(溶媒)
本発明のめっき下地塗料には、導電性又は還元性の高分子微粒子とエポキシ樹脂と無機系フィラーに加えて、溶媒を含み得る。
上記溶媒としては、エポキシ樹脂を溶解することができるものであれば特に限定されな
いが、基材を大きく溶解するものは好ましくない。但し、基材を大きく溶解する溶媒であっても、他の低溶解性の溶媒と混合することにより、溶解性を低下させて使用することが可能である。
上記溶媒としては、例えば、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、トルエン、ベンジルアルコール等の芳香族溶媒、メチルエチルケトン等のケトン類、シクロヘキサン等の環状飽和炭化水素類、n-オクタン等の鎖状飽和炭化水素類、メタノール、エタノール、n-オクタノール等の鎖状飽和アルコール類、安息香酸メチル等の芳香族エステル類、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル類及びこれらの混合物等が挙げられる。
なお、有機溶媒に分散された高分子微粒子の分散液に、エポキシ樹脂及び無機系フィラーを混合させる場合、その分散液に使用されている有機溶媒を、めっき下地塗料の溶媒の一部又は全部として使用することができる。
【0023】
(その他の成分)
本発明のめっき下地塗料には、用途や塗布対象物に応じて、例えば、エポキシ樹脂硬化剤又は硬化触媒、分散安定剤、増粘剤、インキバインダ等の樹脂を加えてもよい。また、本発明の効果を損ねない程度であれば、カーボンブラックなど本発明の無機系フィラー以外の無機系充填材を添加してもよい。
上記その他の成分の添加量は、下地塗料の総質量に対して0.1~2質量%となる範囲であることが好ましい。
【0024】
(硬化剤又は硬化触媒)
ここで使用しえる硬化剤は、イソシアネート類、カルボジイミド類、オキサゾリン類、エポキシ類、酸無水物類、フェノール類、チオール類、ポリアニリン類、及びジシアンジアミド類からなる群のうちから少なくとも一種選択されるものであってもよい。
ここで使用しえる硬化触媒は、イミダゾール類、三級アミン類、三級ホスフィン類等が挙げられる。
【0025】
ここでイミダゾール類としては、具体的には2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-ビニル-2-メチルイミダゾール、1-プロピル-2-メチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、1-シアノメチル-2-メチル-イミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール等の他、マスク化イミダゾール類が挙げられる。
【0026】
三級アミン類としては、具体的にはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、テトラメチルブタンジアミン、テトラメチルペンタンジアミン、テトラメチルヘキサジアミン、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン、N,N-ジメチルアニシジン、ピリジン、ピコリン、キノリン、N,N′-ジメチルアミノピリジン、N-メチルピペリジン、N,N′-ジメチルピペラジン、1,8-ジアザビシクロ-[5,4,0]-7-ウンデセン(DBU)等が挙げられる。
【0027】
三級ホスフィン類として具体的には、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等が挙げられる。これらの中でも、硬化物の耐熱性がより高くなる点から三級アミン類が好ましい。
【0028】
本発明のめっき下地塗料は、例えば、導電性又は還元性の高分子微粒子の分散液に、予めエポキシ樹脂と無機系フィラーとを混合させたバインダーを添加することで、固形分が凝集せずに均一に分散されためっき下地塗料が得られる。
【0029】
<めっき物の製造方法>
