(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141981
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】広域セル基地局及び地上セル基地局を備えるシステム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/14 20090101AFI20241003BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20241003BHJP
H04W 72/12 20230101ALI20241003BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20241003BHJP
H04B 7/185 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H04W16/14
H04W84/06
H04W72/12
H04W16/28
H04B7/185
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053899
(22)【出願日】2023-03-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、「HAPSを利用した無線通信システムに係る周波数有効利用技術に関する研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】石川 力
(72)【発明者】
【氏名】田代 晃司
(72)【発明者】
【氏名】星野 兼次
(72)【発明者】
【氏名】長手 厚史
【テーマコード(参考)】
5K067
5K072
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067DD11
5K067DD57
5K067EE08
5K067EE10
5K067KK02
5K072AA29
5K072BB02
5K072BB13
5K072BB22
5K072DD01
5K072DD11
5K072DD16
5K072EE02
5K072GG02
5K072GG12
5K072GG13
5K072GG14
(57)【要約】
【課題】広域セルを形成する上空の中継通信局から地上セル基地局のアンテナに向けて指向性ビームのヌルを形成するときの残留干渉を低減することができるシステムを提供する。
【解決手段】広域セル基地局及び地上セル基地局は、互いに時間同期された無線フレームで同一周波数帯のサービスリンクの通信を行う。広域セル基地局は、地上セル基地局に関する情報に基づいて、時間軸上及び周波数軸上におけるヌルの割り当てに関するヌルスケジューリングを決定し、前記ヌルスケジューリングの情報を地上セル基地局に送信する。地上セル基地局は、広域セル基地局から受信したヌルスケジューリングの情報に基づいて、広域セルから自セルに在圏するユーザの端末装置への干渉を推定し、時間軸上及び周波数軸上におけるユーザの端末装置の割り当てに関するユーザ・スケジューリングを決定し、自セルに在圏するユーザの端末装置と通信を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上空に位置する飛行体又は浮揚体に設けられた中継通信局のサービスリンクアンテナから地上又は海上に向けて広域セルを形成する広域セル基地局と、地上又は海上に配置されたアンテナから地上セルを形成する一又は複数の地上セル基地局と、を備えるシステムであって、
前記広域セル基地局及び前記一又は複数の地上セル基地局は、互いに時間同期された無線フレームで同一周波数帯のサービスリンクの通信を行い、
前記広域セル基地局は、
前記広域セル内に位置する地上セル基地局に関する情報を取得し、
前記地上セル基地局に関する情報に基づいて、時間軸上及び周波数軸上におけるヌルの割り当てに関するヌルスケジューリングを決定し、
前記ヌルスケジューリングの情報を前記地上セル基地局に送信し、
前記地上セル基地局は、
前記広域セル基地局から、前記ヌルスケジューリングの情報を受信し、
前記ヌルスケジューリングの情報に基づいて、時間軸上及び周波数軸上におけるユーザの端末装置の割り当てに関するユーザ・スケジューリングを決定し、
前記ユーザ・スケジューリングの情報に基づいて、自セルに在圏するユーザの端末装置と通信を行う、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1のシステムにおいて、
前記ヌルスケジューリングの情報は、前記ヌルを形成するときに前記広域セル基地局のアンテナに適用する送信ウェイト行列Wrの情報を含み、
前記地上セル基地局は、
前記広域セル基地局のアンテナと自セルに在圏するユーザgの端末装置との間の伝搬路応答hgを推定し、
前記送信ウェイト行列Wrと前記伝搬路応答hgの推定結果とに基づいて、次式(1)により、無線リソースrに対する前記広域セルから自セルに在圏するユーザgの端末装置への干渉電力I(r,g)を推定する、
ことを特徴とするシステム。
【数1】
【請求項3】
請求項2のシステムにおいて、
前記ヌルスケジューリングの情報に含まれる前記送信ウェイト行列Wrの情報は、複数の送信ウェイト行列Wrの要素を統計的に処理して得られた情報である、
ことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1のシステムにおいて、
前記ヌルスケジューリングの情報は、前記広域セル基地局で形成するヌル点に対応する位置を原点として前記広域セルから前記地上セルに在圏するユーザの端末装置への干渉の電力の空間分布をモデル化した干渉モデルに基づいて決定された干渉推定用パラメータの情報を含み、
前記地上セル基地局は、前記干渉推定用パラメータの情報に基づいて、無線リソースrに対する前記広域セルから自セルに在圏するユーザgの端末装置への干渉電力I(r,g)を推定する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項4のシステムにおいて、
前記ヌルスケジューリングの情報に含まれる前記干渉推定用パラメータの情報は、複数の干渉推定用パラメータの値を統計的に処理して得られた情報である、
ことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項4のシステムにおいて、
前記干渉モデルは、前記ヌル点に対応する位置を原点とした直交座標系(x,y,z)において、前記干渉の電力をz方向とし、x-y面上の位置における前記干渉の電力の分布を楕円放物面で近似した干渉モデルであり、
前記干渉推定用パラメータの情報は、前記直交座標系(x,y,z)において定義された次式(2)の係数a
r,b
r及びc
rの値であり、
前記地上セル基地局は、次式(2)と前記係数a
r,b
r及びc
rの値とに基づいて、無線リソースrごとに前記広域セルから自セルの座標位置(x
g,y
g)に位置するユーザgの端末装置への干渉電力I
modelA(r,g)を推定する、
ことを特徴とするシステム。
【数2】
【請求項7】
請求項6のシステムにおいて、
前記干渉推定用パラメータの情報は、前記係数ar,br及びcrのうち一つの係数で他二つの係数を正規化した値であり、
前記地上セル基地局は、前記係数の値に基づいて、無線リソースrごとに前記広域セルから自セルの座標位置(xg,yg)に位置するユーザgの端末装置への干渉電力を推定する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項4のシステムにおいて、
前記干渉モデルは、前記ヌル点に対応する位置を原点とした直交座標系(x,y,z)において、前記干渉の電力をz方向とし、x-y面上の位置における前記干渉の電力の分布を楕円放物面で近似し、前記楕円放物面を前記x-y面に投影したときの電力が等しい楕円の短軸にx軸が一致するように前記直交座標を回転角度φ
rだけ回転させた干渉モデルであり、
前記干渉推定用パラメータの情報は、前記回転後の直交座標系(x',y',z)において定義された次式(3)の係数a
r'の値であり、
前記地上セル基地局は、次式(3)と前記係数a
r'の値とに基づいて、無線リソースrごとに前記広域セルから自セルの座標位置(x
g',y
g')に位置するユーザgの端末装置への干渉電力I
modelB(r,g)を推定する、
ことを特徴とするシステム。
【数3】
【請求項9】
請求項8のシステムにおいて、
前記地上セル基地局は、前記式(3)を係数a
r'で割った次式(4)に基づいて、無線リソースrごとに前記広域セルから自セルの座標位置(x
g',y
g')に位置するユーザgの端末装置への干渉電力の推定値として、前記干渉電力I
modelB(r,g)の正規化された値を計算する、
ことを特徴とするシステム。
【数4】
【請求項10】
請求項4のシステムにおいて、
前記干渉モデルは、前記ヌル点に対応する位置を原点とした直交座標系(x,y,z)において、前記干渉の電力をz方向とし、x-y面上の位置における前記干渉の電力の分布を回転放物面で近似した干渉モデルであり、
前記干渉推定用パラメータの情報は、前記直交座標系(x,y,z)において定義された次式(5)の係数a
r''の値であり、
前記地上セル基地局は、次式(5)と前記係数a
r''の値とに基づいて、無線リソースrごとに前記広域セルから自セルの座標位置(x
g,y
g)に位置するユーザgの端末装置への干渉電力I
modelC(r,g)を推定する、
ことを特徴とするシステム。
【数5】
【請求項11】
請求項10のシステムにおいて、
前記地上セル基地局は、前記式(5)を係数a
r''で割った次式(6)に基づいて、無線リソースrごとに前記広域セルから自セルの座標位置(x
g,y
g)に位置するユーザgの端末装置への干渉電力の推定値として、前記干渉電力I
modelC(r,g)の正規化された値を計算する、
ことを特徴とするシステム。
【数6】
【請求項12】
請求項2乃至11のいずれかのシステムにおいて、
前記地上セル基地局は、前記ユーザ・スケジューリングにおいて、
複数(Nu)の未割り当てユーザの端末装置のユーザ番号gの第1集合の設定及び貪欲法で処理する複数(Nr=rmax)の無線リソースについてのリソース番号rの順番の第2集合の設定を含む初期化処理と、
前記第2集合のリソース番号rの1番目(r=1)からNr番目(r=rmax)の順に、前記第2集合のr番目のリソース番号rをユーザ割り当て対象のリソース番号rとして設定し、リソース番号rの無線リソースを割り当てた場合の干渉電力を計算し、前記干渉電力の計算値又は前記干渉電力の計算値に対応する判定指標値が最小となるユーザの端末装置のユーザ番号gを、前記リソース番号rに割り当てるユーザ番号grとして割り当て、割り当てが確定したユーザ番号grを前記第1集合から削除する処理と、を実行する、
ことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上空のHAPS等に搭載された中継通信局から地上セルへの干渉を抑圧する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上空に位置する高高度プラットフォーム局(HAPS)(「高高度疑似衛星」ともいう。)、地球低軌道(LEO)衛星、静止軌道(GEO)衛星等に搭載されたリピータ型又は基地局装置型の中継通信局から地上又は海上に向けて広域セルを形成する基地局(以下「広域セル基地局」という。)が知られている。このような広域セル基地局がUE(端末)とサービスリンクの通信を行うシステム(以下「上空システム」という。)と、既存の地上セル基地局がUE(端末)とサービスリンクの通信を行うシステム(以下「地上システム」という。)が混在する環境において、同一周波数帯を利用して同時に通信を行う場合、上空システムの中継通信局からの信号が地上システムへの干渉となる。この上空システムからの干渉が発生すると、地上システムのスループットが大きく低下する。同様に、地上システムからの信号も上空システムへの干渉となる。この地上システムからの干渉が発生すると、上空システムのスループットが低下する。
【0003】
特許文献1には、eNB(地上セル基地局)のマップに基づいて、地上セル基地局にヌルを向けて指向性ビームを形成するように上空のHAPのアンテナシステムを調整することにより、地上セルでカバーされている領域を排除又は回避し、地上システムへの干渉を抑圧(低減)する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0272131号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上空システム及び地上システムの混在環境において上空システムから地上システムの地上セル基地局にヌルを向けて指向性ビームを形成する場合、地上セルのセル端付近のエリアでは、地上セル基地局からの下りリンク(DL)の信号が小さく上空システムからの下りリンク(DL)残留干渉の低減したい、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るシステムは、上空に位置する飛行体又は浮揚体に設けられた中継通信局のサービスリンクアンテナから地上又は海上に向けて広域セルを形成する広域セル基地局と、地上又は海上に配置されたアンテナから地上セルを形成する一又は複数の地上セル基地局と、を備えるシステムである。前記広域セル基地局及び前記一又は複数の地上セル基地局は、互いに時間同期された無線フレームで同一周波数帯のサービスリンクの通信を行う。前記広域セル基地局は、前記広域セル内に位置する地上セル基地局に関する情報を取得し、前記地上セル基地局に関する情報に基づいて、時間軸上及び周波数軸上におけるヌルの割り当てに関するヌルスケジューリングを決定し、前記ヌルスケジューリングの情報を前記地上セル基地局に送信する。前記地上セル基地局は、前記広域セル基地局から、前記ヌルスケジューリングの情報を受信し、前記ヌルスケジューリングの情報に基づいて、時間軸上及び周波数軸上におけるユーザの端末装置の割り当てに関するユーザ・スケジューリングを決定し、前記ユーザ・スケジューリングの情報に基づいて、自セルに在圏するユーザの端末装置と通信を行う。
