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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142001
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】鉄道作業用落下防止器具
(51)【国際特許分類】
   A62B 35/00 20060101AFI20241003BHJP
   B61K 13/00 20060101ALI20241003BHJP
   E01B 37/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A62B35/00 J
B61K13/00 Z
E01B37/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053932
(22)【出願日】2023-03-29
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】517080441
【氏名又は名称】株式会社CTNB
(71)【出願人】
【識別番号】521511841
【氏名又は名称】湊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】我妻 透
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敦
(72)【発明者】
【氏名】古俣 一衛
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】阿曽 昭也
【テーマコード(参考)】
2D057
2E184
【Fターム(参考)】
2D057CC00
2E184JA03
2E184KA04
2E184LA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】作業時に使いやすく、落下時のコネクタ部の耐荷重性能に優れる鉄道作業用落下防止器具を提供する。
【解決手段】レール100に対して着脱可能な台座ユニット11と、台座ユニット11から上方に突出する支柱12と、支柱12に設けられて安全帯のロープを接続するコネクタ部50とを有する。コネクタ部50は、支柱のシャフト部40に対して、レールの長手方向の両側に突出する一対の接続パーツ51、52を備える。一対の接続パーツ51,52はそれぞれ、第1の直線部及び第2の直線部が互いの高さ位置を異ならせた傾き配置で、シャフト部の側面40bに第1の直線部及び第2の直線部が固定される。さらに一対の接続パーツ51,52は、シャフト部40の長手方向と垂直な基準面に対する傾き方向が互いに逆である交差関係で設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに対して着脱可能な台座ユニットと、前記台座ユニットから上方に突出する支柱と備え、安全帯のロープを接続するコネクタ部を前記支柱に備えている鉄道作業用落下防止器具であって、
前記コネクタ部は、前記支柱のシャフト部に対して、前記レールの長手方向の両側に突出する一対の接続パーツを備え、
前記一対の接続パーツはそれぞれ、前記レールの長手方向に延びる第1の直線部及び第2の直線部と、前記第1の直線部及び前記第2の直線部の一端部を接続する接続部とを備え、前記第1の直線部及び前記第2の直線部が互いの高さ位置を異ならせた傾き配置で、前記シャフト部の側面に前記第1の直線部及び前記第2の直線部が固定され、
前記一対の接続パーツは、前記シャフト部の長手方向と垂直な基準面に対する傾き方向が互いに逆である交差関係で設けられることを特徴とする鉄道作業用落下防止器具。
【請求項2】
前記シャフト部は、前記レールの幅方向の両側に向く平行な一対の幅方向側面を有し、
前記一対の幅方向側面の一方に対して、前記一対の接続パーツのそれぞれの前記第1の直線部が高さ位置を異ならせて固定され、前記一対の幅方向側面の他方に対して、前記一対の接続パーツのそれぞれの前記第2の直線部が高さ位置を異ならせて固定されることを特徴とする、請求項1に記載の鉄道作業用落下防止器具。
【請求項3】
前記一対の接続パーツは同形状であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の鉄道作業用落下防止器具。
【請求項4】
前記一対の接続パーツはそれぞれ、前記接続部が湾曲したU字形状であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の鉄道作業用落下防止器具。
【請求項5】
前記シャフト部の前記側面に対して、前記第1の直線部及び前記第2の直線部が溶接で固定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の鉄道作業用落下防止器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道のレールに取り付けて作業員の落下を防止する鉄道作業用落下防止器具に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道のレールが敷設された橋梁上のような高所で、枕木交換などの保線作業を行う場合に、作業員の落下を防ぐための落下防止器具が用いられる。この種の落下防止器具として、レールに対してローラやコロを介して移動可能に取り付けられるものが知られている(例えば、特許文献1、2)。落下防止器具に設けたリングなどに対して、安全帯のロープ(ランヤード)が接続される。
【0003】
また、レールの長手方向に間隔を空けて複数のポールを固定で設置し、各ポールに設けた環部の間に親綱を張設するタイプの落下防止器具がある(例えば、特許文献3)。
【0004】
特許文献1、2の落下防止器具は、作業者の移動に伴ってレールに沿って位置を変更することができるので、複数のポール間に親綱を張設する特許文献3のような大掛かりな構造を要さずに、小型でシンプルに構成でき、導入コストを低く抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2637367号公報
【特許文献2】特開2009-240357号公報
