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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141992
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】媒体処理装置及び駆動機構
(51)【国際特許分類】
   B41J 19/18 20060101AFI20241003BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B41J19/18 E
G01D5/245 110W
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053916
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115417
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 弘一
(72)【発明者】
【氏名】桐淵 雅光
【テーマコード(参考)】
2C480
2F077
【Fターム(参考)】
2C480CA32
2C480CA44
2C480CB02
2C480CB34
2C480DA01
2F077AA47
2F077NN02
2F077VV02
2F077VV23
2F077VV31
(57)【要約】
【課題】スリットディスクをボスなどの構造を付加させることなく回転軸に固定させることで、印字ずれを抑制できる媒体処理装置及び駆動機構を提供する。
【解決手段】スリットディスク23に開口部34を設け、回転軸24にキー溝32を設ける。回転軸24にスリットディスク23を挿入し、回転止め22を回転軸24に挿入する。回転止め22の突出部36を開口部34に貫通させ、キー溝32に到達させる。突出部36とキー溝32が嵌合することにより、スリットディスク23は回転軸24に固定される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に印字する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドを駆動させる駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、
第1の嵌合部が形成され、駆動源からの駆動力により回転する回転軸と、
前記回転軸が挿入され、該回転軸と一体的に回転する回転体と、
第2の嵌合部が形成され、前記回転体を前記回転軸に固定する固定部材と、
を有し、
前記第1の嵌合部と前記第2の嵌合部が嵌合することにより、前記回転体が前記回転軸に固定される
ことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記回転体は、開口部を有し、
前記第2の嵌合部は、
前記開口部を介して前記第1の嵌合部と嵌合する
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記回転体は、
複数のスリットが設けられたスリットディスクであり、
前記スリットディスクは、前記複数のスリットとは異なる位置に前記開口部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記開口部は、
前記複数のスリットよりも前記スリットディスクの中心側に位置する
ことを特徴とする請求項3に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記回転軸は、
大径部と、
前記大径部から前記回転軸の延在方向に延び、前記大径部よりも径が小さい小径部と、
から構成され、
前記第1の嵌合部は、前記大径部に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記第1の嵌合部は溝形状を有する溝部であり、
前記第2の嵌合部は、前記溝部と嵌合する突出形状を有する突出部である
ことを特徴とする請求項5に記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記溝部は、
前記大径部の外周面における前記小径部側の端部に設けられた切り欠き形状である
ことを特徴とする請求項6に記載の媒体処理装置。
【請求項8】
前記固定部材は、
前記回転軸が挿入される穴を形成する円環部と、
前記円環部に設けられ、前記回転軸の延在方向に突出する突出部と、
から構成され、
前記突出部と前記溝部とが嵌合することにより、前記回転体と前記回転軸を固定する
ことを特徴とする請求項6に記載の媒体処理装置。
【請求項9】
前記回転軸は、前記大径部の外周面と前記小径部の外周面とを繋ぐ段差面を含み、
前記第1の嵌合部は、前記段差面に設けられる穴部である
ことを特徴とする請求項5に記載の媒体処理装置。
【請求項10】
前記固定部材は、棒形状を有するピンであり、
