(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141993
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20241003BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/306 R
H01L21/306 E
H01L21/304 648
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053917
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】土持 鷹彬
【テーマコード(参考)】
5F043
5F157
【Fターム(参考)】
5F043AA35
5F043BB23
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE09
5F043EE10
5F043EE12
5F043EE22
5F157CC11
5F157CC21
5F157CF32
(57)【要約】
【課題】基板の処理における基板周囲の雰囲気の清浄度を向上させること。
【解決手段】実施形態に係る基板処理装置1は、基板Wを保持して回転する回転保持部10と、回転保持部10により保持された基板Wの被処理面に対して、処理液供給口62aから処理液を供給する処理液供給機構410と、処理液供給口62aと、蒸気供給口62bとが形成され、基板Wの被処理面に対向して、被処理面を覆うように設けられたプレート62を有し、被処理面に供給された処理液を加熱する加熱部60と、回転保持部10により保持された基板Wの被処理面と、加熱部60との間の第1の空間に、蒸気供給口62bから蒸気を供給する蒸気供給部20と、処理液供給機構410が被処理面に処理液Lを供給している期間の少なくとも一部の期間で、第1の空間に蒸気を供給するように蒸気供給部20を制御する制御部90と、を備える。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持して回転する保持部と、
前記保持部により保持された前記基板の被処理面に対して、処理液供給口から処理液を供給する処理液供給部と、
前記処理液供給口と、蒸気供給口とが形成され、前記被処理面に対向して、前記被処理面を覆うように設けられたプレートを有し、前記被処理面に供給された前記処理液を加熱する加熱部と、
前記保持部により保持された前記基板の被処理面と、前記加熱部との間の第1の空間に、前記蒸気供給口から蒸気を供給する蒸気供給部と、
前記処理液供給部が前記被処理面に前記処理液を供給している期間の少なくとも一部の期間で、前記第1の空間に前記蒸気を供給するように前記蒸気供給部を制御する制御部と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記蒸気は、前記処理液と同一種類の液体から生成された蒸気である、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理液供給部は、前記処理液を貯留するタンクを備え、
前記蒸気供給部が供給する前記蒸気は、前記タンクにおいて生じた蒸気である、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記蒸気供給部により前記蒸気が供給された後、前記蒸気供給口から前記被処理面に洗浄液を供給する洗浄液供給部を更に備える、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記保持部の側方に設けられたカップと、
前記カップと前記保持部との間に設けられ、前記被処理面に供給されて、前記基板から飛散した前記処理液を受けるセパレータと、
前記カップの内部の雰囲気を吸引して排気する吸引部と、
を更に備え、
前記セパレータには、前記セパレータを貫通する排気口が形成され、
前記吸引部は、前記カップの内部の雰囲気を吸引することにより、前記排気口を介して前記蒸気を排気する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
基板を保持して回転させる工程と、
前記基板の被処理面に対して、処理液供給口から処理液を供給する工程と、
前記被処理面に対向して、前記被処理面を覆うように設けられたプレートを有する加熱部により、前記被処理面に供給された前記処理液を加熱する工程と、
前記基板の被処理面と、前記加熱部との間の第1の空間に、蒸気を供給する工程と、
を有し、
前記蒸気を供給する工程は、前記処理液を供給する工程において、前記被処理面に前記処理液を供給している期間の少なくとも一部の期間で行う、
基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の基板に積層された膜を、処理液によりエッチングするウェットエッチングを行う基板処理装置がある。例えば、枚葉式の基板処理装置は、基板を回転させながら、基板の回転中心付近にエッチング用の処理液を供給して、基板の表面に処理液を広げることにより、基板を一枚ずつ処理する。
【0003】
このとき、基板の表面に供給された処理液の熱は基板を介して逃げてしまう。このため、基板の表面に供給された処理液の温度が低下しやすい。具体的(例示的)には、回転中心付近に供給された処理液は高温が維持されるが、基板の外周に向かって処理液が移動するにしたがって、放熱により処理液の温度が低下してしまう。
【0004】
このように基板の表面上の位置によって、処理液の温度が異なると、基板の位置によってエッチングレートに差が生じるため、基板の全体を均一に処理することが困難になる。これに対処するため、基板の表面上の処理液の温度を維持しながらエッチング処理する基板処理装置がある。
【0005】
この基板処理装置は、基板表面の上方に、基板の表面を覆う程度の大きさのヒータプレートを設け、ヒータプレートを基板の表面に接近させて、ヒータプレートの中心付近に設けられた吐出口から高温の処理液を供給する。基板とヒータプレートとの間の距離は、数ミリ程度であり、処理液は加熱されながら基板表面上を流れることになる。これにより、処理液のエッチング性能を維持できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、基板への処理液の供給中に基板周囲の雰囲気の清浄度が低下してしまうことがある。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、基板の処理における基板周囲の雰囲気の清浄度を向上させることができる基板処理装置及び基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の一態様に係る基板処理装置は、基板を保持して回転する保持部と、前記保持部により保持された前記基板の被処理面に対して、処理液供給口から処理液を供給する処理液供給部と、前記処理液供給口と、蒸気供給口とが形成され、前記被処理面に対向して、前記被処理面を覆うように設けられたプレートを有し、前記被処理面に供給された前記処理液を加熱する加熱部と、前記保持部により保持された前記基板の被処理面と、前記加熱部との間の第1の空間に、前記蒸気供給口から蒸気を供給する蒸気供給部と、前記処理液供給部が前記被処理面に前記処理液を供給している期間の少なくとも一部の期間で、前記第1の空間に前記蒸気を供給するように前記蒸気供給部を制御する制御部と、を備える。
