(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001420
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段
(51)【国際特許分類】
B01D 53/02 20060101AFI20231227BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20231227BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20231227BHJP
【FI】
B01D53/02 100
B01D53/14 100
C01B32/50
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100041
(22)【出願日】2022-06-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000154521
【氏名又は名称】株式会社フクハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】福原 廣
【テーマコード(参考)】
4D012
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA02
4D012CA03
4D012CB13
4D012CE01
4D012CE02
4D012CF02
4D012CF03
4D012CF05
4D012CF10
4D012CG01
4D012CG06
4D012CH01
4D020AA03
4D020BA16
4D020BB07
4D020CB08
4D020CC21
4D020CD02
4D020CD03
4D020DA01
4D020DA02
4D020DB01
4D020DB03
4D020DB04
4D020DB20
4G146JA02
4G146JB10
4G146JC27
4G146JC28
4G146JC33
4G146JD10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】圧縮空気圧回路の最後段に、利用機器へ接続される流路と、圧縮空気中のCO2を分離・回収可能な流路を夫々備えるCO2分離手段を提供する。
【解決手段】圧縮空気が直接利用機器へ送気される流路と、CO2回収後に利用機器へ送気される流路へ分岐可能な圧縮空気圧回路であって、エアコンプレッサの後段に、エア配管を介して配設された各種機器を経由し、該各種機器の最後段から利用機器へ接続されるエア配管の所定中間箇所に分岐管が接続されることで、直接利用機器へ接続される第一流路と、CO2分離槽を経由して利用機器へ接続される第二流路と、に分岐して構成され、各種機器は、エアタンク、エアドライヤなどのうち少なくとも一以上の機器を有して成り、エアコンプレッサで生成された圧縮空気が、各種機器を経由した後、分岐管を介することで、CO2を含有した状態のまま、あるいはCO2を回収した状態で利用機器へ送気し得る手段を採る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気が直接利用機器へ送気される流路と、圧縮空気中のCO2回収後に利用機器へ送気される流路へ分岐可能な圧縮空気圧回路であって、
エアコンプレッサの後段に、エア配管を介して配設された各種機器を経由し、該各種機器の最後段から利用機器へ接続されるエア配管の所定中間箇所に分岐管が接続されることで、直接利用機器へ接続される第一流路と、CO2分離槽を経由して利用機器へ接続される第二流路と、に分岐して構成され、
各種機器は、エアタンク、エアドライヤ、エアフィルタのうち少なくとも一以上の機器を有して成り、
エアコンプレッサで生成された圧縮空気が、各種機器を経由した後、分岐管を介することで、CO2を含有した状態のまま利用機器へ送気し得ると共に、CO2を回収した状態で利用機器へ送気し得ることを特徴とする圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段。
【請求項2】
前記CO2分離槽は、中空部を有し上方及び下方が夫々開口した筒状体から成る中空筒本体と、所定箇所に流入口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の下方開口端を閉塞可能な底体と、所定箇所に排出口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の上方開口端を閉塞可能な蓋体と、から成り、
CO2分離槽の中空部に、アミン物質及びゼオライトが充填されていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段。
【請求項3】
前記CO2分離槽の中空部に充填されたアミン物質及びゼオライトが、交互に積層した状態であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
圧縮空気圧回路において生成される圧縮空気に含まれるCO2を分離・吸着可能な手段に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中には約410~420ppmのCO2が含まれており、その含有量は年々増加傾向にある。そのため、CO2を始めとする温室効果ガスの排出を抑える動きが各国にて活発になっており、我が国においても、各企業や工場より排出されるCO2の排出量削減目標を掲げるといった対策が広がりつつあり、職種を問わずCO2削減に向けた対応が求められている。また、様々な工場等にて使用されるエアコンプレッサについても、さらなるCO2削減に向け、生成された圧縮空気に含有されたCO2を除去するためのCO2吸着フィルタ等を装着する手段等が取られていた。
【0003】
しかし、CO2吸着フィルタ等を通過させた圧縮空気は、通過させない圧縮空気と比較すると圧力が低下しており、使用する機器によっては規定圧力を満たせず業務に支障が出る場合があった。
そこで、圧縮空気にCO2吸着フィルタ等を通過させた流路と、CO2吸着フィルタを通過させず圧縮空気の圧力を維持した流路を備え、使用する機器の規定圧力を満たす圧縮空気が選択可能な構造が求められていた。
【0004】
上記問題を解決すべく、特許第6686591号公報(特許文献1)や特開2022-29786号公報(特許文献2)に記載の技術提案がされている。具体的には、特許文献1では、タンク内に充填したCO2含有ガスへ、エアコンプレッサにて生成された圧縮空気を利用してCO2吸収剤を噴霧し、CO2を除去する技術提案がなされている。また、特許文献2では、空気圧縮機にて圧縮された圧縮空気から水及び二酸化炭素を除去し、酸素又は/及び窒素の製造を行う技術提案がなされている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術提案では、CO2吸収剤を圧縮空気と混合して微粒化した後にCO2含有ガスへ噴霧する態様を採用することから、噴霧以前に圧縮空気に含まれるCO2を先に吸収してしまうことで、噴霧時のCO2吸収剤の効果が減少することとなり、CO2含有ガスに対するCO2の回収効率が減少してしまう問題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術提案では、圧縮空気から酸素又は/及び窒素の製造を行うことが目的であるため、最前段でCO2の回収を行った後、精留塔にて蒸留されることにより、後段に送気される圧縮空気としての圧力はなく、圧縮空気を利用する機器への送気に適さないという問題がある。
【0007】
本出願人は、以上のような従来の圧縮空気のCO2回収手段、中でもCO2吸着フィルタを使用した場合の圧力低下といった問題に着目し、CO2吸着フィルタを使用した流路の他に圧縮空気の圧力低下を抑えた流路を提供できないものかという着想のもと、圧縮空気にCO2吸着フィルタ等を通過させた流路と、CO2吸着フィルタを通過させず圧縮空気の圧力を維持した流路を備え、使用する機器の規定圧力を満たす圧縮空気が選択可能なCO2分離手段を開発し、本発明にかかる「圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段」の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6686591号公報