【特許文献3】特開平10-110535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような落下防止器具では、安全帯のロープが接続するコネクタ部が、所定以上の強度を有することが規格上定められている。
【0007】
特許文献1の落下防止器具では、レールの幅方向に向けてスライド可能な一対の挟持体を備え、一方の挟持体の中空状の横部材に他方の挟持体の挿入部材を挿入してからロックピンで固定して、一対の挟持体に設けたローラによりレールを挟む。安全帯のロープが接続するコネクタ部として、一方の挟持体の横部材の上面に環体が設けられている。
【0008】
特許文献2の落下防止器具では、一対の脚部と頂部からなる装置本体を備え、一方の脚部をヒンジで揺動可能に構成している。一対の脚部の前後の側端面に設けた筒部材にそれぞれコ字状のストッパを挿着することにより、脚部の揺動が阻止されて、一対の脚部に設けた転動手段がレールを両側から挟持する状態になる。安全帯のロープが接続するコネクタ部として、装置本体の頂部の上面にリング状のフック取付部が設けられている。
【0009】
特許文献1や特許文献2の構成では、安全帯のロープを取り付けるためのコネクタ部(環体、フック取付部)が、低い位置(レールの上面に近い高さ)に設けられている。そのため、作業時にロープが下方に垂れ下がって邪魔になりやすい、落下防止器具をレールに沿って移動させる力を与えにくいなど、使いやすさの点で課題がある。また、高所からの作業員の落下時に、環体やフック取付部の根元部分に負荷が集中するので、強度を確保することが難しい。
【0010】
特許文献3の落下防止器具では、挟持本体の第2挟持片が、第1挟持片に対して軸を中心として揺動可能に支持されている。第2挟持片を閉じた状態で、第1挟持片と第2挟持片のそれぞれの軸孔に別の軸を挿入して、第1挟持片と第2挟持片の間隔を一定にしてレールを挟持する。挟持本体の上面に設けた管体にポールが接続しており、ポールの上端付近に設けた環部に対して親綱のフックを取り付ける。環部は、ポールの側面に対して両端面を連結させた構造であり、上下方向に延びる形状を有する。
【0011】
特許文献3の構成では、ポールの長さ分だけ挟持本体よりも高い位置に親綱を取り付けることができるという点で、特許文献1、2とは異なる。しかし、コネクタ部を構成する環部は、ポールとの結合強度を確保しにくい端面結合で固定されている。また、作業員の落下時に、ポールの側面に対して環部の端面を下方に分断させるような剪断荷重を受ける構造であり、強度を確保することが難しい。
【0012】
以上のような問題点を解決するべく、本発明は、作業時に使いやすく、落下時のコネクタ部の耐荷重性能に優れる鉄道作業用落下防止器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、レールに対して着脱可能な台座ユニットと、前記台座ユニットから上方に突出する支柱と備え、安全帯のロープを接続するコネクタ部を前記支柱に備えている鉄道作業用落下防止器具であって、前記コネクタ部は、前記支柱のシャフト部に対して、前記レールの長手方向の両側に突出する一対の接続パーツを備え、前記一対の接続パーツはそれぞれ、前記レールの長手方向に延びる第1の直線部及び第2の直線部と、前記第1の直線部及び前記第2の直線部の一端部を接続する接続部とを備え、前記第1の直線部及び前記第2の直線部が互いの高さ位置を異ならせた傾き配置で、前記シャフト部の側面に前記第1の直線部及び前記第2の直線部が固定され、前記一対の接続パーツは、前記シャフト部の長手方向と垂直な基準面に対する傾き方向が互いに逆である交差関係で設けられることを特徴とする。
【0014】
前記シャフト部は、前記レールの幅方向の両側に向く平行な一対の幅方向側面を有し、前記一対の幅方向側面の一方に対して、前記一対の接続パーツのそれぞれの前記第1の直線部が高さ位置を異ならせて固定され、前記一対の幅方向側面の他方に対して、前記一対の接続パーツのそれぞれの前記第2の直線部が高さ位置を異ならせて固定されることが好ましい。
【0015】
前記一対の接続パーツは同形状であることが好ましい。
【0016】
前記一対の接続パーツはそれぞれ、前記接続部が湾曲したU字形状であることが好ましい。
【0017】
前記シャフト部の前記側面に対して、前記第1の直線部及び前記第2の直線部が溶接で固定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
上記の態様によれば、作業時に使いやすく、落下時のコネクタ部の耐荷重性能に優れる鉄道作業用落下防止器具を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施の形態による鉄道作業用落下防止器具の斜視図である。
図2】鉄道作業用落下防止器具の正面図である。
図3図2の矢線Aに沿って見た鉄道作業用落下防止器具の側面図である。
図4】台座ユニットの平面図である。
図5図4の矢線Bに沿って見た台座ユニットの側面図である。
図6図4のC-C線に沿う断面図である。
図7図4のD-D線に沿う断面図である。
図8】支柱の正面図である。
図9】支柱の側面図である。
図10】支柱に設けたコネクタ部の正面図である。
図11】コネクタ部の側面図である。
図12】コネクタ部の平面図である。
図13】コネクタ部の斜視図である。
図14】第1の比較例のコネクタ部を示す斜視図である。
図15】第2の比較例のコネクタ部を示す平面図である。
図16】第2の比較例のコネクタ部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1から図3は、本実施形態の鉄道作業用落下防止器具10の外観を示している。なお、以下の説明では、鉄道作業用落下防止器具10を簡略化して落下防止器具10と呼ぶ。また、レールの幅方向をX方向、レールの長手方向をY方向、高さ方向をZ方向とする。X方向は左右方向と呼んでもよく、Y方向は前後方向と呼んでもよく、Z方向は上下方向と呼んでもよい。Y方向に沿って見た状態が正面視であり、X方向に沿って見た状態が側面視であり、Z方向に沿って見た状態が平面視である。
【0021】
落下防止器具10は、鉄道用のレール100に取り付けられるものであり、安全帯のロープ(ランヤード)を接続させることによって、高所作業中の作業者の安全を確保する。例えば、橋梁上での保線作業中に作業者が落下(墜落)することを防ぐために、落下防止器具10が用いられる。
