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特開2024-14198車両用内燃機関の排気センサ保護方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014198
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】車両用内燃機関の排気センサ保護方法および装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20240125BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20240125BHJP
   F01N 3/22 20060101ALI20240125BHJP
   F01N 3/32 20060101ALI20240125BHJP
   F02D 41/32 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F02D45/00 360Z
F02D43/00 301V
F02D43/00 301H
F01N3/22 301Z
F01N3/32 301B
F02D41/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116848
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀明
【テーマコード(参考)】
3G091
3G301
3G384
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB01
3G091BA27
3G091CA22
3G091EA00
3G091EA40
3G091HA36
3G091HA37
3G091HB06
3G091HB07
3G301HA01
3G301JA00
3G301KA11
3G301MA24
3G301PF05Z
3G301PF07Z
3G384AA01
3G384AA28
3G384BA07
3G384BA31
3G384BA39
3G384BA43
3G384BA51
3G384CA11
3G384DA14
3G384FA71Z
3G384FA73Z
(57)【要約】
【課題】排気通路における排気センサ上流側に凝縮水が溜まると、高温の排気センサに凝縮水が接触して排気センサの損傷が生じる。
【解決手段】車両がキーOFFとなる前には、通常、自動変速機がパーキングレンジ位置となり、パーキングブレーキがONとなる。本発明では、パーキングレンジの選択ないしパーキングブレーキONを検出したときに、内燃機関をモータリングして、排気通路の排気センサ上流側における排気ガスを空気で掃気する。モータリングの間は、スロットルバルブを全開とする。累積の掃気時間ないし累積のモータリング回転数が所定値に達するまで掃気を行う。これによりキーOFF後の凝縮水の生成が抑制される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に排気センサを備えてなる車両用内燃機関において、
内燃機関の燃焼運転の停止後に、少なくとも排気センサよりも上流側の排気通路内の排気ガスを空気により掃気して、排気センサよりも上流側における凝縮水の生成を抑制する、車両用内燃機関の排気センサ保護方法。
【請求項2】
車両の変速機のパーキングレンジの選択、および、パーキングブレーキのON、の少なくとも一方に基づいて、掃気を開始する、請求項1に記載の車両用内燃機関の排気センサ保護方法。
【請求項3】
車両がキーON状態で、かつ、内燃機関の燃焼運転停止中に排気通路表面温度が所定温度以下となったときに、掃気を開始する、請求項1に記載の車両用内燃機関の排気センサ保護方法。
【請求項4】
内燃機関の始動後、排気通路表面温度が所定温度以下のまま内燃機関の燃焼運転が停止したときに、掃気を開始する、請求項1に記載の車両用内燃機関の排気センサ保護方法。
【請求項5】
車両がキーON状態の下で、断続的な燃焼運転が所定回数繰り返されたことを条件として、掃気を行う請求項1に記載の車両用内燃機関の排気センサ保護方法。
【請求項6】