【0010】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の一態様に係る基板処理方法は、基板を保持して回転させる工程と、前記基板の被処理面に対して、処理液供給口から処理液を供給する工程と、前記被処理面に対向して、前記被処理面を覆うように設けられたプレートを有する加熱部により、前記被処理面に供給された前記処理液を加熱する工程と、前記基板の被処理面と、前記加熱部との間の第1の空間に、蒸気を供給する工程と、を有し、前記蒸気を供給する工程は、前記処理液を供給する工程において、前記被処理面に前記処理液を供給している期間の少なくとも一部の期間で行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、基板の処理における基板周囲の雰囲気の清浄度を向上させることができる基板処理装置及び基板処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、高温の薬液(処理液)で処理する従来の基板処理装置の一例を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、第1の実施形態の基板処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、第1の実施形態の基板処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る基板処理装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第2の実施形態に係る基板処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、変形例に係るセパレータの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、高温の薬液(処理液)102により基板100を処理する従来の基板処理装置の一例を示す図である。本願発明者は、
図1に示すように、基板100の清浄度が低下する原因を検討した結果、次のことを見出した。すなわち、回転する基板100に対し、その基板100を覆うように加熱部(ヒータプレート)101を対向させ、処理液102を吐出すると、加熱部101と基板100との間の空間が、基板100の外側よりも負圧となり、基板100の外周側から中央側へ向けた気流103が発生することが分かった。例えば、このような気流103は、基板100の外周側から中央側へ向かう渦巻き状の気流である。このような気流103が発生すると、基板100の外方の雰囲気や、基板100から飛散した処理液102の液滴、処理液102から発生したミストが、基板100の中央側に引き込まれてしまう。これが、基板100表面上の雰囲気の清浄度の低下につながることを見出した。
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図2A及び
図2Bは、第1の実施形態の基板処理装置1の構成の一例を示す図である。
図2A及び
図2Bに示すように、基板処理装置1は、基板Wを回転体である回転保持部10とともに回転させながら、処理液Lを供給する処理液供給機構において加熱された処理液Lを、基板Wの一方の面(以下、被処理面とする)に供給することにより、被処理面を処理する。このとき、
図2A及び
図2Bに示すように、駆動部80が、プレート62を有する加熱部60を基板Wの被処理面に接近させて、加熱部60と基板Wとの間の空間を狭めることにより、熱を逃げ難くするとともに加熱して、処理液Lの温度低下を抑制する。加熱部60は、基板Wに非接触で、且つ基板Wに対して進退可能である。
【0015】
なお、本実施形態により処理される基板Wは、例えば、窒化膜が形成されたシリコンウェーハであり、処理液Lとしては、窒化膜をエッチングするためのリン酸(H3PO4)を含む水溶液(以下、リン酸溶液とする)を用いる。
【0016】
基板処理装置1は、
図2A及び
図2Bに示すように、回転保持部10、蒸気供給部20、水封部30、供給部40、加熱部60、熱電対70、駆動部80、制御部90を有する。
【0017】
回転保持部10は、回転体11及び保持部13を備え、保持部13に保持された基板Wを回転させる。回転体11は、保持部13に保持された基板Wに間隔を空けて対向するテーブル12を有する。回転体11は、一端がテーブル12によって塞がれた円筒形状である。テーブル12は、基板Wよりも大きな径の円形の面である。回転保持部10は、保持部の一例である。
【0018】
回転体11は、処理液Lに対して耐性を有する材料で形成されている。例えば、PTFE、PCTFEなどのフッ素系の樹脂により、回転体11を構成することが好ましい。なお、このような回転体11は、図示はしないが、設置面又は設置面に設置された架台に固定された固定ベース上に、回転機構によって回転可能に設けられている。なお、回転機構は、回転体11を回転させる機構である。回転機構は、例えば、中空モータである。
【0019】
保持部13は、テーブル12と平行に且つ間隔を空けて、基板Wを保持する。保持部13は、例えば、保持ピンである。保持ピンは、図示しない駆動機構によって回転体11の軸と平行な軸を中心に、偏心回転することにより、基板Wの縁部に接して基板Wを保持する保持位置と、基板Wの縁部から離れることにより基板Wを解放する解放位置との間を移動する。
【0020】
回転体11の周囲には、カップ14、セパレータ15が設けられている。カップ14、セパレータ15は、上部の径が概ね窄まるように屈曲された筒状体であり、カップ14は外側、セパレータ15は内側となるように同心円状に配置されている。カップ14の底面には蒸気を排気するための排気口(カップ排気口)及び洗浄液を排液するための排液口(カップ排液口)が形成されている。また、セパレータ15の底面には、処理液Lを排液するための排液口(セパレータ排液口)が設けられている。カップ14と、セパレータ15とは、図示しない駆動機構によって、昇降可能に設けられている。
【0021】