【0022】
レール100は、頭部101と、頭部101から下方に延びる腹部102と、腹部102の下端が接続する底部103と、を有する。頭部101の上面101aの位置をレール天端位置104とする。
【0023】
図2図6及び図7には、レール100Pとレール100Qの2種類を示しており、レール100Qを一点鎖線で表している。レール100Pとレール100Qは、X方向での頭部101の幅(上辺幅)が共通であり、X方向での腹部102の幅もほぼ同じである。例えば、レール100Pは50kgNレールであり、レール100Qは60kgレールである。落下防止器具10は、レール100Pとレール100Qの両方に取り付け可能である。
【0024】
落下防止器具10は、台座ユニット11と支柱12を組み合わせて構成されている。台座ユニット11はレール100に対して着脱が可能である。支柱12は台座ユニット11に対して着脱が可能である。図4から図7は台座ユニット11の構成を示しており、図8及び図9は支柱12の構成を示している。部品強度の高さ、加工性の良さ、入手のしやすさなどの観点から、台座ユニット11と支柱12は主に鉄で形成されている。なお、鉄以外の材質で台座ユニット11と支柱12を形成することも可能である。また、後述する各ローラ25、26、33など、鉄以外の材質での形成を前提とした部分もある。
【0025】
主に図2から図7を参照して、台座ユニット11を説明する。台座ユニット11は、天板部20と、第1側板部21と、第2側板部22と、を有している。天板部20は、X方向及びY方向に広がりを有する略水平な板状部分である。第1側板部21と第2側板部22はそれぞれ、Y方向及びZ方向に広がりを有する略垂直な板状部分である。天板部20のX方向の両側から第1側板部21と第2側板部22が下方へ延びており、正面視で台座ユニット11は下方へ開放されたコ字型の形状となっている(図6参照)。
【0026】
第1側板部21と第2側板部22のそれぞれの下端には、X方向で互いに近づく方向に屈曲した屈曲部21aと屈曲部22aが形成されている。屈曲部21aと屈曲部22aは、天板部20と概ね平行な板状部分である。第2側板部22は、天板部20よりもZ方向の上方に突出する延長壁部22bを有している。
【0027】
天板部20と第1側板部21は一体的に形成されている。第2側板部22は、レール100の幅方向の側方へ開閉可能な可動側板部であり、天板部20に対してヒンジ部23を介して開閉可能に接続されている。
【0028】
第2側板部22を可動に支持する構造として、Y方向に位置を異ならせて2箇所のヒンジ部23が設けられている(図4及び図5参照)。各ヒンジ部23は、天板部20上に設けたブラケット23aと、第2側板部22の延長壁部22bに設けたブラケット23bとに対して、Y方向に延びる支持軸23cを挿通させて構成されている。
【0029】
第2側板部22は、支持軸23cを中心として揺動することによって、開放位置と閉塞位置に動作する。図1から図5及び図7は、第2側板部22が閉塞位置にある状態を示している。図6では、第2側板部22の閉塞位置を実線で示し、第2側板部22の開放位置を二点鎖線で示している。
【0030】
閉塞位置では第2側板部22は第1側板部21と略平行であり、X方向で第1側板部21と第2側板部22が対向する位置関係にある。第2側板部22が閉塞位置にあるときの第1側板部21と第2側板部22のX方向の間隔は、レール100の頭部101の幅よりも大きい。また、第2側板部22が閉塞位置にあるときの屈曲部21aと屈曲部22aのX方向の間隔は、レール100の頭部101の幅よりも小さく、腹部102の幅よりも大きい。
【0031】
第2側板部22は、ヒンジ部23が備える開きバネ24によって開放位置へ付勢されている。開きバネ24を図6に太矢印で仮想的に示しているが、開きバネ24は、どのようなバネであってもよい。例えば、支持軸23cの軸周りに設けたトーションバネを開きバネ24として用いることができる。
【0032】
屈曲部21aと屈曲部22aの上面側には、アンダーローラ25とアンダーローラ26が支持されている。アンダーローラ25とアンダーローラ26は、レール100の腹部102の側面に両側から接触してX方向での落下防止器具10の位置を定めるガイド部材である。
【0033】
アンダーローラ25とアンダーローラ26はいずれも合成樹脂などの非導電材で形成されている。屈曲部21aの上面側にはY方向に位置を異ならせて一対のアンダーローラ25が支持され、屈曲部22aの上面側にはY方向に位置を異ならせて一対のアンダーローラ26が支持されており、計4つのアンダーローラ25、26が設けられている(図4参照)。アンダーローラ25とアンダーローラ26はそれぞれ、Z方向に延びる支持軸27と支持軸28を中心として回転可能である。
【0034】
アンダーローラ25とアンダーローラ26はそれぞれ、支持軸27と支持軸28を中心とする円筒状の外周面を有している。第2側板部22が閉塞位置にあるときのX方向におけるアンダーローラ25とアンダーローラ26の間隔は、レール100の腹部102の幅に対応している。
【0035】
図3及び図5に示すように、屈曲部21aに設けた一対のアンダーローラ25と、屈曲部22aに設けた一対のアンダーローラ26は、Y方向において台座ユニット11の両端よりも中央寄りに配置されている。第1側板部21には、Y方向で一対のアンダーローラ25の両側に切り欠き部30が形成されている。第2側板部22には、Y方向で一対のアンダーローラ26の両側に切り欠き部31が形成されている。切り欠き部30と切り欠き部31はそれぞれ、レール天端位置104よりも下方の領域に形成されている。
【0036】
つまり、第1側板部21と第2側板部22はそれぞれ、天板部20に接続する上半部分よりも、アンダーローラ25やアンダーローラ26を支持する下半部分(屈曲部21a、22a)の方が、Y方向における長さが小さくなっている。
【0037】
台座ユニット11のY方向の両端には、一対のローラブラケット32が設けられている。各ローラブラケット32は、天板部20に対して溶接などで固定されている。各ローラブラケット32は、X方向に間隔を空けた略平行な一対の側板部32aと、一対の側板部32aのY方向の端部を接続する接続部32bとを有し、平面視でコ字型をなしている(図4参照)。
