(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141997
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】環状シール材、予備成形体および製造方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20241003BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F16J15/10 C
F16J15/10 G
B29C35/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053924
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大住 直樹
(72)【発明者】
【氏名】望月 友充
【テーマコード(参考)】
3J040
4F203
【Fターム(参考)】
3J040BA02
3J040EA16
3J040EA25
3J040FA06
3J040FA07
3J040HA01
3J040HA11
4F203AA16
4F203AB03
4F203AC02
4F203AG13
4F203AR12
4F203AR13
4F203DA12
4F203DB01
4F203DC01
4F203DL10
(57)【要約】
【課題】中芯と外層とから構成される2層構造を有する環状シール材を製造する際に、パーティングラインにおける外層からの中芯のはみ出しが抑制された環状シール材、予備成形体およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】中芯と、前記中芯の周囲を覆う外層とを含む環状シール材であって、前記環状シール材は外径側および内径側にパーティングラインを有し、前記環状シール材の断面において、前記外径側のパーティングラインと前記内径側のパーティングラインとを結ぶ直線の一方の端を、前記直線の中点を中心とする中心角が0°となる位置とした場合、前記直線の一方の端から少なくとも一方向において、前記中心角が90°となる位置の外層の厚みをT90、前記中心角が45°となる位置の外層の厚みをT45としたとき、下記式(1):T45>T90満たす、環状シール材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中芯と、前記中芯の周囲を覆う外層とを含む環状シール材であって、
前記環状シール材は外径側および内径側にパーティングラインを有し、
前記環状シール材の断面において、前記外径側のパーティングラインと前記内径側のパーティングラインとを結ぶ直線の一方の端を、前記直線の中点を中心とする中心角が0°となる位置とした場合、前記直線の一方の端から少なくとも一方向において、前記中心角が90°となる位置の外層の厚みをT90、前記中心角が45°となる位置の外層の厚みをT45としたとき、下記式(1):
(1) T45>T90
満たす、環状シール材。
【請求項2】
下記式(2):
(2) 1.1≦T45/T90≦25
を満たす、請求項1に記載の環状シール材。
【請求項3】
前記中芯は着色剤を含む、請求項1に記載の環状シール材。
【請求項4】
前記外層はパーフロロエラストマーおよびフッ素ゴムからなる群から選択される少なくとも1種の架橋物を含み、前記中芯は、パーフロロエラストマー、フッ素ゴム、シリコーンゴムおよびフロロシリコーンゴムからなる群から選択される少なくとも1種の架橋物を含む、請求項1に記載の環状シール材。
【請求項5】
請求項1に記載の環状シール材を製造するために用いるロープ状予備成形体であって、
中芯用架橋性ゴム組成物を含む未架橋中芯と、前記未架橋中芯の周囲を覆う、外層用架橋性ゴム組成物を含む未架橋外層とを含み、
前記ロープ状予備成形体の断面において、前記未架橋中芯の形状は楕円形状または角丸方形状である、ロープ状予備成形体。
【請求項6】
断面形状が円形状である、請求項5に記載のロープ状予備成形体。
【請求項7】
前記未架橋外層は厚みが小さい部分を有し、前記厚みが小さい部分の外側表面にライン状突起部を有する、請求項5に記載のロープ状予備成形体。
【請求項8】
請求項5に記載のロープ状予備成形体を用いる、環状シール材の製造方法。
【請求項9】
中芯用架橋性ゴム組成物および外層用架橋性ゴム組成物を用いて押出成形することにより前記ロープ状予備成形体を得る予備成形工程と、
前記ロープ状予備成形体の2つの端部を接触させて金型内に設置して熱プレス成形を行う熱プレス成形工程と
を含み、
前記ロープ状予備成形体の未架橋外層は厚みが小さい部分を有し、
前記熱プレス成形工程において、前記ロープ状予備成形体を、前記未架橋外層の厚みが小さい部分を上側にして金型に設置する、請求項8に記載の環状シール材の製造方法。
【請求項10】
前記予備成形工程において、前記未架橋外層の厚みが小さい部分の外側表面にライン状突起部を形成する、請求項9に記載の環状シール材の製造方法。
【請求項11】
前記熱プレス成形工程において、前記ライン状突起部を上側にして前記ロープ状予備成形体を金型に設置する、請求項10に記載の環状シール材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状シール材に関し、さらには、環状シール材の製造に用いる予備成形体および環状シール材の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複合構造Oリングの製造方法が記載され、紐状に形成した内層部をチューブ状の外層部の内部空間に挿通することにより作製した複合構造材を切断し、Oリング金型にセットした後、外層部に用いる材料の紐状に成形したものを複合構造材の切断面同士の隙間にセットし、加圧加熱成形することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、芯材と略々同形状の中子を用いて2枚の被覆材を予備成形し、中子を取り除いた後、その空洞部に超臨界抽出処理Oリング状ゴム製芯材を挿入し、被覆材と共に一体成形する複合構造Oリングの製造方法が記載されている。
【0004】
特許文献3には、外層部と内層部とから構成される紐状体を押出し、熱プレスすることにより内外層を同時に加硫することを特徴とする2層構造のOリングの製造方法が記載されている。
【0005】
特許文献4には、2層構造を有するOリングの製造方法として、パーフルオロエラストマーを含む外層材料をリボン状として中芯材料に巻き付けて加熱加圧する製造方法、および外層材料を冷凍粉砕して粒子化し、これを芯材に付着させた後加熱加圧する製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4148493号
【特許文献2】特開平10-323847号
【特許文献3】特開平10-52885号
【特許文献4】特開平10-329271号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の製造方法では、外層部を膨らませるときに外層部材料が破断する場合がある。また、繋ぎ目に外層用部材料から成る接続部材を配置するため、繋ぎ目の層構成が2層構造を有しない。さらには、工程が複雑でコストがかかる。
【0008】
特許文献2に記載の製造方法では、金型内での一体成形時に、上下の外層の隙間から芯材がはみ出る場合がある。
【0009】
特許文献3に記載の製造方法では、金型での成形時に内層部がパーティングラインからはみ出す場合がある。
【0010】