【特許文献2】特開2022-29786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に鑑み、圧縮空気圧回路に配設された各種装置の最後段に、利用機器へ直接接続される流路と、CO2を分離・回収可能な流路とを備える圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するため、本発明は、圧縮空気が直接利用機器へ送気される流路と、圧縮空気中のCO2回収後に利用機器へ送気される流路へ分岐可能な圧縮空気圧回路であって、エアコンプレッサの後段に、エア配管を介して配設された各種機器を経由し、該各種機器の最後段から利用機器へ接続されるエア配管の所定中間箇所に分岐管が接続されることで、直接利用機器へ接続される第一流路と、CO2分離槽を経由して利用機器へ接続される第二流路と、に分岐して構成され、各種機器は、エアタンク、エアドライヤ、エアフィルタのうち少なくとも一以上の機器を有して成り、エアコンプレッサで生成された圧縮空気が、各種機器を経由した後、分岐管を介することで、CO2を含有した状態のまま利用機器へ送気し得ると共に、CO2を回収した状態で利用機器へ送気し得る手段を採用する。
【0011】
また、本発明は、前記CO2分離槽は、中空部を有し上方及び下方が夫々開口した筒状体から成る中空筒本体と、所定箇所に流入口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の下方開口端を閉塞可能な底体と、所定箇所に排出口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の上方開口端を閉塞可能な蓋体と、から成り、CO2分離槽の中空部に、アミン物質及びゼオライトが充填されている手段を採用する。
【0012】
さらに、本発明は、前記CO2分離槽の中空部に充填されたアミン物質及びゼオライトが、交互に積層した状態である手段を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段によれば、直接利用機器へ接続される第一流路とCO2分離槽を経由する第二流路が夫々設けられていることにより、利用者の作業内容や利用機器の使用圧力によって、圧縮空気圧回路から直接送気されることで圧力の減損のない第一流路と、分離槽を経由することで圧縮空気内のCO2が低下した第二流路との切替を行うことが可能となって、作業内容によって流路を選択することで、作業時に排出される圧縮空気中のCO2削減に資することとなる。
【0014】
また、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段によれば、CO2分離槽の中空部にアミン物質及びゼオライトが充填されていることにより、CO2分離槽に流入した圧縮空気中のCO2が夫々に吸収・吸着され、後段に接続される利用機器へCO2が分離された清浄な圧縮空気を送気することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段によれば、CO2分離槽の中空部に充填されたアミン物質及びゼオライトが、交互に積層した状態であることで、分離槽中空部に備えた一層目で分離できなかった圧縮空気中のCO2が、次層もしくは次々層にて確実に分離可能であるため、CO2を含有しない清浄な圧縮空気の生成に資する、といった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段の実施形態を示す説明図である。
【
図2】本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段のCO2分離槽近傍を示す概略図である。
【
図3】本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段の流路を選択するシステムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段1は、直接利用機器と接続される第一流路4と、CO2分離槽10を備え圧縮空気中のCO2を分離可能な第二流路6を設けることで、利用者によって第一流路4と第二流路6を選択可能なことを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段1の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0018】
尚、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段1は、以下に述べる実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる形状や寸法、材質等の範囲内で適宜変更することができるものである。
【0019】
図1は、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段1の実施形態を示す説明図である。
本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段1は、主に圧縮空気圧回路2と、分岐管3と、第一流路4と、第二流路6と、から構成されている。
【0020】
圧縮空気圧回路2は、エアコンプレッサ30と、異物除去装置31にて構成され、エアコンプレッサ30にて生成された圧縮空気圧から水分や塵埃といった異物を分離・除去し、後段へ送気するものである。
圧縮空気圧回路2に配設されるエアコンプレッサ30及び異物除去装置31との接続部にはエア配管32が接続されており、エアコンプレッサ30にて生成された圧縮空気は、圧縮空気圧回路2に配設された各装置と、夫々に接続されたエア配管32内を通り、圧縮空気圧回路2の後段に接続された分岐管3を介し、第一流路管5及び第二流路管7へ送気されることとなる。
【0021】
エアコンプレッサ30とは、圧縮空気圧回路2の最前段に備えられ、大気を圧縮し圧力を上げた圧縮空気を生成し、後段へ送気するためのものである。大気中にはCO2が含まれているため、生成される圧縮空気中にも当然にCO2が含まれることとなる。
また、エアコンプレッサ30が生成する圧縮空気には、大気中に存する水蒸気等の水分、オイルミスト、塵埃等の異物(以下、単に異物という。)が含有されるため、該異物を除去可能な異物除去装置31を後段に設けた後、圧縮空気の利用機器へ送気させることとなる。
【0022】
異物除去装置31は、前記エアコンプレッサ30の後段に、エアタンク33、エアドライヤ34、エアフィルタ35、を一乃至複数備えたものであり、該エアコンプレッサ30にて生成された圧縮空気から異物を分離・除去し、後段へ送気するためのものである。
また、エアコンプレッサ30と異物除去装置31の接続部、及び、異物除去装置31に配設される各種装置間、並びに、異物除去装置31と分岐管3との接続部には夫々エア配管32が接続されている。
【0023】
異物除去装置31の種類や配列数、配列順は、圧縮空気圧回路2の後段に接続される利用機器や、その利用方法等によって異なることとなる。例えば、ゴルフ用エアガンによってゴルフシューズやズボンの汚れを落とす、といった目的であるならば、
図1に図示したように、エアコンプレッサ30の後段にエアタンク33、エアドライヤ34、エアフィルタ35を夫々配列し、エアタンク33、エアドライヤ34にて圧縮空気内の水分分離・除去及び圧縮空気の温度を低下させた後に、エアフィルタ35を通過させて塵埃を除去し、後段に接続された利用機器へ送気することとなる。そして、該利用機器であるエアガンからは、圧縮空気内の塵埃及び大気中の水蒸気であるドレンが取り除かれ、清浄且つ低温な圧縮空気が排出される態様となる。
また、異物除去装置31として配設される各種装置には、必要に応じて分離した異物を外部へ排出する機構(例えば異物排出管及びドレントラップ36等)が備えられる。
【0024】
分岐管3は、圧縮空気圧回路2の最後段に接続されたエア配管32から流入する圧縮空気を分岐して、後段のエア配管32(第一流路管5及び第二流路管7)へ送気するための配管である。
分岐管3の形状は特に限定するものではないが、Y字状管やT字状管等が好適である。また、分岐管3とエア配管32、及び第一流路管5、並びに第二流路管7との接続箇所の内径も特に限定はしないが、夫々の内径を同径とすることで、流入した圧縮空気をスムーズに排出することが可能となる。
【0025】
分岐管3の後段には、第一流路管5及び第二流路管7への流路を開閉可能な切替バルブ8が夫々に設けられる態様が好ましい。例えば、第一流路4の未使用時には、予め第一流路管5に設けられた開閉バルブを「閉」にすることで第一流路管5内が閉塞され、第一流路管5内における圧縮空気の流入がストップする。そして、圧縮空気圧回路2から送気された圧縮空気は、分岐管3から第二流路管7へ全て送気されることとなる。