【0038】
一対のローラブラケット32にはそれぞれ滑走ローラ33が支持されている。各滑走ローラ33は合成樹脂などの非導電材で形成されている。各ローラブラケット32には、一対の側板部32aを貫通してX方向に延びる支持軸34が設けられており、滑走ローラ33は支持軸34を中心として回転可能である。滑走ローラ33は、支持軸34を中心とする円筒形状の円筒部33aと、X方向で円筒部33aの両側に位置する一対のフランジ33bとを備えている。フランジ33bは円筒部33aよりも径が大きい円板形状である。X方向における一対のフランジ33bの間隔は、レール100の頭部101の幅に対応している(図7参照)。
【0039】
天板部20からZ方向の上方へ向けて、支持筒部35が突出している。支持筒部35は、X方向に間隔を空けた略平行な一対の幅方向側面部35aと、Y方向に間隔を空けた略平行な一対の前後側面部35bとを有する四角筒形状(多角形状)である。一対の幅方向側面部35aをX方向に貫通する貫通孔35cが形成されている。
【0040】
支持筒部35は、X方向及びY方向のそれぞれで天板部20の略中央に位置している。図4に示すように、平面視において支持筒部35は、計4つのアンダーローラ25、26に囲まれる中央部分に配置されている。
【0041】
続いて、主に図8及び図9を参照して、支柱12を説明する。支柱12は、Z方向に延びるシャフト部40と、シャフト部40の下端側に設けた保持部41と、を有している。
【0042】
シャフト部40は、X方向に間隔を空けた略平行な一対の幅方向側面部40aと、Y方向に間隔を空けた略平行な一対の前後側面部40bとを有する四角筒形状(多角形状)である。シャフト部40の下端は保持部41によって塞がれずに開口しており、台座ユニット11の支持筒部35をシャフト部40の内部へ下方から挿入可能である。
【0043】
支持筒部35をシャフト部40に挿入した状態で、一対の幅方向側面部40aの内面が一対の幅方向側面部35aの外面に当接し、一対の前後側面部40bの内面が一対の前後側面部35bの外面に当接する。この支持筒部35とシャフト部40の嵌合関係によって、支柱12は台座ユニット11に対して、Z方向の軸を中心とする回転と、X方向及びY方向への移動とが規制される。
【0044】
一対の幅方向側面部40aをX方向に貫通する貫通孔40cが形成されている。支持筒部35の貫通孔35cとシャフト部40の貫通孔40cがX方向に連通する状態にして、貫通孔35cと貫通孔40cに対して結合部材である結合ピン13(図2参照)を挿入することによって、支柱12は、台座ユニット11に対するZ方向の移動が規制されて、上方に抜けなくなる。結合ピン13はチェーンや紐などを介してシャフト部40に繋がれており、結合ピン13を使用しない状態での紛失を防止できる。
【0045】
シャフト部40の上端に近い位置にはコネクタ部50が設けられている。コネクタ部50は2つの接続パーツ51及び接続パーツ52をシャフト部40の外面に固定して構成されている。コネクタ部50の詳細については後述する。シャフト部40の上端は合成樹脂製のエンドキャップ44で塞がれている。
【0046】
保持部41は、Y方向に間隔を空けて配した一対の枠体42と、Y方向に延びて一対の枠体42を接続する複数の接続部43とによって構成されている。一対の枠体42はそれぞれ、X方向に間隔を空けて配されてZ方向に延びる一対の保持板部42a、42bと、一対の保持板部42a、42bの上端を接続してX方向に延びる上板部42cと、を有し、正面視で下方に向けて開放されたコ字型をなしている。保持板部42aと保持板部42bと上板部42cはそれぞれ、X方向とZ方向に広がりを有する平板部分である。つまり、個々の枠体42は、Y方向に厚みを有する板状体である。
【0047】
保持部41の個々の枠体42における保持板部42aと保持板部42bのX方向の間隔は、台座ユニット11の第1側板部21と第2側板部22の間隔に対応している。保持板部42aと保持板部42bによって第1側板部21と第2側板部22をX方向の両側から挟んで、第2側板部22を閉塞位置に保持することが可能である(図2参照)。
【0048】
なお、支柱12は、保持部41とコネクタ部50を含む全体が、X方向の中心に関して対称な形状である。したがって、支柱12は、一対の枠体42をY方向のどちらに向けても、同じように使うことができる。
【0049】
以上のように構成した落下防止器具10をレール100へ着脱する動作及び操作について説明する。
【0050】
支柱12を取り外した状態で、台座ユニット11をレール100に取り付ける。支柱12を取り付けていない状態の台座ユニット11では、第2側板部22の開き動作が制限されないため、第2側板部22を開放位置(図6参照)に位置させることができる。第2側板部22を開放位置にすることで、アンダーローラ25とアンダーローラ26の間隔が頭部101の幅よりも大きくなり、台座ユニット11の内側にレール100の頭部101を位置させることができる。この状態で、第1側板部21に設けた一対のアンダーローラ25が、腹部102の一方の側面に接する。また、台座ユニット11は、一対の滑走ローラ33の円筒部33aが頭部101の上面101aに載ることによって、レール100に対してZ方向での位置が定まる(図7参照)。
【0051】
続いて、支柱12のシャフト部40を上方から台座ユニット11の支持筒部35に接近させ、シャフト部40の内部に支持筒部35を挿入させる。すると、支柱12における保持部41が、第1側板部21と第2側板部22をX方向の両側から挟んで、第2側板部22を閉塞位置に保持させる。より詳しくは、保持部41を構成する枠体42の一方の保持板部42aが第1側板部21の外面に接し、他方の保持板部42bが第2側板部22の外面に接する。X方向での保持板部42aと保持板部42bの間隔は一定であるため、第2側板部22は保持板部42bによって押さえられて閉塞位置に保持され、開放位置への回動が規制される。
【0052】
