(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141987
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】評価プログラム,評価方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06N 5/02 20230101AFI20241003BHJP
G06Q 40/03 20230101ALI20241003BHJP
【FI】
G06N5/02
G06Q40/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053910
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100189201
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 功
(72)【発明者】
【氏名】金子 真由子
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 佐知子
【テーマコード(参考)】
5L040
5L055
【Fターム(参考)】
5L040BB15
5L055BB15
(57)【要約】
【課題】AIシステムの倫理リスクの対処において、事例に則した優先度の高いチェック項目の抽出を可能とする。
【解決手段】AIシステムのステークホルダーを含む構成情報に基づいて、互いに関係のある構成要素の複数の組を特定し、構成要素の限定条件に基づいて、複数のルール202から一以上のルールD2を選択し、選択した一以上のルールD2に基づいて、特定した複数の組の優先度を決定し、決定した優先度に基づいてAIシステムのAI倫理リスク評価結果を出力する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Artificial Intelligence(AI)システムのステークホルダーを含む構成情報に基づいて、互いに関係のある構成要素の複数の組を特定し、
前記構成要素の限定条件に基づいて、複数のルールから一以上のルールを選択し、
選択した前記一以上のルールに基づいて、特定した前記複数の組の優先度を決定し、
決定した前記優先度に基づいて前記AIシステムのAI倫理リスク評価結果を出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする、評価プログラム。
【請求項2】
選択した前記一以上のルールについて、複数の指標毎に、被害の深刻さに応じた加点をすることによって、前記優先度を決定する、
処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする、請求項1に記載の評価プログラム。
【請求項3】
前記複数の指標は、インシデントによって生じる身体的被害と経済的被害と精神的被害と解決までの時間との少なくともいずれかを含む、
ことを特徴とする、請求項2に記載の評価プログラム。
【請求項4】
前記複数のルールは、複数のインシデントに基づいて作成された第1のルールと、個別のインシデントに基づいて作成された第2のルールとを含む、
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の評価プログラム。
【請求項5】
前記第1のルールによる被害の深刻さに応じた加点結果と、前記第2のルールによる被害の深刻さに応じた加点結果とについて、正規化を行って足し合わせた値によって、前記優先度を決定する、
処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする、請求項4に記載の評価プログラム。
【請求項6】
Artificial Intelligence(AI)システムのステークホルダーを含む構成情報に基づいて、互いに関係のある構成要素の複数の組を特定し、
前記構成要素の限定条件に基づいて、複数のルールから一以上のルールを選択し、
選択した前記一以上のルールに基づいて、特定した前記複数の組の優先度を決定し、
決定した前記優先度に基づいて前記AIシステムのAI倫理リスク評価結果を出力する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする、評価方法。
【請求項7】
Artificial Intelligence(AI)システムのステークホルダーを含む構成情報に基づいて、互いに関係のある構成要素の複数の組を特定し、
前記構成要素の限定条件に基づいて、複数のルールから一以上のルールを選択し、
選択した前記一以上のルールに基づいて、特定した前記複数の組の優先度を決定し、
決定した前記優先度に基づいて前記AIシステムのAI倫理リスク評価結果を出力する、
プロセッサを備えることを特徴とする、情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価プログラム,評価方法及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
AI(Artificial Intelligence)システムにおいて、倫理的なリスクのアセスメントが行われることがある。
【0003】
さまざまな業種やタスクのAIシステムを利用することで、倫理上の問題が発生することがある。そのような問題が発生すると、AIシステムを提供した企業や組織だけでなく、AIシステムの利用者やその先にある社会に対する影響も大きい。
【0004】
そこで、AIを社会実装する上で、倫理上のリスクを認識し対処できるような取り組みが行われている。
【0005】
しかし、AIシステムが複数のステークホルダーを持ち、それらを取り巻く社会状況が変化することで、AIシステムの利用によってどのような倫理的な問題が発生するかを検知することは容易でない場合がある。なお、AIシステムのステークホルダーとは、AIシステムにおける利害関係者のことであり、例えば、AIシステムの提供者(設計者や開発者等を含む)、AIシステムの利用者、AIシステムに対するデータの提供者等を含んでよい。
【0006】
そこで、AI倫理に関する原則やガイドラインが示すチェックリストそのものが、AIシステムやそのステークホルダーに当てはめられて分析されることがある。
【0007】
AI倫理に関する原則やガイドラインの例としては、「欧州High-Level Expert Group on AI (AI HLEG) “Ethics Guidelines for Trustworthy AI”」や「総務省 AI利活用ガイドライン」,「統合イノベーション戦略推進会議“人間中心のAI社会原則”」,「OECD “Recommendation of the Council on Artificial Intelligence”」が存在する。
【0008】
また、様々なAIサービス提供の形態の存在を踏まえつつ、AIサービス提供者が自らのAIサービスに係るリスクコントロール検討に資するモデルとして、「リスクチェーンモデル(Risk Chain Model: RCModel)」が提案されている。