【0007】
前記システムにおいて、前記ヌルスケジューリングの情報は、前記ヌルを形成するときに前記広域セル基地局のアンテナに適用する送信ウェイト行列Wrの情報を含み、前記地上セル基地局は、前記広域セル基地局のアンテナと自セルに在圏するユーザgの端末装置との間の伝搬路応答hgを推定し、前記送信ウェイト行列Wrと前記伝搬路応答hgの推定結果とに基づいて、次式(1)により、無線リソースrに対する前記広域セルから自セルに在圏するユーザgの端末装置への干渉電力I(r,g)を推定してもよい。
【数1】
【0008】
ここで、前記ヌルスケジューリングの情報に含まれる前記送信ウェイト行列Wrの情報は、複数の送信ウェイト行列Wrの要素を統計的に処理して得られた情報(例えば、平均値又は中央値)であってもよい。
【0009】
前記システムにおいて、前記ヌルスケジューリングの情報は、前記広域セル基地局で形成するヌル点に対応する位置を原点として前記広域セルから前記地上セルに在圏するユーザの端末装置への干渉の電力の空間分布をモデル化した干渉モデルに基づいて決定された干渉推定用パラメータの情報を含み、前記地上セル基地局は、前記干渉推定用パラメータの情報に基づいて、無線リソースrに対する前記広域セルから自セルに在圏するユーザgの端末装置への干渉電力I(r,g)を推定してもよい。
【0010】
ここで、前記ヌルスケジューリングの情報に含まれる前記干渉推定用パラメータの情報は、複数の干渉推定用パラメータの値を統計的に処理して得られた情報(例えば、平均値又は中央値)であってもよい。
【0011】
前記システムにおいて、前記干渉モデルは、前記ヌル点に対応する位置を原点とした直交座標系(x,y,z)において、前記干渉の電力をz方向とし、x-y面上の位置における前記干渉の電力の分布を楕円放物面で近似した干渉モデルであり、前記干渉推定用パラメータの情報は、前記直交座標系(x,y,z)において定義された次式(2)の係数a
r,b
r及びc
rの値であり、前記地上セル基地局は、次式(2)と前記係数a
r,b
r及びc
rの値とに基づいて、無線リソースrごとに前記広域セルから自セルの座標位置(x
g,y
g)に位置するユーザgの端末装置への干渉電力I
modelA(r,g)を推定してもよい。
【数2】
【0012】
ここで、前記干渉推定用パラメータの情報は、前記係数ar,br及びcrのうち一つの係数で他二つの係数を正規化した値であり、前記地上セル基地局は、前記係数の値に基づいて、無線リソースrごとに前記広域セルから自セルの座標位置(xg,yg)に位置するユーザgの端末装置への干渉電力を推定してもよい。
【0013】
例えば、前記干渉推定用パラメータの情報は、係数b
r/a
r及びc
r/a
rの値であり、前記地上セル基地局は、次式(3)と前記係数b
r/a
r及びc
r/a
rの値とに基づいて、無線リソースrごとに前記広域セルから自セルの座標位置(x
g,y
g)に位置するユーザgの端末装置への干渉電力の推定値として、前記干渉電力I
modelA(r,g)の正規化された値を計算してもよい。
【数3】
【0014】
前記システムにおいて、前記干渉モデルは、前記ヌル点に対応する位置を原点とした直交座標系(x,y,z)において、前記干渉の電力をz方向とし、x-y面上の位置における前記干渉の電力の分布を楕円放物面で近似し、前記楕円放物面を前記x-y面に投影したときの電力が等しい楕円の短軸にx軸が一致するように前記直交座標を回転角度φ
rだけ回転させた干渉モデルであり、前記干渉推定用パラメータの情報は、前記回転後の直交座標系(x',y',z)において定義された次式(4)の係数a
r'の値であり、前記地上セル基地局は、次式(4)と前記係数a
r'の値とに基づいて、無線リソースrごとに前記広域セルから自セルの座標位置(x
g',y
g')に位置するユーザgの端末装置への干渉電力I
modelB(r,g)を推定してもよい。
【数4】
【0015】
ここで、前記地上セル基地局は、前記式(4)を係数a
r'で割った次式(5)に基づいて、無線リソースrごとに前記広域セルから自セルの座標位置(x
g',y
g')に位置するユーザgの端末装置への干渉電力の推定値として、前記干渉電力I
modelB(r,g)の正規化された値を計算してもよい。
【数5】
【0016】
前記システムにおいて、前記干渉モデルは、前記ヌル点に対応する位置を原点とした直交座標系(x,y,z)において、前記干渉の電力をz方向とし、x-y面上の位置における前記干渉の電力の分布を回転放物面で近似した干渉モデルであり、前記干渉推定用パラメータの情報は、前記直交座標系(x,y,z)において定義された次式(6)の係数a
r''の値であり、前記地上セル基地局は、次式(6)と前記係数a
r''の値とに基づいて、無線リソースrごとに前記広域セルから自セルの座標位置(x
g,y
g)に位置するユーザgの端末装置への干渉電力I
modelC(r,g)を推定してもよい。
【数6】
【0017】
ここで、前記式(6)を係数a
r''で割った次式(7)により、座標位置(x
g',y
g')における無線リソースrに対する前記広域セルから自セルに在圏するユーザgの端末装置への干渉電力の推定値として、前記干渉電力I
modelB(r,g)の正規化された値を計算してもよい。
【数7】
【0018】
前記システムにおいて、前記複数の地上セル基地局はそれぞれ、時分割複信(TDD)方式でサービスリンクの通信を行い、自セルの上りリンク(UL)及び下りリンク(DL)の切り替え情報を、前記広域セル基地局に送信し、前記広域セル基地局は、前記複数の地上セル基地局のそれぞれから、前記上りリンク(UL)及び下りリンク(DL)の切り替え情報を受信し、地上セル基地局データベースから、前記広域セル内に位置する地上セル基地局に関する情報を取得し、前記複数の地上セル基地局のそれぞれから受信した前記上りリンク(UL)及び下りリンク(DL)の切り替え情報と、前記地上セル基地局データベースから取得した前記地上セル基地局に関する情報とに基づいて、時間軸上及び周波数軸上におけるヌルの割り当てに関するヌルスケジューリングを、前記地上セル基地局ごとに決定し、前記ヌルスケジューリングの情報を前記複数の地上セル基地局のそれぞれに送信し、前記複数の地上セル基地局はそれぞれ、前記広域セル基地局から、自身の地上セル基地局に関するヌルスケジューリングの情報を受信し、前記ヌルのスケジューリングの情報に基づいて、前記広域セルから自セルに在圏するユーザの端末装置への干渉を推定し、時間軸上及び周波数軸上におけるユーザの端末装置の割り当てに関するユーザ・スケジューリングを決定し、前記ユーザ・スケジューリングの情報に基づいて、自セルに在圏するユーザの端末装置と通信を行ってもよい。
【0019】
ここで、前記地上セル基地局は、前記ユーザ・スケジューリングにおいて、複数(Nu)の未割り当てユーザの端末装置のユーザ番号gの第1集合の設定及び貪欲法で処理する複数(Nr=rmax)の無線リソースについてのリソース番号rの順番の第2集合の設定を含む初期化処理と、前記第2集合のリソース番号rの1番目(r=1)からNr番目(r=rmax)の順に、前記第2集合のr番目のリソース番号rをユーザ割り当て対象のリソース番号rとして設定し、リソース番号rの無線リソースを割り当てた場合の干渉電力を計算し、前記干渉電力の計算値又は前記干渉電力の計算値に対応する判定指標値が最小となるユーザの端末装置のユーザ番号gを、前記リソース番号rに割り当てるユーザ番号grとして割り当て、割り当てが確定したユーザ番号grを前記第1集合から削除する処理と、を実行してもよい。
【0020】
前記システムにおいて、前記複数の地上セル基地局はそれぞれ、周波数分割複信(FDD)方式でサービスリンクの通信を行い、前記広域セル基地局は、地上セル基地局データベースから、前記広域セル内に位置する複数の地上セル基地局に関する情報を取得し、前記地上セル基地局データベースから取得した前記地上セル基地局に関する情報に基づいて、時間軸上及び周波数軸上におけるヌルの割り当てに関するヌルスケジューリングを、前記地上セル基地局ごとに決定し、前記ヌルスケジューリングの情報を前記複数の地上セル基地局のそれぞれに送信し、前記複数の地上セル基地局はそれぞれ、前記広域セル基地局から、自局に関するヌルスケジューリングの情報を受信し、前記ヌルのスケジューリングの情報に基づいて、前記広域セルから自セルに在圏するユーザの端末装置への干渉を推定し、時間軸上及び周波数軸上におけるユーザの端末装置の割り当てに関するユーザ・スケジューリングを決定し、前記ユーザ・スケジューリングの情報に基づいて、自セルに在圏するユーザの端末装置と通信を行ってもよい。
【0021】
ここで、前記地上セル基地局は、前記ユーザ・スケジューリングにおいて、複数(Nu)の未割り当てユーザの端末装置のユーザ番号gの第1集合の設定及び貪欲法で処理する複数(Nr=rmax)の無線リソースについてのリソース番号rの順番の第2集合の設定を含む初期化処理と、前記第2集合のリソース番号rの1番目(r=1)からNr番目(r=rmax)の順に、前記第2集合のr番目のリソース番号rをユーザ割り当て対象のリソース番号rとして設定し、リソース番号rの無線リソースを割り当てた場合の干渉電力を計算し、前記干渉電力の計算値又は前記干渉電力の計算値に対応する判定指標値が最小となるユーザの端末装置のユーザ番号gを、前記リソース番号rに割り当てるユーザ番号grとして割り当て、割り当てが確定したユーザ番号grを前記第1集合から削除する処理と、を実行してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、広域セルを形成する上空の中継通信局から地上セル基地局のアンテナに向けて指向性ビームのヌルを形成するときの残留干渉を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施形態に係るHAPSを含む通信システムの全体構成の一例を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るHAPSの一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るHAPSの他の例を示す側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るHAPSのサービスリンクのアレーアンテナの一例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るHAPSのサービスリンクのアレーアンテナの他の例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、HAPSのアレーアンテナを用いたMU-MIMOにおけるビームフォーミングを実施する場合の課題を示す説明図である。
【
図7】
図7は、HAPSから地上基地局(アンテナ)に向けてビームフォーミングのヌルを形成する場合の課題を示す説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るHAPSから地上セルに向けて形成するビームフォーミングのヌルの位置を変化させるヌルスイーピングの一例を示す説明図である。
【
図9】
図9(a)は、実施形態に係るHAPSから地上セルに向けて無線リソースごとに2つのヌルを切り替えて形成する場合のヌルスイーピングの一例を示す説明図である。
図9(b)は、同ヌルスイーピングにおけるユーザ・スケジューリングの無線リソースとヌルと地上セルユーザの端末装置との関係の一例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係るHAPSのサービスリンクのアレーアンテナに適用する送信ウェイト行列を用いて地上セルユーザ(端末装置)の干渉電力を推定する厳密方式の場合のユーザスケジュールアルゴリズムの一例を示す説明図である。
【
図11】
図11(a)、
図11(b)及び
図11(c)はそれぞれ、実施形態に係る地上セルのヌル点を中心としたHAPSからの干渉の電力の空間分布をモデル化した干渉電力分布のモデルの一例を示す説明図である。
【
図12】
図12(a)、
図12(b)及び
図12(c)はそれぞれ、
図11(a)、
図11(b)及び
図11(c)の干渉モデルを用いた干渉推定方式A、B及びCにおける干渉電力の等高線と座標との関係を2次元表示した説明図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係るヌルスイーピングに適用可能な干渉推定方式Aにおける干渉電力の計算式の係数を決定する係数決定方法の一例を示す説明図である。
【
図14】
図14は、HAPSのサービスリンクのアレーアンテナの各素子と地上セルの対象地点との間の伝搬路ベクトルの一例を示す説明図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係るヌルスイーピングに適用可能な干渉推定方式Bにおける干渉電力の計算式の係数を決定する係数決定方法の一例を示す説明図である。
【
図16】
図16(a)及び
図16(b)はそれぞれ、干渉推定方式Bの係数決定方法における座標軸の回転の一例を示す説明図である。
【
図17】
図17は、実施形態に係るヌルスイーピングに適用可能な干渉推定方式Cにおける干渉電力の計算式の係数を決定する係数決定方法の一例を示す説明図である。
【
図18】
図18は、実施形態に係る送信ウェイト行列を用いる厳密方式で推定した干渉電力を用いるユーザ・スケジューリング方式を適用した場合のシステム全体における制御情報を流れの一例を示す説明図である。
【
図19】
図19は、実施形態に係る干渉推定方式Aで推定した干渉電力を用いるユーザ・スケジューリング方式を適用した場合システム全体における制御情報を流れの一例を示す説明図である。