特許文献4に記載の製造方法では、リボン状にして巻き付けるだけでは金型投入時にOリングの内径の曲線部にシワが生じるため材料投入が困難である。また、リボンの隙間から芯材がはみ出す可能性が高く、その対策が困難である。さらに、外層材料を冷凍粉砕して粒子化し、これを芯材に付着させる場合、粒子化しただけでは芯材に接着しないため、完全に中芯を覆うことは困難である。
【0011】
中芯と外層とから構成される2層構造を有する環状シール材を製造する際、パーティングラインにおいて外層から中芯がはみ出す場合が多い。
【0012】
本発明の目的は、中芯と外層とから構成される2層構造を有する環状シール材を製造する際に、パーティングラインにおける外層からの中芯のはみ出しが抑制された環状シール材、予備成形体およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の環状シール材、予備成形体および製造方法を提供する。
[1] 中芯と、前記中芯の周囲を覆う外層とを含む環状シール材であって、
前記環状シール材は外径側および内径側にパーティングラインを有し、
前記環状シール材の断面において、前記外径側のパーティングラインと前記内径側のパーティングラインとを結ぶ直線の一方の端を、前記直線の中点を中心とする中心角が0°となる位置とした場合、前記直線の一方の端から少なくとも一方向において、前記中心角が90°となる位置の外層の厚みをT90、前記中心角が45°となる位置の外層の厚みをT45としたとき、下記式(1):
(1) T45>T90
満たす、環状シール材。
[2] 下記式(2):
(2) 1.1≦T45/T90≦25
を満たす、[1]に記載の環状シール材。
[3] 前記中芯は着色剤を含む、[1]または[2]に記載の環状シール材。
[4] 前記外層はパーフロロエラストマーおよびフッ素ゴムからなる群から選択される少なくとも1種の架橋物を含み、前記中芯は、パーフロロエラストマー、フッ素ゴム、シリコーンゴムおよびフロロシリコーンゴムからなる群から選択される少なくとも1種の架橋物を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の環状シール材。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の環状シール材を製造するために用いるロープ状予備成形体であって、
中芯用架橋性ゴム組成物を含む未架橋中芯と、前記未架橋中芯の周囲を覆う、外層用架橋性ゴム組成物を含む未架橋外層とを含み、
前記ロープ状予備成形体の断面において、前記未架橋中芯の形状は楕円形状または角丸方形状である、ロープ状予備成形体。
[6] 断面形状が円形状である、[5]に記載のロープ状予備成形体。
[7] 前記未架橋外層は厚みが小さい部分を有し、前記厚みが小さい部分の外側表面にライン状突起部を有する、[5]または[6]に記載のロープ状予備成形体。
[8] [5]~[7]のいずれかに記載のロープ状予備成形体を用いる、環状シール材の製造方法。
[9] 中芯用架橋性ゴム組成物および外層用架橋性ゴム組成物を用いて押出成形することにより前記ロープ状予備成形体を得る予備成形工程と、
前記ロープ状予備成形体の2つの端部を接触させて金型内に設置して熱プレス成形を行う熱プレス成形工程と
を含み、
前記ロープ状予備成形体の未架橋外層は厚みが小さい部分を有し、
前記熱プレス成形工程において、前記ロープ状予備成形体を、前記未架橋外層の厚みが小さい部分を上側にして金型に設置する、[8]に記載の環状シール材の製造方法。
[10] 前記予備成形工程において、前記未架橋外層の厚みが小さい部分の外側表面にライン状突起部を形成する、[9]に記載の環状シール材の製造方法。
[11] 前記熱プレス成形工程において、前記ライン状突起部を上側にして前記ロープ状予備成形体を金型に設置する、[10]に記載の環状シール材の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、中芯と外層とから構成される2層構造を有する環状シール材を製造する際に、パーティングラインにおける外層からの中芯のはみ出しが抑制された環状シール材、環状シール材の製造に用いる予備成形体および環状シール材の製造方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】
図3は、ロープ状予備成形体の概略断面図である。
【
図4】
図4は、環状シール材の製造方法の一工程を説明する環状シール材の周長方向における概略断面図である。
【
図5】
図5は、環状シール材の製造方法の他の一工程を説明する環状シール材の周長方向における概略断面図である。
【
図6】
図6は、環状シール材の製造方法の別の一工程を説明する環状シール材の周長方向における概略断面図である。
【
図7】
図7は、環状シール材の製造方法のさらに別の一工程を説明する環状シール材の周長方向における概略断面図である。
【
図8】
図8は、送りプレス成形における第1熱プレス工程を説明する概略図である。
【
図9】
図9は、送りプレス成形における第1熱プレス工程を説明する別の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の全ての図面においては、各構成要素を理解し易くするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0017】
<環状シール材>
本発明の環状シール材は、中芯と中芯の周囲を覆う外層とを含む環状シール材であって、環状シール材は外径側および内径側にパーティングラインを有し、環状シール材の断面において、外径側のパーティングラインと内径側のパーティングラインとを結ぶ直線の一方の端を、直線の中点を中心とする中心角が0°となる位置とした場合、直線の一方の端から少なくとも一方向において、中心角が90°となる位置の外層の厚みをT90、中心角が45°となる位置の外層の厚みをT45としたとき、下記式(1):
(1) T45>T90
満たす、環状シール材である。
【0018】
図1(a)は環状シール材の平面視における形状を示す。
図1(a)において、環状シール材1は斜線部で示される。環状シール材1は、外周の直径である外径D1および内周の直径である内径D2を有する。外周および内周はそれぞれ、環状シール材1の平面視において外側および内側の円周である。平面視とは環状シール材1の厚み方向から見ることをいう。
【0019】
図1(b)および(c)は、環状シール材1の平面に対して垂直な断面図を示す。環状シール材1は、中芯2と、中芯2の周囲を覆う外層3とを含む。
図1(a)に示すように環状シール材1は断面形状が円形状であることが好ましく、用途に応じて他の断面形状を有していてもよい。環状シール材1は、断面の直径D3および外層3の厚みTを有する。
【0020】
図1に示されていないが環状シール材1は、外径側および内径側にパーティングラインを有する。パーティングラインは、熱プレス成形工程において外層3の表面に生じる2つの金型の合わせ目の跡またはバリを除去した跡であることができる。環状シール材1は、外層3の表面上に外周および内周に沿って形成されたパーティングラインを有する。
【0021】
図2(b)は、
図2(a)に示す環状シール材1のA-A’における概略断面図である。
図2(b)に示すように、環状シール材1の断面形状において、外径側のパーティングラインPoと内径側のパーティングラインPiとを結ぶ直線Lの一方の端を、直線Lの中点Cを中心とする中心角が0°となる位置とした場合、直線Lの一方の端から少なくとも一方向において、前記中心角が90°となる位置の外層3の厚みをT90、前記中心角が45°となる位置の外層3の厚みをT45としたとき、式(1):