【0009】
リスクチェーンモデルでは、以下の(1)~(3)によって、リスク構成要素の整理及び構造化が行われる。
【0010】
(1)AIシステムの技術的構成要素
【0011】
(2)サービス提供者の行動規範(ユーザとのコミュニケーションを含む)に係る構成要素
【0012】
(3)ユーザの理解・行動・利用環境に係る構成要素
また、リスクチェーンモデルでは、リスクシナリオの識別及びリスク要因となる構成要素の特定と、リスクチェーンの可視化及びリスクコントロールの検討が行われる。リスクチェーンの可視化及びリスクコントロールの検討では、AIサービス提供者はリスクシナリオに関連する構成要素の関係性(リスクチェーン)を可視化することで、段階的なリスク低減の検討が可能になる。
【0013】
AIシステムは日々開発されており、それに比例して様々なインシデント事例も増加している。
【0014】
そのような日々集積される過去のインシデント事例を活かすために、過去のインシデント事例を新たにルールとして用いて、チェック項目の優先度付けを行うことが想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2020/240981号
【特許文献2】特開2018-190182号公報
【特許文献3】国際公開第2021/199201号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】松本敬史,江間有沙,“AIサービスのリスク低減を検討するリスクチェーンモデルの提案”,2020年6月4日,インターネット<URL:ifi.u-tokyo.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2020/06/policy_recommendation_tg_20200604.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、評価対象のAIシステムにおいて、コンポーネントに限定条件がつく場合に、過去のインシデント事例をベースにしたルールのうち採用しても意味のない事例が出てくるため、より優先度の高いチェック項目を抽出できないおそれがある。
【0018】
例えば、採用判定AIにおいて、条件A「男女ともに採用」や条件B「女性のみ採用」等が想定される。女性用健診の担当者等に「女性のみ採用」する場合には合理的な理由が存在するため、条件Bの性別の限定条件により、男女差別に関するチェック項目は採用しても意味がなくなる。
【0019】
また、例えば、監視カメラAIにおいて、条件C「すべての人を監視」や条件D「白人のみ監視」等が想定される。逃亡中の犯人が「白人」という目撃情報をもとに捜索したい場合には合理的な理由が存在するため、条件Dの人種の限定条件により、人種差別に関するチェック項目は採用しても意味がなくなる。
【0020】
1つの側面では、AIシステムの倫理リスクの対処において、事例に則した優先度の高いチェック項目の抽出を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
1つの側面では、評価プログラムは、Artificial Intelligence(AI)システムのステークホルダーを含む構成情報に基づいて、互いに関係のある構成要素の複数の組を特定し、前記構成要素の限定条件に基づいて、複数のルールから一以上のルールを選択し、選択した前記一以上のルールに基づいて、特定した前記複数の組の優先度を決定し、決定した前記優先度に基づいて前記AIシステムのAI倫理リスク評価結果を出力する。
【発明の効果】
【0022】
1つの側面では、AIシステムの倫理リスクの対処において、事例に則した優先度の高いチェック項目の抽出を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】関連例における出力データとしての分析図を例示するブロック図である。
【
図2】関連例におけるローン審査インタラクションを例示する図である。
【
図3】関連例における分析シートからのグラフ構造の生成例を示す図である。
【
図4】関連例における情報処理装置のソフトウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図5】関連例におけるAI倫理チェックリストの生成処理を説明するフローチャートである。
【
図6】過去のインシデント事例による被害を例示するテーブルである。
【
図7】過去のインシデント事例によるルールを例示するテーブルである。
【
図8】一般化されたルールを例示するテーブルである。
【
図9】実施形態におけるコンポーネントへの限定条件の付与処理を説明する図である。
【
図10】実施形態における限定条件を付与したシステム図を例示する図である。
【
図11】
図7に示した過去のインシデント事例によるルールからの限定条件の除外例を説明する図である。
【
図12】実施形態における情報処理装置のハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図13】実施形態における情報処理装置のソフトウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図14】実施形態におけるAI倫理チェックリストの生成処理の詳細を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔A〕関連例
図1は、関連例における出力データとしての分析図を例示するブロック図である。
【0025】
AIを取り巻く倫理リスクは、AIシステムのコンポーネントとステークホルダーのいずれか2者間の関係(インタラクション)に紐づけて抽出及び可視化される。
【0026】
図1に示す分析図では、訓練部110及び予測部120(いずれも
図2を用いて後述)を含むシステム図に表示されているインタラクションID(S101~S114)のそれぞれに対して、該当するAI倫理チェック項目があれば、対応付けられて表示される。また、各AI倫理チェック項目には、リスク事象(
図1の一点鎖線枠を参照)とリスク要因(
図1の点線枠を参照)とのいずれかが対応付けられて表示される。
【0027】
図1に示す例では、S110に対してAI倫理チェック項目「集団公平性」及び「推論結果の制御性」が対応付けて表示されており、S111に対してAI倫理チェック項目「データ属性の十分性」及び「ラベルの妥当性」が対応付けて表示されている。S112に対してAI倫理チェック項目「データ属性の十分性」が対応付けて表示されており、S113に対してAI倫理チェック項目「推論結果の独立性」及び「機械学習・統計解析の適切性」が対応付けて表示されている。S114に対して、AI倫理チェック項目「推論結果の制御性」が対応付けて表示されている。
【0028】
図2は、関連例におけるローン審査インタラクションを例示する図である。
【0029】