前記第2の嵌合部は、前記ピンの一部である
ことを特徴とする請求項9に記載の媒体処理装置。
【請求項11】
前記駆動部は、
前記回転軸が挿入され、前記固定部材と前記回転体を前記大径部に押しつける押し付け部材をさらに備える
ことを特徴とする請求項5に記載の媒体処理装置。
【請求項12】
第1の嵌合部が形成され、駆動源からの駆動力により回転する回転軸と、
前記回転軸が挿入され、該回転軸の回転に一体的に回転する回転体と、
第2の嵌合部が形成され、前記回転体を前記回転軸に固定する固定部材と、
を有し、
前記第1の嵌合部と前記第2の嵌合部が嵌合することにより、前記回転体が前記回転軸に固定される
ことを特徴とする駆動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置および駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行等の金融機関の窓口で用いられる媒体処理装置の中に、通帳や伝票といった媒体に印字を行う通帳伝票プリンタがある。
【0003】
通帳伝票プリンタは、媒体に印字を行う印字ヘッドと、印字ヘッドを動かす駆動部と、印字ヘッドと駆動部を連結する連結部とを備えている。駆動部はモータであり、連結部はベルトである。このような構成のとき、モータの駆動力を受けてベルトが動くことで、ベルトに連結された印字ヘッドが移動しながら媒体へ所定の印刷を行う。
【0004】
モータは小型の回転軸を有し、回転軸には回転量を検出するためのスリットディスクを備えているものがある。このとき、回転軸が回転するとその回転に従いスリットディスクも回転する。例えば特許文献1のように、エンコーダーによってスリットディスクの回転量を検出し、電気信号として出力することで、回転軸の回転量を測定している。前述のように、モータの回転軸が回転することでベルトが動き、印字ヘッドが移動する。したがって、印字ヘッドの移動量を制御するためには、回転軸の回転量を正確に検出しなければならない。そのため、回転軸とスリットディスクを固定させ、回転軸の回転とスリットディスクの回転のずれを抑制することと、印字ヘッドの移動量を正確に測定するために、回転軸の回転量を正確に検出することが必要である。
【0005】
また、通帳伝票プリンタに限らず、回転軸にスリットディスク等の回転体を固定させることは一般的に行われている。例えば特許文献2のように、回転軸に付加させたボスと回転体とをボルト締めにより固定するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-188028号公報
【特許文献2】特開2019-152261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通帳伝票プリンタにおいて、回転軸とスリットディスクとの固定が不十分であると、エンコーダーが測定したスリットディスクの回転量が、回転軸の回転量と相違するため、印字ヘッドの移動を正確に制御できないことがある。印字ヘッドの移動を正確に制御できない場合には、媒体の印字すべき箇所に印字されなかったり、媒体の印字すべきでない箇所に印字されるといった印字ずれが生じる問題がある。
【0008】
また、回転軸とスリットディスクを固定させるために特許文献2の発明を適用しようとすると、回転軸にボスといった新たな構造を付加させる必要があるため、スペースの制約上困難であるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、上記課題を解決し、印字ずれを抑制できる媒体処理装置及び駆動機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の媒体処理装置は、媒体に印字する印字ヘッドと、印字ヘッドを駆動させる駆動部とを備え、駆動部は、第1の嵌合部が形成され、駆動源からの駆動力により回転する回転軸と、回転軸が挿入され、回転軸と一体的に回転する回転体と、第2の嵌合部が形成され、回転体を回転軸に固定する固定部材とを有し、第1の嵌合部と第2の嵌合部が嵌合することにより、回転体が回転軸に固定される構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回転軸にボスなどの構造を付加させることなくスリットディスクを回転軸に固定することができる。それにより、回転軸の回転に対してスリットディスクが滑ることを抑制し、スリットディスクの回転量に基づいて印字ヘッドの移動量を正確に測定することができる。その結果、適切に印字ヘッドの移動を制御し、印字ずれを抑制できる媒体処理装置及び駆動機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】通帳伝票プリンタの一例を示す外観斜視図である。
図2】通帳伝票プリンタの一例を示す内部側面図である。
図3】印字ヘッドと駆動部の位置関係を示す関係図である。