(1) T45>T90
満たす。環状シール材1は、全ての部分において上記式(1)を満たしていてもよいし、一部分において上記式(1)を満たしていてもよい。環状シール材1は式(1)を満たすことにより、パーティングラインにおける外層からの中芯のはみ出しが抑制され易くなる。なお環状シール材1が後述のライン状突起部を有する場合、T90はライン状突起部を含まない厚みである。式(1)を達成するための手段として、例えば、後述するように、環状シール材1を製造するのに用いるロープ状予備成形体の中芯の形状を楕円形状または角丸方形状とし、未架橋外層のパーティングラインとなる部分の厚みを厚くする方法等が挙げられる。
【0022】
図2(b)は、
図2(a)に示す環状シール材1のA-A’における断面形状を示す。
図2(b)に示すように中芯2の形状は、楕円形であってよく、あるいは図示されていないが角丸方形状であってよい。また、中芯2は、熱プレス成形においてパーティングラインPiおよびPoにおいて外側に膨らみ易い傾向にある。そのため、
図2(c)に示すように、中芯2は、パーティングラインPiおよびPoにおいて外側が膨らんでいてもよい。
T90は、パーティングラインにおける外層3からの中芯2のはみ出しを抑制する観点から好ましくは、パーティングラインが存在する部分の外層3の厚みより小さい。T45は、パーティングラインが存在する部分の外層3の厚みより小さくてもよいし、大きくてもよいが、パーティングラインにおける外層3からの中芯2のはみ出しを抑制する観点から好ましくは、パーティングラインが存在する部分の外層3の厚みより小さい。
【0023】
環状シール材1は、パーティングラインにおける外層3からの中芯2のはみ出しを抑制する観点から好ましくは、式(2):
(2) 1.1≦T45/T90≦25
を満たす。式(2)の左辺は好ましくは1.2、より好ましくは1.3である。式(2)の右辺は好ましくは15、より好ましくは10である。
【0024】
T45は、例えば0.3mm以上10mm以下であってよく、好ましくは0.5mm以上3mm以下である。
T90は、例えば0.1mm以上5mm以下であってよく、好ましくは0.2mm以上1.5mm以下である。
環状シール材1の断面の径D3は、例えば2mm以上50mm以下であってよく、好ましくは3mm以上15mm以下である。
【0025】
環状シール材1は、材料コスト低減の観点から好ましくは断面の直径D3に対する外層3の厚みTの平均比率(以下、平均比率ともいう)が例えば1/35以上1/4以下であってよく、好ましくは1/20以上1/5以下である。平均比率は、環状シール材1においてランダムに選択した5箇所の断面において測定した比率の平均である。比率は、例えば環状シール材1の断面において最も大きい外層3の厚みTとその厚みを含む断面の直径D3との比率T/D3で示される。
【0026】
環状シール材1は、断面における外層3に対する中芯2の面積比が0.4以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは1.0以上4.0以下である。
【0027】
環状シール材1は、パーティングラインにおける外層3からの中芯2のはみ出しを視認し易くする観点から、中芯2が着色剤を含むことが好ましい。外層3は、着色剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。外層3が着色剤を含む場合、中芯2に含まれる着色剤とは異なる着色剤を含むことが好ましい。外層3は、中芯2(パーティングライン)の視認性の観点から着色剤を含まないことがより好ましい。
【0028】
中芯2および外層3は、架橋性ゴム組成物の架橋物を含むことができる。以下、中芯2を形成する架橋性ゴム組成物は中芯用架橋性ゴム組成物といい、外層3を形成する架橋性ゴム組成物は外層用架橋性ゴム組成物といい、中芯用架橋性ゴム組成物および外層用架橋性ゴム組成物をいずれも指すときは架橋性ゴム組成物ともいう。
【0029】
架橋性ゴム組成物は架橋性ゴム成分を含むことができる。架橋性ゴム成分は、架橋反応によって架橋構造を有するエラストマー(架橋ゴム)を形成することができる。架橋性ゴム成分は、炭素-炭素不飽和基、ニトリル基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボニル基、ハロゲン基等の架橋性部位を有することができる。
【0030】
架橋性ゴム成分の具体例は、パーフルオロエラストマー(FFKM)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR;アクリロニトリルブタジエンゴム)、水素添加ニトリルゴム(HNBR;水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴムを含む。中でもパーフルオロエラストマー、フッ素ゴム、シリコーンゴムおよびフロロシリコーンゴムが好適に用いられる。架橋性ゴム組成物において架橋性ゴム成分は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
外層3はパーフロロエラストマーおよびフッ素ゴムからなる群から選択される少なくとも1種の架橋物を含み、中芯2は、パーフロロエラストマー、フッ素ゴム、シリコーンゴムおよびフロロシリコーンゴムからなる群から選択される少なくとも1種の架橋物を含むことが好ましい。したがって、外層用架橋性ゴム組成物における架橋性ゴム成分はパーフロロエラストマーおよびフッ素ゴムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、より好ましくはパーフロロエラストマーである。中芯用架橋性ゴム組成物における架橋性ゴム成分は、パーフロロエラストマー、フッ素ゴム、シリコーンゴムおよびフロロシリコーンゴムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。外層3は、耐ラジカル性の観点から有利にはパーフロロエラストマーの架橋物を含む。中芯2は、材料コストの観点から有利にはフッ素ゴム、シリコーンゴムおよびフロロシリコーンゴムからなる群から選択される少なくとも1種の架橋物を含む。
【0032】
パーフルオロエラストマーとしては特に制限されず、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体や、TFE-パーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)系共重合体等を挙げることができる。これらの共重合体は、他のパーフルオロモノマー由来の構成単位をさらに含んでいてもよい。パーフルオロエラストマーを含むパーフルオロエラストマー組成物によれば、水素原子含有フッ素エラストマーを含む架橋性ゴム組成物に比べて、耐オゾン性をより高めることができる。架橋性ゴム組成物は、パーフルオロエラストマーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0033】
テトラフルオロエチレン(TFE)-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体を形成するパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)は、アルキル基の炭素数が1~5であることができ、例えばパーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等であることができる。好ましくは、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)である。