【
図20】
図20は、実施形態に係る干渉推定方式Bで推定した干渉電力を用いるユーザ・スケジューリング方式を適用した場合のシステム全体における制御情報を流れの一例を示す説明図である。
【
図21】
図21は、実施形態に係る干渉推定方式Cで推定した干渉電力を用いるユーザ・スケジューリング方式を適用した場合のシステム全体における制御情報を流れの一例を示す説明図である。
【
図22】
図22(a)及び
図22(b)は、実施形態に係る厳密方式、干渉推定方式A、干渉推定方式B及び干渉推定方式Cのそれぞれを用いた干渉電力の推定のコンピュータシミュレーションの一例における設定条件を示す説明図である。
【
図23】
図23(a)、
図23(b)、
図23(c)及び
図23(d)はそれぞれ、
図22(a)及び
図22(b)の設定条件の下で、実施形態に係る厳密方式、干渉推定方式A、干渉推定方式B及び干渉推定方式Cのそれぞれを用いて干渉電力を推定したコンピュータシミュレーションの結果の一例を示す説明図である。
【
図24】
図24(a)及び
図24(b)は、実施形態に係る厳密方式、干渉推定方式A、干渉推定方式B及び干渉推定方式Cのそれぞれを用いた干渉電力の推定のコンピュータシミュレーションの他の例における設定条件を示す説明図である。
【
図25】
図25(a)、
図25(b)、
図25(c)及び
図25(d)はそれぞれ、
図24(a)及び
図24(b)の設定条件の下で、実施形態に係る厳密方式、干渉推定方式A、干渉推定方式B及び干渉推定方式Cのそれぞれを用いて干渉電力を推定したコンピュータシミュレーションの結果の一例を示す説明図である。
【
図26】
図26は、実施形態に係る干渉モデルに基づく干渉推定方式A、干渉推定方式B及び干渉推定方式Cを応用したユーザ・スケジューリング方式の共通アルゴリズムの一例を示す説明図である。
【
図27】
図27(a)は、パラメータ数の削減を組み合わせる干渉推定方式Aの干渉電力の等高線及び座標との関係の一例を示す説明図である。
図27(b)は、干渉推定方式Aとパラメータ数の削減を組み合わせたユーザ・スケジューリング方式A-2のアルゴリズムの一例を示す説明図である。
【
図28】
図28(a)は、パラメータ数の削減を組み合わせる干渉推定方式Bの干渉電力の等高線及び座標との関係の一例を示す説明図である。
図28(b)は、干渉推定方式Bとパラメータ数の削減を組み合わせたユーザ・スケジューリング方式B-2のアルゴリズムの一例を示す説明図である。
【
図29】
図29(a)は、パラメータ数の削減を組み合わせる干渉推定方式Cの干渉電力の等高線及び座標との関係の一例を示す説明図である。
図29(b)は、干渉推定方式Cとパラメータ数の削減を組み合わせたユーザ・スケジューリング方式C-2のアルゴリズムの一例を示す説明図である。
【
図30】
図30は、実施形態に係るユーザ・スケジューリング方式A-2を適用した場合のシステム全体における制御パラメータ情報の流れの一例を示す説明図である。
【
図31】
図31は、実施形態に係るユーザ・スケジューリング方式B-2を適用した場合のシステム全体における制御パラメータ情報の流れの一例を示す説明図である。
【
図32】
図32は、実施形態に係るユーザ・スケジューリング方式C-2を適用した場合のシステム全体における制御パラメータ情報の流れの一例を示す説明図である。
【
図33】
図33は、実施形態に係る厳密方式及びモデルを用いた干渉推定方式A-2、B-2C-2で干渉電力を推定してユーザ・スケジューリングを行った場合の地上セルにおけるSINRの改善効果を計算したコンピュータシミュレーション結果の一例を示す説明図である。
【
図34】
図34は、実施形態に係る厳密方式及びモデルを用いた干渉推定方式A-2、B-2C-2で干渉電力を推定してユーザ・スケジューリングを行った場合の地上セルにおけるSINRの改善効果を計算したコンピュータシミュレーション結果の他の例を示す説明図である。
【
図35】
図35は、実施形態に係る地上基地局データベースを有する通信システムの全体構成の一例を示す説明図である。
【
図36】
図36は、
図35の通信システムにおけるHAPSに搭載された中継通信局の主要構成の一例を示すブロック図である。
【
図37】
図37は、
図35の通信システムにおけるHAPSに搭載された中継通信局の主要構成の他の例を示すブロック図である。
【
図38】
図38は、
図35の通信システムにおける地上セル基地局の主要構成の一例を示すブロック図である。
【
図39】
図39は、実施形態に係る通信システムにおけるヌル形成を伴うビームフォーミング制御及びサービスリンク通信を行うときのHAPS基地局及び地上セル基地局における処理フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係るシステムは、地上又は海上に向けてセルを形成し、セルに在圏する複数の端末装置(UE)との間で、多素子のアレーアンテナを用いてMU-MIMO通信を行うことができる広域セル基地局(HAPS基地局)の中継通信局が搭載された飛行体又は浮揚体である上空滞在型の通信中継装置(HAPS)を備える通信システム(HAPSシステム)である。この通信システム(HAPSシステム)は、広域セルであるHAPSセル(第1セル)内に同一周波数帯を用いる既存の地上基地局で形成される地上セル(第2セル)が位置する場合に、HAPSの中継通信局から地上セル基地局のアンテナに向けて指向性ビームのヌルを形成して干渉を抑圧するときの残留干渉を低減することができる。本実施形態に係る通信システムは、多数の端末装置への同時接続や低遅延化などに対応する第5世代等の次世代の移動通信の3次元化ネットワークの実現に適する。
【0025】
特に、本実施形態のシステムでは、HAPSの中継通信局から地上セルに向けて形成する指向性ビームのヌルの位置を無線リソースごとに変化させるヌルスイーピングを行うことにより、地上セルの中央部及びセル端部のそれぞれにおける端末装置の下りリンク通信への干渉を抑圧(低減)し、地上セル全体でSINR(信号対干渉及び雑音の電力比)を改善できる。
【0026】
図1は、実施形態に係るHAPS(上空滞在型の通信中継装置)を含む通信システムの全体構成の一例を示す概略構成図である。
図1において、本実施形態の通信システムを構成するHAPSシステムは、中継通信局が搭載された飛行体又は浮揚体である上空滞在型の通信中継装置(無線中継装置)としての高高度プラットフォーム局(以下「HAPS」又は「上空PF(プラットフォーム)」ともいう。)、(「高高度疑似衛星」、「成層圏プラットフォーム」ともいう。)10を備えている。HAPS10は、所定高度の空域に位置して広域セル(第1セル)としての3次元セル(以下「HAPSセル」ともいう。)100Cを形成する。HAPS(上空PF)10は、自律制御又は外部からの制御により地面又は海面から所定高度の空域(浮揚空域)に浮遊あるいは飛行して位置するように制御される飛行体又は浮揚体(例えば、ソーラープレーン、飛行船、ドローン、気球)に、中継通信局が搭載されたものである。なお、上空滞在型の通信中継装置として機能することができるHAPS(上空PF)10は、地球低軌道(LEO)衛星、静止軌道(GEO)衛星等の人工衛星に中継通信局が搭載されたものであってもよい。また、本実施形態の通信システムは、HAPS10が通信する一又は複数の端末装置を含んでもよいし、後述のゲートウェイ局(フィーダ局)を含んでもよい。
【0027】
HAPS10が位置する空域は、例えば、地上(又は海や湖などの水上)の高度が11[km]以上及び50[km]以下の成層圏の空域である。この空域は、気象条件が比較的安定している高度15[km]以上25[km]以下の空域であってもよく、特に高度がほぼ20[km]の空域であってもよい。
【0028】
HAPSは一般的な人工衛星の飛行高度よりも低く、地上や海上の基地局よりも高い場所を飛行するため、衛星通信よりも小さい伝搬ロスでありながら、高い見通し率を確保できる。この特徴から、HAPSから地上又は海上のセルラ携帯端末等のユーザ装置である端末装置(移動局)61に対して通信サービスを提供することも可能である。通信サービスをHAPSから提供することで、これまで多数の地上又は海上の基地局でカバーされていた広いエリアを少数のHAPSで一度にカバーできるため、低コストで安定した通信サービスを提供できるメリットがある。
【0029】
HAPS10の中継通信局は、利用者の端末装置(以下「UE」(ユーザ装置)という。)と無線通信するためのビームを地面(又は海面)に向けて形成することにより、UE61と無線通信可能なHAPSセル100Cを形成する。このHAPSセル100Cの地上(又は海上)におけるフットプリント100Fからなるサービスエリア(「HAPSサービスエリア」ともいう。)100Aの半径は、例えば数10[km]~100[km]である。
【0030】
なお、本実施形態において、HAPS10の中継通信局は、複数の3次元セル(例えば、3セル又は7セル)を形成し、その複数の3次元セルの地上(又は海上)における複数のフットプリントからなるサービスエリア100Aを形成してもよい。
【0031】
本実施形態の通信システムは、広域セル基地局(以下「HAPS基地局」ともいう。)を構成する上空の中継通信局を搭載したHAPS10と、地上又は海上に位置する干渉抑圧対象であるセルを形成する低位置の基地局(以下「地上セル基地局」又は「地上基地局」という。)30が混在した環境になっている。
図1の例では、HAPSセル100Cの内側に複数の低位置の地上基地局30のアンテナ(以下「基地局アンテナ」ともいう。)が位置し、3次元のセル100Cのフットプリント100Fからなるサービスエリア100Aの内側に、セル100Cのフットプリント100Fよりも小さい地上基地局30のセル(以下「地上セル」という。)300Cが形成される。
【0032】
HAPS10に搭載された中継通信局を含む広域セル基地局と、地上基地局(例えばeNodeB、gNodeB)30はそれぞれ、自局のセル100C、300Cに在圏するUE61,65との間のサービスリンクの無線通信に、互いに時間同期された無線フレーム及び同一の周波数帯を用いる。地上基地局30は、基地局アンテナを有するRRH(遠隔無線ヘッド)とBBU(ベースバンドユニット)とを光回線で接続した構成であってもよい。この場合、
図1中の基地局30の位置に、基地局アンテナを有するRRHが位置する。
【0033】
HAPS10に搭載された中継通信局は、例えば、地上(又は海上)側の移動通信網80のコアネットワークに接続され上空を向いたアンテナ71を有する中継局としてのゲートウェイ局(「フィーダ局」ともいう。)70と無線通信する基地局(例えば、eNodeB、gNodeB)である。HAPS10の中継通信局は、地上又は海上に設置されたフィーダ局70を介して、移動通信網80のコアネットワークに接続されている。HAPS10とフィーダ局70との間の通信は、マイクロ波などの電波による無線通信で行ってもよいし、レーザ光などを用いた光通信で行ってもよい。
【0034】
HAPS10に搭載された中継通信局(「無線中継局」ともいう。)は、リピータ型の中継通信局であってもよいし、又は、基地局装置型の中継通信局であってもよい。リピータ型の中継通信局は、フィーダ局70に搭載される基地局装置と組み合わされて広域セル基地局を構成する。基地局装置型の中継通信局は、広域セル基地局として機能する。
【0035】
リピータ型の中継通信局は、例えば、リピータと周波数変換装置とを有する。リピータは、サービスリンクアンテナを介して受信したサービスリンクの受信信号を増幅する低ノイズ増幅器、サービスリンクアンテナを介して送信する送信信号を増幅する電力増幅器等を有する。周波数変換装置は、サービスリンクの周波数とフィーダリンクの周波数との間の変換を行う。フィーダ局70は、例えば、基地局装置と周波数変換装置を有する。基地局装置は、サービスリンクのベースバンド信号を処理するベースバンド処理装置、バックホール回線を介してコアネットワークと通信するための通信インターフェース部等を有する。周波数変換装置は、基地局装置に対して入出力されるサービスリンク信号の周波数とフィーダリンク信号の周波数との間の変換を行う。
【0036】
基地局装置型の中継通信局は、例えば、基地局装置とフィーダリンク送受信機とを有する。基地局装置は、サービスリンクの受信信号を増幅する低ノイズ増幅器、サービスリンクアンテナを介して送信する送信信号を増幅する電力増幅器、サービスリンクのベースバンド信号処理するベースバンド処理装置などを有する。フィーダリンク送受信機は、フィーダ局70との間で送受信されるバックホール回線の信号の送信及び受信を行う。フィーダ局70は、上空の中継通信局との間で送受信されるバックホール回線の信号の送信及び受信を行う。
【0037】
HAPS10は、内部に組み込まれたコンピュータ等で構成された制御部が制御プログラムを実行することにより、自身の浮揚移動(飛行)や中継通信局での処理を自律制御してもよい。例えば、HAPS10はそれぞれ、自身の現在位置情報(例えばGPS位置情報)、予め記憶した位置制御情報(例えば、飛行スケジュール情報)、周辺に位置する他のHAPSの位置情報などを取得し、それらの情報に基づいて浮揚移動(飛行)や中継通信局での処理を自律制御してもよい。
【0038】
また、HAPS10の浮揚移動(飛行)や中継通信局での処理は、移動通信網80の通信センター等に設けられた管理装置としての管理装置(「遠隔制御装置」ともいう。)によって制御できるようにしてもよい。管理装置は、例えば、PCなどのコンピュータ装置やサーバ等で構成することができる。この場合、HAPS10は、管理装置からの制御情報を受信したり管理装置に監視情報などの各種情報を送信したりできるように制御用通信端末装置(例えば、移動通信モジュール)が組み込まれ、管理装置から識別できるように端末識別情報(例えば、IPアドレス、電話番号など)が割り当てられるようにしてもよい。制御用通信端末装置の識別には通信インターフェースのMACアドレスを用いてもよい。また、HAPS10は、自身又は周辺のHAPSの浮揚移動(飛行)や中継通信局での処理に関する情報、HAPS10の状態に関する情報や各種センサなどで取得した観測データなどの監視情報を、管理装置等の所定の送信先に送信するようにしてもよい。制御情報は、HAPSの目標飛行ルート情報を含んでもよい。監視情報は、HAPS10の現在位置、飛行ルート履歴情報、対気速度、対地速度及び推進方向、HAPS10の周辺の気流の風速及び風向、並びに、HAPS10の周辺の気圧及び気温の少なくとも一つの情報を含んでもよい。