図4】第1の実施の形態における駆動部を示す斜視図である。
図5図4のA-A断面を示す断面図である。
図6】第1の実施の形態におけるスリットディスクを示す正面図である。
図7】第1の実施の形態における固定部材を示す側面図及び正面図である。
図8】第1の実施の形態における回転軸、スリットディスク及び固定部材を示す斜視図である。
図9】第2の実施の形態における駆動部を示す斜視図である。
図10】第2の実施の形態におけるスリットディスクを示す正面図である。
図11】第2の実施の形態における駆動部を示す断面図である。
図12図11における固定部材、スリットディスク及び回転軸の位置関係を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、通帳伝票プリンタ1の一例を示す外観斜視図である。また、図2は、通帳伝票プリンタ1の一例を示す内部側面図である。図1図2に示すように、通帳伝票プリンタ1は、伝票を受け付ける伝票挿入口5と、通帳を受け付ける通帳挿入口6とを有する。以降、通帳と伝票をまとめて媒体と称して説明する。
【0015】
図2に示すように、通帳伝票プリンタ1はインサータユニット2、印字ユニット3及びATP(オートターンページ)ユニット4の3つのサブユニットから構成されている。以降、操作者から見て、伝票挿入口5と通帳挿入口6が設けられている面を通帳伝票プリンタ1の前側、その反対側を通帳伝票プリンタ1の後側とし、通帳伝票プリンタ1の上面を上側とする。また、後ろ側から前側方向を見たときの右方向を右、左方向を左として、適宜図面中にその方向を補助的に示す。
【0016】
インサータユニット2は、伝票挿入口5や通帳挿入口6から挿入された媒体を図示しないセンサーにより読み取って種類や適否を判断する機能を有する。
【0017】
印字ユニット3は、挿入された媒体の記載内容を読み取る読取部7を有し、読取部7による記載内容の読み取りが済んだ媒体に対して印字ヘッド8により所定の内容を印字する機能を有する。
【0018】
ATPユニット4は、ページめくりが必要とされた通帳のページを、図示しない部材によりめくる機能を有する。
【0019】
さらに、通帳伝票プリンタ1は図示しない制御部を有し、インサータユニット2、印字ユニット3及びATPユニット4の各ユニットを制御する。また、制御部は、後述する駆動部14の回転軸24の回転量を検知することで、印字ヘッド8の移動を制御する機能も有している。
【0020】
媒体搬送路9は、インサータユニット2、印字ユニット3及びATPユニット4の3つのサブユニットを相互に接続して媒体を搬送する。媒体は、搬送フィードローラ10と搬送プレッシャローラ11に挟み込まれ、搬送フィードローラ10と搬送プレッシャローラ11のそれぞれが回転することにより媒体搬送路9上を搬送される。
【0021】
図3は印字ヘッド8と駆動部14の位置関係を示す関係図である。図3に示すように、媒体への印字を行う印字ヘッド8は、キャリッジ12に保持され、さらに、キャリッジ12は、メインシャフト17とサブシャフト18の2本のシャフトによって支持されている。キャリッジ12は、駆動部14の駆動部プーリ15に架けられたベルト13と、図示しない部材により連結されている。ベルト13は、駆動部プーリ15と逆側プーリ16に架け渡された無端ベルトである。キャリッジ12は、駆動部14からの駆動力を受けて駆動部プーリ15が回転することによりベルト13が動かされることで左右に移動する。
【0022】
図4は、第1の実施の形態における駆動部14を示す斜視図である。また、図5は、図4のA-A断面を示す上面図である。図4図5に示すように、駆動部14は、駆動部プーリ15と、ネジ19と、ベアリング20と、カラ21と、回転止め22と、スリットディスク23と、回転軸24と、駆動源25と、エンコーダー26とを有する。
【0023】
ネジ19は、駆動部プーリ15を回転軸24に締結するための部材である。詳細は後述するが、駆動部プーリ15が回転軸24に締結されたとき、ベアリング20、カラ21、回転止め22及びスリットディスク23は回転軸24に固定される。
【0024】
駆動源25は、回転軸24へ回転運動の動力を伝えるものであり、例えばモータである。詳細は後述するが、回転軸24が回転することに合わせ、スリットディスク23、回転止め22、カラ21、ベアリング20、ネジ19及び駆動部プーリ15も回転する。
【0025】
ベアリング20は、駆動部プーリ15に対しベルト13から加わるテンションを吸収することで、回転軸24が応力により破損することを防いでいる。
【0026】
図6はスリットディスク23を示す正面図である。スリットディスク23は、スリット33と、開口部34と、スリットディスクの穴35とを備えている。スリットディスクの穴35は、回転軸24が挿入される軸穴であり、スリットディスク23の中心に形成されている。また、スリットディスクの穴35は、後述する回転軸24の小径部28と同じ径を有し、後述する回転軸24の大径部29の径よりも小さい径を有する。スリット33は、スリットディスク23の内周と外周の間の領域において、円周方向に沿って複数配置された長方形状の長穴を有する。開口部34は、スリットディスク23においてスリット33よりも中心側に設けられている。