【0034】
TFE-パーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)系共重合体を形成するパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)は、ビニルエーテル基(CF2=CFO-)に結合する基の炭素数が3~12であることができ、例えば
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCnF2n+1、
CF2=CFO(CF2)3OCnF2n+1、
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2O)mCnF2n+1、または
CF2=CFO(CF2)2OCnF2n+1
であることができる。上記式中、nは例えば1~5であり、mは例えば1~3である。
【0035】
パーフルオロエラストマーは架橋性を有することが好ましく、より具体的には、架橋部位モノマーをさらに共重合させたもの(架橋部位モノマー由来の構成単位をさらに含むもの)であることが好ましい。架橋部位とは、架橋反応可能な部位を意味する。架橋部位としては、例えば、ニトリル基、ハロゲン基(例えば、I基、Br基等)、パーフルオロフェニル基等を挙げることができる。
【0036】
架橋部位としてニトリル基を有する架橋部位モノマーの一例は、ニトリル基含有パーフルオロビニルエーテルである。ニトリル基含有パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、
CF2=CFO(CF2)nOCF(CF3)CN(nは例えば2~4)、
CF2=CFO(CF2)nCN(nは例えば2~12)、
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]m(CF2)nCN(nは例えば2、mは例えば1~5)、
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]m(CF2)nCN(nは例えば1~4、mは例えば1~2)、
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]nCF2CF(CF3)CN(nは例えば0~4)
等を挙げることができる。
【0037】
架橋部位としてハロゲン基を有する架橋部位モノマーの一例は、ハロゲン基含有パーフルオロビニルエーテルである。ハロゲン基含有パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上述のニトリル基含有パーフルオロビニルエーテルの具体例において、ニトリル基をハロゲン基に置き換えたものを挙げることができる。
【0038】
架橋性のパーフルオロエラストマーは、2つの主鎖間を架橋する架橋構造を有していてもよい。
【0039】
パーフルオロエラストマーにおけるTFE由来の構成単位/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)又はパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)由来の構成単位/架橋部位モノマー由来の構成単位の比は、モル比で、通常50~79.6%/20~49.8%/0.2~5%であり、好ましくは60~74.8%/25~39.5%/0.5~2%である。架橋性ゴム組成物は、上記構成単位の比が異なる2種以上のパーフルオロエラストマーを含むこともできる。
【0040】
フッ素ゴムは、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等の2元系のフッ化ビニリデン系ゴム、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体等の3元系のフッ化ビニリデン系ゴム、テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン/パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体、熱可塑性フッ素ゴム、パーフルオロポリエーテル骨格の液状フッ素ゴム(例えば信越化学工業株式会社製「SIFEL(登録商標)」等)を挙げることができる。フッ素ゴムは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
フッ素ゴムは、官能基を含有するものであってもよい。官能基は、例えば当該官能基を有する架橋部位モノマーを共重合させることによって導入できる。架橋部位モノマーは、ハロゲン基含有モノマーであることができる。
【0042】
架橋性ゴム組成物は、架橋性ゴム成分の架橋系に応じた架橋剤を任意に共架橋剤(架橋助剤)と共に含むことができる。パーフルオロエラストマーの架橋系としては、例えばパーオキサイド架橋系、トリアジン架橋系、オキサゾール架橋系、イミダゾール架橋系、チアゾール架橋系、ビスフェノール架橋系等が挙げられる。フッ化ビニリデン系ゴムおよびテトラフルオロエチレン-プロピレンゴムの架橋系としては、例えばパーオキサイド架橋系、ポリアミン架橋系、ポリオール架橋系等が挙げられる。架橋性ゴム組成物は、いずれか1種の架橋系で架橋されてもよいし、2種以上の架橋系で架橋されてもよい。
【0043】
パーオキサイド架橋剤は、例えば2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(市販品の例:日油株式会社製「パーヘキサ25B」、「パーヘキサ25B-40」);ジクミルペルオキシド(市販品の例:日油株式会社製「パークミルD」);2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド;ジ-t-ブチルパーオキサイド;t-ブチルジクミルパーオキサイド;ベンゾイルペルオキシド(市販品の例:日油株式会社製「ナイパーB」);2,5-ジメチル-2,5-(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3(市販品の例:日油株式会社製「パーヘキシン25B」);2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン;α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン(市販品の例:日油株式会社製「パーブチルP」);t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート;パラクロロベンゾイルパーオキサイド等であることができる。パーオキサイド架橋剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
パーオキサイド架橋系で用いる共架橋剤としては、トリアリルイソシアヌレート(市販品の例:三菱ケミカル株式会社製「TAIC」);トリアリルシアヌレート;トリアリルホルマール;トリアリルトリメリテート;N,N’-m-フェニレンビスマレイミド;ジプロパギルテレフタレート;ジアリルフタレート;テトラアリルテレフタルアミド等のラジカルによる共架橋が可能な化合物(不飽和多官能性化合物)を挙げることができる。共架橋剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、反応性及び耐熱性(圧縮永久歪特性)の観点から、共架橋剤はトリアリルイソシアヌレートを含むことが好ましい。