関連例では、AIシステム100が持つべき倫理的な特徴を、AIシステム100とステークホルダーとの関係に対応付けてチェックリスト化し、そのAI倫理チェックリストを用いて、AIシステム100の倫理リスクを分析する。これにより、AIサービス提供者10や開発者が、AIシステム100のコンポーネントや個々のステークホルダーに対して実践すべき項目に落とし込む作業を不要にする。
【0030】
また、AIシステム100の構成要素とステークホルダーとの関係をグラフ構造化し、グラフ構造の特徴に基づいてAI倫理チェック項目に優先度を付けたAI倫理チェックリストを自動生成する。これにより、重要なAI倫理チェック項目を優先的に分析することで効率化を実現する。
【0031】
図2に示すAIシステム100は、ローン審査AIのインタラクションを例示している。
図1における矢印は、インタラクションを示す。インタラクションの両端(始点,終点)は、ステークホルダー,データ,AIシステムのコンポーネントのいずれかの要素となる。相互作用の始点,終点に対応する要素の役割(データ提供者,利用者40,訓練データ101,ローン審査モデル103等)によりインタラクションの種類を規定する。各インタラクションに付されているSxxxはインタラクションIDを示す。
【0032】
AIシステム100は、AIサービスベンダ等のAIサービス提供者10と、信用調査機関等のデータ提供者20と、銀行等のデータ提供者30と、ローン申込者等の利用者40とによって使用される。
【0033】
訓練部110は、訓練データ101に対する機械学習によって、ローン審査モデル103(別言すれば、AIモデル)の訓練を実行するローン審査モデル生成部102(別言すれば、機械学習部)を備える。訓練データ101は、データ提供者20からの信用スコアの入力や、データ提供者30からの取引データの入力によって、生成されてよい。
【0034】
予測部120は、ローン審査モデル103を用いて推論データ104に対する推論を行うことによって、審査結果106(別言すれば、推論結果)を出力する推論部105を備える。推論データ104は、データ提供者20からの信用スコアの入出力や、データ提供者30からの申込情報及び取引データの入出力、利用者40からの申込者情報の入力によって、生成されてよい。
【0035】
図3は、関連例における分析シートからのグラフ構造の生成例を示す図である。
【0036】
符号A1に示す分析シートには、インタラクションID毎に、ステークホルダーの種類,名称,役割説明,始点・終点の別や、データの種類,名称,始点・終点の別等が対応付けられている。
【0037】
例えば、インタラクションID「S101」には、ステークホルダーの種類「利用者」,名称「ローン申込者」,役割説明「申込者情報の提供」及び始点・終点の別「0(始点)」が対応付けられている。また、インタラクションID「S101」には、データの種類「推論結果」,データの名称「申込者情報(取引データ,信用スコア)」及び始点・終点の別「1(終点)」が対応付けられている。
【0038】
ここで、関連例におけるAI倫理リスクの分析処理について説明する。
【0039】
以下の(1)~(4)の手順で、リスク分析が実施される。
【0040】
(1)AIシステム100の構成要素、データ、ステークホルダー間の関係がシステム図(
図1を参照)として作図され、インタラクションが抽出される。
【0041】
(2)分析シート(
図3の符号A1を参照)にインタラクション毎の内訳が記載される。
【0042】
(3)AI倫理モデルに基づいて生成されるAI倫理チェックリスト(不図示)の各項目について、該当するインタラクションがそのチェック項目を満たさない状態から想定されるリスク(リスク事象・リスク要因)が抽出され、分析シートに記載される。なお、AI倫理モデルは、AI倫理に関する原則やガイドライン等を整理し、AIシステム100が満たすべきチェック項目のリストとして構成したものである。
【0043】
(4)分析シートのリスクが参照され、同内容のものが整理され、事象と要因との関係が記載される。可視化する場合はシステム図にリスク事象と要因とを追加した分析図(不図示)が作成される。
【0044】
すなわち、システム図、分析シート及び分析図が出力データとして出力される。
【0045】
上記のリスク分析の手順(3)において、AI倫理チェックリストの項目が多いため、すべてのチェックリストを検証するための工数が大きい。そこで、上記のリスク分析の手順(3)について、優先度付きのAI倫理チェックリスト生成処理が情報処理装置6(
図4を用いて後述)によって実行される。
【0046】
AI倫理チェックリスト生成処理では、分析対象のAIシステム100とステークホルダーのいずれか2者間の関係(インタラクション)が情報処理装置6によってグラフ構造で表現される。そして、そのグラフ構造の特徴から、倫理的に注目すべき重要度の高い関係(インタラクション)がルールベースで抽出され、重要度の高い関係(インタラクション)と紐づいた、倫理的なリスクを抽出するためのチェック項目が、優先度付きのチェックリストとして情報処理装置6によって提示される。
【0047】
関連例における情報処理装置6は、AI倫理チェックリストの絞り込みを実施する。AI倫理チェックリストの絞り込みでは、「AIシステムの構成とステークホルダーとの関係」が持つ特徴が、インタラクションの集合から構成したグラフ構造の特徴として表現される。
【0048】
分析シートの表データは「インタラクション集合」のデータ形式になっているため、グラフ構造の自動生成が可能となる。グラフ構造の特徴として、例えば以下を自動抽出できる。
【0049】
・ステークホルダーのノード数
・複数の役割を持つステークホルダーの数
・AIシステムと直接関わらないステークホルダーの数
倫理的なリスクの発生が起こりやすいグラフ構造の特徴と、おさえておくべきAI倫理チェックリストの項目とが、あらかじめルールとして登録される。例えば、AIシステム100と直接関わらないステークホルダーの数が1つ以上ある場合は、そのステークホルダーが関わるインタラクションの優先度が上げられる。これは、AIシステム100の設計・開発において見落としがちな間接的なステークホルダーへの影響を把握するためである。
【0050】
グラフ構造の特徴から登録したルールに基づいて、重要度の高いAI倫理チェック項目が絞り込まれ、優先度付きのAI倫理チェックリストとして生成される。
【0051】
図3の符号A1に示す分析シートからは、符号A2に示すようなグラフ構造が生成されてよい。
【0052】
符号A2に示すグラフ構造では、丸印で示される各ノード間の矢印がインタラクションを表す。
【0053】
図3に示す例では、ローン申込者からの申込者情報の出力がS101で表され、申込者情報の銀行への入力がS102で表され、申込者情報の信用調査機関への入力がS103で表される。また、銀行からの申込者情報・取引データ・信用スコアの出力がS104で表され、信用調査機関からの申込者情報・取引データ・信用スコアの出力がS105で表される。更に、申込者情報・取引データ・信用スコアからローン審査推論部への入力がS106で表され、ローン審査推論部からの審査データの出力がS107で表される。