【0027】
図7は第1の実施の形態における回転止め22を示している。回転止め22は、突出形状を有する突出部36と、円環部37と、回転止めの穴38と、を備えている。回転止めの穴38は、後述する回転軸24の小径部28と同じ径を有し、後述する回転軸24の大径部29よりも小さい径を有する。円環部37は、中心に回転止めの穴38が形成されることにより、全体として円環形状を成している。突出部36は、回転止め22において円環部37の外周面から突出しており、突出部36と円環部37とは90°の角度を成すように形成されている。
【0028】
図6及び図7において、スリットディスク23の開口部34と、回転止め22の突出部36は、左右方向の幅が同じであり、上下方向の高さが同じである長方形状である。そのため、突出部36は開口部34に挿入可能であり、突出部36と開口部34は隙間なく嵌合する。
【0029】
なお、本実施の形態では開口部34の形状を長方形状として説明したが、スリットディスク23の開口部34と回転止め22の突出部36とが同じ形状である場合には、開口部34の形状及び突出部36の形状は図6及び図7に示した長方形状に限らず、円形や三角形などでも良い。
【0030】
図8は、図4及び図5のうち回転軸24、スリットディスク23及び回転止め22のみを示した図である。図8中の矢印Bは、回転止め22及びスリットディスク23が小径部28に挿入され、押し付けられる方向を示している。
【0031】
回転軸24は、大径部29と小径部28とを有する。大径部29と小径部28は、ともに前後方向に延びる略円柱形状である。小径部28は、大径部29から図8中の前方向、すなわち回転軸24の延在方向へ延びる構造を有する。また、小径部28の径は、大径部29の径より小さい形状を有する。小径部28の一部に、Dカット部27が設けられている。Dカット部27は、駆動源25のトルクを駆動部プーリ15に伝える部分である。
【0032】
大径部29は、外周面30と、端面31と、キー溝32とを有する。大径部29は、駆動源25と嵌合する部分である。端面31は、大径部29の外周面30と小径部28の外周面を繋ぐ段差面である。キー溝32は、外周面30から軸の中心に向かう方向に凹み、図8中の後方向へ延びる切り欠き形状、言い換えると溝形状を有する。また、キー溝32は、回転止め22が小径部28に挿入されているとき、回転止め22の突出部36と隙間がなく嵌合する形状を有する。具体的には、キー溝32の図8中の後側の端部の形状が、突出部36の図8中の後側端部の形状と同一であるため、キー溝32と突出部36は隙間なく嵌合する。
【0033】
以下、スリットディスク23が回転止め22によって回転軸24に対し固定される態様を説明する。
【0034】
まず、スリットディスク23が、回転軸24の小径部28に対して図8中の矢印Bの方向に挿入される。前述のように、スリットディスクの穴35の径は小径部28の径と同じ大きさであるため、スリットディスク23は図8中の矢印Bの方向に進む。一方で、スリットディスクの穴35の径は大径部29の径よりも小さい大きさであるため、スリットディスク23は端面31まで到達すると、それ以上は図8中の矢印Bの方向には進まない。
【0035】
次に、回転止め22が、小径部28に対して図8中の矢印Bの方向に挿入される。前述のように、回転止めの穴38の径は小径部28の径と同じであるが、大径部29の径よりも小さいため、スリットディスク23の前側まで到達すると、それ以上は図8中の矢印Bの方向には進まない。
【0036】
さらに、回転止め22の突出部36が、既に挿入されているスリットディスク23の開口部34を貫通し、大径部29のキー溝32へ到達する。このとき、スリットディスク23の後側が端面31と接触し、スリットディスク23の前側が回転止め22の円環部37の後側と接触する。前述のように、突出部36と開口部34とは同じ形状であるため、スリットディスク23が回転軸24の回転方向に対して移動することを抑制する。また、キー溝32は、回転止め22の突出部36と隙間がなく嵌合する形状を有するため、回転止め22が回転軸24の回転方向に対して移動することを抑制する。回転止め22の突出部36が、既に挿入されているスリットディスク23の開口部34を貫通し、大径部29のキー溝32へ到達したとき、回転軸24の回転と一体的に回転止め22も回転する。このとき、スリットディスク23の開口部34を介して回転止め22と回転軸24が嵌合しているため、スリットディスク23も回転軸24の回転と一体的に回転することができる。
【0037】