【0045】
トリアジン架橋系においては、有機スズ化合物、4級ホスホニウム塩や4級アンモニウム塩等のオニウム塩、尿素、窒化ケイ素等の架橋触媒が用いられる。
【0046】
オキサゾル架橋系で用いる架橋剤としては、例えば、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BOAP)、4,4’-スルホニルビス(2-アミノフェノール)、9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレンを含む。好ましくは、BOAPが用いられる。
【0047】
イミダゾル架橋系、チアゾール架橋系で用いる架橋剤としては、従来公知のものを用いることができる。イミダゾル架橋系で用いる架橋剤としては、3,3’,4,4’-テトラアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンジジン等を挙げることができる。
【0048】
架橋性ゴム組成物における架橋剤(2種以上を用いる場合はその合計量)の含有量は、架橋性ゴム成分の総量100質量部に対して、例えば0.1~10質量部であり、好ましくは0.2~5質量部であり、より好ましくは0.3~3質量部である。
【0049】
架橋性ゴム組成物における共架橋剤(2種以上を用いる場合はその合計量)の含有量は、架橋性ゴム成分の総量100質量部に対して、例えば0.5~10質量部であり、耐熱性向上の観点から、好ましくは1~8質量部である。
【0050】
架橋性ゴム組成物は、加工性改善や物性調整等を目的として、必要に応じて、老化防止剤、酸化防止剤、加硫促進剤、加工助剤(ステアリン酸等)、安定剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、離型剤、ワックス類、滑剤等の添加剤を含むことができる。添加剤の他の例は、フッ素系オイル(例えば、パーフルオロエーテル等)のような粘着性低減(防止)剤である。添加剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
ただし、環状シール材を高温環境下で使用する場合等においては、揮発、溶出又は析出を生じるおそれがあることから、添加剤の量はできるだけ少ないことが好ましく(例えば架橋性ゴム成分の総量100質量部に対して10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下)、添加剤を含有しないことが望ましい。
【0052】
また、架橋性ゴム組成物は、必要に応じて着色剤およびフィラーからなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。着色剤およびフィラーはそれぞれ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
着色剤としては、例えば無機顔料および有機顔料からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。無機顔料としては、例えば白色顔料(例えばシリカ、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウムおよびバライト粉等)、赤色顔料(例えば鉛丹、酸化鉄赤等)、黄色顔料(例えば黄鉛、亜鉛黄等)、青色顔料(例えばウルトラマリン青、プロシア青、YInMnブルー等)、黒色顔料(例えばカーボンブラック等)等が挙げられる。有機顔料としては、例えばアゾ顔料(アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料等);アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料等の多環式顔料、フタロシアニン系顔料等が挙げられる。有機顔料としてカラーインデックスにおいてピグメントに分類されている有機顔料を使用することができる。好ましく用いられる顔料は、金属元素を含有しない有機顔料である。金属元素を含有しない有機顔料は、シール材が半導体用途など過酷なオゾン環境下で用いられ、環状シール材がエッチングされることがあっても、金属元素由来の物質が飛散させるおそれがない。
【0054】
架橋性ゴム組成物中の着色剤の含有量(2種以上を用いる場合はその合計量)は、例えば架橋性ゴム成分100質量部に対し、0.01質量部以上2質量部未満であってよく、好ましくは0.05質量部以上1.5質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上1質量部以下である。
【0055】
フィラーとしては、例えばフッ素樹脂、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、クレー、タルク、珪藻土、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ハイドロタルサイト、金属粉、ガラス粉、セラミックス粉等を用いることができる。フィラーは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。架橋性ゴム組成物におけるフィラーの含有量(2種以上を用いる場合はその合計量)は、架橋性ゴム成分の総量100質量部に対して、例えば0.1質量部以上40質量部以下であり、機械的強度向上の観点から、好ましくは1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは1質量部より多く30質量部以下である。本明細書においてフィラーは上述の着色剤としての有機顔料および無機顔料とは区別され、有機顔料および無機顔料とは異なった種類のものを用いることができる。
【0056】
架橋性ゴム組成物がフッ素樹脂のフィラーを含む場合、架橋物の耐オゾン性や機械的強度をさらに向上させ得る。フッ素樹脂は、例えばフッ素樹脂粒子として架橋性ゴム組成物に含有させることができる。
【0057】
フィラーとして用いるフッ素樹脂は、分子内にフッ素原子を有する樹脂であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(VDF-HFP共重合体)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体(VDF-HFP-TFE共重合体)等であることができる。フッ素樹脂は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
上記の中でも、高温環境下で樹脂が溶融して圧縮永久歪等の特性が損なわれることを防ぐ観点から、PFA、PTFE等の融点が比較的高いフッ素樹脂を用いることが好ましい。
【0059】
フィラーとして用いるフッ素樹脂は官能基を含有するものであってもよい。官能基は、例えば当該官能基を有するモノマーを共重合させることによって導入できる。官能基を有するモノマーとして上述の架橋部位モノマーを共重合させると、上記架橋剤によってフッ素樹脂とパーフルオロエラストマーとの架橋も進行するので、パーフルオロエラストマー組成物の架橋物の機械的強度等をさらに高め得る。官能基を含有するフッ素樹脂の例として、特開2013-177631号公報に記載されるニトリル基含有ポリテトラフルオロエチレンを挙げることができる。また、フッ素樹脂は、例えば「TFM変性PTFE」(ダイニオン社製)のような、変性されたフッ素樹脂であることもできる。
【0060】
