(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024142004
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F24H 9/00 20220101AFI20241003BHJP
【FI】
F24H9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053936
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】笠松 敬
【テーマコード(参考)】
3L036
【Fターム(参考)】
3L036AA06
(57)【要約】
【課題】吸熱フィン2とバーリング加工された吸熱フィンの貫通孔22に貫通する吸熱管3とを有する熱交換器であって、貫通孔22のバーリング壁23が欠落した欠落部24の上方に位置するロー材保持部25に保持されるロー材8を溶融させたときに、溶融ロー材が欠落部24からバーリング壁23と吸熱管3との間に浸透するようにしたものにおいて、欠落部24に流下する溶融ロー材の割合を増加して、コストダウンを図ることができるようにする。
【解決手段】ロー材保持部25は、欠落部24よりも上方に所定距離延出されて、略全幅に亘りロー材8を保持するように形成される。また、吸熱フィン2に、ロー材保持部25の両脇に位置する下方に窪む切欠き部26を形成する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱流体により加熱される熱交換器であって、
内部に加熱流体が流れる角筒状の筐体と、筐体内の加熱流体の流れ方向に交差する直交2方向をX軸方向及びY軸方向として、筐体内にX軸方向に積層して配置された複数の吸熱フィンと、これら吸熱フィン及び筐体のX軸方向両側の側板をX軸方向に貫通し、内部に被加熱流体が流れる複数の吸熱管とを備え、
吸熱フィンに開設される吸熱管が貫通する貫通孔は、当該貫通孔の孔縁からX軸方向に突出するバーリング壁が設けられるバーリング加工孔で構成され、貫通孔の加熱流体の流れ方向上流側と下流側との一方に位置する部分は、バーリング壁が欠落した欠落部に形成され、吸熱フィンに、欠落部に対し加熱流体の流れ方向に隣接して、ロー材を保持するロー材保持部が設けられ、ロー材保持部を貫通孔よりも上方に位置させた状態でロー材を溶融させたときに、ロー材保持部から流下する溶融ロー材が欠落部からバーリング壁と吸熱管との間に浸透するようにしたものにおいて、
ロー材保持部は、当該ロー材保持部を貫通孔よりも上方に位置させた状態において、欠落部よりも上方に所定距離延出されて、Y軸方向略全幅に亘りロー材を保持するように形成され、吸熱フィンに、ロー材保持部のY軸方向両脇に位置する切欠き部が形成され、切欠き部は、ロー材保持部を貫通孔よりも上方に位置させた状態において、ロー材保持部及び切欠き部のY軸方向外側に隣接する吸熱フィンの部分よりも下方に窪むように切り欠かれていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記欠落部のY軸方向各側のコーナ部に、前記吸熱管の外周面に欠落部において対向する前記貫通孔の周面部分から欠落部を向く前記バーリング壁のY軸方向側面に亘って連続するねじられた連続面が存在することを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記欠落部のY軸方向幅は、前記ロー材保持部のY軸方向幅よりも狭いことを特徴とする請求項1又は2記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱流体により加熱される熱交換器であって、内部に加熱流体が流れる角筒状の筐体と、筐体内の加熱流体の流れ方向に交差する直交2方向をX軸方向及びY軸方向として、筐体内にX軸方向に積層して配置された複数の吸熱フィンと、これら吸熱フィン及び筐体のX軸方向両側の側板をX軸方向に貫通し、内部に被加熱流体が流れる複数の吸熱管とを備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