【0054】
符号A11に示すように、各ステークホルダーには、役割(ステークホルダーの種類)が登録され、符号A21に示すように、ローン申込者等の各ノードは、役割を持つ。
【0055】
ここで、注目すべき重要度の高いインタラクションの抽出は、以下の(1)~(3)の順に情報処理装置6(
図4を用いて後述)によって行われる。
【0056】
(1)すべてのインタラクションの重要度が1点に設定される。
【0057】
(2)特定の特徴を持つインタラクションの重要度が加点される(特徴1つにつき1点加点されてよい)。
【0058】
(3)インタラクションが重要度で順位付される。
【0059】
上記の(2)における特定の特徴は、インタラクションの両端のノード(AIシステム100のコンポーネント、データ、ステークホルダー)の特徴と、接続関係の特徴とを含んでよい。インタラクションの両端のノードの特徴には、複数の役割(AIシステム提供者でデータ提供者)を持つステークホルダーと、利用者の役割を持つステークホルダーと、訓練データ提供者の役割を持つステークホルダーとが含まれてよい。接続関係の特徴には、AIシステム100の出力とつながらないステークホルダーのインタラクションと、訓練データあるいは推論データが複数のデータ提供者とつながるインタラクションとが含まれてよい。
【0060】
図4は、関連例における情報処理装置6のソフトウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【0061】
関連例における情報処理装置6は、グラフ生成部111,特徴抽出部112及びチェック項目抽出部113として機能する。
【0062】
グラフ生成部111は、AIシステム100の構成に基づいて定まる、対象者の種別の属性と処理の種別の属性とデータの種別の属性とのうち少なくとも2つの属性を含む複数の関係情報(別言すれば、インタラクション)を取得する。グラフ生成部111は、分析対象のインタラクション集合141に基づき、関係情報を取得してよい。グラフ生成部111は、取得した関係情報に基づいて、
図3に示したグラフ構造を生成してよい。
【0063】
特徴抽出部112は、対象者の種別の属性に基づいて、複数の関係情報の優先度を決定する。特徴抽出部112は、重要インタラクション抽出ルール142に基づいて、優先度を決定してよい。特徴抽出部112は、複数の関係情報のそれぞれに関係する特定の対象者の優先度を高くしてよい。特徴抽出部112は、複数の関係情報のうちの特定の関係情報の優先度を高くしてもよい。
【0064】
チェック項目抽出部113は、各属性と対応付けられた複数のチェック項目のうち、決定された優先度に基づいて選択された一又は複数のチェック項目を、AIシステム100の絞り込んだAI倫理チェックリスト114として出力する。
【0065】
関連例におけるAI倫理チェックリストの生成処理を、
図5に示すフローチャート(ステップC1~C8)に従って説明する。
【0066】
グラフ生成部111は、重要インタラクション抽出ルール142と、AI倫理チェックリスト143と、分析対象のインタラクション集合141とを、入力データとして受け付ける(ステップC1~C3)。
【0067】
グラフ生成部111は、インタラクション集合141からグラフ構造を生成する(ステップC4)。
【0068】
特徴抽出部112は、グラフ構造から特徴を抽出する(ステップC5)。特徴の抽出は、例えば、ステークホルダーのノード数や、複数の役割を持つステークホルダーの数、AIシステム100と直接関わらないステークホルダーの数に基づいて実行されてよい。
【0069】
特徴抽出部112は、抽出した特徴から、重要インタラクション抽出ルール142に基づいて、注目すべきインタラクションを抽出する(ステップC6)。
【0070】
チェック項目抽出部113は、注目すべきインタラクションに対応するAI倫理チェックリスト143のチェック項目を抽出する(ステップC7)。
【0071】
チェック項目抽出部113は、重要な項目を絞り込んだAI倫理チェックリスト143を出力する(ステップC8)。そして、AI倫理チェックリスト143の生成処理は終了する。
【0072】
〔B〕実施形態
以下、図面を参照して一実施の形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、実施形態で明示しない種々の変形例や技術の適用を排除する意図はない。すなわち、本実施形態を、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、各図は、図中に示す構成要素のみを備えるという趣旨ではなく、他の機能等を含むことができる。
【0073】
上述した関連例においては、AI倫理チェックリストの生成処理において、倫理リスクが発生しやすい重要インタラクションとされるグラフ構造の特徴(たとえば、ステークホルダーの役割に関する特徴など)のルールに応じて、インタラクションに優先度が付与され、AI倫理チェックリストが絞り込まれた。
【0074】
一方、実施形態においては、AIシステムの倫理リスクの対処において、ルールの採用・不採用を限定条件で判別することにより、採用しても意味のないルール(別言すれば、チェック項目)を除去する。すなわち、評価対象のAIシステムにおいて、コンポーネントの限定条件に応じて、採用しても意味のないルールを不採用と判定して、残りの採用と判定されたルールを用いて、対象のインタラクションについて、AI倫理チェック項目抽出の優先度を高くする。
【0075】
図6は、過去のインシデント事例による被害201を例示するテーブルである。
【0076】
AIシステムのリスクとしては、特に過去のインシデント事例における被害の大きさや、公平性やプライバシに関わる不均等な被害(人種、性別等)が存在する。
【0077】
図6においては、例えば、項目「被害の深刻さ(身体的被害)」として項目例「高」,具体例「人命が失われる」が存在し、項目「被害の深刻さ(経済的被害)」として項目例「高」,具体例「数億~数兆円規模の損失」が存在する。また、例えば、項目「被害の深刻さ(解決までの対応時間)」として項目例「長」,具体例「2,3年以上かかる」が存在し、項目「不均等な被害」として項目例「人種」,具体例「白人・黒人」が存在する。
【0078】
図7は、過去のインシデント事例によるルール202を例示するテーブルである。
【0079】
過去のインシデント事例によるルール202には、AIシステムにおいて発生したリスクの事例名毎に、被害の内容や限定条件,システム図内のインタラクションの情報が対応付けて登録されている。
【0080】
なお、限定条件はシステム図中のコンポーネントの限定条件を示し、コンポーネントに付記する「限定条件」が過去のルールのテーブルデータにあらかじめ記載される。限定条件の記法についてはあらかじめ統一されていてよい。
【0081】
