(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014199
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】インナーフィン
(51)【国際特許分類】
F28F 1/40 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
F28F1/40 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116850
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000113942
【氏名又は名称】マルヤス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】梶 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 敬二
(57)【要約】
【課題】熱交換器用のインナーフィンにおいて、高温かつ高流量の流体を熱交換させるときであっても、圧力損失を抑えつつ伝熱性能を高くすることができるようにする。
【解決手段】インナーフィン40は、流体が流れる流れ方向Fと直交する断面形状が山部41と谷部42が交互に連続して形成されるように板材を波形に曲げ加工したものであって、山部41と谷部42を流体が流れる流れ方向Fの所定長毎に山部41と谷部42が並ぶ並び方向Gにずらして配置したオフセット形状をしており、山部41の側面には流れ方向Fに延びる突条41aが形成され、突条41aを流れ方向Fから山部41の高さ方向に傾斜させた。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる管体内に設けられる熱交換器用のインナーフィンであり、
前記流体が流れる流れ方向と直交する方向の断面形状が山部と谷部が交互に連続して形成されるように板材を波形に曲げ加工したものであって、前記山部と前記谷部を前記流れ方向の所定長毎に前記山部と前記谷部が並ぶ並び方向にずらして配置したオフセット形状をしており、
前記山部の側面には前記流れ方向に延びる突条が形成され、前記突条を前記流れ方向から前記山部の高さ方向に傾斜させたことを特徴とするインナーフィン。
【請求項2】
請求項1に記載のインナーフィンにおいて、
前記突条を前記流れ方向から前記高さ方向に35°~55°で傾斜させたことを特徴とするインナーフィン。
【請求項3】
請求項1に記載のインナーフィンにおいて、
前記突条は前記山部の側面に複数形成され、複数の突条の面積を前記山部の側面の面積の30%~60%としたことを特徴とするインナーフィン。
【請求項4】
請求項1に記載のインナーフィンにおいて、
前記突条を前記並び方向にて前記山部をオフセットさせた長さに対して25%~45%の高さで突出させたことを特徴とするインナーフィン。
【請求項5】
請求項1に記載のインナーフィンにおいて、
前記突条は前記山部の側面に複数形成され、複数の突条の面積を前記山部の側面の面積の30%~60%とし、
前記突条を前記流れ方向から前記高さ方向に35°~55°で傾斜させるとともに、前記山部と谷部とが並ぶ並び方向にて前記山部をオフセットさせた長さに対して25%~45%の高さで突出させたことを特徴とするインナーフィン。
【請求項6】
請求項1に記載のインナーフィンにおいて、
前記突条は前記山部の前記並び方向の両方の側面に形成され、
前記山部の前記並び方向の一方の側面に形成された前記突条を前記山部の内側に突出させ、前記山部の前記並び方向の他方の側面に形成された前記突条を前記山部の外側に突出させたことを特徴とするインナーフィン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス等の流体を冷却する熱交換器内に設けられて、熱交換器内を通過する流体から熱を伝達させる熱交換器用のインナーフィンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には自動車の排気系の熱交換器の発明が開示されている。この熱交換器は、自動車から排出される排気ガス中の窒素酸化物の低減や燃費改善の目的で用いられるものであり、排気系配管の排気ガスを取り込んで冷却したのちに、吸気系配管に再循環させるためのものである。