【0026】
第一流路4は、分岐管3から送気された圧縮空気を、第一流路管5を介して利用機器へ送気するための流路である。
第一流路4から利用機器へ送気する圧縮空気は、後述のCO2分離槽10を介する第二流路6よりも圧力が高いため、高圧の圧縮空気が求められる作業に使用する態様が望ましい。
【0027】
第二流路6は、分岐管3から送気された圧縮空気を、第二流路管7を介して利用機器へ送気するための流路である。
第二流路6に送気された圧縮空気は、CO2分離槽10を経由することで圧縮空気内に含有されたCO2の分離・除去が行われ、後段に接続される利用機器へ送気されることとなる。また、CO2分離槽10の前段にサブエアフィルタ37を備え、第二流路6に流入した圧縮空気内に残存する異物を分離・除去することで、CO2分離槽10内への異物混入やフィルタの目詰まり等の性能劣化を低減させる態様も好適である。
【0028】
CO2分離槽10は、中空筒本体11と底体と蓋体13とで構成されており、第二流路管7から送気された圧縮空気が底体12に備わった流入口14から流入し、圧縮空気に含有されるCO2を分離・除去した後、蓋体13に備わった排出口15からCO2が除去された清浄な圧縮空気として後段へ排出するためのものである。
CO2分離槽10の前段には、
図1に図示したサブエアフィルタ37を配設することで、CO2分離槽10へ流入させる圧縮空気内に残存する異物をサブエアフィルタ37によってさらに減少させることで、CO2分離槽10の性能を最大限に活かすことが可能となる。
【0029】
中空筒本体11は、中空部を有し、底体12と蓋体13にて下部及び上部を締結される筒状体であって、中空部にCO2分離材16を充填させることにより、底体12に備えられた流入口14から流入した圧縮空気に含有されたCO2を分離・除去し、蓋体13に備えられた排出口15より排出するものである。
中空筒本体11の外形状については、筒状であれば特に限定はなく、円筒形状や多角筒形状が考え得る。また、中空筒本体11の素材についても特に限定はしないが、一部又は全部を強化プラスチックやガラス等の透明もしくは半透明な素材を使用して、中空部に充填されたCO2分離材16の劣化状態を確認可能な態様が好適である。
【0030】
中空筒本体11の中空部に充填されるCO2分離材16は、圧縮空気の通過によりCO2の吸収・吸着が行われる素材であれば特に限定はしないが、
図2に図示したようにアミン類を使用したアミン類CO2吸収材17と、ゼオライトを使用したゼオライトCO2吸着材18を交互に積層して充填させる態様が好適である。この態様を採ることにより、底体12に備わった流入口14から侵入した圧縮空気が上昇し、アミン類CO2吸収材17を通過する際は、化学吸収法によりCO2が吸収される。また、アミン類CO2吸収材17の層にて吸収されなかったCO2も、次の層に充填されたゼオライトCO2吸着材18を通過することによりゼオライトにCO2が吸着されることとなる。さらに、次層、次々層と層を重ねることにより圧縮空気中のCO2は分離されることになり、蓋体13に備わった排出口15から排出される圧縮空気のCO2含有量の低下に資することとなる。
【0031】
アミン類CO2吸収材17として使用されるアミン化合物は、脂肪族第一、第二及び第三アミン、並びにポリアミン、ポリイミン、環式アミン、アミジン化合物、ヒンダードアミン、アミノーシロキサン化合物、アミノ酸等が使用されるが、特に限定はしない。また、通常、CO2分離材16として使用されるアミン化合物は、水溶液化した後に対象気体へ直接噴霧することでCO2を吸収するが、本発明においては、アミン類CO2吸収材17を不織布に塗布または浸透させた後、CO2分離槽10中空部内へ充填させる態様が好適である。この態様を採ることにより、流入口14から流入し排出口15へ向けて上昇した圧縮空気は、不織布を通過する時に不織布表面等に付着したアミン類と接触しCO2が吸収されることとなる。
【0032】
ゼオライトCO2吸着材18は、CO2を選択的に吸着させる多孔体を有する鉱物であり、CO2分離槽10中空部内へ充填されることとなる。ゼオライトCO2吸着材18の形状は特に限定はなく、例えば、丸粒状やペレット状、破砕状といった形状にすることで、外気に接触可能な表面積を広くし、CO2の吸着を効果的に行うといった態様が考え得る。
流入口14から流入し排出口15へ向けて上昇した圧縮空気は、中空部下部に充填されたアミン類CO2吸収材17を通過しCO2が吸収された後に、該アミン類吸収材の上段に充填されたゼオライトCO2吸着材18の表面と接触しつつ通過することで、圧縮空気内に残留していたCO2が吸着される。この動作を、中空部に充填されたCO2分離剤の層数だけ繰り返すことにより、CO2分離槽10に流入した圧縮空気が清浄な圧縮空気となって排出口15から排出され、後段に接続された利用機器へ送気されることとなる。
【0033】
底体12は、前記中空筒本体11の下方を閉塞すると共に、圧縮空気の流入口14を該中空筒本体11下方へ接続するものである。
底体12は、前記中空筒本体11における下方の開口端を閉塞可能な大きさを有し、所定箇所(好ましくは平面視略中央箇所)に流入口14を備えた構成となっている。該底体12の中空筒本体11の下方開口端への締結手段については、特に限定はないが、例えば螺子等の締結手段により装着されることとなる。
また、流入口14から侵入する圧縮空気の流路については、
図2に図示したような流入口14から流入した圧縮空気を、側壁に複数設けた通気孔A22から複数方向へ分散させる気体分流部19を底体12に設けることで、CO2分離材16が充填された中空部内を通過する際の流路が分散するため、CO2分離材16の特定箇所への集中通過を避けて負担を軽減させることができ、満遍なく効果を発揮させることが可能となる。
さらに、CO2分離材16の最下面に、所定径の通気孔B23を複数有したパンチングプレート21を配設することにより、気体分流部19を通過した圧縮空気がパンチングプレート21の通気孔B23を介してさらに分流し、通気孔B23と同数の流路が形成されるため、CO2分離材16の能力を最大限に引き出すことが可能となる。
【0034】
蓋体13は、前記中空筒本体11の上方を閉塞すると共に、該中空筒本体11の中空部に充填されたCO2分離材16を経由することで清浄となった圧縮空気を後段へ送気可能な排出口15を備えたものである。
蓋体13は、前記中空筒本体11における上方の開口端を閉塞可能な大きさを有し、所定箇所(好ましくは平面視略中央箇所)に排出口15を備えた構成となっている。該蓋体13の中空筒本体11の上方開口端への締結手段については、前記底体12同様、特に限定はないが、例えば螺子等の締結手段により装着されることとなる。また、中空部に充填されたCO2分離材16の最上方に、所定径の通気孔B23を複数有したパンチングプレート21を配設し、蓋体13に備わった排出口15を略円筒状に覆うよう配設しつつ周壁に複数の通気孔C24を設けた気体合流部20を備える態様が好適である。この態様を採ることにより、CO2分離材16を経由した圧縮空気は、パンチングプレート21に設けられた通気孔B23から蓋体13内へ流入した後に一旦貯留された後、通気孔C24を介して排出口15近傍へ合流し後段へ排出するため、急激な圧力変動を抑えることが可能となる。
【0035】
CO2分離槽10と第二流路管7の接続部には、上流側及び下流側夫々にユニオン継手25を使用し脱着を簡易化する態様が好ましい。この態様を採ることにより、CO2分離材16の交換時や、CO2分離槽10内に不具合が発生した場合等にCO2分離槽10自体をユニオン継手25の接続箇所から取り外し、新しく用意したCO2分離槽10を装着することが可能となり、作業の迅速化、簡易化に資することとなる。
【0036】
CO2分離槽10の上流側所定箇所には、第二流路管7内を流れる圧縮空気を計測・調整可能な、減圧弁や流量計、流量調整弁等を一乃至複数搭載したエア制御装置26を備える態様が考え得る。この態様を採ることにより、CO2分離槽10へ流入する圧縮空気の流量や圧力等の細かな調整が行えると共に、安定した圧力での送気が可能となり、CO2分離槽10への負担軽減に資することとなる。
【0037】
CO2分離槽10の下流側所定箇所には、