より詳しくは、支柱12のシャフト部40の内部に台座ユニット11の支持筒部35を挿入させていくと、保持板部42bの下端が、開放位置にある第2側板部22に当接する。この状態から支柱12を下方へ移動させると、保持板部42bが第2側板部22を押し込んで、開きバネ24の付勢力に抗して第2側板部22が開放位置から閉塞位置へ向けて回動される。したがって、作業者が第2側板部22を直接的に操作することを必要とせず、支柱12をZ方向へ組み付ける動作だけで、第2側板部22を閉塞位置に移動させる(閉じさせる)ことができ、作業性に優れている。
【0053】
支柱12は、閉塞位置まで移動した第2側板部22の延長壁部22bの上端に対して上板部42cの下面が当接することによって、Z方向の下方へのそれ以上の移動が規制される。この状態で、台座ユニット11に設けた貫通孔35cと支柱12に設けた貫通孔40cはZ方向の位置が一致し、貫通孔35cと貫通孔40cがX方向に連通する。そして、貫通孔35cと貫通孔40cに結合ピン13を挿入して、台座ユニット11と支柱12を結合させる。
【0054】
第2側板部22が閉塞位置に保持されると、第2側板部22に設けた一対のアンダーローラ26が、腹部102の他方の側面(一対のアンダーローラ25が接する側と反対側の側面)に接する。つまり、一対のアンダーローラ25と一対のアンダーローラ26とによって、腹部102をX方向の両側から挟む状態になる。これにより、台座ユニット11は、レール100に対してX方向での位置が定まる(図6及び図7参照)。
【0055】
X方向でのアンダーローラ25とアンダーローラ26の間隔は、頭部101の幅よりも小さいため、Z方向の上方への台座ユニット11の移動は、アンダーローラ25とアンダーローラ26が頭部101の下面(レール100の顎部分)に当接することで規制される。そして、支柱12の保持部41によって第2側板部22が閉塞位置に保持されていて開放位置への動作が規制されているので、アンダーローラ25とアンダーローラ26の間隔が大きくならない。その結果、台座ユニット11がレール100からZ方向の上方へ離脱することがなく、落下防止器具10はレール100に結合した状態を維持する。
【0056】
このように、落下防止器具10では、支柱12を台座ユニット11に取り付けて保持部41で保持することによって、台座ユニット11はレール100に対してX方向の位置が定まると共に、Z方向に脱落しない状態になる。
【0057】
レール100から脱落しないように取り付けられた落下防止器具10は、作業者が装着した安全帯(図示略)から延びるロープをコネクタ部50に接続させて使用する。例えば、ロープの先端に設けたフック部を、コネクタ部50に係合させる。これにより、落下防止器具10を介して、作業者が高所から落下することを防ぐことができる。
【0058】
また、落下防止器具10はレール100の延設方向に沿って位置を変更することができる。すなわち、一対の滑走ローラ33が頭部101の上面101aに接し、腹部102の両側の側面にアンダーローラ25とアンダーローラ26が接した状態で、各ローラ25、26及び33を回転(転動)させながら、レール100の長手方向(Y方向)に落下防止器具10を移動させることができる。一対の滑走ローラ33を介することによって、レール100上を落下防止器具10が滑らかに移動する。X方向の両側に配したアンダーローラ25とアンダーローラ26によって、落下防止器具10がレール100に沿って移動するように進行方向を案内する。また、各滑走ローラ33に設けた一対のフランジ33bが頭部101の両側に位置して、X方向への脱落を防ぐ。
【0059】
このように、レール100に取り付けた状態の落下防止器具10は、レール100に沿って移動が可能であるため、作業者の移動に伴って任意の位置へ落下防止器具10を設置することができる。その際に、支柱12のシャフト部40に力を加えて、作業者が立った状態で落下防止器具10を移動させることが可能であるため、移動を行いやすい。
【0060】
また、落下防止器具10のうちレール100に接触する部位は、それぞれが合成樹脂などの非導電材からなる滑走ローラ33とアンダーローラ25とアンダーローラ26であるため、落下防止器具10の金属部分とレール100との間の通電を遮断することができる。
【0061】
レール100から落下防止器具10を取り外す際には、結合ピン13を取り外してから、支柱12をZ方向の上方へ引き抜く。これにより、保持部41による第1側板部21及び第2側板部22の保持が解除され、第2側板部22が閉塞位置から開放位置へ動作可能になる。そして、開きバネ24の付勢力で第2側板部22が開放位置へ回動することによって、X方向での一対のアンダーローラ25と一対のアンダーローラ26との間隔が大きくなり、レール100から台座ユニット11を取り外すことが可能になる。
【0062】
落下防止器具10では、1つの部材である支柱12のシャフト部40の内部に、支持筒部35を挿入させて台座ユニット11に結合させるので、構造がシンプルである。上記の通り、支柱12をZ方向に差し込むだけで、保持部41によって台座ユニット11の第2側板部22を閉じさせてレール100への取り付けを完了させることができるので、落下防止器具10の取り付け作業を簡単に行うことができる。また、落下防止器具10の使用後に台座ユニット11から支柱12を取り外すことで、コンパクトに収納できる。
【0063】
支柱12の保持部41は、Y方向の略中央の位置で台座ユニット11(第1側板部21及び第2側板部22)を保持するので、保持する力の偏りがなく、高い強度での保持を実現できる。特に、保持部41が第1側板部21及び第2側板部22を保持する箇所は、アンダーローラ25及びアンダーローラ26の設置位置に近いので、第1側板部21と第2側板部22の間隔が大きくなるような変形や開きを制限して、アンダーローラ25及びアンダーローラ26が確実にレール100に接する状態を維持させることができる。
【0064】
より詳しくは、図3から図5に示すように、台座ユニット11では、保持部41により保持される中央部分を挟んだY方向の両側に、一対のアンダーローラ25と一対のアンダーローラ26をそれぞれ振り分けて配置している。そのため、一対のアンダーローラ25と一対のアンダーローラ26のそれぞれに均等に保持力を作用させることができ、力のバランスが良く、安定性の高い保持を実現できる。
【0065】