通常、めっき下地層とめっき層との高い密着性を維持するために、めっき処理する前に加熱したり、光や電子線を照射して乾燥・硬化したりすることにより下地を硬化させることが行われる。乾燥条件は、室温又は加熱条件下で行い、加熱温度は、基材のガラス転移温度より低い温度であればよく、160℃以上の温度が基本である。
本発明めっき物の製造方法は、基板上にめっき下地塗料を塗布してめっき下地層を形成する工程1、めっき下地層を熱処理温度TAにより熱処理する工程2、無電解めっき又は無電解めっきと電解めっきにより金属めっき膜を形成する工程3、及び金属めっき膜を熱処理温度TBにより熱処理し、めっき物が得られる工程4を含む。
工程2の熱処理温度TAは溶剤が揮発する温度とめっき下地層の触媒吸着性が低下する温度の間にあり、工程4の熱処理温度TBは、エポキシ樹脂が硬化する温度と銅害が発生する温度の間にある。具体的な説明を下記になる。
【0030】
(工程1)
【0031】
本発明のめっき下地塗料の基材への塗布方法は、特に限定されず、例えば、スクリーン印刷機、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、オフセット印刷機、スピンコーター、ロールコーター等を用いて、印刷またはコーティングすることができる。
その中でも、線幅100μm以下の微細パターンを形成するには、スクリーン印刷機やグラビアオフセット印刷機、フレキソ印刷機、ロールコーターを用いることが好ましい。
尚、連続印刷性の観点からは、粘度上昇率が100%以上200%未満であることが好ましく、100%未満であることがより好ましい。
【0032】
また、形成されるめっき下地層の厚さは、10nm~10μm(0.01~10μm)とするのが好ましく、より好ましくは、1.0μm~10μmである。
厚さが10nm未満であるとめっきが析出し難くなる。また、厚さが10μmを超えると、基材と金属めっき膜との密着性が得られ難くなる。
また、1.0μm~10μmの範囲とすることで、めっきの析出性が向上する。
【0033】
本発明の基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、液晶ポリマー(LCP)樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ガラス等が挙げられる。
また、基材の形状は特に限定されないが、例えば、板状、フィルム状が挙げられる。
他にも、基材として、例えば、射出成形などにより樹脂を成形した樹脂成形品が挙げられる。そして、この樹脂成形品に本発明のめっき物を設けることにより、例えば、自動車向けの装飾めっき品を作製することができたり、或いは、ポリイミド樹脂からなるフィルム上に本発明のめっき物を全面もしくはパターン状で設けることにより、例えば、電気回路品を作製することができる。
本発明に使用する基材としては、ポリイミド(PI)樹脂フィルム、液晶ポリマー(LCP)樹脂フィルムが好ましい。
【0034】
(工程2)
塗布されるめっき下地層を熱処理温度TAにより熱処理する。該処理によって、含有溶液が揮発されめっき下地層が形成される。
通常めっきプロセスでは下地塗料を硬化させるために、めっき処理前の熱処理が160℃~200℃の高温で熱処理する必要がある。本発明はめっき析出性を担保しつつ、めっき処理後の熱処理でも期待する密着性を得られるため、工程2の熱処理温度TAが150℃以下に設定する。
しかし、めっき前の熱処理温度は140℃を超えると、めっき析出性が低下し、高精度な微細パターンをめっきする際にめっきがきれいに析出せず、抵抗値上昇や断線といった不具合が生じる。また、熱処理温度TAが低すぎるとめっき下地層に含まれる溶剤が完全に揮発できなく、めっき後に熱処理しても十分な密着性が得られない。
なお、量産性の観点からは、熱処理温度TAは80℃~140℃であることがより好ましい。
【0035】
(工程3)
当該めっき下地層に、無電解めっき又は無電解めっきと電解めっきにより金属めっき膜を形成する。
【0036】
無電解めっきの場合は、めっき下地層が形成された基材を塩化パラジウム等の触媒金属を付着させるための触媒液に浸漬した後、水洗等を行い、無電解めっき浴に浸漬し金属めっき膜を形成する。
【0037】