熱交換器は、管形状を呈した外管を構成するケースと、ケース内に設置された複数の伝熱管を構成するチューブとを備えている。ケースの一端部にはチューブの一端に連通する排気ガス導入部が設けられており、ケースの他端部にはチューブの他端に連通する排気ガス導出部が設けられている。排気ガスはケースの一端部の排気ガス導入部を通ってチューブの一端からチューブ内に導入され、チューブ内を通過した排気ガスはチューブの他端からケースの他端部の排気ガス導出部を通って導出される。また、ケースの側部には、ケースとチューブとの間及びチューブとチューブとの間の隙間に冷却水を流入させる冷却水流入管と、ケース内に流入させた冷却水を流出させる冷却水流出管とが設けられている。チューブを通過する排気ガスはケース内を通過する冷却水によって冷却される。
【0003】
各伝熱管内にはインナーフィンが設けられており、インナーフィンは薄板を曲げ加工することによって断面形状がコ字状の山部と谷部とが交互に配置されるように形成され、さらに、山部と谷部とを排気ガスが流れる流れ方向と直交する幅方向にずらしたオフセット形状をしている。伝熱管内に導入された排気ガスはインナーフィンの伝熱面となる山部の側面を通過するときにインナーフィンに熱を伝え、インナーフィンに伝えられた熱は外管と伝熱管との間を通過する冷却水に伝えられ、排気ガスは熱交換器を通過するときに冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の自動車の排気系の熱交換器は、従来よりも高温かつ高流量の排気ガス(流体)を熱交換させることが求められるようになっており、熱交換器内に従来よりも高温かつ高流量の排気ガスを通過させたときに、熱交換器は高温かつ高流量の排気ガスに応じた伝熱性能(冷却性能)が得られないことがある。排気ガスを高流量で熱交換器に流入させたときには、排気ガスはインナーフィンの伝熱面となる山部の側面の近傍で流速が遅くなる傾向があり、排気ガスの熱がインナーフィンの各山部の伝熱面となる山部の側面と熱交換されにくくなっていることを知得した。一般的に、インナーフィンの伝熱面となる山部の側面に突部等を設けることで、インナーフィンを通過するときの排気ガスの流れの一部を突部等で乱流を生じさせようとすると、インナーフィンの伝熱面の伝熱性能(冷却性能)を高くすることができるが、熱交換器の圧力損失が必要以上に高くなるおそれがある。本発明は、高温かつ高流量の流体を熱交換させるときであっても、圧力損失を抑えつつ伝熱性能を高くすることができる熱交換器用のインナーフィンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、流体が流れる管体内に設けられる熱交換器用インナーフィンであり、流体が流れる流れ方向と直交する方向の断面形状が山部と谷部が交互に連続して形成されるように板材を波形に曲げ加工したものであって、山部と谷部を流体が流れる流れ方向の所定長毎に山部と谷部が並ぶ並び方向にずらして配置したオフセット形状をしており、山部の側面には流れ方向に延びる突条が形成され、突条を流れ方向から山部の高さ方向に傾斜させたことを特徴とするインナーフィンを提供するものである。
【0007】
上記のように構成したインナーフィンにおいては、流体が流れる流れ方向と直交する方向の断面形状が山部と谷部が交互に連続して形成されるように板材を波形に曲げ加工したものであって、山部と谷部を流体が流れる流れ方向の所定長毎に山部と谷部が並ぶ並び方向にずらして配置したオフセット形状をしており、山部の側面には流れ方向に延びる突条が形成され、突条を流れ方向から山部の高さ方向に傾斜させている。インナーフィンを通過する流体は、山部の側面を通過するときに突条による二次流れが発生して乱流が生じるようになり、流体の熱が山部の側面に伝わりやすくなる。このとき、山部の側面を通過する流体は突条によって乱流が生じるようになるものの、突条は流れ方向から山部の高さ方向に傾斜させたものであるので、流体は過度に流れが抑制されないので圧力損失を抑えることができる。
【0008】
上記のように構成したインナーフィンにおいては、突条を流れ方向から高さ方向に35°~55°で傾斜させるのが好ましい。このようにしたときには、インナーフィンを通過する流体の圧力損失を抑えた状態で、インナーフィンに高い伝熱性能を発揮させることができる。