セパレータ15は、第1の部材15aと、第2の部材15bと、第3の部材15cとを備える。また、セパレータ15には、排気口(セパレータ排気口)15dが形成されている。第1の部材15aは、上下方向に延び、平面視で回転体11を囲むように設けられた部材である。第2の部材15bは、上下方向に対して傾斜した部材であり、上端が第1の部材15aの下端に接続されている。第2の部材15bは、平面視で回転体11から遠ざかる方向に延び、回転体11から遠い側が低くなるように傾斜している。第3の部材15cは、上下方向に延び、平面視で回転体11を囲むように設けられた部材である。第3の部材15cは、第2の部材15bの下端に接続されている。第2の部材15bと第3の部材15cとの接続部分には、排気口(セパレータ排気口)15dが形成されている。すなわち、セパレータ15には、セパレータ15を貫通するセパレータ排気口15dが形成されている。
【0022】
セパレータ15は、回転する基板Wから飛散する処理液Lを、基板Wの周囲から受ける。セパレータ15が受けた処理液Lは、セパレータ排液口を介して図示しない回収経路に排出される。例えば、基板Wに対して、処理液Lとしてリン酸溶液が供給されるとき、セパレータ15は駆動機構により上昇して、
図2Aに示す位置に位置付けられる。セパレータ15の内壁が基板Wから飛散したリン酸溶液を受けて、リン酸溶液がセパレータ排液口から排出される。
【0023】
また、カップ14は、回転する基板Wから飛散する洗浄液を、基板Wの周囲から受ける。カップ14が受けた洗浄液は、カップ排液口から排出される。例えば、基板Wに対して、洗浄液が供給されるとき、カップ14は、駆動機構により上昇した位置に位置づけられる。一方、セパレータ15は駆動機構により下降した位置に位置づけられる。このような駆動機構の動作により、基板Wに対して、カップ14の内壁が露出する。カップ14の内壁が基板Wから飛散した洗浄液を受けて、洗浄液がカップ排液口から排出される。
【0024】
ここで、
図2Aに示すように、セパレータ15は、カップ14により囲まれた基板Wの側方の空間(第2の空間)を基板W側の空間(第3の空間)と、第3の空間とは反対側の空間(カップ14側の空間(第4の空間))とに区画する。
【0025】
一方、カップ排気口は、図示しない排気経路に接続されており、排気経路には吸引部16が設けられている。吸引部16は、上述した第2の空間の雰囲気を吸引する。具体的には、吸引部16は、カップ排気口を介して上述した第4の空間の雰囲気を吸引する。また、第4の空間の雰囲気を吸引することで、セパレータ排気口15dを介して、上述した第3の空間の雰囲気も吸引される。また、このようにして第2の空間(第3の空間と第4の空間)の雰囲気を吸引することで、基板Wと加熱部60との間の空間(第1の空間)の雰囲気も吸引することができる。これにより、基板Wと加熱部60との間に供給される蒸気(後述)を排気する。
【0026】
ここで、第2の部材15bの下端の位置よりも、第3の部材15cの上端の位置のほうが、上下方向において高い位置にある。そのため、第3の部材15cの上端部分は、いわゆる「かえし」となる。これにより、気体のみが排出され、液体(処理液L)が第4の空間に流出することを抑制することができる。
【0027】
蒸気供給部20は、保持部13に保持された基板Wと加熱部60との間に蒸気を供給する。また、水封部30は、蒸気供給部20で生成された蒸気を安全に排出するための機構である。蒸気供給部20及び水封部30の詳細については、後述する。
【0028】
供給部40は、基板Wの被処理面、つまり保持部13に保持された基板Wのテーブル12と反対側の面に、処理液L及び洗浄液を供給する。供給部40は、処理液Lを供給する処理液供給機構410及び洗浄液を供給する洗浄液供給機構420を有する。処理液供給機構410は、処理液供給部の一例である。洗浄液供給機構420は、洗浄液供給部の一例である。
【0029】
処理液供給機構410は、処理液Lとしてリン酸溶液を供給する。洗浄液供給機構420は、洗浄液として純水(H2О)を供給する。なお、処理液Lは、リン酸溶液に限られない。また、洗浄液は、純水に限られない。処理液供給機構410は、処理液Lを貯留する処理液槽41a及び処理液供給ノズル41bを有する。洗浄液供給機構420は、洗浄液を貯留する洗浄液槽42a及び洗浄液供給ノズル42bを有する。
【0030】
処理液槽41aは、処理液供給管に接続されている。処理液供給管の先端部は処理液供給ノズル41bに接続されている。処理液供給ノズル41bは、保持部13に保持された基板Wに対向している。また、処理液槽41aの内部には、貯留された処理液Lを加熱するためのヒータ(
図2A及び
図2Bにおいては不図示)が設けられている。処理液槽41aに貯留された処理液Lは、加熱された状態で、処理液供給管を介して、処理液供給ノズル41bから基板Wの表面に供給される。
【0031】
洗浄液槽42aは、洗浄液供給管に接続されている。洗浄液供給管の先端部は洗浄液供給ノズル42bに接続されている。洗浄液供給ノズル42bは、保持部13に保持された基板Wに対向している。これにより、洗浄液槽42aからの洗浄液は、洗浄液供給管を介して、洗浄液供給ノズル42bから基板Wの表面に供給される。
【0032】
処理液供給管及び洗浄液供給管には、それぞれバルブ、流量計(不図示)が設けられている。バルブは、配管内を流れる液の流量の調節機能と流路の開閉機能を有している。処理液供給管に設けられたバルブが、処理液槽41aから処理液供給管に流れ込む処理液Lの量を調整する。処理液供給管を流れる処理液Lの量は、処理液供給管に設けられた流量計により検出される。また、洗浄液供給管に設けられたバルブが、洗浄液槽42aから洗浄液供給管に流れ込む洗浄液の量を調整する。洗浄液供給管を流れる洗浄液の量は、洗浄液供給管に設けられた流量計により検出される。
【0033】
なお、処理液槽41aに貯留される処理液Lの生成設備及び生成方法は特定のものには限定されない。また、洗浄液槽42aに貯留される洗浄液の生成設備及び生成方法についても特定のものには限定されない。また、基板処理装置1が設置される工場に備えられた処理液を生成する設備から、処理液L又は洗浄液の供給を受けるようにしてもよい。
【0034】
加熱部60は、基板Wの被処理面に供給された処理液Lを加熱する。加熱部60は、複数のヒータ61、プレート62、フランジ63を備える。プレート62は、基板Wの被処理面に対向する位置に設けられ、基板Wに接離する方向に移動可能な部材である。プレート62の、基板Wの被処理面に対向する面の外形は、基板Wの被処理面の外形以上の大きさである。例えば、プレート62は、基板Wと同じ径又は基板Wの径よりも大径の円形である。すなわち、プレート62は、保持部13に保持された基板Wを覆うように設けられている。プレート62は、石英により形成されている。なお、プレート62は、耐熱性と耐液性を両立させるため、二重構造となっていてもよい。つまり、耐熱性を有する材料によって基体が形成され、その周囲が処理液Lに対して耐性のある材料で覆われていてもよい。例えば、石英を基体として、その周囲にPTFE、PCTFEなどのフッ素系の樹脂のカバーを形成することにより、プレート62が構成されていてもよい。プレート62の上部の周縁には、外方に拡径したフランジ63が形成されている。なお、処理液Lを加熱するとは、基板Wを加熱することで、加熱された基板Wを介して処理液Lが加熱される態様も含むものとする。