図2に図示したようなCO2濃度計27が備えられる態様が望ましい。この態様を採ることにより、CO2分離槽10にてCO2が除去された圧縮空気に残存するCO2濃度を計測可能となる。また、図示してはいないが、該CO2濃度計27の計測結果により予め規定されたCO2濃度に近付く、もしくは超過した場合には、CO2分離槽10の寿命や目詰まり等の不具合が考え得るため、音や光、数値の表示、担当者への連絡等の手段にてCO2濃度異常であることを報知する報知部を設ける態様が望ましい。
【0038】
CO2分離槽10の下流側所定箇所には、
図2に図示したような積算流量計28が備えられる態様が望ましい。この態様を採ることにより、一定時間内に使用された圧縮空気量が計測可能であると共に、作業に使用された圧縮空気量や、コンプレッサにて生成された圧縮空気量と計測された圧縮空気量との差により、CO2分離槽10によって分離されたCO2量を算出することも可能となるといった優れた効果を奏するものである。
【0039】
また、
図3にて図示したような構造を利用し、第一流路4が必要な作業以外において自動的に流路が選択されるシステムを用いた態様も考え得る。例えば、上記のCO2濃度計27や積算流量計28が備わった測定部42をCO2分離槽10の後段に設け、該測定部42にて計測された各測定データとその累計や目標CO2削減量、流路切替条件といった各種データを記録可能なデータサーバ40と、該データサーバ40に記録された流路切替条件と該測定部42の各測定データ及び該データサーバ40に記録された各種データを比較し圧縮空気の流路を自動設定する制御部41と、分岐管3の内部に切替バルブ8の機能を設け該制御部41の指示により第一流路4もしくは第二流路6への切替動作を行う切替部43を夫々備える態様である。
制御部41は、目標CO2削減量に対して累積CO2削減量が低く現削減量が継続しても達成できない場合は、利用機器が圧縮空気を使用する際に基本的に選択される流路を第二流路6に固定する指示を切替部43に行うこととなる。この態様を採ることにより、CO2削減に効率的な流路が自動的に選択されるため、圧縮空気によるCO2排出の低減に資すると共に、切替バルブ8の開け締めといった作業の省略化が可能となる。
【0040】
(実施例1)
以上の構成から成る圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段1について、
図1及び
図2に基づきその主な動作及び作用を実施例1として説明する。
まず、エアコンプレッサ30にて生成された圧縮空気は、エア配管32を通して異物除去装置31へ流入し塵埃や水蒸気といった圧縮空気内の異物を除去する。そして、異物除去装置31の最後段に接続されたエア配管32から送気された圧縮空気は、分岐管3を経由して第一流路4及び第二流路6へ流入することとなる。
【0041】
(第一流路)
第一流路4へ流入した圧縮空気は、切替バルブ8が「開」状態であれば第一流路管5内を介し、後段に接続された利用機器へ送気される。また、該切替バルブ8が「閉」であれば、第一流路管5内は閉塞されるため、分岐管3からの圧縮空気の流入及び利用機器への送気はストップすることとなる。
【0042】
(第二流路)
第二流路6へ流入した圧縮空気は、切替バルブ8が「開」状態であれば第二流路管7内を介し、後段に接続されたCO2分離槽10及び利用機器へ送気される。また、該切替バルブ8が「閉」であれば、第二流路管7内は閉塞されるため、分岐管3からの圧縮空気の流入及び後段に備えられたCO2分離槽10及び利用機器への送気はストップすることとなる。
【0043】
分岐管3から第二流路管7を介して送気された圧縮空気は、まずサブエアフィルタ37へ流入することとなる、第二流路6に流入した圧縮空気内に残存する異物をサブエアフィルタ37にて分離・除去することで、異物が除去された清浄な圧縮空気を後段へ送気することが可能となる。
【0044】
サブエアフィルタ37から排出された圧縮空気は、CO2分離槽10の底体12に備わった流入口14から気体分流部19へ流入する。そして、気体分流部19の側壁に備わった通気孔A22によって複数の方向へ分散しつつ、中空筒本体11最下面に備わったパンチングプレート21に設けられた複数の通気孔B23により中空筒本体11内へ流入する流路は、さらに複数に分散され上昇することとなる。
中空筒本体11へ侵入した圧縮空気は、まずアミン類を不織布に塗布し積層させたアミン類CO2吸収材17を通過することとなり、アミン類とCO2による化学反応により、圧縮空気中のCO2は分離される。
次に、アミン類CO2吸収材17を通過した圧縮空気は、ゼオライトCO2吸着材18の層へ侵入し、ゼオライトCO2吸着材18によるCO2吸着作用により、アミン類CO2吸収材17にて吸収されなかったCO2を吸着・除去を行われることとなる。そして、上記CO2の吸収及び吸着作用は、中空部に充填されたCO2分離材16の積層数だけ行われるため、上昇する圧縮空気に含有されるCO2量は低下する。
中空筒本体11を通過した圧縮空気は、中空筒本体11最上面に備えられたパンチングプレート21に設けられた複数の通気孔C24により蓋体13内へ流入し、気体合流部20の側面に備えられた通気孔C24を介して合流し、排出口15から第二流路管7を介し利用機器へ送気される。
【0045】
(実施例2)
他の実施例について
図3を用いて説明する。実施例1と同様の部分は省略する。
図3は、圧縮空気圧回路2の後段に第一流路4及び第二流路の切替を制御部41によって行うシステムの概略図である。
【0046】
実施例1において、切替バルブ8の開閉によって第一流路4と第二流路6が選択される例を説明したが、さらなる改善も可能である。
作業として高圧必須のもの、低圧で可能なものの他に、低圧で作業が可能なものの作業時間が長くなってしまうものもある。その場合、高圧で行えば作業時間は短くなるが、CO2削減量は小さくなる。逆に、低圧で行えば作業時間は長くなるがCO2削減量は大きくなる。CO2削減目標を掲げた場合、このような作業を高圧、低圧どちらかで行うかを目標進捗によって判断する必要があるが、人が管理するのは迂遠であった。
【0047】
図3に図示した通り、本実施例には、流路選択の判断を行う制御部41と、各種データを記録可能なデータサーバ40が夫々設けられると共に、制御部41からの指示データによって流路の切替を行う切替部43が圧縮空気圧回路2の後段に備わり、また、第二流路管7を流れる圧縮空気の流量とCO2濃度を測定し、その測定値を制御部41及びデータサーバ40へ送信する測定部42がCO2分離槽10の後段に備わっている。
【0048】
データサーバ40は、測定部42による現在の流量及びCO2濃度をもとにCO2削減量を算出し、日、週、月ベースでの合計値を記録する。そして、制御部41は、データサーバ40に記録されたデータ及び予め設定された目標とするCO2削減量を比較し、目標値への到達が困難であれば基本流路を第二流路6へ設定し、手動で第一流路4が選択された場合でも、一定時間で第二流路6への切替を行うよう切替部43へ指示データを送信することとなる。
【0049】
上記構成を使用した圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段1の流れを説明する。
制御部41は、データサーバ40に記録されたCO2削減目標量と、CO2分離槽10の後段に設けた測定部42による現在のCO2削減量をもとに流路の選択を行い、切替部43の流路切替指示及び実行を行う。切替部43は、制御部41の指示により第一流路4もしくは第二流路6への切替を行い、圧縮空気圧回路2から送気された圧縮空気は、制御部41の指示された流路を使用し後段の利用機器へ送気されることとなる。
【0050】
以上、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段1の基本的構成態様、並びに、動作・作用について説明したが、本発明は、上記実施形態や図面に示す構成態様に限定するものではない。例えば、第一流路4の所定箇所に簡易的なCO2分離フィルタを装着し、圧力の低下をできるだけ抑えつつCO2の削減を行うといった態様等も考え得る。
【0051】
以上のように、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段1は、通常の圧縮空気を利用する流路と、圧縮空気に含有されるCO2を分離・除去する流路とを設けることで、利用機器に必要な圧力や、目標とするCO2削減量によって使用する流路の選択が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、圧縮空気圧回路において、通常の圧縮空気を利用できる流路と、CO2が分離・除去された圧縮空気を利用できる流路を選択可能とすることで、圧縮空気を使用する様々な分野におけるCO2削減に資するものであり、温室効果ガスの排出量削減を実現し得る発明である。したがって、本発明にかかる「圧縮空気圧回路におけるCO2分離手段」の産業上の利用可能性は大であると思料する。