【0039】
図2は、実施形態の通信システムに用いられるHAPS10の一例を示す斜視図である。
図2のHAPS10は、ソーラープレーンタイプのHAPSであり、長手方向の両端部側が上方に反った主翼部101と、主翼部101の短手方向の一端縁部にバス動力系の推進装置としての複数のモータ駆動のプロペラ103とを備える。主翼部101の上面には、太陽光発電機能を有する太陽光発電部としての太陽光発電パネル(以下「ソーラーパネル」という。)102が設けられている。また、主翼部101の下面の長手方向の2箇所には、板状の連結部104を介して、ミッション機器が収容される複数の機器収容部としてのポッド105が連結されている。各ポッド105の内部には、ミッション機器としての中継通信局110と、バッテリー106とが収容されている。また、各ポッド105の下面側には離発着時に使用される車輪107が設けられている。ソーラーパネル102で発電された電力はバッテリー106に蓄電され、バッテリー106から供給される電力により、プロペラ103のモータが回転駆動され、中継通信局110による無線中継処理が実行される。
【0040】
図3は、実施形態の通信システムに用いられるHAPS10の他の例を示す側面図である。
図3のHAPS10は、無人飛行船タイプのHAPSであり、ペイロードが大きいため大容量のバッテリーを搭載することができる。HAPS10は、浮力で浮揚するためのヘリウムガス等の気体が充填された飛行船本体201と、バス動力系の推進装置としてのモータ駆動のプロペラ202と、ミッション機器が収容される機器収容部203とを備える。機器収容部203の内部には、中継通信局110とバッテリー204とが収容されている。バッテリー204から供給される電力により、プロペラ202のモータが回転駆動され、中継通信局110による無線中継処理が実行される。なお、飛行船本体201の上面に、太陽光発電機能を有するソーラーパネルを設け、ソーラーパネルで発電された電力をバッテリー204に蓄電するようにしてもよい。
【0041】
なお、以下の実施形態では、UE61と無線通信する上空滞在型の通信中継装置が、
図2のソーラープレーンタイプのHAPS10及び無人飛行船タイプのHAPS20のいずれの一方の場合について図示して説明するが、上空滞在型の通信中継装置は
図3の無人飛行船タイプのHAPS10でもよい。また、以下の実施形態は、HAPS10以外の他の上空滞在型の通信中継装置にも同様に適用できる。
【0042】
また、HAPS10とフィーダ局としてのゲートウェイ局(以下「GW局」と略す。)70との間のリンクFL(F),FL(R)を「フィーダリンク」といい、HAPS10とUE61の間のリンクを「サービスリンク」という。特に、HAPS10とGW局70との間の区間を「フィーダリンクの無線区間」という。また、GW局70からHAPS10を経由してUE61に向かう通信の下りリンクを「フォワードリンク」FL(F)といい、UE61からHAPS10を経由してGW局70に向かう通信のアップリンクを「リバースリンク」FL(R)ともいう。
【0043】
本実施形態の通信システムにおいて、地上基地局30とUE65との無線通信の上りリンク及び下りリンクの複信方式は、特定の方式に限定されず、例えば、時分割複信(Time Division Duplex:TDD)方式でもよいし、周波数分割複信(Frequency Division Duplex:FDD)方式でもよい。また、地上基地局30とUE65との無線通信のアクセス方式は、特定の方式に限定されず、例えば、FDMA(Frequency Division Multiple Access)方式、TDMA(Time Division Multiple Access)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、又は、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)であってもよい。
【0044】
同様に、中継通信局110を介したUE61との無線通信の上りリンク及び下りリンクの複信方式は、特定の方式に限定されず、例えば、時分割複信(TDD)方式でもよいし、周波数分割複信(FDD)方式でもよい。また、中継通信局110を介したUE61との無線通信のアクセス方式は、特定の方式に限定されず、例えば、FDMA方式、TDMA方式、CDMA方式、又は、OFDMAであってもよい。
【0045】
また、本実施形態のサービスリンクの無線通信には、ダイバーシティ・コーディング、送信ビームフォーミング、空間分割多重化(SDM:Spatial Division Multiplexing)等の機能を有し、多数のアンテナ素子を有するアレーアンテナを用いてマルチレイヤ伝送を行うmassive MIMO(多入力多出力:Multiple-Input Multiple-Output)伝送方式を用いている。特に、本実施形態では、HAPS10の中継通信局からセル内の複数のUE61への下りリンク通信において、複数の異なるUE61に同一時刻・同一周波数で信号を送信するMU-MIMO(Multi-User MIMO)技術を用いている。多数のアンテナ素子を有するアレーアンテナを用いてMU-MIMO伝送を行うことにより、各UE61の通信環境に応じてUE61ごとに適切なビームを向けて通信できるため、セル全体の通信品質を改善できる。また、同一の無線リソース(時間・周波数リソース)を用いて複数のUE61との通信ができるため、システム容量を拡大することができる。
【0046】
図4及び
図5はそれぞれ、本実施形態のHAPS10におけるMU-MIMO伝送方式に用いることができる多素子で構成されるアレーアンテナ130の一例を示す斜視図である。
【0047】
図4のアレーアンテナ130は、平板状のアンテナ基体を有し、そのアンテナ基体の平面状のアンテナ面に沿って多数のパッチアンテナなどのアンテナ素子130aが互いに直交する軸方向に二次元的に配列された平面型のアレーアンテナである。
【0048】
図5のアレーアンテナ130は、円筒状又は円柱状のアンテナ基体を有し、そのアンテナ基体の第1アンテナ面としての円周側面の軸方向及び周方向のそれぞれに沿って多数のパッチアンテナなどのアンテナ素子130aが配置されたシリンダー型のアレーアンテナである。
図5のアレーアンテナ130では、図示のように、第2アンテナ面としての底面に沿って複数のパッチアンテナなどのアンテナ素子130aが円形状に配置されていてもよい。また、
図5におけるアンテナ基体は、多角筒状又は多角円柱状のアンテナ基体であってもよい。
【0049】
なお、アレーアンテナ130の形状、並びに、アンテナ素子の数、種類及び配置は、
図4及び
図5に例示したものに限定されない。
【0050】
図6は、HAPS10のアレーアンテナ130を用いたMU-MIMO伝送方式におけるビームフォーミングを実施する場合の課題を示す説明図である。
図6のHAPS10のアレーアンテナ130とサービスエリア100A(セル100Cのフットプリント100F)との間のサービスリンクSLにおいて、MU-MIMO伝送方式を用いて、各UE61の通信環境に応じて、各UE61(1)~61(4)に対して個別に適切な高利得のビーム100B(1)~100B(4)を向けて長距離の伝搬損失を補って通信するビームフォーミングを行うことにより、通信品質を改善することができる。特に、サービスリンクSLにおいて同一の無線リソース(例えば、同一の時間・周波数のリソースブロック(RB))を用いて複数のUE61と通信するMU-MIMO伝送方式を用いた場合は、システム容量を改善することができる。
【0051】
しかしながら、
図6のようにHAPS10と地上基地局30(1),30(2)が混在した環境において、HAPS10及び地上基地局30(1),30(2)が同一の周波数帯を利用して各セルに在圏するUE61,65と同時に通信を行う場合、HAPS10から送信した下りリンクの無線送信信号は、地上基地局30(1),30(2)と地上セル300C(1),300C(2)に在圏するUE65(1),65(2)との間のサービスリンクの通信(以下「地上システムの通信」ともいう。)に対する干渉となるおそれがある。このHAPS10からの干渉が発生すると、地上基地局30(1),30(2)とUE65との間の通信のスループットが大きく低下する。
【0052】
本実施形態では、HAPS10において、地上基地局の基地局アンテナの位置情報に基づいて、HAPSセル内に位置する地上基地局(アンテナ)に対してビームパターン(ビームの空間分布のプロファイル)のヌルが向くようにHAPSセルのビームフォーミング制御を行っている。これにより、HAPSセルに在圏する複数のUE61のそれぞれに対してマルチビームによって所望信号を送信する通信品質の大きな低下を発生させることなく、HAPS10が地上システムの通信に与える干渉を抑圧している。
【0053】
図7は、HAPSから地上基地局(アンテナ)に向けてビームフォーミングのヌルを形成する場合の課題を示す説明図である。
図7に示すように、HAPS10のアレーアンテナ130からHAPSサービスエリア100A内に位置する地上基地局(アンテナ)30に対してビームパターンのヌル100Nを形成する場合、地上セル300Cの地上基地局30が位置するセル中央のUE65(1)では、地上基地局30から受信する信号が大きく、上空のHAPS10のアレーアンテナ130から受ける干渉が小さい。しかしながら、地上セル300Cのセル端付近に位置するUE65(2)、65(3)では、地上基地局30から受信する信号が小さく、上空のHAPS10のアレーアンテナ130から受ける干渉が大きいため、地上セル300Cの全体での通信品質(例えば、SINR)が悪い。
【0054】
図8は、実施形態に係るHAPS10から地上セル300Cに向けて形成するビームフォーミングのヌル100Nの位置を変化させるヌルスイーピングの一例を示す説明図である。上記地上セル300Cの全体での通信品質(例えば、SINR)を改善するため、本実施形態では、
図8に示すようにHAPS10のアレーアンテナ130から地上セル300Cに向けて形成する指向性ビームのヌル100Nの位置を無線リソースごとに変化させるヌルスイーピングを行っている。これにより、地上セル300Cの中央部及びセル端部のそれぞれにおけるUE65(1)~65(3)の下りリンク通信への干渉を抑圧(低減)している。
【0055】
図9(a)は、実施形態に係るHAPS10から地上セル300Cに向けて無線リソースごとに2つのヌルを切り替えて形成する場合のヌルスイーピングの一例を示す説明図である。
図9(b)は、同ヌルスイーピングにおけるユーザ・スケジューリングの無線リソース40(1)~40(3)とヌル#1点及びヌル#2点と地上セルユーザのUE(端末装置)65(1)~65(3)との関係の一例を示す説明図である。複数の無線リソース40(1)~40(3)は、時間、周波数、又は、時間及び周波数の両方が互いに異なる。
図9(a)及び
図9(b)の例では、HAPS10がヌル#1点に向けて指向性ビームのヌル100N(1)を形成する無線リソース40(1)において、地上セル基地局30がUE65(1)を割り当てる。また、HAPS10がヌル#2点に向けて指向性ビームのヌル100N(2)を形成する無線リソース40(2)において、地上セル基地局30がUE65(3)を割り当てる。また、HAPS10がヌル#1点に向けて指向性ビームのヌル100N(1)を形成する無線リソース40(3)において、地上セル基地局30がUE65(2)を割り当てる。
【0056】
[厳密方式]
本実施形態のシステムにおいて、HAPS10によるヌルスイーピング及び地上基地局30によるユーザ・スケジューリングを行う場合、対象となる地上セル300Aに在圏する地上セルユーザgのUE65における干渉電力を推定(計算)する必要がある。干渉電力を推定する方式としては、HAPS10のアレーアンテナ130に適用する送信ウェイト行列
【数8】
と、HAPS10のアレーアンテナ130と地上セルユーザg(UE65)との間の伝搬路応答
【数9】
とを用いる方式(以下「厳密方式」という。)がある。ここで、送信ウェイト行列Wrは、プリコーディング行列と送信電力制御行列の積で表される。また、Ntは、HAPS10のアレーアンテナ(サービスリンクアンテナ)130の素子数であり、Nuは、空間多重数(HAPSユーザ数)である。
【0057】
図10は、実施形態に係るHAPS10のサービスリンクのアレーアンテナ130に適用する送信ウェイト行列Wrを用いて地上セルユーザgのUE65の干渉電力を推定する厳密方式の場合のユーザスケジュールアルゴリズム(貪欲法的アルゴリズム)の一例を示す説明図である。
図10の例では、貪欲法により、あるリソースrに割り当てた場合の干渉電力が最小となるユーザgを逐次選択することができる。
【0058】
図10のユーザスケジューリングアルゴリズムの例では、まず、複数(Nu)の未割り当てユーザの端末装置のユーザ番号gの第1集合の設定及び貪欲法で処理する複数(Nr=r
max)の無線リソースについてのリソース番号rの順番の第2集合の設定を含む初期化処理を実行する。次に、前記第2集合のリソース番号rの1番目(r=1)からNr番目(r=r
max)の順に、前記第2集合のr番目のリソース番号rをユーザ割り当て対象のリソース番号rとして設定し、地上セルユーザgについて、リソース番号rの無線リソースを割り当てた場合のHAPS10から地上セルユーザgの干渉電力I(r,g)を次式(10)で計算する処理と、その干渉電力が最小となる地上セルユーザgを、前記リソース番号rに割り当てるユーザ番号g