【0035】
プレート62は、回転保持部10側の第1の面及び第1の面とは反対側の第2の面を備える。プレート62には、処理液供給口62a及び蒸気供給口62bが形成されている。本実施形態においては、処理液供給口62a及び蒸気供給口62bは、プレート62の第1の面から第2の面までを貫通する孔である。処理液供給口62aと、蒸気供給口62bとは、プレート62において、保持部13に保持された基板Wの中心又は中心付近に対向する位置に形成されている。そして、プレート62に形成された処理液供給口62aには、処理液供給ノズル41bが挿通されている。また、プレート62に形成された蒸気供給口62bには、洗浄液供給ノズル42bが挿通されている。そして、処理液供給ノズル41bの吐出口及び洗浄液供給ノズル42bの吐出口の2つの吐出口が基板W側に露出している。2つの吐出口は、回転体11の回転の軸からずれている。これは、基板Wの回転に伴って、基板Wにおける吐出口との対向部分が逐次変化することにより、処理液Lの温度の均一化に寄与するためである。
【0036】
ヒータ61は、通電により発熱する。複数のヒータ61は、プレート62の水平方向の異なる位置に設けられている。例えば、ヒータ61は、発熱量を個別に制御可能な、例えば、3つのヒータ片によって構成されている。つまり、円形状のヒータ片の外側に、円環状の2つのヒータ片が同心で配置されている。このようなヒータ61によれば、同心で配置された3つのヒータ片の発熱量を個別に制御することで、同心状の部分毎に処理液Lの温度を変えることができる。なお、加熱部60の径は、基板Wの外周側の温度低下を抑制するために、基板Wの径以上、つまり基板Wの径と同じか、基板Wより大きな径であることが好ましい。
【0037】
熱電対70は、プレート62の温度を測定する。熱電対70は、プレート62の内側に設けられている。熱電対70は、プレート62の径方向の異なる位置に複数設けられている。例えば、熱電対70が、3つのヒータ片に対応して3か所設けられている。
【0038】
駆動部80は、プレート62を、基板Wに対して進退させる機構である。駆動部80は、支持部81、アーム82、昇降機構83を有する。支持部81は、リング状の部材であり、その内側にプレート62が挿通され、上部にフランジ63が当接することにより、プレート62を水平に支持する。アーム82は、水平方向に延びた部材である。アーム82の一端が支持部81に固定されている。
【0039】
昇降機構83は、架台に立設され、アーム82を介してプレート62を昇降させる機構である。昇降機構83は、回転体11の軸に平行な方向に移動する可動部を有し、可動部にアーム82の他端が取り付けられている。昇降機構83は、例えば、シリンダ、ボールねじ機構など、可動部を移動させる種々の機構を適用可能であるが、詳細は省略する。昇降機構83は、プレート62を待機位置(A)と、加熱位置(B)との間で、移動するように昇降させる。待機位置(A)は、図示しない搬送ロボットのハンドによって、基板Wの搬入または搬出が可能となるように、プレート62が上昇したときの、プレート62における基板Wと対向する面の高さ位置である。また、加熱位置(B)は、基板Wの表面との間に間隔dが形成される位置までプレート62が下降したときの、プレート62における基板Wと対向する面の高さ位置である。この間隔dは、例えば、4mm以下であるが、基板W上の処理液Lとの間に2mm程度の隙間が空くように維持される。
【0040】
なお、処理液Lは、供給部40における図示しないヒータによって予め設定された温度まで加熱されており、基板Wに供給されて加熱部60により加熱される。これにより、基板Wに供給された処理液Lを、予め設定された温度を維持したまま基板Wの全面に行き渡らせることができる。特に、外周側のヒータ61を内周側のヒータ61よりも高温とすることにより、温度が低下しやすい基板Wの外周側の温度を上げる効果が得られる。また、ヒータ61による加熱は、上述したように、処理液Lの温度が加熱装置によって予め設定された温度を維持するように(すなわち、処理液Lの温度が下がらないように)処理液Lを加熱することに限られない。例えば、ヒータ61は、基板W上で処理液Lの温度が上昇するように、基板Wに供給された処理液Lを加熱してもよい。
【0041】
制御部90は、基板処理装置1の各部を制御する。制御部90は、基板処理装置1の各種の機能を実現するべく、プログラムを実行するプロセッサと、プログラムや動作条件などの各種情報を記憶するメモリ、各要素を駆動する駆動回路を有する。制御部90は、回転保持部10、蒸気供給部20、水封部30、供給部40、加熱部60、熱電対70、駆動部80を制御する。
【0042】
次に、本実施形態に係る基板処理装置1が備える蒸気供給部20、水封部30について、
図2Aを参照して説明する。蒸気供給部20は、マスフローコントローラ(以下、MFCとする)21、バルブ22a,22b,22c、蒸気生成槽(蒸気生成タンク)23、温度計24,29、ヒータ25,28、逆止弁26a,26b、流量計27、配管210,211,212,213を備える。
【0043】
例えば、基板処理装置1が設置される工場に設けられた薬液生成設備から、蒸気生成用薬液供給ラインを介して蒸気生成槽23に、薬液(蒸気生成用薬液)が供給される。この蒸気生成用薬液は、例えば、処理液槽41aに貯留され、基板Wに供給する処理液Lと同一種類の液体である。なお、蒸気生成用薬液は、処理液槽41aに貯留され、基板Wに供給する処理液Lと異なる種類の液体であってもよい。
【0044】
蒸気生成槽23の内部には、ヒータ25及び温度計24が設けられている。蒸気生成槽23では、ヒータ25が、蒸気生成用薬液供給ラインから供給される処理液を加熱することにより蒸気を生成する。蒸気生成槽23で生成される蒸気の温度は、制御部90により制御される。具体的には、温度計24が、蒸気生成槽23内の蒸気の温度を測定し、測定した蒸気の温度を示す情報を制御部90に入力する(入力4)。例えば、温度計24は、蒸気生成槽23の蒸気出口付近に設定された測温点24aにおける蒸気の温度を測定する。そして、制御部90は、入力された情報が示す蒸気生成槽23内の蒸気の温度に基づいて、蒸気生成槽23内の測温点24aにおける蒸気の温度が予め設定された目標値となるように、ヒータ25の温度を制御する(出力4)。なお、測温点24aにおける目標値として予め設定される温度は、基板Wに供給される処理液Lの温度以上であることが好ましい。