また、システム図内のインタラクションの情報は、ルールに関連した部分のみで、各ステークホルダやデータ,モデル,結果,出力のコンポーネントにおけるどの間のインタラクションかを示す情報である。
【0082】
図7においては、例えば、番号「001」において、事例名「医療補助AIの事故」,身体的被害「高」,経済的被害「中」,精神的被害「高」,解決までの対応時間「長」,不平等な被害(公平性項目)「なし」,限定条件「なし」,インタラクション始点の種類「AIモデル」,インタラクション終点の種類「推論結果」が対応付けて登録されている。
【0083】
また、
図7においては、例えば、番号「002」において、事例名「ローン審査AIでの冷遇」,身体的被害「低」,経済的被害「高」,精神的被害「中」,解決までの対応時間「短」,不平等な被害(公平性項目)「性別」,限定条件「性別の限定」,インタラクション始点の種類「推論結果」,インタラクション終点の種類「消費者的利用者」が対応付けて登録されている。
【0084】
図8は、一般化されたルール203を例示するテーブルである。
【0085】
一般化されたルール203は、インタラクションの両端ノードの特徴や接続関係の特徴を持つインタラクションの重要度を加点することによって定義されてよい。
【0086】
インタラクションの両端ノード(例えば、AIシステムのコンポーネント,データ,ステークホルダー)の特徴としては、例えば以下が挙げられる。
【0087】
・複数の役割(例えば、AIシステム提供者でデータ提供者)を持つステークホルダー
・利用者の役割を持つステークホルダー
・訓練データ提供者の役割を持つステークホルダー
接続関係の特徴としては、例えば以下が挙げられる。
【0088】
・AIシステムの出力と繋がらないステークホルダーのインタラクション
・訓練データ又は推論データが複数のデータ提供者と繋がるインタラクション
図8に示す一般化されたルール203では、一般化されたルール及びシステム図内のインタラクションの情報に加えて、限定条件が対応付けて登録されている。
【0089】
図8においては、例えば、番号「0001」において、一般化ルール名「利用者の役割を持つステークホルダー(1)」,限定条件「なし」,インタラクション始点の種類「推定結果」,インタラクション終点の種類「ビジネス的利用者」が対応付けて登録されている。
【0090】
また、
図8においては、例えば、番号「0002」において、一般化ルール名「利用者の役割を持つステークホルダー(2)」,限定条件「男女、人種、国籍」,インタラクション始点の種類「ビジネス的利用者」,インタラクション終点の種類「消費者的利用者」が対応付けて登録されている。
【0091】
図9は、実施形態におけるコンポーネントへの限定条件の付与処理を説明する図である。
【0092】
本実施形態においては、AI倫理影響評価の入力となるシステム図にコンポーネントの限定条件が付与される。そして、AIシステムは、システム図からコンポーネントの限定条件を取得する。
【0093】
図9において、採用判定AIにおいて、求職者は、推論データ提供者として自身の情報をAIシステム(別言すれば、採用先企業等)に提供すると共に、判定対象者としてAIシステムから採用判定を受ける。
【0094】
符号B1においては求職者の限定条件が付与されていないが、符号B2に示す例では求職者の性別の限定があり限定条件が付与されている。
【0095】
AIシステムは、その限定条件に該当する事例は、採用しても意味のない事例であるため、
図7に示した過去のインシデント事例によるルール202のテーブルデータから除外する。
【0096】
AIシステムは、除外処理を行った過去のインシデント事例によるルール202のテーブルデータを用いてチェック項目抽出の優先度を点数付けする。
【0097】
過去のインシデント事例によるルール202を用いた場合の優先度決めに関する点数付けにおいては、被害が大きな方がより危険であるとする。
【0098】
例えば、過去のインシデント事例によるルール202のテーブルデータにおける「被害の深刻さ(身体的被害)」において、「高」3点、「中」2点、「低」1点と段階をつけて、インタラクションへの点数付けが行われる。
【0099】
なお、過去のインシデント事例における「被害の深刻さ」をどのように定義するかは、AIシステム開発者が決めてよい。「被害の深刻さ」は、「身体的被害」「経済的被害」「精神的被害」「解決までの対応時間」など複数の尺度が用意されてよい。同じ事例でも、AIシステム開発者が被害のうち何を重要と定義するかによって、過去のインシデント事例によるルール202のテーブルが変更されてよい。これにより、同じ事例でも優先度が変更になる場合がある。
【0100】
重視する「被害の深刻さ」がない場合には、複数の「被害の深刻さ」は、すべて同等に加算(又は乗算)されてよい。
【0101】
図8に示した一般化されたルール203と
図7に示した過去のインシデント事例によるルール202とが混在したルールが採用される場合には、以下の方法が用いられてよい。
【0102】
一般化されたルール203の点数付け(A)に加算(又は乗算)が行われる。
【0103】
ここで、加算(又は乗算)する際に、一般化されたルール203に基づいて優先度が付けられた点数のレンジ(A)と、過去のインシデント事例によるルール202において付けられた点数のレンジ(B)とが大きく離れている場合がある。レンジが大きく離れている場合の対応方法として、点数のレンジを揃えることを目的として、(A)(B)それぞれについて、最小値を0、最大値1の正規化が行われてよい。そして、正規化した(A)(B)を足し合わせて(又は掛け合わせて)、その値に基づいてAI倫理チェック項目の優先度決めが行われてよい。
【0104】
図10は、実施形態における限定条件を付与したシステム図を例示する図である。
【0105】
図10に示す採用判定用のAIシステム100aのシステム図には、訓練部及び予測部(いずれも
図2を用いて前述したものと同様のため説明は省略する)を含むシステム図に表示されているインタラクション(S101~S114)が含まれる。そして、各インタラクションによって、推論データ提供者や訓練データ提供者等のコンポーネント(別言すれば、ステークホルダー)が結ばれる。
【0106】
図10においては、採用判定AIのシステム図の判定対象者について、「すべての求職者対象」ではなく「性別の限定」(例えば、女性条件)を付与したシステム図が作成されている。
【0107】
符号D1に示すように、AIシステム100aは、システム図内のコンポーネントから「性別の限定」という限定条件を除外条件として抽出する。
【0108】
図11は、
図7に示した過去のインシデント事例によるルール202からの限定条件の除外例を説明する図である。
【0109】
図11の符号D2に示すように、AIシステムは、
図7に示した過去のインシデント事例によるルール202を参照し、限定条件「性別の限定」が記載されている事例の行を、今回のAI倫理影響評価の対象から除外する。
【0110】
AIシステムは、抽出された過去のインシデント事例のインタラクション(別言すれば、過去のインシデント事例によるルール202において除外されずに残ったインタラクション)に加点して優先度を上げる。例えば、