【0009】
上記のように構成したインナーフィンにおいては、突条は山部の側面に複数形成され、複数の突条の面積を山部の側面の面積の30%~60%とするのが好ましい。このようにしたときには、山部の側面の全体で流体を熱伝達させやすくなり、インナーフィンに高い伝熱性能を発揮させることができるようになる。
【0010】
上記のように構成したインナーフィンにおいては、突条を並び方向にて山部をオフセットさせた長さに対して25%~45%の高さで突出させるのが好ましい。このようにしたときには、突条を形成した山部の側面だけでなく、突条を形成した山部の側面と対向する山部の側面近傍にも流体に乱流が生じやすくなり、インナーフィンに特に高い伝熱性能を発揮させることができるようになる。
【0011】
上記のように構成したインナーフィンにおいては、突条は山部の側面に複数形成され、複数の突条の面積を山部の側面の面積の30%~60%とし、突条を流れ方向から高さ方向側に35°~55°で傾斜させるとともに、山部と谷部とが並ぶ並び方向にて山部をオフセットさせた長さに対して25%~45%の高さで突出させるのが好ましい。このようにしたときには、インナーフィンを通過する流体の圧力損失を抑えた状態で、インナーフィンに高い伝熱性能を発揮させることができる。
【0012】
上記のように構成したインナーフィンにおいては、突条は山部の並び方向の両方の側面に形成され、山部の並び方向の一方の側面に形成された突条を山部の内側に突出させ、山部の並び方向の他方の側面に形成された突条を山部の外側に突出させるのが好ましい。このようにしたときには、山部の内側を通過する流体は山部の一方の側面に形成した突条によって乱流が生じるようになり、山部の外側を通過する流体は山部の他方の側面に形成した突条によって乱流が生じるようになり、流体は山部の内側と外側の両側で乱流が生じるようになり、流体の熱が山部の側面に伝わりやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明によるインナーフィンを搭載した熱交換器の実施形態の斜視図である。
【
図6】排気ガスの流れ方向の上流側を正面としたときのインナーフィンの一部拡大正面図である。
【
図8】突条の角度と伝熱性能(冷却性能)との関係を示すグラフである。
【
図9】突条の高さと伝熱性能(冷却性能)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明のインナーフィンを熱交換器に搭載した実施形態により添付図面を用いて説明をする。この実施形態の熱交換器10は、自動車から排出される排気ガス中の窒素酸化物の低減や燃費改善の目的で用いられるものであり、排気系配管の排気ガスを取り込んで冷却したのちに吸気系配管に再循環させるためのものである。熱交換器10は、外管20と、外管20内にて3段(複数段)で積層された伝熱管30と、外管20に排気ガスを導入させる排気ガス導入部21と、外管20から排気ガスを導出させる排気ガス導出部22と、導入側フランジ23と、導出側フランジ24と、冷却水流入管25と、冷却水流出管26とを備えている。
【0015】
図1~
図3に示したように、外管20は、排気ガスが流れる流れ方向Fと直交する方向の断面形状が略コ字形をした2つのケース部材20a,20bの開口側を互いに向かい合わせて該断面形状が略長方形をした管形状となるように接合させたものである。外管20の排気ガスが流れる流れ方向Fとなる長手方向の一方の端部には排気ガス導入部21が設けられており、排気ガス導入部21は先端側の導入口21aに向けて径が細くなっている。排気ガス導入部21の先端部には排気系配管に接続するための導入側フランジ23が固定されており、熱交換器10はこの導入側フランジ23によって排気系配管に接続される。
図3に示したように、外管20には排気ガス導入部21側に各伝熱管30を構成する内管31の排気導入口31aが配置されており、排気系配管から排気ガス導入部21に導入される排気ガスは排気導入口31aから内管31内に導入される。
【0016】
図1~
図3に示したように、外管20の排気ガスが流れる流れ方向Fとなる長手方向の他方の端部には排気ガス導出部22が設けられており、排気ガス導入部22は先端側の導出口22aに向けて径が細くなっている。排気ガス導入部22の先端部には導出側フランジ24が固定されており、熱交換器10は導出側フランジ24によって吸気系配管に接続される。