【0045】
また、蒸気供給部20には、基板処理装置1が設置される工場に設けられた窒素ガス(N2)生成設備から、N2供給ラインを介して、窒素ガスが送られる。N2供給ラインには、配管210が接続されている。配管210には、MFC21が設けられている。MFC21は、配管210を流れる窒素ガスの流量を制御する。そして、配管210は、MFC21より下流側で配管211と、配管212とに分岐されている。配管211は、窒素ガスを蒸気生成槽23に供給するための配管であり、蒸気生成槽23に接続されている。配管211には、蒸気の供給または停止を切り替えるための、バルブ22aが設けられている。
【0046】
配管212は、後述する配管213の途中に接続され、配管213内に窒素ガスを供給するための配管である。基板処理装置1のメンテナンスを行う場合や基板処理装置1が異常停止した場合など、基板処理装置1の運転を停止した場合には、配管内に残った蒸気が結露し、配管内に水が溜まる可能性がある。配管内に水が溜まると、基板処理装置1の運転を再開した際に、基板W上に水滴が落ち、基板Wの処理に悪影響を及ぼす可能性がある。配管212は、配管内の結露防止を図るために窒素ガスが流れる配管である。配管212には、バルブ22b及び逆止弁26aが設けられている。
【0047】
蒸気生成槽23には、配管213の一端が接続されている。また、配管213の他端は、洗浄液供給ノズル42bに接続されている。配管213は、蒸気生成槽23で生成された蒸気を洗浄液供給ノズル42bに送るための配管である。配管213には、逆止弁26bが設けられている。
【0048】
配管213にはさらに、ヒータ28、温度計29、流量計27、バルブ22cが設けられている。ヒータ28は、洗浄液供給ノズル42bに向かって流れる蒸気を加熱して蒸気の温度を高くする。バルブ22cは、洗浄液供給ノズル42bへの蒸気の供給又は停止を切り替える。
【0049】
ここで、蒸気が流れる配管213は断熱材で外部と断熱されていることが好ましいが、蒸気生成槽23内の上述した測温点24aにおける蒸気の温度と比べて、洗浄液供給ノズル42b付近における蒸気の温度は低くなる傾向がある。そこで、この配管213を流れる蒸気の温度も、制御部90により制御される。具体的には、温度計29が、配管内の蒸気の温度を測定し、測定した蒸気の温度を示す情報を制御部90に入力する(入力5)。例えば、温度計29は、配管内に設定された測温点29aにおける蒸気の温度を測定する。そして、制御部90は、入力された情報が示す配管内の蒸気の温度に基づいて、配管内の測温点29aにおける蒸気の温度が予め設定された目標値となるように、ヒータ28の温度を制御する(出力5)。なお、測温点29aにおける目標値として予め設定された所定の温度は、測温点24aにおける目標値として予め設定された所定の温度以上であることが好ましい。
【0050】
MFC21及び流量計27は、洗浄液供給ノズル42bから基板Wと加熱部60との間の空間に供給される蒸気の流量を管理する。MFC21は、例えば、流体の流量を計測する質量流量計と流量を制御する電磁弁を有し、蒸気生成槽23に供給する窒素ガスの量を制御する。流量計27は、配管213を流れる蒸気の流量を検出する。また、制御部90は、流量計27により検出された蒸気の流量に基づいて、洗浄液供給ノズル42bから吐出される蒸気の流量を調整するように、MFC21を制御する。例えば、MFC21及び流量計27は、洗浄液供給ノズル42bから基板Wと加熱部60との間の空間に供給される蒸気の流量が、基板Wに処理液供給ノズル41bから基板Wに供給される処理液Lの流量と同一又は略同一となるように、配管213を流れる蒸気の流量を調整する。
【0051】
水封部30は、バルブ31、水封タンク32、配管310を備える。配管310は、配管213の途中から分岐した配管である。配管310は、水封タンク32に接続されている。配管310には、バルブ31が設けられている。
【0052】
水封部30は、蒸気生成槽23で生成した蒸気を安全に排出するための設備である。本実施形態において、蒸気は、例えば、基板Wを処理する処理液Lと同じ種類の液体から生成される。このため、生成した蒸気は、安全に排出する必要がある。バルブ31は、配管213を流れる蒸気又は窒素ガスを、配管310を介して水封タンク32に流入させるか否かを切り替える。配管310を通って、水封タンク32に流入した蒸気は、水封タンク32により気液分離され、排気又は排液される。
【0053】
次に、蒸気生成槽23で生成された蒸気を洗浄液供給ノズル42bに供給する場合について説明する。本実施形態では、基板処理装置1は、処理液Lを基板Wに供給する処理を行っている期間に、蒸気生成槽23で生成された蒸気を洗浄液供給ノズル42bに供給する。この場合、バルブ22a,22cが開けられ、バルブ22b,31が閉じられる。これにより、N
2供給ラインから供給される窒素ガスがMFC21及びバルブ22aを経由して蒸気生成槽23に供給される。蒸気生成槽23で生成された蒸気は、蒸気生成槽23に供給された窒素ガスにより圧送され、逆止弁26b、ヒータ28、流量計27、バルブ22cを経由して洗浄液供給ノズル42bに供給される。そして、洗浄液供給ノズル42bから、基板W(基板Wの表面上の処理液Lの膜)と加熱部60との間の空間に蒸気が供給される。これにより、基板Wの中央から基板Wの外周方向へ向かう気流(
図2Aにおける矢印V)が発生するため、基板Wの外周側から中央側への気体やミスト等の引き込みを抑えることができる。したがって、本実施形態によれば、基板Wの処理における基板Wと加熱部60との間の空間の清浄度を向上させることができる。これにより、処理された基板Wの清浄度を向上させることができる。なお、蒸気生成槽23は、蒸気供給部の一例である。また、洗浄液供給ノズル42bは、上述したように洗浄液供給部の一例であるが、本実施形態においては、蒸気供給部の一例でもある。
【0054】
また、本実施形態においては、乾燥気体ではなく、蒸気が基板Wと加熱部60との間の空間に供給される。蒸気は乾燥気体よりも熱伝導率が高い。また、蒸気を供給することで基板Wの表面上の処理液Lの蒸発を防ぎ、蒸発熱による処理液Lの温度低下を抑制することができる。これらより、加熱部60による基板Wまたは基板Wの表面上の処理液Lの加熱を効率的に行うことができる。
【0055】
また、前述の引き込みが起きると、基板Wの外周領域の温度が低下し、外周領域のエッチングレートが低下してしまうことがある。一方、本実施形態によれば、高温の蒸気が供給されるため、基板Wの外周領域の温度低下を抑え、エッチングレートが低下することを抑制することができる。