rとして割り当る処理と、割り当てが確定したユーザ番号g
rを前記第1集合から削除する処理を実行する。
【0059】
以下、残りのすべてのユーザの無線リソースへの割り当てが完了するまで、上記ユーザスケジューリングアルゴリズムを繰り返し実行する。これにより、地上セル300Cに在圏するすべての地上基地局ユーザ(地上セルユーザ)の無線リソースへの割り当てが完了する。
【0060】
図10のユーザスケジューリングアルゴリズムにおいて、地上基地局30は、次式(10)で示すHAPS10から地上セルユーザg(UE65)への干渉電力I(r,g)を無線リソース(時間、周波数)ごとに推定(計算)する必要がある。
【数10】
【0061】
しかしながら、地上基地局30は単独で上記干渉電力を推定することができない。例えば、上記式(10)に含まれるHAPS10のアレーアンテナ130と地上セルユーザg(UE65)との間の伝搬路応答hgは、地上セルユーザg(UE65)の位置情報と、HAPS10から通知される情報とに基づいて、伝搬環境(モデル)を仮定し理論計算することができる。伝搬路応答hgの推定に必要なHAPS10からの通知情報は、例えば、HAPS10のアレーアンテナ130の諸元の情報、及び、HAPS10から定期的に通知されるHAPS機体の位置及び姿勢の情報であり、HAPS10から通知が必要なパラメータは少ない。
【0062】
また、上記式(10)に含まれるHAPS10のアレーアンテナ130に適用される送信ウェイト行列Wrは、HAPS10側しか知らないため、HAPS10から地上基地局30に通知される。この送信ウェイト行列Wrは、単純に通知すればよいが、通知が必要なパラメータ(行列の要素)のデータ量が膨大になる。例えば、アレーアンテナ130の素子数Ntが数百、ユーザ多重数Nuが数十の場合、通知される送信ウェイト行列Wrのパラメータ(行列の要素)は数千個の複素数になる。更に、送信ウェイト行列Wrは無線(時間、周波数)リソースごとに変化するため、常に更新が必要になる。
【0063】
[干渉モデル方式]
以上示したように、上記ヌルスイーピングで用いる地上セルユーザgのUE65における干渉電力の推定を上記厳密方式で行う場合、HAPS10から地上基地局30に通知されるパラメータ(送信ウェイト行列の要素)の情報量が膨大になる。このHAPS10から地上基地局30へ通知されHAPS10と地上基地局30との間で共有される制御情報量を削減するために、本実施形態における干渉推定方式として、以下に示すように、HAPS(上空PF)10からヌル周辺の地上セルユーザへの干渉をモデル化した干渉モデルに基づき、地上セルユーザの位置情報と少ないパラメータにより地上基地局30で行う干渉推定方式を用いてもよい。そして、この干渉モデルに基づく干渉推定を応用して、HAPS(上空PF)10から地上システムの地上基地局30に通知する制御情報を削減し、HAPS(上空PF)10が形成するヌルを考慮した地上システムの地上基地局30でのスケジューリング方式を用いて地上セルユーザ対する無線リソースごとのユーザ・スケジューリングを行ってもよい。
【0064】
図11(a)、
図11(b)及び
図11(c)はそれぞれ、実施形態に係る地上セル300Aのヌル点を中心としたHAPS10からの干渉の電力Iの空間分布をモデル化した干渉電力分布のモデルの一例を示す説明図である。図中のz軸はHAPS10から受ける干渉電力Iを示し、x軸及びy軸は地上セルにおけるヌル点を中心とした面方向の座標を示す。
【0065】
図11(a)の干渉モデル50Aは、干渉電力Iがヌル点で極小になり干渉電力Iの等高線の形状が楕円形である楕円放物面型の干渉モデルの例である。
図11(b)の干渉モデル50Bは、干渉電力Iがy軸方向で一定であり干渉電力Iのz-x面方向の分布形状が放物線である放物線型の干渉モデルの例である。
図11(c)の干渉モデル50Cは、干渉電力Iがヌル点で極小になり干渉電力Iの等高線の形状が円形であり干渉電力Iの垂直面(z軸を含む面)方向の分布形状が放物線である回転放物面型の干渉モデルの例である。
【0066】
図12(a)、
図12(b)及び
図12(c)はそれぞれ、
図11(a)、
図11(b)及び
図11(c)の干渉モデルを用いた干渉推定方式A、B及びCにおける干渉電力Iの等高線と座標との関係を2次元表示した説明図である。図中の実線は干渉電力Iの等高線であり、画像濃度の差は干渉電力Iの大小を表している。また、図中の「×」印の位置は、HAPS10が形成する指向性ビームのヌル点である。
【0067】
[干渉推定方式A]
干渉推定方式Aでは、
図11(a)及び
図12(a)の楕円放物面型の干渉モデル50Aに基づき、次式(11)を用いてHAPS10からの干渉電力I
modelAを計算して推定する。
【数11】
【0068】
干渉推定方式Aは、2次以上の高次項への拡張が容易である。また、地上基地局30における干渉推定に送信ウェイト行列が必要ないため、HAPS10から地上基地局30へ通知する制御情報量を削減できる。更に、地上基地局30は、HAPS10と地上セルユーザとの間の伝搬路応答hgを推定しなくてもよい。
【0069】
上記式(11)に含まれる干渉推定用パラメータとしての係数a
r,b
r,c
rは、地上セルに向けて形成したヌルごとに異なる。係数a
r,b
r,c
rは、理論的に計算した伝搬路ベクトルと、対象の無線リソースで適用する送信ウェイトとに基づいて、HAPS(上空PF)10だけで計算することができる。例えば、係数a
r,b
r,c
rは、無線リソースrごとに、
図13に示すヌル点から所定距離Δx,Δy離れた8点における干渉電力Iを次式(12)で示す理論式で決定し、その8点における干渉電力Iの値を次の式(13)、式(14)及び式(15)に適用して決定することができる。
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【0070】
図14は、係数a
r,b
r,c
rの決定に用いる、HAPS10のサービスリンクのアレーアンテナ130の各素子と地上セル300Aの対象地点との間の伝搬路ベクトル52の一例を示す説明図である。
図14において、アレーアンテナ130の各素子n(130a)と計算したい地点(x,y)との間の伝搬路応答h
n(x,y)は、次式(16)で計算することができる。
【数16】
【0071】
上記式(16)中の経路長Dn、仰角θn、方位角φnは計算したい地点の座標(x,y)、HAPS10の機体の位置・姿勢、アレーアンテナ130の構成などから計算することができる。
【0072】
アレーアンテナ130の各素子n(130a)について計算した伝搬路応答h
n(x,y)をまとめることにより、次式(17)の伝搬路ベクトルh(x,y)を得ることができる。
【数17】
【0073】
[干渉推定方式B]
干渉推定方式Bでは、
図11(b)及び
図12(b)の放物線型の干渉モデル50Bに基づき、次式(18)を用いてHAPS10からの干渉電力I
modelBを計算して推定する。
【数18】
【0074】
干渉推定方式Bは、前述の干渉推定方式Aの係数をbr=0,cr=0に制限したものである。干渉推定方式Bで用いる干渉モデル50Bでは、後述のようにx軸を所定の回転角度φrだけ回転させるため、一般にxg≠xg'である。
【0075】
干渉推定方式Bでは、前述の干渉推定方式Aと同様に、2次以上の高次項への拡張が容易である。また、地上基地局30における干渉推定に送信ウェイト行列が必要ないため、HAPS10から地上基地局30へ通知する制御情報量(制御パラメータ情報量)を削減できる。特に、計算式中の干渉推定用パラメータの数が干渉推定方式Aよりも少ない、係数ar'及び座標回転のための回転角φrのみになるため、地上基地局30へ通知する制御情報量を更に削減できる。更に、地上基地局30は、HAPS10と地上セルユーザとの間の伝搬路応答hgを推定しなくてもよい。
【0076】
上記式(18)に含まれる係数ar'及び回転角度φrは、地上セルに向けて形成したヌルごとに異なり、HAPS(上空PF)10だけで計算することができる。
【0077】
図15は、実施形態に係るヌルスイーピングに適用可能な干渉推定方式Bにおける干渉電力の計算式の係数a
r'を決定する係数決定方法の一例を示す説明図である。
図15において、まず、前述の干渉推定方式Aの干渉モデル50Aにおける式(11)に含まれる係数a
r,b
r,c
rを計算する。次に、干渉モデル50Aにおける干渉電力の等高線を表している楕円の短軸に座標のx軸が一致するように直交座標を回転角度φ
rだけ回転させる。次に、干渉電力の等高線を表している楕円の短軸の寄与のみを抽出し、前述の式(18)における干渉推定用パラメータとしての係数a
r'を決定する。
【0078】
図16(a)及び
図16(b)はそれぞれ、干渉推定方式Bの係数決定方法における座標軸の回転の一例を示す説明図である。前述の干渉推定方式Aにおける干渉電力I
modelAの計算式(11)を行列形式で書くと次式(19)になる(添字r,gは省略)。
【数19】
【0079】
ここで、次の式(20)及び(21)で示す回転行列Rを用いて対角化すると、干渉電力I
modelAは次式(22)で表すことができる。
【数20】
【数21】
【数22】
【0080】
上記(22)式において、a'≧c'の場合は、
図16(a)に示すように回転後のx'軸が短軸に一致しているので、式(22)においてc'=0と無視して前述の式(18)を得る。
【0081】
上記(22)式において、a'<c'の場合は、
図16(b)に示すように回転後のx'軸が短軸に一致していない場合があるので、φ←φ+90°、a'←c'と代入し、前述の式(18)を得る。
【0082】
[干渉推定方式C]
干渉推定方式Cでは、
図11(c)及び
図12(c)の回転放物面型の干渉モデル50Cに基づき、次式(23)を用いてHAPS10からの干渉電力I
modelCを計算して推定する。
【数23】
【0083】
干渉推定方式Cは、前述の干渉推定方式Aの係数をar=cr,br=0に制限したものである。干渉推定方式Cで用いる干渉モデル50Cで計算される干渉電力ImodelCは、ヌル点からの距離とともに増加する。
【0084】
干渉推定方式Cでは、前述の干渉推定方式Aと同様に、2次以上の高次項への拡張が容易である。また、地上基地局30における干渉推定に送信ウェイト行列が必要ないため、HAPS10から地上基地局30へ通知する制御情報量を削減できる。特に、計算式中の係数の数が干渉推定方式Aよりも少ない、係数ar''のみになるため、地上基地局30へ通知する制御情報量を更に削減できる。更に、地上基地局30は、HAPS10と地上セルユーザとの間の伝搬路応答hgを推定しなくてもよい。
【0085】
上記式(23)に含まれる係数ar''は、地上セルに向けて形成したヌルごとに異なり、HAPS(上空PF)10だけで計算することができる。また、干渉推定方式Cでは、前述の干渉推定方式Bとは異なり、干渉モデル50Cが回転対称であるため、回転角度φrを通知する必要がない。
【0086】
図17は、実施形態に係るヌルスイーピングに適用可能な干渉推定方式Cにおける干渉電力の計算式の係数a
r''を決定する係数決定方法の一例を示す説明図である。
図17において、まず、前述の干渉推定方式Bの干渉モデル50Aにおける式(11)に含まれる係数a
r,c
rを計算する。次に、係数a
r,c
rを統計的に処理して得られた係数a
r,c
rの平均値(又は、中央値)により、干渉モデル50Cの式(23)における干渉推定用パラメータとしての係数a
r''を決定する。
【0087】
[各干渉推定方式の全体システム]
図18は、実施形態に係る送信ウェイト行列Wrを用いる厳密方式で推定した干渉電力を用いるユーザ・スケジューリング方式を適用した場合のシステム全体における情報を流れの一例を示す説明図である。厳密方式の場合、HAPS(上空PF)10で無線リソースごとに計算された送信ウェイト行列Wrが、ゲートウェイ局70及び移動通信網80を介して、広域セル100C内に位置する複数の地上基地局30(1)~30(3)のそれぞれに通知され、前述の式(11)による干渉電力I(r,g)の推定に用いられる。ここで、地上基地局30(1)~30(3)に通知される送信ウェイト行列Wrの情報は、複数の送信ウェイト行列Wrの要素を統計的に処理して得られた平均値又は中央値からなる送信ウェイト行列Wrの情報であってもよい。
【0088】
図19は、実施形態に係る干渉モデルを用いる干渉推定方式Aで推定した干渉電力を用いるユーザ・スケジューリング方式を適用した場合のシステム全体における情報を流れの一例を示す説明図である。干渉推定方式Aの場合、HAPS(上空PF)10で各地上基地局30(1)~30(3)について無線リソースごとに計算された、N
BS(地上基地局の数)組の係数a
r
(1),b
r
(1),c
r
(1)、a
r
(2),b
r
(2),c
r
(2)、a
r
(3),b
r
(3),c
r
(3)が、ゲートウェイ局70及び移動通信網80を介して、広域セル100C内に位置する複数の地上基地局30(1)~30(3)のそれぞれに通知され、前述の式(11)による干渉電力I
modelAの推定に用いられる。ここで、地上基地局30(1)~30(3)に通知される干渉推定用パラメータとしての係数は、複数の当該係数を統計的に処理して得られた係数の平均値又は中央値などの情報であってもよい。
【0089】
図20は、実施形態に係る干渉モデルを用いる干渉推定方式Bで推定した干渉電力を用いるユーザ・スケジューリング方式を適用した場合のシステム全体における情報を流れの一例を示す説明図である。干渉推定方式Bの場合、HAPS(上空PF)10で各地上基地局30(1)~30(3)について無線リソースごとに計算された、N
BS(地上基地局の数)組の係数a
r'
(1)及び回転角φ
r
(1)、a
r'
(2)及び回転角φ
r
(2)、a
r'
(3)及び回転角φ
r