図11に示した番号「001」,「003」のインタラクション「AIモデル→推論結果」が加点されてよい。
【0111】
AIシステムは、例えば、番号「001」における「被害の深刻さ(身体的被害)」の評価「高」に関して、インタラクション(AIモデル→推論結果)に3点加点してよい。また、評価「中」に関しては2点、評価「低」に関しては1点が加点されてよい。
【0112】
AIシステムは、重視する「被害の深刻さ」がない場合には、すべての指標(身体的被害,経済的被害,精神的被害,解決までの時間)を同等に以下のように加算して、合計16点を算出よい。
【0113】
番号「001」:3+2+3+3=11
番号「003」:1+1+1+2=5
AIシステムは、「経済的被害」を重視したい場合には、「被害の深刻さ(経済的被害)」について、番号「001」の評価「中」の2点、番号「003」の評価「低」の1点に加重して、2倍の点数合計6点を、「AIモデル→推論結果」のインタラクションにつけてよい。
【0114】
AIシステムは、点数が高い順にインタラクションに順位づけして、優先度の高いチェック項目を抽出する。
【0115】
これにより、従来の構成要素に基づくルールでは抽出が不十分な、システム図のコンポーネントに限定条件がある時の優先度の高いチェック項目の抽出ができる。
【0116】
図8に示した一般化したルール203と過去のインシデントによるルール202とが混在したルールを採用した場合には、以下のように評価(優先度付けの点数)の正規化が実施されてよい。
【0117】
(A)先行特許のグラフ構造に基づいた優先度付けにおいて、すでに「AIモデル→推論結果」のインタラクションに1点が付けられているものとする。また、(A)の評価群のレンジは0~2とする。
【0118】
(B)一方、被害の深刻さの観点から、「AIモデル→推論結果」のインタラクションに16点がついているものとする。また、(B)の評価群のレンジは0~20とする。
【0119】
(A)(B)が最小値0,最大値1で正規化される。(A)における「AIモデル→推論結果」のインタラクションは0.5点となり、(B)における「AIモデル→推論結果」のインタラクションは0.8点となる。
【0120】
正規化後、(A)(B)を足し合わせると、(A)+(B)=1.3点となる。これが、評価対象のAIシステムの「AIモデル→推論結果」のインタラクションに与えられた優先度の点数となる。
【0121】
他のインタラクションについても同様に点数が算出される。
【0122】
そして、インタラクションごとの点数が比較され、値の高いものから優先度が高く設定される。
【0123】
図12は、実施形態における情報処理装置1のハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【0124】
図12に示すように、情報処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)11,メモリ部12,表示制御部13,記憶装置14,入力Interface(IF)15,外部記録媒体処理部16及び通信IF17を備える。
【0125】
メモリ部12は、記憶部の一例であり、例示的に、Read Only Memory(ROM)及びRandom Access Memory(RAM)などである。メモリ部12のROMには、Basic Input/Output System(BIOS)等のプログラムが書き込まれてよい。メモリ部12のソフトウェアプログラムは、CPU11に適宜に読み込まれて実行されてよい。また、メモリ部12のRAMは、一時記録メモリあるいはワーキングメモリとして利用されてよい。
【0126】
表示制御部13は、表示装置131と接続され、表示装置131を制御する。表示装置131は、液晶ディスプレイやOrganic Light-Emitting Diode(OLED)ディスプレイ,Cathode Ray Tube(CRT),電子ペーパーディスプレイ等であり、オペレータ等に対する各種情報を表示する。表示装置131は、入力装置と組み合わされたものでもよく、例えば、タッチパネルでもよい。表示装置131は、情報処理装置1のユーザに対する種々の情報を表示する。
【0127】
記憶装置14は、高IO性能の記憶装置であり、例えば、Dynamic Random Access Memory(DRAM)やSSD(Solid State Drive),Storage Class Memory(SCM),HDD(Hard Disk Drive)が用いられてよい。
【0128】
入力IF15は、マウス151やキーボード152等の入力装置と接続され、マウス151やキーボード152等の入力装置を制御してよい。マウス151やキーボード152は、入力装置の一例であり、これらの入力装置を介して、オペレータが各種の入力操作を行う。
【0129】
外部記録媒体処理部16は、記録媒体160が装着可能に構成される。外部記録媒体処理部16は、記録媒体160が装着された状態において、記録媒体160に記録されている情報を読み取り可能に構成される。本例では、記録媒体160は、可搬性を有する。例えば、記録媒体160は、フレキシブルディスク、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、又は、半導体メモリ等である。
【0130】
通信IF17は、外部装置との通信を可能にするためのインタフェースである。
【0131】
CPU11は、プロセッサの一例であり、種々の制御や演算を行う処理装置である。CPU11は、メモリ部12に読み込まれたOperating System(OS)やプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。なお、CPU11は、複数のCPUを含むマルチプロセッサであってもよいし、複数のCPUコアを有するマルチコアプロセッサであってもよく、或いは、マルチコアプロセッサを複数有する構成であってもよい。
【0132】
情報処理装置1全体の動作を制御するための装置は、CPU11に限定されず、例えば、MPUやDSP,ASIC,PLD,FPGAのいずれか1つであってもよい。また、情報処理装置1全体の動作を制御するための装置は、CPU,MPU,DSP,ASIC,PLD及びFPGAのうちの2種類以上の組み合わせであってもよい。なお、MPUはMicro Processing Unitの略称であり、DSPはDigital Signal Processorの略称であり、ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略称である。また、PLDはProgrammable Logic Deviceの略称であり、FPGAはField Programmable Gate Arrayの略称である。
【0133】
図13は、実施形態における情報処理装置1のソフトウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【0134】