触媒液は、無電解めっきに対する触媒活性を有する貴金属(触媒金属)を含む溶液であり、触媒金属としては、パラジウム、金、白金、ロジウム等が挙げられ、これら金属は単体でも化合物でもよく、触媒金属を含む安定性の点からパラジウム化合物が好ましく、その中でも塩化パラジウムが特に好ましい。
好ましい、具体的な触媒液としては、0.05%塩化パラジウム-0.005%塩酸水溶液(pH3)が挙げられる。
処理温度は、20ないし50℃、好ましくは30ないし40℃であり、処理時間は、0.1ないし20分、好ましくは、1ないし10分である。
上記の操作により、めっき下地層中の高分子微粒子は、結果的に、導電性の高分子微粒子となる。
【0038】
上記で処理された基材は、金属を析出させるためのめっき液に浸され、これにより無電解めっき膜が形成される。
めっき液としては、通常、無電解めっきに使用されるめっき液であれば、特に限定されない。
即ち、無電解めっきに使用できる金属、銅、金、銀、ニッケル等、全て適用することができるが、銅が好ましい。
無電解銅めっき浴の具体例としては、例えば、ATSアドカッパーIW浴(奥野製薬工業(株)社製)等が挙げられる。
処理温度は、20℃ないし50℃、好ましくは30℃ないし40℃であり、処理時間は、1分ないし30分、好ましくは、5ないし15分である。
得られためっき物は、使用した基材のTgより低い温度範囲において、数時間以上、例えば、2時間以上養生するのが好ましい。
【0039】
また、導電性の高分子微粒子を含むめっき下地塗料を基材に塗布して形成されためっき下地層の場合、その後、脱ドープ処理を行ってから、上記と同様の操作によりめっき物を製造することができる。
脱ドープ処理としては、還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素化合物、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、トリメチ
ルアミンボラン、トリエチルアミンボラン等のアルキルアミンボラン、及び、ヒドラジン等を含む溶液、またはアルカリ性溶液に、導電性ポリピロール微粒子とバインダーを含むめっき下地層を設けた基材を浸漬処理する方法が挙げられ、操作性及び経済性の観点からアルカリ性溶液で浸漬処理するのが好ましい。
特に、導電性の高分子微粒子とエポキシ樹脂と無機系フィラーとを含むめっき下地層は薄くできるため、緩和な条件下で短時間のアルカリ処理により脱ドープを達成することが可能である。
例えば、1M水酸化ナトリウム水溶液中で、20ないし50℃ 、好ましくは30ないし40℃の温度で、1ないし30分間、好ましくは3ないし10分間処理される。
上記のようにして脱ドープ処理された、めっき下地層が形成された基材を無電解めっき法によりめっき物とするが、該無電解めっき法は、上記と同様の操作により行うことができる。
【0040】
なお、上記めっき物は、形成された金属めっき膜上に、電解めっきにより、同一又は異なる金属を更にめっきすることもできる。
また、金属めっき膜は、基材の両面に形成されてもよい。
【0041】
(工程4)
工程4はめっき処理後の基材を熱処理温度TBによりさらに熱処理し、めっき下地層を完全に硬化させ、必要とされる密着性を有するめっき物が得られるプロセスである。工程4の熱処理温度TBは基本的に160℃以下に設定する。
熱処理温度TBは、150℃~160℃を超えると銅害が発生して、金属めっき層の金属酸化された銅イオンが、めっき下地層を通過しながら拡散して基材まで到達し、基材を分解し、めっき下地層と基材との密着性が低下する不具合が生じる。
また、使用しているエポキシ樹脂、硬化剤の反応開始温度(110℃~120℃)未満であると、熱処理しても十分な密着性が得られない。そのため、熱処理温度TBは110℃~160℃であることが好ましい。
なお、量産性の観点からは、熱処理温度TBは120℃~150℃であることがより好ましい。
【実施例0042】
本発明を実施態様に基づき説明するが、これに限定されるものではない。
【0043】
下地塗料1
アニオン性界面活性剤ペレックスOT-P(花王(株)製)1.5mmol、トルエン10mL、イオン交換水100mLを加えて20℃に保持しつつ乳化するまで撹拌し、乳化液を得た。