(3)が、ゲートウェイ局70及び移動通信網80を介して、広域セル100C内に位置する複数の地上基地局30(1)~30(3)のそれぞれに通知され、前述の式(18)による干渉電力I
modelBの推定に用いられる。ここで、地上基地局30(1)~30(3)に通知される干渉推定用パラメータとしての係数及び回転角は、複数の当該係数及び回転角を統計的に処理して得られた係数及び回転角の平均値又は中央値などの情報であってもよい。
【0090】
図21は、実施形態に係る干渉モデルを用いる干渉推定方式Cで推定した干渉電力を用いるユーザ・スケジューリング方式を適用した場合のシステム全体における情報を流れの一例を示す説明図である。干渉推定方式Cの場合、HAPS(上空PF)10で各地上基地局30(1)~30(3)について無線リソースごとに計算された、N
BS(地上基地局の数)組の係数a
r
''(1)、a
r
''(2)、a
r
''(3)、ゲートウェイ局70及び移動通信網80を介して、広域セル100C内に位置する複数の地上基地局30(1)~30(3)のそれぞれに通知され、前述の式(23)による干渉電力I
modelCの推定に用いられる。ここで、地上基地局30(1)~30(3)に通知される干渉推定用パラメータとしての係数は、複数の当該係数を統計的に処理して得られた係数の平均値又は中央値などの情報であってもよい。
【0091】
[干渉電力の推定のコンピュータシミュレーション]
図22(a)及び
図22(b)は、実施形態に係る厳密方式、干渉推定方式A、干渉推定方式B及び干渉推定方式Cのそれぞれを用いた干渉電力の推定のコンピュータシミュレーションの一例における設定条件を示す説明図である。本例のコンピュータシミュレーションでは、
図22(a)の真横から見た図に示すように、HAPS(上空PF)10と地上基地局30との間の水平方向における距離D(例えば40km)がHAPS10の高度H(例えば20km)の2倍であり、
図22(b)の真上から見た図に示すように、HAPS10を基準にした地上基地局30の方向の方位角φが30°である。この設定条件のように地上基地局30がHAPS10から離れている場合、上空のHAPS10から見た下方向の仰俯角θの変化が小さいため、
図23(a)、
図23(b)及び
図23(c)に示すようにヌルエリア100ANが動径方向に伸びやすい。
【0092】
図24(a)及び
図24(b)は、実施形態に係る厳密方式、干渉推定方式A、干渉推定方式B及び干渉推定方式Cのそれぞれを用いた干渉電力の推定のコンピュータシミュレーションの他の例における設定条件を示す説明図である。本例のコンピュータシミュレーションでは、
図24(a)の真横から見た図に示すように、HAPS(上空PF)10と地上基地局30との間の水平方向における距離D'(例えば20km)とHAPS10の高度H(例えば20km)が等しく、
図24(b)の真上から見た図に示すように、HAPS10を基準にした地上基地局30の方向の方位角φが30°である。この設定条件のように地上基地局30がHAPS10に近い場合、上空のHAPS10から見た下方向の仰俯角θの変化が大きいため、
図25(a)、
図25(b)及び
図25(c)に示すようにヌルエリア100ANが
図23と比べて動径方向に縮みやすい。
【0093】
[ユーザ・スケジューリング方式A-1,B-1,C-1]
図26は、実施形態に係る干渉モデルに基づく干渉推定方式A、干渉推定方式B及び干渉推定方式Cを応用したユーザ・スケジューリング方式A-1,B-1,C-1の共通アルゴリズム(貪欲法的アルゴリズム)の一例を示す説明図である。なお、
図26において、前述の
図10と共通する部分については説明を省略する。
【0094】
本例のユーザ・スケジューリング方式A-1,B-1,C-1では、干渉推定方式A、干渉推定方式B又は干渉推定方式Cを用いて計算した干渉電力を、ユーザスケジュールアルゴリズム内の干渉電力I(r,g)として用いる。具体的には、前述の式(11)で計算した干渉電力ImodelA、式(18)で計算した干渉電力ImodelB、又は、式(23)で計算した干渉電力ImodelCを、ユーザスケジュールアルゴリズム内の干渉電力I(r,g)として用いる。
【0095】
また、本例のユーザ・スケジューリング方式A-1,B-1,C-1では、上記干渉電力I
modelX(例えば、I
modelA、I
modelB又はI
modelC)と、地上基地局30で取得又は計算が可能な情報(例えば、所望信号電力S、セル又はセクタ間干渉電力I
0、雑音電力Nなど)と組み合わせる。例えば、ユーザ選択の判定に用いる選択規範の関数として、次式(24)に示す所望信号電力S、セル又はセクタ間干渉電力I
0、雑音電力Nなどの関数であるSINRを用いることができる。
【数24】
【0096】
本例のユーザ・スケジューリング方式A-1,B-1,C-1では、地上セルユーザgの位置情報から干渉モデル上の座標(xg,yg)への変換に関し、各無線リソースで形成するヌルの位置を事前にHAPS10と地上システム(地上基地局)30との間で共有しておけば、無線リソースごとに地上基地局30に通知する必要はない。また、各地上セル300Aに対して形成するヌルは、1つの無線リソース(時間・周波数リソース)あたり1つのヌルとする。
【0097】
図26において、前述の初期化処理を実行した後、前記第2集合のリソース番号rの1番目(r=1)からNr番目(r=r
max)の順に、前記第2集合のr番目のリソース番号rをユーザ割り当て対象のリソース番号rとして設定し、前記第1集合に含まれるすべての地上セルユーザgについて、リソース番号rの無線リソースを割り当てた場合のHAPS10から地上セルユーザgの干渉電力I
modelXを前述の式(11)、式(18)又は式(23)で計算し、ユーザ選択規範における判定指標値としてのコスト(Cost(r,g))を計算する処理と、そのコストが最小となる地上セルユーザgを、前記リソース番号rに割り当てるユーザ番号g
rとして割り当る処理と、割り当てが確定したユーザ番号g
rを前記第1集合から削除する処理を実行する。
【0098】
ここで、コスト(Cost(r,g))としては、例えば、所望信号電力S、セル又はセクタ間干渉電力I0、雑音電力Nなどの関数である前述の式(24)のSINRの逆数を用いることができる。
【0099】
以下、残りのすべてのユーザのリソースへの割り当てが完了するまで、上記ユーザスケジューリングアルゴリズムを繰り返し実行する。これにより、地上セル300Cに在圏するすべての地上基地局ユーザ(地上セルユーザ)のリソースへの割り当てが完了する。
【0100】
なお、本実施形態のユーザ・スケジューリング方式では、以下に示すように、前記各干渉モデルにおいて更にパラメータを削減可能に定義した干渉電力の正規化された値を用いてもよい。
【0101】
[ユーザ・スケジューリング方式A-2]
図27(a)は、パラメータ数の削減を組み合わせる干渉推定方式Aの干渉電力の等高線及び座標との関係の一例を示す説明図である。
図27(b)は、干渉推定方式Aとパラメータ数の削減を組み合わせたユーザ・スケジューリング方式A-2のアルゴリズム(貪欲法的アルゴリズム)の一例を示す説明図である。なお、
図27(b)において、前述の
図10及び
図26と共通する部分については説明を省略する。
【0102】
本例のユーザ・スケジューリング方式A-2では、
図27(a)に示す干渉モデルにおいて計算される干渉電力を定数で割っても大小関係は変化しない点と、大小比較だけなら通知するパラメータを1つ消去できる点に着目し、前述の式(11)を定数(例えば、係数a
r、b
r又はc
r)で割って計算される干渉電力の正規化された値をユーザ選択の判定に用いる。本例では、一例として、前述の式(11)をx2乗の項の係数a
rで割った次式(25)で計算される干渉電力の正規化された値をユーザ選択の判定に用いる。また、式(25)の計算式では、x2乗の項の係数が1に固定されるので、残りの2つの係数b
r/a
r及びc
r/a
rの値が制御パラメータ(干渉推定用パラメータ)の情報として地上基地局30に通知される。なお、干渉電力の正規化された値として、前述の式(11)を係数b
r又はc
rで割った値を用いてもよい。
【数25】
【0103】
本例のユーザ・スケジューリング方式A-2では、地上セルユーザgの位置情報から干渉モデル上の座標(xg,yg)への変換に関し、各無線リソースで形成するヌルの位置を事前にHAPS10と地上システム(地上基地局)30との間で共有しておけば、無線リソースごとに地上基地局30に通知する必要はない。また、各地上セル300Aに対して形成するヌルは、1つの無線リソース(時間・周波数リソース)あたり1つのヌルとする。
【0104】
図27(b)において、前述の初期化処理を実行した後、前記第2集合のリソース番号rの1番目(r=1)からNr番目(r=r
max)の順に、前記第2集合のr番目のリソース番号rをユーザ割り当て対象のリソース番号rとして設定し、前記第1集合に含まれるすべての地上セルユーザgについて、リソース番号rの無線リソースを割り当てた場合のHAPS10から地上セルユーザgの干渉電力I
modelA(r,g)の正規化された値を前述の式(25)で計算する処理と、その干渉電力I
modelA(r,g)の正規化された値が最小となる地上セルユーザgを、前記リソース番号rに割り当てるユーザ番号g
rとして割り当る処理と、割り当てが確定したユーザ番号g
rを前記第1集合から削除する処理を実行する。
【0105】
以下、残りのすべてのユーザのリソースへの割り当てが完了するまで、上記ユーザスケジューリングアルゴリズムを繰り返し実行する。これにより、地上セル300Cに在圏するすべての地上基地局ユーザ(地上セルユーザ)のリソースへの割り当てが完了する。
【0106】
[ユーザ・スケジューリング方式B-2]
図28(a)は、パラメータ数の削減を組み合わせる干渉推定方式Bの干渉電力の等高線及び座標との関係の一例を示す説明図である。
図28(b)は、干渉推定方式Bとパラメータ数の削減を組み合わせたユーザ・スケジューリング方式B-2のアルゴリズム(貪欲法的アルゴリズム)の一例を示す説明図である。なお、
図28(b)において、前述の
図10及び
図26と共通する部分については説明を省略する。
【0107】
本例のユーザ・スケジューリング方式B-2では、
図28(a)に示す干渉モデルにおいて計算される干渉電力を定数で割っても大小関係は変化しない点と、大小比較だけなら通知するパラメータを消去できる点に着目し、前述の式(18)をx'2乗の項の係数a
r'で割った次式(26)で計算される干渉電力の正規化された値をユーザ選択の判定に用いる。また、式(26)の計算式において、地上基地局30は地上セルユーザg(UE)の座標をx
g'に変換できるので、無線リソースごとの座標の回転角φ
rの値が制御パラメータ(干渉推定用パラメータ)の情報として地上基地局30に通知される。
【数26】
【0108】
本例のユーザ・スケジューリング方式B-2では、地上セルユーザgの位置情報から干渉モデル上の座標(xg,yg)への変換に関し、各無線リソースで形成するヌルの位置を事前にHAPS10と地上システム(地上基地局)30との間で共有しておけば、無線リソースごとに地上基地局30に通知する必要はない。また、各地上セル300Aに対して形成するヌルは、1つの無線リソース(時間・周波数リソース)あたり1つのヌルとする。
【0109】
図28(b)において、前述の初期化処理を実行した後、前記第2集合のリソース番号rの1番目(r=1)からNr番目(r=r
max)の順に、前記第2集合のr番目のリソース番号rをユーザ割り当て対象のリソース番号rとして設定し、前記第1集合に含まれるすべての地上セルユーザgについて、リソース番号rの無線リソースを割り当てた場合のHAPS10から地上セルユーザgの干渉電力I
modelB(r,g)の正規化された値を前述の式(26)で計算する処理と、その干渉電力I
modelB(r,g)の正規化された値が最小となる地上セルユーザgを、前記リソース番号rに割り当てるユーザ番号g
rとして割り当る処理と、割り当てが確定したユーザ番号g
rを前記第1集合から削除する処理を実行する。
【0110】
以下、残りのすべてのユーザのリソースへの割り当てが完了するまで、上記ユーザスケジューリングアルゴリズムを繰り返し実行する。これにより、地上セル300Cに在圏するすべての地上基地局ユーザ(地上セルユーザ)のリソースへの割り当てが完了する。
【0111】
[ユーザ・スケジューリング方式C-2]
図29(a)は、パラメータ数の削減を組み合わせる干渉推定方式Cの干渉電力の等高線及び座標との関係の一例を示す説明図である。
図29(b)は、干渉推定方式Cとパラメータ数の削減を組み合わせたユーザ・スケジューリング方式C-2のアルゴリズム(貪欲法的アルゴリズム)の一例を示す説明図である。なお、
図29(b)において、前述の
図10及び
図26と共通する部分については説明を省略する。
【0112】
本例のユーザ・スケジューリング方式C-2では、
図29(a)に示す干渉モデルにおいて計算される干渉電力を定数で割っても大小関係は変化しない点と、大小比較だけなら通知するパラメータを消去できる点に着目し、前述の式(23)を係数a
r''で割った次式(27)で計算される干渉電力の正規化された値をユーザ選択の判定に用いる。また、式(27)の干渉電力の正規化された値は、地上セルユーザg(UE)のヌル点からの距離(座標x
g、y
g)から計算できるので、地上基地局30に通知される制御パラメータの情報はない。
【数27】
【0113】
本例のユーザ・スケジューリング方式C-2では、地上セルユーザgの位置情報から干渉モデル上の座標(xg,yg)への変換に関し、各無線リソースで形成するヌルの位置を事前にHAPS10と地上システム(地上基地局)30との間で共有しておけば、無線リソースごとに地上基地局30に通知する必要はない。また、各地上セル300Aに対して形成するヌルは、1つの無線リソース(時間・周波数リソース)あたり1つのヌルとする。