図13に示すように、情報処理装置1は、グラフ生成部111,特徴抽出部112,チェック項目抽出部113及びテーブルデータ処理部115として機能する。
【0135】
グラフ生成部111は、AIシステム100の構成に基づいて定まる、対象者の種別の属性と処理の種別の属性とデータの種別の属性とのうち少なくとも2つの属性を含む複数の関係情報(別言すれば、インタラクション)を取得する。グラフ生成部111は、分析対象のインタラクション集合141に基づき、関係情報を取得してよい。グラフ生成部111は、取得した関係情報に基づいて、
図3に示したグラフ構造を生成してよい。
【0136】
グラフ生成部111は、AIシステムのステークホルダーを含む構成情報に基づいて、互いに関係のある構成要素の複数の組を特定する。
【0137】
テーブルデータ処理部115は、ルールの採用・不採用を限定条件で判別することにより、採用しても意味のないルール(別言すれば、チェック項目)を除去する。テーブルデータ処理部115は、コンポーネントの限定条件に応じて、採用しても意味のないルールを不採用と判定する。
【0138】
テーブルデータ処理部115は、構成要素の限定条件に基づいて、複数のルールから一以上のルールを選択する。
【0139】
特徴抽出部112は、対象者の種別の属性に基づいて、複数の関係情報の優先度を決定する。特徴抽出部112は、重要インタラクション抽出ルール142に基づいて、優先度を決定してよい。特徴抽出部112は、複数の関係情報のそれぞれに関係する特定の対象者の優先度を高くしてよい。特徴抽出部112は、複数の関係情報のうちの特定の関係情報の優先度を高くしてもよい。
【0140】
特徴抽出部112は、テーブルデータ処理部115によって選択した一以上のルールに基づいて、特定した複数の組の優先度を決定する。
【0141】
特徴抽出部112は、テーブルデータ処理部115によって選択した一以上のルールについて、複数の指標毎に、被害の深刻さに応じた加点をすることによって、優先度を決定してよい。
【0142】
また、特徴抽出部112は、複数のインシデントに基づいて作成された第1のルールによる被害の深刻さに応じた加点結果と、個別のインシデントに基づいて作成された第2のルールによる被害の深刻さに応じた加点結果とについて、正規化を行って足し合わせた値によって、優先度を決定してもよい。
【0143】
チェック項目抽出部113は、各属性と対応付けられた複数のチェック項目のうち、決定された優先度に基づいて選択された一又は複数のチェック項目を、AIシステム100の絞り込んだAI倫理チェックリスト114として出力する。
【0144】
チェック項目抽出部113は、決定した優先度に基づいてAIシステムのAI倫理リスク評価結果を出力する。
【0145】
実施形態におけるAI倫理チェックリストの生成処理を、
図14に示すフローチャート(ステップE1~E10)に従って説明する。
【0146】
テーブルデータ処理部115は、コンポーネントに限定条件があるかを判定する(ステップE1)。
【0147】
コンポーネントに限定条件がない場合には(ステップE1のNOルート参照)、処理はステップE3~E5へ進む。
【0148】
一方、コンポーネントに限定条件がある場合には(ステップE1のYESルート参照)、ルールに関するテーブルデータのうち、今回の限定条件を持つ事例を、今回の検索対象から除外する(ステップE2)。
【0149】
グラフ生成部111は、重要インタラクション抽出ルール142と、AI倫理チェックリスト143と、分析対象のインタラクション集合141とを、入力データとして受け付ける(ステップE3~E5)。
【0150】
グラフ生成部111は、インタラクション集合141からグラフ構造を生成する(ステップE6)。
【0151】
特徴抽出部112は、グラフ構造から特徴を抽出する(ステップE7)。特徴の抽出は、例えば、ステークホルダーのノード数や、複数の役割を持つステークホルダーの数、AIシステム100と直接関わらないステークホルダーの数に基づいて実行されてよい。
【0152】
特徴抽出部112は、抽出した特徴から、「注目すべきインタラクションのルール」に基づいて、注目すべきインタラクションを抽出する(ステップE8)。
【0153】
チェック項目抽出部113は、注目すべきインタラクションに対応するAI倫理チェックリスト143のチェック項目を抽出する(ステップE9)。
【0154】
チェック項目抽出部113は、重要な項目を絞り込んだAI倫理チェックリスト143を出力する(ステップE10)。そして、AI倫理チェックリスト143の生成処理は終了する。
【0155】
〔C〕効果
上述した実施形態におけるAIシステムチェックプログラム,AIシステムチェック方法及び情報処理装置1によれば、例えば以下の作用効果を奏することができる。
【0156】
グラフ生成部111は、AIシステムのステークホルダーを含む構成情報に基づいて、互いに関係のある構成要素の複数の組を特定する。テーブルデータ処理部115は、構成要素の限定条件に基づいて、複数のルールから一以上のルールを選択する。特徴抽出部112は、選択した一以上のルールに基づいて、特定した複数の組の優先度を決定する。チェック項目抽出部113は、決定した優先度に基づいてAIシステムのAI倫理リスク評価結果を出力する。
【0157】
これにより、AIシステムの倫理リスクの対処において、事例に則した優先度の高いチェック項目の抽出を可能とすることができる。具体的には、ルールの採用・不採用を、評価対象のAIシステムのコンポーネントの限定条件で判定して、採用しても意味のない事例を除去することで、より事例に則した優先度の高いチェック項目の抽出が可能になる。また、限定条件ある場合のAIシステムのチェック項目抽出に対応したAI倫理影響評価システムによって、AI開発者に対するAIリスクに関するコンサルテーション等で、商用利用が可能となる。
【0158】
特徴抽出部112は、テーブルデータ処理部115によって選択した一以上のルールについて、複数の指標毎に、被害の深刻さに応じた加点をすることによって、優先度を決定する。
【0159】
これにより、AIシステムに含まれるインタラクションの優先度の決定を正確に実施できる。
【0160】
複数の指標は、インシデントによって生じる身体的被害と経済的被害と精神的被害と解決までの時間との少なくともいずれかを含む。
【0161】
これにより、インシデントによって生じる各種の被害に応じたきめ細やかな優先度の決定を実施できる。
【0162】
複数のルールは、複数のインシデントに基づいて作成された第1のルールと、個別のインシデントに基づいて作成された第2のルールとを含む。
【0163】
これにより、一般化されたルール203と過去のインシデント事例によるルール202との両方を使用して、AIシステムに含まれるインタラクションの優先度の決定を実施できる。
【0164】
特徴抽出部112は、第1のルールによる被害の深刻さに応じた加点結果と、第2のルールによる被害の深刻さに応じた加点結果とについて、正規化を行って足し合わせた値によって、優先度を決定する。