排気センサ上流側の掃気すべき排気通路の体積に対応した最小限の掃気期間の間、掃気を行う、請求項1に記載の車両用内燃機関の排気センサ保護方法。
【請求項7】
掃気期間中はスロットルバルブを全開とする、請求項1に記載の車両用内燃機関の排気センサ保護方法。
【請求項8】
掃気を行った後に内燃機関の燃焼運転が行われた場合は、その燃焼運転の停止後に再度の掃気を行う、請求項1に記載の車両用内燃機関の排気センサ保護方法。
【請求項9】
内燃機関のモータリングにより掃気を行う、請求項1に記載の車両用内燃機関の排気センサ保護方法。
【請求項10】
電動過給機の駆動により掃気を行う、請求項1に記載の車両用内燃機関の排気センサ保護方法。
【請求項11】
排気通路に接続された二次空気ポンプの駆動により掃気を行う、請求項1に記載の車両用内燃機関の排気センサ保護方法。
【請求項12】
排気通路に排気センサを備えてなる車両用内燃機関と、
コントローラと、
を備え、
上記コントローラは、内燃機関の燃焼運転の停止後に、少なくとも排気センサよりも上流側の排気通路内の排気ガスを空気により掃気して、排気センサよりも上流側における凝縮水の生成を抑制する、車両用内燃機関の排気センサ保護装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気通路に排気センサを備えてなる車両用内燃機関において、凝縮水から排気センサを保護する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の運転が停止して排気通路の温度が低下すると、排気中に含まれていた水分が凝縮して凝縮水が生じる。この凝縮水が高温となっている排気センサに接触すると、排気センサが急冷され、損傷する懸念がある。そのため、一般に、排気系レイアウトは、適当な勾配を設けるなどにより、排気センサの上流側に凝縮水が溜まらないように設計する必要があり、設計の自由度が制限される。
【0003】
特許文献1には、電気加熱式触媒装置を具備したハイブリッド車両において、凝縮水による電気加熱式触媒装置の漏電を防止するために、エンジン停止時間が基準値以上となったときに、電動エアポンプの駆動もしくはエンジンのモータリングを行い、排気通路内に生成されるガス流によって電気加熱式触媒装置付近の凝縮水を下流へ導いて車外へ排出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-242724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術は、電気加熱式触媒装置付近に凝縮水が溜まる程度の長い時間エンジンが停止した段階で電動エアポンプの駆動やモータリングを行って凝縮水の排出を行うものであり、凝縮水の生成を未然に抑制しようとするものではない。凝縮水を押し流すためには、比較的に高いガス流速が必要となり、例えばエンジン停止中の急な作動により乗員に違和感を与えやすい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両用内燃機関の排気センサ保護方法は、
排気通路に排気センサを備えてなる車両用内燃機関において、
内燃機関の燃焼運転の停止後に、少なくとも排気センサよりも上流側の排気通路内の排気ガスを空気により掃気して、排気センサよりも上流側における凝縮水の生成を抑制する。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれは、内燃機関の燃焼運転の停止後の掃気により、排気センサよりも上流側における凝縮水の生成が未然に抑制される。そのため、凝縮水生成後の排出動作は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明が適用される内燃機関の排気系を含む構成を示した構成説明図。
図2】排気センサ保護制御の一例の動作を示したタイムチャート。
図3】排気センサ保護制御の第2の例の動作を示したタイムチャート。
図4】排気センサ保護制御の第3の例の動作を示したタイムチャート。
図5】排気センサ保護制御の第4の例の動作を示したタイムチャート。