【符号の説明】
【0053】
1 CO2分離手段
2 圧縮空気圧回路
3 分岐管
4 第一流路
5 第一流路管
6 第二流路
7 第二流路管
8 切替バルブ
10 CO2分離槽
11 中空筒本体
12 底体
13 蓋体
14 流入口
15 排出口
16 CO2分離材
17 アミン類CO2吸収材
18 ゼオライト吸着材
19 気体分流部
20 気体合流部
21 パンチングプレート
22 通気孔A
23 通気孔B
24 通気孔C
25 ユニオン継手
26 エア制御装置
27 CO2濃度計
28 積算流量計
30 エアコンプレッサ
31 異物除去装置
32 エア配管
33 エアタンク
34 エアドライヤ
35 エアフィルタ
36 ドレントラップ
37 サブエアフィルタ
40 データサーバ
41 制御部
42 測定部
43 切替部
【手続補正書】
【提出日】2023-06-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気が直接利用機器へ送気される流路と、圧縮空気中のCO
2
回収後に利用機器へ送気される流路へ分岐可能な圧縮空気圧回路であって、
エアコンプレッサの後段に、エア配管を介して配設された各種機器を経由し、該各種機器の最後段から利用機器へ接続されるエア配管の所定中間箇所に分岐管が接続されることで、直接利用機器へ接続される第一流路と、CO
2
分離槽を経由して利用機器へ接続される第二流路と、に分岐して構成され、
各種機器は、エアタンク、エアドライヤ、エアフィルタのうち少なくとも一以上の機器を有して成り、
エアコンプレッサで生成された圧縮空気が、各種機器を経由した後、分岐管を介することで、CO
2
を含有した状態のまま利用機器へ送気し得ると共に、CO
2
を回収した状態で利用機器へ送気し得ることを特徴とする圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段。
【請求項2】
前記CO
2
分離槽は、中空部を有し上方及び下方が夫々開口した筒状体から成る中空筒本体と、所定箇所に流入口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の下方開口端を閉塞可能な底体と、所定箇所に排出口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の上方開口端を閉塞可能な蓋体と、から成り、
CO
2
分離槽の中空部に、アミン類CO
2
吸収材及びゼオライトCO
2
吸着材が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段。
【請求項3】
前記CO
2
分離槽の中空部に充填されたアミン類CO
2
吸収材及びゼオライトCO
2
吸着材が、交互に積層した状態であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
圧縮空気圧回路において生成される圧縮空気に含まれるCO
2
を分離・吸着可能な手段に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中には約410~420ppmのCO
2
が含まれており、その含有量は年々増加傾向にある。そのため、CO
2
を始めとする温室効果ガスの排出を抑える動きが各国にて活発になっており、我が国においても、各企業や工場より排出されるCO
2
の排出量削減目標を掲げるといった対策が広がりつつあり、職種を問わずCO
2
削減に向けた対応が求められている。また、様々な工場等にて使用されるエアコンプレッサについても、さらなるCO
2
削減に向け、生成された圧縮空気に含有されたCO
2
を除去するためのCO
2
吸着フィルタ等を装着する手段等が取られていた。
【0003】
しかし、CO
2
吸着フィルタ等を通過させた圧縮空気は、通過させない圧縮空気と比較すると圧力が低下しており、使用する機器によっては規定圧力を満たせず業務に支障が出る場合があった。
そこで、圧縮空気にCO
2
吸着フィルタ等を通過させた流路と、CO
2
吸着フィルタを通過させず圧縮空気の圧力を維持した流路を備え、使用する機器の規定圧力を満たす圧縮空気が選択可能な構造が求められていた。
【0004】
上記問題を解決すべく、特許第6686591号公報(特許文献1)や特開2022-29786号公報(特許文献2)に記載の技術提案がされている。具体的には、特許文献1では、タンク内に充填したCO
2
含有ガスへ、エアコンプレッサにて生成された圧縮空気を利用してCO
2
吸収剤を噴霧し、CO
2
を除去する技術提案がなされている。また、特許文献2では、空気圧縮機にて圧縮された圧縮空気から水及び二酸化炭素を除去し、酸素又は/及び窒素の製造を行う技術提案がなされている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術提案では、CO
2
吸収剤を圧縮空気と混合して微粒化した後にCO
2
含有ガスへ噴霧する態様を採用することから、噴霧以前に圧縮空気に含まれるCO
2
を先に吸収してしまうことで、噴霧時のCO
2
吸収剤の効果が減少することとなり、CO
2
含有ガスに対するCO
2
の回収効率が減少してしまう問題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術提案では、圧縮空気から酸素又は/及び窒素の製造を行うことが目的であるため、最前段でCO
2
の回収を行った後、精留塔にて蒸留されることにより、後段に送気される圧縮空気としての圧力はなく、圧縮空気を利用する機器への送気に適さないという問題がある。
【0007】
本出願人は、以上のような従来の圧縮空気のCO
2
回収手段、中でもCO
2
吸着フィルタを使用した場合の圧力低下といった問題に着目し、CO
2
吸着フィルタを使用した流路の他に圧縮空気の圧力低下を抑えた流路を提供できないものかという着想のもと、圧縮空気にCO
2
吸着フィルタ等を通過させた流路と、CO
2
吸着フィルタを通過させず圧縮空気の圧力を維持した流路を備え、使用する機器の規定圧力を満たす圧縮空気が選択可能なCO
2
分離手段を開発し、本発明にかかる「圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段」の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6686591号公報
【特許文献2】特開2022-29786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に鑑み、圧縮空気圧回路に配設された各種機器の最後段に、利用機器へ直接接続される流路と、CO
2
を分離・回収可能な流路とを備える圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するため、本発明は、圧縮空気が直接利用機器へ送気される流路と、圧縮空気中のCO
2
回収後に利用機器へ送気される流路へ分岐可能な圧縮空気圧回路であって、エアコンプレッサの後段に、エア配管を介して配設された各種機器を経由し、該各種機器の最後段から利用機器へ接続されるエア配管の所定中間箇所に分岐管が接続されることで、直接利用機器へ接続される第一流路と、CO
2
分離槽を経由して利用機器へ接続される第二流路と、に分岐して構成され、各種機器は、エアタンク、エアドライヤ、エアフィルタのうち少なくとも一以上の機器を有して成り、エアコンプレッサで生成された圧縮空気が、各種機器を経由した後、分岐管を介することで、CO
2
を含有した状態のまま利用機器へ送気し得ると共に、CO
2
を回収した状態で利用機器へ送気し得る手段を採用する。
【0011】
また、本発明は、前記CO
2
分離槽は、中空部を有し上方及び下方が夫々開口した筒状体から成る中空筒本体と、所定箇所に流入口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の下方開口端を閉塞可能な底体と、所定箇所に排出口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の上方開口端を閉塞可能な蓋体と、から成り、CO
2
分離槽の中空部に、アミン類CO
2
吸収材及びゼオライトCO
2
吸着材が充填されている手段を採用する。
【0012】
さらに、本発明は、前記CO