【0056】
次に、基板処理装置1が処理液Lを基板Wに供給する処理以外の処理を行っている場合について説明する。この場合、バルブ22a,31が開けられ、バルブ22b,22cが閉じられる。この状態で、N2供給ラインから窒素ガスが供給されることで、蒸気生成槽23で生成された蒸気は、水封タンク32を通り、排液又は排気される。
【0057】
次に、基板処理装置1のメンテナンスを行う場合や基板処理装置1が異常停止した場合等、基板処理装置1の運転を停止する場合について説明する。この場合、上述したように、配管内に蒸気が残っていると、この蒸気が結露し、配管内に水が溜まる可能性がある。そこで、基板処理装置1の運転を停止する前には、バルブ22b,31が開けられ、バルブ22a,22cが閉じられる。この状態で、N2供給ラインから窒素ガスが供給される。供給された窒素ガスは、バルブ22b、逆止弁26a、ヒータ28、流量計27及びバルブ31を経由して、水封タンク32に流入する。そして、水封タンク32から排液又は排気される。窒素ガスを配管内に流入させてから、所定の時間が経過した後に、基板処理装置1の運転を停止させる。これにより、配管内の結露防止を図ることができる。
【0058】
次に、本実施形態の基板処理装置1により、基板Wを処理するときの動作を、上記の
図2A及び
図2Bに加えて、
図3のフローチャートを参照して説明する。
図3は、第1の実施形態に係る基板処理装置1が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、以下のような手順により基板Wを処理する基板処理方法も、本実施形態の一態様である。
【0059】
まず、
図2Bに示すように、プレート62は上方の待機位置(A)にある。このとき、プレート62とテーブル12との間には、図示しない搬送ロボットのハンドに支持された基板Wが搬入可能となる間隔が設けられている。また、このとき、バルブ22a,31が開けられており、バルブ22b,22cが閉じられている。
【0060】
また、予め加熱部60のヒータ61に通電することにより、プレート62の基板Wに対向する面が加熱され、所定温度(例えば、温度範囲180℃~225℃内の温度)に保持されている。なお、例えば、基板Wの外周領域は放熱により最も温度が低下するため、外周領域のヒータ61が、他の領域よりも高温となるように加熱してもよい。
【0061】
この状態で、搬送ロボットのハンドに保持された基板Wが、プレート62と回転体11との間に搬入され、その周縁が保持部13の複数の保持ピンに支持されることにより、回転体11のテーブル12上に保持される(ステップS101)。このとき、基板Wの中心と回転体11回転の軸とが合致するように位置決めされる。
【0062】
回転体11が、比較的低速な所定速度(例えば、50rpm程度)にて回転する。これにより、基板Wが保持部13とともに前記所定速度にて回転する(ステップS102)。そして、加熱部60が、加熱位置(B)まで下降する(ステップS103)。これにより、加熱部60と基板Wの被処理面との間に所定の間隔d(例えば、4mm以下)が形成される。
【0063】
蒸気供給部20は、蒸気を洗浄液供給ノズル42bから、基板Wと加熱部60との間の空間に供給することを開始する(ステップS104)。例えば、ステップS104では、制御部90は、バルブ22a,22cを開けて、バルブ22b,31を閉じる。
【0064】
処理液供給機構410が処理液L(例えばリン酸溶液)を基板Wの被処理面に供給することを開始する(ステップS105)。上述したように、処理液Lは、予め供給部40において加熱されている。基板Wの表面に供給された処理液Lが、回転する基板Wの外周に向けて順次移動することにより、基板Wの被処理面に形成された窒化膜がエッチングされて除去される。
【0065】
基板Wの中心付近に供給された処理液Lは、基板Wの外周へ移動するに従って熱が逃げ易くなるが、本実施形態においては、加熱部60のプレート62が基板Wへ間隔dにまで接近しているため、ヒータ61により処理液Lが加熱され、温度低下による処理レートの低下が抑制される。例えば、処理液Lがリン酸溶液である場合、リン酸溶液の温度は、150~160℃程度に維持されることが好ましい。
【0066】
処理中のプレート62の温度は、熱電対70によって測定される。測定された温度に応じて、制御部90が、ヒータ61の温度を制御する。つまり、温度が低下している領域のヒータ61の温度を上げる。具体的には、熱電対70が、プレート62の内部の温度を測定し、測定されたプレート62の温度を示す情報を制御部90に入力する(入力1~3)。そして、制御部90は、入力された情報が示すプレート62の温度に基づいて、プレート62の温度が予め設定された目標値となるように、ヒータ61の温度を制御する(出力1~3)。
【0067】
処理液Lを基板Wの被処理面に供給することを開始してから所定の処理時間が経過すると(ステップS106:Yes)、処理液供給機構410が処理液Lの供給を停止する(ステップS107)。
【0068】
そして、蒸気供給部20は、洗浄液供給ノズル42bから、蒸気を基板Wと加熱部60との間の空間に供給することを停止する(ステップS108)。例えば、ステップS108では、制御部90は、バルブ22a,31を開けて、バルブ22b,22cを閉じる。
【0069】
次に、洗浄液供給機構420は、洗浄液を基板Wの表面に供給することを開始する(ステップS109)。回転する基板Wの表面に洗浄液が供給されると、その洗浄液が基板Wの外周に向けて順次移動することにより、基板Wの表面の処理液Lの成分(例えばリン酸)が洗い流される。そして、洗浄液を基板Wの表面に供給することを開始してから、所定の洗浄時間が経過すると(ステップS110:Yes)、洗浄液供給機構420は、洗浄液を基板Wの表面に供給することを停止する(ステップS111)。
【0070】
そして、基板Wが回転を停止して(ステップS112)、加熱部60が上昇する(ステップS113)。そして、搬送ロボットのハンドが基板Wの下に挿入され、保持部13による基板Wの保持が解放され、搬送ロボットのハンドによって基板Wが搬出され(ステップS114)、
図3に示す処理を終了する。
【0071】