【0165】
これにより、一般化されたルール203と過去のインシデント事例によるルール202との両方を使用する場合においても、優先度の決定を正確に実施できる。
【0166】
〔D〕その他
開示の技術は上述した実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成及び各処理は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
【0167】
〔E〕付記
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0168】
(付記1)
Artificial Intelligence(AI)システムのステークホルダーを含む構成情報に基づいて、互いに関係のある構成要素の複数の組を特定し、
前記構成要素の限定条件に基づいて、複数のルールから一以上のルールを選択し、
選択した前記一以上のルールに基づいて、特定した前記複数の組の優先度を決定し、
決定した前記優先度に基づいて前記AIシステムのAI倫理リスク評価結果を出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする、評価プログラム。
【0169】
(付記2)
選択した前記一以上のルールについて、複数の指標毎に、被害の深刻さに応じた加点をすることによって、前記優先度を決定する、
処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする、付記1に記載の評価プログラム。
【0170】
(付記3)
前記複数の指標は、インシデントによって生じる身体的被害と経済的被害と精神的被害と解決までの時間との少なくともいずれかを含む、
ことを特徴とする、付記2に記載の評価プログラム。
【0171】
(付記4)
前記複数のルールは、複数のインシデントに基づいて作成された第1のルールと、個別のインシデントに基づいて作成された第2のルールとを含む、
ことを特徴とする、付記1~3のいずれか一項に記載の評価プログラム。
【0172】
(付記5)
前記第1のルールによる被害の深刻さに応じた加点結果と、前記第2のルールによる被害の深刻さに応じた加点結果とについて、正規化を行って足し合わせた値によって、前記優先度を決定する、
処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする、付記4に記載の評価プログラム。
【0173】
(付記6)
Artificial Intelligence(AI)システムのステークホルダーを含む構成情報に基づいて、互いに関係のある構成要素の複数の組を特定し、
前記構成要素の限定条件に基づいて、複数のルールから一以上のルールを選択し、
選択した前記一以上のルールに基づいて、特定した前記複数の組の優先度を決定し、
決定した前記優先度に基づいて前記AIシステムのAI倫理リスク評価結果を出力する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする、評価方法。
【0174】
(付記7)
選択した前記一以上のルールについて、複数の指標毎に、被害の深刻さに応じた加点をすることによって、前記優先度を決定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする、付記6に記載の評価方法。
【0175】
(付記8)
前記複数の指標は、インシデントによって生じる身体的被害と経済的被害と精神的被害と解決までの時間との少なくともいずれかを含む、
ことを特徴とする、付記7に記載の評価方法。
【0176】
(付記9)
前記複数のルールは、複数のインシデントに基づいて作成された第1のルールと、個別のインシデントに基づいて作成された第2のルールとを含む、
ことを特徴とする、付記6~8のいずれか一項に記載の評価方法。
【0177】
(付記10)
前記第1のルールによる被害の深刻さに応じた加点結果と、前記第2のルールによる被害の深刻さに応じた加点結果とについて、正規化を行って足し合わせた値によって、前記優先度を決定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする、付記9に記載の評価方法。
【0178】
(付記11)
Artificial Intelligence(AI)システムのステークホルダーを含む構成情報に基づいて、互いに関係のある構成要素の複数の組を特定し、
前記構成要素の限定条件に基づいて、複数のルールから一以上のルールを選択し、
選択した前記一以上のルールに基づいて、特定した前記複数の組の優先度を決定し、
決定した前記優先度に基づいて前記AIシステムのAI倫理リスク評価結果を出力する、
プロセッサを備えることを特徴とする、情報処理装置。
【0179】
(付記12)
前記プロセッサは、
選択した前記一以上のルールについて、複数の指標毎に、被害の深刻さに応じた加点をすることによって、前記優先度を決定する、
ことを特徴とする、付記11に記載の情報処理装置。
【0180】
(付記13)
前記複数の指標は、インシデントによって生じる身体的被害と経済的被害と精神的被害と解決までの時間との少なくともいずれかを含む、
ことを特徴とする、付記12に記載の情報処理装置。
【0181】
(付記14)
前記複数のルールは、複数のインシデントに基づいて作成された第1のルールと、個別のインシデントに基づいて作成された第2のルールとを含む、
ことを特徴とする、付記11~13のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【0182】
(付記15)
前記プロセッサは、
前記第1のルールによる被害の深刻さに応じた加点結果と、前記第2のルールによる被害の深刻さに応じた加点結果とについて、正規化を行って足し合わせた値によって、前記優先度を決定する、
ことを特徴とする、付記14に記載の情報処理装置。
【符号の説明】
【0183】
1,6 :情報処理装置
10 :AIサービス提供者
11 :CPU
12 :メモリ部
13 :表示制御部
14 :記憶装置
15 :入力IF
16 :外部記録媒体処理部
17 :通信IF
20,30:データ提供者
40 :利用者
100,100a:AIシステム
101 :訓練データ
102 :ローン審査モデル生成部
103 :ローン審査モデル
104 :推論データ
105 :推論部
106 :審査結果
110 :訓練部
111 :グラフ生成部
112 :特徴抽出部
113 :チェック項目抽出部
114 :AI倫理チェックリスト
115 :テーブルデータ処理部
120 :予測部
131 :表示装置
141 :インタラクション集合
142 :重要インタラクション抽出ルール
143 :AI倫理チェックリスト
151 :マウス
152 :キーボード
160 :記録媒体
201 :過去のインシデント事例による被害
202 :過去のインシデント事例によるルール
203 :一般化されたルール