図3に示したように、外管20には排気ガス導出部22側に各伝熱管30を構成する内管31の排気導出口31bが配置されており、内管31の排気導出口31bから導出される排気ガスは排気ガス導出部22から吸気系配管に導出される。
【0017】
図1及び
図2に示したように、外管20には排気ガスが流れる流れ方向Fにて排気ガスの導入側の端部に冷却水流入管25が設けられており、外管20には排気ガスが流れる流れ方向Fにて排気ガスの導出側の端部に冷却水流出管26が設けられている。冷却水流入管25から外管20内に流入する冷却水は各伝熱管30内を通過する排気ガスと熱交換して排気ガスを冷却し、各伝熱管30内を通過する排気ガスを冷却した冷却水は冷却水流出管26から流出される。
【0018】
図3に示したように、外管20内には3つの伝熱管30が積層されており、外管20内に3段で積層された伝熱管30の間には冷却水流入管25から導入される冷却水が通過可能となる隙間が形成されている。
図3及び
図4に示したように、伝熱管30は、内部に排気ガスを通過させる空間が形成された内管31と、内管31内に配設されるインナーフィン40とを備えている。内管31は、内部に排気ガスを通過させる空間を形成させるケース部材32,33を備え、排気ガスが流れる流れ方向Fと直交する方向の断面形状が略コ字形をしたケース部材32,33の開口側を互いに向かい合わせて該断面形状が略長方形をした管形状となるように接合させたものである。
【0019】
図3及び
図4に示したように、内管(管体)31内にはインナーフィン40が配設されており、インナーフィン40は排気ガスの熱を内管31を介して内管31の外側を通過する冷却水に伝達させるものである。
図4及び
図5に示したように、インナーフィン40は、排気ガス(流体)が流れる流れ方向Fと直交する直交方向の断面形状が山部41と谷部42とが交互に連続する波形をし、山部41と谷部42を排気ガスが流れる流れ方向Fの所定長毎に山部41と谷部42が並ぶ(連続する)並び方向Gにずらして配置されたオフセット形状をしている。
【0020】
インナーフィン40の山部41は、排気ガスが流れる流れ方向Fと直交する方向の断面形状が内側に排気ガスが通過可能な下側に開いた略コ字形(略長方形)をしており、山部41の幅方向(並び方向G)の両側の側面を伝熱面としている。また、山部41と山部41との間に谷部42が形成されており、排気ガスは山部41の内側だけでなく山部41と山部41の間も通過可能となっている。インナーフィン40の山部41の頂部が内管31を構成するケース部材32に当接しているとともに、インナーフィン40の谷部42が内管31を構成するケース部材33に当接しており、インナーフィン40に伝達された排気ガスの熱は山部41の頂部と谷部42とから内管31を介して内管31の外側の冷却水と熱交換される。
【0021】
この実施形態のインナーフィン40は、薄い板金部材を曲げ加工したものであり、山部41の幅方向の長さよりも高さ方向の長さが長いハイアスペクト比のオフセットフィンを用いたものである。また、山部41と谷部42を流れ方向Fの所定長毎に山部41及び谷部42が並ぶ並び方向Gに山部41の幅の半分の長さでオフセットさせている。
図5及び
図6に示したように、インナーフィン40の山部41の排気ガスが流れる流れ方向Fと直交する方向の側面には、排気ガスが流れる流れ方向Fに延びる2本の突条41aが形成されている。突条41aは排気ガスが山部41の伝熱面である側面を通過するときに二次流れを発生させて乱流を生じさせるようにし、排気ガスが山部41の伝熱面である側面を通過するときに流速が高くなるようにして熱伝達を促進させるものある。特に、これらの突条41aは排気ガスが山部41の伝熱面の高さ方向に乱流を発生させるようにして山部41の伝熱面の高さ方向の熱交換の効率を高めるようにしている。
【0022】
突条41aは、山部41の一方の側面(
図5及び
図6の右側の側面)では内側に突出するように形成され、山部41の一方の側面に対向する他方の側面(
図5及び
図6の左側の側面)では外側に突出するように形成されている。
図7に示したように、突条41aは、排気ガスが流れる流れ方向Fから山部41の高さ方向に傾斜しており、この実施形態では、排気ガスが流れる流れ方向Fに進むに従って山部41の高さが高くなる方向に50°で傾斜している(