以上、第1の実施形態に係る基板処理装置1について説明した。基板処理装置1は、基板Wを保持して回転する回転保持部10と、回転保持部10により保持された基板Wの被処理面に対して、処理液供給口62aから処理液Lを供給する処理液供給機構410と、処理液供給口62aと、蒸気供給口62bとが形成され、基板Wの被処理面に対向して、被処理面を覆うように設けられたプレート62を有し、被処理面に供給された処理液Lを加熱する加熱部60と、保持部13により保持された基板Wの被処理面と、加熱部60との間の第1の空間に、蒸気供給口62bから蒸気を供給する蒸気供給部20と、処理液供給機構410が基板Wの被処理面に処理液Lを供給している期間の間、第1の空間に蒸気を供給するように蒸気供給部20を制御する制御部90と、を備える。本実施形態によれば、上述したように、基板Wの処理における基板Wの清浄度及び基板Wと加熱部60との間の空間の清浄度を向上させることができる。これにより、処理された基板Wの清浄度を向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、第1の空間に供給される蒸気は、処理液Lと同一種類の液体から生成された蒸気である。したがって、例えば、処理液がリン酸溶液である場合、純水よりも沸点が高いため、第1の空間に供給される蒸気の温度を純水の蒸気よりも高くすることができる。このため、基板Wの表面上に本実施形態の蒸気が供給されることで、基板Wの表面上の処理液Lの温度の低下を抑えることができる。
【0073】
また、本実施形態では、洗浄液供給ノズル42bにより蒸気が供給された後、洗浄液供給機構420は、蒸気供給口62bから基板Wの被処理面に洗浄液を供給する。このように、蒸気を供給する処理を実行する場合と洗浄液を供給する処理を実行する場合とで、蒸気供給口62bを共用している。これにより、供給口があるためにヒータ61が設けられない領域を最小限にすることができ、ひいては、加熱部60により基板W又は基板Wの表面上の処理液Lを効率的に加熱することができる。なお、加熱部60は、蒸気供給口62bとは別に、洗浄液を吐出するための吐出口をさらに備えていてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、保持部13の側方に設けられたカップ14と、カップ14と保持部13との間に設けられ、基板Wの被処理面に供給されて基板Wから飛散した処理液Lを受けるセパレータ15を有する。吸引部16は、カップ14の内部の雰囲気を吸引して排気する。セパレータ15には、セパレータ15を貫通するセパレータ排気口15dが形成されている。吸引部16は、カップ14の内部の雰囲気を吸引することにより、セパレータ排気口15dを介して蒸気を排気する。これにより、飛散した液滴やミストが、基板Wの表面に戻ってくることを更に抑えることができる。
【0075】
なお、制御部90が、基板Wの被処理面に処理液Lが供給されている期間の間、第1の空間に蒸気を供給するように蒸気供給部20を制御する場合について説明した。しかしながら、制御部90は、基板Wの被処理面に処理液Lが供給されている期間の少なくとも一部の期間で、第1の空間に蒸気を供給するように蒸気供給部20を制御してもよい。例えば、処理液供給機構410が処理液L(リン酸溶液)を基板Wの被処理面に供給することを開始した後に、洗浄液供給ノズル42bからの基板Wと加熱部60との間の空間への蒸気の供給が開始されるようにしてもよい。また、洗浄液供給ノズル42bからの、基板Wと加熱部60との間の空間への蒸気の供給が停止された後に、処理液供給機構410による処理液Lの供給を停止してもよい。
【0076】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、蒸気生成槽23により生成された蒸気を基板Wと加熱部60との間の第1の空間に供給する場合について説明した。しかしながら、基板処理装置1は、蒸気生成槽23に代えて処理液槽41aを用いて同様の処理を行ってもよい。そこで、このような実施形態を第2の実施形態として説明する。以下、第2の実施形態の説明では、主に、第1の実施形態と異なる点について説明し、第1の実施形態と同様の構成についての説明を省略する場合がある。例えば、第1の実施形態と同様の構成については、第1の実施形態における符号と同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0077】
図4は、第2の実施形態に係る基板処理装置1000の構成の一例を示す図である。
図4に示すように、第2の実施形態に係る基板処理装置1000は、蒸気生成槽23及び蒸気生成槽23に関連する各種の要素を備えない点で、第1の実施形態に係る基板処理装置1と異なる。なお、
図4においては、洗浄液供給機構420の図示を省略している。
【0078】
図4に示すように、第2の実施形態では、処理液槽41aに、N
2供給ラインから配管を介して窒素ガスが供給される。この配管には、バルブ22dが設けられている。
【0079】
処理液槽41aには、基板Wに供給する処理液Lを加熱するためのヒータが設けられている。このため、処理液槽41a内において、貯留された処理液Lの上方の空間には、蒸気が生じている。すなわち、処理液槽41aで、ヒータが処理液Lを加熱することで、蒸気を生成していると言い換えることができる。なお、処理液槽41aで生成される蒸気の温度は、第1の実施形態に係る蒸気生成槽23で生成される蒸気の温度を制御する方法と同様の方法で、制御部90により制御してもよい。
【0080】
処理液槽41aから洗浄液供給ノズル42bに蒸気を送るための配管213にはさらに、逆止弁26bより上流の位置に、バルブ22fが設けられている。バルブ22fは、洗浄液供給ノズル42bへの蒸気の供給又は停止を切り替える。また、配管213には、バルブ22fより上流の位置で分岐するように、配管214の一端が接続されている。配管214は、処理液槽41aで生じた蒸気を排出するための配管である。配管214の他端は、水封タンク32に接続されている。
【0081】
基板処理装置1000は、常時、処理液槽41a内の雰囲気の排出が行われている。上述したように、処理液槽41aから排出される雰囲気には、蒸気が含まれている。そのため、処理液槽41aで生じた蒸気は、配管213から配管214を流れ、水封タンク32により気液分離されてから、排気又は排液される。ここで、バルブ22fを開けると、処理液槽41aで生じた蒸気の一部が、配管213において洗浄液供給ノズル42b側に流入する。すなわち、バルブ22fを開けることで、洗浄液供給ノズル42bに蒸気を供給することができる。
【0082】
また、配管内の結露防止を図るために、N2供給ラインから供給された窒素ガスが流れる配管215が設けられている。配管215は、配管213における逆止弁26bより下流に接続されている。配管215には、バルブ22e及び逆止弁26cが設けられている。
【0083】
配管213の途中には、MFC121が設けられている。MFC121は、配管213において、配管215が接続された位置より下流の位置にも設けられている。MFC121は、配管213を流れる蒸気又は気体の流量を管理する。制御部90は、バルブ22fを開け、バルブ22eを閉じた状態で、MFC121を制御することにより、洗浄液供給ノズル42bから吐出される蒸気の流量を制御する。また、制御部90は、バルブ22fを閉じ、バルブ22eを開けた状態で、MFC121を制御することにより、N2供給ラインから配管213に流入する窒素ガスの流量を制御する。