2
分離槽の中空部に充填されたアミン類CO
2
吸収材及びゼオライトCO
2
吸着材が、交互に積層した状態である手段を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段によれば、直接利用機器へ接続される第一流路とCO
2
分離槽を経由する第二流路が夫々設けられていることにより、利用者の作業内容や利用機器の使用圧力によって、圧縮空気圧回路から直接送気されることで圧力の減損のない第一流路と、分離槽を経由することで圧縮空気内のCO
2
が低下した第二流路との切替を行うことが可能となって、作業内容によって流路を選択することで、作業時に排出される圧縮空気中のCO
2
削減に資することとなる。
【0014】
また、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段によれば、CO
2
分離槽の中空部にアミン類CO
2
吸収材及びゼオライトCO
2
吸着材が充填されていることにより、CO
2
分離槽に流入した圧縮空気中のCO
2
が夫々に吸収・吸着され、後段に接続される利用機器へCO
2
が分離された清浄な圧縮空気を送気することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段によれば、CO
2
分離槽の中空部に充填されたアミン類CO
2
吸収材及びゼオライトCO
2
吸着材が、交互に積層した状態であることで、分離槽中空部に備えた一層目で分離できなかった圧縮空気中のCO
2
が、次層もしくは次々層にて確実に分離可能であるため、CO
2
を含有しない清浄な圧縮空気の生成に資する、といった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段の実施形態を示す模式図である。
【
図2】本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段のCO
2
分離槽近傍を示す概略図である。
【
図3】本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段の流路を選択するシステムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段1は、直接利用機器と接続される第一流路4と、CO
2
分離槽10を備え圧縮空気中のCO
2
を分離可能な第二流路6を設けることで、利用者によって第一流路4と第二流路6を選択可能なことを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段1の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0018】
尚、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段1は、以下に述べる実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる形状や寸法、材質等の範囲内で適宜変更することができるものである。
【0019】
図1は、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段1の実施形態を示す説明図である。
本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段1は、主に圧縮空気圧回路2と、分岐管3と、第一流路4と、第二流路6と、から構成されている。
【0020】
圧縮空気圧回路2は、エアコンプレッサ30と、異物除去装置31にて構成され、エアコンプレッサ30にて生成された圧縮空気圧から水分や塵埃といった異物を分離・除去し、後段へ送気するものである。
圧縮空気圧回路2に配設されるエアコンプレッサ30及び異物除去装置31との接続部にはエア配管32が接続されており、エアコンプレッサ30にて生成された圧縮空気は、圧縮空気圧回路2に配設された各装置と、夫々に接続されたエア配管32内を通り、圧縮空気圧回路2の後段に接続された分岐管3を介し、第一流路管5及び第二流路管7へ送気されることとなる。
【0021】
エアコンプレッサ30とは、圧縮空気圧回路2の最前段に備えられ、大気を圧縮し圧力を上げた圧縮空気を生成し、後段へ送気するためのものである。大気中にはCO
2
が含まれているため、生成される圧縮空気中にも当然にCO
2
が含まれることとなる。
また、エアコンプレッサ30が生成する圧縮空気には、大気中に存する水蒸気等の水分、オイルミスト、塵埃等の異物(以下、単に異物という。)が含有されるため、該異物を除去可能な異物除去装置31を後段に設けた後、圧縮空気の利用機器へ送気させることとなる。
【0022】
異物除去装置31は、前記エアコンプレッサ30の後段に、エアタンク33、エアドライヤ34、エアフィルタ35、のうち少なくとも一以上の機器を一乃至複数備えたものであり、該エアコンプレッサ30にて生成された圧縮空気から異物を分離・除去し、後段へ送気するためのものである。
また、エアコンプレッサ30と異物除去装置31の接続部、及び、異物除去装置31に配設される各種機器間、並びに、異物除去装置31と分岐管3との接続部には夫々エア配管32が接続されている。
【0023】
異物除去装置31
として配設される各種機器の種類や配列数、配列順は、圧縮空気圧回路2の後段に接続される利用機器や、その利用方法等によって異なることとなる。例えば、ゴルフ用エアガンによってゴルフシューズやズボンの汚れを落とす、といった目的であるならば、
図1に図示したように、エアコンプレッサ30の後段にエアタンク33、エアドライヤ34、エアフィルタ35を夫々配列し、エアタンク33、エアドライヤ34にて圧縮空気内の水分分離・除去及び圧縮空気の温度を低下させた後に、エアフィルタ35を通過させて塵埃を除去し、後段に接続された利用機器へ送気することとなる。そして、該利用機器であるエアガンからは、圧縮空気内の塵埃及び大気中の水蒸気であるドレンが取り除かれ、清浄且つ低温な圧縮空気が排出される態様となる。
また、異物除去装置31として配設される各種
機器には、必要に応じて分離した異物を外部へ排出する機構(例えば異物排出管及びドレントラップ36等)が備えられる。
【0024】
分岐管3は、圧縮空気圧回路2の最後段に接続されたエア配管32から流入する圧縮空気を分岐して、後段のエア配管32(第一流路管5及び第二流路管7)へ送気するための配管である。
分岐管3の形状は特に限定するものではないが、Y字状管やT字状管等が好適である。また、分岐管3とエア配管32、及び第一流路管5、並びに第二流路管7との接続箇所の内径も特に限定はしないが、夫々の内径を同径とすることで、流入した圧縮空気をスムーズに排出することが可能となる。
【0025】
分岐管3の後段には、第一流路管5及び第二流路管7への流路を開閉可能な切替バルブ8が夫々に設けられる態様が好ましい。例えば、第一流路4の未使用時には、予め第一流路管5に設けられた開閉バルブを「閉」にすることで第一流路管5内が閉塞され、第一流路管5内における圧縮空気の流入がストップする。そして、圧縮空気圧回路2から送気された圧縮空気は、分岐管3から第二流路管7へ全て送気されることとなる。
【0026】
第一流路4は、分岐管3から送気された圧縮空気を、第一流路管5を介して利用機器へ接続するための流路である。
第一流路4から利用機器へ送気する圧縮空気は、後述のCO
2
分離槽10を介する第二流路6よりも圧力が高いため、高圧の圧縮空気が求められる作業に使用する態様が望ましい。
【0027】
第二流路6は、分岐管3から送気された圧縮空気を、第二流路管7を介して利用機器へ接続するための流路である。
第二流路6に送気された圧縮空気は、CO
2
分離槽10を経由することで圧縮空気内に含有されたCO
2
の分離・除去が行われ、後段に接続される利用機器へ送気されることとなる。また、CO
2
分離槽10の前段にサブエアフィルタ37を備え、第二流路6に流入した圧縮空気内に残存する異物を分離・除去することで、CO
2
分離槽10内への異物混入やフィルタの目詰まり等の性能劣化を低減させる態様も好適である。
【0028】
CO
2
分離槽10は、中空筒本体11と底体と蓋体13とで構成されており、第二流路管7から送気された圧縮空気が底体12に備わった流入口14から流入し、圧縮空気に含有されるCO
2
を分離・除去した後、蓋体13に備わった排出口15からCO
2
が除去された清浄な圧縮空気として後段へ排出するためのものである。
CO
2
分離槽10の前段には、