また、一対のアンダーローラ25と一対のアンダーローラ26はそれぞれY方向の間隔を近くして配置されており、図3及び図5に示すように、側面視で、アンダーローラ25とアンダーローラ26の一部が保持部41(枠体42)による保持領域に重なっている。これにより、アンダーローラ25とアンダーローラ26を経由して第1側板部21と第2側板部22に対してX方向への間隔を広げようとする力が加わったときに、その外側で保持部41の枠体42によって直接的に力を受けて第1側板部21と第2側板部22の広がりを防ぐことができる。
【0066】
例えば、本実施形態とは異なり、複数のアンダーローラをY方向で大きく離れた位置(一対のローラブラケット32に近いY方向の両端付近)に配した場合、保持部41により保持されるY方向の中央付近と、各アンダーローラの設置位置との間の距離が大きくなる。すると、これらの離れた位置の間で台座ユニット11を捻れさせるような力が発生しやすく、剛性の確保において不利になる。
【0067】
これに対し、本実施形態の落下防止器具10では、以上に述べた構成によって、保持部41によって台座ユニット11を保持した状態での剛性を高めることができる。つまり、台座ユニット11がレール100に沿って移動可能であると共に、台座ユニット11がレール100から外れることを防ぐ高い強度を得ることができる。
【0068】
台座ユニット11では、Y方向での一対のアンダーローラ25の間隔と一対のアンダーローラ26の間隔をそれぞれ近くしたことに伴い、アンダーローラ25とアンダーローラ26の支持位置(屈曲部21a及び屈曲部22a)の両側に切り欠き部30と切り欠き部31を形成している。つまり、第1側板部21と第2側板部22をそれぞれ、天板部20に接続する上半部分ではY方向に長く、アンダーローラ25とアンダーローラ26を支持する下半部分(屈曲部21a、22a)ではY方向に短い構成にしている。このように、アンダーローラ25とアンダーローラ26を配置しない部分では第1側板部21と第2側板部22を短くした形状にすることで、台座ユニット11の軽量化や製造コストの低減を図ることができる。
【0069】
支柱12の保持部41は、Y方向に間隔を空けた一対の枠体42を複数の接続部43で接続した構成である。この構成により、保持部41の剛性の高さと軽量さを両立できる。また、保持部41が第1側板部21と第2側板部22を保持するY方向の範囲を広く確保して、保持部41による保持状態での安定性を高める効果が得られる。
【0070】
続いて、図10から図13を参照して、コネクタ部50の詳細を説明する。コネクタ部50を構成する接続パーツ51と接続パーツ52はいずれも、鉄などの材質で形成されており、円形状の断面を有する棒状体をU字状に屈曲させた構成である。接続パーツ51と接続パーツ52は、支柱12のシャフト部40に対してY方向に突出している。
【0071】
接続パーツ51は、略平行な第1の直線部51a及び第2の直線部51bと、第1の直線部51a及び第2の直線部51bの一端を接続する接続部51cと、を有している。第1の直線部51aの長さと第2の直線部51bの長さは等しい。接続部51cは円弧状の湾曲形状である。第1の直線部51a及び第2の直線部51bの他端は、他の部材に接続せずにY方向に向く開放端面51d及び開放端面51eになっている。
【0072】
接続パーツ51と同様に、接続パーツ52は、略平行な第1の直線部52a及び第2の直線部52bと、第1の直線部52a及び52bの一端を接続する接続部52cと、を有している。第1の直線部52aの長さと第2の直線部52bの長さは等しい。接続部52cは円弧状の湾曲形状である。第1の直線部52a及び第2の直線部52bの他端は、他の部材に接続せずにY方向に向く開放端面52d及び開放端面52eになっている。
【0073】
説明の便宜上、接続パーツ51と接続パーツ52を呼び分けているが、本実施形態では接続パーツ51と接続パーツ52は同形状の部材である。したがって、各直線部51a、51b、52a及び52bの長さは全て等しく、接続部51c、52cの半径や曲率も等しい。
【0074】
接続パーツ51と接続パーツ52は、接続部51cと接続部52cをY方向で互いに逆向きにして、支柱12のシャフト部40に固定される。接続パーツ51の第1の直線部51a及び第2の直線部51bと、接続パーツ52の第1の直線部52a及び第2の直線部52bが、それぞれシャフト部40の一対の幅方向側面部40aを挟むように配置されて、幅方向側面部40aに対して固定される。シャフト部40に対する接続パーツ51及び接続パーツ52の固定は溶接によって行われる。
【0075】
この固定状態で、シャフト部40に対して、接続パーツ51がY方向の一方に突出し、接続パーツ52がY方向の他方に突出する。そして、図12に示すように、平面視で接続パーツ51と一方の前後側面部40bとによって囲まれる空間S1と、平面視で接続パーツ52と他方の前後側面部40bとによって囲まれる空間S2とが形成される。これらの空間S1、S2にフック部(図示略)などを通すことによって、安全帯のロープをコネクタ部50に接続させることができる。
【0076】
ここで、接続パーツ51は、第1の直線部51aと第2の直線部51bがZ方向での高さ位置を互いに異ならせてシャフト部40に固定される。第1の直線部51aの方が第2の直線部51bよりも高い位置に固定される。また、接続パーツ52は、第1の直線部52aと第2の直線部52bがZ方向での高さ位置を互いに異ならせてシャフト部40に固定される。第2の直線部52bの方が第1の直線部52aよりも高い位置に固定される。
【0077】
つまり、接続パーツ51と接続パーツ52はそれぞれ、X方向に進むにつれてZ方向の位置が異なる傾き配置(水平方向及び垂直方向のいずれに対しても傾いた配置)で、シャフト部40の一対の幅方向側面部40aに固定される。また、接続パーツ51と接続パーツ52は、傾き配置の傾き方向が互いに逆である交差関係で設けられ、図10のように正面視すると、接続パーツ51と接続パーツ52がX字状に交差する関係になる。
【0078】
したがって、シャフト部40の一方の幅方向側面部40aに沿う領域では、接続パーツ51の第1の直線部51aが上側に位置し、接続パーツ52の第1の直線部52aが下側に位置する関係になる。シャフト部40の他方の幅方向側面部40aに沿う領域では、接続パーツ52の第2の直線部52bが上側に位置し、接続パーツ51の第2の直線部51bが下側に位置する関係になる。
【0079】