次に、得られた乳化液にピロールモノマー21.2mmolを加え、1時間撹拌し、次いで過硫酸アンモニウム6mmolを加えて2時間重合反応を行なった。
反応終了後、有機相を回収し、イオン交換水で数回洗浄して、トルエンに分散した導電性ポリピロール微粒子を得た。
次に、導電性のポリピロール微粒子1質量部に対して、バインダーとしてエポキシ樹脂(エポキシ当量3000~5000)を10質量部、無機系フィラーを3質量部混合し、希釈溶媒イソホロン(沸点は215℃)を添加して調製し、下地塗料1(フィラー:エポキシ=0.3:1)を得た。
【0044】
下地塗料2
希釈溶媒メチルエチルケトン(MEK)(沸点は79℃)を添加した以外は、下地塗料1と同様の操作を行うことにより、下地塗料2(フィラー:エポキシ=0.3:1)を得た。
【0045】
下地塗料3
エポキシ樹脂(エポキシ当量2400~3300)を10質量部添加した以外は、下地塗料1と同様の操作を行うことにより、下地塗料3(フィラー:エポキシ=0.3:1)を得た。
【0046】
下地塗料4
エポキシ樹脂(エポキシ当量7500~8500)を10質量部添加した以外は、下地塗料1と同様の操作を行うことにより、下地塗料4(フィラー:エポキシ=0.3:1)を得た。
【0047】
下地塗料5
エポキシ樹脂(エポキシ当量3000~5000)を8質量部添加し、無機系フィラーを8質量部添加した以外は、下地塗料1と同様の操作を行うことにより、下地塗料5(フィラー:エポキシ=1:1)を得た。
【0048】
下地塗料6
エポキシ樹脂(エポキシ当量3000~5000)を46質量部添加し、無機系フィラーを14質量部添加した以外は、下地塗料1と同様の操作を行うことにより、下地塗料6(フィラー:エポキシ=0.3:1)を得た。
【0049】
比較下地塗料1
エポキシ樹脂(エポキシ当量3000~5000)を16質量部添加し、無機系フィラーを添加しない以外は、下地塗料1と同様の操作を行うことにより、比較下地塗料1(フィラー:エポキシ=0)を得た。
【0050】
比較下地塗料2
エポキシ樹脂(エポキシ当量3000~5000)を6.4質量部添加し、無機系フィラーを9.6質量部添加した以外は、下地塗料1と同様の操作を行うことにより、比較下地塗料2(フィラー:エポキシ=1.5:1)を得た。
【0051】
比較下地塗料3
エポキシ樹脂(エポキシ当量3000~5000)を54質量部添加し、無機系フィラーを16質量部添加した以外は、下地塗料1と同様の操作を行うことにより、比較下地塗料3(フィラー:エポキシ=0.3:1)を得た。
【0052】
下地塗料の各成分について、表1及び表2にも参照できる。
【表1】
【表2】
【0053】
<実施例1~11、比較例1~6>
(工程1と工程2)
スクリーン印刷機を用いて、ポリイミドフィルム基材(東レ・デュポン株式会社製、商品名「カプトン200H」)の片面に下地塗料を塗工し、下記表3に記載される第一熱処理の温度TAと時間で熱処理することによって、含有溶剤を揮発させて、密部、疎部、細線部を含むパターン状を有する膜厚2μmのめっき下地層が形成された基材であるめっき析出の確認用サンプルを作製した。
その後、上記めっき析出の確認用サンプルについて、下記の方法により、めっき析出性を評価した。
【0054】
<実施例21~31、比較例11、14、16>
(工程1と工程2)
スクリーン印刷機を用いて、ポリイミドフィルム基材(東レ・デュポン株式会社製、商品名「カプトン200H」)の片面に下地塗料を塗工し、下記表4に記載される第一熱処理の温度TAと時間で熱処理することによって、含有溶剤を揮発させて、膜厚2μmのめっき下地層が形成された基材を作製した。なお、実施例21~31の下地塗料と第一熱処理条件は実施例1~11の下地塗料と第一熱処理条件と同様である。比較例11、14、16の下地塗料と第一熱処理条件は比較例1、4、6の下地塗料と第一熱処理条件と同様である。
(工程3と工程4)