図6】排気センサ保護制御の第5の例の動作を示したタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明が適用される内燃機関1の排気系を含む構成を概略的に示した構成説明図である。。一実施例の内燃機関1は、シリーズハイブリッド車両において、主に発電機として動作する発電用モータジェネレータを電力要求に応じて駆動する発電用内燃機関として用いられるものであり、4ストロークサイクルの火花点火式内燃機関(いわゆるガソリン機関)からなる。シリーズハイブリッド車両においては、内燃機関1は、電力要求に応じて間欠的に燃焼運転がなされる。つまり、車両のメインスイッチ(イグニッションスイッチとも呼ばれる)がONである間、自動停止・自動再始動を繰り返す。
【0010】
図1に概略的に示すように、内燃機関1は、各気筒に、吸気弁2ならびに排気弁3および点火プラグ4を備えている。また図示例は、ポート噴射式機関として構成されており、各気筒の吸気ポート6へ向けて燃料を噴射するように燃料噴射弁5が配置されている。なお、筒内に燃料を噴射する筒内直接噴射式の構成であってもよい。
【0011】
各気筒の吸気ポート6に接続された吸気通路7のコレクタ部8上流側には、エンジンコントローラ9からの制御信号によって開度が制御される電子制御型スロットルバルブ10が介装されている。スロットルバルブ10の上流側に、吸入空気量を検出するエアフロメータ11が配設されており、さらに上流側に、エアクリーナ12が配設されている。
【0012】
各気筒の排気ポート13は、シリンダヘッド16の外部において1本の排気通路14として集合し、この排気通路14に、排気浄化のための三元触媒15が設けられている。三元触媒15は、例えば、微細な通路が形成されたモノリスセラミックス体の表面に触媒金属を含む触媒層をコーティングした、いわゆるモノリスセラミックス触媒である。なお、三元触媒15は、直列に配置された複数の触媒(例えば、マニホルド触媒と床下触媒)を含む構成であってもよい。
【0013】
排気通路14の三元触媒15の入口側つまり該三元触媒15よりも上流側の位置には、排気空燃比を検出するための上流側排気センサ19が配置されている。この上流側排気センサ19は、排気空燃比に応じた出力が得られるいわゆる広域空燃比センサである。さらに三元触媒15の下流側に、上流側排気センサ19を含む空燃比フィードバック制御系の較正や三元触媒15の劣化診断等のために、三元触媒15を通過した排気の組成に応答する下流側排気センサ20が配置されている。この下流側排気センサ20は、一例では、上流側排気センサ19と同じくいわゆる広域空燃比センサが用いられている。上流側排気センサ19や下流側排気センサ20は、いわゆるO2センサであってもよい。上流側排気センサ19および下流側排気センサ20は、素子を高温に保つために電気ヒータを内蔵している。
【0014】
排気センサ19,20やエアフロメータ11の検出信号は、エンジンコントローラ9に入力される。エンジンコントローラ9には、さらに、機関回転速度を検出するためのクランク角センサ21、冷却水温を検出する水温センサ22、等の多数のセンサ類の検出信号が入力されている。エンジンコントローラ9は、これらの入力信号に基づき、燃料噴射弁5による燃料噴射量および噴射時期、点火プラグ4による点火時期、スロットルバルブ10の開度、等を最適に制御している。エンジンコントローラ9は、走行用モータジェネレータ等を含むシリーズハイブリッド車両全体の制御を行う統合コントローラ(図示せず)にCAN通信等の車内ネットワークを介して接続されており、統合コントローラから始動・停止を含む種々の要求ないし指令を受ける。さらに、自動変速機のパーキングレンジ位置の検出信号やパーキングブレーキのON・OFF信号等、後述する制御に必要な信号がエンジンコントローラ9に、直接にあるいは統合コントローラを介して入力されている。
【0015】
一実施例の内燃機関1は、シリーズハイブリッド車両における発電用内燃機関であることから、内燃機関1が駆動するモータ・ジェネレータによって、逆に内燃機関1のモータリングを行うことが可能である。
【0016】
次に、図2のタイムチャートに基づいて、排気センサ保護制御の一例の動作を説明する。
【0017】