【0114】
図29(b)において、前述の初期化処理を実行した後、前記第2集合のリソース番号rの1番目(r=1)からNr番目(r=r
max)の順に、前記第2集合のr番目のリソース番号rをユーザ割り当て対象のリソース番号rとして設定し、前記第1集合に含まれるすべての地上セルユーザgについて、リソース番号rの無線リソースを割り当てた場合のHAPS10から地上セルユーザgの干渉電力I
modelC(r,g)の正規化された値を前述の式(27)で計算する処理と、その干渉電力I
modelC(r,g)の正規化された値が最小となる地上セルユーザgを、前記リソース番号rに割り当てるユーザ番号g
rとして割り当る処理と、割り当てが確定したユーザ番号g
rを前記第1集合から削除する処理を実行する。
【0115】
以下、残りのすべてのユーザのリソースへの割り当てが完了するまで、上記ユーザスケジューリングアルゴリズムを繰り返し実行する。これにより、地上セル300Cに在圏するすべての地上基地局ユーザ(地上セルユーザ)のリソースへの割り当てが完了する。
【0116】
[各干渉モデルによる干渉推定方式とパラメータ削減を組み合わせた全体システム]
図30は、実施形態に係るユーザ・スケジューリング方式A-2を適用した場合のシステム全体における制御パラメータ情報の流れの一例を示す説明図である。干渉推定方式Aとパラメータ削減を組み合わせた場合、HAPS(上空PF)10で各地上基地局30(1)~30(3)について無線リソースごとに計算された、N
BS(地上基地局の数)組の係数b
r
(1)/a
r
(1),c
r
(1)/a
r
(1),b
r
(2)/a
r
(2),c
r
(2)/a
r
(2)、b
r
(3)/a
r
(3),c
r
(3)/a
r
(3)が、ゲートウェイ局70及び移動通信網80を介して、広域セル100C内に位置する複数の地上基地局30(1)~30(3)のそれぞれに通知され、前述の式(25)による干渉電力I
modelAの推定(正規化された値の計算)に用いられる。ここで、地上基地局30(1)~30(3)に通知される干渉推定用パラメータとしての係数は、複数の当該係数を統計的に処理して得られた係数の平均値又は中央値などの情報であってもよい。
【0117】
図31は、実施形態に係るユーザ・スケジューリング方式B-2を適用した場合のシステム全体における制御パラメータ情報の流れの一例を示す説明図である。干渉推定方式Bとパラメータ削減を組み合わせた場合、HAPS(上空PF)10で各地上基地局30(1)~30(3)について無線リソースごとに計算された、N
BS(地上基地局の数)組の回転角φ
r
(1)、φ
r
(2)、φ
r
(3)が、ゲートウェイ局70及び移動通信網80を介して、広域セル100C内に位置する複数の地上基地局30(1)~30(3)のそれぞれに通知され、前述の式(26)による干渉電力I
modelBの推定(正規化された値の計算)に用いられる。ここで、地上基地局30(1)~30(3)に通知される干渉推定用パラメータとしての回転角は、複数の当該回転数を統計的に処理して得られた回転角の平均値又は中央値などの情報であってもよい。
【0118】
図32は、実施形態に係るユーザ・スケジューリング方式C-2を適用した場合のシステム全体における制御パラメータ情報の流れの一例を示す説明図である。干渉推定方式Cとパラメータ削減を組み合わせた場合、HAPS(上空PF)10から地上基地局30(1)~30(3)に通知される制御パラメータ情報はない。
【0119】
表1は、厳密方式と干渉モデルを用いた干渉推定方式A,B,Cとの間の比較結果を示す。表1において、Nt及びNuはそれぞれ、HAPS(上空PF)10におけるアレーアンテナ130のアンテナ素子数及び空間多重ユーザ数である。NBSは、広域セル100C内に位置する地上基地局30の数である。
【0120】
【0121】
アレーアンテナ130の自由度により、Nu+NBS≦Ntである。また、NtNu≧Nu(Nu+NBS)>NuNBS≧NBSである。従って、NtNu>NBSが成り立つので、パラメータ削減した干渉モデルを用いた干渉推定方式A,B,Cのほうが一般的に厳密方式よりもパラメータの数が少ない。例えば、Nt=196、Nu=12、NBS=6の場合、パラメータの削減を組み合わせた干渉推定方式A,Bにおけるパラメータ数はそれぞれ、厳密方式の場合のパラメータ数の約1/400及び約1/800である。
【0122】
図33は、実施形態に係る厳密方式及びパラメータ削減を組み合わせた干渉推定方式A、B、Cで干渉電力を推定してユーザ・スケジューリングを行った場合の地上セルにおけるSINRの改善効果を計算したコンピュータシミュレーション結果の一例を示す説明図である。
図33は、HAPS(上空PF)10と地上基地局30との間の水平方向の距離Dが40kmであり、地上セルあたりのスイープするヌルの候補点は2点である場合のSINR累積分布の計算結果である。
図33に示すように、ヌルスイーピングに、前述の干渉推定方式A,B,Cにパラメータ数の削減を組み合わせたユーザ・スケジューリング方式A-2,B-2、C-2の貪欲法的アルゴリズムを適用することにより、HAPS(上空PF)10から地上基地局30に通知する制御パラメータ情報量の削減を図りつつ、ヌルスイーピングなしの場合に比較してSINRの改善効果がみられた。
【0123】
図34は、実施形態に係る厳密方式及びパラメータ削減を組み合わせた干渉推定方式A、B、Cで干渉電力を推定してユーザ・スケジューリングを行った場合の地上セルにおけるSINRの改善効果を計算したコンピュータシミュレーション結果の他の例を示す説明図である。
図34は、HAPS(上空PF)10と地上基地局30との間の水平方向の距離Dが20kmであり、地上セルあたりのスイープするヌルの候補点は2点である場合のSINR累積分布の計算結果である。
図34に示すように、HAPS(上空PF)10と地上基地局30との距離が近い場合も、ヌルスイーピングに、前述の干渉推定方式A,B,Cにパラメータ数の削減を組み合わせたユーザ・スケジューリング方式A-2,B-2、C-2の貪欲法的アルゴリズムを適用することにより、HAPS(上空PF)10から地上基地局30に通知する制御パラメータ情報量の削減を図りつつ、ヌルスイーピングなしの場合に比較してSINRの改善効果がみられた。
【0124】
[全体システムの構成及び処理フロー]
図35は、実施形態に係る地上基地局データベース82を有するシステムの全体構成の一例を示す説明図である。なお、
図35において、前述の
図1と同様な部分については同じ符号を付し、説明を省略する。また、
図35は、HAPS10に搭載された中継通信局110が基地局装置を有する基地局装置型の中継通信局である場合を示しているが、HAPS10に搭載された中継通信局110はリピータ型の中継通信局であってもよい。この場合は、HAPS10に搭載された中継通信局110と地上のフィーダ局(ゲートウェイ局)70等に基地局装置が設けられ、広域セル基地局(HAPS基地局)は、HAPS10に搭載されたリピータ型の中継通信局と、地上の基地局装置とを含む。
【0125】
図35において、HAPS(上空PF)10は、フィーダ局(ゲートウェイ局)70、移動通信網80及びバックホール回線81を介して、地上基地局30に通知することができる。また、HAPS10は、フィーダ局(ゲートウェイ局)70及び移動通信網80を介して、地上基地局データベース82にアクセスし、地上基地局30の情報を取得することができる。地上基地局30は、バックホール回線81、移動通信網80及びフィーダ局(ゲートウェイ局)70を介して、地上セル300CにおけるULとDLの切り替え情報をHAPS10に通知することができる。
【0126】
HAPS10と地上基地局30は、例えば、HAPS10から地上基地局30へ周期的に通知される情報(以下「通知情報」という。)I1と、地上基地局データベース82に保存される情報(以下「DB情報」という。)I2を共有する。
【0127】
通知情報I1は、地上基地局30のユーザスケジューリングアルゴリズムに依存するが、例えば、次の情報(I1-1)~(I1-3)である。
(I1-1)時刻tにおけるHAPS10の機体の位置情報及び3次元回転情報
(I1-2)無線リソース(時間・周波数リソース)rに適用されるヌルを識別するための番号
(I1-3)無線リソース(時間・周波数リソース)rにおいて、HAPS10からの干渉電力の推定に必要な情報
【0128】
上記HAPS10からの干渉電力の推定に必要な情報(I1-3)は、例えば、次の情報(I1-3-1)~(I1-3-4)である。
(I1-3-1)無線リソース(時間・周波数リソース)rに適用されるプリコーディングウェイト行列(送信ウェイト行列)又は前述の干渉推定方式の制御パラメータ情報
(I1-3-2)通知する情報量を削減するために、上記情報(I1-3-1)を統計的に処理して得られるプリコーディングウェイト行列(送信ウェイト行列)又は前述の干渉推定方式の制御パラメータ情報
(I1-3-3)無線リソース(時間・周波数リソース)rにおいて形成されるヌルの形状を、地上基地局側で2次元又は3次元的に再構成するに足る情報
(I1-3-4)通知する情報量を削減するために、上記情報(I1-3-3)を統計的に処理して得られる情報
【0129】
地上基地局データベース82に保存される情報I2は、HAPS10から参照される情報で有、例えば、次の情報(I2-1)~(I2-3)である。
(I2-1)地上基地局30の座標
(I2-2)地上基地局30のセル半径
(I2-1)地上基地局30に接続するユーザの地理的な分布(時間に応じて変化する)
【0130】
図36は、
図35のシステムにおけるHAPS10に搭載された基地局装置型の中継通信局110の主要構成の一例を示すブロック図である。
図36は、TDD通信方式での運用時における構成例である。
図36において、中継通信局110は、UL・DL切り替え情報受信部1101と、地上基地局の情報取得部1102と、ヌルスケジューリング部1103と、ヌルスケジューリング情報送信部1104とを備える。UL・DL切り替え情報受信部1101は、フィーダリンクFLを介して各地上基地局30からUL・DL切り替え情報を受信する。地上基地局の情報取得部1102は、フィーダリンクFLを介して地上基地局データベース82にアクセスし、自身のサービスエリア100A(HAPSセル100C)内に位置する地上基地局に関する情報を取得する。ヌルスケジューリング部1103は、各地上基地局30から受信したUL・DL切り替え情報と地上基地局データベース82から取得した地上基地局の情報とに基づいて、時間軸上及び周波数軸上におけるヌルの割り当て(スケジューリング)を、地上基地局ごとに決定する。ヌルスケジューリング情報送信部1104は、フィーダリンクFLおよび移動通信網(ネットワーク)80を介して、送信ウェイト行列の情報を含むヌルのスケジューリング情報を各地上基地局30に通知する。送信ウェイト行列計算部1105は、前述の厳密方式による干渉電力の推定等に用いられる、アレーアンテナ130に適用する送信ウェイト行列を計算する。
【0131】
なお、
図36において、FDD通信方式での運用時には、UL・DL切り替え情報受信部1101は不要である。
【0132】
図37は、
図35のシステムにおけるHAPS10に搭載された基地局装置型の中継通信局110の主要構成の他の例を示すブロック図である。
図37は、TDD通信方式での運用時における構成例である。なお、
図37において、前述の
図36と共通する部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0133】
図37の中継通信局110において、送信ウェイト行列計算部1105は、アレーアンテナ130に適用する送信ウェイト行列を計算する。パラメータ計算部1106は、前述の干渉モデルによる干渉推定方式A,B若しくはCによる干渉電力の推定に用いられる前述の計算式の係数などのパラメータを計算する。ヌルスケジューリング情報送信部1104は、フィーダリンクFLおよび移動通信網(ネットワーク)80を介して、干渉電力の推定に用いられるパラメータの情報を含むヌルのスケジューリング情報を各地上基地局30に通知する。
【0134】
図38は、
図35の通信システムにおける地上基地局30の主要構成の一例を示すブロック図である。
図38は、TDD通信方式での運用時における構成例である。
図38において、地上基地局30は、UL・DL切り替え情報送信部3001と、ヌルスケジューリング情報受信部3002と、干渉推定部3003と、地上セルユーザのスケジューリング部3004とを備える。UL・DL切り替え情報送信部3001は、自セルの地上セルにおけるUL・DL切り替え情報をHAPS10に通知する。ヌルスケジューリング情報受信部3002は、HAPS10から、自身の地上基地局30に関する、前述のユーザ・スケジューリングのための干渉電力の推定に用いられる送信ウェイト行列又はパラメータの情報を含むヌルのスケジューリング情報を受信する。干渉推定部3003は、ヌルのスケジューリング情報に基づいて、HAPS10から自セルに在圏するユーザ(UE65)への干渉を推定する。地上セルユーザのスケジューリング部3004は、時間軸上及び周波数軸上におけるユーザの割り当て(スケジューリング)を決定する。
【0135】
なお、
図38において、FDD通信方式での運用時には、UL・DL切り替え情報送信部3001は不要である。
【0136】
図39は、実施形態に係る通信システムにおけるヌル形成を伴うビームフォーミング制御及びサービスリンク通信を行うときのHAPS基地局及び地上セル基地局における処理フローの一例を示すフローチャートである。
図39は、TDD通信方式での運用時における処理フローの例である。
【0137】
図39において、各地上基地局30は、自セルにおけるUL・DLの切り替え情報をHAPS10に通知する(S101)。
【0138】
次に、HAPS10は、フィーダリンクFLを介して各地上基地局30からUL・DLの切り替え情報を受信する(S102)。
【0139】