その後、小径部28に対して、図8中の矢印Bの方向に図4に示した押し付け部材としてのカラ21、ベアリング20、駆動部プーリ15がこの順番で挿入され、駆動部プーリ15は小径部28に対しネジ19で締結される。このとき、ベアリング20及びカラ21は図8中の矢印Bの方向に押し付けられる。ベアリング20に押し付けられたカラ21によって、回転止め22とスリットディスク23は大径部29に対して押し付けられるように固定される。
【0038】
以上説明したように、通帳伝票プリンタ1は、媒体に印字する印字ヘッド8と、印字ヘッド8を駆動させる駆動部14とを備え、駆動部14は、第1の嵌合部としてのキー溝32が形成され、駆動源25からの駆動力により回転する回転軸24と、回転軸24が挿入され、回転軸24と一体的に回転する回転体としてのスリットディスク23と、第2の嵌合部としての突出部36が形成され、スリットディスク23を回転軸24に固定する固定部材としての回転止め22とを有し、キー溝32と突出部36が嵌合することにより、スリットディスク23が回転軸24に固定される構成とするようにした。
【0039】
上記の構成を取ることで、通帳伝票プリンタ1の駆動部14において、回転軸24にボスなどの構造を付加させることなく、回転止め22によるスリットディスク23の固定を実現させることができる。
【0040】
さらに、本発明によれば、スリットディスク23の回転が回転軸24の回転に対して滑ることを抑制できるため、印字ヘッドの移動を正確に制御することと媒体への印字を適切に行うことができる。したがって、本発明により印字ずれの発生を抑制した媒体処理装置及び駆動機構を提供することができる。
【0041】
なお変形例として、回転止め22を省略しスリットディスク23の開口部34を設けない一方、スリットディスク23に対しキー溝32と嵌合する形状の突出部を設け、突出部とキー溝32とを嵌合させる構成としてもよい。そのような例においても、突出部とキー溝32が嵌合することで、スリットディスク23の回転が回転軸24の回転に対して滑ることを抑制できる。
【0042】
以上述べた方法によると、媒体処理装置に限定されず、回転軸にボスなどの構造を付加させることを必要とせずに、スリットディスクのような回転体を回転軸に固定することができる。媒体処理装置における駆動部のように、小型の装置において顕著にその効果が表れるものであるが、大型の装置においても単純な構成で回転体を回転軸に固定させることができる。
【0043】
第2の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0044】
第2の実施の形態も、第1の実施の形態と同様に通帳伝票プリンタの駆動部に関する。通帳伝票プリンタ1の外観や内部のサブユニットは第1の実施の形態によるものと同様であるため、説明を省略する。
【0045】
第2の実施の形態と第1の実施の形態との相違点は、固定部材の形状と大径部29に設けられた第1の嵌合部の形状であるため、その点を主眼において説明する。
【0046】
図9と、図10と、図11と、図12は、第2の実施の形態における駆動部141を示す斜視図と、第2の実施の形態におけるスリットディスク23を示す正面図と、第2の実施の形態における駆動部141を示す断面図と、図11における固定部材、スリットディスク及び回転軸の位置関係を示す拡大図である。図9図10図11及び図12に示すように、第2の実施の形態における駆動部141の構成は第1の実施の形態における駆動部14の構成と基本的に同一であるが、第1の実施の形態における回転止め22の代わりに、第2の実施の形態ではピン39が設けられている。また、第1の嵌合部として第1の実施の形態におけるキー溝32の代わりに穴部40が設けられている。さらに、図9に示す通り、ピン39の穴部40から露出している部分と干渉しないように、第2の実施の形態におけるカラ211は切れ込み41が加えられている。切れ込み41は、ピン39の露出している部分の外周面と同じ曲率の円弧部分からなる切り欠き形状である。また、切れ込み41の左右方向の幅の長さは、ピン39の露出している部分の直径と同じ長さとなっているため、切れ込み41とピン39の露出している部分は嵌合する。
【0047】
図10に示すように、スリットディスク23の開口部341は円形状であって、開口部341の径は、後述するピン39の径及び穴部40の径と同じである。
【0048】
固定部材としてのピン39は、細長い棒形状に形成され、例えば円柱形状の物体である。ピン39の径は、前述の開口部341の径及び後述する穴部40の径と同じである。また、ピン39の長さは、後述する穴部40の長さよりも長くなっている。
【0049】
第1の嵌合部としての穴部40は、回転軸24の大径部29において、端面31から図10の後側に向かって設けられた円柱形状の凹部である。穴部40の径は、前述の開口部341の径及びピン39の径と同じである。また、穴部40の穴の奥行は、前述のピン39の長さよりも短くなっている。
【0050】