図10に示すように、第1の直線部51a及び第2の直線部51bを結ぶ(第1の直線部51a及び第2の直線部51bのそれぞれの中心線を含む)仮想の平面を、接続パーツ51における傾き面T1とする。第1の直線部52a及び第2の直線部52bを結ぶ(第1の直線部52a及び第2の直線部52bのそれぞれの中心線を含む)仮想の平面を、接続パーツ52における傾き面T2とする。上記の交差関係とは、シャフト部40の長手方向(Z方向)と垂直な基準面T0に対して、傾き面T1と傾き面T2が互いに逆方向に傾いて交差していることを意味する。また、基準面T0に対する傾き面T1と傾き面T2のそれぞれの傾き角は略同じである。
【0080】
このように接続パーツ51と接続パーツ52を互いに逆方向に傾けて交差関係で配置したコネクタ部50は、高い強度を有しており、落下防止用の耐荷重性能に優れている。その理由を以下に説明する。
【0081】
シャフト部40の一方の幅方向側面部40aでは、接続パーツ51の第1の直線部51aと接続パーツ52の第1の直線部52aがZ方向に位置を異ならせているので、第1の直線部51aと第1の直線部52aは互いに干渉せずにY方向の長さを確保することができ、それぞれがY方向の広い範囲でシャフト部40に溶接することができる。シャフト部40の他方の幅方向側面部40aでは、接続パーツ51の第2の直線部51bと接続パーツ52の第2の直線部52bがZ方向に位置を異ならせているので、第2の直線部51bと第2の直線部52bは互いに干渉せずにY方向の長さを確保することができ、それぞれがY方向の広い範囲でシャフト部40に溶接することができる。したがって、接続パーツ51と接続パーツ52はいずれも、シャフト部40への結合強度が高い。本実施形態では、各直線部51a、51b、52a及び52bは、シャフト部40の幅方向側面部40aと重なるY方向の長さの略全体が溶接される。
【0082】
また、各直線部51a、51b、52a及び52bはいずれも、Y方向に向く中心線を中心とする周方向の一部分(円形の断面の一部分)のみがシャフト部40に対して溶接されるので、溶接の際に熱ひずみの影響(変形など)が生じにくく、確実に溶接させることができる。
【0083】
高所作業中の作業者が落下するなどして、接続パーツ51とシャフト部40の間の空間S1に挿入した(接続パーツ51に係合させた)フック部から落下方向の力が加わった場合、接続パーツ51においては、図10に示すように、傾き面T1の傾斜方向に沿う斜め下方への荷重F1が作用しやすい。荷重F1は、下側に位置する第2の直線部51bを幅方向側面部40aから引き離そうとする引張荷重(剥離荷重)として作用すると共に、上側に位置する第1の直線部51aを幅方向側面部40aに押し付けようとする圧縮荷重として作用する。
【0084】
同様に、接続パーツ52とシャフト部40の間の空間S2に挿入した(接続パーツ52に係合させた)フック部から落下方向の力が加わった場合、接続パーツ52においては、図10に示すように、傾き面T2の傾斜方向に沿う斜め下方への荷重F2が作用しやすい。荷重F2は、下側に位置する第1の直線部52aを幅方向側面部40aから引き離そうとする引張荷重(剥離荷重)として作用すると共に、上側に位置する第2の直線部52bを幅方向側面部40aに押し付けようとする圧縮荷重として作用する。
【0085】
一般的に、溶接による固定は、上記のような圧縮荷重に対して高い強度を有している。したがって、荷重F1に対する接続パーツ51の強度限界と、荷重F2に対する接続パーツ52の強度限界が高い。
【0086】
このように、コネクタ部50における接続パーツ51と接続パーツ52はいずれも、シャフト部40に対して広い範囲で固定されて結合強度に優れると共に、作業員の落下時に加わる荷重F1、F2に対する耐荷重性能に優れている。
【0087】
図14は、本実施形態のコネクタ部50とは異なる第1の比較例のコネクタ部60を示している。コネクタ部60は、シャフト部40の一対の前後側面部40bからY方向に突出する一対の環状の接続パーツ61を有している。各接続パーツ61は、円形状の断面を有する棒状体をC字状に湾曲させた構成であり、一方の端面61aと他方の端面61bを前後側面部40bに対して溶接で固定させている。端面61aの固定箇所は、端面61bの固定箇所よりもZ方向の上方に位置している。
【0088】
シャフト部40に対する接続パーツ61の固定は、円形状の端面61aと端面61bがそれぞれ周方向の全体に亘って溶接される全周溶接で行われる。このような全周溶接は、溶接の際に端面61aと端面61bの全体が熱による影響(ひずみなど)を受けやすく、溶接による固定強度を高めることが難しい。また、端面61aや端面61bという狭い範囲で固定されるため、外部から衝撃が加わった際に溶接部分に応力が集中しやすい。
【0089】
高所作業中に作業者が落下するなどして、接続パーツ61とシャフト部40の間の空間S3に挿入した(接続パーツ61に係合した)フック部から落下方向の力が加わった場合、接続パーツ61においては、鉛直方向への荷重F3が作用しやすい。荷重F3は、シャフト部40の前後側面部40bに対して接続パーツ61の端面61aと端面61bを下方に引っ張って溶接箇所を切断させるような剪断荷重として作用する。一般的に、向い合せの面どうしを溶接させた固定は、上記の圧縮荷重に比べて剪断荷重に対して弱い傾向にある。したがって、本実施形態のコネクタ部50の接続パーツ51、52に比べて、落下時の荷重F3に対する接続パーツ61の強度限界が低い。
【0090】
このように、第1の比較例のコネクタ部60は、溶接による部品(接続パーツ61)の固定強度や、作業員の落下時の耐荷重性能が、上記実施形態のコネクタ部50に比べて劣る構造である。
【0091】
図15及び図16は、本実施形態のコネクタ部50とは異なる第2の比較例のコネクタ部70を示している。コネクタ部70は、一対の接続パーツ71を組み合わせて構成されている。個々の接続パーツ71は、円形状の断面を有する棒状体をU字状に湾曲させた構成であり、略平行な一対の直線部71aと、一対の直線部71aの一端部を接続する湾曲部71bと、を有する。
【0092】
一対の接続パーツ71は、湾曲部71bをY方向で互いに逆向きにして、一対の直線部71aの端面71cを互いに突き合わせる形で溶接して一体化される。また、一対の接続パーツ71は、一対の直線部71aのZ方向の高さ位置を同じにして配置される。すなわち、各接続パーツ71は、X方向に対する傾きを有さずに水平な向きでシャフト部40に取り付けられる。シャフト部40の一対の幅方向側面部40aに対して各接続パーツ71の直線部71aが溶接で固定される。