すなわち、図1に例示した内燃機関1においては、排気ポート13から上流側排気センサ19に至る排気通路14の一部に、図1に模式的に下方へ湾曲した形で示したように、凝縮水が溜まりやすい部位14aが存在する。そのため、内燃機関1の燃焼運転の停止後に排気通路14内で排気が冷却されて凝縮水が生じると、排気センサ19,20の上流側の部位14aに溜まり、これが高温状態にある排気センサ19,20に接触することで、排気センサ19,20の破損を招く恐れがある。そのため、図2の例では、車両のメインスイッチがキーOFF操作される前の操作である自動変速機のパーキングレンジ位置の選択およびパーキングブレーキのONのいずれか一方を検出したときに、内燃機関1のモータリングによって排気通路14の掃気を行う。図2は、特に、内燃機関1の燃焼運転中にパーキングレンジ位置への切換もしくはパーキングブレーキ操作がなされた場合の例を示す。図2の(a)欄は、車両のメインスイッチ(いわゆるイグニッションキースイッチ)のON・OFFを示す。(b)欄は、自動変速機がパーキングレンジ位置であるかどうかを示す。(c)欄は、パーキングブレーキのON・OFFを示す。(d)欄は、内燃機関1のクランクシャフトが回転しているかどうかを示し、ここには、燃焼運転による回転とータリングによる回転とが含まれている。(e)欄は、掃気中であるかどうかを示す。(f)欄は、モータ・ジェネレータの駆動によるモータリングのON・OFF状態を示す。(g)欄は、累積の掃気時間(あるいは代替としてモータリングによる累積のクランクシャフト回転数)を示す。(h)欄は、スロットルバルブ10の開度を示す。(i)欄は、燃料噴射量を示し、換言すれば、燃焼運転であるかどうかを示す。(j)欄は、内燃機関1の回転速度(燃焼運転およびモータリングの双方を含む)を示す。(k)欄は、排気センサ19,20の上流側における空間内の排気ガスの割合を模式的に示している。
【0018】
図2の例では、内燃機関1の燃焼運転がなされている間に、パーキングレンジ位置に切り換えられた(あるいはパーキングブレーキがONとなった)ことをトリガーとして、燃焼運転が終了し、かつモータ・ジェネレータによるモータリングが開始される。このモータリングによって、排気通路14における排気センサ19,20上流側の掃気が行われる。(g)欄に示すように、累積の掃気時間ないし累積のモータリング回転数が所定値に達したところで、モータリングが終了する。この所定値は、掃気が必要な排気センサ19,20上流側の空間の大きさに対応するように、換言すれば、モータリングによる掃気に過不足がないように、予め設定される。また、モータリングにより送られる空気量が大となるように、モータリングの間、スロットルバルブ10の開度が全開となる。また、モータリングの際の回転速度は、過度の違和感が生じないように、それまでの燃焼運転の回転速度(例えばこの場合はアイドル回転速度)が継続される。
【0019】
このように掃気を行うことで、排気センサ19,20の上流側における空間内の排気ガスの割合が低下していく。
【0020】
図2の例では、パーキングレンジ位置への切換およびパーキングブレーキ操作の後にメインスイッチがOFFとなり、車両の運転が終了する。このようにキーOFFに先立って掃気が行われているので、その後に排気通路14の温度(例えば金属排気管の内表面の温度)が低下していっても凝縮水の生成が十分に抑制される。運転者がキーOFFする場合、多くの場合は、キーOFF操作の前にパーキングレンジ位置に切り換えられ、かつパーキングブレーキがONとなる。換言すれば、パーキングレンジ位置への切換やパーキングブレーキONによって、キーOFF操作が予想されるのであり、この例では、実際にキーOFFとなる前に掃気が実行される。従って、キーOFF前にモータリングによる音や振動が生じることとなり、乗員に違和感を与えることが少ない。
【0021】
なお、パーキングレンジ位置の選択とパーキングブレーキONとをいわゆるAND条件として掃気を開始するようにしてもよい。
【0022】
また、累積の掃気時間ないし累積のモータリング回転数が排気センサ19,20上流側の空間の大きさに対応した所定値に達するまで掃気を行うので、排気センサ19,20上流側の区間が確実に掃気され、排気センサ19,20上流側での凝縮水の生成が抑制されると同時に、過度に長くモータリングを行うことが防止される。なお、上記の所定値は、スロットルバルブ10の開度等のガス流量に影響する他の必要なパラメータを含めて算出される。