なお、本実施の形態ではピン39を細長い棒形状に形成された円柱形状の物体としたが、細長い棒形状に形成されているならば、例えば三角柱形状や四角柱形状でもよい。また、開口部341の形状を円形とし、穴部40を円柱形状としたが、ピン39の穴部40と嵌合する部分及び穴部40の形状が同じで、開口部341とピン39の穴部40と嵌合しない部分が同じ形状であれば、例えば開口部341の断面形状は三角形や四角形でもよく、穴部40の形状は三角柱や四角柱でもよい。また、本実施の形態では切れ込み41の形状を円弧部分からなる切り欠き形状としたが、切れ込み41の断面形状がピン39の穴部40と嵌合しない部分の断面形状の一部もしくは全部と同じであれば、例えば円形や三角形、四角形でもよい。
【0051】
以下、スリットディスク23がピン39によって回転軸24に対し固定される態様を説明する。
【0052】
まず、スリットディスク23が、小径部28に対して図9中の矢印Bの方向に挿入される。第1の実施の形態と同様、スリットディスクの穴35の径は小径部28の径と同じであるが大径部29の径よりも小さいため、スリットディスク23は端面31まで到達する。
【0053】
次に、ピン39が、端面31の穴部40に対して図9中の矢印Bの方向に挿入される。このとき、ピン39が、スリットディスク23の開口部341を貫通し、大径部29の穴部40と嵌合する。前述のように、ピン39の径は開口部341及び穴部40の径と同一であるため、ピン39が回転軸24の回転方向に対して移動することは抑制される。また、スリットディスク23が回転軸24の回転方向に対して移動することは抑制される。
【0054】
ピン39のうち、穴部40と嵌合するのは一部分であり、その部分を第2の嵌合部と呼ぶ。ピン39のうち、穴部40から露出している部分は開口部341と嵌合している。ピン39が穴部40と嵌合したとき、ピン39は回転軸24の回転方向に対して固定される。すなわち、回転軸24の回転と一体的にピン39も回転する。このとき、スリットディスク23の開口部341を介してピン39と回転軸24が嵌合しているため、スリットディスク23も回転軸24の回転と一体的に回転することができる。
【0055】
その後、小径部28に対して、図9中の矢印Bの方向に、押し付け部材としてのカラ211、ベアリング20、駆動部プーリ15がこの順番で挿入され、駆動部プーリ15は小径部28に対しネジ19で締結される。このとき、スリットディスク23の後側が端面31と接触し、スリットディスク23の前側がカラ211の後側と接触し、ベアリング20及びカラ211は図9中の矢印Bの方向に押し付けられる。ベアリング20に押し付けられたカラ211によって、スリットディスク23は大径部29に対して押し付けられるように固定される。
【0056】
以上説明したように、通帳伝票プリンタ1は、媒体に印字する印字ヘッド8と、印字ヘッド8を駆動させる駆動部141と、を備え、駆動部141は、第1の嵌合部としての穴部40が形成され、駆動源25からの駆動力により回転する回転軸24と、回転軸24が挿入され、回転軸24と一体的に回転する回転体としてのスリットディスク23と、第2の嵌合部としてのピン39の一部が形成され、スリットディスク23を回転軸24に固定する固定部材としてのピン39とを有し、穴部40とピン39の一部が嵌合することにより、スリットディスク23が回転軸24に固定される構成とするようにした。
【0057】
上記の構成を取ることで、通帳伝票プリンタ1の駆動部141において、回転軸24にボスなどの構造を付加させることなく、ピン39によるスリットディスク23の固定を実現させることができる。
【0058】
さらに、本発明によれば、スリットディスク23の回転が回転軸24の回転に対して滑ることを抑制できるため、印字ヘッドの移動を正確に制御することと媒体への印字を適切に行うことができる。したがって、本発明により印字ずれの発生を抑制した媒体処理装置及び駆動機構を提供することができる。
【0059】
以上述べた方法によると、媒体処理装置に限定されず、回転軸にボスなどの構造を付加させることを必要とせずにスリットディスクのような回転体を回転軸に固定することができる。媒体処理装置における駆動源のように、小型の装置において顕著にその効果が表れるものであるが、大型の装置においても単純な構成で回転体を回転軸に固定させることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 通帳伝票プリンタ
8 印字ヘッド
13 ベルト
14、141 駆動部
15 駆動部プーリ
19 ネジ
21、211 カラ
22 回転止め
23 スリットディスク
24 回転軸
25 駆動源
28 小径部
29 大径部
30 外周面
31 端面
32 キー溝
33 スリット
34、341 開口部
35 スリットディスクの穴
36 突出部
37 円環部
38 回転止めの穴
39 ピン
40 穴部
41 切れ込み
図1
図2
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