元来、この種の熱交換器においては、吸熱フィンに開設される吸熱管が貫通する貫通孔を、当該貫通孔の孔縁からX軸方向に突出するバーリング壁が設けられるバーリング加工孔で構成している。貫通孔の加熱流体の流れ方向上流側と下流側との一方に位置する部分は、バーリング壁が欠落した欠落部に形成されている。また、吸熱フィンに、欠落部に対し加熱流体の流れ方向に隣接して、ロー材を保持するロー材保持部を設けている。そして、ロー材保持部を貫通孔よりも上方に位置させた状態でロー材を溶融させたときに、ロー材保持部から流下する溶融ロー材が欠落部からバーリング壁と吸熱管との間に浸透して、吸熱フィンと吸熱管とがバーリング壁においてロー付けされるようにしている。
【0003】
ここで、従来、ロー材保持部を、貫通孔よりも上方に位置させた状態において、貫通孔に向けて下方に円弧状に窪むように形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例のものでは、ロー材保持部にロー材を確実に保持できるものの、以下の不具合を生ずることが判明した。即ち、ロー材保持部から溶融ロー材が吸熱フィンの側面を伝って流下する際、溶融ロー材は、ロー材保持部の縁から当該縁の法線方向に離れる方向の方向成分を持って流れ易い。そのため、円弧状に窪むロー材保持部の底部から立ち上がるY軸方向各側の側縁から流れ出す溶融ロー材が当該側縁から離れる方向、即ち、Y軸方向外方に向かう方向成分を持って流れ、欠落部に流下しにくくなる。その結果、欠落部に流下する溶融ロー材の割合が減少して、ロー材の使用量を増加せざるを得なくなり、コストアップの要因になる。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、欠落部に流下する溶融ロー材の割合を増加して、コストダウンを図ることができるようにした熱交換器を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、加熱流体により加熱される熱交換器であって、内部に加熱流体が流れる角筒状の筐体と、筐体内の加熱流体の流れ方向に交差する直交2方向をX軸方向及びY軸方向として、筐体内にX軸方向に積層して配置された複数の吸熱フィンと、これら吸熱フィン及び筐体のX軸方向両側の側板をX軸方向に貫通し、内部に被加熱流体が流れる複数の吸熱管とを備え、吸熱フィンに開設される吸熱管が貫通する貫通孔は、当該貫通孔の孔縁からX軸方向に突出するバーリング壁が設けられるバーリング加工孔で構成され、貫通孔の加熱流体の流れ方向上流側と下流側との一方に位置する部分は、バーリング壁が欠落した欠落部に形成され、吸熱フィンに、欠落部に対し加熱流体の流れ方向に隣接して、ロー材を保持するロー材保持部が設けられ、ロー材保持部を貫通孔よりも上方に位置させた状態でロー材を溶融させたときに、ロー材保持部から流下する溶融ロー材が欠落部からバーリング壁と吸熱管との間に浸透するようにしたものにおいて、ロー材保持部は、当該ロー材保持部を貫通孔よりも上方に位置させた状態において、欠落部よりも上方に所定距離延出されて、Y軸方向略全幅に亘りロー材を保持するように形成され、吸熱フィンに、ロー材保持部のY軸方向両脇に位置する切欠き部が形成され、切欠き部は、ロー材保持部を貫通孔よりも上方に位置させた状態において、ロー材保持部及び切欠き部のY軸方向外側に隣接する吸熱フィンの部分よりも下方に窪むように切り欠かれていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ロー材保持部のY軸方向の各側部から流下する溶融ロー材が、切欠き部側の側縁から離れる方向、即ち、Y軸方向内方に向かう方向成分を持つ。そのため、ロー材保持部のY軸方向各側部から流下する溶融ロー材もロー材保持部のY軸方向中央部の真下に近付くように流れる。その結果、ロー材保持部の下に位置する欠落部に流下する溶融ロー材の割合が増加することになり、ロー材の使用量を減らしてコストダウンを図ることができる。
【0009】
また、本発明においては、欠落部のY軸方向各側のコーナ部に、吸熱管の外周面に欠落部において対向する貫通孔の周面部分から欠落部を向くバーリング壁のY軸方向側面に亘って連続するねじられた連続面が存在することが望ましい。ここで、通常は、後記詳述する如く、欠落部のY軸方向両側の各コーナ部に、貫通孔の上記周面部分とバーリング壁の上記Y軸方向側面とを縁切りする凹欠部を形成しているが、これでは、欠落部に流下した溶融ロー材の一部が凹欠部に流入してここに留まり、バーリング壁と吸熱管との間に浸透する溶融ロー材の量が減少してしまう。これに対し、欠落部のY軸方向両側の各コーナ部に、凹欠部を形成せずに、上記の如くねじられた連続面が存在するようにすれば、バーリング壁と吸熱管との間に浸透する溶融ロー材の量が凹欠部への流入で減少することがなく、有利である。