【0023】
次に、図3の例は、内燃機関1の燃焼運転がなされていないいわゆるEV走行中に車両が停止してパーキングレンジ位置への切換やパーキングブレーキ操作がなされた場合の動作を示している。この場合には、パーキングレンジ位置に切り換えられた(あるいはパーキングブレーキがONとなった)ことをトリガーとして、モータ・ジェネレータによるモータリングが開始される。このモータリングによって、排気通路14における排気センサ19,20上流側の掃気が行われる。(g)欄に示すように、累積の掃気時間ないし累積のモータリング回転数が所定値に達したところで、モータリングが終了する。この所定値は、掃気が必要な排気センサ19,20上流側の空間の大きさに対応するように、換言すれば、モータリングによる掃気に過不足がないように、予め設定される。また、モータリングにより送られる空気量が大となるように、モータリングの間、スロットルバルブ10の開度が全開となる。また、モータリングの際の回転速度は、この場合は、過度の違和感が生じないように、比較的低い回転速度、例えばアイドル回転速度となる。
【0024】
このように掃気を行うことで、図2の例と同様に、その後にキーOFFとなった後の凝縮水の生成が回避される。
【0025】
なお、図2図3のいずれの例でも、キーOFFとならずに再び車両の走行(内燃機関1の燃焼運転)がなされた場合は、その後のパーキングレンジの選択ないしパーキングブレーキONの際に再び掃気が実行される。
【0026】
次に、図4の例は、車両がキーON状態で、かつ、内燃機関1の燃焼運転停止中に排気通路14表面温度が所定温度以下となったときに、掃気を開始するようにしたものである。図4の(m)欄は、排気センサ19,20上流側の排気通路14の温度(金属排気管の内表面の温度)を示しており、これは、例えば、燃焼運転中の排気ガス温度(負荷および機関回転速度等から推定される)と外気温とを用いて推定される。
【0027】
図4の例は、内燃機関1の燃焼運転によって発電を行っている状態から内燃機関1の燃焼運転が停止してEV走行に移行した後の様子を示しており、(m)欄に示すように、燃焼運転の停止により排気通路14の温度が徐々に低下していく。この排気通路14の温度が所定の閾値温度Ts(露点に相当する温度)以下となったら、モータ・ジェネレータによるモータリングが開始される。このモータリングによって、排気通路14における排気センサ19,20上流側の掃気が行われる。(g)欄に示すように、累積の掃気時間ないし累積のモータリング回転数が所定値に達したところで、モータリングが終了する。この所定値は、掃気が必要な排気センサ19,20上流側の空間の大きさに対応するように、換言すれば、モータリングによる掃気に過不足がないように、予め設定される。また、モータリングにより送られる空気量が大となるように、モータリングの間、スロットルバルブ10の開度が全開となる。また、モータリングの際の回転速度は、この場合は、例えば車両走行中であれば比較的高い回転速度としてもよく、車両停止中であれば、過度の違和感が生じないように、比較的低い回転速度、例えばアイドル回転速度とすればよい。
【0028】
このように掃気を行うことで、内燃機関1の燃焼運転停止中における凝縮水の生成が抑制される。
【0029】
なお、内燃機関1の断続的な燃焼運転が所定回数(複数回)繰り返されたことを加重条件としてモータリングによる掃気を許可するようにしてもよい。
【0030】
次に、図5の例は、内燃機関1の始動後、排気通路14表面温度が所定温度以下のまま内燃機関1の燃焼運転が停止したときに、掃気を開始するようにしたものである。この例では、特に、内燃機関1の断続的な燃焼運転が所定回数(例えば3回)繰り返されたことを加重条件としてモータリングによる掃気を許可するようにしている。
【0031】
図5の(m)欄は、図4と同様に、排気センサ19,20上流側の排気通路14の温度(金属排気管の内表面の温度)を示しており、前述したように推定値である。この温度は、沸点に相当する所定の閾値温度Ts2と比較される。(n)欄は、排気通路14の温度が閾値温度Ts2を越えることなく内燃機関1の燃焼運転が停止したときにカウントアップされるカウンタであり、このカウンタの値が所定値(例えば、3)に達したときにモータリングによる掃気が開始される。