前記下地層が形成された基材を、1M水酸化ナトリウム水溶液に35℃で5分間浸漬後、イオン交換水で水洗し、次に、0.02%塩化パラジウム-0.01%塩酸水溶液に35℃で5分間浸漬後、イオン交換水で水洗することで、めっき下地層に触媒金属を付着させた。次いで、無電解めっき浴(奥野製薬工業株式会社製、商品名「ATSアドカッパーIW浴」)に浸漬して、35℃で10分間浸漬し、膜厚0.3μmの銅を析出させた。さらに硫酸銅めっき浴により電解めっきを行い、30μmまで厚付けした後に、第二熱処理の温度TBで熱処理することによってめっき層を有する密着性の確認用サンプルを完成させた。
次に、上記処理を経た密着性の確認用サンプルについて、下記の方法によりさらにめっき密着性を評価した。
【0055】
(めっき析出性)
銅が析出した面積を目視にて観察し、以下の通りめっき析出性が評価される。
なお、めっき密部とは配線の幅が100μm以上であり、連続したパターンが密集している部分を指す。めっき疎部とは配線幅が100μm以上だが、パターンが独立している部分を指す。めっき細線部とは配線幅が100μm未満の部分を指す。めっき析出のし易さは、めっき密部>めっき疎部≒めっき細線部 である。
〇:めっき密部、めっき疎部、めっき細線部いずれも、めっき膜が成長している。
△:めっき密部にはめっき膜が成長しているが、めっき疎部、めっき細線部いずれかにめっき膜が成長していない部分がある。
×:めっき密部、めっき疎部、めっき細線部いずれも、めっき膜が成長していない部分がある。
【0056】
めっき析出性結果を表3にまとめる。
実施例3では下地塗料1が使用されたが、第一熱処理の温度TAは140℃を超えた150℃であった。めっき疎部、めっき細線部いずれかにめっき膜が成長していない部分もあったが、めっき密部にはめっき膜が成長していた。
実施例11では、第一熱処理の温度TAは好ましい80℃~140℃の温度範囲にかかっていて、そして下地塗料6に使用される高分子微粒子ポリピロール:エポキシ樹脂の質量比が最適範囲の限度1:46にもかかっているため、めっき析出性が若干低下した。
比較例2では下地塗料1が使用されたが、第一熱処理の温度TAは140℃を超えた160℃であったため、めっき密部、めっき疎部、めっき細線部いずれも、めっき膜が成長していない部分があって、めっき析出性が低下した。
比較例3及び比較例5では、比較下地塗料1と3が使用された。比較下地塗料1に無機フィラーが配合されていないことと比較下地塗料1に使用される高分子微粒子ポリピロール:エポキシ樹脂の質量比が最適範囲を超えたことにより、めっき析出性が低下した。それぞれめっき密部、めっき疎部、めっき細線部いずれも、めっき膜が成長していない部分があった。
その他の実施例1~2、4~10、及び比較例1、4、6は、めっき密部、めっき疎部、めっき細線部いずれも、めっき膜が成長していた。
【0057】
【0058】
(めっき密着性)
上記製造した実施例21乃至実施例31、比較例11、14、16のめっき物に対して、それぞれで180度ピール強度[N/mm]を測定した。
〇:ピール強度0.5N/mm以上
△:ピール強度0.35N/mm以上
×:ピール強度0.35N/mm未満
【0059】
めっき密着性結果を表4にまとめる。
実施例24の第二熱処理の温度TBは、160℃であり、実施例26の第二熱処理の温度TBは、110℃であり、ちょうど好ましい110℃~160℃の範囲の上限と下限にかかっている。密着性が他の実施例より若干弱くなっている。
実施例30では、下地塗料5に使用される高分子微粒子ポリピロール:エポキシ樹脂の質量比が最適範囲の限度1:8にかかっていて、そして下地塗料6に使用される高分子微粒子ポリピロール:エポキシ樹脂の質量比が最適範囲の限度1:1にもかかっているため、めっき密着性が若干低下した。
比較例11と比較例16では、第二熱処理の温度TBはそれぞれ180℃と100℃であり、好ましい110℃~160℃の範囲外になるため、期待する密着性が得られなかった。
比較例14では、使用される比較下地塗料2におけるフィラーとエポキシ樹脂の質量比及びポリピロールとエポキシ樹脂の質量比のどちらでも最適範囲の範囲外になる。
その他の実施例21~23、25、27~29、31は、180度ピール強度がいずれも0.5N/mm以上であった。
【0060】