【0010】
また、本発明において、欠落部のY軸方向幅は、ロー材保持部のY軸方向幅よりも狭いことが望ましい。ここで、ロー付け時にY軸方向が水平にならずに傾いていると、欠落部に流下した溶融ロー材が下り勾配側に片寄る。そして、欠落部のY軸方向幅が広いと、欠落部の上り勾配側に隣接するバーリング壁から溶融ロー材が離れて、このバーリング壁と吸熱管との間に溶融ロー材が浸透せず、ロー付け不良を生じてしまう。これに対し、欠落部のY軸方向幅を上記の如く狭くすれば、欠落部の上り勾配側に隣接するバーリング壁から溶融ロー材が離れて、ロー付け不良を生ずることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施形態の熱交換器の
図1とは反対方向から見た斜視図。
【
図6】実施形態の熱交換器に設けられる吸熱フィンの一部の拡大斜視図。
【
図7】(a)実施形態の熱交換器に設けられる吸熱フィンの欠落部のコーナ部の拡大斜視図、(b)比較例の吸熱フィンの欠落部のコーナ部の拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図4を参照して、本発明の実施形態の熱交換器Aは、一端(
図3、
図4で上端)に図外のバーナが装着される筐体1を備えている。筐体1内には、バーナから噴出する混合気の燃焼で生ずる加熱流体たる燃焼ガスが流れ、この燃焼ガスにより熱交換器Aが加熱される。
図3、
図4に矢印aで示す筐体1内の燃焼ガスの流れ方向に交差する直交2方向をX軸方向及びY軸方向として、筐体1は、X軸方向両側の側板11,12と、Y軸方向両側の側板13,14とを有する角筒状である。熱交換器Aは、更に、筐体1内にX軸方向に積層して配置された複数の吸熱フィン2と、これら吸熱フィン2及び筐体1のX軸方向両側の側板11,12をX軸方向に貫通し、内部に水等の被加熱流体が流れる複数の吸熱管3と、これら吸熱管3を筐体1のX軸方向両側の側板11,12の外側で直列に接続する接続部4とを備えている。各吸熱管3は、各吸熱フィン2と各側板11,12とに貫通状態でロー付けされる。
【0013】
吸熱管3は、
図3に明示されているように、燃焼ガスの流れ方向に2段に分けて配置されている。具体的には、燃焼ガスの流れ方向上流側の段である第1段に、Y軸方向一方の最外側に位置するものからY軸方向他方の最外側に位置するものまでの♯11~♯16の6本の吸熱管3を配置し、燃焼ガスの流れ方向下流側の段である第2段に、第1段の隣接する各吸熱管3,3間のY軸方向中心に管のY軸方向中心が合致するような位置関係で、Y軸方向一方の最外側に位置するものからY軸方向他方の最外側に位置するものまでの♯21~♯25の5本の吸熱管3を配置している。尚、各吸熱フィン2には、第1段の各吸熱管3に合致するY軸方向位置で燃焼ガスの流れ方向上流側に膨出する各膨出部21が設けられており、各膨出部21を第1段の各吸熱管3が貫通する。
【0014】
また、第1段の6本の吸熱管3とこれら吸熱管3を接続する第1段用の接続部41とで、第1段の吸熱管3をY軸方向一方の最外側に位置する♯11の吸熱管3からY軸方向他方の最外側に位置する♯16の吸熱管3に亘って結ぶ第1段の蛇行流路が構成され、第2段の5本の吸熱管3とこれら吸熱管3を接続する第2段用の接続部42とで、第2段の吸熱管3をY軸方向一方の最外側に位置する♯21の吸熱管3からY軸方向他方の最外側に位置する♯25の吸熱管3に亘って結ぶ第2段の蛇行流路が構成されている。
【0015】
尚、第1段用の接続部41は、筐体1のX軸方向一側の側板11の外側に配置されている、♯11と♯12の吸熱管3,3と、♯13と♯14の吸熱管3,3、♯15と♯16の吸熱管3,3とを夫々接続する3つのU字管41aと、筐体1のX軸方向他側の側板12の外側に配置されている、♯12と♯13の吸熱管3,3と、♯14と♯15の吸熱管3,3とを夫々接続する2つのU字管41bとで構成されている。また、第2段用の接続部42は、筐体1のX軸方向一側の側板11の外側に配置されている、♯22と♯23の吸熱管3,3と、♯24と♯25の吸熱管3,3とを夫々接続する2つのU字管42aと、筐体1のX軸方向他側の側板12の外側に配置されている、♯21と♯22の吸熱管3,3と、♯23と♯24の吸熱管3,3とを夫々接続する2つのU字管42bとで構成されている。