【0093】
各接続パーツ71のうち、端面71cを突き合わせて溶接した箇所は、溶接時の熱によって変形(溶接ビードなど)が生じている。そのため、各接続パーツ71における直線部71aのうち端面71c付近の部分は、シャフト部40の幅方向側面部40aに対して溶接しにくく、溶接の対象外となる。つまり、一対の接続パーツ71を端面71cで結合した構造であることによって、直線部71aにおいてシャフト部40に溶接可能なY方向の範囲が制限され、溶接による結合強度を確保しにくい。
【0094】
高所作業中に作業者が落下するなどして、接続パーツ71とシャフト部40の間の空間S4に挿入した(接続パーツ71に係合した)フック部から落下方向の力が加わった場合、接続パーツ71においては、鉛直方向への荷重F4(図16)が作用しやすい。荷重F4は、シャフト部40の幅方向側面部40aに対して直線部71aを下方に引っ張って溶接箇所を切断させるような剪断荷重として作用する。上記の通り、溶接による固定は剪断荷重に対しては比較的弱いため、本実施形態のコネクタ部50の接続パーツ51、52に比べて、落下時の荷重F4に対する接続パーツ71の強度限界が低い。
【0095】
このように、第2の比較例のコネクタ部70は、溶接による部品(接続パーツ71)の固定強度や、作業員の落下時の耐荷重性能が、上記実施形態のコネクタ部50に比べて劣る構造である。
【0096】
以上の比較例のコネクタ部60、70に比べて、本実施形態のコネクタ部50では、接続パーツ51と接続パーツ52がシャフト部40に対して高い強度で固定され、作業員の落下時に加わる荷重に対する接続パーツ51と接続パーツ52の強度限界も高いという利点がある。
【0097】
以上の実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な変形、変更が可能である。
【0098】
例えば、上記実施形態の保持部41では、Y方向に厚みを有する板状の一対の枠体42を複数の接続部43で接続しているが、1つの枠体のみで保持部を構成することも可能である。
【0099】
上記実施形態の落下防止器具10では、レール100の片側に2つずつのアンダーローラ25とアンダーローラ26を配しているが、アンダーローラ25、26に相当するガイド部材の数はこれに限定されない。例えば、レール100の片側に3つ以上のガイド部材を配置してもよい。
【0100】
上記実施形態の落下防止器具10では、レール100の腹部102の側面に接するガイド部材が、回転可能なアンダーローラ25、26である。これとは異なり、回転せずにレール100の腹部102の側面に対して摺接するタイプのガイド部材を用いることも可能である。
【0101】
台座ユニット11は、作業者の操作によってレール100の長手方向への移動を制限させるブレーキ機構を備えてもよい。これにより、落下防止器具10を任意の位置で停止させて、レール100に対して固定した状態で落下防止器具10を使用することが可能になる。
【0102】
上記実施形態の落下防止器具10では、第2側板部22が天板部20よりも上方に突出する延長壁部22bを備え、台座ユニット11に支柱12を取り付ける際に、延長壁部22bの上端に対して枠体42の上板部42cの下面が当接すると、保持部41がそれ以上下方に移動しない構成になっている。つまり、延長壁部22bの上端が、Z方向での支柱12の取り付け位置を定めるストッパとして機能している。これとは異なり、第2側板部22が延長壁部22bを備えない構成や、保持部41に対応する範囲で延長壁部22bを切り欠いた構成にして、枠体42の上板部42cの下面が天板部20の上面に当接する位置まで支柱12を移動可能にさせてもよい。つまり、天板部20の上面を支柱12に対するストッパとして用いる構成でもよい。
【0103】
上記実施形態の落下防止器具10では、コネクタ部50の接続パーツ51、52が、円弧状の湾曲形状の接続部51c、52cを含んだU字形状であるが、これとは異なる形状の接続パーツを用いることも可能である。例えば、接続部51c、52cに代えてX方向に延びる直線部を備えた、コ字型の接続パーツを用いてもよい。
【0104】
上記実施形態の落下防止器具10では、コネクタ部50の接続パーツ51、52が同形状であるが、コネクタ部50を構成する一対の接続パーツを別形状の部材にすることも可能である。一例として、一対の接続パーツは、シャフト部40からのY方向の突出量が異なっていてもよい。
【0105】
上記実施形態の落下防止器具10は、台座ユニット11に対して支柱12を着脱可能であるが、支柱12が着脱されずに固定された構造であっても、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0106】
10 :鉄道作業用落下防止器具
11 :台座ユニット
12 :支柱
13 :結合ピン
20 :天板部
21 :第1側板部
21a :屈曲部
22 :第2側板部
22a :屈曲部
22b :延長壁部
23 :ヒンジ部
25 :アンダーローラ
26 :アンダーローラ
27 :支持軸
28 :支持軸
30 :切り欠き部
31 :切り欠き部
32 :ローラブラケット
33 :滑走ローラ
34 :支持軸
35 :支持筒部
35a :幅方向側面部
35b :前後側面部
35c :貫通孔
40 :シャフト部
40a :幅方向側面部
40b :前後側面部
40c :貫通孔
41 :保持部
42 :枠体
42a :保持板部
42b :保持板部
42c :上板部
43 :接続部
50 :コネクタ部
51 :接続パーツ
51a :第1の直線部
51b :第2の直線部
51c :接続部
51d :開放端面
51e :開放端面
52 :接続パーツ
52a :直線部
52a :第1の直線部
52b :第2の直線部
52c :接続部
52d :開放端面
52e :開放端面
100(100P、100Q) :レール
101 :頭部
102 :腹部
103 :底部
T0 :基準面
T1 :傾き面
T2 :傾き面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16