【0032】
図5の例では、メインスイッチがONとなった後、比較的短期間の内燃機関1の燃焼運転が3回繰り返されており、この間、排気通路14の温度は閾値温度Ts2を越えることがない。そのため、3回目の燃焼運転の終了と同時に、モータ・ジェネレータによるモータリングが開始される。このモータリングによって、排気通路14における排気センサ19,20上流側の掃気が行われる。(g)欄に示すように、累積の掃気時間ないし累積のモータリング回転数が所定値に達したところで、モータリングが終了する。また、モータリングにより送られる空気量が大となるように、モータリングの間、スロットルバルブ10の開度が全開となる。また、モータリングの際の回転速度は、過度の違和感が生じないように、直前の燃焼運転の回転速度が継続される。
【0033】
このように掃気を行うことで、排気センサ19,20の上流側における空間内の排気ガスの割合が低下し、凝縮水の生成が回避される。
【0034】
なお、内燃機関1の燃焼運転の停止のたびに掃気を実行するようにしてもよい。
【0035】
次に、図6の例は、掃気を行った後に内燃機関1の燃焼運転が行われた場合に、その燃焼運転の停止後に再度の掃気を行うようにしたものである。図6の(o)欄は、統合コントローラからエンジンコントローラ9に与えられる内燃機関1の運転要求を示している。この運転要求がONである間、発電のために内燃機関1の燃焼運転がなされる。
【0036】
図6のタイムチャートの前半部分は図3の例と同様であり、内燃機関1の燃焼運転が停止しているEV走行中に車両が停止してパーキングレンジ位置への切換やパーキングブレーキ操作がなされたときに、モータリングによる掃気が実行される。
【0037】
そして、図6の例では、掃気の終了後に、内燃機関1の運転要求に応じて内燃機関1の燃焼運転がある期間行われている。図6の例では、この内燃機関1の燃焼運転の終了と同時にモータ・ジェネレータによるモータリングが開始される。このモータリングによって、排気通路14における排気センサ19,20上流側の掃気が行われる。(g)欄に示すように、累積の掃気時間ないし累積のモータリング回転数が所定値に達したところで、モータリングが終了する。また、モータリングにより送られる空気量が大となるように、モータリングの間、スロットルバルブ10の開度が全開となる。また、モータリングの際の回転速度は、この場合は、違和感が生じないように、直前の燃焼運転の回転速度が継続される。このような2回目の掃気によって、その後の凝縮水の生成が抑制される。
【0038】
このように内燃機関1の燃焼運転に続いて掃気を行うことで、最終的なキーOFF後に掃気を実行する場合に比較して乗員に与える違和感が少なくなる。
【0039】
なお、図2の例に組み合わせて図6の制御を行うことも可能である。
【0040】
以上、この発明をシリーズハイブリッド車両の内燃機関に適用した一実施例を説明したが、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、この発明は、シリーズハイブリッド形式以外のハイブリッド車両の内燃機関にも適用が可能であり、さらには、ハイブリッド車両でない車両駆動用の内燃機関にも広く適用できる。また、上記実施例では内燃機関のモータリングによって掃気を行う例を説明したが、他の方式での掃気も可能であり、例えば電動コンプレッサや電動アシストターボチャージャのような電動過給機を具備する内燃機関であれば、この電動過給機を用いて掃気を行うことができ、排気系に二次空気導入用の二次空気ポンプを具備する内燃機関であれば、この二次空気ポンプを利用して掃気を行うことができる。
【0041】
なお、図1では凝縮水が溜まりやすい部位14aを模式的に描いてあるが、これは本発明の説明のために誇張して示したものに過ぎず、本発明における排気通路が必ずこのような部位14aを備えているという意味ではない。いずれにせよ、本発明によれば、排気通路の排気センサ上流側における凝縮水の生成が抑制される結果、排気系のレイアウトの自由度が高くなる。
【符号の説明】
【0042】
1…内燃機関
9…エンジンコントローラ
10…スロットルバルブ
14…排気通路
19,20…排気センサ

図1
図2
図3
図4
図5
図6