【0016】
第1段の蛇行流路の上流端たるY軸方向一方の最外側に位置する♯11の吸熱管3には、筐体1のX軸方向他側の側板12の外側で流入管5が接続されている。また、第1段の蛇行流路のY軸方向他方の最外側に位置する下流端の♯16の吸熱管3を第2段の蛇行流路のY軸方向他方の最外側に位置する上流端の♯25の吸熱管3に筐体1のX軸方向他側の側板12の外側でU字管から成る中間接続部412を介して接続し、第1段の蛇行流路から第2段の蛇行流路に被加熱流体が流れるようにしている。更に、第2段の蛇行流路のY軸方向一方の最外側に位置する下流端の♯21の吸熱管3には、筐体1のX軸方向一側の側板11の外側で端部に流出口6aを有する流出側ジョイント6が接続されている。尚、第1段用の接続部41と第2段用の接続部42と中間接続部412とで全ての吸熱管3を直列に接続する接続部4が構成されることになる。
【0017】
図3を参照して、筐体1のY軸方向一側の側板13の吸熱フィン2より燃焼ガスの流れ方向上流側の部分の内側には、燃焼ガスの流れ方向上流側から順に管から成る第4と第8と第12の3本の冷却流路7
4,7
8,7
12が側板13に接するように配置されている。筐体1のY軸方向他側の側板14の吸熱フィン2より燃焼ガスの流れ方向上流側の部分の内側にも、燃焼ガスの流れ方向上流側から順に管から成る第2と第6と第10の3本の冷却流路7
2,7
6,7
10が側板14に接するように配置されている。また、筐体1のX軸方向一側の側板11の吸熱フィン2より燃焼ガスの流れ方向上流側の部分には、
図1、
図4に示す如く、第2冷却流路7
2と第4冷却流路7
4とを接続する第3冷却流路7
3と、第6冷却流路7
6と第8冷却流路7
8とを接続する第7冷却流路7
7と、第10冷却流路7
10と第12冷却流路7
12とを接続する第11冷却流路7
11とが設けられている。更に、筐体1のX軸方向他側の側板12の吸熱フィン2より燃焼ガスの流れ方向上流側の部分には、
図2、
図4に示す如く、第2冷却流路7
2に接続される、端部に被加熱流体が流入する流入口7
1aが設けられた第1冷却流路7
1と、第4冷却流路7
4と第6冷却流路7
6とを接続する第5冷却流路7
5と、第8冷却流路7
8と第10冷却流路7
10とを接続する第9冷却流路7
9とが設けられている。第1段の蛇行流路の上流端の♯11の吸熱管3は、流入管5を介して第12冷却流路7
12に接続されている。そのため、被加熱流体は、流入口7
1aから第1乃至第12冷却流路7
1~7
12を経て第1段の蛇行流路の上流端の♯11の吸熱管3に流入する。そして、これら第1乃至第12冷却流路7
1~7
12に流れる被加熱流体により筐体1の各側板11~14が冷却されるようにしている。
【0018】
尚、第3と第7と第11の各冷却流路73,77,711と、第1と第5と第9の各冷却流路71,75,79は、各側板11,12に形成した横方向内方への窪みとこの窪みを覆うように各側板11,12の外面に取付けた蓋71とで構成されている。また、筐体1のY軸方向一側の側板13には、点火電極やフレームロッド等を挿通するための複数の穴131が形成されている。
【0019】
次に、吸熱フィン2と吸熱管3とをロー付けするための構成について説明する。
図5、
図6を参照して、吸熱フィン2に開設される吸熱管3が貫通する貫通孔22は、当該貫通孔22の孔縁からX軸方向に突出するバーリング壁23が設けられるバーリング加工孔で構成されている。貫通孔22の燃焼ガスの流れ方向上流側に位置する部分は、バーリング壁23が欠落した欠落部24に形成されている。また、吸熱フィン2には、欠落部24に対し燃焼ガスの流れ方向に隣接して、ロー材8を保持するロー材保持部25が設けられている。そして、ロー材保持部25を貫通孔22よりも上方に位置させた状態でロー材8を溶融させたときに、ロー材保持部25から流下する溶融ロー材が欠落部24からバーリング壁23と吸熱管3との間に浸透して、吸熱フィン2と吸熱管3とがロー付けされるようにしている。
【0020】