次に、HAPS10は、フィーダリンクFLを介して地上基地局データベース82にアクセスし、自身のサービスエリア100A(HAPSセル100C)内に位置する地上基地局30に関する情報を取得する(S103)。取得する情報は、地上基地局30の座標、セル半径、ユーザ分布などを含む。
【0140】
次に、HAPS10は、各地上基地局30から受信したUL・DL切り替え情報と地上基地局データベース82から取得した地上基地局30の情報とに基づいて、時間軸上及び周波数軸上におけるヌルの割り当て(スケジューリング)と、前述の地上基地局30でのユーザ・スケジューリングのための干渉電力の推定に用いられる送信ウェイト行列又はパラメータの情報を、地上基地局ごとに決定する(S104)
【0141】
次に、HAPS10は、フィーダリンクFL及び移動通信網(ネットワーク)80を介して、前述の地上基地局30でのユーザ・スケジューリングのための干渉電力の推定に用いられる送信ウェイト行列又はパラメータの情報を含むヌルのスケジューリング情報を各地上基地局30に通知する(S105)。
【0142】
次に、地上基地局30は、HAPS10から自身の地上基地局30に関する、前述の自局でのユーザ・スケジューリングのための干渉電力の推定に用いられる送信ウェイト行列又はパラメータの情報を含むヌルのスケジューリング情報を受信する(S106)。
【0143】
次に、地上基地局30は、前述の送信ウェイト行列又はパラメータの情報を含むヌルのスケジューリング情報に基づいて、HAPS10から自セルに在圏するユーザ(UE65)への干渉を推定し、時間軸上及び周波数軸上におけるユーザの割り当て(スケジューリング)を決定する(S107)。
【0144】
次に、地上基地局30は、ステップS107で決定したスケジューリング情報に基づいて、自セルに在圏するユーザ(UE65)と通信を行う(S108)。
【0145】
なお、
図39において、FDD通信方式での運用時には、上記UL・DLの切り替え情報の送受信のステップ(S101,S102)は不要である。
【0146】
以上、本実施形態によれば、上空のHAPS10から地上又は海上に向けて形成したセル100C内に同一周波数帯を用いる地上基地局のアンテナで形成される地上セルが位置する場合に、HAPS10から地上セル(地上基地局30及びその地上基地局に接続するUE65)への干渉を抑圧することができる。
【0147】
また、本実施形態によれば、上空のHAPS10に搭載された中継通信局110から地上基地局30のカバーエリア内に向けて指向性ビームのヌルを形成するときの残留干渉を低減することができる。
【0148】
特に、本実施形態によれば、HAPS(上空PF)10から地上基地局30に通知する制御パラメータ情報量の削減を図りつつ、ヌルスイーピングなしの場合に比較して地上セル全体におけるSINRを改善することができる。
【0149】
本発明は、上空のHAPS10に搭載された中継通信局110から地上基地局30のカバーエリア内に向けて指向性ビームのヌルを形成するときの残留干渉を低減することができるシステムを提供できるため、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【0150】
なお、本明細書で説明された処理工程並びにHAPS10等の通信中継装置の中継通信局、フィーダ局、ゲートウェイ局、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、端末装置(UE:ユーザ装置、移動局、通信端末)、基地局及び基地局装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0151】
ハードウェア実装については、実体(例えば、中継通信局、フィーダ局、ゲートウェイ局、基地局、基地局装置、中継通信局装置、端末装置(UE:ユーザ装置、移動局、通信端末)、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレー(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0152】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0153】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0154】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0155】
10 :HAPS
30 :地上基地局(地上セル基地局)
40 :無線リソース
50A~50C :干渉モデル
61 :広域セルに接続するUE(端末装置)
65 :地上セルに接続するUE(端末装置)
70 :フィーダ局(GW局)
71 :アンテナ
80 :移動通信網(ネットワーク)
81 :バックホール回線
82 :地上基地局データベース
100A :広域セルのサービスエリア
100AN :ヌルエリア
100B :ビーム
100C :HAPSセル(3次元セル)
100F :フットプリント
100N :ヌル
110 :中継通信局
130 :アレーアンテナ(サービスリンクアンテナ)
130a :アンテナ素子
300C :地上セル
300A :地上セルのサービスエリア
【手続補正書】
【提出日】2024-06-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上空に位置する飛行体又は浮揚体に設けられた中継通信局のサービスリンクアンテナから地上又は海上に向けて広域セルを形成する広域セル基地局と、地上又は海上に配置されたアンテナから地上セルを形成する一又は複数の地上セル基地局と、を備えるシステムであって、
前記広域セル基地局及び前記一又は複数の地上セル基地局は、互いに時間同期された無線フレームで同一周波数帯のサービスリンクの通信を行い、
前記広域セル基地局は、
前記広域セル内に位置する地上セル基地局に関する情報を取得し、
前記地上セル基地局に関する情報に基づいて、時間軸上及び周波数軸上におけるヌルの割り当てに関するヌルスケジューリングを決定し、
前記ヌルスケジューリングの情報を前記地上セル基地局に送信し、
前記地上セル基地局は、
前記広域セル基地局から、前記ヌルスケジューリングの情報を受信し、
前記ヌルスケジューリングの情報に基づいて、時間軸上及び周波数軸上におけるユーザの端末装置の割り当てに関するユーザ・スケジューリングを決定し、
前記ユーザ・スケジューリングの情報に基づいて、自セルに在圏するユーザの端末装置と通信を行
い、
前記ヌルスケジューリングの情報は、前記ヌルを形成するときに前記広域セル基地局のアンテナに適用する送信ウェイト行列Wrの情報を含み、
前記地上セル基地局は、
前記広域セル基地局のアンテナと自セルに在圏するユーザgの端末装置との間の伝搬路応答hgを推定し、
前記送信ウェイト行列Wrと前記伝搬路応答hgの推定結果とに基づいて、次式(1)により、無線リソースrに対する前記広域セルから自セルに在圏するユーザgの端末装置への干渉電力I(r,g)を推定する、
ことを特徴とするシステム。
【数1】
【請求項2】
請求項1のシステムにおいて、
前記ヌルスケジューリングの情報に含まれる前記送信ウェイト行列Wrの情報は、複数の送信ウェイト行列Wrの要素を統計的に処理して得られた情報である、
ことを特徴とするシステム。
【請求項3】
上空に位置する飛行体又は浮揚体に設けられた中継通信局のサービスリンクアンテナから地上又は海上に向けて広域セルを形成する広域セル基地局と、地上又は海上に配置されたアンテナから地上セルを形成する一又は複数の地上セル基地局と、を備えるシステムであって、
前記広域セル基地局及び前記一又は複数の地上セル基地局は、互いに時間同期された無線フレームで同一周波数帯のサービスリンクの通信を行い、
前記広域セル基地局は、
前記広域セル内に位置する地上セル基地局に関する情報を取得し、
前記地上セル基地局に関する情報に基づいて、時間軸上及び周波数軸上におけるヌルの割り当てに関するヌルスケジューリングを決定し、
前記ヌルスケジューリングの情報を前記地上セル基地局に送信し、
前記地上セル基地局は、
前記広域セル基地局から、前記ヌルスケジューリングの情報を受信し、
前記ヌルスケジューリングの情報に基づいて、時間軸上及び周波数軸上におけるユーザの端末装置の割り当てに関するユーザ・スケジューリングを決定し、
前記ユーザ・スケジューリングの情報に基づいて、自セルに在圏するユーザの端末装置と通信を行い、
前記ヌルスケジューリングの情報は、前記広域セル基地局で形成するヌル点に対応する位置を原点として前記広域セルから前記地上セルに在圏するユーザの端末装置への干渉の電力の空間分布をモデル化した干渉モデルに基づいて決定された干渉推定用パラメータの情報を含み、
前記地上セル基地局は、前記干渉推定用パラメータの情報に基づいて、無線リソースrに対する前記広域セルから自セルに在圏するユーザgの端末装置への干渉電力I(r,g)を推定する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3のシステムにおいて、
前記ヌルスケジューリングの情報に含まれる前記干渉推定用パラメータの情報は、複数の干渉推定用パラメータの値を統計的に処理して得られた情報である、
ことを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項
3のシステムにおいて、
前記干渉モデルは、前記ヌル点に対応する位置を原点とした直交座標系(x,y,z)において、前記干渉の電力をz方向とし、x-y面上の位置における前記干渉の電力の分布を楕円放物面で近似した干渉モデルであり、
前記干渉推定用パラメータの情報は、前記直交座標系(x,y,z)において定義された次式(2)の係数a
r,b
r及びc
rの値であり、
前記地上セル基地局は、次式(2)と前記係数a
r,b
r及びc
rの値とに基づいて、無線リソースrごとに前記広域セルから自セルの座標位置(x
g,y
g)に位置するユーザgの端末装置への干渉電力I
modelA(r,g)を推定する、
ことを特徴とするシステム。
【数2】
【請求項6】
請求項5のシステムにおいて、
前記干渉推定用パラメータの情報は、前記係数ar,br及びcrのうち一つの係数で他二つの係数を正規化した値であり、
前記地上セル基地局は、前記係数の値に基づいて、無線リソースrごとに前記広域セルから自セルの座標位置(xg,yg)に位置するユーザgの端末装置への干渉電力を推定する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項
3のシステムにおいて、
前記干渉モデルは、前記ヌル点に対応する位置を原点とした直交座標系(x,y,z)において、前記干渉の電力をz方向とし、x-y面上の位置における前記干渉の電力の分布を楕円放物面で近似し、前記楕円放物面を前記x-y面に投影したときの電力が等しい楕円の短軸にx軸が一致するように前記直交座標を回転角度φ
rだけ回転させた干渉モデルであり、
前記干渉推定用パラメータの情報は、前記回転後の直交座標系(x',y',z)において定義された次式(3)の係数a
r'の値であり、
前記地上セル基地局は、次式(3)と前記係数a
r'の値とに基づいて、無線リソースrごとに前記広域セルから自セルの座標位置(x
g',y
g')に位置するユーザgの端末装置への干渉電力I
modelB(r,g)を推定する、
ことを特徴とするシステム。
【数3】
【請求項8】
請求項
7のシステムにおいて、
前記地上セル基地局は、前記式(3)を係数a
r'で割った次式(4)に基づいて、無線リソースrごとに前記広域セルから自セルの座標位置(x
g',y
g')に位置するユーザgの端末装置への干渉電力の推定値として、前記干渉電力I
modelB(r,g)の正規化された値を計算する、
ことを特徴とするシステム。
【数4】
【請求項9】
請求項
3のシステムにおいて、
前記干渉モデルは、前記ヌル点に対応する位置を原点とした直交座標系(x,y,z)において、前記干渉の電力をz方向とし、x-y面上の位置における前記干渉の電力の分布を回転放物面で近似した干渉モデルであり、
前記干渉推定用パラメータの情報は、前記直交座標系(x,y,z)において定義された次式(5)の係数a
r''の値であり、
前記地上セル基地局は、次式(5)と前記係数a
r''の値とに基づいて、無線リソースrごとに前記広域セルから自セルの座標位置(x
g,y
g)に位置するユーザgの端末装置への干渉電力I
modelC(r,g)を推定する、
ことを特徴とするシステム。
【数5】
【請求項10】
請求項
9のシステムにおいて、
前記地上セル基地局は、前記式(5)を係数a
r''で割った次式(6)に基づいて、無線リソースrごとに前記広域セルから自セルの座標位置(x
g,y
g)に位置するユーザgの端末装置への干渉電力の推定値として、前記干渉電力I
modelC(r,g)の正規化された値を計算する、
ことを特徴とするシステム。
【数6】
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかのシステムにおいて、
前記地上セル基地局は、前記ユーザ・スケジューリングにおいて、
複数(Nu)の未割り当てユーザの端末装置のユーザ番号gの第1集合の設定及び貪欲法で処理する複数(Nr=rmax)の無線リソースについてのリソース番号rの順番の第2集合の設定を含む初期化処理と、
前記第2集合のリソース番号rの1番目(r=1)からNr番目(r=rmax)の順に、前記第2集合のr番目のリソース番号rをユーザ割り当て対象のリソース番号rとして設定し、リソース番号rの無線リソースを割り当てた場合の干渉電力を計算し、前記干渉電力の計算値又は前記干渉電力の計算値に対応する判定指標値が最小となるユーザの端末装置のユーザ番号gを、前記リソース番号rに割り当てるユーザ番号grとして割り当て、割り当てが確定したユーザ番号grを前記第1集合から削除する処理と、を実行する、
ことを特徴とするシステム。