架橋性ゴム組成物がパーフルオロエラストマーとフッ素樹脂のフィラーとを含む場合、例えば1)パーフルオロエラストマー粉末とフッ素樹脂粉末とをミキシングロールを用いて混練する方法、2)パーフルオロエラストマー粉末又はペレットとフッ素樹脂粉末又はペレットとをミキサーや二軸押出機等の装置を用いて溶融混練する方法のほか、3)パーフルオロエラストマーの調製段階でフッ素樹脂を添加する方法により製造したフッ素樹脂入りパーフルオロエラストマーを用いることができる。
【0061】
上記3)の方法としては、いずれも乳化重合法で得られたパーフルオロエラストマーの水性分散液とフッ素樹脂の水性分散液とを混合した後、共凝析によりパーフルオロエラストマーとフッ素樹脂との混合物を得る方法を挙げることができる。
【0062】
架橋性ゴム組成物は、架橋性ゴム成分、着色剤、架橋剤、必要に応じて添加される共架橋剤、フィラー及び添加剤を均一に混練りすることにより調製できる。混練り機としては、例えばミキシングロール、加圧ニーダー、インターナルミキサー(バンバリーミキサー)等の従来公知のものを用いることができる。各配合成分は一度に混合して混練してもよいし、各配合成分のうち、架橋反応に寄与する成分(架橋促進剤、架橋遅延剤、架橋剤等)を除く成分を先に均一に混練しておき、その後、架橋反応に寄与する成分を混練する等、複数段に分けて混練してもよい。
【0063】
<ロープ状予備成形体>
環状シール材1は、ロープ状予備成形体を用いて製造することができる。本発明の別の態様は、環状シール材を製造するためのロープ状予備成形体である。
【0064】
ロープ状予備成形体は、中芯用架橋性ゴム組成物を含む未架橋中芯と、未架橋中芯の周囲を覆う、外層用架橋性ゴム組成物を含む未架橋外層とを含む。未架橋外層は外層用架橋性ゴム組成物を含む。中芯用架橋性ゴム組成物および外層用架橋性ゴム組成物については、上述の環状シール材における説明が適用される。
【0065】
ロープ状予備成形体の断面において、中芯の形状は楕円形状または角丸方形状である。
図3(b)は、
図3(a)に示すロープ状予備成形体4のB-B’における断面形状を示す。
図3(b)に示すロープ状予備成形体4は、未架橋中芯5の形状が角丸方形状である。図示していないが、ロープ状予備成形体4の未架橋中芯5の断面における形状は楕円形状であってもよい。本明細書において、角丸方形状は、四角形の4つの角が丸みを帯びた形状であってよく、角丸正方形、角丸長方形、角丸菱形、角丸平行四辺形等であってよく、四角形を構成する辺が曲線状であってもよい。
図3(b)に示すロープ状予備成形体4の断面形状は円形状である。
【0066】
ロープ状予備成形体4は、未架橋外層6の厚みが小さい部分を有する。未架橋外層6の厚みが小さい部分の厚みTsは、ロープ状予備成形体4の断面において最小の厚みであることができる。Tsは、例えば0.1mm以上5mm以下であってよく、好ましくは0.2mm以上1.5mm以下である。
ロープ状予備成形体4は、未架橋外層6の厚みが小さい部分に対し厚みが大きい部分を有する。未架橋外層6の厚みが大きい部分の厚みTbは、ロープ状予備成形体4の断面において最大の厚みであることができる。Tbは、例えば0.3mm以上10mm以下であってよく、好ましくは0.5mm以上3mm以下である。
Tb/Tsは例えば1.1~25であってよく、好ましくは1.2~15である。
【0067】
図3(a)に示すようにロープ状予備成形体4は、外側表面にライン状突起部7を有する。
図3(b)に示すように、ロープ状予備成形体4は、厚みが小さい部分の外側表面にライン状突起部7を有する。ロープ状予備成形体4がライン状突起部7を有する場合、後述の熱プレス成形工程においてライン状突起部7を上側にしてロープ状予備成形体4を金型に設置することにより、未架橋外層6の厚みが薄い部分にパーティングラインが形成されるのを避けることができるため、パーティングラインにおける外層3からの中芯2のはみ出しを抑制し易くすることができる。ライン状突起部7は例えば0.05~1.0mmの高さを有することができる。
【0068】
ライン状突起部7は、
図3(b)に示すように、厚みが小さい部分のいずれ1つに形成されていてもよいし、
図3(c)に示すように厚みが小さい部分のいずれにも形成されていてもよい。
【0069】
ロープ状予備成形体4は、断面における未架橋外層6に対する未架橋中芯5の面積比が例えば0.4以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは1.0以上4.0以下である。
【0070】
ロープ状予備成形体4の断面形状が円形である場合、直径(ライン状突起部7を含まない)は例えば2mm以上50mm以下であってよく、好ましくは3mm以上15mm以下である。
未架橋中芯5の形状が楕円形状である場合、楕円形状の長軸直径は、例えば2mm以上40mm以下であってよく、好ましくは2.5mm以上14mm以下であり、楕円形状の短軸直径は、例えば1mm以上30mm以下であってよく、好ましくは2mm以上25mm以下である。未架橋中芯5の形状が角丸方形状である場合、対向する辺の間隔が、長い方が例えば2mm以上40mm以下であってよく、好ましくは2.5mm以上14mm以下であり、短い方が、例えば1mm以上30mm以下であってよく、好ましくは2mm以上25mm以下である。
ロープ状予備成形体4の長さは例えば100mm以上5000mm以下であってよい。
【0071】
ロープ状予備成形体4は、後述の環状シール材1の製造方法における予備成形工程により製造することができる。
【0072】
<環状シール材の製造方法>
本発明のさらに別の態様は、ロープ状予備成形体を用いる環状シール材の製造方法である。環状シール材の製造方法は、以下の工程を含むことができる。
中芯用架橋性ゴム組成物および外層用架橋性ゴム組成物を用いて押出成形することによりロープ状予備成形体を得る予備成形工程、および
ロープ状予備成形体の2つの端部を接触させて金型内に設置して熱プレス成形を行う熱プレス成形工程。
【0073】
予備成形工程において、中芯用架橋性ゴム組成物、外層用架橋性ゴム組成物、およびロープ状予備成形体については上述の説明が適用される。ロープ状予備成形体は、具体的には次のように作製することができる。まず、中芯用架橋性ゴム組成物と外層用架橋性ゴム組成物とをロールを用いてシート状に成形し、シート状成形物を作製する。シート状成形物の厚みは、例えば1mm以上5mm以下であってよい。次にシート状成形物を裁断機で、例えば幅5mm以上30mm以下のリボン状成形物に裁断する。その後、クロスヘッドがついたスクリュー式押出機に中芯用架橋性ゴム組成物と外層用架橋性ゴム組成物のリボン状成形物を投入してロープ状に押し出すことにより、未架橋外層が外層用架橋性ゴム組成物、未架橋中芯が中芯用架橋性ゴム組成物から構成される2層構造を有するロープ状予備成形体を得ることができる。ロープ状に押し出す速度は、例えば100mm/分以上1000mm/分以下であることができる。
【0074】
ロープ状予備成形体の断面において、未架橋中芯の形状を楕円形状または角丸方形状とするために、中芯用架橋性ゴム組成物を押し出す口金形状を楕円形状または角丸方形状とすることができる。環状シール材1が上記式(1)を満たすようにするために中芯用架橋性ゴム組成物を押し出す口金形状および外層用架橋性ゴム組成物を押し出す口金形状の寸法を調節することができる。
【0075】
ロープ状に押し出す際に、未架橋外層の厚みが小さい部分の外側表面にライン状突起部を形成することができる。ライン状突起部は、外層用架橋性ゴム組成物を押し出す口金にライン状突起部を形成するために切り込み部を設けることにより形成することができる。