ここで、ロー材保持部25は、当該ロー材保持部25を貫通孔22よりも上方に位置させた状態において、欠落部24よりも上方に所定距離延出されている。そして、塗布されたペースト状のロー材8がロー材保持部25のY軸方向略全幅に亘り保持されるようにロー材保持部25が形成されている。尚、本実施形態において、ロー材保持部25は、Y軸方向全幅に亘り平坦であるが、一部に凹部が形成されていてもよい。また、吸熱フィン2には、ロー材保持部25のY軸方向両脇に位置する切欠き部26,26が形成されている。この切欠き部26は、ロー材保持部25を貫通孔22よりも上方に位置させた状態において、ロー材保持部25及び切欠き部26のY軸方向外側に隣接する吸熱フィン2の部分よりも下方に窪むように切り欠かれている。
【0021】
ロー材保持部25にロー材8を塗布した後、炉中ロー付けを行うが、この際、ロー材保持部25のY軸方向中間部から流下する溶融ロー材は、
図5に矢印aで示す如く欠落部24に向けて流れる。また、ロー材保持部25のY軸方向の各側部から流下する溶融ロー材は、切欠き部26側の側縁25aから離れる方向、即ち、Y軸方向内方に向かう方向成分を持って、
図5に矢印bで示す如く、ロー材保持部25のY軸方向中央部の真下に近付くように流れる。その結果、ロー材保持部25の下に位置する欠落部24に流下する溶融ロー材の割合が増加することになり、ロー材8の使用量を減らしてコストダウンを図ることができる。
【0022】
また、本実施形態では、欠落部24のY軸方向幅をロー材保持部25のY軸方向幅よりも狭くしている。ここで、炉中ロー付け時にY軸方向が水平にならずに傾いていると、欠落部24に流下した溶融ロー材が下り勾配側に片寄る。そして、欠落部24のY軸方向幅が広いと、欠落部24の上り勾配側(例えば、
図5で右下がり傾いている場合は欠落部24の左側)に隣接するバーリング壁23から溶融ロー材が離れて、このバーリング壁23と吸熱管3との間に溶融ロー材が浸透せず、ロー付け不良を生じてしまう。これに対し、欠落部24のY軸方向幅を上記の如く狭くすれば、欠落部24の上り勾配側に隣接するバーリング壁23から溶融ロー材が離れ難くなり、ロー付け不良を生ずることを抑制できる。尚、欠落部24のY軸方向幅を狭くしても、ロー材保持部25から流下する溶融ロー材がロー材保持部25のY軸方向中央部の真下に近付くように流れるため、欠落部24に流下する溶融ロー材の量が減少することはない。
【0023】
更に、本実施形態では、
図7(a)に示す如く、欠落部24のY軸方向各側のコーナ部24aに、吸熱管3の外周面に欠落部24において対向する貫通孔22の周面部分22aから欠落部24を向くバーリング壁23のY軸方向側面23aに亘って連続するねじられた連続面27が存在している。ここで、ねじられた連続面27が存在する場合、貫通孔22のバーリング加工負荷が大きくなる。そのため、通常は、
図7(b)に示す如く、欠落部24のY軸方向各側のコーナ部24aに、貫通孔22の上記周面部分22aとバーリング壁23の上記Y軸方向側面23aとを縁切りする凹欠部28を形成している。然し、凹欠部28が存在すると、欠落部24に流下した溶融ロー材の一部が凹欠部28に流入してここに留まり、バーリング壁23と吸熱管3との間に浸透する溶融ロー材の量が減少してしまう。これに対し、欠落部24のY軸方向各側のコーナ部24aに、凹欠部28を形成せずに、上記の如くねじられた連続面27が存在するようにすれば、バーリング壁23と吸熱管3との間に浸透する溶融ロー材の量が凹欠部28への流入で減少することがなく、有利である。
【0024】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、貫通孔22の燃焼ガスの流れ方向上流側に位置する部分が欠落部24に形成されているが、貫通孔22の燃焼ガスの流れ方向下流側に位置する部分を欠落部24に形成することも可能である。また、上記実施形態では、熱交換器Aを加熱する加熱流体として燃焼ガスを用いているが、燃焼ガス以外の流体を加熱流体として用いる熱交換器にも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0025】
A…熱交換器、1…筐体、2…吸熱フィン、22…貫通孔、23…バーリング壁、24…欠落部、24a…欠落部のY軸方向各側のコーナ部、25…ロー材保持部、26…切欠き部、27…連続面、3…吸熱管、8…ロー材。