図7のθで示した)。各突条41aは山部41をオフセットさせた長さに対して40%の長さで突出させている。2つの突条41aは山部41の側面の面積の50%を占めている。
【0023】
上述した熱交換器10は、従来の排気ガス再循環系で求められている温度及び流量(例えば排気ガスの温度が約400℃で流量が12g/s)よりも高温かつ高流量(例えば排気ガスの温度が700℃で流量が20g/s)の排気ガスを熱交換させるときであっても、圧力損失を抑えつつ伝熱性能を高く発揮させることができるようにしたものである。この熱交換器10は、インナーフィン40の山部41の側面に排気ガスが流れる流れ方向Fに延びる突条41aを形成することにより、伝熱管30を通過する高温かつ高流量の排気ガスの圧力損失を抑えつつインナーフィン40の伝熱性能を高めるようにしたものである。
【0024】
この熱交換器10においては、外管20内には冷却水流入管25から冷却水が導入され、導入された冷却水は外管20と各伝熱管30の間を通って冷却水流出管26から導出され、伝熱管30は外管20との間を通過する冷却水により冷却されている。排気系配管から排出される排気ガスは排気ガス導入部21から外管20内に導入され、外管20内に導入される排気ガスは排気導入口31aから各伝熱管30の内管31内に導入される。各伝熱管30の内管31内に導入された排気ガスはインナーフィン40及び内管31を介して外側の冷却水と熱交換されることにより冷却される。各伝熱管30内で冷却された排気ガスは内管31の排気導出口31bを通って外管20の排気ガス導出部22aから吸気系配管に導出される。
【0025】
伝熱管30内においては、排気ガスは、インナーフィン40の山部41の内側及び山部41と山部41の間を通過するときに、山部41の側面に形成された突条41aによって流れ方向Fから二次流れが発生して乱流となり、山部41の伝熱面となる側面を通過するときに流速が高くなって熱伝達が促進されている。このとき、突条41aは山部41の高さ方向に傾斜しているものの排気ガスの流れる流れ方向Fに沿って形成されているので、伝熱管30の内管31を通過する排気ガスは過度に流れが抑制されずに圧力損失が抑えられる。
【0026】
上記のように構成した熱交換器10に用いられるインナーフィン40は、排気ガス(流体)が流れる流れ方向Fと直交する方向の断面形状が山部41と谷部42が交互に連続して形成されるように板材を波形に曲げ加工したものであって、山部41と谷部42を排気ガスが流れる流れ方向Fの所定長毎に山部41と谷部42が並ぶ並び方向Gにずらして配置したオフセット形状をしている。山部41の側面には流れ方向に延びる突条41aが形成され、突条41aを流れ方向から山部41の高さ方向に傾斜させている。
【0027】
インナーフィン40を通過する排気ガスは山部41の側面を通過するときに突条41aによって二次流れによる乱流が生じるようになり、排気ガスの熱が山部41の側面に伝わりやすくなる。特に、突条41aを流れ方向から山部41の高さ方向に傾斜させているので、排気ガスは山部41の伝熱面の高さ方向にも乱流が発生するようになり、インナーフィン40は山部41の伝熱面で高さ方向の熱交換の効率が高くなる。このとき、山部41の側面を通過する排気ガスは突条41aによる二次流れによる乱流が生じるようになるものの、突条41aは流れ方向Fに延びて山部41の高さ方向に傾斜させたものであるので、排気ガスは過度に流れが遮られないので圧力損失を抑えることができる。この実施形態のインナーフィン40は、山部41の幅方向の長さよりも高さ方向の長さが長いハイアスペクト比のオフセットフィンである。外管20内にハイアスペクト比のインナーフィン40を用いた熱交換器30を低段数で積層したものであっても、伝熱性能の高いインナーフィン40を用いていること排気ガスの伝熱性能を高くしながら圧力損失を抑えることができる。
【0028】
また、この実施形態のインナーフィン40においては、突条41aを排気ガスが流れる流れ方向Fから山部41が高くなる方向(山部41の高さ方向)に50°で傾斜させている(
図7のθに示した)。