【0076】
リボン状成形物は、上述のシート状成形物を作製することなく、中芯用架橋性ゴム組成物および外層用架橋性ゴム組成物をプランジャー式押出機に投入し、リボン状に押出することにより作製することもできる。
【0077】
予備成形工程において準備するロープ状予備成形体の本数は、1本であってよく、2本以上、例えば3~10本であってよく、環状シール材の内径および/または外径に応じて調節することができる。
【0078】
熱プレス工程において、ロープ状予備成形体の2つの端部を接触させて金型に設置し、未架橋中芯および未架橋外層を加熱しながらプレス成形することにより、架橋性ゴム組成物の架橋物を含む中芯2および外層3からなる環状シール材1を得ることができる。ロープ状予備成形体の2つの端部を接触させて金型に設置するときに、ロープ状予備成形体を、未架橋外層の厚みが小さい部分を上側にして金型内に設置することにより、パーティングラインにおける外層からの中芯のはみ出しを抑制し易くすることができる。ロープ状予備成形体が上記ライン状突起部を有する場合、ライン状突起部を上側にしてロープ状予備成形体を金型内に設置することにより、未架橋外層の厚みが小さい部分を上側にして金型内に設置し易くすることができる。
【0079】
熱プレス成形における加熱温度は、例えば110℃以上220℃以下程度であってよい。
【0080】
熱プレス工程において、環状のキャビティを有する金型を用いてロープ状予備成形体の2つの端部を接触させて熱プレスを行うことにより環状シール材を作製してよい。または、熱プレス工程において、直線状や円弧状のキャビティを有する金型を用いて、まずロープ状予備成形体の端部以外を熱プレス成形して直線状や円弧状の成形体を得た後、この直線状や円弧状の成形体の2つの端部を接触させた接合部を熱プレス成形することにより環状シール材を作製する送りプレス成形を行ってもよい。あるいは、熱プレス工程において、円形状のキャビティを有する金型を用いて、まずロープ状予備成形体の一部を熱プレス成形してロープ状予備成形体の円形成形体を得た後、この円形成形体の未架橋部をカットして、2つの端部を接触させた接合部を熱プレス成形することにより環状シール材を作製する送りプレス成形を行ってもよい。2つの端部を接触させる態様にはロープ状予備成形体の2つの端面が接触した状態が含まれる。接合部の周長方向における長さは例えば100mm以上1200mm以下であってよい。送りプレス成形について後に説明する。
【0081】
熱プレス工程は、ロープ状予備成形体の端部を繋いだ接合部において外層のワレや外層からの中芯のはみ出しを防止する観点から、環状のキャビティを有する金型内に設置する前に、または送りプレス成形を行う場合、後述の第2熱プレス工程前に(直線状や円弧状のキャビティを有する金型に設置する前に)、
図4に示すように、接触させたロープ状予備成形体11の2つの端部の合わせ目の周囲に未架橋薄膜層30を巻付ける工程(以下、工程aともいう)をさらに含むことができる。
【0082】
未架橋薄膜層30の厚みは、例えば0.05mm以上5mm以下であってよく、ロープ状予備成形体11の外周の段差低減の観点から好ましくは0.1mm以上1mm以下である。
【0083】
未架橋薄膜層30を構成する材料は、上述の外層用架橋性ゴム組成物であってよく、好ましくはロープ状予備成形体11の未架橋外層12を構成する外層用架橋性ゴム組成物と同一の種類の外層用架橋性ゴム組成物である。
【0084】
未架橋薄膜層30は、外層用架橋性ゴム組成物をロールを用いてシート状に成形し、裁断機で、例えば幅5mm以上100mm以下程度のリボン状成形物に裁断し、これをロープ状予備成形体11の合わせ目に巻付ける長さに応じてさらに裁断することにより得られる。また、ロープ状予備成形体から中芯材料を取り除いたものを未架橋薄膜層30として用いることもできる。
【0085】
工程aにおいて、未架橋薄膜層30は、ロープ状予備成形体11の合わせ目に1周巻付けてよく、2周以上巻付けてもよい。ロープ状予備成形体11の外周の段差低減の観点から、未架橋薄膜層30はロープ状予備成形体11の合わせ目に1周から2周巻付けることが好ましい。
【0086】
本発明の環状シール材の製造方法は、接合部において中芯のはみ出しを防止する観点から、熱プレス工程前または後述の第2熱プレス工程前に、
図5(a)に示すように、ロープ状予備成形体11の2つの端部から未架橋中芯14を取り除く工程(以下、工程bともいう)をさらに含むことができる。
図5(b)に示すように、未架橋中芯を取り除いた2つの端部(未架橋外層12)を接触させて金型内に設置して熱プレス成形を行うことにより、接合部において中芯のはみ出しを防止し易くすることができる。
【0087】
工程bは、熱プレス工程前に行ってよく、送りプレス成形を行う場合、後述の第1熱プレス工程前に行ってもよいし、第1熱プレス工程と第2熱プレス工程との間に行ってもよい。
【0088】
取り除く未架橋中芯14は、端面から内側に例えば0.1mm以上20mm以下の範囲であることができる。未架橋中芯14は、例えばハサミ、メス、ニッパ等を用いて取り除くことができる。
【0089】
本発明の環状シール材の製造方法は、端部同士の接合性を向上させる観点から、熱プレス工程前に、または送りプレス成形を行う場合、後述の第2熱プレス工程前に、ロープ状予備成形体の2つの端部を加熱する工程(以下、工程cともいう)をさらに含むことができる。工程c後に、ロープ状予備成形体の2つの端部を接触させて金型内に設置して熱プレス成形を行うことにより、端部同士の接合性を強化し、中芯のはみ出しを防止することができる。
【0090】
工程cにおいて、
図6(a)に示すように、ロープ状予備成形体11の2つの端部の間にヒーター20を挟み、端面を加熱して溶融させ、その後、
図6(b)に示すように、溶融した端部同士を接触することができる。
【0091】
本発明の環状シール材の製造方法は、接合部において中芯のはみ出しを防止する観点から、熱プレス工程において、または送りプレス成形を行う場合、後述の第2熱プレス工程において、
図7に示すように、金型内に設置するロープ状予備成形体11の2つの端部の間に接続部材40を配置して金型内に設置する工程(以下、工程dともいう)をさらに含むことができる。接続部材40の未架橋外層42は、ロープ状予備成形体11の未架橋外層12より厚みが大きいため、熱プレスの際に接合部において中芯のはみ出しを防止し易くすることができる。
【0092】
未架橋外層12の厚みに対する接続部材40の未架橋外層42の厚みの比率は、例えば1.1以上10以下程度であることができる。接続部材40の周長方向における長さは例えば5mm以上100mm以下程度であることができる。
【0093】
接続部材40の断面の径は、環状シール材の外周の段差低減の観点から、ロープ状予備成形体11の断面の径と同一またはほぼ同一であること、または大きいことが好ましい。
【0094】
接続部材40は、後述する中芯用架橋性ゴム組成物からなる未架橋中芯41と、未架橋中芯41の周囲を覆う後述する外層用架橋性ゴム組成物からなる未架橋外層42とを含むことができる。未架橋中芯41を構成する材料は、好ましくはロープ状予備成形体11の未架橋中芯13を構成する中芯用架橋性ゴム組成物と同一の種類の中芯用架橋性ゴム組成物である。未架橋外層42を構成する材料は、好ましくはロープ状予備成形体11の未架橋外層12を構成する外層用架橋性ゴム組成物と同一の種類の外層用架橋性ゴム組成物である。
【0095】