図1に図示したサブエアフィルタ37を配設することで、CO
2
分離槽10へ流入させる圧縮空気内に残存する異物をサブエアフィルタ37によってさらに減少させることで、CO
2
分離槽10の性能を最大限に活かすことが可能となる。
【0029】
中空筒本体11は、中空部を有し、底体12と蓋体13にて下部及び上部を締結される筒状体であって、中空部にCO
2
分離材16を充填させることにより、底体12に備えられた流入口14から流入した圧縮空気に含有されたCO
2
を分離・除去し、蓋体13に備えられた排出口15より排出するものである。
中空筒本体11の外形状については、筒状であれば特に限定はなく、円筒形状や多角筒形状が考え得る。また、中空筒本体11の素材についても特に限定はしないが、一部又は全部を強化プラスチックやガラス等の透明もしくは半透明な素材を使用して、中空部に充填されたCO
2
分離材16の劣化状態を確認可能な態様が好適である。
【0030】
中空筒本体11の中空部に充填されるCO
2
分離材16は、圧縮空気の通過によりCO
2
の吸収・吸着が行われる素材であれば特に限定はしないが、
図2に図示したようにアミン類を使用したアミン類CO
2
吸収材17と、ゼオライトを使用したゼオライトCO
2
吸着材18を交互に積層して充填させる態様が好適である。この態様を採ることにより、底体12に備わった流入口14から侵入した圧縮空気が上昇し、アミン類CO
2
吸収材17を通過する際は、化学吸収法によりCO
2
が吸収される。また、アミン類CO
2
吸収材17の層にて吸収されなかったCO
2
も、次の層に充填されたゼオライトCO
2
吸着材18を通過することによりゼオライトにCO
2
が吸着されることとなる。さらに、次層、次々層と層を重ねることにより圧縮空気中のCO
2
は分離されることになり、蓋体13に備わった排出口15から排出される圧縮空気のCO
2
含有量の低下に資することとなる。
【0031】
アミン類CO
2
吸収材17として使用されるアミン化合物は、脂肪族第一、第二及び第三アミン、並びにポリアミン、ポリイミン、環式アミン、アミジン化合物、ヒンダードアミン、アミノーシロキサン化合物、アミノ酸等が使用されるが、特に限定はしない。また、通常、CO
2
分離材16として使用されるアミン化合物は、水溶液化した後に対象気体へ直接噴霧することでCO
2
を吸収するが、本発明においては、アミン類CO
2
吸収材17を不織布に塗布または浸透させた後、CO
2
分離槽10中空部内へ充填させる態様が好適である。この態様を採ることにより、流入口14から流入し排出口15へ向けて上昇した圧縮空気は、不織布を通過する時に不織布表面等に付着したアミン類と接触しCO
2
が吸収されることとなる。
【0032】
ゼオライトCO
2
吸着材18は、CO
2
を選択的に吸着させる多孔体を有する鉱物であり、CO
2
分離槽10中空部内へ充填されることとなる。ゼオライトCO
2
吸着材18の形状は特に限定はなく、例えば、丸粒状やペレット状、破砕状といった形状にすることで、外気に接触可能な表面積を広くし、CO
2
の吸着を効果的に行うといった態様が考え得る。
流入口14から流入し排出口15へ向けて上昇した圧縮空気は、中空部下部に充填されたアミン類CO
2
吸収材17を通過しCO
2
が吸収された後に、該アミン類吸収材の上段に充填されたゼオライトCO
2
吸着材18の表面と接触しつつ通過することで、圧縮空気内に残留していたCO
2
が吸着される。この動作を、中空部に充填されたCO
2
分離剤の層数だけ繰り返すことにより、CO
2
分離槽10に流入した圧縮空気が清浄な圧縮空気となって排出口15から排出され、後段に接続された利用機器へ送気されることとなる。
【0033】
底体12は、前記中空筒本体11の下方を閉塞すると共に、圧縮空気の流入口14を該中空筒本体11下方へ接続するものである。
底体12は、前記中空筒本体11における下方の開口端を閉塞可能な大きさを有し、所定箇所(好ましくは平面視略中央箇所)に流入口14を備えた構成となっている。該底体12の中空筒本体11の下方開口端への締結手段については、特に限定はないが、例えば螺子等の締結手段により装着されることとなる。
また、流入口14から侵入する圧縮空気の流路については、
図2に図示したような流入口14から流入した圧縮空気を、側壁に複数設けた通気孔A22から複数方向へ分散させる気体分流部19を底体12に設けることで、CO
2
分離材16が充填された中空部内を通過する際の流路が分散するため、CO
2
分離材16の特定箇所への集中通過を避けて負担を軽減させることができ、満遍なく効果を発揮させることが可能となる。
さらに、CO
2
分離材16の最下面に、所定径の通気孔B23を複数有したパンチングプレート21を配設することにより、気体分流部19を通過した圧縮空気がパンチングプレート21の通気孔B23を介してさらに分流し、通気孔B23と同数の流路が形成されるため、CO
2
分離材16の能力を最大限に引き出すことが可能となる。
【0034】
蓋体13は、前記中空筒本体11の上方を閉塞すると共に、該中空筒本体11の中空部に充填されたCO
2
分離材16を経由することで清浄となった圧縮空気を後段へ送気可能な排出口15を備えたものである。
蓋体13は、前記中空筒本体11における上方の開口端を閉塞可能な大きさを有し、所定箇所(好ましくは平面視略中央箇所)に排出口15を備えた構成となっている。該蓋体13の中空筒本体11の上方開口端への締結手段については、前記底体12同様、特に限定はないが、例えば螺子等の締結手段により装着されることとなる。また、中空部に充填されたCO
2
分離材16の最上方に、所定径の通気孔B23を複数有したパンチングプレート21を配設し、蓋体13に備わった排出口15を略円筒状に覆うよう配設しつつ周壁に複数の通気孔C24を設けた気体合流部20を備える態様が好適である。この態様を採ることにより、CO
2
分離材16を経由した圧縮空気は、パンチングプレート21に設けられた通気孔B23から蓋体13内へ流入した後に一旦貯留された後、通気孔C24を介して排出口15近傍へ合流し後段へ排出するため、急激な圧力変動を抑えることが可能となる。
【0035】
CO
2
分離槽10と第二流路管7の接続部には、上流側及び下流側夫々にユニオン継手25を使用し脱着を簡易化する態様が好ましい。この態様を採ることにより、CO
2
分離材16の交換時や、CO
2
分離槽10内に不具合が発生した場合等にCO
2
分離槽10自体をユニオン継手25の接続箇所から取り外し、新しく用意したCO
2
分離槽10を装着することが可能となり、作業の迅速化、簡易化に資することとなる。
【0036】
CO
2
分離槽10の上流側所定箇所には、第二流路管7内を流れる圧縮空気を計測・調整可能な、減圧弁や流量計、流量調整弁等を一乃至複数搭載したエア制御装置26を備える態様が考え得る。この態様を採ることにより、CO
2
分離槽10へ流入する圧縮空気の流量や圧力等の細かな調整が行えると共に、安定した圧力での送気が可能となり、CO
2
分離槽10への負担軽減に資することとなる。
【0037】
CO
2
分離槽10の下流側所定箇所には、
図2に図示したようなCO
2
濃度計27が備えられる態様が望ましい。この態様を採ることにより、CO
2
分離槽10にてCO
2
が除去された圧縮空気に残存するCO
2
濃度を計測可能となる。また、図示してはいないが、該CO
2
濃度計27の計測結果により予め規定されたCO
2
濃度に近付く、もしくは超過した場合には、CO
2
分離槽10の寿命や目詰まり等の不具合が考え得るため、音や光、数値の表示、担当者への連絡等の手段にてCO
2
濃度異常であることを報知する報知部を設ける態様が望ましい。
【0038】
CO
2
分離槽10の下流側所定箇所には、
図2に図示したような積算流量計28が備えられる態様が望ましい。この態様を採ることにより、一定時間内に使用された圧縮空気量が計測可能であると共に、作業に使用された圧縮空気量や、コンプレッサにて生成された圧縮空気量と計測された圧縮空気量との差により、CO
2
分離槽10によって分離されたCO
2
量を算出することも可能となるといった優れた効果を奏するものである。
【0039】
また、
図3にて図示したような構造を利用し、第一流路4が必要な作業以外において自動的に流路が選択されるシステムを用いた態様も考え得る。例えば、上記のCO
2
濃度計27や積算流量計28が備わった測定部42をCO
2
分離槽10の後段に設け、該測定部42にて計測された各測定データとその累計や目標CO
2