図8に示したように、突条41aを排気ガスの流れる流れ方向Fから山部41が高くなる方向に50°で傾斜させていることで、インナーフィン40を通過する排気ガスの圧力損失を抑えるようにしつつ、インナーフィン40に特に高い伝熱性能(冷却性能)を発揮させることができた。本発明は、排気ガスが流れる流れ方向Fから山部41が高くなる方向(山部41の高さ方向)に50°で傾斜させたものに限られるものではなく、
図8に示したように、突条41aを45°~52°で傾斜させたときに高い伝熱性能(冷却性能)を発揮させることができ(
図8のAに示した)、突条41aを35°~55°で傾斜させたときに一定の高い伝熱性能(冷却性能)を発揮させることができる(
図8のBに示した)。
【0029】
この実施形態のインナーフィン40においては、突条41aは山部41の側面に2本(複数)形成され、2本の突条41aの面積を山部41の側面の面積の50%としている。突条41aを山部41の側面に2本形成したことで、山部41の側面の全体で排気ガスを熱伝達させやすくなり、インナーフィン40に特に高い伝熱性能を発揮させることができるようになる。なお、本発明は、突条41aを2本としたものに限られるものでなく1本または3本以上(複数本)としたものであってもよい。また、突条41aを2本以上としたものにあっては、突条41aの面積を山部41の側面の面積の30%~60%の範囲としたものであれば、インナーフィン40に高い伝熱性能を発揮させ、インナーフィン40を通過する流体の圧力損失を抑えることができる。
【0030】
この実施形態のインナーフィン40においては、突条41aを山部41と谷部42とが並ぶ並び方向Gにて山部41をオフセットさせた長さに対して40%の高さで突出させている。突条41aを形成した山部41の側面だけでなく、突条41aを形成した山部41の側面と対向する山部41の側面にも排気ガスに二次流れによる乱流が生じやすくなり、インナーフィン40に特に高い伝熱性能を発揮させることができるようになる。この実施形態のインナーフィン40においては、突条41aを山部41と谷部42とが並ぶ並び方向Gにて山部41をオフセットさせた長さに対して40%の高さで突出させているが、これに限られるものでなく、突条41aを山部41と谷部42とが並ぶ並び方向Gにて山部41をオフセットさせた長さに対して30%~43%で突出させたときに、突条41aを形成した山部41の側面と対向する山部41の側面にも排気ガスに二次流れによる乱流が生じやすくなり、インナーフィン40に高い伝熱性能を発揮させることができ(
図9のAに示した)、突条41aを山部41と谷部42とが並ぶ並び方向Gにて山部41をオフセットさせた長さに対して25%~45%で突出させたときに、突条41aを形成した山部41の側面と対向する山部41の側面にも排気ガスに二次流れによる乱流が生じやすくなり、インナーフィン40に一定の高い伝熱性能を発揮させることができる(
図9のBに示した)。
【0031】
この実施形態のインナーフィン40においては、突条41aは山部41の並び方向Gの両側の側面に形成され、山部41の並び方向Gの一方の側面として
図5及び
図6に示した右側の側面に形成された突条41aは山部41の内側に突出させ、山部41の並び方向Gの他方の側面として
図5及び
図6に示したに形成された突条41aは山部41の外側に突出させている。山部41の内側を通過する排気ガスは山部41の一方の側面として右側の側面に形成した突条41aによって乱流が生じるようになり、山部41の外側(山部41と山部41の間)を通過する排気ガスは山部41の他方の側面として右側の側面に形成した突条41Aによって乱流が生じるようになり、排気ガスは山部41の内側と外側の両側で乱流が生じるようになり、排気ガスの熱が山部41の側面に伝わりやすくなる。
【0032】
この実施形態のインナーフィン40は、自動車の排気系配管の排気ガスを取り込んで冷却したのちに吸気系配管に再循環させる熱交換器に用いられるものであるが、これに限られるものでなく、排気ガス以外の流体と熱交換するための熱交換器に用いるようにしたものであってもよい。また、インナーフィン40の山部41は、流れ方向Fと直交する断面形状が長方形をしているが、これに限られるものでなく、山部41の該断面形状を高さ方向に長い半円形状または放物線による形状としたものであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
40…インナーフィン、41…山部、42…谷部、41a…突条、F…流れ方向、G…並び方向。