環状シール材の製造方法は、熱プレス工程の後に、未架橋または架橋が不十分な部分の架橋を促進させるために二次架橋工程をさらに含むことができる。二次架橋工程において加熱する温度は、例えば150℃以上310℃以下程度であってよい。
【0096】
(送りプレス成形)
熱プレス工程において送りプレス成形を行う場合、送りプレス成形は、以下の工程を含むことができる。
ロープ状予備成形体を第1金型内に設置し、ロープ状予備成形体の端部以外の部分を熱プレス成形する第1熱プレス工程。
ロープ状予備成形体の2つの端部を接触させて第2金型内に設置し、熱プレス成形を行う第2熱プレス工程。
【0097】
第1熱プレス工程では、ロープ状予備成形体の端部以外の部分を架橋状態とすることができる。第1熱プレス工程においてロープ状予備成形体を設置する第1金型は、直線状や円弧状や円状のキャビティを有することができる。ロープ状予備成形体は、第1金型内に設置した後、C型プレスにより加熱しながらプレスすることができる。第1熱プレス工程における熱プレス成形の温度は、例えば110℃以上220℃以下程度であってよい。
【0098】
ロープ状予備成形体の端部以外の部分を熱プレス成形する方法としては、例えば第1金型のロープ状予備成形体の端部に相当する部位を冷却装置等を用いて冷却し、端部以外に相当する部位をプレス熱盤により熱プレス成形する方法等が挙げられる。冷却する部位の長さは、ロープ状予備成形体の未架橋状態または架橋が不十分な状態とする端部の周長方向における長さとすることができ、例えば1mm以上600mm以下であってよい。
【0099】
図8(a)に示すように、直線状のキャビティを有する第1金型51を用いる場合、ロープ状予備成形体を設置した第1金型51のロープ状予備成形体の端部以外に相当する部位をプレス熱盤50により熱プレスし、第1金型51のロープ状予備成形体の端部に相当する部位を冷却することにより、未架橋部と架橋部とを形成することができる。また、
図8(b)に示すように、円弧状のキャビティを有する第1金型52を用いる場合、ロープ状予備成形体を設置した第1金型52のロープ状予備成形体の端部以外に相当する部位をプレス熱盤50により熱プレスし、第1金型52のロープ状予備成形体の端部に相当する部位を冷却することにより、未架橋部と架橋部とを形成することができる。
【0100】
さらに、
図9に示すように、円形状のキャビティを有する第1金型53を用いる場合、ロープ状予備成形体を設置した第1金型53の一部をプレス熱盤50により熱プレスし、残りの部分を冷却して熱プレス成形を行った後、第1金型53から取り出したロープ状予備成形体の円形成形体54をカットすることにより、未架橋部と架橋部とを有するロープ状予備成形体11を形成することができる。
【0101】
第2熱プレス工程において、ロープ状予備成形体の2つの端部を接触させて第2金型内に設置し、熱プレス成型を行うことでロープ状予備成形体の端部を架橋状態として接合することができる。2本以上のロープ状予備成形体の端部同士の接合を繰返し行うことにより、あるいは1本のロープ状予備成形体の端部同士を接合することにより環状シール材を得ることができる。
【0102】
ロープ状予備成形体の2つの端部を設置する第2金型は、直線状や円弧状のキャビティを有することができる。第2金型内に設置するロープ状予備成形体の2つの端部はそれぞれ周長方向における幅が、例えば50mm以上600mm以下であってよい。2つの端部は、1本のロープ状予備成形体の両端部であってよく、2本のロープ状予備成形体のそれぞれの一方の端部であってよい。
【0103】
第2熱プレス工程における熱プレス成形の温度は、例えば110℃以上220℃以下程度であってよい。第2熱プレス工程における熱プレス成形の温度は、接合部におけるワレや中芯のはみ出しの防止の観点から、第1熱プレス工程における熱プレス成形の温度より低いことが好ましく、第1熱プレス工程における熱プレス成形の温度より5℃以上20℃以下低いことがより好ましい。
【実施例0104】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記のない限り、質量%及び質量部である。
【0105】
<実施例1>
パーフロロエラストマーと、パーフロロエラストマー100質量部に対し1質量部の架橋剤(パーヘキサ25B)と2質量部の架橋助剤(TAIC)とを配合してニーダーを用いて混練りすることにより外層用架橋性ゴム組成物を作製した。次にフッ素ゴムと、フッ素ゴム100質量部に対し1質量部の架橋剤(パーヘキサ25B)と3質量部の架橋助剤(TAIC)と、0.1質量部の着色剤(Cromphtal Violet D5700)を配合してニーダーを用いて混練りすることにより中芯用架橋性ゴム組成物を作製した。次に外層用架橋性ゴム組成物および中芯用架橋性ゴム組成物をそれぞれ厚みが約3mmとなるようにロールを用いてシート状に成形し、裁断機で幅が約15mmのリボン状に裁断した。クロスヘッドが備わったスクリュー式押出機にリボン状に成形した外層用架橋性ゴム組成物と中芯用架橋性ゴム組成物を投入し、未架橋外層が外層用架橋性ゴム組成物、未架橋中芯が中芯用架橋性ゴム組成物からなる2層構造を有するロープ状予備成形体を5本作製した。外層用架橋性ゴム組成物を押し出すための口金形状は円形状であり、中芯用架橋性ゴム組成物を押し出すための口金形状は楕円形状であった。ロープ状予備成形体の断面の径は約7.15mm、未架橋外層厚みは約1.2mm、長さは800mmであり、ロープ状予備成形体における未架橋中芯の形状は楕円形であった。また、ロープ状予備成形体は、未架橋外層の厚みが小さい部分の外側表面にラインを有していた。
【0106】
次いで、5本のロープ状予備成形体について、それぞれストレート型(長さ800mm、キャビティ寸法7mm)の第1金型に設置し、両端部(片方の端部の幅100mm)が未架橋状態となるように両端部を冷却しながら、両端部以外を温度165℃でC型プレスにより熱プレス成形した。
【0107】
熱プレス成形後の2本のロープ状予備成形体のそれぞれの一方の端部を接触させた後、ジョイント用の第2金型に設置し、温度160℃で接合部を熱プレス成形した。残りのロープ状予備成形体の端部についても同様の操作を行い、5本のロープ状予備成形体を接合した。その後、温度200℃で二次架橋を行い、環状シール材を得た。
【0108】
得られた環状シール材は、外径側および内径側にパーティングラインを有し、外径側のパーティングラインと内径側のパーティングラインとを結ぶ直線を直径とする円形状において、直径の中点を中心とする中心角が0°となる位置を直径の一方の端とした場合、直径の一方の端から少なくとも一方向において、中心角が90°となる位置における外層の厚みT90は、0.5mmであり、中心角が45°となる位置における外層の厚みT45は1.0mmであった。環状シール材は、中芯のはみ出しが確認されなかった。また、環状シール材は、上記ラインを目印とすることにより、ねじれやたるみを生じさせることなく容易に装置に設置することができた。
1 環状シール材、2 中芯、3 外層、4,11 ロープ状予備成形体、5,13 未架橋中芯、6,12 未架橋外層、7 ライン状突起部、14 取り除く未架橋中芯、20 ヒーター、30 未架橋薄膜層、40 接続部材、41 未架橋中芯、42 未架橋外層、50 プレス熱盤、51 直線状のキャビティを有する第1金型、52 円弧状のキャビティを有する第1金型、53 円形状のキャビティを有する第1金型、54 円形成形体、Pi 内径側のパーティングライン、Po 外径側のパーティングライン、L 直線、C 中点、T,Ts,Tb 外層の厚み、D1 外径、D2 内径、D3 断面の直径。