削減量、流路切替条件といった各種データを記録可能なデータサーバ40と、該データサーバ40に記録された流路切替条件と該測定部42の各測定データ及び該データサーバ40に記録された各種データを比較し圧縮空気の流路を自動設定する制御部41と、分岐管3の内部に切替バルブ8の機能を設け該制御部41の指示により第一流路4もしくは第二流路6への切替動作を行う切替部43を夫々備える態様である。
制御部41は、目標CO
2
削減量に対して累積CO
2
削減量が低く現削減量が継続しても達成できない場合は、利用機器が圧縮空気を使用する際に基本的に選択される流路を第二流路6に固定する指示を切替部43に行うこととなる。この態様を採ることにより、CO
2
削減に効率的な流路が自動的に選択されるため、圧縮空気によるCO
2
排出の低減に資すると共に、切替バルブ8の開け締めといった作業の省略化が可能となる。
【0040】
以上の構成から成る圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段1について、
図1及び
図2に基づきその主な動作及び作用を実施例1として説明する。
まず、エアコンプレッサ30にて生成された圧縮空気は、エア配管32を通して異物除去装置31へ流入し塵埃や水蒸気といった圧縮空気内の異物を除去する。そして、異物除去装置31の最後段に接続されたエア配管32から送気された圧縮空気は、分岐管3を経由して第一流路4及び第二流路6へ流入することとなる。
【0041】
第一流路4へ流入した圧縮空気は、切替バルブ8が「開」状態であれば第一流路管5内を介し、後段に接続された利用機器へ送気される。また、該切替バルブ8が「閉」であれば、第一流路管5内は閉塞されるため、分岐管3からの圧縮空気の流入及び利用機器への送気はストップすることとなる。
【0042】
第二流路6へ流入した圧縮空気は、切替バルブ8が「開」状態であれば第二流路管7内を介し、後段に接続されたCO
2
分離槽10及び利用機器へ送気される。また、該切替バルブ8が「閉」であれば、第二流路管7内は閉塞されるため、分岐管3からの圧縮空気の流入及び後段に備えられたCO
2
分離槽10及び利用機器への送気はストップすることとなる。
【0043】
分岐管3から第二流路管7を介して送気された圧縮空気は、まずサブエアフィルタ37へ流入することとなる、第二流路6に流入した圧縮空気内に残存する異物をサブエアフィルタ37にて分離・除去することで、異物が除去された清浄な圧縮空気を後段へ送気することが可能となる。
【0044】
サブエアフィルタ37から排出された圧縮空気は、CO
2
分離槽10の底体12に備わった流入口14から気体分流部19へ流入する。そして、気体分流部19の側壁に備わった通気孔A22によって複数の方向へ分散しつつ、中空筒本体11最下面に備わったパンチングプレート21に設けられた複数の通気孔B23により中空筒本体11内へ流入する流路は、さらに複数に分散され上昇することとなる。
中空筒本体11へ侵入した圧縮空気は、まずアミン類を不織布に塗布し積層させたアミン類CO
2
吸収材17を通過することとなり、アミン類とCO
2
による化学反応により、圧縮空気中のCO
2
は分離される。
次に、アミン類CO
2
吸収材17を通過した圧縮空気は、ゼオライトCO
2
吸着材18の層へ侵入し、ゼオライトCO
2
吸着材18によるCO
2
吸着作用により、アミン類CO
2
吸収材17にて吸収されなかったCO
2
を吸着・除去を行われることとなる。そして、上記CO
2
の吸収及び吸着作用は、中空部に充填されたCO
2
分離材16の積層数だけ行われるため、上昇する圧縮空気に含有されるCO
2
量は低下する。
中空筒本体11を通過した圧縮空気は、中空筒本体11最上面に備えられたパンチングプレート21に設けられた複数の通気孔C24により蓋体13内へ流入し、気体合流部20の側面に備えられた通気孔C24を介して合流し、排出口15から第二流路管7を介し利用機器へ送気される。
【0045】
他の実施例について
図3を用いて説明する。実施例1と同様の部分は省略する。
図3は、圧縮空気圧回路2の後段に第一流路4及び第二流路の切替を制御部41によって行うシステムの概略図である。
【0046】
実施例1において、切替バルブ8の開閉によって第一流路4と第二流路6が選択される例を説明したが、さらなる改善も可能である。
作業として高圧必須のもの、低圧で可能なものの他に、低圧で作業が可能なものの作業時間が長くなってしまうものもある。その場合、高圧で行えば作業時間は短くなるが、CO
2
削減量は小さくなる。逆に、低圧で行えば作業時間は長くなるがCO
2
削減量は大きくなる。CO
2
削減目標を掲げた場合、このような作業を高圧、低圧どちらかで行うかを目標進捗によって判断する必要があるが、人が管理するのは迂遠であった。
【0047】
図3に図示した通り、本実施例には、流路選択の判断を行う制御部41と、各種データを記録可能なデータサーバ40が夫々設けられると共に、制御部41からの指示データによって流路の切替を行う切替部43が圧縮空気圧回路2の後段に備わり、また、第二流路管7を流れる圧縮空気の流量とCO
2
濃度を測定し、その測定値を制御部41及びデータサーバ40へ送信する測定部42がCO
2
分離槽10の後段に備わっている。
【0048】
データサーバ40は、測定部42による現在の流量及びCO
2
濃度をもとにCO
2
削減量を算出し、日、週、月ベースでの合計値を記録する。そして、制御部41は、データサーバ40に記録されたデータ及び予め設定された目標とするCO
2
削減量を比較し、目標値への到達が困難であれば基本流路を第二流路6へ設定し、手動で第一流路4が選択された場合でも、一定時間で第二流路6への切替を行うよう切替部43へ指示データを送信することとなる。
【0049】
上記構成を使用した圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段1の流れを説明する。
制御部41は、データサーバ40に記録されたCO
2
削減目標量と、CO
2
分離槽10の後段に設けた測定部42による現在のCO
2
削減量をもとに流路の選択を行い、切替部43の流路切替指示及び実行を行う。切替部43は、制御部41の指示により第一流路4もしくは第二流路6への切替を行い、圧縮空気圧回路2から送気された圧縮空気は、制御部41の指示された流路を使用し後段の利用機器へ送気されることとなる。
【0050】
以上、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段1の基本的構成態様、並びに、動作・作用について説明したが、本発明は、上記実施形態や図面に示す構成態様に限定するものではない。例えば、第一流路4の所定箇所に簡易的なCO
2
分離フィルタを装着し、圧力の低下を出来るだけ抑えつつCO
2
の削減を行うといった態様等も考え得る。
【0051】
以上のように、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段1は、通常の圧縮空気を利用する流路と、圧縮空気に含有されるCO
2
を分離・除去する流路とを設けることで、利用機器に必要な圧力や、目標とするCO
2
削減量によって使用する流路の選択が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、圧縮空気圧回路において、通常の圧縮空気を利用できる流路と、CO
2
が分離・除去された圧縮空気を利用できる流路を選択可能とすることで、圧縮空気を使用する様々な分野におけるCO
2
削減に資するものであり、温室効果ガスの排出量削減を実現し得る発明である。したがって、本発明にかかる「圧縮空気圧回路におけるCO
2
分離手段」の産業上の利用可能性は大であると思料する。
【符号の説明】
【0053】
1 CO
2
分離手段
2 圧縮空気圧回路
3 分岐管
4 第一流路
5 第一流路管
6 第二流路
7 第二流路管
8 切替バルブ
10 CO
2
分離槽
11 中空筒本体
12 底体
13 蓋体
14 流入口
15 排出口
16 CO
2
分離材
17 アミン類CO
2
吸収材
18 ゼオライトCO
2
吸着材
19 気体分流部
20 気体合流部
21 パンチングプレート
22 通気孔A
23 通気孔B
24 通気孔C
25 ユニオン継手
26 エア制御装置
27 CO
2
濃度計
28 積算流量計
30 エアコンプレッサ
31 異物除去装置
32 エア配管
33 エアタンク
34 エアドライヤ
35 エアフィルタ
36 ドレントラップ
37 サブエアフィルタ
40 データサーバ
41 制御部
42 測定部
43 切替部