【0084】
次に、処理液槽41aで生成された蒸気を洗浄液供給ノズル42bに供給する場合について説明する。
【0085】
第2の実施形態では、基板処理装置1000は、第1の実施形態と同様のタイミングで、蒸気を洗浄液供給ノズル42bに供給する。この場合、バルブ22c,22d,22fが開けられ、バルブ31,22eが閉じられる。これにより、N
2供給ラインから供給される窒素ガスがバルブ22dを経由して処理液槽41aに供給される。処理液槽41aで生成された蒸気は、処理液槽41aに供給された窒素ガスにより圧送され配管213に流入する。配管213に流入した蒸気は、バルブ22f、逆止弁26b、MFC121、ヒータ28、流量計27、バルブ22cを経由して洗浄液供給ノズル42bに供給される。洗浄液供給ノズル42bは、供給された蒸気を基板Wと加熱部60との間の空間に供給する。これにより、基板Wの中央から基板Wの外周方向へ向かう気流(
図4における矢印V)が発生する。したがって、基板Wの外周側から中央側への気体やミスト等の引き込みを抑えることができる。第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、基板Wの処理における基板Wの清浄度及び基板Wと加熱部60との間の空間の清浄度を向上させることができる。本実施形態において、処理液槽41は、上述したように処理液供給部の一例であるが、蒸気供給部の一例でもある。
【0086】
次に、第2の実施形態に係る基板処理装置1000が処理液Lを基板Wに供給する処理以外の処理を行っている場合について説明する。この場合、バルブ22d,22f,31が開けられ、バルブ22c,22eが閉じられる。この状態で、N2供給ラインから窒素ガスが供給されることで、処理液槽41aで生成された蒸気は、水封タンク32を通り、排液又は排気される。
【0087】
次に、基板処理装置1000のメンテナンスを行う場合や基板処理装置1000が異常停止した場合等、基板処理装置1000の運転を停止する場合について説明する。この場合、上述したように、配管内に蒸気が残っていると、この蒸気が結露し、配管内に水が溜まる可能性がある。そこで、基板処理装置1000の運転を停止する前には、バルブ31,22eが開けられ、バルブ22c,22d,22fが閉じられる。この状態で、N2供給ラインから配管215に窒素ガスが供給される。供給された窒素ガスは、バルブ22e、逆止弁26c、MFC121、ヒータ28、流量計27及びバルブ31を経由して、水封タンク32に流入する。そして、水封タンク32から排液又は排気される。窒素ガスを配管内に流入させてから、所定の時間が経過した後に、基板処理装置1の運転を停止させる。これにより、配管内の結露防止を図ることができる。
【0088】
以上、第2の実施形態に係る基板処理装置1000について説明した。第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
また、本実施形態では、処理液供給機構410は、基板Wを処理する処理液Lを貯留するタンクである処理液槽41aを備える。そして、基板Wと加熱部60との間の第1の空間に供給される蒸気は、処理液槽41aにおいて生じた蒸気である。したがって、本実施形態によれば、蒸気を生成するための槽(タンク)を新たに設けることなく、既存の槽(処理液槽41a)を用いて、蒸気を第1の空間に供給することができる。したがって、本実施形態によれば、フットプリントの増大を抑えつつ、低コストで基板Wの処理における基板Wの周囲の雰囲気の清浄度を向上させることができる。
【0090】
(変形例)
次に上述した実施形態に係る基板処理装置1,1000の変形例について説明する。第1の実施形態及び第2の実施形態において、セパレータ15に代えて他のセパレータを用いてもよい。
図5は、変形例に係るセパレータ150の構成の一例を示す図である。第1の実施形態及び第2の実施形態において、
図5に示すセパレータ150が用いられてもよい。
図5は、セパレータ150の断面図である。
【0091】
変形例に係るセパレータ150は、さらに第4の部材15eを備える。第4の部材15eは、上下方向に対して傾斜した部材であり、上端が第1の部材15aの上端に接続されている。第4の部材15eは、平面視で回転体11から遠ざかる方向に延び、回転体11から遠い側が低くなるように傾斜している。回転体11が回転する軸と直交する方向において、第4の部材15eの下端は、第3の部材15cの上端よりも、回転体11から離れた位置になるように形成されている。また、第4の部材15eの下面と、第3の部材15cとは、離間して隙間が設けられるように形成されている。この隙間も、セパレータ排気口15dの一部である。
【0092】
ここで、第4の部材15eが設けられていない場合には、基板Wに洗浄液が供給されているときに、基板Wから飛散した洗浄液がカップ14の内壁まで届かずに、セパレータ15の外壁(第2の部材15bの傾斜面)に落ちることが考えられる。このような場合に、洗浄液が、セパレータ15内に入り、処理液Lと混合されてしまう。一方、
図5に示すセパレータ150では、第4の部材15eにより、セパレータ150の内部に洗浄液が入ることが抑制される。したがって、洗浄液と処理液Lとが混合することを抑制することができる。
【0093】
また、処理液供給機構410が処理液L(リン酸溶液)を基板Wの被処理面に供給する前にも、洗浄液供給機構420が洗浄液(純水)を基板Wの被処理面に供給してもよい。これにより洗浄液の液膜が形成された基板Wに、処理液Lを供給してもよい。この場合、基板Wの表面に供給された処理液Lが、回転する基板Wの外周に向けて順次移動することにより、基板Wの表面の純水が処理液Lによって置換されつつ、窒化膜がエッチングされて除去される。なお、基板Wの被処理面に対して処理液Lを供給する前に、純水を供給する場合、基板Wの被処理面への純水の供給を開始した後に、蒸気の供給(ステップS104)を開始することが好ましい。より好ましくは、基板Wの被処理面全体に純水の液膜が形成された後に、上述した第1の空間への蒸気の供給を開始することが好ましい。
【0094】
また、基板Wと加熱部60との間の空間に供給される蒸気は、洗浄液または純水の蒸気でもよい。ただし、基板Wと加熱部60との間の空間に供給される蒸気が、処理液Lと同一種類の液体から生成された蒸気である場合には、上述したように、基板Wの表面上の処理液Lの温度の低下をより抑えることができる。
【0095】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
1 基板処理装置
10 回転保持部
23 蒸気生成槽
42b 洗浄液供給ノズル
60 加熱部
90 制御部
410 処理液供給機構